説明

新規なコート膜およびその他の製品

【課題】特定の立体配置を有するヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミドをモノマーとして形成されるポリマー膜を提供する。
【解決手段】


式中、R1及びR2はそれぞれ独立してHまたはCH2OHである、で表される少なくとも1つのヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミドモノマーを含んでなる表面コーティングを有するポリマー膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルアミド系モノマーを含んでなるコーティングを有するポリマー膜に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質媒体はクロマトグラフィーのような多くの分離および吸着技術に有用である。多孔質媒体の1つの特定の種類である多孔質膜は種々の応用に使用されている。多孔質膜は第1の多孔質表面、第2の多孔質表面および第1から第2表面の膜全体に延びる連続的な孔構造を有する。この連続的な孔構造は本体材料マトリックスおよび孔の網構造を含む。孔容積からバルクマトリックスを分ける界面(すなわち内部の孔の網構造の表面)は、間隙(interstitial)面として知られている。
【0003】
多孔質膜は膜の孔のサイズに基づき、「微孔質(microporous)」膜または「限外濾過」膜に分類することができる。一般に微孔質膜に関する孔サイズの範囲は、約0.05ミクロン〜約10.0ミクロンとなるが、限外濾過膜の孔サイズの範囲は約0.002ミクロン〜約0.05ミクロンと考えられる。これらの孔サイズは環状態またはほぼ環状の孔の孔直径、または非環状の孔の特徴的寸法を指す。
【0004】
膜の孔サイズは特定した分別通過より上の膜を通ることができない最小の種(粒子または分子)のサイズにより寸法を定めることができる。通常の等級は10%未満の通過であり、これは90%のカットオフまたは滞留に対応する。孔サイズの分布特性を得るための走査型電子顕微鏡の画像分析を含め、他の方法も当業者には知られている。微孔質膜は多くは液体およびガスから粒子を除去するために使用されている。微孔質膜の重要な応用は、製薬学的溶液の滅菌濾過において溶液中に存在し得る細菌を除去することである。微孔質膜は滅菌ガスの通気孔としても使用され、これはガスは流すが空気で運ばれる細菌がフィルターを通過することを防止する。限外濾過膜は一般に、より小さい種の滞留が望まれる場合の応用に用いられる。例えば限外濾過膜はタンパク質を濃縮するために、および透析の応用では塩および低分子量種をタンパク質溶液から除去するためにバイオテクノロジー産業で使用されている。限外濾過および微孔質膜の両方を、シート、チューブおよび中空ファイバーのような数種の形態に製造することができる。
【0005】
多孔質膜は種々の材料から作られるが、ポリマーが最も多い。多くの市販されている膜は強固な熱的、機械的および化学的抵抗性を利用するために、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニリデン フルオリド、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン等のようなプラスチックを操作することにより作られる。不幸なことにはこれらの材料は疎水性であり、そして生体分子を吸着する高い傾向を有する。
【0006】
一般には水溶液の濾過には親水性膜が好ましい。これは疎水性膜を用いると、低い表面張力の前湿潤液体との接触、続いて水交換が透過が始まるために必要となるからである。これには処理に加えた材料の経費が入るだけでなく、いかなる湿潤液体も徹底的に流されなければならず、これにより処理時間および経費が大きく増す。
【0007】
透過性および保持特性に加えて、多孔質膜は応用の性質により決まる他の要件を有する。例えばそれらは操作圧および温度に耐えるために十分な機械的強度をもたなければならない。製薬またはミクロ電子工学のウェハー製造工業におけるような清潔さ(cleanliness)が主な要件である応用では、使用において膜から抽出される材料の量は大変少量でなければならない。膜が生体分子と接触する応用では、膜表面が生体分子の吸着
に対して抵抗性でなければならない。生体分子抵抗性表面は、タンパク質および核酸のような最少量の生体分子を吸着または結合する表面であり;特に本明細書に記載するIgG結合試験で測定した時、1平方センチメートルの膜面積あたり約30マイクログラム未満のIgGを吸着する表面である。一般に膜表面は表面吸着または孔の遮断による付着(fouling)から透過損失を減らすために、そして不可逆的な吸着または会合した生体分子の変性による生成物損失を防ぐために最大の生体分子抵抗性であることが好ましい。
【0008】
多くの応用では、清浄化または衛生操作で多孔質膜は高度にアルカリ性の溶液と接触することになる。すなわち膜は濾過特性または望ましい表面特性を失うことなくそのような接触に耐える十分な化学的抵抗性をもたなければならない。
【0009】
前述の特性を多孔質媒体または膜に付加するために、製造者の多くは多孔質媒体または膜を作っている本体マトリックス材料の膜表面を修飾して(すなわち第1および第2表面および間隙表面)、表面を親水性とし、そして生体分子抵抗性とする。これは本体マトリックス材料の表面を親水性のポリマーまたは基で覆い(coat)、付け、またはそうでなければかぶせる(cover)ことにより行われる。そのような修飾は本体マトリックス材料表面の疎水性または高い生体分子結合に関連する幾つかの問題を解決することができるが、別の問題を加える可能性もある。例えばそのような修飾は使用中に膜から抽出され得る材料の量を増し、そして修飾材料はアルカリ性溶液への暴露に対する低い抵抗性を有する。さらに多くの応用では、膜はオートクレーブ中または蒸気滅菌のような湿式加熱により、あるいは乾燥工程におけるように乾式加熱によりいずれかで加熱される。そのような加熱は親水性を減少させ、しかも修飾された表面の中には生体分子抵抗性が低下するものもあることが観察された。
【0010】
従来技術の膜の中には作成された多孔質膜の表面を架橋化ヒドロキシアクリレートを用いて修飾することにより作られたものもあり、ここで架橋形成(crosslinking)モノマーは二官能価アクリレート(ケースA膜)である。そのような膜は生体分子吸着に対する優れた抵抗性、生体分子抵抗性の優れた熱安定性、および許容され得る流れ損失(flow loss)(すなわち非修飾膜と比べて、流れまたは透過性の減少)を有する。しかしこれらの膜は許容され得る清潔さの特性(すなわち残存する抽出物(extractable matter)(「抽出分(extractables)」)が許容できるレベルまで下がるように洗浄することにより膜を清浄化する能力)はあるが、特定レベル、TOC試験(本明細書で「方法」の章に記載する)を使用して1平方センチメートルあたり約2マイクログラム未満まで抽出分を下げるために、大変徹底的な抽出法が必要であることが分かった。さらにこれらの膜は強アルカリ性溶液に対して感受性であった。
【0011】
従来技術のほとんどが親水性およびタンパク質結合に対する高い抵抗性を有する膜表面の修飾を生成するために、ヒドロキシルを含有するモノマー、通常はカルボニルエステルを含むアクリレートポリマーの使用を記載している。しかしそのようなモノマーからのポリマーは強アルカリ性溶液に対して抵抗性ではない。例えば1.0規定の水酸化ナトリウム溶液はカルボニルを含有するアクリレートポリマーをアクリル酸を含有するポリマーに加水分解する。そのようなアクリル酸を含むポリマーは特定のpH条件下でイオン的に荷電し、そして反対に荷電したタンパク質または生体分子の引き付け、そして結合し、すなわち吸着および膜の付着を増すだろう。加えて、アクリル酸を含むポリマーは孔の通路を拘束するように水中で膨潤し、これにより膜透過性および生産性が下がる。さらにヒドロキシアクリレートのようなヒドロキシル含有モノマーからのポリマーは、さらに強アルカリ性溶液中で反応し、そして可溶性の低分子量フラグメントに分解し、これは溶解し、そして下にある多孔質媒体または膜に暴露される。
【0012】
多孔質膜の様々な修飾法が当該技術分野では知られている。例えば特許文献2は第1ポリマーから形成された約0.001から10ミクロンの間の平均孔サイズを有する多孔質膜支持体を含んでなる複合多孔質熱可塑性膜(composite porous thermoplastic membrane)を開示し、そして特許請求し、この支持体はその場で支持体上の遊離基開始剤(free−radical initiator)を用いて重合化されるモノマーから形成された架橋結合した第2ポリマーでその全面上を直接コートされ、ここで複合多孔質膜は膜支持体と本質的に同じ孔の形状を有する。
【0013】
特許文献3は望しい本体特性を有し、その上が所望の表面プライオリティ(surface priority)を有する架橋結合したポリマーでコートされている複合多孔質膜を開示する。架橋結合した表面ポリマーは、化学的な重合開始剤の不存在下で電子ビームからのエネルギーにより架橋結合可能なモノマーまたはポリマーから生成される。
【0014】
同様の修飾をなされた多孔質媒体が特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示され、ここでヒドロキシルを含むポリマー性材料は、ヒドロキシル基、およびヒドロキシまたはヒドロキシを形成する置換されたアクリレートまたはメタクリレートエステルのような不飽和の1つの重合可能な単位を有することを特徴とする部分を有するモノマーに由来する。そのようなモノマーからのポリマーは強アルカリ性溶液による分解に対して抵抗性を欠くことが知られている。
【0015】
Chapman et al(非特許文献1)は、タンパク質抵抗性について官能基を調査するために自己集成した単層(self assembled monolayer:SAM)の使用を記載する。彼らはN−置換アミド官能基を含むタンパク質抵抗性となる幾つかの官能基を報告している。
【0016】
特許文献7および特許文献8は、50%以上のジアセトンアクリルアミドモノマーからなる架橋化ポリマーを用いた親水性化された多孔質ポリオレフィン膜の処理および製品を記載する。
【0017】
Iwata et al(非特許文献2)は、温度反応性(TRP)を有する膜のアクリルアミドコーティング、具体的にはポリアクリルアミド、そして特にポリ(N−イソプロピルアルリルアミド(ポリIPAA))を報告している。Iwataは、PVDF膜の第1面へのポリIPAAのホモポリマーおよびアクリルアミドを含むコポリマーのグラフト重合を報告する。しかし彼らはポリマーTRPを妨害しないのでポリマーを架橋結合しない。
【0018】
Peters et alへの特許文献9は、ポリIPAAの非架橋化コポリマーを含むTRPポリマーを用いて官能化および/またはグラフト化された多孔質モノリスを記載する。これらの膜は生体分子を吸着するように設計され、そしてPeters et alの特許はタンパク質または生体分子抵抗性面の生産を教示していない。
【0019】
医薬品およびバイオテクノロジー産業において滅菌濾過および他の応用のために至適化された膜を開発しようとしている従業者は重大な問題を克服しなければならないことがわかる。厳しい経費、性能および安全性の要件に直面しながら、従業者は流れおよび保持特性が至適化されているだけでなく、製造するために経済的であり、清浄さの基準を満たし、頻繁に遭遇する種々の化学的環境に対して安定であり、しかも生体分子吸着に対して大変抵抗性な膜を生産する材料を使用し、そして製造法を開発しなければならない。すなわち、アルカリ性溶液による分解に対して抵抗性であり、しかもそれらから抽出され得る材料のレベルが大変低い、親水性の、熱安定性の生体分子抵抗性表面を生じる膜の修飾を有することが望ましい。本発明はこれらの、ならびに他の重要な目的を対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/287,172号明細書
【特許文献2】米国特許第4,618,533号明細書
【特許文献3】米国特許第4,944,879号明細書
【特許文献4】米国特許第4,906,374号明細書
【特許文献5】米国特許第4,968,533号明細書
【特許文献6】米国特許第5,019,260号明細書
【特許文献7】米国特許第4,695,592号明細書
【特許文献8】米国特許第4,678,813号明細書
【特許文献9】米国特許第5,929,214号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J.A.Chem.Soc.2000,122,8303−8304
【非特許文献2】J.Membrane Sci.1991 55 119−130
【発明の要約】
【0022】
本発明は、多孔質媒体の表面上のその場で架橋結合した(cross−linked)ポリマー性ターポリマーコーティング(polymeric terpolymer coating)を形成することにより修飾された重合性の多孔質媒体、好ましくは多孔質膜を対象とする。幾つかの好適な態様では、コートされた多孔質媒体または膜は非修飾多孔質媒体または膜と実質的に同じ孔の特性を有し、そして熱抵抗性(heat resistant)の生体分子抵抗性を含む生体分子抵抗性の吸着特性(sorptive property)、強アルカリ性溶液に対する化学的抵抗性および大変低レベルの抽出物も有する。幾つかのより好適な態様では、修飾された多孔質媒体または膜は親水性であり、そして温度に相関して孔のサイズが実質的に変化しない。
【0023】
このように幾つかの好適な態様では、本発明は多孔質支持体および別に形成された熱安定性(heat stable)の生体分子抵抗性表面を含んでなる清浄な多孔質膜を提供する。さらに好適な態様では、本発明は多孔質支持体および別に形成された苛性アルカリ抵抗性(caustic resistant)、熱安定性の生体分子抵抗性表面を含んでなる清浄な多孔質膜を提供する。
【0024】
幾つかの好適な態様では、多孔質支持体およびポリマーコーティングが異なる材料から形成される。
【0025】
好ましくは、多孔質支持体は膜、より好ましくは微孔質膜である。
【0026】
さらに好適な態様では、本発明は好ましくは芳香族スルホンポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、過フッ素化熱可塑性ポリマー、ポリオレフィンポリマー、超高分子量ポリエチレンおよびポリビニリデンジフルオリドからなる群の1以上から形成される微孔質膜支持体、および架橋化ターポリマーを含んでなる別個に形成した表面コーティングである熱安定性の生体分子抵抗性表面を含んでなる清浄な、苛性アルカリ抵抗性の多孔質膜を提供し、該ターポリマーはアクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選択される少なくとも2つの単官能性(monofunctional)モノマーおよび多官能性(polyfunctional)アクリルアミド、多官能価メタクリルアミドおよびジアクロイルピペラジンからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性モノマーを含んでなる。
【0027】
幾つかのより好適な態様では、本発明はポリビニリデンジフルオリド微孔質膜支持体および熱安定性の生体分子抵抗性表面を含んでなる清浄な苛性アルカリ抵抗性の多孔質膜を提供し、ここで該熱安定性の生体分子抵抗性表面が架橋化ターポリマーを含んでなる別に形成された表面コーティングであり、該架橋化ターポリマーは:
(a)メチレン−ビス−アクリルアミド、ジメチルアクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミド;または
(b)メチレン−ビス−アクリルアミド、ビニルピロリドン、およびジメチルアクリルアミドまたはジアセトンアクリルアミドのいずれか
のいずれかから形成されたコポリマーである。
【0028】
また本発明の幾つかの好適な態様に従い提供されるのは、清浄な苛性アルカリ抵抗性の多孔質膜の調製法であり、該膜は多孔質膜支持体および熱安定性の生体分子抵抗性表面コーティングを含んでなり、該方法は;
a.多孔質膜支持体を提供し;
b.場合により該多孔質膜支持体を湿潤液体で洗浄してその表面を湿潤させ;
c.場合により該湿潤させた多孔質膜支持体を第2の湿潤液体で洗浄して第1の湿潤液体と置き換え、該多孔質膜支持体を該第2液体で湿潤させておき;
d.該多孔質膜支持体の表面を:
(1)アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選択される少なくとも2つの単官能性モノマー;および
(2)多官能性アクリルアミド、多官能性メタクリルアミドおよびジアクロイルピペラジンからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性モノマー
を含む反応物溶液と接触させ;該溶液は場合によりさらに1以上の重合開始剤を含んでなり;
e.該モノマーを重合して該熱安定性の生体分子抵抗性表面を形成し;そして
f.該膜を洗浄する、
工程を含んでなる。
【0029】
好ましくは工程(a)から(e)を行う前の多孔質支持体の孔サイズは、工程(a)から(e)を行なった後の該孔サイズと実質的に変わらない。幾つかの好適な態様では、孔質膜支持体は微孔質膜である。
【0030】
多孔質支持体が微孔質な膜である本発明の方法および膜の幾つかの好適な態様では、微孔質膜が芳香族スルホンポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、過フッ素化熱可塑性ポリマー、ポリオレフィンポリマー、超高分子量ポリエチレンおよびポリビニリデンジフルオリドからなる群の1以上から形成され、ポリビニリデンジフルオリドがより好適である。
【0031】
本発明の方法および膜の幾つかのより好適な態様では、架橋化ターポリマーがアクリルアミドである少なくとも1つの単官能性モノマーを含んでなり、ここで該アクリルアミドのアクリルアミド窒素が少なくとも1つのgemジアルキルで置換された炭素で置換されている。
【0032】
本発明の方法および膜の幾つかの特に好適な態様では、架橋化ターポリマーがジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドおよびメチレン−ビス−アクリルアミドから形成されるコポリマーである。別の特に好適な態様では、架橋化ターポリマーがメチレン−ビス−アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、およびジメチルアクリルアミドまたはジアセトンアクリルアミドのいずれかから形成されるコポリマーである。
【0033】
本発明の膜の幾つかの好適な態様では、膜の熱安定性な生体分子抵抗性表面が架橋化ターポリマーを含んでなる別に形成された表面コーティングであり;架橋化ターポリマーが:
多官能性アクリルアミドモノマー、多官能性メタクリルアミドモノマーおよびジアクロイルピペラジンからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性モノマー;および
N−ビニルピロリドンモノマーおよび一般式:
【0034】
【化1】

【0035】
またはHC=C(R)C(=O)N(R)(R)と記載され、
式中、
は−HまたはCHであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキルであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキル、またはC(CHCHC(=O)CHまたは(P=O)((NCH、またはC=ON(CH、またはCH−O−Rであり、ここでRは直鎖状または分枝状のいずれかのC−Cアルキル、または(CH−CH−O)−Rであり、ここでRは−Hまたは−CHであり、そしてn=2または3;ただしRおよびRは同時にHではない、
を有するモノマーの群から選択される少なくとも2つの異なる単官能性モノマー
を含んでなる。
【0036】
本発明の方法および膜の幾つかの好適な態様では、本発明の膜の架橋化ターポリマーがさらに追加特性修飾(supplemental property modifying)モノマーを含んでなり、これは好ましくはいずれの単官能性モノマーよりも少ない量で存在する。
【0037】
本発明の方法および膜の幾つかの好適な態様では、追加特性修飾モノマーは正または負に荷電したイオンを含むモノマー、親和性の基を含むモノマーまたは有意に疎水性の特性を持つモノマーからなる群から選択される。さらなる態様では、追加特性修飾モノマーは(3−(メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウム クロライド、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム クロライド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される。
【0038】
本発明の方法および膜の幾つかの好適な態様では、ターポリマーの単官能性モノマーの2つが約1〜5の重量比で存在し、約1〜2がより好適である。
【0039】
本発明の方法および膜のさらに好適な態様では、単官能性モノマーの総量が約0.5%〜約20重量%で存在し、約2%〜約10%がより好適であり、そして約4%〜約8%がより一層好適である。
【0040】
本発明の方法および膜のさらに好適な態様では、多官能性架橋モノマーに対する単官能
性コモノマーの総量の比が約1〜約10であり、約2〜約6がより好適である。
【0041】
本発明の膜の幾つかの好適な態様では、熱安定性の生体分子抵抗性表面は親水性である。
【0042】
本発明の方法および膜の幾つかのさらに好適な態様では、本発明の膜はIgG結合試験で測定した時、平方センチメートルあたり約30マイクログラム未満の生体分子の結合を有する。
【0043】
さらに好適な態様では、本発明の膜はNVR抽出分試験で測定した時、1平方センチメートルの膜あたり約2.0マイクログラム未満の抽出物のTOC抽出分を有する。より好ましくは本発明の膜はNVR抽出分試験で測定した時、1平方センチメートルの膜あたり約1.5未満、より好ましくは約1.4未満、より好ましくは約1.3未満、より好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.1未満、そしてさらに一層好ましくは約1.0マイクログラム未満の抽出物を有する。
【0044】
さらに本発明の方法および膜のより好適な態様では、本発明の膜は流れ時間測定試験(Flow Time Measurement test)で測定した時、約1.5未満、好ましくは約1.3未満、より好ましくは約1.2未満、そしてより一層好ましくは約1.0未満の苛性アルカリ抵抗性を有する。
【0045】
さらに好適な態様では、本発明は溶液から細胞を除去する方法を提供し、この方法は望ましくない細胞を含んでなる溶液を提供し;そして該溶液を本発明の膜に通して濾過する工程を含んでなる。
【0046】
さらに一層好適な態様では、本発明は溶液の滅菌法も提供し、この方法は非滅菌溶液を提供し、そして該溶液を本発明の膜に通して濾過する工程を含んでなる。
【0047】
さらなる態様では、本発明は式:
【0048】
【化2】

【0049】
式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたはCHOHであり、好ましくはRおよびRがそれぞれCHOHである、
の少なくとも1つのヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド(HMDAA)モノマーを含んでなる表面コーティングを有する膜を提供する。
【0050】
またコートポリマー膜の調製法も提供し、この方法は;
a.多孔質膜支持体を提供し;
b.場合により該多孔質膜支持体を湿潤液体で洗浄して膜の表面を湿潤させ;
c.場合により該湿潤させた多孔質膜支持体を第2の湿潤液体で洗浄して第1の湿潤液体と置き換え、該多孔質膜支持体を該第2液体で湿潤させておき;
d.該多孔質膜支持体の表面を:
1以上の単官能性モノマー、および
少なくとも1つのモノマーである式:
【0051】
【化3】

【0052】
式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたはCHOHであり、好ましくはRおよびRはそれぞれCHOHである、
のヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド(HMDAA)モノマー
を含む溶液と接触させ;そして
e.該モノマーを重合して該コート膜を形成する、
工程を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】異なる浸漬時間後に、従来技術および本発明の膜について、全有機炭素として抽出物のレベルを示す。
【図2】本発明の膜の生体分子抵抗性に及ぼす熱の効果を具体的に説明する。
【図3】HMDAAが段階的様式でDAAに置換された表面コーティングを有する膜のタンパク質結合を示す。
【図4】HMDAAが段階的様式でMBAmに置換された表面コーティングを有する膜のタンパク質結合を示す。
【発明の詳細な記述】
【0054】
本発明は多孔質膜、好ましくは多孔質の親水性膜を提供し、この膜は生体分子の吸着に対する抵抗性(「生体分子に関する低い親和性または吸着性」または「生体分子抵抗性」と呼ぶこともある)、より好ましくは生体分子吸着に対する熱安定性の抵抗性、多孔質膜を清浄化および/または衛生的にするために使用するような強アルカリ性溶液に対する化学的抵抗性、および従来の膜よりも大変低いレベルの抽出物を有することを含む望ましい特性の優れた組み合わせを有する。本発明に従い、重合性の多孔質媒体、好ましくは濾過または診断用媒体に有用な多孔質膜は、それらの表面上のその場で架橋化ターポリマーを形成することにより修飾して前述の特性を有するコート膜を得ることができる。
【0055】
すなわち幾つかの好適な態様では、本発明は重合性の多孔質媒体、好ましくは多孔質膜を提供し、この膜は架橋化ターポリマー表面を有する。好ましくは架橋化ターポリマー表面は多孔質媒体または膜の表面上のその場で形成される。好ましくは修飾された多孔質媒体または膜は温度に相関して孔サイズが実質的に変化しない。
【0056】
好適な態様では、本発明は熱安定性の生体分子抵抗性表面を有する多孔質膜を提供する。本明細書で使用するように、用語「生体分子」は生きている生物の一部である有機分子またはそれらの同族体を意味するものとする。すなわち生体分子にはアミノ酸のポリマー、例えばペプチドおよびタンパク質(抗体および酵素を含む)、およびDNAおよびRNA分子のようなヌクレオチドのポリマー、およびDNAおよびRNAプローブを含む。ま
た生体分子の定義内に含まれるのは、炭水化物および脂質である。合成的に生産された前述の各同族体も用語「生体分子」の定義に含むものとする。
【0057】
本明細書で使用するように、本発明の膜または膜表面に適用するような用語「生体分子抵抗性の」または「生体分子抵抗性」とは、本明細書に記載するIgG結合試験で測定した時、1平方センチメートルの膜面積あたり約30マイクログラム未満のIgGを吸着する膜または膜表面を意味する。
【0058】
本発明の膜に関連して本明細書で使用するように、用語「生体分子抵抗性表面」に適用するような用語「熱安定性」とは、生体分子抵抗性表面、例えば本明細書に記載するような熱に暴露された後の膜表面が、本明細書に記載するIgG試験で測定した時、熱に暴露される前の同じ表面の約2倍未満のIgG吸着を有することを意味する。
【0059】
さらに好適な態様では、本発明は多孔質支持体および別に形成された熱安定性の生体分子抵抗性表面を含んでなる清浄な、苛性アルカリ抵抗性の多孔質膜を提供する。好ましくは多孔質支持体は膜、より好ましくは微孔質膜である。
【0060】
本発明の膜および方法に関連して使用するように、用語「清浄な膜」とは生産された時:
a.本明細書に記載するNVR抽出試験により測定した時、1平方センチメートルの膜あたり約2マイクログラム未満の抽出物、そして好ましくは1平方センチメートルあたり約1マイクログラム未満の抽出物;あるいは
b.本明細書に記載するTOC抽出分試験で測定した時、1平方センチメートルの膜あたり約1マイクログラム未満の抽出物
のいずれかを有する膜を意味する。
【0061】
本明細書で使用するように、本発明の膜に適用するような用語「苛性アルカリ抵抗性」とは周囲温度で2時間、0.1 NaOHに暴露した後でも湿潤性のままであり、そして本明細書に記載する流れ時間測定試験で測定した時、約1.5未満のそのような暴露後対そのような暴露前の流れ時間の比を有することを意味する。
【0062】
本発明の実施においては広い種々の多孔質媒体が有用である。そのような多孔質媒体の例には、セラミックス、金属、炭素およびポリマーを含む。幾つかの好適な態様では、多孔質媒体はポリマー膜である。本発明に有用な多孔質膜を製造するために使用することができる代表的なポリマーは、ポリスルホンポリマー、好ましくはポリスルホンおよびポリエーテルスルホンポリマーのような芳香族スルホンポリマー、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリビニリデンジフルオリドを含む過フッ素化熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリオレフィンポリマー、およびポリエチレンテトラフタレートおよびポリカーボネートのようなポリエステルを含む。幾つかの特に好適な態様では、多孔質膜はポリビニリデンジフルオリド膜である。当業者は本発明に適する多孔質膜の形成に有用な他のポリマーを容易に確認することができるだろう。
【0063】
幾つかの好適な態様では、多孔質媒体または膜は疎水性媒体または疎水性膜である。別の好適な態様では、多孔質媒体または膜は親水性媒体または親水性膜である。多孔質膜が親水性である態様では、ポリアミド、酢酸セルロースおよびセルロースが好適である。
【0064】
幾つかの好適な態様では、熱安定性の生体分子抵抗性表面が多孔質膜上に形成される。本明細書で使用するように、用語「多孔質膜」には微孔質膜および限外濾過膜の両方を含む。本発明の限外濾過および微孔質膜はシート、チューブおよび中空ファイバーを含む幾
つかの形態であることができる。
【0065】
本発明の膜および方法の表面コーティングに適用するような本明細書で使用する用語「表面」は、多孔質媒体または膜の外面および内面を含む多孔質媒体または膜の全表面積を意味する。用語「外面」は、視界にさらされる表面、例えばシート状膜の平らな多孔質表面の両面を意味する。用語「内面」は、多孔質の網構造の内面、すなわち多孔質媒体または膜の間隙面積を表すことを意図する。
【0066】
一般に多孔質膜は表面が覆われている(skinned)か、または覆われていない(unskinned)。この覆いは膜の下部構造と一体化した比較的薄い、稠密な表面層である。表面が覆われている膜では、膜を通る流れに対する抵抗性の主要部分は薄い覆い内にある。微孔質および限外濾過膜の両方では、表面の覆いが存在する場合、この覆いは外面から覆いの下の膜に連続する多質孔構造に導く孔を含む。表面が覆われた微孔質および限外濾過膜については、孔は外面積のわずかなファクション(faction)を表す。対照的に、表面が覆われていない膜は外面の主要な部分にわたり多孔質となろう。膜の外面の孔性(すなわち例えば走査型電子顕微鏡“SEM”により見える膜の外面の孔の配列)は膜の外面上に比較的均一に分布している単一種の孔となることができ、または異なる孔性の面積となることができ、またはそれらの混合である。本明細書で使用する膜の外面に適用する用語「表面の孔性」とは、外面の総表面積に対する外面の孔の開口により定められる面積の比である。
【0067】
本発明の実施において有用である微孔質膜は、膜の厚さにわたり、または中空ファイバーについてはファイバーの多孔質な壁にわたり孔サイズの均一性に関して対称または非対称と分類することができる。本明細書で使用するように、用語「対称膜」とは膜の断面にわたり実質的に均一な孔サイズを有する膜を示す。用語「非対称膜」とは平均孔サイズが膜の断面にわたり一定ではない膜を意味するものとする。例えば非対称膜において孔サイズは膜の断面を通る位置に相関し大変滑らかに、または断続的に変動することができる。認識されるように、「非対称膜」の定義の中に含まれるのは実質的に1より大きい1つの外面上対反対の外面上の孔サイズの比を有する膜である。
【0068】
本明細書で使用する用語「架橋化ターポリマー」は3種以上のモノマーから作られたポリマーを意味し、その中の少なくとも1つのモノマーが重合反応に参加できる、または別個のポリマー鎖を架橋できる2以上の反応性部位を有する。ターポリマーは一般に3種のモノマーから作られると考えられるが、膜に所望の特性を与えるか、または高める(refine)ために1以上のさらなるモノマーを使用することが望ましい時、本発明の内容においてターポリマーは3種のポリマーに限定されない。幾つかの好適な態様では、架橋化ターポリマーは2つの単官能性モノマーおよび1つの二官能性モノマーから作られる。
【0069】
架橋化ターポリマーは好ましくは多孔質媒体または膜の全表面を覆う。好適な態様では、架橋化ターポリマーは2以上の単官能性モノマーおよび架橋形成多官能性モノマーの溶液(本明細書では「反応物溶液」と呼ぶ)からその場で形成される。単官能性モノマーは1つの不飽和官能基を有するものである。多官能性モノマーは1より多くの不飽和官能基を有する分子である。好ましくは2以上の単官能性モノマーはモノ−またはジ−N−置換アクリルアミドまたはメタクリルアミドである。架橋形成モノマーは好ましくは多官能性アクリルアミドまたはメタクリルアミドである。1つの特に好適な態様では、ジメチルアクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミドがメチレン−ビス−アクリルアミドと共に使用される。別の好適な態様では、N−ビニルピロリドンがモノ−またはジ−N−置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド単官能性モノマーの1つに置き換えられる。
【0070】
幾つかの好適な態様では、少なくとも1つの多官能性モノマーは多官能性アクリルアミ
ドモノマー、多官能性メタクリルアミドモノマーまたはジアクロイルピペラジンであり、そして少なくとも2つの異なる単官能性モノマーはアクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマーおよびN−ビニルピロリドンから選択される。
【0071】
さらに好適な態様では、少なくとも1つの多官能性モノマーが多官能性アクリルアミドモノマー、多官能性メタクリルアミドモノマーまたはジアクロイルピペラジンであり、そして少なくとも2つの異なる単官能性モノマーがN−ビニルピロリドンモノマーおよび一般式:
【0072】
【化4】

【0073】
あるいはHC=C(R)C(=O)N(R)(R)と記載され、
式中、
は−HまたはCHであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキルであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキル、またはC(CHCHC(=O)CHまたは(P=O)((NCH、またはC=ON(CH、またはCH−O−Rであり、ここでRは直鎖状または分枝状のいずれかのC−Cアルキル、または(CH−CH−O)−Rであり、ここでRは−Hまたは−CHであり、そしてn=2または3;ただしRおよびRは同時にHではない、
を有するモノマーから選択される。
【0074】
幾つかの好適な態様では、架橋化ターポリマーは:
(a)メチレン−ビス−アクリルアミド、ジメチルアクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミド;または
(b)メチレン−ビス−アクリルアミド、−ビニルピロリドン、およびジメチルアクリルアミドまたはジアセトンアクリルアミドのいずれか
のいずれかから形成されるポリマーである。
【0075】
本発明の幾つかの好適な態様で提供されるのは、清浄な、苛性アルカリ抵抗性の多孔質膜の調製法であり、該膜は多孔質膜支持体および熱安定性の生体分子抵抗性表面コーティングを含んでなり、該方法は;
a.多孔質の膜支持体を提供し;
b.場合により該多孔質膜支持体を湿潤液体で洗浄して膜の表面を湿潤させ;
c.場合により該湿潤させた多孔質膜支持体を第2の湿潤液体で洗浄して第1の湿潤液体と置き換え、該多孔質膜支持体を該第2液体で湿潤させておき;
d.該多孔質膜支持体の表面を:
(1)アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選択される少なくとも2つの単官能性モノマー;および
(2)多官能性アクリルアミド、多官能性メタクリルアミドおよびジアクロイルピペラジンからなる群から選択される少なくとも1つの多官能性モノマー
を含む溶液と接触させ;該溶液は場合によりさらに1以上の重合開始剤を含んでなり;
e.該モノマーを重合して該熱安定性の生体分子抵抗性表面を形成し;そして
f.該膜を洗浄する、
工程を含んでなる。
【0076】
好適な態様では、多孔質媒体または膜の全面がターポリマーでコートされる。すなわち反応物溶液は好ましくは多孔質媒体または膜の全面を湿潤させるべきである。これは好ましくは多孔質媒体または膜を反応物溶液と接触させる前に洗浄工程を行うことにより容易となる。すなわち幾つかの好適な態様では、多孔質媒体または膜は多孔質媒体または膜の全表面を完全に湿潤させる洗浄液体で最初に洗浄される。好ましくは洗浄液体は多孔質媒体または膜を膨潤または溶解せず、そしてまた好ましくは反応物溶液と交換することができる。
【0077】
水性の反応物溶液が使用される幾つかの好適な態様では、湿潤液体は多孔質媒体または膜を湿潤させるために必要な表面張力よりも低い表面張力を有する有機−水組成物であり得る。適当な湿潤液体の例はアルコール−水溶液、好ましくはメタノール−水、エタノール−水またはイソプロパノール−水溶液である。
【0078】
洗浄工程が採用される幾つかの好適な態様では、第2洗浄工程を行うことが好ましい。例えば湿潤液体の1以上の成分が重合化または架橋形成反応を妨害し得る場合、第2洗浄工程を使用して洗浄液体を除去し、そしてそれを重合化または架橋形成反応を妨害しない第2の洗浄液体に置き換えることができる。例えば水性の反応物溶液が使用されるならば、湿潤多孔質媒体または支持体を水で洗浄して第1湿潤液体を除去し、そして水を満たした多孔質媒体または膜を生成する。次いで湿潤多孔質媒体または膜を反応物溶液と接触させて(例えば反応物溶液に浸すことにより)、多孔質媒体または膜の孔中およびそれらの外面上に所望の反応物組成を生じる。好ましくは第1および第2洗浄工程(所望するならば)を周囲温度、例えば20℃〜30℃で、そして好ましくは数秒から数分間行う。
【0079】
反応物溶液が多孔質媒体または膜を十分に湿潤させる場合、その目的に有機溶媒を含むことから、あるいは反応物溶液が多孔質媒体または膜を完全に湿潤させるように、反応物溶液中の反応物濃度が溶液の表面張力を下げるために十分である場合、いずれの洗浄工程も必要ない。すなわち幾つかの好適な態様では、反応物溶液はそのような洗浄工程を避けるために十分に反応物溶液の表面張力を下げ、そして後の重合反応を妨害しない1以上の添加剤を含む。そのような添加剤の好適な例にはエチル ヘキシル ジオール、プロピレンカーボネート、トリプロピレングリコール メチル エーテルおよび2−メチル−2,4−ペンタンジオールを含む。適切な湿潤を達成するために必要な反応物溶液への添加剤の量は使用するモノマーおよび開始剤の量および種類に依存し、そして当業者は実験を行うことなく容易に決定することができるだろう。
【0080】
幾つかの好適な態様では、反応物溶液には溶媒、単官能性モノマー、少なくとも1つの多官能性架橋形成モノマーおよび場合により1以上の開始剤を含む。反応物溶液用の溶媒の選択は、モノマーおよび任意の開始剤の選択に依存する。溶媒は好ましくは(1)反応物、そして存在する場合は開始剤を溶解し;(2)重合反応を干渉または妨害せず;そして(3)多孔性媒体または膜を攻撃しない。特に好適な溶媒の1例は水である。
【0081】
本発明の幾つかの特に好適な態様では、ターポリマーはアクリルアミド、メタクリルアミドまたはN−ビニルピロリドンから選択される少なくとも2つの単官能価モノマー、および少なくとも1つの多官能性アクリルアミドまたはメタクリルアミド架橋形成モノマーから形成される。しかし別の好適な態様では、他のモノマーを使用することもできる。これらにはN−ビニルピロリドンおよび他のモノ−またはジ−N−置換アクリルアミドまた
はメタクリルアミドモノマー、例えば式:
【0082】
【化5】

【0083】
またはHC=C(R)C(=O)N(R)(R)と記載され、
式中、
は−HまたはCHであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキルであり、
はHまたは直鎖状または分枝状のいずれかのC−C、好ましくはC−Cアルキル、またはC(CHCHC(=O)CHまたは(P=O)((NCH、またはC=ON(CH、またはCH−O−Rであり、ここでRは直鎖状または分枝状のいずれかのC−Cアルキル、または(CH−CH−O)−Rであり、ここでRは−Hまたは−CHであり、そしてn=2または3;ただしRおよびRは同時にHではない、
を有するモノマーを含む。
【0084】
幾つかの態様では、第1の単官能性コモノマー対第2の単官能性コモノマーの比が約1〜5、より好ましくは約1〜2であることが好ましい。さらに好適な態様では、コモノマーの総量が約0.5%〜約20%、より好ましくは約2%〜約10%の間、そしてさらに一層好ましくは約45〜約8%である。
【0085】
幾つかの好適な態様では、ターポリマーはすでに記載した2つの単官能性モノマーに加えて1以上の単官能性モノマーを含むことができる。そのようなさらなる単官能性モノマーは、ターポリマーの特別な特性を付与または修飾するために有利に使用することができる。例えばターポリマーの親水的性質またはイオン荷電含量を修飾することが望ましい幾つかの態様では、修飾を行うために他の2つの単官能性モノマーとは異なる官能性を有する第3の単官能性モノマーを含むことが好ましい。好ましくはさらなる単官能性モノマー(1つまたは複数)をターポリマーに使用する場合、そのようなさらなるモノマーは少量で、または単官能性モノマーに匹敵する量で使用される。代表的な追加特性を修飾するモノマーには、(3−(メタクリロイルアミノ)プロピル)トリメチルアンモニウム クロライド、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびアミノプロピルメタクリルアミドを含むことができる。
【0086】
本発明の好適な態様では、ターポリマーは少なくとも1つの多官能価架橋モノマー(または「架橋形成モノマー」)を含む。特定の理論に拘束されることなく、架橋形成モノマーは、とりわけ鎖重合反応に参加し、そして単官能性モノマーの重合した鎖を架橋することによる両方で多孔質支持体または膜に対する永久的修飾を容易にすると考えられている。本発明での使用に好適な架橋形成モノマーの例には、多官能性アクリルアミド、多官能価メタクリルアミドおよびジアクロイルピペラジンを含み、多官能性アクリルアミドおよび多官能性メタクリルアミドがより好適である。エチレン−ビス−アクリルアミドおよびメチレン−ビス−アクリルアミドは特に好適な架橋形成モノマーであり、メチレン−ビス
−アクリルアミドが特に好適である。
【0087】
幾つかの好適な態様では、ターポリマーに存在する単官能性モノマーの総量に対する架橋モノマーの量の比は、約1〜約10、より好ましくは約2〜約6である。
【0088】
本明細書においてターポリマーのモノマー性成分に関連して使用するように、用語「モノマー」および「コモノマー」は互換的に使用されるべきである。
【0089】
幾つかの好適な態様では、本発明の単官能性モノマーの重合およびコポリマー(1つまたは複数)の架橋形成は、遊離基の開始および伝搬を通して達成される。幾つかの好適な態様では、1以上の遊離基開始剤を、重合を促進するためにモノマーを含む反応物溶液に含むことができる。当該技術分野で既知の広い種々の開始剤が本発明に応用を見いだせる。幾つかの好適な態様では、開始剤(1つまたは複数)は水溶性である。別の好適な態様では、例えば浸潤反応物溶液が使用される時、わずかに水溶性の開始剤が好適である。当業者は上記反応物溶液に適する開始剤を容易に決定することができるだろう。適当な開始剤の例には例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、アゾビス(4−シアノ吉草酸、Irgacure2959(チバ−ガイギー(Ciba−geigy)、ホーソーン、ニューヨーク州)、2,2’−アゾビス(2−アミジノ−プロパン)ヒドロクロライド等を含む。好ましくは、開始剤(1つまたは複数)は全反応物溶液に基づき約0.1%〜約1重量%の範囲で使用される。
【0090】
好適な態様では、多孔質媒体または膜の表面を反応物溶液と接触(すなわち飽和させる)させた後、余分な反応物溶液を外面から除去し、同時にそのような外面を溶液で湿潤させておく。小さいシートについては、余分な溶液は例えば2層のプラスチックフィルム間に飽和したシートを置き、そして例えばハンドローラーのようなゴム製のロールを転がして余分な液体を出すことにより除去することができる。多質媒体または膜の連続シートの処理では、余分な液体の除去は外面に直接的に空気の流れを向けるエアーナイフで行うことができる。気流の力が余分な反応物溶液を一掃する。1つの好適な技術は2つの圧力制御接触ロール間にシートを流し(run)、その少なくとも1つにはエラストマーがコートされ、これがシートと同じ方向に回転する。シートに残る液体の量は接触ロールの圧力を調整することにより正確に制御することができる。
【0091】
余分な反応物溶液を除去した後、次に反応物溶液の重合は湿潤多孔質媒体または膜を加熱、紫外線、電子ビームまたはガンマ放射線のような任意の通常のエネルギー源に暴露することにより始まる。熱により開始される遊離基重合は、典型的には飽和した媒体または膜を少なくとも60℃に加熱し、そしてその温度を約0.1〜約10分間、好ましくは約1〜約2分間維持することにより達成される。使用する開始剤およびモノマーの組み合わせに依存して、沸騰または急激すぎる気化が重合反応に悪影響を及ぼす点まで、より高温を使用することができる。
【0092】
幾つかの好適な態様では、紫外線光を使用してその場で重合反応を開始する。好ましくは反応物溶液(場合により1以上の開始剤を含む)で飽和した多孔質媒体または膜を、“H”バルブを備えたFusion System F600(ロックビル、メリーランド州)のような紫外線光源を用いて照射する。フィルターは修飾される多孔質媒体または膜に望まない傷害を引き起こし得る望ましくない波長を減らすか、または除去するために使用することができる。当業者は重合条件を至適化するためにランプの強度でUV光に対する暴露時間のバランスをとることが日常的な実験の問題になると考えるだろう。一般に600ワットの供給源で、約2秒から約10秒、好ましくは約3秒から約5秒の暴露時間が適当となるだろう。
【0093】
幾つかの好適な態様では、例えば米国特許第4,944,879号明細書(この開示は引用により本明細書に編入する)に記載されている方法による電子ビーム技術が重合を開始するために使用される。典型的にはウェブまたは個々のサンプルを電子ビームプロセッサーにより生成される電子のカーテンに通す。このプロセッサーは約100kV〜約200kVで所望する線量を送達する。可動型ウェブまたはサンプルはカーテン下で所望する暴露時間を与えるために適当な速度で移動させる。暴露時間は線量と組み合わせて線量率を決定する。典型的な暴露時間は約0.5秒〜約10秒である。線量率は一般に0.05kGy(キログレイ)〜約5kGyである。
【0094】
分子酸素の存在は遊離基重合反応に悪影響を及ぼすことが知られている。すなわちこれまでに記載した前述の各開始法では、反応ゾーン中の酸素の量を約200ppm未満、好ましくは約50ppm未満に制御することが好ましい。幾つかの好適な態様では、これは反応ゾーンに窒素またはアルゴンのような不活性ガスを流すことにより、または空気を排除するために2層のプラスチックフィルム間にシートを挟むことによりなされる。
【0095】
さらに好適な態様では、反応物溶液のモノマーの重合はガンマ放射線により開始することができる。この方法では典型的には、巻き取られたロール状の、モノマーを飽和した多孔質膜を照射する。このロールは反応物溶液を通って進み、そして巻かれるか、または事前に巻取られたロールを反応溶液に浸漬する。好ましくは反応物溶液を脱気し、すなわち空気、そして特に酸素を溶液から除去するように処理する。幾つかの好適な態様では、脱気は空気をヘリウム、窒素またはアルゴンのような不活性ガスに置き換えることによりなされる。別の好適な態様では、脱気は例えば真空ポンプによりモノマー溶液を減圧にすることによりなされる。脱気したモノマー溶液を付加した(laden)ロールは次いで脱気状態を維持するために密閉材料で封鎖され、そして所望の線量で照射される。好ましくは、密閉材料は照射により分解せず、しかもガンマ線を有意に妨害しない。密閉材料として有用となる広い種々の材料、例えば多くのプラスチックおよび硼珪酸ガラスが当該技術分野では知られている。
【0096】
典型的には約0.02〜約1.0kGyの全線量が適当である。1時間あたり約5〜約500キロラド、より好ましくは1時間あたり約5〜約150キロラドの典型的な暴露を使用することができ、典型的な照射時間は約4〜約60時間である。当業者は線量率と全線量が到達する時間との適当なバランスを容易に決定することができるだろう。
【0097】
架橋化ターポリマーが多孔質媒体または膜にグラフト化される程度(すなわちターポリマーが結合する程度)は、とりわけ重合反応の開始法の選択により制御することができる。例えばガンマ放射線は、コポリマーの重合性本体マトリックスへのより大きな程度のグラフト化を与えるが、熱が誘導する開始はグラフト化の程度が少ない。当業者はターポリマーの多孔質媒体または膜への所望する程度のグラフト化を与える開始法を容易に選択することができるだろう。
【0098】
本発明の方法はシート、チューブおよび中空ファイバー膜の製品(fabrication)に応用される。コーティング法は繊維および単繊維工業から既知であり、これを本方法に適合させることができる。
【0099】
幾つかの好適な態様では、本発明はポリマー膜を含んでなる膜および製品を提供し、ここで膜は式:
【0100】
【化6】

【0101】
式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたはCHOHである、
の少なくとも1つのヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド(HMDAA)モノマーを含んでなる表面コーティングを含む。幾つかの好適な態様では、RおよびRはそれぞれCHOHである。HMDAAはミズーリ州、セントルイスのアルドリッチ ケミカル社(Aldrich Chem.Co.)から入手することができる。
【0102】
HMDAAを包含する膜コーティングは本明細書に記載する方法により、ならびにコートされたポリマー膜の調製について当該技術分野で知られている他の方法により調製することができる。例えば多くの架橋形成モノマー、例えばメチレンビスアクリルアミド(MBAm)はコーティングの処方により一部または完全にHMDAAに置き換えることができる。
【0103】
典型的にはHMDAAはポリマーコーティングの架橋を行うために十分な量で使用される。幾つかの態様では、表面コーティング中の全単官能価モノマー 対 HMDAAのモル比は10:1である。幾つかの好適な態様では、この比率は7:1〜3:1である。幾つかの好適な態様ではこの比は4:1、5:1または6:1である。
【0104】
本明細書に記載する新規なコート膜に加えて、当該技術分野で知られている種々のポリマー膜を、架橋形成モノマーとしてHMDAAを含むポリマーでコートすることができる。HMDAAモノマーを含む表面コーティングにより修飾することができる代表的な膜には、本明細書に記載するすべての膜、そして特に、そして限定するわけではないがポリスルホンおよびポリエーテルスルホンポリマーのようなポリスルホンポリマー、好ましくは芳香族スルホンポリマー、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリビニリデンジフルオリドを含む過フッ素化熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリオレフィンポリマー、ならびにポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、可塑化および非可塑化ポリビニルクロライドのようなポリエステル、ならびに他の熱可塑性ポリマーを含む。
【0105】
幾つかの好適な態様では、本明細書に記載する各々の新規な架橋化ターポリマー表面コート膜において、1以上のHMDAA架橋形成モノマーが完全に、または部分的に架橋形成モノマーとしてメチレンビスアクリルアミドに置き換えられる。
【0106】
幾つかの態様では、HMDAAは表面コーティングの唯一の架橋形成モノマーとなることができ、そして別の態様ではHMDAAは1以上のさらなる架橋形成モノマーと使用される。
【0107】
特定の理論に拘束されることなく、HMDAA(特にRおよびRがそれぞれCHOHである)が加熱される時、ビニルケトンがそれらのアクリルアミド部分とは反対のHMDAA分子末端に生成し、二官能価アクリルアミド−ビニルケトン架橋形成モノマーを提供する。HMDAAはさらに例えば引用により本明細書に編入するルビリゾールケミカル社(Lubrizol Chemical Co.)により出版された出版物「HMD
AAモノマー(HMDAA Monomer)」に記載されている。
【0108】
本発明のHMDAAで架橋した表面コート膜は、他の架橋形成モノマーを使用して調製した他の表面コート膜に比べて利点を有する。例えばHMDAAモノマーのペンダント−CHOH基は架橋形成反応後も存在することができると考えられる。これらの残存ヒドロキシメチル残基は、コーティングに種々の官能性部分を包含するために、コーティング形成後の結合点として役立つ求核性部位として有利に使用することができる。例えばそのような官能性部分は、HMDAAヒドロキシメチル残基と反応することができる求電子性部分を有するつなぎ(tether)を介してコーティングに結合することができる。そのような求電子性部分には例えばグリシジル基、α−ケトメチレン基およびイソシアネートを含む。つなぎにより結合することができる代表的な官能性部分には、四級アンモニウム種、スルホン酸のような荷電した部分、および膜コーティングに電荷を付与するために有用な他の荷電基を含む。
【0109】
さらにHMDAA架橋形成モノマーを含む表面コーティングを使用する膜は、さらなる利点を有すると考えられる。例えば架橋形成モノマーであるメチレンビスアクリルアミドは本明細書に記載する表面コーティングに適するが、他のポリマー成分よりも場合によりタンパク質結合を増し、そして湿潤性を下げ、そして脆性が増すと考えられる。対照的にHMDAA架橋形成モノマーはそのような特性を与えないと考えられている。
【0110】
本発明の考察では可能なすべての組み合わせ、置き換えまたは修飾を完全に提示することを意図しないが、熟練者の啓発に代表的な方法を提示する。代表的な実施例は実施の低減を示すために与え、そして本発明の範囲を限定するものとは解釈されない。発明者は特許請求の範囲を作成した時点で知られている最も広い様式で本発明の最も広い観点を網羅するように努める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0111】
方法
1.生体分子抵抗性
多孔質膜の吸着に対する生体分子抵抗性は、IgGタンパク質を使用した静的浸漬試験により測定する。タンパク質溶液はミズーリ州、セントルイスのシグマケミカルカンパニー(Sigma Chemical Company)(SigmaI−5523)から購入したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で調製する。これもシグマ化学社(SigmaI−5523)から購入したヤギのガンマグロブリンを1mg/mlの濃度で使用する。125I−ヤギ抗(ウサギIgG)はマサチューセッツ州、ボストンのNENライフサイエンスプロダクツ(Life Science Products)(NEX−155)から購入し、そしてタンパク質溶液に加えて0.1μCi/mlの最終濃度とする。
【0112】
1枚の13mm膜ディスクを16×100mmの試験管に入れ、そして正確に1mlのタンパク質溶液をカリブレートしたマイクロピペッターを用いて加える。すべての試験管をロータリーシェーカー台のラックに置き、そして2時間撹拌(agitation)する。撹拌後、液体を試験管から吸引し、そして湿潤膜を1mlのPBSで3回洗浄する。洗浄した膜ディスクは清浄な試験管に移し、そしてガンマカウンター(イリノイ州、ダウナーズ グローブのパッカード インスツルメントカンパニー(Packard Instrument Company)からのMinaxi Auto−gamma 5000シリーズ)に置いて各ディスクに結合した放射性を1分あたりのカウントの単位(cpm)で測定する。1mlのタンパク質溶液を含み、そして膜は含まない対照試験管に関する1分あたりのカウントも測定する。対照試験管に基づき、測定した放射性と実際のタンパク質濃度との間の関係は、以下の式:
対照関係=全平均cpm/mgIgG=全平均cpm/1000μgIgG
により各ディスク上のタンパク質の量について算出する。
【0113】
各ディスク上に見いだされる放射性を測定することにより、各ディスク上のタンパク質量を以下の式:
1枚の13mmディスクに結合したタンパク質=(cpm/1.33cm)×(1000μgIgG/全平均cpm)
に従い算出することができる。
【0114】
この量を結合したタンパク質としてcmの膜前面積あたりμgの単位で報告する(13mmのディスクは1.33cmの面積を有する)。試験する各サンプルについて少なくとも2連で行う。
【0115】
Durapore(商標)膜のような低結合の市販PVDF膜について見いだされた典型的な値は、15±4μg/cmの範囲である。対照的にパールコーポレーション(Pall corporation)からのFluorodyne(商標)膜のような競合的PVDF膜は47±19μg/cmの範囲である。
【0116】
2.生体分子抵抗性の熱安定性
膜の生体分子抵抗性の熱安定性を決定するために、膜のサンプルを(1)オーブン中で135℃にて2時間加熱する;または(2)121℃の蒸気オートクレーブ中で1時間維持するかのいずれかを行い、そして次いで上記のように試験した。
【0117】
3.抽出分レベルを測定するためのTOC(全有機炭素)法
47mmの3枚の膜ディスクを切り取り、そして前以て清浄化した40mlのTOVバイアルに入れる。このバイアルをGVX(疎水性PVDF)で覆い、そしてゴムバンドにより固定する。次いでこのバイアルを126℃で1時間オートクレーブにかける。冷却後、バイアルを取り出す。GVXを除去し、そして40.0mlの新たなMilliQ(商標)水を加え、そしてバイアルは予め清浄化したテフロンを裏打ちした隔壁キャップで即座に蓋をする。膜を一晩抽出する(最少16時間)。抽出物はSiever 800 TOC分析機によりTOCレベルについて分析する。生のPPM結果は、オートクレーブにかけ、そして一晩抽出した空のバイアルであるブランクについて補正する。これらのppm TOC結果を、40mlを掛け、そして52.05cmで割ることによりμgC/cmに変換する。
【0118】
4.製造スケールの膜に関して抽出分レベルを決定するためのTOC/NVR(全有機炭素/非揮発性残渣)法
約8ftの膜を渦巻き状に巻き、そして次いでGVXで包む。ついでサンプルを126℃で1時間オートクレーブにかける。冷却後、膜をGVXから取り出し、そして予め清浄化した1リットルのメスシリンダー中の800mlの新たなMilliQ(商標)水に膜が完全に沈むように加える。シリンダーは1層のアルミニウムホイルで蓋をし、そして膜を一晩抽出する(最少16時間)。次いで膜を取り出す。抽出物のアリコートは標準法によりTOC(40ml)およびNVR(200〜600ml)について分析する。結果はブランクについて補正し、そしてそれぞれμgC/cmおよびmgNVR/7.5ftで報告する。
【0119】
5.苛性アルカリ抵抗性を決定するための流れ時間測定
この試験では修飾した膜を流れ時間について試験し、この試験は透過性を測定するための方法であり、周囲温度で2時間、0.1NaOHに暴露し、そして流れ時間について再試験する。暴露前に対する後の流れ時間の比は、膜に及ぼす苛性アルカリの効果の尺度である。より高比率がより効果的であることを示す。1の比率は効果が無いことを示す。苛
性アルカリ抵抗性膜はこの暴露後でも湿潤性のままであり、そして約1.5未満の暴露前の流れ時間に対する暴露後の流れ時間の比率を有する膜である。
【0120】
以下の手順をこの試験に使用する:
1.膜を47mmディスクに切断する。
2.ディスクを水で濡らし、そしてある容量の水を保持するためのリザーバーを備えたフィルターホルダーに置き、そして真空ポンプにつなぐ。
3.膜に水を27.5インチHgの差圧で流す。
4.平衡に達した後、500mlの水が膜を通って流れる時間を記録する。
5.この測定を周囲温度で0.1M NaOHに2時間暴露する前および後で行う。0.1M NaOHへの暴露はディスクを大過剰の塩基中で旋回させることにより行い、そして膜は流れ測定の前に中性まで水で洗浄する。
6.データは比率を最も近い整数の概数とする。
【実施例1】
【0121】
本発明の方法によるPVDF微孔質膜の修飾および評価
0.1ミクロン等級の疎水性PVDF膜(Durapore(商標)、ミリポア社(Millipore Cororation)、ベッドフォード、マサチューセッツ州)の6枚の47mmディスクを切断し、そしてそれらの重量を記録した。次いで膜はメタノール中に置き、そしてMilliQ(商標)水に浸漬することにより水で前もって湿潤させた。
【0122】
アクリルアミドモノマー、光開始剤および水を含む溶液を作成した。この溶液の組成を表1に示す:
【0123】
【表1】

【0124】
反応物の全溶解後、溶液を皿に入れ、そして前以て湿潤させた膜を溶液に入れる。皿を覆い、そして膜は軌道シェーカー(ラボライン インスツルメンツ(LabLine Instruments)、メルローズパーク、イリノイ州)で溶液中にて10分間旋回させる。膜を取り出し、そして個別に1milのポリエチレンシート間に置く。過剰な溶液は、卓上に平らに置いたポリエチレン/膜ディスク/ポリエチレンサンドイッチ上をゴム製ローラーを転がすことにより除去する。次いでポリエチレンサンドイッチは、“H”バルブを備えたFusion System UV暴露ラボユニットを通して集成物を運ぶ輸送ユニットにテープで付ける。暴露時間は集成物がどのくらい速くUVユニットを通って移動するかにより制御する。この実施例では、集成物はUVチャンバーを20フィート/分で移動する。
【0125】
UVユニットから出た後、膜をサンドイッチから取り出し、そして直ちにメタノールに入れ、ここで膜は15分間旋回させることにより洗浄される。次に膜をMilliQ(商標)水で15分間洗浄する。この洗浄手順後、膜を風乾する。
【0126】
膜の重量を再度測り、そして膜あたりに加えられた重量%は加わった重量を初期重量で割り、100を掛けて算出する。この実施例に関して、加わった重量は4.4%であった。
表2は膜について行われた測定を示す:
【0127】
【表2】

【0128】
親和性のない支持体に関して、修飾した膜は25%の水流時間の上昇を示した。全有機炭素抽出分は0.646マイクログラム/平方センチメートルと測定された。湿潤時間およびタンパク質結合は以下の表3に与える:
【0129】
【表3】

【0130】
湿潤時間は47mmディスクを水平に水中に落とし、そしてディスク全面が完全に濡れた外観となる時間を測ることにより測定した。
【実施例2】
【0131】
DMAmおよびMBAmを含む異なるモノマーを使用したPVDF膜の修飾
PVDF膜は以下の表4に示すように、DMAmおよびMBAmを含む異なるモノマーを使用して実施例1に記載のように修飾した:
【0132】
【表4】

【実施例3】
【0133】
連続ロールの生産
表面を修飾した膜のロールは、疎水性の0.1μm孔サイズ膜を種々の濃度のN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAm)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAm)、ジアセトンアクリルアミド(DACAm)およびトリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(TPM、一定の20%)から成る水溶液を含む湿潤パンを種々の速度で順次に通し、ポリエチレンフィルム間に挟みながら4台のFusion UV System F600ランプを使用して両側からUV照射に暴露し、メタノールのタンク中、続いて水のタンク中ですすぎ、そして115℃の乾燥空気を当てながら真空ドラム上で乾燥させることにより調製した。種々の条件を使用し、そして結果を以下の表5に与える。1および2行の対照はモノマーの混合がタンパク質結合の熱安定性に及ぼす効果を示すために含める。
【0134】
【表5】

【実施例4】
【0135】
市販のPVDF膜および本発明の膜を用いた苛性アルカリ抵抗性試験の結果
0.1N NaOHに周囲温度で2時間、暴露する前および後の膜の流れ時間の比を以下の表6に示す。
【0136】
【表6】

【0137】
上記で検討したように、本発明のような修飾した膜は容易かつ効率的に「清浄化」されることができ;すなわち後に濾過される製品中に抽出され得る材料を除去するために、反応後の洗浄および/または抽出工程の管理にかけることが大いに好ましい。そのような低レベルに抽出分を減らすために、低分子量種および未反応モノマー、ならびに非結合オリゴマーおよびポリマー種を除去する洗浄法を有することが必要である。これはこのような材料を溶媒和する液体を用いた十分に徹底的な抽出により行うことができる。しかし抽出
時間が増すほど支払う経済的犠牲もあり、したがって抽出時間を最少にすることが望ましい。さらに従来技術の修飾膜はそれらが続いてオートクレーブにかけられると、長い洗浄または浸漬にもかかわらず抽出分の減少を示さない。特定の理論に拘束されることなく、これはオートクレーブから生じる修飾の加水分解的な分解産物によると考えられ、これが後で抽出される。熱、例えばオートクレーブに対して暴露した後に、あるいは高度にアルカリ性の液体に暴露した後に安定な抽出分レベルを有する修飾された膜または多孔質媒体を有することが望ましいと分かるだろう。これは大変低レベル、従来技術の膜よりも低いレベルの抽出分まで効果的に清浄化することができる本発明の膜の重要な特性である。 図1は従来技術の膜と本発明の膜の抽出分レベルを比較するための試験に由来する結果を具体的に説明する。両膜の組は存在する有意な量の任意の抽出分を除去するために計画された条件で製造後の浸漬に供した。浸漬時間の増加が抽出分除去に及ぼす効果を測定するために、各種類のサブセットを様々な時間浸漬した。
【0138】
市販のPVDF微孔質膜(Durapore(商標)、ミリポアコーポレーション、ベッドホード、マサチューセッツ州)のサンプルを80℃の水に図1に示した時間浸漬した。各時間間隔の後、サンプルを取り出し、そして抽出分レベルを測定するためにTOC法で試験した。図1はTOC抽出分が1平方センチメートルあたり約2〜5マイクログラムであることを示す。抽出分のレベルは80℃の浸漬時間により影響を受けなかった。これはこれらに関して膜の任意の改善に対する限界を示す。
【0139】
本発明の膜をメタノールに図1に示す時間浸漬し、そしてTOC抽出分を上記のように測定した。黒色の四角はDurapore(商標)を示し、そして灰色の三角、逆三角および丸は本発明の同一の膜の独立した実験を示す。本発明の膜に関して、TOC抽出分は規模において約1次元低い約0.2〜0.4マイクログラム/平方センチメートルであることが分かる。これらの結果は本発明の膜が従来技術の膜よりも有意に清浄に作ることができ、そして徹底的な浸漬により従来技術の膜の抽出分レベルは本発明の膜が達成できるレベルにまで下がらないことを示す。
【0140】
上で検討したように、従来技術の膜の有意な問題はそれらの生体分子抵抗性が加熱した時に有意に低下することである;すなわちそれらの生体分子抵抗性は十分に熱安定性ではない。乾燥熱はさらに有害な効果を有し、そしてオートクレーブ中でのような湿潤熱はより低いが、それでも実質的な効果を及ぼす。膜は使用に応じて様々な熱管理にかけられるので、これらの効果は工業的開発に対する重大な欠点を提示する。
【0141】
驚くべきことに、本発明の架橋化ターポリマー、そして特にアクリルアミドの架橋化ポリマーはこの熱に対する感受性をもたないことが見いだされた。特にメタクリルアミドを含み、そしてN−ビニルピロリドンを含む架橋化ターポリマーは、生体分子吸着に対する高い抵抗性の熱安定性を共有する。
【0142】
実施例1の結果を具体的に示す図1は、本発明の有利な効果を明らかに表す。図2では、同じ基材の膜の3種の修飾からの結果を示す。1つのモノマー(1つの場合ではN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAm)、そして別の場合ではジアセトンアクリルアミド(DACAM))および架橋モノマー(メチレンビス−アクリルアミド(MBAm))からの架橋化ポリアクリルアミドを含む2組のサンプルの修飾は良好であり、すなわち作成時に低いタンパク質吸着であった。これら修飾した膜のサンプルをオーブン中で135℃にて2時間加熱し、そして試験した時、タンパク質吸着は作成時の値の約4〜10倍まで顕著に高かった。各々の別のサンプルを121℃の蒸気オートクレーブ中で1時間保持し、そして次いでタンパク質吸着について試験した。DMAmサンプルは作成時の価より一層高く、一方DACAmサンプルはおよそ同じ値であった。はっきりした対照として、DMAmおよびDACAmモノマーの混合物で修飾した膜は、2時間の135℃の加熱また
はオートクレーブ処理からは無視できる効果を示した。さらにターポリマーで修飾した膜の作成時のタンパク質吸着は、単一のモノマーで修飾した膜の吸着よりも低かった。熱安定性の生体分子抵抗性表面は、熱への暴露後に生体分子吸着に増加がないか、またはその増加が少ない膜である。より具体的には熱安定性の生体分子抵抗性表面は、本明細書に記載するIgG試験による測定した時に、本明細書に記載するような熱に対する暴露後に、熱への暴露前の同じ表面のIgG吸着の約2倍未満の吸着を有する膜である。熱への暴露後の生体分子吸着の減少は、変化が本来は小さい時に試験法における変動により見られるかもしれない。また減少効果を与える至適された組成もあるかもしれない。本発明の内容では、生体分子抵抗性はIgG試験で測定する。代表的な熱への暴露は135℃で2時間の乾式加熱、および124℃で1時間の湿式加熱で行う。熱安定性の生体分子抵抗性表面は、熱表面に対して非暴露の約2倍未満のIgG吸着を有するものである。
【0143】
当該技術分野の熟練者は一般に生体分子吸着に対する抵抗性を望む場合、表面の親水性を最大にするように努めると仮定すると、実施例2−1〜2−7において親水性のジメチルアクリルアミドモノマーを含む親水性が低いモノマーの使用が全体的な生体分子抵抗性の向上を与えることはさらに驚くべきである。以下の表7はPの値、本発明で使用する代表的モノマーに関するオクタノール−水分配係数を与える。Pは化合物をオクタノール−水の2相抽出にかけた時、水性相中の濃度に対するオクタノール相中の濃度の比率に等しい。より高いP値はより疎水性の化合物であることを示す。
【0144】
【表7】

【0145】
モノマーに関するP値はChemPlus(商標)ソフトウェア(ハイパーキューブ社(HyperCube,Inc.、ウォータールー、オンタリオ州)を使用して算出した。次いでモノマーP値を使用して実施例1および3の架橋化ターポリマーに関する混合P値を算出した。混合P値はそのP値を設定した時のモノマーのマスフラクション(mass fraction)の和であった。混合P値は生成したポリマーの親水性の尺度であり、ポリマーはより高い値ほど親水性が低い。
【0146】
表8は混合P値、乾式加熱(135℃で2時間)およびオートクレーブ(124℃の蒸気に1時間)に暴露した後のタンパク質結合を表す。この表中のすべての実施例において、N,N−メチレンビス−アクリルアミドが架橋形成モノマーである。
【0147】
【表8】

【0148】
これらの実施例は本発明を限定するために示すのではなく、乾燥または湿潤熱への暴露のいずれかの後のタンパク質結合によりここに示されるような生体分子吸着に対する抵抗性の熱安定性がより疎水性のモノマーを架橋化ターポリマーに包含することにより向上するという驚くべき考察を具体的に説明する。具体的にはこの結果はMBAmおよびDMAmを用いて作成したポリマーは、これらのモノマーおよびより親水性のモノマーを用いて作成した架橋化ターポリマーよりも多いタンパク質を結合することを示す。同様にNVPおよびMBAmからの架橋化ポリマーは、NVP、MBAmおよびDACAmを用いて作成した架橋化ターポリマーよりも熱暴露後により多い結合を有する。
【実施例5】
【0149】
比較例1
ザルトリウス(Sartorius)のHydrosart0.2μセルロース膜
Hydrosart0.2μセルロース膜をザルトコンスタック(Sartocon stack)から取り出した。エタノールをMilliQ(商標)水で洗い流した。過剰なMilliQ(商標)水で3回洗浄した後、膜サンプルを乾燥し、そして赤外線により分析した。IRおよび走査型電子顕微鏡は膜がセルロース紙の支持体上の再生したセルロースから成ることを示した。
【0150】
アルカリ安定性
洗浄し、しかし乾燥していない膜をアルカリ安定性試験に供した。塩基処理後 対 前の流れ時間の比は1.06であった。これはこの基準に従い、膜がアルカリ抵抗性であることを示す。
【0151】
タンパク質結合
膜は標準的なIgGプロトコールを使用してタンパク質結合について試験した。値は
Asは:183マイクログラム/cm
135℃で2時間の乾式加熱:191マイクログラム/cm
オートクレーブ:204マイクログラム/cm
【0152】
全有機炭素(TOC)
47mmディスクを30分間、MilliQ(商標)水で洗浄した。このMilliQ(商標)水を取り替え、そして膜をさらに24時間洗浄した。各個別のディスク全体に、約13ポンド/inの圧力勾配下で全275ccのMilliQ(商標)水を流した。これらの膜をTOCについて試験した。これらの膜を一緒の群とし、そしてオートクレーブ無しでTOCについて試験し、そして3枚の膜を一緒の群とし、そしてオートクレーブ後のTOCについて試験した(本発明の膜はオートクレーブ後にTOCについて試験した)。実験を繰り返して結果を確認した(表9):
【0153】
【表9】

【0154】
この実験ではHydrosart膜を低いTOC値まで流すことができるが、オートクレーブ操作が大量の抽出分を生成することを示す。本発明の膜はオートクレーブ後にこの規模の抽出分を生じない。
【実施例6】
【0155】
比較例#2
ザルトリウスのSartobran 0.2μ酢酸セルロース膜
SartobranP 0.2μセルロース膜をザルトコンスタックから取り出した。膜をMilliQ(商標)水で洗浄した。過剰なMilliQ(商標)水で3回洗浄した後、膜サンプルを乾燥し、そして赤外線により分析した。IRおよび走査型電子顕微鏡は膜がポリエチレンテレフタレートの支持体上の酢酸セルロースから成ることを示した。
【0156】
アルカリ安定性
洗浄し、しかし乾燥(driec)していない膜をアルカリ安定性試験に供した。塩基処理後 対 前の流れ時間の比は8.20であった。これはこの基準に従い、膜がアルカリ処理に対して安定ではないことを示す。
【0157】
タンパク質結合
膜は標準的なIgGプロトコールを使用してタンパク質結合について試験した。値は
Aは:62マイクログラム/cm
135℃で2時間の乾式加熱:64マイクログラム/cm
オートクレーブ:100マイクログラム/cm
【0158】
全有機炭素(TOC)
47mmディスクを30分間、MilliQ(商標)水で洗浄した。このMilliQ(商標)水を取り替え、そして膜をさらに24時間洗浄した。膜は標準的なオートクレーブ法を使用してTOCについて試験した。この試験は2.35マイクログラム/cmの値を与えた。
【0159】
本発明は多孔質膜に関して具体的に説明してきたが、本発明の方法は本明細書に記載する苛性アルカリ抵抗性、熱安定性の生体分子抵抗性面を有する種々の製品の調製にも応用できる。すなわち幾つかの好適な態様では、本発明は本明細書に記載する苛性アルカリ抵抗性、熱安定性の生体分子抵抗性ターポリマー面を有する製品の調製法を提供する。幾つかの態様では、この方法は製品の表面を:
(1)アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−ビニルピロリドンから成る群から選択される少なくとも2つの単官能価モノマー;および
(2)多官能価アクリルアミド、多官能価メタクリルアミドおよびジアクロイルピペラジンからなる群から選択される少なくとも1つの多官能価モノマー
を含む反応物溶液と接触させ;該溶液は場合によりさらに1以上の重合開始剤を含んでなり;
該モノマーを重合して熱安定性の生体分子抵抗性表面を製品の表面上に形成し;そして場合により製品を洗浄する、
ことを含んでなる。
【0160】
当業者は本発明が広い応用性を、例えばバイオテクノロジー産業、例えば生物学的溶液と接触することになる装置に有すると考えるだろう。
【0161】
HMDAA例
0.2μの疎水性PVDF Durapore膜を表面修飾するために使用した混合アクリルアミド組成は、HMDAA(RおよびR=CHOH)で成分を段階的に置き換えることにより変えた。組成は以下の表10に示す:
【0162】
【表10】

【0163】
組成1〜3は10、50および100%でDACAmの置き換えを示し、一方4〜6は
10、50および100%でMBAmの置き換えを示す。湿潤性およびタンパク質結合は(a)形成した時;(b)は135℃で乾式加熱;そして(c)はオートクレーブにかけて試験した。
【0164】
対照に対して、すべての試験膜は乾式加熱後によりよく濡れた。乾式加熱した対照は2分間にわたりゆっくりと濡れたが、試験サンプルは1〜10秒の時点で濡れた。すなわちたとえDACAmまたはMBAmのいずれかを10%交換しただけでも乾燥湿潤性が強化された。
【0165】
組成6はMBAmを含まないが、4%より多くの重量%の増加を示し、架橋形成剤としてHMDAAが強化された湿潤性を付与することが確認された。
【0166】
タンパク質結合実験はすべての膜の「形成時(as formed)」のタンパク質結合は低いことを示した。DACAmを組成から除くと、高い乾燥熱タンパク質結合を生じる。しかしDACAmが2.25%で存在する時、すべての膜は乾燥熱後に低い結合を示す。結果を図3および4に示す。
【0167】
本明細書で引用して挙げた参照とする研究、特許、特許出願および科学文献、ならびに他の印刷された出版物は全部、本明細書に編入する。
【0168】
当業者は本発明の精神から逸脱することなく、多くの変更および修飾を本発明の好適な態様に対して行うことができると考えるだろう。すべてのそのような変更は本発明の範囲に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

式中、R及びRはそれぞれ独立してHまたはCHOHである、
で表される少なくとも1つのヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド(HMDAA)モノマーを含んでなる表面コーティングを有するポリマー膜。
【請求項2】
及びRがそれぞれCHOHである請求項1に記載の膜。
【請求項3】
コートされたポリマー膜の製造方法であって、
a.多孔質の膜支持体を提供し;
b.該多孔質膜支持体を湿潤液体で洗浄して膜の表面を湿潤させておいてもよく;
c.該湿潤させた多孔質膜支持体を第2の湿潤液体で洗浄して第1の湿潤液体と置き換え、該多孔質膜支持体を該第2液体で湿潤させておおいてもよく;
d.該多孔質膜支持体の表面を:
1以上の単官能性モノマー、および

【化2】

式中、R及びRはそれぞれ独立してHまたはCHOHである、
で表されるヒドロキシメチルジアセトンアクリルアミド(HMDAA)モノマーの少なくとも1種のモノマーを含む溶液と接触させ、そして
e.該モノマーを重合して該コートされた膜を形成する、
工程を含んでなる、製造方法。
【請求項4】
及びRがそれぞれCHOHである請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−59427(P2010−59427A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236567(P2009−236567)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【分割の表示】特願2002−585068(P2002−585068)の分割
【原出願日】平成14年4月26日(2002.4.26)
【出願人】(503383631)ミリポア・コーポレーシヨン (2)
【Fターム(参考)】