説明

断面加工方法および装置

【課題】断面加工方法および装置において、断面加工の加工効率を向上することができるようにする。
【解決手段】観察目標断面2、または観察目標断面2を含む観察領域で、試料1の断面観察を行うために、試料1に対して順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて破断面1cを形成していく断面加工方法であって、観察目標断面2の近傍において破断面1cが形成可能な範囲に、除去加工によって破断可能、かつ破断面1c内で破断形状が識別可能となるマーク部4A、4Bを形成するマーク部形成工程と、このマーク部形成工程で形成されたマーク部4A、4Bを含む範囲で、試料1およびマーク部4A、4Bに対して除去加工を施して、破断面1cを形成する断面形成工程と、この該断面形成工程で形成中または形成後の試料1の断面の観察像を取得する観察像取得工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面加工方法および装置に関する。例えば、半導体チップ内部の欠陥を観察する場合などに、試料に順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて観察用の断面を形成していく断面加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体チップ内部の不良などを観察する場合、集束イオンビームによって試料を破断して観察用の断面を形成して、この断面を電子顕微鏡によって観察することが行われている。このような観察用の断面は、例えば、試料の欠陥の位置を欠陥検査装置などによって特定し、その位置情報に基づいて断面加工が行われる。すなわち、集束イオンビームを試料に照射して、順次除去加工を繰り返し、破断面を欠陥が存在する位置まで移動させる。観察すべき欠陥はきわめて微小であるため、欠陥が存在する位置の近傍では、破断面の移動量も微小とし、例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope, SEM)などで、破断面を観察しながら断面加工を進める必要がある。
また、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)で観察するためのTEM試料を作成する場合も同様である。
このような断面加工を精度よく効率的に行うため、試料にマークを施し、マークの位置を検出しながら、断面加工を進めることが知られている。
このような断面加工方法および装置として、例えば、特許文献1には、TEM試料の作成に先だって、TEM試料の加工領域の外側にTEM試料の中心線である観察線を示す十字状の2つのマークを集束イオンビーム装置で形成し、これらのマーク位置を検出して、加工対象の位置決めや断面加工を行う試料評価・処理観察システムが記載されている。このシステムでは、マークは、集束イオンビームによってTEM試料の観察面と略直交する非加工面上に形成される。
また、特許文献2には、試料の加工面にイオンビームを照射して試料加工を行うとともに、その試料加工部の周辺にマークを形成するようにした試料作製方法および装置において、マークから見てどの方向に試料加工部があるかが分かるようにマークを形成する技術が記載されている。特許文献2に記載の試料作製方法では、TEM試料作製の場合には、加工対象である試料ブロックにおいて、イオンビームを照射する加工面と、TEM試料を観察する方向の表面にそれぞれ形状の異なるマークが形成され、マークが形成された面に対する試料加工部の方向が分かるようになっている。
【特許文献1】特開平10−64473号公報
【特許文献2】特開2005−114578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の断面加工方法および装置には、以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、マークがTEM試料の加工領域の外側の観察線の線上、すなわち、TEM試料の観察面と略直交する非加工面上に形成されるので、破断面の観察と、マーク位置の検出とを同時に行うことができない。また、マークの検出を集束イオンビームを用いて行う場合にも、マークが加工領域から離れているため、加工位置と異なる位置を走査したり、フォーカスをそれぞれの位置に合わせ直したりする必要があるため、断面加工とは別工程となる。
したがって、1つの破断面を断面加工した後に、破断面の観察とマークの検出とを別々に行わなくてはならないため、加工時間が増大してしまうという問題がある。
特許文献2に記載の技術では、特許文献1と同様に加工面に設けられたマークの他にTEM試料を観察する方向にもマークを形成するため、破断面を断面加工した後、破断面の観察と同方向から、マークを観察することができるものの、マークは試料加工部の方向を示すだけなので、加工面に設けられたマークに対する破断面の距離情報を取得することができない。したがって、破断面が目標位置まで進んだかどうかは、加工面側のマークを観察しなければならないため、やはり特許文献1と同様な問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、断面加工の加工効率を向上することができる断面加工方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の断面加工方法は、予め決められた観察目標断面、または該観察目標断面を含む観察領域で、試料の断面観察を行うために、前記試料に対して順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて観察用の断面を形成していく断面加工方法であって、前記観察目標断面の近傍において前記観察用の断面が形成可能な範囲に、前記除去加工によって破断可能、かつ前記観察用の断面内で破断形状が識別可能となるマーク部を形成するマーク部形成工程と、該マーク部形成工程で形成された前記マーク部を含む範囲で、前記試料および前記マーク部に対して除去加工を施して、前記観察用の断面を形成する断面形成工程と、該断面形成工程で形成中または形成後の前記観察用の断面の観察像を取得する観察像取得工程とを備える方法とする。
この発明によれば、まず、マーク部形成工程で、予め決められた観察目標断面の近傍において観察用の断面が形成可能な範囲に、除去加工によって破断可能、かつ観察用の断面内で破断形状が識別可能なマーク部を形成する。次に、断面形成工程では、マーク部形成工程で形成されたマーク部を含む範囲で、試料およびマーク部に対して除去加工を施して、観察用の断面を形成する。そして、観察像形成工程では、断面形成工程で形成中または形成後の観察用の断面の観察像を取得する。
この観察用の断面の観察像には、マーク部の破断形状が識別可能に現れるので、観察用の断面を観察するのみで、断面の破断位置が、マーク部が設けられた位置に到達したことを検知することができる。従って、断面の観察以外に離れた場所にあるマーク部をビームで走査したり、フォーカスをそれぞれの位置に合わせ直したりする必要がない。また、マーク部を、観察目標断面を含む平面から一定の距離または距離範囲だけ離れた位置に設けておくことで、観察目標断面から一定の距離または距離範囲の位置に到達したことを検知することができる。これにより次の断面形成工程での破断位置を適切に設定することができる。
【0006】
また、本発明の断面加工方法では、前記マーク部形成工程では、前記マーク部を、前記断面形成工程で形成される前記観察用の断面の前記破断位置に応じて、前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかが変化する形状に形成することが好ましい。
この場合、マーク部が、断面形成工程で形成される観察用の断面の破断位置に応じて、破断形状および観察用の断面内での破断形状の位置の少なくともいずれかが変化するから、観察像取得工程で取得した、マーク部の破断形状およびその位置の少なくともいずれかの変化によって、破断位置の変化を確かめつつ、断面加工を行うことができる。
【0007】
また、本発明の断面加工方法であって、マーク部を、断面形成工程で形成される観察用の断面の破断位置に応じて、破断形状および観察用の断面内での破断形状の位置の少なくともいずれかが変化する形状に形成する断面加工方法では、前記観察像取得工程で取得された前記観察像から、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかを取得して、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかから、前記観察像に対応する前記観察用の断面の破断位置の情報を取得する破断位置情報取得工程を備えることが好ましい。
この場合、破断位置情報取得工程によって、観察像に対応する前記観察用の断面の破断位置の情報を取得することができる。
【0008】
また、本発明の破断位置情報取得工程を備える断面加工方法では、前記破断位置情報取得工程によって取得された前記観察用の断面の破断位置の情報に応じて、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、次の観察用の断面を形成する場合には、前記観察用の断面の破断位置の情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定する断面加工制御工程を備えることが好ましい。
この場合、断面加工制御工程によって、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、次の観察用の断面を形成する場合には、観察用の断面の破断位置の情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定するので、自動加工に好適な方法となる。
【0009】
本発明の断面加工装置は、予め決められた観察目標断面、または該観察目標断面を含む観察領域で、試料の断面観察を行うために、前記試料に順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて観察用の断面を形成していく断面加工装置であって、前記観察目標断面または該観察目標断面を含む観察領域の近傍において前記観察用の断面が形成可能な位置に、前記除去加工によって破断可能かつ前記観察用の断面内での破断形状が識別可能なマーク部を形成するための制御情報を生成するマーク部形成制御部と、該マーク部形成制御部の制御情報に基づいて形成された前記マーク部を含む範囲で、前記マーク部に除去加工を施して、前記観察用の断面を形成する断面形成制御部と、該断面形成制御部で形成された前記観察用の断面の観察像を取得する観察像取得制御部とを備える構成とする。
この発明によれば、本発明の断面加工方法に用いることができる断面加工装置となっているので、本発明の断面加工方法と同様の作用効果を備える。
【0010】
また、本発明の断面加工装置では、前記観察像取得制御部で取得された前記観察像から、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかを取得して、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかから、前記観察像に対応する前記観察用の断面の破断位置の情報を取得する破断位置情報取得部を備えることが好ましい。
この場合、本発明の破断位置情報取得工程を備える断面加工方法に用いることができる断面加工装置となっているので、本発明の破断位置情報取得工程を備える断面加工方法と同様の作用効果を備える。
【0011】
また、本発明の断面加工装置では、前記破断位置算出部によって取得された前記観察用の断面の破断位置の情報に応じて、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、次の観察用の断面を形成する場合には、前記観察用の断面の破断位置の情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定する断面加工制御ユニットを備えることが好ましい。
この場合、本発明の破断位置情報取得工程を備える断面加工方法に用いることができる断面加工装置となっているので、本発明の破断位置情報取得工程を備える断面加工方法と同様の作用効果を備える。
【0012】
本発明の断面加工装置は、試料を第一の集束ビームによって加工する第一の集束ビーム装置と、該第一の集束ビーム装置の加工位置を第二の集束ビームによって観察する第二の集束ビーム装置を備えた断面加工装置であって、前記試料の表面上の少なくとも2箇所に、断面加工を進めるにつれて破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかが収束する収束部を有するマーク部を、前記収束部が予め決められた観察目標断面の位置あるいはその位置の近傍に来るように形成するための制御情報を生成するマーク形成制御部を有し、前記第一の集束ビーム装置を用いて、前記制御情報に基づきエッチングまたはデポジションにより前記少なくとも2箇所のマーク部を形成した後、該マーク部の各収束部を結ぶ方向と平行方向に前記第一の集束ビームを主走査して前記観察目標断面から離れた位置から前記観察目標断面に近づけながら断面加工すると共に、前記マーク部の加工断面を前記第二の集束ビーム装置で観察し、前記収束部あるいはその近傍に到達した時に断面加工を終える構成とする。
この発明によれば、本発明の断面加工方法に用いることができる断面加工装置となっているので、本発明の断面加工方法と同様の作用効果を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の断面加工方法および装置によれば、観察用の断面の観察像を取得するのみで、破断位置を検知することができるので、断面加工の加工効率を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の実施形態に係る断面加工装置について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る断面加工装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る断面加工装置の概略構成を示す模式的な断面図である。図3は、本発明の実施形態に係る断面加工装置によって加工中の試料の様子を示す模式的な斜視図である。図4は、本発明の実施形態に係る断面加工装置の制御ユニットの機能ブロック図である。なお、図中に記載のXYZ座標系は、方向参照の便宜のために各図共通に設けたもので、それぞれ、Z軸正方向が鉛直方向の上側を示し、XY平面が水平面を示す。
【0015】
本実施形態の断面加工装置100は、図1、2に示すように、真空室13と、イオンビーム照射系20と、試料1を保持する試料台14と、試料台14を可動保持する試料ステージ16と、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略称する)18と、ガス銃11と、制御ユニット30(断面加工制御ユニット)と、表示部38とを備えている。
真空室13は、内部を所定の真空度まで減圧可能になっており、上記の制御ユニット30および表示部38を除く各構成品はそれらの一部または全部が真空室13内に配置されている。
【0016】
断面加工装置100は、これらの構成により、予め決められた観察目標断面、またはこの観察目標断面を含む観察領域で、試料1の断面観察を行うために、試料1に順次除去加工を施すことにより破断位置を移動させて観察用の断面を形成していくものである。
図3に、試料1が加工される様子の一例を示す。
【0017】
試料1は、予め決められた観察目標断面2または観察目標断面2含む近傍の観察領域で、断面観察を行うためのもので、例えば、欠陥を有する半導体チップなどからなる。
図3の例では、イオンビーム照射系20の光軸に一致する矢印Aに直交して配置された加工面1aを有する板状部材からなる。
そして、試料ステージ16によって試料1を移動させながらイオンビーム照射系20からイオンビーム20A(第一の集束ビーム)を照射することによって、試料1を除去加工して観察方向に対峙する破断面1cを形成できるようになっている。破断面1cの近傍は加工面1aから破断面1cの下端(図視Z軸負方向側)に向かって傾斜する斜面が形成されている。そしてSEM18によって、この斜面に沿う観察方向(矢印B方向)から、破断面1cの全体を観察できるようになっている。すなわち、破断面1cは、観察用の断面を構成している。
【0018】
観察目標断面2は、例えば、欠陥検査装置(不図示)などによって取得される試料1の欠陥の位置情報に基づいて位置および大きさを予め決めておく。また、欠陥検査装置において、欠陥の検出位置誤差が考えられる場合や欠陥が大きくて複数断面の観察が必要な場合、あるいは、欠陥の周囲の正常部分の画像も観察したい場合には、観察目標断面を含む3次元的な観察領域を設定し、この観察領域内を順次観察していくことができる。
以下では、観察目標断面2は、試料1上の一定位置、例えば、加工面1aと斜面との交線が形成された位置を基準位置として、距離Lの断面内の幅w×高さhの矩形状の領域であるとして説明する。すなわち、観察目標断面2は、観察方向において距離Lに位置している。観察目標断面2と加工面1aの交線を観察目標線Pと呼ぶことにする。
マーク部4A、4Bは、観察目標断面2の位置を、直接的または間接的に示すもので、断面加工装置100により断面加工に先だって試料1に形成されるものである。
【0019】
以下、断面加工装置100の各構成について説明する。
イオンビーム照射系20は、本実施形態では、光軸が鉛直方向に沿って配置された集束イオンビーム鏡筒を備えており、真空室13内の試料台14の上方に配置されている。そのため、試料台14上に載置された試料1に対して鉛直上方(図示Z軸正方向)からイオンビーム20Aを照射することで、試料1を鉛直下方(図示Z軸負方向)に向かってエッチングすることができるようになっている。
また、イオンビーム照射系20は、制御ユニット30と電気的に接続され、制御ユニット30の制御信号によってイオンビーム20Aの照射位置や照射条件の制御が行われる。
イオンビーム照射系20、および制御ユニット30は、第一の集束ビーム装置を構成している。
【0020】
イオンビーム照射系20は、集束イオンビーム鏡筒内に、イオンを発生させるとともに流出させるガスフィールドイオン源21と、ガスフィールドイオン源21から引き出されたイオンを集束イオンビームであるイオンビーム20Aに成形するイオン光学系25とを備えている。
【0021】
ガスフィールドイオン源21は、特に図示しないが、例えば、高真空状態に保持されたイオン発生室、先端が原子レベルで尖鋭化されたピラミッド状をなし、タングステンやモリブデンからなる針状の基材に、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金等の貴金属を被覆してなるエミッタ、イオン室に微量の希ガス(例えばArガス)を供給するガス供給源、引出電極、および冷却装置などの構成を備える。
このような構成により、ガスフィールドイオン源21は、エミッタと引出電極の間に電圧を印加することで、希ガスイオンが発生させ(電界イオン化)、この希ガスイオンによるイオンビームをイオン光学系25に向けて射出できるようになっている。
【0022】
イオン光学系25は、例えば、ガスフィールドイオン源21側から真空室13側に向けてガスフィールドイオン源21からのイオンビームを集束するコンデンサーレンズと、イオンビームを絞り込む絞りと、イオンビームの光軸を調整するアライナと、イオンビームを試料に対して集束する対物レンズと、試料上でイオンビームを走査する偏向器とが、この順に配置されて構成される。
このような構成のイオンビーム照射系20では、ソースサイズ1nm以下、イオンビームのエネルギー広がりも1eV以下にできるため、集束イオンビームのビーム径を、例えば、1nm以下に絞ることができる。また、ガスフィールドイオン源21を用いた集束イオンビームは、SEM18の代わりに破断面1cの観察に用いることも可能である。
【0023】
試料ステージ16は、図2に示すように、X軸、Y軸まわりのチルト移動を行うチルト機構16aと、X軸、Y軸、Z軸に沿う平行移動を行うXYZ移動機構16bと、Z軸回りの回転移動を行うローテーション機構16cとからなり、チルト機構16a上に、試料台14が保持されている。
また、チルト機構16a、XYZ移動機構16b、ローテーション機構16cは、それぞれ、制御ユニット30と通信可能に接続され、制御ユニット30からの制御信号によって移動量が制御される。
【0024】
SEM18(第二の集束ビーム装置)は、試料台14上の試料1において、イオンビーム20Aによって形成された破断面(観察用の断面)の観察像を取得する観察像を取得するものである。本実施形態では、電子銃、集束レンズ、走査コイル、対物レンズなどを周知の構成を備え、試料1上で電子プローブ(第二の集束ビーム)を走査するSEM本体18aと、試料1上から放出される二次電子を検出する二次電子検出器18bとからなる。
本実施形態では、観察用の断面を図1、2のYZ平面に平行に形成するので、SEM本体18aの光軸を、観察方向に沿って配置する。
二次電子検出器18bは、図1、2では、試料1の斜め上方に配置されているが、試料1から放出される二次電子を検出することができれば配置位置は特に限定されない。
また、SEM18は、制御ユニット30と電気的に接続され、制御ユニット30の制御信号によって観察像の取得動作が制御されるようになっている。
二次電子検出器18bの検出出力は、電子プローブの走査位置と同期可能な状態で制御ユニット30に送出される。なお、SEM18は、二次電子検出器18bの検出出力をアナログ表示するためのCRTを備えていてもよい。
【0025】
ガス銃11は、試料1の近傍に、イオンビーム20Aによるエッチングのエッチングレートを高めるためのエッチングレート増大用のガスや、後述するマーク部をデポジションによって形成する場合のデポジション用ガス等のガスを供給するものである。
ガス銃11からデポジション用ガスを供給しながら、試料1にイオンビーム20Aを照射すれば、ガスアシストデポジションを行うことができ、試料1上に金属や絶縁体の堆積物あるいは成膜物を形成することができる。
【0026】
制御ユニット30は、断面加工装置100の制御全般を行うもので、例えば、イオンビーム照射系20、試料ステージ16、SEM18など、断面加工装置100を構成する各部と電気的に接続されている。
また、制御ユニット30には、二次電子検出器18bから送られた画像データに基づいて試料1の観察用の断面の画像を表示したり、その画像に、例えば破断面の位置情報などの文字や記号を重ね合わせて表示したりするためのモニタからなる表示部38が接続されている。
【0027】
制御ユニット30の機能構成は、図4に示すように、画像取込部31、記憶部32、演算処理部34(破断位置情報取得部)、装置制御部33、およびマーク部形成制御部35からなる。
画像取込部31は、二次電子検出器18bからの検出出力を電子プローブの走査位置ごとの輝度データとして取り込み、2次元画像データを生成して、記憶部32に送出するものである。
記憶部32は、画像取込部31が取り込んだ試料1の観察用の断面の画像データを記憶するとともに、演算処理部34の演算に必要な情報や演算結果などを記憶するものである。
演算処理部34は、記憶部32に記憶された画像データを画像処理して、断面内に現れた後述するマーク部の破断形状を検出し、そのマーク部の破断形状および断面内における破断形状の位置の少なくともいずれかを算出し、予め記憶部32に記憶されたマーク部の形状および形成位置の情報から、画像データが取得された断面の破断位置を算出するものである。
装置制御部33は、画像取込部31および演算処理部34の動作タイミングを制御するとともに、制御ユニット30に接続された装置各部の動作制御を行うものである。
マーク部形成制御部35は、イオンビーム照射系20によって、観察用の断面内での破断形状が識別可能なマーク部を形成するための制御情報を装置制御部33に送出するものである。
【0028】
制御ユニット30の装置構成は、専用のハードウェアを用いてもよいが、本実施形態では、CPU、メモリ、外部記憶装置、入出力インターフェースなどを備えたコンピュータによって、演算用、制御用のプログラムを実行させることで実現している。
【0029】
このように、本実施形態の断面加工装置100は、試料を第一の集束ビームによって加工する第一の集束ビーム装置と、第一の集束ビーム装置の加工位置を第二の集束ビームによって観察する第二の集束ビーム装置を備えた複合集束ビーム装置から構成される。
【0030】
次に、断面加工装置100の動作について説明する。
図5は、図3におけるA視の部分拡大図である。図6(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、破断面が、それぞれ図5におけるC−C線、D−D線、E−E線、F−F線に沿う断面に到達したときの、図3におけるB視方向の部分拡大図である。図7(a)は、本発明の実施形態に係るマーク部の破断形状の一例を示す模式的な部分断面図である。
【0031】
断面加工装置100を用いた本実施形態の断面加工方法は、マーク部形成工程、断面形成工程、観察像取得工程、破断位置情報取得工程、および断面加工制御工程を、この順に行うものである。
ただし、断面加工制御工程における判定によっては、断面形成工程から断面加工制御工程までの工程を繰り返し行う。また、断面形成工程と観察像取得工程とは並行して実行してもよい。
【0032】
マーク部形成工程では、マーク部形成制御部35から装置制御部33にマーク部を形成するための制御情報を送出して、観察目標断面2の近傍において観察用の断面が形成可能な範囲に、イオンビーム20Aによる除去加工によって破断可能、かつ観察用の断面内で破断形状が識別可能なマーク部を形成する。本実施形態においては、試料上面からみて、断面形成進行方向に対し、ばつ印状のクロスマークを設けている。
例えば、図3、5、6(a)に示す例では、観察目標断面2の幅方向の外側近傍に、それぞれ、加工面1aから試料1の内側に一定の深さで設けられた長さMの溝4a、4bが加工面1a上でそれぞれの中点で、X字状に交差した形状に加工するための制御情報を、マーク部形成制御部35から装置制御部33に送出することで、マーク部4A、4Bを形成している。
マーク部4A、4Bの観察方向の位置は、それぞれの溝4a、4bが交差した交差部4c(収束部、図5参照)の中心が、観察目標線P上に位置するように設けている。また、それぞれの溝4a、4bは、観察目標線Pに対して角度θだけ傾斜している。ここで、角度θは、観察目標線Pに対する溝4a、4bのなす角のうち鋭角となる角度である。
また、マーク部4A、4BのX軸方向の形成範囲は、少なくとも観察領域のX軸方向幅以上となるように設定する。
溝4a、4bは、破断面1cで破断されれば、図7(a)に示すように、破断面1c上で幅t、中心間距離dのコ字状またはU字状のエッジが溝に沿って現れるため、SEM18によって識別可能である。
このようなマーク部4A、4Bは、試料の表面上の少なくとも2箇所に、断面加工を進めるにつれて破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかが収束する収束部を有するマーク部となっている。
【0033】
マーク部4A、4Bは次のようにして形成される。
まず、例えば、欠陥検査装置などによる検査で取得された観察目標断面2の位置情報が、試料1上の座標情報として制御ユニット30の装置制御部33に適宜の手段で通知される。例えば、この位置情報は、不図示の操作部から手動入力することで、装置制御部33に通知してもよいし、断面加工装置100と欠陥検査装置とが通信回線で接続されている場合には、通信回線を通して装置制御部33に自動的に通知されてもよい。
【0034】
次に、装置制御部33は、観察目標断面2の位置情報、大きさの情報から、幅W×高さH(ただし、W>w、H>h)の矩形状領域であるSEM18の観察可能範囲(電子プローブの走査可能範囲)の位置を、観察目標断面2の全体が含まれ、観察目標断面2が観察可能範囲の幅方向の略中央部に位置するように、試料ステージ16を駆動して、YZ平面内のSEM18と試料台14に保持された試料1との位置合わせを行う。
【0035】
一方、マーク部形成制御部35は、装置制御部33が取得した観察目標断面2の位置情報から、観察目標線P上で交差部4cを形成する座標を算出し、イオンビーム照射系20から出射されるイオンビーム20Aが試料1上で、マーク部4A、4Bの各溝4a、溝4bの軌跡を描くように、イオンビーム照射系20を制御する情報を生成して装置制御部33に送出する。
溝4a、4bの深さおよび溝幅は、溝4a、4bが、断面形成工程で破断されたとき、破断形状がSEM18で良好に観察できれば特に制限されない。すなわち、破断面1cにおける破断形状のエッジ位置や溝幅などが精度よく解像され、かつ試料1内の他部分の画像から区別して認識できる大きさであればよい。ただし、加工時間を短縮するためには、深さ、幅ともできるだけ小さいことが好ましい。
【0036】
装置制御部33は、マーク部形成制御部35から送出された情報に基づいて、イオンビーム照射系20を制御し、加工面1aに向けてイオンビーム20Aを照射させる。これによりイオンビーム20Aによって試料1がエッチングされ、マーク部4Aの溝4a、4bが形成される。
次に同様にしてマーク部4Bを形成する。
以上でマーク部形成工程が終了する。
【0037】
次に、断面形成工程を行う。
本工程は、マーク部4A、4Bを含む幅W×高さHの範囲で、試料1およびマーク部4A、4Bに対してイオンビーム20Aによる除去加工を施して、破断面1cを形成する工程である。
本実施形態の例では、マーク部4A、4Bは、観察目標断面2の位置を決める基準位置から距離Lの位置に形成されるので、最初の断面形成工程は、マーク部4A、4Bの端部が破断面1cで破断されるまで除去加工を行う。すなわち、図3に示すように、加工面1aから、観察目標断面2に向かって斜めに傾斜する凹部からなる空間Sを形成していき、基準位置からX軸正方向に向かってLの位置で、幅W×高さHの破断面1cを形成する加工を行う。
まず、イオンビーム照射系20の光軸を、加工面1aの基準位置上に移動させる。そして、イオンビーム20Aを照射して、試料1を幅Wの範囲でY軸方向に往復移動させつつ、試料1をX軸負方向側に距離Lの位置まで移動していく。
これにより、加工面1a上でイオンビーム20Aがラスタ走査され空間Sに対応する領域が除去加工され、図3に示す状態が得られる。
このような断面形成工程において、イオンビーム照射系20および制御ユニット30は、断面形成制御部を構成している。
【0038】
この除去加工は、マーク部4A、4BのX軸方向の端部が、加工精度に比べて観察目標線Pから十分離れている場合には、加工途中の破断面1cをSEM18によって観察することなしに行うことができる。
また、この除去加工では、観察目標断面2の観察に支障のある不純物が打ち込まれるおそれがなければ、エッチングレートを向上するために、ガス銃11からエッチングレート増大用のガスを供給してガスアシストエッチングを行ってもよい。
【0039】
次に、観察像取得工程を行う。
本工程は、SEM18によって、断面形成工程で形成された破断面1cの観察像を取得する工程である。
すなわち、SEM本体18aによって生成される電子プローブを破断面1c上でラスタ走査させ、それぞれの走査位置で破断面1cから放射される二次電子を二次電子検出器18bによって検出する。
二次電子検出器18bは、二次電子の検出出力を電子プローブの走査位置との同期をとる同期信号とともに制御ユニット30の画像取込部31に送出する。
画像取込部31は、同期信号に基づいて、送出された二次電子検出器18bからの検出出力を電子プローブの走査位置ごとの輝度データとして取り込み、2次元画像データを生成して、記憶部32に送出する。記憶部32に記憶された2次元画像データは、装置制御部33によって、表示部38に映像信号として送出され、表示部38に表示される。
【0040】
次に、破断位置情報取得工程を行う。
本工程は、観察像取得工程で取得された観察像である2次元画像データから、破断面1c内でのマーク部4A、4Bの破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかを取得して、この破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかから、2次元画像に対応する破断面1cの破断位置の情報を取得する工程である。
本実施形態では、破断位置の情報は、演算処理部34によって2次元画像データを画像処理して取得する。例えば、破断形状であるコ字状またはU字状の溝形状を、エッジ抽出などの画像処理によって抽出し、溝内面のY軸方向の位置、溝の幅、溝中心の位置などを算出する。
ただし、必要な破断位置の情報の精度によっては、表示部38に表示された画像を加工者が観察して表示部38の画像から概略に破断位置を把握するだけでもよい。
【0041】
破断面1cの位置情報は、破断面1cで破断された溝4a、4bの破断形状の中心間距離から一意に求まる。例えば、図6(a)に示すように、マーク部4A、4Bが溝4a、4bの端部で破断された場合、破断形状の中心間距離をdとすると、次式のように、観察目標線Pまでの距離(L―L)が分かる。
―L=(d・tanθ)/2 ・・・(1)
この関係は、予め記憶部32に記憶しておく。
破断面1cの観察方向の位置が、図5に示すC−C線、D−D線、F−F線のように変化すると、それに応じて、中心間距離が、d、d、dのように変化する。これらとdとの比を取れば、相似比の関係から、それぞれの位置における観察目標線Pまでの距離を算出することができる。例えば、中心間距離がdとなった場合、観察目標線Pまでの距離xは、x=(L−L)・(d/d)となる。
破断面1cが、観察目標線Pに近接すると、溝4a、4bは合体して破断形状は1つの溝となる。破断面1cと観察目標線Pとが一致した場合には、図6(d)に示すように、交差部4cが破断され、溝4a、4bの幅および角度θに応じて予め知られた最小幅の溝形状が現れる。
【0042】
したがって、本工程では、マーク部4A(4B)の位置に2つの溝の破断形状が現れた場合は、それらの中心間距離を算出することにより、また、マーク部4A(4B)の位置に1つの溝の破断形状が現れた場合は、その溝幅を算出することにより破断面1cから観察目標線Pまでの距離を求めることができる。すなわち、本実施形態は、破断位置情報取得工程において、マーク部の破断形状および破断形状の位置を取得して、破断面1cの位置の情報を取得する場合の例になっている。
【0043】
さらに、本実施形態では、マーク部4A、4Bを同一形状に形成するので、マーク部4Aから取得された破断面1cの位置情報と、マーク部4Bから取得された破断面1cの位置情報とが異なる場合、破断面1cが、観察目標線Pに対して非平行に形成されていることを検出でき、観察目標線Pに対する交差角を算出することができる。
【0044】
次に、断面加工制御工程を行う。
本工程は、破断位置情報取得工程によって取得された破断面1cの位置情報に応じて、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、次の観察用の断面を形成する場合には、現在の破断面1cの位置情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定するものである。
本実施形態では、観察目標断面2の近傍の観察領域が予め設定され、観察目標断面2を含む複数の断面を観察するようにしている。そのため、装置制御部33は、破断位置情報取得工程によって取得された破断面1cの位置から、観察領域の最もX軸正方向側に到達するか、観察領域の範囲外になったと判定した場合には、断面加工を終了する制御を行う。
それ以外の場合は、装置制御部33は、演算処理部34によって観察目標線Pまでの距離から、観察目標線Pを超えない範囲の除去加工量を算出する。そして、この除去加工量に応じて、必要に応じてイオンビーム20Aのビーム径など変えて、上記と同様に断面形成工程を行い、さらに、観察像取得工程、破断位置情報取得工程、および断面加工制御工程を繰り返す制御を行う。これによって、試料1に対する断面加工を自動加工によって行うことができる。
【0045】
除去加工量は、観察目標線Pまでの間、および観察目標線Pを超えてから観察する断面の数に応じて、適宜量となるように、演算式やデータテーブルの形で、記憶部32に記憶しておく。また、除去加工量の設定は、破断面1cが観察目標線Pに対して傾斜している場合には、イオンビーム20Aの走査方向を補正し、XY平面上で台形の領域を除去加工する設定も含むものとする。
【0046】
ただし、断面加工の停止、続行の判断、あるいは除去加工量の設定は、破断位置情報取得工程で取得された破断面1cの破断位置の情報に基づいて、加工者が判断し、手動で除去加工量を設定してもよい。
【0047】
このように、断面加工装置100によれば、観察目標断面2を含めて、観察目標断面2の近傍の観察領域での試料1の断面観察を行うことができる。
その際、観察像取得工程で取得される観察像には、マーク部4A、4Bの破断形状が含まれるため、破断位置情報取得工程によって、これら破断形状および破断形状の位置から観察された破断面1cの位置情報を取得でき、断面加工制御工程によって、観察目標断面2を含む観察領域内の断面観察を確実に行うことができる。すなわち、破断面1cの位置情報を得るために、従来技術のように、例えば加工面1aの画像を取得する工程などを設けなくてもよいため、従来に比べて断面加工の加工効率を向上することができる。
また、断面観察像取得制御部として、SEM18を用いるため、断面観察像取得工程を断面形成工程と並行して行うようにすれば、さらに加工効率を向上することができる。
【0048】
次に、本実施形態の断面加工方法に用いるマーク部の変形例について説明する。これらのマーク部はすべて、上記実施形態のマーク部4A、4Bに代えて用いることができる。
図7(b)は、本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第1変形例の破断形状を示す模式的な部分断面図である。図8(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第2変形例の模式的な平面図(照射方向視)および正面図(観察方向視)である。図9(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第3変形例の模式的な平面図および正面図である。図10(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第4変形例の模式的な平面図および正面図である。図10(c)は、図10(b)におけるG−G断面図である。図11(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第4変形例の模式的な平面図および正面図である。
【0049】
第1変形例のマーク部40は、図7(b)に示すように、上記のマーク部4A(4B)を形成した後、溝4a、4b、交差部4cが適宜材質によって埋められたデポジション部5を形成してなるものである。
デポジション部5の材質は、破断したときに、観察像取得制御部によって破断形状が識別可能であれば特に限定されない。
デポジションは、ガス銃11からデポジション用ガスを供給してイオンビーム20Aを照射することで行うことができる。
【0050】
第2変形例のマーク部6は、図8(a)に示すように、観察目標線Pに対して、角度θで交差する溝6a、6bが、観察方向において観察目標線P側に向かってすぼまる山形状に設け、観察目標線P上に山形の頂部6c(収束部)を形成するものである。
本変形例のマーク部6は、観察目標断面2に到達するまでの間を観察領域とする場合に好適なものである。
本変形例では、破断位置情報取得工程は、上記実施形態と全く同様にして行うことができる。
【0051】
第3変形例のマーク部7は、図9(a)、(b)に示すように、底面7c上に、観察目標線Pに対してそれぞれ角度θで交差し観察目標線P側に向かってすぼまる内側面7a、7bを備える三角柱状の溝からなる。内側面7a、7bの交線は収束部を構成する。
本変形例のマーク部7によれば、断面形成工程によって破断されることで、図9(b)に示すように、破断面1c上にコ字状をなすエッジL、L、Lが形成され、SEM18によって識別可能となる。そして、破断面1cの位置は、上記実施形態の溝4a、4bの中心間距離dに代えて、エッジL、Lの距離dを用いることで、上記と同様にして算出することができる。
また、本変形例は、上記第2変形例と同様に、観察目標断面2に到達するまでの間を観察領域とする場合に好適なものである。
本変形例では、破断位置情報取得工程は、上記実施形態と全く同様にして行うことができる。
【0052】
第4変形例のマーク部8は、図10(a)、(b)、(c)に示すように、観察目標線Pに交差し、観察目標線Pからの距離に応じて深さが変化する溝からなるものである。例えば、内側面8a、8bで挟まれ、破断面1cにおいて深さkで観察方向に進むにしたがって深さが小さくなり、観察目標線Pと交差する位置で、深さがkとなる傾斜底面8cを有する三角スリット状のものを採用することができる。
本変形例のマーク部8によれば、断面形成工程によって破断されることで破断面1cに現れる破断形状である傾斜底面8cのエッジの位置が変化するため、破断面1cの位置情報を算出することができる。
【0053】
本変形例では、破断面1cの位置は、内側面8a、8bの位置や形状には関係しないため、2次元画像データから傾斜底面8cによるエッジ位置のみを取得すればよい。したがって、演算処理部34における画像処理が簡素化される。
また、本変形例は、破断位置情報取得工程において、マーク部の破断形状の位置のみを取得して観察用の断面の破断位置の情報を取得する場合の例になっている。また、収束部を有しないマーク部の例となっている。
【0054】
なお、本変形例は、図10に示すように、傾斜底面8cが三角スリットの斜辺を構成する傾斜平面からなる場合の例で説明したが、傾斜底面8cの深さから、観察目標線Pに対する破断面1cの位置を求めることができれば、傾斜底面8cは、湾曲面であってもよい。
【0055】
第5変形例のマーク部9は、図11(a)、(b)に示すように、それぞれ、長さが異なり、破断面1cから観察目標線Pまでの間で、破断位置によって破断形状の個数が変化するように長さを変えて設けられた溝9a、9b、9c、9d、9e、9f、9e、9gからなる。本例では、溝9dが、観察目標線Pまで到達し、他はいずれも観察方向の溝長さが溝9dよりも短い構成とされている。
本変形例のマーク部9によれば、断面形成工程によって破断されることで破断面1cに現れる破断形状の個数が、7個から0個まで変化し、個数が少なくなるほど、観察目標線Pに近づいたことを検出することができるようになっている。このため、破断面1cの位置情報を、破断面1cが存在する位置範囲の情報として取得することができる。
本変形例は、溝の個数を数えることができればよいので、破断形状の位置を正確に求める必要はない。そのため、破断位置情報取得工程において、マーク部の破断形状のみを取得して観察用の断面の破断位置の情報を取得する場合の例になっている。
【0056】
上記種々のマーク部の例について説明したが、これらのマーク部に限らず、断面加工を進めるにつれて破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかが目標断面に向かって収束するマーク部は、どのような形状でも採用できる。また、観察目標線Pに近づいたことが検出できれば、収束部を有しないマーク部でもよい。
【0057】
なお、上記の説明では、マーク部4A、4Bの交差部4cや、マーク部6の頂部6cや、マーク部7の内側面7a、7bの交差位置を、それぞれ観察目標線P上に配置する場合の例で説明したが、これらの配置位置は、観察目標線Pの観察方向手前側の一定位置に設定してもよい。
【0058】
また、上記の説明では、破断面1cを形成してSEM18で断面観察を行う場合の例で説明したが、観察目標断面2の近傍まで破断した後、観察方向の逆方向から観察目標線Pに向かって断面加工を行い、観察目標断面2を含む薄板を形成して、試料1から切り出し、TEMによって、観察目標断面2の断面観察を行うようにしてもよい。
すなわち、本実施形態の断面加工方法はTEM試料を作成する場合にも好適な断面加工方法になっている。
【0059】
また、上記の説明では、観察像取得工程の後に、破断位置情報取得工程と、断面加工制御工程とを行う場合の例で説明したが、マーク部を破断する程度の観察目標断面の近傍位置を観察するのみでよい場合には、観察像取得工程において、マーク部が破断されていれることが分かれば、さらに断面形成工程を続けなくともよいので、破断位置情報取得工程、断面加工制御工程を省略してもよい。
【0060】
また、上記に説明した実施形態、変形例に記載されたすべての構成要素は、技術的に可能であれば、本発明の技術的思想の範囲で、置換したり、組み合わせたりして実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る断面加工装置の概略構成を示す模式的な斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る断面加工装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る断面加工装置によって加工中の試料の様子を示す模式的な斜視図である。
【図4】発明の実施形態に係る断面加工装置の制御ユニットの機能ブロック図である。
【図5】図3におけるA視の部分拡大図である。
【図6】破断面が、それぞれ図5におけるC−C線、D−D線、E−E線、F−F線に沿う断面に到達したときの、図3におけるB視方向の部分拡大図である。
【図7】本発明の実施形態に係るマーク部の破断形状の一例および第1変形例の破断形状を示す模式的な部分断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第2変形例の模式的な平面図(照射方向視)および正面図(観察方向視)である。
【図9】本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第3変形例の模式的な平面図および正面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第4変形例の模式的な平面図および正面図である。
【図11】本発明の実施形態に係る断面加工方法に用いるマーク部の第4変形例の模式的な平面図および正面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 試料
1c 破断面(観察用の断面)
2 観察目標断面
4A、4B、6、7、8、9 マーク部
4c 交差部(収束部)
6c 頂部(収束部)
14 試料台
16 試料ステージ
18 走査型電子顕微鏡(SEM、第二の集束ビーム装置)
18a SEM本体
18b 二次電子検出器
20 イオンビーム照射系(第一の集束ビーム装置)
20A イオンビーム20A(第一の集束ビーム)
30 制御ユニット(断面加工制御ユニット、第一の集束ビーム装置)
33 装置制御部
34 演算処理部(破断位置情報取得部)
35 マーク部形成制御部
38 表示部
100 断面加工装置
P 観察目標線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた観察目標断面、または該観察目標断面を含む観察領域で、試料の断面観察を行うために、前記試料に対して順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて観察用の断面を形成していく断面加工方法であって、
前記観察目標断面の近傍において前記観察用の断面が形成可能な範囲に、前記除去加工によって破断可能、かつ前記観察用の断面内で破断形状が識別可能となるマーク部を形成するマーク部形成工程と、
該マーク部形成工程で形成された前記マーク部を含む範囲で、前記試料および前記マーク部に対して除去加工を施して、前記観察用の断面を形成する断面形成工程と、
該断面形成工程で形成中または形成後の前記観察用の断面の観察像を取得する観察像取得工程とを備えることを特徴とする断面加工方法。
【請求項2】
前記マーク部形成工程では、
前記マーク部を、前記断面形成工程で形成される前記観察用の断面の前記破断位置に応じて、前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかが変化する形状に形成することを特徴とする請求項1に記載の断面加工方法。
【請求項3】
前記観察像取得工程で取得された前記観察像から、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかを取得して、
前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかから、前記観察像に対応する前記観察用の断面の破断位置の情報を取得する破断位置情報取得工程を備えることを特徴とする請求項2に記載の断面加工方法。
【請求項4】
前記破断位置情報取得工程によって取得された前記観察用の断面の破断位置の情報に応じて、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、
次の観察用の断面を形成する場合には、前記観察用の断面の破断位置の情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定する断面加工制御工程を備えることを特徴とする請求項3に記載の断面加工方法。
【請求項5】
予め決められた観察目標断面、または該観察目標断面を含む観察領域で、試料の断面観察を行うために、前記試料に順次除去加工を施すことによって破断位置を移動させて観察用の断面を形成していく断面加工装置であって、
前記観察目標断面または該観察目標断面を含む観察領域の近傍において前記観察用の断面が形成可能な位置に、前記除去加工によって破断可能かつ前記観察用の断面内での破断形状が識別可能なマーク部を形成するための制御情報を生成するマーク部形成制御部と、
該マーク部形成制御部の制御情報に基づいて形成された前記マーク部を含む範囲で、前記マーク部に除去加工を施して、前記観察用の断面を形成する断面形成制御部と、
該断面形成制御部で形成された前記観察用の断面の観察像を取得する観察像取得制御部とを備えることを特徴とする断面加工装置。
【請求項6】
前記観察像取得制御部で取得された前記観察像から、前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかを取得して、
前記マーク部の前記破断形状および前記観察用の断面内での前記破断形状の位置の少なくともいずれかから、前記観察像に対応する前記観察用の断面の破断位置の情報を取得する破断位置情報取得部を備えることを特徴とする請求項5に記載の断面加工装置。
【請求項7】
前記破断位置算出部によって取得された前記観察用の断面の破断位置の情報に応じて、次の観察用の断面を形成するかどうか判定するとともに、
次の観察用の断面を形成する場合には、前記観察用の断面の破断位置の情報に基づいて、次の断面形成工程における除去加工量を設定する断面加工制御ユニットを備えることを特徴とする請求項6に記載の断面加工装置。
【請求項8】
試料を第一の集束ビームによって加工する第一の集束ビーム装置と、該第一の集束ビーム装置の加工位置を第二の集束ビームによって観察する第二の集束ビーム装置を備えた断面加工装置であって、
前記試料の表面上の少なくとも2箇所に、断面加工を進めるにつれて破断形状および破断形状の位置の少なくともいずれかが収束する収束部を有するマーク部を、前記収束部が予め決められた観察目標断面の位置あるいはその位置の近傍に来るように形成するための制御情報を生成するマーク形成制御部を有し、
前記第一の集束ビーム装置を用いて、前記制御情報に基づきエッチングまたはデポジションにより前記少なくとも2箇所のマーク部を形成した後、該マーク部の各収束部を結ぶ方向と平行方向に前記第一の集束ビームを主走査して前記観察目標断面から離れた位置から前記観察目標断面に近づけながら断面加工すると共に、前記マーク部の加工断面を前記第二の集束ビーム装置で観察し、前記収束部あるいはその近傍に到達した時に断面加工を終えることを特徴とする断面加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−204480(P2009−204480A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47577(P2008−47577)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【出願人】(508062144)エスアイアイナノテクノロジー ユウエスエイ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】