説明

新芽野菜及びもやし栽培器具とその栽培方法

【課題】 産業としてではなく、個人が趣味や自家栽培として、あるいは学校等で、新芽野菜やもやしを栽培する際には、概ね以下の課題がある。
ア)発芽及び成長に適した温度環境保持
イ)発芽及び成長に必要な水分の補給並びに腐敗を防ぐための水分交換
ウ)光を遮断できる環境(暗所)保持
エ)発芽及び成長により消費される酸素補充
オ)発芽後に根の支持体となる材料の構造と材質
【解決手段】 新芽野菜及びもやし栽培器具が、遮光性に優れた、主筒、網状根支持体、遮光蓋及び余剰水保持皿の4部材から構成されると共に、組み立てにより一体化でき、且つ、4部材に分解できる構造とした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、特別あるいは専門的な知識や技術を必要とせず、簡易に新芽野菜及びもやしを栽培できる器具とその使用方法に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業としてではなく、個人が趣味や自家栽培として、あるいは学校等で教育の一環として、新芽野菜やもやしを栽培する際には、概ね以下の方法によることが殆どである。
▲1▼皿状や箱状容器の底部に、種子が発芽後の根の支持体となる繊維質や多孔質で吸水性、保水性を有する材料を敷き、この上に種子を蒔き、発芽と成長に必要な水分を補給する。
▲2▼もやしの場合は暗所で、新芽野菜の場合も、概ね栽培期間の殆どを暗所または光量の乏しい陰部で栽培する。
▲3▼発芽後は、成長に必要な水分と空気(酸素)を補給し、同時に腐敗を防止するために少なくとも毎日数回の、清澄な水あるいは栄養分や防腐剤等を添加した水液を、シャワリングやスプレーによって補給する。
▲4▼栽培中は、栽培環境の温度が低くなると成長が遅くなるかまたは停止し、高くなると腐敗しやすくなるために、温度管理が必要となる。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、産業としてではなく、個人が趣味や自家栽培として、あるいは学校等で教育の一環として、新芽野菜やもやしを栽培する場合には、上記の方式には以下のような課題がある。
▲1▼家庭や教育現場等で、発芽や成長に必要な温度条件を満たすためには、適切な温度条件内にある場所に、適宜、栽培器具や容器等を移動、設置する必要がある。また、特に夏季と冬季には冷暖房によって適切な温度環境を維持する必要のある場合もある。
▲2▼水分の補給と交換は、腐敗防止のためにも少なくとも1日2回以上、気温の高い夏季には4回または5回程度が必要となる。
▲3▼水分の補給と交換には、栽培中の当該植物の流失や毀損防止のために注意が必要となる。
▲4▼暗所環境を確保するためには、栽培器具や容器等を箱で蓋ったり、光の入らない家具や建具内に設置することで可能である。しかし、これらの方法では往々にして密閉状態となるため、当該植物の呼吸に必要な酸素不足に陥りやすい。
▲5▼当該植物の呼吸に必要な酸素を供給するためには、空気を連続的あるいは断続的に交換する必要があるが、同時に遮光条件を満たすためには、栽培器具や容器等を蓋う箱等や家具や建具に、別途、何らかの機構が必要となる。
▲6▼発芽後の根の支持体となる、繊維質や多孔質で吸水性、保水性を有する材料は、栽培開始から湿潤であるために、往々にして栽培中に腐敗菌や雑菌が繁殖しやすい。
【0004】
以上の課題を総括すると、従来の栽培方法における課題要因は概ね以下の5点となる。
ア)発芽及び成長に適した温度環境保持の課題
イ)発芽及び成長に必要な水分の補給並びに腐敗を防ぐための水分交換の課題
ウ)光を遮断できる環境(暗所)保持の課題
エ)発芽及び成長により消費される酸素補充の課題
オ)発芽後に根の支持体となる材料の構造と材質の課題
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、特別あるいは専門的な知識や技術を有せずとも、簡易に新芽野菜及びもやしを栽培できる器具とその使用方法を考案した。
【0006】
第一に、新芽野菜及びもやし栽培器具が、主筒、網状根支持体、遮光蓋及び余剰水保持皿の4部材から構成されると共に、組み立てにより一体化でき、且つ、4部材に分解できる構造とした。なお、当該栽培器具の製造方法は特に限定しない。
【0007】
第二に、新芽野菜及びもやし栽培器具の材料を優れた遮光性能を有する材質とした。
【0008】
第三に、遮光蓋及び余剰水保持皿が、主筒の外蓋形状であり、その内径は主筒外形よりも大きく、主筒との間に空隙を有する構造とし、且つ、主筒両端付近側面に、空気の流入出を可能とする複数の穿孔または切り欠き等の空隙を有する構造とした。
【0009】
第四に、余剰水保持皿内の最高水位を、網状根支持体取り付け位置の上限よりも高い構造とした。
【0010】
第五に、根支持体を網状とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本考案の新芽野菜及びもやし栽培器具の使用方法は以下のとおりである。
先ず、図1のように本考案の新芽野菜及びもやし栽培器具を組み立て、遮光蓋を開けて、網状根支持体上に、網状根支持体面積の半分強程度の量の所期の植物種子を蒔き、当該栽培器具を発芽及び成長に適した温度環境内にできるだけ水平に設置する。
【0012】
次に、図2に示すように余剰水保持皿に、播種された種子が半水没状態となる量の水を注ぎ、遮光蓋を閉じる。この後、発芽が確認されるか、または所期時間経過後、余剰水保持皿内の水は廃棄する。
【0013】
次に、1日1回または2回、遮光蓋を開けて、成長に必要な水分をシャワリングやスプレーにて供給し、遮光蓋を閉じる。その後、この作業を繰り返す。
【0014】
成長した新芽野菜またはもやし、あるいは両方は、栽培者が任意に判断した時点で収穫する。その方法は、先ず主筒から網状根支持体を取り外すが、このとき成長した新芽野菜またはもやし、あるいは両方も、取り外した網状根支持体と共に主筒内から取り出される。次に、網状根支持体と成長した新芽野菜またはもやし、あるいは両方を切り離す。
【0015】
収穫後の網状根支持体には、栽培された植物の根が絡み付いているため、たわしやブラシ等で除去及び洗浄した後、再使用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上説明したように構成されていることから、以下に記載する効果を有する。
【0017】
当該新芽野菜及びもやし栽培器具が、主筒、網状根支持体、遮光蓋及び余剰水保持皿の4部材から構成されると共に、組み立てにより一体化でき、且つ、4部材に分解できる構造としたことにより、播種や水分補給及び交換等の作業並びに当該栽培器具の移動と設置が容易になった。
【0018】
当該新芽野菜及びもやし栽培器具の材料を優れた遮光性能を有する材質としたことにより、当該栽培器具を組み立て、一体化した後は、設置場所に関わらず、主筒内の暗所環境を確保できた。
【0019】
遮光蓋及び余剰水保持皿が、主筒の外蓋形状であり、その内径は主筒外形よりも大きく、主筒との間に空隙を有する構造とし、且つ、主筒両端付近側面に、空気の流入出を可能とする複数の穿孔または切り欠き等の空隙を有する構造としたことにより、組み立て後の主筒内の遮光性能を維持すると共に、主筒内の栽培植物が必要とする酸素(空気)の連続的供給が可能となった。
【0020】
余剰水保持皿内の最高水位を、網状根支持体取り付け位置の上限よりも高い構造としたことにより、余剰水保持皿内に所定の水を供給し、播種された種子を半水没状態とすることを可能としたために、播種から発芽までの、特に多くの水分を必要とする期間に必要であった、頻繁な水分補給作業を省略した。また、発芽後は余剰水保持皿内の水を廃棄することにより、成長に必要な空気(酸素)の流入を妨げることがない。
【0021】
根支持体を網状とすることにより、補給された水分の余剰分が余剰水保持皿内に滴下し、少なくとも根支持体の網目の一部は、常に閉塞されないため、成長に必要な空気(酸素)の連続的な流入出を可能とした。
【0022】
任意の植物の、発芽及び成長に適した温度範囲にある環境であれば、特別あるいは専門的な知識や技術を有せずとも、概ね年間を通じて、また、屋内外を問わず、簡易な新芽野菜及びもやしの栽培を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】 本考案の新芽野菜及びもやし栽培器具を組み立てた後の縦断面模式図である。
【図2】 播種後発芽までの、余剰水保持皿内に所定の水を供給し、播種された種子の半水没状態を示す縦断面模式図である。図2中の符号5は、播種された種子を想定している。
【図3】 空気の流入出を可能とする複数の穿孔を施した主筒の模式図である。主筒の横断面形状は円形であるか、多角形であるかを問わないが、筒状であることが望ましい。
【図4】 網状根支持体の斜視模式図である。当該支持体は主筒内側の所定位置に水平に設置される。また、網目は概ね均一とし、各々の網目の内径は播種する種子の外径よりも小さく設定され、播種された種子の落下を防止する。
【符号の説明】
【0024】
1 主筒
2 網状根支持体
3 遮光蓋
4 余剰水保持皿
5 播種された種子
6 播種された種子の半水没状態を示す水位線
7 穿孔または切り欠き加工の、穿孔の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新芽野菜及びもやし栽培器具が、主筒、網状根支持体、遮光蓋及び余剰水保持皿の4部材から構成されると共に、組み立てにより一体化でき、且つ、4部材に分解できる構造。
【請求項2】
新芽野菜及びもやし栽培器具の材料が、優れた遮光性能を有する材質である条件。
【請求項3】
遮光蓋及び余剰水保持皿が、主筒の外蓋形状であり、その内径は主筒外形よりも大きく、主筒との間に空隙を有する構造。
【請求項4】
主筒両端付近側面に、空気の流入出を可能とする複数の穿孔または切り欠き等の空隙を有する構造。
【請求項5】
余剰水保持皿内の最高水位が、網状根支持体取り付け位置の上限よりも高い構造。
【請求項6】
根支持体を網状とし、水分滴下並びに空気の流入出を可能とする構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−195528(P2007−195528A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44523(P2006−44523)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(599008676)
【出願人】(506061370)
【Fターム(参考)】