説明

新しい安定性のある液状酵母製剤、同製剤を生産する方法、およびその使用法

本発明の目的は、新しい、容易に量り分けられる、安定性のある攪拌の必要のない、標準液状酵母より長い使用期限の液状酵母製剤を供給することである。本発明は、新しい安定性のある液状酵母製剤、同製剤を生産する方法、およびその使用法に関し,特に,ポリヒドロキシ化合物、好ましくはグリセロール、およびイナゴマメ、グアル、トラガカント、アラビアゴムまたはキサンタンガムから成るゴム、好ましくはキサンタンガムを含む新しい安定性のある液状酵母に関する。本発明はさらに、前記製剤の使用法に加えて、同製剤の製造法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシ化合物、好ましくはグリセロール、およびイナゴマメ、グアル、トラガカント、アラビアゴムまたはキサンタンガムから成るゴム、好ましくはキサンタンガムを含む新しい安定性のある液状酵母に関する。本発明はさらに、前記製剤の使用法に加えて、同製剤の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料用エタノールの生産は最近1〜2年かなり人気が出てきている。今日米国単独で、80を超えるこのようなプラントが稼動している。その熱意はMTBEの代わりとしての必要性と、他の国々に対するエネルギー依存がより少なくなればいいという願望とによって駆り立てられてきた。代表的なエタノール生産プラントは、酵母(代表的にはサッカロミケス)を用いて1年に平均5000万ガロンの純エタノールを生産すると思われるが、大部分は、しかしこれだけではないが、200万リットルを超える大きな発酵槽の中で加水分解されたコーンスターチから生産される。
【0003】
酵母の増殖の基礎となる炭素およびエネルギー源は糖類である。酵母は、基質であるデンプンを加水分解して発酵を引き起こすことのできる糖類に変えるために適した酵素を含まないため、変性していないデンプンは用いることができない。糖蜜中に存在する糖類であるショ糖、果糖およびブドウ糖の混合物は容易に発酵するため、ビートおよびケイン類の糖蜜は通常発酵における未加工の材料として用いられる。酵母は、増殖のため糖のほかにいくつかの鉱物、ビタミン、および塩を必要とする。これらのうち一部はフラッシュ減菌法を行なう前にビートとケイン類の糖蜜の混合物に加えることが可能で、一方他のものは発酵に対して別に与えられる。あるいは、別の栄養食のタンクは一部の必要なビタミンとミネラルの混合と送達のために用いられることもある。必要な窒素はアンモニアの形で供給され、リン酸塩はリン酸の形で供給される。個々のこれらの栄養素は、発酵に対して別々に栄養を与えられ、この工程のより望ましいpH制御を可能にする。通常はマッシュあるいはウワートと呼ばれる滅菌された糖蜜は別々のステンレススチールタンクに保存される。その後このタンクに保存されたマッシュは、適当な発酵用容器に糖および他の栄養素を与えるために用いられる。
【0004】
大量の工業用エタノール生産において、コーンスターチは低価格であることとその有用性のために、一般に好まれる基質である。コーンスターチの使用において、多くの場合最初の部分加水分解段階(アルファアミラーゼを用いた)では同時糖化発酵段階を先に行ない(グルコアミラーゼの存在下で)、その後蒸留を行なう。
【0005】
酵母製剤は、いわゆる増殖(propagator)を含む様々な発酵槽に接種するために用いられ、このことは通常同時糖化発酵段階で起こる。同時糖化発酵によって、先に起こった部分加水分解段階で生じるデキストリンの制御された段階的な加水分解が確実に起こる。この同時に起こる加水分解と発酵によって、糖がゆっくりと放出され、すべてのデキストリンが発酵開始時点において、また酵母接種に先立ってすでに加水分解されている場合、存在するであろう一点に集中する非常に大きな浸透圧には曝露されないことが保証される。
【0006】
商業用発酵用に用いられる酵母の生産は、本来多段階の工程である。多くの場合、商業用生産には、最終的な酵母製品の純度および生存度が保証される方法で大量に酵母を包装し、保存し、出荷されることが必要である。
【0007】
例えば、パン酵母の生産は、多くの場合適当な酵母株の純粋な培養試験管あるいは凍結したバイアルを用いて開始される。この酵母は、厳しい滅菌条件下の培養基中で種が増殖する圧力培養タンクである小さい圧力式容器に対する接種として用いられる。増殖後、この容器の内容物を、再び滅菌条件下でいくらか通気しながら増殖が行なわれるより大きな清潔な発酵槽に移す。これらの初期段階はバッチ式発酵として実施される。バッチ式発酵において、すべての増殖培地および栄養素は接種前にタンクに導入される。
【0008】
純粋な培養容器から、増殖した細胞を一連の段階的により大きなseed発酵槽とsemi-seed発酵槽に移す。これらの末期段階は半回分式発酵として実施される。半回分式発酵の間に、糖蜜、リン酸、アンモニアおよびミネラルは制御された割合で酵母に与えられる。この割合は、増殖を最大化しアルコール産生を防ぐために十分な糖および栄養素を酵母に与えるようデザインされている。さらに、これらの半回分式発酵は完全に滅菌状態になるわけではない。多数のパイプ、ポンプおよび遠心分離機を通してすべてのものが移動する間に、これらの発酵に必要な大量の空気の滅菌を保証するために、あるいは滅菌条件を達成するために圧力を加えたタンクを使用することは経済的ではない。できる限り無菌的な条件を保証するために、装置の広範囲の洗浄、パイプとタンクに蒸気を送ること、および空気のフィルタリングが行なわれた。
【0009】
semi-seed発酵の終わりの時点で、容器の内容物を、消費された糖蜜から酵母を分離する一連の分離器へポンプで送る。その後酵母は冷水で洗浄し、商業的発酵タンクに接種するために使用するまで、クリーム状酵母を約34°Fで保持するsemi-seed酵母保存タンクにポンプで送る。これらの発酵槽は発酵工程の最後の段階であり、多くの場合最終的またはトレード発酵と呼ばれる。
【0010】
商業用発酵は、50,000ガロンまでの作業量で大規模な発酵槽内で行なわれる。商業用の発酵を開始するために、set
waterと呼ばれる多量の水を発酵槽の中にポンプで送る。次に、ピッチングと呼ばれる工程では、保存タンクからのsemi-seed酵母は発酵槽に移動させる。種酵母の添加後、通気、冷却および栄養素の追加を始め、15〜20時間の発酵を開始する。発酵の開始時点で、液状種酵母と追加した水は、発酵槽の容量の約三分の一から二分の一を占めているにすぎない。一連の発酵の間栄養素を連続的に追加し発酵槽を最終的な容量にする。増大した細胞集団の増殖を助けるために、さらに多くの栄養素が与えられる必要があるため、栄養素追加の割合は発酵全体を通して増加する。この発酵の間に酵母細胞の数は5倍から10倍に増加する。
【0011】
容器の底においた一連の穴のあいた試験管を通して発酵槽に空気を送る。気流の速度は1分あたり、発酵槽の容量あたり、約1容量の空気である。酵母が増殖する間多量の熱が作られ、冷却は内部冷却コイルによって、あるいは外部熱交換器を通して、培養液として知られている発酵液をポンプで送ることによって行なう。栄養素の追加とpH調節、温度および気流の調節は慎重に監視され、全生産工程の間コンピューターシステムによって制御される。発酵全体を通して、温度は約86゜Fに保たれ、PHは全体として4.5〜5.5の範囲である。
【0012】
発酵の終わりの時点で、発酵槽の培養液をノズル型の遠心分離機で分離し、水で洗浄し、再度遠心分離して15から24%の固体濃度のクリーム状酵母を産生した。クリーム状酵母は約45゜Fまで冷却し、別々の冷蔵したステンレススチールタンクに保存する。クリーム状酵母は直接タンク車に積み込まれ、適当なクリーム状酵母輸送システムを備えた取引先に配達される。あるいは、クリーム状酵母はプレートとフレームフィルターにポンプで送り、27〜33%の酵母固形物を含むケーキのかたさまで脱水できる。この圧縮ケーキ酵母をほぐしてばらばらにし、パレットの上に積み重ねた50ポンドのバッグの中に詰め込む。酵母は圧縮・包装作業中に発熱しほぐした酵母のバッグは、何にも妨げられずに冷却用空気に到達できるようにするために、適当な通気を行ない、パレットを適当な場所に配置し、一定時間冷蔵庫で冷却する必要がある。ほぐした酵母のパレットに載せられたバッグはその後冷蔵したトラックで取引先まで配送される。クリーム状酵母はさらに流動層乾燥器または同様のタイプの乾燥器を用いることによって乾燥酵母(92〜97%固形物)に加工することができる。
【0013】
それと対照的に、燃料用エタノールプラント用の酵母の生産はかなり異なっている。燃料用エタノールプラントが非常に大規模であるにかかわらず、それらは工業用ベーカリープラントに比較して酵母の消費がかなり少ない。例えば、大規模な工業用ベーカリープラントではどこでも、1週間あたり20,000リットルのトラック1から4、5台分のクリーム状酵母(平均18%固形物)を消費するであろう。それ故、これらのパン製造プラントにおいて設備されたクリーム状酵母システムを目にするのが普通である;それらは通常2つの大きな冷蔵された、撹拌された受器から成り、その受器はそれぞれ少なくともトラック1台分の液状酵母を受け取ることができ、これはパン生地ミキサーと完全なcleaning
in place(CIP)システムまでの環状の配送システムである。類推してみると、大規模な燃料用エタノールプラントが1週間あたり200から500kfの乾燥酵母あるいは1週間あたり1500から2500リットル相当のクリーム状酵母を使用するであろう。しかしながら、このような少ない使用量では、パン製造プラントでよく見られる高性能のクリーム状酵母システムを設置することについて納得のいく説明をすることはできない。
【0014】
これと対照的に、燃料用エタノールプラントでは乾燥酵母と一連の増殖タンクを用いて、酵母の数を増やし、活性化する。このような増殖タンクの使用によって、必要な酵母の量が減少し、実際上冷蔵して保存する必要性がなくなる。乾燥酵母には比較的長い有効期限(約3ヶ月まで)を有するという他の利点もある。
【0015】
都合の悪いことに、乾燥酵母は水を加えて元にもどす間だけでなく、乾燥工程の間に一部の発酵活性を失う。さらに、乾燥酵母は休止状態であり(この時点から燃料用エタノールプラントにおいて通常見られる増殖段階)、新鮮な酵母(27〜33%固形物)と同じ程即効性ではない。
【0016】
エタノール工業では新鮮な酵母を用いているが、新鮮な圧縮した、あるいはほぐした酵母は冷蔵保存が必要で、平均保存期限は2から3週間である。確かに、圧縮した酵母はより長期間(6週まで)保存することができるが、このことは結果としてかなり活性が失われ、さらに酵母の表面上にカビが発育する可能性が生じる。液状クリーム状酵母(15から24%)では、同じような熟成(aging)が起こり、また冷蔵の問題が生じ、酵母が沈殿するという自然の傾向のために攪拌が必要である。
【0017】
前記の形態においてはいずれも酵母は現在十分満足に供給されていない。作業工程の規模に比較して、市販のエタノール製造施設で必要などちらかといえば少ない量の酵母では、これらのプラントを常習的な基盤にして少量の酵母を配送することは経済的ではない。多くの場合、新鮮な酵母は市販されておらず、あるいは新鮮な圧縮酵母は乾燥し、カビが生え、もしくは不活性になる可能性がある。逆に言えば、乾燥した酵母製品は長期間活性を保つが、いずれにしても、それは適当な方法で目覚めさせる必要があり、新鮮な酵母ほど即効性ではない;このことは企業において増殖がよく見られる主な理由である。クリーム状酵母に関して、中に入れて輸送する容器の底まで沈殿する傾向がある。結果として、クリーム状酵母は使用前に攪拌する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このことから本発明は前記の不都合な点を排除することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的の1つは、新しい、容易に量り分けられる、安定性のある攪拌の必要のない、90日までの標準液状酵母より長い使用期限の液状酵母(SLY)製剤を供給することである。
【0020】
他の目的は、相当する圧縮した酵母に比較して、より短い誘導期、および全体的なより高い性能を有する安定性のある液状高活性酵母製剤を供給することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、アルコール製造のための生産用発酵槽への直接投入のための安定性のある液状酵母製剤を供給することであり、それ故誘導期がより短いことから示唆されるように、増殖段階をバイパスで置き換える。
【0022】
前記の目的は、ポリヒドロキシ化合物、好ましくはグリセロール、およびゴム、好ましくはキサンタンガムを併用することによって、安定性のある液状酵母製剤の新しい製造法によって達成される。グリセロールは酵母活性を安定化し、キサンタンガムは酵母の沈降を防ぐ稠性(consistency)を安定化する。
【0023】
本発明のさらなる目的は、商業的な量の高活性の酵母、および/もしくは高いレベルの出芽酵母を製造するため安定性のある液状酵母(Stabilized
Liquid Yeast)を使用することである。詳細には、意図するものはゴムおよびポリヒドロキシ化合物、好ましくはグリセロールを加えた高レベルの窒素酵母、タンパク酵母、活性酵母または出芽酵母から成る製剤である。
【0024】
本発明のさらなる目的は、製造用発酵槽に高レベルの安定性のある出芽液状酵母の直接添加あるいは投入から成るエタノール製造用の新しい工程である。それによって増殖段階に対する必要性が回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(本発明の詳細な説明)
液状(クリーム状)あるいは圧縮された又はばらばらになった形状にかかわらず、新鮮な酵母には多くの利点がある。このような酵母は活性が最適化され、再水和を必要とせず、発酵槽内での誘導期がより短い。新鮮な酵母は、通常乾燥に耐えない株として用いられる。
【0026】
乾燥酵母は、活性か不活性かにかかわらず、一連の異なる利点を有する。乾燥酵母は一般的に安定性に関して最適化され、冷蔵を必要とせず、また断続的な使用に有効である(持続的発酵開始)。それは一般的に少量で用いられる株として使用される。
【0027】
したがって必要とされるものは、液状酵母と乾燥酵母の両方の利点を多くの備えた安定性のある液状酵母(Stabilized Liquid Yeast)(SLY)である。詳細には、必要とされるものは従来の新鮮な酵母に比較してより高い活性;従来の新鮮な酵母に比較してより高い安全性;発酵槽内のより短い誘導期;を有する酵母発酵であり;攪拌の必要がなく;増殖を必要とせず直接投入を可能にする。
【0028】
本発明はこれらの満たされていない要求を満たすSLYを提供する。本発明のSLYは液状酵母あるいはクリーム状の酵母から成り、1つ以上のゴムおよび1つ以上のポリヒドロキシ化合物と併用する。
【0029】
さらに個別的には、本発明は、クリーム状あるいは液状酵母(15-24%固体)から成り、このクリーム状または液状酵母はさらにゴムおよびポリヒドロキシ化合物から成る。前記のゴムは0.03から1重量パーセントのクリーム状酵母中に適度に含まれ、好ましくはイナゴマメ、グアル、トラガカント、アラビアゴムまたはキサンタンガムである。ゴムという用語には植物から得られるゴムまたは微生物由来のゴムあるいはそれらの混合物が含まれる。
【0030】
本発明の製剤にはさらに1つ以上のポリヒドロキシ化合物が含まれる。好ましいポリヒドロキシ化合物はプロピレングリコール、グリセロール、キシロースのような非発酵性モノサッカライドまたはオリゴサッカライド、マンニトールおよびソルビトールのような非発酵性糖アルコール、部分的に加水分解したデンプン、セルロースまたはアガロースのような可溶性少糖または多糖、およびポリエチレングリコールあるいはそれらの混合物である。好ましくは本発明にはクリーム状酵母の1から5重量パーセントのグリセロールが含まれる。最も好ましい実施例として、発酵にはSLYが3.2%(w/v)の95%グリセロールおよび0.1%(w/v)のキサンタンガムから成る、0.5g/kgのSLYのマッシュ(mash)が用いられる。
【0031】
さらに、本発明は、酵母が高レベルの窒素酵母、タンパク酵母、活性酵母あるいは出芽酵母である、安定性のある液状酵母(Stabilized Liquid Yeast)発酵を意図するものである。このような高レベルの活性あるいは出芽には、これらに限定されないが、genara
Saccharomyces, Kluyveromyces , Torulaspora , 詳細にはサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)のような生きた酵母細胞が含まれる。この用語はさらに1つ以上の酵母腫の組み合わせから成る。
【0032】
本発明のさらなる目的は、生産用発酵槽に対する高レベルの安定性のある液状出芽酵母の直接の添加あるいは投入から成る、エタノールの生産の新しい工程であり、それによって増殖段階の必要性が回避される。
【0033】
このような安定性のある液状酵母製剤は、燃料用エタノール工業にとって重要なだけでなく(コーンマッシュ発酵に限定されず、「バイオマス」またはセルロース基質または燃料用エタノール製造に用いられるあらゆる他の基質が含まれる)、さらに一般的には燃料用アルコール(蒸留)、醸造、ベーキング、発酵飲料、および前記の安定性のある液状酵母の特徴を必要とするあらゆる発酵工程にも応用できる。
【0034】
前記の組成物が発酵混合物または生地に加えられた場合、最終産物の特性が改善されるような量で本発明の組成物に加工助剤を加えることができる。以下に記載したように、加工助剤は栄養素、化学添加物、および酵素に分けることができる。
【0035】
窒素化合物には無機窒素(尿素および窒素塩のような)、有機窒素(酵母、酵母自己分解物質、酵母抽出物、または発酵可溶性物質)、リン(窒素とリンの塩のような)、ミネラル(塩のような)、ビタミン類が含まれる。
【0036】
適した化学添加物はアスコルビン酸、臭素酸塩、アゾジカルボンアミドのような酸化物質、および/もしくはL-システインとグルタチオンのような還元物質である。ベーキングによく用いられる好ましい酸化物質は、結果的に粉末1kgあたり5mgから300mgの量に至るような量の組成物に加えられるアルコルビン酸である。他の適当な化学添加物は、モノ/ジグリセライド(DATEM)のジアセチル酒石酸エステル、乳酸ステアリルナトリウム(SSL)または乳酸ステアリルカルシウム(CSL)、などの生地添加物(dough
conditioners)として働く乳化剤、または、モノステアリン酸グリセロール(GMS)または胆汁酸塩、トリグリセライド(脂肪)またはレシチン、その他の脂肪性物質などのようなクラムス軟化剤として働く乳化剤である。好ましい乳化剤はDATEM、SSL、CSL、またはGMSである。好ましい胆汁塩は胆汁酸塩、デオキシコール酸塩およびタウロデオキシコール酸塩である。
【0037】
適した酵素は、デンプン分解酵素、アラビノキシランと他のヘミセルロース分解酵素、セルロース分解酵素、酸化酵素、脂肪性物質分解酵素、タンパク分解酵素である。好ましいデンプン分解酵素はアルファアミラーゼのようなendo-actingアミラーゼおよびベータアミラーゼとグルコアミラーゼのようなexo-actingアミラーゼである。好ましいアラビノキシラン分解酵素はペントサナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼおよび/もしくはアラビノフラノシダーゼ、詳細にはBacillus種のAspergillus由来のキシラナーゼである。 好ましいセルロース分解酵素はセルラーゼ(即ちエンド-1,4-ベータ・グルカナーゼ)および詳細にはAspergillus、TrichodermaあるいはHumicola種由来のセロビオヒドロラーゼである。好ましい酸化酵素はリポキシゲナーゼ、グルコース酸化酵素、フルフヒドリル酸化酵素、ヘキソース酸化酵素、ピラノース酸化酵素およびラック酵素である。好ましい脂肪性物質分解酵素はリパーゼ、詳細にはAspergillusまたはHumicola種由来の真菌性リパーゼ、およびホスホリパーゼA1および/もしくはA2のようなホスホリパーゼである。好ましいタンパク分解酵素は、アミノペプチダーゼとカルボキシペプチダーゼのクラスに属するペプチターゼと呼ばれるexo-actingプロテイナーゼに加えて、チオールプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼおよびアスパルチルプロテアーゼのクラスに属するもののようなendo-actingプロテイナーゼである。さらに、粒子状のタンパク由来の遊離アミノ窒素を産生する微生物および植物のプロテアーゼも追加できる。
【0038】
この酵素は動物、植物あるいは微生物由来であり、当業者にはよく知られている従来の工程によってこれらの供給源から得られる可能性があり、あるいは組み替えDNA法によって生産できる。好ましい生産工程は、真菌、酵母あるいは細菌が増殖し、期待した酵素を産生し、あるいは本来備わっているか遺伝的修飾の結果(組み換えDNA法)のいずれかとしての発酵工程から成る。これらの工程は当業者にはよく知られている。好ましくは、微生物が発酵培養液中に酵素を分泌する。発酵工程の最後に、通常細胞のバイオマスが分離され、培養液中の酵素濃度によって、最後にはさらに濃縮され、限外ろ過のようなよく知られた方法で任意に洗浄することができる。任意に、この酵素濃度あるいはこのような濃度の混合物をスプレードライのようなよく知られた方法で乾燥してもよい。
【0039】
本発明は、いずれかの特異的な型の酵素に限定されないが、詳細には本発明は酵素がサッカロミケス(Saccharomyces)であるSLY発酵に限定されるものではない。実際に、エタノールの生産に用いられる細菌を含む商業的発酵工程に用いられる細菌に加えてすべての種類の酵母が含まれるであろうということは当業者には明らかであろう。
【0040】
さらに、本発明は、商業的企業の発酵槽内での前記の安定性のある液状酵母(Stabilized
Liquid Yeast)製剤の使用を意図しているが、それに限定されるものではない。しかしながら、SLYは増殖を含む工程のいずれの段階でも添加できる。
【0041】
(実施例)
(コーンマッシュおよび酵母検体)
工業用コーンマッシュはすべてのベンチスケール比較対照発酵試験で用いられた。マッシュはすでに添加されたバックセットである。マッシュはサウスダコタからのトウモロコシから作られ、130℃で2分ジェットクックされてきた。コーンマッシュは液化後得られる。グルコアミラーゼも尿素もマッシュには加えない。コーンマッシュの固形物は約30%であるよう決定される。
【0042】
用いられた酵母はLallemand社によって生産されたサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)の燃料用エタノール株である。
【0043】
フラスコマッシュ発酵実験
標準実験室コーンマッシュ発酵プロトコールが用いられた。前記の100gの工業用コーンマッシュを正確に量り125mlの三角フラスコに入れた。個々のフラスコに、20μmのグルコアミラーゼと16mMの尿素を加えた。実験中投入割合は0.5g/kgであった(Isと同様に)。IDY酵素検体は接種の前に15分間37℃の水道水中で1回目の再水和を行なった。個々のフラスコに接種した後、35℃150rpmで回転振とう器でコーンマッシュ発酵を行なった。すべての振とうフラスコ実験は3回ずつ行なった。
【0044】
重量分析法の基礎はコーンマッシュ発酵の間の重量減少に基づいている。発酵中二酸化炭素が発生し、放出され、結果として広口ビンまたはフラスコ内の重量減少に至る。その後エタノール産生は、二酸化炭素とエタノールの間の化学量論的関連性に基づいて測定する。発酵中ある程度の間隔で重量減少を記録することによって、エタノール産生速度と収率を測定する。重量分析法はエタノール定量の信頼できる便利で安価な方法を可能にする。
【実施例1】
【0045】
(安定性試験:有効期限比較)
安定性のある液状酵母(Stabilized Liquid Yeast)の安定性と有効期限を従来の液状酵母(Liquid
Yeast)および圧縮酵母(Compressed Yeast)と比較した。発酵活性は重量分析法によって測定した。用いられた酵母はLallemand社によって生産されEthanol
Technologyによって配送されたサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の燃料用エタノール株である。活性は重量分析法によって測定された。
【0046】
以下の表と図1に示したように、安定性のある製剤は有効期限がより長く、沈殿を生じる徴候は見られない。
【表1】

【実施例2】
【0047】
(SLY酵母エタノール産生の比較成績)
活性のある乾燥酵母、圧縮酵母および安定性のある液状酵母のエタノール産生能力の比較を行なった。前記のように、本実験において用いられたすべての酵母はLallemand社によって生産され、Ethanol Technology社によって配送されたサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)の燃料用エタノール株である。質量分析法によって測定された活性は前記の通りである。検証された安定性のある液状酵母は3.2%(w/v)の95%グリセロールと0.1%(w/v)のキサンタンガムから成るものであった。
【0048】
酵母をコーンマッシュと共にインキュベートし、2時間間隔で12時間エタノール産生量を測定した。表2および図2は、SLYによって圧縮酵母あるいは活性のある乾燥酵母のいずれかと比較してより迅速な発酵が起こったことを示している。
【0049】
コーンマッシュは工業的供給源由来であり、60%のバックセットを含み、すでにアルファアミラーゼで処理されている。前記を参照すること。それはグリセロールが、同様により短い誘導期に変える「非常に活性のある」酵母の生命力の安定化にいかに寄与するかを示している。本発明にはあらゆる生理学的状態(急激な増殖期、増殖停止期)の酵母が含まれるが、「非常に活性のある(very
active)」酵母という用語は、3%を超える出芽細胞あるいは/および40%を超えるタンパク含有量(N x 6.25)の酵母および/もしくは2%を超えるリン酸塩(P2O5として)含有量を有した酵母を意味する。この短い誘導期もマッシュに伴う、本来存在する細菌汚染および燃料用エタノール産生促進物質が増殖段階を避けて回り道できるようになり、発酵に直接酵母を加える(投入段階)ことができるようになることに寄与する。それはこの産業において通常用いられる抗生物質の使用量減少に寄与すると考えられる。
【表2】

【実施例3】
【0050】
(安定性のある液状酵母(Stabilized Liquid Yeast)のエタノール収率の改善)
表3および図3はさらに、安定化工程によって液状酵母の調製がいかにうまく行われるようになるか(即ち、エタノールの収率が上がる)を示している。安定性のある液状酵母(Stabilized
Liquid Yeast)を、同量のそのままの固体について、圧縮酵母と比較した。実施例2と同じコーンマッシュ組成物を用いた。
【0051】
前記のように、本実験において用いられたすべての酵母はLallemand社によって生産されEthanol
Technologyによって再送されたサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の燃料用アルコール株である。質量分析法によって測定された活性は前記のとおりである。検証された安定性のある液状酵母は3.2%(w/v)の95%グリセロールおよび0.1%(w/v)のキサンタンガムから成るものであった。
【0052】
安定化工程によって、安定性のない形態に比較して酵母がより高いエタノール収率を得ることができるということは結果から明らかである。観察されたわずかの差は、全工業的スケールにおける劇的な改善に変わる。
【表3】

【実施例4】
【0053】
(8週間の保存後の発酵成績の比較)
前記のように、この実験に用いられたすべての酵母は、Lallemand社によって生産されEthanol
Technologyによって配送されたサッカロミケス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の燃料用エタノール株である。質量分析法によって測定された活性は前記のとおりである。安定性のある液状酵母は3.2%(w/v)の95%グリセロールおよび0.1%のキサンタンガムから成っていた。
【表4】

【実施例5】
【0054】
(8週間の保存後の活性)
本実験において、Lallemand社から供給されたパン酵母を用いた;SLYは3.2%の95%グリセロールおよび0.1%キサンタンガム(すべてw/v)を用いて生産された。通常のストレス下で、他の原料即ち3.8%(w/w
Vs粉末)糖、1.7%(w/w)の食塩(NaCl)、および275gの粉末に対して181gの水の中に含まれる白色のpan bread製剤において検証した。ストレス状態下で、酵母は16.7%(w/w
Vs粉末)糖(sucrose)、16.7%(w/w Vs粉末)脂肪(ショートニング)、2%(w/w)の塩および300gの粉末に対して147gの水を含む生地中の気体産生を検証した。
【0055】
気体産生はファーメントグラフ(fermentograph)(STA(Sweeden)またはRisograph(USA))に既知量の生地を入れ、35℃で1時間インキュベートすることによって評価された。同量の酵母をこの例として用いた;それは4.7%(w/w
Vs粉末)の圧縮酵母あるいはNormal Stress状態に対して等価のSLYおよびHigh Stress条件下の5.0%の圧縮酵母あるいは酵母のSLYである。
【0056】
本実験では、安定性のある液状酵母(Stabilized Liquid Yeast)が保存期間(8週)を延長した後、新鮮なbag酵母より効率がよいことを示している。さらにSLYが高いストレス条件下で発酵の特徴を改善したことも示している。
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】バッグ(圧縮酵母)および通常の液状酵母に対する安定性のある液状酵母製剤の相対的発酵活性を示す。
【図2】コーンマッシュ発酵の最初の12時間の間に通常の圧縮酵母および乾燥酵母に対する安定性のある液状酵母製剤のより優れた効能を示す。
【図3】圧縮酵母を超える安定性のある液状酵母のエタノール収率の改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母、1つ以上のゴムおよび1つ以上のポリヒドロキシ化合物から成る組成物。
【請求項2】
酵母がクリーム状酵母の形態である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
酵母がサッカロミケスである請求項記載の組成物。
【請求項4】
クリームが約15から24%の固体である請求項2記載の組成物。
【請求項5】
ゴムがクリーム酵母の重量の約0.03から約1%まで存在する請求項2記載の組成物。
【請求項6】
ゴムがイナゴマメ、トラガカント、アラビアゴム、グアルおよびキサンタンガムから成る群から選択される請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ポリヒドロキシ化合物がクリーム酵母の重量の約1から5%まで存在する請求項2記載の組成物。
【請求項8】
ポリヒドロキシ化合物が、グリセロール、プロピレングリコール、非発酵性モノサッカライド、非発酵性オリゴサッカライド、非発酵性糖アルコール、可溶性少糖、可溶性多糖およびポリエチレングリコールから成る群から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項9】
非発酵性モノサッカライドがキシロースである請求項7記載の組成物。
【請求項10】
非発酵性糖アルコールがマンニトールおよびソルビトールから成る群から選択される請求項7記載の組成物。
【請求項11】
多糖が加水分解されたデンプン、セルロースおよびアガロースから選択される請求項7記載の組成物。
【請求項12】
酵母が高レベルの活性酵母、高レベルの出芽酵母、高レベルの窒素酵母および高レベルのタンパク酵母から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項13】
酵母が高レベルの出芽酵母である請求項12記載の組成物。
【請求項14】
生産用発酵槽に直接請求項1の組成物を投入することから成るエタノール生産の方法。
【請求項15】
生産用発酵槽に直接請求項13の組成物を投入することから成るエタノール生産の方法。
【請求項16】
細菌、1つ以上のゴムおよび1つ以上のポリヒドロキシ化合物から成る液状組成物。
【請求項17】
ゴムが組成物の重量の0.03から約1%まで存在する請求項16記載の組成物。
【請求項18】
ポリヒドロキシ化合物が組成物の重量の約1から5%まで存在する請求項16記載の組成物。
【請求項19】
請求項1の組成物を発酵可能な基質と組み合わせることから成る発酵法。
【請求項20】
請求項16の組成物を発酵可能な基質と組み合わせることから成る発酵法。
【請求項21】
請求項1の組成物を発酵可能な生地と組み合わせることから成る酵母を加える法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−546415(P2008−546415A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518446(P2008−518446)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/024522
【国際公開番号】WO2007/008370
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507409966)ラルマン,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】