説明

新規なコポリマーおよびその潤滑組成物

本発明は、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはβ位以上で分枝している第一級アルコールでエステル化されたその誘導体とのモノマーから得られた単位を含み、そして還元比粘度が最大0.08であるコポリマーに関する。本発明はさらに、前記コポリマーを含む潤滑組成物も提供する。本発明はさらに、ペンダント基を有するコポリマーを潤滑粘度の油に供給して粘度指数を制御する方法および使用も提供する。さらに、本発明のコポリマーは基油の代替品として有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンダント基を有する新規なコポリマーに関する。本発明はさらに、前記コポリマーを含む潤滑組成物も提供する。本発明はさらに、ペンダント基を有するコポリマーを潤滑粘度の油に供給することにより粘度指数を制御する方法および使用も提供する。本発明のコポリマーはまた、基油の代替品として有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤の粘度指数を改善するには、潤滑油組成物に粘度指数向上剤を加えることが知られている。典型的な粘度指数向上剤は、メタクリラート、アクリラート、オレフィンのポリマー(α−オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマーおよびそのエステル化誘導体)、または無水マレイン酸スチレンコポリマーおよびそのエステル化誘導体を含む。粘度指数向上剤では、ペンダント基/グラフト基/分枝基にエステル官能基を導入することが多い。エステル官能基は、1〜40個の炭素原子を有する直鎖アルキルアルコールから得ることができる。近年、粘度指数向上剤をα−オレフィンのコポリマーから製造する試みがなされている。しかしながら、そうした粘度指数向上剤は、剪断安定性が不十分であり、低温粘度が高過ぎるうえ、燃料経済性に乏しく、分散剤を配合しない場合の清浄度も不十分である。
【0003】
また、(たとえば動力伝達装置において)比較的低粘度で効果を発揮できる潤滑剤は、典型的には燃料経済性を向上させる(このためCAFE効率を改善する)。一方、比較的低粘度の流体は、変速機の作動温度の上昇の原因にもなるため、燃料経済性を低下させると考えられる。
【0004】
特許文献1には、無水マレイン酸または不飽和カルボン酸と、1−オレフィンおよびオリゴ−オレフィンまたはポリイソブテンとのフリーラジカル重合により製造されるコポリマーまたはターポリマーをベースとした潤滑剤添加剤が開示されている。このコポリマーは、脂肪族および/または芳香族アミンで修飾/グラフト化される。このコポリマーは、すすおよびスラッジ分散剤として好適である。
【0005】
特許文献2には、少なくとも約6個の炭素原子を有するα−オレフィンと不飽和カルボン酸または無水マレイン酸などのその誘導体とのコポリマーを、典型的には少なくとも約135℃の温度、無溶媒系で、反応量のみの各モノマーをフリーラジカル開始剤と一緒に加熱して調製できることが開示されている。コポリマーの還元比粘度については開示されていない。
【0006】
特許文献3には、C〜C30オレフィン/無水マレイン酸コポリマーから得られた多酸ポリマーを含む含水炭化水素燃料組成物が開示されている。コポリマーの還元比粘度については開示されていない。
【0007】
特許文献4には、ペンダント基を有するポリマーがα−オレフィンと不飽和二酸またはその無水物とのコポリマーであり得ることが開示されている。こうしたポリマー骨格は、特許文献3におよび特許文献2に記載されているものと同じものとして記載されている。特許文献4のポリマーは、許容可能な分散性特性、許容可能な剪断安定性、許容可能な粘度指数制御および許容可能な低温粘度の少なくとも1つを与える潤滑剤に有用である。
【0008】
特許文献5には、α−オレフィンと、フマル酸ジアルキルおよびマレイン酸ジアルキル、ちょうど2個のエステル基および20〜40個の炭素原子を有する脂肪族ジエステルから選択されるジエステルとのエステルコポリマーを含む、2サイクル機関用の組成物が開示されている。
【0009】
特許文献6には、繰り返し単位数が約20〜約220の範囲であるエステル化α−オレフィン無水マレイン酸コポリマーが開示されており、このエステル化α−オレフィン無水マレイン酸コポリマーは:(1)無水マレイン酸と約10〜約18個の炭素原子の直鎖α−オレフィンの混合物とを反応させて、18,000〜40,000の分子量を有するαオレフィン−無水マレイン酸コポリマーを形成し
(2)αオレフィン−無水マレイン酸コポリマーを、C12〜C16アルコールを47重量%、C〜C10アルコールを20重量%およびC16〜C18アルコールを33重量%含むC〜C18アルコールの混合物と反応させて調製される。このコポリマーは、ナフテン基またはパラフィン基原油画分を含む潤滑油の目視可能なワックス粒子を室温で分散する方法に使用される。
【0010】
性能に影響する他のパラメーターとして、潤滑剤粘度、およびモノグレードまたはマルチグレード潤滑剤流体が低温粘性(viscometrics)および/または高温粘性の制御に有用であるかどうかが挙げられる。場合によっては、マルチグレード潤滑剤は、ポリアルファオレフィンまたはブライトストックで調製する。
【0011】
ブライトストックの利用が減少しつつあるのに伴い、船舶または定置発電用の2サイクルまたは4サイクル機関などが大量に使用され、潤滑剤に所望の粘性を与える代替案が必要となっている。
【0012】
ポリアルファオレフィン(動力伝達装置またはエンジン油など潤滑剤用途で知られる)またはポリオールエステル(冷媒潤滑剤で知られる)などの合成潤滑剤では、新しい添加剤の開発に伴い、粘性を維持し、任意にさらに酸化制御を与えつつ、潤滑剤添加剤と合成潤滑剤との相性を向上させることが求められている場合があると考えられる。
【0013】
特許文献7および特許文献8にはどちらも、α−β−不飽和ジカルボン酸エステルおよびα−オレフィンポリマーが合成潤滑油、鉱油、潤滑剤添加剤、および熱可塑性プラスチックの成形処理用の潤滑剤として有用であることが開示されている。しかしながら、どちらの特許も、潤滑剤としてそこに開示されたポリマーの能力により、粘性または酸化制御を維持しつつ、潤滑剤添加剤との相性が向上され得ることは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,254,249号明細書
【特許文献2】米国特許第4,526,950号明細書
【特許文献3】米国特許第6,419,714号明細書
【特許文献4】国際公開第07/133999号
【特許文献5】米国特許第6,573,224号明細書
【特許文献6】米国特許第6,174,843号明細書
【特許文献7】米国特許第5,435,928号明細書
【特許文献8】米国特許第5,176,841号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一実施形態では、本発明は、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはβ位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化したその誘導体とのモノマーから得られた単位を含むコポリマーであって、エステル化前の還元比粘度(RSV:reduced specific viscosity)が最大0.08または0.02〜0.08(または0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06)であるコポリマーを提供する。典型的には本明細書に記載のRSVの範囲は、コポリマーについて行った3回の測定値の平均による。
【0016】
コポリマーは、RSVではなく重量平均分子量で規定してもよい。典型的には重量平均分子量は、任意にアミンでキャップされた最終のエステル化コポリマーについて測定する。重量平均分子量は、5000〜20,000または13,000〜18,000であればよい。
【0017】
コポリマーの還元比粘度(RSV)は、式RSV=(相対粘度−1)/濃度により測定され、式中、相対粘度は、希釈粘度計を用いてアセトン100cmに溶かしたコポリマー1.6gの溶液の粘度とアセトンの粘度とを30℃で測定して決定される。RSVのより詳細な説明は、以下に記載する。RSVは、α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはβ位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化される前のその誘導体とのコポリマーについて決定される。
【0018】
様々な実施形態では、β位以上で分枝した第一級アルコールは、少なくとも12(または少なくとも16または少なくとも18または少なくとも20)個の炭素原子を有していてもよい。炭素原子数は、少なくとも12〜60または少なくとも16〜30であってもよい。
【0019】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油と、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはβ位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化したその誘導体とのモノマーから得られた単位を含むコポリマーとを含む潤滑組成物であって、コポリマーがインターポリマーであり、インターポリマーの還元比粘度が最大0.08または0.02〜0.08(または0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06)である潤滑組成物を提供する。
【0020】
一実施形態では、上述のコポリマーは、少なくとも1個のエステル基および窒素含有基(アミノ基、アミド基および/またはイミド基)、典型的にはコポリマーに0.01wt%〜1.5wt%(または0.02wt%〜0.75wt%または0.04wt%〜0.25wt%)の窒素を与えるのに十分な窒素含有基をさらに含む。
【0021】
一実施形態では、コポリマーは、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とのモノマーから得ることができ、
エステル化されるカルボン酸単位の0.1〜99.89(または1〜50または2.5〜20または5〜15)%は、β位以上で分枝した第一級アルコールアルコールで官能基化され、
エステル化されるカルボン酸単位の0.1〜99.89(または1〜50または2.5〜20または5〜15)%は、直鎖アルコールまたはα−分枝アルコールで官能基化され、
カルボン酸単位の0.01〜10%(または0.1%〜20%または0.02%〜7.5%または0.1〜5%または0.1〜2%未満)は、アミノ基、アミド基および/またはイミド基の少なくとも1つを有し、
還元比粘度が最大0.08である。
【0022】
一実施形態では、コポリマーは、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とのモノマーから得ることができ、
カルボン酸単位の0.1〜99.89%は、β位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化され、
カルボン酸単位の0.1〜99.89%は、直鎖アルコールまたはα−分枝アルコール(たとえば第二級アルコール)でエステル化され、
カルボン酸単位の0.01〜10%は、アミノ基、アミド基および/またはイミド基の少なくとも1つを有し、
還元比粘度が最大0.08である。
【0023】
一実施形態では、コポリマーは、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とのモノマーから得ることができ、
カルボン酸単位の0.1〜99.89%は、β位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化され、
カルボン酸単位の0.1〜99.9%は、直鎖アルコールまたはα−分枝アルコールでエステル化され、
カルボン酸単位の0〜10%は、アミノ基、アミド基および/またはイミド基の少なくとも1つを有し、
還元比粘度が最大0.08である。
【0024】
一実施形態では、コポリマーは、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とのモノマーから得ることができ、
カルボン酸単位の5〜15%は、β位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化され、
カルボン酸単位の0.1〜95%は、直鎖アルコールまたはα−分枝アルコールでエステル化され、
カルボン酸単位の0〜2%未満は、アミノ基、アミド基および/またはイミド基の少なくとも1つを有し、
還元比粘度が最大0.08である。
【0025】
様々な実施形態では、α−オレフィンは、6個以上、10〜18個または12個の炭素原子を有する。
【0026】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸無水物またはイタコン酸であってもよい。一実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は無水マレイン酸である。
【0027】
一実施形態では、コポリマーは、(i)6個以上、10〜18個または12個の炭素原子を有するα−オレフィンと(ii)無水マレイン酸とのモノマーから得られる単位からなる。
【0028】
一実施形態では、本発明は、コポリマーを調製するプロセスであって:
(1)(i)α−オレフィンと、(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体(典型的にはフマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸無水物またはイタコン酸)またはその誘導体とを反応させてコポリマーを形成するステップ;
(2)ステップ(1)のコポリマーを、β位以上で分枝した第一級アルコールでエステル化してエステル化コポリマーを形成するステップ;および
(3)任意にステップ(2)のエステル化コポリマーを一定量のアミンと反応させて0.01wt%〜1.5wt%(または0.05wt%〜0.75wt%または0.075wt%〜0.25wt%)の窒素を含むエステル化コポリマーを得るステップ、
を含み、ステップ(1)のコポリマーは還元比粘度が最大0.08または0.02〜0.08(または0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06)であるプロセスを提供する。
【0029】
一実施形態では、上述のプロセスは、ステップ(3)をさらに含む。
【0030】
一実施形態では、上述のプロセスは、ステップ(3)を含まない。
【0031】
一実施形態では、本発明は、コポリマーを調製するプロセスであって:
(1)(i)α−オレフィンと、(ii)β位以上で分枝した第一級アルコールから得られるエステル基を有するエステル化カルボン酸またはその誘導体とを反応させて生成物を形成するステップ;
(2)任意にステップ(1)の生成物を一定量のアミンと反応させて、0.01wt%〜1.5wt%(または0.05wt%〜1wt%または0.075wt%〜0.5wt%)の窒素を含むエステル化コポリマーを得るステップ、
を含み、コポリマーは還元比粘度が最大0.08または0.02〜0.08(または0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06)であるプロセスを提供する。
【0032】
一実施形態では、上述のプロセスは、ステップ(2)をさらに含む。
【0033】
一実施形態では、上述のプロセスは、ステップ(2)を含まない。
【0034】
一実施形態では、本発明は、上述のプロセスにより得られた/得られるコポリマーを提供する。
【0035】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油、および上述のプロセスにより得られた/得られるコポリマーを含む潤滑組成物を提供する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、下記式(I)のコポリマーであって、(エステル化前の)還元比粘度が最大0.08または0.02〜0.08(または0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06)であり、下記式の()内に表されるようなペンダント基を有し:
【0037】
【化1】

式(I)は、1つまたは複数のペンダント基を有するコポリマー骨格(BB:copolymer backbone)であり、BBは(i)α−オレフィンおよび(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体(典型的にはフマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸無水物またはイタコン酸)のコポリマーから得られ;
Xは、(i)炭素および少なくとも1個の酸素または窒素原子を含む官能基か、あるいは(ii)1〜5個の炭素原子(典型的には−CH−)を有するアルキレン基である官能基のどちらかであり、コポリマー骨格と()内に含まれる分枝ヒドロカルビル基とを連結し;
wは、2〜2000または2〜500または5〜250の範囲であり得る、コポリマー骨格に結合したペンダント基の数であり;
yは、0、1、2または3であるが、ただし、ペンダント基の少なくとも1mol%では、yは0ではなく;さらにyが0である場合、XはXの原子価を十分に満たすように末端基に結合しており、末端基は水素、アルキル、アリール、金属(典型的にはエステル反応物の中和の際に導入される。好適な金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ナトリウム、カリウムまたはリチウムがある)またはアンモニウムカチオンおよびこれらの混合物から選択され;
pは、1〜15(または1〜8または1〜4)の範囲の整数であり;
R’およびR’’は、独立に直鎖または分枝ヒドロカルビル基であり、R’およびR’’に存在する炭素原子を合わせた総数は少なくとも12(または少なくとも16または少なくとも18または少なくとも20)である
コポリマーを提供する。
【0038】
一実施形態では、本発明は、(a)潤滑粘度の油と、(b)上述のようなペンダント基を有する式(1)のコポリマーとを含む潤滑剤組成物を提供する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、本発明のコポリマーを(i)潤滑粘度の油または(ii)他の性能添加剤(以下に定義する)の少なくとも1つと混合して得られた(または得られる)潤滑剤または潤滑剤濃縮物を提供する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、本明細書に上述したコポリマーの、他の潤滑剤の存在下での潤滑粘度の油としての使用を提供する。得られた潤滑剤は、マルチグレード潤滑剤と定義される場合がある。
【0041】
一実施形態では、本明細書に記載のβ位以上で分枝した第一級アルコールは、ゲルベ(Guerbet)アルコールでもよい。ゲルベアルコールの調製方法は、米国特許第4,767,815号に開示されている(5欄39行から6欄32行を参照されたい)。
【0042】
一実施形態では、本発明は、本発明のコポリマーを(i)潤滑粘度の油および(ii)1種または複数種の他の性能添加剤と混合して得られた(または得られる)潤滑剤または潤滑剤濃縮物を提供する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、本発明のコポリマーを1種または複数種の他の性能添加剤(以下に定義する)と混合して得られた(または得られる)潤滑剤または潤滑剤濃縮物を提供する。
【0044】
一実施形態では、本発明は、他の基油の非存在下での本明細書に上述のコポリマーの、潤滑粘度の油としての使用を提供する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、他の潤滑油基油の非存在下での本明細書に上述のコポリマーの、潤滑粘度の油としての使用を提供する。典型的には、コポリマーは、潤滑粘度の油として使用する場合、潤滑油基油の代替品として使用してもよい。典型的には、代替用の基油は、ポリアルファオレフィン(PAO−100など)、ブライトストックおよびポリルエステル冷却潤滑剤(polyester refrigeration lubricant)からなる群から選択される少なくとも1種の基油を含んでいてもよい。
【0046】
一実施形態では、本発明は、潤滑剤に許容可能なまたは改善された剪断安定性、許容可能なまたは改善された粘度指数制御、許容可能なまたは改善された酸化制御および許容可能なまたは改善された低温粘度の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたは最大全部)を与える方法を提供する。コポリマーは、他の基油の非存在の存在下で潤滑粘度の油として使用してもよい。
【0047】
一実施形態では、本発明は、潤滑剤組成物に許容可能なまたは改善された剪断安定性、許容可能なまたは改善された粘度指数制御、許容可能なまたは改善された低温粘度および許容可能なまたは改善された酸化制御の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたは全部)を与える、本明細書に開示されたコポリマーの使用を提供する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、酸化制御のための潤滑剤における、本明細書に上述のコポリマーの使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、ペンダント基を有する本明細書に開示されるようなコポリマー、前記コポリマーを含む潤滑剤、および潤滑剤の粘度指数を制御する方法を提供する。一実施形態では、本発明のコポリマーは、基油の代替品として有用である。一実施形態では、本発明のコポリマーは、潤滑剤における酸化制御が可能である。
【0050】
コポリマー(または交互コポリマーなどのインターポリマー)の分子量に関する測定値は、ポリマー物質の分子の大きさを表す認められた手段であるコポリマーの「還元比粘度」で表すことができる。本明細書で使用する場合、還元比粘度(RSVと略記される)は、典型的には式RSV=(相対粘度−1)/濃度によって得られる値であり、式中、相対粘度は、希釈粘度計を用いてアセトン100cmに溶かしたポリマー1.6gの溶液の粘度とアセトンの粘度とを30℃で測定して決定される。上記の式による計算においては、濃度をアセトン100cm当たりコポリマー1.6gに調整する。比粘度とも呼ばれる還元比粘度、およびそのコポリマーの平均分子量との関係のより詳細な考察は、Paul J.Flory,Principles of Polymer Chemistry,(1953 Edition)308頁(以下参照)に掲載されている。
【0051】
様々な実施形態では、ペンダント基を有するコポリマーは、上記式の()内の基で表される分枝ヒドロカルビル基を、ペンダント基の総数に対する割合で表示して0.10%〜100%または0.5%〜20%または0.75%〜10%含んでいてもよい。(また、式(1)のペンダント基は、「β位以上で分枝した第一級アルコール」という語句で上述されるようなエステル基を定義するのに使用してもよい)。
【0052】
様々な実施形態では、上記式のXで定義される官能基は、−CO−、−C(O)N=または−(CH−の少なくとも1つを含んでいてもよく、式中、vは1〜20または1〜10または1〜2の範囲の整数である。
【0053】
一実施形態では、Xはエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体から誘導される。好適なカルボン酸またはその誘導体の例としては典型的には、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸無水物またはイタコン酸が挙げられる。一実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、無水マレイン酸またはマレイン酸の少なくとも1つであってもよい。
【0054】
一実施形態では、Xは、コポリマー骨格と分枝ヒドロカルビル基とを連結するアルキレン基以外の基である。
【0055】
様々な実施形態では、ペンダント基は、エステル化、アミド化またはイミド化官能基であってもよい。
【0056】
一実施形態では、ペンダント基は、エステル化および/またはアミド化官能基から誘導してもよい。
【0057】
一実施形態では、コポリマーは、エステル化ペンダント基を含む。ペンダント基は、ゲルベアルコールから誘導してもよい。ゲルベアルコールは、10〜60または12〜60または16〜40個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0058】
上記式のR’およびR’’の好適な基の例として以下が挙げられる:
1)C15〜16ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば2−C1〜15アルキル−ヘキサデシル基(たとえば2−オクチルヘキサデシル)および2−アルキル−オクタデシル基(たとえば2−エチルオクタデシル、2−テトラデシル−オクタデシルおよび2−ヘキサデシルオクタデシル);
2)C13〜14ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば1−C1〜15アルキル−テトラデシル基(たとえば2−ヘキシルテトラデシル、2−デシルテトラデシルおよび2−ウンデシルトリデシル)および2−C1〜15アルキル−ヘキサデシル基(たとえば2−エチル−ヘキサデシルおよび2−ドデシルヘキサデシル);
3)C10〜12ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば2−C1〜15アルキル−ドデシル基(たとえば2−オクチルドデシル)および2−C1〜15アルキル−ドデシル基(2−ヘキシルドデシルおよび2−オクチルドデシル)、2−C1〜15アルキル−テトラデシル基(たとえば2−ヘキシルテトラデシルおよび2−デシルテトラデシル);
4)C6〜9ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば2−C1〜15アルキル−デシル基(たとえば2−オクチルデシル)および2,4−ジ−C1〜15アルキル−デシル基(たとえば2−エチル−4−ブチル−デシル基);
5)C1〜5ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシルおよび2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基;および
6)および2種以上の分枝アルキル基の混合物、たとえばプロピレンオリゴマー(六量体から十一量体)、エチレン/プロピレン(モル比16:1〜1:11)オリゴマー、イソ−ブテンオリゴマー(五量体から八量体)、C5〜17α−オレフィンオリゴマー(二量体〜六量体)に対応するオキソアルコールのアルキル残基。
【0059】
ペンダント基は、R’およびR’’の合わせた炭素原子の総数が12〜60または14〜50または16〜40または18〜40または20〜36の範囲であってもよい。
【0060】
R’およびR’’は各々独立に、5〜25個または8〜32個または10〜18個のメチレン炭素原子を含んでいてもよい。一実施形態では、R’およびR’’基の各々の炭素原子数は10〜24であってもよい。
【0061】
好適なβ位以上で分枝した第一級アルコールの例として、2−エチルヘキサノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノールまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、酸、もしくはその無水物、または全部がエステル化されていても、一部がエステル化されていても、またはこれらの混合物であってもよいそれらの誘導体であってもよい。一部がエステル化されている場合、他の官能基は、酸、塩またはこれらの混合物を含む。好適な塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはこれらの混合物を含む。塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはこれらの混合物を含む。不飽和カルボン酸またはその誘導体は、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはイタコン酸無水物、またはこれらの混合物、またはこれらの置換された等価物を含む。
【0063】
エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体の好適な例として、イタコン酸無水物、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物またはこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
一実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、無水マレイン酸またはその誘導体を含む。
【0065】
α−オレフィンの例として、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンまたはこれらの混合物が挙げられる。有用なα−オレフィンの例として1−ドデセンが挙げられる。
【0066】
一実施形態では、本発明のコポリマーは、は、窒素含有基をさらに含む。窒素含有基は、共重合中に組み込むことが可能な窒素含有化合物から誘導してもよい。
【0067】
コポリマーに組み込むことが可能な好適な窒素含有化合物の例として、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカルボンアミド(N−ビニル−ホルムアミドなど、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミンプロピルメタクリラート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
コポリマーは任意に、フリーラジカル開始剤、溶媒、連鎖移動剤またはこれらの混合物の存在下で調製してもよい。当業者であれば、開始剤および/または連鎖移動剤の量を変えると、本発明のコポリマーの数平均分子量およびRSVが変化することを理解するであろう。
【0069】
溶媒は公知であり、通常液体の有機希釈剤である。溶媒は一般に、その沸点が、必要とされる反応温度が得られるだけ十分に高い。例示的な希釈剤として、トルエン、t−ブチルベンゼン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼンおよび125℃超で沸騰する種々の石油画分がある。
【0070】
フリーラジカル開始剤は公知であり、ペルオキシ化合物、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、および熱分解してフリーラジカルを与えるアゾ化合物が挙げられる。他の好適な例については、J.Brandrup and E.H.Immergut,Editor,「Polymer Handbook」,2nd edition,John Wiley and Sons,New York(1975),II−1〜II−40頁に記載されている。フリーラジカル開始剤の例にはラジカル生成試薬から得られるものがあり、例として過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾアート、t−ブチルメタクロロペルベンゾアート、t−ブチルペルオキシド、sec−ブチルペルオキシジカルボナート、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキシド、クミルペルオキシド、t−ブチルペルオクトアート、t−ブチル−m−クロロペルベンゾアート、アゾビスイソバレロニトリルまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、フリーラジカル生成試薬はt−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキシド、クミルペルオキシド、t−ブチルペルオクトアート、t−ブチル−m−クロロペルベンゾアート、アゾビスイソバレロニトリルまたはこれらの混合物である。市販されているフリーラジカル開始剤には、Akzo NobelからTrigonox(登録商標)−21という商標で販売されている化合物のクラスがある。
【0071】
連鎖移動剤は当業者に公知である。連鎖移動剤は、ポリマーの分子量の制御手段として重合に加えてもよい。連鎖移動剤は、n−およびt−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メチル−3−メルカプトプロピオナートなどの硫黄含有連鎖移動剤を含んでもよい。さらにテルペンを使用してもよい。典型的には連鎖移動剤は、n−およびt−ドデシルメルカプタンである。
【0072】
一実施形態では、本発明のコポリマーは、典型的にはコポリマー骨格をキャップするため官能性コポリマー骨格と反応させることができる場合がある窒素含有基をさらに含む。キャップを行うと、エステル基、アミド基、イミド基またはアミン基を有するコポリマーが生じ得る。
【0073】
一実施形態では、窒素含有基は、芳香族のアミンから誘導してもよい。芳香族アミンは、一般構造NH−ArまたはT−NH−Arで表すことができるものを含み、式中、Tはアルキルでも芳香族でもよく、Arは、窒素含有またはアミノ置換芳香族基などの芳香族基であり、Ar基は下記構造:
【0074】
【化2】

のいずれか、ならびに複数の非縮合または結合芳香環を含む。これらおよびこれらに関連した構造において、R、RviおよびRviiは独立に、本明細書に開示された他の基の中でも−H、−C1〜18アルキル基、ニトロ基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−C1〜18アルキル、−COO−C1〜18アルキル、−OH、−O−(CHCH−O)1〜18アルキルなどの基、および−O−(CHCHO)Ar(式中、nは0〜10である)であってもよい。
【0075】
芳香族アミンは、芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合したアミンを含む。このアミンは、モノアミンでも、またはポリアミンでもよい。芳香環は典型的には、単核芳香環(すなわち、ベンゼンから誘導される芳香環)であるが、縮合芳香環、特にナフタレンから誘導されるものを含んでもよい。芳香族アミンの例として、アニリン、N−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリンなどのN−アルキルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニルアゾ)アニリン(ディスパースオレンジ3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチラート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、2,5−ジメトキシベンジルアミンなどの種々のベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリン、およびこれらの置換形態が挙げられる。他の例としては、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミンおよびチエニル置換アニリンが挙げられる。他の好適な芳香族アミンの例として、アミノ置換芳香族の化合物およびアミン窒素が芳香環の一部であるアミン、たとえば3−アミノキノリン、5−アミノキノリンおよび8−アミノキノリンが挙げられる。さらに芳香族アミンには、芳香環に直接結合した第二級アミノ基を1個、およびイミダゾール環に結合した第一級アミノ基を1個含む2−アミノベンゾイミダゾールも含まれる。他のアミンとして、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミドまたは3−アミノプロピルイミダゾールが挙げられる。さらに他のアミンとしては、2,5−ジメトキシベンジルアミンが挙げられる。
【0076】
別の芳香族アミンおよびそれに関連する化合物は、米国特許第6,107,257号および同第6,107,258号に開示されており;その一部として、アミノカルバゾール、ベンゾイミダゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノペリミジン、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジン、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾールおよびアミノベンゾトリアゾール(aminobenzotriaozles)が挙げられる。他に好適なアミンとして、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミドおよびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドがある。使用できる他の芳香族アミンとして、たとえば、アミド構造により結合された複数の芳香環を含む種々の芳香族アミン染料中間体がある。その例として、下記一般構造
【0077】
【化3】

の材料およびその異性体があり、式中、RviiiおよびRixは独立にメチル、メトキシまたはエトキシなどのアルキル基またはアルコキシ基である。一例では、RviiiおよびRixは共に−OCHであり、この材料はFast Blue RR[CAS#6268−05−9]と呼ばれる。
【0078】
別の例では、Rixは−OCHであり、Rviiiは−CHであり、この材料はFast Violet B[99−21−8]と呼ばれる。RviiiおよびRixがどちらもエトキシである場合、この材料はFast Blue BB[120−00−3]である。米国特許第5,744,429号には、他の芳香族アミン化合物、特にアミノアルキルフェノチアジンが開示されている。米国特許出願公開第2003/0030033号に開示されているようなN−芳香族置換酸アミド化合物も、本発明において使用することができる。好適な芳香族アミンとしては、アミン窒素が芳香族カルボン酸化合物の置換基である、すなわち、芳香環の窒素がsp混成をとらないものが挙げられる。
【0079】
芳香族アミンは典型的にはペンダントカルボニル含有基と縮合できるN−H基を有する。ある種の芳香族アミンは、酸化防止剤として多用されている。その点で特に重要なのが、ノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンである。こうした材料はポリマー鎖のカルボン酸官能基と縮合する限り、本発明に使用するのに好適である。しかしながら、アミン窒素に2個の芳香族基が結合すると、その反応性が低下すると考えられる。このため、好適なアミンには、第一級アミンの窒素原子(−NH)、またはヒドロカルビル置換基の1個が比較的短鎖のアルキル基、たとえばメチルである第二級アミンの窒素原子を有するアミンがある。こうした芳香族アミンには4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン、2−アミノベンゾイミダゾールおよびN,N−ジメチルフェニレンジアミンが挙げられる。これらおよび他の芳香族アミンの一部はコポリマーに分散性および他の特性だけでなく酸化防止性をも付与する場合がある。
【0080】
本発明の一実施形態では、反応生成物のアミン成分は、コポリマーのカルボン酸官能基と縮合できる少なくとも2個のN−H基を有するアミンをさらに含む。この材料は、カルボン酸官能基を含む2個のコポリマーの結合に使用できるため、以下「結合アミン」という。材料の分子量が高くなると性能が向上することが観察されており、これが材料の分子量を増加させる一方法である。結合アミンは脂肪族アミンでも、あるいは芳香族アミンでもよいが、芳香族アミンである場合、上述の芳香族アミンに付加したもので、上述の芳香族アミンとは異なる要素であり、コポリマー鎖の過剰な架橋を避けるため典型的には縮合性基または反応性NH基を1個しか持たないものと考えられる。こうした結合アミンの例として、エチレンジアミン、フェニレンジアミンおよび2,4−ジアミノトルエン;プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの他のアミン、およびこれ以外のω−ポリメチレンジアミンが挙げられる。こうした結合アミンの反応性官能基の量は、必要に応じてヒドロカルビル置換コハク酸無水物など化学量論量未満のブロッキング材料と反応させて減少させてもよい。
【0081】
一実施形態では、アミンは、コポリマー骨格と直接反応できる窒素含有化合物を含む。好適なアミンの例として、N−p−ジフェニルアミン、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、4−アニリノフェニルメタクリルアミド、4−アニリノフェニルマレイミド、4−アニリノフェニルイタコンアミド、4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリラートエステルおよびメタクリラートエステル、ならびにp−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとメタクリル酸グリシジルとの反応生成物が挙げられる。
【0082】
一実施形態では、本発明のコポリマーは酸化を制御する。典型的には、酸化を制御するコポリマーは、モルホリン、ピロリジノン、イミダゾリジノン、アセトアミド、β−アラニンアルキルエステルまたはこれらの混合物などアミン含有化合物を導入した残基を含む。好適な窒素含有化合物の例として、3−モルホリン−4−イル−プロピルアミン、3−モルホリン−4−イル−エチルアミン、β−アラニンアルキルエステル(典型的には1〜30個または6〜20個の炭素原子を有するアルキルエステル)またはこれらの混合物が挙げられる。
【0083】
一実施形態では、イミダゾリジノン、環状カルバマートまたはピロリジノンをベースとした化合物は、下記一般構造の化合物により得ることができる:
【0084】
【化4】

式中、
Xは−OHまたは−NHであり;
Hy’’は水素またはヒドロカルビル基(典型的にはアルキルまたはC1〜4−もしくはC−アルキル)であり;
Hyはヒドロカルビレン基(典型的にはアルキレンまたはC1〜4−もしくはC−アルキレン)であり;
Qは>NH、>NR、>CH、>CHR、>CR、または−O−(典型的には>NHまたは>NR)であり、
RはC1〜4アルキルである。
【0085】
一実施形態では、イミダゾリジノンは、1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン(アミノエチルエチレン尿素とも呼ばれる)、1−(3−アミノ−プロピル)−イミダゾリジン−2−オン、1−(2−ヒドロキシ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン、1−(3−アミノ−プロピル)−ピロリジン−2−オン、1−(3−アミノ−エチル)−ピロリジン−2−オンまたはこれらの混合物を含む。
【0086】
一実施形態では、アセトアミドは下記一般構造で表すことができる:
【0087】
【化5】

式中、
Hyはヒドロカルビレン基(典型的にはアルキレンまたはC1〜4−もしくはC−アルキレン)であり;
Hy’はヒドロカルビル基(典型的にはアルキルまたはC1〜4−またはメチル)である。
【0088】
好適なアセトアミドの例として、N−(2−アミノ−エチル)−アセトアミドまたはN−(2−アミノ−プロピル)−アセトアミドが挙げられる。
【0089】
一実施形態では、β−アラニンアルキルエステルは下記一般構造で表すことができる:
【0090】
【化6】

式中、
R’は1〜30個または6〜20個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0091】
好適なβ−アラニンアルキルエステルの例としては、β−アラニンオクチルエステル、β−アラニンデシルエステル、β−アラニン2−エチルヘキシルエステル、β−アラニンドデシルエステル、β−アラニンテトラデシルエステルまたはβ−アラニンヘキサデシルエステルが挙げられる。
【0092】
一実施形態では、コポリマーは、1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β−アラニンメチルエステル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよびこれらの混合物からなる群から選択されるアミンと反応させてもよい。
【0093】
一実施形態では、コポリマーは、モルホリン、イミダゾリジノンおよびこれらの混合物から選択されるアミン含有化合物と反応させてもよい。
【0094】
窒素含有化合物は、(i)溶媒を使用して溶液中か、あるいは(ii)溶媒の存在下または非存在下での反応押出の条件のどちらかでアミンをコポリマー骨格にグラフト化してコポリマー骨格と直接反応させてもよい。アミン官能性モノマーは、複数の方法でコポリマー骨格にグラフト化することができる。一実施形態では、「エン」反応を介した熱プロセスによりグラフト化を行う。一実施形態では、フリーデル−クラフツアシル化反応によりグラフト化を行う。別の実施形態では、フリーラジカル開始剤により溶液または固体形態でグラフト化を行う。溶液グラフト化は、グラフト化コポリマーを製造する公知の方法である。こうしたプロセスでは、試薬を未希釈で、あるいは適切な溶媒に溶かした溶液として導入する。次いで適切な精製ステップにより所望のコポリマー生成物を反応溶媒および/または不純物から分離すればよい。
【0095】
一実施形態では、窒素含有化合物は、ベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、キシレンまたはヘキサンのような溶媒に溶かしたコポリマーを、フリーラジカル触媒によってグラフト化してコポリマー骨格と直接反応させてもよい。この反応は、好ましくは不活性な環境下、前記コポリマーの当初の油溶液全体に対して含有量が、たとえば1〜50wt%または5〜40wt%の鉱油系潤滑油溶液などの溶媒を用いて100℃〜250℃または120℃〜230℃または160℃〜200℃の範囲の高温、たとえば、160℃を超える高温で行ってもよい。
【0096】
潤滑粘度の油
潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。こうした油は、天然油および合成油、水素化分解、水素化および水素化仕上げから得られる油、未精製油、精製油および再精製油ならびにこれらの混合物を含む。
【0097】
未精製油は、一般に改めて精製処理を行わずに(あるいはほとんど行わずに)天然または合成原料から直接得られたものである。
【0098】
精製油は未精製油と類似しているが、相違しているのは1つまたは複数の精製ステップで改めて処理が行われ1つまたは複数の特性が改善されていることである。精製技法については当該技術分野において公知であり、溶媒抽出、二次的蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションおよび同種のものが挙げられる。
【0099】
再精製油は再生油または再加工油とも呼ばれ、精製油を得るのに使用するのと同様のプロセスにより得られるが、多くの場合、使用済み添加剤および油の分解生成物を除去するための技法により追加処理が行われている。
【0100】
本発明の潤滑剤を製造するのには有用な天然油として、動物油または植物油(たとえば、ヒマシ油またはラード油)、液体石油、パラフィン系、ナフテン系またはパラフィン−ナフテン混合系の溶媒処理または酸処理した鉱油系潤滑油、および石炭または頁岩から得られる油などの鉱油系潤滑油、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0101】
合成潤滑油は有用な油であり、重合および共重合オレフィン(たとえば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)およびこれらの混合物;アルキル−ベンゼン(たとえばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(たとえば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびその誘導体、アナログおよびホモログまたはこれらの混合物などの炭化水素油が挙げられる。
【0102】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル(Priolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リンを含む酸の液状エステル(たとえば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチルおよびデカンホスホン酸のジエチルエステル)または高分子のテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャートロプシュ反応により製造することができ、典型的には水素化異性化したフィッシャートロプシュ炭化水素でも、またはフィッシャートロプシュワックスでもよい。一実施形態では、油はフィッシャートロプシュガストゥリキッド(GTL:gas−to−liquid)合成手順および他のガストゥリキッド油により調製してもよい。
【0103】
潤滑粘度の油は、米国石油協会(API:American Petroleum Institute)のベースオイルインターチェンジャビリティガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に規定されているものと定義することもできる。5つの基油の分類は以下の通りである:グループI(硫黄含有量>0.03wt%および/または<90wt%飽和分、粘度指数80〜120);グループII(硫黄含有量≦0.03wt%および≧90wt%飽和分、粘度指数80〜120);グループIII(硫黄含有量≦0.03wt%および≧90wt%飽和分、粘度指数≧120);グループIV(すべてのポリアルファオレフィン(PAO:polyalphaolefin));およびグループV(グループI、II、IIIまたはIV以外のもの)。潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループVの油またはこれらの混合物を含む。多くの場合、潤滑粘度の油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIVの油またはこれらの混合物である。あるいは、潤滑粘度の油は、多くの場合、APIグループI、グループII、グループIIIの油またはこれらの混合物である。
【0104】
この潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形態であってもよい。本発明のペンダント基を有するポリマーは濃縮物(別の油と組み合わせて最終潤滑剤の全部または一部を形成できる)である場合、ペンダント基を有するポリマーと潤滑粘度の油および/または希釈油との比は、重量で1:99〜99:1または重量で80:20〜10:90の範囲を含む。
【0105】
他の性能添加剤
本明細書に記載のコポリマーおよび/または潤滑組成物から得られる組成物は任意に他の性能添加剤をさらに含む。他の性能添加剤は、金属活性低下剤、従来の清浄剤(当該技術分野において公知の従来のプロセスにより調製される清浄剤)、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、腐食抑制剤、分散剤配合粘度調整剤、摩耗防止剤、極圧剤、スカッフィング防止剤、酸化防止剤、抑泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤およびこれらの混合物の少なくとも1種を含む。典型的には、完全に配合された潤滑油は、こうした性能添加剤の1種または複数種を含むものである。
【0106】
分散剤
分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰を形成する金属を含んでおらず、潤滑剤および高分子分散剤に加えても、灰を形成する金属を全くない生じないのが一般的であるため、多くの場合、無灰型分散剤として知られる。無灰型分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドを含む。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例として、元になるポリイソブチレンの数平均分子量が350〜5000または500〜3000のポリイソブチレンスクシンイミドがある。
【0107】
一実施形態では、本発明は、ポリイソブチレン、アミンおよび酸化亜鉛から誘導されポリイソブチレンスクシンイミドと亜鉛との錯体を形成している少なくとも1種の分散剤をさらに含む。ポリイソブチレンスクシンイミドと亜鉛との錯体は、単独で使用しても、あるいは組み合わせて使用してもよい。
【0108】
別のクラスの無灰分散剤にマンニッヒ塩基がある。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。アルキル基は典型的には、少なくとも30個の炭素原子を含む。
【0109】
分散剤はまた、様々な作用物質のいずれかと反応させて従来の方法により後処理してもよい。そうした作用物質には、ホウ素化合物(ホウ酸など)、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、テレフタル酸などのカルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシドおよびリン化合物がある。一実施形態では、後処理した分散剤をホウ酸塩で処理する。
【0110】
清浄剤
潤滑剤組成物は任意に、公知の中性または過塩基性清浄剤、すなわち、当該技術分野において公知の従来のプロセスで調製された清浄剤をさらに含む。好適な清浄剤の基材として、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホナート、サリキサラート、サリチラート、カルボン酸、リン含有酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物またはサリゲニンが挙げられる。
【0111】
酸化防止剤
酸化防止剤化合物は公知であり、硫化オレフィン、ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、ジチオカルバミン酸モリブデンおよびこれらの混合物を含む。酸化防止剤化合物は単独で使用しても、あるいは組み合わせて使用してもよい。
【0112】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、多くの場合、第二級ブチルおよび/または第三級ブチル基を立体障害基として含む。フェノール基は、多くの場合、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合した架橋基でさらに置換されている。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例として、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールまたは4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールがある。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤はエステルであり、たとえば、Ciba製のIrganox(商標)L−135を含んでいてもよい。酸化防止剤として使用可能なジチオカルバミン酸モリブデンの好適な例として、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からVanlube 822(商標)およびMolyvan(商標)、およびAsahi Denka Kogyo K.KからAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165およびS−600などの商標名で販売されている市販の材料およびこれらの混合物がある。
【0113】
粘度調整剤
本発明のペンダント基を有するポリマー以外の粘度調整剤には、水素添加スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、水素添加スチレン−イソプレンポリマー、水素化ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィン、ポリアルキル(メタ)アクリラートおよび無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルまたはこれらの混合物がある。一実施形態では、高分子粘度調整剤はポリ(メタ)アクリラートである。
【0114】
摩耗防止剤
潤滑組成物は任意に、少なくとも1種の摩耗防止剤をさらに含む。好適な摩耗防止剤の例として、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート(亜鉛ジアルキルジチオホスフェートなど)、チオカルバマートエステル、チオカルバマートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバマートおよびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなどのチオカルバマート含有化合物がある。
【0115】
一実施形態では、油溶性リンアミン塩摩耗防止剤は、リン含有酸エステルのアミン塩またはその混合物を含む。リン含有酸エステルのアミン塩として、リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびそのアミン塩;ホスフィットのアミン塩;およびリンを含むカルボン酸エステル、エーテルおよびアミドのアミン塩;およびこれらの混合物が挙げられる。リン含有酸エステルのアミン塩は、単独で使用しても、あるいは組み合わせて使用してもよい。
【0116】
一実施形態では、油溶性リンアミン塩は、部分アミン塩−部分金属塩化合物またはその混合物を含む。一実施形態では、リン化合物は、分子中に硫黄原子を含む。一実施形態では、リン化合物のアミン塩は無灰、すなわち、無金属である(他の成分と混合する前)。
【0117】
アミン塩として使用するのに好適であり得るアミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンおよびこれらの混合物を含む。アミンは、少なくとも1個のヒドロカルビル基、あるいは、ある種の実施形態では、2個または3個のヒドロカルビル基を有するものを含む。ヒドロカルビル基は、2〜30個の炭素原子、あるいは他の実施形態では8〜26個または10〜20個または13〜19個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0118】
第一級アミンとして、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミンおよびドデシルアミンのほか、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレヤミン(oleyamine)などの脂肪アミンがある。他の有用な脂肪アミンとしては、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SDなど「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals,Chicago,Illinoisから入手できる製品)のような市販されている脂肪アミンがあり、文字記号は、ココグループ、オレイルグループ、獣脂グループまたはステアリルグループなど脂肪の分類に関する。
【0119】
好適な第二級アミンの例として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミンおよびエチルアミルアミンが挙げられる。第二級アミンは、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの環状アミンであってもよい。
【0120】
アミンはまた、第三級脂肪族第一級アミンであってもよい。この場合の脂肪族基は、2〜30個または6〜26個または8〜24個の炭素原子を含むアルキル基であってもよい。第三級アルキルアミンは、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、テルトドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミンおよびtert−オクタコサニルアミンなどのモノアミンを含む。
【0121】
一実施形態では、リン含有酸アミン塩は、C11〜C14第三級アルキル第一級基を有するアミンまたはその混合物を含む。一実施形態では、リン含有酸アミン塩は、C14〜C18第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはその混合物を含む。一実施形態では、リン含有酸アミン塩は、C18〜C22第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはその混合物を含む。
【0122】
また、本発明にはアミンの混合物を使用してもよい。一実施形態では、有用なアミンの混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(どちらもRohm & Haasにより製造および販売される)はそれぞれ、C11〜C14第三級アルキル第一級アミン、およびC18〜C22第三級アルキル第一級アミンの混合物である。
【0123】
一実施形態では、リン化合物の油溶性アミン塩は、リンを含む化合物の硫黄を含まないアミン塩を含み、これは、アミンを(i)リン酸のヒドロキシ置換ジ−エステル、あるいは(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換ジ−またはトリエステルと反応させることを含むプロセスにより得られた/得られるものである。この種の化合物のさらに詳細な説明は、国際出願PCT/US08/051126号(すなわち米国特許出願第11/627405号に相当)に開示されている。
【0124】
一実施形態では、アルキルリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、C14〜C18アルキル化リン酸と、C11〜C14第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm & Haasにより製造および販売されている)との反応生成物である。
【0125】
ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例として、イソプロピル、メチル−アミル(4−メチル−2−ペンチルまたはその混合物)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチルまたはノニルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリンまたはPrimene 81R(商標)との反応生成物(単数または複数)、およびその混合物が挙げられる。
【0126】
一実施形態では、ジチオリン酸は、エポキシドまたはグリコールと反応させてもよい。この反応生成物はさらに、リン含有酸、無水物または低級エステルと反応させる。エポキシドは、脂肪族エポキシドまたはスチレンオキシドを含む。有用なエポキシドの例として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシドおよびスチレンオキシドが挙げられる。一実施形態では、エポキシドはプロピレンオキシドである。グリコールは、1〜12個または2〜6個または2〜3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであってもよい。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機 リン試薬およびこれを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載されている。次いで得られた酸は、アミンとの塩にしてもよい。好適なジチオリン酸の例は、五酸化リン(約64グラム)を58℃で45分かけて514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオアート(ジ(4−メチル−2−ペンチル)−ホスホロジチオ酸を1.3モルのプロピレンオキシドと25℃で反応させて調製)に加えることにより調製されるものである。この混合物を75℃で2.5時間加熱し、珪藻土と混同し、70℃で濾過する。濾液は、11.8重量%のリン、15.2重量%の硫黄を含み、酸価は87である(ブロモフェノールブルー)。
【0127】
ジチオカルバマート含有化合物は、ジチオカルバミン酸または塩を不飽和化合物と反応させて調製してもよい。また、ジチオカルバマート含有化合物は、アミン、二硫化炭素および不飽和化合物を同時に反応させて調製してもよい。一般に、この反応は25℃〜125℃の温度で起こる。
【0128】
硫化されて硫化オレフィンを形成できる好適なオレフィンの例として、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ウンデシル、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノノデセン(nonodecene)、エイコセンまたはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン、ノノデセン(nonodecene)、エイコセンまたはこれらの混合物およびこれらの二量体、三量体および四量体は特に有用なオレフィンである。あるいは、オレフィンは、1,3−ブタジエンなどのジエンとブチルアクリラートなどの不飽和エステルとのディールズ・アルダー付加物であってもよい。
【0129】
別のクラスの硫化オレフィンは、脂肪酸およびそのエステルを含む。脂肪酸は、多くの場合、植物油または動物油から得られ、典型的には4〜22個の炭素原子を含む。好適な脂肪酸およびそのエステルの例として、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはこれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油またはこれらの混合物から得られる。一実施形態では、脂肪酸および/またはエステルをオレフィンと混合する。
【0130】
代替の実施形態では、無灰摩耗防止剤は、ポリオールと脂肪族カルボン酸、多くの場合12〜24個の炭素原子を含む酸とのモノエステルであってもよい。多くの場合、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルは、ヒマワリ油または同種のものとの混合物の形態であり、ヒマワリ油または同種のものは摩擦調整剤混合物中に前記混合物の5〜95重量%、いくつかの実施形態では10〜90重量%または20〜85重量%または20〜80重量%存在してもよい。エステルを形成する脂肪族カルボン酸(特にモノカルボン酸)は、典型的には12〜24個または14〜20個の炭素原子を含む酸である。カルボン酸の例として、ドデカン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸およびオレイン酸が挙げられる。
【0131】
ポリオールは、ジオール、トリオールおよびアルコールのOH基を多く含むアルコールを含む。多価アルコールは、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールなどのエチレングリコール;ジ−、トリ−およびテトラプロピレングリコールなどのプロピレングリコール;グリセロール;ブタンジオール;ヘキサンジオール;ソルビトール;アラビトール;マンニトール;スクロース;フルクトース;グルコース;シクロヘキサンジオール;エリトリトール;およびジ−およびトリペンタエリトリトールなどのペンタエリトリトールを含む。多くの場合、ポリオールは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールである。
【0132】
「グリセロールモノオレアート」と呼ばれる市販のモノエステルは、60±5重量%の化学種グリセロールモノオレアートと共に35±5%のグリセロールジオレアートおよび5%未満のトリオレイン酸およびオレイン酸を含むと考えられる。上述のモノエステルの量は、任意のこうした混合物中に存在するポリオールモノエステルの実際に補正した量に基づき算出してある。
【0133】
スカッフィング防止剤
潤滑剤組成物はさらに、スカッフィング防止剤を含んでいてもよい。スカッフィング防止剤化合物は、凝着摩耗を抑制すると考えられ、多くの場合、硫黄含有化合物である。典型的には、硫黄含有化合物は、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−第三級ブチルポリスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールズ・アルダー付加物、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバマート、ポリアミンと多塩基酸エステルとの反応生成物、2,3−ジブロモプロポキシイソ酪酸のクロロブチルエステル、ジアルキルジチオカルバミン酸のアセトキシメチルエステルおよびキサントゲン酸のアシルオキシアルキルエーテルなどの硫化オレフィン、有機スルフィドおよびポリスルフィド、ならびにこれらの混合物を含む。
【0134】
極圧剤
油に可溶である極圧(EP:Extreme Pressure)剤は、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤およびリンEP剤を含む。こうしたEP剤の例として、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペンおよび硫化ディールズ・アルダー付加物などの硫化オレフィン(硫化イソブチレンなど)、有機スルフィドおよびポリスルフィド;リンスルフィドとテレビンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;二炭化水素および三炭化水素亜リン酸エステルなどのリンエステル、たとえば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル;亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリルおよびポリプロピレン置換フェノールホスフィット;ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバマート;アルキルおよびジアルキルリン酸または誘導体のアミン塩、たとえば、ジアルキルジチオリン酸をプロピレンオキシドと反応させ、その後さらにPと反応させた生成物のアミン塩;およびこれらの混合物(米国特許第3,197,405号に記載されている)が挙げられる。
【0135】
本発明の組成物に有用な場合がある腐食抑制剤は、脂肪アミン、オクチルアミンオクタノアート、ドデセニルコハク酸または無水物およびオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物を含む。
【0136】
本発明の組成物に有用な場合がある抑泡剤は、アクリル酸エチルと2−エチルヘキシルアクリラートとの、任意に酢酸ビニルとのコポリマーを含む;抗乳化剤は、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む。
【0137】
本発明の組成物に有用な場合がある流動点降下剤は、ポリアルファオレフィン、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアクリラートまたはポリアクリルアミドを含む。
【0138】
本発明の組成物に有用な場合がある摩擦調整剤は、アミン、エステル、エポキシド、脂肪イミダゾリンなどの脂肪酸誘導体、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合生成物、およびアルキルリン酸のアミン塩を含む。
【0139】
産業上の利用性
本発明の方法および潤滑組成物は、冷却潤滑剤、グリース、ギヤ油、車軸油、駆動軸油、トラクション油、手動変速機油、自動変速機油、金属加工油剤、作動油または内燃機関油に好適であり得る。
【0140】
一実施形態では、本発明の方法および潤滑組成物は、ギヤ油、車軸油、駆動軸油、トラクション油、手動変速機油または自動変速機油の少なくとも1つに好適であり得る。
【0141】
自動変速機は、無段変速機(CVT:continuously variable transmission)、変速比無限大無段変速機(IVT:infinitely variable transmission)、トロイダル変速機、連続スリップトルクコンバータクラッチ(CSTCC:continuously slipping torque converter clutch)、有段式自動変速機またはデュアルクラッチ式変速機(DCT:dual clutch transmission)を含む。
【0142】
本明細書に記載の使用(方法という場合もある)およびコポリマーは、潤滑剤に許容可能なまたは改善された剪断安定性、許容可能なまたは改善された粘度指数制御、許容可能なまたは改善された酸化制御、および許容可能なまたは改善された低温粘度の少なくとも1つ(あるいは少なくとも2つまたは全部)を与える。コポリマーは、他の基油の存在下または非存在下で潤滑粘度の油として使用してもよい。
【0143】
ペンダント基を有するコポリマーが窒素含有化合物をさらに含む場合、コポリマーはさらに、許容可能なまたは改善された分散性特性(清浄度)および酸化制御を有する場合がある。
【0144】
内燃機関は2サイクル機関でも、4サイクル機関でもよい。好適な内燃機関は、船舶用ディーゼル機関、航空用ピストン機関、低負荷ディーゼル機関および自動車およびトラックエンジンを含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、好適な潤滑組成物は、以下の表に示すような範囲(活性物質ベース)で存在するコポリマーを含む。
【0146】
【表1】

様々な実施形態では、本発明のコポリマーは、0.1wt%〜99.9wt%または1wt%〜90wt%または1.5wt%〜65wt%または10wt%〜60wt%または20wt%〜60wt%または27wt%〜58wt%で存在する場合がある。
【0147】
以下の例は、本発明を例証するものである。こうした例は網羅的なものではなく、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0148】
コポリマーの調製
調製例1:1−ドデセンおよび無水マレイン酸コポリマー
コポリマー骨格の調製(Cpp:Copolymer Backbone Preparation):コポリマーは、3リットルフラスコにて60wt%のトルエン溶媒の存在下で1モルの無水マレイン酸およびYモル(以下に定義する)の1−ドデセンを反応させて調製する。フラスコに、フランジ蓋およびクリップ、PTFEスターラーグランド、ロッドおよびオーバーヘッドスターラー、熱電対、窒素入口ポート、および水冷式冷却器を装着する。窒素を0.028m/時(または1SCFH)でフラスコに吹き込む。別の500ml枝付きフラスコに0.05モルのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート開始剤(Trigonox(登録商標)21Sと呼ばれるAkzo Nobelから市販されている開始剤)、任意にn−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤、CTA:chain transfer agent)および追加のトルエンを仕込む。窒素管を枝に取り付け、窒素を0.085m/時(または0.3SCFH)で30分間導入する。3リットルフラスコを105℃に加熱する。Trigonox 21S開始剤/トルエン混合物を500mlフラスコから3リットルフラスコにMasterflex(商標)ポンプ(流量を0.8ml/minに設定)で5時間かけて送る。3リットルフラスコの内容物を1時間撹拌してから95℃まで冷却する。3リットルフラスコの内容物を一晩撹拌する。典型的には無色透明のゲルが得られる。各試薬の量を下記表に示す。
【0149】
調製するコポリマーは、上記の説明に記載したRSV方法を特徴とする。RSVのデータを表に示す。
【0150】
【表2】

脚注:
N/Mは測定していない。
Cpp8で追加したトルエン溶媒の量は、他の合成に記載した60wt%ではなく、55wt%である。
【0151】
ドデセン−無水マレイン酸ポリマーのエステル化コポリマー(Esc:esterified copolymer)の調製例:上述のコポリマーを、直鎖アルコールおよびβ位以上で分枝した第一級アルコールの存在下でエステル化する。エステル化コポリマーは、上部に冷却器を装着したディーンスタークトラップが取り付けられたフラスコで調製する。このフラスコを用いて1モルのカルボキシ基を含む一定量のコポリマーを110℃に加熱し、30分間撹拌する。1モルのアルコールを加える。β位以上で分枝した第一級アルコールの量が1モルを超える場合、この時点で加えるのは1モルのみである。これに対し、β位以上で分枝した第一級アルコールが1モル未満で存在する場合、十分な直鎖アルコールを使用して合計1モル当量のアルコールを与える。アルコールは、蠕動ポンプで35分かけてフラスコに送る。次いで残りのモル数のアルコールと共に触媒量のメタンスルホン酸を5時間かけてポンプでフラスコに送りながら、145℃に加熱して145℃に保ち、ディーンスタークトラップで水を除去する。
【0152】
反応温度を135℃まで下げ、全酸価(TAN:total acid number)が4mg KOH/g以下になるまで、フラスコに十分なブタノールを連続的に加える。フラスコを150℃に加熱し、十分な水酸化ナトリウムを加えてメタンスルホン酸をクエンチする。フラスコを周囲温度まで冷却してエステル化コポリマーを得る。この手順では下記表に示す材料を使用する。
【0153】
【表3】

脚注:
直鎖アルコールはAlfol(登録商標)810として市販されているC8〜10混合物である。
B1は2−ヘキシルデカノールである。
B2は2−エチルヘキサノールである。
B3は2−オクチルドデカノールである。
Esc21*は本発明と同じポリマー骨格を有するが、直鎖エステル基しか有さない比較エステル化コポリマーである。
【0154】
アミンでキャップされたエステル化コポリマー(Ecca:esterified copolymer capped with an amine)の調製例):上述の各エステル化コポリマーを、上部に冷却器を装着したディーンスタークトラップを取り付けたフラスコでアミンと反応させる。十分なアミンを加えて、下記表に示すような重量%の窒素含有量を含むエステル化コポリマーを得る。アミンは、30分かけてフラスコに仕込み、16時間150℃で撹拌する。フラスコを115℃まで冷却し、空にする。得られた生成物を150℃で真空ストリップし、2.5時間保持する。この手順では下記表に示す材料を使用する。下記表は、アミンでキャップされたエステル化コポリマーの代表的なものの情報を示す。
【0155】
【表4】

脚注:
アミン1は1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オンである。
アミン2は4−(3−アミノプロピル)モルホリンである。
アミン3は3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミンである。
アミン4はN−フェニル−p−フェニレンジアミンである。
アミン5はN−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノンである。
アミン6はアミノエチルアセトアミドである。
アミン7はβ−アラニンメチルエステルである。
アミン8は1−(3−アミノプロピル)イミダゾールである。
【0156】
調製例2:1−オクテン−無水マレイン酸コポリマーを、1−ドデセンの代わりに1−オクテンを使用すること以外は調製例1と同様に調製する。他の全試薬(開始剤、アルコールおよびアミン)、濃度および反応条件は同じである。
【0157】
調製例3:1−デセン−無水マレイン酸コポリマーを、1−ドデセンの代わりに1−デセンを使用すること以外は調製例1と同様に調製する。他の全試薬(開始剤、アルコールおよびアミン)、濃度および反応条件は同じである。
【0158】
調製例4:1−テトラデセン−無水マレイン酸コポリマーを、1−ドデセンの代わりに1−テトラデセンを使用すること以外は調製例1と同様に調製する。他の全試薬(開始剤、アルコールおよびアミン)、濃度および反応条件は同じである。
【0159】
調製例5:1−ヘキサデセン−無水マレイン酸コポリマーを、1−ドデセンの代わりに1−ヘキサデセンを使用すること以外は調製例1と同様に調製する。他の全試薬(開始剤、アルコールおよびアミン)、濃度および反応条件は同じである。
【0160】
試験1 特徴付け:エステル化コポリマーの特徴付けを行う。200mlのアミンでキャップされたエステル化コポリマーについてASTM方法D445を用いて100℃で動粘度を測定する。GPC分析(テトラヒドロフランに溶かしたポリスチレン標準物質を使用)を用いて重量平均分子量および数平均分子量を測定する。以下の表に代表的な結果を示す。
【0161】
【表5】

脚注:
Mwは重量平均分子量である。
Mnは数平均分子量である。
KV100は100℃の動粘度である。
【0162】
試験2 DKA酸化:34.3wt%の以下のポリマーを含む車軸流体について酸化試験を行う:Ecca1、Ecca2、Ketjenlube(登録商標)K3700という商品名で販売されている市販の合成エステルコポリマー、および市販のPAO−100(100℃の粘度が100mm/sのポリアルファオレフィン)。DKA酸化試験は、CEC手順L−48−A−00(B)に従い160℃、192時間という作業条件で行う。100℃の動粘度および清浄度のブロッター評価テストにおいてパーセンテージの増加が得られた試験結果を以下に示す。典型的にはブロッターテストで記録された値が高いと、性能の改善が示唆される。典型的にはKV100のパーセンテージの増加について記録された値が低いと、性能の改善が示唆される。
【0163】
【表6】

上記のデータから、Ecca1およびEcca2は市販のPAO−100に比べて清浄度(酸化安定性の指標として使用できる)が改善していることが示唆される。
【0164】
一般的に言えば、本発明のコポリマーは、許容可能なまたは改善された剪断安定性、許容可能なまたは改善された粘度指数制御、および許容可能なまたは改善された酸化制御の少なくとも1つ(あるいは少なくとも2つまたは全部)を与えることができる。
【0165】
試験3:車軸流体の粘性
一連のSAE 75W−110車軸流体(AF1〜AF8)を本発明のコポリマーで処理して100℃の動粘度をほぼ等しくする。車軸流体にさらに0.2wt%のポリメタクリラート流動点降下剤を含ませる。車軸流体の動粘度(KV100、100℃でのASTM方法D445による)ブルックフィールド粘度(BV、−40℃でのASTM D2983による)および粘度指数(VI、ASTM D2270)に関して評価する。得られる結果は以下である。
【0166】
【表7】

脚注:AF1は比較例である。
【0167】
試験4:手動変速機流体
一連のSAE 75W−85手動変速機流体(MF1〜MF3)を本発明のコポリマーで処理して100℃の動粘度をほぼ等しくする。手動変速機流体にさらに0.2wt%のポリメタクリラート流動点降下剤を含ませる。手動変速機流体を試験3の車軸流体と同様のやり方で評価する。得られる結果は以下である。
【0168】
【表8】

脚注:MF1は比較例である。
【0169】
一般的に言えば、本発明のコポリマー(すなわちEsc21のコポリマーではない)を有する車軸流体および手動変速機流体は、許容可能なまたは改善された剪断安定性、粘度指数制御および低温粘度の少なくとも1つを与えることができる。コポリマーはさらに、基油としても有用であり得る。
【0170】
上記に言及した文書は、参照によって本明細書に援用する。実施例を、あるいは他に明示的に記載されている場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子数および同種のものを特定する本説明の数量はすべて、「約」という語で修飾されているものと理解すべきである。他に記載がない限り、本明細書に言及される化学物質または組成物は、市販グレードの材料であると解釈すべきであり、市販グレードの材料は、異性体、副生成物、誘導体、および市販グレードに存在すると通常理解されるような他の材料を含んでいてもよい。しかし、各化学成分の量は、他に記載がない限り、市販の材料に通常存在し得る任意の溶媒または希釈油を除いて示してある。本明細書に記載の量、範囲および比率の上限および下限は、独立に組み合わせてもよいことが理解されよう。同様に、本発明の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量と一緒に用いてもよい。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」という表現は、検討対象の組成物の基本的および新規な特性に大きく影響しない物質を含み得る。本明細書で使用する場合、ある種類(またはリスト)における任意の構成要素については、特許請求の範囲から除外される場合がある。
【0171】
本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル」という用語および関連する用語は、アクリル基とメタクリル基との両方を含む。
【0172】
本明細書で使用する場合、「β位以上で分枝した第一級アルコール」という用語は、2位またはそれ以上の位置(たとえば、3位または4位または5位または6位または7位など)で分枝しているアルコールに関する。
【0173】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知の通常の意味で使用する。具体的には、この用語は、炭素原子が分子の残部に直接結合し、主に炭化水素の特性を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例として以下がある:
a.炭化水素置換基、すなわち、脂肪族置換基(たとえば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式置換基(たとえば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、ならびに芳香族置換、脂肪族置換、および脂環式置換芳香族置換基、さらには環が分子の別の部分を介して完成される(たとえば、2つの置換基が一緒に環を形成する)環状置換基;
b.置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈で置換基の炭化水素の主な性質を変化させない非炭化水素基を含む置換基(たとえば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ);
c.ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈で、主に炭化水素の特性を有する一方で、炭素原子で構成される環または鎖に炭素以外を含む、置換基;および
d.ヘテロ原子であって、硫黄、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとして置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基の炭素原子10個ごとに2個以下、一態様では1個以下の非炭化水素置換基が存在し;典型的には、ヒドロカルビル基に非炭化水素置換基は存在しない。
【0174】
本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、本明細書を読めば、当業者にはその種々の修正が明らかになることが理解されよう。したがって、当然のことながら、本明細書に開示された本発明は、添付の特許請求の範囲に包含される修正を含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはβ位以上で分枝している第一級アルコールでエステル化されたその誘導体とのモノマーから得られる単位を含むコポリマーであって、エステル化前の還元比粘度が最大0.08である、コポリマー。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は無水マレイン酸である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記コポリマーは還元比粘度が0.02〜0.07、0.03〜0.07または0.04〜0.06である、先行する請求項1〜2のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項4】
前記α−オレフィンは6個以上、10〜18個または12個の炭素原子を有する、先行する請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
前記コポリマーは(i)6個以上、10〜18個または12個の炭素原子を有するα−オレフィンと(ii)無水マレイン酸とのモノマーから得られる単位からなる、先行する請求項1〜4のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項6】
前記コポリマーは(i)12個の炭素原子を有するα−オレフィンと(ii)無水マレイン酸とのモノマーから得られる単位からなる、先行する請求項1〜5のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項7】
窒素含有化合物でさらにアミド化またはイミド化される、先行する請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項8】
先行する請求項1〜7のいずれかに記載のコポリマーであって、(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とのモノマーから得られる単位を含み、
該カルボン酸単位の75%〜99.9%はβ位以上で分枝している第一級アルコールでエステル化され、
該カルボン酸単位の0.1〜25%は窒素含有化合物でアミド化またはイミド化されている、
コポリマー。
【請求項9】
前記窒素含有化合物はモルホリン、イミダゾリジノン、アセトアミド、β−アラニンアルキルエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択されるアミン含有化合物である、先行する請求項7〜8のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項10】
前記コポリマーは交互コポリマーである、先行する請求項1〜9のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項11】
前記β位以上で分枝している第一級アルコールは少なくとも12〜60個の炭素原子を有してもよい、先行する請求項1〜10のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項12】
前記β位以上で分枝している第一級アルコールはゲルベアルコールである、先行する請求項1〜10のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項13】
コポリマーを調製するプロセスであって:
(1)(i)α−オレフィンと(ii)エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とを反応させてコポリマーを形成するステップ;
(2)ステップ(1)のコポリマーをβ位以上で分枝している第一級アルコールでエステル化してエステル化コポリマーを形成するステップ;および
(3)任意にステップ(2)のエステル化コポリマーを一定量のアミンと反応させて0.01wt%〜1.5wt%の窒素を含むエステル化コポリマーを形成するステップ
を含み、
ステップ(1)のコポリマーは還元比粘度が最大0.08である、
プロセス。
【請求項14】
ステップ(3)をさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
コポリマーを調製するプロセスであって:
(1)(i)α−オレフィンと(ii)β位以上で分枝している第一級アルコールから得られたエステル基を有するエステル化カルボン酸またはその誘導体とを反応させて生成物を形成するステップ;
(2)任意にステップ(1)の生成物を一定量のアミンと反応させて0.01wt%〜1.5wt%の窒素を含むエステル化コポリマーを得るステップ
を含み、
該コポリマーは還元比粘度が最大0.08である、
プロセス。
【請求項16】
ステップ(2)をさらに含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
先行する請求項13〜16のいずれかに記載のプロセスにより得られた/得られる、コポリマー。
【請求項18】
潤滑粘度の油と、先行する請求項13〜17のいずれかに記載のプロセスにより得られた/得られるコポリマーとを含む、潤滑組成物。
【請求項19】
潤滑粘度の油と、先行する請求項1〜18のいずれかに記載のコポリマーとを含む、潤滑組成物。
【請求項20】
先行する請求項1〜19のいずれかに記載のコポリマーの、潤滑油基油としての使用。
【請求項21】
前記潤滑油基油は先行する請求項1〜19のいずれかに記載のコポリマーであり、他の基油の非存在下にある、請求項20の使用。
【請求項22】
先行する請求項1〜19のいずれかに記載のコポリマーは、ポリアルファオレフィン、ブライトストックおよびポリエステル冷却潤滑剤からなる群から選択される少なくとも1種の基油の代わりになる、請求項20の使用。
【請求項23】
酸化制御のための潤滑剤での、先行する請求項7〜9のいずれかに記載のコポリマーの使用。

【公表番号】特表2011−529980(P2011−529980A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521262(P2011−521262)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052028
【国際公開番号】WO2010/014655
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】