説明

新規なエラストマー複合材料及びそのための装置及び方法

【課題】所望のムーニー粘度を有するエラストマー複合材料を提供する。
【解決手段】エラストマーマスタバッチは、水分レベル及びムーニー粘度の処理及び制御のために、細長い処理室(104)内で軸方向を向く多数の平行な細長いローター(106)を有する連続的な混合機(100)内で処理される。追加の材料が、マスタバッチ内に混合される。マスタバッチはその後、オープンミル(120)で更に処理される。エラストマー複合材料は、その中で粒状の充填材(57)とエラストマー乳液(58)の流体の流れが、混合区域(50)から凝固区域(52)を通り反応器の吐出端(68)への半制限された連続的な流れの凝固される混合物を形成するために、凝固反応器(48)の混合区域(14,50)へ供給され、製造される。粒状の充填材の流体は、吐出端までの前に粒状の充填材を有するエラストマーを完全に凝固するように高圧下で混合区域に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、エラストマー複合材料(composites)を生成し、加工するための新規の方法および装置、ならびに、そのような方法および装置を使って生成された新規のエラストマー複合材料に関するものである。詳記するならば、本発明は、エラストマー中に微細に分散した粒状充填材のエラストマー・マスタバッチ、例えば天然ゴム中に微細に分散したカーボンブラック粒状充填材のエラストマー複合材料、そのようなマスタバッチ組成物(compositions)から形成されたゴム材料やゴム製品等を生成し、加工するための連続フローの方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
様々な合成エラストマー、天然ゴムまたはエラストマー配合材料(blends)のどの中にも粒状充填材が分散しているエラストマー組成物から、商業的意義のある多数の製品が形成される。例えばカーボンブラックは、天然ゴムおよび他のエラストマーにおける補強剤として広く使用される。マスタバッチ、すなわちエラストマーは、カーボンブラックまたは他の充填材とともに凝固させ、任意にエキステンダー油等の様々な添加物(additives)を含有する形で生成するのが普通である。カーボンブラック・マスタバッチは、相異なるグレードのカーボンブラック、すなわち単位重量当たり表面積と“構造”の両方で変わるカーボンブラックを使って調製することができる。
【0003】
現在入手できる材料と製造技術を使って広範囲の性能特性が達成できる一方、業界では、改良された性質を有するエラストマー組成物を開発し、現在の製造技術のコストと複雑さを減じる積年の要求があった。特に、例えばマクロ分散レベル、すなわちエラストマー内部のカーボンブラックまたは他の充填材の分散の均一性が性能特性にかなりの衝撃を与え得ることが知られている。カーボンブラックまたは他の充填材を天然ゴムまたは他のエラストマーと強力に混合する(バンブリミキサ等で)ことによって調製されたエラストマー組成物にとっては、マクロ分散の増大がより長時間の、またはより強力な混合を必要とし、その結果として、エネルギーコストの増大、製造時間の延長等々の不利な事柄が生じさせることになる。ある程度の表面積と構造特性を有するカーボンブラック充填材にとって、周知の混合装置および混合技術をもってしては、ある一定の限度を超える分散は不可能であるか、または商業的に得策でなかった。加えて、そのようなより長時間の、またはより強力な混合が、天然ゴムまたは他のエラストマーの分子量を減じることによってそれを劣化させ、それで、出来上がったエラストマー化合物(compound)をある一定の用途にとって望ましくないものにしてしまう。
【0004】
乾燥混合技術に加えて、乳液(ラテックス)とカーボンブラックスラリーを攪拌式凝固タンクに連続的に供給することが知られている。このような“湿式”技術は、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成エラストマーとともに使用されるのが普通である。凝固タンクは、代表的にpH約2.5〜4の酸水溶液または塩溶液等の凝固剤を包含する。乳液とカーボンブラックスラリーを混合してから、凝固タンクの中で“ウェットクラム”と呼ばれる小球(代表的に直径数ミリメートルの)に凝固させる。クラムと酸(またはサリン)流出液を、代表的にシェーカー型振動ふるいによって分離させる。次に、クラムを第2の攪拌式タンクに流し込み、そこで、中性またはほぼ中性のpHになるように洗浄する。その後、クラムを補助の振動ふるいにかけ、乾燥工程等にかける。この方法において振動が提案されたのは、天然エラストマーや合成エラストマーの凝固が目的であった。本発明のようにCabot社に割り当てられるHagopian等の米国特許第4,029,633号には、エラストマー・マスタバッチの調製のための連続プロセスが記述されている。カーボンブラックの水性スラリーを調製し、天然エラストマー乳液または合成エラストマー乳液と混合する。この混合物は、任意に様々な周知のクリーミング剤を使用するいわゆるクリーミング操作にかけられる。カーボンブラック/乳液混合物のクリーミングに続いて、これを凝固工程にかける。特に、クリーミングされたカーボンブラック/乳液混合物を単一の凝固性の流れとして凝固液の流れの中心に導入する。クリーミングされたカーボンブラック/乳液混合物の固相流を、凝固前に凝固液の流れによる剪断と噴霧化にかけ、次に、凝固を完成させるのに適した反応ゾーンに通す。このような凝固工程に続く残りのプロセスは、廃棄生成物“漿液(serum)”からのクラム(砕片)の分離とその漿液の洗浄・乾燥を含めて、ほぼ従来通りである。多少類似のプロセスが、Heller等の米国特許第3,048,559号に記述されている。カーボンブラックの水性スラリーを天然エラストマー乳液または合成エラストマー乳液の流れと連続的に配合する。2つの流れを、強力な水圧渦流と衝撃を含むものとして記述された条件のもとで混合する。上に述べたHagopian等の特許の場合と同様、カーボンブラックスラリーとエラストマー乳液の複合流を引き続き、酸または塩の凝固液の添加によって凝固させる。
【0005】
凝固充填材がエラストマー中に良く分散していることが、製品のすぐれた品質と一貫した性能を確保する上で重要であると、長い間認められていたので、ゴム内部の分散性を評価するための手順の開発にかなりの努力が払われてきた。開発された方法の中には、例えばCabot分散チャートや様々な画像分析手順を含むものがある。分散性は、例えば達成される混合の状態と定義することができる。カーボンブラックの理想的な分散は、カーボンブラックの塊(agglomerates)(またはペレット)がエラストマー(分配混合によって出来上がった)の中で互いに均一に分離した集塊(aggregates)(分散混合によって出来上がった)に分解していて、カーボンブラック集塊全部の表面がゴムマトリックスによって完全に湿潤されている状態(通常、取り込みと呼ばれる)である。
【0006】
加硫されていない(uncured)天然ゴムまたは他の適当なエラストマーの中のカーボンブラックまたは他の充填材のマクロ分散は、カット表面サンプルの画像分析を使って評価することができる。代表的には、画像分析にあたって5〜10個の任意に選択された光学画像をカット表面から採取する。望ましくは、ナイフマーク等を数値濾過技術を使って除去する。こうして、カット表面画像分析から、天然ゴム化合物内部のカーボンブラック分散性に関する情報が提供される。特に、カーボンブラックのマクロ分散性は、非分散面積百分率D(%)で表される。マクロ分散性が低下するにつれて、非分散面積百分率は増す。従って、分散性は、非分散面積百分率を減じることによって改善することができる。
【0007】
カーボンブラックまたは他の充填材のマクロ分散の測定には、Kontron Elektronik GmbH(ドイツ、ミュンヘン)から入手できるIBASコンパクト型画像分析器のような商業用画像分析器を使用することができる。代表的に、ゴム工業で使用される定量マクロ分散テストでは、カットオフサイズ限界が10ミクロンである。約10ミクロンより大きいサイズの欠陥は、代表的に、分散していないカーボンブラックまたは他の充填材、ならびに、視覚上の性能と機能上の性能の両方に影響し得る何らかの粗粒子または他の汚染物質からなる。であるから、マクロ分散を測定することは、10ミクロンより大きいサイズの表面欠陥(ミクロトーミング、押し出し、または切断によって生じさせられた)を画像分析手順に従って測定し、検査単位面積当たりの全欠陥面積をもって表すことを含む。マクロ分散率D(%)は、次のとおり計算される。
1 п Di2
非分散面積率(%)= ───Σmi=1i ────
Am 4
ここに、Am=検査された全サンプル表面積
Ni =サイズDiの欠陥の数
Di =欠陥の面積と同じ面積を有する円の直径(等価円直径)
m =画像の数
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
適当なエラストマーの中に分散した粒状充填材、特に例えば、マクロ分散が改善された天然ゴム中に分散したカーボンブラックのエラストマー化合物に対する要求は、様々な業界に長い間あった。上に述べたとおり、マクロ分散が改善されれば、それに応じて改善された美観上の特性および機能上の特性がもたらされる。特に望ましいのは、改善されたマクロ分散が、制御されたムーニー粘度、より高い天然ゴム分子量およびより多くの結合ゴム(bound rubber)分量とともに達成される天然ゴムの中のカーボンブラックの新しいエラストマー化合物である。
この長年の切実な要求の全部または幾分かに応えることが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
第1の形態に従い、粒状充填材とエラストマーを有するほとんど凝固したマスタバッチを加工する方法であって、細長い処理室の中に軸方向に向けられた多重ローターを有する連続的な混合機(compounder)の供給口にマスタバッチを供給する工程、連続的な混合機の処理室を通してマスタバッチをローターの制御された操作によって処理する工程、および連続的な混合機の吐出口からマスタバッチを吐出する工程を包含する。ある好適な実施例では、この方法は、連続的な混合機の吐出口からのマスタバッチをオープンミルの中に通す工程、および/または、連続的な混合機において補助(additional)材料をマスタバッチに配合する工程も包含してよい。ある好適な実施例では、補助材料は、補助(additional)充填材、補助エラストマー、第2のマスタバッチ、油および他の添加剤の中から選択してよい。ある好適な実施例では、連続的な混合機はマスタバッチを乾燥させてよい。ある好適な実施例では、連続的な混合機はマスタバッチのムーニー粘度を制御する。
【0010】
別の形態に従い、エラストマー複合材料を生成する連続フロー法は、エラストマー乳液を含有する第1流体の連続フローを、混合区域(ゾーン)から吐出端まで延びる細長い凝固区域(ゾーン)を限定する凝固反応器の混合区域に供給する工程、エラストマー乳液との混合物を形成するために、粒状充填材を有する第2流体の連続フローを圧力下で凝固反応器の混合区域に供給する工程(混合物は連続フローとして吐出端に向かい、粒状充填材はエラストマー乳液を凝固させるのに有効で、混合区域における第1流体と第2流体との混合が、エラストマー乳液を吐出端到達前に粒状充填材でほぼ完全に凝固させるのに十分なエネルギーを有する)、エラストマー複合材料のほぼ連続のフローを凝固反応器の吐出端から吐出する工程、エラストマー複合材料のほぼ連続のフローを、細長い処理室の中に軸方向に向けられた多重並列ローターを有する連続的な混合機の供給口に供給する工程、連続的な混合機の処理室を通してエラストマー複合材料をローターの制御された操作によって処理する工程、および、連続的な混合機の吐出口からエラストマー複合材料を吐出する工程を包含する。ある好適な実施例では、この方法は、連続的な混合機の吐出口からのエラストマー複合材料をオープンミルの中に通して処理する工程も包含してよい。
【0011】
別の形態に従い、エラストマー中に分散した粒状充填材のエラストマー複合材料を生成する装置は、混合区域と、該混合区域から吐出端まで延びる細長い凝固区域とを限定する凝固反応器、エラストマー乳液流体を混合区域に連続的に供給する乳液供給手段、該混合区域から凝固区域の吐出端へと移動するエラストマー乳液流体との混合物を形成するために、粒状充填材流体を連続ジェットとして混合区域に供給する充填材供給手段(混合区域と吐出端の間の距離は、エラストマー乳液を吐出端到達前にほぼ完全に凝固させるのに十分な長さである)、および、エラストマー乳液と粒状充填材との凝固混合物を受取るために凝固区域の吐出端に動作接続された供給口、吐出口、細長い処理室および該処理室の内部で軸方向に向けられた複数のローターを有する連続的な混合機を包含する。ある好適な実施例では、この装置はさらに、エラストマー複合材料のほぼ連続のフローを凝固区域の吐出端から連続的な混合機の供給口に移送する移送手段を包含する。
【0012】
別の形態に従い、エラストマー複合材料は、下記の工程によって中に粒状充填材が分散させられた、ほぼ凝固したエラストマーを有する。即ち、エラストマー乳液を有する第1流体の連続フローを、混合区域から吐出端まで延びる細長い凝固区域を限定する凝固反応器の混合区域に供給する工程、エラストマー乳液との混合物を形成するために、粒状充填材を有する第2流体の連続フローを圧力下で凝固反応器の混合区域に供給する工程(混合物は連続フローとして吐出端に向かい、粒状充填材はエラストマー乳液を凝固させるのに有効で、混合区域における第1流体と第2流体との混合が、エラストマー乳液を吐出端到達前に粒状充填材でほぼ完全に凝固させるのに十分なエネルギーを有する)、エラストマー複合材料のほぼ連続のフローを凝固反応器の吐出端から吐出す工程、エラストマー複合材料を、凝固反応器の吐出端から、細長い処理室の中に軸方向に向けられた細長い多重並列ローターを有する連続的な混合機の供給口に供給する工程、連続的な混合機の処理室を通してマスタバッチをローターの制御された操作によって処理する工程、および、連続的な混合機の吐出口からマスタバッチを吐出す工程である。
【0013】
別の形態に従い、マスタバッチは、連続的な混合機において他の材料の添加とともに上に述べたとおり加工される。特に、補助材料は、補助充填材、補助エラストマー、エラストマー複合材料とカーボンブラックまたは他の充填材からなる補助マスタバッチ、エラストマー複合材料において使用される周知の各種添加物のいずれか、例えば酸化防止剤、オゾン割れ防止剤、可塑剤、加工助剤(例えば液体ポリマー、油等)、樹脂、難燃剤、エキステンダー油、潤滑剤、および上記添加剤のいずれかの混合物、および加硫系またはそのいずれかの混合物であってよい。
【0014】
別の形態に従い、エラストマー・マスタバッチを調製するための方法は、上に開示したとおり、粒状充填材流体とエラストマー乳液流体を同時に凝固反応器の混合区域に供給し、続いて、脱水押出器と連続的な混合機で処理することを包含する。最も望ましくは、凝固反応器と脱水押出器と連続的な混合機が1つの連続フロー生成ラインにおいて一緒に働く。凝固反応器の凝固区域は混合区域から延び、望ましくは、入口端から吐出端へと下流に向かって横断面積が漸増する形で延びる。エラストマー乳液は天然であっても合成であってもよく、粒状充填材流体は、カーボンブラック、または乳液を凝固させるのに効果的な他の粒状充填材からなる。粒状充填材流体は、望ましくは、注入された流体の連続高速ジェットとして混合区域に供給され、乳液流体の方は低速で供給される。粒状充填材流体の速度、流量および粒子濃度は、エラストマー乳液を吐出端到達前に粒状充填材でほぼ完全に凝固させるために、乳液流体との高剪断混合を生じさせ、少なくとも凝固区域の上流部分で混合物の乱流を生じさせるのに十分な高さである。こうして、ほぼ完全な凝固が達成され、好適な実施例では、酸または塩の凝固剤を使用する必要なしに達成される。凝固反応器は、共同所有された同時係属中の米国出願第08/823,411号および公開PCT出願第PCT/US97/05276号において詳細に論じられており、その両方をここに言及することにより援用する。凝固反応器からのマスタバッチは、該マスタバッチから水の大部分を除去するために脱水押出器に通され、次に、上に開示した連続的な混合機の供給口に、望ましくは、凝固反応器からの連続フローの流れの中で送り込まれる。連続的な混合機は、エラストマー・マスタバッチを乾燥させ、エラストマー・マスタバッチのムーニー粘度を制御し、ある好適な実施例では、ローター速度、スループット量、吐出口サイズ、吐出口温度および処理室温度を含む連続的な混合機動作パラメータの操作を介してマスタバッチの他の特性および性能特性を制御する。マスタバッチは、ある好適な実施例では、該マスタバッチのムーニー粘度をさらに制御するために、任意に連続的な混合機の後にオープンミルでさらに加工してよい。これが特に有利であるのは、凝固反応器によって生成されたエラストマー・マスタバッチが、ある種の用途に使用するには高すぎるムーニー粘度を有することがあり得るからである。連続的な混合機とオープンミルによるマスタバッチのさらなる加工は、今や、所望のムーニー粘度と水分レベルを達成する意味ですぐれた製品管理をもたらすものであることが分かる。
【0015】
特に好適な実施例では、上に開示した脱水押出器は、マスタバッチを凝固反応器から脱水押出器に移送するためのコンベヤまたは導管によって凝固反応器に接続されており、連続的な混合機は、マスタバッチが連続フロープロセスの中で生成、処理されるように脱水押出器のすぐ下流にある。こうして、エラストマー・マスタバッチを形成、処理するための連続プロセスラインが作られ、これによって、生成の経済性が著しく高められることになる。1つの連続プロセスラインの中で連続的な混合機を脱水押出器および凝固反応器とともに使用することにより、連続プロセスラインを中断することなくマスタバッチ生成/処理ラインの動作パラメータを制御し、変更することが容易にできる。
【0016】
装置の形態に従い、上に述べた凝固反応器、脱水押出器および連続的な混合機は、マスタバッチ生成/処理ラインの中で連結されている。ある好適な実施例では、オープンミルが、エラストマー・マスタバッチを冷却し、これが連続的な混合機を通過した後にそのムーニー粘度をさらに制御するために設けられている。
【0017】
装置の別の形態に従い、エラストマー乳液流体を前記凝固反応器の混合区域に、望ましくは、低圧のほぼ層状の流れの条件のもとで供給する手段が設けられており、また同時に、上に述べたとおり、エラストマー乳液を巻込むのに適した速度または運動エネルギーのジェットを作るのに十分な圧力のもとで粒状充填材流体を混合区域に供給し、該混合区域から下流に流れる生成物が凝固反応器の吐出端到達前に凝固を達成する手段が設けられている。下に詳述するある好適な実施例では、エラストマー乳液流体を供給する手段と粒状充填材流体を供給する別個の手段は各々、凝固区域を限定するほぼ管状の部材と一体の混合ヘッドの中の供給チャンネルからなるものであってよい。混合区域は、このような混合ヘッド内部の供給チャンネルの連絡部に設けられていてよい。ある好適な実施例では、混合区域は単純に凝固区域の同軸延長部分である。凝固反応器の横断面積の漸増が、ある好適な実施例では連続的であり、別の好適な実施例では段階的である。脱水押出器と連続的な混合機が、エラストマー・マスタバッチをさらに処理するために凝固反応器の下流に位置し、これで、エラストマー・マスタバッチの乾燥、ならびに、そのムーニー粘度および他の物理的性質と性能特性の制御が準備される。ある好適な実施例では、オープンミルが、エラストマー・マスタバッチをさらになお処理できるようにするために、連続的な混合機の吐出口に直接的にかコンベヤまたは導管を介してかどちらかの形で連結されていてよい。エラストマー・マスタバッチの連続フロー生成のための、ここに開示した装置の追加的な任意の特徴および好適な特徴を、以下の詳細な説明の中で論じる。
【0018】
なお別の形態に従い、エラストマー複合材料は、上に開示したプロセスまたは装置の生成物として見込まれる。好適な実施例によれば、粒状充填材のマクロ分散レベル、エラストマーの分子量、粒子負荷レベル、精選された粒状充填材(例えば、例外的に高い表面積と低い構造のカーボンブラック充填材を含む)、制御されたムーニー粘度および/またはかつて達成されなかった他の物理的性質または性能特性を有する新規のエラストマー複合材料が見込まれる。加えて、所与のムーニー粘度に関してマスタバッチの結合ゴム分量と分子量の間で適当な釣合いを得ることができる。その点に関して、ここに開示した方法および装置は、天然ゴム等のエラストマーにおいて、構造対表面積の比DBP:CTABが1.2より小さい、さらには1よりも小さいカーボンブラックのような種類の充填材でもすぐれたマクロ分散を達成すると同時に、エラストマーの分子量および高度に制御されたムーニー粘度の低減を最小限に抑えることができる。本発明のなお別の形態に従い、ここに開示した方法または装置によって生成されたエラストマー複合材料から形成される中間製品ならびに最終製品、例えばタイヤおよびタイヤコンポーネントが見込まれる。このような最終製品のさらなる例を下に列挙する。
【0019】
本発明の様々な実施例の以上の形態と利点および他の形態と利点は、ある好適な実施例に関する以下の詳細な説明の中でさらに理解されよう。
以下、ある好適な実施例を添付の図面に則して説明する。
【0020】
添付の図面は必ずしも正確な縮尺であるとは限らないことを理解されたい。便宜上、または図を分かる易くするため、ある一定の特徴を拡大または縮小した。以下の説明の中で参照として使用された方位は、本文中に別段の記述がない限り、または本文から別の方向であることが明らかでない限り、図面に描かれたコンポーネントの方位を基礎としている。一般に、本発明の相異なる実施例による装置は、様々な配置において使用することができる。当業者であれば、ここに開示した内容から、日常の技能を駆使し、特に目指す用途に関する熟知したファクター、例えば所望の生成量、材料選択、デューティサイクル等々を計算に入れた上で、本発明の装置によって適正な寸法および方位を特定することは容易に可能であろう。一図面において使用された参照番号は、他の図面において同じ特徴または同じ要素のために使用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明のある好適な実施例に従ってエラストマー・マスタバッチを調製するための装置および方法の図式的なフローチャートである。
【図2】図2は、図1の図式的なフローチャートと一致する好適な実施例の部分図式立面図である。
【図3】図3は、図1の図式的なフローチャートと一致する別の好適な実施例の部分図式立面図である。
【図4】図4は、図3の実施例の混合ヘッド/凝固反応器アセンブリの部分断面立面図である。
【図5】図5は、図4に対応する、別の好適な実施例の部分断面立面図である。
【図6】図6は、図5の線6−6における断面図である。
【図7】図7は、別の好適な実施例における使用に適した混合ヘッドの断面図である。
【図8】図8は、図1のマスタバッチ生成ラインの別の実施例の一部分の図式的なフローチャートで、図1の連続的な混合機の断面を示す。
【図9】図9は、図1の装置および方法の別の実施例の一部分の図式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ある好適な実施例の詳細な説明
以下は、本発明のある好適な実施例の詳細な説明であり、本発明を下に述べる実施例に制限することを意図するものではない。
【0023】
ここに開示した方法および装置により、湿ったエラストマー・マスタバッチを、その水分を除去し、そのムーニー粘度を減じ、および/または他の材料と化合させる(compound)方向で処理することができる。望ましくは、マスタバッチが、伝統的な凝固剤を使用しなくても凝固を達成するのに十分な乱流レベルおよび乱流制御条件のもとでエラストマー乳液と粒状充填材流体の混合物を巻込む連続フロープロセスにおいて生成される。事実、エラストマーを充填材で強力に乾燥素練りする必要も、液体乳液/粒子組成物を凝固剤の流れまたは浴槽にさらす必要もなしに、エラストマー・マスタバッチのクラムを形成すること、すなわち、凝固乳液を獲得することが商業的に大きな利益であることは、たちどころに理解されよう。こうして、日常的な本格操業において酸凝固溶液を使用する費用および複雑さを回避することができる。乳液と粒子の予備混合を包含する以前の技術、例えば、上に述べたHeller等の特許およびHagopian等の特許におけるような技術からは、乳液と粒子との混合物を普通の凝固剤溶液にさらすことなく、従って、付帯的な出費と廃物処分の不利を伴うことなく、凝固を達成する可能性すら認められない。この連続フロープロセスによって生成されたエラストマー・マスタバッチは、ある種の用途にとって高すぎるムーニー粘度と水分レベルを有することがあり得る。下に詳述する脱水押出器および連続的な混合機の使用により、エラストマー・マスタバッチの乾燥およびムーニー粘度の制御が成し遂げられと同時に、分子量および結合ゴム分量の最適化が達成される。
【0024】
凝固反応器の混合区域に供給される乳液流体と粒状充填材流体の供給量は、凝固反応器の吐出端において生成クラム中に遊離乳液も分散していない充填材もほとんど介在しない状態で高い収率が達成されるように厳密に計量することができる。理論に縛られることなく、凝固固体が凝固区域の中および/またはその下流で形成されることを除いて、準単相(quasi-mono-phase)系が混合区域の中で確立されることは、今ここで理解される。凝固反応器の混合区域に送り込まれる粒状充填材流体の供給速度が極端に高い上、乳液流体の供給速度に相対して速度差を有することは、徹底した混合、粒子の乳液流体中への分散および凝固にとって十分な乱流、すなわち粒状充填材流体ジェットの衝撃によって乳液を剪断するのに十分なエネルギーを獲得する上で有意義であると考えられる。高い混合エネルギーが、制御された生成物送出量と相俟って、分散性にすぐれたマスタバッチ・クラムの生成をもたらすのである。こうして、凝塊(coagulum)が作られ、それから所望の押出品に成形される。
【0025】
ここに開示した新規のエラストマー複合材料を生成するための方法および装置のある好適な実施例を下に論じる。本発明の様々な好適な実施例において多種多様な充填材およびエラストマーを使用することができるが、以下の詳細な説明では、便宜上、先ずは天然ゴムとカーボンブラックからなるマスタバッチの生成におけるその使用について述べる。当業者であれば、ここに開示した内容から、本発明の方法および装置を下に述べる動作原理に従って駆使し、それで、多数の別のまたは補助的なエラストマー、充填材および他の材料からなるマスタバッチを生成することは容易に可能であろう。手短に言えば、このようなエラストマー・マスタバッチを調製するための方法は、カーボンブラックまたは他の充填材のスラリーと天然ゴム乳液流体または他の適当なエラストマー流体を同時に凝固反応器の混合区域に供給することを包含する。凝固区域は混合区域から延び、望ましくは、入口端から吐出端へと下流に向かって横断面積が漸増する形で延びる。スラリーは、望ましくは、注入された流体の連続高速ジェットとして混合区域に供給され、天然ゴム乳液流体の方は相対的に低い速度で供給される。充填材スラリーの速度、流量および粒子濃度は、乳液流体との高剪断混合を生じさせ、少なくとも凝固区域の上流部分で混合物の乱流を生じさせ、エラストマー乳液を吐出端到達前にほぼ完全に凝固させるのに十分な高さである。こうして、ほぼ完全な凝固が達成され、好適な実施例では、酸または塩の凝固剤を使用する必要なしに達成される。エラストマー複合材料を生成する好適な連続フロー法は、乳液流体と充填材スラリーを連続的かつ同時に凝固反応器の混合区域に供給し、凝固区域において乳液と充填材スラリーの混合物の半分閉じ込められた連続的な流れを確立することからなる。“芋虫(worm)”または小球体の形のエラストマー複合材料クラムが、凝固反応器の吐出端からほぼ一定の流れとして、凝固反応器の混合区域に供給中の乳液とカーボンブラックスラリーの流れとともに吐出される。凝固反応器の吐出端にはプラグ形の流れおよび大気圧条件または大気圧に近い条件の存在することが、例えば直近または後続の加工工程のためにエラストマー複合材料の制御、捕集を容易にする上で大いに有利である。凝固反応器の混合区域に供給される天然ゴム乳液流体とカーボンブラックスラリーの供給量は、凝固反応器の吐出端において生成クラム中に遊離乳液も分散していない充填材もほとんど介在しない状態で高い収率が達成されるように厳密に計量することができる。理論に縛られることなく、凝固固体が凝固区域の中および/またはその下流で形成されることを除いて、準単相系が混合区域の中で確立されることは、今ここで理解される。凝固反応器の混合区域に送り込まれるカーボンブラックスラリーの供給速度が極端に高い上、天然ゴム乳液流体の供給速度に相対して速度差を有することは、徹底した混合、粒子の乳液流体中への分散および凝固にとって十分な乱流、すなわち粒状充填材流体ジェットの衝撃によって乳液を剪断するのに十分なエネルギーを獲得する上で有意義であると考えられる。高い混合エネルギーが、制御された生成物送出量と相俟って、分散性にすぐれたマスタバッチ・クラムの生成をもたらすのである。こうして、凝固が作られ、それから所望の押出品に成形される。押出成形品中の水の大部分は、望ましくは、次に脱水押出器によって除去され(例えば、含水率約80%から含水率約15〜25%へと)、さらに連続的な混合機によって処理され、そこで、エラストマー・マスタバッチは所望のレベルに乾燥させられ(例えば含水率約1%に)、そのムーニー粘度は制御される。ある好適な実施例では、マスタバッチは次にオープンミルによって処理され、そこで、エラストマー・マスタバッチのムーニー粘度はさらに制御される。
【0026】
ここに開示したエラストマー複合材料を生成する前記好適な装置および技術を添付図面に則して論じる。ここでは、エラストマー・マスタバッチを生成する連続フロー法が、望ましくは、入口端から吐出端に向かって横断面積が漸増する形で延びる細長い凝固区域を形成する凝固反応器において、充填材スラリー、例えばカーボンブラックの水性スラリーと混合されたエラストマー乳液、例えば天然ゴム乳液(野生ラテックス(乳液)またはその濃縮物)の半分閉じ込められた(semi-confined)連続的な流れを使用する。用語“半分閉じ込められた”流れは、大いに有利な特徴を指す。ここに使用されたとおり、この用語は、凝固反応器内部で混合された乳液流体と充填材スラリーがその後供給される流路が混合区域の上流で閉じられ、またはほぼ閉じられ、反対側の凝固反応器の下流端、すなわち凝固反応器の吐出端で開いていることを意味する。凝固区域の上流部分における乱流条件は、凝固反応器の吐出端におけるほぼプラグ形の流れの条件とともに、少なくとも準定常状態が進行する中で維持される。吐出端が“開いている”というのは、少なくとも、凝固が一般に大気圧のもとで、または大気圧に近い圧力のもとで、代表的に単なる重力落下(任意にシュラウド付またはスクリーン付の流路の中での)によって、脱水押出器に接続されたホッパ等の適当な捕集手段の中に吐出されるという意味においてである。こうして、半分閉じ込められた流れは、結果的に、少なくとも凝固反応器の一部分の中を軸方向または縦方向に延びる傾斜乱流となる。理論に縛られることなく、凝固区域が、凝固反応器の吐出端において固体生成物のほぼプラグ形の吐出流れを作るとともに、凝固反応器の上流部分において高度の乱流混合と凝固を可能にする上で有意義であることは、今ここで理解される。カーボンブラックまたは他の充填材スラリーを連続ジェットとして混合区域に注入する工程は、ほぼプラグ形の流れの条件のもとで吐出されたエラストマー・マスタバッチ・クラムが凝固反応器の吐出端に集積するのと同時進行の形で行われる。同様に、スラリーがスラリーノズルを通って混合区域に入り込む軸流速度、また代表的に、凝固区域の上流端における軸流速度は、吐出端におけるよりはるかに高い。下に述べる好適な実施例によれば、スラリーは、望ましいことに、軸方向に向けられた送り管の小さい孔から混合区域に入り込むので、その軸流速度は、代表的に毎秒数百フィートであろう。代表的用途では、横断面積が漸増する形の凝固反応器の入口端における合成流れの軸流速度は、例えば毎秒1.5〜6.1m(5〜20フィート)、より普通には2.1〜4.6m(7〜15フィート)であり得る。吐出端では、再び対照的に、そこで吐出されるマスタバッチ・クラム生成物の軸流速度は、代表的用途において毎秒約0.3〜3.0m(1〜10フィート)、より一般的には毎秒約0.6〜1.5m(2〜5フィート)であろう。こうして、前記半分閉じ込められた乱流的な流れは、凝固反応器から後続の処理工程に向けられる生成物の送出量が制御された状態、望ましくは、生成物がほぼ成型された状態において、酸、塩または他の凝固剤溶液の流れまたは浴槽において後続の処理が行われなくても、天然ゴムまたは他のエラストマー乳液がカーボンブラックまたは他の充填材との混合によって凝固させられるという大いに有意義な利点を獲得する。
【0027】
また、この点に関して、乱流は凝固反応器に沿って吐出端に向かって減少することも理解されたい。固体生成物のほぼプラグ形の流れは、キャパシティ利用率、材料選択等のファクターに左右されるが、吐出端到達前に達成される。ここで、凝固反応器の吐出端における流れまたは吐出端到達前の流れがほぼプラグ形の流れであると言及することを、吐出端における流れが主として、または全体としてマスタバッチ・クラム、すなわち、凝固したエラストマー・マスタバッチの小球体または“芋虫”から構成されるという事実に照らして理解されたい。クラムは、代表的に、流れがほぼプラグ形の流れになる凝固区域に沿ってこの凝固区域の内側の形状にほぼ成型される。前進し続ける“芋虫”または小球体の一団がほぼプラグ形の流れであることは、それが全体として、または主として吐出端に向かって軸方向に移動し、いかなる時点でも、吐出端に近い凝固区域の所与の横断面部分において、さらなる処理に備えて容易に捕集、制御されるように明らかに均一の速度を有するという意味で有利である。こうして、ここに開示した液相混合は、有利なことに定常状態または準定常状態において実行でき、その結果、ハイレベルの製品均一性が得られることになる。
【0028】
ここに開示した方法および装置の好適な実施例を図1に図式的に示す。当業者であれば、システム構成、コンポーネント選択等の様々な側面が意図された用途の特殊性にある程度左右されることは理解されよう。例えば、最大システムスループットキャパシティや材料選択フレキシビリティのようなファクターが、システムコンポーネントのサイズやレイアウトに影響しよう。一般に、こうしたことを考慮するのは、当業者であれば、ここに開示した内容から容易になし得ることであろう。図1に示す装置(システム)は、見て分かるとおり、天然ゴム乳液または他のエラストマー乳液流体を低圧および低速で連続的に凝固反応器の混合区域に供給するための手段を包含する。詳記するならば、圧力下で供給される乳液を保持する乳液圧力タンク10が図示されている。代わりに、供給ライン12を介して凝固反応器14の混合区域に供給すべきエラストマー乳液流体を保持するのに適した蠕動ポンプまたは一連のポンプまたは他の適当な供給手段を備えた乳液貯蔵タンクを使用することもできる。タンク10の中の乳液流体は、望ましくは68.9KPa(10psi)g、より望ましくは約13.8〜55.2KPa(2〜8psi)g、代表的には約34.5KPa(5psi)gより低いライン圧力のもとで混合区域に供給されるように空気、窒素等の圧力下に保持してよい。乳液供給手段の乳液供給圧力ライン、フローライン、接続ライン等は、流れる乳液流体における剪断を妥当な範囲で可能な限り低く抑えられるように配置するのが望ましい。望ましくは、例えばフローラインはすべてスムーズであり、曲がりがあるとしても、半径の大きい曲がりがあるだけで、ラインからラインへの相互接続はスムーズまたはフレア状である。圧力は、混合区域への流れが所望の速度となるように選択される。有用な流れ速度の一例は毎秒約3.7m(12フィート)以下である。
【0029】
適当なエラストマー乳液流体は、天然エラストマーと合成エラストマーの格子と乳液ブレンドの両方を包含する。乳液は無論、選択された粒状充填材で凝固するのに適していなければならず、また、最終ゴム製品の意図された目的すなわち用途に適していなければならない。当業者であれば、ここに開示した方法および装置で使用するのに適したエラストマー乳液またはエラストマー格子のブレンドを選択することは、ここに開示した内容から容易になし得ることであろう。例示のエラストマーは、1,3-ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、アクリルニトリル、エチレン、プロピレン等のゴム、ポリマー(例えばホモポリマー、コポリマーおよび/またはターポリマー)を包含するが、これだけに限らない。エラストマーは、微分走査熱量測定(DSC)によって測定されるとおりの、約−120℃から約0℃までの範囲内のガラス遷移温度(Tg)を有してよい。例は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、その誘導体、例えば塩化ゴム、ポリブタジエン、ポリソプレン、ポリ(スチレンコブタジエン)および上記のいずれかの油展(oil exteuded)誘導体を包含するが、これだけに限らない。上記のいずれかのブレンドを使用してもよい。乳液は水性キャリヤ液体の中にあってよい。代わりに、液体キャリヤは炭化水素溶剤であってよい。いずれの場合でも、エラストマー乳液流体は、適当な速度、圧力および濃度において混合区域に制御下で連続供給するのに適していなければならない。特に適した合成ゴムは下記のものを包含する。スチレン約10〜70重量パーセントとブタジエン約90〜30重量パーセントのコポリマー、例えば、スチレン19部とブタジエン81部のコポリマー、スチレン30部とブタジエン70部のコポリマー、スチレン43部とブタジエン57部のコポリマー、スチレン50部とブタジエン50部のコポリマー等;共役ジエンのポリマーおよびコポリマー、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等、および、そのような共役ジエンと、これと共重合できるエチレン基含有モノマーとのコポリマー、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、アクリルニトリル、2-ビニルピリジン、5-メチル-2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、アルキル置換アクリル酸塩、ビニルケトン、メチルイソプロペニルケトン、メチルビニルエーテル、アルファメチレンカルボン酸、エステルおよびそのアミド、例えばアクリル酸アミド、ジアルキルアクリル酸アミド等。また、エチレンと他の高アルファオレインとのコポリマー、例えば、プロピレン、ブタジエン-1、ペンテン-1等も、ここでの使用に適している。さらに下で指摘する通り、本発明のゴム組成は、エラストマーおよび充填材に加えて、結合材を含有することができ、また任意に、様々な加工助剤、油展剤および老化防止剤を含有することができる。
【0030】
これに関連して、ここに開示したエラストマー複合材料は、加硫組成物(VR)、熱可塑性加硫物(TPV)、熱可塑性エラストマー(TPE)および熱可塑性ポリオレフィン(TPO)を含有することを理解されたい。材料TPV、TPEおよびTPOは、性能特性を失うことなく数度の押出成形および成型が可能であるか否かによってさらに分級される。
【0031】
エラストマー乳液が天然ゴム乳液からなる場合、この天然ゴム乳液は、野生乳液または乳液濃縮物(例えば、蒸発、遠心分離またはクリーミングによって生成された)からなることができる。天然ゴム乳液は無論、カーボンブラックで凝固するのに適していなければならない。乳液は、代表的に水性キャリヤ液体の中でもたらされる。代わりに、液体キャリヤは炭化水素溶剤であってよい。いずれの場合でも、天然ゴム乳液流体は、適当な速度、圧力および濃度において混合区域に制御下で連続供給するのに適していなければならない。天然ゴム乳液のよく知られた不安定性は、有利なことに、該乳液が混合区域においてカーボンブラックスラリーの異常に高い速度と運動エネルギーに直面して、上記の半分閉じ込められた乱流に巻込まれるまでに、装置(システム)全体を通して相対的に低い圧力と低い剪断力にさらされる中で解消される。例えば、ある好適な実施例では、天然ゴムは、約34.5KPa(5psi)gの圧力、毎秒約0.91〜3.7m(3〜12フィート)、より望ましくは毎秒約1.2〜1.8m(4〜6フィート)の範囲内の供給速度で混合区域に供給される。適した乳液または格子ブレンドを選択することは、当業者であれば、ここに開示した内容から、また、業界において一般によく理解された選択基準の知識から、容易になし得よう。
【0032】
粒状充填材流体、例えばカーボンブラックスラリーは、凝固反応器14の入口端から供給ライン16を介して混合区域に供給される。スラリーは、適当なキャリヤ流体の中で適当などんな充填材を含有してもよい。キャリヤ流体の選択は、粒状充填材の選択およびシステムパラメータに大きく左右される。水性液体と非水性液体の両方とも使用できるが、多くの実施例において、そのコスト、アベイラビリティ、ならびに、カーボンブラックおよび他のある種の充填材スラリーの生成に使用するのに適している点から見て、水が望ましいとされている。
【0033】
カーボンブラック充填材(filler)が使用される場合、このカーボンブラックの選択はエラストマーのマスタバッチ製品の意図されている用途に大いに依存している。カーボンブラック充填材は、ここに開示されている原理によってスラリー状にして混合区域(ゾーン)に供給することが可能な任意の材料を含んでもよい。他の好適な粒状充填材には、例えば、導電性充填材、補強用充填材、短い繊維(典型的には40未満のアスペクト比L/Dを有するもの)を含んだ充填材、フレーク等が挙げられる。かくして、ここに開示された方法と装置によってエラストマーのマスタバッチを製造するのに採用可能な例示された粒状充填材は、カーボンブラック、熱分解法シリカ、沈降シリカ、被覆カーボンブラック、有機基が付着したカーボンブラック等の化学的に機能化されたカーボンブラック、及びシリコン処理されたカーボンブラックであり、これらは単独で或いは互いに組み合わされて使用される。化学的に機能化された好適なカーボンブラックは、その開示内容がここに参考として組み入れられている国際出願PCT/US95/16194 (WO 9618688) に開示されたものが含まれていてる。シリコン処理されたカーボンブラックにおいては、シリコンの酸化物や炭化物等の種を含んだシリコンが、このカーボンブラックの固有部分としてカーボンブラック凝集体(aggregate)の少なくとも一部に分布している。従来のカーボンブラックは凝集体の形で存在し、各凝集体は単一の相で構成されている。この相は黒鉛状微結晶及び/又は非晶質炭素の形で存在し、通常は両者の混合物である。本明細書中の他の箇所で述べられているように、カーボンブラックの凝集体はシリカ等のシリコンを含んだ種をカーボンブラック凝集体の表面の少なくとも一部に沈着させることによって改質することができる。その結果はシリコン被覆カーボンブラックとして述べられている。シリコン処理カーボンブラックとしてここに述べられている材料は、被覆されたり改質されたりしたカーボンブラック凝集体ではなく、実際には異なる種類の凝集体を表している。シリコン処理カーボンブラックにおいては、凝集体は二つの相を含んでいる。一つの相は黒鉛微結晶及び/又は非晶質炭素のままのカーボンであり、第2の相はシリカ(及びその他のシリコン含有種)である。こうして、シリコン処理カーボンブラックのシリコン含有種の相は凝集体の固有部分であり、凝集体の少なくとも一部に分布している。多相の凝集体は前述のシリカで被覆されたカーボンブラックとは全く異なり、これらはその表面にシリコン含有種が沈着した予め形成された単一相のカーボンブラック凝集体で構成されている。これらのカーボンブラックは、カーボンブラック凝集体の表面にシリカの機能性を持たせるために表面処理されている。この過程において、存在している凝集体は、凝集体の表面の少なくとも一部にシリカ(及び他のシリコン含有種)を沈着或いは被覆するように処理される。例えば、特許公開公報63-63755に述べられているように、珪酸ナトリウムの水溶液を用いて、6以上の高いpHの水系スラリー中でカーボンブラック凝集体の表面に非晶質シリカを沈着させる。更に詳しくは、カーボンブラックは水中に分散されて、例えば約5重量%のカーボンブラックと95重量%の水とからなる水系スラリーが得られる。このスラリーは約70℃以上、例えば85〜95℃まで加熱され、アルカリ溶液によって6以上、例えば10〜11の範囲のpHに調節される。カーボンブラックに沈着させるべきシリカの量を含む珪酸ナトリウムと、この珪酸ナトリウム溶液を中性のpHに調整するための酸性溶液が別個に準備される。珪酸ナトリウム溶液と酸性溶液はスラリーに滴下して添加され、スラリーは酸とアルカリ溶液によって適宜な初期pH値に維持される。溶液の温度も維持される。推奨される珪酸ナトリウム溶液の添加速度は、カーボンブラックの全量に対して1時間当たりに約3重量%の珪酸を添加するように滴下を調整する。スラリーは前記添加の際及び添加の後に数分(例えば30分)から数時間(例えば2〜3時間)攪拌されなければならない。これに対して、シリコン処理されたカーボンブラックは、揮発可能なシリコン含有化合物の存在下でカーボンブラックを製造することによって得られる。これらのカーボンブラックは、燃焼ゾーンとこれに続く収束した直径を有するゾーン、小さい直径を有する供給原料注入ゾーン及び反応ゾーンを有するモジュール型或いは「段階式」炉のカーボンブラック反応がまで製造されることが望ましい。反応ゾーンの下流側には冷却ゾーンが設けられている。代表的なものとしては、冷却用流体、一般的には水が反応ゾーンから流れてくる新たに形成されたカーボンブラック粒子の流れの中に散布される。シリコン処理されたカーボンブラックの製造においては、前述の揮発可能なシリコン含有化合物が冷却ゾーンの上流側の地点でカーボンブラック反応がまの中に導入される。有用な化合物はカーボンブラック反応がまの温度で揮発可能な化合物である。限定的ではないが、例示すれば、テトラエトキシオルソシリケート(TEDS)及びテトラメトキシオルソシリケート等のシリケート類、テトラクロロシラン及びトリクロロメチルシラン等のシラン類、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMTS)等の揮発性シリコーンポリマーが挙げられる。揮発可能な化合物の流量は、処理されたカーボンブラック内のシリコンの重量%を決めるであろう。処理されたカーボンブラック内のシリコンの重量%は、約0.1〜約25%、好ましくは約0.5〜約10%、更に好ましくは約2〜約6%の範囲に入っている。揮発可能な化合物はカーボンブラック形成用供給原料に予め混合され、供給原料と共に反応ゾーンに導入される。別のやり方では、揮発可能な化合物は、供給原料注入地点の上流側か下流側のいずれかから独立して反応ゾーンに導入されてもよい。
【0034】
前述のように添加物が用いられ、これに関してはシリカやカーボンブラックを結合するのに有用なカップリング剤がシリコン処理されたカーボンブラックと共に使用されることが期待される。カーボンブラック及びその他の多くの粒状充填材は市販され、当業者ならば知っているところである。
【0035】
粒状充填材又は粒状充填材の混合物の選択は、エラストマー・マスタバッチ製品の意図されている用途に大きく依存している。ここで使用されているように、粒状充填材は、ここに開示されている原理に基づいてスラリー化可能で、混合区域に供給することができる任意の材料を含んでいる。例えば、好適な粒状充填材は、導電性充填材、補強用充填材、(40未満のアクペクト比L/Dを有する)短い繊維を含む充填材、フレーク等を含んでいる。前述のカーボンブラックとシリカ型充填材に加えて、充填材は粘土、ガラス、アラミド繊維等のポリマーで形成することができる。この開示に基づいて、ここに開示された方法と装置に使用される適当な粒子状充填材を選ぶことは、この開示を与えられた当業者の能力の範囲内のものであり、エラストマー組成物に使用するのに適した任意の充填材が、本発明の教示を用いてエラストマー複合材料に組み込まれることが期待される。勿論、ここで論議された種々の粒子状充填材のブレンドも使用可能である。
【0036】
図1に示す好適実施形態は、カーボンブラックの水系スラリーを含む粒状充填材の流体を準備するように特にうまく構成されている。公知の原理によれば、単位重量当たりに低い表面積を有するカーボンブラックは、単位重量当たりに高い表面積を有する低い濃度のカーボンブラックと同じ凝固(coagulation)効能を得るのに高い濃度の粒状スラリーで使用される必要がある。攪拌される混合タンク18は、水と任意にペレット化されたカーボンブラックを受入れ、初期の混合流体を準備する。この混合流体は、排出オリフィス20を通ってダイアフラム・ポンプ等のポンプ手段24を具えた流体ライン22に入る。ライン28はこの混合流体を取り入れポート30を通じてコロイドミル32或いはパイプライン粉砕機等まで通過させる。カーボンブラックは水系キャリア液体内に分散されて分散流体を形成し、この分散流体は出口ポート31と流体ライン33を通過してホモジナイザー34に達する。好ましくは漸進型キャビティポンプ等のポンプ手段36がライン33に設けられている。ホモジナイザー34はカーボンブラックをキャリア流体中に更に細かく分散させてカーボンブラック・スラリーを形成し、これは凝固反応器14の混合区域に供給される。これはコロイドミル32からライン33に流体連通する入口ポート37を有する。ホモジナイザー34は例えばMicrofluidics International Corporation (Newton, Massachusetts, USA)から市販されているMicrofluidizer(登録商標)を具えていることが好ましい。APV Gaulin, Inc.(Wilmington, Massachusetts, USA)のAPV Homogenizer Divisionから市販されているモデルMS18, MS45及びMC120 シリーズのホモジナイザーも適している。その他の好適なホモジナイザーが市販されており、この開示を与えられた当業者ならば明らかであろう。代表的には、前述のシステムによって準備された水中のカーボンブラックは約30ミクロン未満のサイズの少なくとも約90%の凝集体、更に好ましくはは約20ミクロン未満のサイズの少なくとも約90%の凝集体を有している。好ましくは、このカーボンブラックは5〜15ミクロンの平均サイズ、例えば約9ミクロンの平均サイズまで粉砕される。出口ポート38はカーボンブラックのスラリーをホモジナイザーから供給ライン16を経由して混合区域(ゾーン)まで通過させる。このスラリーはホモジナイザーの過程において68.95〜103.42MPa(10,000〜15,000psi)に達し、約4.14MPa(600psi)以上でホモジナイザーを出て行く。高いカーボンブラックの含量(content)が用いられて過剰な水、又はその他のキャリアを除去する課題を少なくすることが好ましい。代表的には、約10〜30重量%のカーボンブラックが好ましい。当業者であれば、この開示に基づいてスラリーのカーボンブラックの含量(重量%)及び混合区域(ゾーン)へのスラリーの流量は、混合区域への天然ゴムラテックス(乳液)の流量と調和させて、マスタバッチ中の所望のカーボンブラックの含量(phr)を得られるようにする必要がある。このカーボンブラックの含量は、製品の意図する用途に適した材料特性と性能が得られるように公知の原理に基づいて選ばれる。代表的には、例えばCTAB値10以上のカーボンブラックを充分に使用してマスタバッチ内のカーボンブラックの含量を少なくとも約30phr にしている。
【0037】
好ましくは、スラリーは準備された直後にマスタバッチ製造に使用される。スラリーを搬送する流体用導管及び必要に応じて設けられる保持タンク等は、スラリー中にカーボンブラックの分散を実質的に保持する条件を確立或いは維持する必要がある。即ち、スラリー内の粒子状充填材の実質的な沈降を、合理的に実用的な範囲にまで減らす必要がある。例えば、すべての流れのラインを平滑にして、且つライン同士を円滑に接続することが望ましい。混合ゾーンにおけるスラリーノズルの先端のスラリーの圧力や速度の変動を減らするに、必要に応じてホモジナイザーと混合区域との間にアキュムレーターが用いられる。
【0038】
前述の適宜なプロセス・パラメーターの下で供給ライン12を経て混合区域に搬送される天然ゴム乳液流体その他のエラストマー乳液(ラテックス)流体及び供給ライン16を経て混合ゾーンに供給されるカーボンブラックのスラリーは、新規なエラストマー複合材料、特にエラストマー・マスタバッチの砕片(クラム)を製造する。種々の添加物をこのエラストマー・マスタバッチに組み込むための手段も設けられている。一つ以上の添加物を含む添加物流体が、別個の供給流れとして混合ゾーンに供給される。望ましい場合には、一つ以上の添加物をカーボンブラックのスラリー、即ち代表的にはエラストマー・乳液流体と予め混合しておいてもよい。添加物は、例えば乾式混合技術によってマスタバッチに順次に混合されてもよい。当業者であれば多くの添加物は周知であり、例えば酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、可塑剤、工程補助剤(例えば液状ポリマー、オイル等)、樹脂、難燃剤、エキステンダーオイル、潤滑剤、及びこれらの混合物等が含まれる。これらの添加物の一般的な用途と選択は当業者ならば周知のことである。これらをここに開示されているシステムに使用することは、本発明の説明によって容易に理解されるであろう。
【0039】
混合区域/凝固区域・アセンブリについて、以下に更に詳しく説明する。エラストマー・マスタバッチの砕片は凝固反応器14の吐出端から適宜な乾燥及び混合(compounding)装置まで運ばれる。図1の好適実施形態においては、マスタバッチの砕片は先ず搬送手段41を経て脱水押出機40まで運ばれる。カーボンブラック充填材によって天然ゴムのマスタバッチを製造する図1に示されたものと同様な普通の好適実施形態においては、脱水作用は含水量を約70〜80重量%から約15〜25重量%まで減らすであろう。水は脱水押出機40から放流ライン43を経て排出される。好適な脱水押出機は周知であり、例えばFrench Oil Co. (Piqua, Ohio, USA) から市販されている。
【0040】
このマスタバッチは脱水押出機40からコンベア又は単純な重力落下その他の適宜な手段101を経て、連続的な混合機(compounder)100まで運ばれ、次いでオープンミル(開放型ロール機)120に達する。カーボンブラック充填材によって天然ゴムのマスタバッチを製造する図1に示されたものと同じ普通の好適実施形態においては、混合及び混練(milling)作用によって含水量を約15〜25重量%から1重量%未満まで減らすであろう。一つの好適実施形態においては、連続的な混合機100内で添加物をマスタバッチと混ぜることができる。詳しくは、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、可塑剤、工程補助剤(例えば液状ポリマー、オイル等)、樹脂、難燃剤、エキステンダーオイル、潤滑剤、及びこれらの混合物等を連続的な混合機100において添加することができる。別の好適実施形態においては、追加のエラストマーを連続的な混合機100においてマスタバッチに添加して、エラストマー・ブレンドを製造することができる。限定的ではないが、これらのエラストマーには、ゴム、1, 3- ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2, 3- ジメチル-1, 3-ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン等のポリマー(例えばホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマー)が含まれる。連続的な混合機100はマスタバッチを乾燥させ、マスタバッチを混練し、そのムーニー(Mooney)粘度と分子量を制御し、且つ結合ゴムの減少を少なくする。好適な連続的な混合機は周知で市場から入手可能であり、例えば Farrel Corporation of Ansonia, CTから市販されている Unimax 連続ミキサー等が含まれる。
【0041】
図1〜図8に示されているように、エラストマーのマスタバッチは凝固反応器14から脱水押出機40まで供給され、次いで連続的な混合機100の細長い処理室(チャンバ)104に形成された供給口(ポート)102に入れられる。一つの好適実施形態においては、供給口102は、脱水押出機40からエラストマーのマスタバッチを重力で落下させるホッパーである。供給口102は、コンベアベルト、導管、パイプその他のエラストマー・マスタバッチを搬送するための搬送手段を介して供給される。処理室104は連続的な混合機100のハウジング105内に入っている。細長いローター106が互いに平行して処理室104内に軸方向に並んでいるのが見える。ローター106は歯車減速機110と軸受112を介してモーター108によって駆動される。ローター106は公知の設計に基づいて、細長い処理室104を軸方向に通って材料を処理するように構成されている。ローター106は、異なるねじ山或いはねじ形状を有する異なるセグメントによって分割されていることが望ましい。好適実施形態においては、処理室104は異なる形状を有する二つのローター106を収容している。異なる形状を有する適宜なローター106は、例えば Farrel Corporation of Ansonia CT から市販されているローターモデル番号7と15を含む。好適実施形態においては、ローター106はエラストマー・マスタバッチの加熱及び/又は冷却を行うように温度制御された流体を具えている。
【0042】
図8に示された実施形態から明らかなように、各ローター106は第1セグメント116と第2セグメント118を有する。エラストマー・マスタバッチが処理室104を通過する際に、ローターは材料を噛み砕き、それによってエラストマー・マスタバッチを混合し乾燥する。処理室104にはポート109が設けられ、液状添加物を添加する。乾いた材料は供給口102を経てエラストマー・マスタバッチに添加される。排気孔(ベント)111が処理室104に設けられ、エラストマー・マスタバッチが乾燥する際に水分を排出する。エラストマー・マスタバッチは吐出オリフィス114を経て処理室104を出て行く。第1温度制御装置115は、加熱された水によって連続的な混合機100を加熱及び/又は冷却する。第2温度制御装置117は、冷却された水によって吐出オリフィス114を加熱及び/又は冷却する。典型的なプロセスにおいては、始動時に熱が加えられ、次いで処理が完全に実施され、加熱が中断されて冷却が加えられる。始動時には熱は特に処理室104と吐出オリフィス114に対して加えられ、作動時には供給口102、処理室104及びローター106に対して特に冷却が行われる。453.6kg/hr(1000ポンド/時間)の公称処理量の場合の典型的な用途においては、約263.8〜527.5MJ/hr(250,000〜500,000BTU/時間)のエラストマー・マスタバッチが冷却によって取り出される。前述したように、好適実施形態の連続的な混合機100はマスタバッチを乾燥すると同時に、結合ゴムを極端に減らさないようにそのムーニー粘度と分子量を制御する。好適実施形態の連続的な混合機100は、エラストマー・マスタバッチの含水率を約25重量%から約1重量%未満まで減少させることができる。
【0043】
連続的な混合機100の運転パラメーターを制御することによって、エラストマー・マスタバッチのムーニー粘度、含水率、分子量、結合ゴムの制御が可能になる。これらの運転パラメーターには、連続的な混合機の処理量、ローターの速度、吐出オリフィスのサイズと温度、及び処理室の温度が含まれている。
【0044】
好適実施形態においては、連続的な混合機100から吐出されたエラストマー・マスタバッチはオープンミル120に供給される。エラストマー・マスタバッチは長い押出物として吐出され、オープンミル120に入る前に更に短い長さに切断される。エラストマー・マスタバッチは必要に応じてコンベア119を経てオープンミル120に供給される。コンベア119は、エラストマー・マスタバッチを連続的な混合機100からオープンミル120まで搬送するためのコンベアベルト、導管、パイプその他の適宜な手段である。オープンミル120は、エラストマー・マスタバッチのムーニー粘度を更に制御する一対のローラー122を具えている。ローラー122は必要に応じて加熱或いは冷却されて、オープンミル120の作用を増進する。或る実施形態においては、このオープンミル120はエラストマー・マスタバッチの温度を約100℃に低下させる。
【0045】
図9に示されているように、オープンミル120を出た後にエラストマー・マスタバッチは必要に応じてコンベア200によって冷却装置(システム)202まで供給される。冷却装置202は冷却水スプレー204を具え、その水は冷却水タンク206その他の水源から供給される。冷却水スプレー204からの水は、エラストマー・マスタバッチ上に直接に散布される。或る実施形態においては、Hans W. Barbe of Germanyによって製造された Promol 等のシリケートとステアリン酸カルシウムを含む非付着剤が、水のスプレーに添加され、又は水スプレーの代わりに使用される。次ぎにエラストマー・マスタバッチは必要に応じてコンベア208によって造粒機(granulator)210に供給される。冷却水スプレー204が使用された場合、エラストマー・マスタバッチから蒸発しなかった冷却水を除去するために、必要に応じてエアナイフ212その他の高圧空気ブロワーその他の適宜な手段が使用される。次ぎに、エラストマー・マスタバッチはコンベア214によって梱包機(baler)216に供給され、ここでエラストマー・マスタバッチは、意図する用途に応じて梱包機216の圧力と時間等の滞留時間を変えることによって多少なりとも緊密又は高密度に荷造りされる。例えば、緩いベール(bale)はバンバリーミキサー等での使用に適している。
【0046】
前述のように、本発明の方法と装置を具体化した連続的な混合機は、この連続的な混合機内で処理されるマスタバッチのムーニー粘度、分子量、結合ゴム及び乾燥を制御するように制御可能となっている。これらのパラメーターの変更の程度と最終値は、得られたマスタバッチの意図する用途に応じて選ばれるであろう。この開示に基づいて、適宜なローターの設計、ローターの運転条件及びパラメーターを選択して、連続的な混合機内で処理されるエラストマー・マスタバッチのムーニー粘度、分子量、結合ゴム及び乾燥を制御することはこの開示を与えられた当業者の能力の範囲内のものであろう。凝固反応器で製造されるマスタバッチのムーニー粘度は、特定の最終用途のためには高過ぎることが多い。連続的な混合機はマスタバッチのムーニー粘度を好適に減少させて、選ばれた低い値にすることができる。
【0047】
図8は乾燥した添加物を導管171と供給口102を経て連続的な混合機100に導入するためのサブシステム58を模式的に図示している。図8には、導管172と供給口102を介して液状添加物を連続的な混合機100に導入するためのサブシステム59も模式的に示されている。例えば、導管171、172、173は各サブシステムから連続的な混合機100に材料を搬送するためのパイプ、コンベアベルトその他の適宜な手段であってもよい。例示の添加物、例えば充填材(凝固反応器で使用されるシリカ及び酸化亜鉛等の充填材と同じ或いは異なるものであってもよく、酸化亜鉛は硬化剤としても作用する)、その他のエラストマー、その他の或いは補助的なマスタバッチ、酸化防止剤、オゾン亀裂防止剤、可塑剤、工程補助剤(硬化剤としても使用可能なステアリン酸、液状ポリマー、オイル、ワックス等)、樹脂、難燃剤、エキステンダー油、潤滑剤及びこれらの混合物を含む。エラストマーを添加することによって、連続的な混合機100を通じてエチストマー・ブレンドを製造することができる。限定的なものではないが、エラストマーの例としては、ゴム、1, 3- ブタジエン、スチレン、イソプレン、イソブチレン、2, 3- ジメチル-1, 3-ブタジエン、アクリロニトリル、エチレン、ポリプロピレンその他のポリマー(例えばホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマー)が挙げられる。エラストマー、添加物及び第2マスタバッチの任意の組合せを連続的な混合機100に添加し、凝固反応器14で製造されたエラストマー・マスタバッチに付加することも認められる。
【0048】
図1による実施形態に適した混合区域(ゾーン)/凝固区域(ゾーン)・アセンブリを具えた凝固反応器14の寸法と設計上の特長は、一部は所望の処理能力、処理される材料の選択等の設計因子に依存している。一つの好適実施形態が図2に示され、これによると、凝固反応器48はジョイント54において流体に対してシールされた凝固区域52に取付けられた混合ヘッド50を有している。図2は、エラストマー・乳液を混合区域に供給する第1サブシステム56、カーボンブラック・スラリーその他の粒状充填材の流体を混合区域に供給するサブシステム57、及び必要に応じて添加流体、加圧空気等を混合区域に供給するサブシステム58を模式的に示している。混合ヘッド50が三つの供給チャンネル60、61、62を有していることが見られる。供給チャンネル60は天然ゴムラテックス(乳液)の流体のために設けられ、供給チャンネル62は気体及び/又は添加流体を直接に供給するために設けられている。添加物の直接注入を採用した好適実施形態に関連して、炭化水素添加物、更に一般的には非水系の相溶性添加物に関して著しい利点が得られる。エマルジョン中間体を使用してエラストマー乳液と予備ブレンドするのに適した添加エマルジョンを得ることは周知であるが、添加物の直接注入を採用した本発明による好適実施形態は、エマルジョン中間体を不要にするのみならず、エマルジョンを形成するのに以前に使用されていたタンク、分散装置等の装置も不要にすることができる。したがって、製造コストと複雑性を減少させることが可能になる。更に後述するように、スラリーを混合区域に供給する供給チャンネル61は凝固反応器の混合区域と凝固区域に同軸に並んでいることが望ましい。エラストマー乳液流体を受けるのに一つだけの供給チャンネルが示されているが、スラリーを混合区域に供給する中央の供給チャンネルの周囲に適宜な任意の数の供給チャンネルを配置してもよい。したがって、例えば図2の実施形態において、第4の供給チャンネルが設けられ、これを通って環境空気、高圧空気又はその他の気体が混合区域に供給されてもよい。同様に、中心軸の供給チャンネル61を通じてスラリーと共に加圧空気を注入してもよい。補助供給チャンネルは不使用時には一時的或いは恒久的に密封されてもよい。
【0049】
凝固反応器48の凝固区域52は、意図されている特定の用途のための設計目的によって選ばれた軸方向の長さを有する第1部分64を有しているように示されている。必要に応じて、この凝固区域はその軸方向長さの全体或いは実質的に全長にわたって一定の断面積を有していてもよい。例えば、凝固反応器は、混合区域から吐出端まで単純な直線的なチューブ状チャンネルを規定している。しかし、前述の理由によって、そして図示された好適実施形態から判るように、凝固区域52の断面積は導入(entry)端66から吐出端68まで徐々に増大している。更に詳しくは、断面積は導入端から吐出端まで長手方向に増大している。図2の実施形態においては、凝固区域の断面積は、一定の断面積を有する部分64に続いて連続的に次第に増大している。凝固反応器(或いは更に正しくは凝固反応器の内部に規定された凝固区域)及びその他の構成部品の直径と断面積は、特に断らない限り、開放された流路の断面積とその流路の内径を意味するものである。
【0050】
エラストマー複合材料、詳しくはマスタバッチの砕片72の形状の凝固したエラストマー乳液は、方向変換部70を通じて凝固反応器48から吐出されているように示されている。方向変換部70は凝固反応器の吐出端68に取付けられた調節自在な導管である。これはエラストマー・マスタバッチの砕片72を選択的に通過させて種々の異なる任意の受入れ箇所に届けるように調節可能である。この特長によって、例えばテストのため、或いは立ち上がり時の工程の不安定性によって一時的に不良品ができた場合に一つの連続生産の初期において、製品の流れからマスタバッチ砕片を取り出すことが容易になる。更に、この方向変換部は、製品を凝固反応器から異なる後処理通路に向ける設計の融通性を与える。図1の好適実施形態によれば、方向変換部70を通じて凝固反応器48から吐出されるマスタバッチの砕片72は、脱水押出機4に受け取られ、そこから供給口102を経て連続的な混合機100内に供給されるように示されている。
【0051】
凝固反応器48の断面寸法は、導入端66と吐出端68の間で全体角度αを以て増大しているように示されている。この角度αは0°よりも大きく、そして好適実施形態においては45°未満であり、更に好ましくは15°未満であり、最も好ましくは0.5〜5°である。この角度αは半角として表され、凝固区域の長手方向中心軸から凝固反応器の端の凝固区域の外周面の一点Aまで測った角度である。これに関して、凝固反応器の上流側部分、即ち導入端66の近傍の部分の断面積は前述の原理に基づいて充分に徐々に増大して、凝固区域の準成形を実現している。凝固区域の拡がりの角度が大き過ぎると、エラストマー・マスタバッチが小球状或いはみみず状の(worm)所望の砕片形状に製造されず、凝固反応器を通じて単純に散布されてしまう。或る実施形態において、凝固反応器の孔を余りにも徐々に増大させると、混合ヘッド内に供給材料と反応生成物が詰まることがある。乳液(ラテックス)が実質的に凝固し、流れが実質的にプラグ流れになっている凝固区域の下流側部分においては、凝固区域は断面積を増大させ或いは増大させずに延びてもよい。したがって、徐々に増大する断面積を有する好適実施形態における凝固区域に関して云えば、流れが実質的にプラグ流れになっていない凝固区域の部分に主として言及していることを理解すべきである。
【0052】
凝固区域(即ち今説明した少なくともその上流側部分)の断面積は、図2の実施形態に示された連続式でなく段階式に増大してもよい。図3に示された実施形態においては、ここに開示された方法と装置によってエラストマー・マスタバッチを製造するための連続流れシステムは混合ヘッド/凝固区域・アセンブリを具えており、凝固区域の断面積は段階的に増大している。好ましくは、この段階式の実施形態における凝固区域の個々のセクションは裾拡がりの接続部によって隣接するセクションに接続されている。即ち、これらのセクションは組み合わせられて滑らかでほぼ連続的な凝固区域表面を形成し、一方、例えば一つのセクションから次のセクションへ直径が鋭く且つ瞬間的に増大している。図3の凝固区域は三段階に増大し、四つの異なるセクション即ちサブセクション74〜77が存在している。前述した設計原理と変わらずに、凝固区域53の断面積は導入端66から吐出端68の地点Aまで、凝固反応器の上流側部分において必要な流れの制御を得る全体角度で増大している。第1セクション74は、(a)混合ゾーンの直ぐ下流側の混合ヘッド50の一定直径部分と、(b)導入端66のジョイント54においてこれに接続された同じ又は似た直径の部分とを具えている。この第1セクションは一定の断面直径D1と軸方向の寸法即ち長さL1とを有している。この第1セクション74において、長さL1は直径D1の3倍より大きいことが必要であり、更にD1の5倍より大きいことが望ましく、D1の約12〜18倍であることが最も望ましい。このセクションは代表的にはD1の約15倍の長さを有している。これに続く各セクションは一定の断面寸法と、先行する(即ち上流側の)セクションの約2倍の断面積を有している。こうして、例えばセクション75は一定の断面寸法とセクション74の2倍の断面積とを有している。同様に、セクション76の断面積はセクション75のそれの2倍であり、セクション77の断面積はセクション76のそれの2倍である。各セクション75〜77において、その長さはその直径の3倍より大きいことが望ましく、更に好ましくはその直径の約3〜7倍であり、一般的にはその直径の約5倍である。こうして、例えばセクション76においては長手方向の長さL3 はその直径D3の約5倍であることが好ましい。
【0053】
図3の実施形態に対応する混合ヘッドと凝固区域のアセンブリが図4に部分断面図で図示されている。混合ヘッド50は、ジョイント54を経て凝固区域の延長部53と一体化されている。これは混合区域を規定し、ここに複数の供給チャンネル60、61、62が、延長部53の内部に凝固区域部分と実質的に同軸に配置された細長い実質的に円筒状のチャンネル80を有する接続部を形成している。ここに開示された方法と装置の作用にとって、混合区域及び/又は凝固区域の境界線を精密に規定することは重要ではないことは理解されるであろう。この開示を与えられた当業者であれば、流れのチャンネルの接続領域の設計を種々に変更することが可能である。これに関して、一般的に好ましいガイドラインとして、図4に示されたタイプの実施形態において、例えばスラリー先端67を円筒状部分80の始端のほぼ上流側に位置させ、供給チャンネルの接続部に長手方向にほぼ中心線に沿って位置決めしている。このような実施形態において、スラリー先端67から円筒状部分80の始端における周縁までの仮想円錐によって規定される最小断面積が、乳液供給チャンネル60の断面積より大きく、或いは少なくともこれに等しいことが好ましい。チャンネル80と、エラストマー乳液が実質的に完全に凝固する前に乱流が存在している凝固区域の少なくとも上流側部分の両者が、円形断面を有することが好ましい。
【0054】
カーボンブラック・スラリー又はその他の粒状充填材流体の供給手段は、凝固区域に向かって開いている開口又はスラリーノズルの先端67の方に、混合室(チャンバ)と実質的に同軸に延びている供給チューブ82を具えている。これは、ここに述べられている好適実施形態の非常に有利な特長である。前述のように、カーボンブラックのスラリーは乳液の供給速度に対して非常に高い速度で混合区域に供給され、そして狭い孔を有する供給チューブ82の軸方向配列は、乱流の発達をもたらす。チャンネル80の直径Dm(これは前述のように凝固区域のセクション74のこれに続く部分の直径D1に実質的に等しいことが望ましい)は、好ましくはスラリー供給チューブ82の内径の少なくとも2倍、更に好ましくは供給チューブ82の直径の約4〜8倍、代表的にはこの直径の約7〜8倍である。供給チューブ82は、混合ヘッド50の供給チャンネル61の上流側端部において導入ポート83に流体に対してシールされた状態で示されている。軸方向供給チューブ82の直径は、スラリーがスラリーノズルの先端67を通過して混合室内に入る際に必要なスラリー流量と軸方向速度に大きく依存している。この開示を与えられた当業者であれば、正しい又は必要な容量と速度を容易に決めることができ、これらの一部には濃度と材料選択が関連している。カーボンブラックのスラリーのための供給チューブが取り外し可能なここに図示され開示された実施形態は、異なったマスタバッチ組成物を異なる時期に製造する際に所望の融通性を提供する。一つの連続生産に使用された供給チューブは取り外して、次の生産に適した大きな或いは小さな孔のチューブに取り替えることができる。スラリーが供給チューブを出てくる際の圧力と速度を考慮すると、これは混合区域へのスプレー又はジェットと云うことができる。これは、少なくとも特定の実施形態の場合には、流体で既に実質的に満たされている領域へのスラリーの高速注入を意味する。したがって、それがスラリーノズルの先端を通過すると即座に散布されると云う意味でスプレーであり、単純に広がった飛跡を描く自由飛翔材料の小滴の意味である必要はない。
【0055】
補助供給チャンネル60と62は、供給チャンネル60と下流側チャンネル80に対して角度βをなす接続部84と85をそれぞれが形成している。この角度βは、多くの実施形態においては0°から180°までの値を有する。典型的には、βは30〜90°である。負圧、即ちスラリーノズルの先端67を出て行く高速スラリーにそれが巻き込まれる際の乳液流体のキャビテーションを避けることが望ましい。なぜならば、これは混合にむらが生じてばらつきの多いマスタバッチ製品を生じる恐れがあるからである。空気その他の気体が混合区域に注入又は供給され、このような真空を破壊することを助ける。更に、供給チャンネル60の導入ポート86に達する天然ゴム乳液のための拡大された供給ラインが、乳液流体のタンクとして働くことが望ましい。しかし、別の例では、この乳液供給チャンネルは、スラリーノズルの先端67の上流又は下流側で混合チャンネルと交差している。
【0056】
カーボンブラック・スラリー又は粒状充填材流体は、約2.07MPa(300psi)g以上、即ち約3.45〜34.5MPa(500〜5,000psi)g、例えば6.89MPa(1000psi)gの圧力で供給チューブ82に供給される。好ましくは、液状スラリーは30.5m/sec(100ft/秒)、好ましくは約30.5〜243.8m/sec(100〜約800ft/秒)、更に好ましくは約61.0〜152.4m/sec(200〜500ft/秒)、例えば約106.7m/sec(350ft/秒)の速度でスラリーノズルの先端67を通って混合区域に供給される。図4の矢印51は、供給チャンネル60と62を通してスラリーノズルの先端67の下方のチャンネル80に入るエラストマー乳液と補助供給材料の大体の方向を示している。このようにして、スラリーと乳液の流体は、前述の数に従って大幅に異なる供給流速で混合区域に供給される。理論によって束縛されることを望むものではないが、現在のところ判っているのは、供給速度が異なっていることによって、混合区域における乳液の良好な剪断状態が得られ、マクロ(巨視的)分散と凝固がうまく行われることである。
【0057】
図5と図6には別の好適実施形態が示され、ここでは図4の一つの軸方向供給チューブ82が複数の軸方向に延びる供給チューブ90〜92に置き換えられている。多数本の供給チューブは、例えば6本又は8本までの軸方向に延びる供給チューブを採用可能である。異なる直径の異なる供給チューブを用いて、異なる組成物を製造するための製造の融通性を得ることが有利である。複数の供給チューブを同時に使用して、凝固反応器の混合区域と凝固区域内に良好な乱流を得ることもできる。
【0058】
混合ヘッドの別の実施形態が図7に示されている。混合ヘッド150は混合区域179を規定しているように示されている。軸方向供給チャンネル161は、カーボンブラック・スラリーその他の粒状充填材の流体を高速で混合室179に供給するように構成された供給チューブ182を受け入れている。供給チューブ182の中心孔はスラリーノズルの先端167で終わっている。一定直径のノズルランド168は、スラリーノズルの先端167の直ぐ上流側にあり、大径孔領域169まで達している。好ましくは、このランド168の軸方向寸法は、その直径の約2〜6倍、例えば約5倍である。第2供給チャンネル160は、エラストマー乳液流体を混合区域に供給するために、90°の角度で混合区域179への接続部184を形成している。乳液流体供給チャンネル160の断面の直径は、スラリーノズルの先端167とランド168の断面直径よりも実質的に大きい。理論に束縛されることを望むものではないが、ノズルランドの上流側の大きい直径を有する孔セクションに接続されたノズルランド168の軸方向延長部は、供給チューブ182を通って混合区域179に入るスラリーの流れに好ましい安定性を与えるものと信じられている。供給チューブ182の孔は20°の傾斜部、即ち約20°の角度で上流方向に延びる円錐領域169によって良好に機能することが判る。混合区域179の下流側は細長い凝固区域である。前述の原理と同様に、この凝固区域は限界に近く長いだけでよい。即ち、その軸方向の寸法はその直径より限界に近く長ければよい。しかし、次第に拡大した凝固区域が使用されることが望ましい。
【0059】
前述のように、エラストマー・マスタバッチの凝固は、凝固反応器の終端或いはその手前で実質的に完了する。即ち、凝固は、凝固溶液等の流れの付加を必要とせずに、凝固反応器の凝固区域内で生じる。このことは、混合区域内で幾らかの初期の凝固が生じる可能性を排除するものではない。この目的のためには、混合区域は凝固区域の延長部分と考えてもよい。更に、エラストマー・マスタバッチが凝固反応器を出る前に凝固が実質的に完了していると云うことは、最終製品の意図している用途に適した種々の目的のいずれかのために、引き続いて行われる加工や後処理の可能性を排除することを意味するものではない。この点に関して、ここに開示されている天然ゴム乳液を採用する新規な方法の好適実施形態における実質的に完了した凝固とは、乳液のゴム炭化水素の少なくとも約95重量%、更に好ましくは少なくとも約97重量%、最も好ましくは少なくとも約99重量%が凝固していることを意味する。
【0060】
ここに開示され図示されている方法と装置は、優れた物性と性能を有するエラストマー複合材料を製造する。本発明の新規なエラストマー複合材料は、前述の方法と装置によって製造されたマスタバッチ組成物と、このマスタバッチ組成物から作られた中間化合物及び最終製品を含んでいる。特に、このエラストマー・マスタバッチは、天然ゴム乳液(乳液濃縮物又はフィールド・ラテックス(乳液))を優れた物性と性能を有する種々の品位のカーボンブラック充填材と共に使用して製造することができる。タイヤのトレッド等の用途のために現在商業的に使用されているカーボンブラック、及び公知の製造装置と方法での商業的使用には適していないと今まで考えられているカーボンブラックもうまく使うことができた。表面積が大きく構造が低い故にカーボンブラックに対する普通の装填(loading)レベルにおいて受入れ可能なマクロ分散(macro-dispersion)のレベルを得ること及び/又はエラストマーの分子量を保存することが実用的でないために従来は不適当であるとされていたカーボンブラックは、ここに開示されている新規なエラストマー・マスタバッチ組成物にためには非常が好ましい。その様なエラストマー複合材料は、天然ゴムの分子量の良好な維持と共に、天然ゴム内のカーボンブラックの優れた分散と、制御されたムーニー粘度と、水分レベルを有することが分かる。その上これらの好都合な結果は、酸溶液の処理タンク又は流れあるいは別の凝固剤を含む凝固手順を必要とせずに実現された。従ってその様な凝固処理の費用及び複雑さが回避可能であるだけではなく、その様なオペレーションから流出する流れを取り扱う必要もまた回避可能である。
【0061】
従来既知の乾燥粉砕技術は、顕著な分子量の低下なしでその様な充填材の均等な分散を実現可能ではなく、更にマスタバッチのムーニー粘度を所定のレベルに制御することも可能ではなく、従って本発明の特定の好適な実施の形態に従い製作される新規な天然ゴムのマスタバッチ組成物を生成することもできない。その関連において新規なエラストマー複合材料は、天然ゴム内のカーボンブラックの優れたマクロ分散と、制御されたムーニー粘度及び水分レベルとを有して開示されており、天然ゴムの高い分子量と共に、表面面積比DBPA:CTABが1.2未満までの構造、更には1.0未満までもの構造を有するカーボンブラックの優れたマクロ分散までもを有して開示される。従来公知の混合技術では、天然ゴムの分子量の著しい低下なしにはこのように優れたカーボンブラックのマクロ分散は得られず、したがって本発明の新規なマスタバッチ組成物その他のエラストマー複合材料はできなかった。この開示によって得られる、今まで得られなかったカーボンブラックのマクロ分布レベルと制御されたムーニー粘度レベルを有する好ましい新規なエラストマー・マスタバッチ組成物は、貧弱なマクロ分散を有する従来公知のマスタバッチの代わりに使用可能である。したがって、ここに開示されているマスタバッチは、公知の技術による硬化化合物に組み入れ可能である。好適な実施形態においては、この新規な硬化化合物は、貧弱なマクロ分散を有するマスタバッチを含むこれに匹敵する他の硬化化合物に比べてほぼ同等な、場合によってはこれよりも著しく優れた物性と性能を有することが判る。しかし、本発明によれば、短い混合時間、少ないエネルギー消費、その他のコスト節約をしてマスタバッチを製造することができる。
【0062】
特定の好適な実施形態の場合には、優れた物性と性能を有する天然ゴム乳液とカーボンブラックの充填材マスタバッチを製造することができる。非常に高い表面積と低い構造を有するカーボンブラックを用いてさえ、同じ程度のカーボンブラックの分散を得るのに充分な時間と充分な強度レベルで乾式混練を行うことによって生じるであろう崩壊を起こすことなく、カーボンブラックの優れたマクロ分散が得られる。これに関して、表面積に対する構造の比DBPA:CTABが1.2未満、更には1.0未満でさえあるカーボンブラックを用いて、高度の分散が得られる新規な天然ゴムマスタバッチ組成物が特に有利である。ここで使用されているように、カーボンブラックの構造は、ASTM D2414に述べられた手順にしたがって、100グラムのカーボンブラック当たりのDBPAの立方センチの値として表されたブチルフタレート(DBPA)の吸着として測定可能である。カーボンブラックの表面積は、ASTM D3765−85に述べられた手順にしたがって、1グラムのカーボンブラック当たりの平方メートルの値として表されたCTABとして測定可能である。したがって、今まで得ることのできなかった分子量と充填材分布レベル等の物性の組み合わせを有し、今までは不適当とされていた非常に高い表面積と低い構造を有するカーボンブラック等の充填材を組み入れた新規な天然ゴムマスタバッチが得られる。ここに開示された方法と装置によって製造された天然ゴムマスタバッチの分散品質は、MWsol(重量平均)の周知の特徴とマクロ分散を参照して示すことができる。好適実施形態によって製造されたマスタバッチのマクロ分散レベルは、乾式混練を用いて製造されたほぼ同じMWsol のマスタバッチのそれよりもかなり良好である。最も特筆すべきことは、これらの好適実施形態の分散品質は、カーボンブラック充填材の形態にはあまり関係ない。ここに開示された方法と装置を用いて得られる分散のレベルに影響する他の因子は、スラリー中のカーボンブラックの濃度、スラリーに入力された全エネルギー、流体の流れを混合する際のエネルギー入力等を含んでいることが認められるであろう。
【0063】
ここに開示されている天然ゴムマスタバッチ中のカーボンブラックのマクロ分散の品質は、ほぼ同じMWsol(重量平均)の公知のマスタバッチのそれよりもかなり良好である。新規なエラストマー複合材料の好適実施形態においては、以前には得られなかった状態であるフィールド・乳液状態(例えば約1,000,000)の天然ゴムのそれに近いMWsolを有する優れたカーボンブラックの分布が得られる。低い構造と高い表面積、例えば110cc/100g 未満のDBPA、45〜65m2/gより大きいCTAB、及び1.2未満、好ましくは1.0未満のDBPA:CTABを有するカーボンブラックを使用した前述の好適実施形態において、分散品質は特に優れている。
【0064】
本発明の方法と装置によれば、マスタバッチの市場価値を向上させたエラストマー・マスタバッチが提供される。エラストマー・マスタバッチのムーニー粘度と水分レベルを制御することによって、特定の最終用途に適した製品が提供される。連続的な混合機を採用したことによって、最終使用者の設備において更なる混練操作を行う必要性を減少させ、皆無にすることさえ可能になる。連続的な混合機内に補助エラストマー、添加物、マスタバッチを入れることによって、最終製品を製造するためにマスタバッチを使用する最終使用者の設備における補助的な処理ステップを無くすことができる。
【0065】
本発明の方法と装置は、タイヤ、タイヤトレッド、タイヤ側壁、タイヤ用ワイヤースキム、更生タイヤ用クッションゴム、エンジン取付け部のゴム部品、タンク軌道、鉱山用ベルト、水中設置物のゴム部品、橋梁ベアリング、地震遮断器等の製品を作るのに使用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
ここに開示された発明を用いた実験の結果は次の通りであり、ここで「FCM」は連続的な混合機、又は Farrel Unimix Continuous Mixer(連続ミキサー)を表し、「OM」はオープンミルを表している。
【0067】
実験1のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。この実験は、オイルの流れを添加し組み入れるための能力をテストするようにも構成されていた。この湿潤サンプルは天然ゴム乳液濃縮物とN331タイプのカーボンブラックとで作られた。マスタバッチは、約20重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0068】
【表1】

【0069】
実験2のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。この実験は、オイルの流れを添加し組み入れるための能力をテストするようにも構成されていた。この湿潤サンプルは天然ゴム乳液濃縮物とN220タイプのカーボンブラックとで作られた。マスタバッチは、約25重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0070】
【表2】

【0071】
実験3のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。オープンミル(OM)もこの実験に組み込まれた。この実験は、オイル、ステアリン酸(SA)及び酸化防止剤(Santoflex 6PPD) の流れを組み入れる能力をテストするようにも構成されていた。この湿潤サンプルは、天然ゴムのフィールド乳液とCabot の実験的カーボンブラックAで作られた。マスタバッチは、約22重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
実験4のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。オープンミル(OM)もこの実験に組み込まれた。この実験は、オイル、ステアリン酸(SA)、シリカ及び酸化防止剤(Santoflex 6PPD) の流れを組み入れる能力をテストするようにも構成されていた。この湿潤サンプルは、天然ゴムのフィールド乳液とN220タイプのカーボンブラックで作られた。マスタバッチは、約25重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
実験5のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。オープンミル(OM)もこの実験に組み込まれた。この湿潤サンプルは、天然ゴムのフィールド乳液とN234タイプのカーボンブラックで作られた。マスタバッチは、約24重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
実験6のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。オープンミル(OM)もこの実験に組み込まれた。この実験は、オイル、ステアリン酸(SA)、酸化亜鉛(ZnO)、シリカ及び酸化防止剤(Santoflex 6PPD) の流れを組み入れる能力をテストするようにも構成されていた。この実験の際に、サンプルFA4に対するブタジエンゴムの添加の実行可能性も研究された。この湿潤サンプルは、天然ゴムのフィールド乳液とN220タイプのカーボンブラックで作られた。マスタバッチは、約20重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0081】
【表9】

【0082】
【表10】

【0083】
実験7のデータ
この実験は、連続的な混合機(FCM)の乾燥能力をテストするために行われた。オープンミル(OM)もこの実験に組み込まれた。この実験は、オイル、ステアリン酸(SA)、酸化亜鉛(ZnO)、シリカ及び酸化防止剤(Santoflex 6PPD) の流れを組み入れる能力をテストするようにも構成されていた。この湿潤サンプルは、天然ゴムのフィールド乳液とN220タイプのカーボンブラックで作られた。マスタバッチは、約24重量%の水分レベルで連続的な混合機に供給された。
【0084】
【表11】

【0085】
【表12】

【0086】
前述の開示を参照すると、当業者であれば、本発明の真の範囲と要旨から逸脱することなく、種々の追加、改変その他を行うことができるのは明らかであろう。これらのへずての追加や改変は次ぎに述べられた特許請求の範囲によってカバーされるものである。
【符号の説明】
【0087】
10 乳液圧力タンク
12 供給ライン
14 凝固反応器
18 混合タンク
24 ポンプ手段
32 コロイドミル
34 ホモジナイザー
36 ポンプ手段
40 脱水押出機
100 混合機
104 処理室
105 ハウジング
106 ローター
114 吐出オリフィス
119 コンベア
120 オープンミル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固されたエラストマーを具備するエラストマー複合材料において、前記エラストマー内に粒状の充填材が以下の方法により分散されており、この方法が、
エラストマー乳液を具備する第1の流体の連続的な流れを、混合区域から吐出端まで伸張する凝固区域を形成する凝固反応器の混合区域へ供給する手順と、
エラストマー乳液を有する混合物を形成するために、圧力下で粒状の充填材を具備する第2の流体の連続的な流れを凝固反応器の混合区域に供給する手順であって、混合物が吐出端まで連続的な流れとして通過し、粒状の充填材がエラストマー乳液を凝固するために有効であり、混合区域内における第1の流体と第2の流体が十分に混合されて、吐出端までの前に、粒状の充填材を有するエラストマー乳液を完全に凝固させる、供給手順と、
凝固反応器の吐出端からエラストマー複合材料の連続的な流れを吐出する手順と、
凝固反応器の吐出端から処理室内で軸方向を向く複数の平行なローターを有する連続的な混合機へ、エラストマー複合材料を供給する手順と、
ローターの制御された運転により、連続的な混合機の処理室を介してエラストマー複合材料を処理する手順と、
連続的な混合機の吐出オリフィスからエラストマー複合材料を吐出する手順と、
オープンミルを介して連続的な混合機の出口オリフィスからのエラストマー複合材料を処理する手順と、
を具備する方法である、エラストマー複合材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210822(P2012−210822A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164635(P2012−164635)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2000−612107(P2000−612107)の分割
【原出願日】平成12年4月13日(2000.4.13)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】