説明

新生児用酸素供給方法およびそれに使用するための装置

本発明は、補給酸素濃度の滴定によって乳児における健康な血中酸素飽和度値を維持する、乳児の蘇生のための方法およびシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、2008年4月7日出願の米国特許仮出願第61/042,945号の優先権の恩典を主張する。
【0002】
I. 発明の分野
本発明は、主に産科および小児科の分野に関する。より具体的には、出生時に早産児に投与される補給酸素の濃度の滴定のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
II. 関連分野の説明
世界中で毎年5%〜10%の新生児が、何らかの形式の蘇生を必要とする。一般的に、新生児が蘇生を必要とするか否かの判断は、臨床的所見、およびその乳児が高いリスク(たとえば、早産児)を有するか否かに基づく。しかし、蘇生開始時点で使用すべき酸素(O2)の濃度を特定するための根拠は、現在のところ不十分である。パルスオキシメータは、光学センサを使用して血中の酸素の量を連続的に測定する装置である。最近、国際的な指針が変更され、パルスオキシメトリーが分娩室において有用であり得ると示唆されているが、しかし、これを必要とする新生児に安全な酸素レベルを提供するためにこの状況においてパルスオキシメータを使用する方法についての指針は、現在のところ存在しない。
【0004】
さらに、臨床医は、新生児蘇生の際の高酸素症の危険について、ますます関心を寄せるようになってきた(Saugstad、2007)。O2フリーラジカルは多くの新生児疾患の原因に関与すると考えられるため、酸素補給が有害となる可能性がある。新生児において、高酸素状態により早産児の眼が損傷する可能性があり、かつこれは気管支肺異形成症の発症に影響を与えている。出生時の高酸素状態への曝露は、炎症、脳損傷、およびおそらくは小児癌の原因にもなる可能性がある。このように、出生後の最初の10分間は不適切に低い酸素レベルを回避することが新生児の健康にとって重要であると認知されているが、過剰な酸素への曝露もまた有害である。安全な酸素投与はしたがって、新生児の健康にとって決定的に重要である。
【0005】
今日までの研究は、固定濃度の酸素(O2)を使用し、主に正期産および後期早産の窒息乳児のみに焦点を当てていた。しかし、これらの研究は、先に述べられた重大な問題を解決するものではない。したがって、早産児に酸素を投与するための、実用的、効果的、かつ安全な方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明によれば、(a)約90〜100%の酸素濃度で乳児に補給酸素を投与する段階と、(b)早産児の酸素飽和度値を監視する段階と、および(c)酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20(たとえば15)秒毎に約20%ずつ、投与されている補給酸素の濃度を低下させる段階を含む、乳児を蘇生させる方法が提供される。この点に関して乳児とは新生児であってもよく、より具体的には、生後10分以内、または生後0〜20分であってもよい。特に、新生児は早産児であってもよい。具体的には、以下に記載される方法およびシステムを、これを必要とする全ての新生児のために分娩室内で使用してもよい。新生児の分娩方法は、経膣分娩または帝王切開分娩であってもよい。このような方法は、潜在的に有害である高酸素状態を回避しながら安全な酸素飽和度値を達成するのに役立つので、固定酸素濃度を使用するその他の方法よりも優れている。
【0007】
別の態様では、(a)約20〜40%の酸素濃度で早産児に補給酸素を投与する段階と、(b)早産児の酸素飽和度値を監視する段階と、および(c)酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20秒毎に約10%から20%ずつ、投与されている補給酸素の濃度を上昇させる段階を含む、乳児を蘇生させる方法が提供される。
【0008】
上記の方法において、酸素濃度を約20%ずつ低下させてもよく、かつ/または低下を約15秒毎に行う。この点に関して乳児とは新生児であってもよく、より具体的には、生後約0〜20分であってもよい。具体的には、以下に記載される方法およびシステムは、新生児のために分娩室で使用されてもよい。新生児の分娩方法は、経膣または帝王切開であってもよい。
【0009】
特定の局面において、乳児への安全な酸素投与のため、所望の酸素飽和度値は、補給酸素を必要としない健康な新生児において認められる時間依存的パターンの酸素飽和度値を反映してもよい。より具体的には、所望の値は、乳児の出生後1分でおよそ73%から81%、出生後2分でおよそ77%から82%、出生後3分でおよそ78%から87%、出生後4分でおよそ79%から91%、出生後5分でおよそ80%から95%、出生後6分でおよそ80%から93%、出生後7分でおよそ82%から93%、出生後8分で83%から95%、出生後9分でおよそ87%から95%、または出生後10分でおよそ91%から95%でありうる。
【0010】
特定の態様において、酸素飽和度は、パルスオキシメータなどの酸素飽和度監視装置によって監視されてもよい。パルスオキシメータは、乳児の手首(より具体的には、右手首)に設置されてもよく、その特定のモデルにおいて利用可能な最大感度設定を使用してもよい。乳児の連続的な時間依存的パターンの酸素飽和度を得るために、該特定のモデルにおいて利用可能な最短平均化時間(通常は平均化時間2秒)を用いて、酸素飽和度値を監視してもよい。
【0011】
さらなる態様において、補給酸素は、顔マスクもしくは気管内チューブに接続された麻酔バッグ、人工呼吸器または持続的気道陽圧システムによって投与されてもよい。またさらなる態様では、補給酸素は、少なくとも約21%、約29%、約33%、約46%、または約63%、あるいは約20%から約65%の酸素濃度で投与されてもよい。
【0012】
また本発明は、特定の態様において、(a)上述の方法に従って乳児に補給酸素を投与するように構成された補給酸素投与モジュールと、(b)乳児の酸素飽和度値を監視するための酸素飽和度監視装置と、(c)出生後の乳児の時間依存的酸素飽和度値を所望の値と比較するディスプレイと、(d)酸素飽和度値が所望の値からずれていないかどうかを示すための警告システムと、(e)補給酸素の濃度を調整するための制御モジュールとを備える、乳児の蘇生のためのシステムも対象とする。補給酸素投与モジュールは、蘇生に使用されるガスの流量を制御するための流量計と、酸素ブレンダとを備えてもよい。ディスプレイはさらに、所望の酸素飽和度値の上限および下限を含む視覚的グラフを備えてもよく、これは時間と共に変化してもよく、かつ健康な新生児で認めれる正常範囲の酸素飽和度値を模倣してもよい。補給酸素の濃度は、観察された酸素飽和度値と所望の値との差の大きさおよび方向(direction)に基づいて調整されてもよい。乳児の出生時に、ディスプレイ上のタイマを起動させてもよく、これは分および秒単位で乳児の生後時間を表示する。酸素飽和度監視装置は、分娩直前にまたは分娩時点で起動させてもよく、これはリアルタイムで制御モジュールに連続的にデータを送信する。
【0013】
本明細書において使用される「早産児」とは、妊娠37週より前に生まれた乳児を指す。
【0014】
本明細書において使用される「補給酸素」とは、室内空気または周囲空気の吸気を通じて対象が受容する酸素に加えて、ヒトに投与される酸素を指す。室内空気はある程度の酸素を包含しているので、補給酸素は、対象によって通常は吸気されるであろう酸素に追加して補給されてもよい。
【0015】
本明細書において使用される「酸素飽和度値」とは、ヒト被験者の血中の酸素供給のレベルを決定するための非侵襲性または侵襲性の任意の適切な測定値も指すことができるが、たとえばパルスオキシメータなどの酸素飽和度監視装置またはセンサによって酸素飽和ヘモグロビンのパーセンテージとして一般に測定される酸素飽和度(SpO2)を指す。たとえば、酸素飽和度値は、COオキシメータを使用して血液試料から得ることも可能であることを理解されたい。さらに、酸素飽和度値は、酸素の分圧に基づいて推測することもできる。
【0016】
「滴定」および「滴定する」とは、酸素ブレンダを使用して、吸気される酸素濃度を低下または上昇させることによって、時間と共に補給酸素濃度を変化させることを指す。現在、滴定の頻度、酸素の滴定量、または酸素の適切な開始濃度に関しての新生児における蘇生指針を提示するとい具体的な勧告は、カナダおよび米国の委員会からは行われていない。
【0017】
本明細書において使用される(酸素飽和度値の監視に言及する場合の)「連続的な」および「連続的に」とは、中断することなく、または本発明の利点を提供するのに十分な小ささの離散間隔(固定または可変)で、酸素飽和度値が測定されることを意味する。具体的には、サンプリング間隔は、約16秒未満、特に約2秒毎である。
【0018】
本発明のその他の態様は、本出願全体で論じられる。本発明の一局面に関して論じられる任意の態様は、本発明の他の局面に適合し、その逆も同様である。実施例の項における態様は、本発明の全ての局面に適用可能な本発明の態様であると理解される。
【0019】
添付の特許請求の範囲および/または本明細書において「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合の「一つの(a)」または「ある(an)」という語の使用は、「一つの」を意味する場合もあるが、しかし「一つまたは複数の」、「少なくとも一つの」、および「一つまたは一つ以上の」との意味とも一致する。
【0020】
本出願全体で、「約」または「およそ」という用語は、ある値が、該値を決定するために用いられているシステムまたは方法に関して誤差の標準偏差を含むこと、および言及される値の5〜10%を含みうることを示すために、使用される。
【0021】
添付の特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、本開示が代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持するとはいえ、代替物のみを意味すると明確に示されておらずかつ該代替物が互いに排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される、「備える」(および「備え」や「備えた」など、「備える」の任意の形式)、「有する」(および「有し」や「有した」など、有するの任意の形式)、「含む」(および「含み」や「含んだ」など、含むの任意の形式)、または「包含する」(および「包含し」や「包含した」など、包含するの任意の形式)という用語は、包括的かつ無制限であって、追加の、言及されていない要素または方法の段階を排除するものではない。
【0023】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。しかし、この詳細な説明から本発明の精神および範囲内の様々な変更および改変は当業者に明らかであるので、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の特定の態様を示す一方で例示のみの目的で与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と共にこれらの図面の一つまたは複数を参照することにより、よりよく理解されうる。
【図1】本発明の方法による、乳児の出生後の、経時的な、適切な酸素飽和度目標範囲の近似値と比較した、乳児の酸素飽和度値のグラフの一例である。
【図2】本発明の特定の局面による、乳児の蘇生のためのシステムの態様である。
【図3】低酸素負荷(LOB;暗色)群、中程度酸素負荷(MOB;中間色)群および高酸素負荷(HOB;明色)群の比較である。x軸は出生直後の時間を秒単位で示し、x=0は出生時刻を示す;y軸は、パルスオキシメータによって測定されたSpO2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
I. 本発明
上述のように、過去10年間にわたって、新生児蘇生の際の酸素使用の潜在的な悪影響についての関心が高まっている。具体的には、複数の研究により、100%酸素による正期産乳児の分娩室での蘇生は、21%酸素(室内空気)で蘇生させた乳児よりも予後が悪くなることが一貫して実証されている。メタアナリシスと呼ばれる手法を使用してこれらの研究の結果を組み合わせると、100%酸素で蘇生させた乳児においては、室内空気を受ける乳児と比較して、死亡率が劇的に増加することが明らかになる(Rabiら、2007)。これらの研究は全て正期産またはほぼ正期産の窒息乳児において実施され、固定酸素濃度を使用した。正期産乳児は健康な肺を有するはずであり、したがって補給酸素は必要ないであろうから、これに留意することは重要である。しかし、早産児は先在的な肺疾患を有する場合が多く、これが酸素の吸収を阻害する可能性がある。そのため、不十分な量の酸素が乳児の肺から血液へと運ばれる可能性があるので、早産児の蘇生の際に室内空気を使用することは不適切な場合がある。不適切に低い血中酸素レベルは、脳、心臓、肝臓、腸および腎臓を含む、いくつかの臓器の損傷に関連する。
【0026】
最近の研究により、新生児蘇生指針を作成する主要な北米の研究所は、酸素に関する推奨を変更するよう促されている。以前のこれらの指針には、全ての新生児は固定濃度の100%酸素で蘇生されるべきだと世界的に言明されていた。American Academy of Pediatricsの傘下にあるNeonatal Resuscitation Programからの最新の指針では推奨が変更され、特定の状況においては100%未満の酸素濃度の使用が適切でありうると言明した。The Canadian Pediatric Societyはより指示的であり、新生児蘇生は室内空気を用いて開始すべきであること、およびさらに、心拍数が1分当たり100より多いと仮定して、補給酸素は乳児の出生後90秒までは与えるべきでないことを言明している。しかし、これらの指針は、低酸素症および高酸素症の危険を回避しながら乳児の生理学的要求を満たす必要のある、適切な酸素濃度を決定する方法を特定するものではない。
【0027】
本発明者らは目下、乳児の酸素飽和度値を監視することと組み合わせてもよい、補給酸素の濃度を滴定し、酸素供給および毒性回避の点で改善された結果を達成することによって、早産児を含む乳児に補給酸素を投与する方法およびシステムを初めて提供するものである。
【0028】
II. 補給酸素投与
新生児蘇生の際の酸素使用における世界最先端の権威は、医療従事者にとって現時点での新生児蘇生のための最善策は、健康な新生児で見られる正常な酸素飽和度のパターンを模倣するように酸素を投与することであると、繰り返し主張してきた。しかし、正常な新生児における酸素飽和度は出生後最初の10分間に連続的に変化することを考慮することが重要である。さらに、毎分毎に健康な新生児で見られる酸素飽和度の上限および下限の両方を考慮する必要がある(目標値は合計20種類)。
【0029】
本発明は、特定の態様において、乳児に投与される補給酸素濃度を滴定することおよび酸素投与の誘導を助けるために所望の酸素飽和度値または範囲を適用することによって乳児を蘇生させる方法およびシステムを提供する。本発明の局面にしたがって健康な乳児における酸素飽和度の目標範囲を模倣するように補給酸素投与を誘導するために、パルスオキシメータなどの酸素飽和度監視装置を用いて乳児の酸素飽和度値を連続的に監視してもよい。
【0030】
本発明の特定の局面において、早産児の酸素飽和度の所望の値または目標範囲を約80から約98%、約85%から約95%、約85%から約92%、約88%から約90%、または上記の任意の中間範囲に設定できることが意図されている。これらの所望の値は、補給酸素を投与するための、大多数の乳児にとって妥当な安全帯として設定される。健康な新生児における時間依存的パターンの酸素飽和度値の一例は、図1のように示すことができる。特定の局面において、所望の値は、補給酸素を必要としなくてもよい健康な新生児における時間依存的パターンの酸素飽和度値であってもよい。より具体的には、乳児において、所望の値は、早産児の出生後1分でおよそ73%から81%、出生後2分でおよそ77%から82%、出生後3分でおよそ78%から87%、出生後4分でおよそ79%から91%、出生後5分でおよそ80%から95%、出生後6分でおよそ80%から93%、出生後7分でおよそ82%から93%、出生後8分で83%から95%、出生後9分でおよそ87%から95%、または出生後10分でおよそ91%から95%であってもよい。
【0031】
特定の態様において、乳児の酸素飽和度が、上記で例示したような上限および下限を含む所望の値または目標範囲から外れている場合、このことは、補給酸素投与を調整するための介入のきっかけになり得る。これは、酸素の観察、付与、または停止であってもよい。任意で、しかし必須ではないが、乳児は、必要性、有効性、および副作用(酸素毒性、低酸素症)について厳密に監視されてもよい。補給酸素は、バッグおよびマスクの蘇生器、手動袋装置もしくは人工呼吸器を通じて投与されるその後の気道陽圧を伴う気管内チューブ留置、持続的気道陽圧装置、または乳児の顔に吹き付けられる流通酸素を通じて、投与することができる。上限とは、その範囲内では乳児の酸素飽和度値が高過ぎることはないと当然に示唆されうる、酸素飽和度である。乳児の飽和度値が上限を超えたら、蘇生を施している人は、投与酸素の濃度を下げる必要がありうる。下限を下回ったら、蘇生を施している人は、投与酸素の濃度を上げる必要がありうる。目標範囲が、例示された85〜95%の範囲外であることを指示される乳児もいる。このような乳児の例は、肺形成不全症、先天性横隔膜ヘルニアもしくは胎便吸引症候群などに起因しうるかまたは特定のチアノーゼ性先天性心疾患の場合かまたは特定の血液疾患の場合などの、肺高血圧症を有するかまたはそのリスクを有する乳児である。このような例においては、別の酸素飽和度目標範囲およびそれらに特有の警告値を指定することが適切でありうる。
【0032】
手順については、乳児が目標の酸素飽和度範囲に達したら、使用者は所与の酸素濃度となるようより小さな調整を行ってもよい。すなわち使用者は、所与の必要な濃度を保つこともでき、またはより細かい調整を行って範囲内に維持することもできる−基本的に、これは使用者に委ねられる。分娩室にいる間乳児を監視すること、および、どんなに長い時間が(たとえば少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間)かかったとしても、分娩室で乳児が確実に目標の血中酸素レベルを有するようにすることは、使用者の裁量により行われる。
【0033】
III. システム
補給酸素投与システムのある特定の態様を、図2に示す。このシステムは、上述の方法によって補給酸素を投与するよう構成された酸素投与モジュール200、ディスプレイ300、可聴警告システム330および可視警告システム320、ならびに制御モジュール340を備えてもよい。システムは、酸素監視装置310に接続された独立型システムであっても、酸素監視装置310をさらに備えていても、または酸素監視装置310の一部であってもよい。制御モジュール340は、独立して監視および調整を行う自動システムを備えてもよく、または、操作者によるシステム状態および乳児状態の評価に基づいて操作者によって調整される手動制御を備えてもよい。
【0034】
酸素は、酸素投与モジュール200から乳児100に投与することができ、酸素投与モジュール200は酸素投与装置210を備えてもよい。酸素投与装置210は、乳児が酸素源からの補給酸素に加えて室内空気または周囲空気も吸気するのを妨げることなく、乳児に補給酸素を提供するための、任意の装置の形態を取ることもできる。このような補給酸素投与装置210の例は、麻酔(またはTピースの)バッグ、人工呼吸器、バッグバルブマスク(アンビューバッグとしても公知である)、気管カテーテル、持続的気道陽圧(CPAP)システム等と共に使用するように構成された鼻マスクなどを含むが、これらに限定されない。
【0035】
上述の滴定方法を実践するために、酸素投与モジュールは、本発明の特定の局面にしたがって早産児100に補給酸素を投与するための酸素源240および空気源250を備えてもよく、これらは両方ともブレンダまたはミキサ230に接続されている。ブレンダ230は、様々な濃度での補給酸素の制御可能な投与を提供するよう構成されてもよく、たとえば、約100%の酸素濃度から開始して、酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20(たとえば15)秒毎に約10%から約20%ずつ、投与される補給酸素の濃度を低下させるか、または、約21%の酸素濃度から開始して、酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20(たとえば15)秒毎に約10%から約20%ずつ、投与される補給酸素の濃度を上昇させる。流量計を、ブレンダまたはミキサ230と酸素投与装置210との間に配置してもよく、これは、患者に投与されるガス混合物の流速(リットル/分)(具体的なモードでは6〜8リットル/分)を使用者が調整するための弁を備える。
【0036】
酸素源240は、酸素濃縮器、膜分離器、高圧シリンダまたは液体酸素デュワーであってもよい。これはまた、任意の携帯式酸素源を備えてもよい。補給酸素を乳児に提供するのに適したその他の可能性のある酸素ガス源が将来的に製造される可能性があるが、これは記載された本発明と共に動作するとみなされるべきである。酸素源240および空気源250がそれぞれ高濃度酸素源および低濃度酸素源である、代替の態様が提供されてもよい。さらに、酸素源240または空気源250は、酸素濃度を滴定または制御するために酸素投与装置210への各ガスの流速を制御するための弁などを備えてもよい。
【0037】
本方法またはシステムは、乳児100の酸素飽和度値を監視するための、酸素飽和度監視装置310を含む。ある特定の酸素監視装置は、パルスオキシメータなどの非侵襲性センサである。本明細書において使用される、「パルスオキシメータ」という用語は、光学センサ、および該光学センサを使用して酸素飽和レベルを測定するために使用される回路の両方を含む。適切なパルスオキシメータの一例は、インビボで血流における酸素飽和ヘモグロビンのパーセンテージであるSpO2を測定することができる、ミネソタ州プリマスのNonin Medical Inc.から販売されている一般的な2色型OEM-IIオキシメータモジュールである。
【0038】
パルスオキシメータは非侵襲性酸素監視装置の一具体例であるが、酸素含有レベルを(好ましくは連続的に)測定するのに有用である任意の侵襲性または非侵襲性の酸素センサが、本発明に関連して使用され得ることを理解されたい。埋め込み式のマイクロマシン(MEMS)ガス分析器などの近い将来の技術により、制御モジュール330が必要とする酸素含有量情報が提供される場合があることも、当業者には自明であろう。さらに、本発明に有用であり得る血中の一酸化炭素ヘモグロビンレベルを測定する能力など、パルスオキシメトリー技術の向上も起こりうる。酸素療法のための酸素保全におけるこれらの新しい酸素含有量技術の使用は、適切な酸素飽和度測定値を提供する能力があるという条件で、本発明のシステムおよび方法の範囲に含まれると考えるべきである。パルスオキシメータ310は、特定の態様において、製造元の説明書に従い最大感度設定および最大検出頻度(最短平均化時間、たとえば2秒)で使用されてもよい。
【0039】
ある適切な監視装置は、センサ制御モジュールと、通常は何らかの適切な手法によって乳児100に実装または取り付けられるプローブとを備える。パルスオキシメータ310の特定の態様は、具体的には乳児100の右手の手のひらにまたは右手首を適切に横断して(管前型)取り付けられる伝送プローブを備えてもよいが、その一方で、このような管前型測定は、管後型測定(たとえば、取り付け部位が左手または左手首、左/右の足またはつま先)と比較して、脳酸素供給をより正確に表すと考えられている。代替的態様では、同じく管前型酸素飽和度を得るために、たとえば額など、体のどこか別の場所に取り付けるプローブを採用してもよい。代替的態様では、たとえば管後型など、体の別の箇所に取り付けるプローブを採用してもよく、したがって酸素投与のために模倣される所望の値は、健康な乳児の適正な目標範囲の管後型SpO2となる。
【0040】
乳児100にプローブを留置した後、赤色および赤外波長の両方を包含する光を、一方の側から他方の側に通過させうる。2つの波長それぞれの吸光度の変化を測定し、これにより静脈、皮膚、骨、筋肉および脂肪を除いた拍動する動脈のみによる吸光度の測定が可能になる。酸素結合ヘモグロビン(明赤色)と酸素非結合ヘモグロビン(暗赤色または重篤な症例では青色)の間の色の違いによって生じる赤色光および赤外光の吸光度の変化率に基づいて、酸素供給の測定値(酸素分子と結合したヘモグロビン分子のパーセント)すなわち酸素飽和度値が得られうる。
【0041】
本発明による方法の実行において使用するために、酸素飽和度監視装置310からの情報を、ディスプレイ320および/または制御モジュール330に送信してもよく、たとえば、酸素飽和度監視装置310は、ケーブルによってまたは酸素飽和度測定情報を送信するように構成された任意の形態によって、システムのその他の構成要素に接続されうる。酸素飽和度監視装置310は、酸素飽和度(%)の形で信号を提供してもよいが、必ずしもその必要はない。
【0042】
ディスプレイ300(たとえば、LCDディスプレイ)は、出生後の早産児100の時間依存的酸素飽和度値を、図1に示されるような健康な乳児の所望の値と比較するように構成されてもよい。ディスプレイ300はさらに、上限および下限を含む時間依存的パターンの所望の値を含む視覚的グラフ320を備えてもよく、これは時間と共に変化して、健康な新生児の正常範囲の酸素飽和度を模倣してもよく、さらにこれは、比較のためリアルタイムで表示される、早産児100の時間対酸素飽和度のグラフを含んでもよい。ディスプレイ320上のタイマ(Apgar clock)360の画像が起動しかつ、乳児100の酸素飽和度を監視して該システムにデータを送信するために酸素飽和度監視装置310が既に起動している状態において、乳児100の出生時点で、システムが備えるタイマ開始/停止スイッチ350を起動させてもよい。たとえば、Apgar clock360をディスプレイ300上に表示させ;出生時点でシステム上のボタン350を押してApgar clock360を起動させてパルスオキシメータ310からのデータのストリーミングを開始させてもよい。次に、出生後1分毎に適正な酸素範囲(血中酸素レベル)を示すグラフ形式の画面が表示される。これが、医療従事者が目標とすべきものである。血中レベルが低すぎる場合には、パルスオキシメータ310から送られたデータが制御モジュール330にフィードバックされ、上述の滴定方法に従い酸素投与を増加またはその逆にして範囲内に維持するために、蘇生を施している人に酸素投与モジュール200を使用するよう信号が送信される。
【0043】
聴覚警報を備える警告システム330もまた、乳児の酸素レベルが適正範囲から外れている場合には、医療従事者に警告を発する。さらに、適正範囲外の酸素飽和度値は、範囲内の値とは異なる色で表示され、それによってLCDディスプレイ320上に可視警報を提供する。たとえば、正常値の下限を下回るデータ点は青色で、目標範囲内のデータ点は緑色で、正常飽和度の上限を上回る測定値は赤色とする。可聴警報330は、低い測定値(低周波警報)および高い測定値(高周波警報)を知らせてもよい。低いおよび高い酸素飽和度値に対して異なる周波数の警報を使用することにより、蘇生を施している人はディスプレイを見ることなく、酸素飽和度が所望の範囲を上回っているか下回っているかを判断することができる。
【0044】
このグラフ形式は、乳児の酸素飽和度が範囲を上回るか、含まれるか、または下回るかのいずれかを示すだけではなく、酸素飽和度がどの程度範囲から外れているかの可視表示も与えるので、特に有益である。これにより使用者は、どの暗い積極的に酸素濃度の上昇または低下を行うべきかを誘導する助けとなる情報を得る。乳児100が積極的な蘇生を必要とする場合、100%酸素を与えてもよく、この手順は、必要であれば胸部圧迫を含むことができる。
【0045】
使用者は、多少の詳細を表示するために、グラフ320の時間分解能を調整する選択権を有する;分解能が高くなればなるほど、酸素曲線において詳細が示されるが、蘇生の全期間に合わせるためには、画面を水平方向にスクロールする必要がある。
【0046】
心拍数および拍動指数は、パルスオキシメータ310から送られ、リアルタイムでディスプレイ300に表示されてもよい。拍動指数とは、信号の強度に関する情報を与えるものである。総合すると、心拍数および拍動指数は、データの有効性に関する貴重な情報を与える。拍動指数が所定のカットオフ値を下回る場合、不自然なデータは誤解を与えやすいので、グラフ上に表示されない。
【0047】
さらなる研究が行われるにつれて適正な酸素飽和度の上限および下限が調整される可能性があることは、当業者によって認識されよう。したがって、システム上に表示される飽和度限界値は、ソフトウェアの更新を通じて調整可能となる。
【実施例】
【0048】
IV. 実施例
以下の実施例は、本発明の様々な局面をさらに説明するために含まれる。以下の実施例において開示される手法が、本発明の実用において良好に機能すると本発明者によって見いだされた手法および/または構成を示し、かつしたがってその実施のための好ましい様式を構成すると考えられ得ることは、当業者によって認められるべきである。しかし、本開示の観点から、開示された特定の態様において多くの変更が可能であることおよびこれにより本発明の精神および範囲を逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることを、当業者は認めるべきである。
【0049】
実施例1-早産児の蘇生における室内空気投与に対する酸素投与
目的:
85から92%の目標経皮酸素飽和度(SpO2)範囲内にとどめる際にどの手法が最も有効かを判定するため、および早産児の蘇生の際にFiO2(本明細書において補給酸素の濃度として使用される、ガス混合物中のごくわずかな吸気酸素)を滴定するためのプロトコルの使用が実行可能であるか否かを判定するために、3種類のO2投与戦略を比較する。
【0050】
設計/方法:
3種類のO2戦略を比較する、妊娠32週の乳児の分娩室蘇生についての盲検無作為対照試験。高O2負荷(HOB)群には、固定濃度の100%O2を与えた。中程度O2負荷(MOB)群および低O2負荷(LOB)群においては、蘇生はそれぞれ100%および21%O2で開始した。MOB群およびLOB群では、85%から92%の目標SpO2範囲に達するまで15秒毎に20%ずつ吸気酸素濃度を調整した。右手首(管前型)からのSpO2測定値を2秒毎に記録し、パルスオキシメトリーの最大感度設定を使用した。麻酔監視装置が、最大吸気圧、呼吸速度、呼吸終末CO2および吸気CO2の濃度を含む呼吸パラメータを、連続的に測定および記録した。
【0051】
結果:
三群の早産児がこの研究パートに参加した:LOB(低酸素負荷群-室内空気により蘇生開始した後、酸素飽和度が85%未満である限り15秒毎に20%増加)、MOB(高酸素負荷群-100%酸素により蘇生開始した後、酸素飽和度が92%を上回る限り15秒毎に20%減少)およびHOB(高酸素負荷群-連続して100%酸素を与えた)。本発明者らは、106例の早産児(妊娠32週以下)(LOB=34例、MOB=34例、LOB=38例)を参加させた。3種類の群は、類似の基本特性を有していた。目標SpO2範囲(85〜92%)内であった蘇生時間の平均比率は、それぞれ表1に示されるHOB群、MOB群およびLOB群において11%、21%、および16%であった(CI:信頼区間)。MOB群は、その他の2種類の群と比較して、最も長時間、目標範囲内であった(21%)。MOB群は、HOB群よりも約二倍長く、この目標酸素範囲内であった。目標内での時間の平均比率が3種類の群の間で有意に異なること(P=0.006)、およびこれがMOB群およびHOB群の間の違いに起因することは、留意すべきである。
【0052】
(表1)目標での時間の群別平均比率

【0053】
目標SpO2範囲に入っている時間に対して酸素戦略が与えた効果は有意であり(p=0.006)、MOB群では範囲内に入った時間の比率が最大であった。LOB群は範囲未満であった時間の比率が最大(61%)であり(p<0.001)(表2)、HOB群は範囲超過であった時間の比率が最大(49%)であったので(p<0.001)(表3)、LOBおよびHOBのプロトコルはどちらもMOBプロトコルより劣る。なお、目標未満または超過の時間の平均比率が3種類の群の間で有意に異なる(P<0.001)ことは、留意すべきである。
【0054】
(表2)目標未満での時間の群別平均比率

【0055】
(表3)目標超過での時間の群別平均比率

【0056】
乳児は3種類の異なる処置群の一つに無作為に振り分けられたが、酸素への総合的な曝露を評価することが重要である。処置割り当ては開始時における乳児の特定の酸素濃度に対応したが、しかし酸素への曝露は蘇生中の乳児の必要に応じて調整され、そのため曝露の合計は別の処置群の乳児と結局類似したものとなる可能性がある。本発明者らは、酸素対時間の曲線の下の面積によって、酸素曝露の合計を評価した。曲線の下の面積には、3つの治療群の間で有意な差がある(P値=0.044)。このデータは、LOB群およびMOB群が投与された酸素の合計量は類似していた(類似の酸素曝露を受けた)にもかかわらず、MOB群は目標領域に達して最も長い時間領域内に残った一方でLOB群ではこれが認められなかったという結論を裏付けるものである(表1)。このことは、酸素濃度を滴定するために使用されたプロトコルが、目標酸素飽和度への到達において重要であることを説明する。乳児に投与される酸素の量だけではなく、酸素の滴定を誘導するために使用されるプロトコルも考慮することが重要である。
【0057】
図3は、MOB群およびHOB群が出生直後からおよそ5分かかって目標範囲に達したことを示す(x軸は出生直後の時間を示し、x=0は出生時刻を示す;y軸はパルスオキシメトリーによって測定されたSpO2を示す)。これにより、これらの群が目標範囲(85〜92%、斜線領域によって示される)にあまり早く到達することも、時間がかかりすぎることもなかったので、酸素投与のためのプロトコルが好ましかったことが示される。なお、本試験における目標酸素飽和度範囲は健康な新生児に見られる正常パターンの酸素飽和度を反映していないことに留意されたい。しかし、LOB群およびHOB群と比較して、MOB群の乳児の酸素飽和度は、健康な乳児に見られる酸素飽和度のパターンに最もよく近似しているように見える。
【0058】
以下の表4に示されるように、蘇生の期間(秒)は、3種類の群の間で有意な違いはない(分散分析=NS)。
【0059】
(表4)群別平均蘇生時間

【0060】
HOB群、MOB群、およびLOB群の蘇生の終末における平均吸気O2濃度は、それぞれ100%、33%、および36%であった。3種類の群の間で、最大吸気圧、陽圧呼吸速度または呼気終末CO2濃度に有意な差はなかった。
【0061】
結論:
早産児の本試験において、100%O2により蘇生を開始した後に吸気酸素濃度の滴定を実行する戦略が、85〜92%の目標範囲でSpO2を維持する際に最も有効であった。早産児は界面活性物質欠乏症のリスクが高いことを考慮すると、この個体群において蘇生を開始するのに室内空気は適切な選択肢ではない可能性がある。また本試験により、早産児の分娩室蘇生の際に吸気O2濃度の滴定を誘導するためにパルスオキシメトリーを使用できることも示された。
【0062】
本試験は、中程度酸素負荷(MOB)群における乳児が、85から92%の目標酸素飽和度範囲に入っている時間が最も長かったことを見いだした。これは、100%酸素で開始し、続いて酸素濃度の滴定を行った群である。このことは3つの理由で重要である。第一に、本結果は統計的に有意であって、本試験は方法論的に非常に強いものであった。第二に、LOB群(21%酸素で開始)とMOB群との間で酸素曝露の合計に有意な差がなかった。これにもかかわらず、MOB群はより多くの時間、目標範囲内に入った。言い換えると、MOB群およびLOB群は両方とも類似の酸素曝露量であったが、しかしMOB群は最も長い時間、目標範囲に入った(目標範囲においてLOB群よりもおよそ25%長い時間)。これは、蘇生プロセスの非常に早期に(すなわち、最初の数分で)なされた選択が、乳児を安全な目標範囲内にどの程度維持できるかに対して重要な影響力を持つことを暗示している。第三に、LOB群およびMOB群の乳児は、蘇生の終末においてそれぞれ36%および33%の酸素濃度を投与されていた。このことは、蘇生の終末(通常は乳児が最も安定している時)においてさえ、乳児は平均して21%を上回る酸素を必要とするので、(以前の関連研究全ての場合のような)21%の固定酸素濃度の使用は適切ではないということを示している。
【0063】
したがって、これらの結果は、早産児を蘇生させるためのより良い戦略には、固定酸素濃度を与えるのではなく、児が受ける酸素量の滴定が必要であることを示していた。滴定についての目標範囲に関して、本試験は、85〜92%の単純な固定目標を使用し、蘇生中に目標に達するために、安全かつ効果的に酸素濃度を滴定可能であることを示した。「最善の」目標とは、健康な乳児に見られる、1分毎に変化する酸素飽和度のパターンである可能性があることが、提案されている(Rabiら、2006;Marianiら、2007)。
【0064】
本明細書に開示および主張された全ての方法および/またはシステムは、本開示を踏まえて、過度な実験をすることなく、実現および実行することができる。本発明の方法および/またはシステムは、特定の態様に関連して記載されてきたが、本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された方法および/またはシステムにおける方法の段階または一連の段階に変更を加えてもよいことは、当業者にとって自明である。当業者にとって自明なこのような代用および変形の全ては、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念に含まれると考えられる。
【0065】
V. 参考文献
本明細書において示される内容を補足する例示的な手順のまたはその他の詳細を提供する限りにおいて、以下の参考文献が、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
Marianiら、J Pediatr., 150(4):418-21, 2007
Rabiら、J Pediatr., 148(5):590-4, 2006
Rabiら、Resuscitation, 72(3):353-63, 2007
Saugstad, Acta Paediatr., 96(6):798-800, 2007

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児を蘇生させる方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)約90〜100%の酸素濃度で早産児に補給酸素を投与する段階;
(b)該早産児の酸素飽和度値を監視する段階;および
(c)該酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20秒毎に約10%から20%ずつ、投与されている補給酸素の濃度を低下させる段階。
【請求項2】
前記新生児が早産である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記新生児が出生後約0〜20分以内である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記所望の値が、出生後1分でおよそ73%から81%である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記所望の値が、出生後2分でおよそ77%から82%である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記所望の値が、出生後3分でおよそ78%から87%である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記所望の値が、出生後4分でおよそ79%から91%である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記所望の酸素の値が、出生後5分でおよそ80%から95%である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記所望の値が、出生後6分でおよそ80%から93%である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記所望の値が、出生後7分でおよそ82%から93%である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記所望の値が、出生後8分でおよそ83%から95%である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記所望の値が、出生後9分でおよそ87%から95%である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記所望の値が、出生後10分でおよそ91%から95%である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記所望の値が、分娩室において補給酸素を必要としない健康な新生児における時間依存的パターンの酸素飽和度値である、請求項5〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記酸素飽和度値がパルスオキシメータによって監視される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記パルスオキシメータが、前記乳児の右手首に配置される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記酸素飽和度値が、2秒の平均化時間を用いて監視される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記パルスオキシメータが、該パルスオキシメータにおいて利用可能な最大感度設定を使用する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記補給酸素が、顔マスクまたは気管内チューブに接続された麻酔バッグによって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記補給酸素が、人工呼吸器によって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記補給酸素が、持続的気道陽圧システムによって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記補給酸素が、少なくとも約21%の酸素濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記補給酸素が、少なくとも約29%の酸素濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記補給酸素が、少なくとも約33%の酸素濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記補給酸素が、少なくとも約46%の酸素濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記補給酸素が、少なくとも約63%の酸素濃度で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記酸素濃度を約20%ずつ低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項28】
前記低下が約15秒毎に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項29】
(a)請求項1または33の方法によって乳児に補給酸素を投与するように構成された補給酸素投与モジュールと;
(b)乳児の酸素飽和度値を監視するための酸素監視装置と;
(c)出生後の乳児の時間依存的酸素飽和度値を所望の値と比較するディスプレイと;
(d)該酸素飽和度値が該所望の値からずれていないかどうかを示すための警告システムと;
(e)該補給酸素の濃度を調整するための制御モジュール
を備える、乳児の蘇生のためのシステム。
【請求項30】
前記ディスプレイが、上限および下限を含む前記所望の値を含む視覚的グラフを備える、請求項19記載のシステム。
【請求項31】
前記補給酸素の濃度が、前記酸素飽和度値と前記所望の値との差に基づいて調整される、請求項19記載のシステム。
【請求項32】
乳児の出生時に、前記ディスプレイが備えるタイマの画像が起動され、前記酸素飽和度監視装置が、前記制御モジュールに送信するための前記酸素飽和度値を監視するよう起動される、請求項19記載のシステム。
【請求項33】
乳児を蘇生させる方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)約20〜40%の酸素濃度で該乳児に補給酸素を投与する段階;
(b)該乳児の酸素飽和度値を監視する段階;および
(c)前記酸素飽和度値が所望の値に達するまで、約10から20秒毎に約10%から20%ずつ、投与されている補給酸素の濃度を増加させる段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−516538(P2011−516538A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503518(P2011−503518)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005452
【国際公開番号】WO2009/125300
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(507132329)ユーティーアイ リミテッド パートナーシップ (2)
【Fターム(参考)】