説明

新しい毛包の形成、はげ頭症の治療、及び除毛をするための方法

【課題】頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する
【解決手段】本発明に係る方法は、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象のはげ頭の治療、及び新しい毛包の形成をするための方法であって、表皮を破壊するステップと、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物を投与するステップとを含む方法を提供する。また、本発明は、除毛をするための、及び髪の色素沈着を誘導するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
小胞の新生は、出生後の、新しい毛包(hair follicle:HF)の形成と定義される。人間は、生まれたときは、HFを完全に備えている。しかし、はげ頭症の初期では、HFの大きさと成長特性は変化する。また、はげ頭症の末期又は恒久的な瘢痕性脱毛症では、最終的に退化し消失する。そのため、一般的なはげ頭症、及びあまり一般的ではない脱毛症(例えば、円板状紅斑性狼瘡、先天性貧毛症、毛孔性扁平苔癬、及び他の瘢痕性脱毛症)では、新しいHFを形成することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、対象のはげ頭症を治療する、及び新しい毛包(hair follicle:HF)を形成する方法であって、表皮を破壊するステップと、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物を投与するステップとを含む方法を提供する。また、本発明は、除毛をするための、及び髪の色素沈着を誘導するための方法を提供する。
【0004】
ある実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する方法を提供する。
【0006】
他の実施形態では、前記はげ頭症は、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)によって引き起こされたはげ頭症である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0007】
他の実施形態では、本発明は、対象の皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法であって、(a)前記皮膚又は頭皮の表皮を破壊するステップと、(b)前記皮膚又は頭皮に、(i)表皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)タンパク質、(ii)EGF受容体、(iii)EGFタンパク質若しくはEGF受容体をエンコードするヌクレオチド、又は(iv)EGFタンパク質若しくはEGF受容体を活性化させる化合物又は因子のいずれかを接触させるステップとを含み、それによって、対象の皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法を提供する。
【0008】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法を提供する。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。他の実施形態では、前記(b)のステップは、前記(a)のステップの3〜12日後に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、頭皮におけるアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を治療する方法であって、(a)前記頭皮の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、それによって、頭皮のAGAを治療する方法を提供する。他の実施形態では、前記(b)のステップは、前記(a)のステップの3〜12日後に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表皮剥離によって新しい毛包(HF)が形成される様子を示す。HFの成長進行段階を、左、中央及び右の図に示す。左の図における矢印は、毛芽を示す。黒く染色された細胞は、バルジ内のHF幹細胞の子孫である。
【図2】BrdU標識された表皮剥離後のHFを示す。HF成長の進行段階を、左、中央及び右の図に示す。
【図3】上皮再形成の直後、創傷部位にはHFが存在しなかった。左の図は、創傷形成10日後の創傷部位の上面図であり、右の図は、組織切片である。
【図4】創傷形成12日後の毛芽の外観である。図中の矢印は、毛芽を示す。
【図5】EDIHN(Epidermal disruption-Induced HF neogenesis:表皮破壊によって誘導されるHF新生)によって形成された毛芽は、K17を発現する。2つの異なる毛芽を、左右の図に示す。
【図6】EDIHNによって形成された毛芽は、真皮乳頭(dermal papilla:DP)細胞を含有することが、アルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:AP)染色によって分った。図中の矢印は、DP細胞を示す。左の図は、毛芽を示す。右の図は、さらなる成長段階にあるHFを示す。
【図7】EDIHNによって形成されたHFと、胎児のHFとを、組織学的に比較した図である。上側における左端、左から2番目、左から3番目、及び右端の図は、EDIHNによって形成されたHFの成長進行段階を示す。下側における左、中央、及び右の図は、胎児のHFの成長進行段階を示す。
【図8】胎児のHF成長のマーカーを、EDIHNによって誘起する状態を示す。左の図はLef1、中央の図はwingless/int(Wnt)10b、右の図はソニック・ヘッジホッグ(Shh)を示す。HF組織は、矢印で示されている。
【図9】BrdUパルス標識によって分った、EDIHNの間の増殖活性を示す。HFの成長進行段階を、左、中央及び右の図に示す。
【図10】EDIHNによる、HF標識であるS100A3の誘起。左の図は、HF軸に平行な組織切片であり、右の図は、毛包の断面図である。
【図11】創傷形成の25日後(左の図)及び45日後(右の図)における新しい毛の成長を示す。
【図12】EDIHNのホールマウント分析の概略図である。
【図13】追跡期間後にBrdU標識を保持することから分るように、EDIHNによって形成されたHFのバルジ内で幹細胞が再生する。左の図は低倍率(×50)の場合であり、右の図は高倍率(×400)の場合である。
【図14A】EDIHNによって形成されたHFの幹細胞は、K15を発現する。左側の上の図は、創傷部の上面図である。下側の左端の図は表皮のホールマウントである。下側の左から2番目の図は、左端の図と同じであるが、白色光下で観察されている。右の図は、組織切片を示す。
【図14B】新生HFは、次の毛周期へ進む。
【図15】EDIHNによる新しいHFの形成を示す概略図である。
【図16】21日齢マウスでは、創傷形成11日後に、新しいHFは見られない。上の図は、肉眼検査を示す。左下の図は、真皮のAP染色を示す。右下の図は、表皮のK17染色を示す。
【図17】創傷形成の14日後には、真皮のAP染色(左の図)及び表皮のK17染色(右の図)から分るように、新しいHFが形成され始めた。メインの図の倍率は10倍であり、挿入図の倍率は80倍である。
【図18】創傷形成の17日後には、HFはさらに成長した。左の図は、真皮のAP染色を示し、右の図は、表皮のK17染色を示す。メインの図の倍率は10倍であり、挿入図の倍率は80倍である。
【図19】除毛後に創傷形成したマウス(左右の図における左の3匹のマウス)は、創傷形成しただけのマウス(左右の図における右の4匹のマウス)と同様に創傷が閉じた。左の図は、創傷形成直後の写真である。右の図は、創傷形成10日後の写真である。
【図20】創傷形成前に除毛によって成長期を誘起すると、EDIHNの効率が増大する。A:左下の図は、真皮のAP染色を示す。右下の図は、表皮のK17染色を示す。B:除毛によるEDIHNの増大を示すグラフである。
【図21A】切除創傷形成7日後に免疫不全(重症複合免疫不全)マウスに移植された人間の皮膚でのEDIHNを示す。図中の矢印は、新しいHFを示す。
【図21B】人間皮膚の移植片の表皮剥離は、EDIHNを誘導する。成人の皮膚(W)をマウスに移植した後に剥離し、7日後にS100A6(第1、第2、及び第4の横列)又はS100A4(第3の横列)の染色によって検査した。毛芽(Hair germs:HG)及び真皮乳頭(dermal papilla:DP)が示されている。比較のために、正常に成長した毛包を有する人間の胎児の皮膚(F)が示されている。対照として、創傷形成17日後のマウスの皮膚が示されている(左上の図)。
【図22A−1】DNAチップ分析によって評価されるように、活性化されたHF細胞では、転写物は、少なくとも2倍上方制御されている。活性化されていない(「ベースライン」)及び活性化された(「expt」)試料における上方制御された転写物の平均値及び標準誤差、並びに、活性化された試料の値と活性化されていない試料の値との間の倍率変化及び相違を示す。
【図22A−2】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−3】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−4】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−5】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−6】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−7】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22A−8】上方制御された転写物の平均値及び標準誤差等を示す。
【図22B−1】活性化されていない及び活性化された細胞における上方制御された転写物の未加工データである。「Ctrl」は活性化されていない細胞を意味し、「High−dep」は活性化された細胞を意味する。
【図22B−2】上方制御された転写物の未加工データを示す。
【図22B−3】上方制御された転写物の未加工データを示す。
【図22B−4】上方制御された転写物の未加工データを示す。
【図22B−5】上方制御された転写物の未加工データを示す。
【図22C−1】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図22C−2】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図22C−3】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図22C−4】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図22C−5】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図22C−6】上方制御された転写物のさらなる情報である。
【図23A】EDIHN後に、Dkk1発現マウスの皮膚に観察された、色素沈着した新生毛包を示す。倍率は3.2倍である。
【図23B】EDIHN後に、Dkk1発現マウスの皮膚に観察された、色素沈着した新生毛包を示す。倍率は8倍である。
【図24】対照マウスには、色素が沈着したHFは見られなかった。
【図25A】EGFは、EDIHNによるHF形成を阻害する。EGFを投与したマウスにおける皮膚の創傷部位のK17染色を示す。倍数は4倍である。
【図25B】Aに示した皮膚を高倍率像である(×10)。
【図25C】創傷形成後にEGFを投与しなかった対照マウスにおける皮膚の創傷部位のK17染色を示す。倍率は4倍である。
【図25D】Cに示した皮膚の高倍率像である(×10)。
【図26A】EGF受容体阻害剤(AG1478)を投与すると、対照と比較してより多くの及びより大きなHFが形成される。上の図は、2匹の対照マウスの皮膚を示す。外側の点線は、収縮及び治癒後の創傷領域の範囲を示す。内側の点線は、新生領域を示す。下の図は、EGF受容体阻害剤を投与した2匹のマウスの皮膚を示す。左右の図の囲まれた領域における左側の小さな領域以外は、創傷領域及び新生領域の大部分は一致する。
【図26B】G1478を注入したマウスの創傷領域では、大きな毛包が発達した。左の図は、互いに近接する3つの大きな毛包を有する、K17染色された表皮を示す。右の図は、大きな合体したDP領域を有する、AP染色された真皮を示す。スケールバーは、200μmである。
【図27A】K14−Wnt7aマウスにおける毛包形成の増加を示す図である。左の図は、Wnt7aトランスジェニック・マウスである。右の図は、対照(野生型)マウスである。
【図27B】4週齢マウスを使用した実験の結果を定量化したグラフである。
【図27C】3週齢マウスを使用した実験の結果を定量化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、対象のはげ頭症を治療する、及び新しい毛包(hair follicle:HF)を形成する方法であって、表皮を破壊するステップと、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物を投与するステップとを含む方法を提供する。また、本発明は、除毛をするための、及び髪の色素沈着を誘導するための方法を提供する。
【0013】
ある実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。
【0014】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域におけるHFの数を増加させる方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域におけるHFの数を増加させる方法を提供する。
【0015】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する医薬組成物を製造するための、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する医薬組成物を製造するための、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮におけるAGAを治療する医薬組成物を製造するための、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法を提供する。他の実施形態では、前記因子は、EGFタンパク質又はEGFRの阻害剤である。他の実施形態では、前記因子は、ヘッジホッグ・タンパク質、ヘッジホッグ・タンパク質をエンコードするヌクレオチド、又はヘッジホッグ・タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記因子は、アンドロゲンのアンタゴニストである。他の実施形態では、前記因子は、その他の、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。他の実施形態では、前記(b)のステップは、前記(a)のステップの3〜12日後に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0020】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される前記前駆細胞は、HF幹細胞である。他の実施形態では、前記前駆細胞は、表皮細胞である。他の実施形態では、前記前駆細胞は、真皮乳頭細胞である。他の実施形態では、前記前駆細胞は、結合組織鞘細胞である。他の実施形態では、前記前駆細胞は、当該技術分野で公知の他の種類の、毛包細胞へ分化することができる細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、毛包細胞へ分化することができる前駆細胞を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、頭皮におけるアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を治療する方法であって、(a)前記頭皮の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、それによって、頭皮のAGAを治療する方法を提供する。他の実施形態では、前記(b)のステップは、前記(a)のステップの3〜12日後に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、頭皮におけるアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を治療する方法であって、(a)前記頭皮の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮に、毛包細胞へ分化することができる前駆細胞を接触させるステップとを含み、それによって、頭皮のAGAを治療する方法を提供する。
【0024】
他の実施形態では、前記誘導細胞は、間葉細胞である。他の実施形態では、前記誘導細胞は、ここに列挙した他の種類の誘導細胞である。他の実施形態では、前記誘導細胞は、当該技術分野で公知の他の種類の誘導細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0025】
ここで用いる「接触」という用語は、他の実施形態では、頭皮や眉などに、化合物、因子、細胞などを接触させることを意味する。他の実施形態では、この用語は、化合物、因子、細胞などを、頭皮や眉などに埋め込むことを意味する。他の実施形態では、この用語は、化合物、因子、細胞などを、頭皮や眉などに注入することを意味する。他の実施形態では、この用語は、当該技術分野で公知の他の種類の接触を意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0026】
「分化の促進」は、他の実施形態では、分化する細胞の割合を増加させることを意味する。他の実施形態では、この用語は、分化する細胞の、皮膚の単位面積当たりの細胞数を増加させることを意味する。他の実施形態では、分化の促進は、皮膚環境で活性がある。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0027】
「中立表皮細胞(Uncommitted epidermal cell)」は、他の実施形態では、表皮幹細胞を意味する。他の実施形態では、前記表皮細胞は、バルジ細胞である。他の実施形態では、前記表皮細胞は、バルジ由来細胞である。他の実施形態では、前記表皮細胞は、HF細胞への分化が誘導される当該技術分野で公知の他の種類の細胞である。
【0028】
分化の結果生じる「HF細胞」は、他の実施形態では、HF幹細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、真皮乳頭細胞(dermal papilla cell)である。他の実施形態では、前記HF細胞は、毛球細胞(bulb cell)である。他の実施形態では、前記HF細胞は、マトリクス細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、毛幹細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、内毛根鞘細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、外毛根鞘細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、メラニン幹細胞である。他の実施形態では、前記HF細胞は、メラニン細胞である。中立表皮細胞及びHF細胞の各種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物を接触させるステップとを含み、それによって頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する方法を提供する。他の実施形態では、前記はげ頭症は、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)によって引き起こされたはげ頭症である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0030】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、液剤の形態で使用される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、クリームの形態で使用される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、軟膏の形態で使用される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、徐放製剤の形態で使用される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、リポソーム封入製剤の形態で使用される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、直接的に注入される。他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、当該技術分野で公知の他の方法によって使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0031】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)の阻害剤である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、EGF受容体の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0032】
本明細書中で説明されるように、EGFを含有する(EGFの注入によって)1つ又は複数の経路は、HFの形成を阻止する(実施例11)。したがって、実施例12で実証されるように、前記経路のアンタゴナイズにより、HFの形成は増加する。
【0033】
他の実施形態では、EGF又はEGF受容体の阻害剤は、パニツムマブ(panitumumab)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、AG1478である。他の実施形態では、前記阻害剤は、ニモツズマブ(nimotuzumab)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、EGF又はEGFRと結合する抗体である。他の実施形態では、前記阻害剤は、HuMax EGFR(登録商標)(Genmab, Copenhagen, Denmark)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、セツキシマブ(cetuximab)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、IMC 11F8である。他の実施形態では、前記阻害剤は、マツズマブ(matuzumab)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、SC 100である。他の実施形態では、前記阻害剤は、ALT 110である。他の実施形態では、前記阻害剤は、PX 1032である。他の実施形態では、前記阻害剤は、BMS 599626である。他の実施形態では、前記阻害剤は、MDX 214である。他の実施形態では、前記阻害剤は、PX 1041である。他の実施形態では、前記阻害剤は、当該技術分野で公知の他のEGF又はEGF受容体の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0034】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ノギン・タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、EGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤である。他の実施形態では、前記阻害剤は、ゲフィチニブ(gefitinib)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、エルロチニブ(erlotinib)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、カナーニチブ(canertinib)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、レフルノミドである。他の実施形態では、前記阻害剤は、A77 1726である。他の実施形態では、前記阻害剤は、ペリニチブ(pelitinib)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、ZD 1839である。他の実施形態では、前記阻害剤は、CL 387785である。他の実施形態では、前記阻害剤は、EKI 785である。他の実施形態では、前記阻害剤は、バンデタニブ(vandetanib)である。他の実施形態では、前記阻害剤は、当該技術分野で公知の他のEGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0035】
他の実施形態では、EGF又はEGFRアンタゴニストは、ポテト(PCl)タンパク質又はその相同体、断片若しくはミメティックに由来するカルボキシペプチダーゼ阻害剤である。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、Sproutyタンパク質又はその相同体、断片若しくはミメティックである。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、Argosタンパク質又はその相同体、断片若しくはミメティックである。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、leftyタンパク質又はその相同体、断片若しくはミメティックである。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、EGF又はEGFRを識別する抗体又はその断片若しくはミメティックである。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、EGF又はEGFRと結合してその活性を減少させる小分子阻害剤である。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、CRM197である。他の実施形態では、前記EGF又はEGFRアンタゴニストは、IMC−C225(ImClone Systems, New York. NY)である。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する医薬組成物を製造するための、EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0037】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する医薬組成物を製造するための、EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0038】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮におけるAGAを治療する医薬組成物を製造するための、EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記EGFタンパク質又はEGF受容体の阻害剤を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0039】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、βカテニンタンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、βカテニンタンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、βカテニンタンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、前記βカテニンタンパク質の活性抑制タンパク質の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する医薬組成物を製造するための、(A)βカテニンタンパク質、(B)βカテニンタンパク質をエンコードするヌクレオチド、又は(C)βカテニンタンパク質を活性化させる化合物若しくは因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記βカテニンタンパク質、ヌクレオチド又は化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0041】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する医薬組成物を製造するための、(A)βカテニンタンパク質、(B)βカテニンタンパク質をエンコードするヌクレオチド、又は(C)βカテニンタンパク質を活性化させる化合物若しくは因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記βカテニンタンパク質、ヌクレオチド又は化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮のAGAを治療する医薬組成物を製造するための、(A)βカテニンタンパク質、(B)βカテニンタンパク質をエンコードするヌクレオチド、又は(C)βカテニンタンパク質を活性化させる化合物若しくは因子の使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記βカテニンタンパク質、ヌクレオチド又は化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0043】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor:FGF)タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGFタンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGF受容体である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGF受容体をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGFタンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGF受容体の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、前記FGFタンパク質又はFGF受容体の活性抑制タンパク質の阻害剤である。他の実施形態では、抑制される前記タンパク質は、FGF結合タンパク質である。他の実施形態では、抑制される前記タンパク質は、FGF−bplである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0044】
本明細書中で説明されるように、EGF及びその受容体は、ここで使用される条件下で、HF幹細胞の分化に対して上方制御される(実施例9)。さらに、FGF−bplは、ここで使用される条件下で、HF幹細胞の分化に対して下方制御される。したがって、EGF及びその受容体は、中立表皮細胞のHF細胞への分化を誘導する。
【0045】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、エクトジスプラシン(ectodysplasin)・タンパク質(「eda」又は「外胚葉性タンパク質」とも表記される)である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、FGFタンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記エクトジスプラシン・タンパク質は、Eda−A1である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、エクトジスプラシン受容体(「edar」とも表記される)である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、エクトジスプラシン・タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、エクトジスプラシン受容体の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、前記エクトジスプラシン・タンパク質又はエクトジスプラシン受容体の活性抑制タンパク質の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0046】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるedaタンパク質は、次の配列を有する。MGYPEVERRELLPAAAPRERGSQGCGCGGAPARAGEGNSCLLFLGFFGLSLALHLLTLCCYLELRSELRRERGAESRLGGSGTPGTSGTLSSLGGLDPDSPITSHLGQPSPKQQPLEPGEAALHSDSQDGHQMALLNFFFPDEKPYSEEESRRVimNKRSKSNEGADGPVKNKKICGKKAGPPGPNGPPGPPGPPGPQGPPGIPGIPGIPGTTVMGPPGPPGPPGPQGPPGLQGPSGAADKAGTRENQPAWHLQGQGSAIQVKNDLSGGVLNDWSRITMNPKVFKLHPRSGELEVLVDGTYFIYSQVEVYYINFTDFASYEVVVDEKPFLQCTRSIETGKTNYNTCYTAGVCLLKARQKIAVKMVHADISINMSKHTTFFGAIRLGEAPAS(遺伝子銀行のアクセス番号:NM_001399;SEQ ID No:274)。他の実施形態では、前記edaタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、NM_001005609、NM_001005610、NM_001005611、NM_001005612、NM_001005613、NM_001005614、NM_001005615、AF040628、AF061194、AF061193、AF061192、AF061191、AF061190、AF061189、及びAF060999から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記edaタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、edaタンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0047】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるedarタンパク質は、次の配列を有する。MAHVGDCTQTPWLPVLVVSLMCSARAEYSNCGENEYYNQTTGLCQECPPCGPGEEPYLSCGYGTKDEDYGCVPCPAEKFSKGGYQICRRHKDCEGFFRATVLTPGDMENDAECGPCLPGYYMLENRPRNIYGMVCYSCLLAPPNTKECVGATSGASANFPGTSGSSTLSPFQHAHKELSGQGHLATALIIAMSTIFIMAIAIVLIIMFYILKTKPSAPACCTSHPGKSVEAQVSKDEEKKEAPDNVVMFSEKDEFEKLTATPAKPTKSENDASSENEQLLSRSVDSDEEPAPDKQGSPELCLLSLVHLAREKSATSNKSAGIQSRRKKILDVYANVCGVVEGLSPTELPFDCLEKTSRMLSSTYNSEIAVVKTWRHLAESFGLKRDEIGGMTDGMQLFDRISTAGYSIPELLTKLVQIERLDAVESLCADILEWAGVVPPASQPHAAS(遺伝子銀行のアクセス番号:BC093872;SEQ ID No:275)。他の実施形態では、前記edarタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、BC093870、BC034919、NM_021783、NM_022336、AY152724、AF298812、AH008077、AF130996、及びAF130988から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記edarタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、edarタンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0048】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ノギン・タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ノギン・タンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ノギン・タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、前記ノギン・タンパク質の活性抑制タンパク質の阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0049】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるノギン・タンパク質は、次の配列を有する。MERCPSLGVTLYALVWLGLRATPAGGQHYLHIRPAPSDNLPLVDLIEHPDPIFDPKEKDLNETLLRSLLGGHYDPGFMATSPPEDRPGGGGGAAGGAEDLAELDQLLRQRPSGAMPSEIKGLEFSEGLAQGKKQRLSKKLRRKLQMWLWSQTFCPVLYAWNDLGSRFWPRYVKVGSCFSKRSCSVPEGMVCKPSKSVHLTVLRWRCQRRGGQRCGWIPIQYPIISECKCSC(遺伝子銀行のアクセス番号:NM_005450;SEQ ID No:276)。他の実施形態では、前記ノギン・タンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、BC034027及びU31202から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記ノギン・タンパク質は、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、ノギン・タンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0050】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ヘッジホッグ・タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ヘッジホッグ・タンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ヘッジホッグ・タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ソニック・ヘッジホッグ・タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ソニック・ヘッジホッグ・タンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、ソニック・ヘッジホッグ・タンパク質の活性化因子である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0051】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される前記ヘッジホッグ・タンパク質は、遺伝子銀行のアクセス番号NM_000193に登録されている配列を有する。他の実施形態では、前記ヘッジホッグ・タンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、L38518及びNP_000184から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記ヘッジホッグ・タンパク質は、当該技術分野で公知の他のヘッジホッグ配列を有する。他の実施形態では、前記ヘッジホッグ・タンパク質は、当該技術分野では公知の他のソニック・ヘッジホッグ配列を有する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0052】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、形質転換成長因子(Transforming Growth Factor:TGF)β1タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β1タンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β1タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β3タンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β3タンパク質をエンコードするヌクレオチドである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β3タンパク質の活性化因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β1タンパク質のアンタゴニストである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、TGF−β3タンパク質のアンタゴニストである。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0053】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される前記TGF−β1タンパク質は、遺伝子銀行のアクセス番号BC000125に登録されている配列を有する。他の実施形態では、前記ヘッジホッグ・タンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、BC001180、BC022242、及びNM_000660から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記TGF−β1タンパク質は、当該技術分野で公知の他のTGF−βタンパク質を有する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0054】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用される前記TGF−β3タンパク質は、遺伝子銀行のアクセス番号J03241に登録されている配列を有する。他の実施形態では、前記TGF−β3タンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、NM_003239、BC018503、BT007287、及びX14149から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記TGF−β3タンパク質は、当該技術分野で公知の他のTGF−β3タンパク質を有する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0055】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、前記中立表皮細胞に直接的に作用する。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、間葉細胞を介して前記中立表皮細胞に作用する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0056】
他の実施形態では、前記間葉細胞は、皮膚凝縮細胞(dermal condensate cell)である。他の実施形態では、前記間葉細胞は、DP細胞である。他の実施形態では、前記間葉細胞は、他の種類の細胞、又は皮膚凝縮DP系統(dermal condensate-DP lineage)における分化段階である。他の実施形態では、前記間葉細胞は、当該技術分野で公知の他の種類の間葉細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0057】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるEGFRは、次の配列を有する。MRPSGTAGAALLALLAALCPASRALEEKKVCQGTSNKLTQLGTFEDHFLSLQRMFNNCEVVLGNLEITYVQRNYDLSFLKTIQEVAGYVLIALNTVERIPLENLQIIRGNMYYENSYALAVLSNYDANKTGLKELPMRNLQEILHGAVRFSNNPALCNVESIQWRDIVSSDFLSNMSMDFQNHLGSCQKCDPSCPNGSCWGAGEENCQKLTKIICAQQCSGRCRGKSPSDCCHNQCAAGCTGPRESDCLVCRKFRDEATCKDTCPPLMLYNPTTYQMDVNPEGKYSFGATCVKKCPRNYVVTDHGSCVRACGADSYEMEEDGVRKCKKCEGPCRKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKBISDGDVIISGNKKLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFMRRRHIVRKRTLRRLLQERELVEPLTPSGEAPNQALLRILKETEFKKIKVLGSGAFGTVYKGLWIPEGEKVKIPVAIKELREATSPKANKEILDEAYVMASVDNPHVCRLLGICLTSTVQLITQLMPFGCLLDYVREHKDNIGSQYLLNWCVQIAKGMNYLEDRRLVHRDLAARNVLVKTPQHVKITDFGLAKLLGAEEKEYHAEGGKVPIKWMALESILHRIYTHQSDVWSYGVTVWELMTFGSKPYDGIPASEISSILEKGERLPQPPICTIDVYMIMVKCWMIDADSRPKFRELIIEFSKMARDPQRYLVIQGDERMHLPSPTDSNFYRALMDEEDMDDVVDADEYLIPQQGFFSSPSTSRTPLLSSLSATSNNSTVACIDRNGLQSCPIKEDSFLQRYSSDPTGALTEDSIDDTFLPVPEYINQSVPKRPAGSVQNPVYHNQPLNPAPSRDPHYQDPHSTAVGNPEYLNTVQPTCVNSTFDSPAHWAQKGSHQISLDNPDYQQDFFPKEAKPNGIFKGSTAENAEYLRVAPQSSEFIG(遺伝子銀行のアクセス番号:NM_005228;SEQ ID No:277)。他の実施形態では、前記EGFRは、遺伝子銀行に登録されている、NM_201282、NM_201283、NM_201284、BC094761、AF288738、AY588246、AY573061、X17054、AF125253、U48722、K03193、及びAY698024から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記EGFRは、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、EGFRの生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0058】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるEGFは、次の配列を有する。MLLTLIILLPVVSKFSFVSLSAPQHWSCPEGTLAGNGNSTCVGPAPFLIFSHGNSIFRIDTEGTNYEQLVVDAGVSVIMDFHYNEKRIYWVDLERQLLQRVFLNGSRQERVCNIEKNVSGMAINWINEEVIWSNQQEGIITVTDMKGNNSHILLSALKYPANVAVDPVERFIFWSSEVAGSLYRADLDGVGVKALLETSEKITAVSLDVLDKIILFWIQYNREGSNSLICSCDYDGGSVHISKHPTQHNLFAMSLFGDRIFYSTWKMKTIWIANKIiTGKDMVRINLHSSFVPLGELKVVHPLAQPKAEDDTWEPEQKLCKLRKGNCSSTVCGQDLQSHLCMCAEGYALSRDRKYCEDVNECAFWNHGCTLGCKNTPGSYYCTCPVGFVLLPDGKRCHQLVSCPRNVSECSHDCVLTSEGPLCFCPEGSVLERDGKTCSGCSSPDNGGCSQLCVPLSPVSWECDCFPGYDLQLDEKSCAASGPQPFLLFANSQDIRHMHFDGTDYGTLLSQQMGMVYALDHDPVENKIYFAHTALKWIERANMDGSQRERLIEEGVDVPEGLAVDWIGRRFYWTDRGKSLIGRSDLNGKRSKIITKENISQPRGIAVHPMAKRLFWTDTGINPRIESSSLQGLGRLVIASSDLIWPSGITIDFLTDKLYWCDAKQSVIEMANLDGSKRRRLTQNDVGHPFAVAVFEDYVWFSDWAMPSVIRVNKRTGKDRVRLQGSMLKPSSLVVVHPLAKPGADPCLYQNGGCEHICKKRLGTAWCSCREGFMKASDGKTCLALDGHQLLAGGEVDLKNQVTPLDDLSKTRVSEDNITESQHMLVAEIMVSDQDDCAPVGCSMYARCISEGEDATCQCLKGFAGDGKLCSDIDECEMGVPVCPPASSKCINTEGGYVCRCSEGYQGDGIHCLDIDECQLGVHSCGENASCTNTEGGYTCMCAGRLSEPGLICPDSTPPPHLREDDHHYSVRNSDSECPLSHDGYCLHDGVCMYIEALDKYACNCVVGYIGERCQYRDLKWWELRHAGHGQQQKVIVVAVCWVLVMLLLLSLWGAHYYRTQKLLSKNPKNPYEESSRDVRSRRPADTEDGMSSCPQPWFVVIKEHQDLKNGGQPVAGEDGQAADGSMQPTSWRQEPQLCGMGTEQGCWIPVSSDKGSCPQVMERSFHMPSYGTQTLEGGVEKPHSLLSANPLWQQRALDPPHQMELTQ(遺伝子銀行のアクセス番号:NM_001963;SEQ ID No:278)。他の実施形態では、前記EGFは、遺伝子銀行に登録されている、BC093731、AY548762、及びX04571から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記EGFは、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、EGFの生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0059】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるβカテニンタンパク質は、次の配列を有する。MATQADLMELDMAMEPDRKAAVSHWQQQSYLDSGIHSGATTTAPSLSGKGNPEEEDVDTSQVLYEWEQGFSQSFTQEQVADIDGQYAMTRAQRVRAAMFPETLDEGMQIPSTQFDAAHPTNVQRLAEPSQMLKHAVVNLINYQDDAELATRAIPELTKLLNDEDQVVVNKAAVMVHQLSKKEASRHIMRSPQMVSATVllTMQNTNDVETARCTAGTLHNLSHHREGLLAIFKSGGIPALVKMLGSPVDSVLFYAITTLHNLLLHQEGAKMAVRLAGGLQKMVALLNKTNVKFLAITTDCLQILAYGNQESKLIILASGGPQALVNIMRTYTYEKLLWTTSRVLKVLSVCSSNKPAIVEAGGMQALGLHLTDPSQRLVQNCLWTLRNLSDAATKQEGMEGLLGTLVQLLGSDDINVVTCAAGILSNLTCNNYKMMMVCQVGGIEALVRTVLRAGDREDITEPAICALRHLTSRHQEAEMAQNAVRLHYGLPVVVKLLHPPSHWPLIKATVGLIIWLALCPANHAPLREQGAIPRLVQLLVRAHQDTQRRTSMGGTQQQFVEGVRMEEIVEGCTGALHILARDVHNRIVIRGLNTIPLFVQLLYSPIENIQRVAAGVLCELAQDKEAAEAIEAEGATAPLTELLHSRNEGVATYAAAVLFRMSEDKPQDYKKRLSVELTSSLFRTEPMAWNETADLGLDIGAQGEPLGYRQDDPSYRSFHSGGYGQDALGMDPMMEHEMGGHHPGADYPVDGLPDLGHAQDLMDGLPPGDSNQLAWFDTDL(遺伝子銀行のアクセス番号:NM_001904;SEQ ID No:279)。他の実施形態では、前記βカテニンタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、BC058926、X87838、AF130085、AB062292、Z19054、及びNP_001895から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記βカテニンタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、βカテニンタンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0060】
他の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物で使用されるWntタンパク質は、次の配列を有する。MNRKARRCLGHLFLSLGMVYLWGGFSSWALGASUCNKIPGLAPRQRAICQSGSQMGLDECQFQFRNGRWNCSALGERTVFGKELKVGSREAAFTYAHAAGVAHAITAACTQGNLSDCGCDKEKQGQYHRDEGWKWGGCSADIRYGIGFAKVFVDAREIKQNARTLMNLHNNEAGRKILEENMKLECKCHGVSGSCTTKTCWTTLPQFRELGYVLKDKYNEAVHVEPVRASRNKRPTFLKIKKPLSYRKPMDTDLVYIEKSPNYCEEDPVTGSVGTQGRACNKTAPQASGCDLMCCGRGYNTHQYARVWQCNCKFHWCCYVKCNTCSERTEMYTCK(遺伝子銀行のアクセス番号:BC008811;SEQ ID No:280)。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている、NM_004625、D83175、U53476、及びNP_004616から選択された配列を有する。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt7aタンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt1タンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt3タンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt3aタンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt10タンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt10aタンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt10bタンパク質である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、遺伝子銀行に登録されている上記のいずれか1つの配列を有する核酸分子によってエンコードされる。他の実施形態では、Wntタンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。他の実施形態では、Wnt7タンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。他の実施形態では、Wnt7aタンパク質の生物活性断片が、本発明に係る方法に使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0061】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、遺伝子銀行に登録されているSEQ ID No:1〜232から選択された配列を有するリボ核酸(ribonucleic acid:RNA)分子によってエンコードされたタンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:1〜232から選択された配列を有するRNA分子である。他の実施形態では、前記RNA分子は、SEQ ID No:1〜232から選択された配列と相同である。他の実施形態では、前記RNA分子は、SEQ ID No:1〜232から選択された配列のアイソフォームである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:1〜232から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の活性を増加させる。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:1〜232から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の発現又はレベルを増加させる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0062】
本明細書中で説明されるように、表3に示した転写物(実施例8;SEQ ID No:1〜232)、それらがエンコードするタンパク質、及び前記タンパク質が関与する経路は、HF幹細胞の活性化に大きく貢献する。そのため、ここで使用される条件下で、前記転写物、タンパク質及び経路の活性化によって、毛髪の成長期を誘導することができる。したがって、表3に示した前記転写物、タンパク質及び経路の活性化は、EDIHNを誘導するための方法である。他の実施形態では、前記転写物、タンパク質及び経路の活性化は、対象の髪の成長を促進するための方法である。
【0063】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、遺伝子銀行に登録されているSEQ ID No:233〜257から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:233〜257から選択された配列を有するRNA分子である。他の実施形態では、前記RNA分子は、SEQ ID No:233〜257から選択された配列と相同である。他の実施形態では、前記RNA分子は、SEQ ID No:233〜257から選択された配列のアイソフォームである。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:233〜257から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の活性を増加させる。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:233〜257から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の発現又はレベルを増加させる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0064】
本明細書中で説明されるように、表4に示した転写物(実施例9;SEQ ID No:233〜257)、それらがエンコードするタンパク質、及び前記タンパク質が関与する経路は、ここで使用される条件下で、表皮細胞のHF幹細胞への分化に大きく貢献する。したがって、表4に示した前記転写物、タンパク質及び経路の活性化は、EDIHNを誘導するための方法である。他の実施形態では、前記転写物、タンパク質及び経路の活性化は、対象の髪の成長を促進するための方法である。
【0065】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子は、SEQ ID No:258〜273から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の活性を減少させる化合物又は因子である。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、SEQ ID No:258〜273から選択された配列を有するRNA分子によってエンコードされたタンパク質の発現又はレベルを減少させる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0066】
本発明の発見により実証されるように、表5に示した転写物(実施例9;SEQ ID No:258〜273)、それらがエンコードするタンパク質、前記タンパク質が関与する経路は、ここで使用される条件下で、表皮細胞のHF幹細胞への分化誘導を阻止するのに大きく貢献する。したがって、表5に示した前記転写物、タンパク質及び経路の抑制は、EDIHNを誘導するための方法である。他の実施形態では、前記転写物、タンパク質及び経路の抑制は、対象の髪の成長を促進するための方法である。
【0067】
他の実施形態では、SEQ ID No:233〜273に記載された配列から選択された配列を有するRNA分子、又は前記配列をエンコードしている核酸によってエンコードされたタンパク質を調節する化合物は、SEQ ID No:1〜232に記載された配列から選択された配列を有するRNA分子又は前記配列をエンコードしている核酸によってエンコードされたタンパク質を調節する化合物を投与する前に投与される。他の実施形態では、前記2つの化合物は、同時に投与される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0068】
ある実施形態では、SEQ ID No:1〜273から選択されたRNA配列によってエンコードされたタンパク質又はそれを調節する化合物は、それらのHF形成又は発毛促進の効果をさらに高めるために、前記RNA配列によってエンコードされた他のタンパク質又はそれを調節する化合物を投与する前に投与される。他の実施形態では、wnt経路は、ヘッジホッグ経路の前に刺激される。他の実施形態では、前記2つの経路は、重複方法(overlapping fashion)によって刺激される。他の実施形態では、前記2つの経路は、同時に刺激される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0069】
他の実施形態では、本発明に係る方法でのRNA転写物の発現の活性化又は減少は、転写機構を介して行われる(例えば、RNAの発現の活性化)。他の実施形態では、RNA転写物の発現の活性化又は減少は、翻訳機構によって行われる。他の実施形態では、RNA転写物の発現の活性化又は減少は、翻訳後機構によって行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0070】
他の実施形態では、本発明に係る方法で使用される核酸分子は、本発明に記載された配列から選択された配列を有するRNA分子をエンコードするデオキシリボ核酸(DNA)分子である。
【0071】
ある実施形態では、本発明に係るRNA分子は、HF再生に関与するタンパク質をエンコードする。他の実施形態では、前記RNA分子は、それ自体が触媒的に活性である(例えばリボザイムなど)。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0072】
他の実施形態では、中立表皮細胞のHF細胞への分化を誘導する化合物又は因子は、細胞のプラコードを誘導する化合物又は因子である。本明細書中で説明されるように、細胞のプラコードを誘導する化合物又は因子は、実施例の欄で例示するように、EDIHNを誘導する。他の実施形態では、前記化合物又は因子は、HF発達のプラコード段階で作用する。
【0073】
他の実施形態では、前記化合物又は因子は、中立表皮細胞のHFへの分化を阻害する生物学的要因を抑制する。
【0074】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、上記の化合物又は因子の1つを含有する組成物が投与される。上記の種類の化合物、因子及び組成物の各々は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0075】
ある実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、ミノキシジル(minoxidil)を接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。
【0076】
ある実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する方法であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、ミノキシジルを接触させるステップとを含み、それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法を提供する。
【0077】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する医薬組成物を製造するためのミノキシジルの使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に前記ミノキシジルを接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0078】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域のはげ頭症を治療する医薬組成物を製造するためのミノキシジルの使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に前記ミノキシジルを接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0079】
他の実施形態では、本発明は、対象の皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法であって、(a)前記皮膚又は頭皮の表皮を破壊するステップと、(b)前記皮膚又は頭皮に、(i)EGFタンパク質、(ii)EGF受容体、(iii)EGFタンパク質若しくはEGF受容体をエンコードするヌクレオチド、又は(iv)EGFタンパク質若しくはEGF受容体を活性化させる化合物若しくは因子のいずれかを接触させるステップとを含み、それによって、対象の皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法を提供する。
【0080】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、光による皮膚剥離である。他の実施形態では、前記表皮破壊は、非瘢痕性方法である。他の実施形態では、EGFタンパク質、EGF受容体、ヌクレオチド、化合物又は因子の投与は、HF形成を抑制する。他の実施形態では、EGFタンパク質、EGF受容体、ヌクレオチド、化合物又は因子は、治療の数日以内に投与される。他の実施形態では、EGFタンパク質、EGF受容体、ヌクレオチド、化合物又は因子は、治療の約1日以内に投与される。他の実施形態では、EGFタンパク質、EGF受容体、ヌクレオチド、化合物又は因子は、Dkklタンパク質のためにここで列挙された任意の時間形態にしたがって投与される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0081】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域から毛包を除去する医薬組成物を製造するための、(i)EGFタンパク質、(ii)EGF受容体、(iii)EGFタンパク質若しくはEGF受容体をエンコードするヌクレオチド、又は(iv)EGFタンパク質若しくはEGF受容体を活性化させる化合物若しくは因子のいずれかの使用であって、(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊し、(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、前記EGFタンパク質、EGF受容体、ヌクレオチド又は化合物又は因子を接触させることを特徴とする使用を提供する。
【0082】
他の実施形態では、本発明に係る組成物又は方法は、人間の皮膚に使用される、他の実施形態では、本発明に係る組成物又は方法は、発毛を望まない領域に使用される。他の実施形態では、前記領域は、顔である。他の実施形態では、前記領域は、ビキニ領域である。他の実施形態では、前記領域は、脚部である。他の実施形態では、前記領域は、腕部である。他の実施形態では、前記領域は、胸部である。
【0083】
本発明に係る方法及び組成物に使用される「阻害剤」は、他の実施形態では、標的であるタンパク質又は生物学的因子と結合する抗体である。他の実施形態では、前記阻害剤は、薬理学的阻害剤である。他の実施形態では、前記阻害剤は、当該技術分野で公知の他の薬理学的阻害剤である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する
【0084】
本発明に係る方法における表皮を破壊するステップは、他の実施形態では、頭皮、眉又は瘢痕領域を剥離することにより行われる。他の実施形態では、「剥離(abrading)」という用語は、表皮剥離(abrasion)を引き起こす行為を意味する。他の実施形態では、「剥離」という用語は、こすり取ることを意味する。他の実施形態では、「剥離」という用語は、摩擦によってすり減らすことを意味する。本明細書中で説明されるように、表皮剥離は、ここで使用される条件下で、新たにHF新生を引き起こす。他の実施形態では、表皮層は破壊される。
【0085】
ある実施形態では、「剥離(abrasion)」は、「表皮剥離(abrading)」と同じ意味である。他の実施形態では、「表皮剥離」は、頭皮又は皮膚における、皮膚が除去された領域を意味する。他の実施形態では、「表皮剥離」は、頭皮又は皮膚における、表皮及び真皮が除去された領域を意味する。「剥離」及び「表皮剥離」の各定義は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0086】
他の実施形態では、本明細書中で説明されるように、使用される条件下で、本発明に係る方法での表皮破壊は、皮膚の背部を、毛包を再生する胎児様状態(embryonic-like state)に変換する。他の実施形態では、皮膚の新しいHFの数及びサイズを操作可能な間に、次の機会が得られる。他の実施形態では、この機会における、中立表皮細胞のHF細胞への分化を誘導する化合物又は因子の投与によって、より大きくより数の多いHFの再生が引き起こされる。剥離された皮膚におけるHFの形態は、初期のHFの形態と類似している(実施例1〜2、及びその後の実施例)、発現したマーカーも同様に類似している。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域における発毛を促進する方法であって、本発明に係る方法を実施することにより、対象の前記頭皮、眉又は瘢痕領域における発毛を促進する方法を提供する。実施例3で実証されているように、EDIHNによって形成されたHFは、発毛させることができる。したがって、本発明に係る方法は、発毛を促進するのに使用することができる。
【0088】
「EDIHN」は、表皮層の破壊によって誘起されたHF新生を意味する。他の実施形態では、この用語は、表皮剥離によって誘起されたHF新生を意味する。他の実施形態では、この用語は、創傷(wounding)によって誘発されたHF再生を意味する。他の実施形態では、この用語は、表皮層の破壊、及びその後の、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子の投与によって誘発されたHF再生を意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0089】
他の実施形態では、本発明は、化合物のインビボでのHF形成を調節する能力を試験する方法であって、(a)第1の対象における、前記化合物と接触させた第1の頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮層を破壊するステップと、(b)前記第1の頭皮、眉又は瘢痕領域のHF形成(第1のHF形成)を測定するステップと、(c)前記第1の対象又はそれとは異なる第2の対象における、前記化合物と接触させていない第2の頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮層を破壊するステップと、(d)前記第2の頭皮、眉又は瘢痕領域のHF形成(第2のHF形成)を測定するステップと、(e)前記第1のHF形成と前記第2のHF形成との差が示す前記化合物のインビボでのHF形成調節能力を調べるために、前記第1のHF形成と前記第2のHF形成とを比較するステップとを含む方法(実施例)。
【0090】
他の実施形態では、本発明は、インビボにおける化合物の発毛促進能力を試験する方法であって、前記化合物と接触させた第1の頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮層を破壊するステップと、前記第1の頭皮、眉又は瘢痕領域のHF形成(第1のHF形成)を測定するステップと、前記化合物と接触させていない第2の頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮層を破壊するステップと、前記第2の頭皮、眉又は瘢痕領域のHF形成(第2のHF形成)を測定するステップと、前記第1のHF形成と前記第2のHF形成との差が示すインビボにおける前記化合物の発毛促進能力を調べるために、前記第1のHF形成と前記第2のHF形成とを比較するステップとを含む方法を提供する。
【0091】
ある実施形態では、本発明に係る化合物の試験方法は、統計的に有意なサンプル数が得られるまで、複数の対象を使用して繰り返される。
【0092】
本発明に係る化合物の試験方法の他の実施形態では、前記第1の頭皮、眉又は瘢痕領域は、第1の対象における頭皮、眉又は瘢痕領域である。他の実施形態では、前記対象は、新しいHFの形成を必要としている対象である。他の実施形態では、前記第2の頭皮、眉又は瘢痕領域は、第1の対象における頭皮、眉又は瘢痕領域である。他の実施形態では、前記第2の頭皮、眉又は瘢痕領域は、第2の対象における頭皮、眉又は瘢痕領域である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0093】
他の実施形態では、本発明に係る方法における切除創傷は、手術道具を使用して作成される。ある実施形態では、前記手術道具は、皮膚生検パンチである(実施例2)。他の実施形態では、前記切除創傷は、冷凍処理又は冷凍損傷(cryoinjury)によって作成される。冷凍処理又は冷凍損傷の使用は当該技術分野で公知であり、例えば、傷ついた皮膚の皮膚専門医によって使用される。ある実施形態では、冷凍処理又は冷凍損傷は、水膨れをもたらす。他の実施形態では、前記水脹れは、薬剤及び細胞を再表皮化領域へ導入ための「チェンバー(chamber)」として使用される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0094】
他の実施形態では、本発明に係る方法における前記切除創傷は、手術で縫合されない。他の実施形態では、本発明に係る方法における前記切除創傷は、治癒する前又は創傷が作成されてから一定期間は、包帯と接触しない。他の実施形態では、前記切除創傷は、治癒する前又は創傷が作成されてから一定期間は、軟膏と接触されない。他の実施形態では、前記切除創傷は、2次的な意図で治癒される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0095】
他の実施形態では、本発明に係る方法での対象は、人間である。本明細書中で説明されるように、人間の皮膚は、EDIHNに対してマウスの皮膚と同様に反応する(実施例7)。他の実施形態では、前記対象は、男性である。他の実施形態では、前記対象は、女性である。他の実施形態では、前記対象は、当該技術分野で公知の他の種類の対象である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0096】
他の実施形態では、前記対象は、大人である。ある実施形態では、「大人」は、18歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、20歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、25歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、30歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、35歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、40歳以上を意味する。他の実施形態では、「大人」は、45歳以上を意味する。
【0097】
他の実施形態では、前記対象は、高齢者である。他の実施形態では、「高齢者」は、45歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、50歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、55歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、60歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、65歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、70歳以上を意味する。他の実施形態では、「高齢者」は、75歳以上を意味する。
【0098】
他の実施形態では、前記第1の対象、又は、前記第1の対象、及び適用される場合は前記第1の対象と前記第2の対象の両方は、実験動物である。他の実施形態では、前記対象は、マウスである。他の実施形態では、前記対象は、ラットである。他の実施形態では、前記対象は、アレチネズミ(gerbil)である。他の実施形態では、前記対象は、ハムスターである。他の実施形態では、前記対象は、テンジクネズミ(guinea pig)である。他の実施形態では、前記対象は、ウサギである。他の実施形態では、前記対象は、ブタである。他の実施形態では、前記対象は、イヌである。他の実施形態では、前記対象は、ネコである。他の実施形態では、前記対象は、霊長類である。他の実施形態では、前記対象は、当該技術分野で公知の他の実験動物である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0099】
他の実施形態では、前記対象は、はげ頭症(balding)を含む疾病又は疾患がある。他の実施形態では、前記対象は、はげ頭症を含む疾病又は疾患はない。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、アンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、男性型はげ頭症である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、女性型はげ頭症である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、円板状エリテマトーデス(discoid lupus erythematosis)である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、先天性貧毛(congenital hypotrichosis)である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、毛孔性扁平苔癬(lichen planopilari)である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、瘢痕性脱毛症(scarring alopecia)である。他の実施形態では、前記疾病又は疾患は、当該技術分野で公知の他のはげ頭症を含む疾病又は疾患である。
【0100】
他の実施形態では、前記頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの大部分は、毛周期の休止期にある。実施例5〜6の結果は、(a)EDIHNは、前記休止期において、頭皮、眉又は瘢痕領域における発毛を元の状態に戻せること、及び、(b)休止期でのEDIHNの効率は、剥離又は創傷を作成する前の除毛によって高めることができることを示す。他の実施形態では、前記頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの60%以上は、毛周期の休止期にある。他の実施形態では、前記頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの70%以上は、毛周期の休止期にある。他の実施形態では、前記頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの80%以上は、毛周期の休止期にある。他の実施形態では、前記頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの90%以上は、毛周期の休止期にある。他の実施形態では、頭皮、眉又は瘢痕領域のHFの大部分は、毛周期の休止期にない。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0101】
本発明に係る方法及び組成物の他の実施形態では、前記第1のステップ(例えば、表皮破壊)は、前記第2のステップ(例えば、活性化合物、因子、細胞等の投与)の3〜12日前に行われる。他の実施形態では、前記間隔は、4〜12日である。他の実施形態では、前記間隔は、5〜12日である。他の実施形態では、前記間隔は、4〜11日である。他の実施形態では、前記間隔は、6〜11日である。他の実施形態では、前記間隔は、6〜10日である。他の実施形態では、前記間隔は、6〜9日である。他の実施形態では、前記間隔は、6〜8日である。他の実施形態では、前記間隔は、7〜8日である。他の実施形態では、前記間隔は、5〜11日である。他の実施形態では、前記間隔は、5〜10日である。他の実施形態では、前記間隔は、7〜10日である。他の実施形態では、前記間隔は、約1週間である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0102】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域におけるWntタンパク質の活性又は発現を抑制するステップをさらに含む。本明細書中で説明されるように、Wnt活性を抑制することにより、本発明に係る方法によって形成されたHFの色素沈着が誘起される。他の実施形態では、前記Wnt活性又は発現を抑制するステップは、表皮破壊の約10日以内に行われる。他の実施形態では、前記Wnt活性又は発現を抑制するステップは、第2のステップの前(例えば、HF細胞の分化を促進する化合物又は因子を投与する前)に行われる。
【0103】
他の実施形態では、本発明は、毛髪の色素沈着を誘起する方法であって、前記毛髪の毛包でのWntタンパク質の発現を抑制するステップを含む方法を提供する。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt1である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt7である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt7aである。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt3である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt3aである。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt10である。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、Wnt10aである。他の実施形態では、前記Wntタンパク質は、当該技術分野で公知の他のWntタンパク質である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0104】
他の実施形態では、本発明は、対象の色素沈着した頭毛は眉毛の成長を誘起する方法であって、本発明に係る方法に従って頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成するステップと、前記毛包でのWntタンパク質の発現を抑制するステップとを含み、それによって、対象の色素沈着した頭毛は眉毛の成長を誘起する方法を提供する。
【0105】
他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、Dkk1タンパク質の発現を誘起することを含む。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、当該技術分野で公知の他のWnt阻害剤の発現を誘起することを含む。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、Dkk1タンパク質の発現を誘起することを含む。他の実施形態では、Wntタンパク質の発現を抑制する前記ステップは、表皮破壊の直後又は少し後に行われる。他の実施形態では、Dkk1タンパク質の発現を誘起する前記ステップは、表皮破壊の直後又は少し後に行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、表皮破壊の時点で行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、表皮破壊の時点で行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、毛包の形成の数日前に行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、毛包の形成の数日前に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0106】
他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、約8日間行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、約8日間行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、約9日間行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、約9日間行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、約10日間行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、約10日間行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、約12日間行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、約12日間行われる。他の実施形態では、前記Wntタンパク質の発現を抑制するステップは、表皮再形成の期間に行われる。他の実施形態では、前記Dkk1タンパク質の発現を誘起するステップは、表皮再形成の期間に行われる。他の実施形態では、Dkk1タンパク質の発現は、数日後に停止する。他の実施形態では、数日後でのDkk1タンパク質の発現停止は、Wntタンパク質の発現を誘起する又は可能にする。他の実施形態では、Wntタンパク質の発現は、剥離又は創傷した約9日後に誘起される。他の実施形態では、Wntタンパク質の発現は、表皮再形成期間の後に誘起される。他の実施形態では、Wntタンパク質の発現は、新しいHFの形成に必要である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0107】
他の実施形態では、「数日」は、約1日である。他の実施形態では、「数日」は、約2日である。他の実施形態では、「数日」は、約3日である。他の実施形態では、「数日」は、約5日である。他の実施形態では、「数日」は、約7日である。他の実施形態では、「数日」は、約10日である。他の実施形態では、「数日」は、約12日である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0108】
他の実施形態では、本発明に係る方法における接触ステップは、前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、化合物、RNA、タンパク質などを直接的に接触させることを含む。他の実施形態では、本発明に係る方法における接触ステップは、化合物、RNA又はタンパク質を前記頭皮、眉又は瘢痕領域に生物学的処理によって搬送した後に、対象の他の部位又は組織を介して前記頭皮、眉又は瘢痕領域に間接的に接触させることを含む。前記生物学的処理としては、例えば、液体(血液、リンパ液、間質液など)内での拡散、能動輸送又は循環などがある。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0109】
他の実施形態では、本発明に係る方法における表皮破壊は、頭皮、眉又は瘢痕領域から皮膚組織をさらに除去する。他の実施形態では、前記表皮破壊は、頭皮、眉又は瘢痕領域から皮膚組織を除去しない。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0110】
表皮又は表皮層の「破壊(disrupting)は、他の実施形態では、表皮又は表皮層の一部の除去を意味する。他の実施形態では、この用語は、表皮又は表皮層を損傷させることを意味する。他の実施形態では、この用語は、表皮又は表皮層を穿孔することを意味する。他の実施形態では、表皮層の一部だけを除去する。他の実施形態では、表皮層全体を除去する。他の実施形態では、この用語は、表皮又は表皮層の剥離を意味する(実施例)。他の実施形態では、この用語は、表皮又は表皮層の損傷を意味する(実施例)。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0111】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、サンドペーパーなどの道具によって行われる。他の実施形態では、前記表皮破壊は、レーザーによって行われる。他の実施形態では、前記レーザーは、フラクセルレーザーである。他の実施形態では、前記レーザーは、COレーザーである。他の実施形態では、前記レーザーは、エキシマレーザーである。他の実施形態では、前記レーザーは、経表皮損傷の誘導が可能な他の種類のレーザーである。他の実施形態では、前記表皮破壊は、フェルトホイール(felt wheel)を使用して行われる。他の実施形態では、前記表皮破壊は、手術道具を使用して行われる。他の実施形態では、前記表皮破壊は、当該技術分野で公知の他の表皮破壊が可能な道具を使用して行われる。他の実施形態では、前記表皮破壊は、マイクロ皮膚剥離装置を使用して行われる。他の実施形態では、前記表皮破壊は、熱傷処置を含む。
【0112】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、前記表皮の毛包の破壊、及び、前記表皮の毛包間領域の破壊を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、前記表皮の毛包の破壊を含むが、前記表皮の毛包間領域の破壊は含まない。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0113】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、光ベースの方法を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、可視光線の照射を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、赤外線の照射を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、紫外線の照射を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、常用電圧照射を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、X線照射を含む。他の実施形態では、前記表皮破壊は、当該技術分野では公知の他の種類の照射を含む。
【0114】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、機械的手段を用いて行われる。他の実施形態では、「機械的手段」は、剥離である。他の実施形態では、前記用語は、損傷を意味する。他の実施形態では、前記用語は、超音波を意味する。他の実施形態では、前記用語は、無線周波数を意味する。他の実施形態では、前記用語は、ab電気処理、又は電流の使用を意味する。他の実施形態では、前記用語は、エレクトロポレーションを意味する。他の実施形態では、前記用語は、切除を意味する。他の実施形態では、前記用語は、テープストリッピング(tape-stripping)を意味する。他の実施形態では、前記用語は、マイクロ皮膚剥離を意味する。他の実施形態では、前記用語は、ピール(peel)の使用を意味する。他の実施形態では、前記用語は、当該技術分野で公知の他の種類の機械的手段を意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0115】
他の実施形態では、前記表皮破壊は、化学物質による処理を含む。他の実施形態では、前記化学物質は、フェノールである。他の実施形態では、前記化学物質は、トリクロロ酢酸である。他の実施形態では、前記化学物質は、アスコルビン酸である。他の実施形態では、前記化学物質は、当該技術分野で公知の他の化学物質である。
【0116】
表皮破壊の各方法及び種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0117】
他の実施形態では、本発明に係る方法では、表皮外傷(epidermal trauma)が使用される。
【0118】
表皮剥離及び表皮外傷の各種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0119】
他の実施形態では、本発明に係る方法における表皮破壊は、少なくとも約1〜1.5cmの擦傷を生じる。他の実施形態では、前記擦傷は、少なくとも約1cmの幅である。他の実施形態では、前記擦傷は、少なくとも約1.5cmの幅である。他の実施形態では、前記擦傷は、少なくとも約2cmの幅である。擦傷の各種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0120】
他の実施形態では、頭皮、眉又は瘢痕領域は、表皮破壊の後に、包帯と接触しない。他の実施形態では、頭皮、眉又は瘢痕領域は、表皮破壊の後に、軟膏と接触しない。他の実施形態では、頭皮、眉又は瘢痕領域は、通常は治療を促進するために擦傷又は創傷に使用される薬物、装置、軟膏などと接触しない状態で、一定期間に渡って治療される。他の実施形態では、前記一定期間は、表皮破壊の治療に要する時間である。他の実施形態では、前記一定期間は、2日〜3週間の任意の長さ及び範囲の時間である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0121】
ある実施形態では、「後(following)」は、約2日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約3日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約4日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約5日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約7日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約10日後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約2週間後を意味する。ある実施形態では、「後」は、約3週間後を意味する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0122】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域を除毛(depilation)するステップをさらに含む。本明細書中で説明されるように、実施例6の結果は、擦傷又は創傷誘導前の除毛によって、EDIHNの効率が向上することを示す。
【0123】
他の実施形態では、除毛は、脱毛である。他の実施形態では、除毛は、ワックス脱毛のステップを含む。他の実施形態では、除毛は、プラッキング(plucking)のステップを含む。他の実施形態では、除毛は、研磨材の使用を含む。他の実施形態では、除毛は、レーザーの使用を含む。他の実施形態では、除毛は、電解の使用を含む。他の実施形態では、除毛は、機械装置の使用を含む。他の実施形態では、除毛は、チオグリコール酸の使用を含む。他の実施形態では、除毛は、当該技術分野では公知の他の方法の使用を含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0124】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、局所レチノイドを投与するステップをさらに含む。ある実施形態では、前記局所レチノイドは、頭皮、眉又は瘢痕領域における休止中(休止期)のHFの成長期の開始を誘導する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0125】
他の実施形態では、前記付加的ステップ(除毛又はレチノイドの投与)は、表皮を破壊するステップの前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、表皮を破壊するステップの後、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子を添加する前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、分化を促進する化合物又は因子の添加と同時に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、分化を促進する化合物又は因子の添加後に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0126】
他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約2日〜約3週間前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約2日前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約3日前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約4日前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約1週間前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約10日前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約2週間前に行われる。他の実施形態では、前記付加的ステップは、前記剥離ステップの約3週間前に行われる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0127】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、表皮細胞のHF細胞への分化を誘導することができる誘導細胞を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、前記HF細胞は、HF幹細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0128】
他の実施形態では、前記誘導細胞は、真皮乳頭細胞(dermal papilla cell)である。他の実施形態では、前記誘導細胞は、毛包乳頭細胞(follicular papilla cell)である。他の実施形態では、前記誘導細胞は、皮膚鞘細胞で(dermal sheath cell)ある。他の実施形態では、前記誘導細胞は、HF幹細胞で上方制御されるように、例えば、本発明で示されたタンパク質又は経路の1つを活性化する因子をエンコードしている遺伝子によって遺伝子組み換えがされた細胞である。ある実施形態では、前記因子は、ヘッジホッグである。他の実施形態では、前記因子は、DP細胞タンパク質である。他の実施形態では、前記因子は、wingless/int(wnt)である。他の実施形態では、前記因子は、ノギン・タンパク質である。他の実施形態では、前記因子は、骨形態形成タンパク質(bone morphogenic protein:BMP)である。他の実施形態では、前記因子は、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor:FGF)である。他の実施形態では、前記因子は、形質転換成長因子β(Transforming Growth Factor:TGF−β)タンパク質である。他の実施形態では、前記因子は、ソニック・ヘッジホッグ・タンパク質である。他の実施形態では、前記因子は、ノイロトロピンである。他の実施形態では、前記因子は、表皮細胞のHF細胞への分化誘導に寄与する当該技術分野で公知の他の因子である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0129】
他の実施形態では、前記誘導細胞が、HF幹細胞で下方制御されるように、本発明で示されたタンパク質又は経路の1つを抑制する因子をエンコードしている遺伝子によって、遺伝子的に操作される。他の実施形態では、前記誘導細胞が、HF幹細胞で上方制御されるように、本発明で示されたタンパク質又は経路の1つを活性化する因子をエンコードしている遺伝子によって、遺伝子的に操作される。
【0130】
他の実施形態では、前記誘導細胞は、自己細胞である。他の実施形態では、前記誘導細胞は、同種細胞である。
【0131】
他の実施形態では、前記誘導細胞は、間充織幹細胞に由来する。他の実施形態では、前記誘導細胞は、中胚葉前駆細胞に由来する。他の実施形態では、前記誘導細胞は、造血幹細胞に由来する。他の実施形態では、前記誘導細胞は、胚幹細胞に由来する。他の実施形態では、前記誘導細胞は、胚性癌腫細胞に由来する。他の実施形態では、前記誘導細胞は、米国特許出願第2003/0201815号に開示された細胞種類の1つである。他の実施形態では、前記誘導細胞は、当該技術分野では公知の他の種類の表皮細胞に対しての誘導的性質を有する細胞である。誘導細胞の各種類は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0132】
他の実施形態では、前記表皮細胞(例えば、HF細胞への分化を誘導する表皮細胞)は、表皮幹細胞である。他の実施形態では、前記表皮細胞は、バルジ細胞である。他の実施形態では、前記表皮細胞は、当該技術分野で公知の他の種類のHF細胞への分化を誘導する細胞である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0133】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、抗アンドロゲン化合物を接触させるステップをさらに含む。ある実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、フィナステライドである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、Fluridil(登録商標)である。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、デュタステライドである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、スピロノラクトンである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、酢酸シプロテロンである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、ビカルタミドである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、フルタミドである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、ニルタミドである。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、アンドロゲン受容体の阻害剤である。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物は、当該技術分野で公知の他の抗アンドロゲン化合物である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0134】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、エストロゲン化合物を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、前記本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、エストロゲン受容体アゴニストを接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、前記本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、エストロゲン類似体を接触させるステップをさらに含む。ある実施形態では、前記エストロゲン類似体は、エストラジオールである。ある実施形態では、前記エストロゲン類似体は、17βエストラジオールである。ある実施形態では、前記エストロゲン類似体は、17αエストラジオールである。ある実施形態では、前記エストロゲン類似体は、ZYC3である。他の実施形態では、前記抗アンドロゲン化合物、エストロゲン受容体アゴニスト、又はエストロゲン類似体は、当該技術分野で公知の他の抗アンドロゲン化合物、エストロゲン受容体アゴニスト、又はエストロゲン類似体である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0135】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、EGFタンパク質の阻害剤を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、EGFRの阻害剤を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、EGFタンパク質又はEGFRの発現を減少させる化合物を接触させるステップをさらに含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0136】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、ヘッジホッグ・タンパク質を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、ヘッジホッグ・タンパク質をエンコードするヌクレオチドを接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、ヘッジホッグ・タンパク質の活性化因子を接触させるステップをさらに含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0137】
ある実施形態では、頭皮が、本発明に係る方法により治療される。他の実施形態では、眉(眉)が、本発明に係る方法により治療される。他の実施形態では、皮膚の他の有毛領域が、本発明に係る方法により治療される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0138】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、リチウム化合物を接触させるステップをさらに含む。ある実施形態では、前記リチウム化合物は、リチウムイオンを含む。他の実施形態では、前記リチウム化合物は、リチウム原子を含む。
【0139】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、(2´Z,3´E)−6−ブロモインディルビン−3´−オキシム(BIO)を接触させるステップをさらに含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、頭皮、眉又は瘢痕領域に、当該技術分野では公知である、表皮細胞のHF幹細胞への分化を誘導することができる他の化合物を接触させるステップをさらに含む。各化合物は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0140】
ある実施形態では、本発明に係る方法の一部として投与される前記化合物は、全身的に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、局所的に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、擦傷部位に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、創傷が生じた部位に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、除毛部位に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、創傷治癒の期間に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、HF再生の前に投与される。他の実施形態では、前記化合物は、HF再生の期間に投与される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0141】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法の実施を含む、HF幹細胞の形成を誘導する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法の実施を含む、DP細胞の形成を誘導する方法を提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0142】
他の実施形態では、本発明の転写物及びタンパク質の相同体及び変異体が、本発明に係る方法で投与される。他の実施形態では、本発明の転写物及びタンパク質の相同体及び変異体が、本発明に係る方法の標的にされる。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0143】
「相同」、「相同性」などの用語は、タンパク質やペプチドに関しては、ある実施形態では、最大割合相同を達成するために、必要に応じて配列を整列化させてギャプを導入した後の、候補配列内における、対応する天然ポリペプチドの残余と一致するアミノ酸残余の割合を意味する(配列同一性の一部としての同類置換は考慮しない)。整列化のための方法及びコンピュータプログラムは、当該技術分野では公知である。
【0144】
他の実施形態では、「相同」という用語は、核酸配列に関しては、候補配列内における、対応する天然ポリペプチドの残余と一致する候補配列内のヌクレオチドの割合を示す。
【0145】
他の実施形態では、「相同」は、70%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、75%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、80%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、82%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、85%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、87%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、90%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、92%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、95%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、97%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、98%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、99%以上の一致を意味する。他の実施形態では、「相同」は、100%以上の一致を意味する。
【0146】
本明細書中に記載された任意のアミノ酸配列と相同するタンパク質及び/又はペプチド相同は、ある実施形態では、例えば、イムノブロット解析又はアミノ酸配列のコンピュータアルゴリズム分析(任意のソフトウェア・パッケージを使用して)などの当該技術分野で公知の確立した手法によって測定される。前記ソフトウェア・パッケージとしては、例えば、 FASTA、BLAST、MPsrch、又はScanpsパッケージがあり、Smith‐Watermanアルゴリズム、及び/又はグローバル/ローカル若しくはブロックアライメントを使用することができる。相同測定の各方法は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0147】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る方法に適した道具及び/又は化合物を含んでいるキットを提供する。
【0148】
他の実施形態では、本発明は、表皮破壊に適した道具、及び、中立表皮細胞のHF細胞への分化を促進する化合物又は因子の導入手段を含んでいる装置を提供する。
【0149】
他の実施形態では、本発明は、はげ頭症に関連する任意の疾病、疾患又は症状を治療する方法を提供する。各疾病、疾患又は症状は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0150】
(医薬組成物)
【0151】
他の実施形態では、本発明に係る方法は、HF幹細胞誘導又は活性化化合物(及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、又はそれらの組み合わせ)と薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物の投与を含む。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0152】
前記HF幹細胞誘導性又は活性化化合物を含有する前記医薬組成物は、他の実施形態では、例えば、局所的、非経口、側癌的(paracanceraly)、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹膜内、脳室内、脳内、膣内又は腫瘍内などの当該技術分野で公知の方法によって対象に投与される。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態に相当する。
【0153】
他の実施形態では、前記医薬組成物は、経口投与される。そのため、前記医薬組成物は、経口投与に適した形態に(すなわち、固形及び液体製剤として)製剤化されている。適切な固形経口製剤としては、例えば、タブレット、カプセル、ピル、顆粒、ペレットなどがある。適切な液体経口製剤としては、例えば、溶液、懸濁液、分散液、乳剤、油などがある。本発明のある実施形態では、HF幹細胞誘導又は活性化化合物は、カプセルの形態に製剤化される。他の実施形態では、本発明に係る化合物は、HF幹細胞誘導又は活性化化合物及び不活性担体又は希釈剤に加えて、硬ゲル化カプセルを含有する。
【0154】
他の実施形態では、前記医薬組成物は、身体表面に局所投与され、そのため、局所投与に適した形態に製剤化される。適切な局所製剤としては、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、滴剤などがある。局所投与するためには、HF幹細胞誘導若しくは活性化化合物又はその生理学的に許容される派生物(例えば、塩、エステル、N酸化物など)が作成され、溶液、懸濁液又は乳液として塗布される。前記溶液等は、薬学的担体を有する又は有さない、生理学的に許容される希釈剤に含まれる。
【0155】
他の実施形態では、前記医薬組成物は、ペレットの皮下移植によって投与される。他の実施形態では、前記ペレットは、HF幹細胞誘導又は活性化化合物をある期間に渡って制御放出する。
【0156】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体としては、水溶性或いは非水性の溶液、懸濁液、乳濁液、又は油がある。非水溶媒の例としては、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、及び注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)がある。水溶性担体としては、水、アルコール性/水溶性の溶液、乳濁液、又は懸濁液(例えば、生理食塩水、緩衝培地など)がある。油の例としては、石油、動物性、植物性、又は合成系がある(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ひまわり油、及び魚肝油)。
【0157】
ある実施形態では、前記医薬組成物は、制御放出組成物であり、投与後に、前記HF幹細胞誘導又は活性化化合物をある期間に渡って制御放出する。他の実施形態では、制御又は徐放組成物は、例えば、脂溶性デポー剤(例えば、脂肪酸、ワックス、油)である。他の実施形態では、前記組成物は、即時放出組成物であり、HF幹細胞誘導又は活性化化合物は、投与後すぐに放出される。
【実施例】
【0158】
実施例1:除毛及び表皮剥離によって、新しい毛包の形成が引き起こされる。
【0159】
≪材料及び実験方法≫
【0160】
<除毛及び表皮剥離>
【0161】
背部を毛刈りしてNair(Carter-Wallace, New York, NY)で除毛する前のマウスに、ペントバルビタールナトリウムを注射して麻酔する。その後、「Argyris T, J Invest Dermatol, 75: 360-362, 1980」に開示されているようにして、回転フェルトホイールを使用して表皮を除去した。70%エタノールで洗浄して白熱ランプ下で乾燥させた後、Dremel Moto-tool(Racine, WI)上に設置されたフェルトホイールで、毛包間表皮の1.5cmの領域における基底層及び基底層直上層を慎重に剥離して除去した。剥離後の皮膚は、つやがあり滑らかであった。皮膚に血液は見られなかった。1日後、剥離した領域はフィブリンのかさぶたで覆われていた。3〜7日後、かさぶたが剥がれ落ち、新たに再生された表皮が露出した。毛包間表皮が完全に除去されているかどうかを顕微鏡で確認するために、対照マウス群を表皮剥離の直後に屠殺した。
【0162】
<免疫組織化学>
【0163】
皮膚のサンプルを、PBSで緩衝化された10%のホルマリンに保存した。6ミクロンの厚さのパラフィン切片を切断し、(該当する場合は)抗体で染色した。
【0164】
<BrdU標識>
【0165】
Bickenbachら(Cell Tiss Kinet 19: 325-333, 1986; Bickenbach et al, Exp Cell Res 244. 184-195, 1998)によって報告された方法を使用した。マウスに、体重1kg当たり50mg(mg/kg)の5−ブロモ−2´−デオキシウリジン(BrdU)を、12時間ごとに計4回注射した。
【0166】
≪結果≫
【0167】
50日齢マウスの背部の所定領域を除毛した後、回転フェルトホイールを使用してその表皮を除去した。15日後、HFプラコード、毛芽、及び他の毛包新生の兆候が見られた(図1。図中の矢印は毛芽を示す)。毛包の形態は、胎児の毛包の成長に類似していた。この新しい毛包の増殖の特徴をさらに明らかにするために、屠殺する60分前に、皮膚をBrdUで標識した。図2に示すように、この増殖パターンは、胚子における毛包の成長と類似していた。
【0168】
これらの結果は、(a)表皮の破壊によって新しいHFの形成が引きこされること、並びに、この新しいHFの形成が(b)成体及び(c)休止期の間(50日齢のマウスは毛周期の第2の休止期にある)に起こり得ることを示す。
【0169】
実施例2:切除創傷(小さな穿孔創傷ではない)の形成によって、新たな毛包が形成される。
【0170】
≪材料及び実験方法≫
【0171】
<穿孔及び切除創傷の形成>
【0172】
21日齢のマウスの背部を実施例1で説明したようにして除毛し、アルコールで消毒した後、1%のヨード液で消毒した。皮膚生検パンチを使用して筋膜までの(筋膜は穿通しない)直径4mmの穿孔創を形成した。切除創は全層に渡って形成され、その直径は1cmであった(皮膚及び皮筋を、適切な手術バサミを使用して切除した)。
【0173】
≪結果≫
【0174】
創傷がHF形成を誘起できるかどうかを検査するために、マウスに穿孔創及び切除創を形成した。創傷形成後、どちらの創傷も、収縮及び上皮再形成を示した。しかし、穿孔創傷が形成されたマウスとは異なり、切除創傷が形成されたマウスには、創傷形成後10日間内に瘢痕が観察された(図3の左の図)。この時点では、毛包は観察されなかった(図3の右の図)。創傷作成12日後にBrdUのパルス標識をしたところ、創傷部位に、胎児の毛芽と類似した形態の毛芽が観察された(図4)。観察された組織がHFであることを確認するために、幾つかの標識を使用した。創傷形成12日後の時点で、ケラチン17抗体(K17)、HF標識(図5)、及びアルカリフォスファターゼ抗体で染色された組織は、HFが有しているはずの、線維芽細胞を含む真皮乳頭を有することを証明される(図6:初期及び後期段階のHFのそれぞれを、左及び右の図に示す)。
【0175】
創傷形成によって形成されたHFの特徴をさらに調べるため、BrdU染色後、胎児のHFと形態学的に比較したところ、様々な段階で、形態学的に明らかに一致していることが観察された(図7)。さらに、胎児のHF成長の標識であるLef1、wingless/int(Wnt)10b、及びソニック・ヘッジホグ(sonic hedgehog:Shh)を、EDIHN(epidermal disruption-induced HF neogenesis)によって誘起した(図8)。さらなるBrdU染色(図9)、並びに、HF標識であるS100A3及びS100A6の染色(図10。左の図は、HF軸に平行な組織切片であり、右の図は、毛包の断面図である)により、EDIHNの毛包の成長が、胎児のHFの成長に非常に類似していることがさらに証明された。
【0176】
これらの結果により、表皮の破壊によって新しいHFの形成が引きこされること、並びに、この新しいHFの形成が(b)成体及び(c)毛周期の休止期(21日齢のマウスは、毛周期の第1の休止期にある)に起こり得ることが証明された。
【0177】
実施例3:EDIHNによって形成された毛包は毛を形成する。
【0178】
創傷形成の25及び45日後、創傷部位に新しい毛が観察された(それぞれ、図11の左及び右の図)。創傷形成後の最初の9日間、Dkk1(Dickkopf-1)でwnt経路が阻害された場合(実施例10)を除き、新しい毛に色素沈着は見られなかった。
【0179】
これらの結果は、EDIHNによって形成されたHFが正常に機能する(すなわち、毛を形成することができる)ことを示す。
【0180】
実施例4:EDIHNによって形成された毛包は、発毛の周期に入る能力を有する。
【0181】
≪材料及び実験方法≫
【0182】
<BrdU標識>
【0183】
創傷形成の20日後から3日間に渡り、50mg/kg体重のBrdU(Sigma)を、1日2回注射した。BrdUは、創傷形成40日後に検出された(17日間追跡)。
【0184】
<ホールマウント及び免疫蛍光>
【0185】
新鮮な皮膚をEDTA(PBS中に20mM)内で、37℃で一晩培養し、表皮及び真皮を分離することでHFのホールマウント(whole mount)を得た。その後、表皮を10%のホルマリン内に室温で10分間保存した。真皮は、アセトン内に室温(RT)で一晩保存した。ホールマウントを、PBSで洗浄した後に、免疫組織化学の抗体で染色し(図12に模式的に示す)、Leica共焦点顕微鏡を使用して撮像した。
【0186】
≪結果≫
【0187】
EDIHNによって形成されたHFが正常な量のHF幹細胞を含んでいるかどうかを調べるために、創傷形成の21日後、マウスの皮膚を標識保持細胞の有無について検査した。これらの条件下での、長期の追跡期間中におけるBrdUの保持は、HF幹細胞の特徴の1つである。(HFのバルジ中に)正常な数及び配置の標識保持細胞が観察された(図13)。標識保持細胞がHF幹細胞であることを確認するために、K15−eGFPマウスを利用した。K15−eGFPマウスは、K15プロモータから、eGFP(変異型緑色蛍光タンパク)が発現される。したがって、eGFPの発現によって、HF幹細胞を特定することができる。図14Aに示すように、創傷形成の35日後、新たに形成された毛包の組織切片(右側)にeGFP発現細胞が観察された。また、表皮のホールマウントに、eGFP発現細胞が観察された(下側の左端の図)。このことは、表皮細胞が、毛包幹細胞の性質を有する細胞に変化したことを意味する(「下側の左から2番目」の図は、「下側の左端」の図と同じだが、白色光の下で観察している)。これらの結果は、観察された標識保持細胞がHF幹細胞の性質を示すことを実証する。
【0188】
EDIHNによって形成されたHFが正常な周期を有するかどうかを調べるために、創傷形成の35、38及び45日後のさらなるマウスからマウント(mount)を得た。図14Bに示すように、EDIHNによって形成されたHFは、静止期、休止期に入り、その後、成長期に入る。
【0189】
要約すれば、この実施例の結果は、EDIHNによって形成されたHFが、胎児で形成されたHFと同様にHF幹細胞を含有することを示す。HF幹細胞の存在は、EDIHNによって形成されたHFが、胎児で形成されたHFと同様に発毛の周期に入る能力を有することを示す。また、この結果は、創傷が、表皮細胞を毛包幹細胞(K15−eGFPを発現する)の状態となるように誘導することを示す。このモデルは、図15に模式的に示す。実施例2、3、及び4の結果は、EDIHNによって形成されたHFが完全に機能し、それによって、必要としている患者における発毛の回復が可能であることを示す。
【0190】
実施例5:毛周期の休止期に、マウスにEDIHNによって形成された新しい毛包。
【0191】
毛周期が休止期に創傷形成されたマウスに、EDIHNによって新しい毛包を形成できるかどうかを調べるために、実施例2で説明したようにして、21日齢のマウスに1cmの切除創傷を形成してEDIHNを行った。次に、ホールマウント分析によって、皮膚を新しいHFの徴候に関して分析した。図16に示すように、11日後、肉眼検査(上の図)、真皮のAP染色(左下の図)、又は表皮のK17染色(右下の図)によっては、新しいHFは確認されなかった。図17に示すように、14日後、真皮に真皮乳頭細胞が確認され(左の図)、表皮にHF幹細胞が確認された(右の図)。このことは、新しい毛包が形成されたことを示す。17日後、真皮及び表皮の検査によって証明されたように、新しい毛包はさらに成長した(それぞれ、図18の左及び右の図を参照)。この方法によって、創傷部に平均して49の新しい毛包が形成された。この数字は、表1に示すように、実験を3回行うことにより得られた。
【0192】
表1:21日齢のマウスに行った3回の実験の結果。
【0193】
【表1】

【0194】
この実施例の結果は、毛周期の休止期にあるマウスが創傷の間に成長期のHFを含まないという事実にも関わらず、前記マウスに対して、EDIHNによって新しいHFの形成を誘起できることを示す。
【0195】
実施例6:成体のマウスにおいて、成長期の誘起は、EDIHNの効率を増大させる。
【0196】
実施例5に示した実験を、様々な週齢のマウス(毛周期の段階が様々なマウス)に対して繰り返した。創傷の瘢痕化を確実にするために、高齢のマウスにはより大きな創傷を形成した。表2に示すように、休止期(例えば8週齢)の成体マウスでは、EDIHNによるHF形成の効率は低かった。
【0197】
表2:毛周期の段階が様々なマウスにおける、EDIHNによるHF形成の効率。
【0198】
【表2】

【0199】
*マウスでは、第2の休止期は、約40日間存続する。したがって、14週齢及び20週齢のマウスには、休止期及び成長期のHFが混合して含まれる。
【0200】
成長期の実験的な誘起によってEDIHNの効率が増大したか否かを確認するために、8週齢のマウスを創傷形成の数日前に除毛した。図19に示すように、創傷形成前の除毛の有無に関わらず、創傷は同様に閉じた。図20A及び20Bに示すように、除毛したマウスは、除毛しなかったマウス(実施例5のマウス)よりもEDIHNが11倍大きかった。
【0201】
この実施例の結果は、成長期の誘起がEDIHNを増大させることを示す。また、これらの結果は、EDIHNが新しいHFを形成するだけではなく、HFが存在する前の休止期において成長期を活性化させることを示す。
【0202】
実施例7:EDIHNは、人間の皮膚に新しい毛包を形成する。
【0203】
≪材料及び実験方法≫
【0204】
<移植>
【0205】
形成手術から得られた成人の耳介前部からの不要な頭皮を、免疫不全(SCID:重症複合免疫不全)マウスに移植した。移植片に包帯を巻いて治癒させ、移植3ヶ月後に創傷治癒実験に使用した。
【0206】
≪結果≫
【0207】
人間の皮膚がマウスの皮膚と同様にEDIHNに反応するかどうかを確認するために、人間の皮膚をSCID(免疫不全)マウスに移植し、プラッキングで除毛し、3日後に創傷形成した。創傷形成の7日後、パラフィン包埋した組織切片のヘマトキシリン及びエオシン染色によって、人間の皮膚に新しいHFの形成が観察された(図21A。図中の矢印は新しいHFを示す)。
【0208】
さらなる実験では、成人の皮膚をマウスに移植し、剥離し、剥離した7日後に検査した。その結果、人間の皮膚に、新しいHFが形成された。S100A6又はS100A4で染色したところ、人間の皮膚での新しいHFの形成は、胎児が成長する際の通常の毛包形成と類似することが判明した(図21B)。
【0209】
この実施例の結果は、マウスの皮膚の場合と同様に、人間の皮膚にEDIHNを使用して毛を形成できることを示す。
【0210】
実施例8:HF幹細胞の活性化の間に活性化された分子経路。
【0211】
≪材料及び実験方法≫
【0212】
<HF幹細胞の単離及び活性化>
【0213】
新しいHFの形成を誘導するために、K15−eGFPのマウスを除毛した。除毛の2日後、蛍光活性化細胞分類(fluorescence-activated cell sorting:FACS)によって、K15−eGFPのマウスから活性化された毛包幹細胞を単離した。そして、細胞集団から5μgの全RNAを単離し、逆転写し、Affymetrix(Santa Clara, California)アレイのMG_U74v2チップに混成させた。活性化されたHF幹細胞(HFSC)と活性化されていない(休止期)のHFSCとの間の発現倍率変化(fold-change)を検出するために、スキャンしたチップの画像を、Affymetrix Microarray Suite 5.0及びGeneSpringソフトウェア(Silicon Genetics)を使用して分析した。倍率変化、及び、活性化されていない「ベースライン」と活性化された(「expt」)サンプルとの間の相違を計算する前に、数値を正規化した。
≪結果≫
【0214】
HF幹細胞の活性化の間に上方制御された分子経路を特定するために、活性化されたHF幹細胞を単離し、その後、上方制御された転写物を検出すべく、細胞の遺伝子発現パターンを分析した。表3に示す転写物は、活性化されたHF幹細胞では、活性化される前の細胞よりも少なくとも2倍上方制御された。一部の例では、表3の配列は、転写物の配列を含むゲノム配列である。転写物の上方制御に関するデータ及びそれらのさらなる情報は、図22に示される。
【0215】
表3:HF幹細胞の活性化の間に上方制御されたRNA転写物。
【0216】
【表3−1】

【0217】
【表3−2】

【0218】
【表3−3】

【0219】
【表3−4】

【0220】
【表3−5】

【0221】
【表3−6】

【0222】
【表3−7】

【0223】
【表3−8】

【0224】
【表3−9】

【0225】
【表3−10】

【0226】
【表3−11】

【0227】
【表3−12】

【0228】
【表3−13】

【0229】
【表3−14】

【0230】
【表3−15】

【0231】
【表3−16】

【0232】
【表3−17】

【0233】
【表3−18】

【0234】
【表3−19】

【0235】
【表3−20】

【0236】
【表3−21】

【0237】
【表3−22】

【0238】
【表3−23】

【0239】
【表3−24】

【0240】
【表3−25】

【0241】
【表3−26】

【0242】
【表3−27】

【0243】
【表3−28】

【0244】
【表3−29】

【0245】
【表3−30】

【0246】
【表3−31】

【0247】
【表3−32】

【0248】
【表3−33】

【0249】
【表3−34】

【0250】
【表3−35】

【0251】
【表3−36】

【0252】
【表3−37】

【0253】
【表3−38】

【0254】
【表3−39】

【0255】
【表3−40】

【0256】
【表3−41】

【0257】
【表3−42】

【0258】
【表3−43】

【0259】
【表3−44】

【0260】
【表3−45】

【0261】
【表3−46】

【0262】
【表3−47】

【0263】
【表3−48】

【0264】
【表3−49】

【0265】
【表3−50】

【0266】
【表3−51】

【0267】
【表3−52】

【0268】
【表3−53】

【0269】
【表3−54】

【0270】
【表3−55】

【0271】
【表3−56】

【0272】
【表3−57】

【0273】
【表3−58】

【0274】
【表3−59】

【0275】
【表3−60】

【0276】
【表3−61】

【0277】
【表3−62】

【0278】
【表3−63】

【0279】
【表3−64】

【0280】
【表3−65】

【0281】
【表3−66】

【0282】
【表3−67】

【0283】
【表3−68】

【0284】
【表3−69】

【0285】
【表3−70】

【0286】
【表3−71】

【0287】
【表3−72】

【0288】
【表3−73】

【0289】
【表3−74】

【0290】
【表3−75】

【0291】
【表3−76】

【0292】
【表3−77】

【0293】
【表3−78】

【0294】
【表3−79】

【0295】
【表3−80】

【0296】
【表3−81】

【0297】
【表3−82】

【0298】
【表3−83】

【0299】
【表3−84】

【0300】
【表3−85】

【0301】
【表3−86】

【0302】
【表3−87】

【0303】
【表3−88】

【0304】
【表3−89】

【0305】
【表3−90】

【0306】
【表3−91】

【0307】
【表3−92】

【0308】
【表3−93】

【0309】
【表3−94】

【0310】
【表3−95】

【0311】
【表3−96】

【0312】
【表3−97】

【0313】
【表3−98】

【0314】
【表3−99】

【0315】
【表3−100】

【0316】
【表3−101】

【0317】
【表3−102】

【0318】
【表3−103】

【0319】
【表3−104】

【0320】
【表3−105】

【0321】
【表3−106】

【0322】
【表3−107】

【0323】
【表3−108】

【0324】
【表3−109】

【0325】
【表3−110】

【0326】
【表3−111】

【0327】
【表3−112】

【0328】
以上のように、この実施例で特定された転写物、その転写物がエンコードするタンパク、及び前記タンパクが関与する経路は、HF幹細胞の活性化に大きく貢献する。したがって、これらの転写物、タンパク及び経路を活性化させることによって、成長期を誘起することができる。
【0329】
実施例9:表皮細胞からHF幹細胞への分化を誘導する間に活性化された分子経路。
【0330】
実施例8で説明したようにして、HF幹細胞の発現パターンを分析し、非バルジ基底ケラチノサイト(non-bulge basal keratinocyte)と比較した。マイクロアレイ分析及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative polymerase chain reaction:qPCR)によって評価すると、HF幹細胞には157の遺伝子が異なった形で発現していた。HF幹細胞での発現量が多い遺伝子を選択した群を、表4に示す。HF幹細胞での発現量が少ない遺伝子を選択した群を、表5に示す。
【0331】
表4:HF幹細胞で上方制御された遺伝子。括弧の中の数字は、定量的リアルタイムPCRで測定した増加倍率である。
【0332】
【表4−01】

【0333】
【表4−02】

【0334】
【表4−03】

【0335】
【表4−04】

【0336】
【表4−05】

【0337】
【表4−06】

【0338】
【表4−07】

【0339】
【表4−08】

【0340】
【表4−09】

【0341】
【表4−10】

【0342】
【表4−11】

【0343】
【表4−12】

【0344】
【表4−13】

【0345】
【表4−14】

【0346】
【表4−15】

【0347】
【表4−16】

【0348】
【表4−17】

【0349】
【表4−18】

【0350】
【表4−19】

【0351】
【表4−20】

【0352】
表5:HF幹細胞で下方制御された遺伝子。
【0353】
【表5−01】

【0354】
【表5−02】

【0355】
【表5−03】

【0356】
【表5−04】

【0357】
【表5−05】

【0358】
【表5−06】

【0359】
【表5−07】

【0360】
【表5−08】

【0361】
【表5−09】

【0362】
【表5−10】

【0363】
【表5−11】

【0364】
【表5−12】

【0365】
【表5−13】

【0366】
よって、この実施例で特定された転写物、その転写物がエンコードするタンパク、及び前記タンパクが関与する経路は、表皮細胞のHF幹細胞への分化の誘導に大きく貢献する。したがって、これらの転写物、タンパク及び経路の活性化によって、成長期を誘起することができる。したがって、表4に示した転写物、タンパク、及び経路を活性化させることによって、EDIHNを増大させることができる。また、表4に示した転写物、タンパク及び経路を阻害することによって、EDIHNを防止し、毛包を除去することができる。さらに、表5に示した転写物、タンパク、及び経路を阻害することによって、EDIHNを増大させることができる。また、表5に示した転写物、タンパク、及び経路を活性化させることによって、EDIHNを増大させることができる。
【0367】
実施例10:創傷形成後の9日間にWNT−1阻害因子が発現すると、新しいHFの色素沈着が生じる。
【0368】
≪材料及び実験方法≫
【0369】
この実施例では、tetO−Dkk1とK5−rtTAとを発現する2重トランスジェニックのマウスを使用した。K5プロモータの制御下で、前記マウスに1g/kgのドキシサイクリン(BioServ, Laurel, MD)が調合された餌を与えた場合、基底表皮にDkk1が発現する。また、対照マウスにもドキシトリンを投与したが、対照マウスはK5−rtTAを有していないため、Dkk1は発現しなかった。
【0370】
≪結果≫
【0371】
21日齢又は50日齢の2重トランスジェニックマウスの背下部に、1cmの創傷を形成した。Dkk1の発現を誘導するため、創傷形成の直後、前記マウスにドキシサイクリンを含有する餌を与えた。そして、創傷形成の9日後に上皮が再形成されたときに、ドキシサイクリンを与えるのを中止した。Dkk1の発現はWntの活性を阻害し、その結果、毛包の色素沈着が生じた。創傷形成後の22日目には、表皮シートの作成後、摘出皮膚に色素が沈着したHFが観察された(図23A及び22B)。対照マウスには、色素が沈着したHFは見られなかった(図24)。
【0372】
他の実験では、創傷形成の9日後にDkk1の発現を継続させたところ、新しいHFの形成が阻害された。
【0373】
この実施例の結果は、上皮再形成の期間中にWnt1の発現の抑制、又はDkk1の発現の誘導を行い、その後にWntの発現を誘導することによって、色素が沈着したHFを形成できることを示す。また、この実施例の結果は、新しい毛包の形成を阻害する因子(例えばDkk1)が、EDIHNも阻害することを示す。このことは、EDIHNによって形成された毛包が通常の毛包に類似しているという考えをさらに裏付ける。
【0374】
実施例11:表皮成長因子の注入によるEDIHNの阻害。
【0375】
前述の実施例で説明したようにして、21日齢のマウスに創傷を形成した。創傷形成の11日後(創傷が再び上皮で覆われた時点)から、創傷床にEGF(1μg/ml)の注入(10μl)を開始した。この時点から5日間に渡って、EGFを1日1回注入した。3日後、皮膚を回収し、EDIHNのホールマウント分析を行った。全体の形態から評価すると、EGFはHFの形成を防止した。また、対照及び処理した皮膚のホールマウントを、K17抗体免疫染色によって分析した。予想通り対照マウス(2匹)には数多くの新しいHFの形成が見られたが(図25C及び25D)、EGFが注射された全てのマウス(4匹)には新しいHFの形成は見られなかった(図25A及び25B)。
【0376】
さらなる実験では、創傷形成後の11、13及び15日目に、組み換えEGF(1マイクログラム(mcg)/マイクロリットル(mcl))を注射した。創傷形成の18日後に皮膚を回収し、K17及びアルカリフォスファターゼ染色を行った。またしても、EGFの投与によって、EDIHNが阻害された。
【0377】
この実施例の結果は、EGFがHF形成を阻害することを示す。したがって、EGF、EGFR、又はこれらの因子が関与する経路の1つを阻害すると、EDIHN誘導性のHF形成が増加する。
【0378】
実施例12:EGF受容体の阻害によるEDIHNの増大。
【0379】
EGF受容体阻害剤の投与がEDIHNに与える影響を調べるために、切開創傷(1cm)を形成した11日後、創傷中心の皮膚表面付近に、阻害剤であるAG1478(10μLの量に150μM)を単回注射によって投与した。EGF受容体阻害剤の投与によって、創傷を形成しただけの対照マウスと比較してより多くの及びより大きな毛包が形成された(図26A)。図26Bに示すように、AG1478を注射したマウスの創傷領域には、大きな毛包が成長した。左の図は、互いに近接する3つの大きな毛包を有する、K17染色された表皮を示す。右の図は、大きな合体したDP領域を有する、AP染色された真皮を示す。
【0380】
この実施例の結果は、上述の実施例の結果を裏付けるものであり、EDIHNにEGFR阻害剤若しくは同様の作用機構を有する化合物(例えば、ヘッジホッグタンパク質及びアンドロゲンアンタゴニスト)投与すると(又はその後に行われると)、より多くの及びより大きなHFを形成できることを示す。
【0381】
実施例13:β−カテニン活性化因子の発現によるEDIHNの増大。
【0382】
β−カテニン活性化因子の投与がEDIHNに与える影響を調べるために、β−カテニン経路の活性化因子であるWnt7を表皮で過剰発現するK14−Wnt7トランスジェニック・マウスに対してEDIHNを行い、創傷を形成した19日後にHF形成を評価した。4週齢及び3週齢のマウスを用いた2つの実験では、トランスジェニック・マウスは、対照である同腹の非トランスジェニック・マウスと比較して、著しく多くのHFが形成された(図27A〜C)。
【0383】
したがって、β−カテニン活性化因子を投与すると、EDIHNが増大される。実施例11〜13の結果は、(a)表皮の破壊、及び(b)中立表皮細胞のHF細胞への分化を誘導する因子の投与によって、新しいHFを形成できることを示す。
【0384】
実施例14:FGFの投与によるEDIHNの増大。
【0385】
線維芽細胞細胞成長因子(fibroblast growth factor:FGF)がEDIHNに与える影響を調べるために、実施例11で説明したようにして切開創傷を形成した11日後に組み換えFGFを投与した。FGFを投与すると、HF形成が増加する。このことは、(a)表皮の破壊、及び、(b)FGF、FGFをエンコードするヌクレオチド、又はFGFによるシグナル伝達を増加させる因子の投与によって、新しいHFを形成できることを示す。
【0386】
実施例15:EDARの投与によるEDIHNの増大
【0387】
EDARがEDIHNに与える影響を調べるために、K14−Eda−A1トランスジェニック・マウス(Eda−A1(エクトジスプラシン−A1)を表皮で過剰発現する)にEDIHNを行った後、実施例13で説明したようにして創傷を形成した19日後にHF形成を検査した。前記トランスジェニック・マウスは、対照の同腹の非トランスジェニック・マウスと比較して、著しく多くのHFを形成した。このことは、(a)表皮の破壊、及び、(b)エクトジスプラシンによるシグナル伝達を増加させる因子の投与によって、新しいHFを形成できることを示す。
【0388】
実施例16:ミノキジルの投与によるEDIHNの増大。
【0389】
ミノキシジルがEDIHNに与える影響を調べるために、実施例11で説明したようにして切除創傷を形成した11日後にミノキジルを投与した。ミノキシジルの投与により、HF形成が増加した。これは、(a)表皮の破壊、及び、(b)ミノキシジルの投与によって、新しいHFを形成できることを示す。
【0390】
実施例17:表皮剥離及びEGFの投与によるHFの除去。
【0391】
実施例1で説明したようにしてマウスの表皮の有毛領域を剥離した後、組み換えEGFを投与した。この方法によって、剥離された領域における毛の再生が防止される。このことは、(a)表皮層の破壊、及び、(b)EGF、EGFをエンコードするヌクレオチド、又はEGFによるシグナル伝達を増大させる因子の投与によって、毛を除去できることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、
(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、
(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、
それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法。
【請求項2】
頭皮におけるアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を治療する方法であって、
(a)前記頭皮の表皮を破壊するステップと、
(b)前記頭皮に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、
それによって、頭皮におけるAGAを治療する方法。
【請求項3】
対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法であって、
(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、
(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子を接触させるステップとを含み、
それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域の毛包の大きさを増加させる方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)の阻害剤、又はEGF受容体の阻害剤から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記EGF又はEGF受容体の阻害剤は、AG1478、パニツムマブ(panitumumab)、ニモツズマブ(nimotuzumab)、HuMax EGFR、セツキシマブ(cetuximab)、IMC 11F8、マツズマブ(matuzumab)、SC 100、ALT 110、PX 1032、BMS 599626、MDX 214、及びPX 1041から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記EGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤は、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、カナーニチブ(canertinib)、ペリニチブ(pelitinib)、ZD 1839、CL 387785、EKI 785、及びバンデタニブ(vandetanib)から選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記EGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤は、レフルノミドであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、
前記EGF受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害剤は、A77 1726であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、βカテニンタンパク質、βカテニンタンパク質をエンコードするヌクレオチド、βカテニンタンパク質の活性化因子、又はβカテニンタンパク質の活性抑制タンパク質の阻害剤から選択されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記βカテニンタンパク質の活性化因子は、Wnt7タンパク質、Wnt7タンパク質をエンコードするヌクレオチド、又はWnt7タンパク質の活性化因子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、線維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor:FGF)タンパク質、FGF受容体、FGFタンパク質若しくはFGF受容体をエンコードするヌクレオチド、FGFタンパク質若しくはFGF受容体の活性化因子、又はFGFタンパク質若しくはFGF受容体の活性抑制タンパク質の阻害剤から選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
FGFタンパク質若しくはFGF受容体の活性を抑制する前記タンパク質は、FGF結合タンパク質、又はFGF結合タンパク質をエンコードするヌクレオチドから選択されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、エクトジスプラシン・タンパク質、エクトジスプラシン受容体、エクトジスプラシン・タンパク質若しくはエクトジスプラシン受容体をエンコードするヌクレオチド、エクトジスプラシン・タンパク質若しくはエクトジスプラシン受容体の活性化因子、エクトジスプラシン・タンパク質若しくはエクトジスプラシン受容体の活性抑制タンパク質の阻害剤から選択されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ミノキシジルであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ノギン・タンパク、ノギン・タンパク質をエンコードするヌクレオチド、又はノギン・タンパク質の活性化因子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、ヘッジホッグ・タンパク質、ヘッジホッグ・タンパク質をエンコードするヌクレオチド、又はヘッジホッグ・タンパク質の活性化因子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、形質転換成長因子(Transforming Growth Factor:TGF)β1タンパク質、TGF−β1タンパク質をエンコードするヌクレオチド、TGF−β1タンパク質の活性化因子、TGF−β3タンパク質、TGF−β3タンパク質をエンコードするヌクレオチド、及びTGF−β3タンパク質の活性化因子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、形質転換成長因子(Transforming Growth Factor:TGF)β1タンパク質のアンタゴニスト及びTGF−β3タンパク質のアンタゴニストから選択されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法であって、
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、前記中立表皮細胞に直接的に作用することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進する化合物又は因子は、間葉細胞を介して前記中立表皮細胞に作用することを特徴とする方法。
【請求項22】
対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法であって、
(a)前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップと、
(b)前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、
前記(b)のステップは、前記(a)のステップの3〜12日後に行われ、
それによって、対象の頭皮、眉又は瘢痕領域に毛包を形成する方法。
【請求項23】
頭皮におけるアンドロゲン性脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を治療する方法であって、
(a)前記頭皮の表皮を破壊するステップと、
(b)前記頭皮に、(A)毛包細胞へ分化することができる前駆細胞、(B)中立表皮細胞の毛包細胞への分化を促進することができる誘導細胞、又は(C)毛包若しくはその一部、から選択される細胞を接触させるステップとを含み、
それによって、頭皮のAGAを治療する方法。
【請求項24】
請求項22又は23のいずれかに記載の方法であって、
前記前駆細胞は、毛包幹細胞、表皮細胞、真皮乳頭細胞、又は結合組織鞘細胞から選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1乃至24のいずれかに記載の方法であって、
前記頭皮、眉又は瘢痕領域を除毛するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1乃至25のいずれかに記載の方法であって、
前記頭皮、眉又は瘢痕領域包に、局所レチノイドを投与するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれかに記載の方法であって、
前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、Wntタンパク質の発現を抑制する化合物又は因子を接触させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれかに記載の方法であって、
前記頭皮、眉又は瘢痕領域に、アンドロゲンのアンタゴニスト又はアンドロゲン受容体のアンタゴニストを接触させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法であって、
(a)前記皮膚又は頭皮の表皮を破壊するステップと、
(b)前記皮膚又は頭皮に、(i)表皮成長因子(Epidermal Growth Factor:EGF)タンパク質、(ii)EGF受容体、(iii)EGFタンパク質若しくはEGF受容体をエンコードするヌクレオチド、又は(iv)EGFタンパク質若しくはEGF受容体を活性化させる化合物若しくは因子のいずれかを接触させるステップとを含み、
それによって、皮膚又は頭皮から毛包を除去する方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記化合物若しくは因子は、形質転換成長因子(Transforming Growth Factor:TGF)β1タンパク質、TGF−β1タンパク質をエンコードするヌクレオチド、TGF−β1タンパク質の活性化因子、TGF−β3タンパク質、TGF−β3タンパク質をエンコードするヌクレオチド、及びTGF−β3タンパク質の活性化因子から選択されることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項29に記載の方法であって、
前記化合物若しくは因子は、形質転換成長因子(Transforming Growth Factor:TGF)β1タンパク質のアンタゴニスト、及びTGF−β3タンパク質のアンタゴニストから選択されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項1乃至31のいずれかに記載の方法であって、
前記頭皮、眉又は瘢痕領域の表皮を破壊するステップは、機械的手段によって行われることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1乃至31のいずれかに記載の方法であって、
前記表皮を破壊するステップは、前記頭皮、眉又は瘢痕領域を化学物質に曝すことによって行われることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項1乃至31のいずれかに記載の方法であって、
前記表皮を破壊するステップは、前記頭皮、眉又は瘢痕領域に放射線を照射することによって行われることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項1乃至34のいずれかに記載の方法であって、
前記表皮を破壊するステップは、前記表皮の毛包の破壊、及び前記表皮の毛包間領域の破壊を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項1乃至34のいずれかに記載の方法であって、
前記表皮を破壊するステップは、前記表皮の毛包の破壊を含むが、前記表皮の毛包間領域の破壊は含まないことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項1乃至36のいずれかに記載の方法であって、前記対象は人間であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A−1】
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【図22A−2】
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【図22A−3】
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【図22A−4】
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【図22A−5】
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【図22A−6】
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【図22A−7】
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【図22A−8】
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【図22B−1】
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【図22B−2】
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【図22B−3】
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【図22B−4】
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【図22B−5】
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【図22C−1】
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【図22C−2】
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【図22C−3】
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【図22C−4】
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【図22C−5】
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【図22C−6】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【公開番号】特開2013−49691(P2013−49691A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235675(P2012−235675)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2008−504257(P2008−504257)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】