説明

断熱防水構造および断熱防水工法

【課題】デッキプレート等の金属製屋根下地材に、断熱材および防水層を敷設する断熱防水構造および断熱防水工法において、強風時の耐風荷重に対して、より信頼性の高い断熱防水構造および断熱防水工法を提供する。
【解決手段】金属製屋根下地材の上面に、断熱材およびゴム製シートが積層されてなる断熱防水構造であって、断熱材が少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)を含有する樹脂組成物を発泡させてなるものであり、且つ、金属製屋根下地材面、断熱材およびゴム製シートが接着剤を介して接着固定されたものである断熱防水構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレート等の金属製屋根下地材の上に断熱材および防水層を敷設して構成される断熱防水構造および断熱防水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
デッキプレート等の金属製屋根下地材を用いた屋根構造において、断熱性および防水性を付与するために、断熱材および防水層が金属製屋根下地材に積層された断熱防水構造が適用されている。金属製屋根下地材を用いた所謂金属屋根は、RC或いはALC等のコンクリート構造物の陸屋根に比べ、軽量であり、また、工期が短いというメリットを有することから、工場や倉庫、大型商業施設等を中心に広く普及している。
【0003】
金属屋根における断熱防水構造では、従来、金属製屋根下地材、断熱材および防水層を固定金具(ビス)で機械的に固定する機械式固定工法と称される方法が主に採用されている。また、断熱材としては、ポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム、フェノールフォームが使用されている。また、機械式固定工法は、接着剤を用いて断熱材や防水層を貼り付けて固定する接着工法と比較して、金属製屋根下地材表面の水分や腐食などの状態に左右されずに断熱材や防水層を固定できるというメリットや、施工者の技量による品質の不安定が少なく、工期短縮が図れるというメリットなどがある(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、薄い金属製屋根下地材(通常厚みは0.5〜2.0mmである。)、断熱材および防水層が相互に固定される力は、固定金具が設けられた部位に限定されるため、強風時の耐風荷重に対しては細心の注意が必要になる。更には、固定金具の腐食による固定力の低下が懸念される。固定金具の固定強度を上げるための方策としては、固定金具の仕様の変更することや(例えば、特許文献1)、金属製屋根下地材と断熱材との間に金属補強板を固着させて固定金具を補強すること(例えば、特許文献2)、金属製屋根下地材の裏面にねじ止めクリップを設けて固定金具を補強すること(例えば、特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−302783号公報
【特許文献2】特開2006−233556号公報
【特許文献3】特開2007−211441号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】シート防水マニュアル(金属下地断熱機械的固定工法),合成高分子ルーフィング工業会(KRK)技術委員会 2006年9月発刊
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述された方策は、いずれも固体金具を補強するものであり、金属製屋根下地材、断熱材および防水層を固定する力が、固定金具が設けられた部位に限定されることに変わりは無く、前述された問題を根本的に解決する方策ではない。
【0008】
また、従来より断熱材として汎用されている硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォームおよびフェノールフォームは、耐熱性に優れるという特性を有する。しかしながら、これら断熱材は、吸水性(吸湿性)が高いという特性をも有する。したがって、保管の際や施工後に、断熱材が吸水する虞がある。吸水した断熱材は、耐熱性や断熱性が極度に悪化する傾向にある。
【0009】
また、これら断熱材はリサイクル性がなく、廃棄の際の環境負荷が大きいというデメリットや、例えばポリスチレンフォームと比較して高価であるというデメリットがある。一方、ポリスチレンフォームは、吸水性が低く、強度が高く、安価であり、リサイクル性もあるが、耐熱性に劣るというデメリットがある。
【0010】
このような観点から、断熱防水構造に用いられる断熱材として、強度に優れ、吸水性が低く、安価でリサイクル可能なポリスチレンフォームの利点と、耐熱性に優れた硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム、フェノールフォームの利点と、を併せ持つものが待ち望まれている。
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、デッキプレート等の金属製屋根下地材に、断熱材および防水層を敷設する断熱防水構造および断熱防水工法において、強風時の耐風荷重に対して、より信頼性の高い断熱防水構造および断熱防水工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前述された課題を解決するために鋭意研究した結果、金属製屋根下地材、断熱材、および防水層からなる断熱防水構造において、金属製屋根下地材、断熱材および防水層を相互に接着剤により接着固定し、防水層としてはより耐久性の高いゴム製シートを用い、断熱材としては、吸水性が低く、リサイクル可能で、且つポリスチレンフォームよりも耐熱性の高い発泡体を用いることにより、本発明に係る金属屋根の断熱防水構造および断熱防水工法を完成するに至った。
【0013】
(1)本発明に係る断熱防水構造は、金属製屋根下地材の上面に、少なくとも断熱材およびゴム製シートが積層されてなる断熱防水構造であって、上記断熱材は少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)を含有する樹脂組成物を発泡させてなるものであり、且つ、上記金属製屋根下地材面、上記断熱材および上記ゴム製シートが接着剤を介して接着固定されてなるものである。
【0014】
(2)本発明の断熱防水構造は、上記ゴム製シートが、表皮として露出されてなるものである。
【0015】
(3)本発明の断熱防水構造は、上記共重合体(A)および上記共重合体(B)をそれぞれ構成する芳香族ビニル単位として、スチレン単位が好適である。
【0016】
(4)本発明の断熱防水構造は、上記共重合体(A)を構成する脂肪族カルボン酸誘導体単位として、メタクリル酸単位または無水マレイン酸単位が好適である。
【0017】
(5)本発明の断熱防水構造は、上記共重合体(B)を構成するシアン化ビニル単位として、アクリロニトリル単位が好適である。
【0018】
(6)本発明の断熱防水構造において、上記共重合体(A)が、芳香族ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびN−アルキル置換マレイミド単位からなることが好適である。
【0019】
(7)本発明の断熱防水構造は、上記共重合体(A)を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単位として、無水マレイン酸単位が好適である。
【0020】
(8)本発明の断熱防水構造は、上記共重合体(A)を構成するN−アルキル置換マレイミド単位として、N−フェニルマレイミド単位が好適である。
【0021】
(9)本発明に関わる断熱防水工法は、金属製屋根下地材の上面に、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)とを含有する樹脂組成物を発泡させてなる断熱材を、接着剤を介して接着固定する第1工程と、上記断熱材の上面に、接着剤を介してゴム製シートを接着固定して積層する第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属製屋根下地材の上面に、断熱材およびゴム製シートが積層されてなる断熱防水構造であって、金属製屋根下地材、断熱材およびゴム製シートが接着剤を介して接着固定されてなる構造とすることにより、強風時の耐風荷重に対して、より信頼性の高い断熱防水構造とすることができる。
【0023】
また、上記断熱材として、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)とを含有する樹脂組成物を発泡させてなる発泡体を採用することにより、吸水に伴う性能(耐熱性、断熱性)の低下を引き起こすことが無く、耐熱性および環境適合性に優れた断熱防水構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る断熱防水構造1の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で本実施形態が適宜変更され得ることは言うまでもない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る断熱防水構造1を示す部分断面図である。なお、同図においては、構造物の全体は示されておらず、断熱防水構造1が施工される金属製屋根下地材2の一部のみが示されている。
【0027】
[断熱防水構造1]
断熱防水構造1は、構造物の金属製屋根下地材2の上面に、断熱材4およびゴム製シート5が積層されてなるものである。なお構造物としては、鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造の建築物に代表されるものが挙げられるが、本発明において、構造物の工法や形状などは特に限定されるものではない。
【0028】
[金属製屋根下地材2]
金属製屋根下地材2は、いわゆる波板形状のように、断面において台形が凹凸を上下に反転させながら連続するデッキプレートである。金属製屋根下地材2の材質としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、溶融アルミニウムメッキ鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板、溶融亜鉛−アルミ系合金メッキ鋼板、溶融亜鉛−アルミ−マグネシウム系合金メッキ鋼板、あるいはフッ素樹脂や塩化ビニル樹脂を被覆した表面処理鋼板等が一般的である。なお、本発明における金属製屋根下地材は、屋根材として従来用いられている金属製屋根下地材であればよいが、防火地域や準防火地域内の建築物の屋根構造には、建築基準法の耐火規制が適用されるので、「屋根30分耐火構造認定」を取得した金属製屋根下地材を用いることがより好ましい。
【0029】
金属製屋根下地材2の厚みとしては、0.5〜2.0mmが一般的だが、軽量化と設計荷重(固定強度、積載荷重、風荷重等)、および耐火認定取得を両立するために、厚みは0.8〜1.5mmがより好ましい。なお、本発明における金属製屋根下地材の断面形状は、特に限定されるものではないが、断熱材との接着面積を十分に確保し、加えて断熱材の踏み抜き防止のためには、本実施形態に係る金属製屋根下地材2のような形状が好ましく、特に金属製屋根下地材2の巾寸法に対するデッキ台形山部寸法(上側のフランジ部分の寸法)の比率が0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。
【0030】
[接着剤3]
接着剤3は、金属製屋根下地材2の上面に断熱材4を接着固定し、また、断熱材4の上面にゴム製シート5を接着固定するためのものである。接着剤3としては、ポリマーセメント系、アスファルトエマルジョン系に代表される水系接着剤、あるいはクロロプレン系、天然ゴム系に代表される溶剤系接着剤、あるいは硬化反応型に代表される無溶剤系接着剤等を用いることができる。
【0031】
[断熱材4]
断熱材4は、断熱防水構造1において、主に断熱性能を確保する目的で用いられるものである。断熱材4は、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)とを含有する樹脂組成物を発泡させてなるものである。
【0032】
断熱材4は、所定の厚みの平板形状の直方体であり、例えば、厚みが20〜100mm、縦横寸法が910mm×910mmのものが用いられる。このような一定形状の断熱材4が、金属製屋根下地材2の上側に隙間無く敷き詰められて、接着剤3を介して、金属製屋根下地材2の上面に接着固定される。以下、断熱材4に用いられる樹脂組成物を、詳細に説明する。
【0033】
断熱材4は、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)とを含有する樹脂組成物を発泡させてなるものである。共重合体(A)は、芳香族ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびN−アルキル置換マレイミド単位からなるものであってもよい。共重合体(A)において、特に芳香族ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびN−アルキル置換マレイミド単位からなる共重合体を共重合体(A1)として以下に記す。共重合体(B)に、共重合体(A1)が含有された樹脂組成物からなる発泡体については、耐熱性および耐溶剤性が向上されるので、より好ましい。この耐溶剤性向上に伴い、接着剤2として溶剤系接着剤を使用する際に、接着剤2の選択の幅が広がるというメリットがある。
【0034】
共重合体(A)及び共重合体(B)を構成する芳香族ビニル単位としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、等が挙げられる。これらのうち、工業的に安価である点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく、さらに安価であるスチレンが最も好ましい。
【0035】
共重合体(A)を構成する脂肪族カルボン酸誘導体単位としては、一般的に、脂肪族酸ハロゲン化物、脂肪族酸無水物、脂肪族カルボン酸、脂肪族エステル、脂肪族アミドからなる群より構成される。前述された脂肪族カルボン酸誘導体単位のうち、芳香族ビニル単位と共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ソルビン酸、ヘプテン酸、ウンデシレン酸、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸等の不飽和モノカルボン酸単位や、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物が一般的である。これらのうち、重合の容易性および加工性の観点から、不飽和カルボン酸単位であるメタクリル酸単位、または不飽和カルボン酸無水物単位である無水マレイン酸等が好ましく、最も好ましくはメタクリル酸である。
【0036】
共重合体(B)を構成するシアン化ビニル単位としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルが挙げられる。これらのうち、工業的に安価である点から、アクリロニトリルが好ましい。
【0037】
共重合体(A1)を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単位としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、等が挙げられる。これらのうち、工業的に安価である点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0038】
共重合体(A1)を構成するN−アルキル置換マレイミド単位としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド、等が挙げられる。これらのうち、工業的に安価である点から、N−フェニルマレイミドが好ましい。
【0039】
本発明における樹脂組成物としては、前述された共重合体以外に、必要に応じて、他の樹脂を併用してもよい。このような他の樹脂として、例えば、スチレンホモポリマー、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−αメチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、等が挙げられる。特に、共重合体(A)に対しては、スチレンポリマーと併用しても、成形加工性を損なうことなく、スチレンポリマー100%のポリスチレンフォームよりも耐熱性が向上されるので好ましい。
【0040】
上記樹脂組成物には、共重合体(A)、および/または、共重合体(B)を含有してなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、塩素原子を含有しない発泡剤を3〜10重量部用いることができる。また、このような発泡剤として、物理系発泡剤、化学系発泡剤の1種または2種以上を使用できる。発泡剤が塩素原子を含有しないことにより、環境への負荷が低減されるので好ましいが、本発明の目的を達成するためには、必ずしも発泡剤が塩素原子を含有しないことは必要ではない。
【0041】
物理系発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化イソプロピルなどの塩化アルキル類、1,1−ジフルオロエタン、1,2−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,2−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタンなどのフッ素化炭化水素、二酸化炭素、窒素、水、アルゴン、ヘリウムなどの無機ガス、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フラン、フラフール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチル−n−ブチルケトンなどのケトン類が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
化学系発泡剤としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス−ベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、テレフタルアジド、5−フェニルテトラゾール、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混同して使用することができる。
【0043】
前述された発泡剤のうち、オゾン層保護の観点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化イソプロピルなどの塩化アルキル類、二酸化炭素、窒素、水、アルゴン、ヘリウムなどの無機ガス類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類が好ましい。
【0044】
また、前述された発泡剤のうち、断熱材4の軽量化、押出発泡の安定性を考慮すると、発泡剤としては、上記共重合体(A)、および/または、上記共重合体(B)を含有してなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、a)エーテル、塩化アルキルよりなる群から選ばれる1種以上を、0.5〜10重量部と、b)炭化水素を0〜6重量部と、を含有するものが好ましい。
【0045】
エーテルとしては、前述されたエーテル類が挙げられるが、これらのうち、ジメチルエーテルが、押出発泡の際の押出圧力が低減され、安定して押出発泡体が製造されるので好ましい。エーテルの使用量としては、熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、より好ましくは1.5〜6重量部であり、さらに好ましくは3〜5重量部である。エーテルの使用量が上記範囲内であれば、樹脂組成物へのガス分散性がよく、発泡性がよい。
【0046】
塩化アルキルとしては、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化イソプロピルが挙げられる。これらのうち、塩化メチル、塩化エチルが、押出発泡の際の押出圧力が低減され、安定して押出発泡体が製造されるので好ましい。塩化アルキルの使用量としては、熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、より好ましくは1.5〜6重量部であり、さらに好ましくは3〜5重量部である。塩化アルキルの使用量が上記範囲内であれば、樹脂組成物へのガス分散性がよく、発泡性がよい。
【0047】
炭化水素としては、前述された炭化水素が挙げられるが、沸点が低すぎると、押出発泡の際に樹脂組成物における蒸気圧が高くなり、高圧の樹脂組成物を制御することになるので、製造上問題となり、沸点が高すぎると、発泡剤が断熱材4の気泡中に液状で残留し、断熱材4の耐熱性を低下させる傾向にある。したがって、炭化水素としては、−50〜85℃の範囲に沸点を有する飽和炭化水素が好ましい。このような飽和炭化水素としては、例えば、プロパン、シクロプロパン、n−ブタン、i−ブタン、シクロブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、1,2−ジメチルブタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。これらのうち、製造安定性の点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンが好ましい。炭化水素の使用量としては、0〜6重量部が好ましく、より好ましくは2〜5重量部である。炭化水素の使用量が上記範囲内であれば、発泡性、成形性が良好な発泡体が得られやすい傾向にある。
【0048】
なお、本発明においては、樹脂組成物に難燃剤を添加することが好ましい。難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤から選ばれる少なくとも1種が用いられることがさらに好ましい。また、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物を上記難燃剤と共存させてもよい。
【0049】
また、本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、例えば、シリカ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、帯電防止剤、着色剤などの添加物を用いてもよい。
【0050】
また、本発明においては、必要に応じて、安定剤を用いてもよい。本発明に用いられる安定剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤などが挙げられる。
【0051】
断熱材4は、上記樹脂組成物を用いて、公知の押出発泡法により得られる。例えば、上記熱可塑性樹脂混合物を公知の押出機に供給して高温高圧下で加熱溶融してゲル状にし、押出機内に発泡剤を圧入して混練し、押出発泡に適した樹脂温度まで冷却し、高圧領域からスリットダイなどのダイを通して低圧領域に押出発泡して、板状の断熱材4を得る。押出発泡の条件として、スリットダイにおける圧力は、3MPa以上であることが好ましく、より好ましくは4MPa以上である。発泡剤が気化しないように、また、樹脂組成物に十分溶解するように押出系内圧力を高圧に保持することは勿論である。スリットダイにおける圧力が上記範囲外であると、ガスの吹出し、ボイドの発生、押出系内の圧力変動による押出発泡体の断面プロファイルの変動が生じる傾向にある。
【0052】
熱可塑性樹脂混合物に難燃剤などの添加剤を添加する手順として、例えば、熱可塑性樹脂混合物に対して難燃剤などを添加して混合した後、押出機に供給して加熱溶融し、さらに発泡剤を添加して混合する手順が挙げられるが、各種添加剤を熱可塑性樹脂混合物に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
【0053】
熱可塑性樹脂混合物の加熱温度は、そのガラス転移温度または融点以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりの樹脂組成物の押出量や押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、熱可塑性樹脂混合物と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
【0054】
樹脂組成物の加熱溶融手段としては、例えばスクリュー型の押出機などが挙げられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低剪断タイプのものとすることが好ましい。
【0055】
押出発泡法は、例えば、押出成形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ圧力開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着または接して設置された成形金型、および該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断熱材4に成形する方法が用いられる。成形金型の流動面形状調整および金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体表面性、発泡体品質が得られる。
【0056】
断熱材4の気泡構造として、均一気泡構造や大小気泡が混在した複合気泡構造が挙げられる。気泡の平均径は、主として0.05〜2.0mmであることが好ましい。気泡径は、例えば、押出発泡体の断面の一部をサンプリングし、それを走査型電子顕微鏡にて拡大撮影して得られた写真から、平均気泡径をASTM D−3576に準じて測定することができる。気泡径は、必ずしもすべてが上記範囲内である必要はなく、少なくとも気泡径の平均値が上記範囲内であればよい。気泡径が上記範囲よりも小さいと、断熱材4の成形性が悪くなって、安定した製造が困難になる傾向にある。気泡径が上記範囲よりも大きいと、断熱材4表面の外観が悪化する傾向にある。
【0057】
断熱材4の発泡体密度は、20〜100kg/mであることが好ましい。発泡体密度が上記範囲内にあれば、平面圧縮強度に代表される面圧縮強度が発現される傾向にある。
【0058】
なお、断熱材4の製造方法としては、押出発泡法に限定されず、例えば、予備発泡された発泡性ビーズを用いて成形金型内にて発泡成形を行う方法など、公知の他の方法を用いてもよい。
【0059】
[ゴム製シート5]
断熱材4には、接着剤3を介在させてゴム製シート5が積層される。ゴム製シート5は、主に防水性能を確保する目的で用いられるものであり、断熱防水構造1において表皮として露出される。ゴム製シート5は、例えば、厚みが0.5〜3mm、幅が1000〜1500mmの帯状のものが断熱材4上に隙間無く敷き詰められて、接着剤3により接着固定される。ゴム製シート5の継ぎ目は重ねられ、接着剤3で接着固定され、必要に応じて、テープなどで目張りされる。ゴム製シート5は、合成ゴムからなる加硫ゴムシートであり、具体的には、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンなどに加硫材を添加してシート状に成形したものである。
【0060】
[仕上げ塗料6]
ゴム製シート5の表面には、仕上げ塗料6が塗布される。仕上げ塗料6は、構造物の外観の意匠に合わせて用いられるものである。構造物の外観から、ゴム製シート5の素材の色や質感が許容される場合、もしくはゴム製シート5の表面がカラーゴム層である場合、仕上げ塗料6は省略されてもよい。なお、本発明において断熱防水構造の表皮とは、仕上げ塗料6のようにゴム製シート5に塗布されるものを含まない概念である。したがって、本断熱防水構造1における表皮は、ゴム製シート5により構成されることになる。
【0061】
[断熱防水構造1の施工方法]
以下に、断熱防水構造1の施工方法(断熱防水工法)を説明する。構造物に固定された金属製屋根下地材2のデッキ台形山部位(上側のフランジ部分)に接着剤3を塗布し、断熱材4を敷き詰める。断熱材4は、金属製屋根下地材2の広さに応じて複数枚を用い、隣接する断熱材4同士を密着させて並べる。断熱材4は、接着剤3が固化する前に載置され、金属製屋根下地材2に接着固定される。金属製屋根下地材2が広範囲である場合には、金属製屋根下地材2の一部分である所定範囲に接着剤3を塗布し、断熱材4を載置する作業を繰り返し行う。なお、断熱材4同士の継目部位は、接着剤3が塗布されているデッキ台形山部位(上側のフランジ部分)にて密着させて並べることが好ましい。この工程が、本発明に係る断熱防水工法の第1工程に相当する。
【0062】
続いて、断熱材4上に、接着剤3を塗布して、ゴム製シート5が敷き詰められる。ゴム製シート5は、金属製屋根下地材2の広さに応じて複数枚を用いる。例えば、一定幅の帯状のゴム製シート5を用いる場合には、隣接するゴム製シート5を一部重ね合わせて隙間なく敷き詰める。また、ゴム製シート5の継ぎ目は接着剤3で接着固定すると共に、必要に応じて、テープ等を張り付けて水密性を確保する。これにより、ゴム製シート5が断熱材4に接着固定される。金属製屋根下地材2が広範囲である場合には、複数枚の断熱材4が敷き詰められた面の一部分である所定範囲に接着剤3を塗布して、ゴム製シート5を敷く作業を繰り返し行う。この工程が本発明に係る断熱防水工法の第2工程に相当する。
【0063】
なお、前述された第1工程において使用される接着剤3と第2工程において使用される接着剤3とは、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0064】
このようにして、断熱層および防水層からなる断熱防水構造1が施工される。断熱防水構造1においては、断熱材4が断熱層として機能し、ゴム製シート5が防水層として機能する。断熱材4は、従来汎用されている硬質ポリウレタンフォーム、イソシアヌレートフォーム、フェノールフォームと比較して、吸水に伴う性能(耐熱性、断熱性)低下を引き起こすことの無い、より環境適合性の高いものである。またポリスチレンフォームと比較して、耐熱性の優れたものである。
【0065】
なお、上記断熱防水構造1は、本発明に係る断熱防水構造の一例であり、例えば、金属製屋根下地材2と接着剤3の間に、プライマーを塗布し、金属製屋根下地材2と断熱材4との接着強度を高めたり、また、防水層として、ゴム製シート5が複数枚積層したり、断熱材4の下側にシートなどを敷いたりしてもよい。また、断熱防水構造1として、断熱材4に積層されてなるゴム製シート5が表皮として露出される工法を説示したが、本発明に係る断熱防水構造は、ゴム製シート5上にコンクリート板や合成樹脂板が積層される工法に適用されてもよい。さらに、断熱防水構造1は、金属製屋根下地材2と断熱材4、およびゴム製シート5の固定に、必要に応じて、ビス等の固定金具を併用してもよい。
【実施例】
【0066】
以下、上記断熱材4についての実施例について、説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。また、以下の実施例においては、特に断られない限り、「%」は「重量%」を表すものとする。
【0067】
以下に示す実施例1〜9、比較例1〜2で得られた各断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を下記の方法に従って調べた。また、各断熱材を用いてゴム製シートとの積層構造を作製して簡易施工試験を行った。
【0068】
(1)発泡体密度(kg/m
発泡体密度は、次の式に基づいて求め、単位をkg/mに換算して示した。
発泡体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
【0069】
(2)平均セル径(mm)
断熱材を幅方向(押出方向と直交する水平方向)に沿って垂直(厚さ方向)に切断した断面、および押出方向(幅方向と直交する水平方向)に沿って垂直(厚さ方向)に切断した断面においてサンプリングし、そのサンプルを走査型電子顕微鏡にて50〜100倍に拡大して写真撮影した。得られた写真から平均セル径をASTM D−3576に準じて測定し、各気泡において、厚み方向のセル径(HD)と幅方向のセル径(TD)、押出方向のセル径(MD)とを測定して、各方向のセル径の積を3乗根した値を以下の式より算出した。
平均セル径=(HD×TD×MD)1/3
【0070】
(3)80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性(断熱材の体積変化率)
断熱材を温度23℃、湿度55%の恒温室にて10日間状態調整した後、厚み25mm×幅100mm×長さ300mmのサンプルを切り出して、80±2℃、85±2℃、90±2℃にそれぞれ設定した熱風乾燥機でそれぞれ24時間乾燥し、各温度における加熱前と加熱後の体積変化率を算出した。求められた体積変化率を以下の基準で判断した。
◎:体積変化率が1%以下である。
○:体積変化率が1%を超え、3%以下である。
△:体積変化率が3%を超え、5%以下である。
×:体積変化率が5%を超える。
【0071】
(4)80℃耐湿性
断熱材を温度23℃、湿度55%の恒温室にて10日間状態調整した後、厚み25mm×幅100mm×長さ300mmのサンプルを切り出して、温度80±2℃、湿度90±2%に設定した恒温恒湿機で60日間加熱した後、断熱材の厚み方向の反りを測定した。測定された反りを以下の基準で判断した。
◎:反りが、2mm以内である。
○:反りが、2mm超、4mm以下である。
△:反りが、4mm超、6mm以下である。
×:反りが、6mmを超える。
【0072】
(5)簡易施工試験
断熱材を成形後、温度23℃、湿度55%の恒温室にて10日間状態調整した後、厚み25mm×幅100mm×長さ600mmの断熱材を6本切り出した。この6本の各断熱材を、デッキプレート(ピッチ200mm、デッキ台形山部(上側のフランジ部分)寸法比率0.56、デッキ高さ76mm)のデッキ台形山部位(上側のフランジ部分)全面に、アスファルトエマルジョン系接着剤(三ツ星ベルト株式会社製)を0.3kg/m塗布し、乾燥させた後、上記断熱材6本を並べ、接着固定させた。次に、断熱材の上の全面に、下記接着剤を0.25kg/mを塗布し、乾燥させた後、ゴム製シート(三ツ星ベルト株式会社製、商品名:ネオルーフィングE)を接着させた。接着剤が完全に固化した後、断熱材の耐接着性、試験体の加熱試験を、それぞれ評価した。
〔使用接着剤〕
接着剤(1)/水系接着剤(三ツ星ベルト株式会社、商品名:ネオボンドAQ)
接着剤(2)/溶剤系接着剤(a)(トルエン/6%、工業用ガソリン/50〜60%、イソプロピルアルコール/0〜10%、天然ゴム等/20〜35%)
接着剤(3)/溶剤系接着剤(b)(三ツ星ベルト株式会社、商品名:ネオボンドR、トルエン68%)
(5−a)耐接着剤性
断熱材とゴム製シートとの積層構造体を厚み方向に切断して断面構造を観察し、接着剤による断熱材の表面の厚み方向変形を以下の基準で判断した。
○:断熱材の表面の変形が2mm以内である。
△:断熱材の表面の変形が2mm超、5mm以内である。
×:断熱材の表面の変形が5mmを超える。
(5−b)加熱試験
上記接着剤(2)/溶剤系接着剤(a)を用いた試験体を、プレス機を用いた下記条件にて、ゴム製シートの表面温度を80℃として5時間加熱した後の試験体の状態を、以下の基準にて判断した。
○:断熱材の反り・膨れがない。
×:断熱材の反り・膨れがある。
[プレス機を用いた測定条件]
天板および底板からなるプレス機[山本鉄工所(株)製、型番:CTD2−75、幅1000mm×長さ2000mm]の底板面上の中央に、試験体を置いた。下面にプレート状電気ヒーター(中野製作所・井上電機商事(株)製、熱伝体プレート温調板)を有する天板の位置(高さ)を、ゴム製シート表面から該電気ヒーターまでの高さが50cmとなるように、調整した。その後、ゴム製シートの表面温度が80℃となるよう、電気ヒーターを加熱した。
【0073】
(実施例1)
共重合体(A)としてメタクリル酸変性ポリスチレン[PSJ株式会社製、商品名:G9001、メタクリル酸変性率=7%]を用い、ポリスチレン樹脂として[PSJ株式会社製、商品名:G9401]を用い、共重合体(A)25重量部およびポリスチレン樹脂75重量部からなる熱可塑性樹脂混合物を得た。熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、造核剤としてタルク[林化成株式会社製、商品名:タルカンパウダー]0.3重量部、添加剤としてステアリン酸カルシウム0.2重量部をドライブレンドし、得られた樹脂組成物を二段連結型押出機へ供給した。一段目押出機に供給した樹脂組成物を約230℃に加熱して溶融混練した後、発泡剤として、ジメチルエーテル[三井化学株式会社]2.0重量部、イソブタン[三井化学株式会社]4.0重量部を一段目押出機の先端付近で樹脂組成物に圧入した。その後、一段目押出機に連結された二段目押出機において樹脂組成物を混練しながら樹脂温度を約140℃付近まで冷却し、二段目押出機の先端に設けられたスリットダイより大気中へ押し出した。スリットダイにおける吐出量は50kg/時間、樹脂温度は130℃、スリット圧力は6.3MPaとした。吐出された樹脂を、成形金型および成形ロールにより、厚さ約45mm×幅約140mmの断面プロファイルであって、表面にスキン層を有する断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
表1に示されるように、実施例1における断熱材は、発泡体密度が32kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「○」、90℃耐熱性は「×」であり、「80℃耐湿性」は「△」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例2)
共重合体(A)50重量部およびポリスチレン樹脂50重量部を混合して熱可塑性樹脂混合物とし、スリットダイにおける吐出量を52kg/時間、スリット圧力を6.0MPaとした以外は、実施例1と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
表1に示されるように、実施例2における断熱材は、発泡体密度が32kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「△」であり、「80℃耐湿性」は「○」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0078】
(実施例3)
発泡剤として、ジメチルエーテル4.0重量部、イソブタン3.5重量部を用い、樹脂温度は132℃、スリット圧力を5.8MPaとした以外は、実施例2と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0079】
表1に示されるように、実施例3における断熱材は、発泡体密度が33kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「△」であり、「80℃耐湿性」は「○」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0080】
(実施例4)
樹脂組成を共重合体(A)100重量部とし、スリットダイにおける吐出量を52kg/時間、樹脂温度を135℃、スリット圧力を6.2MPaとした以外は、実施例1と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0081】
表1に示されるように、実施例4における断熱材は、発泡体密度が35kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「○」であり、「80℃耐湿性」は「○」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0082】
(実施例5)
共重合体(B)として、東洋スチレン株式会社製、商品名:トーヨーASを用い、共重合体(B)100重量部に対して、造核剤としてタルク[林化成株式会社製、商品名:タルカンパウダー]0.1重量部、添加剤としてステアリン酸カルシウム0.2重量部をドライブレンドし、得られた樹脂組成物を二段連結型押出機へ供給した。一段目押出機に供給した樹脂組成物を約230℃に加熱して溶融混練した後、発泡剤として、ジメチルエーテル3.0重量部、イソブタン3.0重量部を一段目押出機の先端付近で樹脂組成物に圧入した。その後、一段目押出機に連結された二段目押出機において樹脂組成物を混練しながら樹脂温度を約140℃付近まで冷却し、二段目押出機の先端に設けられたスリットダイより大気中へ押し出した。スリットダイにおける吐出量は45kg/時間、樹脂温度は132℃、スリット圧力は6.2MPaとした。吐出された樹脂を、成形金型および成形ロールにより、厚さ約45mm×幅約140mmの断面プロファイルであって、表面にスキン層を有する断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
表1に示されるように、実施例5における断熱材は、発泡体密度が40kg/m、平均セル径が0.2mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「△」であり、「80℃耐湿性」は「○」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0084】
(実施例6)
共重合体(B)として、東洋スチレン株式会社製、商品名:トーヨーASを用い、共重合体(A1)として、電気化学工業株式会社製、商品名:デンカIPを用い、共重合体(B)85重量部および共重合体(A1)15重量部を混合して、熱可塑性樹脂混合物を得た。熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して、造核剤としてタルク0.3重量部、添加剤としてステアリン酸カルシウム0.2重量部をドライブレンドし、得られた樹脂組成物を二段連結型押出機へ供給した。一段目押出機に供給した樹脂組成物を約230℃に加熱して溶融混練した後、発泡剤としてジメチルエーテル5.0重量部を一段目押出機の先端付近で樹脂組成物に圧入した。その後、一段目押出機に連結された二段目押出機において樹脂組成物を混練しながら樹脂温度を約150℃付近まで冷却し、二段目押出機の先端に設けられたスリットダイより大気中へ押し出した。スリットダイにおける吐出量は45kg/時間、樹脂温度は140℃、スリット圧力は5.7MPaとした。吐出された樹脂を、成形金型および成形ロールにより、厚さ約45mm×幅約140mmの断面プロファイルであって、表面にスキン層を有する断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
表1に示されるように、実施例6における断熱材は、発泡体密度が33kg/m、平均セル径が0.4mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「◎」であり、「80℃耐湿性」は「◎」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「△」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0086】
(実施例7)
共重合体(B)70重量部と共重合体(A1)30重量部とを混合して熱可塑性樹脂混合物とし、一段目押出機に供給した樹脂組成物を約240℃に加熱して溶融混合し、スリットダイにおける樹脂温度は158℃、スリット圧力を5.9MPaとした以外は、実施例6と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
表1に示されるように、実施例7における断熱材は、発泡体密度が34kg/m、平均セル径が0.4mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「◎」であり、「80℃耐湿性」は「◎」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「○」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0088】
(実施例8)
造核剤としてタルク0.1重量部、発泡剤として、ジメチルエーテル3.0重量部、イソブタン3.0重量部を用い、スリットダイにおける吐出量は50kg/時間、樹脂温度は155℃、スリット圧力を6.3MPaとした以外は、実施例7と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
表1に示されるように、実施例8における断熱材は、発泡体密度が45kg/m、平均セル径が0.2mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「◎」であり、「80℃耐湿性」は「◎」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「○」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0090】
(実施例9)
共重合体(B)40重量部および共重合体(A1)60重量部を混合して熱可塑性樹脂混合物とし、一段目押出機に供給した樹脂組成物を約250℃に加熱して溶融混合し、スリットダイにおける吐出量を43kg/時間、樹脂温度は185℃、スリット圧力を6.1MPaとした以外は、実施例6と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
表1に示されるように、実施例9における断熱材は、発泡体密度が38kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「◎」であり、「80℃耐湿性」は「◎」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「○」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【0092】
(比較例1)
ポリスチレン樹脂[PSジャパン株式会社、商品名:G9401]を用い、スリットダイにおける樹脂温度を123℃、スリット圧力を5.5MPaとしたほかは、実施例1と同様にして断熱材を得た。得られた断熱材について、発泡体密度、平均セル径、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、得られた断熱材を用いて簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0093】
表1に示されるように、比較例1における断熱材は、発泡体密度が35kg/m、平均セル径が0.3mmであった。また、80℃耐熱性は「△」、85℃耐熱性は「×」、90℃耐熱性は「×」であり、「80℃耐湿性」は「×」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「△」、接着剤(3)で「×」であり、加熱試験における試験体の状態は「×」であった。
【0094】
(比較例2)
市販の硬質ポリウレタンフォーム(東洋ゴム株式会社、商品名:ソフランULボード、面材あり)を用いて、80℃耐熱性、85℃耐熱性、90℃耐熱性、80℃耐湿性を前述された方法に従って評価した。また、簡易施工試験を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
表1に示されるように、比較例2では、80℃耐熱性は「◎」、85℃耐熱性は「◎」、90℃耐熱性は「○」であり、「80℃耐湿性」は「×」であった。簡易施工試験における耐接着剤性は接着剤(1)で「○」、接着剤(2)で「○」、接着剤(3)で「○」であり、加熱試験における試験体の状態は「○」であった。
【符号の説明】
【0096】
1・・・断熱防水構造
2・・・金属製屋根下地材
3・・・接着剤
4・・・断熱材
5・・・ゴム製シート
6・・・仕上げ塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製屋根下地材の上面に、少なくとも断熱材およびゴム製シートが積層されてなる断熱防水構造であって、
上記断熱材は、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)を含有する樹脂組成物を発泡させてなるものであり、
且つ、上記金属製屋根下地材、上記断熱材および上記ゴム製シートが、接着剤を介して接着固定されてなる断熱防水構造。
【請求項2】
上記ゴム製シートが、表皮として露出する請求項1に記載の断熱防水構造。
【請求項3】
上記共重合体(A)および上記共重合体(B)を構成する芳香族ビニル単位が、スチレン単位である請求項1または2に記載の断熱防水構造。
【請求項4】
上記共重合体(A)を構成する脂肪族カルボン酸誘導体単位が、メタクリル酸単位または無水マレイン酸単位である請求項1から3のいずれかに記載の断熱防水構造。
【請求項5】
上記共重合体(B)を構成するシアン化ビニル単位が、アクリロニトリル単位である請求項1から4のいずれかに記載の断熱防水構造。
【請求項6】
上記共重合体(A)が、芳香族ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物単位およびN−アルキル置換マレイミド単位からなる請求項1から5のいずれかに記載の断熱防水構造。
【請求項7】
上記共重合体(A)を構成する不飽和ジカルボン酸無水物単位が、無水マレイン酸単位である請求項6に記載の断熱防水構造。
【請求項8】
上記共重合体(A)を構成するN−アルキル置換マレイミド単位が、N−フェニルマレイミド単位である請求項6に記載の断熱防水構造。
【請求項9】
金属製屋根下地材の上面に、少なくとも芳香族ビニル単位と脂肪族カルボン酸誘導体単位とを含む共重合体(A)、および/または、少なくとも芳香族ビニル単位とシアン化ビニル単位とを含む共重合体(B)とを含有する樹脂組成物を発泡させてなる断熱材を、接着剤を介して接着固定する第1工程と、上記断熱材の上面に、接着剤を介してゴム製シートを接着固定して積層する第2工程と、を含む断熱防水工法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−122370(P2011−122370A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281355(P2009−281355)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)