説明

新規なグルコース脱水素酵素

【課題】基質特異性などの特性に優れた、新規なグルコース脱水素酵素及びその製造法、並びにその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】以下の特性(1)及び(2)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)分子量: SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した該酵素のポリペプチド部分の分子量が約88kDaである。
(2)基質特異性: D−グルコースに対する反応性を100%としたときのD−キシロースに対する反応性が1.3%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルコース脱水素酵素及びその用途に関する。詳しくは、本発明はフラビンを補酵素とするグルコース脱水素酵素、及び当該酵素の生産菌、当該酵素の製造法、当該酵素を使用したグルコース測定法などに関する。
【背景技術】
【0002】
血糖自己測定(SMBG:Self−Monitoring of Blood Glucose)は糖尿病患者が自己の血糖値を管理し、その治療に活用するために重要な手段である。近年、SMBGのために、電気化学的バイオセンサを用いた簡易型の自己血糖測定器が広く用いられている。SMBG用のバイオセンサは、絶縁性の基板上に電極と酵素反応層を形成したものである。
【0003】
SMBG用バイオセンサには、グルコース脱水素酵素(GDH)やグルコースオキシダーゼ(GO)等の酵素が使用されている。GO(EC 1.1.3.4)を用いた方法は、測定サンプル中の溶存酸素の影響を受けやすく、溶存酸素が測定結果に影響を及ぼすといった問題点が指摘されている。ピロロキノリンキノン依存型グルコース脱水素酵素(PQQ−GDH)(EC1.1.5.2(旧EC1.1.99.17))は、溶存酸素の影響を受けないが、マルトースやラクトースといったグルコース以外の糖類にも作用するため正確な血糖値の測定には適していない。
【0004】
特許文献1〜6や非特許文献1〜6には、アスペルギルス・テレウスやアスペルギルス・オリゼ由来のフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素(以下、「FADGDH」とも表す。)、あるいは、それらを改変したものなどが知られているが、キシロースに対する反応性が比較的高いとされ(特許文献1)、キシロース負荷試験を受けている者の血糖を測定する場合、測定値の正確性を損ねる。
【0005】
上記のほか、近年GOとGDHの長所を併せ持つ改変型GDH(特許文献7)等も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2004/058958
【特許文献2】WO2006/101239
【特許文献3】特開2007−289148
【特許文献4】特開2008−237210
【特許文献5】WO2008/059777
【特許文献6】WO2010/140431
【特許文献7】WO2011/068050
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76
【非特許文献2】Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93
【非特許文献3】Biochim Biophys Acta.146(2):317−27
【非特許文献4】Biochim Biophys Acta.146(2):328−35
【非特許文献5】J Biol Chem (1967)242:3665−3672
【非特許文献6】Appl Biochem Biotechnol (1996)56:301−310
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような現状の下、本発明は、さらに優れた特性(例えば、D−キシロースに対する反応性が低い)を備えた新たなグルコース脱水素酵素及びそれを利用したセンサ等を提供することを課題とする。また、本発明者等は、より実用的なSMBG用グルコースセンサの提供について日夜検討を重ねた結果、よりグルコースに対する親和性の高い酵素(即ち、Km値の小さい酵素)を利用することにより、測定時間を短縮し、且つ、少量の酵素の使用で正確な血糖値測定が可能になるという課題を見出した。本発明はこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決すべく本発明者等は鋭意研究を重ね、Mucor guilliermondiiに属する菌株から基質特異性及び基質との親和性に優れたGDHを精製することに成功した。係る知見に基づき、本発明者等は更なる検討と改良を積み重ね、本発明を完成するに至った。
【0010】
以下に代表的な本発明を示す。
項1.下記の特性(1)及び(2)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)分子量: SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した該酵素のポリペプチド部分の分子量が約88kDaである。
(2)基質特異性: D−グルコースに対する反応性を100%としたときのD−キシロースに対する反応性が1.3%以下である。
項2.更に下記の特性(3)を備える、項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(3)Km値: D−グルコースに対するKm値が15mM以下。
項3.更に下記の特性(4)を備える、項1又は2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(4)至適活性pH:pH6
項4.更に下記の特性(5)を備える、項1〜3のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(5)至適活性温度:45℃
項5.更に下記の特性(6)を備える、項1〜4のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(6)pH安定性: pH4.5〜8.0の範囲で安定
項6.更に下記の特性(7)を備える、項1〜5のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(7)温度安定性: 45℃の温度で15分間維持した後の残存酵素活性率が90%以上。
項7.
(1)ムコール属に分類される微生物を培養すること、及び
(2)(1)で得られた培養物からグルコース脱水素酵素活性を有するタンパク質を単離すること、
を含む、項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法。
項8.項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を用いるグルコース濃度の測定方法。
項9.項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
項10.項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサー。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフラビン結合型グルコース脱水素酵素(以下、「FGDH」とも称する。)は基質特異性に優れる。即ち、本発明のFGDHは、D−キシロース、D−ガラクトース及びマルトースに対する反応性が有意に低いため、試料中にD−グルコースと前記糖類の1種又は2種以上が共存する場合であってもグルコース量又は濃度を正確に測定することを可能にする。また、本発明のFGDHは、D−グルコースとの親和性が高い(即ち、D−グルコースに対するKm値が有意に低い)ため、より少ない酵素量で試料中のD−グルコース濃度をより短時間で測定することを可能にする。従って本発明のFGDHはD−グルコースを含む試料(例えば、血液や食品(調味料や飲料等))におけるグルコース濃度の測定などに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】Mucor guilliermondii NBRC9403から単離したFGDHをSDS−PAGEに供した結果を示す。
【図2】Mucor guilliermondii NBRC9403から単離したFGDHを糖鎖消化してSDS−PAGEに供した結果を示す。
【図3】本発明のFGDHの至適pHを測定した結果を示す。
【図4】本発明のFGDHの至適温度を測定した結果を示す。
【図5】本発明のFGDHのpH安定性を測定した結果を示す。
【図6】本発明のFGDHの熱安定性を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ
【0014】
1−1.グルコースデヒドロゲナーゼ活性
フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼとは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ−δ−ラクトンを生成する反応を触媒する理化学的性質を有する酵素である。本書においては、この酵素活性をグルコースデヒドロゲナーゼ活性といい、特に断りが無い限り、「酵素活性」又は「活性」とは、当該酵素活性を意味する。前記電子受容体は、FGDHが触媒する反応において、電子の授受を担うことが可能である限り特に制限されないが、例えば、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、フェナジンメトサルフェート(PMS)、1−メトキシ−5−メチルフェナジウムメチルサルフェート、及びフェリシアン化合物等を使用することができる。
【0015】
グルコースデヒドロゲナーゼ活性は、公知の方法で測定することができる。例えば、DCPIPを電子受容体として用い、反応前後における600nmの波長における試料の吸光度の変化を指標に活性を測定することができる。より具体的には、下記の試薬及び測定条件を用いて活性を測定することができる。
【0016】
グルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1% TritonX−100を含む)
24mM PMS溶液
2.0mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液20.5mL、DCPIP溶液1.0mL、PMS溶液2.0mL、D―グルコース溶液5.9mLを混合して反応試薬とする。
【0017】
<測定条件>
反応試薬3mLを37℃で5分間予備加温する。FGDH溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はFGDH溶液の代わりにFGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってFGDH活性を求める。ここでFGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量である。
活性(U/mL)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}

なお、式中の「3.1」は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、「16.3」は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm/マイクロモル)、「0.1」は酵素溶液の液量(mL)、「1.0」はセルの光路長(cm)を示す。
【0018】
本書においては、別段の表示をしない限り、酵素活性は上記の測定方法に従って、測定される。
【0019】
本発明のFGDHは、フラビンを補欠分子族として要求するフラビン結合型のGDHである。
【0020】
本発明のFGDHは、単離されたFGHD又は精製されたFGDHであることが好ましい。また、本発明のFGDHは、上記保存に適した溶液中に溶解した状態又は凍結乾燥された状態で存在してもよい。本発明の酵素(FGDH)に関して使用する場合の「単離された」とは、当該酵素以外の成分(例えば、宿主細胞に由来する夾雑タンパク質、他の成分、培養液等)を実質的に含まない状態をいう。具体的には例えば、本発明の単離された酵素では、夾雑タンパク質の含有量は重量換算で全体の約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満、より一層好ましくは約1%未満である。一方で、本発明のFGDHは、保存又は酵素活性の測定に適した溶液(例えば、バッファー)中に存在してもよい。
【0021】
1−2.分子量
本発明のFGDHを構成するポリペプチド部分の分子量は、SDS−PAGEで測定した場合に約88kDaである。「約88kDa」とは、SDS−PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常88kDaの位置にバンドがあると判断する範囲を含むことを意味する。「ポリペプチド部分」とは、実質的に糖鎖が結合していない状態のFGDHを意味する。微生物によって生産された発明のFGDHが糖鎖結合型である場合は、それを熱処理や糖加水分解酵素によって処理することにより、糖鎖を除去した状態(即ち、「ポリペプチド部分」)にすることができる。実質的に糖鎖が結合していない状態とは、熱処理や糖加水分解酵素によって処理された糖鎖結合型FGDHに不可避的に残存する糖鎖の存在を許容する。よって、FGDHが本来的に糖鎖結合型でない場合は、それ自体が「ポリペプチド部分」に相当する。
【0022】
糖鎖結合型FGDHから糖鎖を除去する手段は、特に制限されないが、例えば、後述する実施例に示すように、糖鎖結合型のFGDHを100℃で10分間加熱処理をして変性させた後、N−グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)を用いて37℃で6時間処理することにより実施することができる。
【0023】
SDS−PAGEでの分子量の測定は、一般的な手法及び装置を用い、市販される分子量マーカーを用いて行うことができる。
【0024】
1−3.基質特異性
本発明のFGDHは、基質特異性に優れている。特に、本発明のFGDHは、D−グルコースに対する反応性を基準とした場合に、少なくともD−キシロース、D−ガラクトース及びマルトースに対する反応性が有意に低い。より具体的に、本発明のFGDHは、同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、D−キシロースに対する反応性が1.2%以下であることが好ましく、より好ましくは1.1%以下であり、更に好ましくは1.0%以下であり、より更に好ましくは0.9%以下であり、特に好ましくは0.8%以下である。
【0025】
本発明のFGDHのD−ガラクトースに対する反応性は、同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%として、通常5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2%以下、より更に好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.2%以下である。
本発明のFGDHのマルトースに対する反応性は、同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%として、通常5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2.9%以下である。
【0026】
上記本発明のFGDHのD−グルコースに対する反応性を基準としたD−キシロース、D−ガラクトース及びマルトースに対する反応性の下限値は、特に制限されないが、0%又は0%に限りなく近い値を下限値とすることができる。
【0027】
FGDHの各糖類に対する反応性は、上記1−1.に示すグルコースデヒドロゲナーゼ活性の測定方法において、D−グルコースを他の糖(例えば、D−キシロース、D−ガラクトース、又はマルトース)に置き換えて、D−グルコースの場合の活性を比較することにより求めることができる。但し、比較する場合の各糖類の濃度は50mMである。
【0028】
以上のような優れた基質特異性を有する本発明のFGDHは、試料中のグルコース量を正確に測定するための酵素として好ましい。即ち、本発明のFGDHによれば試料中にマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースなどの夾雑物が存在する場合であっても目的のD−グルコースの量を正確に測定することが可能である。従って本酵素は、試料中にこのような夾雑物の存在が予想又は懸念される用途(典型的には血液中のグルコース量の測定)に適したものであるといえ、当該用途も含め様々な用途に適用可能であり、汎用性が高い。
【0029】
1−4.D−グルコースに対する親和性
本発明のFGDHは、本来の基質であるD−グルコースに対する親和性が高いことが好ましい。親和性が高いことにより、試料中のD−グルコースの濃度が低い場合であっても、上述する触媒反応を進めることができ、より正確なD−グルコース濃度の測定、より短時間での測定、及びより少ない酵素量での測定に資するからである。FGDHのD−グルコースに対する親和性は、Km値によって示される。Km値は、いわゆるミカエリス・メンテン式から求められる値であり、具体的には、上記1−1.に示す活性測定方法においてD−グルコースの濃度を変化させて各濃度における活性を測定し、ラインウィーバー・バーク・プロットを作成することによって求めることができる。
【0030】
酵素の反応速度論から判断して、Km値が低いほど、酵素は基質に対する親和性が高く、基質濃度が低い場合でも基質との複合体を形成することができ、より早い速度で触媒反応を進めることができる。本発明のFGDHのD−グルコースに対するKm値は、15mM以下であることが好ましく、より好ましくは14mM以下、更に好ましくは13mM以下、より更に好ましくは12.2mM以下である。
【0031】
1−5.至適活性pH
本発明のFGDHの至適活性pHは、後述する実施例に示す通り、pH約6であることが好ましい。ここで至適活性pHが6であるとは、典型的に至適活性pHが6付近であり、ある程度の許容可能な幅を有することを意味する。本明細書において、至適活性pHは、後述の実施例に示すように、酵素濃度100U/mLでPIPES−NaOHバッファー中を用いて酵素活性を測定することで求められる。
【0032】
1−6.至適活性温度
本発明のFGDHの至適活性温度は、45℃であることが好ましい。ここで至適活性温度が45℃とは、典型的に至適活性温度が45℃付近であり、更にある程度の許容可能な幅を有することを意味する。他の観点から、本発明FGDHは、40℃で測定される酵素活性よりも45℃で測定される酵素活性の方が高いことが好ましい。更に別の観点から、本発明のFGDHは、45℃における酵素活性を基準(100%)として、50℃における酵素活性が60%以上であることが好ましく、30℃〜50℃の範囲における酵素活性が60%以上であることがより好ましい。本明細書において、至適活性温度は、後述する実施例に示す通り、酵素濃度0.1U/mLでPIPES−NaOHバッファー(pH6.5)中における酵素活性を測定することにより求められる。
【0033】
1−7.pH安定性
本明細書において、特定のpH条件の下、10U/mLの酵素を25℃で16時間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して80%以上である場合に、当該酵素は、当該pH条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、pH4.5〜8.0の範囲で安定であることが好ましい。本発明のFGDHは、pH6.0〜8.0の範囲で前記処理をした場合に、残存酵素活性が90%以上であることがより好ましい。
【0034】
1−8.温度安定性
本明細書において、特定の温度条件の下、適当な緩衝液中(例えば酢酸カリウムバッファー(pH5.0))で100U/mLの酵素を15分間処理した後の残存酵素活性が、処理前の酵素活性と比較して実質的な低下が認められない(つまり約90%以上を維持する)とき、当該酵素は当該温度条件において安定であると判断する。本発明のFGDHは、0℃〜45℃において安定であることが好ましい。また、別の観点から、本発明のFGDHは、45℃で15分間熱処理した後の残存酵素活性が、熱処理前の酵素活性と比較して、90%以上であることが好ましく、更に好ましくは91%以上であり、より更に好ましくは92%以上であり、特に好ましくは93%以上である。
【0035】
1−9.由来
本発明のFGDHは、上述する特性を備える限り、その由来は特に制限されないが、例えば、ケカビ科に分類される微生物、より具体的にはムコール(Mucor)属、Absidia属、及びActinomucor属に分類される微生物に由来するものを例示することができる。更に具体的には、Mucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、及びMucor circinelloidesに帰属する微生物に由来するものを例示することができる。より更に具体的には、Mucor guilliermondii NBRC9403に由来するものを例示することができる。Mucor guilliermondii NBRC9403を含む多くのMucor属に属する微生物は、NBRC(NITE Biological Resource Center)(独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門)に保管された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。また、土壌や河川・湖沼などの水系又は海洋に存在する微生物や各種動植物の表面または内部に常在する微生物などを単離源することができる。低温環境、火山などの高温環境、深海などの無酸素・高圧・無光環境、油田など特殊な環境に生育する微生物を単離源としてもよい。
【0036】
2.FGDHの製造方法
本発明のFGDHの製造方法は、本発明のFGDHの取得が可能である限り特に制限されず、本発明のFGDHを産生する微生物を培養して、その培養上清又は菌体内から各種の精製を実施することにより製造することができる。本発明のFGDHの代表例は、後述する実施例に示す通り、ムコール(Mucor)属に分類される微生物から単離された。よって、本発明のFGDHは、例えば、ケカビ科に分類される微生物、より具体的には、Mucor属、Absidia属、Actinomucor属等)に属する微生物、更に具体的にはMucor guilliermondii、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides等に属する微生物、より更に具体的には、Mucor guilliermondii NBRC9403から単離することにより製造することができる。
【0037】
本発明のFGDHを産生する微生物の培養は、本発明のFGDHが菌体内又は菌体外に産生される限り特に制限されないが、例えば、その生育に適した栄養培地にて培養することができる。ケカビ科に分類される微生物の培養は、微生物の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよい。多くの場合は液体培養で行い、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。ただし、生産性を考えた場合に、固体培養で行った方が有利な場合もある。
【0038】
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0039】
培養温度は菌が成育し、FGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくは20〜30℃程度である。培養時間は容量等条件によって多少異なるが、FGDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は24〜72時間程度である。培地のpHは菌が発育し、FGDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH5.0〜7.0程度の範囲である。
【0040】
本発明のFGDHの微生物からの単離は、後述する実施例を参考に、常法に従って実施することができる。培養物中のFGDHを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、それをFGDHとして利用することもできるが、一般には、常法に従って、FGDHが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、FGDH含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。FGDHが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してFGDHを可溶化し、水溶液として分離採取することができる。
【0041】
上記のようにして得られたFGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたFGDHを得ることができる。
【0042】
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
【0043】
なお、培養液からのFGDH酵素活性を有するタンパク質の採取(抽出、精製など)にあたっては、FGDH酵素活性、マルトース反応性、熱安定性等上記1.に示した特性を指標に実施することができる。
【0044】
3.グルコースの測定方法
グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの測定方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い、本発明のFGDHを用いて、各種試料中のグルコースの量又は濃度を測定することができる。本発明のFGDHを用いてグルコースの濃度又は量を測定する限り、その態様は特に制限されないが、例えば、本発明のFGDHを試料中のグルコースに作用させ、グルコースの脱水素反応に伴う電子受容体(例えば、DCPIP)の構造変化を吸光度で測定することにより実施することができる。より具体的には、上記1−1.に示す方法に従って、実施することができる。本発明に従って、グルコース濃度の測定は、試料に本発明のFGDHを添加すること、又は添加して混合することにより実施することができる。
【0045】
グルコース濃度の測定は、例えば、以下のようにして実施することができる。恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極として本発明のFGDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作製したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
【0046】
4.グルコースを測定用プロダクト
本発明のFGDHは、グルコースアッセイキットやグルコースセンサー等のグルコースの濃度又は量を測定するための種々の形態のプロダクトとすることができる。
【0047】
本発明のグルコースアッセイキットは、本発明のFGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のFGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明のFGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
【0048】
本発明のグルコースセンサーは、本発明のFGDHが電極に固定されたグルコースセンサーである。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のFGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
【0049】
なお、本明細書において「プロダクト」とは、使用者が当該用途を実行する目的で用いる1セットのうち一部または全部を構成する製品であって、本発明のフラビン依存性グルコース脱水素酵素を含むものを意味する。
【0050】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【実施例】
【0051】
[実施例1]菌株の復元
独立行政法人製品評価技術基盤機構に保存されているムコール(Mucor)属の菌株はL−乾燥標品であったため、アンプルを開封し、復元水100μLを注入し、乾燥菌体を懸濁した後、懸濁液を復元培地に滴下し、25℃で3日間から7日間、静置培養することで菌株を復元させて使用した。復元水としては、滅菌水(オートクレーブで120℃、20分間処理した蒸留水)を用い、復元培地としては、DP培地(デキストリン 2.0%、ポリペプトン 1.0%、KH2PO4 1.0%、アガロース 1.5%)を使用した。
【0052】
[実施例2]粗酵素液の取得
小麦胚芽2g、水2mLを含む培地をオートクレーブで120℃、20分間、滅菌し、水分含量が100%となるように調整した小麦胚芽培地を調製した。この固体培地に実施例1で復元させたムコール(Mucor)属の菌株を一白金耳植菌し、25℃で3日間から7日間程度、静置培養した。培養後、2mMのEDTAを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を菌体が生育した培地に4ml添加し、ボルテックスで十分に懸濁した。懸濁液に少量のガラスビーズを加えた後、ビーズショッカー(安井器械(株)製)で3,000rpm、3分間、2回の条件で破砕した。破砕液は4℃、2,000×g、5分間の条件で遠心分離し、上清と残渣に分離し、回収した上清を粗酵素液とした。
【0053】
[実施例3] GDH活性の確認
実施例2で回収した粗酵素液中のGDH活性を、上述したGDH測定方法を用いて調査した。ムコール(Mucor)属の粗酵素について、GDH活性の有無を調査した結果を表1に示す。活性の有無は、上記1−1.に示す方法に従って実施した。
【0054】
【表1】

【0055】
その結果、Mucor guilliermondii NBRC9403由来の粗酵素液についてGDH活性を検出した。
【0056】
[実施例4] Mucor guilliermondii NBRC9403由来FGDHの精製
50mLのDP液体培地を500mL容量の坂口フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、前培養用の培地とした。そこに実施例1で復元したMucor guilliermondii NBRC9403を一白金耳植菌し、25℃、180rpmで3日間振とう培養し、種培養液を得た。次に、6.0Lの生産培地(イーストイクストラクト 2.0%、グルコース 1%、pH6.0)を10L容量のジャーファーメンターに入れ、オートクレーブで滅菌し、本培養培地を調整した。そこに50mLの種培養液を植菌し、培養温度25℃、攪拌速度600rpm、通気量2.0L/分、管内圧0.2MPaの条件で3日間培養した。その後、培養液をろ布でろ過し、菌体を回収した。得られた菌体を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した。
【0057】
懸濁液をフレンチプレス(Niro Soavi製)に流速160mL/分で送液し、1000〜1300barで破砕した。続いて、破砕液に硫酸アンモニウム(住友化学(株)製)を0.4飽和になるように徐々に添加して、室温で30分間攪拌した後、ろ過助剤(昭和化学工業(株))を用いて懸濁物質を除去し、清澄な濾液を得た。次に分画分子量10,000のUF膜(ミリポア(株)製)を用いて濃縮し、濃縮液をSephadex G−25 のゲルを用いて脱塩した。その後、脱塩液に0.5飽和になるように硫酸アンモニウムを徐々に添加し、予め0.5飽和の硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化した400mLのSPセファロースFastFlow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、50mMリン酸緩衝液(pH6.0)のリニアグラジエントで溶出させた。そして、溶出されたGDH画分を分画分子量10,000の中空糸膜(スペクトラムラボラトリーズ製)で濃縮後、濃縮液をSephadex G−25 のゲルを用いて脱塩した。その後、DEAEセファロースFast Flow(GEヘルスケア製)カラムにかけ、精製酵素を得た。
【0058】
精製酵素液の280nmの吸光度からタンパク質濃度を測定し精製酵素の比活性を算出した。分光光度計はU−3210(日立ハイテク性)を使用した。その結果、精製酵素の比活性は173U/A280であった。
【0059】
[実施例5] 糖タンパク質の分子量
実施例4で精製したFGDH酵素をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(Phast Gel 10−15% Phastsystem GEヘルスケア製)に供してその分子量を測定した。タンパク質分子量マーカーとしては、フォスフォリラーゼb(97,400ダルトン)、ウシ血清アルブミン(66,267ダルトン)、アルドラーゼ(42,400ダルトン)、カルボニックアンヒドラーゼ(30,000ダルトン)、トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)を用いた。
【0060】
これらのマーカーの移動度より求めた分子量は約119,000ダルトンから約195,000ダルトンであった。結果を図1に示す。
【0061】
[実施例6]酵素のペプチド部分の分子量
実施例4で精製したFGDH酵素を100℃、10分間、加熱処理して変性させた後、5UのN−グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティクス製)で37℃、6時間処理し、タンパク質に付加している糖鎖を分解した。その後、実施例5と同様にSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定を行った。タンパク質分子量マーカーの移動度より分子量は約88,000ダルトンであった。結果を図2に示す。
【0062】
[実施例7]基質特異性
実施例4で精製したFGDH酵素について、上記1−1.に示すGDHの活性測定法に従い、基質としてD−グルコースを用いたときの活性と、比較対象の糖を用いたときの見かけの活性とを比較することにより、基質特異性を調査した。比較対象の糖としてはマルトース、D−ガラクトース、D−キシロースをそれぞれ使用した。基質濃度50mM、pH6.5、37℃の条件で測定した。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
その結果、本発明のFGDHの基質特異性は、D−グルコースに対する活性値を100%とした場合、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースに対する見かけの活性は、いずれも3%以下であることが示された。
【0065】
[実施例8]至適活性pH
実施例4で得られた精製酵素液(100U/mL)を用いて、至適pHを調べた。緩衝溶液には50mM PIPES−NaOH緩衝液(pH6.0−pH7.5)を用い、37℃でその見かけの活性を求めた。結果を図3に示す。
【0066】
その結果、本発明のFGDHは、pH6.0から7.5の範囲でpH0.5刻みで調製したPIPES−NaOHバッファー中において、pH6.0で最も高い見かけの活性値を示したことから、至適pHはpH6.0であることが示された。
【0067】
[実施例9]至適活性温度
実施例4で得られた精製酵素液(0.1U/mL)を用いて、至適温度を調べた。緩衝溶液には42mM PIPES−NaOH緩衝液(pH6.5)を用い、25℃、30℃、37℃、45℃、50℃における見かけの活性を求めた。結果を図4に示す。
【0068】
その結果、本発明のFGDHは、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃で比較検討した中において、45℃で最も高い見かけの活性値を示したことから、至適温度は45℃であることが示された。
【0069】
[実施例10]pH安定性
実施例4で得られたFGDH酵素液(10U/mL)を用いて、pH安定性を調べた。100mM 酢酸−ナトリウム緩衝液(pH3.0−pH5.5:図中四角黒色印でプロット)、100mM リン酸−カリウム緩衝液(pH5.5−pH7.5:図中四角白色印でプロット)、100mM トリス−HCl緩衝液(pH7.5−pH9.0図中三角白色印でプロット)、100mM PIPES−NaOH緩衝液(pH6.5−pH7.5:図中三角黒色印でプロット)を用い、25℃、16時間処理した後の見かけの活性の残存率を測定した。結果を図5に示す。
【0070】
その結果、見かけの活性が最大の残存率を示したpH6.5の残存率を100%とした場合、相対値で80%以上の残存率を示したpH範囲はpH4.5−pH8.0の範囲であった。このことから、安定pH域はpH4.5−pH8.0であることが示された。
【0071】
[実施例11]熱安定性
実施例4で得られた精製酵素液(100U/mL)を用いて、熱安定性を調べた。100mM酢酸カリウム緩衝液(pH5.0)を用いて、FGDH酵素液を各温度(4℃、30℃、40℃、45℃、50℃、60℃)で15分間処理した後、見かけの活性の残存率を測定した。結果を図6に示す。
【0072】
その結果、本発明のFGDHは45℃に93%の残存率を示していた。このことから、45℃以下で安定であることが示された。
【0073】
[実施例12]D―グルコースに対するミカエリス−メンテン(Michaelis−Menten,Km)定数の測定
上述したGDHの活性測定法において、基質であるD−グルコースの濃度を変化させて見かけの活性測定を行い、Lineweaver−burk plotによりKm値を算出した。その結果、本発明のFGDHのD−グルコースに対するKm値は、12.2mMであることが判明した。
【0074】
[実施例13]フラビン結合型酵素であることの確認
実施例4で精製した酵素を10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で透析し、250−800nmにおける吸収スペクトルを分光光度計U−3210(日立ハイテクノロジーズ社製)により測定した。その結果、波長340〜350nm付近および波長420〜430nm付近に極大を示す2つのピークが確認された。このような吸収スペクトルの形状から、本発明のGDHがフラビン結合型タンパク質であることが強く示唆された。
【0075】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0076】
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のFGDHは基質特異性に優れ、グルコース量をより正確に測定することを可能にする。従って本発明のFGDHは血糖値の測定などに好適といえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特性(1)及び(2)を備えるフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(1)分子量: SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で測定した該酵素のポリペプチド部分の分子量が約88kDaである。
(2)基質特異性: D−グルコースに対する反応性を100%としたときのD−キシロースに対する反応性が1.3%以下である。
【請求項2】
更に以下の特性(3)を備える、請求項1に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(3)Km値: D−グルコースに対するKm値が15mM以下。
【請求項3】
更に下記の特性(4)を備える、請求項1又は2に記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素。
(4)至適活性pH:pH6
【請求項4】
更に下記の特性(5)を備える、請求項1〜3のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(5)至適活性温度:45℃
【請求項5】
更に下記の特性(6)を備える、請求項1〜4のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(6)pH安定性: pH4.5〜8.0の範囲で安定
【請求項6】
更に下記の特性(7)を備える、請求項1〜5のいずれかに記載のフラビンジヌクレオチド依存性グルコース脱水素酵素。
(7)温度安定性: 45℃の温度で15分間維持した後の残存酵素活性率が90%以上。
【請求項7】
(1)ムコール属に分類される微生物を培養すること、及び
(2)(1)で得られた培養物からグルコース脱水素酵素活性を有するタンパク質を単離すること、
を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を用いるグルコース濃度の測定方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースアッセイキット。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のフラビン結合型グルコース脱水素酵素を含むグルコースセンサー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−81399(P2013−81399A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222278(P2011−222278)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】