説明

新聞用紙およびその製造方法

【課題】十分な引っ張り強度、曲げこわさを有し、さらに紙中灰分が高くても、紙質に加え、オフセット印刷時の紙粉発生や刷版の摩耗が抑制された超々軽量新聞用紙の提供。
【解決手段】特定の粘度測定器による特定の粘度特性を有する澱粉由来の高分子化合物を原紙に比較的多量に塗工することにより、紙中灰分が多い場合であっても、新聞用紙の引張強度や曲げこわさを向上させることができる。好ましくは、填料に軽質炭酸カルシウムを用いる。更に好ましくは、軽質炭酸カルシウムの含有量が5〜30重量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超々軽量新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化による環境への配慮や、用紙や、輸送および郵送コストの削減を両立する要望もあり、低坪量品への需要がますます高まっている。特に新聞印刷用紙は軽量化が進行し、普通紙(49g/m)、軽量紙(46g/m)、超軽量紙(43g/m)、と軽量化され、現在は一部の大手ユーザーで40.5g/mの超々軽量新聞が使用されている。
【0003】
しかし、印刷用紙が低坪量化すると、用紙の引張り強度が弱くなり断紙が発生する要因になったり、用紙の曲げこわさが低下してしまうことがある。
さらに、新聞印刷の主流であるオフセット印刷においては、比較的タックの強い印刷インキを使用するため、用紙としては表面強度の強いことも要求される。特に表面強度の低下は、印刷機のブランケットに堆積する紙粉量や刷版の摩耗を増加させ、文字・罫線のカスレを引き起こしたり、ベタ面のガサツキ(着肉不良)などインキ着肉性にも悪影響を及ぼす。表面強度低下の問題への対応として、原紙の表面に澱粉、PVA、ポリアクリルアミドなどを主成分とする表面処理剤を塗布することが一般的であった。
【0004】
オフセット新聞用紙の表面処理剤として、引用文献1には、表面強度が優れ、ブランケットパイリング等が発生しない、特定の粘度以下の低粘度変性澱粉を用いたオフセット印刷用新聞用紙が記載されている。また、引用文献2には、パイリングとネッパリトラブルの発生を抑えた、低粘度澱粉を含むオフセット新聞用紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−166196号公報
【特許文献2】特開2009−191429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、新聞用紙の更なる軽量化を進めるにあたっては、オフセット印刷に耐え得る表面強度と印刷適性を新聞用紙に付与するために外添澱粉の有効塗工量を多くする必要があるが、塗工量を多くすると原紙坪量をさらに低くせざるを得ないため、上記の方法を用いても十分な引っ張り強度、曲げこわさを達成することは困難であった。また、新聞用紙を軽量化すると紙の反対面の印刷が透けて見える裏抜けが悪化するため、それをカバーするために原紙に内添填料を多く配合することになるが、それによって紙のこしが悪化し、曲げこわさがより一層低下してしまう。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、十分な引っ張り強度、曲げこわさを有し、さらに紙中灰分が高くても、前記紙質に加え、オフセット印刷時の紙粉発生や刷版の摩耗が抑制された超々軽量新聞用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、特定の粘度特性を有する澱粉由来の高分子化合物を原紙に比較的多量塗布することにより、紙中灰分が多い場合であっても、新聞用紙の引っ張り強度や曲げこわさが大きく向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m以上塗工し、坪量が43g/m未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙であって、澱粉系高分子として、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる、上記新聞用紙。
(2) 原紙坪量が40.3g/m以下である、請求項1に記載の新聞用紙。
(3) 填料として軽質炭酸カルシウムを用いる、請求項1または2に記載の新聞用紙。(4) 前記軽質炭酸カルシウムの含有量が5〜30重量%である、請求項3に記載の新聞用紙。
(5) 澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m以上塗工し、坪量が43g/m未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙の製造方法であって、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を原紙上に塗工することを含む、上記方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、低坪量の新聞印刷用紙において、特定の粘度の澱粉由来の高分子化合物を特定量塗布することにより、引っ張り強度や曲げこわさが良好であるオフセット印刷用新聞用紙を得ることができる。また、紙中灰分が高い場合であっても、引っ張り強度や曲げこわさを良好に維持することができる。さらに、本発明の新聞用紙は、表面強度に優れ、印刷時の紙粉発生や刷版の摩耗が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、各種澱粉系高分子をラピッドビスコアナライザーで分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
クリア塗工
本発明の新聞用紙は、原紙の片面または両面に、特定の粘度特定を有する澱粉系高分子を含むクリア塗工液を塗布し、クリア(透明)塗工層を有する。本発明においてクリア塗工とは、例えば、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、塗布液(表面処理液)を原紙上に塗布(サイズプレス)することをいう。
【0013】
原紙上にクリア塗工を施すことにより原紙の表面強度や平滑性を向上させることが一般に行われるが、本発明においては、特定の澱粉系高分子を多量塗工することによって、新聞用紙の引っ張り強度や曲げこわさをも向上させることができ、また、顔料塗工をする際の塗工性を向上させることができる。
【0014】
本発明においては、クリア塗工液に特定の粘度の澱粉由来の高分子化合物を含有させる。澱粉由来の高分子化合物としては、各種加工澱粉を始めとする澱粉、澱粉を加水分解して得られるデキストリンを好適に使用することができる。澱粉とは、アミロース、アミロペクチンからなる混合物のことをいい、一般に、その混合比は澱粉の原材料である植物によって異なる。
【0015】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、一定条件で蒸煮した後のスラリー粘度が3000mPa・s以下である澱粉由来の高分子化合物である。
澱粉化合物は、通常、水中に懸濁し加熱すると、デンプン粒は吸水して次第に膨張する。加熱を続けると最終的にはデンプン粒が崩壊し、ゲル状に変化する。この現象を糊化(こか)という。このとき、デンプン懸濁液は白濁した状態から次第に透明になり、急激に粘度を増す。粒子が最大限吸水した時粘度が最大となり、粒子の崩壊により粘度は低下する。本発明においては、蒸煮により粘度が最大となった後、温度を下げて静置した時の粘度が一定の範囲のものを用いる。
澱粉系高分子化合物を、クリア塗工液に含有させる場合は、高分子化合物を溶解させるための加熱、蒸煮を必要とする。よって、一定条件で蒸煮した後のスラリーの粘度が重要となる。
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、蒸煮した後のスラリーの粘度が低いため、スラリーを高濃度化することができる。
また、例えばα化澱粉などに代表される、冷水可溶澱粉もスラリー粘度は低いが、それらの冷水可溶澱粉は、冷水に溶けるように処理されており、デキストリンなどの方が表面強度の発現性が高く有利である。
【0016】
このような澱粉系高分子の挙動は、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA、型式RVA-4、New Port Scientific社製)という測定機器を用いて測定することができる。本発明においては、濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、以下の蒸煮条件で蒸煮したとき、蒸煮開始から16分後の50℃における粘度(以下、RVA粘度ともいう)が、3000mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる。
【0017】
【化1】

上記の通り測定した澱粉系高分子化合物の蒸煮16分後の開始後16分後の50℃にて保持する段階における粘度は、3000mPa・s以下であり、1500mPa・s以下が好ましく、さらに好ましくは500mPa・s以下である。粘度が3000mPa・s以下であれば、塗工適性が良好であり高濃度で塗工できるため優れている。粘度が3000mPa・sより高くなると塗工適性が劣り、ボイリングやミストなどが発生するため、操業が困難となる。
【0018】
本発明の澱粉由来の高分子化合物は、上記粘度を有していれば特に制限されず、変性方法、原料の品種なども自由である。本発明の澱粉系高分子としては、澱粉を変性、修飾、加工などしたものが挙げられ、具体的には、例えば、酸化澱粉、酸化アセチル化澱粉、ヒドロキシエチル澱粉(HES)、燐酸エステル澱粉、エステル化澱粉、デキストリンなどが挙げられる。また、本発明で使用する澱粉系高分子の好ましい原料としては、トウモロコシ、ポテト、タピオカなどを挙げることができる。
本発明の粘度を満足する澱粉系高分子としては、例えば、低粘度のヒドロキシエチル澱粉(HES)、酸化アセチル化タピオカ澱粉、デキストリンなどがある。これらの澱粉系高分子は、低粘度で粘度安定性があり、強度も優れている。
デキストリンとは、澱粉を加水分解して得られる澱粉系高分子であり、α-グルコースがグリコシド結合によって重合しており、糊精(こせい)とも呼ばれる。通常の澱粉は分子量が大きいが、デキストリンは澱粉の加水分解の工程で生ずる中間性生物であり、オリゴマー(グルコースが数個〜20個程度が結合したもの)程度の分子量しかないとされている。白色デキストリンをさらに加水分解するといわゆる黄色デキストリンとなるが、黄色デキストリンだと安定性が低く、クリア塗工層が着色するおそれがあるため、本発明においては白色デキストリンの使用が好ましい。
【0019】
本発明のクリア塗工液中の澱粉由来の高分子化合物の含有量は、5重量%〜40重量%の範囲で、目標とする塗工量にあわせて濃度を調整する。濃度は、10重量%〜20重量%が好ましい。高濃度で塗工することにより、表面強度が向上する傾向がある。
クリア塗工する表面塗工剤の種類として、上述した澱粉由来の高分子化合物以外にも各種の水溶性高分子を併用できる。澱粉由来の高分子化合物以外の各種の水溶性高分子の配合量は、表面塗工剤全固形分中の10重量%以下が好ましい。水溶性高分子物質としては、上述した澱粉由来の高分子化合物以外の、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉などの澱粉;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール;スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを適宜1種以上使用できる。また、紙に吸水抵抗性を付与するために、前記の水溶性高分子物質の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物など一般的な表面サイズ剤を併用塗布することができるが、中性抄紙の場合、サイズ剤のイオン性がカチオン性であるものを塗布することが好ましい。
【0020】
澱粉系高分子の塗工量は、多い方が好ましく、両面合計で固形分で2.0g/m以上であり、2.3/m以上であることが好ましく、2.6g/m以上であることがより好ましい。2.0g/m以下であると、特殊な澱粉系高分子の効果が十分に発揮されず、十分な引っ張り強度、曲げこわさが発揮されない。上限は特に限定しないが、塗工量を多くするとクリア塗工前の原紙坪量を下げる必要があり、クリア塗工前の引張り強度や引裂き強度が低下し、断紙が発生しやすくすることから、一般的には、6.0g/m以下が好ましい。
【0021】
本発明においては、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常のクリア塗工に配合される各種助剤を適宜使用できる。
原紙
[原料パルプ]
本発明で製造される新聞用紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。中でも、環境面から脱墨パルプの使用が多いほど望ましい。具体的には、全パルプ固形分に対し脱墨パルプを50重量%、好ましくは60重量%、さらに70重量%以上であることがより好ましい。もちろん、脱墨パルプを100重量%使用することが最も好ましい。
【0022】
[填料]
本発明の紙に使用される填料は、紙中灰分が紙の絶乾重量に対し、10〜30重量%であり、好ましくは12〜25%、さらに好ましくは14〜20%である。本発明で原紙に含有される填料としては、抄紙時に、用紙中に含有される灰分が上記の範囲となるように添加する。また、本願によれば、澱粉系高分子の塗工量を多くすることができるため、灰分を20重量%以上、さらには25重量%以上としても、新聞用紙のこわさや印刷適性を効果的に向上させることができる。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、40重量%以下であることが好ましい。一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。
【0023】
原紙に添加する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。
【0024】
特に、本発明においては、安価でかつ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを填料として使用することが好ましい。炭酸カルシウムとしては、白色度、不透明度向上の他、原紙中での均一な填料分布が得られることから、針状またはロゼッタ型の軽質炭酸カルシウムが望ましい。炭酸カルシウムの含有量としては、紙絶乾重量あたり5〜30重郎%が好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)などの複合填料も使用可能である。酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。
【0025】
[その他添加剤]
本発明においては、内添用として、公知の製紙用添加剤を使用することができる。製紙用薬品は、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば、例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。中でも、短時間で紙料との混合ができるという本発明の効果を大きく享受できる点で、製紙用薬品として歩留剤を添加することが特に好ましい。歩留剤の他、本発明の製紙用薬品として好適に使用できるものとしては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;などを挙げることができる。
【0026】
これらの助剤は、本発明の填料のスラリーに予め添加してから抄紙機に施用してもよく、また、本発明の填料のスラリーと別々に抄紙機に施用してもよい。
[抄紙方法・抄紙機]
上記のようにして製紙用薬品を混合された紙料は、ヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄紙される。本発明は、種々の抄紙機や抄紙法に適用することができる。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。
【0027】
本発明の抄紙系は、特に制限されず、中性紙でも酸性紙でもよいが、本発明の紙が炭酸カルシウムを比較的多く含有する場合、中性紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、紙面pHが6.0〜9.0であることが好ましく、6.8〜8.0であることがより好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0028】
[原紙の坪量]
本発明の原紙の坪量は低坪量であることが好ましく、具体的には40g/m以下が好ましいが、39g/m以下がさらに好ましく、38g/m以下がより一層好ましい。ただし、過度に低坪量とすると抄紙機で断紙が多発するため、より好ましくは30〜40g/m、更に好ましくは35〜40g/mである。本発明によれば、低坪量でありながら引っ張り強度や曲げこわさを良好とすることができる。したがって、原紙が低坪量であるほど、本発明の効果は顕著となる。
【0029】
さらに、本発明においては、抄造した原紙に種々の表面処理を施すことができる。表面処理としては、顔料塗工やクリア塗工などの表面塗工を施すこともできるし、カレンダー処理を施すこともできる。
【0030】
本発明の新聞用紙の坪量は、43g/m未満であり、41g/m以下が好ましく、40g/m以下がより好ましい。
本発明において、原紙表面に表面処理剤を塗工する場合、例えば、プレドライヤーとアフタードライヤーの間に設置された表面塗工装置を利用することができる。塗工装置は、一般に使用されるもの用いることができ、新聞用紙用の抄紙機ではゲートロールサイズプレスなどのフィルムトランスファー型のサイズプレスが一般的に用いられ、本発明においても好ましく用いることができる。
【0031】
[プレカレンダー処理]
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくこともできる。
【0032】
[顔料塗工]
本発明のオフセット印刷用新聞用紙は、顔料塗工により顔料塗工層を設けることもできる。本発明の印刷用紙における顔料塗工層は、単層であっても多層であってもよい。本発明において塗工方法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。もちろん、本発明においては、このような顔料塗工を施さなくてもよい。顔料塗工を施した場合、紙の灰分は、顔料塗工層に含まれる無機物により高くなるため、本発明のある態様において、10重量%〜40重量%程度が好ましく、12重量%〜35重量%程度がより好ましい。
【0033】
本発明のオフセット印刷用新聞紙は、以上のように得られた原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工・乾燥して塗工層を設けることができる。塗工は、原紙の表面片面でも両面でも良いが、カールしない、表裏の物性が異ならないということから、両面塗工が好ましい。
【0034】
また、顔料塗工する場合、本発明の塗工層に用いる顔料としては、顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料;プラスチックピグメント等の有機顔料を適宜選択して使用できる。
【0035】
本発明で使用する接着剤(バインダー)について、特に制限はなく、例えば、好ましい接着剤として、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。また、前述した澱粉由来の高分子化合物を使用することもできる。顔料と接着剤の割合は公用の範囲で使用することができる。
【0036】
本発明で用いる塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤などの各種助剤を適宜使用できる。
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が500〜2000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0037】
本発明においては、通常用いられるコータであればいずれを用いても良い。オンマシンコータでもオフマシンコータでも良く、オンマシンコータであれば、サイズプレスコータ、ゲートロースコータなどのロールコータ、ブレードコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータなどのコータを使用できる。塗工速度は、特に限定されないが、現在の技術ではブレードコーターでは500〜1800m/分、サイズプレスコータでは500〜3000m/分が好ましい。
【0038】
本発明における顔料塗工液の塗工量は、片面あたり固形分で2〜15g/mが好ましく、5〜12g/mがより好ましく、5〜10g/mがさらに好ましい。
【0039】
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0040】
本発明においては、紙表面にカレンダー処理を施すこともできるが、カレンダー装置の種類と処理条件は特に限定はなく、金属ロールから成る通常のカレンダーやソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公用の装置を適宜選定し、品質目標値に応じて、これらの装置の制御可能な範囲内で条件を設定すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、説明中、「%」および「部」は特に断らない限り、「重量パーセント」および「重量部」を示す。また、材料添加率については、特に指定が無い場合は、固形分の添加率を示す。
【0042】
[紙質評価]
本発明の新聞用紙の紙質は、下記に規定される方法に準じて測定した。
(1)坪量:ISO536
(2)紙中灰分:ISO1762
(3)引張り強さ(MD):JIS P 8113
(4)ISO曲げこわさ(MD):ISO2493に則り、MD方向(抄紙方向)の曲げこわさを測定した
(5)操業性:ゲートロールコーターで塗工中にボイリング、ミストの発生状況を目視にて次の基準により3段階で評価した。○:良好、△:やや悪い。×:悪い
実施例1
DIP(カナダ標準濾水度180ml)80部、TMP(濾水度100ml)15部、及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、濾水度600ml)5部を混合離解して調製したパルプスラリーに、対パルプ固形分に対し有姿0.5%の液体硫酸バンドを添加し、製品灰分が15%になるように軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を添加し、対パルプ固形分350ppmの歩留まり向上剤を添加した後、このスラリーを1%まで希釈して紙料を調成した。
【0043】
この紙料を、ツインワイヤー型抄紙機を用いて抄紙速度1200m/分で中性抄紙して坪量37.0g/mの新聞用紙原紙を得た。得られた原紙は、紙面pHが7.0であった。
【0044】
この原紙にゲートロールコーターを用いて、接着剤(バインダー)として低粘度ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2005:蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度1500mPa・s)、表面サイズ剤としてカチオン性スチレン/アクリル酸エステル共重合体を含む表面塗工剤(ヒドロキシエチル化澱粉の固形分濃度14.5%、表面サイズ剤の固形分濃度0.20%)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に塗工し、高温ソフトニップカレンダーで表面処理しオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。ヒドロキシエチル化澱粉とカチオン性表面サイズ剤の塗工量は、それぞれ3.0g/m(両面)及び0.040g/m(両面)であった。
【0045】
得られた新聞用紙について、前述の方法で、引張り強さ、ISO曲げこわさを測定した。
実施例2
原紙坪量を38.0g/mとし、低粘度ヒドロキシエチル化澱粉の塗工量を2.0g/mとした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0046】
実施例3
接着剤を白色デキストリン(Roquette社製Stabilys A040、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度100mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0047】
実施例4
接着剤を低粘度尿素燐酸エステル化澱粉(日本食品加工社製MS4600、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度2000mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0048】
実施例5
接着剤を低粘度酸化澱粉(敷島スターチ社製マーメイド210、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度2500mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0049】
実施例6
原紙坪量を34.0g/mとした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:37.0g/m)。
【0050】
実施例7
製品灰分が20%となるように軽質炭酸カルシウムを添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0051】
比較例1
原紙坪量を39.2g/mとし、ゲートロールコーターでの塗工量を0.8g/mとした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0052】
比較例2
原紙坪量を42.0g/mとし、接着剤をヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度8000mPa・s以上)に変更し、澱粉塗工量を0.8g/mとした以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:42.8g/m)。なお、現在一般的な超軽量新聞用紙(SL、42.8g/m)においては、42g/m程度の原紙に両面で0.8g/m程度の表面塗工を行うことが一般的である。
【0053】
比較例3
接着剤をヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2035、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度8000mPa・s以上)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0054】
比較例4
接着剤を白色デキストリン(Roquette社製Stabilys A020、蒸煮16分後の160rpmでのRVA粘度6000mPa・s)に変えた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0055】
比較例5
原紙坪量を39.2g/mとし、ゲートロールコーターでの塗工量を0.8g/mとし、製品灰分が20%となるように軽質炭酸カルシウムを添加した以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用新聞用紙を得た(坪量:40.0g/m)。
【0056】
【表1】

上の表に結果を示す。表から明らかなように、本発明にしたがって、蒸煮後の特定時間における粘度が極めて低い澱粉を塗工することにより、引張強度、曲げこわさ、表面強度に優れた新聞用紙を製造することができた。特に本発明によれば、新聞原紙と塗工量のバランスを、現在一般的なものよりも原紙を軽量化し塗工量を増やすことが可能になり、ユニークな新聞用紙を製造することが可能になる。また、本発明によれば、紙中灰分量を20%程度まで増大させても、引張強さや曲げ強度を向上ないし維持することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m以上塗工し、坪量が43g/m未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙であって、
澱粉系高分子として、固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を用いる、上記新聞用紙。
【請求項2】
原紙坪量が40.3g/m以下である、請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項3】
填料として、軽質炭酸カルシウムを用いる、請求項1または2に記載の新聞用紙。
【請求項4】
上記軽質炭酸カルシウムの含有量が、5〜30重量%である、請求項3に記載の新聞用紙。
【請求項5】
澱粉系高分子を原紙上に両面合計で2.0g/m以上塗工し、坪量が43g/m未満で、紙中灰分が10重量%を超える新聞用紙の製造方法であって、
固形分濃度35重量%の澱粉系高分子スラリーを、ラピッドビスコアナライザー(Rapid Visco Analyzer:RVA)を用いて、0〜5分の5分間で98℃まで昇温、5〜9分の4分間は98℃に保持、9〜12分の3分間で50℃まで降温、12〜16分の4分間は50℃に保持という蒸煮条件で蒸煮したときに、蒸煮16分後の粘度が3000mPa・s以下である澱粉系高分子を原紙上に塗工することを含む、上記方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214963(P2012−214963A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72874(P2012−72874)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】