説明

断面形状推定方法および断面形状推定装置

【課題】
従来の断面SEMやTEMで撮像した断面画像とその倍率情報を元にユーザが物差しをあてて配線の寸法を計測したり、分度器をあてて配線の側壁の傾斜角度を計測する方法によっては、ユーザの裁量に依存する部分が大きいという課題があった。
【解決手段】
被検査対象試料の断面形状データに対して複数の形状モデルをフィッティングするフィッティング工程と、前記フィッティング工程にてフィッティングしたフィッティングモデルの精度の指標である誤差関数値に基づいて該複数の形状モデルから少なくとも一の形状モデルを最適モデルとして選択する選択工程とを有する被検査対象試料の断面形状推定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パターンの断面形状推定方法および断面形状推定装置に関する。特に、断面SEM(走査型電子顕微鏡)やTEM(透過型電子顕微鏡)などの観察装置により取得された断面画像や、AFM(原子間力顕微鏡)などの探針走査型の計測装置により取得された形状計測データを元データとして、パターン形状を定量的なパラメタで表現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造においては、配線などの断面形状を観察する手法が従来から用いられている。 断面形状の計測手法としては、断面SEMや透過型電子顕微鏡(以下、TEMとする。)、原子間力顕微鏡(以下、AFMとする。)などを用いる方法がある。
【0003】
断面SEMやTEMでは、切断した半導体ウェハの断面を撮像する。ユーザは撮像された画像を見て、半導体パターンの断面の形状を把握するほか断面形状が意図したとおりに製造されているかを確認することが可能である。
またAFMによる配線の立体形状計測では、測定対象の表面を探針で走査することにより対象物の立体形状情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−102125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体パターンなど対象物の形状を推定する従来技術として、特許文献1には「オブジェクトを照明する放射の結果として生じる回折パターンから前記オブジェクトの形状を再構築する方法であって、前記オブジェクトから回折した放射の回折パターンを検出すること、前記オブジェクト形状を予測すること、前前記予測した形状からモデル回折パターンを導出すること、前記モデル回折パターンと前記検出した回折パターンとを比較すること、前記モデル回折パターンと前記検出した回折パターンとの相違から実際のオブジェクト形状を求めることを含む方法」が開示されている(特許請求の範囲)。
【0006】
前述した断面SEMやTEMによる断面観察、AFMによる形状計測で得られる情報は、画像や断面形状の輪郭のプロファイルデータである。形状の特徴などを簡便に表現するためには、これらの計測結果を何らかのパラメタを用いて表現する必要がある。
従来技術では、断面SEMやTEMの場合、撮像した断面画像とその倍率情報を元にユーザが物差しをあてて配線の寸法を計測したり、分度器をあてて配線の側壁の傾斜角度を計測したりしていた。近年では画像処理ソフトウェアを利用して計測することが比較的一般的となっており、エッジ検出処理による画像内からパターンの輪郭線抽出や、輪郭線の直線近似などを組合せてユーザが断面形状の寸法や角度を計測していた。
【0007】
また別の従来技術では、AFMで計測した配線の輪郭情報を元に、配線幅や側壁の傾斜角度を計測していた。しかしながら、配線の断面形状は側壁の傾斜角度が配線の上部と下部で一定でなかったり、配線下部に裾引き(フッティング)があったりするなど、必ずしも直線だけでは形状を表現できないため、従来技術では断面形状を計測においてユーザの裁量に依存する部分が大きいという課題があった。
【0008】
そこで、本願では、従来の技術と比較してユーザへの依存を少なくした配線の断面形状のパラメタ化手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0010】
(1)被検査対象試料の断面形状データに対して複数の形状モデルをフィッティングするフィッティング工程と、前記フィッティング工程にてフィッティングしたフィッティングモデルの精度の指標である誤差関数値に基づいて該複数の形状モデルから少なくとも一の形状モデルを最適モデルとして選択する選択工程とを有する被検査対象試料の断面形状推定方法である。
【発明の効果】
【0011】
本願に記載の技術によれば、ユーザへの依存を少なくした配線の断面形状のパラメタ化手法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る断面形状推定方法のフローチャートである。
【図2】(a)はs100により得られる断面形状の模式図、(b)はs101により得られる、配線の輪郭プロファイル情報、(c)はs102にてモデルフィッティングを行った場合の説明図である。
【図3】形状モデル(1台形モデル)である。
【図4】形状モデル(2台形モデル)である。
【図5】(a)は形状モデル(丸み付き1台形モデル)、(b)はラウンディングをつける方法の説明図、(c)はフッティングをつける方法の説明図である。
【図6】形状モデル(丸み付き2台形モデル)である。
【図7】(a)は実形状とモデル形状の差を説明する図、(b)は実形状とモデル形状との距離を計測する方法の説明図である。
【図8】モデル間の性能比較の説明図である。
【図9】(a)は実形状とモデル形状の差を説明する別の実施形態の図、(b)は実形状とモデル形状の差を説明する別の実施形態の図である。
【図10】(a)は領域によって形状評価の重みづけを変化させない場合のフィッティング図、(b)は領域によって形状評価の重みづけを変化させた場合のフィッティング図である。
【図11】(a)は形状パラメタと誤差関数の関係を示す図、(b)は形状パラメタと誤差関数の関係を示す図である。
【図12】実施例1におけるステップ103のサブステップである。
【図13】実施例2におけるステップ103の別のサブステップである。
【図14】パラメタの相関関係を説明する図である。
【図15】GUI画面の一例を示す図である。
【図16】複数の入力画像があるときの本発明に係る断面形状推定方法のフローチャートである。
【図17】複数の入力画像があるときの本発明に係る断面形状推定方法のフローチャートである。
【図18】複数の入力画像があるときのモデルフィッティングを説明する図である。
【図19】断面SEMの装置構成を示す図である。
【図20】本発明に係る断面形状推定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
図1は本発明に係る断面形状推定方法のフローチャート、図2(a)は断面形状の模式図、図2(b)はs101により得られる配線の輪郭プロファイル情報、図2(c)はs102にてモデルフィッティングを行った場合の説明図、図3乃至図6は形状モデルの例を示した図、図19は断面SEMの装置構成を示す図、図20は本発明に係る断面形状推定装置の構成を示す図である。
【0014】
まず、図19を用いて断面SEMの概略装置構成を説明する。切断され断面が上面となるように配置された試料307に対して概略垂直方向から、電子銃300にて電子線を発射し、集束レンズ301、偏向器302、対物レンズ303を介して試料307に電子線を照射する。試料307から発生した二次電子は検出器304にて検出され、断面形状の実データ306を得ることができる。このとき、制御装置305にて偏向器302および検出器304の動作のコントロールを行う。
本実施例では、図2に示すような断面形状の実データ100として配線の断面SEM画像またはTEM画像がある場合について説明する。
【0015】
(s100)まず、断面画像・輪郭データとして、計測対象物の断面形状の実データである配線の断面SEM画像またはTEM画像を得、これを入力画像とする。入力画像の一例として図2(a)に断面形状の模式図を示す。
(s101)次に、s100で得た入力画像100に対してエッジ抽出処理を行い、配線の輪郭プロファイル情報を得る。配線の輪郭プロファイル情報の一例として図2(b)に配線の輪郭プロファイル情報101を示す。ここで、入力画像内に配線が複数ある場合には、配線毎に処理する。
【0016】
(s102)次に、s101で得た配線の輪郭プロファイル情報を、予め用意しておいた複数の形状モデル200についてフィッティングする。ここでは、複数種類準備された形状モデル200について、各モデルのパラメタを変化させ、s101で得た配線の輪郭プロファイル情報に基づく実際の形状と最も合うパラメタを探索する。任意の形状モデルとして台形モデルを用いてフィッティングした場合の一例として図2(c)にフィッティング結果102を示す。
ここで形状モデルとは、断面形状を複数のパラメタで表現したものを指す。本願においては、形状モデルの基本形状として台形を用いる。これは、半導体製造では基板上に膜を積層しながら配線を形成していることに鑑みている。
図3は台形1つで断面形状を表現する1台形モデルである。このモデルの場合はボトム寸法201、高さ202、左側壁傾斜角203、右側壁傾斜角204の合計4つのパラメタで断面形状を表現する。
図4は2台形モデルで、ボトム寸法211、下側の台形の高さ212、左側壁傾斜角213、右側壁傾斜角214、上側の台形の高さ215、左側壁傾斜角216、右側壁傾斜角217の7つのパラメタで形状を表現する。
【0017】
また、図5(a)は形状モデル(丸み付き1台形モデル)である。1台形モデルの頂角の形状を曲線で表現したものである。半導体プロセスの特性によって台形の上の頂角は製造プロセスの特性により丸み(ラウンディング)205、206を持つ場合や、下の頂角は台形の外側方向に裾を引く場合(フッティング)207、208があることが知られている。
図5(b)はラウンディングをつける方法の説明図、図5(c)はフッティングをつける方法の説明図である。図5(b)は、丸みのつけ方として、ラウンディングに台形の上底と側壁に内接する半径Rtの円を用いた例、図5(c)は丸みのつけ方として、フッティングに台形の底辺の延長線と側壁に外接する半径Rbの円を用いた例である。ラウンディングの大きさを台形の左右で変えた場合には、台形の4パラメタと左右ラウンディング205、206、左右フッティング207、208とによる合計8パラメタの形状モデルとなる。
図6は、形状モデル(丸み付き2台形モデル)の別の例であり、図4の二台形モデルに丸みを付け加えた二台形モデルであり、合計11パラメタの形状モデルとなる。
【0018】
モデルフィッティングS102では、形状モデルの各パラメタを変化させ、モデルと実際の形状が良く一致するようにする。具体的には実際の形状とモデル形状の差に基づいた誤差関数を定義し、その誤差関数の値が最小となるパラメタを選択する。
図7(a)は実形状とモデル形状の差を説明する図、図7(b)は実形状とモデル形状との距離を計測する方法の説明図である。ここで、図7(a)は1台形モデルの例であるが、実形状110と1台形モデル111とは完全には一致しない。そこで図7(b)に示すようにモデルと実形状の距離112を算出し、これを実形状とモデル形状の差として定義する。ここでは、モデルの外周113に沿って等しいピッチで順次実形状との差を算出しその二乗和を求め、これを誤差関数とする。誤差関数が最小になるようなパラメタを求めることにより、1台形モデルにおいて実形状に対して最も一致する形状パラメタが定まる。誤差関数の最小となるパラメタの探索には最適化手法の一つであるLevenberg−Marquardt法(以下LM法)を用いる。図7(a)では一台形モデルについて誤差関数の値を求める場合を説明したが、2台形モデル、丸み付き1台形モデル、丸み付き2台形モデルなど他の形状モデルについても同様にモデルフィッティングを行うことで、形状モデル毎に実形状を表現するのに好適なパラメタと、その時の誤差関数の値が求まることとなる。
なお、一般に断面画像データには、画像の他に、付帯情報として倍率情報や画像を取得した装置の光学条件などが付随しており、モデル形状と画像との倍率の対応をとるためにはこれらの付帯情報を利用する。
【0019】
(s103)次に、s102でフィッティングした形状モデル200に対するモデルフィッティング結果を用いて、各モデル間の性能評価を行う。
複数の形状モデルから適切なモデルを選択する段階において、モデルフィッティングで誤差が最小となるモデルを選択することは、必ずしも適切ではない。なぜなら、モデル形状を複雑にすればするほどフィッティング誤差は小さくなるが、必要以上に複雑なモデルを採用することは次のいくつかの点で不適切なためである。
・推定すべきパラメタが増えると、誤差が小さくなるパラメタの組み合わせが増えパラメタ推定が上手くいかない(解が一意に定まらない)。
・パラメタ探索に時間がかかる(計算コスト増加)。
また、形状の特徴などを簡便に表現するという観点からも多数のパラメタを用いることは不適切である。
【0020】
そこで、モデルの複雑さとフィッティングの良さのバランスを考え、過度に複雑なモデルを採用しないようにする必要がある。ここで、図8は、モデル間の性能比較の説明図であり、図8を用いてその方法を説明する。図8は横軸をモデルのパラメタ数121、縦軸をフィッティング後の誤差関数の値122としたグラフである。124から127はそれぞれが異なる形状モデルを用いた場合の誤差関数の値を示す棒グラフである。誤差関数の最大許容値123を予め定めておくことにより、その許容値内でパラメタ数が最小の形状モデル126を選択することが可能となる。
【0021】
(s104)このようにして、複数の形状モデルから条件に合った形状モデルおよび形状パラメタを選択することができる。
以上説明してきたような手法によれば、対象となった断面形状に対して適切な形状モデルと最適なパラメタを選択することが可能となる。
【0022】
図9は実形状とモデル形状の差を説明する別の実施形態の図である。図9(a)は高さ方向の長さ114を差として定義した例、図9(b)はモデルとの距離115を差として定義した例である。また図9(a)(b)とも水平方向116、117に等しいピッチで差を順次求めている。側壁傾斜角が急峻な場合には図9(a)、図9(b)のように水平方向に等しいピッチで誤差を求めると、側壁の誤差を評価する点数が少なくなり、台形の上底に比べて側壁の形状の重要度が相対的に低くなってしまう(実形状の側壁の情報が相対的に軽視される)。そのため、すでに説明した図7のようにモデル形状の外周に沿って等しいピッチで差を求めるようにすると、側壁傾斜角度が急峻な場合でも、バランスよく誤差を評価できるという長所がある。
【0023】
図10(a)は領域によって形状評価の重みづけを変化させない場合のフィッティング図、図10(b)は領域によって形状評価の重みづけを変化させる場合のフィッティング図である。
断面形状をAFMで配線を計測した場合は、探針を立体形状の輪郭に沿って走査するという計測方法の特徴のため、ラウンディング部分で探針が滑ったり、配線の下部に探針が上手く入らなかったりすることがある。そのため、これらの領域での計測データは信頼性が低い。そこで、それらの領域において実際の形状とモデルの差の算出結果に0から1の間の任意の係数をかけることで、誤差関数算出における該当領域の影響を軽減・無視することが可能となる。図10(a)は平坦部と曲線部との間で重み付けを行わない場合のフィッティング結果を示しているのに対して、図10(b)では高さ方向に重みづけを変える2種類の領域131、132を指定した例を示している。
【0024】
ここで、本発明に係る断面形状推定装置の構成を示す図である図20を用いて、図1に示した本発明の係る断面形状推定フローとの関係を説明する。
エッジ抽出部400は、外部から入力された既に検査により得られた断面画像・輪郭データに基づきエッジ抽出処理を行い、配線の輪郭プロファイル情報を得る(図1のs101に対応)。次に、フィッティング部402にて、エッジ抽出部400から出力された配線の輪郭プロファイル情報を予め用意しておいた複数の形状モデル200についてフィッティングする(図1のs102)。フィッティング部402からの出力である複数の形状モデルについてフィッティングを行った結果であるフィッティングモデル等をモデル間性能比較部403に入力し、モデル間性能比較部403にて各モデル間の性能評価を行う(図1のs103)。モデル間性能比較部403にて比較した結果を形状モデ・形状パラメタ選択部404に入力し、ここで複数の形状モデル(フィッティングモデル)から、条件に合った形状モデルおよび形状パラメタを選択する(図1のs104)。
【実施例2】
【0025】
実施例1で説明したモデル間の性能比較(図1のs103)の他の実施例として、解の一意性を評価する手段を備える手法について説明する。図1の各形状モデルでパラメタを最適化(s102)したのち、パラメタを最適値の近傍で変化させたときの誤差関数の変化を調べる。
図11(a)(b)は形状パラメタと誤差関数の関係を示す図143、144である。横軸141をパラメタの値、縦軸142を誤差関数の値としたグラフである。図11(a)のようにパラメタの変化に対して誤差が急速に大きくなれば、その形状モデルとパラメタは解の一意性という観点で優れており、パラメタ推定がロバストであるということができる。一方、図11(b)のようにパラメタの変化に対して誤差関数の値がほとんど変化しない場合は、この形状モデルはパラメタに対して感度が低い、すなわちパラメタを精度よく推定できないということが分かる。この場合、ユーザに対してその旨を教示し、パラメタを固定するか、もしくは推定精度が悪いことを了解した上で、浮動パラメタとして残しておくことができる。
【0026】
図12は実施例1におけるステップ103のサブステップ、図13は実施例2におけるステップ103の別のサブステップである。
図12に示した実施例1では、まず図1のステップs102で算出した誤差関数と指定された許容誤差123から、サブステップs201で許容誤差以下となる自由度最小のモデルを選択する。一方、図13に示した実施例2では、図1のステップs102で算出された許容誤差とそのときのパラメタを用いて、図11のように各パラメタを変化させたときの誤差関数の値の変化を計算(s211)する。次に各パラメタについて図11と同様のグラフをGUIに表示することで、解が一意に定まるかどうかをユーザが判断しやすくする。GUI画面の一例を図15に示す。図15に示した画面では、左上に描かれている図形が現在選択中のモデル形状(二台形)を示し、右上に示されている図が左右の各側壁傾斜角においてパラメタを変化させたときの誤差関数の値を示す図である。図の下半分では、どの値をパラメータとして用いるかをチェックボックスを用いて選択したり、選択した各パラメータの上下限値を設定することができるようになっている。
【0027】
ここで、解が一意に定まるようであれば、サブステップs214にて許容誤差123内でパラメタが最小となるモデルを選択し、形状モデルおよび形状パラメタを決定する。サブステップs212で解が一意に定まらないと判断した場合には、サブステップs213で該当するパラメタを固定し、図1のステップs102から繰り返す。
【実施例3】
【0028】
図14は、パラメタの相関関係を説明する図である。図14は、2つのパラメタを最適値の近傍で変化させたときの誤差関数の値を等高線で示したグラフである。グラフの横軸151および縦軸152は2つのパラメタのうちの一つに相当する。このグラフから2つの相関が高いため、上手く最適化できない可能性が高いことが分かる。このような場合も実施例2と同様に、ユーザに対してその旨を教示し、どちらかのパラメタを固定とするか、適切な最適化ができない可能性が高いことを了解したうえで、浮動パラメタとして残しておくことができる。このように解の一意性を評価する手段を用いることで、形状モデルやパラメタが適切であるか判断することが可能となる。
【実施例4】
【0029】
本実施例では入力データが複数あり、さらに配線の立体形状が実質的に同一である場合について説明する。状況としては、ウェハの同一ショット内から同一パターンの配線の断面画像が複数入手できた場合である。これらの断面形状はラフネスやランダムな計測誤差を除けば実質的に同一と考えてよい。この場合、形状モデルのフィッティング方法として大きく2つの手法が考えられる。
第一の方法は、入力データである画像の段階で、統計的に代表的な断面画像を作成する方法である。
図16は、複数の入力画像があるときの本発明に係る断面形状推定方法のフローチャートである。入力データs100に対して、エッジを抽出し(s101)、その次のステップで複数の画像を平均化することで代表画像が作成できる(s104)。この代表画像を用いてステップs102以下の手順を経ることで、好適な形状モデルおよび形状パラメタが決定できる。平均化処理によって画像のランダムな誤差が低減されるため、安定したエッジ抽出が達成できる。
第二の方法は、図17に示すように個々の画像それぞれをモデルフィッティングまで個別に処理する方法である。図17にそのフローを示す。モデルフィッティングまで実施すると各画像に対して形状モデルごとに最適パラメタと誤差関数の値が求まるので、形状モデルごとに誤差関数の値を平均して、その平均した誤差関数を形状モデルの誤差関数として新たに採用する(図17のs105)。誤差関数の平均値を使うことにより、特定の1断面のデータに最適化された形状モデルやパラメタではなく、複数の断面形状にわたって妥当性の高い形状モデルを選択することができる。
【実施例5】
【0030】
本実施例は入力データが複数ある場合で、さらにそれらの配線はプロセス条件を変化させている場合である。状況としてはFocus Exposure Matrixウェハ(以下、FEMウェハ)のように、ウェハ製造の露光工程において露光機の焦点位置、露光量を変化させているウェハから断面形状を取得した場合である。
【0031】
一例として露光量が異なる配線の断面画像が入手できた場合を例にとって説明する。図18は、複数の入力画像があるときのモデルフィッティングを説明する図である。この場合、実施例4の第二の方法と同様に、複数の画像をモデルフィッティングの段階まで個別に処理し、誤差関数の平均値を用いてモデル間の性能比較をする。これにより製造プロセスの変化を適切にとらえながら、広い形状バリエーションに対応可能なモデルを選択することが可能になる。
【0032】
本発明の更なる別の形態として、半導体製品の性能と相関の高い形状パラメタが既知であるならば、モデル選択において少なくともそれらのパラメタを含んだモデルを選択することが考えられる。半導体製品の性能と相関が高いパラメタでモデル化することができれば、半導体製造プロセス管理の指標として、直接的な利用が可能となる。
【0033】
また更なる別の実施形態として、スキャトロメトリ(scatterometory)計測やMBL(Model−Based Library)法などの立体形状を推定する装置またはアプリケーションで用いられる形状モデルの決定手法としての利用も考えられる。ここでスキャトロメトリ計測とは光波散乱計測とも呼ばれ、計測対象のパターン形状を変化させたときの分光反射率や分光偏光特性などを数値解析により求め、実測値ともっとも近い分光反射率や分光偏光特性を持つパターン形状を探索することで、パターン形状を推定する手法である。また、MBL法は、計測対象のパターン形状を変化させたときの電子線波形をシミュレーションにより求め、実測値ともっとも近い電子線波形を持つパターン形状を探索することで、パターン形状を推定する手法である。スキャトロメトリ、MBL法ともに測定装置の特性上、特定の形状の変化に対して感度が低い場合がある。例えばMBL法の場合は電子線画像を利用するため、パターンの高さ変動に対する感度がない。そこで、形状モデルの浮動パラメタとして高さを持つことには意味なない。この場合は形状モデルの高さを固定パラメタとすることが望ましい。
このようにモデル化した形状を別のアプリケーションで利用する場合には、アプリケーションの特性に合わせてパラメタを選択することが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
100 入力データ
101 輪郭抽出データ
102 フィッティングデータ
103 出力データ
200形状モデル
201 ボトムCD
202 台形高さ
203 左側壁傾斜角
204 右側壁傾斜角
205 左ラウンディング
206 右ラウンディング
207 左フッティング
208 右フッティング
211 ボトムCD
212 下台形高さ
213 下台形左側壁傾斜角
214 下台形右側壁傾斜角
215 上台形高さ
216 上台形左側壁傾斜角
217 上台形右側壁傾斜角
218 上台形左ラウンディング
219 上台形右ラウンディング
220 下台形左フッティング
221 下台形右フッティング
110 実形状(実断面形状)
111 モデルの形状
112 実形状とモデルの差
113 サンプリング方向
114 実形状とモデルの差
115 実形状とモデルの差
116 サンプリング方向
117 サンプリング方向
121 形状モデルのパラメタ数
122 誤差関数
123 許容誤差
124〜127 形状モデル
131〜132 重みづけ変更領域
141 パラメタ
142 誤差関数
143、144 誤差関数の変化を示す曲線
151、152 パラメタ
s101 エッジ抽出処理
s102 モデルフィッティング処理
s103 モデル間性能比較処理
s104 画像平均化処理
s105 誤差関数平均値算出処理
s201、s211〜s214 サブステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象試料の断面形状データに対して複数の形状モデルをフィッティングするフィッティング工程と、
前記フィッティング工程にてフィッティングしたフィッティングモデルの精度の指標である誤差関数値に基づいて該複数の形状モデルから少なくとも一の形状モデルを最適モデルとして選択する選択工程とを有する被検査対象試料の断面形状推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の断面形状推定方法であって、
前記選択工程では、前記誤差関数値と予め定めた許容誤差値とを比較して最適モデルを選択することを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の断面形状推定方法であって、
前記フィッティング工程では、該複数の形状モデルのそれぞれと該断面形状データとの誤差が最小となる複数の形状モデルのパラメータを算出することを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の断面形状推定方法であって、
前記フィッティング工程では、Levenberg−Marquardt法を用いて該複数の形状モデルのそれぞれと該断面形状データとの誤差が最小となる複数の形状モデルのパラメータを算出することを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の断面形状推定方法であって、
前記フィッティング工程でフィッティングする該複数の形状モデルのそれぞれは台形形状であることを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の断面形状推定方法であって、
前記選択工程では、さらに、選択された最適モデルのパラメータの近傍のパラメータを最適モデルに当てはめた場合の誤差関数値を算出することを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の断面形状推定方法であって、
前記フィッティング工程では、被検査対象試料の断面SEM画像またはTEM画像またはAFM計測データを断面形状データとして用いて複数の形状モデルをフィッティングすることを特徴とする断面形状推定方法。
【請求項8】
被検査対象試料の断面形状データに対して複数の形状モデルをフィッティングするフィッティング手段と、
前記フィッティング手段にてフィッティングしたフィッティングモデルの精度の指標である誤差関数値に基づいて該複数の形状モデルから少なくとも一の形状モデルを最適モデルとして選択する選択手段とを有する被検査対象試料の断面形状推定装置。
【請求項9】
請求項8記載の断面形状推定装置であって、
前記選択手段では、前記誤差関数値と予め定めた許容誤差値とを比較して最適モデルを選択することを特徴とする断面形状推定装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の断面形状推定装置であって、
前記フィッティング手段では、該複数の形状モデルのそれぞれと該断面形状データとの誤差が最小となる複数の形状モデルのパラメータを算出することを特徴とする断面形状推定装置。
【請求項11】
請求項8または9に記載の断面形状推定装置であって、
前記フィッティング手段では、Levenberg−Marquardt法を用いて該複数の形状モデルのそれぞれと該断面形状データとの誤差が最小となる複数の形状モデルのパラメータを算出することを特徴とする断面形状推定装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれかに記載の断面形状推定装置であって、
前記フィッティング手段でフィッティングする該複数の形状モデルのそれぞれは台形形状であることを特徴とする断面形状推定装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれかに記載の断面形状推定装置であって、
前記選択手段では、さらに、選択された最適モデルのパラメータの近傍のパラメータを最適モデルに当てはめた場合の誤差関数値を算出することを特徴とする断面形状推定装置。
【請求項14】
請求項8乃至13のいずれかに記載の断面形状推定装置であって、
前記フィッティング手段では、被検査対象試料の断面SEM画像またはTEM画像またはAFM計測データを断面形状データとして用いて複数の形状モデルをフィッティングすることを特徴とする断面形状推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−73776(P2013−73776A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211872(P2011−211872)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】