説明

新交通システム用列車格納システム

【課題】 広いスペースを確保することなく、列車を狭い敷地内にコンパクトに格納することができる新交通システム用の列車格納システムを提供する。
【解決手段】 本発明の列車格納システム1は、各々に集電装置及び走行用モータが備えられた複数の車両60を連結して走行させる新交通システム用の列車格納システムであって、前記車両60を一両ずつ格納するための複数の格納棚21を有する立体式の格納庫2と、前記複数の車両60を一両ずつ切り離した状態で前記格納庫2の各格納棚21に搬入又は搬出する車両搬送装置3とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新交通システム用の列車格納システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来型の鉄道とバスとの中間の輸送力を持つ公共交通機関として新交通システムが知られている。この新交通システムは、人口の比較的密集した都市空間における安全で低公害の中量輸送システムとして開発されたものであり、専用の軌道をゴムタイヤで支持された車両が案内軌条(ガイドウェイ)にガイドされて走行する方式が一般的である。この新交通システムでは、一編成の車両は複数の自走式の車両からなり、中央の司令室からの制御によって自動又は半自動で走行する。
ところで、この新交通システムでは、通常の鉄道と同様に、広大な車両基地に本線から分岐して複数の軌道を設け、そこに車両を保管している。しかし、この方式では、複数の車両を平面的に格納するため、車両の数が増えるほど広大な敷地と保管用の分岐線が必要になる。そこで、この問題を解決するために、複数の車両格納庫を多段に設けた立体式の格納庫が提案されている(特許文献1〜5参照)。この立体式格納庫は、1編成分の車両を格納するための車両格納庫を平面方向及び高さ方向に複数備えており、昇降機等の搬送手段によって各車両をそれぞれの車両格納庫に搬送することにより入庫を行なっている。
【特許文献1】特開平5−311913号公報
【特許文献2】特開平5−346074号公報
【特許文献3】特開平6−10527号公報
【特許文献4】特開平6−57995号公報
【特許文献5】特開平8−326347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の立体式格納庫は、いずれも1編成分の車両を一括して格納する方式を採用しているため、搬送手段が大規模になるという問題がある。また、搬送手段を設けずに、自走式で各車両格納庫に入庫させる方法も考えられるが、この場合には、長大な登坂路が必要になるため、敷地面積を狭くすることができないという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、広いスペースを確保することなく、列車を狭い敷地内にコンパクトに格納することができる新交通システム用の列車格納システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明の列車格納システムは、各々に集電装置及び走行用モータが備えられた複数の車両を連結して走行させる新交通システム用の列車格納システムであって、前記車両を一両ずつ格納するための複数の格納棚を有する立体式の格納庫と、前記複数の車両を一両ずつ切り離した状態で前記格納庫の各格納棚に搬入又は搬出する車両搬送装置とを備えたことを特徴とする。本発明の列車格納システムでは、前記車両搬送装置が、前記格納庫に沿って敷設された軌道と、該軌道に沿って走行する台車と、該台車に昇降可能に取り付けられた昇降台とを有する構成とすることができる。また、本発明の列車格納システムでは、前記車両搬送装置及び前記格納庫の各格納棚に給電装置が設けられ、該給電装置からの給電によって前記車両を自走させることで、前記車両を前記搬送装置及び前記格納庫の各格納棚に搬入又は搬出可能とした構成を採用することができる。
【0005】
新交通システムでは、通常の鉄道と異なり、1編成分の車両のそれぞれに集電装置や走行モータ等の走行に必要な設備を容易に備えることができる。本発明は、このような新交通システムの車両特性に着目し、1編成分の車両を一両ずつ切り離して独立に走行制御することで効率的な入庫及び出庫を可能としたものである。本発明の列車格納システムでは、入庫させようとする車両は入出庫口で一両ずつ切り離される。切り離された車両には、集電装置,走行モータ,制御装置等の走行に必要な設備が備えられているので、車両は無人で車両搬送装置や格納庫への移動を行なうことができる。出庫するときには、この逆の作業を行ない、入出庫口で1編成分の車両を連結してから本線に送り出す。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、1編成分の車両を一両ずつ切り離して格納するため、格納庫自体を小型に構成することができる。また、車両を一両ずつ切り離して順次搬送するので、従来のように一編成分全てを搬送するものに比べて、小規模な車両搬送装置で入庫及び出庫を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法の比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本実施形態に係る列車格納システム1の概略構成を示す図である。この列車格納システム1は、編成された車両60を一両ずつ格納するための複数の格納棚21を有する立体式の格納庫2、前記車両60を一両ずつ切り離した状態で前記格納庫2の各格納棚21に搬入又は搬出するスタッカークレーン(車両搬送装置)3、これら格納庫2,スタッカークレーン3,車両60を制御する車両格納設備制御装置(図示略)によって概略構成されている。
【0008】
格納庫2は、スタッカークレーン3の軌道34の両側に設けられており、軌道34側から見て手前側及び奥側に一定ピッチで支柱が立設され、これら支柱に支持される形で複数の格納棚21が上下方向及び水平方向に複数設けられている。各格納棚21は、車両一台分を格納できる広さに形成されており、編成された複数の車両60は互いに切り離された状態で各格納棚21に個別に格納されるようになっている。
【0009】
スタッカークレーン3は、敷地内に平行に敷設された2本のレールからなる軌道34と、この軌道34の上を走行する台車30と、この台車30に昇降可能に取り付けられた昇降台31とを備えている。台車30には車輪33が取り付けられており、台車30は、図示しない駆動源によって車輪33を回転駆動することによって、軌道34上を走行する。台車30及び昇降台31は車両格納設備制御装置によって駆動制御されており、切り離された車両60は、この台車30及び昇降台31によって所定の格納棚21に入庫又は出庫されるようになっている。
【0010】
格納庫2の脇には、1編成分の車両60を連結又は切り離すための車両連結/切り離し作業場4が設けられている。この車両連結/切り離し作業場4は、本線から分岐した分岐線に設置されており、基本的な構造は本線の軌道51(図2参照)と同様である。この車両連結/切り離し作業場4は、スタッカークレーン3の入庫口に面して設けられており、ここで切り離された車両60は、その分岐線上を走行することによってスタッカークレーン3の昇降台31に直接搭載されるようになっている。
【0011】
ここで、新交通システムで使用される車両60の構造について説明する。図2は、車両60の概略構成を示す図であり、図2(a)は本線上を走行する車両60の正面図、図2(b)は対向側の車両60の断面図である。図3は、車両60の台車の構造を説明するための概略平面図である。
【0012】
車両60は、本体部である車体61と、ゴムタイヤ63に支持された台車62とを備えている。台車62には走行用モータMと集電装置64が設置されており、車両60は、軌道51に沿ってその両側に立設された軌道側壁51aに取り付けられた給電装置52から電力を受けて走行するようになっている。また、台車62には、タイヤ63の操舵手段として、前輪側及び後輪側の2箇所に案内バー65が取り付けられている。案内バー65の両側には案内輪66が取り付けられており、軌道側壁51aに設けられた案内レール53に案内輪66をガイドさせて走行することにより、軌道51のカーブに追従して曲がることができるようになっている。また、案内バー65には、案内輪66の下方に分岐案内輪67が取り付けられている。この分岐案内輪67は、軌道51の分岐部横に設置された電気転轍機の可動案内板(図示略)にフックして車両60を所望の方向に分岐させるものであり、直進するときには電気転轍機の直進側の可動案内板がせり出してきて車両60の経路を直進方向に維持し、分岐するときには分岐側の可動案内板がせり出してきて車両60の経路を分岐方向に変更するようになっている。このように構成された車両60は、軌道51に敷設された信号線54から制御信号を受けて、中央司令室の指令により自動又は半自動で走行を行なう構成となっている。
【0013】
本発明の対象となる新交通システムでは、列車を構成する1編成分の車両全てに、モータM,集電装置64,通信装置,制御装置(図示略)等の走行に必要な設備が備えられており、各車両60は基本的には一両一両独立に走行できるような構成になっている。そこで、本実施形態では、格納庫2の各格納棚21及びスタッカークレーン3の昇降台31にそれぞれ本線と同様の給電装置22,32を設け、車両連結/切り離し作業場4で切り離された各車両60が自走によって各格納棚21に入庫又は出庫できるようにしている。
【0014】
次に、このように構成された列車格納システム1の動作について説明する。
本実施形態の列車格納システム1を用いて列車を入庫する場合、まず、中央司令室から制御されて、編成車両が本線から車両連結/切り離し作業場(以下、作業場と略記する)4に移動する。そして、移動完了を検知すると、車両60の制御元が中央司令室から車両格納設備制御装置へ移る。車両格納設備制御装置(以下、制御装置と略記する)は、作業場4に設置された各種センサやアクチュエータを使用して、作業場4の編成車両を一両ずつ切り離す。車両60の切り離しが完了すると、制御装置はスタッカークレーン3を作業場4まで移動させる。スタッカークレーン3と作業場4の軌道の位置が合うのを確認して、制御装置は先頭の車両60を一両だけ自走させ、スタッカークレーン3の軌道(即ち、昇降台31)上に移動させる。車両60の停止を確認すると、スタッカークレーン3は制御装置の指示に従って、車両60を格納する格納棚21まで移動する。スタッカークレーン3と格納棚21の軌道の位置が合うのを確認して、制御装置は車両60を自走させ、格納棚21の軌道へ移動させる。以下同様にして、切り離された全ての車両60を立体式格納庫2へ格納する。
【0015】
列車を出庫する場合には、まず、入庫と逆の手順で、格納棚21の車両60を作業場4に集める。そして、作業場4に設置された各種センサやアクチュエータを使用して、車両60を全て連結させる。このようにして出庫準備が完了したら、制御元を中央司令室に移して本線上に出庫する。
【0016】
以上説明したように、本実施形態では、新交通システムの車両特性を活かして、車両60を一両ずつ切り離して扱っているので、従来のように、編成車両をそのまま格納するものに比べて、格納庫2やスタッカークレーン3の構造をコンパクトにすることができる。
【0017】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、前記実施形態では、入庫又は出庫の制御を車両格納設備制御装置によって制御するようにしたが、この制御を中央司令室によって行なってもよい。また、本発明の車両搬送装置として前述の形態のスタッカークレーン3を採用したが、車両搬送装置の形態はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る列車格納システムの概略構成を示す斜視図。
【図2】新交通システムで使用される車両の構造を示す正面図。
【図3】図2の車両の台車の構造を示す平面図。
【符号の説明】
【0019】
1…列車格納システム、2…格納庫、3…スタッカークレーン(車両搬送装置)、21…格納棚、22…給電装置、30…台車、31…昇降台、32…給電装置、34…軌道、60…車両、64…集電装置、M…モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に集電装置及び走行用モータが備えられた複数の車両を連結して走行させる新交通システム用の列車格納システムであって、
前記車両を一両ずつ格納するための複数の格納棚を有する立体式の格納庫と、
前記複数の車両を一両ずつ切り離した状態で前記格納庫の各格納棚に搬入又は搬出する車両搬送装置とを備えたことを特徴とする、新交通システム用列車格納システム。
【請求項2】
前記車両搬送装置が、前記格納庫に沿って敷設された軌道と、該軌道に沿って走行する台車と、該台車に昇降可能に取り付けられた昇降台とを有することを特徴とする、請求項1記載の新交通システム用列車格納システム。
【請求項3】
前記車両搬送装置及び前記格納庫の各格納棚に給電装置が設けられ、該給電装置からの給電によって前記車両を自走させることで、前記車両を前記搬送装置及び前記格納庫の各格納棚に搬入又は搬出可能としたことを特徴とする、請求項1又は2記載の新交通システム用列車格納システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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