説明

断熱障子戸およびその製造方法

【課題】 断熱効果が高く、見栄えが良い断熱障子戸の提供。
【解決手段】 断熱障子戸Aは、中央に中桟10を入れて上下に区画した障子枠と、障子枠の一方面側14の上区画および下区画に固定される第1組子2と、表裏両側に障子紙53、54が貼着され、障子枠の中央の上区画および下区画に嵌め込まれる第2組子3と、障子枠の他方面側17の上区画および下区画に固定される第3組子4と、第1組子2および第3組子4の格子面に貼着される障子紙51、52とを備える。この断熱障子戸Aは、三層の空気層61〜63を有するので、熱が遮断され断熱効果に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性に優れた断熱障子戸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
障子戸は、木造家屋の部屋間を仕切るのに好適である。
特許文献1には、外周枠を削り込んでのりしろを作ることにより、障子枠の、室外側平面と室内側平面とに障子紙を二重張りできる様にした障子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−198107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、下記の課題を有する。
特許文献1の二重張り障子は、一重張りの障子に比べて断熱効果が高いが、断熱効果が未だ不十分である。
外周枠を削り込んでのりしろを作る必要が有り手間がかかる。
本発明の目的は、断熱効果が高く、見栄えが良い断熱障子戸およびその製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(請求項1について)
断熱障子戸は、以下の様にして製造する。
方形状の障子枠の一方面側に第1組子を固定する(第1組子固定工程)。
表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を障子枠の中央に嵌め込む(第2組子嵌込工程)。
第3組子を障子枠の他方面側に固定する(第3組子固定工程)。
第1、第3組子の露出する各格子面に障子紙を貼着する(障子紙貼着工程)。
【0006】
請求項1の断熱障子戸の製造方法は、一方面側に第1組子を固定した障子枠内に、表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を嵌め込み、他方面側に第3組子を固定して第2組子を間に挟み込んでいるので、第2組子の障子紙の一部を破ることなく第3組子を障子枠に固定することができる。
【0007】
請求項1の断熱障子戸の製造方法により製造した断熱障子戸は、表裏両面に貼着した障子紙で囲まれた第2組子内の空気層と、露出する格子面に貼着した第1組子の障子紙と表側の格子面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層と、露出する格子面に貼着した第3組子の障子紙と裏側の格子面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層とにより熱が遮断され断熱効果に優れる。
【0008】
(請求項2について)
断熱障子戸は、以下の様にして製造する。
上桟、下桟、および竪桟を長方形に組み付け中央に中桟を入れて上下に区画した障子枠の一方面側の上下の区画に、横子と竪子とを格子状に組み付けた第1組子を固定する(第1組子固定工程)。
【0009】
横子と竪子とを格子状に組み付けた格子体の表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を障子枠中央の上下の区画に嵌め込む(第2組子嵌込工程)。
障子枠の他方面側の上下の区画に、横子と竪子とを格子状に組み付けた第3組子を固定する(第3組子固定工程)。
【0010】
第1組子の露出する上下の区画の格子面および第3組子の露出する上下の区画の格子面に障子紙を貼着する(障子紙貼着工程)。
【0011】
請求項2の断熱障子戸の製造方法は、障子枠の一方面側(上下の区画)に第1組子を固定し、格子体の表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を障子枠内に嵌め込み(上下の区画)、障子枠の他方面側(上下の区画)に第3組子を固定する方法であるので、第3組子を固定する際に第2組子の障子紙の一部を破る必要がない。
【0012】
障子枠は、上桟、下桟、および竪桟を長方形に組み付け、中央に中桟を入れて上下に区画しているので、第1、第2、第3組子が細長形状にならない。このため、障子枠内へ第2組子を嵌め込んだり、第1、第3組子を障子枠内へ固定する際に応力が加わっても変形が少なく、破損し難い。
また、第2組子を障子枠内へ嵌め込む際に変形が少ないので、貼着した障子紙の破れを防止できる。さらに、第1、第3組子を障子枠内へ固定する際に変形が少ないので、障子紙を貼着し易い。
【0013】
請求項2の断熱障子戸の製造方法により製造した断熱障子戸は、格子体の表裏両側に障子紙が貼着され、障子枠の上下の区画に嵌め込まれた第2組子内の空気層と、障子枠の一方面側の上下の区画に固定した第1組子の障子紙と格子体の表面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層と、障子枠の他方面側の上下の区画に固定した第3組子の障子紙と格子体の裏面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層(合計三層)とを有するので、熱が遮断され断熱効果に優れる。
【0014】
(請求項3について)
断熱障子戸は、上桟、下桟、および竪桟を長方形に組み付け、中央に中桟を入れて上下に区画した障子枠と、横子と竪子とを格子状に組み付けてなり、障子枠の一方面側の上下の区画に固定される第1組子と、横子と竪子とを格子状に組み付けた格子体の表裏両側に障子紙が貼着され、障子枠中央の上下の区画に嵌め込まれる第2組子と、横子と竪子とを格子状に組み付けてなり、障子枠の他方面側の上下の区画に固定される第3組子と、第1組子の露出する上下の区画の格子面および第3組子の露出する上下の区画の格子面に貼着される障子紙とを備える。
【0015】
請求項3の断熱障子戸は、格子体の表裏両側に障子紙が貼着され、障子枠中央の上下の区画に嵌め込まれた第2組子内の空気層と、障子枠の一方面側の上下の区画に固定した第1組子の障子紙と格子体の表面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層と、障子枠の他方面側の上下の区画に固定した第3組子の障子紙と格子体の裏面に貼着した第2組子の障子紙との間の空気層(合計三層)とを有するので、熱が遮断され断熱効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の実施例1に係る断熱障子戸の製造工程(第1組子固定工程)を示す説明図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明の実施例1に係る断熱障子戸の製造工程(第2組子嵌込工程)を示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の実施例1に係る断熱障子戸の製造工程(第3組子固定工程)を示す説明図である。
【図4】(a)は第1組子の拡大図、(b)は第2組子の説明図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の実施例1に係る断熱障子戸の製造工程(障子紙貼着工程)を示す説明図である。
【図6】(a)は図5(d)のb−b断面図、(b)は図5(d)のa−a断面図である。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1(請求項1、2、3に対応)に係る断熱障子戸Aを図1〜図6に基づいて説明する。
断熱障子戸Aは、中桟10で上下に区画した障子枠1と、障子枠1の一方面側14の上下に固定される第1組子2と、障子枠1の中央の上下に嵌め込まれる第2組子3と、障子枠1の他方面側17の上下に固定される第3組子4と、第1組子2に貼着される障子紙51と、第3組子4に貼着される障子紙52と、第2組子3に貼着される障子紙53、54とを備える{図5の(d)、図6参照}。
【0018】
障子枠1は、上桟11、下桟12、および竪桟13を長方形に組み付けてなり、中央に中桟10を入れて形成されている{図1の(a)参照}。
第1組子2は、横子21と竪子22とを格子状に組み付けてなり、障子枠1の一方面側14の上区画15および下区画16に固定されている{図1の(a)、図4の(a)参照}。また、障子紙51は、第1組子2の格子面に貼着されている。
【0019】
第2組子3は、横子31と竪子32とを格子状に組み付けた格子体30の表裏両側に障子紙53、54を貼着してなり、障子枠1の中央の上区画15および下区画16に嵌め込まれている。
【0020】
第3組子4は、横子41と竪子42とを格子状に組み付けてなり、障子枠1の他方面側17の上区画15および下区画16に固定されている。また、障子紙52は、第3組子4の格子面に貼着されている{図3の(a)、図6参照}。
【0021】
つぎに、断熱障子戸Aは、以下の工程を経て製造される。
(第1組子固定工程)
上桟11、下桟12、および竪桟13を長方形に組み付け、中央に中桟10を入れて上下に区画した障子枠1を製造する{図1の(a)参照}。
【0022】
障子枠1の一方面側14の上区画15および下区画16に、横子21と竪子22とを格子状に組み付けた第1組子2を嵌め込み、複数のビスsを組子内側から捩じ込んで桟へ固定する(図1参照)。
なお、第1組子2の障子枠1への固定は、障子枠1を作業台に載置した状態、一方面側14を前側にして障子枠1を立設した状態、または、他方面側17を前側にして障子枠1を立設した状態で行う。
【0023】
(第2組子嵌込工程)
横子31と竪子32とを格子状に組み付けた格子体30の表裏両側に障子紙53、54を貼着した第2組子3を製造しておく{図4の(b)参照}。
この第2組子3を、一点鎖線で示す様に、障子枠1の中央の上区画15および下区画16に嵌め込む(図2参照)。
【0024】
(第3組子固定工程)
障子枠1の他方面側17の上区画15および下区画16に、横子41と竪子42とを格子状に組み付けた第3組子4を嵌め込み、複数のビスsを組子内側から捩じ込んで桟へ固定する(図3参照)。
【0025】
(障子紙貼着工程)
障子枠1の他方面側17の上区画15および下区画16に固定されている第3組子4の格子面に障子紙52を貼着し、障子枠1を反転させて、障子枠1の一方面側14の上区画15および下区画16に固定されている第1組子2の格子面に障子紙51を貼着する(図5参照)。
【0026】
実施例1の断熱障子戸Aは、以下の利点を有する。
断熱障子戸Aは、図6の(a)に示す様に、三層の空気層(障子紙52−障子紙53による空気層61、障子紙53−障子紙54による空気層62、障子紙54−障子紙51による空気層63)を有するので、熱が遮断され断熱効果に優れる。
【0027】
断熱障子戸Aは、障子枠1内に、第3組子4、第2組子3、第1組子2を積層状態に配設しているので、障子枠1が著しく幅広にならない。
このため、断熱障子戸Aの取り付けに従来の障子レールが使え、見栄えが良い。
【0028】
断熱障子戸Aの製造方法は、障子枠1の一方面側14(上区画15、下区画16)に第1組子2を固定し、格子体30の表裏両側に障子紙53、54を貼着した第2組子3を障子枠1内に嵌め込み(上区画15、下区画16)、障子枠1の他方面側17(上区画15、下区画16)に第3組子4を固定する方法であるので、第3組子4を固定する際に第2組子3の障子紙53、54の一部を破る必要がない。
【0029】
断熱障子戸Aの障子枠1は、上桟11、下桟12、および竪桟13を長方形に組み付け、中央に中桟10を入れて上下に区画しているので、第1組子2、第2組子3、第3組子4が細長形状にならない。このため、障子枠1内へ第2組子3を嵌め込んだり、第1組子2、第3組子4を障子枠1内へ固定する際に応力が加わっても変形が少なく、破損し難い。
また、第2組子3を障子枠1内へ嵌め込む際に変形が少ないので、貼着した障子紙53、54の破れを防止できる。さらに、第1組子2、第3組子4を障子枠1内へ固定する際に変形が少ないので、障子紙51、52を貼着し易い。
【0030】
断熱障子戸Aの製造方法は、障子紙51、52を貼る前に、複数のビスsを組子内側から捩じ込んで桟へ第1組子2および第3組子4を固定しているので、強固に障子枠1に固定されるとともにビスsが障子紙51、52で隠れ、完成後の見栄えが良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この断熱障子戸Aは、三層の空気層61〜63を有するので断熱性に優れる。
【符号の説明】
【0032】
A 断熱障子戸
1 障子枠
2 第1組子
3 第2組子
4 第3組子
10 中桟
11 上桟
12 下桟
13 竪桟
14 一方面側
15 上区画
16 下区画
17 他方面側
21、31、41 横子
21、32、42 竪子
30 格子体
51、52、53、54 障子紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の障子枠の一方面側に第1組子を固定する第1組子固定工程と、
表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を前記障子枠の中央に嵌め込む第2組子嵌込工程と、
第3組子を前記障子枠の他方面側に固定する第3組子固定工程と、
前記第1、第3組子の露出する各格子面に障子紙を貼着する障子紙貼着工程とからなる断熱障子戸の製造方法。
【請求項2】
上桟、下桟、および竪桟を長方形に組み付け中央に中桟を入れて上下に区画した障子枠の一方面側の上下の区画に、横子と竪子とを格子状に組み付けた第1組子を固定する第1組子固定工程と、
横子と竪子とを格子状に組み付けた格子体の表裏両側に障子紙を貼着した第2組子を障子枠中央の上下の区画に嵌め込む第2組子嵌込工程と、
前記障子枠の他方面側の上下の区画に、横子と竪子とを格子状に組み付けた第3組子を固定する第3組子固定工程と、
前記第1組子の露出する上下の区画の格子面および前記第3組子の露出する上下の区画の格子面に障子紙を貼着する障子紙貼着工程とからなる断熱障子戸の製造方法。
【請求項3】
上桟、下桟、および竪桟を長方形に組み付け、中央に中桟を入れて上下に区画した障子枠と、
横子と竪子とを格子状に組み付けてなり、前記障子枠の一方面側の上下の区画に固定される第1組子と、
横子と竪子とを格子状に組み付けた格子体の表裏両側に障子紙が貼着され、障子枠中央の上下の区画に嵌め込まれる第2組子と、
横子と竪子とを格子状に組み付けてなり、前記障子枠の他方面側の上下の区画に固定される第3組子と、
前記第1組子の露出する上下の区画の格子面および前記第3組子の露出する上下の区画の格子面に貼着される障子紙とを備える断熱障子戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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