断面観察方法
【課題】被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供する。
【解決手段】基材に基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、マーカー層が形成された基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む断面観察方法である。
【解決手段】基材に基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、マーカー層が形成された基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む断面観察方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面観察方法に関し、特に、断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体装置の製造工程においては、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールなどの処理が適切に行なわれることが重要であり、これらの処理が適切に行なわれるための条件を予め決定しておくことが半導体装置の製造効率を向上させる観点から求められている。
【0003】
エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールなどの処理が適切に行なわれているか否かについては、当該処理の前後の半導体結晶の断面をそれぞれ観察して、比較することにより判断することが可能である。
【0004】
このような半導体結晶の断面観察方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて半導体結晶の断面を観察する手法が用いられることが多い(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−273613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のSEMによる断面観察方法においては、上記処理の前後において半導体結晶の断面がどのように変化したのかを見分けるのが難しく、上記処理が適切に行なわれているか否かについて正確に判断することができないことがあった。
【0006】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材に基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、マーカー層が形成された基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む断面観察方法である。
【0008】
ここで、本発明の断面観察方法において、上記処理は、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層をイオン注入により形成することが好ましい。
【0010】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層をエピタキシャル成長により形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層を基材の最表面および内部の少なくとも一方に形成することが好ましい。
【0012】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層がパターンを形成していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層を複数形成することが好ましい。
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層形成工程の前または後に、基材の最表面に凹凸を形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるようにマーカー層を形成することが好ましい。
【0015】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となるとともに、マーカー層中のドーパント濃度が隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるようにマーカー層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては基材として半導体結晶を用いた場合について説明するが、本発明においては、基材として半導体結晶を用いる場合に限定されるものではない。また、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
<実施の形態1>
以下、図1〜図4を参照して、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1について説明する。
【0019】
まず、図1の模式的斜視図に示すように、半導体結晶からなる基材11の最表面にマーカー層12を形成する。
【0020】
ここで、基材11に用いられる半導体結晶としては特に限定されず、たとえば炭化ケイ素結晶などを用いることができる。
【0021】
また、マーカー層12は、基材11のマーカー層12形成部分以外の部分と導電率が異なる層であれば特に限定はされない。
【0022】
なお、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面に基材11とは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長することにより形成することもでき、そのエピタキシャル成長部分をマーカー層12とすることができる。また、マーカー層12は、上記のイオン注入および上記のエピタキシャル成長をそれぞれ単独で用いて形成してもよく、上記のイオン注入と上記のエピタキシャル成長の両方を用いて形成してもよい。
【0023】
次に、図2の模式的斜視図に示すように、基材11に対して、基材11に形成されたマーカー層12の表面上に半導体結晶層13をエピタキシャル成長させる処理を行なう。これにより、基材11、マーカー層12および半導体結晶層13がこの順序で配列した構成の被処理物10が形成される。ここで、半導体結晶層13としては、基材11に用いられる半導体結晶と同一の材質の半導体結晶であってもよく、異なる材質の半導体結晶であってもよい。
【0024】
次に、図2に示す被処理物10をA−A’に沿って切り出してA−A’縦断面を露出させる。ここで、被処理物10の切り出しは、特に限定されないが、劈開により行なうことが好ましい。被処理物10の切り出しを劈開により行なった場合には、被処理物10のA−A’縦断面をより綺麗な状態で露出させることが可能となる傾向にある。
【0025】
次に、図3の概略図に示すように、被処理物10のA−A’縦断面30に電子31を照射し、電子31の照射によって生成した二次電子32を二次電子検出器33で検出する。この工程を、たとえばSEM(走査型電子顕微鏡)などを用いて被処理物10のA−A’縦断面30の観察箇所全体に対して行なうことによって、二次電子検出器33にて検出された二次電子32の量の差異などに起因して、たとえばSEM像などにより、被処理物10のA−A’縦断面30を観察することができる。
【0026】
図4に、被処理物10のA−A’縦断面30をSEM観察したときのSEM像の一例の概略図を示す。ここで、SEM像において、マーカー層12は、基材11および半導体結晶層13のそれぞれと異なる色で表示されることになる。
【0027】
一般に、試料の表面に電子を照射したときには二次電子(電子の照射により試料の表面から飛び出した電子)が生じ、二次電子を検出することによって、二次電子の検出量の差異により、試料の表面の導電率の差異を観察することができる。
【0028】
そこで、基材11の一部に基材11の他の部分とは導電率が異なるマーカー層12を敢えて形成し、マーカー層12が形成された断面に電子を照射して生成した二次電子を検出することによって、たとえばSEM像などで断面を観察すると、マーカー層12とマーカー層12に隣接する部分との色のコントラストがより明確になる。
【0029】
たとえば、この例において、基材11を構成する半導体結晶と半導体結晶層13を構成する半導体結晶とが同一の材質であってマーカー層12を形成しなかった場合には、基材11と半導体結晶層13との境界が不明瞭となるため、エピタキシャル成長した半導体結晶層13の厚さを正確に測定することは困難である。しかしながら、本発明のように基材11にマーカー層12を予め設けておいた場合には、たとえばSEM像などにおける色のコントラストにより、マーカー層12と半導体結晶層13との境界がより明確になるため、エピタキシャル成長した半導体結晶層13の厚さをより正確に測定することが可能となる。
【0030】
したがって、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1においては、被処理物10の縦断面の観察によりエピタキシャル成長処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0031】
<実施の形態2>
以下、図5および図6を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態2について説明する。実施の形態2では、基材の内部にマーカー層を部分的に形成する点に特徴がある。
【0032】
まず、図5の模式的断面図に示すように、基材11の最表面から深さd1の位置にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件でn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入した後に、基材11と同一組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させてマーカー層12を埋め込むことによって形成することができる。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の内部にイオンを注入することができる条件でn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することによっても形成することができ、そのイオン注入部分がマーカー層12となる。
【0033】
次に、図6の模式的断面図に示すように、基材11に対してエッチング処理を行なうことによって、基材11の最表面から厚さ方向に基材11の一部を除去して被処理物10を形成する。なお、図6に示す破線部分は、上記のエッチング処理により除去された部分を示している。
【0034】
次に、実施の形態1と同様にして、被処理物10の縦断面(図6に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0035】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する基材11の部分と導電率が異なっていることから、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する基材11の部分と異なる色で表示されることになる。したがって、マーカー層12とマーカー層12に隣接する基材11の部分との境界がより明確になるため、上記のエッチング処理後の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d2を正確かつ簡単に測定することができる。
【0036】
そして、上記のエッチング処理前の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d1と上記のエッチング処理後の距離d2との差を求めることによって、上記のエッチング処理におけるエッチング量dを求めることができる。
【0037】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態2においては、被処理物10の縦断面の観察により基材11の厚さ方向へのエッチング処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0038】
なお、上記において、エッチング処理前の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d1は、たとえば、同一方法および同一条件でイオン注入した基材11を予め作製しておき、その基材11の縦断面をSEMなどで観察することによって求めておくことができる。
【0039】
<実施の形態3>
以下、図7および図8を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態3について説明する。実施の形態3では、基材の最表面にマーカー層がパターンを形成している点に特徴がある。
【0040】
まず、図7の模式的断面図に示すように、基材11の最表面にマーカー層12を所定のパターンに形成する。ここで、マーカー層12が形成するパターンは特に限定されないが、たとえば、この例において、マーカー層12は、図7の紙面の表側から裏側に伸びるストライプ状のパターンに形成されている。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面に所定のパターンで形成されたイオン注入マスクを設置した状態で、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより、イオン注入マスクが形成されていない部分に形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0041】
次に、図8の模式的断面図に示すように、基材11に対して、基材11の最表面におけるマーカー層12の形成部分以外の箇所にレジストマスク81を形成した後に、基材11の最表面のエッチング処理(図8の紙面の上下方向および左右方向へのエッチング処理)を行なうことによって、被処理物10を形成する。
【0042】
次に、実施の形態1〜2と同様にして、被処理物10の縦断面(図8に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0043】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する基材11の部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する基材11の部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12とマーカー層12に隣接する基材11の部分との境界がより明確になるため、たとえば、上記の溝の側壁が基材11の最表面に対してどの程度傾いているかについて正確かつ簡単に把握することができる。
【0044】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態3においては、被処理物10の縦断面の観察により基材11の最表面の幅方向へのエッチング処理(図8の紙面の左右方向へのエッチング処理)の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0045】
<実施の形態4>
以下、図9〜図11を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態4について説明する。実施の形態4では、基材の内部と最表面にそれぞれマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0046】
まず、図9の模式的断面図に示すように、半導体結晶基板14の最表面上に基板14とは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させて、そのエピタキシャル成長部分をマーカー層12aとする。なお、半導体結晶基板14に用いられる半導体結晶は特に限定されず、たとえば炭化ケイ素結晶などを用いることができる。
【0047】
次に、図10の模式的断面図に示すように、マーカー層12aの表面上に半導体結晶基板14と同一の組成の半導体結晶からなる半導体結晶層14aをエピタキシャル成長により成長させる。
【0048】
次に、図11の模式的断面図に示すように、エピタキシャル成長させた半導体結晶層14aの表面上に、半導体結晶基板14および半導体結晶層14aとは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させて、そのエピタキシャル成長部分を最表面のマーカー層12bとする。これにより、内部にマーカー層12aが形成され、最表面にマーカー層12bが形成されている構成の基材11が形成される。
【0049】
次に、上記のマーカー層12aおよびマーカー層12bの形成後の基材11に対して、エッチング速度とエピタキシャル成長速度とがほぼ同じぐらいであり、エピタキシャル成長になるか、エッチングになるか予測できないような処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0050】
次に、実施の形態1〜3と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0051】
ここでも、マーカー層12aおよびマーカー層12bは、これらのマーカー層に隣接する部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、これらのマーカー層に隣接する部分と異なる色で表示されることになり、これらのマーカー層12a、12bとこれらに隣接する部分との境界がより明確になる。そのため、エピタキシャル成長している場合には、マーカー層12aおよびマーカー層12bがともに観察されるため、マーカー層12bの表面からエピタキシャル成長後の基材11の最上面までの距離を測定することによって、エピタキシャル成長量を測定することが可能となる。また、エッチングが行なわれている場合には、マーカー層12bは観察されずにマーカー層12aのみが観察されるため、マーカー層12aの表面からエッチング後の基材11の最上面までの距離を測定し、その測定距離をエッチング前に予め測定しておいたマーカー層12bの最上面とマーカー層12aの表面との間の距離から差し引くことによって、エッチング量を測定することが可能となる。
【0052】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態4においては、被処理物の縦断面の観察により基材11に対して、エピタキシャル成長若しくはエッチングのいずれが行なわれるのかをより正確かつ簡単に判断することができ、エピタキシャル成長が行なわれる場合にはエピタキシャル成長量(たとえば膜厚)により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができ、エッチングが行なわれる場合にはエッチング量により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0053】
<実施の形態5>
以下、図12〜図14を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態5について説明する。実施の形態5では、基材の最表面に凹凸を形成した後に、基材の最表面にマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0054】
まず、図12の模式的断面図に示すように、基材11の最表面に凹凸を形成する。ここで、基材11の最表面の凹凸は、たとえば、基材11の平坦な最表面の一部をエッチングにより除去することなどによって形成することができる。
【0055】
次に、図13の模式的断面図に示すように、基材11の凹凸が形成された最表面にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の凹凸が形成された最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0056】
次に、図14の模式的断面図に示すように、基材11の凹凸の最表面に形成されたマーカー層12上に半導体結晶層13をエピタキシャル成長させる処理を行なうことによって被処理物10を形成する。
【0057】
次に、実施の形態1〜4と同様にして、被処理物10の縦断面(図14に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0058】
たとえば、この例においては、たとえばSEM像などにおいてマーカー層12と半導体結晶層13との境界が色の差異として明確に表われるため、マーカー層12の凸部上に成長した半導体結晶層13の厚さh1と凹部上に成長した半導体結晶層13の厚さh2とをより正確に測定することが可能となる。
【0059】
したがって、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5においては、被処理物10の縦断面の観察によりエピタキシャル成長処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0060】
<実施の形態6>
以下、図15〜図16を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態6について説明する。実施の形態6では、基材の最表面にマーカー層を形成した後に、基材の最表面に凹凸を形成する点に特徴がある。
【0061】
まず、図15の模式的断面図に示すように、基材11の最表面にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0062】
次に、図16の模式的断面図に示すように、マーカー層12が形成された基材11の最表面に凹凸を形成する。ここで、基材11の最表面の凹凸は、たとえば、基材11の平坦な最表面の一部をマーカー層12の厚さ以上の深さにエッチングして除去することなどによって形成することができる。
【0063】
次に、上記のマーカー層12の形成後の基材11に対して、比較的短時間でエピタキシャル成長させる処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0064】
次に、実施の形態1〜5と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0065】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12とマーカー層12に隣接する部分との境界がより明確になる。そのため、上記のエピタキシャル成長処理後の基材11の最上面からマーカー層12の表面までの距離を測定することによって、マーカー層12の表面上におけるエピタキシャル成長量を測定することが可能となる。また、予め上記のエピタキシャル成長処理前の基材11の凹凸の大きさを測定しておくことで、基材11の凹部におけるエピタキシャル成長量を求めることも可能となる。さらに、マーカー層12の表面上におけるエピタキシャル成長量と基材11の凹部におけるエピタキシャル成長量との比較も可能となる。
【0066】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態6においては、被処理物の縦断面の観察により基材11に対するエピタキシャル成長において、不純物濃度の差による成長速度の差により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0067】
<実施の形態7>
以下、図17を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態7について説明する。実施の形態7では、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるように基材にマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0068】
まず、図17の模式的断面図に示すように、たとえば、導電型がn型の半導体結晶からなる基材11aの最表面に導電型がp型のマーカー層12cを形成する。
【0069】
ここで、マーカー層12cは、たとえば、n型の半導体結晶からなる基材11aの最表面にp型のドーパントのイオンを注入することができる条件で基材11aの最表面にp型のドーパントのイオンをイオン注入することによって形成することができ、そのp型のドーパントのイオン注入部分をマーカー層12cとすることができる。
【0070】
次に、上記のマーカー層12cの形成後の基材11aをアニールする処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0071】
次に、実施の形態1〜6と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0072】
ここで、上記のアニールによりマーカー層12cが昇華した場合には、マーカー層12cの厚みが低減若しくはマーカー層12c自体が消滅する。一方、上記のアニールによりマーカー層12cが昇華しなかった場合には、マーカー層12cがそのままの厚みで残ることになる。
【0073】
また、マーカー層12cは、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分との境界がより明確になる。それゆえ、上記のアニールによるマーカー層12cの昇華の有無を正確かつ簡単に判断することができることから、たとえば、基材11aが昇華しない程度の適切なアニール処理であるか否かなどを正確かつ簡単に判断することができる。
【0074】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態7においては、被処理物の縦断面の観察により、アニール処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0075】
なお、上記においては、基材11aの導電型がn型で、マーカー層12cの導電型がp型である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、基材11aの導電型がp型で、マーカー層12cの導電型がn型であってもよい。
【0076】
また、本発明において、n型のドーパントとしては、たとえば、窒素やリンなどを用いることができ、p型のドーパントとしては、たとえば、アルミニウムやホウ素などを用いることができる。
【0077】
<実施の形態8>
以下、図18を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態8について説明する。実施の形態8では、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となっているが、マーカー層中のドーパント濃度がマーカー層に隣接する隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるようにマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0078】
まず、図18の模式的断面図に示すように、たとえば導電型がn型の半導体結晶からなる基材11aの最表面に導電型がn型のマーカー層12dを形成する。ここで、マーカー層12dは、たとえば、マーカー層12dのn型のドーパント濃度が基材11aのn型のドーパント濃度の10倍以上となるように、n型の半導体結晶からなる基材11aの最表面にn型のドーパントのイオンをイオン注入することができる条件で基材11aの最表面にn型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12dとすることができる。
【0079】
ここで、マーカー層12dのn型のドーパント濃度を基材11aのn型のドーパント濃度の10倍以上とすることにより、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aとの導電率の差異が大きくなるため、後述するSEMなどの二次電子を検出して行なう断面観察において、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aを表わす色のコントラストがより明確になり、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aとの境界をより明確に把握することができるようになる。
【0080】
次に、上記のマーカー層12dの形成後の基材11aをアニールする処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0081】
次に、実施の形態1〜7と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0082】
ここでも、上記のアニールによりマーカー層12dが昇華した場合には、マーカー層12dの厚みが低減若しくはマーカー層12d自体が消滅する。一方、上記のアニールによりマーカー層12dが昇華しなかった場合には、マーカー層12dがそのままの厚みで残ることになる。
【0083】
また、マーカー層12dは、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分との境界がより明確になる。それゆえ、上記のアニールによるマーカー層12dの昇華の有無を正確かつ簡単に判断することができることから、たとえば、実施の形態8においても、基材11aが昇華しない程度の適切なアニール処理であるか否かなどを正確かつ簡単に判断することができる。
【0084】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態8においても、被処理物の縦断面の観察により、アニール処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0085】
なお、実施の形態8においては、基材11aおよびマーカー層12dの導電型がそれぞれn型である場合について説明したが、これに限定されず、基材11aおよびマーカー層12dの導電型はそれぞれp型であってもよい。
【0086】
また、上記の実施の形態1〜8においては、マーカー層がそれぞれ所定の個数だけ形成される場合について説明したが、本発明において形成されるマーカー層の個数は1つであってもよく、2つ以上の複数であってもよい。
【実施例】
【0087】
<実施例1>
まず、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0088】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とAlイオンが注入されていない炭化ケイ素基板の内部部分との境界が炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから明確に把握することができる。
【0089】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板の最表面上にn型のドーパントとして窒素を含む炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させる。
【0090】
その後、上記の炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させた炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とエピタキシャル成長させた炭化ケイ素結晶層との境界を炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから明確に把握することができる。
【0091】
したがって、上記のSEM観察により、どこからが上記のエピタキシャル成長にて形成された炭化ケイ素結晶層であるかが明確に把握することができることから、エピタキシャル成長した炭化ケイ素結晶層の厚さを正確かつ簡単に測定することができる。
【0092】
<実施例2>
まず、実施例1と同様に、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0093】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板の最表面上にn型のドーパントとして窒素を含む炭化ケイ素結晶層を10μm程度の厚さでエピタキシャル成長させる。
【0094】
次に、上記の炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させた炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、エピタキシャル成長した炭化ケイ素結晶層の厚さを把握する。
【0095】
次に、SF6ガスを含むガス中で上記の炭化ケイ素結晶層を数分間プラズマエッチングする。
【0096】
次に、上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素結晶層の厚さを再度把握する。
【0097】
その後、上記のプラズマエッチング前の炭化ケイ素結晶層の厚さから上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素結晶層の厚さを差し引くことによって上記のプラズマエッチングによるエッチング量を正確かつ簡単に把握することができ、そのエッチング量をプラズマエッチング時間で割ることによって上記のプラズマエッチングのエッチングレートもより正確かつ簡単に把握することができる。
【0098】
<実施例3>
まず、実施例1〜2と同様に、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0099】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とAlイオンが注入されていない炭化ケイ素基板の内部部分との境界を炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから把握することによってAlイオン注入層の厚さを把握する。
【0100】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を温度が1800℃のAr(アルゴン)雰囲気に30分間曝すことによって炭化ケイ素基板をアニールする。
【0101】
次に、上記のアニール後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、上記のアニール後のAlイオン注入層の厚さを再度把握する。
【0102】
その後、上記のアニール前のAlイオン注入層の厚さから上記のアニール後のAlイオン注入層の厚さを差し引くことによって上記のアニールによって昇華したAlイオン注入層の量を正確かつ簡単に把握することができ、その昇華したAlイオン注入層の量によってAlイオン注入層の昇華の有無を正確かつ簡単に把握することができるようになる。
【0103】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することができる。したがって、本発明は、たとえば、半導体装置の製造工程などに好適に利用することができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の一部を図解する模式的な斜視図である。
【図2】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する模式的な斜視図である。
【図3】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する概略図である。
【図4】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図5】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態2の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図6】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態2の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図7】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態3の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図8】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態3の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図9】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図10】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図11】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図12】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図13】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図14】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図15】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態6の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図16】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態6の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図17】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態7の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図18】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態8の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0106】
10 被処理物、11,11a 基材、12,12a,12b,12c,12d マーカー層、13,14a 半導体結晶層、14 半導体結晶基板、30 A−A’縦断面、31 電子、32 二次電子、33 二次電子検出器、81 レジストマスク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面観察方法に関し、特に、断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体装置の製造工程においては、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールなどの処理が適切に行なわれることが重要であり、これらの処理が適切に行なわれるための条件を予め決定しておくことが半導体装置の製造効率を向上させる観点から求められている。
【0003】
エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールなどの処理が適切に行なわれているか否かについては、当該処理の前後の半導体結晶の断面をそれぞれ観察して、比較することにより判断することが可能である。
【0004】
このような半導体結晶の断面観察方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて半導体結晶の断面を観察する手法が用いられることが多い(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−273613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のSEMによる断面観察方法においては、上記処理の前後において半導体結晶の断面がどのように変化したのかを見分けるのが難しく、上記処理が適切に行なわれているか否かについて正確に判断することができないことがあった。
【0006】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材に基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、マーカー層が形成された基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む断面観察方法である。
【0008】
ここで、本発明の断面観察方法において、上記処理は、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層をイオン注入により形成することが好ましい。
【0010】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層をエピタキシャル成長により形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層を基材の最表面および内部の少なくとも一方に形成することが好ましい。
【0012】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層がパターンを形成していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層を複数形成することが好ましい。
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層形成工程の前または後に、基材の最表面に凹凸を形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるようにマーカー層を形成することが好ましい。
【0015】
また、本発明の断面観察方法においては、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となるとともに、マーカー層中のドーパント濃度が隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるようにマーカー層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては基材として半導体結晶を用いた場合について説明するが、本発明においては、基材として半導体結晶を用いる場合に限定されるものではない。また、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0018】
<実施の形態1>
以下、図1〜図4を参照して、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1について説明する。
【0019】
まず、図1の模式的斜視図に示すように、半導体結晶からなる基材11の最表面にマーカー層12を形成する。
【0020】
ここで、基材11に用いられる半導体結晶としては特に限定されず、たとえば炭化ケイ素結晶などを用いることができる。
【0021】
また、マーカー層12は、基材11のマーカー層12形成部分以外の部分と導電率が異なる層であれば特に限定はされない。
【0022】
なお、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面に基材11とは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長することにより形成することもでき、そのエピタキシャル成長部分をマーカー層12とすることができる。また、マーカー層12は、上記のイオン注入および上記のエピタキシャル成長をそれぞれ単独で用いて形成してもよく、上記のイオン注入と上記のエピタキシャル成長の両方を用いて形成してもよい。
【0023】
次に、図2の模式的斜視図に示すように、基材11に対して、基材11に形成されたマーカー層12の表面上に半導体結晶層13をエピタキシャル成長させる処理を行なう。これにより、基材11、マーカー層12および半導体結晶層13がこの順序で配列した構成の被処理物10が形成される。ここで、半導体結晶層13としては、基材11に用いられる半導体結晶と同一の材質の半導体結晶であってもよく、異なる材質の半導体結晶であってもよい。
【0024】
次に、図2に示す被処理物10をA−A’に沿って切り出してA−A’縦断面を露出させる。ここで、被処理物10の切り出しは、特に限定されないが、劈開により行なうことが好ましい。被処理物10の切り出しを劈開により行なった場合には、被処理物10のA−A’縦断面をより綺麗な状態で露出させることが可能となる傾向にある。
【0025】
次に、図3の概略図に示すように、被処理物10のA−A’縦断面30に電子31を照射し、電子31の照射によって生成した二次電子32を二次電子検出器33で検出する。この工程を、たとえばSEM(走査型電子顕微鏡)などを用いて被処理物10のA−A’縦断面30の観察箇所全体に対して行なうことによって、二次電子検出器33にて検出された二次電子32の量の差異などに起因して、たとえばSEM像などにより、被処理物10のA−A’縦断面30を観察することができる。
【0026】
図4に、被処理物10のA−A’縦断面30をSEM観察したときのSEM像の一例の概略図を示す。ここで、SEM像において、マーカー層12は、基材11および半導体結晶層13のそれぞれと異なる色で表示されることになる。
【0027】
一般に、試料の表面に電子を照射したときには二次電子(電子の照射により試料の表面から飛び出した電子)が生じ、二次電子を検出することによって、二次電子の検出量の差異により、試料の表面の導電率の差異を観察することができる。
【0028】
そこで、基材11の一部に基材11の他の部分とは導電率が異なるマーカー層12を敢えて形成し、マーカー層12が形成された断面に電子を照射して生成した二次電子を検出することによって、たとえばSEM像などで断面を観察すると、マーカー層12とマーカー層12に隣接する部分との色のコントラストがより明確になる。
【0029】
たとえば、この例において、基材11を構成する半導体結晶と半導体結晶層13を構成する半導体結晶とが同一の材質であってマーカー層12を形成しなかった場合には、基材11と半導体結晶層13との境界が不明瞭となるため、エピタキシャル成長した半導体結晶層13の厚さを正確に測定することは困難である。しかしながら、本発明のように基材11にマーカー層12を予め設けておいた場合には、たとえばSEM像などにおける色のコントラストにより、マーカー層12と半導体結晶層13との境界がより明確になるため、エピタキシャル成長した半導体結晶層13の厚さをより正確に測定することが可能となる。
【0030】
したがって、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1においては、被処理物10の縦断面の観察によりエピタキシャル成長処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0031】
<実施の形態2>
以下、図5および図6を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態2について説明する。実施の形態2では、基材の内部にマーカー層を部分的に形成する点に特徴がある。
【0032】
まず、図5の模式的断面図に示すように、基材11の最表面から深さd1の位置にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件でn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入した後に、基材11と同一組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させてマーカー層12を埋め込むことによって形成することができる。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の内部にイオンを注入することができる条件でn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することによっても形成することができ、そのイオン注入部分がマーカー層12となる。
【0033】
次に、図6の模式的断面図に示すように、基材11に対してエッチング処理を行なうことによって、基材11の最表面から厚さ方向に基材11の一部を除去して被処理物10を形成する。なお、図6に示す破線部分は、上記のエッチング処理により除去された部分を示している。
【0034】
次に、実施の形態1と同様にして、被処理物10の縦断面(図6に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0035】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する基材11の部分と導電率が異なっていることから、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する基材11の部分と異なる色で表示されることになる。したがって、マーカー層12とマーカー層12に隣接する基材11の部分との境界がより明確になるため、上記のエッチング処理後の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d2を正確かつ簡単に測定することができる。
【0036】
そして、上記のエッチング処理前の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d1と上記のエッチング処理後の距離d2との差を求めることによって、上記のエッチング処理におけるエッチング量dを求めることができる。
【0037】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態2においては、被処理物10の縦断面の観察により基材11の厚さ方向へのエッチング処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0038】
なお、上記において、エッチング処理前の基材11の最表面とマーカー層12の最上面との間の距離d1は、たとえば、同一方法および同一条件でイオン注入した基材11を予め作製しておき、その基材11の縦断面をSEMなどで観察することによって求めておくことができる。
【0039】
<実施の形態3>
以下、図7および図8を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態3について説明する。実施の形態3では、基材の最表面にマーカー層がパターンを形成している点に特徴がある。
【0040】
まず、図7の模式的断面図に示すように、基材11の最表面にマーカー層12を所定のパターンに形成する。ここで、マーカー層12が形成するパターンは特に限定されないが、たとえば、この例において、マーカー層12は、図7の紙面の表側から裏側に伸びるストライプ状のパターンに形成されている。また、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面に所定のパターンで形成されたイオン注入マスクを設置した状態で、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより、イオン注入マスクが形成されていない部分に形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0041】
次に、図8の模式的断面図に示すように、基材11に対して、基材11の最表面におけるマーカー層12の形成部分以外の箇所にレジストマスク81を形成した後に、基材11の最表面のエッチング処理(図8の紙面の上下方向および左右方向へのエッチング処理)を行なうことによって、被処理物10を形成する。
【0042】
次に、実施の形態1〜2と同様にして、被処理物10の縦断面(図8に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0043】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する基材11の部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する基材11の部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12とマーカー層12に隣接する基材11の部分との境界がより明確になるため、たとえば、上記の溝の側壁が基材11の最表面に対してどの程度傾いているかについて正確かつ簡単に把握することができる。
【0044】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態3においては、被処理物10の縦断面の観察により基材11の最表面の幅方向へのエッチング処理(図8の紙面の左右方向へのエッチング処理)の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0045】
<実施の形態4>
以下、図9〜図11を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態4について説明する。実施の形態4では、基材の内部と最表面にそれぞれマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0046】
まず、図9の模式的断面図に示すように、半導体結晶基板14の最表面上に基板14とは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させて、そのエピタキシャル成長部分をマーカー層12aとする。なお、半導体結晶基板14に用いられる半導体結晶は特に限定されず、たとえば炭化ケイ素結晶などを用いることができる。
【0047】
次に、図10の模式的断面図に示すように、マーカー層12aの表面上に半導体結晶基板14と同一の組成の半導体結晶からなる半導体結晶層14aをエピタキシャル成長により成長させる。
【0048】
次に、図11の模式的断面図に示すように、エピタキシャル成長させた半導体結晶層14aの表面上に、半導体結晶基板14および半導体結晶層14aとは異なる組成の半導体結晶層をエピタキシャル成長させて、そのエピタキシャル成長部分を最表面のマーカー層12bとする。これにより、内部にマーカー層12aが形成され、最表面にマーカー層12bが形成されている構成の基材11が形成される。
【0049】
次に、上記のマーカー層12aおよびマーカー層12bの形成後の基材11に対して、エッチング速度とエピタキシャル成長速度とがほぼ同じぐらいであり、エピタキシャル成長になるか、エッチングになるか予測できないような処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0050】
次に、実施の形態1〜3と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0051】
ここでも、マーカー層12aおよびマーカー層12bは、これらのマーカー層に隣接する部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、これらのマーカー層に隣接する部分と異なる色で表示されることになり、これらのマーカー層12a、12bとこれらに隣接する部分との境界がより明確になる。そのため、エピタキシャル成長している場合には、マーカー層12aおよびマーカー層12bがともに観察されるため、マーカー層12bの表面からエピタキシャル成長後の基材11の最上面までの距離を測定することによって、エピタキシャル成長量を測定することが可能となる。また、エッチングが行なわれている場合には、マーカー層12bは観察されずにマーカー層12aのみが観察されるため、マーカー層12aの表面からエッチング後の基材11の最上面までの距離を測定し、その測定距離をエッチング前に予め測定しておいたマーカー層12bの最上面とマーカー層12aの表面との間の距離から差し引くことによって、エッチング量を測定することが可能となる。
【0052】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態4においては、被処理物の縦断面の観察により基材11に対して、エピタキシャル成長若しくはエッチングのいずれが行なわれるのかをより正確かつ簡単に判断することができ、エピタキシャル成長が行なわれる場合にはエピタキシャル成長量(たとえば膜厚)により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができ、エッチングが行なわれる場合にはエッチング量により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0053】
<実施の形態5>
以下、図12〜図14を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態5について説明する。実施の形態5では、基材の最表面に凹凸を形成した後に、基材の最表面にマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0054】
まず、図12の模式的断面図に示すように、基材11の最表面に凹凸を形成する。ここで、基材11の最表面の凹凸は、たとえば、基材11の平坦な最表面の一部をエッチングにより除去することなどによって形成することができる。
【0055】
次に、図13の模式的断面図に示すように、基材11の凹凸が形成された最表面にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の凹凸が形成された最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0056】
次に、図14の模式的断面図に示すように、基材11の凹凸の最表面に形成されたマーカー層12上に半導体結晶層13をエピタキシャル成長させる処理を行なうことによって被処理物10を形成する。
【0057】
次に、実施の形態1〜4と同様にして、被処理物10の縦断面(図14に示す断面)に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物10の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物10の縦断面を観察する。
【0058】
たとえば、この例においては、たとえばSEM像などにおいてマーカー層12と半導体結晶層13との境界が色の差異として明確に表われるため、マーカー層12の凸部上に成長した半導体結晶層13の厚さh1と凹部上に成長した半導体結晶層13の厚さh2とをより正確に測定することが可能となる。
【0059】
したがって、本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5においては、被処理物10の縦断面の観察によりエピタキシャル成長処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0060】
<実施の形態6>
以下、図15〜図16を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態6について説明する。実施の形態6では、基材の最表面にマーカー層を形成した後に、基材の最表面に凹凸を形成する点に特徴がある。
【0061】
まず、図15の模式的断面図に示すように、基材11の最表面にマーカー層12を形成する。ここで、マーカー層12は、たとえば、基材11の最表面にイオンを注入することができる条件で基材11の最表面にn型またはp型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12とすることができる。
【0062】
次に、図16の模式的断面図に示すように、マーカー層12が形成された基材11の最表面に凹凸を形成する。ここで、基材11の最表面の凹凸は、たとえば、基材11の平坦な最表面の一部をマーカー層12の厚さ以上の深さにエッチングして除去することなどによって形成することができる。
【0063】
次に、上記のマーカー層12の形成後の基材11に対して、比較的短時間でエピタキシャル成長させる処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0064】
次に、実施の形態1〜5と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0065】
ここでも、マーカー層12は、マーカー層12に隣接する部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12に隣接する部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12とマーカー層12に隣接する部分との境界がより明確になる。そのため、上記のエピタキシャル成長処理後の基材11の最上面からマーカー層12の表面までの距離を測定することによって、マーカー層12の表面上におけるエピタキシャル成長量を測定することが可能となる。また、予め上記のエピタキシャル成長処理前の基材11の凹凸の大きさを測定しておくことで、基材11の凹部におけるエピタキシャル成長量を求めることも可能となる。さらに、マーカー層12の表面上におけるエピタキシャル成長量と基材11の凹部におけるエピタキシャル成長量との比較も可能となる。
【0066】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態6においては、被処理物の縦断面の観察により基材11に対するエピタキシャル成長において、不純物濃度の差による成長速度の差により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0067】
<実施の形態7>
以下、図17を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態7について説明する。実施の形態7では、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるように基材にマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0068】
まず、図17の模式的断面図に示すように、たとえば、導電型がn型の半導体結晶からなる基材11aの最表面に導電型がp型のマーカー層12cを形成する。
【0069】
ここで、マーカー層12cは、たとえば、n型の半導体結晶からなる基材11aの最表面にp型のドーパントのイオンを注入することができる条件で基材11aの最表面にp型のドーパントのイオンをイオン注入することによって形成することができ、そのp型のドーパントのイオン注入部分をマーカー層12cとすることができる。
【0070】
次に、上記のマーカー層12cの形成後の基材11aをアニールする処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0071】
次に、実施の形態1〜6と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0072】
ここで、上記のアニールによりマーカー層12cが昇華した場合には、マーカー層12cの厚みが低減若しくはマーカー層12c自体が消滅する。一方、上記のアニールによりマーカー層12cが昇華しなかった場合には、マーカー層12cがそのままの厚みで残ることになる。
【0073】
また、マーカー層12cは、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12cに隣接する基材11aの部分との境界がより明確になる。それゆえ、上記のアニールによるマーカー層12cの昇華の有無を正確かつ簡単に判断することができることから、たとえば、基材11aが昇華しない程度の適切なアニール処理であるか否かなどを正確かつ簡単に判断することができる。
【0074】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態7においては、被処理物の縦断面の観察により、アニール処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0075】
なお、上記においては、基材11aの導電型がn型で、マーカー層12cの導電型がp型である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、基材11aの導電型がp型で、マーカー層12cの導電型がn型であってもよい。
【0076】
また、本発明において、n型のドーパントとしては、たとえば、窒素やリンなどを用いることができ、p型のドーパントとしては、たとえば、アルミニウムやホウ素などを用いることができる。
【0077】
<実施の形態8>
以下、図18を参照して、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態8について説明する。実施の形態8では、マーカー層とマーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となっているが、マーカー層中のドーパント濃度がマーカー層に隣接する隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるようにマーカー層を形成する点に特徴がある。
【0078】
まず、図18の模式的断面図に示すように、たとえば導電型がn型の半導体結晶からなる基材11aの最表面に導電型がn型のマーカー層12dを形成する。ここで、マーカー層12dは、たとえば、マーカー層12dのn型のドーパント濃度が基材11aのn型のドーパント濃度の10倍以上となるように、n型の半導体結晶からなる基材11aの最表面にn型のドーパントのイオンをイオン注入することができる条件で基材11aの最表面にn型のドーパントのイオンをイオン注入することにより形成することができ、そのイオン注入部分をマーカー層12dとすることができる。
【0079】
ここで、マーカー層12dのn型のドーパント濃度を基材11aのn型のドーパント濃度の10倍以上とすることにより、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aとの導電率の差異が大きくなるため、後述するSEMなどの二次電子を検出して行なう断面観察において、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aを表わす色のコントラストがより明確になり、マーカー層12dとそれに隣接する基材11aとの境界をより明確に把握することができるようになる。
【0080】
次に、上記のマーカー層12dの形成後の基材11aをアニールする処理を行なうことによって被処理物を形成する。
【0081】
次に、実施の形態1〜7と同様にして、被処理物の縦断面に電子を照射し、電子の照射によって生成した二次電子を二次電子検出器で検出する。この工程を、たとえばSEMなどにより被処理物の縦断面の観察箇所全体に対して行なうことによって、被処理物の縦断面を観察する。
【0082】
ここでも、上記のアニールによりマーカー層12dが昇華した場合には、マーカー層12dの厚みが低減若しくはマーカー層12d自体が消滅する。一方、上記のアニールによりマーカー層12dが昇華しなかった場合には、マーカー層12dがそのままの厚みで残ることになる。
【0083】
また、マーカー層12dは、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分と導電率が異なるために、たとえばSEM像などにおいて、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分と異なる色で表示されることになり、マーカー層12dに隣接する基材11aの部分との境界がより明確になる。それゆえ、上記のアニールによるマーカー層12dの昇華の有無を正確かつ簡単に判断することができることから、たとえば、実施の形態8においても、基材11aが昇華しない程度の適切なアニール処理であるか否かなどを正確かつ簡単に判断することができる。
【0084】
したがって、本発明の断面観察方法の他の一例である実施の形態8においても、被処理物の縦断面の観察により、アニール処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる。
【0085】
なお、実施の形態8においては、基材11aおよびマーカー層12dの導電型がそれぞれn型である場合について説明したが、これに限定されず、基材11aおよびマーカー層12dの導電型はそれぞれp型であってもよい。
【0086】
また、上記の実施の形態1〜8においては、マーカー層がそれぞれ所定の個数だけ形成される場合について説明したが、本発明において形成されるマーカー層の個数は1つであってもよく、2つ以上の複数であってもよい。
【実施例】
【0087】
<実施例1>
まず、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0088】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とAlイオンが注入されていない炭化ケイ素基板の内部部分との境界が炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから明確に把握することができる。
【0089】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板の最表面上にn型のドーパントとして窒素を含む炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させる。
【0090】
その後、上記の炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させた炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とエピタキシャル成長させた炭化ケイ素結晶層との境界を炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから明確に把握することができる。
【0091】
したがって、上記のSEM観察により、どこからが上記のエピタキシャル成長にて形成された炭化ケイ素結晶層であるかが明確に把握することができることから、エピタキシャル成長した炭化ケイ素結晶層の厚さを正確かつ簡単に測定することができる。
【0092】
<実施例2>
まず、実施例1と同様に、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0093】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板の最表面上にn型のドーパントとして窒素を含む炭化ケイ素結晶層を10μm程度の厚さでエピタキシャル成長させる。
【0094】
次に、上記の炭化ケイ素結晶層をエピタキシャル成長させた炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、エピタキシャル成長した炭化ケイ素結晶層の厚さを把握する。
【0095】
次に、SF6ガスを含むガス中で上記の炭化ケイ素結晶層を数分間プラズマエッチングする。
【0096】
次に、上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素結晶層の厚さを再度把握する。
【0097】
その後、上記のプラズマエッチング前の炭化ケイ素結晶層の厚さから上記のプラズマエッチング後の炭化ケイ素結晶層の厚さを差し引くことによって上記のプラズマエッチングによるエッチング量を正確かつ簡単に把握することができ、そのエッチング量をプラズマエッチング時間で割ることによって上記のプラズマエッチングのエッチングレートもより正確かつ簡単に把握することができる。
【0098】
<実施例3>
まず、実施例1〜2と同様に、n型のドーパントとしての窒素が1×1018〜1×1019atoms/cm3のドーパント濃度で含まれている炭化ケイ素基板の最表面の全面に、炭化ケイ素基板の最表面から深さ0.5μmの箇所までにp型のドーパントとしてのAlが1×1020atoms/cm3のドーパント濃度で含まれるようにAlイオンをイオン注入する。
【0099】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、Alイオンが注入された炭化ケイ素基板の最表面部分のAlイオン注入層とAlイオンが注入されていない炭化ケイ素基板の内部部分との境界を炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから把握することによってAlイオン注入層の厚さを把握する。
【0100】
次に、上記のAlイオンのイオン注入後の炭化ケイ素基板を温度が1800℃のAr(アルゴン)雰囲気に30分間曝すことによって炭化ケイ素基板をアニールする。
【0101】
次に、上記のアニール後の炭化ケイ素基板を劈開し、その劈開により露出した炭化ケイ素基板の縦断面をSEMを用いて観察する。これにより、炭化ケイ素基板の縦断面のSEM像を表わすSEM写真の色のコントラストから、上記のアニール後のAlイオン注入層の厚さを再度把握する。
【0102】
その後、上記のアニール前のAlイオン注入層の厚さから上記のアニール後のAlイオン注入層の厚さを差し引くことによって上記のアニールによって昇華したAlイオン注入層の量を正確かつ簡単に把握することができ、その昇華したAlイオン注入層の量によってAlイオン注入層の昇華の有無を正確かつ簡単に把握することができるようになる。
【0103】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、被処理物の断面の観察により処理の適否をより正確かつ簡単に判断することができる断面観察方法を提供することができる。したがって、本発明は、たとえば、半導体装置の製造工程などに好適に利用することができる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の一部を図解する模式的な斜視図である。
【図2】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する模式的な斜視図である。
【図3】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する概略図である。
【図4】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態1の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図5】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態2の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図6】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態2の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図7】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態3の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図8】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態3の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図9】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図10】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図11】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態4の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図12】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図13】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図14】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態5の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図15】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態6の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図16】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態6の工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。
【図17】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態7の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【図18】本発明の断面観察方法の一例である実施の形態8の工程の一部を図解する模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0106】
10 被処理物、11,11a 基材、12,12a,12b,12c,12d マーカー層、13,14a 半導体結晶層、14 半導体結晶基板、30 A−A’縦断面、31 電子、32 二次電子、33 二次電子検出器、81 レジストマスク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に前記基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、
前記マーカー層が形成された前記基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、
前記被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む、断面観察方法。
【請求項2】
前記処理は、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の断面観察方法。
【請求項3】
前記マーカー層をイオン注入により形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の断面観察方法。
【請求項4】
前記マーカー層をエピタキシャル成長により形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項5】
前記マーカー層を前記基材の最表面および内部の少なくとも一方に形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項6】
前記マーカー層がパターンを形成していることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項7】
前記マーカー層を複数形成することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項8】
前記マーカー層形成工程の前または後に、前記基材の最表面に凹凸を形成することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項9】
前記マーカー層と前記マーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるように前記マーカー層を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項10】
前記マーカー層と前記マーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となるとともに、前記マーカー層中のドーパント濃度が前記隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるように前記マーカー層を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項1】
基材に前記基材の他の部分とは導電率が異なるマーカー層を形成するマーカー層形成工程と、
前記マーカー層が形成された前記基材に対して処理を行なって被処理物を形成する被処理物形成工程と、
前記被処理物の断面に電子を照射することにより発生した二次電子を検出する二次電子検出工程とを含む、断面観察方法。
【請求項2】
前記処理は、エピタキシャル成長、エッチングおよびアニールからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の断面観察方法。
【請求項3】
前記マーカー層をイオン注入により形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の断面観察方法。
【請求項4】
前記マーカー層をエピタキシャル成長により形成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項5】
前記マーカー層を前記基材の最表面および内部の少なくとも一方に形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項6】
前記マーカー層がパターンを形成していることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項7】
前記マーカー層を複数形成することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項8】
前記マーカー層形成工程の前または後に、前記基材の最表面に凹凸を形成することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項9】
前記マーカー層と前記マーカー層に隣接する隣接領域とが異なる導電型となるように前記マーカー層を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の断面観察方法。
【請求項10】
前記マーカー層と前記マーカー層に隣接する隣接領域とが同一の導電型となるとともに、前記マーカー層中のドーパント濃度が前記隣接領域中のドーパント濃度の10倍以上となるように前記マーカー層を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の断面観察方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−25848(P2010−25848A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189675(P2008−189675)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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