説明

新規なアミン−ボラン化合物およびその使用

フッ素化されたアミノボラン、新規なビス−アミノボラン、および飽和および不飽和の長いアルキル鎖を有するアミノボランを含む、アミン−ボラン化合物の新規ファミリーが提供される。これらの新規な化合物を調製するプロセス、医薬組成物、使用方法もまた提供される。放射能標識されたアミノボランおよび放射性画像化(例えば、PET)および放射線治療におけるそれらの使用がさらに提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミン−ボラン化合物、ならびに、様々な治療への適用および診断での適用におけるその使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
この数十年で、アミン−ボラン化合物は、需要性の高い合成標的であると見なされてきた。アミン−ボラン化合物は、主に、原子半径、および、炭素−炭素結合の特徴に類似するB−N結合の特徴のために、様々な有機化合物に対する大きな類似性を示す。従って、例えば、HB−NHの結合はHC=CHの二重結合に類似し、一方、HB←NHの結合はHC−CHの単結合に類似する。
【0003】
従って、アミン−ボラン化合物(例えば、α−アミノボロン酸、アミン−カルボキシボラン類、アミン−シアノボラン類および関連化合物など)は、多くの生物学的に活性な化合物(例えば、アミノ酸、神経伝達物質、ヌクレオシドおよび核酸など)の等電子的かつ等構造的な類似体であり、従って、そのような化合物の体内での生物学的活性を模倣することができる。生物学的活性を模倣する場合、これらのホウ素化合物は、多くの生物学的系の阻害剤、アンタゴニスト、および、他の場合にはエフェクターとして作用することができ、従って、非常に可能性のある治療剤として広く認識されている。
【0004】
例えば、α−アミノアルキルボロン酸は、アミノ酸およびペプチドの代謝に関与する酵素の阻害剤として作用し得るα−アミノ酸の類似体である。対応するアミノ酸のカルボキシル基がボロン酸官能基によって置換されるα−アミノアルキルボロン酸は、アミノ酸模倣体の特異なクラスを構成し、そこから数多くの強力な酵素阻害剤が合成された。そのような化合物の阻害活性は、主として、親電子的なボロン酸の四面体型付加物が、ペプチドの酵素による加水分解または形成において遭遇する推定される四面体型の遷移状態または中間体の良好な模倣体であるという事実から生じている。ペプチドの加水分解および形成では、四面体型の高エネルギー化学種が常に反応の経過において伴うので、このようなアミノ酸模倣体は、広範囲の様々なプロテアーゼおよびペプチドリガーゼの阻害剤のための一般的な重要な要素として役立つ。
【0005】
さらなるアミン−ボラン類およびビスボラン類、ならびに、主として、これらのファミリーのシアノボラン誘導体およびカルボキシボラン誘導体が、以下の文献に開示される:米国特許第4301129号、同第4312989号、同第4368194号、同第4550186号、同第4647555号、同第4658051号、同第4740504号、同第4774354号、同第4855493号、同第4977268号、同第5280119号、および同第5312816号、ならびにHall,I.H.et al,J.Pharm.Sci.1980,69(9),1025.;Sood,C.K.et al., J.Pharm.Sci.1991,80(12),1133;Dembitsky,V.M.,et al,Tetrahedron 2003,59,579;E.Shalom et al,Organometallics.2004,23,4396−4399;Berdy,J.,Handbook of Antibiotic Compounds.Part IV,CRC,1980;Fink,K.et al.,Science,1948,108,358−9;Hunt,S.,Methods Enzymol.1984,107,413−438;Jimenez,E.C.et al,Biochemistry 1997,36,984−989;Takrouri et al,Organometallics,2004,23(11),2817−2820;およびGyoeri,B.et al,Inorganic Chemistry,1998,37(20),5131−5141。
【0006】
薬理学的に有望な化合物として1980年代初期に傑出した最初のアミン−シアノボラン類およびアミン−カルボキシボラン類[1]は、第三級低級アルキルアンモニウム塩(典型的には、トリメチルアンモニウム塩化物)と、ナトリウムシアノボランとの付加物であった。この基本的形態のさらなる誘導体化により、芳香族置換基、複素環式置換基およびシリル置換基をアミンに有するアミン−ボラン類、低級アルキルおよび臭素によるホウ素の置換、ならびに、アミン−カルボキシボラン類のエステルがもたらされた[2]。
【0007】
様々なモデル研究により、これらの化合物が、強力な抗ガン活性[3、4〜8]、抗高脂血症活性[9、11]、抗肥満活性[9]、抗骨粗鬆症活性[9、12]、抗炎症活性[9、1、13]、血中脂肪低下活性[5、14]、抗新生物活性[15、16]および他の有望な生物学的活性[17]を有することが示されていた。それにかかわらず、それらの正確な作用機構は依然として完全には理解されていない。
【0008】
例えば、様々なアルキル鎖長を有するアミン−シアノボラン類およびアミン−カルボキシボラン類[7]、それらの誘導体および金属錯体[4]が、様々なインビトロ実験およびインビボ実験で調べられ[9、18]、マウスおよびヒトの白血病、リンパ腫、肉腫およびガン腫に由来する単一細胞腫瘍および固形腫瘍に対する選択的な活性を有する効果的な抗新生物剤および細胞毒性剤であることが示された。これらの薬剤は、おそらくはイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼを標的とすることにより、L1210リンパ性白血病細胞においてタンパク質合成よりも優先的にDNA合成およびRNA合成を阻害した。ホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼ、オロチジン一リン酸デカルボキシラーゼ、ならびに、ヌクレオシドキナーゼおよびヌクレオチドキナーゼの両方に対する類似した効果もまた、細胞におけるデオキシリボヌクレオチドプール濃度の低下、および、DNA鎖の切断と同様に認められた。
【0009】
齧歯類を用いて行われた実験において、アミンカルボキシボラン類およびアミン−シアノボラン類は、超低密度リポタンパク質および低密度リポタンパク質(LDL)のコレステロール含有量を低下させること、また、高密度リポタンパク質(HDL)のコレステロール濃度を上昇させることに加えて、血漿中のコレステロール濃度およびトリグリセリド濃度の両方を低下させる強力な血中脂肪低下剤として作用することが見出された[19]。脂質合成に関与するデノボ調節酵素(例えば、血中コレステロールを低下させる3−ヒドロキシ−3−メチル−CoAレダクターゼ、アシル−CoAコレステロールアシルトランスフェラーゼおよびsn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ)もまた、これらの化合物によって阻害されることが見出された。同時に、これらの化合物は、LDLおよびHDLの受容体結合、内在化ならびに分解を変化させ、その結果、わずかなコレステロールがプラークに送達され、多くは胆汁排出のためにエステルから分解されるか、または、肝臓に送られた。ラットの大動脈壁における組織脂質が減少し、より少ないアテローム性動脈硬化性の形態学的病変部がこれらの薬剤による治療の後でウズラの大動脈に存在した。ラット腸からのコレステロール再吸収がこれらの化合物の存在下では低下した。遺伝的な高脂血症マウスでは、同じタイプの低下がこれらの化合物による治療の後で明らかにされた。これらのアミン−ボラン化合物は、ブタにおいて、調節酵素の阻害に基づいて組織中の脂質を効果的に低下させた。
【0010】
これらのアミン−ボラン類はさらに、2.5mg/kg〜8mg/kgで、敗血症性ショック、誘導された水腫、胸膜炎および慢性的関節炎に対する効果的な抗炎症剤として作用することが見出された。リソソーム酵素活性およびタンパク質分解酵素活性もまた阻害された。より顕著なことに、アミン−ボラン化合物は、プロスタグランジンシクロオキシゲナーゼおよび5’−リポキシゲナーゼの二重阻害活性を示すことが見出された。これらの化合物はまた、サイトカイン放出および白血球遊走にも影響を及ぼした。その後の研究では、これらのアミン−ボラン化合物が、マウスの子の頭蓋冠およびラットUMR−106のコラーゲンへのカルシウムおよびプロリンの取り込みを増大させるだけでなく、カルシウムの再吸収を低下させる強力な抗骨粗鬆症剤であることが示された[9]。
【0011】
別の研究では、非環式アミン−カルボキシボラン類が、マウスにおいて局所的な痛みを軽減することにおいて、インドメタシン、ペントキシフィリンおよびフェニルブタゾンよりも有効な抗炎症剤であることが見出され、他方で、複素環式アミン誘導体、ならびに、アミン−カルバモイルボラン類、アミン−カルボアルコキシボラン類およびアミン−シアノボラン類は一般にそれほど有効ではなかった。これらのアミン−ボラン化合物はまた、水腫が誘導されたラット、慢性的関節炎が誘導されたラット、および、胸膜炎スクリーニングにおいて医薬的に活性であった[15、20]。例えば、トリメチルアミン−カルボメトキシボラン(MeNBHCOMe)は、齧歯類において効果的な血中脂肪低下性のアミン−ボランであること、および、このアミン−ボランを有望な治療剤にする安全な治療指数を示すことが見出された[21]。
【0012】
さらに、アミン−カルボキシボラン類およびアミン−シアノボラン類は、選択されたタイプのガン細胞における細胞毒性およびDNA合成の阻害において腫瘍壊死因子α(TNFα)と相乗的に作用することが示された。この相乗的効果は、細胞の膜における高親和性のTNFα受容体の存在に依存していることが見出された。この現象は、DNAのタンパク質連鎖による増大した分解、DNAの断片化、および、細胞死と相関した[8]。
【0013】
明らかな直接的な治療的価値を有することのほかに、ホウ素含有化合物、特に、生体系と相互作用することができる化合物は、中性子捕獲治療(NCT)における放射線治療剤として使用することができる。NCTは、ホウ素またはガドリニウムなどの元素を注入すること、および、患者を原子炉からの中性子ビームにさらすことを必要とする治療形態の1つである。現時点では、2つの治療標的が存在する:神経膠芽細胞腫(その治療が満足できるものではない非常に悪性の腫瘍)、および、悪性メラノーマ。ホウ素中性子捕獲治療(BNCT)では、選択的な照射および悪性腫瘍細胞の破壊が、10B同位体が取り込まれているホウ素化化合物を使用することによって達成される。
【0014】
天然に存在する生体化合物に対するアミン−ボラン類の類似した構造は、様々なアミン−ボラン化合物を、様々な生物学的標的および生物学的系に対する大きい親和性の非常に特異的なリガンドを設計するための理想的な候補物にしており、このことは、薬物の発見および開発のための理想的な候補物であることのほかに、これらの化合物を、核医学手法および研究手法のための有益なツールにしている。それにもかかわらず、これまで、放射性医薬品化合物として使用することができる放射能標識されたアミン−ボラン類は教示されていない。
【0015】
現在既知のアミン−ボラン化合物は有用な治療剤であることが示されている一方で、これらの化合物は依然として、ヒトおよび動物における使用にふさわしい受け入れられ得る医薬品特性を有することからほど遠いものである。これらの化合物は、それらの意図された標的に対する親和性が低いことを欠点として有しており、従って、比較的大きい用量の投与を必要とする。現在既知のアミン−ボラン化合物の非特異性および大きい投薬量は、典型的には、様々な有害作用および毒性が伴う。
【0016】
従って、上記の制限を有さない新規なアミン−ボラン化合物が必要であることが広く認識されており、また、そのような化合物を有することが非常に好都合である。
【発明の開示】
【0017】
本発明者らは、今回、新規な種類のアミン−ボラン化合物を設計し、かつ、首尾よく調製および実施している。
【0018】
従って、本発明の1つの態様によれば、下記の式I、式IIおよび式IIIから成る群から選択される一般式を有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
〜Yはそれぞれが独立して、シアノ基(−C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
〜Xはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され、
ただし、式IにおけるXおよびXの少なくとも1つはフッ素であり;
〜R10はそれぞれが独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つ、RおよびR、RおよびR、ならびに/または、R〜R10は炭素環式の環を形成し、
ただし、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は、少なくとも11個の炭素原子を有する飽和したアルキルであり;式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルであり;かつ/あるいは、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は少なくとも1個のフッ素を含む;および
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素である)、
が提供される。
【0019】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、化合物がフッ素を含むとき、そのフッ素は、非放射性フッ素および放射性フッ素から成る群から選択される。好ましくは、放射性フッ素はフッ素−18[18F]である。
【0020】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、化合物は、Yが好ましくはシアノ基−(C≡N)または−C(=O)Ra基であり、かつ、Raが好ましくは、ヒドロキシおよびアルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)から成る群から選択される一般式Iを有する。
【0021】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Xがフッ素であり、Xが、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される。好ましくは、Xがフッ素であり、Xが臭素である。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rのそれぞれがアルキルであり、好ましくは、メチル、エチルおよびn−ブチルから成る群から選択されるアルキルである。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つがC〜C20アルキルである。アルキルは、飽和したアルキルまたは不飽和のアルキルが可能である。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式Iを有する化合物の限定されない例には、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・シアノフルオロボラン、エチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、ブチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・エチルエステル、エチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、ブチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・シアノジフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・エチルエステル、トリメチル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロブロモボラン・エチルエステル、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボランおよびトリエチル−アミン・カルボキシジフルオロボランが挙げられる。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、化合物は一般式IIを有する。好ましくは、YおよびYのそれぞれがシアノ基(−C≡N)である。場合により、YおよびYのそれぞれが−C(=O)Ra基であり、Raが、ヒドロキシおよびアルコキシから成る群から選択される。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、X、X、XおよびXのそれぞれが独立して、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される。好ましくは、X、X、XおよびXの1つ以上が臭素である。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rのそれぞれがアルキル(例えば、メチル)である。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Aが、飽和した非置換の炭化水素である。好ましくは、そのような炭化水素は8個〜14個の炭素原子を有する。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式IIを有する化合物の限定されない例には、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノジブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−カルボキシボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ドデカン−1,12−ジアミン・ビス−シアノボランおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−テトラデカン−1,14−ジアミン・ビス−シアノボランが挙げられる。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、化合物は一般式IIIを有する。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜R10の1つ以上が、11個〜17個の炭素原子を有する飽和したアルキルであるか、または、R〜R10の1つ以上が、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルである。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜R10の少なくとも1つが不飽和のアルキルである。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜R10の少なくとも1つがヒドロキシを含み、ただし、このヒドロキシはアミン窒素に対してβ位に存在する。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜R10の少なくとも1つがフッ素を含み、ただし、このフッ素はアミン窒素に対してβ位に存在する。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Yが、本明細書中上記で記載されるように、シアノ基−(C≡N)および−C(=O)Ra基から成る群から選択される。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、XおよびXのそれぞれが独立して、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される。好ましくは、XおよびXの1つ以上が臭素である。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、式IIIを有する化合物の限定されない例には、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノジブロモボラン、ドデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−オクタン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ノニル−アミン・シアノボラン、ジメチル−トリデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ペンタデシル−アミン・シアノボラン、ヘプタデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ドデカン−2−オール・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ウンデカン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン、ヘキサ−5−エニル−ジメチル−アミン・シアノボランおよび(2−フルオロ−ノニル)−ジメチル−アミン・シアノボランが挙げられる。
【0038】
本発明の別の態様によれば、本明細書中に記載される新規な化合物のいずれかを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0039】
本発明のなおさらに別の態様によれば、本明細書中に記載される化合物のいずれかの治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む、病原性微生物に関連する病状を治療する方法が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の態様によれば、病原性微生物に関連する病状を治療することにおける、本明細書中に記載される新規な化合物の使用が提供される。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、医薬品を製造するための、本明細書中に記載される新規な化合物の使用が提供される。
【0042】
医薬品は、例えば、病原性微生物に関連する病状を治療するために可能である。
【0043】
病状は、例えば、細菌感染症、原生動物感染症、真菌感染症、マラリアおよびリーシュマニア症であり得る。
【0044】
好ましくは、本明細書中に記載される治療方法および使用は、従来の抗菌性の薬物および薬剤に対して薬物抵抗性である病原性微生物に向けられる。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、一般式Iを有する化合物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、
下記の一般式IVを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびX10はそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され、ただし、XおよびX10の少なくとも1つは臭素であり;および
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つが炭素環式の環を形成する)
をフッ素化剤と反応させ、それにより、一般式Iを有する化合物を得ること、
を含む。
【0046】
フッ素化剤は、好ましくは、フッ化銀と、トリエチルアミンおよびトリヒドロフルオリドの混合物とから成る群から選択される。
【0047】
反応は、好ましくは、非極性有機溶媒の存在下で行われ、また、場合により、および、好ましくは、反応混合物の超音波処理を含む。
【0048】
本発明のなおさらなる特徴によれば、一般式IIを有する化合物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIを有する化合物:

(式中、
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の、飽和または不飽和の炭化水素であり;および
およびWはそれぞれが独立して、官能基である)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、一般式IIを有する化合物を得ること、
を含む。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、R〜R10の少なくとも1つが、11個〜17個の炭素原子を有する飽和したアルキルであるか、または、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルである一般式IIIを有する化合物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIIを有する化合物:

(式中、
14は、少なくとも10個の炭素原子を有する飽和したアルキル、または、少なくとも5個の炭素原子を有する不飽和のアルキルから成る群から選択され;および
は官能基である)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、一般式IIIを有する化合物を得ること、
を含む。
【0050】
本発明の別の態様によれば、R〜R10の少なくとも1つがフッ素を含む一般式IIIを有する化合物を調製するプロセスが提供され、この場合、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIIIを有する化合物:

(式中、
はカルボキシ(C=O)基であり;
15は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
16は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択される)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、R〜R10の少なくとも1つがヒドロキシまたはアルコキシを含む一般式IIIを有する化合物を得ること;および
ヒドロキシまたはアルコキシをフッ素に変換すること、
を含む。
【0051】
好ましくは、変換することは、一般式IIIを有し、かつ、R〜R10の少なくとも1つがヒドロキシまたはアルコキシである化合物を、フッ素化剤と反応させることを含む。例示的なフッ素化剤は、無水トリフルオロメタンスルホン酸、2,6−ルチジンおよびフッ化セシウム(CsF)を含む。場合により、フッ素化剤は放射性フッ素を含み、最も好ましくは、フッ素−18[18F]を含む。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、下記の一般式Xまたは一般式XIを有する放射能標識された化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
〜Yはそれぞれが独立して、シアノ基(−C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
〜Xはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つ、RおよびR、ならびに/または、RおよびRは炭素環式の環を形成する;および
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素であり;
ただし、X〜X、R〜RおよびAの少なくとも1つは放射性原子を含み、かつ/または、少なくともホウ素原子は放射性のホウ素原子である)
が提供される。
【0053】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、放射性原子は、放射性フッ素、放射性炭素、放射性臭素および放射性ヨウ素から成る群から選択される。
【0054】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、X〜Xの少なくとも1つが放射性原子である。
【0055】
好ましくは、放射性原子は放射性フッ素であり、より好ましくは、放射性フッ素はフッ素−18[18F]である。
【0056】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つが放射性原子を含む。
【0057】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、放射性原子は放射性炭素である。
【0058】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、放射性原子は、放射性フッ素、放射性臭素および放射性ヨウ素から成る群から選択される。好ましくは、そのような放射性原子はアミン窒素に対してβ位に存在する。
【0059】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、化合物は一般式Xを有する。
【0060】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、XおよびXの少なくとも1つが放射性原子である。
【0061】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つが放射性原子を含む。
【0062】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、放射性原子は放射性炭素である。
【0063】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つが、放射性原子によって置換されたアルキルである。
【0064】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、放射性原子は、放射性フッ素、放射性臭素および放射性ヨウ素から成る群から選択される。そのような放射性原子は、好ましくは、アミン窒素に対してβ位に存在する。
【0065】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つがアルキルである。
【0066】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rのそれぞれがアルキルである。
【0067】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、アルキルは、メチル、エチルおよびn−ブチルから成る群から選択される。
【0068】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、R〜Rの少なくとも1つがC〜C20アルキルである。
【0069】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、アルキルは、飽和したアルキルおよび不飽和のアルキルから成る群から選択される。
【0070】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Yは、シアノ基−(C≡N)および−C(=O)Raから成る群から選択される。
【0071】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Raは、ヒドロキシおよびアルコキシから成る群から選択される。
【0072】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特徴によれば、Yは、シアノ基−(C≡N)および−C(=O)Raから成る群から選択され、ただし、Raは、ヒドロキシおよびアルコキシ(例えば、メトキシおよびエトキシ)から成る群から選択される。
【0073】
本発明のなおさらなる態様によれば、本明細書中に記載される放射能標識された化合物のいずれかを有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物が提供される。
【0074】
本発明のさらなる態様によれば、放射性画像化(例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CT)、PET/CTおよび単光子放射断層撮影法(SPECT))および/または放射線治療における、本明細書中に示される放射能標識された化合物の使用が提供される。好ましい実施形態において、放射能標識された化合物は、放射性画像化技術(例えば、陽電子放射断層撮影法など)における使用に好適であるように設計される。
【0075】
本発明のさらなる態様によれば、診断剤の調製における、本明細書中に示される放射能標識された化合物の使用が提供される。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書中に示される放射能標識された化合物、または、本明細書中に示される組成物を患者に投与すること、および、放射能標識された化合物の体内またはその一部分における分布をモニターするための放射性画像化技術を用いることを含む放射性画像化方法が提供される。
【0077】
記載された好ましい実施形態における特徴によれば、放射性画像化技術は、陽電子放射断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CT)、PET/CTおよび単光子放射断層撮影法(SPECT)から成る群から選択される。
【0078】
本発明は、当該技術分野で既知の他のアミン−ボラン化合物よりも優れたものにし、かつ、さらには、放射能標識されたアミン−ボラン化合物を効率的に製造することを可能にする特異かつ新規な特徴を有する新規なクラスのアミン−ボラン化合物を提供することによって、現在既知の形態の欠点に対処することに成功している。
【0079】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0080】
用語「含む(comprising)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および用語「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0081】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0082】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0083】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0084】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0085】
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施態様を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)株に対する用量応答アッセイによって求められたときの化合物K−Iの抗リーシュマニア効果を示すプロットを示す。
図2は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)株に対する用量応答アッセイによって求められたときの化合物K−Iの抗マラリア効果を示すプロットを示す。
図3は、18F−標識されたアミン−ボラン化合物を本発明に従って安全かつ効率的に調製するために設計された半自動の放射能標識化合成システムの概略図を示す。
図4は、本発明の実施形態による18F−標識されたアミン−ボラン化合物の半自動の放射能標識化合成のために設計され、かつ、そのような合成において利用される25mlの白金皿の概略的な例示を示す。
図5は、本発明の実施形態による例示的な18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物の化合物[18F]K−I(4.5mCi/ml)が注射された正常なメスSprague−Dawleyラット(それぞれが250グラム〜300グラム)について得られた一連のPET画像で、18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物が、試験されたラットの骨に取り込まれることを明瞭に示すPET画像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
本発明は、様々な病状の治療および他の適用において有益に使用することができるアミン−ボラン化合物の新規な種類に関する。本発明はさらに、放射性画像化および/または放射線治療において使用することができる新規な放射能標識されたアミン−ボラン化合物に関する。
【0087】
本明細書中上記で議論されたように、アミン−ボラン類は、ほとんどの場合には、生物学的に存在する様々な分子(例えば、アミノ酸、神経伝達物質、ヌクレオシドおよび核酸など)に対するその類似性のために、治療剤としての大きい可能性を有する有望な化合物である。アミン−ボラン類はそのような生体分子の等電子的かつ等構造的な類似体であり、従って、体内におけるそれらの生物学的活性を模倣することができる。しかしながら、現在既知のアミン−ボラン類の、治療剤としての使用は、不良な効力および劣った薬物動態学的特性によって制限されることが多い。
【0088】
新規なアミン−ボラン化合物についての探索において、本発明者らは新規な種類のアミン−ボラン化合物を設計し、かつ、首尾よく調製および実施している。本発明者らは、アミン−ボラン化合物の化学構造を変化させ、また、官能基をアミン−ボラン化合物を付加することによって、活性で、有効かつ非毒性の様々な治療剤が得られることを発見している。
【0089】
本明細書中で使用される用語「アミン−ボラン化合物」(これはまた、本明細書中では交換可能に「アミノボラン類」として示される)は、本明細書中下記において定義されるように、1つ以上のアミン基によって置換される少なくとも1つのホウ素原子を含む任意の化合物を表す。
【0090】
本発明を着想しているとき、ハロゲン化された生物学的に存在する分子、具体的には天然に存在する有機フッ化物化合物が、代謝活性な物質であり、従って、特に医薬品化学において非常に興味をそそられるので、フッ素化されたアミン−ボラン化合物により、放射性画像化適用においてさらに利用することができるアミノボラン化合物の改善されたクラスが提供され得ることが想定された。アミン−ボラン化合物の活性および薬物動態学的特性が、延長された炭化水素鎖(例えば、長いアルキル)をアミン−ボラン化合物に取り込むことによって改善され得ることがさらに仮定された。
【0091】
本発明を実施に移しているとき、下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明者らは、主としてフッ素化され、かつ/または、長い炭化水素鎖を含む新規な種類のアミン・シアノボラン類およびアミン・カルボキシボラン類、ならびに、アミン・ビス−ボラン類を首尾よく調製している。
【0092】
従って、本発明は、一般式I、式IIまたは式IIIを有するアミン−ボラン化合物および/またはその医薬的に許容され得る塩を提供する:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、
〜Yのそれぞれは独立して、シアノ基(−C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンまたはアルキルであり、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
〜Xのそれぞれは独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキル、アリールであり、ただし、式IにおけるXおよびXの1つ以上はフッ素であり;
〜R10のそれぞれは独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールであるか、あるいは、R〜Rのうちの2つ、RおよびR、RおよびR、ならびに/または、R〜R10は炭素環式の環を形成し、ただし、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は、少なくとも11個の炭素原子を有する飽和したアルキルであり;式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルであり;かつ/あるいは、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上は少なくとも1個のフッ素で置換されており;および
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素である)、
が提供される。
【0093】
本明細書中で使用される用語「ハロゲン」(本明細書において「ハロ」とも呼ばれる)は、フッ素、塩素、臭素、または沃素の基を記載する。
【0094】
本明細書中で使用される用語「ヒドロキシ」は−OH基を記載する。
【0095】
用語「アルコキシ」は−OR基を記載し、ここでRはアルキルまたはシクロアルキルであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0096】
用語「チオヒドロキシ」または「チオール」は−SH基を示す。
【0097】
用語「チオアルコキシ」は−SR基を記載し、ここでRはアルキルまたはシクロアルキルである。
【0098】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中に定義される−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0099】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中に定義される−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0100】
本明細書中で使用される用語「アミン」は−NR’R’’基を記載し、ここでR’およびR’’のそれぞれは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0101】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む不飽和の(アルケニルおよびアルキニル)脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は置換または非置換であり得る。アルキル基はさらに飽和または不飽和であり得る。従って、この用語はアルケニルおよびアルキニルを包含する。
【0102】
用語「アルケニル」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和アルキルを記載する。
【0103】
用語「アルキニル」は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和アルキルを記載する。
【0104】
用語「シクロアルキル」は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有さない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。
【0105】
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。
【0106】
式I、式IIおよび式IIIによって表される本明細書中に開示される化合物は、本明細書中下記において議論されるように、特異かつ新規な特徴を有する。
【0107】
本発明の好ましい実施形態において、本明細書中に開示されるアミノボラン類の新規な種類には、シアノアミノボラン類およびカルボキシアミノボラン類が含まれる。
【0108】
従って、上記の式I、式IIおよび式IIIのそれぞれにおいて、Yは、ホウ素原子に結合しているシアノ基(−C≡N)、または、ホウ素原子に結合しているカルボキシ基−C(=O)Raである。
【0109】
Ra基は、水素(この場合、−C(=O)Ra基はアルデヒドとして定義される);アルコキシ基またはアリールオキシ基(この場合、−C(=O)Ra基はエステルとして定義される);ハロ(この場合、−C(=O)Ra基はアシルハリドとして定義される);ヒドロキシル(この場合、−C(=O)Ra基はカルボン酸として定義される);チオヒドロキシ(チオール)(この場合、−C(=O)Ra基はチオカルボン酸として定義される):チオアルコキシまたはチオアリールオキシ(この場合、−C(=O)Ra基はチオエステルとして定義される);およびアミン(この場合、−C(=O)Ra基はアミドとして定義される)であり得る。好ましくは、Raはヒドロキシルまたはアルコキシであり、好ましくは、アルコキシはメトキシ基またはエトキシ基である。
【0110】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、ホウ素原子におけるそれ以外の2つの置換基(これらは、式I、式IIおよび式IIIにおいてX〜Xとして示される)は水素またはハロゲン(好ましくは臭素またはフッ素)である。
【0111】
本発明のなおさらなる好ましい実施形態において、X〜Xの少なくとも1つがフッ素である。
【0112】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、驚くべきことに、アミノボラン化合物におけるフッ素原子の存在により、特異かつ新規な特徴が化合物にもたらされることを発見している。
【0113】
フッ素化されたアミノボラン化合物の改善された活性が下記において議論され、また、様々な構造的に多様なアミノボラン化合物の活性が様々な微生物に対して試験された下記の実施例の節において明らかにされる。これらの研究、ならびに、フッ素原子の取り込みの有益な効果がさらには、米国仮特許出願第60/716082号(2005年9月13日出願)において、また、本出願と同じ日に同時出願される本出願人によるPCT国際特許出願(代理人整理番号:32561、発明の名称:「抗菌剤としてアミン−ボラン化合物の使用」)において詳しく議論される(これらはともに、全体が本明細書中に示されるように本明細書中に組み込まれる)。
【0114】
本発明の具体的な好ましい実施形態において、アミン−ボラン化合物は上記の一般式Iを有し、XおよびXの一方または両方がフッ素である。そのような化合物は新規なクラスのアミノボラン化合物を表す。
【0115】
一般式Iおよびホウ素原子における1個または複数個のフッ素置換基を有する好ましい化合物は、式IにおけるR、RおよびRの少なくとも1つ、好ましくは、それらのすべてが飽和または不飽和の低級アルキルである化合物である。代表的な例には、R、RおよびRのそれぞれが低級アルキル(例えば、メチル、エチルおよびn−ブチルなど)である化合物が含まれる。
【0116】
このクラスにおけるさらに好ましい化合物は、R、RおよびRの1つ以上が、5個〜20個の炭素を有する飽和した高級アルキル基および不飽和の高級アルキル基である化合物である。
【0117】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明者らはこのクラスの化合物を設計し、かつ、このクラスに属するいくつかの例示的な化合物を首尾よく調製および実施している。これらには、例えば、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・シアノフルオロボラン、エチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、ブチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・エチルエステル、エチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、ブチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・シアノジフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・エチルエステル、トリメチル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロブロモボラン・エチルエステル、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボランおよびトリエチル−アミン・カルボキシジフルオロボランが挙げられる。
【0118】
さらに本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、長いN−アルキル鎖をアミン−ボラン化合物に取り込むことにより、その活性がさらに改善されることを発見している。本発明者らは構造活性相関研究を行い、そのようなアルキル鎖の長さが化合物の活性に強く影響することを発見している。従って、本発明による一般式Iおよび一般式IIIを有する化合物におけるR〜RまたはR〜R10の1つ以上についての好ましい鎖長、特に、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上に対する好ましい鎖長は、化合物K−Rについて明らかにされるように、11個〜15個の間の炭素長の鎖であり、より好ましくは、15個の長さ(C15)の鎖である(本明細書中下記の表2を参照のこと)。
【0119】
さらに本発明を実施に移しているとき、式I、式IIおよび式IIIにおけるR〜R10の1つ以上でのアルキル置換基における不飽和なC=C結合の存在、特に、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上でのアルキル置換基における不飽和なC=C結合の存在、好ましくは、そのような不飽和なアルキル基の末端位置での存在は、アミン−ボラン化合物の生物学的活性を劇的に高めたことが見出された。この知見は、下記の実施例の節において、化合物K−Dおよび化合物K−Vについて示されるように実施例2において明らかにされる。従って、式IIIにおけるR〜R10の1つ以上が、好ましくは、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和なアルキル基である。
【0120】
さらに本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、本明細書中下記において下記の実施例の節で示されるように、式IIに属する上記で記載されたジアミン・ビス−シアノボラン類を調製し、それらのいくつかの効力を調べている。一般に、これらの化合物についての効力の結果から、より長いN−アルキル−N鎖を有する化合物がより大きい生物活性の活性を示したことが示された。従って、式IIにおけるA(N−アルキル−N鎖)の好ましい長さは、本発明によれば、化合物K−Nについて明らかにされるように、14個の炭素の長さの鎖(C14)である(本明細書中下記の表2を参照のこと)。
【0121】
従って、本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、アミン−ボラン化合物は一般式IIを有する。そのようなアミン−ボラン化合物は、ビス−アミン−ボラン官能基を有する新規な化合物の別のクラス、すなわち、2つのアミン−ボラン官能基を有し、それらのそれぞれが、本明細書中上記で記載されるアミン−ボラン官能基に類似して定義され、それにより、これらの官能基を連結する成分が、少なくとも5個の炭素の長さである炭化水素鎖である新規な化合物の別のクラスを構成する。
【0122】
下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明者らはこのクラスの化合物を設計し、かつ、このクラスに属するいくつかの例示的な化合物を首尾よく調製している。これらには、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノジブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−カルボキシボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ドデカン−1,12−ジアミン・ビス−シアノボランおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−テトラデカン−1,14−ジアミン・ビス−シアノボランが挙げられる。
【0123】
本発明のなおさらなる好ましい実施形態によれば、アミン−ボラン化合物は一般式IIIを有する。そのような化合物は、第1に、5個〜20個の炭素をR〜R10の1つ以上に有する飽和した高級アルキル基および不飽和の高級アルキル基である特異かつ新規な特徴を有し、第2に、置換基をR〜R10の1つ以上においてアミン窒素に対してβ位に有し得る化合物の新規なクラスを構成する。
【0124】
好ましくは、アミン窒素に対してβ位における置換基はヒドロキシルまたはフッ素であり;後者がアミン−ボラン化合物群の特異かつ新規な特徴を構成する。
【0125】
本発明者らはこのクラスの化合物を設計し、かつ、このクラスに属するいくつかの例示的な化合物を首尾よく調製しており、これらには、例えば、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノジブロモボラン、ドデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−オクタン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ノニル−アミン・シアノボラン、ジメチル−トリデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ペンタデシル−アミン・シアノボラン、ヘプタデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ドデカン−2−オール・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ウンデカン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン、ヘキサ−5−エニル−ジメチル−アミン・シアノボランおよび(2−フルオロ−ノニル)−ジメチル−アミン・シアノボランが挙げられる。
【0126】
さらに本発明を着想しているとき、これらの新規なフッ素化されたアミン−ボラン化合物は、そのフッ素化されていない対応体と比較したとき、類似した活性または改善された活性を有し得る一方で、検出可能な同位体を18F(フッ素−18)の形態で導入し、従って、新規な放射能標識されたアミン−ボラン化合物をもたらすという可能性を提供することが想定された。
【0127】
従って、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、本発明の実施形態によれば、18F同位体は、本明細書中上記で記載されたように、式I、式IIおよび式IIIを有する化合物の各々すべてにおけるフッ素原子のいずれかまたはすべてに取って代わることができる。
【0128】
さらに本発明を実施に移しているとき、下記の実施例の節において明らかにされるように、本発明による一連の構造的に多様なアミン−ボラン化合物が調製され、抗菌活性についてアッセイされた。これらのアッセイでは、本明細書中に示される化合物が、当該技術分野で教示されるアミン−ボラン化合物と比較したとき、また、従来から使用されている抗真菌剤および抗真菌性薬物と比較したとき、ほとんどの場合に用量依存的な様式で、並外れた選択的な抗菌活性を示すことが明瞭に示されている。
【0129】
本発明による化合物が、病原性および抗生物質抵抗性の株に対する抗真菌活性について試験された。多くの関係がそれらの構造タイプに従って認められた。構造における下記の修飾により、活性が著しく強化された:(i)アルキルジメチルアミン・シアノボラン類およびジアミン・ビス−シアノボラン類におけるN−アルキル鎖の長さ、(ii)ハロゲン化、(iii)N−アルキル鎖の末端におけるC=C二重結合の取り込み、および(iv)アミン・カルボキシボランへのアミン・シアノボランの変換。しかしながら、活性の著しい増強が、構造における他の修飾(例えば、ヒドロキシル基、芳香族基、不飽和環状基およびシリル基の付加など)に関しては何ら認められなかった。下記の実施例の節において実施例2で詳しく示されるように、最も活性な化合物は、最も重要なヒト病原性真菌についてのMIC値が16.25μmol/l〜32.5μmol/lの範囲にあるジメチルウンデシルアミン・シアノボラン(C1123N(CHBHCN)(化合物K−I)、および、MIC値が10.05μmol/l〜79μmol/lの範囲にあるそのジブロモ誘導体のジメチルウンデシルアミン・ジブロモシアノボラン(C1123N(CHBBrCN)(化合物K−I)であった。これらの化合物は、フルコナゾールに対して抵抗性である真菌株に対する相当の活性を有する。低下した毒性だけでなく、抗リーシュマニア性および抗マラリア性もまた、これらの化合物に関して認められた。
【0130】
具体的には、本明細書中に示されるアミン−ボラン化合物は、いくつかの非常に毒性の真菌(例えば、Aspergillus fumigatusなど)に対して非常に効果的であることが見出された。
【0131】
より具体的には、本発明の化合物は、下記の実施例の節において明らかにされるように、薬物抵抗性の真菌株(例えば、フルコナゾール(従来から広く使用されている抗真菌性薬物)に対して抵抗性であることが既知である非常に悪質なCandida glabrataおよびCandida krusseiなど)に対する大きい抗真菌抗菌活性を有することが示された。
【0132】
Candida glabrata、Candida krusseiおよびAspergillus fumigatusは、非常に悪性の病原体として認識されており、また、免疫が低下した者の増え続ける人口中での最も高頻度の致命的要因の1つであると見なされる。近年の研究では、Candida glabrataおよびCandida krusseiが尿生殖路において非常に日和見感染性の強い病原体であり、また、HIV陽性者および高齢者において特に広く認められる血流(カンジダ血症)の非常に日和見感染性の強い病原体であることが示されている。
【0133】
抗菌剤に対する微生物の抵抗性は、微生物が任意の所定薬剤(抗生物質)の抗菌効果に耐えることができることである。任意の所定薬剤の抗菌作用は環境的圧力を標的(および同様に非標的)の微生物に加え続けている。生存することを可能にする変異を有する微生物が生き延びて、繁殖する。これらの新たに進化した株は、その後、この形質をその子孫に伝え、これにより、完全に抵抗性の世代がもたらされる。抵抗性は、自然界では、ランダムな変異による自然界の選択、および、より大きな割合のランダム変異を微生物の遺伝暗号において引き起こし得る低忠実度ポリメラーゼによって支配されるプログラム化された進化によって発達し得る。そのような遺伝子が一旦生じると、微生物はまた、その遺伝情報を、プラスミド交換により、水平様式で、すなわち、個体間で伝えることができ、従って、抵抗性は自然の選択による進化またはプログラム化された進化の結果である。
【0134】
抗菌剤使用の習慣は、発達する抵抗性生物の数に大きな影響を及ぼすことが明らかにされている。例えば、特異性が低い広域抗生物質(例えば、第二世代および第三世代のセファロスポリン系薬剤など)および殺真菌剤(例えば、フルコナゾールなど)の使いすぎは、本質的にメチシリンまたはフルコナゾールの選択圧に一度もさらされたことがない生物においてさえ、メチシリン抵抗性またはフルコナゾール抵抗性の発達を非常に加速させた。抗菌剤に対する抵抗性のとどまるところを知らない増大し続ける出現の一因となる他の要因には、不正確な診断、必要のない処方、患者による抗菌剤の不適切な使用、および、成長促進のための添加剤としての家畜餌における抗菌剤の使用が含まれる。
【0135】
従って、本発明の別の態様によれば、病原性微生物に関連する病状を治療する方法が提供される。この方法は、本発明の実施形態によるアミン−ボラン化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することによって行われる。
【0136】
本明細書中で使用される用語「方法」は、与えられた課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これらには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の従事者に既知であるか、または、既知の様式、手段、技術および手順からそのような技術分野の従事者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
本明細書中で使用される用語「防止する」は、生物が最初に何らかの状態を獲得することを妨げることを含む。
【0138】
本明細書中で使用される用語「治療(処置)する」および用語「治療(処置)」は、状態の進行を抑止するか、または、実質的に阻害するか、または、遅くするか、または、逆戻りさせるか、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善するか、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することを含む。
【0139】
本明細書中で使用される表現「治療効果的な量」は、治療されている状態の症状の1つ以上をある程度和らげる、投与されている化合物の量を表す。
【0140】
本発明のこの態様の実施形態によれば、病原性微生物に関連する病状には、細菌感染症、原生動物感染症および真菌感染症が含まれ、好ましくは、本発明のアミン−ボラン化合物の使用が有益である病状は、下記の実施例の節において実証および例示されるように、マラリアおよびリーシュマニア症である。
【0141】
本明細書中で使用される表現「病原性微生物」は、疾患または感染症を高等生物(例えば、商業目的またはレクリエーション目的のために飼育される任意の動物、魚類、家禽、昆虫(例えば、ミツバチ)および哺乳動物など)において引き起こし得る任意の微生物を表す。具体的には、病原性微生物は、疾患および有害な影響をヒトにおいて引き起こす微生物であり得る。病原性微生物は生物の任意の科に属し得る(例えば、原核生物、ユーバクテリウム属、古細菌、真核生物、酵母、真菌、藻類、原生動物および他の寄生虫など、これらに限定されない)。
【0142】
本明細書中で使用される用語「関連する」は、本発明の関連では、病状の少なくとも1つの有害な症状発現が病原性微生物によって引き起こされることを意味する。従って、表現「病原性微生物に関連する病状」は、微生物が病状の主原因であり得るか、または、主要な病状の二次的影響であり得る病状を包含する。
【0143】
病原性微生物に関連する病状には、病原性微生物(例えば、本明細書中に記載される病原性微生物など)による感染、インフェステーション、病原性微生物(例えば、本明細書中に記載される病原性微生物など)の混入および伝染が含まれる。一般に、疾患の原因となる感染は、病原性微生物による植物または動物の組織への侵入である。寄生性蠕虫および他の高等病原性生物(例えば、ノミなど)による身体組織への侵入は多くの場合、インフェステーションと呼ばれる。
【0144】
本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、病原性微生物は、本明細書中上記で議論されたように、薬物抵抗性の病原性微生物である。
【0145】
急性毒性アッセイが、ラットを動物モデルとして使用して、本発明による例示的な化合物について行われた。下記の実施例の節において明らかにされるように、本明細書中に示されるアミン−ボラン化合物はその効果的な濃度範囲およびそれ以上において非毒性であることが示されている。
【0146】
本発明の上記態様のいずれにおいても、本発明のアミン−ボラン化合物はそれ自体で利用することができ、または、好ましくは、医薬的に許容され得るキャリアをさらに含む医薬組成物の一部として利用することができる。
【0147】
従って、本発明のさらなる態様によれば、上記で列挙された病状のいずれかを治療することにおける使用のために特定され、かつ、1つ以上のアミン−ボラン化合物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物が提供される。
【0148】
加えて、医薬品の調製における、本明細書中に示される化合物の使用が提供される。医薬品は、本明細書中上記で議論されたようなアミン−ボラン類によって治療可能であることが当該技術分野で既知の状態のいずれか、具体的には、病原性微生物に関連する病状のいずれかを治療するために使用することができる。
【0149】
本明細書中で使用される用語「医薬組成物」は、アミン−ボラン化合物と、他の化学的成分(例えば、医薬的に許容され得かつ好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0150】
以降、用語「医薬的に許容され得るキャリア」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。キャリアの非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン、および有機溶媒と水の混合物ならびに固形(例えば、粉末)キャリアおよびガス状キャリアがある。
【0151】
本明細書中で使用される用語「キャリア」は、治療剤が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤またはビヒクルを示す。
【0152】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0153】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0154】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物へのアミン−ボラン化合物の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合することできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(Fingl,et al,(1975年)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1p.1参照)。
【0155】
医薬組成物は、局所処置であるか全身処置であるか、または選択された投与、および処置される領域に依存する1つまたは複数の経路のいずれかにおける投与のために配合されることができる。投与経路は、局所的(眼内投与、膣内投与、直腸投与、鼻内投与を含む)、経口的、吸入によって、または非経口的に(例えば、点滴静注、または腹膜内注射、皮下注射、筋肉内注射、または静脈内注射によって)行われることができる。
【0156】
局所投与用の処方物としては、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、座剤、ドロップ、液体、スプレー、および粉末を挙げることができるが、これらに限定されない。従来の医薬的キャリア、水溶液、粉末、または油性基剤、および増粘剤などが必要である場合があり、またそれらが望ましい場合もある。
【0157】
経口投与用の組成物としては、粉末、顆粒、懸濁液、または水溶液または非水性媒体の溶液、サシェ、カプセル、または錠剤が挙げられる。増粘剤、希釈剤、香料、分散助剤、乳化剤、または結合剤が望ましい場合もある。
【0158】
非経口投与用の処方物としては、滅菌溶液を挙げることができるが、これらに限定されない。これには、緩衝液、希釈剤、および他の適切な添加物を含めることもできる。徐放組成物は、治療のために予想される。
【0159】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている患者、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0160】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)など)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明のアミン−ボラン化合物を含む組成物もまた、上でさらに詳述されたように、適応される状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0161】
従って、本発明の実施形態によると、選択されたアミン−ボラン化合物に依存して、本発明の医薬組成物は包装材料中に包装され、印刷物で、または包装材料上で、上で定義されるような病原性微生物と関連する医学的状態の処置における使用のために同定される。
【0162】
本発明はさらに、本明細書中下記において記載されるように、また、下記の実施例の節においてさらに詳述されるように、本明細書中に開示される化合物のいずれかを調製するプロセスを包含する。
【0163】
従って、本発明の別の態様によれば、上記で示された一般式Iを有する化合物を調製するプロセスが提供される。このプロセスは、一般には、1つ以上の臭素をホウ素上に有する対応する臭素化されたアミノボラン類を提供すること、および、いずれか1つまたは両方の臭素をフッ素化剤との反応によりフッ素に変換することによって行われる。臭素化された出発物質のいくつかが既知であるが、いくつかは、本発明の関連における使用のために特別に設計されている。一般に、臭素化されたアミン−ボラン化合物は、下記の実施例の節において示されるように、既知の手順を使用して調製される。
【0164】
従って、本発明のこの態様によるプロセスは、
フッ素化剤と、一般式IVを有する臭素化された化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、Yは、シアノ基、−C(=O)Ra基、アミンまたはアルキルであり、ただし、Raは、上で定義される通りであり;XおよびX10のそれぞれは、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルまたはアリールであり、ただし、XおよびX10の少なくとも1つは臭素であり;およびR〜Rのそれぞれは式Iについて上で定義される通りである)
を反応させることによって行われる。
【0165】
基本的には、このプロセスは、良好な脱離基として作用し、かつ、フッ素によって置換されるためのホウ素原子上のブロモ置換基の特性を利用している。ブロモ置換基は、そのような置換反応を、例えば、水素またはアルキル置換基よりも受けやすく、従って、同じプロセスを、ホウ素原子における1つだけのブロモ置換基または2つのブロモ置換基を置換するために利用することができる。従って、この化合物群を調製するプロセスは本質的には、ブロモからフルオロへの交換プロセスである。
【0166】
従って、1つの具体例において、出発化合物は、XおよびX10の一方が臭素である式IVを有する化合物が可能である。この化合物は、ハロゲン化されていないアミン−ボラン化合物を1当量の臭素化剤と反応することによって得ることができ、その後、式Iを有する所望の化合物を得るために、フッ素化剤と反応させられる。あるいは、出発物質は、XおよびX10の両方が臭素である式IVを有する化合物が可能である。この化合物は、ハロゲン化されていないアミン−ボラン化合物を2当量の臭素化剤と反応することによって得ることができ、その後、式Iを有する所望の化合物を得るために、フッ素化剤と反応させられる。
【0167】
ブロモからフルオロへのこの交換プロセスは、当業者に既知であるような任意のフッ素化剤を使用することによって行うことができる。本発明の関連での使用のために好適であることが示されているフッ素化剤の代表的な例には、限定されないが、フッ化銀、ならびに、トリエチルアミンおよびトリヒドロフルオリドの混合物が含まれる。
【0168】
好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様によるプロセスは、有機溶媒中で、好ましくは、非極性の有機溶媒(例えば、トルエンまたはベンゼンなど)中で行われる。反応を促進させるために、このプロセスは、好ましくは、反応混合物を超音波処理に供しながら行われる。
【0169】
本明細書中上記で記載されたように、本明細書中に記載される化合物は、放射性または非放射性のいずれかであるフッ素を含有することができる。一般式Iおよび放射性フッ素を有する化合物は、放射性フッ素(例えば、18F同位体)を含むフッ素化剤とのフッ素化反応を行うことによって、本明細書中に記載されるプロセスを使用して容易に調製することができる。この態様における例示的なフッ素化剤には、例えば、K18F、H18FおよびAg18Fが含まれる。本明細書中に示される18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物の調製および使用が本明細書中下記においてさらに議論される。
【0170】
本発明の別の態様によれば、上に示される一般式IIを有するアミン・ビス−ボラン化合物を調製するプロセスが提供される。本発明のこの態様に従うと、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、Yは上に定義される通りであり;XおよびXは上に定義される通りであり;およびR11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIを有する化合物:

(式中、Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の、飽和または不飽和の炭化水素であり;およびWおよびWはそれぞれが独立して、官能基である)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させることによって行われる。
【0171】
本明細書中で使用される表現「官能基」は、典型的には結合の形成をもたらす化学反応が生じることを可能にする化学的な基を表す。結合は、本発明によれば、好ましくは、共有結合による結合である。結合の形成をもたらす化学反応には、例えば、求核置換反応および親電子置換反応、求核付加反応および親電子付加反応、付加脱離反応、付加環化反応、転移反応、ならびに、官能基を伴う任意の他の有機反応が含まれる。
【0172】
従って、官能基は、好ましくは脱離基である。本明細書中で使用される表現「脱離基」は、脱離がその後での脱離原子の相対的な安定性によって促進されるが、有機分子からの脱離を化学反応の期間中に容易に受ける反応活性な基を表す。典型的には、強酸の共役塩基である基はどれも、脱離基として作用することができる。好ましくは、脱離基はハロであり、最も好ましくは、脱離基はブロモである。
【0173】
従って、本発明のこの態様によるプロセスの好ましい実施形態によれば、n−アルキルリチウムが強塩基として作用し、これにより、出発化合物におけるアミンを置換するメチルがアニオンに変換される。
【0174】
1つの具体例において、2当量のそのようなアニオンは、式VIを有する化合物と反応して、これにより、機能的な脱離基(WおよびW)が置換され、それにより、ビス−ボラン化合物を形成する。あるいは、同じプロセスを、(式Vを有する)出発アミン−ボラン化合物の2つの異なるユニットの、式VIを有する化合物における炭化水素成分への逐次的な結合を可能にするように段階的に行うことができる。従って、例えば、式VIを有する化合物は、保護または不活性化された官能基を一方の末端に有することができる。活性化された(イオン化された)アミン−ボラン化合物は式VIの化合物の官能基末端と反応し、その後、不活性化されている官能基が、別の活性化されたアミン−ボラン化合物と反応するように活性化され、その結果、式IIを有するアミン・ビス−ボラン化合物が形成される。
【0175】
上記の式Vを有する、出発物質としてこのプロセスにおいて使用されるアミン−ボラン化合物のそれぞれは、既知の方法によって調製することができるか、または、本明細書中に開示される新規な化合物の1つであり得る。
【0176】
上記プロセスは基本的には、アミン上の置換基の1つ以上についてのアルキル化プロセスであるので、類似するプロセスを、高級アルキル基置換基を有する新規なアミン−ボラン化合物を調製するために行うことができる。
【0177】
従って、本発明のさらに別の態様によれば、R〜R10の少なくとも1つが11個〜17個の炭素原子を有する飽和したアルキルであるか、または5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルである、上に示される一般式IIIを有する化合物を調製するプロセスが提供される。本発明のこの態様に従うと、このプロセスは、
一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、Yは上に定義される通りであり;XおよびXは上に定義される通りであり;およびR11〜R13は上に定義される通りであり、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、一般式VIIを有する化合物:

(式中、R14は、少なくとも10個の炭素原子を有する飽和したアルキル、または、少なくとも4個の炭素原子を有する不飽和のアルキルから成る群から選択され;およびWは官能基であり、この用語は上に定義される)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させることによって行われる。
【0178】
このプロセスで使用される方法論は、一般式IIを有する化合物の調製に関して上記で記載された方法論と類似する。このような方法論は、飽和した高級アルキルおよび不飽和の高級アルキルの両方で実施されることができる。
【0179】
本発明のさらに別の態様によれば、上に示される一般式IIIを有する化合物を調製するプロセが提供され、ここでR〜R10の少なくとも1つはヒドロキシ、アルコキシ、またはフッ素を含む。本発明のこの態様によるプロセスは、
一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、Yは上に定義される通りであり;XおよびXは上に定義される通りであり;およびR11〜R13は上に定義される通りである)
を、一般式VIIIを有する化合物:

(式中、Wはカルボキシ(C=O)基であり;R15は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;およびR16は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され、これらの用語は上に定義される通りである)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、R〜R10の少なくとも1つがヒドロキシまたはアルコキシを含む一般式IIIを有する化合物を得ることによって行われる。
【0180】
このプロセスで使用される方法論は、一般式Iまたは一般式IIIを有する化合物に関して上記で記載された方法論と類似する。しかしながら、式Vを有する活性化された化合物が、式VIIIでのようにカルボキシ基を有する化合物と反応させられるとき、付加反応から生じる生成物は、(式VIIIを有する)反応する化合物の化学に依存して、ヒドロキシ官能基またはアルコキシ官能基を有する。
【0181】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、式Vを有する化合物において、R〜R10の少なくとも1つがメチルであり、その結果、式VIIIを有する化合物と反応したとき、アミンに対してβ位にあるヒドロキシ基またはアルコキシ基が得られるようになる。
【0182】
アミン−ボラン化合物へのヒドロキシル基またはアルコキシ基の導入は、これらの化合物の水溶性を変化させることができ、生理学的条件におけるそれらの生物学的利用能を変化させ、また、改善するために使用することができる。
【0183】
アミン窒素に対してβ位におけるヒドロキシ基またはアルコキシ基の形成はまた、フッ素(放射性または非放射性のいずれであっても)を、アルコキシ基またはヒドロキシ基の置換によってアミン−ボラン化合物に取り込むための経路を開拓する。
【0184】
従って、本発明のこの態様によるプロセスは、ヒドロキシ置換基またはアルコキシ置換基をフッ素に変換することによってさらに行われる。そのような変換は、好ましくは、ヒドロキシ置換基またはアルコキシ置換基を有する化合物をフッ素化剤と反応させることによって行われる。
【0185】
本発明のこの関連での使用のために好適であるフッ素化剤の代表的な一例は、無水トリフルオロ酸および2,6−ルチジン(これは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を活性化するために使用される)の混合物、続いて、フッ化セシウム(CsF)を含む。
【0186】
上記で述べられたように、本発明のアミン−ボラン化合物へのフッ素の放射性同位体の導入は、様々な適用(例えば、核医学、画像化および診断など)において使用することができる放射能標識された化合物をもたらす。
【0187】
1つ以上のフッ素原子を含有する生物学的に活性な化合物は、医学的画像化技術(例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)など)において一般に使用されている。典型的には、これらの化合物におけるフッ素原子が、18F−放射能標識された化合物を作製するために、陽電子を放出する放射性同位体のフッ素−18により置換される。患者に注射された後、PETスキャナーにより、18F−標識化合物の体内における分布の画像を形成することができる。画像は、様々な病状の診断を提供するために、また、所定の放射能標識化合物を吸収する組織を調べるために、放射線科医によって評価することができる。
【0188】
PETは、ヒト体内における放射能分布の四次元での定量的測定を可能にする核画像化様式である。この画像化様式は、放射能標識されたバイオマーカーの速度論を追跡することができるだけでなく、インビボにおける小さい体積区画での放射能濃度の正確な測定を行うことを可能にする。
【0189】
本発明によれば、1つ以上の18F原子を含有するアミン−ボラン化合物は、18F−放射能標識された出発物質を使用することにより、あるいは、好ましくは、1つ以上の非放射性原子を合成の期間中または合成終了時に放射性原子により置換する工程を用いることにより、放射能標識されていない化合物について上記で示されるのと類似する合成経路によって調製することができる。
【0190】
好ましくは、本発明の化合物は、放射性ハロゲンにより、例えば、18F(t1/2、1.83時間)、123I(t1/2、13時間)、125I(t1/2、60日)、131I(t1/2、8日)および77Br(t1/2、2.4日)などにより放射能標識することができる。
【0191】
本発明によれば、1つ以上の18F原子を含有するアミン−ボラン化合物は、放射性画像化技術(例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)など)における要求されるバイオマーカーとして、放射性画像化において、例えば、多くの病状の診断において効果的に使用することができる。微生物、特異的な受容体、酵素または膜に対する大きい親和性および選択性を有する標識されたバイオプローブとして使用される場合、放射能標識されたアミン−ボラン化合物は、標的化された微生物、タンパク質または膜成分が発現されるそのような器官および組織に蓄積することができる。従って、そのような放射能標識されたアミン−ボラン化合物を走査することにより、これらの微生物、タンパク質または膜成分のヒト生体内における正確な分布が提供され得る。
【0192】
本発明による例示的な18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物である化合物[18F]K−Iが、下記の実施例の節において明らかにされるように調製され、特徴づけられた。
【0193】
放射能標識されたアミン−ボラン化合物としての化合物[18F]K−Iの効力が、下記の実施例の節において示されるように、ラットにおけるPET放射性画像化実験で明らかにされた。
【0194】
従って、本発明の1つの実施形態によれば、ヒドロキシ基またはアルコキシ基がフルオロにより交換される上記プロセスでは、放射性18Fを含むフッ素化剤(例えば、Cs18FまたはX18F)が使用される。
【0195】
放射性フッ素同位体の取り込みが上記で記載されているが、同様に、他の放射性同位体を、当該技術分野で既知の放射能標識化試薬および放射能標識化技術を使用して、本明細書中に開示されるアミン−ボラン化合物に取り込むことができる。これらには、例えば、ヨウ素、臭素、ホウ素および炭素の様々な同位体が含まれる。
【0196】
従って、本発明によれば、下記の一般式を有する放射能標識された化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(上記式において、Y〜Yは本明細書中上記で定義される通りであり、X〜Xは本明細書中上記で定義される通りであり、R〜Rは本明細書中上記で定義される通りであり、Aは本明細書中上記で定義される通りであり、
ただし、X〜X、R〜Rおよび/またはAの少なくとも1つが放射性原子を含むか、あるいは、ホウ素が放射性ホウ素である)
が提供される。
【0197】
放射性原子は、例えば、ホウ素−10(10B)、炭素−11(11C)、フッ素−18(18F)、臭素−76(76Br)、臭素−77(77Br)、ヨウ素−123(123I)、ヨウ素−124(124I)およびヨウ素−125(125I)が可能である。
【0198】
本明細書中で使用される表現「放射能標識(された)化合物」または表現「放射性原子」(タイプが指定されているか、または指定されていなくても)は、1つ以上の放射性原子を含む化合物、あるいは、比放射能がその原子についてのバックグラウンドレベルを越えている放射性原子を示す。この点において、天然に存在する元素は様々な同位体の形態で存在し、その一部が放射性同位体であることが周知である。天然に存在する元素の放射能は、これらの同位体の自然界での分布の結果であり、一般にはバックグラウンド放射能レベルと呼ばれる。しかしながら、放射性である同位体を有する特定の元素を濃縮する方法が既知である。そのような濃縮の結果が、その原子の自然界での集団よりも大きい放射能によって特徴づけられる原子の集団であり、従って、その比放射能はバックグラウンドレベルを越えている。
【0199】
従って、本発明の放射能標識された化合物は、対応する標識されていない化合物よりも大きい比放射能を有しており、従って、放射性画像化および放射線治療のための薬剤として使用することができる。
【0200】
用語「放射性」は、原子または誘導体化基に関連して本明細書中で使用される場合、放射性原子を含む原子または誘導体化基を示し、従って、その比放射能はバックグラウンドレベルを越えている。
【0201】
上記の放射性原子の1つ以上を有する放射能標識された化合物は、化合物に存在する放射性原子に依存して、さまざまな適用において使用することができる。
【0202】
従って、例えば、フッ素−18原子、炭素−11原子、臭素−76原子および/またはヨウ素−124原子を有する化合物は、本明細書中上記で詳しく議論されたように、放射性画像化(例えば、PETなど)におけるバイオマーカーとして好都合に使用することができる。
【0203】
ヨウ素−123を有する化合物は、放射性画像化において、例えば、SPECT(単光子放射コンピューター断層撮影法)などにおいて使用することができる。
【0204】
臭素−77、ホウ素−10、ヨウ素−124および/またはヨウ素−131を有する化合物は、放射線治療における放射性医薬品として使用することができる。
【0205】
本発明の実施形態による放射能標識された化合物の様々な化学的特徴は、本明細書中上記に示される標識されていない新規な化合物に関して記載された化学的特徴と類似する。
【0206】
従って、本発明は、本明細書中で議論され、また、本明細書中に示される本発明の放射能標識された化合物を利用する、本明細書中上記で定義されるような医薬組成物、使用および治療方法を包含する。
【0207】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0208】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
【0209】
(実施例1)
化学合成
材料および方法:
すべての反応を窒素雰囲気下で行った。溶媒を通常の方法によって乾燥し、使用前に蒸留した。すべての他の化学試薬をSigma−Aldrichから得て、さらなる精製を何ら行うことなく、受領時のまま使用した。
【0210】
下記のアミン−ボラン類を発表された手順に従って調製した:(2−ヒドロキシ−2−フェニル−エチル)−ジメチル−アミン・シアノボラン(K−B)[22]、エチル−ジメチル−アミン・シアノボラン(K−C)[22]、ブタ−3−エニル−ジメチル−アミン・シアノボラン(K−D)[22]、トリメチル−アミン・シアノジブロモボラン(K−E)[Takrouri他、J.Organometallic Chem.y.2005、690、4150;Gyori他、Inorg.Chim.Acta、1994、218、21]、トリメチル−アミン・シアノボラン(K−F)[Wisian−Neilson他、Inorg.Chem.、1978、17、2327]、ブチル−ジメチル−アミン・シアノボラン(K−G)[22]、ペンチル−ジメチル−アミン・シアノボラン(K−H)[22]およびジメチル−トリメチルシラニルメチル−アミン・シアノボラン(K−K)[22]。
【0211】
超音波処理を、例えば、Astrason(登録商標)50/60Hz 1.2Ampsソニケーターで行った。
【0212】
H−NMRスペクトル、11B−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトルおよび19F−NMRスペクトルを、MeSiを内部標準として、Varian Unity Spectrometer(300MHz、96MHz、75MHz、282MHz)でCDCl溶液またはDO溶液において記録した。
【0213】
LC−MS分析を、エレクトロンスプレー検出器によりFinnigan LCQDUO Thermo Quadで行った。
【0214】
固体サンプルについての赤外スペクトルを、Bruker Vector 22 FT−IR分光光度計でKBrディスクまたはNaClセルにおいて測定した。
【0215】
元素分析を、サンプルの元素を単純なガスに変換するために燃焼法を使用して、Perkin−Elmer2400シリーズII Analyzerを使用して行った。ハロゲンの測定を、有機サンプルの分解のための酸素フラスコ法(Schoniger適用)、次いで、Metrohm686 Titroprocessorによる電位差滴定を使用して行った。
【0216】
固体サンプルの融点をFisher Scientificの融点装置で測定した。
【0217】
ブロモシアノボラン類からのアミン・フルオロシアノボラン類の調製−一般的手順:
アミン・フルオロシアノボラン(RNBHFCN、RNBFCNおよびRNBFBrCN)(式中、R、RおよびRはそれぞれがアルキルである)の合成を、本発明者らによって開発され、また、Shalom他、Organometallics(2004)、23(11)、4396〜4399に記載される方法に従って、対応するアミン・ブロモシアノボラン類(RNBHBrCNおよびRNBBrCN)をフッ化銀(AgF)と反応させることによって行った(下記のスキーム1を参照のこと)。

【0218】
簡潔に記載すると、アミン・シアノブロモボランおよびシアノジブロモボランを当該技術分野で記載されるように調製する[Gyoeri,Bela他、Inorganic Chemistry(1998)、37(20)、5131〜5141;Synthesis(1995)、(2)、191〜4;およびJ.Organometallic Chem.(1994)、484(1−2)、225〜31]。
【0219】
フッ化銀(AgF、5当量〜15当量)を乾燥ベンゼンまたは乾燥トルエンに加え、得られたアミン・シアノブロモボランまたはアミン・シアノジブロモボラン(RNBHBrCNまたはRNBBrCN、1当量)を乾燥ベンゼンまたは乾燥トルエンに溶解して、混合物を5時間〜15時間にわたって超音波処理および撹拌に供しながら、窒素下で銀溶液に滴下して加える。その後、反応混合物をろ過して、過剰なAgFを除き、溶媒を減圧下でエバポレーションして、それにより、アミン・シアノフルオロボランまたはアミン・シアノジフルオロボランを得る。
【0220】
アミン・シアノフルオロブロモボランを、対応するアミン・シアノジフルオロボランを臭素(1.1当量)により臭素化して、それにより、混合型ハロシアノボラン、すなわち、アミン・シアノフルオロブロモボランを得ることによって調製する。
【0221】
あるいは、臭素からフッ素への交換を、対応するアミン・シアノブロモボランまたはアミン・シアノジブロモボランをトルエンに溶解することによって行う。その後、トリエチルアミン・トリヒドロフルオリド(EtN/3HF、3.3当量)を加え、反応混合物を24時間還流する。その後、溶媒を減圧下でエバポレーションし、対応するアミン・シアノフルオロボラン、アミン・シアノフルオロブロモボランまたはアミン・シアノジフルオロボランを得て、単離する。
【0222】
この一般的手順を使用して、下記の新規なフッ素化されたアミン−ボラン類を調製した:
【0223】
トリメチル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物1):

トリメチル−アミン・シアノブロモボラン(1mmol、1当量)を2mlの乾燥ベンゼンに溶解した。フッ化銀(AgF、99%純粋、5当量)を5mlの乾燥ベンゼンに懸濁し、反応混合物に加え、その後、超音波処理を5時間行った。その後、溶液をろ過し、溶媒を減圧下でろ液から除いた。
【0224】
化合物1を65%の収率で無色の結晶として得た。
融点:53℃

【0225】
エチルジメチルアミン・シアノフルオロボラン(化合物2):

化合物2を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するエチル−ジメチル−アミン・シアノブロモボランから調製した。
【0226】
化合物2を63%の収率で黄色のオイルとして得た。

【0227】
ブチルジメチルアミン・シアノフルオロボラン(化合物3):

化合物3を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するブチル−ジメチル−アミン・シアノブロモボランから調製した。
【0228】
化合物3を66%の収率で褐色のオイルとして得た。

【0229】
トリメチルアミン・シアノジフルオロボラン(化合物8):

トリメチル−アミン・シアノジブロモボラン(1mmol、1当量)を2mlの乾燥ベンゼンに溶解した。フッ化銀(AgF、99%純粋、5当量)を5mlの乾燥ベンゼンに懸濁し、反応混合物に加え、その後、超音波処理を10時間行った。その後、溶液をろ過し、溶媒を減圧下でろ液から除いた。
【0230】
化合物8を67%の収率で固体として得た。
融点:48℃

【0231】
トリメチルアミン・シアノフルオロブロモボラン(化合物11):

トリメチルアミン・シアノフルオロボラン(化合物1、0.5mmol、1当量)を2mlの蒸留水に溶解し、0℃に冷却した。臭素(0.51mmol)を5mlの蒸留水に溶解し、アミン−ボラン化合物を含有する溶液に滴下して加えた。反応混合物を0℃で4時間撹拌した。その後、生成した沈殿物をろ過し、熱水から再結晶した。
【0232】
化合物11を65%の収率で褐色のオイルとして得た。

ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン(化合物K−I)を同様に調製した。

【0233】
ブロモカルボキシボラン類からのアミン・フルオロカルボキシボラン類およびそのエステルの調製−一般的手順:
アミン・フルオロカルボキシボランおよびそのエステル(RNBHFCOH、RNBFCOH、RNBFBrCOH、RNBHFCORa、RNBFCORaおよびRNBFBrCONa)(式中、R、RおよびRはそれぞれがアルキルであり、Raは、例えば、アルキル、アルケニルおよびアリールである)の合成を、本発明者らによって開発され、また、Shalom他、Organometallics(2004)、23(11)、4396〜4399に記載される方法に従って、対応するアミン・ブロモカルボキシボラン、アミン・ジブロモカルボキシボランあるいは対応するアミン・ブロモカルボキシボランエステルまたはアミン・ジブロモカルボキシボランエステル(RNBHBrCOH、RNBBrCOH、RNBHBrCORaおよびRNBBrCORa)をフッ化銀(AgF)と反応させることによって行う(下記のスキーム2を参照のこと)。

【0234】
簡潔に記載すると、アミン・カルボキシボラン、アミン・カルボキシジブロモボランおよびそれらのアルキルエステルを当該技術分野で記載されるように調製する[Shalom他、Organometallics、2004、23、4396〜4399;Gyoeri,Bela他、Inorganic Chemistry(1998)、37(20)、5131〜5141;Synthesis(1995)、(2)、191〜4;およびJ.Organometallic Chem.(1994)、484(1−2)、225〜31]。
【0235】
フッ化銀(AgF、5当量〜15当量)を乾燥ベンゼンまたは乾燥トルエンに加え、得られたアミン・カルボキシブロモボラン、アミン・カルボキシジブロモボランまたはそれらのエステル(RNBHBrCOOH/RまたはRNBBrCOOH/R、1当量)を乾燥ベンゼンまたは乾燥トルエンに溶解し、混合物を5時間〜15時間にわたって超音波処理および撹拌に供しながら、窒素下で反応混合物に滴下して加える。その後、反応混合物をろ過して、過剰なAgFを除き、溶媒を減圧下でエバポレーションして、それにより、アミン・カルボキシフルオロボラン、アミン・カルボキシジフルオロボランまたはそれらのエステルを得る。
【0236】
アミン・カルボキシフルオロブロモボランを、対応するアミン・カルボキシフルオロボランを臭素(1.1当量)により臭素化して、それにより、混合型ハロカルボキシボラン、すなわち、アミン・カルボキシフルオロブロモボランを得ることによって調製する。
【0237】
あるいは、臭素からフッ素への交換を、対応するアミン・カルボキシブロモボランまたはアミン・カルボキシジブロモボランおよびそれらの対応するエステルをトルエンに溶解することによって行う。その後、トリエチルアミン・トリヒドロフルオリド(EtN/3HF、3.3当量)を加え、反応混合物を24時間還流する。その後、溶媒を減圧下でエバポレーションし、対応するアミン・カルボキシフルオロボランまたはアミン・カルボキシジフルオロブロモボランおよびそれらの対応するエステルを得て、単離する。
【0238】
この一般的手順を使用して以下の新規な化合物を調製した:
トリメチルアミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル(化合物4):

化合物4を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するトリメチル−アミン・カルボキシブロモボラン・メチルエステルから調製した。
【0239】
化合物4を69%の収率で黄色のオイルとして得た。

【0240】
トリメチルアミン・カルボキシフルオロボラン・エチルエステル(化合物5):

化合物5を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するトリメチル−アミン・カルボキシブロモボラン・エチルエステルから調製した。
【0241】
化合物5を65%の収率で黄色のオイルとして得た。

【0242】
エチルジメチルアミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル(化合物6);

化合物6を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するエチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステルから調製した。
【0243】
化合物6を69%の収率で黄色のオイルとして得た。

【0244】
ブチルジメチルアミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル(化合物7):

化合物7を、本明細書中上記の化合物1について記載されるように、対応するブチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステルから調製した。
【0245】
化合物7を59%の収率で褐色のオイルとして得た。

【0246】
トリメチルアミン・カルボキシジフルオロボラン・メチルエステル(化合物9):

化合物9を、本明細書中上記の化合物8について記載されるように、対応するトリメチル−アミン・カルボキシジブロモボラン・メチルエステルから調製した。
【0247】
化合物9を70%の収率で固体として得た。

【0248】
トリメチルアミン・カルボキシジフルオロボラン・エチルエステル(化合物10):

化合物10を、本明細書中上記の化合物8について記載されるように、対応するトリメチル−アミン・カルボキシジブロモボラン・エチルエステルから調製した。
【0249】
化合物10を66%の収率で黄色のオイルとして得た。

【0250】
トリメチルアミン・カルボキシフルオロブロモボラン・エチルエステル(化合物12):

化合物12を、本明細書中上記の化合物11について記載されるように、対応するトリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・エチルエステル(化合物5)から調製した。
【0251】
化合物12を57%の収率で褐色のオイルとして得た。

【0252】
トリエチルアミン・カルボキシジフルオロボラン(化合物13):

化合物13を、本明細書中上記の化合物8について記載されるように、対応するトリエチル−アミン・カルボキシジブロモボランから調製した。
【0253】
化合物13を62%の収率で無色のオイルとして得た。

【0254】
アミン成分に結合した長いアルキル鎖を有するアミン・シアノボラン類の調製−一般的手順:
アミン・シアノボラン(R10CHNBHCN)(式中、R10は高級アルキル(長鎖アルキル)である)の合成を、本発明者らによって開発され、また、Takrouri他、Organometallics(2004)、23(11)、2817〜2820に記載される方法に従って行った(下記のスキーム3を参照のこと)。対応する出発物質のアミン・シアノブロモボランおよびアミン・シアノジブロモボランを当該技術分野で記載される通りに調製する[Takrouri他、J.Organometallic Chem.、690(2005)、4150〜4158;Shalom他、Organometallics、2004、23、4396〜4399;Gyoeri他、Inorganic Chemistry(1998)、37(20)、5131〜5141;Synthesis(1995)、(2)、191〜4;およびJ.Organometallic Chem.(1994)、484(1−2)、225〜31]。

【0255】
この一般的手順を使用して以下の化合物を調製した:
ジメチルウンデシルアミン・シアノボラン(化合物K−I):

化合物K−Iを87%の収率で白色の固体として得た(0.207グラム)。

【0256】
ドデシルジメチルアミン・シアノボラン(化合物K−L):

化合物K−Lを87%(0.219グラム)の収率で黄色のオイルとして得た。

【0257】
ジメチルノニルアミン・シアノボラン(化合物K−P);

化合物K−Pを84%(0.177グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0258】
ジメチルトリデシルアミン・シアノボラン(化合物K−Q):

化合物K−Qを84%(0.224グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0259】
ジメチルペンタデシルアミン・シアノボラン(化合物K−R);

化合物K−Rを86%(0.253グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0260】
ジメチルヘプタデシルアミン・シアノボラン(化合物K−S):

化合物K−Sを83%(0.268グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0261】
ジメチルウンデシルアミン・シアノブロモボラン(化合物K−I);

化合物K−Iを80%(0.254グラム)の収率で褐色のオイルとして得た。

【0262】
ジメチルウンデシルアミン・シアノジブロモボラン(化合物K−I):

化合物K−Iを82%(0.324グラム)の収率で褐色のオイルとして得た。

【0263】
ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物K−I):

ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物K−I)を、化合物K−I(1mmol、本明細書中上記の合成を参照のこと)を2mlの乾燥ベンゼンに溶解することによって調製した。フッ化銀(I)(99%、5当量)を5mlの乾燥ベンゼンに懸濁し、5時間にわたって超音波処理する反応混合物に加えた。その後、溶媒をろ過し、高真空下で除いた。
【0264】
化合物K−Iを66%の収率で褐色のオイルとして得た。

【0265】
アミン・ビス−シアノボラン類の調製−一般的手順:
アミン・ビス−シアノボラン(NCBHN(CHn+2NRBHCN)(式中、nは1〜20の範囲である)の合成を、Takrouri他、Organometallics(2004)、23(11)、2817〜2820に記載される手順に従って、下記のスキーム4に例示されるように行う。対応する出発物質のアミン・シアノ/カルボキシブロモボラン、アミン・シアノ/カルボキシジブロモボランおよびそれらのアルキルエステルを当該技術分野で記載される通りに調製する[Takrouri他、J.Organometallic Chem.、690(2005)、4150〜4158;Gyoeri,Bela他、Inorganic Chemistry(1998)、37(20)、5131〜5141;Synthesis(1995)、(2)、191〜4;およびJ.Organometallic Chem.(1994)、484(1−2)、225〜31]。

【0266】
この一般的手順を使用して以下の新規な化合物を調製した:
N,N,N’,N’−テトラメチルデカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノボラン(化合物K−J):

化合物K−Jを90%の収率で白色の固体として得た(0.276グラム)。

【0267】
N,N,N’,N’−テトラメチルドデカン−1,12−ジアミン・ビス−シアノボラン(化合物K−M):

化合物K−Mを88%(0.294グラム)の収率で黄色の固体として得た。

【0268】
N,N,N’,N’−テトラメチルテトラデカン−1,14−ジアミン・ビス−シアノボラン(化合物K−N);

化合物K−Nを87%(0.315グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0269】
N,N,N’,N’−テトラメチルデカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノブロモボラン(化合物K−J):

化合物K−Jを82%(0.380グラム)の収率で褐色のオイルとして得た。

【0270】
N,N,N’,N’−テトラメチルデカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノジブロモボラン(化合物K−J);

化合物K−Jを83%(0.516グラム)の収率で褐色のオイルとして得た。

【0271】
N,N,N’,N’−テトラメチルデカン−1,10−ジアミン・ビス−カルボキシボラン(化合物K−J):

化合物K−Jを78%(0.268グラム)の収率で白色のオイルとして得た。

【0272】
β−ヒドロキシアミン・シアノボラン類およびβ−アルコキシアミン・シアノボラン類の調製−一般的手順:
β−ヒドロキシアミン・シアノボランおよびβ−アルコキシアミン・シアノボランの調製を、これらのアミン・シアノボラン誘導体の水溶性を変化させることを意図して、本発明者らによって開発され、また、Takrouri他、Organometallics(2004)、23(11)、2817〜2820に記載される方法に従って、長鎖アルデヒドまたは長鎖ケトンのいずれかを使用して行う(下記のスキーム5を参照のこと)。

【0273】
この一般的手順を使用して以下の化合物を調製した:
1−ジメチルアミノメチル−シクロペンタ−2−エノール・シアノボラン(化合物K−A):

化合物K−Aを80%の収率で帯黄色の固体として得た(0.144グラム)。

【0274】
1−ジメチルアミノ−ドデカン−2−オール・シアノボラン(化合物K−T):

化合物K−Tを85%(0.228グラム)の収率で黄色のオイルとして得た。

【0275】
1−ジメチルアミノ−2−メチル−オクタン−2−オール・シアノボラン(化合物K−O);

化合物K−Oを85%(0.192グラム)の収率で白色の固体として得た。

【0276】
1−ジメチルアミノ−ウンデカン−2−オール・シアノボラン(化合物K−U):

化合物K−Uを84%(0.214グラム)の収率で黄色のオイルとして得た。

【0277】
β−フルオロアミン・シアノボラン類およびβ−フルオロアミン・カルボキシボラン類の調製−一般的手順:
β−フルオロアルキルアミン・シアノボランの合成を、本明細書中上記で記載されたβ−ヒドロキシアミン・シアノボランを使用して行う(下記のスキーム6を参照のこと)。β−ヒドロキシアミン・シアノボランを、0℃で1時間、無水トリフルオロ酸および2,6−ルチジンにより処理する。その後、反応混合物を抽出して、粗β−OTfアミン・シアノボランを得る。さらに精製することなく、β−OTfアミン・シアノボランを3mlのアセトニトリルにおいて5当量のフッ化セシウム(CsF)および90μlの水と反応させ、反応混合物を100℃で20分間還流し、その後、エーテルにより抽出する。

この一般的手順を使用して以下の化合物を調製した:
(2−フルオロ−ノニル)−ジメチル−アミン・シアノボラン(化合物14):

【0278】
アミン成分に結合した不飽和アルキル鎖を有するアミン・シアノボラン類の調製−一般的手順:
アルキルN−置換の1つ以上における不飽和なC=C結合の存在は、下記の実施例2において示されるように、本明細書中に示される化合物の効力に対する著しい影響を有することが見出された。
【0279】
アミン・シアノボラン(RCHNBHCN)(式中、Rは、不飽和なC=C結合をその末端に有するアルキルである)の合成を、本発明者らによって開発され、また、Takrouri他、Organometallics(2004)、23(11)、2817〜2820に記載される方法に従って行う(上記のスキーム3を参照のこと)。対応する出発物質のアミン・シアノブロモボランおよびアミン・シアノジブロモボランを当該技術分野で記載される通りに調製する[Takrouri他、J.Organometallic Chem.、690(2005)、4150〜4158;Shalom他、Organometallics、2004、23、4396〜4399;Gyoeri他、Inorganic Chemistry(1998)、37(20)、5131〜5141;Synthesis(1995)、(2)、191〜4;およびJ.Organometallic Chem.(1994)、484(1−2)、225〜31]。
【0280】
この一般的手順を使用して以下の化合物を調製した:
ヘキサ−5−エニル−ジメチル−アミン・シアノボラン(化合物K−V):

化合物K−Vを87%(0.144グラム)の収率で黄色のオイルとして得た。

【0281】
下記の表1には、上記で記載された手順を使用して調製された新規なアミン・フルオロボラン類が示される。


【0282】
アミン・カルボキシボラン類およびそのエステルの調製−一般的手順:
アミン・カルボキシボラン[17]およびアミン・カルボキシボランエステル[23〜26](RNBHCOHおよびRNBHCORa)(式中、R、RおよびRはそれぞれがアルキルであり、Raは、アルキル、アルケニルおよびアリールなどである)の合成を、発表された手順に従って、例えば、下記のスキーム7に例示されるように、本明細書中上記で記載されたように得られる対応するRNMeBHCNの加水分解によって行う。

【0283】
(実施例2)
抗真菌活性
抗真菌活性アッセイ:
アミン・ボラン化合物の抗真菌活性を、下記に詳しく記載されるように、ミクロブロス(microbroth)希釈法によるインビトロ感受性試験を使用して求めた。
【0284】
数種の酵母株を感受性試験のために使用した:すなわち、Candida albicans CBS562(ヒトにおける酵母感染症の主要な共通原因の基準タイプ株;Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、オランダ)および2つの臨床単離体(607および615);Candida glabrata4210;Candida glabrata4475、アゾール系薬剤に対して抵抗性があることが既知である酵母株;Candida glabrata566、同572、同578、同646および同648、ならびに、Candida krusei603および同638;Candida glabrata4681;Candida glabrata4787;Saprolegnia parasitica T1(熱帯魚における重篤な疾患(ミズカビ病)および甚だしい経済的損害を引き起こす、今日まで効果的な治療がないミズカビ)、ならびに、カビAspergillus fumigatus ATCC64026(基準株;The American Type Culture Collection、Manassas、VA)(免疫低下宿主におけるカビ感染症の主原因であり、また、ニワトリにおける菌類感染症の主原因でもあるカビ)。加えて、すべての単離体がHadassah−Hebrew University Medical Centerからの播種性カンジダ血症患者から得られた(単離体番号は施設でのインデックスを示す)。
【0285】
試験された化合物のそれぞれに対する試験株のインビトロ感受性を、酵母についてのNational Committee for Clinical Laboratory Standards(NCCLS/CLSI)の酵母についての推奨法(M27−A241)[10]および糸状菌についての推奨法(M−38A42)[27]に従ってブロス微量希釈法によって求めた。簡単に記載すると、ストック溶液からの薬物の2倍連続希釈物を、0.165Mのモルホリンプロパンスルホン酸(MOPS;Sigma)および1MのNaOHにより7.0の最終pHに緩衝化され、ろ過により滅菌されたRPMI−1640ブロス培地(Sigma、St.Louis、MO.)において調製し、1mlあたり10個の細胞を接種した。10mg/mlのストック溶液を、様々なアミン・シアノボラン化合物について、また、コントロールとして使用された2つの従来の抗真菌剤(CAF)のアンホテリシンB(これは本明細書中ではCAF1として示される)およびフルコナゾール(これは本明細書中ではCAF2として示される)についてジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma)において調製した。試験における最終的な薬物濃度は0.1mlの最終体積において1024mg/L〜4mg/Lの範囲であった。
【0286】
最小殺真菌剤濃度(MFC)を、35℃での72時間のインキュベーションの後におけるそれぞれの透明なウエルの20μlを薬物非含有SDA平板に置床した後で陰性の培養物をもたらす薬物の最も低い濃度として確立した。
【0287】
具体的には、真菌の接種物を、SDA平板(Difco、Detroit、MI)での24時間(Candida sp.について)または72時間(A.fumigatusについて)の培養物から調製した。接種物を、単一コロニーの酵母を無菌の生理的食塩水のチューブに集めることによって集めた。カビ培養物を、0.05%(v/v)Tween−20(Difco)の懸濁物を含有する無菌の生理的食塩水により平板において懸濁し、ピペットで無菌のチューブに入れ、破片を沈降させるために30分間静置した。その後、上清を新しいチューブに移した。酵母およびカビの両方をRPMI−1640ブロス培地に希釈して、最初の懸濁物を血球計算器により計数することによって測定されたとき、Candidaについては1mlあたり2X10個の酵母、および、Aspergillusについては1mlあたり2X10個の胞子の最終的な接種物濃度を作製した。連続希釈された薬物の0.1mlを含有する微量希釈物ウエルに、得られた懸濁物の0.1mlを接種した。薬物懸濁物による希釈の後での最終的な接種物濃度は10細胞/ml〜10細胞/mlであった。薬物非含有培地および接種物を含有する2つのウエルをコントロールとして使用した。接種された平板を35℃で24時間(Candidaについて)または72時間(A.fumigatusについて)インキュベーションした。その後、それぞれのウエルにおける成長を目視により推定した。MICを目視により求め、成長が完全に認められなかった最も低い薬物濃度(MIC−0)として定義した。
【0288】
アミン−ボラン化合物の抗真菌活性の結果が下記の表2に示される。表2には、様々な真菌に対する様々な化合物のMIC値がμmol/リットルまたはmg/リットルで示される。
【0289】
表2のA欄は、Candida albicans CBS562に対する抗真菌活性を示す。
表2のB欄は、Candida albicans607に対する抗真菌活性を示す。
表2のC欄は、Candida albicans615に対する抗真菌活性を示す。
表2のD欄は、Candida glabrata4210に対する抗真菌活性を示す。
表2のE欄は、Candida glabrata4475(アゾール系薬剤に対して抵抗性である)に対する抗真菌活性を示す。
表2のF欄は、Candida glabrata4681に対する抗真菌活性を示す。
表2のG欄は、Candida glabrata4787に対する抗真菌活性を示す。
表2のH欄は、Saprolegnia parasitica T1に対する抗真菌活性を示す。
表2のI欄は、Aspergillus fumigatus64026に対する抗真菌活性を示す。
【0290】
表2において認められ得るように、多様な構造を有するアミン・シアノボラン類はかなりの抗真菌活性を示した。特に著しい活性が、例えば、化合物K−I、化合物K−Iおよび化合物K−Nなどのアミン・シアノボラン化合物に関して明らかにされた(下記の表2における項目9、項目11および項目20をそれぞれ参照のこと)。
【0291】
構造活性相関(SAR)研究:
多くの関係が、本発明によるアミン・シアノボラン類およびアミン・カルボキシボラン類およびそれらの誘導体の構造の、それらの抗真菌活性に対する影響に関して認められた。
【0292】
アルキルジメチルアミン・シアノボラン類におけるN−アルキル鎖の長さの影響(上記の式IIIにおけるR〜R10を参照のこと):
化合物K−F、化合物K−C、化合物K−G、化合物K−H、化合物K−P、化合物K−L、化合物K−Qおよび化合物K−R(表2における対応する項目6、項目5、項目7、項目8、項目22、項目18、項目23および項目24を参照のこと)はRNMe−BHC≡Nの一般構造を有し、R=(CH基におけるN−アルキル鎖の長さ(n)が異なる。
【0293】
表2において認められ得るように、より長いN−アルキル鎖を有する化合物は、より大きい抗真菌活性を示した。最適化された鎖長は化合物K−Rについてであった(N−アルキル基においてC15)。鎖長は、C17をN−アルキル基に有する化合物K−Sでのように、より長い鎖長を使用する試みは溶解性の問題をもたらしたので、この長さに制限された。
【0294】
ジアミン・シアノボラン類についてジアミン・ビス−シアノボラン化合物におけるN−アルキル−N鎖の長さの影響(上記の式IIにおけるAを参照のこと):
化合物K−J、化合物K−Mおよび化合物K−N(表2における対応する項目13、項目19および項目20を参照のこと)はN≡CBHMeN−(CH−NMe−BHC≡Nの一般構造を有し、N−アルキル−N鎖の長さ(n)が異なる。
【0295】
表2において認められ得るように、より長いN−アルキル−N鎖を有する化合物は、不溶性の限界に到達するまで、より大きい抗真菌活性を示した。より長い鎖長を有する化合物(C16以上、データは示されず)を形成する試みは溶解性の問題をもたらしたので、最適化された鎖長が化合物K−Nにおいて示される(N−アルキル基においてC14)。
【0296】
ハロゲン化の影響(上記の式I、式IIおよび式IIIにおけるX〜Xを参照のこと):
表2において認められ得るように、本発明の化合物の臭素化は一般に抗真菌活性を高める。ジブロモ誘導体の化合物K−Eを与えるための化合物K−Fの臭素化は、C.albicans CBS562に対する活性を5100μmol/リットルから1970μmol/リットルに高めた。同様に、モノブロモ誘導体の化合物K−Jおよびジブロモ誘導体の化合物K−Jへの化合物K−Jの臭素化は、C.albicans CBS562に対する活性を、化合物K−Jについての408μmol/リットルから、化合物K−Jおよび化合物K−Jについて140μmol/リットルおよび104μmol/リットルにそれぞれ高め、これに対して、化合物K−I、化合物K−Iおよび化合物K−Iを与えるための化合物K−Iの臭素化またはフッ素化はそのような影響を有していなかった。
【0297】
アルキルジメチルアミン・シアノボラン類における不飽和なアルキル鎖の影響(上記の式IIIにおけるR〜R10を参照のこと):
表2においてさらに認められ得るように、アルキル基における不飽和なC=C二重結合の存在は、化合物K−Gおよび化合物K−Dにおいて見られるように活性を劇的に高めた。この場合、C.albicans CBS562に対するMIC値が、C=C二重結合がアルキル基の末端に存在するとき、3570μmol/Lから470μmol/Lに低下した。化合物K−Hおよび化合物K−Vについては、増大したN−アルキル鎖長による活性に対する影響は、メチレン(CH)ユニットの違いを考慮に入れた場合、一層大きくなっていた。
【0298】
アミン・カルボキシボラン誘導体へのアミン・シアノボラン類の変換の影響:
下記の表2において認められ得るように、C.albicans CBS562に対する抗真菌活性が、化合物K−J(表2における項目13を参照のこと)についての408μmol/Lから、そのカルボキシボラン誘導体の化合物K−J(表2における項目16を参照のこと)についての188μmol/Lに高まった。
【0299】
他の修飾の影響:
表2においてさらに認められ得るように、アミン・シアノボラン化合物の他の構造的修飾、例えば、化合物K−O、化合物K−U、化合物K−T、化合物K−Aおよび化合物K−Rでのような一般式IIIでのR〜R10の1つにおけるヒドロキシル基の付加、化合物K−BでのR〜R10の1つにおける芳香族基の付加、化合物K−Aでのような不飽和な環状基の付加、ならびに、化合物K−Kでのようなシリル基の付加などは、これらの化合物の抗真菌活性における著しい増強をもたらさなかった。
【0300】
表2においてさらに認められ得るように、アミン・シアノボラン化合物およびその誘導体は、Candida glabrata4475(これはアゾール系薬剤に対して抵抗性があることが既知である)に対する活性を有する(下記の表2における項目6を参照のこと)。
【0301】
下記の表2から結論され得るように、現在最も有望な化合物はジメチル−ウンデシル−アミン・シアノボラン(化合物K−I)であり、これはまた、カビ、典型的には、抗真菌剤に対してより抵抗性であるカビに対して試験され、SaprolegniaおよびAspergillusの両方に対する劇的な活性を示した。そのうえ、化合物K−I、化合物K−Iおよび化合物K−IはRhizopus oryzaeに対する活性をほとんど有さず、MICが63μg/mlであった。
【0302】
抵抗性株に対する従来の抗真菌剤の抗真菌活性に対する抗真菌活性の比較:
本明細書中に記載される新規なアミン−ボラン類を、本明細書中上記で記載されたプロトコルを使用して、従来の抗真菌剤に対して抵抗性があることが既知である真菌株に対するそれらの活性について試験した。
【0303】
下記の表3は、μmol/Lまたはμg/mlで与えられ、また、2つの従来からの抗真菌剤のアンホテリシンB(CAF1)およびフルコナゾール(CAF2)に対して比較される、現時点で優れているアミン・シアノボラン化合物の化合物K−Iおよび化合物K−Iについて行われた抗真菌アッセイの結果をまとめたものであり、これらの結果は、様々な真菌株、具体的には、フルコナゾールに対して抵抗性である真菌株、すなわち、Candida globrata566、Candida globrata572、Candida globrata578、Candida globrata646、Candida globrata648、Candida globrata603およびCandida globrata638に対する化合物K−Iおよび化合物K−IのMIC値によって反映される。
【0304】
表3において認められ得るように、化合物K−Iは、すべての試験された真菌に対して非常に活性である。表3においてさらに認められ得るように、かなり大きいフルコナゾールMICをもたらすCandida globrataの単離体、および、フルコナゾールに対して本来的に抵抗性があるとして既知であるC.kruseiの単離体は、リード化合物の化合物K−Iおよびそのジブロモ誘導体の化合物K−Iに対して非常に感受性であり、これらの化合物は、フルコナゾールにより得られたMIC値よりもはるかに低いMIC値を示した。これらの結果は、従来の薬物が抵抗性の発達と関わる場合には特に、これらの化合物が強力な抗真菌剤になり得ることを強く示唆している。

【0305】
(実施例3)
抗リーシュマニア活性
化合物K−I(本発明の実施形態による例示的なアミン−ボラン化合物)をさらに、(リーシュマニア(様々な疾患を動物およびヒトにおいて引き起こす寄生性の有鞭毛原生動物)に対する)抗リーシュマニア活性について調べた。この目的のために、リーシュマニアの様々な株を、20%ウシ胎児血清を含有するSchneiders培地またはRPMI1640培地(Bet−Haemek、イスラエル)のいずれかで、最適な条件のもとで成長させた。いくつかの株を、L.tropica感染者、L.major感染者およびL.infantum感染者から単離した。いくつかの株(L.donovaniを含む)を、Hebrew University of JerusalemにおけるKuvin Centreにある世界保健機関のLeishmania Strain Bankから受け取った。これらの株はCLリーシュマニア症およびVLリーシュマニア症を表す。プロマスティゴートおよび純粋培養のアマスチゴートを発表の通りに成長させた[28]。
【0306】
化合物K−Iのインビトロ抗リーシュマニア効果をプロマスティゴート(リーシュマニア属寄生虫の有鞭毛段階)に対して求めた。3日または4日の成長の後、寄生虫を洗浄し、ウシ胎児血清を含有する新鮮な培地で200μlにおいて15x10個のプロマスティゴートの濃度に再懸濁し、平底ウエルに分配した。プレートを、5%CO、5%Oおよび90%Nの雰囲気で、加湿チャンバーにおいて28℃でインキュベーションした。24時間後、0.5μCiの[H]チミジンをそれぞれのウエルに加え、寄生虫をさらに24時間インキュベーションし、その後、ガラス製マイクロファイバーフィルター上に集めた。放射能を液体シンチレーションカウンターで測定した。それぞれの治療を三連で行った。結果をパーセント成長阻害[(100−薬物含有ウエルのcpm)/非処理ウエルのcpm]x100(cpmは1分あたりのカウント数を表す)として表し、MIC値をμg/mlで表す[Golenser,J.他、1999、Antimicrob.Agents Chemother.、43:2209〜2214]。
【0307】
化合物K−Iのインビトロ抗リーシュマニア効果をアマスチゴート(リーシュマニア属寄生虫の、細胞質内の非鞭毛形態)に対してさらに調べた。腹腔マクロファージを、3%チオグリコラートにより4日間〜5日間にわたって事前に刺激された10週齢〜12週齢の異系交配マウスから得た。マクロファージを、8ウエルのスライドに、ウエルあたり300μlにおいて2.5x10個の細胞に分配し、細胞接着を可能にするために、37℃および5%COで3時間インキュベーションした。上清を捨て、プロマスティゴート(ウエルあたり8x10個〜10x10個)を加えた。一晩のインキュベーションの後、化合物K−Iを含有する新鮮な培地をさらに24時間〜48時間加えた。この期間が終了したとき、ウエルを洗浄し、メタノールにより固定処理し、ギムザ(CAS No:51811−82−6)により染色した。それぞれの治療を二連のウエルで行った;それぞれのウエルにおける100個のマクロファージ、および、マクロファージが含有するアマスチゴートの数を計数し、MIC値をμg/mlで表した。
【0308】
化合物K−Iの抗リーシュマニア効果を上記の記載のように求めた。図1において認められ得るように、生存する寄生虫を示す測定された放射能が、アミン−ボラン化合物の用量が増大するにつれ、急速に低下しており、このことは強い抗リーシュマニア効果を示している。抗リーシュマニア効果アッセイの結果が下記の表4に示される。表4において、アミン−ボラン化合物の濃度が、寄生虫サンプルについて記録された1分あたりのカウント数に対して、μg/mlで示される。

【0309】
(実施例4)
抗マラリア活性
P falciparumの培養物を低酸素雰囲気下で標準的な方法によってヒト赤血球において成長させた。培養培地は、40mMのHEPES、25mg/リットルの硫酸ゲンタマイシン、10mMのD−グルコース、2mMのグルタミンおよび8%の熱不活化血漿が補充されたRPMI1640であった。
【0310】
P falciparumの成長を、Desjardins,R.E.、1979、Antimicrob.Agents Chemother.、16:710〜718に記載される方法に従って、放射能標識された核酸前駆体の[H]ヒポキサンチンの取り込みを測定することによって評価した。
【0311】
化合物K−I(本発明の例示的なアミン−ボラン化合物)の抗マラリア効果を上記の記載のように求めた。化合物K−IをDMSOに溶解し、0.5μg/mlから100μg/ml(最終濃度)に及ぶ濃度の11個のサンプルを96ウエル培養プレートにおいて二連で分配し、層流フードにおいて乾燥した。寄生虫のインビトロ応答を、Desjardins他によって開発された同位体マイクロテストによって求めた。感染している赤血球を、10%ウシ胎児血清を含む完全RPMI1640培地に1.0%〜2.5%のヘマトクリット媒体で懸濁した。懸濁物(200μl)をそれぞれのウエルに分配した。初期の寄生虫血が1%以上であったならば、寄生虫血を、新鮮な非感染の赤血球を加えることによって0.6%に調節した。寄生虫の成長を、H−ヒポキサンチンを加えることによって、37℃での24時間のインキュベーションの後で評価した。細胞をさらに15時間インキュベーションし、その後、ガラス繊維フィルターでのろ過によって集め、放射能を計数した。[G−H]ヒポキサンチンの寄生虫コントロール取り込みおよび寄生虫非処理の赤血球コントロール取り込みについての平均値を1分あたりの崩壊数から計算した。IC50を、Sigmaplotコンピュータープログラムを使用してデータの非線形回帰近似によって求めた。
【0312】
図2において認められ得るように、生存する寄生虫を示す測定された放射能が、アミン−ボラン化合物の用量が増大するにつれ、急速に低下しており、このことは強い抗マラリア効果を示している。抗マラリア効果アッセイの結果が下記の表5に示される。表5において、アミン−ボラン化合物の濃度が、寄生虫サンプルについて記録された1分あたりのカウント数に対して、μg/mlで示される。

【0313】
(実施例5)
毒性研究
インビボでの急性毒性研究:
本明細書中に記載される新規な化合物の急性毒性を、Falk他によって記載される方法[29]に従って求めた。簡単に記載すると、体重が約30グラムであるオスのICRマウスに、本明細書中に示されるような例示的なアミン−ボラン化合物の様々な用量、および、コントロールとしてのFungizone(アンホテリシンBデオキシコラートのミセル配合物、Bristol−Myers−Squibb、Dublin、アイルランド)を尾静脈により注射した。それぞれの投薬形態物(Fungizone、0.1mg/ml;および例示的なアミン−ボラン化合物、生理的食塩において1mg/ml〜2mg/ml)を、死亡が認められるまで、3匹のマウスから成る群に10分毎に同じ用量の単回ボーラス注射(0.12ml)として静脈内投与した。最大耐量(MTD)が与えられたマウスの生存を8日間にわたってモニターした。
【0314】
本発明の化合物の安全性を調べるために、ICRマウスを8日の実験期間内に死亡させないMTDを、Fungizoneをコントロールとして使用して、2つの例示的な化合物について、すなわち、化合物K−Iおよび化合物K−Iについて求めた。両方の化合物についての平均の計算MTD値はそれぞれ、121.9μmol/kgおよび73.1μmol/kgであった。FungizoneについてのMTDは2.6μmol/kgであった。これらの投薬量を受けたマウスの臨床的徴候、体重、および、(8日目での)全体的な検死における変化は何ら認められなかった。これらのMTD値は、化合物K−Iにより得られたインビトロMIC値のMTD値を十分に上回っていた(表2を参照のこと)。また、MTD値と、MIC値との比率は、アンホテリシンBにより得られた比率に匹敵しており、このことは、低下した毒性、および、潜在的な治療的可能性を示している。
【0315】
(実施例6)
放射性合成
本明細書中に記載される化合物の調製時におけるハロゲン原子の導入は、放射能標識されたアミノボラン化合物を提供することを可能にし、従って、それらの生物学的活性を、放射能標識された生物学的に活性な化合物の使用に基づく様々な分析適用、診断適用および治療適用において利用することを可能にする。
【0316】
最も実用的には、本発明の化合物は、放射性ハロゲンにより、例えば、18F(t1/2、1.83時間)、123I(t1/2、13時間)、125I(t1/2、60日)、131I(t1/2、8日)および77Br(t1/2、2.4日)などにより放射能標識することができる。
【0317】
放射性物質の取り扱いは、著しいレベルの放射能に対する職員の被爆を最小限にするように制限または回避されなければならない。この予防措置を行うために、放射性合成は多くの場合、全自動または半自動のプロセスで実施される。この目的のために、本発明者らは、本明細書中下記において詳述されるように、18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物を提供するためにそのような半自動手順を行うためのシステムを設計している。
【0318】
18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物の半自動合成−一般的手順:
18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物の放射性合成が、図3に概略的に例示され、また、本明細書中下記においてさらに詳述されるように、反応条件に合わせるために設計された新規な半自動合成システムを使用して行われる。
【0319】
放射性合成が3工程で行われる。最初の工程において、フッ素化剤のAg18Fが白金皿において調製される。その後、前駆体、すなわち、本発明による臭素化されたアミン−ボラン化合物(例えば、化合物K−E、化合物K−I、化合物K−I、化合物K−I、化合物K−Jおよび化合物K−Jなど)が超音波処理下で加えられる。その後、得られた[18F]生成物が別のバイアルに移され、溶媒が除かれ、生成物が生理学的溶液(生理的食塩水)に溶解される。
【0320】
半自動化された放射性合成システム10の構成および流れ図が図3に示される。[18F]標識されたアミン・シアノボラン化合物の半自動化された放射性合成が、ホットセルの内部に挿入される改変されたモジュールを使用して行われる(図3を参照のこと)。すべての反応工程が、マニピュレーターアームを使用して取り扱われる。白金はHFおよび高温の両方に耐えることができるので、白金は反応容器のための優れた元素である。超音波処理は、求核置換がフッ素化反応において生じるために必要である。ベンゼン(反応溶媒)はプラスチック製ストップコックを溶解し得るので、特別なクリップが、ベンゼンがプラスチック製ストップコックと接触することを防止するために、外側からシリコンかぎ針(Deganis Silicon Ltd.)を保持するように加えられる。合成を開始する前に、AgCOが白金反応容器11に載せられ、その後、白金反応容器11は、ゴムセプタム(Sigma−Aldrich)を使用して閉じられる。適切な試薬を含有する溶液が、シリコンゴムセプタムによりシールされるガラスバイアルタイプ1(Bunderglass)の中に負荷される。前駆体バイアル12、中間体バイアル14および白金反応容器11はすべてが、バイアルを加圧するための窒素ガス用の導入ライン、および、前駆体バイアル12の内容物を白金反応容器11に、また、白金反応容器11の内容物を中間体バイアル14に送達するためのシリコンライン(Deganis Silicon Ltd.)取り出し口を備える。
【0321】
7mlの前駆体バイアル12には、シリコンゴム栓(ABX)がはめ込まれる。12mlの中間体バイアル14には、ラテックスゴム栓(West)がはめ込まれる。生成物バイアル16は、生成物を回収するために使用される25mlのガラスバイアル(Mallinckrodt)である。25mlの白金反応容器11は、窒素により生じる高圧に耐えるために、Oリングおよびラテックスセプタムにより気密シールされるように設計される(図4を参照のこと)。
【0322】
18F]ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物[18F]K−I)の半自動合成:
18F]ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物[18F]K−I)(本発明による例示的なアミン−ボラン化合物)の放射性合成を、本明細書中上記で示されたような半自動化された放射性合成システム10(図3を参照のこと)を使用して行った。
【0323】
材料および方法:
ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノブロモボラン(化合物K−I)を本明細書中上記で記載されたように合成した。
【0324】
18OをRotem laboratoriesから購入した。
【0325】
18Fを、IBAシンクロトロンを10/5MeVで使用して製造した。
【0326】
超音波処理を(Astrason(登録商標)50/60Hz、1.2amps)により行った。
【0327】
100mCiのH18Fを1.1mlのH18Oに溶解し、15mgのAgCOを含有する白金反応容器11に加えた。その後、反応混合物を250℃に加熱して、所望の放射性フッ素化試薬Ag18Fを得た(下記のスキーム8を参照のこと)。

【0328】
出発[18F]ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン(化合物[18F]K−I)を、最初に、1.1mlのH18Oに溶解された100mCiのH18Fを白金反応容器11に加えて、AgCOを溶解することによって調製した。その直後、反応混合物を、5分未満、250℃に加熱して、所望のAg18Fを沈殿物として得た。白金反応容器11を超音波処理浴18に移し、3分間冷却した。その後、4mlの乾燥ベンゼンに溶解された0.15mgのジメチル−ウンデシル−アミン・シアノブロモボラン(化合物K−I)を白金反応容器11に加え、超音波処理浴18を50分間作動させた。この50分間は、反応液をTLC(シリカゲルF254)においてサンプリングすることによって明らかにされるように、化学的変換を完了させるために、最適化された時間であることが見出された。その後、生成物を移し、0.22μmのTeflonメンブランを含有するステンレススチールフィルター20でろ過した。窒素圧力を1.1Barで設定し、中間体バイアル14内への0.4リットル/分の流速によって制御した。その後、中間体バイアル14をヒーター22に移し、ベンゼンを、窒素とともに排気しながら、110℃で15分間蒸発させた。その後、バイアルを1回サンプリングし、GCに注入して、ベンゼンが存在しないことを確認した。その後、中間体バイアル14を外部空気により3分間冷却した。その後、生成物を、5mlの生理的食塩水を含有するシリンジ24を挿入し、生理的食塩水を、バイアルの底に到達させたニードルを使用して中間体バイアル14に注入することによって生理的食塩水(0.9%NaCl/水)に溶解し、バイアルの全内容物をシリンジ24に引き戻した。四方ストックコック26を回して、最終生成物を、0.22μmのフィルターを介して生成物バイアル16に移した。AgFは固体であり、0.22μmのフィルターを通過しない。
【0329】
最終的な[18F]標識されたジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボランを、放射化学的純度の評価、γ−検出器およびpH測定を含むいくつかの品質管理測定に供した。シリカTLC試験を、放射化学的純度を評価するために行った。100%メタノールによるシリカプレートでの生成物のTLCは、Rが0.23である単一の放射能ピークを明らかにし、これは、非放射性ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボランのRと同一であった。18Fが、ヨウ化ナトリウム検出器を伴うWallac Wizard γ−カウンターにより検出され、511KeVを示した。生理的食塩水における放射性[18F]標識された生成物の溶液の試験されたpHは6.3であった。
【0330】
化学的純度を、放射分析TLCを使用して評価した。化学的純度は100%であった。18Fのt1/218Fの規格値に従って試験した。TLCを、MerckシリカゲルF254プレートを100%メタノールの移動相とともに利用して行い、放射分析検出により分析した。放射能標識された生成物のRを非放射性形態の観測されたRと比較した。pHを、3.8〜5.5および6.0〜8.1の範囲でのpH試験紙を使用して求めた。Fが、ヨウ化ナトリウム検出器を伴うWallac Wizard γ−カウンターにより検出された。
【0331】
22%の放射化学的収率が合成終了時に生成物バイアル16において得られ、比放射能は455mCi/mgであった。その後、最終生成物の生理的食塩水溶液(4.5mCi/ml)を、照射を防止するために遮蔽した。
【0332】
最終生成物を10時間後にTLC(シリカゲル60F254)で調べ、最終生成物は安定であることが見出された。
【0333】
(実施例7)
PET画像化
化合物[18F]K−Iを使用する陽電子放射断層撮影法(PET)画像化:
本発明の実施形態による例示的な[18F]標識されたアミン・フルオロシアノボラン化合物の化合物[18F]K−Iを正常なラットに注入し、PET/CT Philipsカメラによってモニターした。画像から、生体分布が検出され、ラットの骨における取り込みが示された。
【0334】
4匹の正常なメスSprague−Dawleyラット(それぞれが250グラム〜300グラム)に、生理的食塩水における50μCiの化合物[18F]K−I溶液(4.5mCi/ml)を尾静脈により注入した。注入後15分で、ラットを45mgのケタミンおよび24mgのアセプロマジンにより麻酔し、30分後、それぞれのラットを15分間にわたって画像化した。
【0335】
図5は、得られたPET画像を示し、試験されたラットの骨内への放射能標識されたアミン−ボラン化合物の取り込みを明瞭に示し、このことは、本発明のアミン−ボラン化合物の[18F]標識化が診断ツールとして実際に使用され得ること、および、本発明のアミン−ボラン化合物の[18F]標識化により、身体におけるそれらの作用モードがさらに解明され得ることを明らかにしている。




【0336】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0337】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願はすべて、個々の刊行物、特許および特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【0338】



【図面の簡単な説明】
【0339】
【図1】ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)株に対する用量応答アッセイによって求められたときの化合物K−Iの抗リーシュマニア効果を示すプロットを示す。
【図2】熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)株に対する用量応答アッセイによって求められたときの化合物K−Iの抗マラリア効果を示すプロットを示す。
【図3】18F−標識されたアミン−ボラン化合物を本発明に従って安全かつ効率的に調製するために設計された半自動の放射能標識化合成システムの概略図を示す。
【図4】本発明の実施形態による18F−標識されたアミン−ボラン化合物の半自動の放射能標識化合成のために設計され、かつ、そのような合成において利用される25mlの白金皿の概略的な例示を示す。
【図5】本発明の実施形態による例示的な18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物の化合物[18F]K−I(4.5mCi/ml)が注射された正常なメスSprague−Dawleyラット(それぞれが250グラム〜300グラム)について得られた一連のPET画像で、18F−放射能標識されたアミン−ボラン化合物が、試験されたラットの骨に取り込まれることを明瞭に示すPET画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式I、式IIおよび式IIIから成る群から選択される一般式を有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素であり;
〜Yはそれぞれが独立して、シアノ基(−C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
〜Xはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され、ただし、式IにおけるXおよびXの少なくとも1つはフッ素であり;および
〜R10はそれぞれが独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つ、RおよびR、RおよびR、ならびに/または、R〜R10は炭素環式の環を形成し、ただし、
式IIIにおけるR〜R10の少なくとも1つは、少なくとも11個の炭素原子を有する飽和したアルキルであり;
式IIIにおけるR〜R10の少なくとも1つは、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルであり;かつ/あるいは、
式IIIにおけるR〜R10の少なくとも1つは少なくとも1個のフッ素を含む)。
【請求項2】
化合物がフッ素を含むとき、前記フッ素は、非放射性フッ素および放射性フッ素から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式Iを有する、請求項1および2のいずれかに記載の化合物。
【請求項4】
がシアノ基−(C≡N)および−C(=O)Ra基から成る群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
がフッ素であり、Xが、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
がフッ素であり、Xが臭素である、請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
〜Rのそれぞれがアルキルである、請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
〜Rの少なくとも1つがC〜C20アルキルである、請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
前記アルキルは、飽和したアルキルおよび不飽和のアルキルから成る群から選択される、請求項7および8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・シアノフルオロボラン、エチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、ブチル−ジメチル−アミン・シアノフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・エチルエステル、エチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、ブチル−ジメチル−アミン・カルボキシフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・シアノジフルオロボラン、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・メチルエステル、トリメチル−アミン・カルボキシジフルオロボラン・エチルエステル、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン、トリメチル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、トリメチル−アミン・カルボキシフルオロブロモボラン・エチルエステルおよびトリエチル−アミン・カルボキシジフルオロボランから成る群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項11】
一般式IIを有する、請求項1および2のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
、X、XおよびXのそれぞれが独立して、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
、X、XおよびXの少なくとも1つが臭素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
Aが、飽和した非置換の炭化水素である、請求項11〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
前記炭化水素は8個〜14個の炭素原子を有する、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−シアノジブロモボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−デカン−1,10−ジアミン・ビス−カルボキシボラン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ドデカン−1,12−ジアミン・ビス−シアノボランおよびN,N,N’,N’−テトラメチル−テトラデカン−1,14−ジアミン・ビス−シアノボランから成る群から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項17】
一般式IIIを有する、請求項1および2のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
〜R10の少なくとも1つが、11個〜15個の炭素原子を有する飽和したアルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
〜R10の少なくとも1つが、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
〜R10の少なくとも1つがヒドロキシを含み、ただし、前記ヒドロキシはアミン窒素に対してβ位に存在する、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
〜R10の少なくとも1つがフッ素を含み、ただし、前記フッ素はアミン窒素に対してβ位に存在する、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
およびXのそれぞれが独立して、水素、フッ素、臭素およびヨウ素から成る群から選択される、請求項17〜21のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
およびXの少なくとも1つが臭素である、請求項17〜21のいずれかに記載の化合物。
【請求項24】
ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノジブロモボラン、ドデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−オクタン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ノニル−アミン・シアノボラン、ジメチル−トリデシル−アミン・シアノボラン、ジメチル−ペンタデシル−アミン・シアノボラン、ヘプタデシル−ジメチル−アミン・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ドデカン−2−オール・シアノボラン、1−ジメチルアミノ−ウンデカン−2−オール・シアノボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロブロモボラン、ジメチル−ウンデシル−アミン・シアノフルオロボラン、ヘキサ−5−エニル−ジメチル−アミン・シアノボランおよび(2−フルオロ−ノニル)−ジメチル−アミン・シアノボランから成る群から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の化合物を有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む、病原性微生物に関連する病状を治療する方法。
【請求項27】
病原性微生物に関連する病状を治療することにおける、請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項28】
医薬品としての、請求項1〜24のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項29】
前記医薬品は、病原性微生物に関連する病状の治療のためのものである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記病状は、細菌感染症、原生動物感染症、真菌感染症、マラリアおよびリーシュマニア症から成る群から選択される、請求項26〜28のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項31】
前記病原性微生物は薬物抵抗性微生物である、請求項26〜30のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項32】
請求項3に記載の化合物を調製するプロセスであって、このプロセスは、
下記の一般式IVを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびX10はそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され、ただし、XおよびX10の少なくとも1つは臭素であり;および
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つが炭素環式の環を形成する)
をフッ素化剤と反応させ、それにより、一般式Iを有する化合物を得ること、
を含むプロセス。
【請求項33】
請求項11に記載の化合物を調製するプロセスであって、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIを有する化合物:

(式中、
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の、飽和または不飽和の炭化水素であり;および
およびWはそれぞれが独立して、官能基である)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、一般式IIを有する化合物を得ること、
を含むプロセス。
【請求項34】
〜R10の少なくとも1つが、11個〜17個の炭素原子を有する飽和したアルキルであるか、または、5個〜20個の炭素原子を有する不飽和のアルキルである、請求項17に記載の化合物を調製するプロセスであって、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIIを有する化合物:

(式中、
14は、少なくとも10個の炭素原子を有する飽和したアルキル、または、少なくとも4個の炭素原子を有する不飽和のアルキルから成る群から選択され;および
は官能基である)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、一般式IIIを有する化合物を得ること、
を含むプロセス。
【請求項35】
〜R10の少なくとも1つがフッ素を含む、請求項17に記載の化合物を調製するプロセスであって、このプロセスは、
下記の一般式Vを有する化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
は、シアノ基−(C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
およびXはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
11〜R13はそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R11〜R13のうちの2つが炭素環式の環を形成し、ただし、式VにおけるR11〜R13の少なくとも1つはメチルである)
を、下記の一般式VIIIを有する化合物:

(式中、
はカルボキシ(C=O)基であり;
15は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;および
16は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択される)
と、n−アルキルリチウムの存在下で反応させ、それにより、R〜R10の少なくとも1つがヒドロキシまたはアルコキシを含む前記一般式IIIを有する化合物を得ること;および
前記ヒドロキシまたは前記アルコキシを前記フッ素に変換すること、
を含むプロセス。
【請求項36】
下記の一般式Xまたは一般式XIを有する放射能標識された化合物:

またはその医薬的に許容され得る塩
(式中、
〜Yはそれぞれが独立して、シアノ基(−C≡N)、−C(=O)Ra基、アミンおよびアルキルから成る群から選択され、ただし、Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、チオアリールオキシ、チオールおよびアミンであり;
〜Xはそれぞれが独立して、水素、アルキル、ハロゲン、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択され;
〜Rはそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールから成る群から選択されるか、あるいは、R〜Rのうちの2つ、RおよびR、ならびに/または、RおよびRは炭素環式の環を形成する;および
Aは、5個〜20個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素であり;
ただし、X〜X、R〜RおよびAの少なくとも1つは放射性原子を含み、かつ/または、少なくとも1つのホウ素原子は放射性のホウ素原子である)。
【請求項37】
前記放射性原子は、放射性フッ素、放射性炭素、放射性臭素および放射性ヨウ素から成る群から選択される、請求項36に記載の放射能標識された化合物。
【請求項38】
前記放射性原子はアミン窒素に対してβ位に存在する、請求項37に記載の放射能標識された化合物。
【請求項39】
一般式Xを有する、請求項36に記載の放射能標識された化合物。
【請求項40】
およびXの少なくとも1つが前記放射性原子である、請求項36に記載の放射能標識された化合物。
【請求項41】
〜Rの少なくとも1つが、放射性原子によって置換されたアルキルである、請求項39に記載の放射能標識された化合物。
【請求項42】
前記放射性原子はアミン窒素に対してβ位に存在する、請求項41に記載の放射能標識された化合物。
【請求項43】
請求項36〜42のいずれかに記載の放射能標識された化合物を有効成分として含み、かつ、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物。
【請求項44】
放射性画像化および/または放射線治療における、請求項36〜42のいずれかに記載の放射能標識された化合物または請求項43に記載の組成物の使用。
【請求項45】
前記放射性画像化は、陽電子放射断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CT)、PET/CTおよび単光子放射断層撮影法(SPECT)を含む、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
診断剤の調製における、請求項36〜42のいずれかに記載の放射能標識された化合物の使用。
【請求項47】
請求項36〜42のいずれかに記載の放射能標識された化合物、または、請求項43に記載の組成物を患者に投与すること、および、前記放射能標識された化合物の体内またはその一部分における分布をモニターするための放射性画像化技術を用いることを含む放射性画像化方法。
【請求項48】
前記放射性画像化技術は、陽電子放射断層撮影法(PET)、コンピューター断層撮影法(CT)、PET/CTおよび単光子放射断層撮影法(SPECT)から成る群から選択される、請求項47に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−509940(P2009−509940A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530751(P2008−530751)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001074
【国際公開番号】WO2007/032005
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502275425)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (10)
【出願人】(508078503)
【Fターム(参考)】