説明

新規なエピスルフィド化合物

【課題】 良好な屈折率とアッベ数のバランスを有する光学材料に高い耐熱性と強度を同時に付与した新規な含硫黄化合物を提供すること。
【解決手段】下記(1)式で表される構造を少なくとも1個以上有する新規なエピスルフィド化合物。
【化1】


(式中、XはSまたはOを表し、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上である。R1 、R2 、R3 はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を示し、R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表す。)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明のエピスルフィド化合物は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でも、眼鏡用プラスチックレンズの原料として好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料、特に眼鏡レンズに近年多用されている。光学材料、特に、眼鏡レンズに要求される性能は、光学性能としては高屈折率と高アッベ数であり、物理的性能としては高耐熱性と高強度である。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減し、高耐熱性と高強度は二次加工を容易にするとともに、薄肉化、安全性等の観点から重要である。従来技術における高屈折率を有する材料は、ポリチオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応により得られるチオウレタン構造を有する熱硬化型光学材料(特公平4−58489号公報、特開平5−148340号公報)等に提案されている。さらには、エポキシ樹脂またはエピスルフィド樹脂を2官能以上の化合物と重合しレンズを得る技術も、特開平1−98615号公報、特開平3−81320号公報、国際公開wo8910575に提案されている。しかし、さらに高い屈折率が望ましいことは言うまでもない。一方、光学材料に要求されるもう一つの重要な性能として色収差が少ないことが挙げられる。色収差はアッベ数が高い程良好となるため高アッベ数材料が望まれる。すなわち、高屈折率と高アッベ数の同時実現も望まれている。しかしながら、一般に、アッベ数は屈折率の上昇に伴い低下する傾向を示し、従来技術の化合物を原料とするプラスチック材料では、屈折率1.50から1.55の場合アッベ数は約50から55が、屈折率1.60の場合40、屈折率1.66の場合31程度が限界であった。
【0003】さらに、従来技術、特にチオウレタン材料等の場合、高屈折率発現のためには原料硫黄化合物の分子量が大となり、このため架橋密度が低下し、高アッベ数発現のためにはアルキル基含有量が増加し、このため原料化合物を構成する分子の剛直性が低下し、結果として耐熱性が低下する。つまり、従来技術により得られるエピスルフィド化合物、ポリチオール化合物とイソシアネート化合物による光学材料では、高い屈折率とアッベ数と十分に高い耐熱性のバランスが得られなかった。この問題を解決するために、本願発明者らは屈折率1.70程度の場合アッベ数36程度を有する光学材料を可能とするエピスルフィド構造を有する新規な直鎖状(特開平9−71580)、分岐状(特開平9−110979)、環状(特願平9−6790)の含硫黄化合物を見いだし、先に特許出願を行った。これらの化合物から得られる光学材料は光学物性は十分に高いものでありかつ、プラスチックレンズ材料に通常要求される耐熱性と強度に関しては満足されるものであった。
【0004】しかしながら、耐熱性に関しては、レンズ加工時の熱履歴、および使用環境を考慮した場合さらに改良が望ましいことは言うまでもなく、強度に関しても安全性の面から一層の改良が望ましいことは言うまでもない。耐熱性が十分に高い場合、レンズの染色やコート等の加工時に熱変形やコートクラックが発生しにくく歩留まり、品質向上に有利である。さらに強度が十分高い場合、眼鏡用レンズとしての安全性が向上するばかりか、孔あけ加工等の作業性が向上する。すなわち、先に見いだしたエピスルフィド構造を有する新規な含硫黄化合物は、屈折率1.70程度の場合アッベ数36程度を有する高光学物性材料が得られ、しかも耐熱性、強度も必要性能を満たしているが、主鎖が単純な構造でかつポリスルフィド構造だけから成るために耐熱性および強度の一層の改良には限界があった。このため、主鎖構造上の何らかの改良が必要であり、ひいては、主鎖を構成する新規な硫黄化合物の発明が必要な状況にあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、良好な屈折率とアッベ数のバランスを有する光学材料に高い耐熱性と強度を同時に付与した新規な含硫黄化合物を見いだすことにある。従来技術により得られるエピスルフィド化合物による光学材料では、高屈折率化は満足されるものの、単独では十分に高い耐熱性と強度が同時に得られないことに課題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは高光学物性を有する光学材料に高い耐熱性と強度を同時に付与することを検討した結果、本発明の課題は下記(1)式で表される構造を少なくとも1個以上有する新規なエピスルフィド化合物から得られる光学材料により解決することが明らかになった。
【化4】


(式中、XはSまたはOを表し、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上である。R1 、R2 、R3 はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を示し、R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表す。ただし、下記(2)式および(3)式で表されるエピスルフィド化合物と環状骨格を有するエピスルフィド化合物を除く。)
【化5】


【化6】


上記(1)式で表される構造を少なくとも1個以上有する新規なエピスルフィド化合物は、直鎖状、分岐状、エステル結合等の含有等を問わずに本発明の効果が得られる。また、(1)式で表される構造を少なくとも1個以上有する新規なエピスルフィド化合物は、(1)式で表される構造が好ましくは両者合わせて2個以上あること、または(1)式で表される構造1個と(1)式で表される以外のエピスルフィド構造が1個以上あることが耐熱性を高める面から望ましい。(1)式において、XはSまたはOを表すが、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上であり、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%、特に好ましくは100%である。R1 、R2 、R3はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を表すが、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基または水素であり、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基または水素である。また、R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表すが、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基または水素であり、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基または水素である。(1)式において、X中のSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で80%以下、特に50%以下の場合、硫黄含有量が低下し高屈折率が達成されず、さらに化合物の反応性低下に伴い高温条件下での重合が必要となるために材料に着色が生じる。また、R1 、R2 、R3 のうちいずれかもしくは複数が炭素数7〜10の炭化水素基の場合、硫黄含有量が低下し高屈折率が達成されない。R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表すが、これは分岐状でも環状を含んでも構わない。R4 の炭素数が7〜10の炭化水素基では硫黄含有量が低下し高屈折率が達成されずさらに耐熱性が低下し、0の場合は化合物が不安定となる。これらR1 、R2 、R3 およびR4 の炭化水素基の炭素数を骨格構造に合わせて適当に選択することにより、より詳細な屈折率とアッベ数のバランスの制御が可能である。
【0007】本発明の化合物およびこれを重合硬化して得られる光学材料の性能は以上のようにR1 、R2 、R3 、R4 の数およびX中のSの割合により決定される。好ましい例としてエピスルフィド環上アルキル置換型エピスルフィド化合物、骨格アルキル置換型エピスルフィド化合物、分岐ポリスルフィド型エピスルフィド化合物、エステル構造含有エピスルフィド化合物等が挙げられる。これらの好ましい具体例のいくつかを例示的に以下に実際に示す。
【0008】エピスルフィド環上アルキル置換型エピスルフィド化合物の好ましい具体例としては、
【化7】


等の化合物が挙げられる。
【0009】骨格アルキル置換型エピスルフィド化合物の好ましい具体例としては、
【化8】


等の化合物が挙げられる。
【0010】分岐ポリスルフィド型エピスルフィド化合物の好ましい具体例としては、
【化9】


【化10】


【0011】エステル構造含有エピスルフィド化合物の好ましい具体例としては、β−エピチオプロパノール(β−エピチオプロピルチオアセテート)、β−エピチオプロパノール(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、β−エピチオプロパノール(β−エピチオプロピルチオブテネート)、β−エピチオプロピルチオエタノール(β−エピチオプロピルチオアセテート)、β−エピチオプロピルチオエタノール(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、β−エピチオプロピルチオエタノール(β−エピチオプロピルチオブテネート)、β−エピチオプロピルチオエチルチオエタノール(β−エピチオプロピルチオアセテート)、β−エピチオプロピルチオエチルチオエチルチオール(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、β−エピチオプロピルチオエチルチオエチルチオール(β−エピチオプロピルチオブテネート)、β−エピチオプロピルチオ酢酸無水物、β−エピチオプロピルチオプロピオン酸無水物、β−エピチオプロピルチオ酪酸無水物、エチレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、エチレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、プロピレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、プロピレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、ジエチレングリコールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、1,4−シクロヘキサンジオールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、トリメチロールプロパンビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、トリメチロールプロパントリス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、ペンタエリスリトールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、ペンタエリスリトールトリス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、2,5−ヒドロキシメチル−1,4−ジチアンビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、2,5−ヒドロキシメチル−1,4−ジチアンビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、カテコールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、カテコールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、レゾルシノールビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、レゾルシノールビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、ハイドロキノンビス(β−エピチオプロピルチオアセテート)、ハイドロキノンビス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)、2−(β−エピチオプロピルチオ)シュウ酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2−(β−エピチオプロピルチオ)コハク酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2−(β−エピチオプロピルチオ)グルタル酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3−(β−エピチオプロピルチオ)グルタル酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2−(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3−(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)コハク酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)グルタル酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)グルタル酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)アジピン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3−チアペンタン−1,5−ジカルボン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3,4−ジチアヘキサン−1,6−ジカルボン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、3,5−ジチアヘプタン−1,7−ジカルボン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル、4−(β−エピチオプロピルチオエチルカルボキシメチルチオ)−3,5−ジチアヘプタン−1,7−ジカルボン酸ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)エステル等が挙げられる。
【0012】本発明の、新規なエピスルフィド化合物は、メルカプト基を有する硫黄化合物(硫化水素を含む)またはこれらの金属塩等と、エピクロルヒドリン、アルキルエピクロロヒドリンに代表されるエピハロヒドリンまたはアルキルエピハロヒドリンとをアルカリ存在下で反応させて、(1)式でXがOであるエポキシ構造を有する化合物を得、ついで、該エポキシ化合物を、チオシアン酸塩、チオ尿素、トリフェニルホスフィンスルフィド、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等のチア化剤と、好ましくはチオシアン酸塩、チオ尿素と反応させ製造される。アルキルエピハロヒドリン化合物は使用する硫黄化合物の2倍モルを使用するが、生成物の純度、反応速度、経済性等を重視するのであれば、これ以下でもこれ以上の量を使用してもかまわない。好ましくは2〜5倍モル使用し反応する。より好ましくは2〜3倍モルを使用し反応する。反応は、無溶媒あるいは溶媒中のいずれでもかまわないが、溶媒を使用するときは、アルキルエピハロヒドリンあるいは硫黄化合物のいずれかが可溶のものを使用することが望ましい。具体例としては、水、アルコール類、エーテル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等があげられる。反応は量論以上の塩基の存在下において容易に進行する。塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の三級アミン、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物等があげられるが、好ましいものは、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物であり、より好ましいものは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。また、この反応において、テトラブチルアンモニウムブロミド等の相関移動触媒を用いてもかまわない。反応温度は通常0〜100℃で実施されるが、好ましくは0〜60℃である。反応時間は上記の各種条件下で反応が完結する時間であればかまわないが、通常10時間以下が適当である。
【0013】(1)式のXがOであるエポキシ化合物より本発明の新規なエピスルフィド化合物を製造する方法において、チア化剤としてチオシアン酸塩を使用する場合、好ましいチオシアン酸塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩であり、より好ましいものは、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウムである。また、チア化剤であるチオシアン酸塩、チオ尿素は量論的にはエポキシ化合物のエポキシ基数に対応するモル数を使用するが、生成物の純度、反応速度、経済性等を重視するのであれば、これ以下でもこれ以上の量を使用してもかまわない。好ましくは量論〜量論の5倍モル使用し反応する。より好ましくは量論〜量論の2.5倍モルを使用し反応する。反応は、無溶媒あるいは溶媒中のいずれでもかまわないが、溶媒を使用するときは、チオシアン酸塩あるいはチオ尿素さらにはエポキシ化合物いずれかが可溶のものを使用することが望ましい。具体例としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のヒドロキシエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等があげられ、これらの併用使用、例えば、アルコール類と水の組み合わせ、エーテル類、ヒドロキシエーテル類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類とアルコール類の組み合わせ等は効果的な場合がある。また、反応液中に酸および酸無水物等を重合抑制剤として添加することは、反応成績を上げる面から有効な手段である。酸および酸無水物等の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、発煙硫酸、ホウ酸、ヒ酸、燐酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、蓚酸、酒石酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、無水硝酸、無水硫酸、酸化ホウ素、五酸化ヒ酸、五酸化燐、無水クロム酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、シリカゲル、シリカアルミナ、塩化アルミニウム等があげられ、これらのいくつかを併用することも可能である。添加量は通常反応液総量に対して0.001〜10wt%の範囲で用いられるが、好ましくは0.01〜1wt%である。反応温度は通常0〜100℃で実施されるが、好ましくは20〜70℃である。反応時間は上記の各種条件下で反応が完結する時間であればかまわないが通常20時間以下が適当である。反応生成物は酸性水溶液を用いた洗浄によって、得られる化合物を安定性を向上せしめることが可能である。酸性水溶液に用いる酸の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、ヒ酸、燐酸、青酸、酢酸、過酢酸、チオ酢酸、蓚酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸等があげられる。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いても良い。これらの酸の水溶液は通常pH6以下で効果を現すが、より効果的な範囲はpH3以下である。
【0014】以上とは別の製法として、上記(1)式のXがOであるエポキシ化合物を、対応する下記(4)式で表される不飽和化合物を有機過酸、アルキルヒドロペルオキサイド、過酸化水素等による酸化により製造しこれを上述の方法により上記(1)式のエピスルフィド化合物とする方法も挙げられる。
【化11】


(ここで、R1 、R2 、R3 はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を表し、R1 、R2 、R3 の少なくとも1つは水素ではない。R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表す。)
【0015】さらに、別法としては(1)式において(4)式で表される構造を有するハロメルカプタン化合物より脱ハロゲン化水素反応により製造することも有力な方法である。
【化12】


(ここで、R1 、R2 、R3 はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を表し、R1 、R2 、R3 の少なくとも1つは水素ではない。R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表す。Zは塩素あるいは臭素原子を表す。)
ハロメルカプタンは、上述の(5)式で表される不飽和化合物と例えば塩化イオウ類から、容易に合成できることが知られている(例えば、F.Lautenschlaergerら,J.Org.Chem.,34,396(1969))。
【0016】本発明のエピスルフィド化合物は、硬化触媒の存在下あるいは不存在下に、加熱重合し樹脂を製造することができる。好ましい方法は硬化触媒を使用する方法であり、硬化触媒はアミン類、フォスフィン類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸等が使用される。具体例としては、(1)エチルアミン、n−プロピルアミン、sec−プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミスチリルアミン、1,2−ジメチルヘキシルアミン、3−ペンチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノエタノール、1−アミノプロパノール、2−アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノノルボルネン、アミノメチルシクロヘキサン、アミノベンゼン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、α−フェニルエチルアミン、ナフチルアミン、フルフリルアミン等の1級アミン;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2’−ジメチルプロパン、アミノエチルエタノールアミン、1,2−、1,3−あるいは1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−あるいは4−アミノピペリジン、2−あるいは4−アミノメチルピペリジン、2−あるいは4−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルモルホリン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、o−、m−、あるいはp−フェニレンジアミン、2,4−あるいは2,6−トリレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−アミノベンジルアミン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、テトラクロロ−p−キシリレンジアミン、4−メトキシ−6−メチル−m−フェニレンジアミン、m−、あるいはp−キシリレンジアミン、1,5−あるいは、2,6−ナフタレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジトリルスルホン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、1,4−ビス(アミノエチルピペラジン)、1,4−ビス(アミノプロピルピペラジン)、2,6−ジアミノピリジン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン等の1級ポリアミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−3−ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、オクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2−、3−、4−ピコリン、2,4−、2,6−、3,5−ルペチジン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジナフチルアミン、ピロール、インドリン、インドール、モルホリン等の2級アミン;N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)ブタン、テトラメチルグアニジン等の2級ポリアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−iso−プロピルアミン、トリ−1,2−ジメチルプロピルアミン、トリ−3−メトキシプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−iso−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−ペンチルアミン、トリ−3−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ−ドデシルアミン、トリ−ラウリルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリ−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N−メチルジヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N、N−ジエチルエタノールアミン、N、N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、キノリン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボルナン等の3級アミン;テトラメチルエチレンジアミン、ピラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ビス((2−ヒドロキシ)プロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンアミン、2−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、N,N,N−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、2,4,6−トリス(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘプタメチルイソビグアニド等の3級ポリアミン;イミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、、N−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、N−ブチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、N−ウンデシルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール、2−ベンジルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−ウンデシルイミダゾール、N−(2’−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、3,3−ビス−(2−エチル−4−メチルイミダゾリル)メタン、アルキルイミダゾールとイソシアヌール酸の付加物、アルキルイミダゾールとホルムアルデヒドの縮合物等の各種イミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン類;以上に代表されるアミン系化合物。
(2)上記(1)のアミン類とハロゲン、鉱酸、ルイス酸、有機酸、ケイ酸、四フッ化ホウ酸等との4級アンモニウム塩。
(3)上記(1)のアミン類とボランおよび三フッ化ホウ素とのコンプレックス。
(4)トリメチルフォスフィン、トリエチルフォスフィン、トリ−iso−プロピルフォスフィン、トリ−n−ブチルフォスフィン、トリ−n−ヘキシルフォスフィン、トリ−n−オクチルフォスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルフォスフィン、トリベンジルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジメチルフェニルフォスフィン、ジエチルフェニルフォスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、エチルジフェニルフォスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルフォスフィン等のフォスフィン類。
(5)塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、炭酸等の鉱酸類およびこれらの半エステル類。
(6)3フッ化硼素、3フッ化硼素のエーテラート等に代表されるルイス酸類。
(7)有機酸類およびこれらの半エステル類(8)ケイ酸、四フッ化ホウ酸。
(9)ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロリドおよびトリブチルスズクロリド等のスズ化合物。
等である。これらのなかで硬化物の着色が少なく好ましいものは、1級モノアミン、2級モノアミン、3級モノアミン、3級ポリアミン、イミダゾール類、アミジン類、4級アンモニウム塩、フォスフィン、スズ化合物であり、より好ましいものは、エピスルフィド基と反応し得る基を1個以下有する化合物である、2級モノアミン、3級モノアミン、3級ポリアミン、イミダゾール類、アミジン類、4級アンモニウム塩、フォスフィン類である。また、これらは単独でも2種類以上を混合して用いても良い。以上の硬化触媒は、(1)式で表される構造を1分子中に1個以上有する化合物1モルに対して通常0.0001モルから1.0モル使用するが、好ましくは、0.0001モルから0.5モル、より好ましくは、0.0001モルから0.1モル未満、最も好ましくは、0.0001モルから0.05モル使用する。硬化触媒の量がこれより多いと硬化物の屈折率、耐熱性が低下し、また着色する。これより少ないと十分に硬化せず耐熱性が不十分となる。
【0017】本発明において重合硬化した材料にさらに耐酸化性を付与せしめるために、坑酸化成分としてSH基1個以上有する化合物を単独もしくは公知の酸化防止剤と併用して使用することも可能である。上述のSH基を1個以上有する化合物を、以下により具体的に示す。メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、tert−ノニルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、4−クロロベンジルメルカプタン、メチルチオグリコーレート、エチルチオグリコーレート、n−ブチルチオグリコーレート、n−オクチルチオグリコーレート、メチル(3−メルカプトプロピオネート)、エチル(3−メルカプトプロピオネト)、3−メトキシブチル(3−メルカプトプロピオネート)、n−ブチル(3−メルカプトプロピオネート)、2−エチルヘキシル(3−エルカプトプロピオネート)、n−オクチル(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、2−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、2−フェニル−2−メルカプトエタノール、2−フェニル−2−ヒドロキシエチルメルカプタン、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール等のモノメルカプタン類;メタンジチオール、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,4−ジメルカプトブタン、1,6−ジメルカプトヘキサン、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メルカプトメチル−1,3−ジメルカプトプロパン、2−メルカプトメチル−1,4−ジメルカプトブタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、 ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,1−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ジメルカプトシクロヘキサン、1,3−ジメルカプトシクロヘキサン、1,2−ジメルカプトシクロヘキサン、1,4−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−メルカプトメチルフェニル)プロパン、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、3,4−チオフェンジチオール、1,2−ジメルカプト−3−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、グリセリルジチオグリコーレート等のポリメルカプタン類;チオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール、2−メチルチオフェノール、3−メチルチオフェノール、4−メチルチオフェノール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、2−ヒドロキシチオフェノール、3−ヒドロキシチオフェノール、4−ヒドロキシチオフェノール等のチオフェノール類;アリルメルカプタン、2−ビニルベンジルメルカプタン、3−ビニルベンジルメルカプタン、4−ビニルベンジルメルカプタン等の不飽和基を有するメルカプタン類;としては、2−ビニルチオフェノール、3−ビニルチオフェノール、4−ビニルチオフェノール等の不飽和基を有するチオフェノール類をあげることができる。これらは、単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわず、本発明の化合物100重量部に対して0.001〜40重量部使用可能である。
【0018】本発明の化合物は単独で十分良好な染色性を有するが、さらに染色性を向上せしめるために、染色性向上成分として、カルボン酸、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミド、1,3−ジケトン、1,3−ジカルボン酸、3−ケトカルボン酸およびそのエステル類、不飽和基を有する化合物と併用して使用することも可能である。より具体的には、カルボン酸類としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、メチルメルカプトプロピオネート、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、チオジプロピオン酸、ジチオジプロピオン酸等をあげることができる。メルカプトカルボン酸類としては、チオグリコール酸、2−チオプロピオン酸、3−チオプロピオン酸、チオ乳酸、メルカプトコハク酸、チオリンゴ酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプト安息香酸、2−メルカプトニコチン酸、3,3−ジチオイソ酪酸、ジチオグリコール酸、ジチオプロピオン酸等をあげることができる。ヒドロキシカルボン酸類としては、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、α−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシ酢酸、γ−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸等があげられる。アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ベンズアミド、トルアミド、4−ヒドロキシベンズアミド、3−ヒドロキシベンズアミド等をあげることができる。1,3−ジケトン類としては、アセチルアセトン、シクロヘキサン−1,3,5−トリオン等があげられる。1,3−ジカルボン酸およびそのエステル類としては、マロン酸、2−メチルマロン酸等およびそれらのモノ、ジエステル類があげられる。3−ケトカルボン酸およびそのエステル類としては、アセト酢酸およびそのエステル類等があげられる。また、不飽和基を有する化合物として、アルコール類、フェノール類、メルカプタン類、チオフェノール類、メルカプトアルコール類、カルボン酸類、アミド類を以下に具体的に示す。不飽和基を有するアルコール類としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,3−ジメタクリロキシ−2−プロパノール、1,3−ジアクリロキシ−2−プロパノール、1−アクリロキシ−3−メタクリロキシ−2−プロパノール、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのペンタメタクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのペンタアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、シンナミルアルコール、4−ビニルベンジルアルコール、3−ビニルベンジルアルコール、2−(4−ビニルベンジルチオ)エタノール、2−(3−ビニルベンジルチオ)エタノール、1,3−ビス(4−ビニルベンジルチオ)−2−プロパノール、1,3−ビス(3−ビニルベンジルチオ)−2−プロパノール、2,3−ビス(4−ビニルベンジルチオ)−1−プロパノール、2,3−ビス(3−ビニルベンジルチオ)−1−プロパノール、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートビス(アクリレート)、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートビス(メタクリレート)、2−ヒドロキシエチルシアヌレートビス(アクリレート)、2−ヒドロキシエチルシアヌレートビス(メタクリレート)、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3オール、プロパギルアルコール等のモノヒドロキシ化合物;ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートモノ(アクリレート)、2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートモノ(メタクリレート)、2−ヒドロキシエチルシアヌレートモノ(アクリレート)、2−ヒドロキシエチルシアヌレートモノ(メタクリレート)、等のポリヒドロキシ化合物、また、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン等の後述するエポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸の付加反応で生成する不飽和ポリヒドロキシ化合物等をあげることができる。不飽和基を有するフェノール類としては、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール等をあげることができる。不飽和基を有すメルカプトアルコール類としては、2−(4−ビニルベンジルチオ)−2−メルカプトエタノール、2−(3−ビニルベンジルチオ)−2−メルカプトエタノール、等をあげることができる。不飽和基を有するカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、マレイン酸、フマル酸、フタル酸モノアリルエステル、ケイ皮酸等をあげることができる。不飽和基を有するアミド類としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα、β−不飽和カルボン酸類のアミド、N−ビニルホルムアミド等をあげることができる。耐熱性の観点から、好ましい化合物はメルカプトアルコール類、ヒドロキシチオフェノール類、不飽和基を有するアルコール類である。これらは、単独でも、2種類以上を混合して使用してもかまわず、本発明の化合物100重量部に対して0.001〜40重量部使用可能である。
【0019】また、本発明のエピスルフィド化合物は前述の坑酸化成分と染色性向上成分の他に、ポリエピスルフィド中のエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物、あるいは、これらの官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、これらの単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、さらには、エピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能でかつ単独重合も可能な官能基を1個有する化合物と硬化重合して製造することもできる。ポリエピスルフィド中のエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物としては、エポキシ化合物、公知のエピスルフィド化合物、多価カルボン酸無水物等があげられる。一方、エピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物としては、メタクリル、アクリル、アリル、ビニル、芳香族ビニル等の不飽和基を有するエポキシ化合物、エピスルフィド化合物、カルボン酸無水物等があげられる。単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物としては、メタクリル、アクリル、アリル、ビニル、芳香族ビニル等の不飽和基を有する化合物があげられる。以下にエピスルフィド基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物の具体例を示す。
【0020】エポキシ化合物の具体例としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルフォン、ビスフェノールエーテル、ビスフェノールスルフィド、ビスフェノールスルフィド、ハロゲン化ビスフェノールA、ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール、1、3−および1、4−シクロヘキサンジオール、1、3−および1、4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物;アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソ、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘット酸、ナジック酸、マレイン酸、コハク酸、フマール酸、トリメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2’−ジメチルプロパン、1,2−、1,3−あるいは1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−あるいは1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、m−、あるいはp−フェニレンジアミン、2,4−あるいは2,6−トリレンジアミン、m−、あるいはp−キシリレンジアミン、1,5−あるいは、2,6−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン等の一級ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)−メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)−エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)−ブタン等のニ級ジアミンとエピハロヒドリンの縮合により製造されるアミン系エポキシ化合物;3、4−エポキシシクロヘキシル−3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクリヘキサンジオキサイド、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)−5、5−スピロ−3、4−エポキシシクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3、4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物;シクロペンタジエンエポキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン、ビニルシクロヘキセンエポキシド等の不飽和化合物のエポキシ化により製造されるエポキシ化合物;上述の多価アルコール、フェノール化合物とジイソシアネートおよびグリシドール等から製造されるウレタン系エポキシ化合物等をあげることができる。
【0021】エピスルフィド化合物の具体例としては、以上のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全てをエピスルフィド化して得られるエピスルフィド化合物をあげることができる。
【0022】多価カルボン酸無水物等の具体例としては上述のエポキシ化合物のところで説明したエピハロヒドリンと反応させる相手の原料として上述したものをあげることができる。
【0023】また、以下にポリエピスルフィド中のエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物の代表的具体例を示す。不飽和基を有するエポキシ化合物としては、ビニルフェニルグリシジルエーテル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等をあげることができる。不飽和基を有するエピスルフィド化合物としては上記の不飽和基を有するエポキシ化合物のエポキシ基をエピスルフィド化した化合物、例えば、ビニルフェニルチオグリシジルエーテル、ビニルベンジルチオグリシジルエーテル、チオグリシジルメタクリレート、チオグリシジルアクリレート、アリルチオグリシジルエーテル等をあげることができる。
【0024】単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物の具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス〔4−(アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのヘキサアクリレート、ビス(2,2,2−トリメチロールエチル)エーテルのヘキサメタクリレート等の1価以上のアルコールとアクリル酸、メタクリル酸のエステル構造を有する化合物;アリルスルフィド、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物;アクロレイン、アクリロニトリル、ビニルスルフィド等のビニル化合物;スチレン、α−メチルスチレン、メチルビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、α−クロロスチレン、クロロビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物等があげられる。
【0025】また、ポリエピスルフィド中のエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能でかつ単独重合も可能な官能基を1個有する化合物の好ましい具体例としてはエポキシ基あるいはエピスルフィド基を1個有する化合物をあげることができる。より具体的には、エチレンオキサイド、プロピレオキサイド、グリシドール等のモノエポキシ化合物類、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等のモノカルボン酸のグリシジルエステル類、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類あるいは、エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド等のモノエピスルフィド化合物、上述のモノカルボン酸とチオグリシドール(1,2−エピチオ−3−ヒドロキシプロパン)から誘導される構造を有するチオグリシジルエステル類、メチルチオグリシジルエーテル(1,2−エピチオプロピルオキシメタン)、エチルチオグリシジルエーテル、プロピルチオグリシジルエーテル、ブチルチオグリシジルエーテル等のチオグリシジルエーテル類をあげることができる。これらの中でより好ましいものはエピスルフィド基を1個有する化合物である。
【0026】本発明のポリエピスルフィド中のエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物あるいは、これらの官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物とは、硬化重合触媒の存在下、硬化重合し製造することができる。硬化触媒は、前述のアミン類、ホスフィン類、酸類等が使用される。具体例としては、前述のものがここでも使用される。
【0027】さらに、不飽和基を有する化合物を使用する際には、重合促進剤として、ラジカル重合開始剤を使用する事は好ましい方法である。ラジカル重合開始剤とは、加熱あるいは紫外線や電子線によってラジカルを生成するものであれば良く、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、ter−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ter−ブチルパーオキシネオデカノエート、ter−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、ter−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−ter−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド類;クメンヒドロパーオキサイド、ter−ブチルヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド類;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル2、2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物等の公知の熱重合触媒、ベンゾフェノン、ベンゾインベンゾインメチルエーテル等の公知の光重合触媒が挙げられる。これらのなかで好ましいものは、パーオキサイド類、ヒドロパーオキサイド類、アゾ系化合物であり、より好ましいものは、パーオキサイド類、アゾ系化合物であり、最も好ましいものは、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バレロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロパン)2、2’−アゾビス、(2、4、4−トリメチルペンタン)等のアゾ系化合物である。またこれらは、全て混合使用することができる。ラジカル重合開始剤の配合量は、組成物の成分や硬化方法によって変化するので一慨には決められないが、通常は組成物総量に対して0.01wt%〜5.0wt%、好ましくは0.1wt%〜2.0wt%の範囲である。
【0028】また、本発明のエピスルフィド化合物を重合硬化して光学材料を得るに際して、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。また、本発明のエピスルフィド化合物は重合中に型から剥がれやすい場合は、公知の外部および/または内部密着性改善剤を使用または添加して、得られる硬化材料と型の密着性を制御向上せしめることも必要である。ここに言う内部密着性改善剤とは、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物等を言い、本発明のエピスルフィド化合物100重量部に対して0.0001〜5重量部使用することができる。逆に、本発明のエピスルフィド化合物が重合後に型から剥がれにくい場合は、公知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化材料の型からの離型性を向上せしめることも可能である。ここに言う内部離型剤とは、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、アルキル第4級アンモニウム塩、燐酸エステル、酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物等があげられる。
【0029】本発明のエピスルフィド化合物を重合硬化して得るに際し、原料となるポリエピスルフィド、さらには所望に応じて前述の抗酸化成分、染色性向上成分、硬化触媒、不飽和基を有しエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な例えばグリシジルメタクリレート、チオグリシジルメタクリレート(グリシジルメタクリレートのエポキシ基をエピスルフィド化したもの)等を併用する場合、ラジカル重合開始剤、ラジカル重合可能な単量体、さらには、密着性改善剤もしくは内部離型剤、既述の抗酸化成分以外の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤混合後、次の様にして重合硬化してレンズ等の光学材料とされる。すなわち、混合後の原料を必要であれば外部離型剤が塗布されたガラスや金属製の型に注入し、加熱によって重合硬化反応を進めた後、型から外し製造される。原料エピスルフィドおよび副原料の抗酸化成分、染色性向上成分、エピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物、これらの官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、これらの単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、エピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能でかつ単独重合も可能な官能基を1個有する化合物は、単独反応可能な場合は単独および/または反応可能な他の原料および/または副原料との組み合わせで、また、単独反応が不可能な場合は反応可能な他の原料および/または副原料との組み合わせで、その一部または全量を注型前に触媒の存在下または非存在下、撹拌下または非撹拌下で−100〜160℃で、0.1〜48時間かけて予備的に反応せしめた後組成物を調製して注型を行う事も可能である。ここで言う単独反応可能とは、原料または副原料が単独反応が不可能な化合物のみからなる場合、または、単独反応が不可能でかつ互いに反応不可能な複数の成分より成る場合を言う。硬化時間は0.1〜100時間、通常1〜48時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間の保持、0.1℃〜100℃/hの昇温、0.1℃〜100℃/hの降温およびこれらの組み合わせで行うことができる。また、硬化終了後、材料を50から150℃の温度で10分から5時間程度アニール処理を行う事は、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに必要に応じて染色、ハードコート、反射防止、防曇性付与等表面処理を行うことができる。本発明の硬化樹脂光学材料の製造方法は、さらに詳しく述べるならば以下の通りである。前述の様に、主原料および副原料を混合後、型に注入硬化して製造されるが、主原料であるエピスルフィドと所望により使用されるエピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物あるいは、これらの官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物、エピスルフィド基および/またはエポキシ基と反応可能でかつ単独重合も可能な官能基を1個有する化合物、さらには所望に応じて使用される、抗酸化成分、硬化触媒、ラジカル重合開始剤、さらには密着性改善剤、安定剤等は、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても、各原料を段階的に添加混合しても、数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合しても良い。各原料および副原料はいかなる順序で混合してもかまわない。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であればよいが、過剰の温度、時間は各原料、添加剤間の好ましくない反応が起こり、さらには粘度の上昇を来たし注型操作を困難にする等適当ではない。混合温度は−20℃から100℃程度の範囲で行われるべきであり、好ましい温度範囲は−10℃から50℃、さらにに好ましいのは、−5℃から30℃である。混合時間は、1分から5時間、好ましくは5分から2時間、さらに好ましくは5分から30分、最も好ましいのは5分から15分程度である。各原料、添加剤の混合前、混合時あるいは混合後に、減圧下に脱ガス操作を行う事は、後の中型重合硬化中の気泡発生を防止する点からは好ましい方法である。この時の減圧度は0.1mmHgから700mmHg程度で行うが、好ましいのは10mmHgから300mmHgである。さらに、主原料、副原料を混合前あるいは混合後にミクロフィルター等で不純物等を濾過し除去することは光学材料の品質をさらに高める上からも好ましい。
【0030】
【発明の効果】本発明の化合物を重合硬化して得られる硬化樹脂光学材料により、従来技術の化合物を原料とする限り困難であった高い屈折率と良好なアッベ数のバランスを有する樹脂光学材料に、十分に高い耐熱性と強度を同時に付与せしめることが可能となった。すなわち本発明により、レンズの飛躍的な薄肉化と軽量化が実現可能となった。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた重合物の評価は以下の方法で行った。 屈折率(nD )、アッベ数(νD ):アッベ屈折計を用い、25℃で測定した。
耐熱性:5kg荷重ビカット法で針が0.1mm侵入した温度。
強度:2mm厚の平板の落球試験において、試験板中の50%の枚数が破損する破壊エネルギー。
【0032】実施例1撹拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコにテトラブチルアンモニウムブロマイド50gをβ−メチルエピクロルヒドリン11.52kg(108.1mol)に溶かし入れ、液温28〜36℃で硫化水素1.84kg(54.05mol)を通じた。液温を10℃まで冷却し、20%食塩水47.4kgを加えた。その後、同温度で35%水酸化ナトリウム16.67kg(145.9mol)を滴下した。反応混合物にトルエン25.2lを加え抽出し、トルエン層を水33.6lで2回洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留去し、純度98%(GC測定)で無色液状の2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエポキシ−4−チアヘプタン7.84kg(理論量83%)を得た。次いで、撹拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコに2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエポキシ−4−チアヘプタン435.7g(2.5molとチオ尿素761.2g(10.0mol)および無水酢酸41.0g(0.4mol)さらに溶媒としてトルエン2.6Lおよびメタノール2.6L仕込み、28℃で8時間30分間反応した。反応後トルエンで抽出し、10%硫酸水溶液で洗浄、水洗後過剰の溶媒を留去したところ433.4g(収率84%)の生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物は2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエピチオ−4−チアヘプタンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 46.28% 46.55% H 6.99% 6.84% S 46.43% 46.61% マススペクトル(EI):M+. 206(理論分子量206)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.2ppm(m,2H)
2.8ppm(m,2H)
2.7ppm(m,2H)
2.4ppm(m,2H)
1.3ppm(m,6H)
13C−NMR:50.0ppm,41.6ppm,33.6ppm, 30.3ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で5時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を、表1に示した。
【0033】実施例2攪拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコに、テトラブチルアンモニウムブロマイド50gをβ−メチルエピクロルヒドリン11.52kg(108.1mol)に溶かし入れ、さらに、水酸化ナトリウム80g(2.0mol)を水800mlに溶かした水溶液を加え、液温28〜36℃で硫化水素1.84kg(54.05mol)を通じた。液温を10℃まで冷却し、20%食塩水47.4kgを加えた。その後、同温度で35%水酸化ナトリウム16.67kg(145.9mol)を滴下した。反応混合物にトルエン25.2Lを加えて反応物を抽出し、トルエン層を水33.6kgで2回洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留去し、純度98%(GC)で無色液状の2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエポキシ−4−チアヘプタン7.92kg(理論良の84%)を得た。次いで、攪拌機、温度計、窒素導入管を装備したフラスコに2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエポキシ−4−チアヘプタン435.7g(2.5mol)とチオ尿素570.9g(7.5mol)および無水酢酸41.0g(0.4mol)さらに溶媒としてトルエン2.6Lおよびメタノール2.6L仕込み、28℃で8時間30分間反応した。反応後、反応物をトルエンで抽出し、10%硫酸水溶液で洗浄、水洗後過剰の溶媒を留去したところ410.4gの生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物は2,6−ジメチル−1,2:6,7−ジエピチオ−4−チアヘプタンと判明した。得られた生成物は、NMRスペクトルより、(1)式中のR1 =CH3 ,R2 およびR3 =H、R4 =CH3 、X中のSの個数は、三員環を構成するSとOの合計に対して平均で85%であった。重合硬化後、得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定した結果を表1に示した。
【0034】実施例31,2−ジメルカプトプロパン1.0mol(108.2g)とエピクロルヒドリン2.0mol(185.1g)を、液温を10℃まで冷却し、水酸化ナトリウム10mmol(0.4g)を水4mlに溶かした水溶液を加え、この温度で1時間撹拌した。その後、液温を40−45℃前後に保ちながら2時間撹拌した。室温に戻し、水酸化ナトリウム2mol(80.0g)を水80mlに溶かした水溶液を、液温を40−45℃前後に保ちながら滴下しその後、液温を40−45℃前後に保ちながら3時間撹拌した。反応混合物に水100mlを加え、トルエン200mlで抽出し、トルエン層を水100mlで3回洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、無色透明液体の1,2−ビス(ジグリシジルチオ)プロパンを220.3g(理論量の100%)で得た。次いで得られた生成物1.0mol(220.2g)とチオ尿素3mol(228.4g)および無水酢酸0.1mol(10.2g)さらに溶媒としてトルエン0.4Lおよびメタノール0.4L仕込み、20℃で10時間反応した。反応後トルエンで抽出し、10%硫酸水溶液で洗浄、水洗後過剰の溶媒を留去したところ222.2g(収率88%)の生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物は1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 42.61% 42.81% H 6.59% 6.39% S 53.73% 50.80% マススペクトル(EI):M+.・252(理論分子量252)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.1ppm(m,2H)
2.9−2.6ppm(m,11H)
1.2ppm(m,3H)
13C−NMR:43.8ppm,41.6ppm,41.0ppm, 40.1ppm,32.7ppm,32.5ppm, 25.7ppm,21.0ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0035】実施例4実施例3において、1,2−ジメルカプトプロパンの代わりに2,3−ジメルカプトブタンを使用する以外は実施例3を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、2,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 44.91% 45.07% H 6.99% 6.81% S 47.99% 48.13% マススペクトル(EI):M+. 266(理論分子量266)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.1ppm(m,4H)
2.9−2.6ppm(m,8H)
1.2ppm(m,6H)
13C−NMR:44.7ppm,41.4ppm,32.6ppm, 25.8ppm,18.5ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0036】実施例51,5−ジメルカプト−2,4−ジ(メルカプトメチル)−3−チアペンタン1.0mol(246.5g)とエピクロルヒドリン4.0mol(370.1g)を液温を10℃まで冷却し、水酸化ナトリウム20mmol(0.8g)を水8mlに溶かした水溶液を加え、この温度で1時間撹拌した。その後、液温を40−45℃前後に保ちながら2時間撹拌した。室温に戻し、水酸化ナトリウム4mol(160.0g)を水160mlに溶かした水溶液を、液温を40−45℃前後に保ちながら滴下しその後、液温を40−45℃前後に保ちながら3時間撹拌した。反応混合物に水200mlを加え、トルエン400mlで抽出し、トルエン層を水200mlで3回洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、無色透明液体の1,5−ビス(ジグリシジルチオ)−2,4−ビス(ジグリシジルチオメチル)−3−チアペンタンを470.8g(理論量の100%)で得た。次いで得られた生成物1.0mol(470.8g)とチオ尿素5mol(380.6g)および無水酢酸0.2mol(20.5g)さらに溶媒としてトルエン1.3Lおよびメタノール1.3L仕込み、20℃で10時間反応した。反応後トルエンで抽出し、10%硫酸水溶液で洗浄、水洗後過剰の溶媒を留去したところ480.1g(収率90%)の生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物は1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 40.28% 40.41% H 6.99% 5.65% S 53.73% 53.94% マススペクトル(EI):M+. 534(理論分子量534)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.2−2.6ppm(m,30H)
13C−NMR:43.8ppm,42.4ppm,38.6ppm, 32.5ppm,25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0037】実施例6実施例5において、1,5−ジメルカプト−2,4−ジ(メルカプトメチル)−3−チアペンタンの代わりに1,11−ジメルカプト−4,8−ジ(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンを使用する以外は実施例5を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 40.17% 40.33% H 6.00% 5.85% S 53.63% 53.83% マススペクトル(EI):M+. 654(理論分子量654)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.1−2.5ppm(m,38H)
13C−NMR:43.8ppm,43.5ppm,38.6ppm, 38.3ppm,34.7ppm,32.5ppm, 25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0038】実施例7実施例5において、1,5−ジメルカプト−2,4−ジ(メルカプトメチル)−3−チアペンタンの代わりに1,11−ジメルカプト−5,7−ジ(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンを使用する以外は実施例5を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 40.15% 40.33% H 5.98% 5.85% S 53.67% 53.83% マススペクトル(EI):M+. 654(理論分子量654)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR: 3.1−2.5ppm(m,38H)
13C−NMR:45.6ppm,43.5ppm,40.6ppm, 38.3ppm,38.0ppm,34.7ppm, 32.4ppm,25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0039】実施例8実施例5において、1,5−ジメルカプト−2,4−ジ(メルカプトメチル)−3−チアペンタンの代わりに1,11−ジメルカプト−4,7−ジ(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンを使用する以外は実施例5を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカンと判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 40.15% 40.33% H 6.01% 5.85% S 53.66% 53.83% マススペクトル(EI):M+. 654(理論分子量654)
赤外吸収スペクトル:620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.1−2.5ppm(m,38H)
13C−NMR:45.9ppm,45.6ppm,43.8ppm, 43.5ppm,40.6ppm,38.3ppm, 38.0ppm,35.1ppm,34.7ppm, 32.4ppm,25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0040】実施例9トリメチロールプロパントリス(チオアセテート)1.3mol(445.2g)とエピクロルヒドリン4.0mol(370.1g)を液温を10℃まで冷却し、水酸化ナトリウム20mmol(0.8g)を水8mlに溶かした水溶液を加え、この温度で1時間撹拌した。その後、液温を40−45℃前後に保ちながら2時間撹拌した。室温に戻し、水酸化ナトリウム4mol(160.0g)を水160mlに溶かした水溶液を、液温を40−45℃前後に保ちながら滴下しその後、液温を40−45℃前後に保ちながら3時間撹拌した。反応混合物に水200mlを加え、トルエン400mlで抽出し、トルエン層を水200mlで3回洗浄した。トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去し、無色透明液体のトリメチロールプロパントリス(グリシジルチオアセテート)を657.2g(理論量の99%)で得た。次いで得られた生成物1.0mol(510.7g)とチオ尿素5mol(380.6g)および無水酢酸0.2mol(20.5g)さらに溶媒としてトルエン1.3Lおよびメタノール1.3L仕込み、20℃で10時間反応した。反応後トルエンで抽出し、10%硫酸水溶液で洗浄、水洗後過剰の溶媒を留去したところ259.9g(収率47%)の生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物はトリメチロールプロパントリス(β−エピチオプロピルチオアセテート)と判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 42.77% 42.98% H 5.69% 5.41% S 34.13% 34.43% マススペクトル(EI):M+. 558(理論分子量558)
赤外吸収スペクトル:1740cm-1(エステル結合の伸縮振動)
620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.8ppm(s,6H)
3.1ppm(m,3H)
2.9ppm(s,6H)
2.9−2.6ppm(m,12H)
0.9ppm(s,3H)
13C−NMR:171.0ppm,69.0ppm,43.6ppm, 36.0ppm,32.5ppm,29.0ppm, 25.7ppm,13.6ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0041】実施例10実施例9において、トリメチロールプロパントリス(チオアセテート)の代わりにペンタエリスリトールテトラキス(チオアセテート)を使用する以外は実施例9を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、ペンタエリスリトールテトラキス(β−エピチオプロピルチオアセテート)と判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 41.44% 41.64% H 5.22% 5.03% S 35.35% 35.58% マススペクトル(EI):M+. 720(理論分子量720)
赤外吸収スペクトル:1740cm-1(エステル結合の伸縮振動)
620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.8ppm(s,8H)
3.1ppm(m,4H)
2.9ppm(s,8H)
2.9−2.6ppm(m,16H)
13C−NMR:171.0ppm,63.0ppm,43.6ppm, 36.0ppm,32.5ppm,29.3ppm 25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表1に示した。
【0042】実施例11実施例9において、トリメチロールプロパントリス(チオアセテート)の代わりにペンタエリスリトールテトラキス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)を使用する以外は実施例9を繰り返した。得られた生成物は、元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、ペンタエリスリトールテトラキス(β−エピチオプロピルチオプロピオネート)と判明した。
元素分析値: (分析値) (計算値)
C 44.63% 44.82% H 5.98% 5.71% S 32.88% 33.01% マススペクトル(EI):M+. 776(理論分子量776)
赤外吸収スペクトル:1740cm-1(エステル結合の伸縮振動)
620cm-1(エピスルフィド環の伸縮振動)
1H−NMR:3.8ppm(s,8H)
3.1(m,4H) 2.9−2.6(m,16H)
2.5−2.4(m,16H)
13C−NMR:172.0ppm,63.7ppm,43.9ppm, 35.6ppm,32.5ppm,29.3ppm 27.8ppm,25.7ppmさらに、本化合物100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を、表1に示した。
【0043】比較例1攪拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコに、テトラブチルアンモニウムブロマイド100gをエピクロルヒドリン20.0kgに溶かし入れ、液温35〜40℃で硫化水素3.5kgを通じた。その後、21%食塩水76.0Lを加え、3℃に冷却した後、同温度に保ちながら35%水酸化ナトリウム18.5Lを滴下した。反応後2時間、同温度で攪拌を続けた。反応混合物にトルエン50.1Lを加え、反応物を抽出し、トルエン層を水20.0Lで3回洗浄した。トルエン溶媒を留去した後、減圧蒸留(60〜65℃/30Pa)し、純度99%(GC)で無色液状のジグリシジルスルフィド7.9kgを得た。次いで、攪拌機、温度計、窒素導入管を装着したフラスコにジグリシジルスルフィド365.0gとチオ尿素76.2gおよび無水酢酸43.8gさらに溶媒としてトルエン1.6Lおよびメタノール2.7Lを仕込み、20℃で9時間反応した。反応後、反応物をトルエン4.3Lで抽出し、10%硫酸水溶液520mlで洗浄、水520mlで4回洗浄後、過剰の溶媒を留去したところ332.0gの生成物を得た。元素分析、質量分析、NMR分析、IR分析から、生成物はビス(β−エピチオプロピルチオ)スルフィドと判明した。ビス(β−エピチオプロピルチオ)スルフィド100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合し、これを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で2時間重合硬化し、光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定した結果を表2に示した。
【0044】比較例21,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表2に示した。
【0045】比較例3ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表2に示した。
【0046】比較例41,3−ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)シクロヘキサン100重量部にN,N−ジエチルエタノールアミンを0.3重量部配合しこれを厚さ2mmに調節した2枚のガラス板からなるモールド中に注入し、80℃で20時間重合硬化し光学材料を得た。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表2に示した。
【0047】比較例51,8−ジメルカプト−4−メルカプトメチル−3,6−ジチアオクタン48重量部とメタキシリレンジイソシアネート52重量部の混合物に硬化触媒としてジブチルスズクロライドを混合物100重量部に対して0.1重量部配合後均一液とし、さらに10mmHgの減圧下十分に脱気を行った。ついでモールドに注入後、オーブン中で80℃、20時間重合硬化した。得られた材料の屈折率、アッベ数、耐熱性および強度を測定し結果を表2に示した。
【0048】
【表1】


【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】下記(1)式で表されるエピスルフィド構造を1個以上有する化合物。
【化1】


(式中、XはSまたはOを表し、このSの個数は三員環を構成するSとOの合計に対して平均で50%以上である。R1 、R2 、R3 はそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素を示し、R4 は炭素数0〜10の炭化水素鎖を表す。ただし、下記(2)式および(3)式で表されるエピスルフィド化合物と環状骨格を有するエピスルフィド化合物を除く。)
【化2】


【化3】


【請求項2】請求項1記載の化合物を製造する方法。
【請求項3】請求項1記載の化合物を重合硬化して得られる樹脂。
【請求項4】請求項1記載の化合物を重合硬化して得られる光学材料。
【請求項5】請求項1記載の化合物を重合硬化して樹脂光学材料を得る方法。

【公開番号】特開平11−180977
【公開日】平成11年(1999)7月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−224770
【出願日】平成10年(1998)8月7日
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)