説明

新規なアルキル化処置剤としての水溶性SHP

この発明は構造式(I)の化合物に関するものであり、ここでRは−CH3または−CH2CH2Clであり、R’はC1−C7アルキルまたは−CH2CH2Clであり、R2またはR4はOPO32、NO2、OCO(Glu−OH)、NHCO(Glu−OH)であり、NMR7と割り当てられない群R2、R3、R4、R5およびR6は独立に、割り当てられない群R2、R3、R4、R5またはR6がH以外でありかつ他の2つがHであるときに、H、F、Cl、Br、I、OH、OPO32、OCH3、CF3、OCF3、NO2、CN、SO2CH3、SO2CF3、COCH3、COOCH3、SCH3、SF5、NH2、NHR7、N(CH32、OPO32またはC1−C7アルキル基であり、R7はHまたは記載されたようなポリグルタミルである。リン酸およびグルタミル酸は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は哺乳類中で抗腫瘍活動を呈する代謝的に活性化されたスルホニル・ヒドラジンプロドラッグ(SHP)に関するものである。この発明の化合物を用いた特に癌を含む腫瘍の処置方法にもこの発明は関するものである。
【0002】
この発明はDepartment of HealthおよびHuman Servicesにより認可された許諾番号第1R43CA92968−01号による政府の支持により完成されたものであり、しかして政府はこの発明についてある権利を保有するものである。
【背景技術】
【0003】
アルキル化処置剤は悪性腫瘍の処置に現在利用できる最も有効な治療剤に属し、医療において広く使われている(Katzung、In Basic & Clinical Pharmacology、7th edition、1998、Appleton & Lange、Stamford、881)。高度の細胞毒性はDNAストランド間架橋を導入して複製を抑制する能力によるものである(RajskiとWilliams、Chem Reviews 1998、98:2723)。
【非特許文献1】Katzung、In Basic & Clinical Pharmacology、7th edition、1998、Appleton & Lange、Stamford、881
【非特許文献2】RajskiとWilliams、Chem Reviews 1998、98:2723
【0004】
アルキル化処置剤の間にあってCNU(クロロエチル・ニトロソウレア)シリーズは医療において広く使われ、脳腫瘍、結腸癌およびリンパ腫などの処置を行っている(DeVita他、Cancer Res.1965、25:1876;およびNissen他、Cancer 1979、43:31)、しかし遅延累積骨髄圧縮および肝臓毒性の故にそれらの医療上の有用性は制約されている(Panasci他、Cancer Res.1977、37:2615;およびGibsonとHickman、Biochem Pharmacol.1982、31:2795)。
【非特許文献3】DeVita他、Cancer Res.1965、25:1876
【非特許文献4】Nissen他、Cancer 1979、43:31
【非特許文献5】Panasci他、Cancer Res.1977、37:2615
【非特許文献6】GibsonとHickman、Biochem Pharmacol.1982、31:2795
【0005】
CNUにより発生されたクロロエチル化およびカルバモイル化種を発生する能力を有するがヒドロキシエチル化およびビニル化種を発生する能力を欠いた一連の1,2−ビス(スルホニル)ヒドラジンプロドラッグ(SHP)が最近開発されている(Sartorelli他、アメリカ特許第6,040,338号、5,637,619号、5,256,820号、5,214,068号、5,101,072号、4,849,563号、4,684,747号参照)
【特許文献1】アメリカ特許第6,040,338号
【特許文献2】アメリカ特許第5,637,619号
【特許文献3】アメリカ特許第5,256,820号
【特許文献4】アメリカ特許第5,214,068号
【特許文献5】アメリカ特許第5,101,072号
【特許文献6】アメリカ特許第4,849,563号
【特許文献7】アメリカ特許第4,684,747号
【0006】
DNAのクロロエチル化とそれに続く架橋から抗癌活動が結果されることが提案されている(Kohn、In Recent Results in Cancer Research,Eds.Carter他、1981,Springer,Berlin、vol.76:141;Shealy他、J.Med.Chem.1984、27:664)。カルバモイル化種(つまりイソシアネート)は蛋白質上のチオールおよびアミン官能基と反応して、DNAポリメラーゼ(Baril他、Cancer Res.1975:35:1)、DNAストランド破壊の修復(Kann他、Cancer Res.1974、34:398)、RNA合成および処理(Kann他、Cancer Res.1974、34:1982)を抑制する。しかしDNAのヒドロキシエチル化は発癌および/または突然変異誘発事象である(Swenson他、J.Natl.Cancer Inst.1979、63:1469)。
【非特許文献7】Kohn、In Recent Results in Cancer Research,Eds.Carter他、1981,Springer,Berlin、vol.76:141
【非特許文献8】Shealy他、J.Med.Chem.1984、27:664
【非特許文献9】Baril他、Cancer Res.1975:35:1
【非特許文献10】Kann他、Cancer Res.1974、34:398
【非特許文献11】Kann他、Cancer Res.1974、34:1982
【非特許文献12】Swenson他、J.Natl.Cancer Inst.1979、63:1469
【0007】
現在のSHPシリーズの先端化合物である1,2−ビス(メチルスルホニル)−1−(2−クロロエチル)−2−(メチルアミノ・カルボニル)ヒドラジン(VNP40101M)はホストに対する毒性が低く、クロロエチル・ニトロソウレア(CNU)誘導体や他のSHP類似体よりも、L1210ネズミ(murine)白血病、L1210/BCNU、L1210/CTX、L1210/MEL(1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、シクロホスファミドおよび抗メルファランサブライン)、P388白血病、M109肺癌腫、B16黒色素細胞腫、C26結腸癌腫、およびU251神経膠腫に対するより良い抗癌活動を有している(Shyam他.J.Med.Chem.1999,42:941)。
【非特許文献13】Shyam他.J.Med.Chem.1999,42:941
【0008】
加えて、VNP40101Mは血液脳バリアー(BBB)を架橋したり頭蓋内に移植された白血病細胞を根絶する(>6.54log細胞殺戮)のに有効であり、BCNUの効果に匹敵するものである(Finch他、Cancer Biochem Biophys、2001、61:3033)。
【非特許文献14】Finch他、Cancer Biochem Biophys、2001、61:3033
【化2】

【0009】
VNP40101Mの抗癌活動は90CEとメチルイソシアネートの解放によるものであろう。90CEはさらに崩壊してメチル2−クロロエチル・ジアゾスルホン(1)図1、比較的特殊なO6−グアニン・クロロエチレーターを生じ、グアニンのN7−位置の最低限のアルキル化を来す(Penketh他、J.Med.Chem.1994、37:2912;Penketh他、Biochem Pharmacol.2000、59:283)。VNP40101Mから解放されたメチルイソシアネートは種々のDNA修復酵素を抑制する能力を有しており、該酵素としてはO6−アルキルグアニン−DNAアルキル転移酵素が含まれ、DNA中のO6−アルキルグアニン・モノアルキル種の安定化を来たし、かなりの割合のストランド間架橋を結果する(Baril他、Cancer Res.1975、35:1)。
【非特許文献15】Penketh他、J.Med.Chem.1994、37:2912
【非特許文献16】Penketh他、Biochem Pharmacol.2000、59:283
【非特許文献17】Baril他、Cancer Res.1975、35:1
【0010】
VNP40101Mは現在固形腫瘍(solid tumors)と血液性悪性腫瘍を有した患者における医療的な試行段階にある。VNP40101Mは水性溶液に対する溶解性が非常に大きくはない。ポリエチレングリコール(PEG)とエタノールは溶解性を促進する完成製品のビヒクルに含まれる。PEGとエタノールとはともに人間への使用に受容できるビヒクルではあるが、動物研究で示されるように高濃度において溶血および静脈炎などの副作用がある。
【0011】
PEGとエタノールがビヒクルから除ける場合には、VNP40101Mは人間においては大きく許容され投与量が高くてもよく、理論的には高度の効果を呈するものである。したがって、我々の目的は(a)水溶性とpH3〜9の水性溶液中での安定性を改善することのでき(b)クロロエチル化種を形成することが可能であり、(c)ヒドロキシエチル化活動がなく、(d)メチルイソシアネートを形成することができ、(e)薬物動態性(例えば生体中での長い半減期)の改善された一連のSHPを合成することにある。
【0012】
この発明においては、水溶性酵素的活性SHP(I)は上記の条件を満たすものと考えている。そのようなSHPの一例は以下の理由から図2に示す誘導体を含んだリン酸塩である。
【0013】
(a)一般に、リン酸塩系類似体はその塩形態を含んでいて、中性pHにおいて良好な水溶性および安定性を呈する。(b)構造式Iの化合物の生物学的転換は酸素−亜リン酸結合のアルカリ性ホスファターゼ(AP)分解により進行してフェノール中間体を形成し、これが次いで断片化によりクロロエチル化またはメチル化種とカルバモイル化処置剤を形成するが、ヒドロキシエチル化処置剤は形成しない(図1、2)。
【0014】
(c)化合物Iの生物学的転換はキノンメチドを発生し、これがDNAを損傷ししたがって細胞複製を抑制するのに貢献する(Lin他、J.Med.Chem.1986、29:84)。(d)化合物IはVNP40101Mのプロドラッグと考えられ、これは広範囲な例えば種々の固形腫瘍を含む腫瘍性疾病状態の抗癌スペクトルに対するアルキル化処置剤として認識されている。かくして化合物IはVNP40101Mと同じ活性種である。
【非特許文献18】Lin他、J.Med.Chem.1986、29:84
【0015】
生物学的活性化されたプロドラッグのさらなる例を図3、4に示す。図3に示すニトロ類似体は水溶性でありかつ低酸素の条件下で選択的に活性化される化合物の例である。VNP40101Mの解放は低酸素条件下でのニトロ基の還元の場合にのみ起きる。化合物IIはニトロレダクターゼ(NR)により対応するアミノ類似体に還元され、これが続いてVNP40101Mとキノン−イミンメチドに断片化される。E.ColiまたはBacillus spp.から遊離された酵素であるNRはADEPT(抗体指向酵素プロドラッグ治療)またはGDEPT(遺伝子指向酵素プロドラッグ治療)において癌治療に広く使われている(Anlezark他、WO93/08288、1993)。
【特許文献8】WO93/08288
【0016】
図4に示すのはペプチターゼを使ってVNP40101Mを腫瘍内に発生するものであって、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2)やカルボキシペプチターゼA(CPA)などのカルボキシペプチターゼによるグルタミル残基の共役から引き出された化合物の適宜な置換フェノールおよび芳香族アミンへの分解を先に示した。Pseudomonasから遊離された酵素であるCPG2は葉酸およびメトトレキサートからグルタメート残基を除くことができる。グルタメート残基を含んだプロドラッグを活性化することはADEPTまたはGDEPTにおいて採用されてきた(Bagshawe他、WO88/07378、1988;Springer他、アメリカ特許第6,025,340号、2000;Springer他、アメリカ特許第6,004,550号、1999)。
【特許文献9】WO88/07378
【特許文献10】アメリカ特許第6,025,340号
【特許文献11】アメリカ特許第6,004,550号
【0017】
ウシ科膵臓からのCPAは容易に薬剤α−ペプチド(アミノ酸がグルタメート部のα−カルボキシル基に結合している誘導体)を分割する。またこれがADEPTにおいて採用されている(Wolfe他、Bioconjug Chem.1999、10:38;Huennekens、Adv Enzyme Regul.1997、37:77;Vitols他、Cancer Res.1995、55:478)。図4に示すように化合物III、IVは対応するCPG2またはCPAにより分割され、これが抗体共役またはトランス遺伝子として導入されてVNP40101Mおよびキノンメチドまたはキノン−イミンメチドを形成する(Pawelek他、アメリカ特許第6,190,657号、2001)。
【非特許文献19】Wolfe他、Bioconjug Chem.1999、10:38
【非特許文献20】Huennekens、Adv Enzyme Regul.1997、37:77
【非特許文献21】Vitols他、Cancer Res.1995、55:478
【特許文献12】アメリカ特許第6,190,657号
【発明の開示】
【発明の目的】
【0018】
この発明の目的は、動物と人間の癌を含む腫瘍の処置のための化合物、薬学的組成物および方法を提供することにある。
【0019】
この発明の他の目的は、好ましくかつ高められた活性特性と薬物動態学と生物学的利用性と低い毒性を呈する組成物を利用して腫瘍を処置する方法を提供することにある。
【0020】
この発明のさらに他の目的は、化学療法処置剤での治療に抵抗性を有する癌の処置のための組成物と方法を提供することにある。
【0021】
以下これらの目的を達成するこの発明について記載する。
【発明の要旨】
【0022】
この発明は構造式(I)の化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関するものである。
【化3】

【0023】
ここでRは−CH3または−CH2CH2Clであり、
R’はC1−C7アルキルまたは−CH2CH2Clであり、
2またはR4のいずれか一方、両方ではない、がOPO32、NO2、OCO(Glu)、NHCO(Glu)およびNHR7から選ばれ他方は割り当てられず、
2〜R6の少なくとも2つがHであるという条件で、R3、R5、R6は独立にH、F、Cl、Br、I、OH、OPO32、OCH3、CF3、OCF3、NO2、CN、SO2CH3、SO2CF3、COCH3、COOCH3、SCH3、SF5、NHR8、N(R92、OPO32、C1−C7アルキルから選ばれ、
7はH、グルタミル、好ましくはα−グルタミル(−COCH(NH2)CH2CH2CO2H)またはポリグルタミン酸ポリペプチド残基、(−COCH(NHR7a)CH2CH2CO2Hであり、
7aはグルタミル(好ましくはα−グルタミル)または1〜50ペプチド連鎖、好ましくは2〜10ペプチド連鎖を有したポリグルタミン酸ポリペプチド残基)であり、
8はHまたはC1−C7アルキルであり、
9はCH3またはCH2CH3である。
リン酸および/またはグルタミン酸置換基は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0024】
さらにこの発明の好ましき技術思想においては、化合物Iに属する好ましき処置剤は一連のオルト−リン酸塩−帯同であり、そこでは
Rは−CH2CH2Clであり、R’は−CH3であり、R2は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩(好ましくはNa)であるリン酸塩基である。特に好ましきオルト−リン酸塩−帯同SHPにあっては、R3、R5、R6がHのときにR4はCl、FまたはBr(好ましくはCl)である。
【0025】
他の好ましきオルト−リン酸塩−帯同SHPにあっては、R3、R4、R6がHのときに、R5はCl、FまたはBr(好ましくはCl、F)である。他の好ましきオルト−リン酸塩−帯同SHPにあってはR3〜R6の2つはF、Cl、BrまたはI(好ましくは両置換基は同じであり、より好ましくは両置換基はClである)から選ばれ、他はHである。
【0026】
化合物IIに属する好ましき処置剤はSHPのメタ−リン酸塩−帯同ニトロ含有類似体である。リン酸塩基は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩(好ましくはNa)である。ニトロ含有SHPの特に好ましき態様にあっては、R4がHのときにR2はNO2である。他の好ましき態様にあってはR2がHのときにR4はNO2である。
【0027】
化合物IIIおよびIVに属する好ましき処置剤はSHPのグルタミン酸残基共役類似体である。これら両方のSHPの特に好ましき態様にあっては、酸端末(acid−terminal)は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩(好ましくはNa)である。化合物IVの他の好ましき態様にあっては、R7はHまたはポリグルタミン酸ポリペプチド残基である。
【0028】
この発明の化合物、特にこの発明の好ましき組成物は上記したように、腫瘍の処置において極めて効果的である。それらはまた高められた抗腫瘍活性、低減された毒性、高い水溶性、またはVNP40101Mに比べてより好ましき薬物動学的特徴などの1つ以上の改善を齎すものである。かくしてこの発明の好ましき化合物はVNP40101Mより高い治療指数(つまりより良い効果/危険比)を有するのである。
【0029】
この発明の化合物は癌や他の状態および/または疾病状態の処置のための薬学的組成物に使用できる。この発明による例は他の化合物の合成における中間体であり、生物学的活性とこの発明の化合物の生物学的活性測定の標準を呈するものである。あるケースにおいては、この発明の化合物は微生物感染の処置、特にウイルス、バクテリアおよび真菌感染の処置に使われる。これらの化合物は上記したような化合物の1種以上の有効量を含んでおり、選択的に薬学的に受容可能な添加剤、キャリアー、賦形剤と組み合わされる。
【0030】
この発明のさらなる態様は癌の処置に関するものであって、必要ある患者に上記した化合物の有効量を投与するもので、その際選択的には薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせる。またこの発明は哺乳類における腫瘍の処置方法に関するものであって、上記した化合物の有効量を癌に苦しむ患者に投与する。この発明の好ましき実施例にあっては、悪性腫瘍、白血病およびリンパ腫の処置において1以上の処置剤の抗癌有効量を患者に投与する。
【0031】
他の種々の関連疾病の処置もこの発明の化合物を使って行われる。この方法は関連類似体の活性を測定しかつこの発明の1以上の化合物に対する患者の癌の罹患性の測定などの分析などの比較テストにも用いることができる
【発明の詳細な説明】
【0032】
この明細書の記載においては以下の用語を使用する。
【0033】
用語「患者」とは、哺乳類および好ましくは人間を含む動物であって、この発明の組成物を用いた予防的処置を含む処置が提供されるものを言う。人間などの特定の動物に特有な感染、症状、疾病状態の処置に関しては、この用語はそれら特定の動物を意味する。この発明の全んどの態様においては患者は人間であるのが好ましい。
【0034】
用語「有効量」とは、この発明の化合物の濃度または量であって、意図された結果、一般には処置された疾病または症状の好ましき変化を齎すのに使われ、処置された疾病または症状に応じて、該変化とは軽減、癌または腫瘍の成長またはサイズの低減、好ましき生理学的結果、腫瘍、癌組織などの成長または同化の低減を指す。
【0035】
用語「腫瘍」とは腫瘍、つまり正常な組織より速く細胞増殖により成長してかつ新たな成長を開始する刺激が停止した後でも成長を続ける異常な組織、の形成と成長を結果する病理学的なプロセスを言う。腫瘍は良性(良性腫瘍)または悪性(癌腫)である組織の異常な塊であることもある。ここでは用語「腫瘍」は全ての癌性疾病を言い、悪性血行性、腹水および固形腫瘍に伴う病理学的プロセスを包含する。ここでは用語「癌(cancer)」と「腫瘍(tumor)とは「腫瘍(neoplasia)」と相互に言いかえることができる。
【0036】
この発明の組成物により処置できる癌としては例えば、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、脳/CNS癌、頭部および首部癌、咽喉癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多重骨髄癌、黒色素細胞腫瘍、急性リンパ細胞白血病、急性骨髄性白血病、ユーウィング肉腫、小胞肺癌、絨毛癌、平滑筋組織腫瘍、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口腔/咽喉癌、食道癌、喉頭癌、腎臓癌、リンパ腫などがある。
【0037】
患者にこれら1以上の処置剤の抗腫瘍有効量を投与することを含む腫瘍の処置はこの発明の好ましき実施例のひとつである。
【0038】
用語「アルキル」とは完全飽和された炭化水素遊離基であって、1〜7個の炭素単体を含んだものを言う。この発明に使用するアルキル基としては好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、メチルシクロ・プロピルおよびメチルシクロ・ヘキシルなどの線型、分枝鎖または環状基である。
【0039】
用語「塩」とはこの発明の化合物の使用と両立するいかなる塩をも言うものである。化合物が癌の処置を含む薬学的徴候に使用される場合には、用語「塩」とは薬学的に受容可能な塩を言い、薬学的処置剤として化合物の使用と両立するものである。
【0040】
この発明の化学構造式に使用される用語「glu」または「Glu」とはグルタミン酸残基または誘導体を言い、そのアミノ基上において他のカルボキシル基(例えばRCOOH)と結合されるか、またはそのカルボキシル基のひとつの上でヒドロキシル基またはアミノ基と結合される。
【0041】
グルタミン酸(HOOCCH(NH2)CH2CH2COOH)は2個の反応性カルボキシル酸基と反応性アミノ基とを有しており、この発明の化合物中においてグルタミル残基を形成する。化学構造で示されるように、グルタミン酸は2個のカルボキシル基のひとつ上で他のアミノ基(RNH2)またはヒドロキシル基(ROH)と結合して、対応するα−グルタミルまたはγ−グルタミルアミドまたはエステル化合物を形成する。
【0042】
これに代えて、グルタメートはそのアミノ基上でカルボキシル基と結合してN−グルタミルアミド誘導体を形成する。この発明の化合物にあっては、単一のグルタミル残基およびポリグルタミル・ポリペプチド残基が存在し、後者は2以上のグルタメート・アミノ酸から形成されるポリペプチドである。用語「OCO(Glu)」とはグルタミル残基(α−またはγ−)を言うもので、これは遊離ヒドロキシル基と結合してα−またはγ−カルボキシル基(好ましくはグルタミン酸のα−カルボキシル酸基)を有したエステルを形成する。
【0043】
用語「NHCO(Glu)」とはグルタミル残基(α−またはγ−)を言うものであり、遊離アミン基に結合してα−またはγ−カルボキシル基(好ましくはグルタミン酸のα−カルボキシル酸基)を有したアミドを形成する。用語「グルタミル」とはグルタメートアミノ酸を言い、エステルまたはアミドとして誘導されたものである。用語「α−グルタミル」とはグルタミン酸(エステルまたはアミド)のα−カルボキシル基に形成されたグルタメート誘導体を言う。用語「γ−グルタミル」とはグルタミン酸(エステルまたはアミド)のγ−カルボキシル基に形成されたグルタメート誘導体を言う。用語「N−グルタミル」とはグルタミン酸(アミド)のアミノ基に形成されたグルタメート誘導体を言う。用語「ポリグルタミン酸・ポリペプチド残基」とは1以上のグルタミン酸および好ましくは排他的にグルタミン酸を含んだポリペプチド残基を言う。
【0044】
この発明は構造式(I)の化合物に関するものである。
【化4】

【0045】
ここでRは−CH3または−CH2CH2Clであり、
R’はC1−C7アルキルまたは−CH2CH2Clであり、
2またはR4の一方、両方ではない、はOPO32、NO2、OCO(Glu)、NHCO(Glu)およびNHR7から選ばれ、
その他方は割り当てられず、
2〜R6の少なくとも2つがHであるとの条件下で、R3、R5およびR6は独立にH、F、Cl、Br、I、OH、OPO32、OCH3、CF3、OCF3、NO2、CN、SO2CH3、SO2CF3、COCH3、COOCH3,SCH3、SF5、NHR8、N(R92、OPO32およびC1−C7アルキルから選ばれ、
7はH、グルタミル、好ましくは、α−グルタミル(−COCH(NH2)CH2CH2CO2H)またはポリグルタミン酸ポリペプチド残基−COCH(NHR7a)CH2CH2CO2Hであり、
7aはグルタミル(好ましくはα−グルタミル)または1〜50のペプチド連鎖、好ましくは2〜10のペプチド連鎖を有したポリグルタミン酸ポリペプチド残基であり、
8はHまたはC1−C7アルキルであり、
9はCH3またはCH2CH3である。リン酸およびグルタミン酸(グルタミル)は遊離酸またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0046】
この発明の化合物は中間体のプロドラッグ形態であり、図1〜4に示すように、クロロエチレン化、メチレン化および/またはカルバミル化メカニズムによりその活性を呈する。新たなプロドラッグデザインの根本的理由は、酵素活性化されたプロドラッグは、一連の酵素活性化および迅速断片化を介して、活性アルキル化種1およびメチルイソシアネートに変換できるからである。化合物Iについては、脱リン酸化はAP酵素活性化により完結されて、中間体2または3を与え、図2に示すように後続のベンジル基断片化はアルキル化およびカルバモイル化種を発生する。
【0047】
化合物IIについては図3に示すように、AP活性化脱リン酸化およびNR−活性化還元が中間体6または7を与え、これが迅速な断片化を介してアルキル化およびカルバモイル化種を発生する。
【0048】
化合物IIIとIVについては、化合物の分割がCPG2またはCPA酵素により触媒作用を受けて、フェノール10および芳香族アミン11を適宜置換する。ついで図4に示すように、迅速な断片化によりアルキル化およびカルバモイル化種を形成する。
【0049】
理論によって制約はされないが、このプロドラッグ活性化プロセスにおける速度測定ステップはP−O結合分割ステップであるようで、これがAP酵素により触媒作用を受ける。後続の断片化ステップは通常迅速であると理論付け得る。循環においてより長い半減期を有したリン酸塩連鎖プロドラッグはそれらをして活性アルキル化種補給源として機能させるか、またはVNP40101Mとは異なる分散を有したプロドラッグとして機能させ、所望の性質を有している。
【0050】
この目的へのひとつのアプローチとしては、脱リン酸化ステップとリン酸帯同SHPの生物活性化における速度制約ステップを減速することである。これにはリン酸基に位置αにおいて大きな置換基を導入する。これらのアルキル基はP−O結合分割サイトに近いことにより立体障害を与えて、酵素脱リン酸化事象を減速する。
【0051】
該目的への他のアプローチとしては、フェニル環に電子解放または電子吸収基を導入することであって、これがP−O結合分割の速度に影響を与える。加えて、続いて起こる断片化ステップもフェニル環における電子解放または電子吸収基による置換に影響される。これらの考慮に基づいて、多くのリン酸帯同SHPがたやすく良い量に合成され評価されている。これらプロドラッグのジソジウム(disodium)塩は水溶性がよい。
【0052】
この発明の化合物は主としてそれらの抗腫瘍活性の故に有用であって、この活性には固形腫瘍に対するものも含まれる。加えてこれらの組成物は他の有用な抗腫瘍処置剤の化学合成において中間体としても使用できる。つまり治療剤またはその他として有用である。
【0053】
この発明の好ましき化合物Iにあっては、Rは−CH2CH2Clであり、R’は−CH3であり、R2はリン酸基であって遊離酸または塩(好ましくはNa)である。オルト−リン酸帯同SHPの特に好ましき態様にあっては、R3、R5、R6がHのときに、R4はCl、FまたはBr(好ましくはCl)である。オルト−リン酸帯同SHPの他の好ましき態様にあってはR3、R4、R6がHのときに、R5はCl、FまたはBr(好ましくはCl、F)である。
【0054】
オルト−リン酸帯同SHPのさらに他の好ましき態様にあっては、R3〜R6のうち2つはF、Cl、BrまたはI(好ましくは両置換基は同じであって、より好ましくは両置換基はCl)であり、他の2つはHである。
【0055】
この発明の好ましき化合物IIはSHPのメタ−リン酸帯同・ニトロ含有類似体である。リン酸塩基は遊離酸または塩(好ましくはNa)である。ニトロ含有SHPの特に好ましき態様にあっては、R4がHのときにR2はNO2である。他の好ましき態様では、R2がHのときにR4はNO2である。
【0056】
この発明の好ましき化合物IIIおよびIVはSHPのグルタミル残基−共役類似体である。両SHPの特に好ましき態様にあっては、酸端末は遊離酸または塩(好ましくはNa)である。さらに好ましき化合物IVの態様にあっては、R7はHまたはポリグルタミルである。
【0057】
この発明の化合物は周知でかつ90CEからの技術の採用により合成される。90CEの合成を図5(Sartorelli他、アメリカ特許第4,684,747号、1987参照)に示す。
【特許文献13】アメリカ特許第4,684,747号
【0058】
図6に示すように、化合物Iの2−アミノカルボニルー1,2−ビス(メチルスルホニル)−1−(置換)ヒドラジン(19および20、R=−CH2CH2Cl)はそれぞれ、90CEをホスゲンまたはトリホスゲンまたはトリクロロメチル・クロロホルメートなどのその当量で反応させ、さらに適宜なN−アルキル−N−ベンジルアミン(15または16であり、ここでR’は−CH3;R2またはR4はジエチルホスホノオキシ基などのリン酸基であり、R2〜R6の2つがHではなく他の2つがHであるとの条件下で、R2〜R6の割り当てられない基はそれぞれ独立に表示された構造または関連アルキル基である。)で濃縮することにより合成される(Majer他、J.Org.Chem.1994,59:1937;Pridgen他、J.Org.Chem.1989,54:3231)。
【非特許文献22】Majer他、J.Org.Chem.1994,59:1937
【非特許文献23】Pridgen他、J.Org.Chem.1989,54:3231
【0059】
N、N−ジイソプロピル・エチルアミン(DIEA)を塩基として、用い、かつ乾燥アセトニトリル・ジクロロメタン溶媒中で終夜0℃に反応を保つことにより、この結合反応は高い収量で達成される。17または18のトリメチルシリル・ブロマイド(TMSBr)による非保護化(deprotection)に続いて(Matulic−Adamic他、J.Org.Chem.1995、60:2563)、19または20からのリン酸遊離酸は重炭酸ナトリウム(NaHCO3)溶液で処理されて、対応するジソジウム塩21、22をそれぞれ与える。逆相コラムクロマトグラフィーを使用して上記した水溶性SHP(19−22)を精製できる。
【非特許文献24】Matulic−Adamic他、J.Org.Chem.1995、60:2563
【0060】
図7に示すように、N−ベンジル−N−メチルアミン(15、16)は対応するサリチルアルデヒド、サリチル酸または4−置換フェノールから生成できる。市販入手可能なサリチルアルデヒドはジエチル・クロロリン酸と反応して穏和な条件下で対応するジエチル・ホスホノキシ−ベンズアルデヒド(23または24)を与える。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いて、メチルアミンにより23または24をアミノ化すると対応するN−ベンジルメチル・アミン(15または16)を与える。
【0061】
市販入手可能なサリチル酸は、リチウム・アルミニウムハイドライド(LAH)を還元剤として還流で用いて、まず対応するサリチルアルコール(25)に還元される。25のフェノールの選択的なリン酸化(Silverberg他、Tetrahedron Lett.1996、37:771)を亜リン酸ジエチル、カーボンテトラクロライド、DIEAおよび4−ジメチルアミノ・ピリジン(DMAP)の触媒量を用いて達成して、ベンジルアルコール(26)を得た。ベンジルアルコール(26)からベンゾアルデヒド(24)への変換にはピリジニウム・クロロクロメート(PCC)−酸化(Kasmai他、J.Org.Chem.1995、60:2267)を用いた。
【非特許文献25】Kasmai他、J.Org.Chem.1995、60:2267
【0062】
還流においてトリフルオロアセチル酸(TFA)中のヘキサメチレン−テトラアミン(HMTA)を用いたDuffフォルミル化状態下では(Lindoy他、Synthesis、1998、1029)、対応するサリチルアルデヒド(27または28)が市販入手可能な4−置換フェノールから得られ、ついで上記した同様なリン酸化と還元型アミノ化ステップを介して24と16とに変換された。これらの反応計画において使われる適宜なN−アルキル−N−ベンジルアミン誘導体の合成は公知であり標準化学技術を使用する。
【0063】
化合物IIのニトロ含有SHPのために同様な合成手法が図8に示すように使用できる。市販入手可能なニトロベンズアルデヒドを出発材料として用いて、ジエチル・クロロリン酸と反応させると、対応するジエチル・ホスホノキシ−ベンズアルデヒド(29または30)が穏和な条件下で得られる。還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを用いて、各29または30のメチルアミンとの還元型アミノ化により対応するニトロ含有N−ベンジル・メチルアミン(31または32)が得られた。
【0064】
ホスゲンまたはその当量をカルボニル結合剤としてまたDIEAを塩基として用いると、90CEとの31または32のこの結合反応は収量が高い。33または34のTMSBr非保護化についで、リン酸遊離酸形態35または36が飽和NaHCO3溶液により処理されて、対応するジソジウム塩37または38がそれぞれ得られる。逆相カラムクロマトグラフィーを使って上記の水溶性化合物II(35−38)の精製を行える。
【0065】
化合物IIIのグルタミン酸置換フェノールの生成の概要を図9に示す。ホスゲンまたはその当量とのグルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル(39)反応、ついで4−ヒドロキシル−ベンズアルデヒドによる0℃での終夜濃縮によりグルタメート帯同ベンズアルデヒド40が良い収量で得られる。40の還元アミノ化は第2アミン41を良い収量で与える。化合物41のホスゲンの0℃での反応はそれに続く90CEによる濃縮により42を成功裡に得た。
【0066】
公表された手法(Mann他、Tetrahedron、1990、46:5377)に続いて、蟻酸で処理することにより42の非保護化が容易に完成されて、遊離酸43を与える。さらに43を飽和NaHCO3溶液または適宜なアミンで処理すると、ジソジウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩またはルチジン塩などの水溶性グルタメート44が得られる。
【非特許文献26】Mann他、Tetrahedron、1990、46:5377
【0067】
グルタミル置換芳香族アミノ類似体(化合物IV)の合成を図10に示す。文献の手法(Jones他、Bio−org.Med.Chem.Lett.2000,10:1987)に続いて、市販入手可能なN−Boc−グルタミン酸5−tert−ブチルエステル(45)は4−アミノベンジルアルコールと反応してアミド46を高い収量で形成する。この際1−(3−ジメチル・アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシ・ベンゾトリアゾール(HOBT)を緩やかな条件下で助媒剤として用いる。
【非特許文献27】Jones他、Bio−org.Med.Chem.Lett.2000,10:1987
【0068】
PCC−酸化および還元アミノ化によりNーベンジル−N−メチルアミンを形成する代わりに、第2アミン47への公表されたベンジルアルコール46のワンポット変換手法を採用することもでき、水素化ホウ素ナトリウムの存在下で二酸化マンガンを利用する(Kanno他、Tetrahedron Lett.2002、43:7337)。アミン47をホスゲンを0℃で反応させ、ついでDIEAを助媒剤として用いて90CEによる濃縮を行うと48を成功裡に形成できる。
【非特許文献28】Kanno他、Tetrahedron Lett.2002、43:7337
【0069】
48の非保護化は希釈塩酸で処理して容易に完成でき、遊離酸49を形成する。最後に、飽和NaHCO3溶液での処理後に、ナトリウム塩50などの薬学的に受容可能な塩が形成される。
【0070】
合成後、未完成品は一般に逆相カラムクロマトグラフィーと凍結乾燥(lyophylization)により精製される。この合成により、この発明のSHPが対応するリン酸塩に容易に変換されることが証明された。開示された化学的合成方法の変更は当業者により容易に行うことができ、この発明の化合物への代わりの合成手法が与えられ得るのである。
【0071】
この発明の新規な化学的化合物に基づいた薬学的な組成物は上記の化合物を癌などの症状または疾患のために治療上有効な量で含有しており、選択的に薬学的に受容可能な添加剤やキャリアーや賦形剤と組み合わされる。
【0072】
薬学的投与形態の化合物のあるものは予防剤として使用されて、それ自身明らかな疾病や症状を予防する.
【0073】
この発明の化合物またはその誘導体は薬学的に受容可能な塩の形態で与えられる。ここで用語「薬学的に受容可能な塩またはその複合体」とはこの発明の活性化合物の適宜な塩または複合体であって、親化合物の所望の生物学的活性を残しているものである。ソジウム、リン酸およびグルタメートのカリウム塩を含む塩に限定されず、とりわけトリエタノールアミン、塩、トリエチル・アミン塩、ルチジン塩または他の薬学的受容可能な当業界公知の塩などである。
【0074】
活性化合物の変更は溶解度、薬物動態学的パラメータおよび活性種の代謝速度に影響を及ぼし、活性種の形成に制御を与える。さらに変更により化合物の抗癌活性に影響を及ぼし、あるケースでは親化合物を超して活性を増加させる。誘導体を用意して当業者公知の方法で抗癌活性をテストすることにより実証される。
【0075】
この発明の化合物は全ての経路の投与のための調合物に組み込むことが可能であり、該経路としてはたとえば経口、非経口を含み、経静脈内、経筋肉内、経腹膜内、経口内、経皮および座薬形態などがある。非経口投与および特に静脈内または筋肉内投与が望ましい。
【0076】
これらの新規な化学的化合物に基づいた薬学的組成物としては、癌およびここに記載した他の疾病および症状を処置するのに治療上有効な量の上記の化合物を含んでおり、選択的には薬学的に受容可能な添加物、キャリアーおよび/または賦形剤と組み合わされる。1以上のこの発明の化合物の治療上有効な量は処置される感染または症状、その厳しさ、静養する処置方法、使用した処理時の薬物動態学および処置される患者(動物または人間)により変動する。
【0077】
この発明による薬学的な観点にあっては、この発明の化合物は好ましくは薬学的に受容可能なキャリアーと混合される。一般に、腸管外に薬学的な組成物を投与するのが望ましく、特に静脈内または筋肉内投与形態が望ましいが、他の腸管外経路を介しての多くの調合物の投与が可能であり、例えば経皮、経口、皮下、座薬または経口経路投与を含む他の経路なども含まれる。
【0078】
静脈内および筋肉内調合物は好ましくは無菌生理的食塩水(saline)中で投与される。勿論、当業者はここに教示の範囲内で調合物を変更して、この発明の組成物を不安定にしたりまたはそれらの治療的活性を妥協することなしに、特定の投与経路のための多数の調合物を提供することができる。特にこの発明の化合物を水や他のビヒクル中により可溶にしたりする変更は僅かな変更(塩調合物など)で達成でき、当業者の範囲である。また投与経路や特定の化合物の投与方法を変更してこの発明の化合物の薬物動態学を管理して患者に最大の効果を与えることも通常行われるところである。
【0079】
この発明の化合物をホスト器官または患者中の対象の部位に与えて化合物の効果を最大に伸ばすに際して、この発明のプロドラッグ形態の好ましい薬物動態学的パラメータを有利に利用することも通常行われることである。
【0080】
活性化合物の投与は連続から(静脈内滴下)、塊薬投与、静脈内または筋肉内を含んで1日当り1回より少ない頻度でも、1日当り数回の投与に亙り、局部、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮(浸透向上処理剤を含む)、口および座薬、ケースによっては経口投与を含んだものである。
【0081】
この発明の薬学的組成物と形成すべく、この発明の1以上の化合物の治療的に有効な量が好ましくは従来の薬学的調剤技術(例えば静脈内または筋肉内)による薬学的に受容可能なキャリアーとよく混合されて投薬量を形成する。投与に望まれる形成態様に応じてキャリアーは広範な形態をとることができる。適正な投薬量形態で薬学的組成物の形成においては、いかなる通常の薬学的媒体も使用できる。
【0082】
非経口調合物には、キャリアーは無菌水または水性塩化ナトリウム溶液を含んでおり、分散を助けるエタノールや他の薬学的受容可能な溶媒(DMSOなど)などの他の成分と組み合わせてもよい。勿論溶液が使われて無菌に保たれる場合には、組成物とキャリアーとは無菌でなければならない。注射可能な懸濁液も形成でき、この場合適宜な液体キャリアー、懸濁剤などが使用される。
【0083】
非経口、皮膚内、皮下または局部投与に使われる溶液または懸濁液は以下の成分に含まれる。注射用水などの無菌希釈液、食塩水(saline solution)、不揮発性油、ポリエチレン・グリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗バクテリア剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素塩ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン・テトラアセチル酸(EDTA)などのキレート剤、アセテート、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの緊張調節剤。
【0084】
親調合物はアンプル、使い捨て注射器またはガラスまたはプラスチック製の複投薬量瓶に入れられる。静脈内で投与される場合には、好ましきキャリアーとしては例えば生理的食塩水またはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)などがある。
【0085】
経口投薬形態で薬学的組成物を形成するに際しては、通常の薬学的媒体の1以上が使用できる。懸濁液やエリキシル剤および溶液などの液体経口調合物のためには、適宜なキャリアーや水、グリコール、油、アルコール、芳香剤、保存剤、着色剤などの添加物が用いられる。
【0086】
粉、錠剤、カプセルなどの固体経口調合剤および座薬などの固体調合物には適宜なキャリアーと澱粉、砂糖キャリアー(デキストロース、マニトール、ラクトースおよび関連キャリアーなど)、希釈剤、粒化剤、潤滑剤、バインダー、分解剤などの添加物が用いられる。必要なら、錠剤またはカプセルは溶腸被覆されまたは標準技術により解放延期処理してもよい。
【0087】
一実施例においては、活性化合物は制御放出調合物などのような化合物を身体からの急速な排除に対して保護するキャリアーを使って形成できるもので、移植およびマイクロカプセル化投与システムなどを含んでいる。エチレン・ビニルアセテートやポリアンハイドライドやポリグリコール酸やコラーゲンやポリオルトエステルやポリアクテイック酸(polyactic acid)などの生物分解性、生体適合性ポリマーを使うこともできる。そのような調合物の形成方法は当業者周知である。
【0088】
リポソーム懸濁液も薬学的に受容可能なキャリアーであり得る。これらは当業者周知の方法で形成される。例えば、リポソーム調合物の形成に当たっては、適宜な脂質を爾後蒸発される無機溶媒に溶解して、容器の表面上に乾燥脂質の薄層を残す。ついで活性化合物の水性溶液を容器に注入する。ついで容器を手で回転させて容器の側面から脂質を遊離させて、集合脂質を分散させる。それによってリポソーム懸濁液が形成される。その他にも当業者周知の方法を使ってやることができる。
【0089】
この発明の化合物は動物特に人間を含む哺乳動物を患者として処置することに使用できる。腫瘍や特に癌や上記した他の疾病に罹病した人間、馬、犬、牛その他の動物、特に哺乳動物の処置に際しては、患者にこの発明の化合物の1以上またはその誘導体またはその薬学的に受容可能な塩などの有効量を投与し、選択的には薬学的に受容可能なキャリアー、希釈剤、などと組み合せるか処置される疾病に応じてまたは単独でまたは他の公知の薬学的処理剤と組み合せて使用される。
【0090】
この処置は他の放射線治療や手術など従来の癌治療方法とも組み合せて投与できる。好ましくは、この発明の組成物は抗薬品性の腫瘍や癌の処置にも使用でき、特に従来の抗癌剤に抵抗性の腫瘍や癌に使用できる。
【0091】
活性化合物は薬学的受容可能なキャリアーまたは希釈剤中に患者に所望の症状に治療的に有効な量を放出するのに充分な量が、処置された患者中に深刻な毒性を起因することないように、含まれる。
【0092】
この発明の化合物は反応性(reactive)中間体のプロドラッグ形態である。ある種の薬学的投薬形態では、この発明の化合物は他のプロドラッグ形態に変更されて、活性化合物の特殊な投与経路を利用する。この発明の化合物を代わりのプロドラッグ形態に変更して患者中の対象部位への投与を容易にすることは当業者は認識できる。当業者はまた、この発明の化合物を患者中の対象部位に投与して化合物の意図された抗腫瘍性効果を最大にするに際して、プロドラッグ形態の好ましい薬物動態学的なパラメータを利用する。
【0093】
この発明において治療上活性な調合物に含まれる化合物の量は癌を処置するのに有効な量である。一般に、投薬形態中の発明の化合物に治療上有効な量は通常処置される患者の体重の約0.05mg/kg〜約500mg/kgより少ないか、または使用される化合物、処置される腫瘍のタイプ、処置される組織を突き止める活性化合物の能力、投与経路および患者中の化合物の薬物動態学などに応じて、それよりかなり多くなる。
【0094】
癌を処置する場合の、化合物の好ましい投与量は1回当り約0.05mg/kg〜約250mg/kgかまたはそれ以上である。この投薬範囲は一般に活性化合物の有効な血液レベル濃度を生じ、処置される患者中の血液ml当り約0.01μg〜約500μgである。処置される疾病状態に応じて、処置の期間は1日以上または数ヶ月続きまたは非常に長く(年)なる。より好ましき実施例では、化合物は患者に1日当り2回から14日に1回0.1mg/kg〜100mg/kg、1週間並52週間にも及ぶ。
【0095】
患者中の活性化合物の濃度は薬剤の吸収、分布、不活性化、および排出速度その他当業者周知の要因により左右される。ここで注目すべきは、患者に与えられる投薬量は緩和されるべき症状の厳しさにより変動する。また理解すべきは、いかなる特定の患者についても、特定の投薬計画は個々の必要および投与する人の職業的判断または組成物の投与を行う人の判断により時間に亙って調節されるべきである。またここに定めた濃度範囲は単なる例示であり、この発明の組成物の範囲を限定するものではない。活性成分は一度に投与されまたは小さな投薬量に分割されて種々の期間について投与される。
【0096】
この発明の活性化合物はまた所望の活動を損ねない他の活性物質と混合してもよい。または所望の活動を補助する活性物質と混合してもよい。例えば他の抗癌剤である。ある場合には、所望の治療または対象、抗生物質、抗真菌性剤、抗炎症剤、抗ウイルス化合物に応じて混合される。
【0097】
この発明の化合物は単独または他の処理剤と組み合わせて投与され、特にこの発明の他の化合物を含むものである。その場合、この発明の化合物の1以上の有効量が少なくとも1種の追加的な抗腫瘍/抗癌剤の有効量と共投与される。例えば代謝拮抗産物、シタラビン(Ara C)、エトポシド、ドキソルビシン、タクソール、ヒドロキシウレア、ビンクリスチン、サイトキサン(シクロホスファミド)またはマイトマイシンCなどである。その他にもアドリアマイシンやトポテカンやカンポセシンやイリノテカンなどのトポイソメラーゼIおよびトポイソメラーゼII抑制剤などがあり、その他にもゲムシタビンなどの処理剤、カンポセシンとシスプラチンなどに基づいた処理剤がある。
【0098】
理論的には、DNAを損傷するメカニズムで働くこの発明の化合物はDNA修復を低減・予防するメカニズムで働く化合物と顕著に作用する。この発明の化合物はDNA修復を低減・予防するメカニズムで働くいかなる化合物とも有利に組み合わされる。特に酵素触媒化されたDNA修復の抑制剤を含むものであって、リボヌクレオチド・レダクターゼ(RR)抑制剤やO6−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)の抑制剤などがある。
【0099】
用語「共投与」とは、この発明の化合物が患者に投与されて共投与された化合物が患者の血液中に同時に見出されること、を言うものであって、同時の場合を含めていつ化合物が実際に投与されるかは問わないのである。
【0100】
多くの場合、この発明の化合物と従来の抗癌剤の共投与は予期しない相乗的効果(すなわち相加的よりも)を生じるものである。他の実施例では、この発明の化合物は抗体(共役または非共役)、ウイルスまたはバクテリア物質と同時にまたは前後して投与される。抗体、ウイルスまたはバクテリア物質は開示した化合物を活性化させる酵素または遺伝子エンコード酵素を運ぶこともできる。酵素とはNR、CPG2およびCPAを含むがこれらに限定されるものではない。
【0101】
またこの発明の化合物はここに開示した1以上の従来の抗腫瘍剤/抗癌剤に抵抗性を有する腫瘍および/または癌を処置するのに使用できる。この場合、有効量の組成物が薬剤抵抗性腫瘍または癌に苦しむ患者に投与されて腫瘍または癌を処置する。この場合この発明の組成物は単独または他の有効な抗腫瘍剤/抗癌剤と組み合わせて投与される。
【0102】
理論により制約されるものではないが、この発明のクロロエチル化とカルバモイル化処理剤の組合せの機能性により、化合物は主としてその治療的な効果を悪性腫瘍の処置において発揮するものと考えられる。
【0103】
この発明について一般的に言うと、以下の実験例によりこの発明の好ましき実施例と比較を説明する。またそれらの実験例はこの発明を限定制約するものではない。実験例において言及されない化合物でも当業界周知の合成手法により形成され得るものである。
【実験例】
【0104】
全ての試薬は市販の性能において購入され、さらなる精製なしに使用された。必要前に溶媒は乾燥および/または希釈された。全てのNMRスペクトル(1H、13Cおよび31P)はBrucker AC300スペクトルメータ上で測定された。化学的な変化はテトラメチルシランに対比して百万分率(ppm)で測定された。結合定数はヘルツ(Hz)で報告された。フラッシュカラムクロマトグラフィー(FCC)はMerckシリカゲル60(230−400mesh)で行われ、逆相カラムクロマトグラフィー(RPCC)はCATゲル(水、準備C−18、125Å、55−105μm)でパックされ、溶離はミリ−Q ジ−イオン化水で行われた。Yale大学のKeck LaboratoryのMicromass(マンチェスター、イギリス)により製造されたQ−Tofにエレクトロスプレー マス(ESMS)分析が行われた。重量精度は<0.02%であった。
【0105】
実験例1−3。4−置換フェノールのホルミル化(Duff formylation)によるサリチルアルデヒド(27a、27b、28b)の形成。一般的手順。TFA(100mL)中の適宜に置換されたフェノールの溶液(10.0g)に少量のHMTA(1.1当量)を添加した。反応溶液は終夜還流で熱せられた。冷却後、溶液を50%H2SO4溶液(40mL)で室温下で4時間処理した。ついでエーテル(3x100mL)で抽出を行なった。結合したエーテル相を5M HCl溶液と水で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥した。濾過後濾過物を蒸発精製した。
【0106】
2−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(27a)。一般的手順に続いて、30%エチル・アセテートへキサン、4−トリフルオロメチルフェノール(10.0g、61.7mmol)によるFCC精製によりピンク色の固体として2−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド27(3.9g、34%)を得た。Rf(20%エチル・アセテート−ヘキサン):0.47。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 11.31 (s, 1H, OH), 9.96 (s, 1H, CHO), 7.87 (d, J = 1.6 Hz, 1H, C6−H (Ph)), 7.76 (dd, J = 2.0 and 8.5 Hz, 1H, C4−H (Ph) ) and 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H, C3−H (Ph))。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 195.8, 163.8, 133.4 (d), 131.0 (d), 125.3, 122.1 (m), 119.8 and 118.6。
【0107】
4,5−ジクロロ−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(27b)および5,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(28)。一般的手順に続いて5−10%エチルアセテート−ヘキサン、3,4−ジクロロフェノール(10.0g、61.1mmol)によるFCC精製により5,6−ジクロロ−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド28(2.2g、19%)を浅黄色固体として得た。Rf(40%エチルアセテート−ヘキサン):0.63。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 11.98 (s, 1H, OH), 10.44 (s, 1H, CHO), 7.55 (d, J = 9.4 Hz, 1H, C4−H (Ph) ) and 6.89 (d, J = 9.3 Hz, 1H, C3−H (Ph))。 13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 195.4, 162.4, 137.8 (2C), 135.6, 123.8 and 118.1。
【0108】
同じ反応から連続して10%エチルアセテート−ヘキサンによるFCC精製により4,5−ジクロロ−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド27b(1.8g、15%)を浅黄色固体として得た。Rf(40%エチルアセテート−ヘキサン):0.47。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 10.97 (s, 1H, OH), 9.84 (s, 1H, CHO), 7.64 (s, 1H, C3−H (Ph) ) and 7.15 (s, 1H, C6−H (Ph))。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 194.7, 160.0, 149.9, 141.5, 134.0, 123.6 and 119.9。
【0109】
実験例4−6。フェノール性アルデヒドからのジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒド(23,24a−b)の形成。一般的手順。アセトニトリル(120mL)中の適宜に置換したアルデヒド(10.0g)の攪拌氷冷溶液にジエチル・クロロリン酸塩(1.1当量)とTEA(1.1当量)を添加した。反応混合物を室温で終夜保った。濾過により沈殿物を除いた後、濾過物を蒸発・乾燥した。さらなる精製なしに未精製(crude)のジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒドが使用できた。
【0110】
4−ジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒド(23)。一般的手順に続いて、4−ヒドロキシ・ベンズアルデヒド(9.0g、73.8mmol)を浅黄色油として分離した4−ジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒド23(18.9g、99%)に変換した。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 9.98 (s, 1H, CHO), 7.91 (d, J = 9.0 Hz, 2H, C3−H (Ph)), 7.39 (d, J = 8.4 Hz, 2H, C2−H (Ph) ), 4.26 (m, 4H, CH2) and 1.38 (t, J = 6.9 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 190.5, 155.2 (d), 133.0, 131.4, 120.3(d), 64.7 (d) and 15.8 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 4.6。TOF ESMS calculated for (M+H) = 259.07, observed 259.10。
【0111】
2−ジエチル・ホスホノキシ−ベンズアルデヒド(24a)。一般的手順に続いて、サリチルアルデヒド(9.0g、73.8mmol)により無色油として24a(18.9g、99%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 10.42 (s, 1H, CHO), 7.90 (d, J = 7.7 Hz, 1H, C3−H (Ph)), 7.61 (t, J = 8.0 Hz, 1H, C5−H (Ph)), 7.48 (d, J = 8.7 Hz, 1H, C6−H (Ph) ), 7.31 (t, J = 7.1 Hz, 1H, C4−H (Ph) ), 4.27 (m, 4H, CH2) and 1.37 (t, J= 7.1 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 188.2, 152.5 (d), 135.5, 128.5, 127.1 (d), 125.2, 120.9 (d), 64.9 (d) and 15.8 (d)。
31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.0。TOF ESMS calculated for (M+H) = 259.07, observed 259.07。
【0112】
5−クロロ−2−ジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒド(24b)。一般的手順に続いて、5−クロロ・サリチルアルデヒド(10.0g、73.8mmol)により無色油として24b(19.4g、90%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 10.34 (s, 1H, CHO), 7.84 (d, J = 2.5 Hz, 1H, C3−H (Ph)), 7.55 (dd, J = 8.8 and 2.5 Hz, 1H, C5−H (Ph) ), 7.45 (d, J = 8.8 Hz, 1H, C6−H (Ph) ), 4.27 (m, 4H, CH2) and 1.38 (t, J = 6.8 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 187.0, 151.1 (d), 135.2, 131.2, 128.2 (d), 128.1, 122.6 (d), 65.2 (d) and 16.0 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.1。TOF ESMS calculated for (M+H) = 293.03, observed 293.04。
【0113】
実験例7−9。4−クロロサリチル酸からの4−クロロ−2−ジエチル・ホスホノキシ−ベンズアルデヒド(24c)の形成。5−クロロ−2−ヒドロキシメチル−フェノール(25)。THF(150mL)中の4−クロロサリチル酸(10.0g、58.0mmol)の溶液をLAH(1.5当量)で2時間環流処理した。室温に冷却後、反応溶液を1N NaHSO4溶液(200mL)で冷却し、エーテル(300mL)で抽出した。分離後、有機層を無水MgSO4上で乾燥し、濾過濃縮した。乾燥未精製製品25(7.5g、81%)を灰色固体として得た。これはさらなる精製なしに充分純粋で使用に供せた。1H NMR (300 MHz, DMSO−d6) δ 9.85 (s, 1H, Ph−OH), 7.27 (d, J = 8.2 Hz, 1H, C3−H (Ph)), 6.81 (d, J = 8.2 Hz, 1H, C4−H (Ph)), 6.78 (s, 1H, C6−H (Ph) ), 5.03 (m, 1H, OH) and 4.41 (d, J = 4.1 Hz, 2H, PhCH2)。13C NMR (75 MHz, DMSO−d6) δ 155.0, 131.0, 128.6, 128.0, 118.5, 114.2 and 57.7。
【0114】
4−クロロ−2−ジエチル・ホスホノキシ−ベンジルアルコール(26)。アセトニトリル(200mL)中の25(8.6g、54.8mmol)、DIEA(2.1当量)およびDMAP(0.1当量)の溶液を−20℃の浴中に入れた。上記の冷溶液にCCl4(5.0当量)とジエチル亜リン酸塩(1.1当量)を添加した。反応溶液を室温で2時間保った。溶媒を回転蒸発し、未精製油を60%エチルアセテート−ヘキサンを含むFCCで精製して浅黄色油状の26(10.9g、68%)を得た。Rf(80%エチルアセテート−ヘキサン):0.34。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.40 (d, J = 8.2 Hz, 1H, C3−H (Ph) ), 7.23 (s, 1H, C6−H (Ph) ), 7.19 (d, J = 8.5 Hz, 1H, C4−H (Ph) ), 4.62 (s, 2H, PhCH2), 4.24 (m, 4H, CH2) and 1.37 (t, J= 7.4 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 148.2 (d), 133.6 (d), 131.6 (d), 131.0, 125.8, 120.9 (d), 65.1 (d), 59.1 and 15.9 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 6.0。
【0115】
4−クロロ−2−ジエチル・ホスホノキシ−ベンズアルデヒド(24c)。ジクロロメタン(600mL)中の26(10.7g、36.3mmol)の攪拌溶液に少量のPCCを室温で30分添加した。反応をTLCでモニターした。ついで反応混合物をセライト(Celite)フィルターパッドに通し、濾過物を回転蒸発した。残油をシリカゲルパッドで精製し、エチルアセテートで溶離して緑色油状の24d(9.5g、90%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 10.34 (s, 1H, CHO), 7.84 (s, 1H, C3−H (Ph) ), 7.52 (s, 1H, C6−H (Ph) ), 7.29 (s, 1H, C4−H (Ph) ), 4.29 (m, 4H, CH2) and 1.39 (s, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 186.8, 152.4 (d), 140.9, 129.3, 125.4 (d), 125.3, 121.1, 64.9 (d) and 15.6 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 4.8。TOF ESMS calculated for (M+H) = 293.03, observed 293.06。
【0116】
実験例10−13。N−(ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(15,16a−c)の形成。一般的手順。ジクロロメタン(10mL)中の対応するジエチルホスホノキシ−ベンズアルデヒド(23または24a−c、10mmol)の溶液にメチルアミン(THF中に2N、2.0当量)を添加した。反応溶液を室温で終夜保ち、シリカゲルパッドを通して濾過し、濾過物を回転蒸発し真空中で乾燥した。得られた未精製油をメタノール(50mL)中に溶解した。上記の溶液に少量のNaBH4(2.0当量)を0℃で添加し、溶液を4時間連続攪拌した。蒸発後、残留物を水(50mL)とジクロロメタン(50mL)中に分散させ、ジクロロメタン(50mL)で1回液相を分離抽出した。結合有機相を無水MgSO4上で乾燥し、濾過蒸発した。未精製のN−(ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(15または16a−c)はさらなる精製なしで使用に供することができた。
【0117】
N−(4−ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(15)。一般的手順に続いて、23(29.9g、116mmol)により黄色油状の15(22.3g、71%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C3−H (Ph) ), 7.17 (d, J = 8.5 Hz, 2H, C2−H (Ph) ), 4.21 (m, 4H, CH2), 3.73 (s, 2H, PhCH2), 2.42 (s, 3H, NCH3) and 1.34 (t, J = 6.9 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 149.4 (d), 135.6, 129.3, 119.5 (d), 64.2 (d), 54.5, 35.1 and 15.7 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.3。TOF ESMS calculated for (M+H) = 274.11, observed 274.11。
【0118】
N−(2−ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(16a)。一般的手順に続いて、24a(19.0g、73.6mmol)により浅黄色油状の16a(16.4g、82%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.37 (d, J = 7.4 Hz, 1H, C3−H (Ph) ), 7.33 (d, J = 7.9 Hz, 1H, C6−H (Ph) ), 7.24 (t, J = 7.2 Hz, 1H, C5−H (Ph) ), 7.14 (t, J = 7.3 Hz, 1H, C4−H (Ph) ), 4.22 (m, 4H, CH2), 3.82 (s, 2H, PhCH2), 2.44 (s, 3H, NCH3) and 1.35 (t, J = 7.0 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 148.6 (d), 130.5 (d), 130.2, 128.1, 124.8, 119.7, 64.4 (d), 49.9, 35.5 and 15.8 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.6。TOF ESMS calculated for (M+H) = 274.11, observed 274.13。
【0119】
N−(4−クロロ−2−ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(16b)。一般的手順に続いて、24b(21.9g、74.9mmol)により浅黄色油状の16b(18.3g、80%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.39 (d, J = 2.2 Hz, 1H, C3−H (Ph)), 7.27 (d, J = 7.9 Hz, 1H, C6−H (Ph) ), 7.20 (dd, J = 8.3 and 2.6 Hz, 1H, C5−H (Ph) ), 4.23 (m, 4H, CH2), 3.78 (s, 2H, PhCH2), 2.45 (s, 3H, NCH3) and 1.36 (t, J = 7.0 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 147.1 (d), 132.8 (d), 130.1 (d), 129.7, 127.7, 121.1, 64.6 (d), 49.6, 35.6 and 15.9 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.6。TOF ESMS calculated for (M+H) = 308.07, observed 308.08。
【0120】
N−(5−クロロ−2−ジエチルホスホノキシ・ベンジル)−N−メチルアミン(16c)。一般的手順に続いて24c(23.9g、81.7mmol)により浅黄色油状の16c(18.9g、76%)を得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.35 (s, 1H, C6−H (Ph) ), 7.30 (d, J = 10.4 Hz, 1H, C3−H (Ph) ), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 1H, C4−H (Ph) ), 4.24 (m, 4H, CH2), 3.78 (s, 2H, PhCH2), 2.43 (s, 3H, NCH3) and 1.37 (t, J = 6.8 Hz, 6H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 140.9 (d), 133.0, 131.0, 129.4 (d), 125.1, 120.3 (d), 64.7 (d), 49.4, 35.5 and 15.9 (d)。31P NMR (121 MHz, CDC13) δ 5.4。TOF ESMS calculated for (M+H) = 308.07, observed 308.08。
【0121】
実験例14−15。遊離ホスホン酸(19、20a−c)の形成。一般的手順。アセトニトリル(40mL)中の90CE(10mmol)の冷攪拌溶液にホスゲン(トルエン中20%、1.0当量)とDIEA(1.0当量)を添加した。反応溶液を0℃で20分保った。ついで上記した溶液にジクロロメタン(5mL)およびDIEA(他の1.0当量)中の対応するN−(ジエチルホスホノキシ−ベンジル)−N−メチルアミン(15または16a−c、10mmol)を添加した。最後の反応溶液を5℃で終夜保った。蒸発後、残留物を水(80mL)とジクロロメタン(80mL)中に分散させた。ジクロロメタン(80mL)で液相を2回分離抽出し、結合有機相を無水MgSO4上で乾燥し、濾過蒸発した。未精製(crude)保護リン酸塩(17または18a−c)を油状で得た。
【0122】
ジクロロメタン(60mL)中の各ジエチル−保護リン酸塩(17または18a−c、10mmol)の溶液は5℃で終夜多くのTMSBr(40mL)で処理された。真空中で蒸発、乾燥後、未精製遊離リン酸(19または20a−c)がガラス状固体として得られた。
【0123】
未精製化合物(19または20a、10mmol)に水(約30mL)を添加した。懸濁液を室温で2時間攪拌し、最少量の水を添加して完全に溶解させた。水溶液を非イオン化水を含んだRPCCで精製し、分留を31P NMRでモニターし組み合せた。凍結乾燥(lyophylization)後、白色粉状の精製遊離リン酸(19または20a)を得た。
【0124】
1,2−ビス(メチルスルフォニル)−1−(2−クロロエチル)−ヒドラジン(90CE)。一般的手順(Shyam他、J.Med.Chem. 1987、30:2157)に続いて、塩基としてのピリジンの存在下での2−ヒドロキシエチル−ヒドラジンとメタンスルフォニルクロライドの反応によりメシレート(mesylate)を得て、後に塩化リチウムと反応させて90CEを得た。ジクロロメタン中の5%メタノール含有のFCCによる精製後白色固体状の90CEを得た。Rf (50%酢酸エチル−ヘキサン): 0.30。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 6.82 (s, 1H, NH), 3.99 (t, J = 6.8 Hz, 2H, ClCH2), 3.86 (t, J = 5.6 Hz, 2H, NCH2), 3.19 (s, 3H, SCH3) and 3.13 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 54.0, 41.0, 40.2 and 38.4。
【0125】
リン酸モノ−{4−{N−[1,2−ビス(メチルスルフォニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニル}エステル(19)。一般的手順に続いて、15(15.4g、56.8mmol)と90CE(14.2g、1.0当量)とによりリン酸4−{N−[1,2−ビス(メチルスルフォニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニルエステル・ジエチルエステル(17、25.2g、80%)を得た。化合物17(11.0g、20.1mmol)を白色粉状の19(3.8g。38%)に変換した。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.11 (d, J = 8.1 Hz, 2H, C3−H (Ph) ), 6.95 (d, J = 7.5 Hz, 2H, C2−H (Ph) ), 4.36 (m, 2H, PhCH2), 3.89 (m, 2H, ClCH2), 3.67 (m, 2H, NCH2), 3.23 (s, 3H, NCH3), 2.92 (s, 3H, SCH3) and 2.87 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.6, 153.8 (d), 133.4, 132.0, 123.0 (d), 57.3, 55.7, 43.6, 42.0, 40.4 and 39.1。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 9.9。TOF ESMS calculated for (M+H) = 494.01, observed 493.98。
【0126】
リン酸モノ−{2−{N−[1,2−ビス(メチルスルフォニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニル・カルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニル}エステル(20a)。一般的手順に続いて、16a(16.4g、60.5mmol)と90CE(15.1g、1.0当量)とによりリン酸2−{N−[1,2−ビス(メチルスルフォニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニル・カルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニルエステル・ジエチルエステル(18a、29.7g、89%)を得た。化合物18a(10.5g、19.2mmol)により白色粉状の20a(2.6g、27%)を得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.1 − 7.2 (m, 3H, C3−H, C5−H and C6−H (Ph) ), 6.94 (m, 1H, C4−H (Ph) ), 4.45 (m, 2H, PhCH2), 3.84 (m, 2H, ClCH2), 3.64 (m, 2H, NCH2), 3.20 (s, 3H, NCH3), 2.93 (s, 3H, SCH3) and 2.92 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.8, 152.5 (d), 131.8, 131.7, 128.7 (d), 126.7, 122.5, 57.2, 51.4, 43.5, 42.1, 40.5 and 39.9。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 9.8。TOF ESMS calculated for (M+H) = 494.01, observed 494.00。
【0127】
実験例16−19。ジソジウム(Disodium)塩(21、22a−c)の形成。一般的手順。対応する未精製リン酸(19または20a−c、10mmol)を水性飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)溶液(100mL)で中和した。懸濁液を室温で2時間攪拌し、最少量の水に添加して均質化した。水性溶液を非イオン化水含有RPCCで精製し、分留を31P NMRでモニターし組み合わせた。凍結乾燥後、対応するジソジウム塩(21または22a−c)を白色粉状で得た。
【0128】
リン酸4−{N−[1,2−ビス(メチルスルホニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニルエステルジソジウム塩(21)。一般的手順に続いて未精製19(9.5g、19.3mmol)により白色粉状の21(5.6g、54%)を得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.08 (d, J = 8.3 Hz, 2H, C3−H (Ph) ), 6.97 (d, J = 8.1 Hz, 2H, C2−H (Ph) ), 4. 38 (m, 2H, PhCH2), 3.92 (m, 2H, ClCH2), 3.71 (m, 2H, NCH2), 3.26 (s, 3H, NCH3), 2.95 (s, 3H, SCH3) and 2.89 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.5, 156.1 (d), 131.7, 131.4, 122.9 (d), 57.4, 55.8, 43.7, 42.0, 40.5 and 39.0。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 14.2。TOF ESMS calculated for (M−H) = 492.01, observed 492.10。
【0129】
リン酸2−{N−[1,2−ビス(メチルスルホニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−フェニルエステルジソジウム塩(22a)。一般的手順に続いて、未精製20a(8.8g、17.8mmol)により22a(5.7g、59%)を白色粉状で得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 1H, C3−H (Ph) ), 7.0 − 7.2 (m, 2H, C5−H and C6−H (Ph) ), 6.86 (t, J = 7.2 Hz, 1H, C4−H (Ph)), 4.52 (m, 2H, PhCH2), 3.90 (m, 2H, ClCH2), 3.68 (m, 2H, NCH2), 3.27 (s, 3H, NCH3), 2.97 (s, 3H, SCH3) and 2.93 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.7, 154.6 (d), 131.3, 130.9, 128.3 (d), 124.7, 122.4, 57.3, 51.4, 43.6, 42.0, 40.5 and 39.9。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 14.1。TOF ESMS calculated for (M−H) = 492.01, observed 492.05。
【0130】
リン酸−2−{N−[1,2−ビス(メチルスルホニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−4−クロロ−フェニルエステルジソジウム塩(22b)。一般的手順に続いて、未精製20b(14.5g、27.6mmol)により白色粉状の22b(8.3g、53%)を得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.26 (s, 1H, C3−H (Ph) ), 7.17 (m, 1H, C5−H (Ph) ), 7.08 (d, J = 7.2 Hz, 1H, C6−H (Ph) ), 4.48 (m, 2H, PhCH2), 3.93 (m, 2H, ClCH2), 3.72 (m, 2H, NCH2), 3.30 (s, 3H, NCH3), 3.03 (s, 3H, SCH3) and 3.01 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.8, 153.3 (d), 134.6, 130.8, 128.9, 126.7, 123.6, 57.3, 51.3, 43.6, 42.1, 40.6 and 40.1。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 14.2。TOF ESMS calculated for (M−H) = 525.96, observed 525.93。
【0131】
リン酸2−{N−[1,2−ビス(メチルスルホニル)−2−(2−クロロエチル)−ヒドラジニルカルボニル]−N−メチルアミノメチル}−5−クロロ−フェニルエステルジソジウム塩(22c)。一般的手順に続いて、未精製20c(16.2g、30.8mmol)により白色粉状の22c(8.9g、51%)を得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ7.28 (s, 1H, C6−H (Ph) ), 7.03 (d, J = 8.4 Hz, 1H, C3−H (Ph)), 6.87 (d, J = 8.2 Hz, 1H, C4−H (Ph) ), 4.47 (m, 2H, PhCH2), 3.91 (m, 2H, ClCH2), 3.70 (m, 2H, NCH2), 3.26 (s, 3H, NCH3), 3.00 (s, 3H, SCH3) and 2.96 (s, 3H, SCH3)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 156.7, 155.3 (d), 135.6, 132.0, 127.0 (d), 124.5, 122.4, 57.3, 51.0, 43.7, 42.0, 40.5 and 40.0。31P NMR (121 MHz, D2O) δ 14.1。TOF ESMS calculated for (M−H) = 525.96, observed 526.01。
【0132】
実験例20。カルバメート(40)の形成。4−ホルミルフェニル・オキシカルボニル(Formylphenyloxycarbonyl)−グルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル(40)。アセトニトリル(50mL)およびジクロロメタン(50mL)中の4−ヒドロキシベンジルアルコール(2.0g、16.9mmol)の冷攪拌溶液にホスゲン(トルエン中に20%、1.0当量)およびDIEA(1.0当量)を添加した。反応溶液を0℃で30分保った。ついで上記した溶液にDIEA(2.0当量)含有ジクロロメタン(50mL)中のグルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル39(1.0当量)の溶液を添加した。反応混合物を0℃で終夜保った。ついで混合物を0.5NKHSO4溶液(50mL)で処理した。分離後、有機相をブライン(80mL)で洗浄し、無水MgSO4上で乾燥し、回転蒸発して真空中で乾燥した。未精製カルバメート40(6.7g、97%)を浅黄色半固体状で得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.97 (s, 1H, CHO), 7.89 (d, J = 8.1 Hz, 2H, C3−H (Ph)), 7.32 (d, J = 8.7 Hz, 2H, C2−H (Ph) ), 5.91 (d, J = 7.8 Hz, 1H, NH), 4.32 (m, 1H, C1H), 2.35 (m, 2H, C2H), 2.00 (m, 2H, C3H), 1.50 and 1.46 (s, 2 x 9H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 191.0, 172.1, 170.6, 155.6, 153.1, 133.4, 131.1, 121.9, 82.7, 80.9, 54.1, 31.4, 28.0, 27.9 and 27.5。TOF ESMS calculated for (M+H) = 408.20, observed 408.19。
【0133】
実験例21。N−ベンジル―N−メチルアミン(41)の形成。4−(メチルアミノメチル)フェニルオキシカルボニル−グルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル(41)。ジクロロメタン(50mL)中の40(6.1g、14.9mmol)の攪拌溶液を2Nメチルアミン−THF溶液(10mL)で0℃で終夜処理した。溶媒の除いた後、残留油をメタノール(80mL)中で溶解し、氷浴中に配置した。上記した溶液に少量の水素化ホウ素ナトリウムを30分添加した。反応溶液を0℃で1時間保ち、溶媒を蒸発した。残留物をブラインとジクロロメタンで加工した。分離後、有機相を無水MgSO4上で乾燥し、回転蒸発し真空中で乾燥した。未精製アミン41(5.4g、78%)を浅黄色ガラス固体状で得た。1H NMR (300 MHz, CDC13) δ 7.04 (d, J = 8.3 Hz, 2H, C3−H (Ph) ), 6.78 (d, J = 8.1 Hz, 2H, C2−H (Ph)), 5.36 (d, J = 7.4 Hz, 1H, CONH), 4.39 (m, 1H, C1H), 2.86 (d, J = 4.6 Hz, 3H, NCH3), 2.74 (d, J = 4.8 Hz, 2H, NCH2), 2.34 (m, 2H, C2H), 1.92 (m, 2H, C3H), 1.49 and 1.42 (s, 2 x 9H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 172.6, 172.4, 157.9, 156.1, 128.6, 128.3, 115.6, 82.0, 80.7, 53.9, 51.5, 33.8, 31.6, 28.0, 27.9 and 27.6。TOF ESMS calculated for (M+H) = 423.25, observed 423.24。
【0134】
実験例22。N−ベンジル−N−メチルアミノカルボニル−ヒドラジン(42)の形成。4−{N−(1,2−ビス(メチルスルホニル)−1−(2−クロロエチル)ヒドラジン−2−yl−カルボナイル(carbonayl))−N−メチルアミノメチル}フェニルオキシ・カルボニル−グルタミン酸ジ−tert−ブチルエステル(42)。アセトニトリル(30mL)中の90CE(1.5g、5.9mmol)の冷攪拌溶液にホスゲン(トルエン中に20%、1.0当量)とDIEA(1.0当量)とを添加した。反応溶液を0℃で30分保った。ついで上記した溶液にDIEA(1.0当量)含有アセトニトリル(30mL)中の41(1.0当量)を添加した。反応混合物を0℃で終夜保った。溶媒の蒸発後、残留物を水とジクロロメタンで加工した。分離後、有機相を無水MgSO4上で乾燥し、回転蒸発と真空乾燥した。未精製(crude)N−ベンジル−N−メチルアミノカルボニル−ヒドラジン42(3.6g、87%)を浅黄色ガラス固体状で得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.31 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C3−H (Ph) ), 7.21 (d, J = 8.2 Hz, 2H, C2−H (Ph)), 5.38 (d, J = 7.5 Hz, 1H, CONH), 4.52 (bs, 1H, C1H), 3.82 (m, 2H, ClCH2), 3.67 (m, 2H, NCH2), 3.55 (s, 3H, NCH3), 3.23 and 3.14 (s, 2 x 3H, SO2CH3), 2.87 (s, 2H, NCH2Ph), 2.35 (m, 2H, C2H), 1. 98 (m, 2H, C3H), 1.47 and 1.43 (s, 2 x 9H, CH3)。13C NMR (75 MHz, CDC13) δ 172.7, 172.1, 157.6, 148.8, 137.0, 128.9, 128.7, 121.0, 81.7, 80.5, 53.8, 53.4, 51.2, 41.9, 41.7, 41.3, 40.4, 31.5, 27.9, 27.8 and 27.4。TOF ESMS calculated for (M+H) = 699.21, observed 699.18。
【0135】
実験例23。グルタミン酸(43)とそのジソジウム塩(44)の形成。4−{N−(1,2−ビス(メチルスルホニル)−1−(2−クロロエチル)ヒドラジン−2−yl−カルボナイル)−N−メチルアミノメチル}フェニルオキシ・カルボニル−グルタミン酸(42)とそのジソジウム塩(44)。未精製ガラス状固体42(4.4g、6.4mmol)を蟻酸(200mL)で5℃で終夜処理した。−78℃で凍結後、凍結乾燥により所望のグルタミン酸43を粘性白色固体状で得た。さらなる精製なしで、未精製43を飽和NaHCO3溶液(200mL)で室温で2時間処理した。得られたミルク状混合物を非イオン化水を使いRPFCCで精製した。分留をHPLCでモニターして結合した。凍結乾燥後、ジソジウム塩44(0.78g、20%)を白色粉状で得た。1H NMR (300 MHz, D2O) δ 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C3−H (Ph)), 7.08 (d, J = 7.8 Hz, 2H, C2−H (Ph)), 4.31 (bs, 1H, C1H), 3.83 (m, 2H, ClCH2), 3.67 (m, 2H, NCH2), 3.46 (s, 3H, NCH3), 3.16 (s, 3H, SO2CH3), 2.95 (m, 2H, NCH2Ph), 2.70 (s, 3H, SO2CH3), 1.99 (m, 2H, C2H) and 1.75 (m, 2H, C3H)。13C NMR (75 MHz, D2O) δ 185.0, 182.7, 162.0, 154.4, 150.8, 140.0, 131.0, 123.6, 59.1, 55.1, 53.5, 43.7, 42.9, 36.7, 36.4 and 31.2。TOF ESMS calculated for (M+H) = 631.05, observed 631.04, and for (M+Na) = 653.03, observed 653.03。
【0136】
実験例24。水性溶液中における溶解度と安定性の測定。水中におけるVNP40101Mの溶解度は室温で0.66mg/mLである(Krishna他、AAPS PharmsciTech 2001、2:14巻)。新たに合成されたSHP(19、20a、21、22a)の溶解度は表1に示すようにVNP40101Mより遥かに高い。
【非特許文献29】Krishna他、AAPS PharmsciTech 2001、2:14巻
【0137】
遊離リン酸19、20aについては、過剰量の薬剤を2.0mLの水を含んだガラス容器中に入れた。容器をGlas Col回転装置中で室温で24時間振った。溶けてない薬剤を含んだ懸濁液を遠心分離した。浮遊物を注意深く分離し、薬剤濃度についてHPLCにより分析した。19と20aの溶解度はそれぞれ293と46mg/mLであった。19、20aの水性溶液は無色であった。
【0138】
同様に、ガラス容器中の2.0mLの水に増分量の薬剤を添加して、ナトリウム塩21、22aの溶解度を視覚的に測定した。容器を室温下でGlas Col回転装置中で薬剤が完全に溶けるまで振った。追加の固定量の薬剤を追加し、容器を完全溶解まで振った。このプロセスをそれ以上薬剤が溶けない迄続けた。化合物21、22aは水溶性が高い。限られた薬剤供給の故に平衡状態における溶解度の測定は得られなかった。21、22aについての溶解度は>0.98と>1.35g/mLであった。
【表1】

【0139】
pH3、5、7、9および室温(22−25℃)でリン酸カリウム緩衝液(50mM)中でPAP−101M(19)、OAP−101M(20a)、VNP40101Mの溶解度を検査した。各pHおよび各薬剤において1個の試料を用意して、各試料の初期薬剤濃度は50μg/mLであった。各試料を種々の時点においてHPLCで分析して、各薬剤の濃度を測定した。各薬剤の第1位動的半減期(first−order kinetic half−lives)を計算した。表2に示すように、リン酸基プロドラッグ(phosphate−bearing prodrugs)(19、20a)はVNP40101Mに比べて全く安定であった。
【表2】

【0140】
実験例25。生体外(in vitro)のバイオ変換と安定性の測定。表3にAP(牛科腸内粘膜から、シグマ)または人間プラズマ存在下の化合物19、20aのバイオ変換を示す。最終濃度約5μg/mLの各薬剤を約0.055unit/mLのホスファターゼ酵素含有50mM Tris緩衝生理的食塩水(pH7.6)中で37℃で培養した。
【表3】

【0141】
APなしの50mM Tris緩衝生理的食塩水(pH7.6)中の最終濃度における各薬剤の標準試料50μg/mLを37℃で培養した。各水性溶液を周期的に採取して、HPLCによりテストされた薬剤の消失を測定した。
【0142】
100%人間プラズマ(プールされた混合性別、BioChemed)中の最終濃度50μg/mLでの化合物19、20aおよびVNP40101Mの安定性を評価した。各薬剤(19、20a)を人間プラズマ中で37℃で最長2時間培養した。培養混合物のアリコートを種々の時点で採取しアセトニトリルで抽出した。抽出物を遠心分離しHPLCで直接分析した。同様の方法でVNP40101Mを人間プラズマ中で37℃で最大1時間培養した。種々の時点で培養混合物のアリコートを除き、アセトニトリル中の0.5%H3PO4で抽出した。抽出物を遠心分離し、HPLCで直接分析した。比較のために100%人間プラズマに代えて50mM Tris緩衝生理的食塩水(pH7.6)中で培養された各薬剤の安定性も測定した。
【0143】
(a)対象としたプロドラッグ19、20aはVNP40101Mよりも緩衝生理的食塩水と人間プラズマ中でより安定なこと、(b)それらはアルカリホスファターゼにより迅速に活性化されることが明らかに示された。OAP−101M(20a)はPAP−101M(19)より半減期が長いことが示された。
【0144】
実験例26。ラットにおける薬物動態学的検討。プロドラッグ19、20aの薬物動態学的プロファイルの予備検討が雌のSprague−Dawleyラット(年齢10週、250g、Charles River)中で行われた。各プロドラッグを体重kg(mpk)当り50mgの投薬量で頸静脈を介して単一適量静脈内(iv)注射で投与した。
【0145】
血液試料を以下の時点で投薬日に採取した。投薬前、約2、10、30分、1、2、24時間、投薬後。各時点において、約0.2mLの血液を抗凝固剤(ヘパリン)含有管中に採取して、2.0Mクエン酸溶液0.005mLを添加してすぐに酸性化した。ついで管を4〜6回反転して、即座に氷上に載置した。血液試料を血液採取後30分以内に3000rpmで10〜20分間2〜8℃で遠心処理して、プラズマ分留をラベル付きNunc Cryovialに移した。プラズマ試料を即座にドライアイス上で凍結させ、HPLC−UV分析まで−20℃で保った。実験後動物はCO2吸引により安楽死させた。
【0146】
バイオ分析方法を開発してHPLC−UVを使って220nmまたは230nmでラットプラズマ中のそれらのプロドラッグを定量化した。各プラズマ試料(0.1mL)を0.2mLアセトニトリルで抽出した。抽出物を遠心分離し、HPLC−UVで直接分析した。HPLC検定標準を標準ラットプラズマ中に用意して、上記のように処理した。標準曲線は1.0〜50μg/mLの線型範囲を有していた。
【0147】
ラットの循環からの化合物の迅速な変換または除去の故に19の測定はできなかった。表4に示すように、薬物動態学的パラメータ(濃度−時間曲線−AUC下の領域、総身体除去−Cl、分布の安定状態体積−Vss、最大濃度−Cmax、および最終半減期−T1/2)が計算された。20aについてのプラズマ半減期は約14分であり、19より長い。2つの研究における投薬量の相違の故にVNP101M(10mpkの放射線VNP101Mを前の実験で使った)との比較は困難であった。
【表4】

【0148】
14C]−VNP40101Mの投与後2分でプラズマVNP40101Mレベル(〜10μg/mL)はピークであった。VNP40101Mレベルは下降し、半減期は〜20分であった。最初の2時間後、VNP40101Mはプラズマ中に検知できなかった(Almassian他、Proceedings AACR、2001、42:326、1756巻)。
【非特許文献30】Almassian他、Proceedings AACR、2001、42:326、1756巻
【0149】
実験例27。生体内の抗腫瘍活性の評価。PAP−101M(19)、OAP−101M(20a)、PAP−Naー101M(21)、OAP−Na−101M(22a)含有VNP40101Mおよびプロドラッグの抗腫瘍効果をB16−F10ラット黒腫およびHTB177人間肺癌モデルの両方について評価した。B16−F10黒腫細胞はC57BL/6ラットに皮下移植し(5X105細胞)、腫瘍細胞移植の直後に10グループに無作為抽出した(0日目)。
【0150】
2日目、ラットに0.1mLPBSの適量注射または薬剤のいずれかを腹膜内に注入した。連続4週間に亘り毎週処置を行った。方式LxHxW/2により三次元の腫瘍測定を週一回行った。ここでL、H、Wは長さ、高さ、幅を示す。図11に示すように、PBS標準グループ中のB16−F10腫瘍は指数的に成長して、24日目に約4000mm3に至った。VNP40101Mとテストしたプロドラッグは効果的にB16−F10黒色素細胞腫の成長を抑制した。
【0151】
24日目、VNP40101M80mg/kgで処置したラットにおいては腫瘍成長は81%、プロドラッグの同じ分子量投薬量で処置したラットでは75〜91%抑制された。全てのプロドラッグ中で、OAP−101M(20a)とOAP−Na−101M(22a)は最も効果的であった。腫瘍成長抑制は91%および89.5%であった。他のグループにおけるよりも抑制は顕著に(p<0.05)高かった。
【0152】
OAP−101M(20a)を受けた腫瘍罹病ラットは他の薬剤(図12)を受けたものより長く生存した。体重減少と動物表情により測定されたようにラットにおけるそれら薬剤の毒性は温和であった(図13)。これらプロドラッグの抗腫瘍効果もnu/nuCD−1ラットに移植されたHTB177人間肺癌で図14、15に示すように検査され、OAP−101M(20a)とOAP−Na−101M(22a)も同様に持続した。
【0153】
要約すると、水溶性SHPプロドラッグOAP−101M(20a)とOAP−Na−101M(22a)はB16−F10ラット黒腫およびHTB177人間肺癌に対して抗腫瘍活性を有しており、その効能はVNP40101Mと同じかより良いものであった。
【0154】
結論。リン酸含有SHP OAP−101M(20a)およびOAP−Na−101M(22a)は以下の特性を備えている。(a)高度に水溶性であり、pH3〜9において水性溶液中で安定である。(b)アルカリホスファターゼ(AP)によりその変換は触媒作用できる。(c)PAP−101M(19)およびVNP40101Mよりも生理的食塩水および人間プラズマ中での半減期が長い。(d)PAP−101Mよりも生体中のPKプロファイルが良い。(e)PAP−101M(19)、PAP−Naー101M(21)およびVNP40101Mに比べてB16−F10ラット黒腫およびHTB177人間肺癌に対する抗腫瘍活性が良い。(f)そのナトリウム塩(22a)は遊離酸20aに比べて水溶性が高く抗腫瘍活性が同じである。
【0155】
この発明は以上の記載に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0156】
この発明は腫瘍や癌関係医療の分野において広く利用され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】VNP40101Mの活性化の提案されたメカニズムを示す図である。
【図2】ある種の化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図3】ある種の化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図4】ある種の化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図5】ある化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図6】ある化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図7】ある化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図8】ある化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図9】ある化学的実施例とこの発明による活性化の提案されたメカニズムとを示す図である。
【図10】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。
【図11】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。
【図12】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。
【図13】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。
【図14】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。
【図15】この発明の好ましき実施例の効果と毒性とに関連する実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式を有し、
【化1】

ここでRは−CH3または−CH2CH2Clであり、
R’はC1−C7アルキルまたは−CH2CH2Cl;R2またはR4の一方、双方ではない、はOPO32、NO2、OCO(Glu)、NHCO(Glu)およびNHR7から選ばれ、他のR2またはR4は割り当てられず、
2、R3、R4、R5およびR6の少なくとも2つがHであるとの前提で、R3、R5およびR6は独立にH、F、Cl、Br、I、OH、OPO32、OCH3、CF3、OCF3,NO2、CN、SO2CH3、SO2CF3、COCH3、COOCH3、SCH3、SF5、NHR8、N(R92およびC1−C7アルキルから選ばれ、
7は1〜50のペプチド連鎖を有したグルタミルまたはポリグルタミン酸ポリペプチド残基であり、
8はHまたはC1−C7アルキルであり、
9はCH3またはCH2CH3である
ことを特徴とする化合物またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
Rが−CH2CH2Clであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R’がメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルまたは置換へキシルであることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R’がメチルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項5】
2がOPO32基またはその薬学的に受容可能な塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項6】
3、R5およびR6がそれぞれHのときに、R4がF、ClまたはOCH3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項7】
3、R4、R6がそれぞれHのときに、R5がF、Cl、OCH3またはOCF3であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項8】
3、R4、R5またはR6の2つが独立にFまたはClであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項9】
4とR5が独立にFまたはClであることを特徴とする請求項1〜5および8のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項10】
5とR6が独立にFまたはClであることを特徴とする請求項1〜5、8または9のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項11】
4とR5がClであることを特徴とする請求項1〜5または8〜10のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項12】
5とR6がClであることを特徴とする請求項1〜5または8〜10のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項13】
5がOPO32基またはその薬学的に受容可能な塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項14】
2がNO2であり、R3、R4、R6がそれぞれHであることを特徴とする請求項1〜4および6〜8のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項15】
4がNO2であり、R2、R3、R6がそれぞれHであることを特徴とする請求項1〜5、8に記載の化合物。
【請求項16】
4がOCO(Glu)であり、R2、R3、R5、R6がそれぞれHである
ことを特徴とする請求項1〜5、8のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項17】
OCO(Glu)が薬学的に受容可能な塩の形態であることを特徴とする請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
4がNHCO(Glu)であり、R2、R3、R5、R6がそれぞれHであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項19】
NHCO(Glu)が薬学的に受容可能な塩の形態であることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
4がNHR7であり、R2、R3、R5、R6がそれぞれHであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の化合物。
【請求項21】
7がH、α−グルタミルまたはその薬学的に受容可能な塩または1〜50のペプチド連鎖を有したポリグルタミン酸ポリペプチド残基またはその薬学的に受容可能な塩であることを特徴とする請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
7がα−グルタミルまたはその薬学的に受容可能な塩または2〜10のペプチド連鎖を有したポリグルタミン酸ポリペプチド残基またはその薬学的に受容可能な塩であることを特徴とする請求項21に記載の図4の化合物IVのための化合物。
【請求項23】
選択的に薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせた請求項1〜22のいずれかひとつの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を含んだ薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせた請求項1〜22のいずれかひとつの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を患者に投与することを特徴とする治療を要する患者中の癌処置方法。
【請求項25】
癌が胃、結腸、直腸、肝臓、膵臓、肺、乳房、子宮頸部、子宮体部、卵巣、前立腺、精巣、膀胱、腎臓、脳/CNS、頭部と首部、咽喉、多発性骨髄腫、黒色素細胞腫、急性リンパ白血病、急性骨髄性白血病、ユーウィング肉腫、小胞肺癌、絨毛腫、平滑筋組織腫瘍、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口/咽喉、食道、喉頭、腎臓またはリンパ腫からなる群から選ばれることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
リンパ腫瘍がホジキン病または非ホジキンリンパ腫であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
必要なら患者中の抗薬性癌を処置する方法であって、請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の有効量を患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項28】
少なくともひとつの追加的な抗癌剤と組み合わせて請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の有効量を患者に投与することを特徴とする患者中の癌を処置する方法。
【請求項29】
代謝拮抗物質、シタラビン(Ara C)、エトポシド、ドキソルビシン、タクソール、ヒドロキシウレア、ビンクリスチン、サイトキサン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、トポテカン、カンポセシン(campothecin)、イリノテカン、ゲムシタビン、カンポセシン(campothecin)、シスプラチン(cis−platin)からなる群から選ばれた少なくともひとつの追加的抗癌剤と組み合わせて請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の有効量を患者に投与することを特徴とする患者中の癌を処置する方法。
【請求項30】
選択的に薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせて請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の有効量を患者に投与することを含んでいることを特徴とする患者中の腫瘍形成を処置する方法。
【請求項31】
選択的に薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせた少なくとも1種の追加的な抗癌剤と組み合わせた請求項1〜22のいずれかの化合物の有効量を含んでいることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項32】
代謝拮抗物質、シタラビン(Ara C)、エトポシド、ドキソルビシン、タクソール、ヒドロキシウレア、ビンクリスチン、サイトキサン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、トポテカン、カンポセシン、イリノテカン、ゲムシタビン、カンポセシン、シスプラチンからなる群から選ばれた少なくともひとつの追加的抗癌剤と組み合わせて請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の有効量を含んでいることを特徴とする薬学的組成物。
【請求項33】
選択的に薬学的に受容可能な添加剤、キャリアーまたは賦形剤と組み合わせた化合物の有効量を含んだ抗癌剤の製造のための請求項1〜22のいずれかひとつの化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−516228(P2007−516228A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533183(P2006−533183)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/015547
【国際公開番号】WO2005/004897
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500115262)ヴァイオン ファーマシューティカルズ、インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】