説明

新聞用紙及び新聞用紙の製造方法

【課題】古紙パルプが高配合とされていながら、引張強さや、嵩、紙厚、腰等の物性低下が防止された新聞用紙とする。
【解決手段】パルプ原料の80質量%以上が古紙パルプである新聞用紙について、紙面pHを6.0〜7.0とし、JIS P 8251に準拠して測定した灰分を5〜10質量%、かつカルシウム含有割合を2質量%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプ高配合の新聞用紙及び新聞用紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、新聞古紙は組織的な回収が進められており、再生処理によって古紙パルプとされた後、新聞用紙のパルプ原料として使用(配合)されている。この配合割合は、資源の有効利用、環境保護等の観点から、近年、特に高まる傾向にある。しかしながら、古紙パルプの使用は、次の問題を抱えている。すなわち、再生処理によってパルプ繊維が脆くなっているため、得られる新聞用紙の引張強さが低下するとの問題、フィブリルが減少しているため、得られる新聞用紙の嵩、紙厚、腰等が低下するとの問題である。特に古紙パルプの配合割合が高まれば高まるほど何度も再生処理された古紙パルプの配合割合が増えることになり、この問題が顕著になる。
【0003】
また、新聞用紙には填料が内添されるが、近年、この填料として炭酸カルシウムが選択される傾向にある(例えば、特許文献1参照。)。したがって、古紙パルプの配合は持込炭酸カルシウムの存在を意味し、古紙パルプの高配合化は持込炭酸カルシウムの増加を意味する。しかるに、炭酸カルシウムは、同文献にも記載されているようにバッファ効果等を有しており、硫酸バンドの定着性能を阻害するなど、他の薬剤に影響を与える。また、酸性抄紙の場合は、炭酸カルシウムが溶出してスケールが発生するため、抄紙機を停止してスケール除去を行う必要等が生じ、操業性が低下する。
【0004】
そこで、同文献は、炭酸カルシウムを抄紙工程の可及的後段において添加するとしているが、持込炭酸カルシウムの場合は、当然、このような方法では解決することができない。また、炭酸カルシウムも填料の一種であるところ、填料が増加すると、得られる新聞用紙の嵩や引張強さが低下するとの問題が生じる。したがって、同じく填料の一種である印刷不透明度を向上させるに効果的なホワイトカーボンの添加量を制限しなければならないとの問題が生じる。
【0005】
そこで、特許文献2〜4に開示される古紙パルプの分級方法を利用して持込填料の割合を下げることも考えられる。しかしながら、この方法によると、持込填料だけではなく微細繊維も除去されてしまい、古紙パルプの歩留り(再生率)が低下するとの問題が生じる。また、新聞古紙の再生処理において脱墨処理等を繰り返して持込填料を減らすことも考えられる。しかしながら、再生処理は、パルプ繊維の劣化、フィブリルの減少等を招き、得られる新聞用紙の引張強さ、嵩等が低下する原因となり、処理の繰り返しのみで持込填料の割合を下げるのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開9−078491号公報
【特許文献2】特開2002−180394号公報
【特許文献3】特開2005−9057号公報
【特許文献4】特開2005−42265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、古紙パルプが高配合とされていながら、引張強さや、嵩、紙厚、腰等の物性低下が防止された新聞用紙、及びこの新聞用紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
パルプ原料の80質量%以上が古紙パルプである新聞用紙であって、
紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が5〜10質量%、かつ下記式で算出したカルシウム含有割合が2質量%以下である、
ことを特徴とする新聞用紙。
カルシウム含有割合(酸化物換算、質量%)=前記灰分(質量%)×当該灰分中のカルシウム含有率(酸化物換算、質量%)÷100
ここで、灰分中のカルシウム含有率は、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)を用い、元素分析をして得た値である。
【0009】
(主な作用効果)
紙面pHが6.0〜7.0となる範囲で、例えば、硫酸、硫酸バンド等の添加によるカルシウムの溶解除去等を行い、JIS P 8251に準拠して測定した灰分を5〜10質量%としつつ、カルシウム含有割合を2質量%以下とすることで、古紙パルプが高配合とされていながら、引張強さや、嵩、紙厚、腰等の物性低下が防止された新聞用紙となる。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
パルプ原料の80質量%以上が古紙パルプで、かつ顔料及び接着剤を含む表面処理剤が塗布された新聞用紙であって、
紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が10〜15質量%、かつ上記式で算出したカルシウム含有割合が4質量%以下である、
ことを特徴とする新聞用紙。
【0011】
(主な作用効果)
顔料及び接着剤を含む表面処理剤の塗布は、当然、抄紙工程よりも後段で行われ、当該顔料は抄紙に影響を及ぼさない。したがって、表面処理剤を塗布する場合は、JIS P 8251に準拠して測定した灰分を15質量%以下に、カルシウム含有割合を4質量%以下に留めれば足りる。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
JIS P 8188に準拠して測定した密度が0.60〜0.69g/cm3、JIS P 8113に準拠して測定した引張強さ(縦)が2.1〜3.1kN/m、JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した印刷不透明度が89〜94%である、
請求項1又は請求項2記載の新聞用紙。
【0013】
(主な作用効果)
この発明の作用効果は、後述する。
【0014】
〔請求項4記載の発明〕
パルプ原料から原料スラリーを調成するスラリー調成工程と、前記原料スラリーを抄紙する抄紙工程と、を有し、前記パルプ原料の80質量%以上を古紙パルプとする新聞用紙の製造方法であって、
得られる新聞用紙が、紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が5〜10質量%、かつ上記式で算出したカルシウム含有割合が2質量%以下となるように、
前記スラリー調成工程において原料スラリーに、硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方を添加する、
ことを特徴とする新聞用紙の製造方法。
【0015】
(主な作用効果)
本発明によると、請求項1記載の発明と同様の作用効果を奏する新聞用紙を得ることができる。また、当該新聞用紙を製造するにおいて、硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方を添加する方法を採用するため、炭酸カルシウムがカルシウムイオンとして排水中に溶解した状態で系外に排出されるが、前述した微細繊維除去による歩留り低下の問題や、再生処理の繰り返しによるパルプ繊維の劣化、フィブリルの減少等の問題は生じない。
【0016】
〔請求項5記載の発明〕
前記硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方は、前記スラリー調成工程における原料スラリーのカルシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度との積が300000〜3000000ppmとなるように添加する、
請求項4記載の新聞用紙の製造方法。
【0017】
(主な作用効果)
硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方を、カルシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度との積が300000〜3000000ppmとなるように添加することで、硫酸カルシウムの発生、つまりスケーリングの発生が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、古紙パルプが高配合とされていながら、引張強さや、嵩、紙厚、腰等の物性低下が防止された新聞用紙、及びこの新聞用紙の製造方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
〔パルプ原料〕
本形態の新聞用紙を製造するためのパルプ原料には、古紙パルプを80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%配合する。この古紙パルプには印刷処理が施された古紙を原料とする脱墨パルプのほか、印刷処理が施されていない損紙古紙等を原料とする離解パルプ等も含まれる。
【0020】
古紙としては、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、色上古紙、ケント古紙、上白古紙、コート古紙、複写古紙、損紙古紙等を例示することができるが、好ましくは新聞古紙である。
【0021】
古紙パルプには、20質量%未満となる範囲で、機械バージンパルプ、化学バージンパルプ、半化学バージンパルプ等のバージンパルプを配合することができる。
【0022】
〔スラリー調成工程〕
本形態においては、パルプ原料から原料スラリーを調成するスラリー調成工程において、原料スラリーに硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方を、好ましくは硫酸を添加する。硫酸や硫酸バンドの添加により、炭酸カルシウムが排水中に溶解し、当該排水とともに系外に排出される。したがって、微細繊維除去による歩留りが低下するとの問題や、再生処理の繰り返しによりパルプ繊維が劣化するとの問題、フィブリルが減少するとの問題、等が生じない。
【0023】
ただし、硫酸や硫酸バンドを過剰に添加すると、スケーリング発生等の問題が生じる可能性がある。そこで、この硫酸や硫酸バンドの添加量は、得られる新聞用紙の紙面pHが6.0〜7.0、好ましくは6.4〜6.7となるように、JIS P 8251に準拠して測定した灰分が5〜10質量%、好ましくは6〜8質量%となるように、かつ下記式で算出したカルシウム含有割合が2質量%以下、好ましくは0.7〜1.8質量%、より好ましくは0.8〜1.6質量%となるように行う。なお、これらの条件は、硫酸や硫酸バンドの添加のみで実現しなければならないとするものではなく、例えば、灰分の場合は、別途填料を内添したうえで上記条件を満たしてもよい。
カルシウム含有割合(酸化物換算、質量%)=前記灰分(質量%)×当該灰分中のカルシウム含有率(酸化物換算、質量%)÷100
【0024】
ここで、灰分中のカルシウム含有率は、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)を用い、元素分析をして得た値である。
【0025】
ここで、紙面pHは、紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP:pH4.8〜6.8、MPC−CR:pH6.8〜8.8)を使用し、変色標準計で目視にて測定した値である。
【0026】
紙面pHが6.0未満となるように添加すると、硫酸や硫酸バンドが炭酸カルシウムと反応して炭酸ガス及び硫酸カルシウムが生じ、硫酸カルシウムが抄紙系内に付着しスケールトラブルを生じる可能性がある。また、抄紙pHが低下することで引張強さが低下する可能性がある。他方、紙面pHが7.0を超えるように添加すると、灰分中の炭酸カルシウム低減効果が低く、結果、灰分割合が高くなり、嵩や腰が低下する可能性がある。また、灰分が5質量%未満となるように添加すると、得られる新聞用紙の不透明度が不十分になる可能性があり、また、硫酸カルシウムのスケールトラブルが生じる可能性がある。他方、灰分が10質量%を超えるように添加すると、得られる新聞用紙の引張強さが不十分になる可能性があり、また、嵩や腰が低下する可能性がある。さらに、カルシウム含有割合が0.7質量%未満となるように添加すると、硫酸カルシウムによるスケールトラブルが生じる可能性がある。他方、カルシウム含有割合が2.0質量%を超えるように添加すると、嵩、腰が低下するとともに、灰分増加により引張強さが低下するとの問題、抄紙薬品の利きが悪くなるとの問題、等が生じる可能性がある。
【0027】
また、硫酸や硫酸バンドは、原料スラリーのカルシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度との積(イオン積)が300000〜3000000ppmとなるように、好ましくは450000〜1000000ppmとなるように添加すると好適である。持込炭酸カルシウムの量や添加する硫酸や硫酸バンドの量によってイオン積は常に変化するが、このイオン積を上記範囲とすることによって、カルシウムイオンを十分に除去することができ、また、スケーリングの発生を防止することができる。さらに、イオン積が300000〜3000000ppmとなるようにしつつ、灰分が5〜10質量%となるようにすることで、ワイヤーパートにおける白水濃度上昇が抑制され、リテンションの向上を図ることができる。しかも、引張強さが向上し、印刷不透明度は低下傾向となるが、炭酸カルシウムよりも印刷不透明度向上効果の高いホワイトカーボン等を添加することによって補うことができる。
【0028】
本形態において、炭酸カルシウムを溶解させる薬品として、硫酸や硫酸バンドを用いることができるが、硫酸、特に濃度4質量%未満の希硫酸を使用するのが好ましい。硫酸は、安価であり、また、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)のような凝結剤としての機能を有しないため、添加量を増減しても微細繊維や他の薬品の歩留りに与える影響が少ない。
【0029】
硫酸や硫酸バンドの添加は、1回で行う必要はなく、2回、3回又はそれ以上の複数回に分けて行うことができる。複数回に分けて添加することにより、pHショックによるピッチなどの析出が防止され、また、硫酸や硫酸バンドの濃度が部分的に高くなり、過剰に炭酸カルシウムと反応して硫酸カルシウムのスケールが析出するのを防止できる。さらに、複数回に分けて添加すると、カルシウムイオン濃度、硫酸イオン濃度のコントロールが容易になる。硫酸や硫酸バンドの添加を複数回に分けて行う場合は、当該硫酸や硫酸バンドを、例えば、流送タンク、及びこの後段の配合ボックスにおいて添加することができる。なお、硫酸を用いた場合は、配合ボックス後段のマシンチェストにおいて硫酸バンド等の定着剤やホワイトカーボン等の填料を添加することができる。この形態によると、硫酸の添加によって炭酸カルシウムが溶解除去された状態で硫酸バンドが添加されることになるため、スケールの発生が防止される。
【0030】
原料スラリーのイオン積の測定には、測定精度よりも測定容易性を重視した装置を使用するのが好ましく、例えば、(株)共立理化学研究所のDIGITAL WATER ANALYZER(ラムダ9000)を使用することができる。測定容易な装置を使用し、添加回数及び測定頻度を多くすることによって、より確実に炭酸カルシウムの溶解を進めることができ、また、スケールの発生も防止することができる。
【0031】
なお、以上において、カルシウムイオン濃度は、通常300〜1000ppm、好ましくは450〜550ppmであり、硫酸イオン濃度は、通常1000〜3000ppm、好ましくは1000〜2500ppmである。カルシウムイオン濃度は、(株)共立理化学研究所のラムダー9000を用い、測定原理をフタレインコンプレクソン法として試薬型式LR−Ca−B試薬No.48を用い測定した値である。また、硫酸イオン濃度は、(株)共立理化学研究所のラムダー9000を用い、測定原理を硫酸バリウム比濁法として試薬型式LR−SO4、試薬No.16を用い測定した値である。
【0032】
本形態においては、JIS P 8251に準拠して測定した灰分が10質量%以下となる範囲で、填料を添加することができる。この填料としては、ホワイトカーボンのほか、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等を使用することができる。
【0033】
また、適宜填料を内添した(内添する)原料スラリーには、例えば、澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等の紙力増強剤や、ロジン、澱粉類、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、中性ロジン等の内添サイズ剤、ポリアクリルアミド、その共重合体、ケイ酸ナトリウム等の歩留り向上剤、染料、顔料等の色素といった通常の紙に用いられる添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加することができる。
【0034】
〔抄紙工程等〕
スラリー調成工程において調成した原料スラリーは、抄紙工程、乾燥工程、平滑化工程等を経て、新聞用紙とする。原料スラリーの抄紙は、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙のいずれであってもよいが、pH6.0〜7.5の中性抄紙によるのが好適である。また、抄紙機としては、長網抄紙機、円網抄紙機、オントップフォーマー、ギャップフォーマー等の公知の抄紙機を使用することができる。
【0035】
本形態においては、抄紙、乾燥等して得た用紙の表面に、必要により顔料を含まない表面処理剤を塗布することができる(塗工工程)。この表面処理剤としては、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等の澱粉、これらの澱粉に酸化処理、酵素処理等が施された変性澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の高分子材料、等を配合することができる。また、この表面処理剤には、例えば、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を配合することもできる。
【0036】
この表面処理剤の固形分濃度は、特に限定されず、例えば、塗布装置や塗布量等に応じて、2〜25質量%に調整することができる。
【0037】
この表面処理剤の塗布量(乾燥固形分換算、片面当たり)は、0.4〜3.0g/m2、好ましくは0.7〜2.5g/m2とすることができる。この表面処理剤の塗布量が少な過ぎると、塗布による効果が得られない可能性がある。他方、この表面処理剤の塗布量が3.0g/m2を超えると、コスト高となるだけでなく、新聞用紙の表面が湿った状態になったときにネッパリ性と呼ばれる粘着性を発現し、印刷適性の低下につながる可能性がある。
【0038】
この塗工工程においては、顔料及び接着剤を含む表面処理剤を塗布することもできる(顔料を含むという点で、上記表面処理剤とは異なる。)。顔料を含む表面処理剤の塗布により用紙表面の平滑性が改善され印刷適性が向上する。この顔料を含む表面処理剤の塗布によってJIS P 8251に準拠して測定した灰分及びカルシウム含有割合が変化することになる。しかしながら、顔料を含む表面処理剤の塗布は、当然、抄紙工程よりも後段で行われ、当該顔料は抄紙原料に影響を及ぼさない。したがって、顔料を含む表面処理剤を塗布する場合は、JIS P 8251に準拠して測定した灰分を15質量%以下に、カルシウム含有割合を4質量%以下に留めれば足りる。なお、好ましくは灰分が10質量%以上である。
【0039】
この表面処理剤中の顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレー、デラミネーテッドクレー等のクレー、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機粒子、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等を使用することができる。
【0040】
また、顔料を含む表面処理剤中の接着剤としては、例えば、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米等を原料とする澱粉、これらの澱粉に酸化処理、酵素処理等が施された変性澱粉等の澱粉類、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の合成高分子化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の合成樹脂ラテックス、天然ゴムラテックス等を使用することができる。さらに、表面処理剤には、必要に応じて消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等の各種助剤を添加することができる。
【0041】
この表面処理剤の固形分濃度(顔料の濃度)は特に限定されないが、好ましくは15〜40質量%に調整する。
【0042】
顔料を含む表面処理剤の塗布量(乾燥固形分換算、片面当たり)は、0.3〜2.0g/m2、好ましくは0.5〜1.5g/m2とすることができる。表面処理剤の塗布量が少な過ぎると、十分な平滑性が得られ難く、インキの着肉性の向上効果が得られない可能性がある。他方、表面処理剤の塗布量が2.0g/m2を超えると、コスト高となるだけでなく、新聞用紙の表面が湿った状態になったときにネッパリ性と呼ばれる粘着性を発現し、印刷適性の低下につながる可能性がある。
【0043】
表面処理剤は、例えば、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス等のサイズプレス、ゲートロールコータ、ブレードコータ、バーコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等のコータによって用紙表面に塗布することができる。
【0044】
〔新聞用紙〕
本形態の新聞用紙は、JIS P 8188に準拠して測定した密度が0.60〜0.69g/cm3、好ましくは0.63〜0.66g/cm3であると好適である。密度が0.60g/cm3未満であると、紙質強度が低下して高速輪転印刷における断紙の原因になるとともに、紙粉が発生する恐れがあり、また、インキの着肉が低下し印面が低下する可能性がある。他方、密度が0.69g/cm3を上回ると、印刷後の裏抜けが生じやすくなり、嵩、腰が低下し印刷作業性や手肉感が低下する可能性がある。
【0045】
本形態の新聞用紙は、JIS P 8113に準拠して測定した引張強さ(縦)が2.1〜3.1kN/m、好ましくは2.2〜2.8kN/mであると好適である。引張強さが2.1kN/m未満であると、高速輪転印刷において断紙等のトラブルが発生する可能性があり、また、用紙が伸びやすくなるためカラー印刷時の色ずれが発生する可能性がある。他方、引張強さが3.1kN/mを上回るように製造するためには、紙力増強剤等の増量が必要になるため、コスト上昇に繋がる可能性があり、また、強度の高いクラフトパルプの配合率を高めた場合は不透明度が低下する可能性がある。
【0046】
本形態の新聞用紙は、JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した印刷不透明度が89〜94%、好ましくは90〜93%であると好適である。印刷不透明度が89%未満であると、裏抜けが生じる可能性がある。他方、印刷不透明度が94%を超えるものとするには、填料の増量が必要になるが、填料の増量は引張強さの低下、紙粉の発生等を招くため、新聞用紙としての総合的なバランスがとれなくなる可能性がある。
【0047】
本形態の新聞用紙は、JIS P 8149に準拠して測定した(白紙)不透明度が90〜95%、好ましくは92〜94%であると好適である。不透明度が90%未満であると、白紙外観が低下するだけでなく裏抜けが生じる可能性がある。他方、不透明度が95%を超えるものとするには、填料の増量が必要になるが、填料の増量は引張強さの低下、紙粉の発生等を招くため、新聞用紙としての総合的なバランスがとれなくなる可能性がある。
【0048】
本形態の新聞用紙は、JIS P 8118に準拠して測定した紙厚が65〜75μm、好ましくは67〜72μmであると好適である。紙厚が65μm未満であると、十分な嵩高性を得ることができず、手肉感がない新聞用紙となる可能性があり、また、折り難い新聞用紙となる可能性がある。他方、紙厚が75μmを超えると、嵩高過ぎ、高速輪転印刷機において詰まる可能性や、断紙が発生する可能性がある。
【0049】
本形態の新聞用紙は、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が42〜49g/m2、好ましくは43〜48g/m2、より好ましくは43〜45g/m2であると好適である。坪量が42g/m2未満であると、不透明度が不十分になる可能性があり、また、17〜18万部/時間にも及ぶ近年の高速輪転印刷においては、断紙やシワが発生し易くなる可能性がある。この点、填料の増量によって不透明度を向上させることができるが、填料の増量は前述したように引張強さの低下、紙粉の発生等を招く可能性がある。他方、坪量が49g/m2を超えると、輸送における労力の軽減等を図れなくなる可能性がある。
【0050】
〔その他〕
本形態においてパルプ原料に配合する古紙パルプの製造方法は特に限定されないが、脱墨工程が2段以上の多段とされている方法、例えば、離解工程、粗選工程、1回目の脱墨工程、精選工程、2回目の脱墨工程の順に処理が進む方法であると好適である。この工程によると、灰分を15質量%程度まで下げることができ、後段の硫酸や硫酸バンドの添加によって確実に灰分を10質量%以下に下げることができる。もちろん、脱墨工程が2段以上の多段とされていると、脱インキ率が高まるため、得られる古紙パルプ、新聞用紙の白色度が高まるとの効果もある。また、この方法によると漂白工程を省略することができるため、漂白を原因とするパルプ繊維の劣化や、リグニン溶出による不透明度の低下を防止することができる。
【実施例】
【0051】
本発明に係る新聞用紙及びその製造方法の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
【0052】
古紙パルプ100%から成るパルプスラリーを用い、抄紙工程のインレットでのパルプスラリーのカルシウムイオン、硫酸イオンの濃度が表1に示す値となるように古紙パルプ製造工程の流送タンク及び調成工程の配合ボックスに濃度4質量%の稀硫酸を添加してツインワイヤー型抄紙機にて抄紙した。稀硫酸は、濃硫酸(住友化学工業製)を水で希釈して調整後添加した。更に、表面処理剤(顔料を含まない表面処理剤)として酸化澱粉とスチレン系ポリマー(星光PMC(株)製SS2712)とを用い、固形分で酸化澱粉100質量部に対してスチレン系ポリマーが30質量部になるよう混合し、水を加えて濃度調整して表面処理用の塗工液を作成した後、乾燥質量で片面あたり0.5g/m2(両面で1.0g/m2)塗工して表面処理を施し試験片を得、この試験片について各種試験を行った。調成方法、測定条件等は、表1及び下記に示す条件に従った。なお、填料として実施例1から5ではホワイトカーボンを固形分パルプに対して固形分で1.5%、比較例1〜3では固形分で1.0%添加した。
【0053】
(硫酸)
濃硫酸(住友化学工業製)を水で希釈して4質量%に調整後添加したものを用いた。
【0054】
(カルシウムイオン濃度)
(株)共立理化学研究所のラムダー9000、試薬として試薬型式LR−Ca−B試薬No.48を用い、測定原理をフタレインコンプレクソン法として測定した値である。
【0055】
(硫酸イオン濃度)
(株)共立理化学研究所のラムダー9000、試薬として試薬型式LR−SO4、試薬No.16を用い、測定原理を硫酸バリウム比濁法として測定した値である。
【0056】
(カルシウム含有量)
下記式で算出した値である。
カルシウム含有割合(酸化物換算、質量%)=前記灰分(質量%)×当該灰分中のカルシウム含有率(酸化物換算、質量%)÷100
【0057】
ここで、灰分中のカルシウム含有率は、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)を用い、元素分析をして得た値である。
【0058】
(坪量)
JIS P 8124:1998に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0059】
(紙厚)
JIS P 8118:1998に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0060】
(灰分)
JIS P 8251:2003に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0061】
(紙面pH)
紙面用pH測定キット(共立理化学研究所製)にて、試薬(MPC−BCP:pH4.8〜6.8、MPC−CR:pH6.8〜8.8)を使用し、変色標準計で目視にて測定した。
【0062】
(白色度)
JIS P 8212:1998に記載の「パルプ−拡散青色光反射率(ISO白色度)の測定方法」に準拠して測定した。
【0063】
(白紙不透明度)
JIS P 8149:2000に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)」に準拠して測定した。
【0064】
(印刷不透明度)
JAPAN TAPPI No.45:2000に記載の「新聞用紙−印刷後不透明度試験方法」に準拠して測定した。
【0065】
(引張強さ(縦))
JIS P 8113:2006に記載の「定速伸長形引張試験方法」に準拠して測定した。
【0066】
(スケーリング評価)
1ヶ月間使用後にアプローチ配管内部を目視観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:配管表面全体に全くスケーリングが生じていない。
○:配管表面の一部に僅かにスケーリングが生じているが、実用上問題がない。
△:配管表面全体にスケーリングが認められる。
×:配管表面全体のスケーリングが著しく、抄込み欠陥が増加する。
なお、上記評価基準のうち、◎及び○の場合を実使用可能と判断する。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、古紙パルプ高配合の新聞用紙及び新聞用紙の製造方法として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ原料の80質量%以上が古紙パルプである新聞用紙であって、
紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が5〜10質量%、かつ下記式で算出したカルシウム含有割合が2質量%以下である、
ことを特徴とする新聞用紙。
カルシウム含有割合(酸化物換算、質量%)=前記灰分(質量%)×当該灰分中のカルシウム含有率(酸化物換算、質量%)÷100
ここで、灰分中のカルシウム含有率は、前記新聞用紙をJIS P 8251に準拠して灰化した残さをX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)堀場製作所製)を用い、元素分析をして得た値である。
【請求項2】
パルプ原料の80質量%以上が古紙パルプで、かつ顔料及び接着剤を含む表面処理剤が塗布された新聞用紙であって、
紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が10〜15質量%、かつ上記式で算出したカルシウム含有割合が4質量%以下である、
ことを特徴とする新聞用紙。
【請求項3】
JIS P 8188に準拠して測定した密度が0.60〜0.69g/cm3、JIS P 8113に準拠して測定した引張強さ(縦)が2.1〜3.1kN/m、JAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した印刷不透明度が89〜94%である、
請求項1又は請求項2記載の新聞用紙。
【請求項4】
パルプ原料から原料スラリーを調成するスラリー調成工程と、前記原料スラリーを抄紙する抄紙工程と、を有し、前記パルプ原料の80質量%以上を古紙パルプとする新聞用紙の製造方法であって、
得られる新聞用紙が、紙面pHが6.0〜7.0であり、
JIS P 8251に準拠して測定した灰分が5〜10質量%、かつ上記式で算出したカルシウム含有割合が2質量%以下となるように、
前記スラリー調成工程において原料スラリーに、硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方を添加する、
ことを特徴とする新聞用紙の製造方法。
【請求項5】
前記硫酸及び硫酸バンドの少なくとも一方は、前記スラリー調成工程における原料スラリーのカルシウムイオン濃度と硫酸イオン濃度との積が300000〜3000000ppmとなるように添加する、
請求項4記載の新聞用紙の製造方法。

【公開番号】特開2012−97371(P2012−97371A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245550(P2010−245550)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】