説明

新生物疾患又は免疫不全を処置するためのヒト化免疫調節性モノクローナル抗体

【課題】免疫賦活性効果を有するヒト化モノクローナル抗体の提供。
【解決手段】本発明の抗体は、Bリンパ芽球腫細胞に特異的に結合し、末梢血リンパ球の増殖及び活性化を誘発し、癌を罹患している対象に投与した際に抗腫瘍効果を誘発する能力を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫療の分野に関し、より詳細には、本発明は、様々な症状の治療、特に癌の処置に有用なヒト化モノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な形態の癌は、ヒトの主な死亡原因である。癌において最も幅広く使用されている治療的処置は、手術、放射線療法及び化学療法である。近年の免疫制御の分子レベル及び細胞レベルの知識の急増、特にT細胞応答レベルでの知識の急増が、腫瘍ワクチンの開発を含めた免疫療法的手法の新しい宝庫を提供している。一部のモノクローナル抗体(mAb)は、T細胞の表面上の決定基に結合する能力及びこれらの細胞の増殖、活性化又は分化を誘導する能力を含む免疫調節性活性を有することが示されている。
【0003】
マウスハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体は、ヒト患者に注入された時に免疫原性のアミノ酸配列のストレッチを相当量含んでおり、しばしば、初回処置後の抗体の治療効果を消失する。いわゆる「キメラ抗体」(即ちヒト定常領域に結合したマウス可変領域)の産生が多少有用であることが示されたが、顕著な免疫原性の障害が依然として残ったままである。
【0004】
ドナーのマウス又はラット免疫グロブリン由来の相補性決定領域(CDR)と組み合わせたヒトフレームワーク領域(FR)を含む免疫グロブリンを産生させるために、組換えDNA技術が利用されてきた。このような新しいタンパク質は「再構成」又は「ヒト化」免疫グロブリンと呼ばれ、ドナー免疫グロブリンのCDRをヒトフレームワークと組み合わせてヒト様免疫グロブリンに変換するプロセスは「ヒト化」と呼ばれる。ヒト化抗体は、元の抗体と同じ抗原に結合するがヒトに注射した際に免疫原性がより低いので重要である。
【0005】
米国特許第6,294,654号は、改変免疫グロブリン分子或いはその(Ig)機能的断片又は一部を開示しており、これらは1つ又は複数の非CDRループに組み込まれている、Igに対する外来抗原性ペプチドを有しており、定常ドメインの主な骨格が維持されている。さらに、治療用途又は予防用途における改変抗体の使用が開示されている。
【0006】
米国特許第6,074,635号は、抗原の非存在下で、T細胞を、インターロイキン−2、インターロイキン−6、及び腫瘍壊死因子αからなる群から選択される少なくとも2つのサイトカインの組合せ、又は機能的に等価なその断片と接触させることを含む、T細胞をin vitroで抗原に依存せずに活性化させる方法を開示している。
【0007】
米国特許第5,658,741号は、T細胞の活性化及び増殖を誘発させる方法であって、(a)複数のT細胞特異的モノクローナル抗体を、7〜20重量%のアミン基を有し分子量が少なくとも100,000ダルトンのアミノデキストラン分子と、前記抗体と前記アミノデキストランとのモル比2以上で結合させ;(b)前記結合体と前記T細胞を含む試料とを反応させて、前記結合させた抗体を前記T細胞に結合させ、前記T細胞の活性化及び増殖を誘発させる、ことを含む方法を開示している。
【0008】
Queen他の米国特許第5,585,089号は、少なくとも10−1且つドナー免疫グロブリンの約4倍未満の親和性定数で抗原に特異的に結合する、ドナー免疫グロブリン由来の相補性決定領域(CDR)と、ヒトアクセプター免疫グロブリン重鎖及び軽鎖由来の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークとを有するヒト化免疫グロブリンであって、前記ヒト化免疫グロブリンはカバット(Kabat)及びコーチア(Chothia)CDRの外にあるドナー免疫グロブリンフレームワーク由来のアミノ酸を含み、ドナーアミノ酸がアクセプター免疫グロブリン重鎖又は軽鎖フレームワーク中の対応するアミノ酸を置換しており、前記ドナーアミノ酸のそれぞれが(I)ドナー免疫グロブリン配列内のCDRに隣接している、又は(II)前記ヒト化免疫グロブリン中のCDRの原子を4Åの距離内に含んでいる、ヒト化免疫グロブリンを開示している。
【0009】
Winterの米国特許第5,225,539号は、抗体の可変ドメイン又はその抗原結合断片が第1の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域と第2の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖可変ドメインの相補性決定領域とを有しており、前記第2の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖可変ドメインの抗原結合特異性、抗原結合親和性、種、クラス又はサブクラスが前記第1の免疫グロブリン重鎖又は軽鎖可変ドメインとは異なっている、改変型抗体又はその抗原結合断片を開示している。
【0010】
米国特許第5,225,539号及び米国特許第5,585,089号は、当業者が改変型抗体、特にヒト化抗体の合成を実施するために十分な手段も、包括的な説明も提供していない。
【0011】
本明細書中に参考として組み込まれる、本発明の発明者の1人による米国特許第5,897,862号は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、(i)Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)に寄託番号I−1397号として寄託されているハイブリドーマ細胞系に分泌されている、又は(ii)(i)の抗体と同じ抗原性エピトープを認識するモノクローナル抗体、或いはその抗原結合断片を開示している。米国特許第5,897,862号に開示されているモノクローナル抗体は、ヒトBリンパ芽球腫細胞系である「ダウディ」細胞に対するものであり、ネズミリンパ球及びヒト末梢血T細胞を刺激することが示されている(Hardy他、Cell Immunol.、118:22、1989)。このネズミ抗体は、本明細書中でも以降mBAT−1と呼ぶ。mBAT−1はまた、ヒト起源の腫瘍(Hardy他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:5756、1997)を含めた様々な腫瘍型で抗腫瘍性及び免疫賦活活性効果を示す(Hardy他、Int.J.Oncol.、19:897、2001)。
【0012】
本明細書中に参考として組み込まれる、本発明の発明者の1人による国際公開公報WO00/58363号は、mBAT−1の重鎖可変領域及び/又はκ軽鎖可変領域、或いはmBAT−1の重鎖可変領域及び/又はκ軽鎖可変領域に少なくとも70%同一である重鎖可変領域及び/又はκ軽鎖可変領域を含む可変領域を有するモノクローナル抗体を開示している。
【0013】
ネズミ由来のCDRとヒト由来のFRとを含むヒト化モノクローナル抗体が免疫応答性を誘発し得、さらに抗癌活性を示し得ることは、背景技術のどこにも教示も示唆もされていない。さらに、本発明のヒト化抗体の合成が背景技術に基づき予想することも定常的に行うこともできないことは当分野で周知であるので、機能的なヒト化抗体を設計する信頼できる方法の必要性は未だ満たされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、Bリンパ芽球腫細胞に結合して末梢血リンパ球の増殖及び活性化を誘発させる、ヒト化モノクローナル免疫調節性抗体(本明細書中で以降hBAT−1と呼ぶ)を提供することである。当該hBAT−1は、Bリンパ芽球腫細胞に結合して末梢血リンパ球の増殖及び活性化を誘発させ、さらに腫瘍を有する対象に注入した場合に抗腫瘍効果を誘発させる、既知のネズミモノクローナル免疫調節性抗体(本明細書中で以降mBAT−1と呼ぶ)に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、mBAT−1のヒト化方法の包括的な説明及び各合成ステップの原理を提供する。したがって本発明で提供するヒト化方法の説明は、当業者によるmBAT−1以外のBAT抗体のヒト化にも適している。
【0016】
ヒト化BAT−1抗体を投与することにより、癌の治療的予防、検出又は処置方法が提供される。本発明によって提供されるBAT−1抗体のヒト化形態を用いた、それを必要としている対象の処置は、キメラBAT−1抗体を用いた処置よりも相当に有効であり、有害な免疫原性応答が避けられる。
【0017】
本発明は、一部、ヒト化BAT−1抗体が親ネズミBAT−1抗体に誘発される抗腫瘍効果よりも大きな効果を誘発しているようであるという予想外の発見に基づいている。
【0018】
第一態様によれば、本発明は、ドナー免疫グロブリン由来の少なくとも1つのCDRとアクセプター免疫グロブリン由来のFRとを含むヒト化モノクローナル抗体を提供する。
【0019】
一実施形態によれば、本発明は、ドナー免疫グロブリン由来の少なくとも1つのCDRとアクセプター免疫グロブリン由来のFRとを含むヒト化モノクローナル免疫調節性抗体を提供する。
【0020】
別の実施形態によれば、本発明は、CDRのドナーがネズミモノクローナルBAT−1抗体(mBAT−1)であるモノクローナル免疫調節性抗体を提供する。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、FRが由来するアクセプターがヒト免疫グロブリンであるモノクローナル免疫調節性抗体を提供する。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、ヒト化抗体がmBAT−1モノクローナル抗体の生物活性を保持しており、ヒト対象において前記ネズミ抗体よりも免疫原性が低い、ドナーネズミモノクローナルBAT−1抗体(mBAT−1)由来の少なくとも1つのCDRとアクセプターヒト免疫グロブリン由来のFRとを含むモノクローナル免疫調節性抗体を提供する。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、ヒト化BAT−1抗体の軽鎖可変領域は以下の式によって特徴付けられる:
FRL1−CDRL1−FRL2−CDRL2−FRL3−CDRL3−FRL4
(式中、各FRはそれぞれ独立にヒト抗体のフレームワーク領域であり、各CDRはそれぞれ独立にモノクローナルmBAT−1抗体の相補性決定領域である)。
【0024】
さらに別の実施形態によれば、ヒト化BAT−1抗体の重鎖可変領域は以下の式によって特徴付けられる:
FRH1−CDRH1−FRH2−CDRH2−FRH3−CDRH3−FRH4
(式中、各FRはそれぞれ独立にヒト抗体のフレームワーク領域であり、各CDRはそれぞれ独立にモノクローナルmBAT−1抗体の相補性決定領域である)。
【0025】
特定の実施形態によれば、本発明は、ヒトTEL9抗体の軽鎖可変領域由来のFRを含むモノクローナル抗体を提供する。
【0026】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、FRL1、[EIVLT QSPSS LSASV GDRVT ITC;配列番号1];FRL2、[W(F又はY)QQKPG KAPKL(W又はL)IY;配列番号2];FRL3、[GVPSR FSGSG SGT(D又はS)(Y又はF)(C又はT)LTINS LQPED FATYY C;配列番号3];FRL4、[FGGGT KLEIK;配列番号4]からなる群から選択される、ヒトTEL9抗体の軽鎖可変領域由来のFRアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0027】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明は、ヒトhsighv1295抗体の重鎖可変領域由来のFRを含むモノクローナル抗体を提供する。
【0028】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明は、FRH1、[Q(I又はV)QLV QSGSE LKKPG ASVKI SCKAS GY(T又はS)F(T又はS);配列番号5];FRH2、[WV(R又はK)QAPGQ GL(Q又はK)WMG;配列番号6];FRH3、[RF(V又はA)FSLDT SV(N又はS)TAYLQ ITSL(T又はN)AEDTG MYFC(V又はA)(R又はK);配列番号7];FRH4、[WGQGT LVTVS S;配列番号8]からなる群から選択される、ヒトhsighv1295抗体の重鎖可変領域由来のFRアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0029】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、CDRL1[SARSS VSYMH;配列番号9];CDRL2[RTSNL AS;配列番号10];CDRL3[QQRSS FPLT;配列番号11]からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を提供する(式中、CDRはネズミBAT−1抗体に由来し、下付き文字「L」及び「H」はそれぞれ重鎖及び軽鎖領域を意味する)。
【0030】
さらに別の特定の実施形態によれば、本発明は、CDRH1[NYGMN;配列番号12];CDRH2[WINTD SGEST YAEEF KG;配列番号13];CDRH3[VGYDA LDY;配列番号14]からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域を有する完全長抗体、モノクローナルIgG、特にサブクラスγ1又はγ4のもの、単鎖抗体、それだけには限定されないがF(ab’)断片若しくはF(ab)又はFvを含めた抗体断片、標識抗体、固定抗体、外来化合物に結合させた抗体からなる群から選択される。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、BATRκ(配列番号15)、BATRκ(配列番号16)、BATRκ(配列番号17)、BATRκ(配列番号18)からなる群から選択される軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0033】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、BATRH(配列番号20)、BATRH(配列番号21)、BATRH(配列番号22)、BATRH(配列番号23)又はBATRH(配列番号24)からなる群から選択される重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0034】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、BATRH/BATRκ(配列番号20/配列番号15)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号15)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号16)、BATRH/BATRκ(配列番号22/配列番号16)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号18)、又はBATRH/BATRκ(配列番号22/配列番号18)からなる群から選択される可変領域を含むモノクローナル抗体を提供する。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、本発明のヒト化モノクローナル抗体は、CDR移植を利用して組換えDNA技術によって作製する。
【0036】
第二態様によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、ヒト化抗体全体、或いはヒト化抗体の可変領域の軽鎖若しくは重鎖可変領域又は両方の鎖をコードすることができる。本発明はさらに、本発明のヒト化抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。したがって、ヒト化BAT−1抗体は、重鎖及び軽鎖ベクターの同時トランスフェクション、又は軽鎖及び重鎖ポリヌクレオチド配列をどちらも含む単一ベクターのトランスフェクションの後、宿主細胞内で発現させ得る。
【0037】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化モノクローナル抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を提供する。
【0038】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体のκ軽鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を提供し、κ軽鎖可変領域は配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18からなる群から選択される。
【0039】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のヒト化抗体の軽鎖をコードしているポリヌクレオチド配列は配列番号87、配列番号88、配列番号89からなる群から選択される。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を提供し、重鎖可変領域は配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24からなる群から選択される。
【0041】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明のヒト化抗体の重鎖をコードしているポリヌクレオチド配列は配列番号90、配列番号91、配列番号92からなる群から選択される。
【0042】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、ヒト化BAT−1抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0043】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0044】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、ヒト化抗体全体、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、可変領域の両方の鎖からなる群から選択される、本発明のヒト化抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0045】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体のκ軽鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供し、κ軽鎖可変領域は配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18からなる群から選択される。
【0046】
さらに別の実施形態によれば、ベクターは、耐性遺伝子、プロモーター、シグナルペプチド、ポリA転写ターミネーター、選択マーカー、ゲノムヒトκ定常領域からなる群から選択される構成要素をコードしている少なくとも1つの配列をさらに含む。
【0047】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ベクターの構成要素は、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、HCMV最初期プロモーター(HCMV Immediate Early Promoter)、ゲノムヒトκ定常領域、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド配列、コザック配列、シグナル配列イントロン、BGHポリA転写ターミネーター、Neo/G418選択マーカー、ハムスターdhfr選択マーカーからなる群から選択される。
【0048】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供し、重鎖可変領域は、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24からなる群から選択される。
【0049】
さらに別の実施形態によれば、ベクターは、耐性遺伝子、プロモーター、シグナルペプチド、ポリA転写ターミネーター、選択マーカー、ゲノムヒトIg定常領域からなる群から選択される構成要素をコードしている少なくとも1つの配列をさらに含む。
【0050】
さらに別の好ましい実施形態によれば、ベクターの構成要素は、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、HCMV最初期プロモーター、ゲノムヒトIgG1定常領域、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド配列、コザック配列、シグナル配列イントロン、BGHポリA転写ターミネーター、Neo/G418選択マーカー、ハムスターdhfr選択マーカーからなる群から選択される。
【0051】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、pKN110−BATRκ、pKN110−BATRκ及びpKN110−BATRκからなる群から選択される、本発明のヒト化抗体のκ軽鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0052】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、pG1D110−BATRH、pG1D110−BATRH、pG1D110−BATRHからなる群から選択される、本発明のヒト化抗体の重鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0053】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、配列番号93に記載の、本発明の完全なヒト化抗体をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0054】
第三態様によれば、本発明は、保管、増殖、抗体産生及び治療用途を目的とする、本発明の抗体又は断片をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む細胞を提供する。
【0055】
別の実施形態によれば、宿主細胞はCHO、CHOdhfr、NSO、COS、COS7からなる群から選択され得る。
【0056】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、診断及び治療で使用するための、本発明の抗体を活性成分として含む薬剤組成物を提供する。
【0057】
さらに別の実施形態によれば、活性成分として本発明の抗体を含む薬剤組成物は、好ましくは癌の処置に使用する。
【0058】
さらに別の実施形態によれば、薬剤組成物は、対象において原発腫瘍若しくは二次腫瘍が検出された後に、又は癌を発生する危険性の高い対象の予防治療として投与し得る。
【0059】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明のヒト化抗体は様々な腫瘍において抗腫瘍効果を誘発する。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、本発明の抗体を活性成分として含む薬剤組成物を有効量でそれを必要としている対象に投与することを含む、疾病又は疾患、特に癌を診断又は治療する方法を提供する。
【0061】
さらに別の実施形態によれば、本発明の抗体は、それと一緒になって付加的又は相乗的に作用できる他の薬剤の投与と同時に、その投与前に、又はその投与後に投与する。
【0062】
さらに別の実施形態によれば、本発明の抗体は、サイトカイン、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2、IL−6、IFN−α(インターフェロン−α)、細胞ワクチン、抗体、T細胞刺激抗体、抗腫瘍治療用抗体からなる群から選択される薬剤の投与と同時に、その投与前に、又はその投与後に投与する。
【0063】
本発明の特定の実施形態によれば、ヒト化BATモノクローナル抗体は、その機能又は活性がATCC#(PTA−5189)の下に寄託されている細胞により産生される抗体と同じである。
【0064】
本発明の他の目的、特徴及び利点は以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ネズミBAT−1抗体のκ軽鎖可変領域(Vκ)のDNA配列及びペプチド配列を示す図である。
【図2】ネズミBAT−1のVκ領域内のCDRの標準クラスを示す図である。「コーチア標準クラス」とはコーチアと共同研究者が定義した標準クラスを使用した場合を示し(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、J.Mol.Biol.、215:175、1990)、「マーチン標準クラス」とはマーチン及びソーントンが定義した標準クラスを使用した場合を示す(Martin他、J.Mol.Biol.、263:800、1996)。FR残基を太字で強調した。
【図3】ネズミBAT−1抗体の重鎖可変領域(V)のDNA配列及びペプチド配列を表す図である。
【図4】ネズミBAT−1のV領域内のCDRの標準クラスを示す図である。「コーチア標準クラス」とはコーチアと共同研究者が定義した標準クラスを使用した場合を示し(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、同上)、「マーチン標準クラス」とはマーチン及びソーントンが定義した標準クラスを使用した場合を示す(Martin他、同上)。FR残基を太字で強調した。
【図5】提案されているヒト化BAT−1のVκ領域の様々な変型のアミノ酸配列を示す図である(配列番号15〜18)。BAT−1のVκ領域の残基とヒトTEL9のVκ領域の配列とが一致する場合は点[.]で示した。特定の残基位置でアミノ酸が存在しない場合は長音記号[−]で示した。TEL9のFR内のアミノ酸がヒト化BAT−1のVκ領域で変化している場合は太字で強調した。CDRは術語[==L1==]を使用して記載した。使用した番号はカバットに従うものである(Kabat他、免疫学上関心が持たれているタンパク質の配列、第5版(Sequences of proteins of immunological interest,Fifth Edition)、米国保健社会福祉省(U.S.Department of Heath and Human Services)、米国政府印刷局(U.S.Government Printing Office)、1991)。
【図6】提案されているヒト化BAT−1のV領域の様々な変型のアミノ酸配列を表す図である(配列番号20〜24)。BAT−1のV領域の残基とヒトhsighv1295のV領域の配列とが一致する場合は点[.]で示した。特定の残基位置でアミノ酸が存在しない場合は長音記号[−]で示した。hsighv1295のFR内のアミノ酸がヒト化BAT−1のV領域で変化している場合は太字で強調した。CDRは術語[==H1==」を使用して記載し、[−−−−−]はH1ループ構造の一部を示す。使用した記号はカバットに従うものである(Kabat他、同上)。
【図7】ヒト化BAT−1抗体の再構成ヒトκ軽鎖可変領域の変型A(BATRκ)のDNA配列(配列番号87)及びペプチド配列(配列番号15)を示す図である。
【図8】ヒト化BAT−1抗体の再構成ヒトκ軽鎖可変領域の変型B(BATRκ)のDNA(配列番号88)及びペプチド(配列番号16)を示す図である。
【図9】ヒト化BAT−1抗体の再構成ヒトκ軽鎖可変領域の変型D(BATRκ)のDNA配列(配列番号89)及びペプチド配列(配列番号18)を表す図である。
【図10】pKN110−BATRκベクター構築体の略図である。
【図11】BAT−1軽鎖発現ベクターに挿入されたBAT−1軽鎖カセットの略図である。
【図12】pG1D110.BAT−1.RHベクター構築体の略図である。
【図13】BAT−1重鎖発現ベクターに挿入されたBAT−1重鎖カセットの略図である。
【図14】pG1D200γ−1免疫グロブリン重鎖哺乳動物発現ベクターの略図である。
【図15】pG1KD210.BAT−1.RHC/RKD単一発現ベクターの略図である(配列番号93)。
【図16】完全BAT−1抗体を発現させるための単一発現ベクターに挿入されたBATRκ/BATRH重鎖及び軽鎖カセットの略図である。
【図17】BAT−1キメラ抗体に対するヒト化BATRH/BATRκ変異体のダウディ細胞ELISAを示す図である。
【図18】BAT−1キメラ抗体に対するヒト化BATRH/BATRκ及びBATRH/BATRκ変異体のダウディ細胞ELISAを示す図である。
【図19】BAT−1キメラ抗体に対するヒト化BATRH/BATRκ及びBATRH/BATRκ変異体のダウディ細胞ELISAを示す図である。
【図20】BAT−1キメラ抗体に対するヒト化BATRH/BATRκ変異体のダウディ細胞ELISAを示す図である。
【図21】ネズミBAT−1 mAb及びヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbのダウディ細胞への用量依存結合曲線である。
【図22】対照(処置なし)及び元のネズミBAT−1 mAbで処置したものに対する、ネズミB16肺腫瘍中のヒト化BATRH/BATRκ γ1mAb(hBAT)の用量依存的な転移抑制活性を例示する図である。全ての処置は腫瘍接種後14日目に静脈内投与し、処置の10日後に肺を検査した。
【図23】ヒトリンパ球を移植したSCIDマウス中のヒト黒色腫(SK−28)に対するヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbの阻害効果を表す図である。腫瘍増殖に対するヒト化BAT−1の効果を、対照(処置なし)又はネズミBAT−1 mAb(mBAT−1)で処置したものと比較した。
【図24】BALB/cヌードマウスに移植したネズミ腫瘍モデル(HM7)におけるヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbの転移抑制活性を実証する図である。
【図25】リンパ球にゲートをかけたフローサイトメトリーによって決定したヒト化BATRH/BATRκ γ1mAb(hBAT)とCD4(A)及びCD8(B)との共局在を示す図である。
【図26】ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbの、正常なドナーから単離したBリンパ球の細胞マーカーCD19(A)及びCD20(B)への結合を表す図である。
【図27】ヒト化BAT mAbの、不活性(0日目、A;5日目、C)及び活性(2日、B;5日、D)CD4+T細胞への結合を表す図である。
【図28】ヒト化BAT mAbの、抗CD3及び抗CD28に結合させたビーズで活性化させたCD69T細胞の用量依存的な結合を示す図である(活性化なし、A;0.25μl、B;0.5μl、C)。
【図29】ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbとT細胞のCD25マーカーとの時間依存的な共局在を表す図である:0日目、A;活性化2日目及び5日目、それぞれB及びD;活性化なしの5日目、C。
【図30】ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbとT細胞のCD40−リガンドマーカーとの時間依存的な共局在を示す図である:0日目、A;活性化の1日目、2日目及び5日目、それぞれB〜C及びE;活性化なしの5日目、D。
【図31】hBATに誘発された、2人の別個のドナー(A及びB)から単離した生CD4+細胞数の増加を表す図である。
【図32】ダウディ(A)及びジャーカット(B)細胞系に結合しているhBATを表す図である。
【図33】癌患者のPBLに結合しているhBATを実証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
1.定義
便宜上、明細書、実施例及び特許請求の範囲内で用いる特定の用語を述べる。
【0067】
用語「抗体」は、その最も広い意味で使用し、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含める)及び所望する生物活性を示す限りは抗体断片を包含する。「抗体断片」は完全長抗体の一部分、一般にはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;二重特異性抗体;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;並びに抗体から形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0068】
本明細書中で使用する用語「モノクローナル抗体」とは、単一の抗原部位に対するものであり特異性が非常に高い抗体をいう。本発明に従って使用するモノクローナル抗体は組換えDNA法によって作製し得る(例えばCabilly他の米国特許第4,816,567号参照)。
【0069】
用語「フレームワーク領域」又は「FR」残基とは、本明細書中で定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。本明細書中で使用する用語「超可変領域」とは、抗原の結合を司っている抗体のアミノ酸残基である。超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基を含む。CDRは主に抗原のエピトープへの結合を司っている。FR及びCDRの範囲は明確に定義されている(Kabat他、同上参照)。
【0070】
本明細書中で使用する用語「ヒト化抗体」とは、ヒト抗体由来のフレームワーク領域と非ヒト(通常はマウスやラット)免疫グロブリン由来の1つ又は複数のCDRとを含む抗体をいう。場合によってはCDRを除いて、ヒト化免疫グロブリンの各部は天然ヒト免疫グロブリンの配列の対応する部分と実質的に同じである。重要なことに、ヒト化抗体はCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合することが予想される。さらなる詳細には、例えばMedical Research Council、英国の米国特許第5,225,539号を参照されたい。
【0071】
表現「ヒト抗体」とは、ヒトで実際に存在する遺伝子、又はその対立遺伝子、変異体若しくは突然変異体にコードされている抗体を意味することを意図する。
【0072】
本明細書中で使用する用語「ドナー」又は「親」免疫グロブリンとは、CDRを提供している非ヒト免疫グロブリンをいう。
【0073】
本明細書中で使用する用語「アクセプター」免疫グロブリンとは、フレームワークを提供しているヒト免疫グロブリンをいう。
【0074】
本明細書中で使用する用語「発現ベクター」とは、所望するコード配列と、発現可能に連結されたコード配列の特定の宿主細胞内での発現に必要な適切な核酸配列とを含む組換えDNA分子をいう。宿主細胞ゲノムに組み込まれる発現ベクターだけでなく、宿主ゲノムに組み込まれないままでいるベクターも本発明に包含されることが企図される。
【0075】
本明細書中でいう用語「遺伝子改変した細胞」は、ベクター、例えば目的ポリペプチドをコードしているウイルスによってトランスフェクション又は感染させた細胞に関し、この細胞は前記ポリペプチドを発現させる能力を有する。特に本発明においては、遺伝子改変した細胞は本発明の抗体を発現及び分泌する能力を有する。
【0076】
用語「トランスフェクション」とは、宿主細胞へのDNAの導入をいう。トランスフェクションした細胞内でコード配列が発現され得ることが企図される。数々のトランスフェクションの方法、例えばCaPO及び電気穿孔が当業者に知られている。
【0077】
本明細書中で使用する用語「抗腫瘍効果」とは、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の低下、転移数の低下、推定寿命の上昇、又は癌の状態に関連する様々な生理的症状の寛解によって明示することができる生物学的効果をいう。「抗腫瘍効果」はまた、腫瘍が発生すること自体を予防する本発明の抗体の能力によっても明示することができる。その特性を考えると、本発明の抗体は急性癌の処置及び癌の予防のどちらにも使用することができる。
【0078】
本明細書中では、「賦形剤」とは、化合物の投与をさらに容易にするために薬剤組成物に加える不活性物質をいう。賦形剤の例には、それだけには限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが含まれる。薬剤組成物はまた、1つ又は複数の追加の活性成分も含み得る。
【0079】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)とは、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,965,188号に開示されている方法をいう。
【0080】
II.発明を実施するための好ましい形態
a.抗体の調製
BAT−1抗体をヒト化するために、ヒト化変異体を設計及び調製した後、非ヒト抗体出発物質、即ちmBAT−1を調製する。ドナー非ヒト抗体可変ドメインの選択、抗体遺伝子配列のヒト化及び所望のヒト化抗体の産生を含めた本発明の一部の態様を以下のセクションに記載する。
【0081】
(i)非ヒト化抗体の調製
ネズミBAT−1モノクローナル抗体は以前に米国特許第5,897,862号に記載されている。それによると、モノクローナルネズミBAT−1抗体を産生する代表的なハイブリドーマ細胞系がCollection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)、Institute Pasteur、25,Rue du Docteur Roux、75724、パリ、セデックス15に、寄託番号I−1397の下、1994年1月28日に寄託されている。
【0082】
或いは、ネズミBAT−1から産生させるようなキメラγ1/κBAT−1抗体をヒト化BAT−1の調製に使用し得る。キメラBAT−1抗体及びその産生法はPCT出願WO00/58363号に記載されている。
【0083】
(ii)ヒト化抗体の設計戦略
本発明は、ドナー抗体、好ましくはマウス抗体のCDRとヒトフレームワークとを組み合わせることによってドナー抗体をヒト様抗体に変換する方法によって、BAT−1抗体をヒト化する手順を開示する。特定の実施形態では、ヒト化抗体のアミノ酸配列変異体を産生させることが望まれることがあり、これは、特にこれらがヒト化抗体の結合親和性又は他の特性を向上させる場合である。アクセプターであるヒト抗体の選択を含めて、ドナーBAT−1抗体と選択したヒトアクセプター抗体の両方について置換、挿入又は欠失のための部位を選択するために適用する方法を詳細に記載する。本明細書中に以下で提供する抗体のヒト化の大規模な解析及び指針は背景技術に開示されておらず、活性のある変更された抗体の調製に重要である。
【0084】
ヒト化抗体の設計は、非ヒト抗体可変領域の重鎖及び軽鎖(本明細書中で以降それぞれV及びVと呼ぶ)の配列解析によって開始することが好ましい。このような解析は、非ヒト化抗体と他のマウス可変領域とのV及びVのアミノ酸配列の比較を含む。好ましい実施形態では、サブグループのコンセンサス配列でさらに比較を行うことができ、そこでは可変領域をカバットデータベース(Kabat他、同上)に細分化した。可変領域の様々な要素の分類により、本発明の非ヒト化抗体のV及びVに類似しており構造が解明されている免疫グロブリン可変領域の選択が容易になる。
【0085】
ヒトκ軽鎖可変領域(本明細書中で以降Vκとも呼ぶ)の選択、及びヒト化抗体の可変領域の基礎として役割を果たすV(アクセプター抗体とも呼ぶ)の選択は、ヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列に従って非ヒト抗体のV及びVの分類によって開始することが好ましい。具体的には、非ヒト化抗体のVをカバット(Kabat他、同上)に定義された4つのヒトκ軽鎖可変領域サブグループのコンセンサス配列と比較し、次いでそれに従って分類する。同様に、非ヒト化抗体のVを3つのヒト重鎖可変領域サブグループのコンセンサス配列と比較し、それに従って分類する。
【0086】
アクセプターヒトVκ及びVの選択は、本発明の親非ヒト抗体のV及びVと公的に公開されているヒト可変領域の個別の配列の記録例とを比較することによって進めることが好ましい。適切なヒトVκ及びVは、親の非ヒト抗体に最も近い適合性に基づいて選択される。
【0087】
ドナー及びヒト化抗体の配列解析並びに適切なモデルへの参照は、どの残基が抗原の結合や正しい抗体構造の維持に関与している可能性があるか、またヒト化抗体の構造を改善するためにどの残基を除去又は置換すべきかを識別するのに役立つことができる。
【0088】
したがって、ヒト化抗体の設計を補助するために非ヒト抗体及びヒト化抗体の可変領域の分子モデルをどちらも準備する。これらの構造のモデリングは解析手順で決定された可変領域要素の分類に基づいており、例えば相同性及びab initio技法を使用することによって得ることができる。対応するX線結晶解析による構造はブルックヘブン(Brookhaven)データベースから得ることができる。
【0089】
FR、CDR、及びループ構造などの本発明の非ヒト抗体の可変領域内の要素を、類似の構造が解明されている免疫グロブリン可変領域の要素からモデリングした。モデル内の立体衝突を同定し、ミスマッチの側鎖を選択して置換した。特に好ましい構造コンホメーションの手法には、コーチアと共同研究者(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、同上)が記載したものに基づいた、標準(canonical)クラスに従った構造要素の分類が含まれる。構造予測の好ましい手法には、データベース検索、即ちCONGEN検索(Bruccoleri,R.E.他、Biopolymers、26:137、1987)が含まれる。ヒト化抗体の基礎として役割を果たすであろう選択されたヒトVκ及びVを同様にモデリングし、その残基のうちのいずれかが結合特異性に悪影響を与える可能性があるかどうかを決定するために、そのアミノ酸配列を調査する。
【0090】
モデルの明らかな立体衝突を調整した後に、エネルギー最小化法を適用することが好ましい。エネルギー最小化は、望ましくない原子の接触を軽減すること並びにファンデルワールス及び静電気的相互作用を最適化することのどちらのためにも実施する。
【0091】
上記設計手順の結果、BAT−1のヒト化抗体変異体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見い出されない、追加の又は置換された保存的アミノ酸残基を含ませることができる。元のアクセプター又はドナー抗体に含まれるアミノ酸の欠失を適用させてもよい。このような改変は抗体の性能を洗練させるために行い、抗原結合性や他の免疫グロブリン機能に実質的に影響を与えない。改変において最も関心が持たれている部位には超可変性ループが含まれるが、FRの変更も企図される。抗原の結合に関与する超可変領域残基又はFR残基は一般に比較的保存された形で置換される。本発明で適用させ得る保存的置換には以下の選択肢が含まれる:Val、Ile;Ser、Thr;Lys、Arg;Phe、Tyr;Trp、Leu;Asp、Ser;Cys、Thr;Gln、Lys;Val、Ala;Asn、Ser;Thr、Asn。
【0092】
(iii)ヒト化抗体変異体の構築
一般に、以下に詳述するように、BAT−1抗体変異体は、従来組換え細胞培養において調製されていた。ここでは組換え合成が好ましいが、化学合成によってペプチドを調製すること、又はペプチドを天然源から精製することが知られている。
【0093】
本明細書中に記載のように本発明を実施するのに適した分子生物学的技術及びCDR移植プロトコルは当業者に知られている。適切な教示は、とりわけ、付録を含めてその全体を参照として本明細書中に組み込むSambrook他(分子クローニング:実験の手引き、第2版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989);Ausubel他(分子生物学のプロトコル(Protocols In Molecular Biology)、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1987、1988、1989);米国特許第5,225,539号及び第5,585,089号を含めた数々の手引き及び主要な出版物に記載されている。
【0094】
BAT−1軽鎖及び重鎖CDRのアミノ酸配列を本明細書中で定義し、図5及び6に例示する:図5及び6:CDRL1(図5配列番号9及び図5配列L1):SARSS VSYMH;CDRL2(配列番号10及び図5の配列L2):RTSNL AS;CDRL3(配列番号11及び図5の配列L3):QQRSS FPLT;CDRH1(配列番号12及び図6の配列H1):NYGMN;CDRH2(配列番号13及び図6の配列H2):WINTD SGEST YAEEF KG;CDRH3(配列番号14及び図6の配列H3):VGYDA LDY。
【0095】
これらのアミノ酸配列を使用して、本発明中で使用するためにこれらのCDRをコードしているオリゴヌクレオチドを合成することができる。また、オリゴヌクレオチドは、例えばクローニングを容易にするために又は制限部位を導入するために、BAT−1のCDRのヌクレオチドに加えて別のヌクレオチドを含んでいてもよい。本発明のこの態様に適したオリゴヌクレオチド合成技術は当業者に周知であり、いくつかの市販されている自動合成機のうち任意のものを使用して実施し得る。さらに、本明細書中に示すCDRをコードしているDNAは、商業的なDNA合成業者のサービスを通じて得ることもできる。したがって、BAT−1のCDRを天然源から再クローニングする必要はない。
【0096】
mBAT−1のCDRをヒト抗体中に移植してヒト化BAT−1変異体を生じさせる。この文脈におけるヒト抗体とは、ヒトに存在する任意の抗体、又はヒト免疫系と適合するようにある程度遺伝子操作した抗体をいうことを理解されたい。この目的に特に好ましいのは、広くいうと、患者において有害な免疫応答を引き起こさない抗体である。
【0097】
CDRを移植したヒト化BAT−1抗体を構築するために、上記参考文献に記載されているものなどの周知の組換え技法を用いて、BAT−1のCDRをコードしているオリゴヌクレオチドを、抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている他のDNA並びにその断片中に組み込むことができる。具体的には、本発明に従ってBAT−1のCDRを実用的なFRの任意の組合せに導入することができる。様々なヒト抗体遺伝子が公的にアクセス可能な寄託物の形で利用可能であり、これらの配列から上記の記載とほぼ同様に適切な抗体遺伝子を合成することができる。この観点からポリヌクレオチドのクローニング及び遺伝子操作に採用される好ましい技術は、ここに述べる方法及び実施例によって例示される。
【0098】
mBAT−1及び再構成BAT−1の軽鎖(図5)及び重鎖(図6)FR並びに改変FRのアミノ酸配列を本明細書中で同定する:
【化1】

【0099】
BAT−1のCDR及び/又はヒト抗体由来の特定のFR残基をコードしているオリゴヌクレオチドを使用して、ヒト化BAT−1変異体のVκ又はVをコードしているDNAにコドンを導入し得る。本発明のこの態様に従って、追加のコドンにはBAT−1のCDR由来でないものとCDRを構成するものとが含まれ得る。これら追加の塩基は、CDRと外来源由来のFRとの連結を促進するために含め得る。これらは、この目的のために制限部位又は重複している相補領域を含んでいてもよい。鋳型DNAは通常一本鎖DNA(ssDNA)ベクターである。
【0100】
クローニング又は合成したDNA又はRNA中の塩基の欠失、挿入及び変更のために、特に周知の組換えDNA技法を用いてヒト化抗体中に取り込ませた後にBAT−1重鎖及び軽鎖のCDRも改変し得る。この目的に適した部位特異的突然変異誘発技術は当業者に周知であり、組換えDNA技術の前述の参考文献中に例示されている。このような方法を使用して、事実上任意の所望する変更を、BAT−1のCDRをコードしているポリヌクレオチド内又は閉じた重鎖若しくは軽鎖遺伝子の他の領域内に導入することができる。
【0101】
より短い、重複している一本鎖DNAからの、より長い二本鎖DNAの合成は当業者に周知である。同様に、平滑末端DNA及び少なくとも部分的に重複している相補末端を有するDNAを含めたDNAの末端間連結も周知である。このような技術は、例えば組換えDNA技術に関する前述の参考文献中に例示されている。
【0102】
ヒトBAT−1可変領域の全ての変型の構築は、Stemmer(Stemmer他、GENE、164:49、1995)に記載のように実施することが好ましい。本質的には、この方法は多数のオリゴデオキシリボヌクレオチド(オリゴ)由来の長いDNA配列を合成する場合に好まれる。この方法は慣用のPCR技術を用いたDNAポリメラーゼに依存しており、これによりアセンブリ形成過程中にますます長いDNA断片が構築される。新しい可変領域遺伝子を合成した後は、これを優先的にベクター内にサブクローニングし、上記参考文献中に記載のようにこれをコンピテント細胞に形質転換させる。推定陽性クローンは、適切なプライマーを用いた且つ/又は制限消化によるPCRスクリーニングによって同定することができる。確認された陽性クローンから選択した個々のクローンを二本鎖DNA(ds−DNA)内にシーケンシングしてもよい。好ましくは、PCRにより生じたエラーについて生じたds−DNAを配列決定によって再確認し、他のクローンから正しい断片をサブクローニングすることによって修正することができる。
【0103】
BAT−1変異体のヒト化Vκ又はVを含む、確認された陽性クローンからの選択したクローンのDNAを、それぞれヒト軽鎖及び重鎖定常領域を含む発現ベクター内に直接挿入し得る。ヒト化BAT−1のCDRを移植した完全な抗体の変異体、又はヒト化BAT−1のCDRを移植した抗体の軽鎖若しくは重鎖領域をコードしているDNAをアセンブリ形成させた後、慣用の技法による増殖及び発現のためにこれをベクター内に挿入することができる。このようにして、所望の量の抗体を得ることができる。
【0104】
(iv)ヒト化BAT−1抗体変異体の発現
本発明はまた、完全なヒト化BAT−1抗体、軽鎖完全領域又は可変領域、重鎖完全領域又は可変領域配列をコードしている単離したポリヌクレオチド配列、並びにコード核酸を含むベクターや宿主細胞も提供する。
【0105】
BAT−1抗体の組換え産生には、前記抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド配列を単離し、さらなるクローニング、増幅又は発現のために複製可能なベクター内に挿入する。抗体をコードしているDNAは容易に単離され、慣用の手順(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合する能力を有するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによる)を用いて配列決定を行う。多くのベクターが利用可能であり、これには一般的に、それだけには限定されないが、シグナル配列、複製起点、1つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写終結配列のうち1つ又は複数が含まれる。
【0106】
発現のために、ヒト化BAT−1抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチドを発現ベクター内にクローニングしてもよい。このようなベクターは当業者に周知である。免疫グロブリンやウイルスプロモーターなどの発現制御配列をポリヌクレオチドの上流に導入する。dhfr遺伝子などの選択マーカー、又は当業者に周知の他の適切な選択マーカーを、ベクター内に含まれる前記ポリヌクレオチドを発現している宿主細胞の選択を可能にするためにベクターに含める。
【0107】
一実施形態では宿主細胞は内生的に抗体を産生し、代替実施形態では細胞は抗体を産生するように遺伝子改変されている。内生的に抗体を産生する細胞の例には、それだけには限定されないが、ハイブリドーマ、リンパ腫、プラズマ細胞腫及びEBV形質転換細胞が含まれる。細胞は、抗体分子をコードしているベクターを用いたトランスフェクションなどの慣用の方法によって、抗体を産生するように遺伝子改変することができる。
【0108】
使用の際には、ヒト化BAT−1抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチドを含む発現ベクターを細胞内にトランスフェクションさせる。トランスフェクション方法は当分野で周知であり、このような方法は本発明での使用に適している。発現ベクター又は同時トランスフェクションに使用したベクターに組み込んだ選択マーカーを用いて発現ベクターを発現している細胞を選択する。抗体を発現している細胞は酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)アッセイ又は当業者に周知の他の適切な方法によってスクリーニングすることができる。
【0109】
ヒト化BAT−1抗体変異体は、完全な抗体又は抗体のFv断片をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターのトランスフェクションによって、宿主細胞内に導入される。ヒト化BAT−1抗体変異体も、(i)抗体の可変領域又は完全軽鎖領域をコードしているポリヌクレオチドを含むベクター、及び(ii)抗体の可変領域又は完全重鎖領域をコードしているポリヌクレオチドを含むベクターの同時トランスフェクションによって宿主細胞内に導入される。
【0110】
最も好ましい実施形態では、本発明の抗体は、抗体の軽鎖及び重鎖可変領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含む単一のベクターのトランスフェクションによって産生させる。最も好ましくは、このベクターは、それぞれが再構成BAT−1の軽鎖及び重鎖領域をコードしているポリヌクレオチド配列に発現可能に連結されている2つのプロモーターをさらに含む。トランスフェクション及び同時トランスフェクションを同様の宿主細胞内で実施した場合、上記の結果生じるBAT−1抗体の発現は、それぞれが抗体軽鎖又は重鎖領域をコードしている2つのベクターを用いた同時トランスフェクション後の発現よりも高い。
【0111】
ヒト化BAT−1抗体変異体は、それだけには限定されないが、哺乳動物、トリ、昆虫、細菌又は酵母の細胞を含めた任意の適切な細胞型で発現させることができる。哺乳動物細胞の例には、それだけには限定されないが、ヒト、ウサギ、げっ歯類(例えばマウス、ラット)及びウシの細胞が含まれる。好ましい実施形態では、細胞は骨髄腫細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、COS7細胞又は線維芽細胞である。
【0112】
抗体を産生する細胞系は、当業者に周知の技術を用いて培養し得る。このような技術は様々な実験の手引き及び出版物に記載されている。例えば、本発明で使用するのに適した技術は、付録を含めてその全体で参照として本明細書中に組み込まれる免疫学における最新プロトコル(current protocols in immunology)、Coligan他、(Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1991)に記載されている。
【0113】
本発明のヒト化モノクローナル抗体は凍結又は凍結乾燥して保管し、使用前に適切な担体中で再構成することができる。この技術は従来の免疫グロブリンで有効であることが示されており、当分野で知られている凍結乾燥及び再構成技術を採用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な度合の抗体活性の損失をもたらす可能性があり、それを補うために使用レベルを調節せざるを得ないかもしれないことは、当業者には理解されよう。
【0114】
(v)ヒト化BAT−1抗体の精製
組換え技術を使用して、抗体を細胞内又はペリプラズム空間で産生させるか、培地中に直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合は、第1ステップとして宿主細胞又は溶解断片のいずれかの粒子状の細胞片を、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去する。Carter他、(Biotechnology、10:163、1992)は、大腸菌(E.coli)のペリプラズム空間に分泌される抗体を単離する手順を記載している。手短に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分間かけて解凍する。細胞片は遠心分離によって除去することができる。
【0115】
最も好ましい実施形態では、本発明の抗体は培地中に分泌され、このような発現系からの上清は一般に、まず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMilliporeの限外濾過ユニットを用いて濃縮する。タンパク質分解を阻害するために前述のステップのうち任意のものにプロテアーゼ阻害剤を含めてもよく、外来混入物の増殖を阻止するために抗生物質を含めてもよい。
【0116】
細胞から調製した抗体組成物は、当分野で周知の方法、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、特にタンパク質Aではアフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技法である。親和性リガンドが結合しているマトリックスはほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。多孔質ガラス(controlled pore glass)やポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの力学的に安定なマトリックスにより、アガロースで実現され得るよりも速い流速及び短い処理時間が可能になる。抗体がCドメインを含む場合は、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。イオン交換カラム、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース(商標)によるクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)によるクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−page、及び硫酸アンモニウム沈殿による分画などタンパク質精製の他の技法も、回収する抗体に応じて利用可能である。
【0117】
(vi)細胞系の寄託
本発明の代表的な実施形態によれば、ヒト化BATモノクローナル抗体は、その機能又は活性が、2003年5月9日にATCC#(PTA−5189)の下に寄託された細胞によって産生される抗体と同じである。
【0118】
III.薬理学
(i)薬剤組成物
本発明はまた、本発明の抗体を含む組成物も提供する。
【0119】
別の実施形態によれば、本発明は、診断及び治療で使用するための、活性成分として本発明の抗体を含む薬剤組成物を提供する。前記組成物は、それだけには限定されないが、溶液、懸濁液、使用前に適切なベヒクル又は希釈剤で再構成する凍結乾燥散剤、カプセル及び錠剤を含めた、患者への投与に適した任意の薬剤形態であり得る。本発明で開示する薬剤組成物は、とりわけ診断、予後及び治療用の治療剤と共に抗体を含む生理的に許容される結合を提供するために、任意の製薬上許容される希釈剤又は担体をさらに含み得る。
【0120】
本発明の薬剤組成物は、当分野で周知の方法、例えば慣用の混合、溶解、顆粒化、粉砕、微粉砕、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル封入、混入(eutrapping)又は凍結乾燥法によって製造し得る。
【0121】
したがって、本発明により使用する薬剤組成物は、活性化合物の薬剤として使用できる調製物への加工を容易にする、賦形剤及び補助剤を含む1つ又は複数の生理的に許容される担体を使用して慣用の方法で配合し得る。適切な配合は選択する投与経路に依存する。
【0122】
注射には、本発明の化合物を水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理食塩緩衝液などの生理的に適合性のある緩衝液中で配合し得る。経粘膜投与には、浸透させる隔膜に適切な浸透剤を配合物中に使用する。このような浸透剤、例えばポリエチレングリコールは当分野で一般に知られている。経口使用できる薬剤組成物には押し込み型のカプセルが含まれる。
【0123】
吸入による投与には、本発明に従って使用する分子は、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を用いた加圧パック又は噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するために弁を設けることによって単位用量を決定し得る。例えば吸入器又は吹込器で使用するゼラチンのカプセル及び薬包は、ポリペプチドとラクトースやデンプンなど適切な散剤基質との散剤混合物を含むように配合し得る。
【0124】
非経口投与用の薬剤組成物には、水溶性形態にある活性成分の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液を適切な油状の注射用懸濁液として調製し得る。適切な天然又は合成の担体は当分野で周知である。任意選択で、懸濁液は、化合物の可溶性を高めてより濃縮された溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤も含んでいてよい。或いは、活性成分は、使用前に適切なベヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水で再構成する散剤形態にあってよい。
【0125】
本発明の状況下での使用に適した薬剤組成物には、活性成分が意図する目的を実現するのに有効な量で含まれている組成物が含まれる。投与する配合物は全て、選択した投与経路に適した用量にあるべきである。より具体的には、「治療上有効な」用量とは、処置する対象の疾病の症状を予防、緩和又は寛解するのに有効な化合物の量を意味する。治療上有効な量の決定は、特に本明細書中に提供した詳細な開示を鑑みると十分に当業者の能力範囲内にある。
【0126】
本明細書中に記載の組成物の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準の製薬手順によって、例えば目的化合物のIC50(50%阻害をもたらす濃度)及び最大耐量を決定することによって決定することができる。これらの細胞培養物のアッセイ及び動物の研究から得られたデータは、ヒトで用いる用量範囲の処方に使用することができる。用量は用いる剤形及び利用する投与経路に応じて変化し得る。正確な配合、投与経路及び用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択し得る。処置する状態の重篤度及び応答性に応じて、処置経路の期間を数日間から数週間、又は治癒するまで若しくは疾病状態が軽減するまでとして、投薬は徐放性組成物の単一投与であることもできる。投与する組成物の量は、もちろん、処置する対象、病気の重篤度、投与様式、処方する医師の判断、及び関連する他の要素全てに依存する。
【0127】
(ii)処置方法
本発明による抗体は様々な治療的効能で有用であるが、本発明の現在好ましい実施形態に従って癌の処置に用いる。本発明によるモノクローナル抗体は、様々な腫瘍中で抗腫瘍効果を誘発させることが判明している。本発明の範囲内で、対象に本発明の抗体を有効量で投与することによって腫瘍を処置する、新規hBAT−1を使用する方法が提供されている。用語「有効量」とは、治療効果を実現するために必要な抗体の量を意味すると理解されるべきである。治療の最終結果を実現するために必要な有効量は、例えば腫瘍型及び患者の状態の重篤度(即ち癌の状態)、並びに抗体と付加的又は相乗的な様式で作用する別の薬剤を抗体と一緒に同時投与するかどうかを含めた、いくつかの要素に依存し得る。抗体は、対象において原発腫瘍又は二次腫瘍を検出した後に、又は放射線に曝された個体若しくは遺伝的素因をもつ個体などの癌を発生する危険性が高い対象における予防治療として投与し得る。
【0128】
本発明はさらに、ヒト化BAT−1抗体変異体又は前記抗体を活性成分として含む組成物を用いた、それを必要としている対象を処置する方法を提供する。
【0129】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、本発明の抗体を活性成分として含む薬剤組成物を有効量で、それを必要としている対象に投与することを含む、疾病又は疾患、特に癌を診断又は処置する方法を提供する。
【0130】
処置方法は、本発明の抗体又は組成物を対象に投与することを含む。処置方法はまた、本発明の抗体又は組成物を、IL−1(インターロイケン−1)、IL−2、IL−6及びIFN−α(インターフェロン−α)などのサイトカイン又は任意のT細胞刺激抗体や他の抗腫瘍治療用抗体などの他の抗体を含む、追加の活性組成物を用いた処置と平行して、その処置前に、又はその処置後に投与することも含む。一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、予防、処置又は検出する疾病は癌である。
【0131】
前記組成物の投与は通常、非経口投与、例えば静脈内(i.v.)、腹腔内(i.p.)又は筋肉内(i.m.)で行うことができる。処置方法は本発明による抗体の薬剤組成物を含み得る。その替わりに又はそれに加えて、処置方法は、細胞が自己由来又は同種異系であるex vivo又はin vivoの細胞療法を含み得る。
【0132】
抗体の抗腫瘍活性をブーストするために、場合によっては、抗体と付加的又は相乗的に作用できる他の薬剤の投与と同時に、その投与前に、又はその投与後に本発明の抗体を投与することが有利である。例には、それだけには限定されないがIL−1(インターロイキン−1)、IL−2、IL−6及びIFN−α(インターフェロン−α)を含めた様々なサイトカイン、並びにそれだけには限定されないがT細胞刺激抗体又は抗腫瘍治療用抗体を含めた細胞ワクチンや追加の抗体が含まれる。
【0133】
本発明の抗体は、免疫系の増殖活性、細胞溶解活性又は刺激活性に対する抗体の活性化又は他の効果が、例えばHIV感染の初期段階や血算によりCD4+T細胞(AIDS、後天性免疫不全症候群の原因ウイルス)の減少が示される患者、様々な自己免疫疾患、又は遺伝的若しくは後天性免疫不全の一部の症例などにおいて治療効果を得る、癌以外の様々な疾病の治療に有用であり得る。AIDS患者では、抗体を感染しているがまだ疾病の症状を全く発生していない個体、又はHIV感染過程の初期段階にある感染した個体に投与し得る。
【0134】
対象に投与する抗体又は組成物の用量は、本発明の状況下では、対象において有益な治療応答を経時的に実現する又は腫瘍の増殖を阻害するのに十分であるべきである。したがって、疾病を緩和、軽減、治癒又は少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で抗体又は組成物を対象に投与し得る。
【0135】
用量は、生じた治療組成物の活性及び対象の状態、並びに処置する対象の体重及び表面積によって決定される。用量の量及び投薬レジメントはまた、特定の対象に特定の治療組成物を投与することに付随して有害な副作用が存在するかどうか、並びにその性質及び程度によっても決定される。投与する治療組成物の有効量を決定する際に、医師は循環血漿レベル、毒性、及び疾病の進行を評価しなければならない。
【0136】
以上本発明を全体的に説明したので、例示として提供し、本発明を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによって本発明はより容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0137】
マウスBAT−1のκ軽鎖可変領域(Vκ)の配列解析
BAT−1のVκ領域のDNA配列及びアミノ酸配列を図1に示す。アミノ酸配列を他のマウス可変領域と比較し、可変領域がカバットデータベース(Kabat他、同上)に細分化されたサブグループのコンセンサス配列とも比較した。この解析から、BAT−1のVκ領域がマウスκサブグループIV(同一性=88.38%;類似度=92.45)及びマウスκサブグループVI(同一性=87.74%;類似度=89.62)の2つのコンセンサス配列と最も近くマッチしていたことが判明した。BAT−1のκ軽鎖可変領域のFRのみ(即ちCDRのアミノ酸なし)をマウスサブグループIV及びVIと比較した場合は、同一性の割合はどちらについても正確に90.00%まで増加し、類似度の割合も、どちらのコンセンサス配列についても92.50%まで上昇した。しかし、どちらのカバットサブグループに対しても類似性が高かったが、ネズミBAT−1のVκ領域はマウスサブグループVIとして分類されるべきと判断した。
【0138】
マウスサブグループVIを選択した理由は、コーチアと共同研究者が定義した(Chothia他、J.Mol.Biol.、196:901、1987;Nature、34:877、1989;J.Mol.Biol.、227:799、1992;Tramontano他、同上)BAT−1のVκ領域の超可変性ループの標準クラスに関連していた。コーチアによれば、CDRのそれぞれ、即ちCDR1(L1)、CDR2(L2)及びCDR3(L3)は標準クラス1であった(図2)。重大なことに、10個のアミノ酸の標準クラス1のL1超可変性ループは、カバットサブグループVIに当てはまるマウスVκ領域でのみ見つかった。
【0139】
CDR関連のループ構造の最も限定的な標準クラスが最近になってマーチン及びソーントンによって定義され(Martin他、同上)、これらも図2に記載されている。これらの新しい標準クラスの定義の有用性はその厳密性にあり、これは各クラス内により多くのいわゆるフレームワーク標準残基が存在することに関連している。これらの「余分」な、潜在的に重要な残基の重要性は、その後にヒト化BAT−1抗体を設計する際に考慮された。ループL1及びL2はそれぞれマーチン標準クラス1/10A及び1/7Aに容易に割り当てられたが、L3ループは割当可能などのクラスとも完全にマッチしなかった。最も近くマッチしたクラスはクラス1/9Aであったが、このクラスに当てはめるにはBAT−1のVκ領域の位置28に残基が存在していなければならず、これが実際には存在していなかった。BAT−1のVκに最も近いマウスκ軽鎖可変領域生殖系遺伝子はH4であり、これも10個のアミノ酸のL1ループ(表1)も含んでいた。H4生殖系列配列とBAT−1のVκ領域との間には12個のミスマッチしか見つからなかった。これらのミスマッチのほとんどはCDR内に位置し、FR内には4つの差異しか位置していなかった。FR3内の位置72(カバット番号)のシステイン以外は、これらのミスマッチのほとんどは高度に保存的変化であった。これが重要な標準残基(位置71)のすぐ隣に位置していることから、このシステインが抗原の結合に重要な役割を果たしているかもしれないことが示唆された。それでもやはり、総合すると、上記例はBAT−1配列がマウスVκ可変領域の典型であることを明らかに示唆している。
【0140】
【表1】

【0141】
BAT配列と同一である残基数
点[.]はBATのVκとマウス生殖系列のVκとのマッチを示し、線[−]はアミノ酸が存在しないことを示す
【実施例2】
【0142】
マウスBAT−1重鎖可変領域の配列解析
BAT−1のV領域のDNA配列及びアミノ酸配列を図3に示す。実施例1に示したものと類似の解析をBAT−1のV領域で実施し、これにより、これがカバットデータベース(Kabat他、同上)のマウス重鎖の種々のサブグループのコンセンサス配列に最も近いマッチを示したことが決定された。mBAT−1のマウス重鎖可変領域アミノ酸配列と種々のサブグループコンセンサス配列との同一性の測定値は60.64%であり、類似度の計算値は69.23%であり、また次に近いカバットサブグループのコンセンサス配列はサブグループIIaであった(同一性=59.83%;類似度=66.67%)。しかし、BAT−1のV領域のFRのみをマウスサブグループIIaと比較した場合、同一性の割合は54.02%まで減少し、類似度は62.06%まで低下した。逆に、マウスの種々のサブグループに対して行った同一性の比較では、BAT−1のV領域のFRが65.52%の同一性及び74.71%の類似度を示したことが判明した。
【0143】
コーチアと共同研究者が定義したBAT−1のV領域の超可変性ループの標準クラスを解析すると(図4)、CDR1及びCDR2ループ(H1)がコーチア標準クラス1ループとマッチした。しかし、H3ループが示すことができる広範囲のサイズ及びアミノ酸構成により、CDR3ループ構造(H3)にはどのクラスも割り当てられなかった。
【0144】
マーチン及びソーントン(Martin他、同上)が定義したCDRループ構造のより厳密な標準クラスを使用して、H1ループがマーチン標準クラス1/10Aにマッチしたことを決定するのは単純なことであった。しかし、H2ループでは最も近いマーチン標準クラスはクラス2/10Aであったが、クラスを割り当てるのがより困難であった。残念なことに、H2ループ内のアミノ酸Asp53がこの位置で予測された残基(即ちAla、Gly、Tyr、Ser、Lys、Thr又はAsn)とマッチしなかったので、このマッチも完全ではなかった。
【0145】
同定されたmBAT−1のVに最も近いマウス重鎖可変領域生殖系列遺伝子はVMS2/VGK4であった(表2)。したがって上記例は、mBAT−1配列がマウスV可変領域の典型であることを明白に示唆している。
【0146】
【表2−1】


【表2−2】

【0147】
BAT配列と同一である残基数
点[.]はBATのVとマウス生殖系列のVとのマッチを示し、線[−]はアミノ酸が存在しないことを示す
【実施例3】
【0148】
ヒト化BAT−1のVκ抗体変異体の設計
BAT−1抗体のヒト化可変領域の設計における第1のステップは、ヒト化BAT−1のVκ領域の基礎として役割を果たすヒトκ軽鎖可変領域の選択であった。このプロセスの補助として、BAT−1のVκ領域をまずカバットと共同研究者が定義した(Kabat他、同上)4つのヒトκ軽鎖可変領域サブグループのコンセンサス配列と比較した。
【0149】
マウスBAT−1軽鎖可変領域はヒトκ軽鎖サブグループI及びヒトκ軽鎖サブグループIIIのコンセンサス配列に最も類似していた。ヒトκ軽鎖サブグループIの場合、マウスBAT−1のVκ領域は可変領域全体で63.21%、FR内のみで70.00%の同一性を示した。類似度に関して測定すると、これらの値は全体で71.70%、FR内のみで80.00%まで上昇した。ヒトκ軽鎖サブグループIIIの場合、マウスBAT−1のVκ領域は可変領域全体で65.09%の同一性、FR内のみで68.75%の同一性を示した。類似度に関して測定すると、これらの値は全体で74.53%、FR内のみで80.00%まで上昇した。したがって、これは一般に広範囲のヒトκ軽鎖可変領域配列と良好にマッチすると考えられるが、とりわけFRに関しては、ヒトκ軽鎖サブグループI内で見つかったものに対して同一性が僅かに高かった。
【0150】
その後、マウスBAT−1のVκ領域を公的に公開されているヒト可変領域の個別の配列の全ての記録例と比較した。表3は、この解析によって同定したマウスBAT−1のVκ領域に対する15個の最も良好なマッチを示す。全体としては、検索アルゴリズムにより抗体TEL9由来のヒトVκ領域(Marks他、J.Mol.Biol.、222:581、1991)がマウスBAT−1のVκ領域に最も近いマッチとして選択された(表4)。このヒト配列はBAT−1のVκ領域に対して全体で67.93%、FR内のみで72.50%の全体的な同一性であった。類似度に関して測定すると、これらの値は全体で77.36%、FR内のみで82.50%まで上昇した。したがって、TEL9κ軽鎖可変領域のFRをBAT−1抗体κ軽鎖可変領域のヒト化のヒトアクセプター配列として選択した。その後、これをBAT−1のκ軽鎖の第1のヒト化変型(BATRκ)の基礎とし、これは本質的にBAT−1のVκ領域のCDR及びTEL9のVκ領域のFRを含んでいた。
【0151】
設計プロセスの次のステップは、これらのアミノ酸残基のうちいずれかが抗原との相互作用によって直接、又はCDRループのコンホメーション若しくは配向を変更することによって間接的に抗原への結合に悪影響を与える可能性があるかどうかを決定するために、ヒトアクセプターTEL9のVκ領域のFRのアミノ酸配列を研究することであった。これは、BAT−1可変領域、即ちVκ及びV領域のいずれのモデルも利用可能であったことで初めて可能になった、困難なプロセスであった。モデリングの手順は実施例5で詳細に示す。それでもやはり、抗原の結合性に影響を与えると考えられるマウスBAT−1のFR内のアミノ酸は全て、その後ヒト化BAT−1抗体中で保存することを検討した。どのネズミ残基を保存するかの決定には、以下の点を検討した:
【0152】
【表3−1】


【表3−2】

【0153】
ID−ヒトVκ配列のネズミBATのVκ領域に対する同一性の割合
点[.]はBATのVκとマウス生殖系のVκとのマッチを示し、線[−]はアミノ酸が存在しないことを示し、ヒトVκ配列内の下線を引いた残基はその最も近いヒトVκ遺伝子と異なる
S/CはFvの表面又はコア上のCDRから5Å以内に位置するアミノ酸を示し、s/cはFvの表面又はコア上のCDRから5Åよりも離れて位置するアミノ酸を示す
vはFR内に位置するバーニア残基(Footer他、J.Mol.Biol.、224:487、1992)を示す
【0154】
【表4】

【0155】
ID−ヒトVκ配列のネズミBATのVκ領域に対する同一性の割合全て−ネズミBATのVκ領域全体と比較した場合の、ヒトVκ領域全体中の同一残基数
表面(FR表面)−表面上の同一(FR)残基数
コア(FRコア)−Fvドメインの(FR)コア内の同一残基数
CDR/FR−CDR又はFR内の同一残基数;
CDR近くのFR−CDRの5Å以内のFRアミノ酸の間の同一残基数を表す;
バーニア−14個のバーニアアミノ酸(Foote他、同上)間の同一残基数;
Vκ(J鎖)−Vκ(J鎖)遺伝子内の同一残基数
L1〜L3サイズ−各CDR内の残基数
10L1〜L3クラス−マーチン&ソーントン(Martin他、同上)によるCDRの標準クラス
【0156】
a.超可変性ループの標準構造(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、同上)が保存されていたことは非常に重要であった。したがって、ヒト化BAT−1可変領域内でこれらの標準構造の一部であったマウスFR残基を全て保存することが重要であった。
【0157】
b.抗原の結合において重要な役割を示していたかもしれない例外的な又は稀少な残基を同定するために、mBAT−1抗体可変領域の配列を他のマウス抗体由来の類似した配列と比較した。その後、BAT−1可変領域遺伝子のモデルを用いてこれを調査した。
【0158】
c.ヒト化FR内に存在しない他のマウスFR残基のいずれかが何らかの方法で抗原の結合に影響を与える可能性があるかどうかを予測してみるために、モデルの直接解析も行った。
【0159】
d.κ軽鎖及び重鎖可変領域の個々のヒトアクセプター配列とアクセプター配列が属するヒト可変領域サブグループのコンセンサス配列との比較も行った。ヒトドナー配列内のどの特異体質性アミノ酸の同定も、これらが抗原の結合に悪影響を与えた可能性があるので、重要であった。
【0160】
e.選択したヒト軽鎖及び重鎖可変領域は2つの異なるヒト抗体に由来するので(ヒトVアクセプター配列の選択には実施例4を参照されたい)、ドナー及びアクセプターのκ軽鎖可変領域のどちらのドメイン間パッキング残基でも丁寧な解析を行うべきである。これは、ヒト化BAT−1抗体のCDRループ構造のコンホメーションにかかわらず、この領域内のミスパッキングは全て抗原の結合に劇的な影響を与えた可能性があったからである。
【0161】
f.この設計プロセスに従うことにより、ネズミBAT−1のVκのFR内のいつかのアミノ酸を、ヒト化BAT−1抗体の第2の変型(BATRκ)中で保存するために同定した(表5)。表5は、BAT−1抗体κ軽鎖可変領域の第1(BATRκ)及び第2(BATRκ)の再構成ヒト変型の設計をもたらすアミノ酸配列のアラインメントを提供する。ドナーマウスBAT−1のVκ領域とアクセプターヒトTEL9のVκ領域とのFRで21個のアミノ酸の差異が存在していた。しかし、ヒトFR内に存在するアミノ酸を元のマウスFR内に存在するアミノ酸に変換する必要があると考えられたヒト化FR内には、5個の残基しか存在していなかった。
【0162】
コーチアと共同研究者(Chothia他、J.Mol.Biol.、186:651、1985)が定義したVκ/Vの境界面に位置するVκ領域のアミノ酸を、例外的な又は稀少な残基について確認した。この解析から、少しでも懸念を引き起こした残基位置はFR2の位置36(Phe36)のPheのみであった。(TEL9で見つかったように)通常はこの位置にTyrが見つかるが、mBAT−1ではPheが存在していた。さらに、位置36はバーニアアミノ酸(Foote他、同上)の認識された位置である。バーニア残基はCDRループのコンホメーションを維持するために重要であると考えられていた。さらに、Pheは一般にカバットマウスサブグループVIでは見られないが(21153)、TyrはマウスサブグループVI(131153)及びヒトサブグループI(6674)のいずれでも非常によく見られた(Kabat他、同上)。したがって、Tyr36Pheの変化は、2つの外来ヒトアクセプター可変領域間のBAT−1で見つかるドメイン間パッキングを模倣するためにも、CDRループのコンホメーションを維持するためにも適切であると考えられた。
【0163】
【表5−1】


【表5−2】


【表5−3】


【表5−4】


【表5−5】

【0164】
FR2内の位置47で第2の変更も決定した。ヒトTEL9のκ軽鎖可変領域に見つかる高度に保存されているLeuを、マウスBAT−1のκ軽鎖可変領域で見つかったようにTrpに変更した。別の認められたバーニア残基位置は位置47であり、これも分子モデルに従ってV境界面の近くに配置した。具体的には、これはH2内のAla55に近く、これと相互作用していたかもしれない。したがって、ヒトV配列内のこのコア残基位置でTrpが見られたことはなかったが、Leu47Trpの改変を行うことでこれをBATRκ内で保存することが賢明であると考えられた。
【0165】
BATRκに導入した第3のFRの変更は位置71にあり、これは、バーニア残基位置(Foote他、同上)として同定されているだけでなく、L1ループ構造の重要な標準残基位置の1つとしても認識されていた。これらの標準残基は、コーチアと共同研究者(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、同上)に、CDRループ構造の保存に不可欠であると定義されている。標準アミノ酸の多くがCDR内に位置するが、いくつか(71Tyrなど)はFR内にも位置していた。アミノ酸の変更は保存的であったが、Phe71Tyrの変更はBAT−1のκ軽鎖のヒト化の成功に重要であるとみなされた。
【0166】
ヒト化Vκ領域の他の変型は以下の通りである:
BATRκ:Cys及びSerは大きさ及び特徴が類似しており、モデルから、FR3内の位置72にあるいずれのアミノ酸も適度に埋まっており、L1ループとは反対方向を指していると考えられた。しかし、Cysアミノ酸の場合、モデルによれば硫黄側鎖が曝露しており、一方、カバットデータベース(Kabat他、同上)によればこの位置にCysが存在することは独特の事象であり、一般的にはこの位置でSerが見られる(4211234)。したがって、BATRκは(BATRκのように)Tyr36Phe、Leu47Trp及びPhe71Tyrでの変更、並びにアクセプターTEL9抗体のVκFR残基のSer72Cysの改変を含んでいた。
BATRκ:ネズミBAT−1Fvモデルからの証拠により、表面に曝された70SerがL1ループと相互作用し得る残基であることが示唆される。ヒトTEL9κ軽鎖では、この位置のアミノ酸はAspであり、これはSerよりも大きく、正に帯電している。ヒトVκ領域内ではこの位置でSerが見られることはない(Aspが圧倒的に最も一般的なアミノ酸である)。70SerがL1ループに近いこと及び表面に曝された性質であることは、これがL1と相互作用しているかもしれない、又は抗原と直接相互作用さえしているかもしれないことを仮定的に示唆している。したがって、BATRκでAsp70Serの変更を行うことを決定し、これはこの変更以外はBATRκと同じである。
【0167】
上で提案した全てのヒト化BAT−1抗体のVκ領域変異体のアミノ酸配列の説明を図5に示す。
【0168】
潜在的なN結合グリコシル化部位、即ちAsn−Xaa−(Ser/Thr)−Xaa(Gavel他、Protein Eng.、3:43、1990)を、ドナーマウス及びアクセプターヒトVκ領域、並びにヒト化構築体自体について検索したが、いずれも同定されなかった。
【実施例4】
【0169】
ヒト化BAT−1のV抗体変異体の設計
ここでも、マウスBAT−1抗体のヒト化V領域の設計の第1のステップは、ヒト化BAT−1のV領域の基礎として役割を果たすアクセプターヒト重鎖可変領域の選択であった。最初にmBAT−1のV領域を3つのヒト重鎖可変領域サブグループのコンセンサス配列と比較した際、ヒト重鎖サブグループIのコンセンサス配列と最も類似していることが判明し、全体で61.54%の同一性、FR間のみで67.82%の同一性であった。類似度に関して測定すると、これらの値も全体で70.09%、FR内のみで77.01%まで上昇した。
【0170】
【表6−1】


【表6−2】

【0171】
その後、マウスBAT−1のV領域を公的に公開されているヒト可変領域の個別の配列の全ての記録例と比較した。表6及び7は、この解析によって同定したマウスBAT−1のV領域に対する15個の最も良好なマッチを示す。全体としては、検索アルゴリズムにより抗体hsighv1295由来のヒトV領域(Fang他、J.Exp.Med.、179:1445、1994)がマウスBAT−1のV領域に最も近いマッチとして選択された。このヒトV領域はBAT−1のV領域に対して全体で69.23%の同一性であり(表7)、この値はFR内のみで比較した場合に74.71%まで上昇した。類似度に関して測定すると、これらの値は全体で75.21%、FR内のみで79.31%まで上昇した。したがって、このヒトFRをBAT−1重鎖のヒト化変型の基礎とした。
【0172】
【表7】

【0173】
ID−ヒトV配列のネズミBATのV領域に対する同一性の割合全て−ネズミBATのV領域全体と比較した場合の、ヒトV領域全体中の同一残基数
表面(FR表面)−表面上の同一(FR)残基数
コア(FRコア)−Fvドメインの(FR)コア内の同一残基数
CDR/FR−CDR又はFR内の同一残基数
CDR近くのFR−CDRの5Å以内のFRアミノ酸の間の同一残基数;
バーニア−14個のバーニアアミノ酸(Foote他、同上)間の同一残基数;
(J鎖)−V(J鎖)遺伝子内の同一残基数
L1〜L3サイズ−各CDR内の残基数
10L1〜L3クラス−マーチン&ソーントン(Martin他、同上)によるCDRの標準クラス
【0174】
設計プロセスの次のステップは、これらのアミノ酸残基のうちいずれかが抗原への結合に悪影響を与える可能性があるかどうかを決定するために、ヒトアクセプターhsighv1295のV領域のFRのアミノ酸配列を研究することであった。ここでも、OMLにより構築された分子モデル(実施例5参照)がこの設計プロセスに重要であり、これからネズミBAT−1のV領域のFR内のいくつかのアミノ酸を、第1の(BATRH)及び続くヒト化BAT−1抗体の変型の保存について同定した(表8)。ドナーマウスBAT−1のFRとアクセプターヒトhsighv1295のV領域との間には22個のアミノ酸の差異があり、9個までのネズミ残基をヒト化FR内で保存することを検討した。
【0175】
したがって、BATRHはヒトhsighv1295抗体のV領域のFRに遺伝子挿入したマウスBAT−1抗体のV領域のCDRからなっていた。これはヒト化BAT−1抗体のV領域のCDRを移植した変型であり、いかなるFRアミノ酸の変更も含んでいなかった。
【0176】
BATRHでは、マウスBAT−1配列のFR1内の位置28及び30のアミノ酸(即ちそれぞれThr及びThr)をヒト化BAT−1重鎖可変領域内で対応するヒトhsighv1295のアミノ酸(即ちそれぞれSer及びSer)に置き換えた。これを行ったのは、これらがH1超可変性ループコンホメーションに重要な標準残基の一部を表していたからである(Chothia他、1992、同上)。標準残基は超可変性ループの正しい配向及び構造に不可欠であるとみなされ、一般にヒト化可変領域内で必ず保存した。さらに、残基位置27〜30はH1ループ自体の一部であり、したがってこのループの正しいコンホメーション及び配向においてより一層重要であるとみなされ、その保存がより強力に正当化された。したがって、これら2つの残基位置はBATRH内のヒトhsighv1295配列のFRに行った変更の合計である。
【0177】
設計プロセスの次のステップは、これらのアミノ酸残基のうちいずれかが抗原への結合に悪影響を与える可能性があるかどうかを決定するために、ヒトアクセプターhsighv1295のV領域のFRのアミノ酸配列を研究することであった。ここでも、OMLにより構築された分子モデル(実施例5参照)はこの設計プロセスに重要であり、これからネズミBAT−1のV領域のFR内のいくつかのアミノ酸を、第1の(BATRH)及び続くヒト化BAT−1抗体の変型の保存について同定した(表8)。ドナーマウスBAT−1のFRとアクセプターヒトhsighv1295のV領域との間には22個のアミノ酸の差異があり、9個までのネズミ残基をヒト化FRで保存することを検討した。
【0178】
したがって、BATRHはヒトhsighv1295抗体のV領域のFRに遺伝子挿入したマウスBAT−1抗体のV領域のCDRからなっていた。これはヒト化BAT−1抗体のV領域のCDRを移植した変型であり、いかなるFRアミノ酸の変更も含んでいなかった。
【0179】
BATRHでは、マウスBAT−1配列のFR1内の位置28及び30のアミノ酸(即ちそれぞれThr及びThr)がヒト化BAT−1重鎖可変領域内で対応するヒトhsighv1295のアミノ酸(即ちそれぞれSer及びSer)に置き換えた。これを行ったのは、これらがH1超可変性ループコンホメーションに重要な標準残基の一部を表していたからである(Chothia他、1992、同上)。標準残基は超可変性ループの正しい配向及び構造に不可欠であるとみなされ、一般にヒト化可変領域内で必ず保存した。さらに、残基位置27〜30はH1ループ自体の一部であり、したがってこのループの正しいコンホメーション及び配向においてより一層重要であるとみなされ、その保存がより強力に正当化された。したがって、これら2つの残基位置はBATRH内のヒトhsighv1295配列のFRに行った変更の合計である。
【0180】
【表8−1】


【表8−2】


【表8−3】


【表8−4】


【表8−5】

【0181】
ヒト化BAT−1のV領域(BATRH)の第3の変型にはBATRHで行った全ての置換が組み込まれており、それに加えて、対応するヒト残基の替わりにヒトFR内に挿入されたさらに3つのネズミアミノ酸が含まれていた。1つめはFR3の位置76に位置するAsnアミノ酸であった。BAT−1のFv領域の分子モデルによれば、Asn残基はCDRのH1に近く、ループ構造を支持していた可能性がある。さらにマウスBAT−1のV領域では、Asnは表面に曝されており、ヒトhsighv1295のFR内のSerよりも大きかった。したがって、FRにSer76Asnの置換を行った。
【0182】
Chothia他(Chothia他、1992、同上)並びにマーチン及びソーントン(Martin他、同上)によってH3ループのコンホメーションに重要であると以前に同定された残基位置である、V領域のFR3の位置94でアミノ酸にさらなる変更を行った。さらに、分子モデルにより、CDRのH3内でArg94がAsp101と塩橋を形成することができ、ループ構造を安定化させることが示された。したがって、マウス中のArgでこの残基位置でヒト中のLysを置き換えた。最後の改変はFR3内の位置93で行い、ヒトAlaをネズミValアミノ酸で置き換えた。この残基はコーチア(Chothia他、1985、同上)が定義するようにパッキング残基であるとみなされ、Vκ及びV領域の正しいパッキングに重要である。さらに、これはバーニア残基位置と同定され、したがって分子モデルの解析によって確認された分類であるCDRループのコンホメーションの維持に重要である。総合すると、全てのデータ及び分子解析は、これら3つのネズミ残基をBATRHのヒト化V領域内で保存すること、即ちSer76Asn、Ala93Val及びLys94Argが適切であることを示唆している。
【0183】
BAT−1のV領域の次の2つのヒト化変異体の構築は、これらの第1の3つのヒト化変型、即ちBATRH、BATRH及びBATRHの結合親和性に依存していた。これら3つのどれもが十分な結合レベルを示せなかった場合は、変型BATRH及びBATRHを合成して試験する。
【0184】
ヒト化BAT−1のV領域の変型D(BATRH)にはBATRHで行った全ての置換が組み込まれており、それに加えてFR1の位置2に位置する1つのさらなるマウスアミノ酸が含まれていた。この位置は標準(Martin他、同上)及びバーニア(Foote他、同上)残基位置のいずれとしても定義された。さらに、BAT−1可変領域のモデルから、それ自体がH1ループ構造の一部であるネズミIleアミノ酸はFR1のTyr27に近かった。逆に、マウス及びヒトのFRでこの位置にあるネズミIle及びヒトValアミノ酸は、特徴が類似しており大きさが僅かしか異なっていなかった、即ち、Ileは余分なメチル基を有していた。したがって、ヒト化手順のこの段階でのみVal2Ileの変更を行い、変異を変型BATRHに組み込むことを決定した。
【0185】
ヒト化BAT−1重鎖可変領域(BATRH)の最後の変型にはBATRHで行った全てのマウスFRの置換に加えて、位置38(FR2)、46(FR2)及び68(FR3)で3つのさらなるアミノ酸の変更を組み込んだ。
【0186】
Arg38Lysの改変は、V領域のコアに深く埋まっているArgがCDRのH2のPhe63に近いことを示唆していたので行った。しかし、これは以前に同定された標準又はバーニア残基位置ではなかった。さらに、Argの方が大きいが、ArgとLysは構造が比較的類似しており、どのアミノ酸変更も有為性の判断が困難であった。したがって、これは仮定的な可能性としてのみ考慮され、ヒト化BAT−1抗体の結合親和性が乏しいと判明した場合にのみ置換を行うこととした。同じ原理がGln46Lysの改変を選択した背景にもあった。分子モデルによればLysアミノ酸は半分埋まっていたが、CDRのH2内でGlu62及びPhe63に近かった。より大きな、帯電したLys46残基が抗原と直接相互作用できる可能性が僅かにあったので、これをBATRH中で保存した。ネズミ68Alaアミノ酸を保存する事例では、それがCDRのH2、特にH2ループ内の残基Tyr59に近接すること、及びその結果それがループ構造に影響を与えている可能性に関連していた。Alaは小さいので重要である可能性が低いが、ヒトhsighv1295のFR内で見つかるより大きなValはH2ループ構造に有害な影響を与えた可能性があるので、ネズミAla残基で置き換えた。
【0187】
上記で提案した全てのヒト化V領域変異体のアミノ酸配列の説明を図6に示す。
【0188】
潜在的なN結合グリコシル化部位、即ちAsn−Xaa−(Ser/Thr)−Xaa(Gavel他、同上)を、ドナーマウス及びアクセプターヒトV領域、並びにヒト化構築体自体について検索したが、いずれも同定されなかった。
【実施例5】
【0189】
ネズミ及びヒト化BAT−1Fvドメインの分子モデリング
BAT−1抗体のヒト化可変領域の設計を補助するために、ネズミ及びヒト化抗体の可変領域の分子モデルをどちらも構築した。これらの構造のモデリングは、相同性によるモデリング及びab initio技術の確立された方法のいずれも使用して実現した。これは、Oxfored Molecular Limited(OML)が提供及び利用するAbM分子モデリングパッケージを用いて行った。AbMを用いたモデリングで使用可能にするために、利用可能なブルックヘブンデータベースからの抗体X線結晶解析構造を整えた。
【0190】
BAT−1可変領域のFRを、類似の構造が解明されている免疫グロブリン可変領域由来のFRからモデリングした。同一のアミノ酸側鎖は元の配向に維持したが、ミスマッチの側鎖は元のBAT−1のFv領域と同じように置換した。FAB17−IAのVκ領域のバックボーン原子はBAT−1のVκ領域のモデルに使用し、409.5.3のV領域のFRはBAT−1のV領域をモデリングするために使用した(それぞれブルックヘブンPDBコード1for及び1iai)。これらの配列はどちらもネズミBAT−1抗体の可変領域配列及びそのヒト化変異体に対して良好なマッチを示した。mBAT−1及びヒト化配列の同一性は、Vκ領域配列で73%〜92%、V領域配列で65%〜79%の範囲であった。モデリングする配列へのマッチが乏しいFR構造を使用するとCDRループ構造の位置及び配向に顕著且つ有害に影響が与えられたので、AbMを既知の構造で試験することにより、FRバックボーンの相同性がどのモデルの品質にも重要な要素であることが示された。
【0191】
L1ループ、ネズミBAT−1のVκ領域のループコンホメーション及びヒト化BATRκ配列のバックボーン構造(図5)を、AbMが使用する標準クラスからとった。これらの標準クラスはコーチアと共同研究者が記載したものに基づいているが、元の論文(Chothia他、1987、1989、1992、同上;Tramontano他、同上)が公開された後に利用可能になった構造も考慮に入れるように改変されている。既知のループ構造におけるAbM予測の性能の試験により、このように作製されたCDRループは通常非常に正確に、即ち1〜1.5ÅのRMS偏差内までにモデリングされることが示された。Vκ領域配列BATRκでは、位置71でPheをTyrで置換すること(FR3内)は、これがもはやネズミのVκ領域及びヒト化BATRκのVκ領域で見られる標準クラス(クラス1)に当てはまらないことを意味する。Tyr71はL1ループのコンホメーションに重要な役割を果たしていたが、モデリングした構造の解析により、この残基の主な特徴はTyrの芳香環に対するL1ループのパッキングであったことが示唆された。したがって、Pheもこの機能を実行できると信じる理由があった。さらに、モデルからはTyr71のヒドロキシル基との強い相互作用があるように見えなかった。したがって、TyrをPheで置換することはL1ループの実際のコンホメーションに影響を与えなかった可能性が高い。
【0192】
CDRであるL2、L3、H1及びH2のバックボーン構造には、全てのモデルのコンホメーションをAbMに定義される標準クラスから改変せずにとった。
【0193】
BAT−1のV領域内のH3ループは8残基超であり、H3ループ構造を予想するために2つの方法を使用した。いずれの方法でもバックボーンコンホメーションのデータベース検索を使用したが、それに加えて、モデルの中心の5個の残基のコンホメーションをCONGEN検索(Bruccoleri、同上)を用いてより徹底的に検索した。これの計算にはより長い時間がかかったが、データベース検索から同定されたものと非常に類似したコンホメーションがしっかりと生じた。
【0194】
モデルの明らかな立体衝突を調整した後に、最後にこれを、望ましくない原子の接触を軽減すること並びにファンデルワールス及び静電気的相互作用を最適化することのいずれのために、MACROMODELで実施したようにエネルギー最小化に供した。
【実施例6】
【0195】
ヒト化BAT−1軽鎖変異体の構築
すべての実施例で、厳密なPCRクローニング及び配列決定プロトコルに従った。これは、ヒト化変型にエラーが導入される可能性を最小限にするために行った。ヒト化BAT−1のκ軽鎖可変領域遺伝子(即ちBATRκ、BATRκ及びBATRκ)の構築により約425bpの産物が生じ、その後これをpCR2.1(商標)内にサブクローニングした。PCR反応は表9及び10に記載のプライマーを使用して行った。
【0196】
【表9】

【0197】
【表10】

【0198】
オリゴヌクレオチド配列は表9に示す。
オリゴヌクレオチドプライマーBATRκ.1及びBATRκ.20も外部増幅プライマーとして使用した。
【0199】
推定陽性形質転換体をPCRスクリーニングアッセイで同定し、制限消化を行い、その後、ds−DNA配列決定を行った。その後、ヒト化Vκ遺伝子(図7〜9;配列番号15、16及び18)を発現プラスミド内にサブクローニングした。
【0200】
軽鎖pKN110構築体はアンピシリン及びネオマイシン耐性遺伝子を含んでいた。BAT−1のヒト化Vκ遺伝子変異体(即ちBATRκ、BATRκ及びBATRκ)をHCMV最初期プロモーターとゲノムヒトκ定常領域との間に挿入し、それぞれ発現ベクターpKN110−BATRκ、pKN110−BATRκ及びpKN110−BATRκを生じさせた(代表的なpKN110−BATRκベクターには図10を参照されたい)。
【0201】
発現ベクター内に挿入したBAT−1軽鎖発現カセットは、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド配列をコードしているDNA断片、コザック配列及びBAT−1のヒト化Vκ遺伝子変異体の両側に付加したシグナル配列イントロンを含んでいた(図11)。このカセットは、HCMV最初期プロモーターとゲノムヒトκ定常領域との間に挿入した。完全な軽鎖発現ベクターは、BGHポリA転写ターミネーター及びNeo/G418選択マーカーも含んでいた。正しい挿入物の存在を確認するために、全ての構築体で制限消化を行い、ds−DNA配列決定を行った。
【実施例7】
【0202】
ヒト化BAT−1重鎖変異体の構築
再構成ヒトBAT−1重鎖可変領域遺伝子の様々な変型(即ちBATRH、BATRH、BATRH)の構築により約450bpの産物が生じ、その後これをpCR2.1(商標)内にサブクローニングした。PCR反応は表11及び12に記載のプライマーを使用して行った。
【0203】
ここでも推定陽性形質転換体をPCRスクリーニングで同定し、その後ds−DNA配列決定を行った。その後、ヒト化V遺伝子(配列番号20〜22)を発現ベクター内にサブクローニングした。
【0204】
重鎖pG1D110構築体はアンピシリン耐性遺伝子及びハムスターdhfrを選択マーカーとして含んでいた。BAT−1のヒト化V遺伝子変異体をHCMV最初期プロモーターとゲノムヒトIgG1定常領域との間に挿入し、発現ベクターpG1D110−BATRH、pG1D110−BATRH、pG1D110−BATRHを生じさせた(代表的なpG1D110.BAT−1.RHベクターには図12を参照されたい)。
【0205】
発現ベクター内に挿入したBAT−1重鎖発現カセットは、マウス免疫グロブリンシグナルペプチド配列をコードしているDNA断片、コザック配列及びBAT−1のヒト化Vκ遺伝子変異体の両側に付加したシグナル配列イントロンを含んでいた(図13)。このカセットは、HCMV最初期プロモーターとゲノムヒトIgG1定常領域との間に挿入した。完全な軽鎖発現ベクターは、BGHポリA転写ターミネーター及びdhfr選択マーカーも含んでいた。
【0206】
正しい挿入物が存在することを確認するために、生じた発現ベクターの制限消化を行った。
【0207】
【表11】

【0208】
【表12】

【0209】
オリゴヌクレオチド配列は表11に示す。
オリゴヌクロチドプライマーBATRH.1及びBATRH.22も外部増幅プライマーとして使用した。
【実施例8】
【0210】
単一発現ベクター内でのBAT−1 RH/Rκγ1完全抗体の構築
BAT−1γ1抗体の実現可能な発現レベルを最大にするために、BAT−1γ1単一ベクター構築体を作製する前にpG1D110.BAT−1.RH構築体からイントロンを除去することを決定した(実施例7に記載、図12参照)。この手順は以下のように行った。
【0211】
pG1D200とは、別のγ1免疫グロブリン重鎖哺乳動物発現ベクター(AERES Biomedical;図14)である。このベクターは、pG1D110ベクターのV:Cγ1イントロン無しの変型である(即ちV:C接合点で71bpのイントロンを有さない)。
【0212】
pG1D110.BAT−1.RH構築体を構築体へと変換するために、BstEII断片(219bp)をpG1D200ベクターから切除し、Qiagenゲル抽出/精製キットを用いてゲル精製を行った。この断片はイントロン無しのV:C接合点を含んでいた。
【0213】
pG1D110.BAT−1.RH構築体(図12)もBstEIIで制限消化を行い、イントロン有りのVH:CH接合点を含む290bpの断片が放出された。Qiagenゲル抽出/精製キットを用いて残りのベクター断片(〜7207bp)のゲル精製を行った。
【0214】
その後、pG1D200ベクターの消化からのイントロン無しのBstEII断片(219bp)を〜7207bpのBstEIIで消化したpG1D110.BAT−1.RHベクター内にライゲーションした。2μlのライゲーションしたDNAを、製造元の指示に従ってDH5α細胞(Stratagene)に形質転換させた。10個のコロニーからプラスミドDNAを調製し、DNA配列解析によってそれぞれのプラスミドDNAを正しいBstEII断片の存在について解析した。
【0215】
完全なクローンを同定した後、新しいイントロン無しの構築体(pG1D210.BAT−1.RH)及び軽鎖構築体pKN110.BAT−1.Rκ(図10参照)を用いてpG1KD210.BAT.RH/Rκ単一発現ベクター(配列番号93)を構築した。
【0216】
配列番号93内のこのpG1KD210.BAT−1.RH/Rκ単一発現ベクターの構成要素は以下のように局在している:
1.ヌクレオチド範囲:1〜2502−pBR322(Amp耐性遺伝子及びColE1複製起点並びにSV40複製起点及び不能SV40初期プロモーターを含む、pBR322に基づいた配列)
2.ヌクレオチド範囲:206〜1067−Amp(アンピシリン耐性遺伝子)
3.位置:1824−ColE1
4.ヌクレオチド範囲:2502〜3227−DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子)
5.ヌクレオチド範囲:3233〜4074−SV40ポリA(SV40ポリA配列など)
6.ヌクレオチド範囲:4109〜5649−HCMVi(HCMViプロモーター)
7.ヌクレオチド範囲:5662〜6067−BAT rKd
再構成BATκ軽鎖可変領域。
8.ヌクレオチド範囲:6073〜6720−HuK(ヒトκ定常領域(Km(3))遺伝子のcDNAコピー)
9.ヌクレオチド範囲:6726〜6943−spaC2人工spaC2終結配列
10.ヌクレオチド範囲:6949〜8489−HCMVi(HCMViプロモーター)
11.12.ヌクレオチド範囲:8502〜8923−BAT rHc
再構成BAT重鎖可変領域
13.ヌクレオチド範囲:8924〜10297−HG1(前に60bpのイントロンがあり、後に「アーニー」終結配列があるヒトγ−1定常領域)
【0217】
HCMViプロモーター、BAT−1のκ軽鎖可変領域遺伝子、及びκ軽鎖定常領域遺伝子を含むBAT−1のκ軽鎖発現カセットを、pKN110.BAT−1.Rκ構築体から制限消化によって取り出し(EcoRI/SpeI)、次いで単一のEcoRI及びSpeI制限部位によってpG1D210.BAT−1.RH構築体中にライゲーションした。このライゲーションにより、BAT−1ヒト化抗体RH/Rκの重鎖及びκ軽鎖をどちらも含む単一発現ベクターpG1KD210.BAT−1.RH/RKの構築がもたらされた(図15)。2μlのライゲーションしたDNAを、製造元の指示に従ってDH5α細胞(Stratagene)に形質転換させた。10個のコロニーからミニプレップDNAを調製し、制限消化解析によってそれぞれのプラスミドDNAを正しい単一発現構築体の存在について解析した。COS細胞内でのBAT−1γ−1抗体の一過性発現に正しい単一発現構築体の1つのクローンを選択し、これを実施例11に例示する。
【実施例9】
【0218】
単一発現ベクター内でのBAT−1.RH/Rκγ−1(γ1)完全抗体の変異体の構築
BATRH重鎖可変領域をXho1とHind111断片とを一緒にした(単一)発現ベクターとして導入した。BATRκ軽鎖可変領域をXba1とBamH1断片とを一緒にした(単一)発現ベクターに導入した。アミノ酸配列を変更せずに軽鎖遺伝子中の内部Xba1部位を除去した。このベクター内のBAT−1.Rκ/BAT−1.RH重鎖及び軽鎖可変領域の配列を確認した。このベクターはゲノムヒトIgG1及びκ定常領域を含む。重鎖及び軽鎖遺伝子のどちらもをHCMV最初期プロモーターの制御下に置いた。このベクターはマウスdhfr遺伝子を選択マーカーとして含む(図16参照)。2つのベクター発現系と同じコザック配列、シグナルペプチド配列及びイントロンを付加した(実施例6及び7参照)。
【実施例10】
【0219】
単一ベクター内でのBAT−1γ−4(γ4)PG4KD110.BAT−1.RH/Rκの構築
BAT−1γ4単一発現ベクター構築体の構築における第1のステップは、BamHI及びHindIII制限消化によって改変BAT−1.RH遺伝子をpG1D110.BAT−1.RH構築体(図14)からクローニングして取り出し、やはりBamHI及びHindIII制限部位によってこの430bp断片をγ−4免疫グロブリン重鎖発現ベクターpG4D110内にライゲーションすることであった。
【0220】
2μlのライゲーションしたDNAを、製造元の指示に従ってDH5α細胞(Stratagene)に形質転換させた。10個のコロニーからプラスミドDNAを調製し、DNA配列解析によってそれぞれのプラスミドDNAを正しいBAT−1.RHのBamHI/HindIII断片の存在について解析した。
【0221】
完全なクローンが示された後、新しいγ−4構築体(pG4D110.BAT−1.RH)及び軽鎖構築体pKN110.BAT−1.Rκ(図10)を使用して、以下の方法でpG4KD110.BAT−1.HR/Rκ単一発現ベクターを構築した。
【0222】
HCMViプロモーター、BAT−1のκ軽鎖可変領域遺伝子、及びκ軽鎖定常領域遺伝子を含むBAT−1のκ軽鎖発現カセットを、pKN110.BAT−1.Rκ構築体から制限消化によって取り出し(EcoRI/SpeI)、次いで単一のEcoRI及びSpeI制限部位によってpG4D110.BAT−1.RH構築体中にライゲーションした。このライゲーションにより、BAT−1ヒト化抗体RH/Rκ変異体の重鎖及びκ軽鎖をどちらも含む単一発現ベクター構築体pG4KD110.BAT−1.RH/Rκの構築がもたらされた。2μlのライゲーションしたDNAを、製造元の指示に従ってDH5α細胞(Stratagene)に形質転換させた。10個のコロニーからミニプレップDNAを調製し、制限消化解析によってそれぞれのプラスミドDNAを正しい単一発現ベクター構築体の存在について解析した。BamHI及びHindIIIで消化した正しい単一発現ベクター構築体は2864bpの断片を放出し、HindIII消化では2840bpの断片が放出された。COS細胞内でのBAT−1γ−4抗体の一過性発現に1つのクローンを選択した。
【実施例11】
【0223】
ヒト化BAT−1軽鎖及び重鎖ベクターの同時トランスフェクション、並びにCOS7細胞内でのヒト化BAT−1変異体の一過性発現
ヒト化BAT−1の重鎖(pG1D110)及び軽鎖(pKN110;実施例7)発現ベクターを様々な組合せでCOS7細胞内に同時トランスフェクションさせ、72時間インキュベートした後、培地を回収し、細胞片を除去するために遠心し、濾過し、ヒト化抗体の産生についてELISAによって解析した。COS7細胞上清中のヒト化抗体の濃度は、試験した再構成ヒトBAT−1抗体構築体の組合せのそれぞれで異なった(表13)。例えば、変型BATRH/BATRκが最も高い抗体レベルを発現し(4800ng/ml)、BATRH/BATRκの変型の発現が最も乏しかった(357ng/ml)。
【実施例12】
【0224】
COS7細胞からのヒト化BAT−1変異体の精製
1回の同時トランスフェクションあたり約8mlが採取され(実施例11参照)、200ml以上のCOS7上清が回収されるまで一連のトランスフェクションを行った。30kDaの分子量カットオフのPM30濾過膜を備えた攪拌限外濾過セルに上清を通すことによって、この上清の体積を10mlまで減らした。
【0225】
Immunopure(著作権)(A)IgG精製キットは、本質的に固定したタンパク質Aのセファロースカラムの2mlカラムからなる。5mlの溶出緩衝液を用いて抗体をカラムから溶出させ、その溶出液を1mlの画分で回収した。その後、ELISA法を用いてそれぞれの画分中のヒト化BAT−1抗体の濃度をアッセイした。表13は、回収されたタンパク質Aで精製した抗体構築体の最終濃度を示す。平均すると、精製ステップにより抗体濃度が約150倍上昇した。
【0226】
【表13】

【実施例13】
【0227】
COS7細胞内で産生されたヒト化BAT−1変異体のダウディ細胞への結合の解析
ダウディ細胞のELISAを用いると、タンパク質Aで精製したヒト化BAT−1抗体の様々な変型が様々な度合でダウディ細胞に結合したことが明らかであった。図17〜20は、これらの結合実験の典型的な例を示す。組換え抗体によるダウディ細胞の結合のS字型の用量−応答曲線もプロットし、これらの結合曲線の傾斜面を計算した。傾斜面データとキメラ抗体用量−応答曲線に対するこの用量−応答曲線立場との組合せにより、試験した様々なヒト化BAT−1抗体構築体間でダウディ細胞の結合に関して定性的な階層が示唆された(表14)。この階層の一番上にあるのは明らかに構築体BATRH/BATRκ(即ち0.8818±0.1107)であり、これはそのキメラBAT−1抗体対照(即ち0.8248±0.1210)に非常に類似した傾斜面を示し、キメラ対照の用量−応答曲線に近い軌道であった。利用可能な結合データから計算すると構築体BATRH/BATRκ(即ち0.6408±0.1622)は同じキメラBAT−1抗体対照(即ち0.8248±0.1210)よりも急な傾斜面を示したが、その差は統計的に有意ではなかった。さらに、図19から、この構築体の用量−応答曲線はBATRH/BATRκ構築体でそれほど良好ではなく、したがって結合階層で2位に位置付けられたことが明らかである。
【0228】
逆に、構築体BATRH/BATRκは試験した全てのヒト化BAT−1抗体構築体のなかで明らかに最も低い結合特徴を有しており(表14)、結合階層で6位に位置付けられた。変型で計算した傾斜面(即ち1.2730±0.2688)は非常に類似したヒト化構築体BATRH/BATRκ(即ち1.7710±0.6461)よりも明らかに良好であったが、この差もやはり統計的に有意ではなかった。さらに、図18から、CDRを移植したBATRH/BATRHκBAT−1抗体が、結合階層で5位に位置付けられたヒト化構築体BATRH/BATRκよりもはるかに低いレベルでその最大結合応答に達していることが明らかである。
【0229】
構築体BATRH/BATRκ(図17;4位)及びBATRH/BATRκ(図20;3位)はこれら2組の端値の中間レベルの結合性を示す。ここでも、これらの位置付けは主に利用可能な結合データの主観的な解釈及びこれまでの経験に基づいている。
【0230】
【表14】

【0231】
ダウディ細胞のELISAのデータをS字型の用量−応答曲線に当てはめた後に計算した、3つ組のELISAの標準誤差の平均。
【実施例14】
【0232】
COS細胞の同時トランスフェクション又は単一トランスフェクションによるBAT−1Rκ/RH変異体の一過性発現
Kettleboroughの方法(Kettleborough他、Eur.J.Immunol.、23:206、1993)に従って哺乳動物発現構築体をCOS細胞内にトランスフェクションさせた。手短に述べると、DNA(それぞれ10μgのκ軽鎖発現構築体pKN110.BAT−1.Rκ及び重鎖発現構築体pG1D210.BAT−1.RH、又は13μgの単一ベクター構築体pG1KD210.BAT−1.RH/Rκ)を1mlのPBSあたり10個の細胞の0.7mlのアリコートに加え、Bio−Rad Gene Pulser装置を用いて1900V、25μFの電気容量でパルスを当てた。室温で10分間回復させた後、電気穿孔した細胞を10%のFCSを含む8mlのDMEMを入れたペトリ皿に移し、5%のCO、37℃で72時間インキュベートした。72時間インキュベートした後、培地を回収し、細胞片を除去するために遠心し、抗体の産生について捕捉ELISAによって解析した。軽鎖発現ベクター及び重鎖発現ベクターを用いた同時トランスフェクション、並びに軽鎖及び重鎖をどちらも発現している単一ベクターを用いたトランスフェクションを、3つ組で実施した。結果を表15に示す。この結果は、単一ベクターからの発現レベルが同時トランスフェクションで観察された発現レベルよりも〜6倍高い示している。
【0233】
【表15】

【0234】
pG1D110及びpKN110ベクターを用いた同時トランスフェクションからのヒト化RH/RκBAT−1変異体のトランスフェクションレベルは0.718μg/mlであった
【実施例15】
【0235】
単一ベクターpG1KD210.BAT−1.RH/Rκを用いたCHOdhfr−哺乳動物細胞の安定なトランスフェクション及び安定な細胞系の産生
CHOdhfr−細胞を、10%のFetal Clone II及び50μg/mlのゲンタマイシンを添加したリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含むα−MEMからなる非選択培地中で増殖させた。1mlのPBSあたり10個の細胞の0.7mlのアリコートを、13μgのpG1KD210.BAT−1.RH/Rκを用いて、Bio−Rad Gene Pulserを用いて1900V、25μFの電気容量でトランスフェクションさせた。細胞を室温で10分間回復させた後、10cmのペトリ皿の8mlの非選択培地に移し、5%のCO、37℃で48時間インキュベートした。
【0236】
トランスフェクションの2日後、細胞をトリプシン処理し、遠心し、150mlの予熱した選択培地(10%の透析したFBS及び50μg/mlのゲンタマイシンを添加した、10nM、50nM、100nM又は500nMのメトトレキセートを含む、リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含まないα−MEM)中に再懸濁させた後、15個の10cmのペトリ皿に等分した。その後、これらを5%のCO中、37℃で、病巣がはっきりと見えるまで選択培地を3〜4日毎に交換して20〜30日間インキュベートした。最初のトランスフェクションの2週間後、病巣が10nMのプレートに発生しはじめた。8日後、1つの病巣が50nMのプレートに発生した。35日以降は50nMのプレートに他の病巣は発生せず、100nMや500nMのプレートには病巣が全く発生しなかった。
【0237】
病巣を「拾う」ために、1mm四方のワットマン1MM濾紙をまず0.05%のトリプシン、0.02%のEDTA溶液に浸した。選択培地を培養皿から丁寧に取り除き、その後これを5mlのPBSで丁寧に洗浄した。その後、PBSを取り除き、無菌鉗子を用いて、予浸した正方形の濾紙を個々の細胞の病巣上に丁寧に置いた。正方形の濾紙を病巣上に15秒間放置した後、1mlの適切な選択培地を含む24ウェルの組織培養プレートの個別のウェルに移した。
【0238】
合計31個のγ−1病巣を拾い、そのうち30個が10nMのMTXのプレートからで、1個が50nMのプレートからであった。これらの細胞をほぼコンフルエントになるまで選択培地中で増殖させ、個々のウェルを抗体の産生について試験した。その後、ヒト抗体を産生しているクローンを、拡大及び特異的産生の解析に選択した。特異的産生アッセイの結果を表16に示す。
【0239】
【表16】

【0240】
最も良好な特異的産生レベルを示した3つの細胞系(B9、B13及びB15)を、正確な倍加時間についてさらに解析且つモニタリングした(表17参照)。
【0241】
【表17】

【0242】
特異的産生レベル及び倍加時間に基づいて、B15細胞系を用いて500μgの量のBAT−1γ1抗体の産生を始めることを決定した。
【実施例16】
【0243】
単一トランスフェクション及び同時トランスフェクションによる、COS細胞内のBAT−1γ4RH/Rκ変異体の一過性発現
Kettleborough他の方法に従って、哺乳動物発現構築体をCOS細胞内にトランスフェクションさせた。手短に述べると、DNA(それぞれ10μgのκ軽鎖発現構築体pKN110.BAT−1.Rκ及び重鎖発現構築体pG4D110.BAT−1.RH、又は13μgのスーパーベクター構築体pG4D110.BAT−1.RH/Rκ)を1mlのPBSあたり10個の細胞の0.7mlのアリコートに加え、Bio−Rad Gene Pulser装置を用いて1900V、25μFの電気容量でパルスを当てた。室温で10分間回復させた後、電気穿孔した細胞を10%のFCSを含む8mlのDMEMを入れたペトリ皿に移し、5%のCO、37℃で72時間インキュベートした。72時間インキュベートした後、培地を回収し、細胞片を除去するために遠心し、抗体の産生について捕捉ELISAによって解析した。
【0244】
同時トランスフェクション及びトランスフェクションをどちらも3つ組で実施した。結果を表18に示す。この結果は、この単一ベクターからの発現レベルが同時トランスフェクションで観察された発現レベルよりも〜4倍高いことを示している。
【0245】
【表18】

【実施例17】
【0246】
単一ベクターpG4KD210.BAT−1.RH/Rκを用いたCHOdhfr−哺乳動物細胞の安定なトランスフェクション及び安定な細胞系の産生
CHOdhfr−細胞を、10%のFetal Clone II及び50μg/mlのゲンタマイシンを添加したリボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含むα−MEMからなる非選択培地中で増殖させた。1mlのPBSあたり10個の細胞の0.7mlのアリコートを、13μgのpG4KD110.BAT−1.RH/Rκを用いて、Bio−Rad Gene Pulserを用いて1900V、25μFの電気容量でトランスフェクションさせた。細胞を室温で10分間回復させた後、10cmのペトリ皿の8mlの非選択培地に移し、5%のCO、37℃で48時間インキュベートした。このインキュベーションの2日後、細胞をトリプシン処理し、遠心し、150mlの予熱した選択培地(10%の透析したFBS及び50μg/mlのゲンタマイシンを添加した、10nM、50nM、100nM又は500nMのメトトレキセートを含む、リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含まないα−MEM)中に再懸濁させた後、15個の10cmのペトリ皿に等分した。その後、これらを5%のCO中、37℃で、病巣がはっきりと見えるまで選択培地を3〜4日毎に交換して20〜30日間インキュベートした。
【0247】
2週間後、病巣が10nMのプレートに発生しはじめた。35日以降は50nMのプレートに他の病巣は発生せず、100nMや500nMのプレートには病巣が全く発生しなかった。病巣は既に記載のように拾い(実施例15)、その後、ヒト抗体を産生しているクローンを、拡大及び特異的産生の解析に選択した。特異的産生アッセイの結果を表19に示す。
【0248】
【表19】

【実施例18】
【0249】
BATH重鎖及びBATκ軽鎖増幅ベクターを用いたNSO細胞の同時トランスフェクション並びに抗体産生細胞系の選択
BATRH重鎖カセット(図13)及びBATRκ軽鎖カセット(図11)をそれぞれ含む発現ベクターを混合し、電気穿孔によってNSO宿主細胞系にトランスフェクションさせた。
【0250】
トランスフェクションさせた細胞を、10個の96ウェルプレート中の10%のウシ胎児血清(FBS)及び1mg/mlのG418(ゲンタマイシン)培地を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に分配した。10〜14日間後にトランスフェクションさせた細胞のコロニーが発生した後、ウェルからの調整培地の試料を、ヒト化BAT−1抗体についてアッセイした。産生が最も高いウェルから細胞を拾い、G418を含む培地で拡大させた。
【0251】
予備として、また選択用のトランスフェクションさせた細胞クローンをさらに多く提供するために、1週間後にトランスフェクションを繰り返した。10日後、トランスフェクションさせた細胞の目に見えるコロニーが発生しており、ウェルからの調整培地を抗体の産生についてスクリーニングした。ELISAプレートをヒツジ抗ヒトκ抗体でコーティングした。ウェルからの培地の25μlの試料をELISAプレートに移し、PBS Tween(PEST)で100μlまで希釈した。二次抗体はHRPに結合させたヒツジ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)であり、色はo−フェニレンジアミン(OPD)で発色させた。陽性のウェルを顕微鏡で検査し、産生が最も高いウェルから細胞を拾って24ウェルプレート中の10%のFBS及び1mg/mlのG418を添加した1.5mlのDMEMに入れた。合計15個の産生が高いコロニーを2つのトランスフェクション体から拾った(表20)。2つの独立した細胞系から約40μg/ml以上の抗体産生レベルが得られた。
【0252】
重鎖ベクター内でdhfr遺伝子を用いた増幅では、最初の2つの産生が高い細胞系を0.02μMのメトトレキセートを加えた培地(10%のFCS及び1mg/mlのG418を含む)に移した。
【実施例19】
【0253】
BAT−1.RH/Rκγ1遺伝子を含む単一増幅ベクターを用いたNSO宿主細胞系のトランスフェクション及び抗体産生細胞系の選択
実施例9に記載の組み合わせた(単一)抗体発現ベクターを、電気穿孔によってNSO宿主細胞系内にトランスフェクションさせた。
【0254】
トランスフェクションさせた細胞を10個の96ウェルプレート中の10%のFBSを含むDMEMに分配した。2日後、0.1μMのメトトレキセートを含む等量の培地を加えた。培地の半分を、トランスフェクション8日後まで2日毎に同体積の0.1μMのMTX含有培地で交換した。予備として、また選択用のトランスフェクションさせた細胞クローンをさらに多く提供するために、1週間後にトランスフェクションを繰り返した。14〜21日後、トランスフェクションさせた細胞の目に見えるコロニーが発生しており、上記実施例に記載のようにウェルからの調整培地を抗体の産生についてスクリーニングした。陽性のウェルを顕微鏡で検査し、産生が最も高いウェルから細胞を拾って24ウェルプレート中の10%のFBS及び0.1μMのメトトレキセートを添加した1.5mlのDMEMに入れた。合計13個の産生が高いコロニーを2つのトランスフェクション体から拾い、液体窒素中で冷凍しておいた(表20)。6つの独立した細胞系から40μg/mlを超える抗体産生レベルが得られた。異なる選択により、単一ベクターを含む細胞系は、2つの異なるベクター上に抗体遺伝子を含むものよりも発生するのが遅かった。
【0255】
【表20】

【0256】
BAT−1.RH/Rκγ1遺伝子を含む単一増幅ベクターを用いたNSO宿主細胞系のトランスフェクション及び抗体産生細胞系の選択の後、即ちクローニングした細胞系1B7の、ヒト化BAT産生細胞の代表的な例は、ブダペスト条約の寄託形式を用いて、2003年5月9日に寄託番号ATCC#(PTA−5189)の下でATCC細胞バンクに寄託されている。
【実施例20】
【0257】
ヒト化BAT−1.RH/Rκγ1変異体によるマウスBAT−1の阻害
ヒト化BAT−1.RH/Rκγ1変異体が元のネズミBAT−1と同じエピトープを認識できることを確認するために、BAT−1結合性エピトープを発現するダウディ細胞への結合の競合アッセイを実施した。
【0258】
ダウディ細胞を段階的に多い量のヒト化BAT−1又は対照としてマウスBAT−1と共にインキュベートした(0〜80μg/ml)。結合しなかった抗体を廃棄し、ビオチン標識したネズミ−BAT−1(20μg/ml)を細胞に加え、ストレプトアビジン−FITCで染色した。図21は、ヒト化及び元のマウスのmAbのどちらもで濃度の増加に伴ってネズミBAT−1の結合が減少したことを示し、これは、予測した通りに同じエピトープを認識していることを支持している。どちらの抗体も約10μg/mlのIC50で類似した用量依存性を示しており、類似した抗原結合親和性が示唆される。
【実施例21】
【0259】
ネズミ腫瘍モデルにおけるヒト化BAT−1のIn vivo効果
実施例20で示したように、ヒト化BAT−1.RH/Rκ γ1mAbの形成をもたらしたCDR移植ではBAT−1抗原の認識が保たれた。この結合がネズミBAT−1の生物学的効果の特徴を伝えることができるかどうかを検査するために、ヒト化BAT−1の有効性をin vivoで研究した。これは、マウスmAbとヒトmAbとの間のアイソタイプの差に関して特に重要である。
【0260】
肺転移を誘発させるためにC57BLマウスにB16黒色腫細胞を接種した。段階的に多い量(1、10及び20μg)のヒト化mAbを腫瘍接種後12日目に注射し、最適用量である10μgのネズミ−BAT−1と比較した。腫瘍接種後24日目に測定した肺重量を図22に示し、これは腫瘍の確立に対応する。処置なしのマウス及びアイソタイプがマッチした非関連のヒトIgG1で処置したマウスのどちらも、0.9grの平均肺重量を有していた。ヒト化BAT−1は用量依存性の転移の増殖の阻害を示し、最も高い阻害が1μg/マウスの低用量で起こっていた。これにより腫瘍質量の67%の減少がもたらされ、最適用量のネズミBAT−1でもたらされるものに類似していた(62%)。重要なことは、この最大効果は10倍低い用量のヒト化mAbでもたらされたことで、元のネズミBAT−1 mAbと比較した場合にこの抗体の治療有効性が高いことが示唆される。
【実施例22】
【0261】
hBAT−1によるSCIDマウス中のヒト黒色腫(SK−28)の阻害
マウス−BAT−1 mAbは、ヒト末梢血リンパ球(hPBL)の存在下でヒト−腫瘍転移の形成を阻害することが示されている。ヒト癌の阻害におけるヒト化BAT−1.RH/Rκ γ1mAbの有効性を推定するために、ヒト化抗体を腫瘍及びヒト由来のリンパ球のどちらもを組み合わせたモデルで調査した。免疫能力を修復するために重症複合免疫不全マウス(SCID)にhPBLを移植した。マウスにヒト黒色腫細胞(SK−28)を接種し、腫瘍接種後11日目に単一のi.v.用量として投与した段階的に多い濃度のヒト化抗体で処置した。図23は、23日目に測定した、観察された転移の数に関連する肺重量を示す。どちらの濃度のヒト化抗体もhPBLの存在下で腫瘍の阻害を誘発した。上述したマウス腫瘍モデルで観察されたように、ヒト化抗体は、マウスBAT−1に比べて腫瘍増殖をin vivoでより効率的に阻害することができた。このヒト化抗体の1μgの単一用量で腫瘍増殖が68%阻害され、10μgのマウスBAT−1抗体よりも高い有効性が示された(30%)。
【実施例23】
【0262】
ヌードマウスにおけるhBAT−1モノクローナル抗体によるヒト結腸直腸癌の肝転移の免疫療法
LIM6及びHM7は、その高いムチン合成及び転移の潜在性により選択された、ヒトCRC細胞系LS174Tの2つのサブクローンである。腫瘍細胞を麻酔したヌードマウスの露出した脾臓に注射した。1分後、脾臓を取り出して切除痕を閉じた。12日後に低用量のネズミ及びヒト化BAT−1抗体を投与し、腫瘍接種後35日目にマウスを屠殺した。肝臓を秤量し、転移結節数を数え、肝臓組織を組織学及び免疫組織化学的な研究用に処理した。
【0263】
BAT−1、ネズミ及びヒト化抗体を用いた処置は、ネズミモデルにおいて肝臓転移の確立の阻害に有効であることが判明した。マウスBAT−1抗体による処置は、LIM−6異種移植片の発生を予防した。BAT−1で処置したマウス及び対照の異種移植片の平均重量はそれぞれ0.14±0.17gr及び0.98±1.12grであった(P=0.004)。ヌードマウスに注射したHM7細胞は肝臓に多数の大きな転移性病変をもたらし、これはネズミBAT−1及びヒト化BAT−1の単一投与によって予防された(図24)。転移結節数の主要な(40%を超える)減少、即ち対照マウスで134.5±34からネズミBAT−1ヒト化BAT−1で処置したマウスでそれぞれ8.36±3及び4.88±2の減少が観察された。BAT−1を用いた処置により腫瘍の端部にリンパ球が蓄積することが予防された。転移結節周辺におけるリンパ球の浸潤の役割は癌の結果に関連しているかもしれず、BAT−1治療の機構を示唆し得る。
【実施例24】
【0264】
hBATの、CD4及びCD8との共局在
マウスBAT−1はCD4+及びCD8+サブセットのどちらも認識し、ヒトリンパ球に結合することが示されている。ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAb(hBAT)の結合特異性を確立するために、本明細書中で以下に記載するようにヒト末梢血リンパ球(PBL)を正常ドナーの血液から単離し、既知のリンパ球マーカーを用いてhBATの共局在について解析した。
【0265】
末梢血単核細胞(PBMC)をフィコールによって単離し、接着細胞を除去するために組織培養プレート中でインキュベートした。単離したPBLをサイズ及び顆粒度に応じてリンパ球に、またヨウ化プロピジウム(PI)に応じて生細胞にゲートをかけた。結合は4℃、1時間で行い、リンパ球にゲートをかけたフローサイトメトリーによって決定した。
【0266】
検査した全ての試料で、PBLの少なくとも20%がhBATへの結合を示した。図25は、単離したPBLの50%がhBATに陽性であった選ばれたドナーのリンパ球への結合例を示し、これにはCD4+細胞(25%)及びCD8+細胞(15%)がどちらも含められる。これらの部分集団内では、CD4+及びCD8+細胞のほとんどがhBAT mAbに結合した(それぞれ58%及び71%)。
【実施例25】
【0267】
hBATのBリンパ球への結合
ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAb(hBAT)をヒトBリンパ腫細胞系であるダウディ細胞の膜に対して産生させた。上述のように、正常なドナー由来のPBLをフィコ−ルによって、次いで組織培養プレートへの接着によって単離した。非接着細胞を、CD19及びCD20を含めたB細胞マーカーも用いてhBATの共局在について検査した。結合は4℃、1時間で行い、リンパ球にゲートをかけたフローサイトメトリーによって決定した。図26は、代表的な正常ドナー細胞の結合の評価を示す。
【0268】
試料中のリンパ球の25〜29%がヒト化BAT mAbに陽性であった。これらの細胞にはB細胞のほとんど(70〜75%)が含まれていたことが両方の独立したマーカーによって実証された。CD20+の70%がヒト化BAT mAbに陽性であり(R1にゲートをかけ、PIに陰性;図26A)、CD19+の75%がヒト化BAT mAbに陽性であった(R1にゲートをかけ、PIに陰性)。これらの結果は、細胞表面上のBAT結合部分が末梢B細胞に一般的である可能性を示唆している。
【実施例26】
【0269】
細胞を活性化させるとhBATのCD4+T細胞への結合が増加する
マウスBAT抗体の結合は、以前はリンパ球の活性化に関連付けられていた。この結合活性をヒトmAbについてさらに研究した。ヒトBAT mABの活性化させたヒトCD4+T細胞に対する結合レベルを検査した。陰性選択によって細胞を正常なドナーから単離し、抗CD3及び抗CD28に結合させたビーズで刺激した(5μl/ml)。T細胞受容体及び同時刺激性分子によってポリクローナル活性化を及ぼすためにこの処置を選択した。
【0270】
細胞を、活性化後0、2及び5日目におけるヒト化BATRH/BATRκ γ1mAb(hBAT)と抗CD4との結合(4℃、1時間)について検査した(図27A、B及びD)。解析はPI染色に陰性の細胞を用いたフローサイトメトリーによって行った。象限はアイソタイプ対照によって決定した。
【0271】
ヒト化BATRH/BATRκ γ1mAbのCD4+細胞への結合は、活性化後に劇的に増加した(図27)。不活性細胞は、0日目(図27A)及び5日目(図27C)に17〜20%のhBATに対する陽性結合を示したが、CD4+細胞の52%及び77%が活性化のそれぞれ2日目(図27B)及び5日目(図27D)にhBATに結合した。複数の試料で同様の結果が得られ、これはCD8+細胞でも実証された。これは、T細胞に対するhBATの結合がTCR活性化を活性化すると増加することを実証している。
【0272】
この活性化の用量依存性は、hBATとCD69との共局在によって実証された。T細胞の活性化は、様々な分子の細胞表面での発現によって特徴付けられており、その一部は活性化過程に関与していることが示されている。hBATの同時発現について、初期及び後期活性化分子をどちらも含めた様々なマーカーを用いて調査した。初期活性化マーカーであるCD69は、活性化されるとT細胞により上方制御される。活性化の4日後、細胞をhBATと抗CD69との結合(4℃、1時間)について検査した。解析は、PI染色に陰性の細胞を用いたフローサイトメトリーによって行った。象限はアイソタイプ対照によって決定した。
【0273】
正常なドナー由来のCD4+T細胞の用量依存性の活性化を図28に示す。強い活性化の際(5μl/mlの抗CD3及び抗CD28に結合させたビーズ;図28B)、hBATに結合する能力を有する細胞のほとんどが(93%)活性細胞となり、CD69発現によって同定された。活性化時間を増加すると、活性化の1日目から始まるhBATへの結合の増加も生じた。活性化の時間依存性も実証することができ、活性化の1日目に始まるhBATの結合の増加がもたらされた。興味深いことに、CD4+及びCD8+細胞のいずれにも対するhBATの結合はCD69の低下後も高いまま維持され(5日目)、これは、結合とリンパ球の活性化の複数段階との関連を示唆している。CD69+細胞に対するhBATの結合は、hBAT結合性タンパク質の発現が初期活性化に関連していることを示唆している。
【実施例27】
【0274】
hBATの、CD25及びCD40−リガンドを発現している活性T細胞への結合
IL2の高親和性受容体であるCD25はT細胞の拡大に重要であり、通常活性細胞の表面上で増殖される。時間的にはこれはCD69の出現に続き、その発現はCD69の下方制御の後数日間に及ぶ。
【0275】
CD4+T細胞は陰性選択によって正常なドナーから単離し、抗CD3及び抗CD28に結合させたビーズを用いて数日間刺激した(5μl/ml)。細胞を、活性化の0日目(図29A)、1日目(図29B)、及び5日目(図29D)に、対照(活性化なしの0日目、図29A及び5日目、図29C)に対して、hBAT及び抗CD25の結合(4℃、1時間)について検査した。解析はPI染色に陰性の細胞を用いたフローサイトメトリーによって行った。象限はアイソタイプ対照によって決定した。
【0276】
CD4+及びCD8+T細胞のいずれもが抗CD3及び抗CD28刺激の際に、刺激の1日目から始まってCD25の発現の時間依存性の増加を示した。これらの活性細胞でhBATはCD25と共局在していた(図29)。
【0277】
CD25の発現は、活性化後1日目に細胞の55%(図29B)から5日目に93%(図29D)まで増加した。どちらの時点でも、hBAT結合細胞のほとんどがCD25+であった(それぞれ85%及び98%)。
【0278】
活性化マーカーとの関連性を、後期活性化マーカーのCD40−リガンドまで拡張した(図30)。hBATの結合は、CD4+(図30)及びCD8+T細胞内で時間依存的な様式でCD40−リガンドの発現に肯定的に関連していた。これらの結果は、T細胞の活性化により、様々な活性化段階に関連する様式でhBAT結合タンパク質の発現が誘発されることを示唆する結果となっている。
【実施例28】
【0279】
hBATが活性CD4+細胞の生存率を増加させる
活性T細胞をhBATでさらに刺激することができるかどうかを検査するために、ヒトCD4+細胞を陰性選択によって正常なドナーから単離し、最適以下の濃度(0.25μl/ml)の抗CD3/CD28ビーズで活性化した(図31)。活性化の2日後にhBAT(0.5μg/ml)を加え、生細胞数を決定することによってその効果を評価した。結果により、hBATが2つの別個のドナー由来の生CD4+細胞数の有意な増加を誘発させたことが示された(図31A及びB)。対照の非刺激細胞は単離の8日以内に死滅したが、活性細胞はリンパ球に典型的な様式で拡大した、即ち細胞増殖から始まり、次いで安定した細胞数の段階、次いで細胞死が優勢になる段階があった。hBATを加えることによりCD4+細胞の拡大が増強され、mAbが存在しない細胞に対して細胞数が1.5倍増加した。
【0280】
BAT抗体のin vivoでの有効性が腫瘍の存在下で増大することと本明細書中の結果とがあいまって、増大した有効性は活性BAT標的細胞の存在に依存し得ることが示唆される。腫瘍増殖の阻害が不十分であるにもかかわらず腫瘍抗原に向けられたリンパ球が癌患者で観察されており、これはBAT活性の標的細胞として役割を果たし得る。したがって、結果を考慮すると、細胞増殖の刺激及び/又は細胞死の阻害によってhBATがCD4+細胞を活性化させるといえるかもしれない。
【実施例29】
【0281】
hBATのダウディ及びジャーカット細胞系への結合
マウスBAT−1をダウディB細胞系の膜に対して産生させ、これはヒトT細胞に結合することが示されている。このヒト化抗体の特異性を確認するために、hBATを、骨髄由来の2つのヒト細胞系、即ちヒトB細胞リンパ腫系であるダウディ細胞及びヒトT細胞白血病系であるジャーカット細胞への結合について検査した。FITCに結合させたhBATを150ug/mlの濃度のダウディ及びジャーカット細胞と共にインキュベートした(4℃で1時間)。結合はフローサイトメトリーによって決定した。
【0282】
ダウディ(図32A)及びジャーカット(図32B)のどちらの細胞系もヒト化抗体に結合した。さらに、どちらの系でも培養中のほとんどの細胞が抗体を結合する能力を有していた。アイソタイプがマッチしたヒト−IgG1が陰性対照として役割を果たし(図32;アイソタイプ対照)、読取閾値が設定された。どちらの細胞系も同様の抗体染色の強度を示し、これにより、これらが同様の数のhBAT結合分子を発現することが示唆された。
【実施例30】
【0283】
hBATの癌患者のPBLへの結合
hBATが正常なドナー由来のヒトT細胞に結合する能力を有するという観察の後、癌患者から採取したリンパ球に結合するその能力を比較した。PBLをフィコールによって、次いで組織培養プレートへの接着によって前立腺癌患者の血液から単離した。非接着細胞を、hBAT及びリンパ球マーカーの結合について検査した。結合は4℃、1時間で行い、リンパ球にゲートをかけたフローサイトメトリーによって決定した。象限の決定にはアイソタイプ対照を使用した。これらの患者は以前に、しばしばリンパ球の存在及び表現型に影響を与える治療を受けている。これらの細胞に結合するhBATはその活性に必須であり、図33に示すように、正常なドナーのリンパ球への結合に類似している。全リンパ球数は低いが、hBATはそれでもCD4+細胞の39%、CD8+細胞の60%及びB細胞の68%を含めて検査したリンパ球部分集団の大部分に結合することができた。
【実施例31】
【0284】
hBATのヒト、霊長類及びネズミ組織との交差反応性
本研究の目的は、hBAT−1モノクローナル抗体の様々な正常ヒト組織との交差反応性を検査することであった。本研究は、様々なヒト組織に対するモノクローナル抗体の免疫組織化学試験を含んでいた。カニクイザル及びCD−1マウス由来の組織中でのin vitro交差反応性の比較も行った。
【0285】
(i)組織供給源
本研究で使用した組織は、抗体結合に影響を与えるドナー特異的因子を最小限にするために、それぞれ3人の血縁関係のないドナーから得た。ヒト組織は道徳的な出所から得た。本研究で使用した霊長類及びネズミの組織はそれぞれの種で2匹の動物から、倫理的な供給元から得た。ネズミ及び霊長類は前臨床の毒性研究で評価し得る潜在的な試験システムである。選択した組織はFDAのヒトで使用するためのモノクローナル抗体製品の製造及び試験における検討材料(Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use)、(生物製剤研究審査局、FDA生物製剤評価センター(Office of Biologics Research and Review.Center for Biologics Evaluation and Research FDA)、1997)及びEC薬事規則第3a巻(the Rules Governing Medicinal Products in the European Community Vol.3a)、(モノクローナル抗体の産生及び品質管理(Production and Quality Control of Monoclonal Antibodies)、1994年12月、3AB4a)に規定されたものであった。本調査で使用したすべての組織は液体窒素で瞬間冷凍し、必要になるまで−70℃以下で保存した。クライオスタット切片を5μm〜8μmの基準の厚さで調製した。陽性対照はジャーカットE6細胞であった。使用日に新鮮な血液試料を3人のドナーから採取してスメアを調製した。
【0286】
(ii)FITCの結合形成
本研究を開始する前にSerotec社のオーダーメイド抗体サービス部門(Custom Antibody Services Division)(ISO9001認定書)によってヒト化モノクローナルhBAT−1抗体をFITCに結合させた。結合させた抗体の最終濃度は1.99mg/mlであった。
【0287】
本方法の最初の妥当性確認は、抗体−組織と冷凍切片との結合の力価濃度及び抗体−組織結合の正しい性能に関連する他の条件を決定するために対照組織(ジャーカットE6細胞系)で行った。スライドを顕微鏡で検査し、抗体特異性に対して相対的にスコアをつけた(表21)。これらのデータに基づいて、本研究に渡って使用したhBAT−1の濃度は1:100、1:250及び1:500であった。
【0288】
【表21】

【0289】
符号:3は強い陽性の染色を示し、2は陽性の染色を示し、1は弱い陽性の染色を示し、0は染色/シグナルなしを示す。+++は強い可視シグナルを示し、++は良好な可視シグナルを示し、+は弱い可視シグナルを示す。
【0290】
(iii)対照
抗体を緩衝液で置換した陰性対照反応を各組織で行った。それぞれの検出反応は、陽性対照細胞であるジャーカットE6を含み、抗体の3つの所定の希釈率で反応させた。これにより、反応の一貫性をモニタリングすることが可能となった。抗アクチン抗体とインキュベートした甲状腺の切片を検出システムの対照として各アッセイの実行に含めた。
【0291】
(iv)交差反応性の評価
各組織の切片を、その同一性及び本研究に適しているかを確認するためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。また、切片を抗平滑筋アクチン(SMA;表22)又はウサギ抗ヒトトランスフェリン対照血清ともインキュベートし、これにより組織が免疫組織化学に適していることが示された。各組織の3つの切片を調製し、妥当性確認段階で決定された1:100、1:250及び1:500の濃度でFITCに結合させた抗体とインキュベートした。緩衝液で洗浄し、正常血清でブロッキングした後、切片をアルカリホスファターゼ検出に適切な二次及び三次抗体と共にインキュベートし、結合部位を決定するために顕微鏡で検査する前にヘマトキシリンで対比染色した。
【0292】
アルカリホスファターゼ検出を用いたFITC結合染色方法は以下のステップを含んでいた:
1.クライオスタット切片の空気乾燥。
2.10分間、室温でアセトンに浸すことによる固定。
3.空気乾燥。
4.緩衝液での洗浄。
5.1:5の正常血清、少なくとも20分間。
6.緩衝液での洗浄
7.1:100、1:250及び1:500の1022292試験FITCに結合させた抗体:終夜、2〜8℃。
8.緩衝液での洗浄。
9.モノクローナル抗FITC抗体、1:50、30分間。
10.緩衝液での洗浄。
11.アルカリホスファターゼに結合させた抗体、1:200、2時間。
12.緩衝液での洗浄。
13.ベクターレッド(Vector red)及びレバミゾール、20分間。
14.緩衝液での洗浄。
15.対比染色及び装着。
【0293】
色素原内に組み込んだレバミゾールを使用して内在性アルカリホスファターゼを最小限にした。内在性アルカリホスファターゼ活性を抑制することができなかった組織では(ヒトの結腸、回腸、胎盤及び内皮、ネズミの結腸及び膵臓、霊長類の胃、回腸及び前立腺)、1:200の西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた抗体を2時間、次いでジアミノベンジデン(DAB)試薬を20分間で使用した。
【0294】
(v)結果
H&Eで染色した個々の組織試料を、組織の質、正常な組織学的特徴の存在及び保存の妥当性について検査した。試験したすべての試料は本研究の目的に適していると考えられた。ジャーカットE6細胞系中ではhBAT−1で、また平滑筋アクチンで処置した甲状腺切片で陽性の染色が起こった。対照が予測された結果を示したので、試験は妥当であると考えられた。
【0295】
hBAT−1及びヒト組織の個々の交差反応性の結果を表22に示す。陽性の染色は血管ヒト内皮で1:100の希釈率で検出され、これは恐らくhBAT−1がリンパ球に結合した結果である。陽性の染色は、ヒト化モノクローナルhBAT−1抗体の組織結合の可能性を示している。染色、即ちhBAT−1との交差反応性は脾臓切片、血液スメア又は他のヒト組織で観察されなかった(ヒト内皮−血管を除く)。ネズミ及び霊長類組織はどれもhBAT−1との交差反応性の証拠を示さなかった。
【0296】
【表22】

【0297】
N/A−結果は該当なし
【0298】
特定の実施形態の前述の説明は、他者が現在の知識を適用することによって、過度の実験なしに且つ全体的な概念から逸脱せずにこのような特定の実施形態を様々な用途に容易に改変及び/又は適応させることができるように本発明の全体的な性質を完全に明らかにしており、したがって、このような適応及び改変は開示した実施形態の等価物の意味及び範囲内に包含されるべきであり、そう意図されている。本明細書中で使用する表現や術語は説明を目的とし、限定を目的とするものではないことを理解されたい。様々な開示した機能を手段、材料、及びステップは、本発明から逸脱せずに様々な代替形態をとり得る。したがって、上記明細書及び/又は以下の特許請求の範囲で見つかり得る、表現「〜する手段」及び「〜するための手段」、又はすべての方法ステップの言葉及び続く機能の記述には、上記明細書中に開示した実施形態又は複数の実施形態に正確に等価であるかどうかにかかわらず、列挙した機能を実行する現在又は将来存在し得る全ての構造的、物理的、科学的若しくは電気的な要素又は構造、或いは全ての方法ステップを定義及び包含することを意図する、即ち同一機能を実施するために他の手段又はステップを使用することができ、また、このような表現には最も広い解釈を与えることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネズミモノクローナル抗体BAT−1(mBAT−1)の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)とアクセプターヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域(FR)とを有するヒト化モノクローナル抗体であって、
該ヒト化抗体が、mBAT−1モノクローナル抗体の抗腫瘍活性を保っており、ヒト対象において該ネズミ抗体よりも免疫原性が低く、
該ヒト化モノクローナル抗体は、
a BATRκ(配列番号15)、BATRκ(配列番号16)、BATRκ(配列番号17)及びBATRκ(配列番号18)からなる群から選択される軽鎖可変領域、及び
b BATRH(配列番号20)、BATRH(配列番号21)、BATRH(配列番号22)、BATRH(配列番号23)及びBATRH(配列番号24)からなる群から選択される重鎖可変領域を含む、上記ヒト化モノクローナル抗体。
【請求項2】
前記ヒト化抗体が前記親ネズミBAT−1抗体よりも大きな抗腫瘍効果を誘発させる、請求項1に記載のヒト化モノクローナル抗体。
【請求項3】
前記ヒト化抗体が、ネズミBAT−1モノクローナル抗体よりも大きな転移抑制効果を誘発させる、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項4】
前記抗体が完全長抗体である請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項5】
前記抗体がアイソタイプIgGである請求項4に記載のヒト化抗体。
【請求項6】
前記アイソタイプサブクラスがIgG1又はIgG4から選択される、請求項5に記載のヒト化抗体。
【請求項7】
ヒトκ定常領域を有する請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項8】
前記抗体断片がFv、F(ab’)、F(ab’)及び単鎖抗体からなる群から選択される、請求項1に記載のヒト化抗体の抗体断片。
【請求項9】
前記抗体が、さらに検出可能な標識で標識されているか、固相上に固定されているか、又は外来化合物に結合されている、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項10】
前記可変領域がBATRH/BATRκ(配列番号20/配列番号15)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号15)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号16)、BATRH/BATRκ(配列番号22/配列番号16)、BATRH/BATRκ(配列番号21/配列番号18)、及びBATRH/BATRκ(配列番号22/配列番号18)からなる群から選択される、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項11】
前記ヒト化抗体が、ネズミBAT−1モノクローナル抗体よりも大きな抗腫瘍効果を誘発させる、請求項10に記載のヒト化抗体。
【請求項12】
CDR移植を利用して組換えDNA技術によって作製した請求項1に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片をコードしている単離したポリヌクレオチド構築体。
【請求項14】
配列番号87、配列番号88、配列番号89からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項13に記載の単離したポリヌクレオチド構築体。
【請求項15】
配列番号90、配列番号91、配列番号92からなる群から選択される核酸配列を含有する、請求項13に記載の単離したポリヌクレオチド構築体。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項17】
前記抗体をコードしているポリヌクレオチドに発現可能に連結されたプロモーター、1つ又は複数の耐性遺伝子、コザック配列、複製起点、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、転写ターミネーター、シグナルペプチド、ゲノムヒトκ定常領域、ゲノムヒトIgG定常領域からなる群から選択される構成要素をコードしている少なくとも1つのポリヌクレオチド配列をさらに含む、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
前記ベクターがプラスミド又はウイルスである、請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
プラスミドが、pG1D110−BATRH; pG1D110−BATRH; pG1D110−BATRH; pG1D210.BAT−1.RH; pG4D110.BAT−1.RH; 及びpKN110.BAT−1.RKからなる群から選択される、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
配列番号93のポリヌクレオチド配列を含む請求項16に記載のベクター。
【請求項21】
請求項16〜20までのいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
抗体又はその断片を発現する能力を有する請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記細胞が真核細胞及び原核細胞から選択される、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項24】
CHO、CHOdhfr、NSO、COS及びCOS7細胞からなる群から選択される、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項25】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体又は抗体断片を活性成分として含む薬剤組成物。
【請求項26】
生理的に許容される担体、希釈剤、又は安定剤をさらに含む、請求項25に記載の薬剤組成物。
【請求項27】
サイトカイン、IL−1(インターロイキン−1)、IL−2、IL−6、IFN−α(インターフェロン−α)、細胞ワクチン、抗体、T細胞刺激抗体、及び抗腫瘍治療用抗体からなる群から選択される追加の治療剤をさらに含む、請求項25又は26に記載の薬剤組成物。
【請求項28】
癌を処置するための、請求項25〜27のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項29】
前記癌が黒色腫、肺腫瘍、結腸直腸癌又は肝転移から選択される、請求項28に記載の薬剤組成物。
【請求項30】
(i)前記抗体をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを用いて宿主細胞を形質移入させること、又はそれぞれが前記抗体の重鎖若しくは軽鎖領域をコードしているポリヌクレオチド配列を含む2つのベクターを用いて前記宿主細胞を同時形質移入させること;
(ii)前記抗体が発現されるように(i)の宿主細胞を培養すること;及び
(iii)(ii)の宿主細胞培養物から前記抗体を回収すること
を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の抗体を産生させる方法。
【請求項31】
CD4+T細胞の増殖活性を誘導するための、請求項25〜27のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項32】
CD4+T細胞の細胞溶解活性を誘導するための、請求項25〜27のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項33】
CD4+T細胞の活性を刺激するための、請求項25〜27のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項34】
活性化CD4+T細胞の生存率を増加させる(increasing the survival)ための、請求項25〜27のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項35】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のヒト化モノクローナル抗体に、ex vivoで活性化CD4+T細胞を接触させることを含む、活性化CD4+T細胞の生存率を増加させる方法。
【請求項36】
癌を治療するための、請求項31〜34のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項37】
CD4+T細胞の減少に関連する遺伝性又は後天性の免疫不全症を治療するための、請求項31〜34のいずれか1項に記載の薬剤組成物。
【請求項38】
HIV感染の初期段階を治療するための、請求項37に記載の薬剤組成物。
【請求項39】
後天性免疫不全症候群(AIDS)を治療するための、請求項37に記載の薬剤組成物。
【請求項40】
前記癌がCD4+T細胞の減少を示す血球数を有する患者中に存在する、請求項36に記載の薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2011−139708(P2011−139708A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39339(P2011−39339)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2004−506723(P2004−506723)の分割
【原出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【出願人】(504431304)キュアー テック リミテッド (2)
【出願人】(504431289)モル − リサーチ アプリケイションズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】