説明

新規なジヒドロキシクォーターフェニル化合物及びその原料化合物

【課題】新規な4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルの提供。それを製造するための、直接原料である4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンを提供すること。
【解決手段】
式(1)の4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニル。 式(1)


と式(2)の4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン。
式(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端のヒドロキシフェニル基に共にフェニル基を有する新規な4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル化合物及びその原料化合物である4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類は、それ自体、液晶表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂原料として有用であり、近年その化合物性能の改良が種々要求されてきている。
これらの中でも、樹脂原料として十分に使用可能な反応性を有し、しかもこれを原料とした樹脂は機械的強度や耐熱性に優れると共に、同時に他の特性、特に難燃性の改良もできる4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類の提供が望まれている。
【0003】
また、4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類に関しては、置換のない化合物又はそのアルキル置換体については、いくつかの化合物が知られている。例えば、Journal of Chemical Research,Synopses(7) 318-3191996 に、3,5,3''',5'''−テトラ−t−ブチル−4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルが記載されている。このようなクォーターフェニル化合物は、立体的に嵩高いt−ブチル基が3,5位にあることで4位のヒドロキシル基の反応性が著しく低下することが容易に予想され、例えばヒドロキシル基の反応性を利用した樹脂原料としては適さない。
【0004】
例えば、本出願人出願の特開2005−247809号公報には、3,3'''−ジアルキル−4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類が記載が示されている。このようなクォーターフェニル化合物は、例えば前記樹脂原料として適してはいるが、側鎖にアルキル基を持つため難燃性改良の観点からは満足できるものではない。
また、特開平2-212449号公報には、4,4'−ジヒドロキシ−3−フェニル−p−ターフェニルが記載されているが、このようなフェニル基置換ターフェニル化合物は、溶解性等で優れているものの非対称性であるので、4位と4’’位のヒドロキシル基の反応性に差があり、例えば前記樹脂原料としては満足できるものではない。
また、4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類の工業的に有利な製造方法としては、相当する4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンを原料とし、これを脱水素する製造方法が収率や反応条件等の点から有利であり、そのような中間体としての4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンもまた、同様に満足できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、上記のような要望を満足する、樹脂原料として十分に使用可能な反応性を有し、しかもこれを原料とした樹脂は機械的強度や耐熱性に優れると共に、同時に他の特性、特に難燃性の改良もできる4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルは知られていない。また、そのような4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルの、相当する中間体である4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンもまた、知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記した化合物を見出すべく鋭意検討した結果、両末端のフェニル核に、アルキル置換基を有せず、しかもヒドロキシ基に対し、オルト位にフェニル基を持つ4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル及びその中間原料化合物としての4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンがこのような目的を満たすこと、またこのような化合物は従来知れていないことを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、下記式(1)で表される4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルが提供される。
式(1)

【0007】
また、本発明によれば、下記式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンが提供される。
式(2)

【発明の効果】
【0008】
本発明の4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルは、アルキル置換基を有せず、しかもp−クォーターフェニル骨格にフェニル基を二つ有するので、これを原料としてポリエステルイミド、エポキシ等の樹脂を合成した場合、得られる樹脂の難燃性が向上すると共に、機械的強度や耐熱性も優れている。
また、4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル分子中の置換基が対称に存在することによって、両末端のフェニル核に置換する4位と4'''位のヒドロキシル基が同等の反応性を有しており、化合物の溶媒への溶解性もアルキル基置換体と同等であることから合成樹脂原料として用いるのに適している。
【0009】
さらに、4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン は高価なハロゲン化芳香族炭化水素化合物を一切使用せず上記4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルを製造できる原料として有用であると共に、当該化合物自体を直接原料にして、ポリエステルイミド、エポキシ等の樹脂を合成した場合には、従来公知の4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンと比較して、耐熱性や難燃性の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルは、下記式(1)で表される4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルである。
式(1)

【0011】
また、本発明の4,4'−ジ(ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセンは、下記式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンである。
式(2)

【0012】
本発明における前記式(1)で表される4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルの製造方法は、とくに限定されるものではないが、例えば、前記式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンを直接原料とし、溶媒中、触媒の存在下に、脱水素することによって高純度に、収率良く製造することができる。下記に、溶媒として水素受容体化合物を用いた場合の反応を反応式(1)で示す。
【0013】
反応式(1)

【0014】
本発明の上記製造方法において、原料として使用することができる、本発明の今ひとつの化合物である式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンは、精製した高純度のものでもよく、また、粗製品であってもよい。粗製品としては、例えば後記する4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの熱分解によって得られた反応混合物を、熱分解においてアルカリ触媒を用いた場合には、得られた反応混合物に酸を加えてアルカリを中和した後、反応混合物に晶析濾過等の精製を施すことなく、中和後の反応混合物から水層を分離して得られた4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンを含む油層(粗製品)をそのまま脱水素反応の原料として用いてもよい。反応工程の簡略化の観点からはこのような粗製品を用いるのが好ましい。
【0015】
また、脱水素触媒としては、従来より知られている脱水素触媒を用いることができる。従って、例えば、ラネーニッケル、還元ニッケル、ニッケル担持触媒等のニッケル触媒、ラネーコバルト、還元コバルト、コバルト担持触媒等のコバルト触媒、ラネー銅等の銅触媒、酸化パラジウム、パラジウム黒、パラジウム/カーボン等のパラジウム触媒、プラチナ黒、プラチナ/カーボン等のプラチナ触媒、ロジウム触媒、クロム触媒、銅クロム触媒等が用いられる。これらの中では、特にパラジウム等の白金族触媒が好ましく、特にパラジウム触媒が好ましく用いられる。
【0016】
このような脱水素触媒は,原料である4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンの100重量部に対し、通常、1〜50重量部、好ましくは5〜20重量部の範囲で用いられる。
上記脱水素反応においては、水素受容体を共存させても良く,また共存させなくても良いが、より高収率にて目的物を得るためには、水素受容体を共存させることが好ましい。このような水素受容体としては,特に限定されるものではないが,例えば、α−メチルスチレン等のスチレン類、ニトロベンゼン、メチルイソブチルケトン、フェノール等が好ましく用いられる。
【0017】
4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンの脱水素反応は、気相においても行うことができるが、操作性の点から、好ましくは、溶液状で行うのが好ましく、その際、反応を円滑に進行させるため、溶媒を用いるのが好ましい。
この場合、上記した水素受容体を添加する場合には、水素受容体が同時に溶媒となる場合は、溶媒は用いてもまた用いなくてもよい。 溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、2−オクタノン、2−トリデカノン、等の脂肪族ケトン類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、グリセリン等の多価アルコール類等が挙げられる。これらのうち、好ましくはメチルイソブチルケトン等のケトン類である。
【0018】
溶媒の量は、4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンの100重量部に対し、通常10〜1000重量部、好ましくは、200〜800重量部の範囲で用いられる。また、脱水素反応の反応温度は、通常、100〜250℃の範囲であり、好ましくは、130〜200℃の範囲である。反応は、好ましくは、常圧下で行われる。
【0019】
このような反応条件において、4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンの脱水素反応は,通常、5〜10時間程度で完結し、本発明の4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルを得ることができる。
4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンに対する収率は,通常70%ないしそれ以上である。
脱水素反応で得られた反応混合物は、常法に従って、触媒を分離した後、晶析濾過等の方法によって、本発明の4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルの粗製品を得ることができる。これを更に必要に応じて、再度、晶析濾過等の方法にて精製すれば,高純度品を得ることができる。
【0020】
本発明の上記式(1)で表される化合物の直接原料として用いることもできる式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンの製造方法については、特に限定されるものではないが、例えば、下記反応式(2)に示すように、特開2000−34248号公報に記載の方法に従って、酸触媒の存在下に4,4’−ビシクロヘキサノンとo−フェニルフェノールを反応させて得られた式(3)で表される4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンを原料とし、これを触媒の存在下に、又は不存在下に熱分解することにより製造することができる。
【0021】
反応式(2)

【0022】
上記式(3)で表される4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの熱分解反応に際し、触媒が用いられる場合、触媒としてはアルカリ触媒が用いられる。アルカリ触媒としては、特に、限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド、水酸化マグネシウム又は水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中では、特に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0023】
このように、アルカリ触媒を用いる場合は、アルカリ触媒は、4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン100重量部に対して、通常、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜15重量部の範囲で用いられる。触媒の使用形態は、特に制限はないが、仕込み操作が容易である点から、好ましくは、10〜50重量%の水溶液として用いられる。
また、上記4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの熱分解に際しては、好ましくは、溶媒の存在下に行われる。
【0024】
上記溶媒としては、熱分解温度において不活性であり、しかも、反応混合物から溜出しない溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール類、グリセリン等の多価アルコール類が用いられる。
また、市販の有機熱媒体である「サームエス」(新日鉄化学株式会社製)又は「SK−OIL」(綜研化学株式会社製)等も用いられる。
このような溶媒は、用いる4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン100重量部に対して、通常、5〜1000重量部、好ましくは、10〜500重量部の範囲で用いられる。
4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの熱分解は、通常、150〜300℃の範囲、好ましくは、180〜250℃の範囲の温度で行われる。
【0025】
また、熱分解の反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常、常圧ないし減圧下の範囲であり、例えば、1〜760mmHg(abs)の範囲、好ましくは、10〜50mmHg(abs)の範囲である。
このような反応条件において、4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの熱分解は、通常、1〜6時間程度で終了する。熱分解反応は、例えば、分解反応によって生成するo−フェニルフェノールの溜出がなくなった時点をその終点とすることができる。
【0026】
好ましい態様によれば、例えば、反応容器に4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、テトラエチレングリコール等の溶媒を仕込み、温度190〜220℃、圧力10〜50mmHg(abs)で3〜6時間程度、分解反応によって生成したo−フェニルフェノールを溜去しながら、撹拌することによって行われる。このようにして、4,4,4’,4’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンを熱分解することによって一般式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンを、通常、80%程度の反応収率にて得ることができる。
【0027】
また、上記の方法で得られた一般式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンは、本発明における一般式(1)で表される4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニルの原料として用いる場合、上記精製した高純度のものでもよいが、上記4,4,4’,4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類の熱分解によって得られた反応生成混合物を、熱分解においてアルカリ触媒を用いた場合には、得られた反応混合物に酸を加えてアルカリを中和した後、反応生成混合物に晶析濾過等の精製を施すことなく、中和後の反応混合物から水層を分離して得られた4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンを含む油層(粗製品)をそのまま脱水素反応の原料として用いてもよい。
脱水素反応で得られた反応混合物は、常法に従って、触媒を分離した後、晶析濾過等の方法によって、本発明の4,4'''−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類の粗製品を得ることができる。これを更に必要に応じて、再度、晶析濾過等の方法にて精製すれば,高純度品を得ることができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
〔実施例1〕
4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン(式2)の合成;
還流器及び滴下ロートを備えた2L容量の四つ口フラスコに、o−フェニルフェノール603.1g、メタノール27.8g、トルエン60.3gおよびドデシルメルカプタン7.8gを仕込み、塩酸ガスで容器内を置換した後、フラスコ内温を40〜45℃に保ちながらo−フェニルフェノール77.7g、メタノール50g、ビシクロヘキシル−4,4'−ジオン77.7gの混合液を1時間かけてフラスコ内に滴下して、撹拌下に反応を行った。滴下終了後、撹拌下に更に40〜45℃で6時間反応した。反応終了後、16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。次いで、この溶液にトルエン、メチルイソブチルケトン、メタノールを添加した後、水層を除去し、得られた油層に水を加えて60℃で攪拌して水洗した後、水層を除去する操作を数回行った。フラスコに備えた還流器を留出管に付け替え、水洗後の油層を濃縮後、これに48%水酸化ナトリウム水溶液6.0g、テトラエチレングリコール50gを加えて200℃まで昇温後、同温を保ちながら内圧が20mmHgになるまで減圧し、同温で、生成したo−フェニルフェノールを留出させながら、8時間30分撹拌下に反応を行った。得られた残渣液を冷却後、酢酸、メチルイソブチルケトンおよび水を加えて中和し、その後水層を抜き取った。次いで得られた油層に水を加えて撹拌して水洗した後、水層を除去する操作を2回行い、水洗後の油層を濃縮した後、トルエンを加えて室温下まで冷却し、析出した結晶を濾別・乾燥して目的の4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエンを82.1g得た。原料のビシクロヘキサンジオンに対して41.2%の収率であった。
純度;95.1% (高速液体クロマトグラフィー分析法)
融点;180℃ (示差走査熱量測定法(DSC))
1H−NMR分析(400MHz、溶媒:DMSO−d6)


式4
【0030】
【表1】

【0031】
〔実施例2〕
4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニル(式1)の合成;
実施例1で得られた4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン19.9g、α−メチルスチレン28.3g、5%パラジウム(カーボン担持)2.0g(50%wet品)およびメチルイソブチルケトン119.4gを500mlオートクレーブに仕込み、撹拌下に150℃で10時間反応を行った。冷却後、触媒を濾別し、濾液を濃縮した後、トルエンを加えて室温下まで冷却した。析出した結晶を濾別・乾燥して目的物の4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニル12.3gを得た。原料のビシクロヘキセンに対して62.8%の収率であった。
純度;98.9% (高速液体クロマトグラフィー分析法)
融点;251℃ (示差走査熱量測定(DSC)法)
分子量;489.2(M-H)- (質量分析法)
1H−NMR測定 (400MHz、溶媒:DMSO−d6)


式5
【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される4,4'''−ジヒドロキシ−3,3'''−ジフェニル−p−クォーターフェニル。
式(1)

【請求項2】
下記式(2)で表される4,4'−ジ(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン。
式(2)


【公開番号】特開2010−116329(P2010−116329A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289004(P2008−289004)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】