説明

新規で生理学的に有用なニトロキシル供与体としてのN−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体

本発明は、式(I)、(II)、(III)のN−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体であって、式中、変数はクレームに定義されたとおりであるものに関し、これは、生理的条件下でニトロキシル(HNO)を供与し、心不全および虚血/再灌流傷害を含む、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の、開始および/または進行を処置および/または予防するのに有用である。N−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体は、生理的条件下でHNOを制御された速度で放出し、HNO放出の速度は、N−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体上の官能基の特性および位置を変化させることによって調節される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年9月26日出願の米国特許仮出願第60/995,636号、名称「新規で生理学的に有用なニトロキシル供与体としてのN−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体」の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
合衆国支援の研究または開発に関する記述
本発明は一部において、国立科学財団からの助成番号CHE−0518406の下に政府の支援によってなされた。政府はこの発明に対し一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
心不全の概要
うっ血性心不全(CHF)は、一般的には進行性の生命を脅かす病気であり、心筋収縮が衰え、心臓は自身に戻る血液を適切に送り込むことができなくなり、これはまた代償不全ともよばれる。症状には息切れ、疲労、衰弱、足のむくみ、および運動不耐性が含まれる。身体検査では、心不全の患者はしばしば心拍数および呼吸数の上昇(肺における体液の兆候)、浮腫、頸静脈怒張、および心臓肥大を有する。CHFの最も通常の原因はアテローム性動脈硬化症であり、これは心筋への血流を供給する冠動脈の閉塞の原因である。究極には、かかる閉塞は、後の心機能の低下およびこれに伴う心不全を伴う心筋梗塞の原因となりうる。CHFの他の原因は、心臓弁膜症、高血圧、心臓のウイルス感染、アルコール摂取、および糖尿病を含む。CHFのいくつかのケースは明確な病因がなく発生し、これらは特発性とよばれている。CHFを経験している対象におけるCHFの効果は致命的となりうる。
【0004】
CHFにはいくつかのタイプがある。心臓の拍出周期のどの相においてより影響されるかによって、2つのタイプのCHFが同定される。収縮期心不全は、心臓の収縮能力が減衰した場合に起こる。心臓は十分な量の血液を循環系に押し出すだけの十分な強さで拍動することができずに、左心室駆出分画率の低減へと繋がる。肺うっ血は収縮期心不全の典型的な症状である。拡張期心不全は、心臓の収縮の間の弛緩の不能、および十分な血液の心室への流入不能を指す。心臓出力の維持のために高い充填圧力が必要となるが、左心室駆出分画率から計測された収縮力は典型的に正常である。腹部および足のむくみ(浮腫)は、拡張期心不全の典型的な症状である。心不全を経験している個体はしばしば、ある程度の収縮期心不全および拡張期心不全の両方を有する。
【0005】
CHFはまた、その重症度によっても分類される。ニューヨーク心臓協会は、CHFを4つのクラスに分類している。クラスIは、明らかな症状を伴わず、身体的活動に何の制限もなく;クラスIIは、軽度の身体的活動の制限とともに、通常の活動中または活動後にいくらかの症状を伴い;クラスIIIは、中程度から顕著な身体的活動の制限とともに、通常以下の活動での症状を伴い;クラスIVは、重度から完全な身体的活動の制限とともに、安静時の顕著な症状を伴う。典型的には、個体は病気と共に生きるにつれ、そのクラスを進行させていく。
【0006】
CHFは一般的には慢性的な進行性の病気であると考えられているが、突然発症することもある。このタイプのCHFを急性CHFと呼び、救急疾患である。急性CHFは、心筋梗塞などの心筋の働きに影響を与える急性心筋損傷、または僧帽弁逆流症または心室中核破裂などの弁/心腔統合性に影響を与える急性心筋損傷が原因となりえ、肺浮腫および呼吸困難をもたらす、左心室圧および拡張期圧の急激な上昇に繋がる。
【0007】
通常のCHF処置剤には、血管拡張薬(血管を拡張する薬剤)、陽性変力作用薬(心臓の収縮能力を増大する薬剤)、および利尿薬(体液を減らす薬剤)が含まれる。加えて、ベータ拮抗薬(ベータアドレナリン受容体と拮抗する薬剤)が、軽度から中度の心不全を処置する標準的な剤になっている(Lowes et al., Clin. Cardiol., 23:III 11-6 (2000))。
【0008】
陽性変力作用剤は、ドーパミン、ドブタミン、ドペキサミン、およびイソプロテレノールなどのベータアドレナリン作用薬を含む。しかしながら、ベータ作用薬の利用は、不整脈原性および心臓による酸素要求量の増加などの、潜在的な弊害を有している。加えて、これらの剤によってもたらされる、初期における心筋収縮性の短期間の改善には、主により高い頻度の突然死によってもたらされる促進された死亡率が後続する。Kats, HEART FAILURE: PATHOPHYSIOLOGY, MOLECULAR BIOLOGY AND CLINICAL MANAGEMENT, Lippincott, William & Wilkins (1999)。
【0009】
ベータ拮抗薬は、ベータアドレナリン受容体の機能と拮抗する。当初は心不全において禁忌とされていたものの、臨床試験において死亡率および罹病率の際だった減少をもたらすことが見出された。Bouzamondo et al., Fundam. Clin. Pharmacol., 15: 95-109 (2001)。そのためこれらは心不全の確立した治療法となった。しかしながら、ベータ拮抗薬治療の下で改善した対象であっても、後に代償不全となり、陽性変力作用剤による急性の処置を必要とする場合がある。不幸にもその名が示すとおり、ベータ拮抗薬は、救命救急センターで利用される陽性変力作用ベータ作用薬の活動機序をブロックする。Bristow et al., J. Card. Fail., 7: 8-12 (2001)。
【0010】
ニトログリセリンなどの血管拡張薬は、心不全の処置に長期にわたって利用されてきた。しかしながら、ニトログリセリンの治療的効果の原因は、酸化窒素分子(NO)がニトログリセリンの有益な効果の原因であることが発見された前世紀の終わりまで、知られていなかった。心不全を経験している一部の対象において、酸化窒素供与体が陽性変力作用剤とともに、血管拡張を起こし、心筋収縮性を増大させるために投与された。しかしながら、この併用投与は陽性変力処置剤の有効性を損ないうる。例えば、Hart et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol., 281:146-54 (2001)では、酸化窒素供与体ニトロプルシドナトリウムの、陽性変力作用薬、ベータアドレナリン作用薬ドブタミンとの複合投与は、ドブタミンの陽性変力作用効果を損なうことが報告されている。Hare et al., Circulation, 92 : 2198-203 (1995)もまた、ドブタミンの効力に対する酸化窒素の阻害効果を開示している。
【0011】
米国特許第6,936,639号に記載されているように、生理的条件下でニトロキシル(HNO)を供与する化合物は陽性変力および変弛緩効果を有し、既存の心不全の処置に対して顕著な利点を提供する。その陽性変力/変弛緩作用および負荷軽減効果のために、ニトロキシル供与体は、高い抵抗性負荷および乏しい収縮能に特徴づけられる心血管系疾患の処置に役に立つと報告されている。とくに、ニトロキシル供与化合物は、ベータ拮抗薬治療を受けている個体における心不全を含む、心不全の処置に有用であると報告されている。
【0012】
虚血の概要
虚血は、組織への血液の中断または不十分な供給に特徴づけられる異常(condition)であり、影響を受けた組織において酸素欠乏の原因となる。心筋虚血は、1または2以上の冠動脈の閉塞または狭窄により引き起こされる異常であり、かかる異常はアテローム斑閉塞または破裂を併発しうる。閉塞または狭窄は、非灌流組織の酸素欠乏の原因となり、組織損傷の原因となりうる。さらに、組織の再灌流とこれに引き続く再酸素化によって、血液が再び流れるようになるか、または組織の酸素要求量が正常に復した場合に、酸化ストレスによって付加的な傷害が生じうる。
【0013】
虚血/再灌流傷害は、酸素欠乏とこれに続く再酸素化を原因とする組織障害のことをいう。虚血/再灌流傷害を経験している対象におけるその異常の影響は、とくに傷害が心臓または脳などの重大な器官で起こった場合には、致命的となりえる。
【0014】
したがって、虚血/再灌流傷害を予防するまたはそれから保護する効果のある化合物および組成物は、有用な医薬である。ニトログリセリンなどの化合物は、長きにわたって血管緊張の調節を助け、心筋の虚血/再灌流傷害から保護するために利用されてきた。酸化窒素分子が、ニトログリセリンの有益な効果に関与していることが見出された。この知見は、酸化窒素の医学的利用に対する興味およびニトロキシルなどの関係種に対する研究を促した。米国特許出願シリアル番号10/463,084(米国公開番号2004/0038947)で報告されているように、生理的条件下でニトロキシルを供与する化合物の、虚血に先立つ投与は、例えば心筋組織などの組織に対する虚血/再灌流傷害を弱めることができる。この有益な効果は、ニトロキシルが以前に虚血/再灌流傷害を増大すると報告されていたために、驚くべき結果として報告された(麻酔状態のウサギへの虚血中および再灌流5分前のアンジェリー塩(Angeli's salt)(生理的条件下でのニトロキシル供与体)の投与が、心筋の虚血/再灌流傷害を増大させたと報告したMa et al., "Opposite Effects of Nitric Oxide and Nitroxyl on Postischemic Myocardial Injury", Proc. Nat'l Acad. Sci., 96(25): 14617-14622 (1999)、およびラット腎組織における虚血の間および再灌流5分前のアンジェリー塩の投与が、虚血/再灌流傷害に介在すると信じられている、好中球の組織への浸潤に貢献すると報告したTakahira et al., "Dexamethasone Attenuates Neutrophil Infiltration in the Rat Kidney in Ischemia/Reperfusion Injury: The Possible Role of Nitroxyl", Free Radical Biology & Medicine, 31(6):809-815 (2001)を参照)。とくに、アンジェリー塩およびイソプロピルアミン/NOの虚血前投与は、虚血/再灌流傷害を防止するかまたは減じると報告された。
【0015】
ニトロキシル供与体の概要
今まで、HNOの生物学的効果の研究の圧倒的多数は、供与体ジオキソトリニトレートナトリウム(「アンジェリー塩」または「AS」)を利用してきた。しかしながら、ASの化学的安定性は、それを治療剤として開発することを不適切にしている。N−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド(「ピロティ酸(Piloty's acid)」または「PA」)は、従来高いph(>9)におけるニトロキシル供与体であると見なされてきた(Bonner, F.T.; Ko, Y. Inorg. Chem. 1992, 31, 2514-2519)。しかしながら、生理的条件下では、PAは酸化的経路を介した酸化窒素供与体である(Zamora, R.; Grzesiok, A.; Weber, H.; Feelisch, M. Biochem. J. 1995, 312, 333-339)。したがって、PAが生理的条件下において酸化窒素供与体であるのに対して、ASは生理的条件下においてニトロキシル供与体であるので、ASおよびPAの生理学的効果は同じではない。
【0016】
米国特許第6,936,639号および米国公開番号2004/0038947は、PAをニトロキシルを供与する化合物として記載し、したがって他のスルホヒドロキサム酸(sulfohydroxamic acids)およびその誘導体もまたニトロキシル供与体として有用であることを記しているが、実際には、PAは、生理的条件下で十分な量のニトロキシルを供与しない(上記Zamora参照)。
【0017】
いくつかの置換N−ヒドロキシルベンゼンスルホンアミドが、炭酸脱水酵素の阻害剤として、HNO産生の言及なしに報告されている((a)Mincione, F.; Menabuoni, L.; Briganti, F.; Mincione, G.; Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Enzyme Inhibition 1998, 13, 267-284および(b)Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Med. Chem. 2000, 43, 3677-3687参照)。
【0018】
新規で生理学的に有用なニトロキシル供与体としてのN−ヒドロキシルスルホンアミド供与体が、2007年3月16日に出願のPCT出願PCT/US2007/006710に記載されている。しかし、そこに記載の式(I)の化合物は、少なくとも1つのカルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノ基で置換されておらず、またそこに記載の式(II)もしくは式(III)の化合物は、少なくとも1つのカルボニルアミノまたはスルホニルアミノ基で置換されていない。
【0019】
顕著な医学的必要性
心不全および虚血/再灌流傷害などの疾患および異常の処置のための、新しい治療法の開発に対する努力にもかかわらず、これらおよび関係する疾患または異常の開始または重篤性を処置または予防する、付加的または代替的な化合物に対する顕著な興味および必要性が、依然として存在する。とくに、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の処置のための、代替的または付加的な治療法に対する顕著な医学的必要性が依然として存在する。生理的条件下でニトロキシルを供与する新たな化合物および、生理的条件下でニトロキシルを供与する化合物を利用した新たな方法は、したがって、心臓疾患および虚血/再灌流傷害を含む、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を治療する、予防するおよび/または遅延する治療法としての利用を見出せるだろう。好ましくは、治療剤は、このような疾患または異常にある患者の、生活の質を向上させ、かつ/または寿命を延長しうる。
【発明の開示】
【0020】
発明の簡単な概要
ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始または進行を処置する、および/または予防するのための、方法、化合物および組成物が記載されている。生理的条件下でニトロキシルを供与する、芳香族および非芳香族のN−ヒドロキシルスルホンアミド誘導体が記載されている。PAを、電子求引性基またはスルホニル部位を立体的に障害する基などの適切な置換基で修飾することによって、生理的条件下におけるこれらの誘導体のHNO産生能力は、大幅に増強される。顕著には、ASと比較した場合、PAは広い置換修飾の可能性を有し、物理化学的および薬理学的特性の最適化を可能にする。かかる最適化も本明細書で報告されている。
【0021】
1つの態様において、本発明は、生理的条件下でニトロキシルを供与する誘導体であるPAの誘導体の治療的有効量を、それらを必要とする対象に投与する方法を提供する。1つの態様において、本発明は、ニトロキシル療法に応答する疾患および/または異常の開始および/または進行を処置する、または予防するための方法、生理的条件下で有効量のニトロキシルを供与するN−ヒドロキシルスルホンアミドの、それらを必要とする個体への投与を含む方法を包含する。また、生理的条件下で有効量のニトロキシルを供与するN−ヒドロキシスルホンアミドを、それらを必要とする個体に投与する、心不全または虚血/再灌流傷害の処置方法も包含する。
【0022】
化合物を含有するキットもまた記載されており、それは陽性変力化合物などの二次治療剤を任意に含有してよく、それは例えばベータアドレナリン受容体作用薬でありうる。
【0023】
本明細書に記載の本発明における使用が見出された、新規な化合物は、式(I)、(II)、(III)の化合物を含む:
【化1】

【0024】
式中、RはHであり;RはH、アラルキル、またはヘテロシクリルであり;mおよびnは、独立して0〜2の整数であり;xは0〜4の整数であり、yは0〜3の整数であり、ただしxとyの少なくとも1つは0より大であり;bは1〜4の整数であり;R、R、R、RおよびRは、独立して、H、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノおよびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただしR、R、R、RおよびRの少なくとも1つはカルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノであり;RおよびRの各々は独立して、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、NH、OH、C(O)OH、C(O)Oアルキル、NHC(O)アルキルC(O)OH、C(O)NH、NHC(O)アルキルC(O)アルキル、NHC(O)アルケニルC(O)OH、NHC(O)NH、OアルキルC(O)Oアルキル、NHC(O)アルキル、C(=N−OH)NH、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボニルアミノ、およびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただし:(1)化合物が式(III)で表される場合には、少なくとも1つのRはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり、および(2)化合物が式(II)で表される場合には、RおよびRの少なくとも1つはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり;Aは、VおよびWと一緒になって環Aを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;Bは、VおよびWと一緒になって環Bを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;VおよびWは独立して、C、CH、NまたはNR10であり;Q、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQは独立して、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から選択され;Cは、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から独立して選択される環部分Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14を含有する、ヘテロ芳香環であり、ただし、Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14の少なくとも1つは、N、NR10、OまたはSであり;およびR10は、H、アルキル、アシルまたはスルホニルである。前述の任意のものの薬学的に許容し得る塩もまた記載される。
【0025】
1つの変化型において、化合物は、式(I)、(II)または(III)で表されるものであって、式中、RはHであり;RはHであり;mおよびnは、独立して0〜2の整数であり;xは0〜4の整数であり、yは0〜3の整数であり、ただしxとyの少なくとも1つは0より大であり;bは1〜4の整数であり;R、R、R、RおよびRは、独立して、H、ハロ、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、置換N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、置換ペルハロアルキル(ここで1または2のハロは、置換基により置換されていてもよく)、ニトロ、アリール、置換アリール、シアノ、アルコキシ、置換アルコキシ、ペルハロアルコキシ、置換ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アルキル、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、置換アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、置換アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、置換ジアルキルアミノ、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、置換シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、置換アリールスルファニル、アリールスルフィニル、置換アリールスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノおよびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただしR、R、R、RおよびRの少なくとも1つはカルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノであり;RおよびRの各々は独立して、ハロ、アルキルスルホニル、置換アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、置換N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、置換ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、置換アリール、シアノ、アルコキシ、置換アルコキシ、ペルハロアルコキシ、置換ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アルキル、アリールオキシ、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、置換アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、置換アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、置換ジアルキルアミノ、NH、OH、C(O)OH、C(O)Oアルキル、NHC(O)アルキルC(O)OH、C(O)NH、NHC(O)アルキルC(O)アルキル、NHC(O)アルケニルC(O)OH、NHC(O)NH、OアルキルC(O)Oアルキル、NHC(O)アルキル、C(=N−OH)NH、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、置換シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、置換アリールスルファニル、アリールスルフィニル、置換アリールスルフィニル(ここで上記部分における任意の挙げられたアルキルまたはアルケニルは、非置換または置換アルキルもしくはアルケニルを意図する)、カルボニルアミノ、およびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただし:(1)化合物が式(III)で表される場合には、少なくとも1つのRはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり、および(2)化合物が式(II)で表される場合には、RおよびRの少なくとも1つはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり;Aは、VおよびWと一緒になって環Aを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;Bは、VおよびWと一緒になって環Bを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;VおよびWは独立して、C、CH、NまたはNR10であり;Q、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQは独立して、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から選択され;Cは、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から独立して選択される環部分Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14を含有する、ヘテロ芳香環であり、ただし、Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14の少なくとも1つは、N、NR10、OまたはSであり;およびR10は、H、アルキル、アシルまたはスルホニルである。前述の任意のものの薬学的に許容し得る塩もまた記載される。
【0026】
本明細書に詳細に記された化合物を用いる方法もまた記載され、それには、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始または進行を処置、予防または遅延する方法であって、それを必要とする個体に対して、生理的条件下でニトロキシルを供与する本発明の化合物またはその薬学的に許容し得る塩を投与することを含む、前記方法を含む。
【0027】
本発明の化合物を含む医薬組成物、例えば静脈内注射に適用できる医薬組成物も開示される。本発明の化合物および使用のための指示書を含むキットも記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、化合物1〜5から発生された亜酸化窒素を、アンジェリー塩のパーセンテージとして表したもの、および化合物1〜5試料の1モル当たり生成されたNOのモル数のパーセンテージを示す。
【0029】
定義
他の明らかな指示がある場合を除き、本明細書で使用されている後述の用語は、下記で示した意味を有する。
【0030】
用語「a」、「an」などの利用は、1または2以上のことをいう。
【0031】
「アラルキル」は、アリール部分がアルキル残基を介して親構造に連結された残基のことをいう。例はベンジル(−CH−Ph)、フェネチル(−CHCHPh)、フェニルビニル(−CH=CH−Ph)、フェニルアリルなどを含む。
【0032】
「アシル」は、−C(O)H、−C(O)アルキル、−C(O)置換アルキル、−C(O)アルケニル、−C(O)置換アルケニル、−C(O)アルキニル、−C(O)置換アルキニル、−C(O)シクロアルキル、−C(O)置換シクロアルキル、−C(O)アリール、−C(O)置換アリール、−C(O)ヘテロアリール、−C(O)置換へテロアリール、−C(O)ヘテロ環、および−C(O)置換ヘテロ環という基のことを指すと共にこれらを含み、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換へテロアリール、ヘテロ環および置換ヘテロ環は、本明細書中で定義されたものか、さもなければ当該技術分野で知られたものである。
【0033】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロシクロアルキル」は、1から4までの炭素原子が、酸素、窒素または硫黄などのヘテロ原子に置き換えられている、シクロアルキル残基のことをいう。官能基がヘテロシクリル基であるヘテロ環の例は、テトラヒドロピラン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、チアゾリジン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、ジオキサン、テトラヒドロフランなどである。ヘテロシクリル残基の特定の例は、テトラヒドロピラン−2−イルである。
【0034】
「置換ヘテロシクロ」または「置換ヘテロシクロアルキル」は1から5までの置換基を有するヘテロシクリル基のことをいう。例えば、1から5のハロ、ニトロ、シアノ、オキソ、アリール、アルコキシ、アルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオール、チオアルキル、ヘテロシクリル、−OS(O)−アルキルなどの基で置換されたヘテロシクリル基が、置換ヘテロシクロアルキルである。置換ヘテロシクロアルキルの特定の例は、N−メチルピペラジノである。
【0035】
「アルキル」は、1から20の炭素原子、好ましくは1から12の炭素原子、さらに好ましくは1から8の炭素原子を有する直鎖炭化水素構造を意図する。1から4の炭素原子を有するいわゆる「低級アルキル」基などの、炭素原子の少ないアルキル基も包含される。「アルキル」はまた、3から20の炭素原子、好ましくは3から12の炭素原子、さらに好ましくは3から8の炭素原子を有する分枝鎖または環状炭化水素構造も意図する。他の明確な指示がなければ、「アルキル」という単語のいかなる使用も、本明細書中に開示されたあらゆる変化型のアルキル基を包含することを意図し、炭素原子の数によって判断され、それぞれおよび全てのアルキル基が明確におよび独立に列挙されたのと同様のものをそれぞれの語の使用に意図する。例えばRなどの基が「アルキル」であってよい場合、意図するところは、C〜C20アルキル、またはC〜C12アルキル、またはC〜Cアルキル、または低級アルキル、またはC〜C20アルキル、またはC〜C12アルキル、またはC〜Cアルキルである。同様のことはまた、ある数の原子が定義中に挙げられている、他の定義下の基を含んでもよい、本明細書に列挙された他の基にも言えることである。アルキル基が環式の場合、それはまたシクロアルキル基と言及されてもよく、例えば3から20の環状炭素原子、好ましくは3から12の環状炭素原子、およびさらに好ましくは3から8の環状炭素原子を有する。特定の炭素数を有するアルキル残基の名称が挙げられた場合、その炭素数を有する全ての幾何異性体が包含されることを意図する。したがって、例えば「ブチル」は、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチルおよびt−ブチルを含むことを意図し、「プロピル」は、n−プロピルおよびiso−プロピルを含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、n−ヘプチル、オクチル、シクロペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、ノルボルニルなどを含む。アルキル基の中に、1または2以上の不飽和度が生じてもよい。したがってアルキル基はまた、アルケニルおよびアルキニル残基を包含する。「アルケニル」は、2から10の炭素原子およびさらに好ましくは2から6の炭素原子などの、2または3以上の炭素原子の基であって、少なくとも1つおよび好ましくは1〜2ヶ所のアルケニル不飽和を有する基のことをいうと解される。アルケニル基の例は、−C=CH、−CHCH=CHCHおよび−CHCH=CH−CH=CHを含む。「アルキニル」は、好ましくは2から10の炭素原子、さらに好ましくは3から6の炭素原子を有し、かつ、少なくとも1ヶ所、好ましくは1〜2ヶ所の、−C≡CH部分などのアルキニル不飽和を有するアルキニル基のことをいう。アルキルはまた、本明細書中において、より大きな官能基の一部としてのアルキル残基という意味でも使用され、そのように使われた場合、他の原子と一緒に別の官能基を形成する。例えば−C(O)Oアルキルに関しては、この部分のアルキル部がどのアルキル基でもよいエステル官能基を意図し、単に例示を目的として提供すると、官能基−C(O)OCH、−C(O)OCH=CHなどである。より大きな構造の一部としてのアルキル基の他の例は、残基−NHC(O)アルキルC(O)OHを含み、これは例えばアルキルが−CHCH−である場合は、NHC(O)CHCHC(O)OHでありうる。
【0036】
「置換アルキル」は、1〜5個の置換基を有するアルキル基のことをいう。例えば、ハロ、ニトロ、シアノ、オキソ、アリール、アルコキシ、アルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオール、チオアルキル、ヘテロシクリル、−OS(O)−アルキルなどの基で置換されたアルキル基が、置換アルキルである。同様に「置換アルケニル」および「置換アルキニル」は、1〜5個の置換基を有するアルケニルまたはアルキニル基のことをいう。
【0037】
本明細書において、「置換基」または「置換された」という語は、化合物または基(例えばアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヘテロアリール、置換へテロアリール、ヘテロアラルキル、置換へテロアラルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、ヘテロシクリルおよび置換へテロシクリルなど)上の水素基が、化合物の安定性に大きく悪影響を与えない任意の所望の基で置き換えられていることを意味する。1つの態様において、所望の置換基とは、化合物の活性に悪影響を与えないものである。「置換された」という語は、1または2以上の置換基(同一でも異なるものでもよい)が、それぞれ水素原子と置き換わっていることをいう。置換基の例は、これに限定するものではないが、ハロゲン(F、Cl、Br、またはI)、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、オキソ(すなわちカルボニル)、チオ、イミノ、ホルミル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メルカプトアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、ヘテロシクリルを含み、アルキル、アルケニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、およびヘテロシクリルは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオキソ(=S)、またはイミノ(=Nアルキル)で任意に置換されている。他の態様において、任意の基上の置換基(例えばアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、アラルキル、置換アラルキル、ヘテロアリール、置換へテロアリール、ヘテロアラルキル、置換へテロアラルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換へテロシクロアルキル、ヘテロシクリルおよび置換へテロシクリルなど)は、その基の任意の原子(置換アルキル基の主炭素鎖の炭素原子上、または置換アルキル基上に既に存在する置換基上など)に存在してもよく、ここで、置換されうる任意の基(例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロシクリル)は、1または2以上の置換基(同一でも異なるものでもよい)で、それぞれ水素原子と置き換わって任意に置換されうる。好適な置換基の例は、これに限定するものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクリル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシル、ヒドロキシルアルキル、オキソ(すなわちカルボニル)、カルボキシル、ホルミル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシカルボニル、チオ、メルカプト、メルカプトアルキル、アリールスルホニル、アミノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノカルボニル、またはアルコキシカルボニルアミノ;アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルカルボニル、またはアリールアミノ置換アリール;アリールアルキルアミノ、アラルキルアミノカルボニル、アミド、アルキルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、イミノ、カルバミド、カルバミル、チオウレイド、チオシアナト、スルホアミド、スルホニルアルキル、スルホニルアリール、またはメルカプトアルコキシを含む。アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクリル、ヘテロシクロアルキル、およびヘテロシクリル上のさらなる好適な置換基は、制限するものではなく、ハロゲン、CN、NO、OR11、SR11、S(O)OR11、NR1112、C〜Cペルフルオロアルキル、C〜Cペルフルオロアルコキシ、1,2−メチレンジオキシ、(=O)、(=S)、(=NR11)、C(O)OR11、C(O)R1112、OC(O)NR1112、NR11C(O)NR1112、C(NR12)NR1112、NR11C(NR12)NR1112、S(O)NR111213、C(O)H、C(O)R13、NR11C(O)R13、Si(R11、OSi(R11、Si(OH)11、B(OH)、P(O)(OR11、S(O)R13、またはS(O)13を含む。各R11は独立して水素、または、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールで任意に置換されたC〜Cアルキルである。各R12は独立して水素、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜Cアルキル、または、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールで置換されたC〜Cアルキルである。各R13は独立してC〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜Cアルキル、または、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールで置換されたC〜Cアルキルである。各R11、R12およびR13中の各C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールおよびC〜Cアルキルは、ハロゲン、CN、C〜Cアルキル、OH、C〜Cアルコキシ、COOH、C(O)OC〜Cアルキル、NH、C〜Cアルキルアミノ、またはC〜Cジアルキルアミノで任意に置換されうる。置換基はまた「電子求引性基」でありうる。
【0038】
「電子求引性基」は、それらが連結した部分の電子密度を(置換基のない部分の密度に比べて)減少させる基のことをいう。かかる基は、例えばF、Cl、Br、I、−CN、−CF、−NO、−SH、−C(O)H、−C(O)アルキル、−C(O)Oアルキル、−C(O)OH、−C(O)Cl、−S(O)OH、−S(O)NHOH、−NHなどを含む。
【0039】
「ハロ」はフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素のことをいう。
【0040】
「アルキルスルホニル」は、残基−SOシクロアルキル、−SO置換シクロアルキル、−SOアルケニル、−SO置換アルケニル、−SOアルキニル、−SO置換アルキニルを含む、基−SOアルキルおよび−SO置換アルキルをいい、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルは、本明細書で定義したとおりである。
【0041】
「N−ヒドロキシルスルホンアミジル」は、RがHまたはアルキルである−S(O)NROHのことをいう。
【0042】
「ペルハロアルキル」は、炭化水素の各HがFで置き換えられているアルキル基のことをいう。ペルハロ基の例は、−CFおよび−CFCFを含む。
【0043】
「アリール」は、単環式、二環式または三環式芳香環を意図する。アリール基は、好ましくは5〜6員芳香環、またはO、N、またはSから選択される0〜3個の環状ヘテロ原子を含む5〜6員ヘテロ芳香環;二環式9−もしくは10−員芳香環系、またはO、N、またはSから選択される0〜3個の環状ヘテロ原子を含む二環式9−もしくは10−員ヘテロ芳香環系(環系が9または10の環原子を有することを意味する);あるいは三環式13−もしくは14−員芳香環系、またはO、N、またはSから選択される0〜3個の環状ヘテロ原子を含む三環式13−もしくは14−員ヘテロ芳香環系(環系が13または14の環原子を有することを意味する)である。その基(radical)がアリール基である基の例は、例えばベンゼン、ナフタレン、インダン、テトラリン、イミダゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾールおよびピラゾールを含む。
【0044】
「置換アリール」は、1〜3個の置換基を有する基のことをいう。例えば、ハロ、ニトロ、シアノ、オキソ、アリール、アルコキシ、アルキル、アシル、アシルアミノ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオール、チオアルキル、ヘテロシクリル、−OS(O)−アルキルなどの1〜3個の基で置換されたアリール基などが置換アリールである。
【0045】
「アルコキシ」は、親構造に酸素原子を介して結合したアルキル基(−O−アルキル)のことをいう。シクロアルキル基が酸素原子を介して親構造に結合している場合は、その基はシクロアルコキシ基と呼ぶこともある。例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシなどを含む。「ペルハロアルコキシ」は、残基−O−CFなどの、親構造に酸素原子を介して連結するペルハロアルキル基を意図する。
【0046】
「アリールオキシ」は、親構造に酸素原子を介して結合したアリール基(−O−アリール)のことをいい、例示を目的として、残基フェノキシ、ナフトキシなどを含む。「置換アリールオキシ」は、親構造に酸素原子を介して結合した置換アリール基(−O−置換アリール)のことをいう。
【0047】
「アルキルスルファニル」は、親構造に硫黄原子を介して結合したアルキル基(−S−アルキル)を指し、残基−S−シクロアルキル、−S−置換シクロアルキル、−S−アルケニル、−S−置換アルケニル、−S−アルキニル、−S−置換アルキニルを含む、基−S−アルキルおよび−S−置換アルキルのことをいい、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルは、本明細書で定義されたとおりである。シクロアルキル基が、親構造に硫黄原子を介して結合した場合、その基をシクロアルキルスルファニル基と呼ぶこともある。例示を目的として、アルキルスルファニルには−S−CH(CH)、−S−CHCHなどが含まれる。
【0048】
「アルキルスルフィニル」は、親構造にS(O)部分を介して結合したアルキル基のことをいい、−S(O)アルキルおよび残基−S(O)シクロアルキル、−S(O)置換シクロアルキル、−S(O)アルケニル、−S(O)置換アルケニル、−S(O)アルキニル、−S(O)置換アルキニルを含む、−S(O)アルキルおよび−S(O)置換アルキルのことをいい、ここでアルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキルおよび置換シクロアルキルは、本明細書で定義したとおりである。例示を目的として、アルキルスルフィニルは、残基−S(O)CH(CH)、−S(O)CH、−S(O)シクロペンタンなどを含む。
【0049】
「アリールスルフィニル」は、親構造にS(O)部分を介して結合したアリール基のことをいい、例示を目的として−S(O)Phを含む。
【0050】
「ジアルキルアミノ」は、Rがアルキル基である−NR基のことをいう。ジアルキルアミノ基の例は、−N(CH、−N(CHCHCHCH、およびN(CH)(CHCHCHCH)を含む。
【0051】
「カルボキシル」は、−C(O)OHをいう。
【0052】
本明細書において、「カルボキシルエステル」は、基−C(O)O−アルキル、−C(O)O−置換アルキル、−C(O)O−アリール、−C(O)O−置換アリール、−C(O)O−アルケニル、−C(O)O−置換アルケニル、−C(O)O−アルキニル、−C(O)O−置換アルキニル、−C(O)O−ヘテロアリール、−C(O)O−置換ヘテロアリール、−C(O)O−ヘテロ環式、または−C(O)O−置換ヘテロ環式をいう。
【0053】
「アシルアミノ」は、基−C(O)NRであって、式中、各RとR基は独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロ環式、置換ヘテロ環式からなる群から選択されるか、またはR基とR基は窒素原子と一緒に結合されて、ヘテロ環または置換ヘテロ環を形成することができる、前記の基をいう。アシルアミノ部分の例は、−C(O)モルホリノを含む。
【0054】
「スルホニルアミノ」は、基−SONH、−SONR−アルキル、−SONR−置換アルキル、−SONR−アルケニル、−SONR−置換アルケニル、−SONR−アルキニル、−SONR−置換アルキニル、−SONR−アリール、−SONR−置換アリール、−SONR−ヘテロアリール、−SONR−置換ヘテロアリール、−SONR−ヘテロ環式、または−SONR−置換ヘテロ環式であって、式中、Rは水素またはアルキル、または−SONRであり、式中、2つのR基は、それらが連結されている窒素原子と一緒になって、ヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、前記の基をいう。
【0055】
「カルボニルアミノ」は、基−CONH、−CONR−アルキル、−CONR−置換アルキル、−CONR−アルケニル、−CONR−置換アルケニル、−CONR−アルキニル、−CONR−置換アルキニル、−CONR−アリール、−CONR−置換アリール、−CONR−ヘテロアリール、−CONR−置換ヘテロアリール、−CONR−ヘテロ環式、または−CONR−置換ヘテロ環式であって、式中、Rは水素またはアルキル、または−CONRであり、式中、2つのR基は、それらが連結されている窒素原子と一緒になって、ヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、前記の基をいう。
【0056】
「薬学的に許容し得る塩」は、本明細書中に記載した化合物、例えば、式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、または、本発明の他のニトロキシル供与体の、薬学的に許容し得る塩を指し、これらの塩は、当該技術分野で周知の種々の有機および無機対イオンから派生してもよく、単に例示を目的として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩などを含み;分子が塩基性官能基を含む場合は、有機または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などを含む。例示的な塩としては、これに限定するものではないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩(acid citrate)、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp−トルエンスルホン酸塩を含む。したがって塩は、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有する、本明細書中に開示されている任意の1つの式の化合物と、薬学的に許容し得る無機または有機塩基とから調製することができる。好適な塩基は、これに限定するものではないが、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア、および未置換または水酸基置換のモノ−、ジ−もしくはトリアルキルアミンなどの有機アミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン、もしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのモノ−、ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが含まれる。塩はまた、アミノ官能基などの塩基性官能基を有する、本明細書中に開示されている任意の1つの式の化合物と、薬学的に許容し得る無機または有機酸とから調製することができる。好適な酸は、硫酸水素塩、クエン酸、酢酸、塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)、硝酸、リン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸を含む。
【0057】
他の明白な指示がなければ、本明細書中で利用される「個体」は、これに限定するものではないがヒトを含む、哺乳類を意図する。
【0058】
「有効量」という語は、化合物またはその薬学的に許容し得る塩の、その薬効および毒性の変数、ならびに実践専門家の知識に基づいて、所定の治療形態において有効と考えられる量を意図する。当該技術分野において知られているように、有効量は1または2以上の用量であってもよい。
【0059】
本明細書で用いる場合、「処置」または「処置すること」は、臨床的な結果を含む、有益なまたは所望の結果を獲得するための手法である。本発明の目的にとって、よいまたは求める結果は、これに限定するものではないが、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を阻害および/または抑制すること、または、かかる疾患または異常の重症度を減少すること、例えば疾患または異常に関連した症状の数および/または重症度を減少させること、疾患または異常を患っている対象の生活の質を高めること、疾患または異常を処置するための他の薬物の用量を減少させること、疾患または異常のために個体が服用している他の薬物の効果を高めること、ならびに疾患または異常を有する個体の寿命を延ばすことを含む。疾患または異常は、心臓血管の疾患または異常でもよく、これに限定するものではないが、冠動脈閉塞、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心臓発作、心筋梗塞、高血圧、虚血性心筋症および梗塞、拡張期心不全、肺うっ血、肺浮腫、心臓線維症、弁膜性心疾患、心膜疾患、循環うっ血性状態、末梢浮腫、腹水症、シャーガス病、心室肥大、心臓弁膜症、心不全を含み、急性うっ血性心不全および急性非代償性心不全などのうっ血性心不全を含む。本明細書の方法によって緩和されうる関連徴候は、前記疾患または病気に関連した息切れ、倦怠感、足首または足のむくみ、狭心症、食欲不振、体重増加または減少を含む。疾患または異常は、虚血/再灌流傷害も含んでもよい。
【0060】
本明細書において、「予防すること」は、病気または異常を有してはいないが、発症する危険性のある個体において、病気または異常の発症の可能性を減少させることをいう。
【0061】
「危険性のある」個体は、検出可能な疾患または異常を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載されている処置方法以前に、検出可能な疾患または異常を示していてもいなくてもよい。「危険性のある」は、個体が1または2以上のいわゆる危険因子(疾患または異常の発症と相関し、当該技術分野において知られている計測可能な変数)を有することを意味する。1または2以上のそれらの危険因子を有する個体は、それらの危険因子を有さない個体に比べて、疾患または異常を発症する高い可能性を有している。
【0062】
「ニトロキシル」はHNO種のことをいう。
【0063】
本明細書において、化合物は、それがニトロキシルを生理的条件下で供与する場合、「ニトロキシル供与体」である。本明細書において、本発明のニトロキシル供与体は、代替的に「化合物」または「その化合物」と呼ぶことがある。好ましくは、ニトロキシル供与体はインビボでニトロキシルを有効量供与可能であり、化合物が治療的効果を達成するのに必要な量において、個体に耐容されることを示す、安全性プロフィールを有している。当業者は、生きている対象のための特定化合物の用法および用量の安全性を決定することができる。当業者はまた、生理的条件下でHNOを放出するかどうかを評価することで、化合物がニトロキシル供与体であるかどうかを決定することもできる。化合物は、ルーチンの実験によってニトロキシル供与について簡便に検査される。ニトロキシルを供与するかどうかを直接計測することは実用的でないが、いくつかの検査が、化合物がニトロキシルを供与しているかどうかを決定するために認められている。例えば、対象となる化合物を、密封された容器中で溶液の中、例えば水中におくことができる。数分から数時間などの、解離に十分な時間経過後、ヘッドスペース気体が回収され、ガスクロマトグラフィーおよび/または質量分析などによりその組成を決定するために分析される。(HNOの二量化によって起こる)気体NOが形成されていた場合、検査はニトロキシル供与について陽性であり、化合物はニトロキシル供与体である。ニトロキシル供与能力のレベルは、化合物の理論最大値のパーセンテージとして表現してもよい。「顕著なレベルのニトロキシル」を供与する化合物は、そのニトロキシルの理論最大量の40%以上または50%以上を供与する化合物を意図する。他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の70%以上供与する。他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の80%以上供与する。他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の90%以上供与する。さらに他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の約70%〜約90%の間で供与する。さらに他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の約85%〜約95%の間で供与する。さらに他の変化型において、ここで用いる化合物は、ニトロキシルを理論最大量の約90%〜約95%の間で供与する。ニトロキシルを理論最大量の40%未満または50%未満供与する化合物も、依然としてニトロキシル供与体であり、本明細書で開示されている発明に用いてもよい。ニトロキシルを理論最大値の50%未満供与する化合物を、記載した方法に用いてもよく、顕著なレベルのニトロキシルを供与する化合物に比べて、高い投薬量が要求されうる。ニトロキシル供与はまた、検査化合物をメトミオグロビン(Mb3+)に曝露することでも検出可能である。ニトロキシルは、Mb3+と反応してMb2+−NO複合体を形成し、紫外/可視スペクトルの変化または電子常磁性共鳴(EPR)によって検出できる。Mb2+−NO複合体はg値が約2の周辺に集中したEPRシグナルを有する。他方、酸化窒素は、Mb3+と反応してEPRサイレント(silent)であるMb3+−NO複合体を形成する。したがって、候補化合物がMb3+と反応して形成した複合体が紫外/可視またはEPRなどの普通の方法で検出可能な場合、ニトロキシル供与の試験は陽性である。ニトロキシル供与の試験は、生理的関連性のあるpHで行ってもよい。
【0064】
本明細書で用いる「陽性変力作用薬」は、心筋収縮機能の増大をもたらす剤のことである。かかる剤には、ホスホジエステラーゼ活性の阻害剤であるベータアドレナリン受容体作用薬、およびカルシウム感受性増強薬を含む。ベータアドレナリン受容体作用薬は、とりわけ、ドーパミン、ドブタミン、テルブタリン、およびイソプロテレノールを含む。かかる化合物の類似物および誘導体もまた意図される。例えば、米国特許第4,663,351号は、経口投与可能なドブタミンプロドラッグについて記述している。当業者は、化合物が陽性変力作用をもたらしうるか、およびまた付加的なベータ作用薬化合物でありうるかを決定することができる。特定の態様において、ベータ受容体作用薬はベータ1受容体に選択的である。しかしながら、他の態様においては、ベータ2受容体に選択的であるか、またはどの特定の受容体にも選択的でない。
【0065】
「ニトロキシル療法に応答する」疾患または異常とは、生理的条件下でニトロキシルを有効量供与する化合物の投与が、疾患または異常を処置および/または予防するあらゆる疾患または異常を意図し、それらの語は本明細書で定義したとおりである。その症状がニトロキシル供与体の投与によって抑制または減退する疾患または異常は、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常である。ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の非限定例は、冠動脈閉塞、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心臓発作、心筋梗塞、高血圧、虚血性心筋症および梗塞、拡張期心不全、肺うっ血、肺浮腫、心臓線維症、弁膜性心疾患、心膜疾患、循環うっ血性状態、末梢浮腫、腹水症、シャーガス病、心室肥大、心臓弁膜症、心不全を含み、限定することなく、急性うっ血性心不全および急性非代償性心不全などのうっ血性心不全を含む。虚血/再灌流傷害にかかわる疾患または異常などの、他の心臓血管疾患または異常もまた意図される。
【0066】
N−ヒドロキシスルホンアミド化合物
本発明および本明細書に記載された方法に用いる化合物は、ニトロキシルを生理的条件下で供与するN−ヒドロキシルスルホンアミドを含む。化合物は主にニトロキシルを生理的条件下で供与するのが好ましく、つまり生理的条件下でニトロキシルおよび酸化窒素の両方を供与する化合物は、酸化窒素よりニトロキシルを多く供与する。好ましくは本明細書で用いる化合物は、顕著なレベルの酸化窒素を生理的条件下で供与しない。最も好ましくは、本明細書で用いる化合物は、顕著なレベルのニトロキシルを生理的条件下で供与する。
【0067】
1つの態様において、本発明は式(I)の化合物を包含する:
【化2】

この式中、RはHであり;RはH、アラルキルまたはヘテロシクリルであり;R、R、R、RおよびRは独立して、H、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノおよびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノである。
【0068】
他の態様において、化合物は、式(I)の化合物であって、式中、RはHであり;RはH、アラルキルまたはヘテロシクリルであり;R、RおよびRは独立して、H、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノであり;少なくとも1つのRおよびRは、電子求引性基またはスルホニル部分を立体的に妨害する基であり、ただし、少なくとも1つのR、R、R、RおよびRは、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノである。1つの変化型において、RおよびRの少なくとも1つは、電子求引性基である。他の変化型において、RおよびRの両方は、電子求引性基である。1つの変化型において、RおよびRの少なくとも1つは、化合物(I)のスルホニル部分を立体的に妨害する基である。1つの変化型において、RおよびRの少なくとも1つは、i−プロピルまたはt−ブチルなどの分枝アルキル基である。他の変化型において、RおよびRの両方はアルキル基であって、ただしアルキル基の1つは分枝アルキル基であり、例としては、両方の基がイソプロピルであるか、または1つの基がエチルであり、他がsec−ブチルの場合である。1つの変化型において、RおよびRの1つは電子求引性基であり、電子求引性基ではないRまたはRはアルキル基であり、これはイソプロピルなどの分枝アルキル基であってよい。
【0069】
さらに包含されるのは、式(I)の化合物であって、式中、RはHであり;RはH、ベンジル、またはテトラヒドロピラン−2−イルであり;R、R、R、RおよびRは独立して、H、Cl、F、I、Br、SOCH、SONHOH、CF、NO、フェニル、CN、OCH、OCF、t−Bu、O−iPr、4−ニトロフェニルオキシ(OPh4−NO)、プロパン−2−チイル(SCH(CH)、プロパン−2−スルフィニル(S(O)CH(CH)、モルホリノ、N−メチル−ピペラジノ、ジメチルアミノ、ピペリジノ、シクロヘキシルオキシ、シクロペンチルスルファニル、フェニルスルファニル、フェニルスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノからなる群から選択され、ただし、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはカルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノである。
【0070】
式(I)に関して記載されたどの変化型についても、RがHであり、およびRがH、ベンジルまたはテトラヒドロピラン−2−イルである、式(I)の変化型が含まれる。1つの変化型において化合物は、式(I)の化合物であって、式中、Rがハロ(FまたはBrなど)ならびにRおよびRの1つがハロ(Br、またはClなど)、あるいは式中、RおよびRの両方が、またはRおよびRの両方がハロ(両方Clまたは両方F、または1つがClで1つがFなど)などの、少なくとも2つのR、R、R、RおよびRがハロであって、残りの置換基が上述の変化型で記載されたものである、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、RまたはRの1つが−S(O)CHの場合などの、少なくとも1つのR、R、R、RおよびRが−S(O)アルキルである、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、RがCFの場合、またはRおよびRがCFの場合などの、R、RおよびRの少なくとも1つがペルハロアルキルである、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、RがCFおよびRがNOまたはClの場合などの、RがCFならびにRおよびRの少なくとも1つがH以外である、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、RおよびRの少なくとも1つがフェニルなどのアリール基である場合などの、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがアリール基である、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、R、RおよびRの少なくとも1つがモルホリノ、N−メチル−ピペラジノおよびピペリジノなどのヘテロシクリル基、または置換ヘテロシクロ基である場合などの、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがヘテロシクリル基である、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、R、RおよびRの少なくとも1つがシクロヘキシルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルスルファニルまたはシクロペンチルスルファニル基の場合などの、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがシクロアルコキシまたはシクロアルキルスルファニル基である、式(I)で表されるものである。1つの変化型において化合物は、R、RおよびRの少なくとも1つがフェニルスルファニルまたはフェニルスルフィニル基の場合などの、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがアリールスルファニルまたはアリールスルフィニル基である、式(I)で表されるものである。
【0071】
式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つがカルボキシルである、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rはカルボキシルであり、R、RおよびRはHであり、およびRは、Hまたはハロである。特定の変化型において、Rはカルボキシルであり、R、RおよびRはHであり、RはHまたはハロであり、およびRおよびRはHである。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−COO−アルキルである、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rは−COO−アルキルであり、R、R、RおよびRはHである。
特定の変化型において、Rは−COO−アルキルであり、R、R、RおよびRはHであり、およびRおよびRはHである。他の変化型において、Rは−COO−アルキルであり、RおよびRの1つは−SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホニルアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノであり、および、SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホニルアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノではないRまたはRは、水素である。
他の変化型において、Rは−COO−アルキルであり、RおよびRのうち1つは−SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホニルアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノであり、および、SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホニルアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノではないRまたはRは、水素であり、およびR、R、RおよびRは水素である。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−COO−置換アルキルである、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rは−COO−置換アルキルであり、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである。特定の変化型において、Rは−COO−置換アルキルであり、Rはハロであり、R、RおよびRはHであり、およびRおよびRはHである。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−C(O)NHである、式(I)の変化型を含む。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−C(O)NRであり、式中、Rは水素でありRはアルキルである、式(I)の変化型を含む。
かかる変化型の1つにおいて、Rは−C(O)NRであり(式中、Rは水素でありRは低級アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである。特定の変化型において、Rは−C(O)NRであり(式中、Rは水素でありRは低級アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロであり、およびRおよびRはHである。特定の変化型において、RはC〜Cアルキル、例えばエチル、プロピルまたはブチルである。他の変化型において、Rは分枝低級アルキル、例えばイソプロピルまたはイソブチルである。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−C(O)NRであり、式中、Rはアルキル、置換アルキルまたは水素であり、Rは置換アルキルである、式(I)の変化型を含む。
かかる変化型の1つにおいて、Rは−C(O)NRであり(式中、Rはアルキル、置換アルキルまたは水素であり、Rは置換アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである。特定の変化型において、Rは−C(O)NRであり(式中、Rはアルキル、置換アルキルまたは水素であり、Rは置換アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロであり、およびRおよびRはHである。さらに他の変化型において、Rは−C(O)NRであり(式中、Rは低級アルキル、置換低級アルキルまたは水素であり、Rは置換低級アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである。Rが置換低級アルキルである場合、1つの変化型において、これはヒドロキシル、カルボキシル、アミノまたはアルコキシ基により置換されている、低級アルキルである。例えば、本発明は、Rが−C(O)NRであり(式中、Rは水素、メチル、エチル、またはヒドロキシルもしくはアルコキシ基により置換されている低級アルキルであり、Rは、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノまたはアルコキシ基により置換されている、低級アルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである、化合物を包含する;さらなる変化型において、RおよびRはHである。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−C(O)NRであり、式中、RおよびRは独立してアルキルである、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rは−C(O)NRであり(式中、RおよびRは独立してアルキルであり)、R、RおよびRはHであり、およびRはハロである。他の変化型において、Rは−C(O)NRであり(式中、RおよびRは独立してアルキルであり)、RおよびRは水素であり、RおよびRの1つは、−SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホンアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノであり、および−SR11、アリール、−OR11、ニトロ、シアノ、アシル、−S(O)NHOH、スルホンアミノ、C〜Cペルフルオロアルキル、低級アルキルまたはアミノではないRまたはRは水素である。特定の変化型において、Rは−C(O)NRであり(式中、RおよびRは独立してアルキルであり)、R、RおよびRは水素であり、Rはハロであり、およびRおよびRはHである。
およびRは、同一でも異なっていてもよく、例えば、1つの変化型におけるRおよびRは、両方ともメチルまたはエチルである。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−C(O)NRであり、式中、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rは−C(O)NRであり、式中、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する。他の変化型において、Rは−C(O)NRであり、式中、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し、R、RおよびRは水素であり、およびRはハロである。特定の変化型において、Rは−C(O)NRであり、式中、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し、R、RおよびRは水素であり、およびRはハロであり、およびRおよびRはHである。
1つの変化型において、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒に、例えばモルホリノなどの、ヘテロ環を形成する。Rが−C(O)NRである任意の変化型において、特定の変化型においては、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒に、ピペラジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルおよびモルホリニルから選択されるヘテロ環を形成する。Rが−C(O)NRである本明細書の任意の変化型において、特定の変化型においては、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒に、低級アルキル、カルボキシルエステル、アシル、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、置換低級アルキル、オキソおよびアルコキシから選択される1または2個の部分で置換された、ヘテロ環を形成する。例えば、Rが−C(O)NRである本明細書の任意の変化型において、特定の変化型においては、RおよびRは、それらが連結する窒素と一緒に、2,6−ジメチルピペラザ−4−イル、1−イソプロピルピペラザ−4−イル、1−(ピペラジン−4−イル)エタノン、tert−ブチルピペラザ−4−イル−1−カルボキシレート、4−フルオロピペリジル、4、4−ジフルオロピペリジル、4−アミノピペリジル、4−ヒドロキシピペリジル、4−オキソピペリジニル、4−メトキシピペリジル、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジル、2−(ピペリダ−4−イル)−エトキシエタノール、3−ヒドロキシ−アゼチジニル、2−オキソ−ピペラジン−4−イル、および1−メチル−2−オキソ−ピペラジン−4−イルから選択される置換ヘテロ環を形成する。
式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−SONHである、式(I)の変化型が包含される。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−SONRであり、Rが水素である、式(I)の変化型を含む。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−SONR−アルキルであり、Rがアルキルである、式(I)の変化型を含む。特定の変化型において、Rは−SONR−アルキルであり、Rはアルキルであり、R、R、RおよびRは水素である。例えば1つの変化型において、Rは−SON(低級アルキル)であり、R、R、RおよびRは水素であり、ここで低級アルキル置換基は同一でも異なっていてもよく、例えば、Rは−SON(Et)または−SON(Et)(Me)であってよい。式(I)に関して記載されるどの変化型も、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(I)の変化型を含む。かかる変化型の1つにおいて、Rは−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する。
他の変化型において、Rは−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し、R、R、RおよびRはHである。特定の変化型において、Rは−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成し、R、R、RおよびRはHであり、およびRおよびRはHである。1つの変化型において、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つが−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒に、例えばモルホリノ環などのヘテロ環を形成する。
【0072】
式(I)の代表的な化合物としては、表1に挙げたものが含まれるが、これに限定はされない。
【表1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【0073】
1つの態様において、ニトロキシル供与化合物は、式(IIa)で表される化合物である:
【化3】

式中、RはHであり;RはH、アラルキルまたはヘテロシクリルであり;mおよびnは、独立して0から1までの整数であり;xは0から4までの整数であり、およびyは0から3までの整数であり、ただしxとyの少なくとも1つは0より大であり;Aは、aおよびa’に位置する炭素と一緒に環Aを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含む、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香環またはヘテロ芳香環であり;Bは、aおよびa’に位置する炭素と一緒に環Bを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含む、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、芳香環またはヘテロ芳香環であり;Q、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQは、独立してC、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群より選択され;RおよびRはそれぞれ独立して、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、NH、OH、C(O)OH、C(O)Oアルキル、NHC(O)アルキルC(O)OH、C(O)NH、NHC(O)アルキルC(O)アルキル、NHC(O)アルケニルC(O)OH、NHC(O)NH、OアルキルC(O)Oアルキル、NHC(O)アルキル、C(=N−OH)NH、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボニルアミノおよびスルホニルアミノからなる群より選択され、ただし少なくとも1つのRはカルボニルアミノおよびスルホニルアミノであり;およびR10はH、アルキル、アシルまたはスルホニルである。
【0074】
1つの変化型において、化合物は式(II)または(IIa)で表されるものであり、式中RおよびRはそれぞれ独立して、Cl、F、I、Br、SOCH、SONHOH、CF、CH、NO、フェニル、CN、OCH、OCF、t−Bu、O−iPr、4−ニトロフェニルオキシ(OPh4−NO)、プロパン−2−チイル(SCH(CH)、プロパン−2−スルフィニル(S(O)CH(CH)、モルホリノ、N−メチル−ピペラジノ、ジメチルアミノ、ピペリジノ、シクロヘキシルオキシ、シクロペンチルスルファニル、フェニルスルファニル、フェニルスルフィニル、カルボニルアミノおよびスルホニルアミノからなる群より選択され、ただし少なくとも1つのRはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり;R10はH、アルキル、アシルまたはスルホニルであり、ただし、環AおよびBがナフタレンを形成する場合、xは1から3までの整数であり、またはyは2から4までの整数である。
【0075】
式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RがHであり、RがH、ベンジルまたはテトラヒドロピラン−2−イルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。1つの変化型において、AおよびBは、ベンゾフランまたはベンゾチオフェンまたはベンゾイミダゾールまたはN−アルキルベンゾイミダゾール(N−メチルベンゾイミダゾールなど)またはN−アシルベンゾイミダゾール(N−C(O)CHベンゾイミダゾール)またはベンゾチアゾールまたはベンゾオキサゾールを形成する。1つの変化型において、AおよびBは、ナフチルまたはキノリン以外である。1つの変化型において、AおよびBは、ナフチルまたはキノリンである。1つの変化型において、AおよびBはベンゾフランを形成する。1つの変化型において、AおよびBはベンゾフランを形成する。1つの変化型において、AおよびBはベンゾチオフェンを形成する。1つの変化型において、AおよびBはベンゾチオフェンを形成し、yは0およびxは1である。1つの変化型において、AおよびBはナフチルを形成し、xは0、yは1である。1つの変化型において、環AおよびBがキノリンを形成し、かつ環Bが窒素含有環である場合のように、環Aはフェニルおよび環Bはヘテロアリール基である。本発明はまた、yが0、xが1およびRがハロ、アルキルまたはペルハロアルキル基である、任意の式(II)または(IIa)の変化型による化合物も包含する。本発明はまた、xが2およびyが0である、任意の式(II)または(IIa)の変化型による化合物も包含する。
【0076】
式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−CONH−アルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−CONR−アルキルであり、ここでRはアルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)の特定の変化型において、yは0であり、xは1であり、およびRは−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキルである。式(II)または(IIa)の他の変化型において、yは0であり、xは1であり、およびRは−CONRであり、ここで各Rは独立して低級アルキルであり、ここで各低級アルキルは同一であるか(例えば−CON(Me))、または異なっていることができる。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−CONRであり、ここで各Rは、それらが連結している窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−NRSONR−アルキルであり、ここでRおよびRは独立して水素またはアルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−SONHである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−SONHである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−SONR−アルキルであり、ここでRは水素またはアルキルである、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)に関して記載されるどの変化型も、RおよびRの少なくとも1つが−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結している窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(II)または(IIa)の変化型を含む。式(II)または(IIa)の特定の変化型において、yは0であり、xは1であり、およびRは−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結している窒素と一緒にヘテロ環を形成する。式(II)または(IIa)の他の変化型において、yは0であり、xは1であり、およびRは−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結している窒素と一緒にモルホリノ基を形成する。
代表的な式(IIa)の化合物は、限定されずに、表2に列挙した化合物を含む。
【表2】

【0077】
他の態様において、ニトロキシル供与化合物は、式(III)の化合物である:
【化4】

式中、RはHであり;RはH、アラルキルまたはヘテロシクリルであり;nは0から1までの整数であり;bは1から4までの整数であり;Cは、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から独立して選択される環部分Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14を含むヘテロ芳香環であり、ただし、Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14の少なくとも1つはN、NR10、OまたはSであり;Rはそれぞれ独立して、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、NH、OH、C(O)OH、C(O)Oアルキル、NHC(O)アルキルC(O)OH、C(O)NH、NHC(O)アルキルC(O)アルキル、NHC(O)アルケニルC(O)OH、NHC(O)NH、OアルキルC(O)Oアルキル、NHC(O)アルキル、C(=N−OH)NH、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボニルアミノまたはスルホニルアミノからなる群より選択され、ただし、少なくとも1つのRは、カルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり;およびR10はH、アルキル、アシルまたはスルホニルである。
【0078】
1つの変化型において、化合物は式(III)で表されるものであり、Rはそれぞれ独立して、Cl、F、I、Br、SOCH、SONHOH、CF、CH、NO、フェニル、CN、OCH、OCF、t−Bu、O−iPr、4−ニトロフェニルオキシ(OPh4−NO)、プロパン−2−チイル(SCH(CH)、プロパン−2−スルフィニル(S(O)CH(CH)、モルホリノ、N−メチル−ピペラジノ、ジメチルアミノ、ピペリジノ、シクロヘキシルオキシ、シクロペンチルスルファニル、フェニルスルファニル、フェニルスルフィニル、カルボニルアミノまたはスルホニルアミノからなる群より選択され、ただし、少なくとも1つのRは、カルボニルアミノまたはスルホニルアミノである。他の変化型において、化合物は式(III)で表されるものであり、Rはそれぞれ独立して、F、Br、Cl、CF、フェニル、メチル、SONHOH、モルホリノ、ピペリジノ、4−メチル−ピペラジノ、カルボニルアミノおよびスルホニルアミノからなる群より選択され、ただし、少なくとも1つのRは、カルボニルアミノまたはスルホニルアミノである。
【0079】
式(III)に関して記載されるどの変化型も、RがHであり、RがH、ベンジルまたはテトラヒドロピラン−2−イルである、式(III)の変化型を含む。1つの変化型において、nは0であり、Cは、チオフェンまたはイソオキサゾールまたはピラゾールまたはピロールまたはイミダゾールまたはフランまたはチアゾールまたはトリアゾールまたはN−メチルイミダゾールまたはチアジアゾールである。1つの変化型において、Cはチエニル以外である。他の変化型において、nは0であり、Cは、チオフェンまたはイソオキサゾールまたはピラゾールまたはピロールまたはイミダゾールまたはフランまたはチアゾールまたはトリアゾールまたはN−メチルイミダゾールまたはチアジアゾールである。1つの変化型において、nは1であり、Cはピリミジンまたはピラジンまたはピリジンである。1つの変化型において、nは1であり、Cはピリミジンまたはピラジンまたはピリジンであり、bは1である。1つの変化型において、nは1であり、Cはピリミジンまたはピラジンまたはピリジンであり、bは1であり、少なくとも1つのRは、クロロまたはモルホリノまたはピペリジノまたはN−メチルピペリジノである。1つの変化型において、Cはチオフェンであり、bは1である。1つの変化型において、Cはチオフェンであり、bは1であり、少なくとも1つのRはハロである。1つの変化型において、Cはチオフェンである。
【0080】
式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONHである、式(III)の変化型を含む。1つの変化型において、Cは、−CONHで置換された、および例えばアミノ基などの追加のRで任意に置換された、チオフェンである。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONH−アルキルである、式(III)の変化型を含む。例えば、Rが−CONH−低級アルキル(例えばイソプロピル)である化合物が包含される。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONH−置換アルキルである、式(III)の変化型を含む。特定の変化型において、Cはチオフェンであり、RおよびRの両方はHであり、少なくとも1つのRは−CONH−置換アルキルである。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONR−アルキルであり、ここでRはアルキルである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキル、例えば−CON(Me)である、式(III)の変化型を含む。特定の変化型において、Cはチオフェンであり、bは2であり、Rの1つは−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキル(例えば−CON(Me))であり、もう1つのRは、−S(O)アルキル、アリール、ヘテロアリール、または−S−アルキルである。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONRであり、ここで各Rは独立して置換アルキル、例えば−CHCHOCHである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONRであり、ここで各Rは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(III)の変化型を含む。特定の変化型において、Cはチオフェンであり、RおよびRの両方はHであり、少なくとも1つのRは−CONRであり、ここで各Rは、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環、例えばモルホリノを形成する。他の変化型において、Cはチオフェンであり、RおよびRの両方はHであり、bは1または2であり、少なくとも1つのRは−CONRであり、ここで各Rは、それらが連結する窒素と一緒に、bが2の場合はピペリジニルおよびモルホリニルから選択されるヘテロ環を形成し、−CONRではないRは、ハロ、ニトロ、および−OR11、例えばOアルキル(例えばメトキシ)から選択される。他の変化型において、Cはチオフェンであり、RおよびRの両方はHであり、bは1または2であり、少なくとも1つのRは−CONRであり、ここで各Rは、それらが連結する窒素と一緒に、低級アルキル、カルボキシルエステル、アシル、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、置換低級アルキル、オキソおよびアルコキシから選択される1または2の部分で置換された、ヘテロ環を形成する。例えば、ここでの任意の変化型において、Rが−CONRである場合、各Rはそれらが連結する窒素と一緒に、1−メチル−ピペラザ−4−イル、4−フルオロピペリジルおよび4−ヒドロキシピペリジルから選択される置換ヘテロ環を形成する。任意の変化型について、例えば、CがチオフェンでありRで置換されており、Rが−CONRである場合、Cはまた、ハロ、アミノ、ヒドロキシル、アルキル、ニトロ、およびシアノから選択される部分により置換されていてもよい。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−CONRであり、ここで各Rは独立してアルキルである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−NRSONR−アルキルであり、ここでRおよびRは独立して水素またはアルキルである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−SONRである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−SONRである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−SONR−アルキルであり、ここでRは水素またはアルキルである、式(III)の変化型を含む。式(III)に関して記載されるどの変化型も、少なくとも1つのRが−SONRであり、ここで2つのR基は、それらが連結する窒素と一緒にヘテロ環または置換ヘテロ環を形成する、式(III)の変化型を含む。
【0081】
代表的な式(III)の化合物は、限定することなく、表3に列挙した化合物を含む。
【表3】

【表3−2】

【0082】
方法において用いるための化合物
記載の方法は、生理的条件下で有効量のニトロキシルを供与する、本発明の化合物を用いる。全ての方法は、「N−ヒドロキシスルホンアミド化合物」のもとに記載されているN−ヒドロキシルスルホンアミド化合物を用いてよい。
【0083】
式(I)、(II)もしくは(III)の化合物、または本明細書に記載された方法に用いる化合物などの、本発明のどの化合物についても、親化合物の列挙または叙述は、適用可能であれば、その全ての塩、溶媒和物、水和物、多形体、またはプロドラッグを意図しおよび含む。それゆえ化合物の、薬学的に許容し得る塩などの全ての塩、溶媒和物、水和物、多形体およびプロドラッグは本発明に包含され、おのおの全ての塩、溶媒和物、水和物、多形体、またはプロドラッグが具体的におよび独立して列挙された場合と同様に、本明細書に記載される。
【0084】
本明細書に開示された全ての化合物において、立体中心の存在により適用可能である場合、化合物は叙述または記載された化合物の全ての可能な立体異性体を包含することを意図する。少なくとも1つの立体中心を有する化合物を含有する組成物もまた本発明に包含され、ラセミ混合物または1つの光学異性体の鏡像体過剰率を有する混合物または単一ジアステレオマーまたはジアステレオマー混合物を含む。これらの化合物の全てのかかる異性体形態は、異性体形態の1つ1つが具体的におよび独立に列挙された場合と同様に、明示的に本明細書に含まれる。本明細書の化合物はまた、例えば環または二重結合の存在による制限など、結合回転が特定の結合によって制限される結合(例えば炭素−炭素結合)を含んでもよい。したがって、全てのシス/トランスおよびE/Z異性体もまた明示的に本発明に含まれる。本明細書の化合物はまた、複数の互変異性型で表現されてもよく、かかる場合には、たとえ1つの互変異性型しか表現されていなくても、本発明は明示的に本明細書に記載される化合物の全ての互変異性型を含む。実質的に純粋な化合物の組成物もまた包含される。実質的に純粋な化合物の組成物とは、異なる生物学的活性の化合物などの不純物を25%以下、または15%以下、または10%以下、または5%以下、または3%以下、または1%以下有する組成物を意味し、組成物が実質的に純粋な単一異性体を含有する場合、この不純物は当該化合物の異なる立体化学的形態を含んでもよい。
【0085】
本発明の化合物は、スキームA〜Dに記載された一般的な方法に従って、または当業者に知られた手順で製造可能である。反応の出発原料は市販されているか、あるいは知られた手順またはその明らかな改変によって、調製することができる。例えば、多くの出発原料がSigma-Aldrichなどの市販業者から入手可能である。他のものは、March's Advanced Organic Chemistry (John Wiley and Sons)およびLarock's Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc.)などの標準的な参照テキストに記載されている手順、またはその明らかな改変によって、調製することができる。
【0086】
【化5】

スキームAにおいて、塩酸ヒドロキシルアミン水溶液を0℃まで冷却する。炭酸カリウム水溶液を、内部反応温度を約5℃から約15℃の間に維持しながら滴加する。反応混合物を約15分間攪拌し、ただちにテトラヒドロフラン(THF)およびメタノール(MeOH)を加える。化合物A1(式中Rは、アルキル、アリールまたはヘテロシクリル基である)を、約15℃以下の温度を維持しながら少しずつ加え、薄層クロマトグラフィ(TLC)によってスルホニルクロリドの完全消費が観察されるまで、反応混合物を室温で攪拌する。得られた懸濁液を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水溶性懸濁液をジエチルエーテルで抽出する。有機画分を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して粗N−ヒドロキシスルホンアミドA2を得る。精製はクロマトグラフィ、ろ過、結晶化などの慣用の方法で行うことができる。
【0087】
【化6】

スキームBにおいて、ヒドロキシルアミン水溶液およびTHFを−5℃まで冷却する。化合物A1(式中Rは、アルキル、アリールまたはヘテロシクリル基である)を、内部反応温度を約10℃以下に維持しながら少しずつ加え、反応混合物を、薄層クロマトグラフィ(TLC)によってスルホニルクロリドの完全消費が観察されるまで、室温で攪拌する。得られた懸濁液を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水溶性懸濁液をジエチルエーテルで抽出する。有機画分を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して粗N−ヒドロキシスルホンアミドA2を得る。精製はクロマトグラフィ、ろ過、結晶化などの慣用の方法で行ってもよい。
【0088】
【化7】

N−ベンジルオキシスルホンアミドは、化合物B2のR部分のさらなる修飾のための保護N−ヒドロキシスルホンアミドとして利用される、化学中間体である。スキームBにおいて、メタノールおよび水中の塩酸O−ベンジルヒドロキシルアミンB1の懸濁液を、内部反応温度を約10℃以下に維持しながら、冷却炭酸カリウム水溶液に加える。反応混合物を約5分間攪拌し、ただちにTHFおよびA1(式中Rは、アルキル、アリールまたはヘテロシクリル基である)を加える。TLCでスルホニルクロリドの完全消費が観察されるまで、反応混合物を室温で攪拌する。得られた懸濁液を真空中で濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水性懸濁液をジエチルエーテルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して粗製の目的化合物B2を得た。精製はクロマトグラフィ、ろ過、結晶化などの慣用の方法で行うことができる。反応生産物B2は、ベンジル基を取り除くことで脱保護することができる。例えば、炭上の10%パラジウム懸濁液をB2のメタノール懸濁液に加えてもよい。反応混合物を水素雰囲気下、室温、大気圧下で一晩攪拌する。反応混合物をマイクロファイバーグラス紙を通してろ過する。得られたろ物を真空中で濃縮し、残渣を慣用の方法で精製して、対応するN−ヒドロキシルスルホンアミドを得る。
【0089】
【化8】

N−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)スルホンアミドは、化合物C2のR部分のさらなる修飾のための保護N−ヒドロキシスルホンアミドとして利用される、化学中間体である。スキームCにおいて、0℃のC1水溶液を、内部反応温度を約10℃以下に維持しながら、炭酸カリウム水溶液に滴加する。約15分後、メタノールおよびTHFを滴加し、次いでA1を少しずつ加える。TLCでスルホニルクロリドの完全消費が観察されるまで、反応混合物を室温で攪拌する。得られた懸濁液を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水性懸濁液をジエチルエーテルで抽出する。有機画分を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して粗製の目的化合物C2を得る。精製はクロマトグラフィ、ろ過、結晶化などの慣用の方法で行うことができる。対応するN−ヒドロキシルスルホンアミドを得るためのC2の脱保護は、当該技術分野で知られた方法に従って行うことができる。
【0090】
化合物および組成物の利用方法
本明細書中の化合物および組成物は、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行の処置および/または予防に利用してよい。
【0091】
本発明は、個体(かかる処置を必要とすると同定される個体を含む)に対し、所望の効果をもたらすために、化合物を有効量投与する方法を包含する。かかる処置を必要とする対象の同定は、医師、臨床スタッフ、救急救命士または他のヘルスケアプロフェッショナルの判断で行うことができ、主観的(例えば見解)または客観的(例えば検査または診断的方法で測定可能)でありうる。
【0092】
1つの態様は、それを必要とする個体における、インビボニトロキシルレベルの調節(増大を含む)方法を提供し、その方法は、生理的条件下でニトロキシルを供与する化合物またはその薬学的に許容し得る塩の、個体への投与を含む。個体は、ニトロキシル治療に応答する疾患または異常を有するか、または有する疑いがあるか、または有するもしくは発症する危険性がある場合に、ニトロキシル調節を必要とする。
【0093】
本発明の方法に包含される特定の疾患または異常は、心不全または心臓の異常などの心臓血管疾患、および虚血/再灌流傷害に関連するまたは関連しうる疾患または異常を含む。これらの方法は以下でより詳細に説明する。
【0094】
本発明のニトロキシル供与化合物を含有する組成物は、本発明に包含される。しかしながら、記載された方法は1より多くのニトロキシル供与化合物を利用してもよく、例えばある方法では、アンジェリー塩および本発明のN−ヒドロキシスルホンアミドまたは2もしくは3以上の本願発明のN−ヒドロキシスルホンアミドを利用してもよく、同時にまたは連続的に投与してもよい。
【0095】
心臓血管疾患
ここで提供されるのは、心不全などの心臓血管疾患を、有効量の少なくとも1つのニトロキシル供与化合物をそれを必要とする個体に投与することで処置する方法である。また治療上有効な用量の少なくとも1つのニトロキシル供与化合物を、少なくとも1つの他の陽性変力作用剤と一緒に、それを必要とする個体に投与する方法も提供される。さらに、ベータ拮抗剤治療を受けている個体および心不全を経験している個体に、治療上有効量の少なくとも1つのニトロキシル供与化合物を投与する方法も提供される。本発明の化合物を、心不全の治療のためにベータアドレナリン作用薬と一緒に投与する方法も、ここで提供される。かかる作用薬にはドーパミン、ドブタミン、およびイソプロテレノール、ならびにかかる化合物のアナログおよび誘導体を含む。また、プロプラノロール、メトプロロール、ビソプロロール、ブシンドロール、およびカルベジロールなどのベータ拮抗剤処置を受けている個体に、ニトロキシル供与体を投与する方法も提供される。さらに、クラスIII心不全および急性心不全などの、特定の分類の心不全を処置する方法も、ここで提供される。
【0096】
また本発明によって包含されるのは、有効量の少なくとも1つのニトロキシル供与化合物を、それを必要とする個体に投与することで、急性うっ血性心不全を含む、うっ血性心不全(CHF)を処置する方法である。また、それを必要とする個体に有効量の少なくとも1つのニトロキシル供与化合物を、有効量の少なくとも1つの他の陽性変力作用剤と一緒に投与して、CHFを処置する方法も開示され、個体は心不全を経験していてもよい。1つの変化型において、他の陽性変力作用薬は、ドブタミンなどのベータアドレナリン作用剤である。ニトロキシル供与体および少なくとも1つの他の陽性変力剤の複合投与は、ニトロキシル供与体を他の陽性変力剤と順次投与すること、例えば最初に第1の剤、そして次に第2の剤で処置すること、または両方の剤を、投与の実施が重複している実質的に同じ時間に投与することを含む。順次投与では、第2の剤と複合して治療的効果を上げるのに十分な第1の剤のいくらかの量が、他の剤が投与される時に対象に残っているかぎり、個体は異なる時間に剤に曝露される。両方の剤での同時的な処置は、物理的に混合された投与薬などの同一投与薬での投与、または同時に投与される別々の投与薬の投与を伴いうる。
【0097】
特定の態様において、ニトロキシル供与体は、ベータ拮抗剤治療を受けている心不全を経験している個体に投与される。ベータ拮抗薬(ベータ遮断薬としても知られている)は、対象のベータアドレナリン受容体に対して拮抗薬として効果的に作用し、血管緊張および/または心拍を下げるなどの、所望の治療的または生理学的結果を提供するあらゆる化合物を含む。ベータ拮抗剤治療を受けている対象は、ベータ拮抗剤を投与されている、およびベータ拮抗剤が対象のベータアドレナリン受容体において拮抗薬として作用し続けているあらゆる対象である。特定の態様において、対象がベータ遮断治療を受けているかどうかの決定は、対象の病歴の調査によってなされる。他の態様において、対象はベータ遮断剤の存在について、Thevis et al., Biomed. Chromatogr., 15:393-402(2001)に記載されている高速液体クロマトグラフィなどの化学的検査によってスクリーニングされる。
【0098】
ニトロキシル供与化合物の単体での、陽性変力作用剤との併用での、またはベータ拮抗薬治療を受けている対象への投与は、全ての分類の心不全を処置するのに利用される。特定の態様において、ニトロキシル供与化合物は、クラスII心不全などの早期(early-stage)慢性心不全の処置に用いられる。他の態様において、ニトロキシル供与化合物は、イソプロテレノールなどの陽性変力作用剤と一緒にクラスIV心不全の処置に利用される。さらに他の態様において、ニトロキシル供与化合物は、イソプロテレノールなどの他の陽性変力作用剤と一緒に急性心不全の処置に利用される。いくつかの態様において、ニトロキシル供与体が早期心不全の処置に利用される場合、投与される用量は、急性心不全の処置に利用される量よりも少ない。他の態様において、用量は、急性心不全の処置に利用されるものと同じである
【0099】
虚血/再灌流傷害
本発明は、虚血/再灌流傷害を処置または予防または防止する方法を包含する。特に、本発明の化合物は、虚血イベントが起こる危険性のある個体に有益である。したがってここで提供されるのは、虚血/再灌流に伴う傷害を、好ましくは虚血の開始前に、少なくとも1つのニトロキシル供与化合物の有効量を個体に投与することで、予防または減少する方法である。本発明の化合物は、虚血後の再灌流前に個体に投与してもよい。本発明の化合物はまた、虚血/再灌流後に投与してもよいが、投与はさらなる傷害を防ぐものである。また個体が虚血イベントの危険性を示している場合の方法も提供する。また、ニトロキシル供与化合物を、移植される器官に有効量投与して、移植器官の移植者での再灌流において、器官の組織に起こる虚血/再灌流傷害を減少させるための方法も開示される。
【0100】
本発明のニトロキシル供与体はしたがって、将来の虚血/再灌流に伴う傷害を予防または減少する方法に利用してもよい。例えば、ニトロキシル供与体の虚血開始前の投与は、危険性のある組織における組織壊死(梗塞の大きさ)を減少することができる。生きている対象において、これは有効量のニトロキシル供与化合物を虚血開始前に個体に投与することによって達成できる。移植される器官において、これは移植者での器官への再灌流に先立って、ニトロキシル供与体を器官と接触させることによって達成できる。1つより多くのニトロキシル供与化合物、例えばアンジェリー塩および本発明のN−ヒドロキシスルホンアミド、または2もしくはそれ以上の本発明のN−ヒドロキシスルホンアミドを含有する組成物もまた、記載した方法に利用できる。ニトロキシル供与化合物はまた、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗血小板療法、または冠動脈疾患を有する個体中で心筋を保護する他の介入などの、虚血傷害を最小化するために設計された他の分類の治療剤と一緒に利用可能である。
【0101】
ニトロキシル供与体を生きている対象に投与する1つの方法には、ニトロキシル供与化合物の虚血開始前の投与が含まれる。これは虚血の各事例の開始のみをいい、以前に虚血イベントを有した対象に対する本方法の実施を排除するものではなく、すなわち本方法は、過去に虚血イベントを有した対象に対するニトロキシル供与化合物の投与も意図している。
【0102】
最初のまたは後続の虚血イベントの危険性がある個体を選択することができる。例としては、既知の高コレステロール血症、虚血の危険性に関連するEKGの変化、座りがちの生活習慣、血管造影法による部分的冠動脈閉塞の証拠、心エコーによる心筋ダメージの証拠、または将来または付加的な虚血イベント(例えば心筋梗塞(MI)などの心筋虚血イベント、または脳血管障害(CVA)などの神経血管虚血)の危険性の他のあらゆる証拠を有する個体が挙げられる。本方法の特定の例において、将来的な虚血の危険性はあるが、現在の虚血の証拠(虚血に伴う心電図変化(例えば適切な臨床状況における尖鋭化したもしくは陰性のT波またはSTセグメントの上昇もしくは低下)、CKMBの上昇、または激しい胸骨下胸痛もしくは上肢痛、息切れおよび/または発汗などの虚血の臨床的証拠)を有さない個体が、処置のために選択される。ニトロキシル供与化合物はまた、例えば血管形成術または外科手術(冠動脈バイパスグラフト手術など)などの、心筋虚血が起こるであろう手順の前に投与されうる。ニトロキシル供与化合物を、虚血イベントの危険性を示している個体に投与する方法もまた包含される。かかる症状を有する個体の選択は、様々な方法で行うことができ、そのいくつかは上述の通りである。例えば、現行の虚血(active ischemia)を伴わない異常なEKG、心筋梗塞の前歴、血清コレステロールの上昇などの1つまたは2つ以上を有する個体は、虚血イベントの危険性がある。したがって、危険性のある個体は、対象が虚血イベントの危険性の兆候を有しているかどうかを決定するための身体検査、または潜在的な対象の病歴の聴取によって、選択されうる。上述した兆候または当業者が認める他のあらゆる兆候に基づいて危険性が示された場合、個体は、虚血イベントの危険性を示しているとみなされる。
【0103】
虚血/再灌流は心筋組織以外の組織にダメージを与えることもあり、本発明は、かかるダメージを処置または予防する方法を包含する。1つの変化型において本方法は、脳、肝臓、消化管、腎臓、腸の組織、または他のあらゆる組織における虚血/再灌流による傷害の減少への利用を見出す。本方法は好ましくは、ニトロキシル供与体の、かかる傷害の危険性のある個体への投与を伴う。非心筋性虚血の危険性のある人を選択することは、心筋性虚血の危険性を評価するのに利用する指標の決定を含む。しかしながら、他の要因が、他の組織における虚血/再灌流の危険性を示しうる。例えば、外科手術患者はしばしば外科手術関連虚血を経験する。したがって、外科手術を予定している個体は、虚血イベントの危険性があると考えられる。後述の脳卒中の危険因子(またはそれらの危険因子の一部)は、対象の脳組織の虚血の危険性を示す:高血圧、喫煙、頸動脈狭窄、運動不足、糖尿病、脂質異常症、一過性脳虚血発作、心房細動、冠動脈疾患、うっ血性心不全、過去の心筋梗塞、壁在血栓による左心室機能不全、および僧帽弁狭窄症。Ingall, "Preventing ischemic stroke: current approaches to primary and secondary prevention", Postgrad. Med., 107(6):34-50(2000)。さらに、高齢者における未処置の伝染性下痢の合併症には、心筋、腎、脳血管、および腸の虚血を含みうる。Slotwiner-Nie & Brandt, "Infectious diarrhea in the elderly", Gastroenterol, Clin. N. Am., 30(3):625-635(2001)。代替的に、個体は虚血性の腸、腎臓または肝臓疾患の危険因子に基づいて選択することができる。例えば、低血圧症状の発現(外科手術による血液損失など)の危険性がある高齢の対象において、処置が開始される。したがって、かかる兆候を提示する対象は、虚血イベントの危険性があると考えられる。また糖尿病または高血圧などの、本明細書に列挙した1または2以上のあらゆる異常を有する個体に対する、本発明のニトロキシル供与化合物の投与も包含される。脳動静脈奇形などの虚血を引き起こしうる他の異常は、虚血イベントの危険性を示すと考えられる。
【0104】
移植される器官へのニトロキシルの投与法は、例えば臓器摘出過程に用いた灌流カニューレを介した、提供者から器官を摘出する前のニトロキシルの投与を含む。臓器提供者が生きている提供者、例えば腎臓提供者などである場合、ニトロキシル供与体を、虚血イベントの危険性のある対象について上述したとおりに、臓器提供者に投与することができる。他のケースにおいて、ニトロキシル供与体は、ニトロキシル供与体を含有する溶液に器官を保存することで投与することができる。例えば、ニトロキシル供与体は、例えば実質的にエチレングリコール、エチレンクロロヒドリンおよびアセトンを含まずにヒドロキシエチルスターチを含有するUniversity of Wisconsin「UW」液(米国特許番号4,798,824参照)などの、臓器保存液に含めることができる。
【0105】
医薬組成物、投薬形態および処置レジメン
本発明の化合物またはその薬学的に許容し得る塩を含有する、薬学的に許容し得る組成物もまた含まれ、任意の方法は、本発明の化合物を薬学的に許容し得る組成物として利用することができる。薬学的に許容し得る組成物には、1または2以上の本発明の化合物が、薬学的に許容し得るキャリアと一緒に含まれる。本発明の医薬組成物には、経口、直腸、鼻腔、局所性(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋内、静脈内および皮内を含む)投与に適したものを含む。
【0106】
化合物または組成物は、任意の可能な投薬形態として調製することができる。単位投薬形態もまた意図され、これには、例えば、それぞれ所定の量の化合物を含有するカプセル、サッシェまたは錠剤、粉末または顆粒、水性液または非水性液中の溶液または懸濁液、水中油型乳剤または油中水型乳剤、またはリポソームに封入されたものおよびボーラスなどの、化合物または組成物の不連続単位が含まれる。
【0107】
化合物または組成物を含有する錠剤は、任意に1または2以上の補助成分とともに、圧縮または成形により製造することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などのフリーフロー形態活性成分を、結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性または分散剤などと任意に混合して、適した機械中で圧縮することにより、調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適した機械中で成形することにより、調製することができる。錠剤は任意に被覆するかまたは割線を設けてもよく、それら中の活性成分の持続放出または制御放出を提供するために製剤することができる。本明細書中のものおよび当業者に知られた他の化合物などの薬学的に活性な成分の、持続放出または制御放出組成物を製剤する方法は、当該技術分野で知られており、また複数の発行済米国特許に記載されており、そのいくつかは、限定されずに米国特許第4,369,174号および第4,842,866号ならびにその中で引用されている参照文献を含む。被覆は、化合物を腸へ送達するために利用可能である(例えば米国特許第6,638,534号、第5,217,720号および第6,569,457号ならびにその中で引用されている参照文献を参照)。当業者は、錠剤に加えて他の投薬形態も、活性成分の持続放出または制御放出を提供するために製剤されうることを認識する。かかる投薬形態は、限定されずに、カプセル、顆粒およびジェルキャップを含む。
【0108】
局所投与に適した化合物は、成分を、風味のある基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に含有する薬用キャンディ、ならびに、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中の活性成分を含有するトローチを含む。
【0109】
非経口投与に適した化合物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および目的とするレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含んでよい、水性および非水性の無菌注入溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでよい、水性および非水性無菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量または複数回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルなどで提供されてもよく、使用の直前に、例えば注入用水などの無菌液体担体の添加のみが必要であるフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。
【0110】
即時調製の注入溶液および懸濁液は、無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0111】
化合物または組成物の個体への投与は、全身的な曝露を伴ってもよく、化合物または組成物を目的の部分に投与する場合などには、局所投与であってもよい。対象化合物を目的とする部位に提供するために様々な技法、例えば、注入によるもの、カテーテル、トロカール、プロジェクタイル(projectile)、プルロニックゲル、ステム、持続性薬剤放出ポリマーまたは他の内部アクセスを提供するデバイスを利用するものなどを、用いることができる。患者からの摘出によって器官または組織がアクセス可能な場合、かかる器官または組織を、対象組成物を含有する媒体に浸してもよく、対象組成物を器官に塗布してもよく、または、あらゆる便利な方法で適用してもよい。本発明の方法は、提供される臓器への化合物の投与(虚血/再灌流傷害を予防するためなど)を包含する。したがって、1つの個体から他の個体への移植のために摘出された臓器は、本明細書に記載された化合物または組成物を含有する媒体に浸すか、または前記化合物または組成物に別の方法で曝露してもよい。
【0112】
本発明の化合物、例えば本明細書中の式で表される化合物などは、任意の適切な投薬量で投与されてもよく、これは、成人に対して1日1回(または1日複数回、分割した用量で)約0.0001〜4.0グラムの投薬レベルを含んでよい。したがって、本発明のある態様において、本明細書の化合物は、範囲の下限が0.1mg/日および400mg/日の間の任意の量、ならびに範囲の上限が1mg/日および4000mg/日の間の任意の量(例えば5mg/日および100mg/日、150mg/日および500mg/日)の、任意の投薬量範囲の投薬量で投与される。他の態様において、本明細書の化合物は、範囲の下限が0.1mg/kg/日および90mg/kg/日の間の任意の量、ならびに範囲の上限が1mg/kg/日および−32100mg/kg/日の間の任意の量(例えば0.5mg/kg/日および2mg/kg/日、5mg/kg/日および20mg/kg/日)の任意の投薬量範囲の投薬量で投与される。投与間隔は、個体の必要性に応じて調整できる。長い投与間隔には、徐放製剤またはデポ製剤を用いることができる。投薬は静脈投与にふさわしいものとすることができる。例えば化合物は、静脈投与に適した医薬組成物などで、約.01μg/kg/分から約100μg/kg/分の間、または約.05μg/kg/分から約95μg/kg/分の間、または約.1μg/kg/分から約90μg/kg/分の間、または約1.0μg/kg/分から約80μg/kg/分の間、または約10.0μg/kg/分から約70μg/kg/分の間、または約20μg/kg/分から約60μg/kg/分の間、または約30μg/kg/分から約50μg/kg/分の間、または約.01μg/kg/分から約1.0μg/kg/分の間、または約.01μg/kg/分から約10μg/kg/分の間、または約0.1μg/kg/分から約1.0μg/kg/分の間、または約0.1μg/kg/分から約10μg/kg/分の間、または1.0μg/kg/分から約5μg/kg/分の間、または約70μg/kg/分から約100μg/kg/分の間、または約80μg/kg/分から約90μg/kg/分の間の量で投与可能である。1つの変化型において化合物は、静脈投与に適した医薬組成物などで、少なくとも約.01μg/kg/分、または少なくとも約.05μg/kg/分、または少なくとも約0.1μg/kg/分、または少なくとも約0.15μg/kg/分、または少なくとも約0.25μg/kg/分、または少なくとも約0.5μg/kg/分、または少なくとも約1.0μg/kg/分、または少なくとも約1.5μg/kg/分、または少なくとも約5.0μg/kg/分、または少なくとも約10.0μg/kg/分、または少なくとも約20.0μg/kg/分、または少なくとも約30.0μg/kg/分、または少なくとも約40.0μg/kg/分、または少なくとも約50.0μg/kg/分、または少なくとも約60.0μg/kg/分、または少なくとも約70.0μg/kg/分、または少なくとも約80.0μg/kg/分、または少なくとも約90.0μg/kg/分、または少なくとも約100.0μg/kg/分、またはそれ以上の量で、個体に投与される。他の変化型において化合物は、静脈投与に適した医薬組成物などで、約100.0μg/kg/分以下、または約90.0μg/kg/分以下、または約80.0μg/kg/分以下、または約70.0μg/kg/分以下、または約60.0μg/kg/分以下、または約50.0μg/kg/分以下、または約40.0μg/kg/分以下、または約30.0μg/kg/分以下、または約20.0μg/kg/分以下、または約10.0μg/kg/分以下、または約5.0μg/kg/分以下、または約2.5μg/kg/分以下、または約1.0μg/kg/分以下、または約0.5μg/kg/分以下、または約0.05μg/kg/分以下、または約0.15μg/kg/分以下、または約0.1μg/kg/分以下、または約0.05μg/kg/分以下、または約0.01μg/kg/分以下の量で、個体に投与される。
【0113】
本発明はさらに、本明細書に記載された1または2以上の化合物を含有するキットを提供する。本キットは、本明細書に開示された任意の化合物および使用方法を利用することができる。化合物は、任意の許容し得る形態に製剤されてもよい。キットは、本明細書に記載された任意の1または2以上の用途に利用されてもよく、そして、したがって、任意の1または2以上の記載された用途(例えば、心不全もしくは虚血/再灌流傷害の開始および/または進行の処置および/または予防および/または遅延)についての指示を含んでよい。
【0114】
キットは一般的に適した梱包を含む。本キットは、1または2以上の本明細書に記載された任意の化合物を含有する容器を含んでよい。それぞれの構成要素(1より多くの構成要素がある場合)は別個の容器に包装してもよく、または、いくつかの構成要素は、交差反応性および保存期間が許容する場合に、1つの容器に混合してよい。
【0115】
キットは、本発明の方法の構成要素の利用(例えば、心不全もしくは虚血/再灌流傷害の開始および/または進行の処置、予防および/または遅延)に関する指示(一般的には書面による指示であるが、指示を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスクまたは光学ディスク)もまた許容し得る)を任意に含んでよい。キットに含まれる指示は、一般的に構成要素および、個体へのその投与に関する情報を含む。
【0116】
後述の例は、本発明の多様な態様を例示するために提供したものであり、いかなる方法によっても本発明を制限することを意図しない。
【0117】

全てのHPLC解析は、Agilent G1312Aバイナリポンプを装備したCTC PAL HTSオートサンプラーをwaters 2487紫外線検出器とともに利用した。以下の方法およびカラムを、保持時間(TR)の決定に利用した。0〜100%B[MeCN:HO:0.2%HCOH]、2.5分勾配、0.5分保持、215nm、Atlantis dC18 2.1×50mm、5μm。
【0118】
全てのNMRは、内部重水素ロックを利用した、室温プローブで動作するBruker AVANCE 400MHz分光計、またはBruker 500分光計で記録した。ケミカルシフトは、テトラメチルシラン(TMS)に対して低い周波数にて、100万分の1(ppm)で記録した。標準的な略称(s 一重線;br.s 幅広の一重線;d 二重線;dd 二重線の二重線;t 三重線;q 四重線;m 多重線)を全体を通じて用いた。結合定数はヘルツ(Hz)で記録した。
【0119】
例1.スキームAの一般的な合成に従った本発明の化合物の調製
2−ヒドロキシスルファモイル−安息香酸メチルエステル(化合物1)
【化9】

炭酸カリウム(3.53g、25.57mmol)を水(3.6ml)に溶解した溶液を、ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(1.76g、25.57mmol)を水(2.4ml)に溶解した溶液に、0℃にて、内部反応温度を5℃〜15℃に維持しながら滴下して加えた。THF(12ml)およびメタノール(3ml)を加え、続いて2−クロロスルホニル−安息香酸メチルエステル(3g、12.78mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら少しずつ加え、スルホニルクロリドの完全消費がtlcにより観察されるまで、反応混合物を周囲温度で攪拌した。得られた懸濁液を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水溶性懸濁物をジエチルエーテルで抽出した(2×100ml)。有機画分を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して、粗製N−ヒドロキシスルホンアミドを得た。シリカゲル上、ヘプタン:酢酸エチル(8:2 v:v)で溶出するクロマトグラフィにより精製して、親化合物を白色固体として得た(1.3g、44%収率);
【化10】

【0120】
例2.スキームAの一般的な合成に従った本発明の化合物の調製
3−ヒドロキシスルファモイル−安息香酸(化合物2)
【化11】

炭酸カリウム(0.43g、3.10mmol)を水(1.2ml)に溶解した溶液を、ヒドロキシルアミンヒドロクロリド(0.21g、3.10mmol)を水(0.8ml)に溶解した溶液に、0℃にて、内部反応温度を5℃〜15℃に維持しながら滴下して加えた。THF(4ml)およびメタノール(1ml)を加え、続いて3−クロロスルホニル−安息香酸(0.34g、1.55mmol)を、温度を15℃未満に維持しながら少しずつ加え、スルホニルクロリドの完全消費がLCMSにより観察されるまで、反応混合物を周囲温度で攪拌した。得られた懸濁液を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、水溶性懸濁物をジエチルエーテルで抽出し(2×100ml)、合わせた有機層を廃棄した。塩酸溶液(2N)を1滴ずつ加えて水性層をpH=1に酸性化し、次にジエチルエーテルで抽出した(2×100ml)。有機画分を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して、清浄なN−ヒドロキシスルホンアミドを黄色の固体として得た(0.9g、27%収率);
【化12】

【0121】
例3.スキームBの一般的な合成に従った本発明の化合物の調製
4−ブロモ−3−(ヒドロキシルスルファモイル)−N,N−ジメチルベンズアミド(化合物6)
【化13】

水(1ml)中のヒドロキシルアミン(0.5mlの50%水溶液、7.6mmol)水溶液およびTHF(5ml)を、−5℃に冷却した。2−ブロモ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリドを、温度を約10℃未満に維持しながら少しずつ加え、スルホニルクロリドの完全消費が薄相クロマトグラフィ(TLC)により観察されるまで、反応混合物をこの温度で攪拌した。得られた懸濁物を濃縮して全ての揮発性物質を除去し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄して、表題化合物をクリーム色固体として得た(0.36g、36%)。
【化14】

【0122】
上で報告し、一般合成スキームAおよびB(方法1および2)に詳細を記した実験条件および、市販のもしくは標準文献の条件を用いて合成した適切な出発原料を利用して、以下の化合物を調製した:
【化15】

【化16】

【0123】
出発スルホニルクロリドの合成
スルホニルクロリドを、市販の出発原料から、J. Med. Chem, 40, 2017; Bioorg. Med. Chem, 2002, 639-656; Journal of Pharmacy and Pharmacology, 1963, 202-211およびAustralian Journal of Chemistry, 2000, 1-6に記載の方法に従って合成した。例えば、あるスルホニルクロリドは次のスキームに従って合成可能である:
【化17】

チオフェン誘導体についてのスキームを適応して、類似のピロール誘導体を合成することができる。
【0124】
2−ブロモ−5−(モルホリン−4−カルボニル)−ベンゼンスルホニルクロリド:
【化18】

ステップ1.
4−ブロモ−3−クロロスルホニル−安息香酸
4−ブロモ安息香酸(10g、49.75mmol)を、クロロスルホン酸(25ml、373.13mmol)に0℃で少しずつ加えた。混合物を、出発原料の完全な消費がLCMSにより観察されるまで、130℃で10時間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却させて、次に氷/水混合物(500ml)に滴下して加えた。沈殿物をろ過し、冷水で洗浄した(2×100ml)。回収した固体をジエチルエーテルに溶解し、溶液を次に硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過および真空中で濃縮し、予想された産物をベージュ色の固体として得た(11.85g、収率79%)。
【化19】

【0125】
ステップ2.
4−ブロモ−3−クロロスルホニル−ベンゾイルクロリド
4−ブロモ−3−クロロスルホニル−安息香酸(2g、6.68mmol)をトルエン(20ml)中に懸濁させた。塩化チオニル(0.97ml、13.36mmol)を滴下して加え、混合物を窒素雰囲気下で、カルボン酸の完全消費がLCMSにより観察されるまで、還流で14時間加熱した。反応混合物を真空下で濃縮して乾燥させ、予想された酸塩化物を固体として得た(2.12g、収率95%)。化合物は、さらなる精製または分析なしで、次のステップに用いた;TR=2.38。
【0126】
ステップ3.
2−ブロモ−5−(モルホリン−4−カルボニル)−ベンゼンスルホニルクロリド
塩酸モルホリン(0.87g、7.01mmol)を、クロロベンゼン(8ml)中の4−ブロモ−3−クロロスルホニル−ベンゾイルクロリド(2.12g、6.68mmol)の溶液に加えた。反応物は、出発原料の完全消費がLCMSにより観察されるまで、還流で2時間加熱した。反応混合物を真空下で濃縮して乾燥させた。残留物をジエチルエーテル(20ml)にとり、沈殿物をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄して(2×10ml)、予想されたスルホニルクロリドをベージュ色の固体として得た(2.34g、収率95%)。
【化20】

【0127】
3−クロロスルホニル−4−クロロ安息香酸:
3−クロロスルホニル−4−クロロ安息香酸を、市販の出発原料から、上に詳述した方法のステップ1に従って調製した。
【化21】

【0128】
3−クロロスルホニル−4−ブロモ安息香酸:
3−クロロスルホニル−4−ブロモ安息香酸を、市販の出発原料から、上に詳述した方法のステップ1に従って調製した。
【化22】

【0129】
2−ブロモ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリド:
2−ブロモ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリドを、市販の出発原料から、上に詳述した方法のステップ1〜3に従って、ただしステップ3のモルホリンHClの代わりにジメチルアミンHClを用いて調製した(4.35g、80%)。
【化23】

【0130】
2−クロロ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリド:
2−クロロ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリドを、市販の出発原料から、上に詳述した方法のステップ1〜3に従って、ただしステップ3のモルホリンHClの代わりにジメチルアミンHClを用いて調製した(4.37g、79%)。
【化24】

【0131】
2−(モルホリン−4−イルスルホニル)ベンゼンスルホニルクロリド:
【化25】

ステップ1:
2−(モルホリン−4−イルスルホニル)クロロベンゼン
0℃に冷却したDCM(100ml)中の2−クロロベンゼンスルホニルクロリド(10g、47.4mmol)の溶液に、ピリジン(5.7ml、71.1mmol)およびモルホリン(6.2ml、71.1mmol)を滴下して加えた。15分間攪拌を続け、その後スルホニルクロリドはLC−MSにより観察されなかった。反応物を2NのHClを加えてクエンチし、さらなる2NのHClで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮して、表題化合物をさらなる精製の必要性なく産生した(11.2g、100%)。
【化26】

【0132】
ステップ2:
ベンジル−2−(モルホリン−4−イルスルホニル)ベンゼンスルフィド
フェニルメタンチオール(7.6ml、43.5mmol)を、MeOH(25ml)中のNaOMe/MeOHの25%溶液(14.1g、65.2mmol)に滴下して加えた。得られたチオレートを真空中の濃縮により単離した。ナトリウムチオレート塩をDMSO(65ml)中に溶解し、2−(モルホリン−4−イルスルホニル)クロロベンゼン(11.1g、43.5mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を周囲温度で72時間攪拌して、その後は出発原料が観察されなかった。反応混合物を2NのHCl溶液(200ml)に注ぎ入れ、DCM中に抽出した(3×200ml)。有機画分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。粗物質を、ヘプタン:酢酸エチル(8:2 v:v)で溶出するカラムクロマトグラフィにより精製した。(13.7g、90%)、TR=1.00分。
【0133】
ステップ3:
2−(モルホリン−4−イルスルホニル)ベンゼンスルホニルクロリド
塩素を、濃縮HCl(70ml)中のベンジル−2−(モルホリン−4−イルスルホニル)ベンゼンスルフィド(7.0g、1.1mmol)の冷却した(0℃)懸濁液に、内部温度を15℃未満に維持しつつ気泡発生させて、これを出発原料の完全な消費が観察されるまで継続した(およそ45分間)。反応完了後、窒素を反応混合物中に15分間気泡発生させて、全ての過剰な塩素を除去し、反応物を周囲温度まで温まるようにした。反応混合物を氷上に注ぎ、形成された黄色の固体をろ過し、氷水で洗浄した。この固体をヘプタンで粉砕し、ろ過し、ヘプタンで洗浄し、真空下で乾燥して、粗スルホニルクロリドを薄黄色の固体として得、これを化合物8の合成に直接用いた。
【0134】
2−(モルホリン−4−イル)エチル 4−クロロ−3−(クロロスルホニル)ベンゾエート
【化27】

4−クロロ−3−(クロロスルホニル)安息香酸および2−クロロ−5−(ジメチル−4−カルボニル)ベンゼンスルホニルクロリドの合成は、2−ブロモ−5−(モルホリン−4−カルボニル)−ベンゼンスルホニルクロリドの合成で詳述したものと同様の様式で調製した。
【0135】
ステップ3:
2−(モルホリン−4−イル)エチル 4−クロロ−3−(クロロスルホニル)ベンゾエート
DCM(10ml)中の4−クロロ−3−(クロロスルホニル)ベンゾイルクロリド(1.0g、3.6mmol)の溶液に、DCM(1ml)中のヒドロキシエチルモルホリン(443μl、3.6mmol)の溶液を加えた。反応混合物を12時間攪拌し、その後スルホニルクロリドはLC−MSにより観察されなかった。粗反応混合物の濃縮により、固体を単離し、これをエーテルで粉砕して、所望の化合物を茶色の固体として得た(1.54g、100%)。
【化28】

【0136】
3−ブロモ−5−{[2−(モルホリン−4−イル)エチル]カルバモイル}チオフェン−2−スルホニルクロリド
【化29】

ステップ1.
4−ブロモ−N−[2−(モルホリン−4−イル)エチル]チオフェン−2−カルボキサミド
0℃に冷却したDCM(10ml)中の4−ブロモ−2−チオフェンカルボニルクロリド(1.0g、4.4mmol)の溶液に、DIPEA(0.85ml、4.8mmol)および4−(2−アミノエチル)モルホリン(0.6ml、4.6mmol)を滴下して加えた。出発原料の完全消費がLC−MSにより観察されるまで、攪拌を続けた。反応物を水を加えてクエンチし、これを2NのHClのさらなる部分で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し真空中で濃縮して、所望の化合物をさらなる精製の必要性なく産生した(1.6g、98%)。
【化30】

【0137】
ステップ2
3−ブロモ−5−{[2−(モルホリン−4−イル)エチル]カルバモイル}チオフェン−2−スルホニルクロリド
4−ブロモ−N−[2−(モルホリン−4−イル)エチル]チオフェン−2−カルボキサミド(1.6g、5.1mmol)を含有するフラスコに、クロロスルホン酸(10ml、30当量)を加えた。反応物を95℃で90分間加熱して、ついで氷にゆっくりと加えた。得られた固体をろ過し、真空中で乾燥した。粗物質をヘプタン:酢酸エチルで粉砕して、表題化合物をさらなる精製の必要なく産生した。(0.62g、29%)。
【化31】

【0138】
3−ブロモ−5−(モルホリン−4−イルカルボニル)チオフェン−2−スルホニルクロリド
ステップ1
4−ブロモ−N−(モルホリン−4−イル)チオフェン−2−カルボキサミド
0℃に冷却したDCM(10ml)中の4−ブロモ−2−チオフェンカルボニルクロリド(1.0g、4.4mmol)の溶液に、DIPEA(0.85ml、4.8mmol)およびモルホリン(0.4g、4.6mmol)を滴下して加えた。出発原料の完全消費がLC−MSにより観察されるまで、攪拌を続けた。反応物を水を加えてクエンチし、これを2NのHClのさらなる部分で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し真空中で濃縮して、所望の化合物をさらなる精製の必要性なく産生した(1.2g、100%)。
【化32】

【0139】
ステップ2
3−ブロモ−5−(モルホリン−4−イルカルボニル)チオフェン−2−スルホニルクロリド
4−ブロモ−N−(モルホリン−4−イル)チオフェン−2−カルボキサミド(1.23g、4.5mmol)を含有するフラスコに、クロロスルホン酸(9ml、30当量)を加えた。反応物を95℃で90分間加熱して、ついで氷にゆっくりと加えた。得られた懸濁物をDCM中に抽出し(3×100ml)、合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し真空中で乾燥して、表題化合物をさらなる精製の必要なく産生した(0.54g、32%)。
【化33】

【0140】
例3:HNO放出の反応速度論
化合物の分解速度は、紫外可視分光法で測定することができる。
【0141】
化合物の分解は、pH7.4および37℃の0.1MのPBS緩衝液中で、紫外可視分光法でモニタリングした。Bonner, F.T.; Ko., Y. Inorg. Chem. 1992, 31, 2514-2519。
【0142】
例4.NO定量化を通したHNO産生
化合物のHNO産生は、紫外可視分光法で測定した。
【0143】
亜酸化窒素はHNOの二量化および脱水によって産生され、HNO産生の最も普遍的なマーカーである(Fukuto, J.M.; Bartberger, M.D.; Dutton, A.S.; Paolocci, N.; Wink, D.A.; Houk, K.N. Chem. Res. Toxicol. 2005, 18, 790-801)。しかしながら、HNOはまた一部が酸素によってクエンチされることができ、NOを産生しない産生物を得る((a)Mincione, F.; Menabuoni, L.; Briganti, F.; Mincione, G.; Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Enzyme Inhibition 1998, 13, 267-284および(b)Scozzafava, A.; Supuran, C.T. J. Med. Chem. 2000, 43, 3677-3687参照)。アンジェリー塩(AS)を基準として用いて、化合物から放出されるNOの相対量を、GCヘッドスペース解析によって調べた。
【0144】
化合物の、pH7.4のPBS緩衝液中での37℃におけるニトロキシル供与能力を評価した。特に、化合物を試験して、それらの、pH7.4のPBS緩衝液中での37℃におけるニトロキシル供与能力を評価した。結果を下の表4に示し、化合物1〜5についての結果は図1にも示す。
【表4】

【0145】
例5.本発明の化合物の、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防ならびに/あるいは遅延する能力の決定のためのインビトロモデルの利用
a.心臓血管疾患または異常
心臓血管疾患のインビトロモデルもまた、本明細書に記載された任意の化合物の、個体における心臓血管疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防、ならびに/あるいは遅延する能力の決定のために、利用可能である。心臓疾患の典型的なインビトロモデルを以下に記載する。
【0146】
インビトロモデルは、化合物の血管弛緩特性を見るために利用可能である。単離されたラット胸大動脈輪状セグメント(thoracic aortic ring segment)における等尺性張力は、Crawford, J.H., Huang, J, Isbell, T.S., Shiva, S., Chacko, B.K., Schecheter, A., Darley-Usmar, V.M., Kerby, J.D., Lang, J.D., Krauss, D., Ho, C., Gladwin, M.T., Patel, R.P., Blood 2006, 107, 566-575に既に記載されているようにして計測することができる。ラットを犠牲にして大動脈輪状セグメントを切除し、脂肪および付着組織を洗浄除去する。次に、血管を個別の輪状セグメント(幅2〜3mm)に切断し、力変位変換器からオルガンバス中に懸垂する。輪状セグメントは、以下の組成(mM)の37℃の重炭酸塩緩衝Krebs−Henseleit(K−H)溶液:NaCl 118;KCl 4.6;NaHCO 27.2;KHPO 1.2;MgSO 1.2;CaCl 1.75;NaEDTA 0.03;およびグルコース11.1に浸し、21%O/5%CO/74%Nで継続的に灌流する。2gの受動荷電を全ての輪状セグメントに適用し、実験を通してそのレベルを維持する。それぞれの実験の最初では、血管の最大収縮能力を決定するために、インドメタシン処理した輪状セグメントをKCl(70mM)で脱分極させる。輪状セグメントを十分に洗浄し、平衡化させる。後続の実験で、血管はフェニレフリン(PE、3×10−8〜10−7M)、で最大下収縮(KCl応答の50%)され、そしてL−NMMA、0.1mMをeNOSおよび内因性NO産生を阻害するために加える。張力の発生がプラトーに達したら、ニトロキシル供与化合物を血管浴中に累積的に加え、張力に対する効果をモニターする。
【0147】
インビトロモデルは、心筋における発生力および細胞内のカルシウムの変化に対するニトロキシル供与化合物の効果を決定するために利用可能である。発生力および細胞内のカルシウムは、既述(Gao WD, Atar D, Backx PH, Marban E. Circ Res. 1995;76:1036-1048)のように、正常ラットまたは疾患ラット(すなわちうっ血性心不全または心肥大を有するラット)から採取した肉柱において計測可能である。ラット(Sprague-Dawley、250〜300g)をこれらの実験に用いる。ラットはペントバルビタール(100mg/kg)で腹腔内麻酔し、心臓を正中胸骨切開術で露出し、速やかに摘出して解剖皿に置く。大動脈にカニューレを挿入し、95%Oおよび5%COで平衡化した解剖用Krebs−Henseleit(H−K)溶液で心臓を逆に灌流(〜15mM/分)する。解剖用K−H溶液は(mM):NaCl 120;NaHCO 20;KCl 5;MgCl 1.2;グルコース 10;CaCl 0.5;および2,3−ブタンジオンモノオキシミン(BDM)20で構成され、室温(21〜22℃)でpH7.35〜7.45である。右心室の肉柱を切除し、力変換器とモーターアームの間に取り付け、通常のK−H溶液(KCl、5mM)で〜10ml/分の速度で表面灌流しながら0.5Hzで刺激する。筋肉の大きさを、解剖顕微鏡の接眼レンズ内の目盛り付きレンズ(×40、分解能〜10μm)で計測する。
【0148】
力は力変換器システムを利用して計測し、断面1平方ミリメートルあたりのミリニュートンで表示する。サルコメア長はレーザー回折で計測する。静止時サルコメア長は、実験を通して2.20〜2.30μmに設定する。
【0149】
細胞内のカルシウムは、過去の研究(Gao et al., 1994; Backx et al., 1995; Gao et al., 1998)に記載の通りfura−2の遊離酸型を利用して計測する。fura−2カリウム塩をイオン泳動的に1つの細胞に微量注入し、(ギャップ結合を介して)全筋肉に拡げる。電極の先端(直径〜0.2μm)をfura−2塩(1mM)で満たし、電極の残りを150mMのKClで満たす。非刺激筋肉の表面細胞へ首尾よく穿刺した後、5〜10nAの過分極化電流を継続的に〜15分流す。fura−2の落射蛍光を380および340nmで励起して計測する。蛍光は光電子増倍管によって510nmで収集する。光電子増倍管の出力を収集し、デジタル化する。リアノジン(1.0μM)が定常状態活性化を可能にするために利用される。リアノジンへの15分の曝露の後、様々な細胞外カルシウム(0.5〜20mM)にて10Hzで筋肉を刺激することで、種々のレベルの強直が短時間(〜4〜8秒)誘発される。全ての実験は室温(20〜22℃)で行う。
【0150】
b.虚血/再灌流に関連する疾患または異常
インビトロモデルはまた、本明細書に記載された任意の化合物の、個体における虚血/再灌流傷害に関連する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防、ならびに/あるいは遅延する能力を決定するために利用可能である。
【0151】
例6.本発明の化合物の、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防ならびに/あるいは遅延する能力の決定のための、インビボおよび/またはエクスビボモデルの利用
a.心臓血管疾患または異常
心臓血管疾患のインビボモデルもまた、本明細書に記載された任意の化合物の、個体における心臓血管疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防、ならびに/あるいは遅延する能力を決定するために利用可能である。心臓疾患の典型的な動物モデルを以下に記載する。
【0152】
ニトロキシル供与化合物によって獲得されるインビボ心臓血管効果は、コントロール(正常)犬で評価し得る。研究は、既述(Katori, T; Hoover, D.B.; Ardell, J.L.; Helm, R.H.; Belardi, D.F.; Tocchetti, C.G.; Forfia, P.R.; Kass, D.A.; Paolocci, N. Circ. Res. 96(2): 2004)のように、覚醒下の血液動態解析および血液採取のための装置を常時装着した雑種(オス)の成犬(25kg)で行う。左心室内の微小圧力計変換器が圧を提供し、さらに右心房および下行大動脈カテーテルが液圧および採取導管を提供する。心臓内のソノミクロメーター(sonomicrometer、前後、中隔−側壁)で短軸寸法を計測し、下大静脈周辺の空気オクルーダで圧関係解析のための前負荷操作を容易にした。心外膜のペーシングリードを右心房に置き、もう一つのペアを右心室自由壁に置き、高頻度刺激心不全の誘導のために永久ペースメーカーに繋ぐ。10日間の回復の後、動物を、ベースライン洞調律で、心房ペーシング(120〜160bpm)を伴った状態で評価する。計測は心臓力学のための覚醒下の血液動態記録を含む。
【0153】
本発明の化合物を健康なコントロール犬に1〜5μg/kg/分の用量で投与し、その結果得られる心臓血管データを得る。
【0154】
本発明の化合物がうっ血性心不全を伴う心臓において心血行動態を改善することの証明:ベースライン条件下での手順を完了した後、既述(Katori, T; Hoover, D.B.; Ardell, J.L.; Helm, R.H.; Belardi, D.F.; Tocchetti, C.G.; Forfia, P.R.; Kass, D.A.; Paolocci, N. Circ. Res. 96(2): 2004)のとおりに、うっ血性心不全を頻脈(210bpm×3週間、240bpm×1週間)によって誘導する。簡潔には、拡張末期圧および+dP/dtmaxを、不全の進行をモニターするために毎週計測する。動物が、EDPの2倍以上の上昇およびベースラインの50%を超えるdp/dtmaxを示したら、それらはうっ血性心不全研究の準備ができたと見なす。
【0155】
試験化合物についての数値は、ボリュームリストレーション(volume restoration)無しおよび有りの双方での、コントロールおよび心不全標本それぞれにおける15分間持続静脈内注入(2.5または1.25μg/kg/分)の後に取得する。比較のために、同様の血液動態計測を、心不全標本におけるASについて取得する。
【0156】
b.虚血/再灌流に関連する疾患または異常
虚血/再灌流のエクスビボモデルもまた、本明細書に記載された任意の化合物の、個体における虚血/再灌流傷害に関連する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防、ならびに/あるいは遅延する能力を決定するために利用可能である。虚血/再灌流傷害の典型的なエクスビボモデルを以下に記載する。
【0157】
オスのウィスターラットを、同一のケージに収容し、水道水および標準的な齧歯類飼料を不断給餌した。それぞれの動物は、ヘパリン処理(2500U、筋肉内)の10分後に1g/kgのウレタンの腹腔内投与で麻酔する。胸部を開き、心臓を速やかに摘出して氷冷緩衝液中に置き、秤量する。単離したラットの心臓を灌流装置に取り付け、37℃の酸素化緩衝溶液で逆行的に灌流する。心臓は、Rastaldo .et al., "P-450 metabolite of arachidonic acid mediates bradykinin-induced negative inotropic effect," Am. J. Physiol., 280:H2823〜H2832 (2001)および、Paolocci et al. "cGMP-independent inotropic effects of nitric oxide and peroxynitrite donors: potential role for nitrosylation," Am. J. Physiol., 279:H1982〜H1988 (2000)に既述のとおりに取り付ける。流れは、典型的な冠動脈灌流圧の85〜90mmHgに達するように一定(約9mL/分/湿重g)に維持する。流量の10%の一定の比率を、大動脈カニューレに連結した50mlシリンジを利用した2つの灌流ポンプ(Terumo, Tokyo, Japan)のうちの1つによって適用する。薬剤の適用は、緩衝液のみを含有するシリンジから、心臓における所望の最終濃度の10倍の濃度で媒体に溶解している薬剤(ニトロキシル供与化合物)を含有する他のシリンジに切り替えることで行われる。左心室壁の小孔はテベシウス流の排出を可能にし、ポリ塩化ビニルバルーンを左心室に入れて電子圧力計(electromanometer)に繋いで左心室圧(LVP)を記録する。心臓は電気的に280〜300bpmでペーシングし、温度調節槽(37℃)の中に置く。冠動脈灌流圧(CPP)および冠動脈流は、いずれも灌流ラインに沿って置かれた第2の電子圧力計および電磁フロープローブでそれぞれモニターする。左心室圧、冠動脈流および冠動脈灌流圧は、TEACR−71レコーダーを利用して記録し、1000Hzでデジタル化し、DataQ-Instruments/CODAS softwareでオフライン解析して、心収縮の間のLVPの増加の最大速度(dP/dtmax)の定量化を可能にする。
【0158】
心臓は、95%Oおよび5%COを供給した以下の組成のKrebs−Henseleit溶液で灌流する:17.7mMの重炭酸ナトリウム、127mMのNaCl、5.1mMのKCl、1.5mMのCaCl、1.26mMのMgCl、11mMのD−グルコースに5μg/mLのリドカインを添加したもの。
【0159】
実験化合物。ニトロキシル供与体は使用の直前に緩衝液で希釈する。
【0160】
実験手順。心臓は30分安定化させ、ベースライン変数を記録する。典型的には、冠動脈流は最初の10分以内に調節し、そこからそれを一定に保つ。30分の安定化の後、心臓を処理群の1つに無作為に割り当て、30分、全体的な無血流虚血(no-flow ischemia)に供し、次いで30分の再灌流を行う(I/R)。心臓のペーシングは虚血期間の最初に止め、再灌流の3分後に再開する。
【0161】
コントロール群の心臓は、安定化の後さらに29分間緩衝液を還流する。処理心臓をニトロキシル供与体に曝露する(例えば、最終濃度1μMを約20分、次いで10分間の緩衝液洗浄期間など)。
【0162】
全ての心臓において、ペーシングは虚血の開始時一時停止され、再灌流後3分で再開する。単離心臓標本は時間とともに劣化しうるため(典型的には2〜2.5時間の灌流後)、晶質灌流(crystalloid perfusion)が心臓の能力に与える影響を最小にするため、他の報告と整合して、再流(re-flow)持続時間は30分に制限する。
【0163】
心室機能の評価。最大発症LVPを獲得するため、上記PaolocciおよびHare et al., "Pertussis toxin-sensitive G proteins influence nitric synthase III activity and protein levels in rat hearts," J. Clin. Invest., 101:1424〜31 (1998)に報告されているように、心室内バルーンの大きさを、安定期における拡張末期LVPの10mmHgに調節する。発生LVPの変化、dP/dtmaxおよびI/R手順によって誘発された拡張末期値を継続的にモニターする。虚血期間終了前と、虚血前状態との間の拡張末期LVP(EDLVP)の違いを、拘縮発生の程度の指標として利用する。再灌流の間の発生LVPおよびdP/dtmaxの最大回復を、それぞれの虚血前の値と比較する。
【0164】
心筋傷害の評価。酵素放出は、まだ不可逆的な細胞傷害に進行していない深刻な心筋傷害の指標である。冠動脈流出物のサンプル(2mL)を、肺動脈を経由して右心室に挿入されたカテーテルで引き出す。サンプルは、虚血前および再灌流の3、6、10、20および30分の時点で素早く採取する。Bergmeyer & Bernt, "Methods of Enzymatic Analysis," VerlagChemie (1974)によって既述のように、LDH放出が計測される。データは、再流期間全体の累積値として表現される。
【0165】
LDH放出によって決定された、心筋傷害に関係するデータを裏付けるため、梗塞領域もまた盲検様式で評価する。過程(30分の再灌流)の終わりに、それぞれの心臓を素早く再灌流装置から取り外し、LVを2〜3mmの円周方向のスライスに細切りする。Ma et al., "Opposite effects of nitric oxide and nitroxyl on postischemic myocardial injury" Proc. Natl. Acad. Sci., 96:14617〜14622 (1999)に記載されているように、ニトロブルーテトラゾリウムの0.1%リン酸緩衝溶液中での37℃、15分間のインキュベーションの後、非染色壊死性組織と染色生存組織を分離する。生組織領域と壊死性組織領域とを、心臓の由来を知らない独立した観察者が注意深く分離する。次いで、壊死組織および非壊死組織の重量を測定し、壊死重量を左心室全体の重量のパーセンテージとして示す。
【0166】
データは、ポストホックt検定のためのボンフェローニ補正を後に伴う、ANOVAなどの統計的手法に供することができる。
【0167】
例7.本発明の組合せ療法の、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防ならびに/あるいは遅延する能力を決定するための、ヒト臨床試験の利用
必要に応じて、本明細書に記載される任意の化合物を、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始および/または進行を処置、予防、ならびに/あるいは遅延する化合物の能力を決定するために、ヒトにおいて試験することもできる。標準的な方法がこれらの臨床試験に利用可能である。1つの代表的な方法においては、かかる疾患または異常、例えばうっ血性心不全などを有する対象が、本発明の化合物を標準的な手法で利用する治療法の、耐容性、薬物動態および薬力学に関する第I相研究に参加する。次に第II相二重盲検無作為化比較試験を、標準的な手法で利用する本化合物の有効性を決定するために行う。
【0168】
前述の発明は、明瞭な理解の目的で、図示および例示によっていくらか詳細に記載しているが、ある些細な変化および変更が実践されるだろうことは当業者には明らかである。したがって、本記載および例示は、本発明の範囲を制限すると解釈すべきではない。
【0169】
本明細書で開示された全ての参考文献、出版物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、(II)または(III):
【化1】

式中、
はHであり;
はH、アラルキル、またはヘテロシクリルであり;
mおよびnは、独立して0〜2の整数であり;
xは0〜4の整数であり、yは0〜3の整数であり、ただしxとyの少なくとも1つは0より大であり;
bは1〜4の整数であり;
、R、R、RおよびRは、独立して、H、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノおよびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただしR、R、R、RおよびRの少なくとも1つはカルボキシル、カルボキシルエステル、アシルアミノまたはスルホニルアミノであり;
およびRの各々は独立して、ハロ、アルキルスルホニル、N−ヒドロキシルスルホンアミジル、ペルハロアルキル、ニトロ、アリール、シアノ、アルコキシ、ペルハロアルコキシ、アルキル、置換アリールオキシ、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、ジアルキルアミノ、NH、OH、C(O)OH、C(O)Oアルキル、NHC(O)アルキルC(O)OH、C(O)NH、NHC(O)アルキルC(O)アルキル、NHC(O)アルケニルC(O)OH、NHC(O)NH、OアルキルC(O)Oアルキル、NHC(O)アルキル、C(=N−OH)NH、シクロアルコキシ、シクロアルキルスルファニル、アリールスルファニル、アリールスルフィニル、カルボニルアミノ、およびスルホニルアミノからなる群から選択され、ただし:(1)化合物が式(III)で表される場合には、少なくとも1つのRはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり、および(2)化合物が式(II)で表される場合には、RおよびRの少なくとも1つはカルボニルアミノまたはスルホニルアミノであり;
Aは、VおよびWと一緒になって環Aを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;
Bは、VおよびWと一緒になって環Bを形成する環部分Q、Q、QおよびQを含有する、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、芳香環またはヘテロ芳香環であり;
VおよびWは独立して、C、CH、NまたはNR10であり;
、Q、Q、Q、Q、Q、QおよびQは独立して、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から選択され;
Cは、C、CH、CH、N、NR10、OおよびSからなる群から独立して選択される環部分Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14を含有する、ヘテロ芳香環であり、ただし、Q、Q10、Q11、Q12、Q13およびQ14の少なくとも1つは、N、NR10、OまたはSであり;
10は、H、アルキル、アシルまたはスルホニルである;
で表される化合物、または薬学的に許容し得るその塩。
【請求項2】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
xおよびyの両方が1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
化合物が式(I)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
化合物が式(I)で表され、およびRおよびRの少なくとも1つがH以外である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が式(I)で表され、およびRおよびRの少なくとも1つが電子求引性基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
化合物が式(I)で表され、およびR、R、R、RおよびRの少なくとも1つが、カルボキシル、−COO−アルキル、−C(O)NH、−C(O)NR(ここでRは水素であり、Rはアルキルである)、−C(O)NR(ここでRおよびRは独立してアルキルである)、−C(O)NR(ここでRおよびRは、これらが連結している窒素と一緒にヘテロ環または置換へテロ環を形成する)、−SONH、−SONR−アルキル(ここでRは水素である)、−SONR−アルキル(ここでRはアルキルである)、−SONR(ここで2つのR基は、これらが連結している窒素と一緒にヘテロ環または置換へテロ環を形成する)である、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
化合物が式(II)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が式(III)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
それを必要とする個体において、インビボでニトロキシルレベルを調節する方法であって、該個体に対して、請求項1に記載のN−ヒドロキシスルホンアミドまたはその薬学的に許容し得る塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項11】
ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の開始または進行を処置、予防または遅延する方法であって、それを必要とする個体に対して、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容し得る塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物および、ニトロキシル療法に応答する疾患または異常の処置において用いるための指示書を含む、キット。

【図1】
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【公表番号】特表2011−502105(P2011−502105A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527222(P2010−527222)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/078024
【国際公開番号】WO2009/042970
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(301059640)ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ (34)
【出願人】(510082400)カルディオキル ファーマシューティカルズ,インク. (5)
【Fターム(参考)】