説明

新規なスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcusaureus)プロテインAベースのリガンドを含むクロマトグラフィーマトリックス

【課題】アルカリ条件を用いた処理の後における標的分子に対する結合能を低減させない、プロテインA(SpA)ベースのクロマトグラフィーマトリックスの提供。
【解決手段】スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインAなどの免疫グロブリン結合タンパク質の1つ以上のドメインをベースとするリガンドを含むクロマトグラフィーマトリックス、およびこれらを使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全容が本明細書に組み込まれている、2011年6月8日付で出願された米国仮特許出願第61/494,701号の優先権の利点を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)プロテインA(SpA)などの免疫グロブリン結合タンパク質の1つ以上のドメインをベースとするリガンドを含むクロマトグラフィーマトリックス、およびこれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するリガンドは、典型的に標的分子に対する高い選択性をもたらし、それによって標的分子の高い収率、高い純度、ならびに迅速および経済的な精製をもたらす。スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAベースの試薬およびクロマトグラフィーマトリックスは、抗原に対する免疫グロブリンのアフィニティーに著しく影響を与えずにIgGと結合するその能力により、抗体およびFc含有タンパク質の捕捉および精製のためのアフィニティークロマトグラフィーの分野において、ならびに分析規模の抗体検出法において広範囲の用途が見出されている。
【0004】
したがって、プロテインA−リガンドを含む様々な試薬および媒体が開発されており、例えば、ProSep(登録商標)−vA High Capacity、ProSep(登録商標)vA UltraおよびProSep(登録商標)UltraPlus(MILLIPORE)ならびにProtein A Sepharose(商標)、MabSelect(商標)、MabSelect Xtra(商標)、MabSelect SuRe(商標)(GE HEALTHCARE)、MabSelect SuRe(商標)LXおよびPoros MabCapture A(商標)(LIFE TECHNOLOGIES)が市販されている。
【0005】
SpA結合クロマトグラフィーマトリックスなどの、リガンド結合固形担体を含むクロマトグラフィーリガンドの選択性を維持するため、マトリックスを洗浄しなければならず、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて、酸性またはアルカリ条件下において典型的には洗浄される。例えば、マトリックスの洗浄および復元に使用される標準的なプロセスは、pH範囲12.7−14.0をもたらす0.05Mから1Mの範囲のNaOH濃度でのリガンド結合マトリックスの処理を典型的に含む、定置洗浄(CIP)アルカリ手法である。典型的には、反復CIPサイクルへのアフィニティークロマトグラフィーマトリックスの曝露は、標的分子に対するマトリックスの結合能の著しい消失を経時的にもたらし、非常に高価であることが多い、マトリックスと結合するリガンドの多量の使用をプロセスを通じて必要とする。これは、より高価で長々とした精製プロセスをもたらすので、不経済であると同時に、望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
アルカリ条件を用いた処理の後における標的分子に対する結合能の消失に低減を示すようである、プロテインAベースのクロマトグラフィーマトリックスが当技術分野で以前に記載されている。例えば、5時間以上の0.5M NaOHへの曝露の後でさえ最大95%の初期結合能を示す、マトリックスと多点結合し、SpAの野生型(wt)BまたはZドメインを取り込んだアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを記載する、米国特許公開第20100221844号を参照。さらに、米国特許公開第20100048876号は、約5時間の0.5Mへの曝露の後に最大95%の初期結合能を示すようである、SpAの野生型Cドメインおよびアミノ酸残基3から6の欠失を含有するCドメインを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスを記載する。これらのリガンドは、マトリックスとのシステイン誘導単一点結合によって固定される。さらに、タンパク質の1つ以上のアスパラギン残基に突然変異を含有するプロテインAドメインを取り込み、マトリックスがアルカリ条件への曝露の後に、野生型SpAに対する結合能の消失に低減を示すようであり、単一点結合によってマトリックスに固定されているようである、クロマトグラフィーマトリックスが記載されている。例えば、米国特許第6,831,161号を参照。
【0007】
前述のアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、苛性条件への曝露の後に、標的分子に対する結合能の消失に低減を示すようであるが、これらのマトリックスのいくつかは、苛性条件への曝露の後に、例えばSDS−PAGEおよび/またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して観察される高度のリガンド断片化を示すようである。このような断片化は望ましくない。高度のリガンド断片化は、標的分子から除去および分離するのが一層困難である、リガンドのより小さな断片が存在する結果となり、それによってこのようなおそらく免疫原性がある断片が治療標的分子と共に精製される可能性が高まるからである。さらに、高度の断片化は、標的分子に対するマトリックスの結合能の多大な消失をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はリガンドが、ドメインの位置1または位置2で始まる、N末端からの欠失を有する1つ以上のスタフィロコッカス・アウレウスプロテインA(SpA)ドメインをベースとする、アフィニティークロマトグラフィーリガンドおよびこれらを取り込んだマトリックスを提供する。これらのリガンドおよびマトリックスは、SDS−PAGEおよび/またはSEC技法によって証明されるように、前に記載したリガンドのいくつかに対して精製用途中に低減した断片化を示し、それによってこれらはアフィニティークロマトグラフィーにおける使用に一層魅力的で経済的な候補となる。
【0009】
本発明による一態様において、欠失を有するSpAの1つ以上のBドメイン、欠失を有するSpAの1つ以上のCドメイン、または欠失を有するSpAの1つ以上のZドメインを含み、1つ以上のドメインが固形担体と結合されている、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。
【0010】
一実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは固形担体と結合されているリガンドを含み、リガンドはスタフィロコッカス・アウレウスプロテインA(SpA)の1つ以上のBドメインを含み、少なくとも1つのBドメインはN末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは固形担体と結合されているリガンドを含み、リガンドはスタフィロコッカス・アウレウスプロテインA(SpA)の1つ以上のCドメインを含み、少なくとも1つのCドメインはN末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0011】
さらに別の実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは固形担体と結合されているリガンドを含み、リガンドはスタフィロコッカス・アウレウスプロテインA(SpA)の1つ以上のZドメインを含み、少なくとも1つのZドメインはN末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0012】
さらに他の実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは固形担体と結合されているリガンドを含み、リガンドは、2つ以上のBドメイン、2つ以上のCドメイン、または2つ以上のZドメイン、またはB、CおよびZドメインの任意の組合せを含み、B、CまたはZドメインの少なくとも1つはN末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0013】
本発明による様々な実施形態において、各リガンド上の2箇所以上の部位が固形担体と結合する(すなわち、多点結合)。
【0014】
本発明による様々な実施形態において、リガンドは、少なくとも5時間0.5M NaOHへの、リガンドまたはリガンドを含有するマトリックスの曝露の後に、SDS−PAGEまたはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定して、その野生型対応物と比べて、低減した断片化を示す。
【0015】
本発明によるいくつかの実施形態において、リガンドはN末端からの3アミノ酸の欠失、N末端からの4アミノ酸の欠失、またはN末端からの5アミノ酸の欠失を含み、リガンド上の2箇所以上の部位が固形担体と結合し、それによってアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを形成する。
【0016】
特定の実施形態において、リガンドは配列番号13−42、配列番号55−84および配列番号93−94のいずれかに記載のアミノ酸配列を有する。
【0017】
別の実施形態において、本発明によるリガンドは、以下の構造:[(X)、(Y)n+m(式中、XがSpAのBドメイン、ZドメインまたはCドメインを表し、nがゼロから(m−1)の範囲のドメイン数を表し、YがN末端から欠失した少なくとも3つの連続アミノ酸を有するSpAのBドメインまたはZドメインまたはCドメインを表し、mが1から8の範囲のYドメイン数を表す)を有し、リガンド上の2箇所以上の部位が固形担体(例えば、クロマトグラフィーマトリックス)と結合している。
【0018】
本発明によるいくつかの実施形態において、リガンドは、SpAの、2つのBドメインもしくは2つのZドメインもしくは2つのCドメイン、または1つのBドメインと1つのCドメイン、もしくは1つのBドメインと1つのZドメイン、もしくは1つのCドメインと1つのZドメインを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。様々なドメインを任意の順序で配置してよいことは理解される。
【0019】
別の実施形態において、本発明によるリガンドは、3つのBドメインまたは3つのZドメインまたは3つのCドメイン、または任意の順序でB、CもしくはZドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0020】
さらに別の実施形態において、本発明によるリガンドは、4つのBドメインまたは4つのZドメインまたは4つのCドメイン、または任意の順序でB、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0021】
さらに別の実施形態において、本発明によるリガンドは、5つのBドメインまたは5つのZドメインまたは5つのCドメイン、または任意の順序でB、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0022】
さらに別の実施形態において、本発明によるリガンドは、6つのBドメインまたは6つのZドメインまたは6つのCドメイン、または任意の順序でB、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0023】
さらに別の実施形態において、本発明によるリガンドは、7つのBドメインまたは7つのZドメインまたは7つのCドメイン、または任意の順序でB、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0024】
さらなる実施形態において、本発明によるリガンドは、8つのBドメインまたは8つのZドメインまたは8つのCドメイン、または任意の順序でB、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0025】
さらに、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを使用する方法を本明細書で提供する。したがって、試料から1つ以上の標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)をアフィニティー精製する方法を提供し、この方法は、(a)1つ以上の標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)を含む試料を提供するステップ、(b)1つ以上の標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)がマトリックスと結合するような条件下において試料と本発明によるマトリックスを接触させるステップ、および(c)例えば適切なpHなどの適切な条件下において、溶出によって1つ以上の結合されている標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)を回収するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、0.5M NaOH中での5時間の、または10時間の、または15時間の、または20時間の、または25時間の、または30時間の温置の後に、標的分子に対するその初期結合能の少なくとも95%を保持する。
【0027】
特定の実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、0.5M NaOH中での5時間の温置の後に、その初期結合能の少なくとも95%を保持する。
【0028】
さらに別の実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、0.1M NaOH中での25時間の温置の後に、標的分子に対するその初期結合能の少なくとも95%、0.3M NaOH中での25時間の温置の後に、標的分子に対するその初期結合能の少なくとも85%、または0.5M NaOH中での25時間の温置の後に、標的分子に対するその初期結合能の少なくとも65%を保持する。
【0029】
本明細書に記載する様々なリガンドによって結合可能である免疫グロブリンには、例えば、SpAと結合可能である、IgG、IgAおよびIgM、または抗体および任意の抗体断片を含む任意の融合タンパク質がある。
【0030】
本明細書に記載する様々なリガンドをコードする核酸分子、およびこのような核酸分子を含む宿主細胞も本明細書で提供する。いくつかの実施形態において、宿主細胞は原核細胞である。他の実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明は、免疫グロブリンのFc部分と結合する能力を保持しながら、野生型SpAリガンドと比較して免疫グロブリンのFab部分との変化した(増大したまたは低下した)結合を示す、SpAベースのアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。一実施形態において、本発明によるSpAベースのマトリックスは、野生型SpAと比較して免疫グロブリンのFab部分との低下した結合を示す。特定の実施形態において、クロマトグラフィーマトリックスは、(SpAのBおよびCドメインの場合)グリシンの代わりに、または(SpAのZドメインの場合)アラニンの代わりに、位置29にリジンを含むSpAリガンドを取り込む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】配列番号1−6によって表される、SpAの野生型(wt)IgG結合ドメインおよびZドメインに関するアミノ酸配列アラインメントを示す図である。
【図2】A29K突然変異を有するダイマーZドメインリガンドをコードする核酸配列、配列番号85で示すアミノ酸配列を含有するプラスミドpET11a(対照)、ならびにA29K突然変異を有するダイマーZドメインリガンドをコードする核酸配列、およびN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を含む第二ドメイン、配列番号78で示すアミノ酸配列を含有するプラスミドpET11aの概略を示す図である。リガンド構築物は、3’末端にヒスタグ配列をさらに含む。
【図3】25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬有りまたは無しでの遊離および固定ダイマーZおよびCリガンドの断片化パターンを分析するための、クマシー染色SDS−PAGEゲルを示す図である。SDS−PACEゲルの様々なレーンの記載は以下の通りである。レーン1:分子量マーカー、レーン2:ダイマーZドメインリガンド、苛性曝露無し(A29K欠失無し、配列番号85で示す、対照として使用しヒスタグを含む)、レーン3:ダイマーZドメインリガンド対照、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン4:ダイマーZドメインリガンド対照、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン5:ダイマーZドメインリガンド、第二ドメインのN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を有する(配列番号78で示す欠失を有する第二ドメインがあるA29Kおよびヒスタグ)、苛性曝露無し、レーン6:ヒスタグを有する配列番号78のダイマーZドメインリガンド、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン7:ヒスタグを有する配列番号78のダイマーZドメインリガンド、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン8:ダイマーCドメインリガンド、欠失無し、対照として使用(配列番号92で示すアミノ酸配列、およびヒスタグを有する)、苛性曝露無し、レーン9:ダイマーCドメインリガンド対照、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン10:ダイマーCドメインリガンド、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン11:ダイマーCドメインリガンド、第二ドメインのN末端からの欠失を有する(配列番号35で示すアミノ酸配列、およびヒスタグを有する)、レーン12:配列番号35のダイマーCドメインリガンドおよびヒスタグ、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、ならびにレーン13:配列番号35のダイマーCリガンドおよびヒスタグ、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す。
【図4】前の図3の記載中に要約したダイマーZおよびCリガンドのSEC分析のクロマトグラムを示す図である。x軸は、分単位の保持時間およびより大きな分子の保持時間よりも長い保持時間を有するより小さな分子を示す。y軸は、mAU単位の280nmにおけるUV吸収を表す。長時間の苛性浸漬(すなわち、25時間0.5M NaOH浸漬)後の、第二ドメイン中にN末端欠失を有するダイマーZおよびCドメインリガンドに関する低減した断片化の証拠は、クロマトグラム上のボックスによって示し、ダイマーZおよびCドメイン対照に関する、より小さな断片の存在は矢印によって示す。
【図5】25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬有りまたは無しでの遊離と固定両方のペンタマーZドメインリガンドの断片化パターンを分析するための、クマシー染色SDS−PAGEゲルを示す図である。SDS−PACEゲルの様々なレーンの記載は以下の通りである。レーン1:分子量マーカー、レーン2:ペンタマーZドメインリガンド、A29K突然変異および第一ドメイン以外の全てのN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を有する、そのアミノ酸配列は配列番号84で述べる、苛性曝露無し、レーン3:配列番号84のペンタマーZドメインリガンド、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン4:配列番号84のペンタマーZドメインリガンド、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン5:配列番号91のペンタマーZドメインリガンド、対照として使用、苛性浸漬を施さず、レーン6:ペンタマーZドメインリガンド対照、25時間0.5M NaOH浸漬を施す、レーン7:ペンタマーZドメインリガンド対照、アガロースクロマトグラフィー樹脂上に固定、25時間0.5M NaOH浸漬を施す。さらに、レーン8、9および10はrSPAに同様の処理を施して見られた結果に関するものであり、レーン8はいかなる苛性浸漬も施していないrSPAを表し、レーン9は25時間0.5M NaOH浸漬に施したrSPA、および25時間0.5M NaOH浸漬に施した固定rSPAを表す。矢印によって示すように、バンドは断片化を表す。
【図6】前の図5の記載中に要約したペンタマーZドメインリガンドのSEC分析のクロマトグラムを示す図である。x軸は、分単位の保持時間およびより大きな分子の保持時間よりも長い保持時間を有するより小さな分子を示す。y軸は、mAU単位の280nmにおけるUV吸収を表す。長時間の苛性浸漬後の、第一ドメイン以外の全てにおけるN末端欠失を有するペンタマーZドメインリガンドの場合の、低減した断片化の証拠は、クロマトグラム上のボックスによって示し、ペンタマーZドメイン対照で見られた、より小さな断片の存在は、断片を指す矢印によって示す。さらに、rSPAに関して見られた多量の断片化は、SECを使用して観察することもできる。
【図7】前の図5の記載中に要約した固定ペンタマーZドメインリガンドのSEC分析のクロマトグラムを示す図である。x軸は、分単位の保持時間およびより大きな分子の保持時間よりも長い保持時間を有するより小さな分子を示す。y軸は、mAU単位の280nmにおけるUV吸収を表す。長時間の苛性浸漬後の、第二ドメイン中にN末端欠失を有する固定ペンタマーZドメインリガンドの場合の低減した断片化の証拠は、クロマトグラム上のボックスによって示し、ペンタマーZドメイン対照で見られた、より小さな断片の存在は、断片を指す矢印によって示す。さらに、固定rSPAに関して見られた多量の断片化は、SECを使用して観察することもできる。
【図8】長時間の苛性浸漬後の遊離ダイマーZドメインリガンドのSEC分析のクロマトグラムを示す図であり、リガンドはダイマーリガンドの第二ドメインの最初の1つ(配列番号87)、最初の2つ(配列番号88)、最初の3つ(配列番号69)または最初の4つ(配列番号78)のN末端欠失を含む。x軸は、分単位の保持時間およびより大きな分子の保持時間よりも長い保持時間を有するより小さな分子を示す。y軸は、mAU単位の280nmにおけるUV吸収を表す。長時間の苛性浸漬後に第二ドメインのN末端から欠失した最初の3つまたは最初の4つのアミノ酸を有するダイマーリガンドの場合の低減した断片化の証拠は、ボックスによって示す。アミノ酸欠失がない(配列番号85)または第二ドメインのN末端から最初の1つのアミノ酸が欠失したまたは最初の2つのアミノ酸が欠失したダイマーリガンドの長時間の苛性浸漬後に観察した断片化の存在は、クロマトグラム上の断片の存在を指す矢印によって示す。
【図9】反復した苛性曝露の後に固定Cドメインペンタマーリガンドの保持結合能の比較を示す図であり、1つのペンタマーリガンドは各ドメイン中に4アミノ酸のN末端欠失、各ドメイン中にG29K突然変異、およびペンタマー中に正に第一のアミノ酸としてアラニンを含み(配列番号93で示すアミノ酸配列)、他方のペンタマーリガンドはG29K突然変異を有するその野生型対応物である(そのアミノ酸配列は配列番号95で示す)。x軸は、30分毎の16サイクルにわたる0.7M NaOHへの、クロマトグラフィーマトリックスの累積曝露の時間を表す。y軸は、結合能の保持割合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、1つ以上のSpAドメインをベースとするリガンドを取り込んだアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供し、これらのリガンドは、単独またはマトリックス上への固定時のいずれかで、精製プロセスにおける使用中に、対応する野生型SpAドメインに比べて、低減した断片化を示す。
【0034】
以前に記載された例示的なSpAベースのクロマトグラフィーリガンドには、例えば、SpAの野生型BおよびZドメインを取り込み、リガンド上の2箇所以上の部位がクロマトグラフィーマトリックスと結合されている(すなわち、多点結合)クロマトグラフィーマトリックスを記載する米国特許公開第20100221844号中に記載されたクロマトグラフィーリガンド、いくつかの抗体のFab部分と結合可能であり末端カップリング基を使用して一部位において不溶性担体とカップリングするSpAの野生型Cドメインベースのクロマトグラフィーリガンドを論じる、米国特許公開第20100048876号中に記載されたクロマトグラフィーリガンド、および1つ以上のアスパラギンアミノ酸残基が修飾されたSpAベースアルカリベースのクロマトグラフィーリガンドを論じる、米国特許第6,831,161号中に記載されたクロマトグラフィーリガンドがある。
【0035】
前に論じたように、これらのリガンドは、アルカリ条件への曝露の後に、結合能の消失に低減を示す一方で、いくつかのこれらのリガンド、例えば米国公開第20100221844号中に記載されたリガンドは、精製プロセスにおける使用中に断片化を示し、これは非常に望ましくない。他方で、本明細書に記載するリガンドは、タンパク質精製プロセスにおいて通常使用される再生および定置洗浄(CIP)手法におけるアルカリ条件への曝露の後に、これらが低減した断片化を示す点において、以前に記載されたリガンドと比較してタンパク質精製に関してはるかに魅力的な候補である。
【0036】
本開示をさらに容易に理解することができるように、特定の用語を最初に定義する。追加的な定義は詳細な説明を通じて述べる。
【0037】
I.定義
本明細書で使用する用語「SpA」、「プロテインA」または「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインA」は、細菌スタフィロコッカス・アウレウスから単離した42Kdaのマルチドメインタンパク質を指す。SpAは、Xドメインと呼ばれるそのカルボキシ末端細胞壁結合領域を介して細菌細胞壁と結合する。アミノ末端領域において、それは、E、D、A、B、およびCと呼ばれる5つの免疫グロブリン結合ドメインを含む(Sjodhal、Eur J Biochem.Sep 78(2):471−90頁(1977);Uhlenら、J Biol Chem.Feb 259(3):1695−702頁(1984)。これらのドメインのそれぞれは約58アミノ酸残基を含有し、これらは65−90%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0038】
SpAのE、D、A、B、およびCドメインのそれぞれは異なるIg結合部位を有する。一部位はFcγ(IgのIgGクラスの定常領域)用であり、他の部位は特定Ig分子のFab部分(抗原認識を担うIgの部分)用である。ドメインのそれぞれがFab結合部位を含有することは報告されている。SpAの非Ig結合部分はC末端に位置し、X領域またはX−ドメインで表す。
【0039】
SpAのZドメインはSpAのBドメインを操作したアナログであり、位置1にアラニンの代わりにバリンおよび位置29にグリシン残基の代わりにアラニンを含む(Nilssonら、Protein engineering、Vol.1、No.2、107−113頁、1987)。
【0040】
SpAをコードする遺伝子のクローニングは、参照によりその全容が完全に本明細書に組み込まれている、米国特許第5,151,350号中に記載されている。
【0041】
本発明は、SpAベースのリガンドを取り込んだアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供し、これらのリガンド(遊離と固定リガンドの両方)は、タンパク質精製プロセス中で通常使用される再生およびCIP手法の後、SDS−PAGEおよびSECにより観察される低減した断片化を示す。
【0042】
本発明によるいくつかの態様において、アフィニティーリガンドは1つ以上のBドメインまたは1つ以上のZドメインまたは1つ以上のCドメイン、またはこれらの任意の組合せを含み、少なくとも1つのBドメインまたは少なくとも1つのZドメインまたは少なくとも1つのCドメインは、位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0043】
本発明によるいくつかの実施形態において、アフィニティーリガンドの2箇所以上の部位はクロマトグラフィーマトリックスと結合している(すなわち、多点結合)。特定の実施形態において、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスと結合されているSpAの1つ以上のBドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであって、リガンドの2箇所以上の部位がマトリックスと結合し、少なくとも1つのBドメインが、野生型Bドメイン配列の位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を有する、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。
【0044】
別の実施形態において、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスと結合されているSpAの1つ以上のZドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであって、リガンドの2箇所以上の部位がマトリックスと結合し、少なくとも1つのZドメインが、野生型Zドメイン配列の位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を有する、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。
【0045】
さらに別の実施形態において、本発明は、クロマトグラフィーマトリックスと結合されているSpAの1つ以上のCドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスであって、リガンドの2箇所以上の部位がマトリックスと結合し、少なくとも1つのCドメインが、野生型Cドメイン配列の位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの4つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続アミノ酸の欠失を有する、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、それぞれのドメインがG29K突然変異および位置1で始まる、N末端から欠失した4アミノ酸を含むSpAの5Cドメイン、ならびにタンパク質の同種の翻訳後プロセシングを容易にするための第一アミノ酸として追加のアラニンを含むペンタマー型を含む、アルカリ安定性アフィニティークロマトグラフィーリガンドを提供する。
【0047】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するSpAリガンドは、(BおよびCドメインの場合)リジンアミノ酸残基で置換された位置29のグリシンアミノ酸残基、または(Zドメインの場合)リジンアミノ酸残基で置換された位置29のアラニンアミノ酸残基をさらに含む。
【0048】
本明細書で使用する用語「親分子」または「野生型(wt)対応物」または「野生型タンパク質」または「野生型ドメイン」は、本明細書で対照として一般に使用する、そのほぼ天然型の対応するタンパク質(SpA)またはタンパク質のドメイン(例えば、SpAのB、ZまたはCドメイン)を指すものとする。そのほぼ天然型のSpAドメインに対応する本明細書で使用する野生型対応物対照は、対応するSpAドメインから1つのアミノ酸変化を含み、Fab結合を改変し得る。しかしながら他は、対応する野生型ドメインと配列が同一である。本発明によるリガンドは、本明細書の実施例中に論じた実験により証明されたように、それらの野生型対応物(すなわち、完全に野生型またはFab結合を改変するための突然変異を含む)に比べて、低減した断片化を示す(遊離と固定型両方の場合)。様々な実施形態において、本発明によるBドメインまたはCドメインベースのリガンドの野生型対応物は、SpAの野生型BドメインまたはSpAの野生型Cドメインであり、それらのアミノ酸配列はそれぞれ配列番号3および配列番号4で述べる。特定の実施形態において、Zドメインベースのリガンドの野生型対応物は、配列番号6で述べるZドメインアミノ酸配列である。特定の実施形態において、B、CまたはZドメインの野生型対応物は、ドメインのFab結合を改変するための位置29における突然変異以外、前述のB、CまたはZドメインの配列とほぼ同一である。したがって、特定の実施形態において、Bドメインベースのリガンドの野生型対応物は配列番号45で述べるアミノ酸配列(G29K)を含み、Cドメインベースのリガンドの野生型対応物は配列番号46で述べるアミノ酸配列(G29K)を含み、Zドメインベースのリガンドの野生型対応物は配列番号48で述べるアミノ酸配列(A29K)を含む。さらに、本発明によるリガンドが2つ以上のドメインを含む場合、対応する野生型対応物は同数のドメインを含むが、しかしながらFab結合を改変するための突然変異を含み得る。したがって、特定の実施形態において、本発明によるペンタマーCドメインリガンドの野生型対応物は、配列番号95または配列番号96で述べるアミノ酸配列を含む。
【0049】
用語「配列同一性」は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、デフォルトギャップ加重値を使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適にアラインメントをとるとき、少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも85%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を共有することを意味する。配列比較用に、典型的には一配列が、試験配列と比較する参照配列(例えば、親配列)として作用する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験配列と参照配列はコンピュータへの入力値であり、必要な場合は部分列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。したがって配列比較アルゴリズムは、指定プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する(1つ以上の)試験配列の配列同一性百分率を計算する。
【0050】
比較用配列の最適アラインメントは、例えば、Smith & Waterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法によって、コンピュータによるこれらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)の実行によって、または外観検査(Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biologyを一般に参照)によって実施することができる。配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの一例は、Ausubelら、J.Mol.Biol.215:403(1990)中に記載されるBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを介して公に利用可能である(National Institutes of Health NCBlインターネットサーバを介して公にアクセス可能である)。典型的には、デフォルトプログラムパラメータを使用して配列比較を実行することはできるが、カスタマイズドパラメータを使用することもできる。アミノ酸配列用に、BLASTPプログラムは、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)参照)。
【0051】
本明細書で互換的に使用する用語「Eドメイン」、「SpAのEドメイン」および「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAのEドメイン」は、そのアミノ酸配列が配列番号1で述べられる、または例えば配列番号7で述べるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。「Eドメイン」は、3ヘリックスバンドル構造にフォールディングする51アミノ酸のポリペプチドである。それは、ヘリックス1および2の表面上の残基を介してFcと、またはヘリックス2および3の表面上の残基を介してFabと結合することができる。
【0052】
本明細書で互換的に使用する用語「Dドメイン」、「SpAのDドメイン」および「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAのDドメイン」は、そのアミノ酸配列が配列番号5で述べられる、または例えば配列番号11で述べるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。「Dドメイン」は、3ヘリックスバンドル構造にフォールディングする61アミノ酸のポリペプチドである。それは、ヘリックス1および2の表面上の残基を介してFcと、またはヘリックス2および3の表面上の残基を介してFabと結合することができる。
【0053】
本明細書で互換的に使用する用語「Aドメイン」、「SpAのAドメイン」および「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAのAドメイン」は、そのアミノ酸配列が配列番号2で述べられる、または例えば配列番号8で述べるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。「Aドメイン」は、3ヘリックスバンドル構造にフォールディングする58アミノ酸のポリペプチドである。それは、ヘリックス1および2の表面上の残基を介してFcと、またはヘリックス2および3の表面上の残基を介してFabと結合することができる。
【0054】
本明細書で互換的に使用する用語「Bドメイン」、「SpAのBドメイン」および「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAのBドメイン」は、そのアミノ酸配列が配列番号3で述べられる、または例えば配列番号9で述べるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。「Bドメイン」は、3ヘリックスバンドル構造にフォールディングする58アミノ酸のポリペプチドである。それは、ヘリックス1および2の表面上の残基を介してFcと、またはヘリックス2および3の表面上の残基を介してFabと結合することができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明によるBドメインベースのリガンドは、例えば配列番号13で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの3アミノ酸の欠失を含む。他の実施形態において、本発明によるBドメインベースのリガンドは、例えば配列番号28で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの4アミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、本発明によるBドメインベースのリガンドは、N末端からの5アミノ酸の欠失を含む(配列示さず)。
【0056】
本明細書で互換的に使用する用語「Cドメイン」、「SpAのCドメイン」、および「スタフィロコッカス・アウレウスプロテインAのCドメイン」は、そのアミノ酸配列が配列番号4で述べられる、または例えば配列番号10で述べるヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。「Cドメイン」は、3ヘリックスバンドル構造にフォールディングする58アミノ酸のポリペプチドである。それは、ヘリックス1および2の表面上の残基を介してFcと、またはヘリックス2および3の表面上の残基を介してFabと結合することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明によるCドメインベースのリガンドは、例えば配列番号14で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの3アミノ酸の欠失を含む。他の実施形態において、本発明によるCドメインベースのリガンドは、例えば配列番号29で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの4アミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、本発明によるCドメインベースのリガンドは、N末端からの5アミノ酸の欠失を含む(配列示さず)。
【0058】
本明細書で互換的に使用する用語「Zドメイン」、「SpAのZドメイン」、および「プロテインAのZドメイン」は、プロテインAのBドメインの変異体である、3ヘリックス、58アミノ酸のポリペプチドを指す。Zドメインのアミノ酸配列は配列番号6で述べ、核酸配列は配列番号12で述べる。例示的なZドメインは、その全容が参照により本明細書に組み込まれているNilssonら、Protein Engr.、1:107−113頁(1987)中に記載される。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明によるZドメインベースのリガンドは、例えば配列番号15で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの3アミノ酸の欠失を含む。他の実施形態において、本発明によるZドメインベースのリガンドは、例えば配列番号30で述べるアミノ酸配列を有するN末端からの4アミノ酸の欠失を含む。別の実施形態において、本発明によるZドメインベースのリガンドは、N末端からの5アミノ酸の欠失を含む(配列示さず)。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するリガンドの2箇所以上の部位は固形担体と結合しており(すなわち、多点結合)、これらのリガンドは、SDS−PAGEまたはSECによって証明されるように、精製プロセスにおける使用中に低減した断片化を示す(遊離と結合リガンド両方の場合)。
【0061】
本明細書で使用する用語「低減した断片化」は、SDS−PAGEゲル上で見られるようにまたはSECによって、精製プロセス中のアルカリ条件への、遊離リガンド分子または固形担体上に固定されたリガンド分子の曝露の後に、リガンドの野生型対応物に比べて、リガンド断片の数および/または強度の低減を指す。いくつかの実施形態において、リガンドは多点結合によって固形担体上に固定する。断片化は、SDS−PAGEゲル上における完全分子に対する低分子量バンドの存在によって、またはSECクロマトグラム上における異なる保持時間を有する異なるピークとして通常検出される。
【0062】
本発明によるSpAリガンドは低減した断片化を示し、これは以下のように検出することができる。例えば、遊離リガンドは25時間0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOHに直接曝すことができ、次に7.0にpH調節し、標準的な手法を使用しSDS−PAGEまたはSECによってその後分析することができる。あるいは、クロマトグラフィーマトリックス上に固定したリガンドを25時間0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOHに曝すことができる。苛性上清はマトリックス(例えば樹脂)から後に分離し、pH7に中和する。次いでこの上清は、標準的な手法を使用しSDS−PAGEまたはSECによって分析することができる。SDS−PAGEの場合、断片の相対光強度は目視で観察することができ、適切な対照(例えば、本明細書に記載するような、SpAの野生型ドメインまたは位置29に突然変異を含有するSpAドメイン)と比較することができる。SECの場合、相対ピーク強度を観察することができ、適切な対照(例えば、本明細書に記載するような、SpAの野生型ドメインまたは位置29に突然変異を含有するSpAドメイン)と比較することができる。
【0063】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスを使用する典型的な精製プロセスは、酸性またはアルカリ溶液、好ましくはアルカリ溶液を利用する用途の各サイクル後にマトリックスの再生を伴う。さらに、典型的なプロセスは、酸性またはアルカリ溶液、好ましくはアルカリ溶液を使用してマトリックスを消毒するCIPステップも伴う。したがって、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、その寿命内で数サイクルの再生およびCIPステップに曝され、それにより経時的に標的分子に対する結合能の著しい消失をもたらすと予想される。
【0064】
本発明によるリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、再生およびCIPステップ中にアルカリ条件への長時間の曝露の後に、それらが経時的に、標的分子に対する結合能の消失に低減を示す点で、精製プロセスにおける使用中に低減した断片化を示すことに加えて、アルカリ安定性である。
【0065】
本明細書で使用する用語「アルカリ安定性の」、「アルカリ安定性」、「苛性安定性の」または「苛性安定性」は、その初期結合能を失わずにアルカリ洗浄を使用した反復再生およびCIPサイクルに耐える、単独またはクロマトグラフィーマトリックス上への固定時いずれかの、本発明によるアフィニティーリガンドの能力を一般に指す。一般に、本発明によるリガンドが固定されたマトリックス自体は、最大30時間0.5M NaOH中に浸漬した後に、安定性の5%未満の変化に貢献すると想定される。例えば、いくつかの実施形態において、本発明によるアフィニティーリガンドは、長時間の間の従来のアルカリ洗浄に耐えることができ、それによってこれらのリガンドは、特にその多くが治療分子である免疫グロブリンおよびFc含有タンパク質のコスト効率のよい大規模精製に関する魅力的な候補となる。
【0066】
いくつかの実施形態において、アルカリ安定性は、0.05M NaOH、0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOH中での5時間の、または10時間の、または15時間の、または20時間の、または25時間の、または30時間の温置の後に、その初期結合能の少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%を保持する、本発明によるリガンドまたは本発明によるリガンドを取り込んだマトリックスの能力を指す。別の実施形態において、アルカリ安定性は、5時間または7.5時間または10時間または15時間または20時間または25時間または30時間の、0.05M NaOH、0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOHを用いた処理後でさえ70%未満、または60%未満、または50%未満、または40%未満、または30%未満の、リガンドの初期結合能の低下を指す。特定の実施形態において、本発明によるリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、5時間の0.5M NaOHへの曝露の後に、その初期結合能の最大95%を保持する。別の実施形態において、本発明によるリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、25時間の0.1M NaOHへの曝露の後に、その初期結合能の最大95%を保持する。さらに別の実施形態において、本発明によるリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、25時間の0.3M NaOHへの曝露の後に、その初期結合能の最大85%を保持する。さらなる実施形態において、本発明によるリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、25時間の0.5M NaOHへの曝露の後に、その初期結合能の最大65%を保持する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明によるSpAベースのクロマトグラフィーマトリックスは、野生型SpAドメインを含むマトリックスと比較して、増大または改善したアルカリ安定性を示す。しかしながら、他の実施形態において、本発明によるSpAベースのクロマトグラフィーマトリックスは、リガンドの野生型対応物を含むマトリックスほどアルカリ安定性ではない。1つのこのような例は、その野生型ペンタマーCドメイン対応物ほどアルカリ安定性ではないSpAのペンタマーCドメインベースのリガンドである。特定の場合において、SpAドメインの野生型と変異体の両方がG29K突然変異を含みFab結合を低減する可能性はあるが、しかしながら、このような突然変異自体はアルカリ安定性に対して影響がないことは理解される(データ示さず)。
【0068】
アルカリ安定性は、通常の実験を使用しておよび/または本明細書に記載するように、当業者により容易に測定することができる。
【0069】
本明細書で使用する用語「初期結合能」は、アルカリ条件にマトリックスを曝す前に単位体積のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス(すなわち、アフィニティーリガンドを含むマトリックス)によって捕捉され得る、標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)の量を指す。
【0070】
本発明によるいくつかの実施形態において、本明細書に記載するリガンドを含む(すなわち、本明細書に記載するN末端欠失を含む1つ以上のSpAのB、ZまたはCドメインを含有する)アフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、苛性条件への長時間の曝露の後、本明細書に記載した対応する野生型SpAドメイン対応物を含有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスに対して、標的分子の初期結合能の5%未満、または6%未満、または7%未満、または8%未満、または9%未満、または10%未満、または12%未満、または15%未満、または17%未満、または20%未満、または25%未満、または30%未満の消失を示す。いくつかの実施形態において、本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、苛性条件への長時間の曝露の後、対応する野生型SpAドメイン対応物を含有するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスに対して、標的分子の初期結合能の少なくとも95%、または少なくとも90%、または少なくとも85%、または少なくとも80%、または少なくとも75%、または少なくとも70%を保持する。しかしながら、いくつかの他の実施形態において、本発明によるクロマトグラフィーマトリックスは、苛性条件への長時間の曝露の後、リガンドの野生型対応物を含有するマトリックスと類似した結合能を示す。1つのこのような例示的クロマトグラフィーマトリックスは、5つ以上の、SpAのCドメインを含むリガンドを含み、それぞれのドメインはN末端から欠失した4アミノ酸を含み、このリガンドはその野生型Cドメイン対応物ほどアルカリ安定性ではない。欠失型と野生型対応物の両方がG29K突然変異を含有し得る。さらに、本明細書に記載する様々な実施形態において、SpAリガンドは、マルチマー中の唯一の第一ドメインのN末端に、アラニン、バリンまたはグリシンなどの一アミノ酸をさらに含む可能性があり、追加のアミノ酸は、同種の翻訳後プロセシングを容易にする。
【0071】
標的分子に対するアフィニティークロマトグラフィーリガンドの結合能は、例えば、参照によりその全容が本明細書に組み込まれている米国特許公開第20100221844号中に記載されたように、当技術分野で知られている方法および本明細書に記載する方法を使用して容易に測定することができる。
【0072】
本明細書で使用する用語「クロマトグラフィー」は、混合物中の他の分子から対象の標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)を分離し、それを単離することができる動的分離技法を指す。典型的には、クロマトグラフィー法では、移動相(液体または気体)は、固定相(通常固体)媒体を越えてまたは介して対象の標的分子を含有する試料を運ぶ。移動相が異なる時間で異なる分子を運びながら、固定相への分配またはアフィニティーの差によって異なる分子を分離する。
【0073】
本明細書で使用する用語「アフィニティークロマトグラフィー」は、分離する標的分子を、標的分子と特異的に相互作用する分子(例えば、アルカリ安定性クロマトグラフィーリガンド)とのその相互作用によって単離する、クロマトグラフィーの形態を指す。一実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーは、本明細書に記載するSpAベースのリガンドを表面上に有する固形担体への、標的分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)を含有する試料の添加を伴う。
【0074】
本明細書で使用する用語「プロテインAアフィニティークロマトグラフィー」は、SpAまたはプロテインAリガンドが例えば固形担体上に固定された、本明細書に記載するリガンドなどのプロテインAまたはSpAベースのリガンドを使用する、物質の分離または単離を指す。当技術分野で知られているプロテインAアフィニティークロマトグラフィー媒体/樹脂の例には、多孔性ガラス骨格上に固定されたプロテインAを有するもの、例えば、PROSEP A(商標)およびPROSEP vA(商標)媒体/樹脂(MILLIPORE)、ポリスチレン固相上に固定されたプロテインAを有するもの、例えば、POROS 50A(商標)およびPoros MabCapture A(商標)媒体/樹脂(APPLIED BIOSYSTEMS,INC.)、ならびにアガロース固形担体上に固定されたプロテインAを有するもの、例えば、rPROTEIN A SEPHAROSE FAST FLOW(商標)またはMABSELECT(商標)媒体または樹脂(GE HEALTHCARE)がある。
【0075】
前述のマトリックス以外に、プロテインAを親水性架橋ポリマー上に固定することも可能である。例えば、例示的な親水性架橋ポリマーを記載する、参照によりその全容が本明細書に組み込まれている米国特許公開第20080210615号を参照。理論によって縛られることは望まないが、本発明によって包含されるリガンドは、米国特許公開第20080210615号中に記載されたポリマーなどの、親水性架橋ポリマー上に固定することが可能であることは企図される。
【0076】
本明細書で互換的に使用する用語「アフィニティーマトリックス」または「アフィニティークロマトグラフィーマトリックス」は、その上にアフィニティークロマトグラフィーリガンド(例えば、SpAまたはそのドメイン)が結合されているクロマトグラフィー担体を指す。リガンドは、アフィニティー相互作用を通して、混合物から精製または除去される対象の分子(例えば、免疫グロブリンまたはFc含有タンパク質)と結合することができる。プロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するための、当技術分野で知られている例示的なプロテインAベースのアフィニティークロマトグラフィーマトリックスには、多孔性ガラス骨格上に固定されたプロテインA、例えば、PROSEP A(商標)およびPROSEP vA(商標)樹脂、High Capacity、Ultra and PROSEP Ultra Plus(MILLIPORE)、ポリスチレン固相上に固定されたプロテインA、例えば、POROS 50A(商標)樹脂およびPoros MabCapture A(商標)(APPLIED BIOSYSTEMS)、またはアガロース固相上に固定されたプロテインA、例えば、rPROTEIN A SEPHAROSE FAST FLOW(商標)もしくはMABSELECT(商標)樹脂(GE HEALTHCARE)がある。
【0077】
(本明細書で互換的に使用する)用語「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」は、2本の重鎖と2本の軽鎖からなる基本4ポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は例えば鎖間ジスルフィド結合によって安定化され、該タンパク質は抗原と特異的に結合する能力を有する。(本明細書で互換的に使用する)用語「単鎖免疫グロブリン」または「単鎖抗体」は、1本の重鎖と1本の軽鎖からなる2本のポリペプチド鎖構造を有するタンパク質を指し、前記鎖は例えば鎖間ペプチドリンカーによって安定化され、該タンパク質は抗原と特異的に結合する能力を有する。用語「ドメイン」は、例えばβ−プリーツシートおよび/または鎖間ジスルフィド結合によって安定化される、ペプチドループを含む(例えば、3−4ペプチドループを含む)重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。「定常」ドメインの場合は様々なクラスメンバーのドメイン内の相対的な配列変異の欠如、または「可変」ドメインの場合は様々なクラスメンバーのドメイン内の有意な変異に基づいて、ドメインは本明細書ではさらに「定常」または「可変」と呼ぶ。抗体またはポリペプチド「ドメイン」は、当技術分野では抗体またはポリペプチド「領域」と互換的に呼ばれることが多い。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと互換的に呼ばれる。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと互換的に呼ばれる。
【0078】
免疫グロブリンまたは抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってよく、モノマーまたはポリマー型、例えば、ペンタマー型で存在するIgM抗体、および/またはモノマー、ダイマーもしくはマルチマー型で存在するIgA抗体で存在してよい。用語「断片」は、無傷または完全な抗体または抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含む、抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。無傷または完全な抗体または抗体鎖の化学または酵素処理によって、断片を得ることができる。組換え手段によって断片を得ることもできる。例示的な断片にはFab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFv断片がある。
【0079】
用語「抗原結合断片」は、抗原と結合する、または抗原結合(すなわち、特異的結合)に関して無傷抗体と(すなわち、それらが由来した無傷抗体と)競合する、免疫グロブリンまたは抗体のポリペプチド部分を指す。結合断片は、組換えDNA技法によって、または無傷免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって生成することができる。結合断片にはFab、Fab’、F(ab’)、Fv、単鎖、および単鎖抗体がある。
【0080】
融合タンパク質の一部として抗体またはその断片を含む、融合タンパク質も包含される。
【0081】
本明細書で互換的に使用する用語「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」は、任意の長さのポリマー型のヌクレオチド、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかを指す。これらの用語は、一本、二本もしくは三本鎖DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、もしくは他の天然、化学的もしくは生化学的修飾型、非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含むポリマーを含む。ポリヌクレオチドの骨格は、(RNAまたはDNA中で典型的に見ることができるように)糖およびリン酸基、または修飾もしくは置換糖もしくはリン酸基を含むことができる。さらに、二本鎖ポリヌクレオチドは、相補鎖を合成すること、および適切な条件下で鎖をアニーリングすること、またはDNAポリメラーゼおよび適切なプライマーを使用してデノボで相補鎖を合成することのいずれかによって、化学合成の一本鎖ポリヌクレオチド産物から得ることができる。核酸分子は、多くの異なる型、例えば、遺伝子または遺伝子断片、1つ以上のエクソン、1つ以上のイントロン、mRNA、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーの型をとることができる。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなど、ウラシル、他の糖および結合基、フルオロリボースおよびチオエート、ならびにヌクレオチド分枝などを含むことができる。本明細書で使用するように、「DNA」または「ヌクレオチド配列」は塩基A、T、C、およびGを含むだけでなく、これらの塩基の任意のそれらのアナログまたは修飾型、メチル化ヌクレオチドなど、ヌクレオチド間修飾、非帯電結合およびチオエートなど、糖アナログの使用、ならびに修飾および/または改変骨格構造、ポリアミドなども含む。特定の実施形態において、本明細書に記載するように、核酸分子はSpAの変異体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0082】
用語「Fc結合」、「Fc部分と結合する」または「Fc部分との結合」は、抗体の定常部分(Fc)と結合する、本明細書に記載するアフィニティーリガンドの能力を指す。いくつかの実施形態において、本発明によるリガンドは、少なくとも10−7M、または少なくとも10−8M、または少なくとも10−9Mのアフィニティーで抗体(例えば、ヒトIgG1、IgG2またはIgG4)のFc部分と結合する。
【0083】
本明細書で使用する用語「Fab結合」または「Fab部分との結合」は、抗体または免疫グロブリン分子のFab領域と結合する、本明細書に記載するアフィニティーリガンドの能力を指す。用語「Fab部分との結合の低減」は、対照(例えば、野生型SpAドメイン)に対する、本発明によるSpAベースのリガンドによる免疫グロブリン分子のFab(またはF(ab))部分との結合の任意の低下を指し、リガンドは1つ以上のアミノ酸の突然変異をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明によるリガンドおよびその(対照として使用する)野生型対応物は、位置29にアラニンまたはトリプトファン以外のアミノ酸で置換されたグリシン残基を含む。特定の実施形態において、本発明によるリガンドは位置29にリジン残基を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載するリガンドによる免疫グロブリン分子のFab部分との結合は、当技術分野の従来の技法および本明細書に記載する技法を使用して検出不能である。免疫グロブリン分子との結合は、本明細書に記載する技法、ならびに例えば、アフィニティークロマトグラフィーおよび表面プラズモン共鳴分析法だけには限られないがこれらを含む、よく知られている技法を使用して検出することができる。いくつかの実施形態において、本発明によって包含される免疫グロブリン結合タンパク質は、少なくとも10−10Mのアフィニティーで免疫グロブリン分子と結合する。
【0084】
本明細書で使用する用語「N末端」は、図1中に示すような各ドメインのアミノ酸配列の位置1または位置2で始まるSpAドメインのアミノ酸配列のアミノ末端を指す。しかしながら、配列中の第一アミノ酸は、メチオニンアミノ酸残基または例えばアラニン、グリシンもしくはバリンなど、タンパク質の同種の翻訳後プロセシングを容易にするための別のアミノ酸に先行され得ることは理解される。本明細書に記載するSpAリガンドは、SpAドメインの(図1中に示すB、CまたはZドメインアミノ酸配列の位置1または位置2で始まる)N末端からの少なくとも3つの、または少なくとも4つの、または少なくとも5つの連続アミノ酸の欠失を含む。言い換えると、このようなリガンドは、SpAドメインB、ZもしくはCの、連続アミノ酸1から3、もしくは連続アミノ酸1から4、もしくは連続アミノ酸1から5の欠失などを含み、またはこのようなリガンドは、SpAドメインB、ZもしくはCの、連続アミノ酸2から4、もしくは連続アミノ酸2から5、もしくは連続アミノ酸2から6の欠失などを含む(野生型B、CおよびZドメインのアミノ酸配列は図1中に示し、これらは修飾されてN末端からの欠失を含む。)。特定の実施形態において、本発明によるリガンドは5つのCドメインを含み、それぞれのドメインは、位置1で始まる、N末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を含む。
【0085】
N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失を含有するSpAのBドメインのアミノ酸配列は配列番号13で示し、N末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を含有するアミノ酸配列は配列番号28で示す。さらに、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失を含有するSpAのCドメインのアミノ酸配列は配列番号14で示し、N末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を含有するアミノ酸配列は配列番号29で示す。さらに、N末端からの3つの連続アミノ酸の欠失を含有するZドメインのアミノ酸配列は配列番号15で示し、N末端からの4つの連続アミノ酸の欠失を含有するアミノ酸配列は配列番号30で示す。
【0086】
一般に、本明細書に記載するマルチマー型のSpAベースのリガンドの場合、モノマー型のリガンドのアミノ酸配列は望ましくは単に反復される。しかしながら、本発明によるいくつかのマルチマー型のリガンドの場合、全ドメインがN末端からの欠失を有する必要はないことに留意しなければならない。例えば、いくつかの実施形態において、リガンドはマルチマー型のリガンド中の第一ドメインのN末端における欠失を含有しないが、しかしながら、リガンド中の後のドメインは、N末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの少なくとも4つの連続アミノ酸の欠失、またはN末端からの少なくとも5つの連続アミノ酸の欠失を含有する。
【0087】
本発明によるSpAベースのリガンドは、本明細書の実施例によって証明されるように、優れた予想外の性質、すなわち精製プロセスにおける使用中の低減した断片化を有する。特に、従来技術の教示は、このようなリガンドを作製および使用する意欲から離れて教示するようである。例えば、米国特許公開第20100048876号は、SpAのCドメインのアミノ酸残基3から6における欠失を含むリガンドを論じるが、しかしながら、この刊行物の教示に基づくと(例えば、米国特許公開第20100048876号の図2を参照)、その中に記載された欠失突然変異体は、結合能の保持に関して、長時間の苛性曝露でSpAの野生型Cドメインと比較してあまり機能しないようである。したがって、この参照文献の教示に基づくと、それがその野生型対応物に比べて、経時的に多くの結合能を消失するとき、SpAのCドメインの欠失突然変異体の使用が望ましい可能性は低い。
【0088】
便宜上、本出願中に言及する様々な配列を以下の表I中に要約する。
【0089】
【表1】




【0090】
II.クロマトグラフィーリガンドとして使用するためのSpAベース分子の生成
本発明によって包含されるSpAベースのアフィニティークロマトグラフィーリガンドは、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して作製することができる。
【0091】
例えば、初期ステップとして、標準的な遺伝子操作技法、例えばMolecular Cloning by Sambrook、Fritsch and Maniatisという表題の研究室用マニュアル中に記載された技法を、本明細書に記載するSpAリガンド分子を発現する核酸の生成のために使用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、N末端欠失を有するSpAの1つ以上のドメインをコードする核酸分子を、適切な宿主細胞中での発現に適したベクターにクローニングすることができる。適切な発現ベクターは当技術分野でよく知られており、変異体SpAコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを典型的には含む。
【0093】
本明細書に記載するSpA分子は、Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)またはFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)手法(例えば、米国特許第6,060,596号、同第4,879,378号、同第5,198,531号、同第5,240,680号を参照)などの固相ペプチド合成法を含めた当技術分野でよく知られている方法を使用して、断片としてアミノ酸前駆体から化学的に合成することもできる。
【0094】
本明細書に記載するSpA分子の発現は、例えば、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞などの真核宿主細胞、ならびに原核宿主細胞、例えばE.コリ(E.coli)などの細菌などの、様々な細胞型において実施することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、ファージ表面上に提示される個々のSpA分子をコードするDNA配列をそれぞれのファージが含有するように、バクテリオファージの表面上でSpA分子を発現させることが可能である。免疫グロブリンに対するSpA分子のアフィニティーは、当技術分野の標準的技法および本明細書に記載する技法、例えばELISAおよびBiacore(商標)2000標準設定(BIACORE AB、Uppsala Sweden)を使用して、容易にアッセイすることができる。本明細書に記載するように、免疫グロブリンに対する本発明のSpA分子の結合アフィニティーは親分子のそれに少なくとも匹敵し、分子は使用中に低減した断片化を示すことが望ましい。
【0096】
III.クロマトグラフィーマトリックスの調製に使用する担体
いくつかの実施形態において、本発明によって包含されるSpAリガンドを、担体、例えば固形担体または可溶性担体上に固定して、例えば、免疫グロブリンおよびFc含有タンパク質などの生体分子の分離に適したアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを生成する。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明によるリガンドは固形担体上に固定する。理論によって縛られることは望まないが、任意の適切な固形担体を、本発明によるリガンドの結合に使用することができることは企図される。例えば、固形担体マトリックスには、多孔性ガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アガロース、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコールおよびポリスチレンならびにこれらの誘導体(例えば、これらの合金)があるが、これらだけには限られない。固形担体は、多孔質材料または非多孔質材料であってよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、固形担体は多孔質材料である。固形担体として使用される多孔質材料は、親水性化合物、疎水性化合物、疎油性化合物、親油性化合物、またはこれらの任意の組合せで構成され得る。多孔質材料は、ポリマーまたはコポリマーで構成され得る。適切な多孔質材料の例には、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、例えばナイロン、多糖、例えばアガロースおよびセルロースなど、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリビニリデンフルオリド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、フルオロカーボンポリマー、例えばポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル))、ガラス、シリカ、ジルコニア、チタニア、セラミック、金属ならびにこれらの合金があるが、これらだけには限られない。
【0099】
多孔質材料は、有機もしくは無機分子または有機分子と無機分子の組合せで構成されてよく、反応、例えばさらなる化学修飾の共有結合を形成して、タンパク質と共有結合するのに適した、1つ以上の官能基、例えばヒドロキシル基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、カルボニル基、またはカルボン酸基で構成されてよい。別の実施形態において、多孔質材料は官能基を有し得ないが、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ酸基、カルボニル基、またはカルボン酸基などの官能基を有する材料の層でコーティングされ得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、例えば有機的性質であり、使用する水性媒体に親水性表面が露出した、すなわちそれらの外側表面、および存在する場合さらに内部表面の、ヒドロキシ(−−OH)、カルボキシ(−−COOH)、カルボニル(−−CHO、またはRCO−R’)、カルボキサミド(−−CONH、おそらくN−置換型)、アミノ(−−NH、おそらく置換型)、オリゴ−またはポリエチレンオキシ基が露出した、ポリマーをベースとする、従来のアフィニティー分離マトリックスを使用する。一実施形態において、ポリマーは、デキストラン、スターチ、セルロース、プルラン、アガロースなどの多糖を例えばベースとするものであってよく、例えばビスエポキシド、エピハロヒドリン、アリルブロミド、アリルグリシジルエーテル、1,2,3−トリハロ置換低級炭化水素で有利に架橋されて、適切な多孔性および剛性をもたらす。別の実施形態において、固形担体は多孔質アガロースビーズを含む。本発明において使用する様々な担体は、例えばHjerten、Biochim Biophys Acta 79(2)、393−398頁(1964)中に記載された例えば逆懸濁ゲル化などの、当技術分野で知られている標準的な方法に従い容易に調製することができる。あるいは、ベースマトリックスは、Sepharose(商標)FastFlow(GE HEALTHCARE、Uppsala、スウェーデン)などの市販の製品であってよい。いくつかの実施形態において、大規模分離に特に有利に、担体を適合させてその剛性を増大させ、したがってマトリックスは高流速により適したものとなる。
【0101】
あるいは、固形担体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリヒドロキシアルキルメタアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどの、合成ポリマーをベースとするものであってよい。ジビニルおよびモノビニル置換ベンゼンをベースとするマトリックスなどの疎水性ポリマーの場合、マトリックスの表面を親水状態にして、前に定義した親水基を周囲の水性液体に露出させることが多い。このようなポリマーは、標準的な方法に従い容易に生成することができる。例えば、Arshady、Chimica e L’Industria 70(9)、70−75頁(1988)を参照。あるいは、Source(商標)(GE HEALTHCARE、Uppsala、スウェーデン)およびPoros(APPLIED BIOSYSTEMS、Foster City、CA)などの市販の製品を使用することができる。
【0102】
さらに他の実施形態において、固形担体は、無機的性質の担体、例えばシリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、およびこれらの合金を含む。無機マトリックスの表面は、SpAおよびその変異体とのさらなる反応に適した反応基を含むように修飾することが多い。例にはCM Zirconia(Ciphergen−BioSepra(CERGYPONTOISE、フランス)およびCPG(登録商標)(MILLIPORE)がある。
【0103】
いくつかの実施形態において、固形担体は、例えば、反応基を含有するおよび/または苛性浸漬を維持するように修飾してリガンドにカップリングすることができる、多孔性ガラスの型のジルコニア、チタンまたはシリカをベースとするものであってよい。
【0104】
例示的な固形担体形式には、ビーズ(球状または不整)、中空ファイバー、中実ファイバー、パッド、ゲル、膜、カセット、カラム、チップ、スライド、プレートまたはモノリスがあるが、これらだけには限られない。
【0105】
マトリックスの形式に関して、一実施形態において、それは多孔質モノリスの型であり、例えばシリカなどの無機材料、または例えばポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリビニリデンフルオリド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテルおよびポリカーボネートなどの有機材料を使用して作製することができる。モノリスの場合、それは重合を介して、または基質をコーティングすることにより形成することができる。
【0106】
代替的な実施形態において、マトリックスは、多孔質または非多孔質であってよいビーズまたは粒子型である。粒子は球状または非球状、ならびに磁性または非磁性であってよい。ビーズまたは粒子型のマトリックスは、充填層としてまたは縣濁型で使用することができる。縣濁型には膨張床および同質懸濁液として知られるものがあり、その中で粒子またはビーズは自由に移動する。モノリス、充填層および膨張床の場合、濃度勾配での従来のクロマトグラフィーに分離手順が一般に続く。同質懸濁液の場合、バッチワイズ形態が使用される。さらに、表面、チップ、キャピラリー、またはフィルターなどの型の固形担体を使用することができる。
【0107】
マトリックスは膜カートリッジの型であってもよい。膜はフラットシート、スパイラル、または中空ファイバー形式であってよい。
【0108】
別の実施形態において、本発明によるリガンドは、可溶性担体、例えば可溶性ポリマーまたは水溶性ポリマーと結合させる。例示的な可溶性担体には、バイオポリマー、例えばタンパク質または核酸などがあるが、これらだけには限られない。いくつかの実施形態において、例えば米国特許公開第20080108053号中に記載されたように、可溶性ポリマーとしてビオチンを使用することができる。例えば、ビオチンはリガンド、例えば本発明によるSpAベースのリガンドに結合させることが可能であり、リガンドへの結合後、例えば粗製混合物中に存在する、対象のタンパク質、例えば抗体またはその断片を単離するのに使用することができ、対象のタンパク質は、可逆的または不可逆的形式のいずれかでビオチン−リガンド−タンパク質ポリマー複合体の沈殿によって単離または分離することができる。ポリマーは、例えば、負に荷電した基(カルボンまたはスルホン)、正に荷電した基(第四級アミン、第三級アミン、第二級または第一級基)、疎水基(フェニルまたはブチル基)、親水基(ヒドロキシル、またはアミノ基)または前述の任意の組合せを含有するポリマーなどだけには限られないが、これらを含めた、合成可溶性ポリマーであってもよい。例示的な合成可溶性ポリマーは、参照によりその教示の全容が本明細書に組み込まれている、国際PCT公開第WO2008091740号および米国公開第US20080255027号中で見ることができる。pH、伝導性または温度などの1つ以上の条件の特異的物理的変化によって、これらのポリマーを使用して、可逆的または不可逆的形式のいずれかで沈殿により対象のタンパク質を精製することができる。合成可溶性ポリマーは単独で使用することができ、または本発明によるリガンドとカップリングさせ、可逆的もしくは不可逆的形式のいずれかで沈殿により、対象のタンパク質、例えば抗体もしくはその断片などの捕捉/精製に使用することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、リガンドはマルチウエルプレート形式で膜と結合する。さらに他の実施形態において、リガンドはキャピラリーまたはマイクロ流体デバイス中に取り込まれる。
【0110】
IV.担体にリガンドを結合させるための方法
任意の適切な技法を、担体、例えば当技術分野でよく知られており本明細書に記載する担体を含めた固形担体に、本明細書に記載するリガンドを結合させるために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、例えばリガンド中に存在するアミノおよび/またはカルボキシ基を使用する従来のカップリング技法によって、担体にリガンドを結合させることが可能である。例えば、ビスエポキシド、エピクロロヒドリン、CNBr、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などが、よく知られているカップリング試薬である。いくつかの実施形態において、スペーサーを担体とリガンドの間に導入し、これによってリガンドの利用性を改善し、担体とリガンドの化学的カップリングを容易にする。
【0111】
本発明によって包含される様々な実施形態において、リガンド上の2箇所以上の部位をこのような固形担体と結合させ(すなわち、多点結合によって)、それによって長時間の苛性曝露時にリガンドの低減した断片化を示すアフィニティークロマトグラフィーマトリックスをもたらす(遊離リガンドと結合リガンド両方の場合)。
【0112】
固形担体へのSpAベースのクロマトグラフィーリガンドの結合は、その大部分は当技術分野でよく知られている公知の多くの異なる方法、および本明細書に記載する方法によって実施することができる。例えば、Hermansonら、Immobilized Affinity Ligand Techniques、Academic Press、51−136頁(1992)を参照。
【0113】
例えば、タンパク質リガンドは、固形担体またはタンパク質リガンドのいずれかの表面上の活性基、例えばヒドロキシル、チオール、エポキシド、アミノ、カルボニル、エポキシド、またはカルボン酸基などを介して、固形担体にカップリングさせることが可能である。結合は、臭化シアン(CNBr)、N−ヒドロキシルスクシンイミドエステル、エポキシ(ビスオキシラン)活性化、および還元的アミノ化の使用だけには限られないが、これらを含めた公知の化学的性質を使用して実施することができる。
【0114】
例えば、チオール誘導タンパク質カップリングが文献中に記載されている。例えば、Ljungquistら、Eur.J.Biochem.Vol 186、558−561頁(1989)を参照。この技法は以前に固形担体へのSpAのカップリングに適用された。野生型SpAはチオール基を含有しないので、SpAのC末端にチオール含有システインを組換えにより挿入することによって結合を実施する。例えば、米国特許第6,399,750号を参照。MabSelect(商標)、MabSelect(商標)XtraおよびMabSelect(商標)SuRe、MabSelect(商標)SuRe LXなどの、いくつかの市販品がこの機構によって生成される。この末端システインのみが固形表面上のエポキシド基と反応し、それによって固形担体とSpAの単一点結合をもたらすことが報告されている。例えば、Process Scale Bioseparations for the Biopharmaceutical Industry、CRC Press、2006、473頁を参照。
【0115】
本発明によるいくつかの実施形態において、SpAベースのクロマトグラフィーリガンド上の2箇所以上の部位を、無差別、多点結合によって固形担体と結合させる。一般に、SpAは各ドメイン中に多数のリジン由来の多量の遊離アミノ基を含有する。多点結合による固形担体、例えばエポキシドまたはアルデヒド基を有するクロマトグラフィー樹脂とSpAドメインの結合は、それぞれエポキシド開環または還元的アミノ化を介した、SpA上のリジンのアミノ基の反応により実施することができる。特定の実施形態において、多点結合は、開環反応を介した、遊離ヒドロキシル基を有するSpA上の1つ以上の天然に存在するアミノ酸、例えばセリンおよびチロシンなどと、エポキシド基を含有する担体の反応により実施することができる。あるいは多点結合は、例えば、例えばN,N’−カルボニルジイミダゾールを介した、遊離カルボン酸基を有するSpA上の天然に存在するアミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸などと、アミノ基を含有する担体の反応により実施することができる。担体とリガンドの多点結合は、前述の全ての機構の組合せにより実施することもできる。
【0116】
SpAベースのクロマトグラフィーリガンドは、会合機構を介して固形担体と結合させることも可能である。例えば会合基は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、または相互作用の組合せを介して非共有結合により対象のリガンドと相互作用し、それによって固形表面上の対象のリガンドと結合することができる。例えば参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,833,723号および同第7,846,682号中に記載されたように、これは固形マトリックスとリガンドの高効率のカップリングを容易にし、それによって会合基を含まない密度より高いリガンド密度をもたらす。本発明において使用するのに適した会合基には、イオン種などの荷電種、および疎水種などの非荷電種がある。会合基は、例えば固形担体と直接共有結合することによって、固形担体を修飾することができる。イオン種の適切な例は、第四級アミン、第三級アミン、第二級アミン、第一級アミン、スルホン酸基、カルボン酸、またはこれらの任意の組合せを含み得る。疎水種の適切な例は、フェニル基、ブチル基、プロピル基、またはこれらの任意の組合せを含み得る。混合形式の種を使用することができることも企図される。会合基は、タンパク質リガンドと相互作用することもできる。したがって、会合基とタンパク質リガンドの間の相互作用は、混合相互作用、例えばイオン種と疎水種で構成され得る。
【0117】
固形担体上の官能基と会合基上の官能基の反応によって、会合基を固形担体と共有結合させることが可能である。適切な官能基には、アミン、ヒドロキシル、スルフヒドリル、カルボキシル、イミン、アルデヒド、ケトン、アルケン、アルキン、アゾ、ニトリル、エポキシド、シアンおよび活性カルボン酸基があるが、これらだけには限られない。一例として、アガロースビーズは、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドなどの正に荷電した会合基のエポキシド官能基と反応することができるヒドロキシル基を含有する。当業者は、少なくとも1つの二官能性会合基を使用する条件で、複数の会合基を固形担体とカップリングさせることが可能であることを理解している。したがって会合基は固形担体に直列にカップリングさせることが可能であり、または会合基は固形担体に個々に直接カップリングさせることが可能である。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明は、介在リンカーを介して固形担体にカップリングすることができる、会合基および/またはタンパク質リガンドを提供する。リンカーは、連結部分とカップリングした少なくとも1つの官能基を含むことができる。連結部分は、官能基にカップリングすることができる任意の分子を含むことができる。例えば連結部分は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基のいずれかを含むことができる。連結部分は、1から30炭素原子の範囲の炭素鎖を含むことができる。いくつかの実施形態において、リンカーは30を超える炭素原子で構成されてよい。連結部分は、窒素、酸素および硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができる。連結部分は、分枝鎖、非分枝鎖または環状鎖で構成されてよい。連結部分は、2つ以上の官能基で置換することができる。
【0119】
タンパク質リガンドと固形担体のカップリングに適したバッファー条件の選択は、十分当業者の能力の範疇にある。適切なバッファーには、例えば、10mMから5Mの範囲の濃度での、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなど、または前述の任意の組合せがある。いくつかの実施形態において、塩の濃度は0.1Mから1.5Mの範囲である。
【0120】
他の適切なバッファーには、炭酸、重炭酸、硫酸、リン酸および酢酸バッファーなどの任意の非アミン含有バッファー、または前述の組合せがある。会合の化学的性質を使用するとき、バッファーの塩濃度は使用する会合基に依存する。例えば、塩濃度は5nM−100mMの範囲であってよい。荷電種を使用する場合、塩濃度は少なくとも5nMただし0.1M未満、少なくとも5nMただし0.01M未満、少なくとも5nMただし0.001M未満であってよい。特定の実施形態において、塩濃度は0.01Mであってよい。疎水種を使用する場合、高い塩濃度が通常望ましい。したがって、塩濃度は0.001M超、0.01M超、または0.1M超であってよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、会合の化学的性質を使用するとき、0℃から99℃の範囲の温度で反応を実施する。特定の実施形態において、反応法は60℃未満、40℃未満、20℃未満、または10℃未満の温度で実施する。いくつかの実施形態において、本発明の方法は約4℃の温度で実施する。他の実施形態において、本発明の方法は20℃の温度で実施する。
【0122】
V.リガンドの低減した断片化に関するアッセイ
本発明は、1つ以上のB、ZまたはCドメインベースのSpAリガンドを取り込んだアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを提供し、1つ以上のドメインは位置1または位置2で始まる、N末端からの3つのまたは4つのまたは5つの連続アミノ酸の欠失を含む。いくつかの実施形態において、SpAベースのリガンド上の2箇所以上の部位がクロマトグラフィーマトリックスと結合する。
【0123】
本発明は、本明細書に記載するリガンド、遊離型と固形担体(例えば、クロマトグラフィーマトリックス)上の固定時の両方で、精製プロセスにおける使用中に長時間の苛性条件への曝露の後に、低減した断片化を示すという、予想外の驚くべき発見に基づく。前に論じたように、このような断片化は望ましくない。それが、おそらく治療標的タンパク質に行き着くSpAドメインのおそらく免疫原性断片をもたらすからである。さらに、プロセス中により多くのリガンドの使用を必要とするため、断片化は精製プロセスをより高価なものにする。
【0124】
アフィニティーリガンドの断片化は、当技術分野で知られている方法および本明細書に記載する方法を使用して、容易に検出することができる。このような方法には、SDS−PAGEおよびSECがあるが、これらだけには限られない。
【0125】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)は、タンパク質の分子量解析に一般に使用される。SDSはタンパク質を解離しアンフォールディングする洗浄剤である。SDSはポリペプチドと結合し、ほぼ一定の電荷質量比で複合体を形成する。したがってゲル中の電気泳動移動度は、複合体の大きさによってのみ決定される。知られている分子量のマーカータンパク質を同時に施用することによって、分子量を決定する。典型的にはゲルを染色し、異なる分子量の生体分子の存在を目に見える状態にすることができる。
【0126】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子をそれらの大きさによって分離する方法である。それは通常、タンパク質および産業用ポリマーなどの巨大またはマクロ分子複合体に施用する。異なる分子種の検出は、典型的にはUV−Visによってまたは光散乱によって実施する。UV−Visの場合、特定種の検出に特異的な波長を選択する。クロマトグラムで観察する特定分子種が溶出する順序、および対応するピークの強度は、種型および相対量に関する情報を与える。
【0127】
本明細書に含まれる実施例によって実証されるように、本発明によるSpAリガンドは、苛性条件への曝露の後に、それらの野生型対応物に比べて、低減した断片化を示す。低減した断片化を示すための例示的な実験では、本明細書に記載するN末端欠失を有するSpAリガンド、およびその野生型対応物の両方を25時間0.5M NaOHに曝す。次いで溶液を、酸を用いてpH7に中和する。分析および比較用に、中和溶液はSECに注入する、またはSDS−PAGEゲル上に充填する。
【0128】
低減した断片化を示すための別の例示的な実験では、本明細書に記載する(多点結合により固定し)固形担体と結合されているN末端欠失を有するリガンドを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックス、および(多点結合により固定し)固形担体と結合されているその野生型対応物を含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックスの両方を25時間0.5M NaOHに曝す。苛性溶液およびマトリックス(例えば、樹脂の型)を分離し、すぐに酸を用いてpH7に中和する。分析および比較用に、中和溶液はSECに注入する、またはSDS−PAGEゲル上に充填する。
【0129】
VI.リガンドのアルカリ安定性に関するアッセイ
精製プロセスにおける使用中に低減した断片化を示すこと以外に、本明細書に記載するリガンドはさらにアルカリ安定性である。本明細書に記載するSpAベースのリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスの生成後、リガンドを含有するマトリックスのアルカリ安定性は、当技術分野で標準的な技法および本明細書に記載する技法を使用してアッセイすることができる。
【0130】
例えば、マトリックス上に固定されたリガンドのアルカリ安定性は、例えば本明細書および、参照によりその全容が完全に本明細書に組み込まれている米国特許公開第20100221844号中に記載されたように、約0.5Mの濃度でNaOHを用いる通常の処理を使用してアッセイすることができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、アルカリ安定性SpA分子およびこれらを取り込んだマトリックスは、「増大した」または「改善された」アルカリ安定性を示し、分子およびこれらを取り込んだマトリックスは、それらの野生型対応物に比べて、長時間の間アルカリ条件下において安定性があること意味する。以前に、SpAの野生型B、CもしくはZドメインベースまたは1つ以上のアスパラギン残基の突然変異を有するSpAリガンドを取り込んだクロマトグラフィーマトリックスは、pHが約10を超える、最大約13または14などの条件下において、改善されたアルカリ安定性をもたらすことが報告されている。しかしながら、これらのリガンドのいくつかは、SDS−PAGEゲル上の断片の存在またはSECにより観察して、使用中に、特にCIPのサイクルを繰り返した後に断片化を示すようである。
【0132】
いくつかの実施形態において、本発明によるリガンドおよびこれらを取り込んだマトリックスは、それらの野生型対応物ほどアルカリ安定性ではないが、それにもかかわらず、それらは低減した断片化を示す。本明細書に記載する1つのこのようなリガンドは、各ドメイン中にN末端欠失を含み各ドメイン中にG29K突然変異を含むペンタマー型のCドメインリガンドである。このようなリガンドは、タンパク質の同種の翻訳後プロセシングを容易にするために、ペンタマー中の正に第一のアミノ酸としてアラニンをさらに含み得る。
【0133】
本発明は、苛性条件(例えば、25時間以上0.1M NaOH)への長時間曝露後に初期結合能の少なくとも95%を保持することに加えて、以前に記載されたリガンドのいくつかに対して精製プロセスにおける使用中に低減した断片化を示す、(遊離型とクロマトグラフィーマトリックスへの固定時の両方)新規なSpAリガンドという、驚くべき予想外の発見に基づく。いくつかの実施形態において、リガンド上の2箇所以上の部位が固形担体と結合し、これらのリガンドはSpAのB、CまたはZドメインをベースとし、リガンドは位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの、4つのまたは5つの連続アミノ酸の欠失を有する。
【0134】
いくつかの実施形態において、それぞれのサイクルが0.5M NaOHを用いた15分間の処理を含む100サイクル後、本明細書に記載するSpAリガンド(例えば、1つ以上のB、CまたはZドメイン、およびこれらの任意の組合せを含み、B、CまたはZドメインの少なくとも1つがN末端からの少なくとも3つの連続アミノ酸の欠失を含むリガンド)の保持結合能の割合は、野生型対応物のそれの少なくとも1.25倍超、1.5倍超、2.0倍超、2.5倍超、または3倍超である。
【0135】
一実施形態において、経時的にIgG結合能の保持によりアッセイする固定リガンドのアルカリ安定性は、以下のように測定する。Qd50%と呼ばれる結合能を、初期IgG濃度の50%のUV280nmにおける吸光度に基づく濃度に充填するIgG体積を得ることによって測定する。クロマトグラフィーマトリックス(例えば、カラム中に充填された樹脂)の初期Qd50%を最初に測定する。クロマトグラフィーマトリックス(例えば、前に記載した樹脂)を、0.8mL/分での0.5M NaOHの15分間曝露の約10サイクルに次いで曝す。Qd50%を再度測定する。クロマトグラフィーマトリックスが合計約100サイクルの0.5M NaOHに曝されるまで、このプロセスを繰り返す。Qd50%を最後に一度測定し、本明細書に記載するリガンドを含むアフィニティークロマトグラフィーマトリックス(例えば、リガンドを固定したクロマトグラフィー樹脂)からの結果は、SpAのそれぞれの野生型ドメインと比較する。
【0136】
別のアッセイでは、マトリックスの苛性またはアルカリ安定性は、マトリックスの静的浸漬によって測定する。軽く回転させながら25時間0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOH中に測定量のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス(例えば、樹脂形式)を浸漬し、NaOH浸漬前後にIgG結合能を測定することによって、IgGに対するマトリックスの結合能の保持によるアルカリ安定性を決定することができる。
【0137】
VII.本発明のクロマトグラフィーマトリックスを使用する標的分子の精製法
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを使用して、混合物から標的分子を精製する方法を提供する。標的分子は、本明細書で提供するアフィニティーリガンドにより認識される任意の分子であってよく、リガンドは固形担体(すなわち、クロマトグラフィーマトリックス)にカップリングする。標的分子の例は、免疫グロブリンおよびFc含有タンパク質を含む。免疫グロブリンは、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体またはこれらの機能性断片であってよい。機能性断片は、固形担体にカップリングしたタンパク質リガンドと特異的に結合するその能力を同時に保持しながら、その抗原に依然として特異的に結合する可変領域を含む免疫グロブリンの任意の断片を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを使用して対象の標的分子を単離する方法は、(a)配列番号13−42、配列番号55−84および配列番号93−95からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する固定SpAベースクロマトグラフィーリガンドを含む固形担体と、標的分子を含む混合物を、標的分子がリガンドと特異的に結合するような条件下において接触させるステップ、ならびに(b)標的分子がリガンドにもはや結合しないように条件を改変し、それによって標的分子を単離するステップを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、改変ステップは、標的分子がリガンドにもはや結合しないようなpHの改変を含む。特定の実施形態において、それがステップ(a)中のpH条件より酸性であるような形式でpHを改変する。例えば、一実施形態において、ステップ(a)は中性pH、または約6から約8の範囲のpHで実施することができ、ステップ(b)は酸性pH、例えば約1から約5の範囲のpHで実施することができる。
【0140】
別の実施形態において、ステップ(b)は、標的分子がリガンドにもはや結合しないような、使用中のバッファーの塩濃度の改変を含む。例えば、一実施形態において、例えば0.1Mを超える高い塩濃度をステップ(a)中で使用することができ、例えば0.1M未満の低い塩濃度をステップ(b)中で使用することができる。逆に、いくつかの実施形態において、例えば0.1M未満の低い塩濃度をステップ(a)中で使用することができ、高い塩濃度をステップ(b)中で使用することができる。さらに他の実施形態において、バッファーのpHと塩濃度の両方をステップ(a)とステップ(b)の間で改変することができる。
【0141】
当業者は、標的分子とリガンドの結合に適した条件を決定し、したがってリガンドと分子の結合を妨害するために条件を改変することが容易に可能である。
【0142】
一般に、本明細書に記載するリガンドは、天然SpAおよび組換えSpAを典型的に使用する任意の精製プロセスまたは一連の精製プロセスにおいて、使用することができることが企図される。言い換えると、当技術分野の現行プロセスにおける(例えば、S.アウレウス(S.aureus)から単離した)天然SpAおよび組換えSpA(例えば、組換えにより発現した野生型SpA)と本明細書に記載するリガンドを置換して、全体的コストを低減し、潜在的治療分子と共に精製される潜在的免疫原性SpA断片のリスクを軽減することが一般に望ましい。
【0143】
いくつかの実施形態において、本発明は、アフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製する方法に関するものであり、この方法は、以下の:プロセスフィードと本発明によるアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを接触させて、フィード中の1つ以上の抗体を結合させるステップ、場合による洗浄ステップ、マトリックスから結合されている抗体を放出するのに適した溶出バッファーを加えるステップ、および溶出物から1つ以上の抗体を回収するステップを含む。本明細書に記載するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスは、培養液、上清および発酵ブロスから抗体を単離するのに使用することもできる。発酵ブロスの場合、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスの使用によって、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、ウイルス、エンドトキシン、栄養素、細胞培養培地の1つ以上の構成成分、例えば消泡剤および抗生物質、ならびに産物関連不純物、ミスフォールディング種および凝集体などからの抗体の分離が可能である。
【0144】
具体的な実施形態において、それが本明細書に記載するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスと接触する前に、フィードに機械的濾過を施し、したがって移動相は浄化細胞培養ブロスである。吸着に適した条件は当業者にはよく知られている。
【0145】
別の実施形態において、本発明は、抗体を精製するためのマルチステッププロセスに関するものであり、このプロセスは、本明細書に記載するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスを使用する捕捉ステップ、次に抗体の中間精製および/または最終精製のための1つ以上の後のステップを含む。特定の実施形態において、捕捉ステップに、結合溶出またはフロースルー式で、疎水性相互作用および/またはイオン交換クロマトグラフィーおよび/または弱分配クロマトグラフィーを続ける。代替的なステップでは、捕捉ステップに、結合溶出またはフロースルー式で、マルチモードアニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィーおよび/または弱分配クロマトグラフィーを続ける。
【0146】
別の実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからの任意の浸出SpAベースリガンドを、許容可能なレベルまで、例えば天然プロテインAリガンドに許容可能であるとみなされるレベルまで、後の精製ステップによって除去することができる。
【0147】
一般に、本明細書に記載するリガンドは、プロテインAリガンドを典型的に利用する任意のプロセスにおいて使用することができることは企図される。
【0148】
本発明を、限定的として解釈すべきではない以下の実施例によってさらに例示する。本出願、および図面を通じて引用する、全ての参照文献、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0149】
[実施例1]
4つの連続したアミノ酸のN末端欠失を有する1つ以上のドメインを含むSpAリガンドの生成
以下のタンパク質をコードする合成遺伝子をDNA2.0(Menlo Park、CA)から得た。2つのZドメインであって、それぞれのドメインが位置29にFab結合を低減または排除するための突然変異(A29K)を含有するドメインを含有するSpAダイマータンパク質(配列番号85で示すアミノ酸配列)、および2つのZドメインであって、それぞれのドメインがA29K突然変異を含有し、第二ZドメインがN末端から4つの連続したアミノ酸を欠失する欠失を含有するドメインを含有するSpAダイマータンパク質(配列番号78で示すアミノ酸配列)。
【0150】
それぞれの合成遺伝子の5’末端は開始メチオニンコドンを含み、3’末端はNiNTAカラムを使用して後に精製する6つのヒスチジンコドン(配列番号86)を含む。それぞれの遺伝子の5’末端および3’末端は、それぞれNdeIおよびBamHI制限部位を含有する。これらの合成遺伝子、および使用する発現ベクター、すなわちpET11a(EMD)はNdeIおよびBamHI(NEW ENGLAND BIOLABS、Ipswich、MA)で消化し、DNA断片は0.7%アガロースTAEゲル上で分離し、適切なDNA断片を切除し、QIAGEN(Valencia、CA)からのゲル抽出キットを使用して精製する。精製した挿入物は、T4DNAリガーゼ(NEW ENGLAND BIOLABS、Ipswich、MA)を使用して、pET11aまたは任意の他の適切な発現ベクターの骨格に連結させる。
【0151】
連結反応物は製造者の説明書に従いDH5αコンピテントE.コリ(INVITROGEN、Carlsbad、CA)に形質転換し、100μg/mLアンピシリンを含有するTechnova LBプレート上に播種し、37℃で一晩増殖させる。精製DNAを得るために、個々のコロニーを100μg/mLアンピシリンを含有するLBにおいて一晩培養で採取する。DNAはQIAGEN(Valencia、CA)からのスピンミニ調製キットを使用して精製する。組換えプラスミドの同一性は、NdeIおよびBamHI(NEW ENGLAND BIOLABS、Ipswich、MA)を使用して制限消化分析により確認する。Zドメインダイマー構築物の2つの挿入遺伝子を含むプラスミドに関するプラスミドマップは図2中に示す。
【0152】
さらに、5つのZドメインであって、それぞれのドメインがA29K突然変異を含有するドメインを含有するペンタマー型のSpAリガンド(配列番号91に記載のアミノ酸配列)、および5つのZドメインであって、それぞれのドメインがA29K突然変異を含有し、第一ドメイン以外の全てがN末端から4つの連続したアミノ酸の欠失を含有するドメインを含有するペンタマー型のSpAリガンド(配列番号84で述べるアミノ酸配列)を発現する構築物を生成する。
【0153】
さらに、Cドメインを含有するダイマーSpAリガンド構築物も生成する。そのアミノ酸配列を配列番号92で述べるCドメインリガンドを発現するダイマー構築物を生成し、第二CドメインのみがN末端から4つの連続したアミノ酸の欠失を含み、そのアミノ酸配列を配列番号35で述べる2Cドメインリガンドを発現するダイマー構築物を生成する。これらのCドメインダイマーリガンドは位置29に突然変異を有していない。
【0154】
[実施例2]
SpAベースのリガンドの発現および精製
前に論じたように、任意の適切な細菌発現系を、本明細書に記載する様々なSpAリガンドの発現に使用することができる。例えば、pET11a(EMD)などのpETベクターを使用して、株BL21(DE3)(PROMEGA、Madison WI)などのエシェリキア・コリ(Escherchia coil)株において、タンパク質を発現させることが可能である。
【0155】
単一コロニーをプレートから選択し、100μg/mLアンピシリンを含有するLB培地において37℃で一晩増殖させる。一晩培養物は100μg/mLアンピシリンを含有する新たなLB培地に100倍希釈し、600nmにおける光学濃度が約0.8であるような細胞密度まで増殖させる。1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを加えた後、細胞はさらに2時間増殖させる。発現はSDS−PAGE分析およびウエスタンブロッティングによって確認する。
【0156】
細胞は遠心分離(4000rpm、4℃、5分間)によって採取し、20mMのイミダゾールを含有する3mLのリン酸緩衝生理食塩水中に再縣濁させる。細胞は超音波処理によって溶かし、細胞残骸は遠心分離(4000rpm、4℃、30分間)によってペレット状にする。SpAリガンドは、3−mLカラム当たり25−30mLの細胞溶解物を施しNiNTA樹脂(QIAGEN)を使用して精製する。カラムは20mMのイミダゾールを含有する30mLのリン酸緩衝生理食塩水で二回洗浄し、200mMのイミダゾールを含有するリン酸緩衝生理食塩水の3mL分画中にSpAを溶出させる。SpAは18メガオームのMilli−Q(登録商標)水(MILLIPORE、Billerica、MA)、次に10mMのNaHCOに一晩透析する。タンパク質の濃度は、理論上の消光係数に基づきUV分光計を使用して確認する(Paceら、Protein Science 4:2411(1995))。
【0157】
[実施例3]
固形担体へのSpAベースのリガンドの結合
実施例1および2中に記載したような様々なリガンドの生成および発現の後、それらを多点結合により固形担体に固定した。
【0158】
例示的な実験では、アガロース樹脂(Sepharose4B)(GE HEALTHCARE)を、以前に記載された方法(Porath and Fornstedt、J.Chromatography、51:479(1979))に従いエピクロロヒドリンを使用して架橋させる。アガロース樹脂は、以下の方法に従い、正に荷電した会合基、例えばカチオンと後に反応させる。10mLの樹脂に、5mLの75重量%グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTMAC)、5mLのMilli−Q(登録商標)水(MILLIPORE、Billerica、MA)および0.258gの50重量%水酸化ナトリウムを加える。反応バイアルは、室温で一晩Techne HB−1Dハイブリダイザー(BIBBY SCIENTIFIC、Burlington、NJ)内で回転させる。次いで樹脂を濾過し、3×10mL体積のMilli−Q(登録商標)水(MILLIPORE、Billerica、MA)で洗浄する。
【0159】
樹脂(10mL、濾過ケーク)は3mLの4.6M NaOHを含有するジャーに加える。混合物はスラリー状にし、次いで4mLのブタンジオールジグリシジルエーテル(BUDGE)を加える。この混合物は約2時間35℃で回転させる。次いで樹脂を5×10mLのMilli−Q(登録商標)水(MILLIPORE、Billerica、MA)で洗浄し、2×10mLの10mMのNaHCOで平衡状態にする。
【0160】
前述のBUDGE活性化ステップの直後に、5mLの濾過ビーズケークに、2.5および2.3mg/mL濃度のA29K突然変異を含有するダイマーZドメインリガンド(配列番号85)または第二Zドメイン中にN末端欠失を含有するダイマーZドメインリガンド(配列番号78)を含有する10mMのNaHCOの10mL溶液を加える。ガラスバイアル中で混合物に蓋をし、バイアルは約2時間37℃で回転させる。2時間後、樹脂を10mLのMilli−Q(登録商標)水で3回洗浄する。濾過ビーズケーク(10mL)を、1mLのチオグリセロールならびに0.2M NaHCOおよび0.5M NaClを含む9mLのバッファー溶液で構成される10mL溶液を含有するジャーに加える。混合物はスラリー状にし、室温で一晩回転させる。次いで樹脂を10mLの以下のバッファー、0.15M NaCl(pH8)および50mMの酢酸(pH4.5)を含む0.1M トリスバッファーで3回洗浄する。これに、10mLのMilli−Q(登録商標)水および10mLの20%エタノール水溶液(v/v)を用いた樹脂のリンスを続ける。最終樹脂はさらに使用する前に20%アルコール水溶液(v/v)中で保存する。ダイマーCドメインリガンドと固形担体をカップリングさせる方法は、ダイマーZドメインリガンドに関して本明細書に記載する方法と同様である。
【0161】
前に記載した5ドメインリガンド(配列番号91および84)とアガロースベースの樹脂をカップリングさせる方法は、15mg/mLのリガンドをカップリングステップ中に使用すること以外、前述のプロセスと同様である。Zドメインペンタマーリガンドはヒス−6タグを含有しない。
【0162】
[実施例4]
遊離または固定リガンドの苛性浸漬後に回収した上清のSDS−PAGE分析
長時間の苛性曝露後の、本明細書に記載する遊離および固定リガンドの断片化を検出するのに、SDS−PAGE分析を使用することができる。SDS−PAGE手法は以下に記載する。
【0163】
Milli−Q(登録商標)水、中和苛性浸漬リガンド溶液、および中和樹脂浸漬溶液(それぞれ約0.5mg/mLのタンパク質を含有する。)中のSpAをLaemmliバッファー(BIORAD、Hercules、CA)で1:1比で希釈する。試料は5分間70℃において温置して、タンパク質が完全に変性したことを確実にする。10μLのそれぞれの試料は、AnyKDゲル(BIORAD、Hercules、CA)または15%トリス−HCl Readyゲル(BIORAD、Hercules、CA)に充填する。ゲル電気泳動は、30分間200ボルトで、1×トリス−グリシン−SDSランニングバッファー(THERMOFISHER、Waltham、MA)において実施する。次いでSDSゲルは1時間Gelcode Blue染色試薬(THERMOFISHER、Waltham、MA)中で染色し、一晩Milli−Q(登録商標)水中で脱色する。
【0164】
[実施例5]
遊離または固定リガンドの苛性浸漬後に回収した上清のSEC分析
前に記載したSDS−PAGE分析以外に、長時間の苛性浸漬後の遊離および固定リガンドの断片化分析に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用することもできる。SEC実験は以下に記載する。
【0165】
SECはAgilent1100HPLCシステム(AGILENT、Santa Clara、CA)において実施する。Milli−Q(登録商標)水、中和苛性浸漬リガンド溶液(約0.5mg/mL)、および中和樹脂浸漬溶液中のSpA対照は、SEC−HPLC分析前に10分間13500RPMで遠心分離する。試料はSECカラム(SEPAX Zenix7.8mm×300mm、SEPAX TECHNOLOGIES,INC.Newark、Delaware)に20μL注入する。リン酸ナトリウムバッファー(200mM、pH7.0)は、1mL/分の流速で移動相として使用する。AgilentからのChemStationソフトウェアは、230nmと280nmの両方でSECデータ収集および分析に使用する。
【0166】
[実施例6]
リガンドの苛性浸漬
実施例2中に記載したリガンドの発現後、リガンドはアルカリ条件に曝す。
【0167】
1mLの前に記載した各リガンドに(1mg/mLの濃度で)、1mLの1M NaOHを0.5M NaOHおよび0.5mg/mLリガンドの最終濃度まで加える。試料は25時間穏やかに回転させる。次いでこの溶液を、32μLの氷酢酸を使用してpH約7に中和する。
【0168】
苛性浸漬有りまたは無し後のSDS−PAGEを使用した、ZドメインおよびCドメインダイマーリガンドの断片化分析を図3中に示す。図3中で観察されるように、ダイマーZドメインリガンド(A29K欠失無し、配列番号85で示す、対照として使用する)は、スメアの存在および約7KDaのより小さな断片の存在によって実証されるように、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後に有意な断片化を示す(レーン3参照)。対照的に、A29K突然変異および第二ドメイン中に4つの連続したアミノ酸の欠失を有するダイマーZドメインリガンド(配列番号78のアミノ酸配列)は、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後に大部分は完全な状態であるようである(レーン6参照)。
【0169】
同様に、欠失を有していないダイマーCドメインリガンド(配列番号92で述べるアミノ酸配列、対照として使用する)は、そのアミノ酸配列を配列番号35で述べる第二ドメインのN末端から4つの連続したアミノ酸の欠失を含むダイマーCドメイン構築物に対して(レーン12参照)、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後にSDS−PAGE上のスメアおよび約7KDaのより小さな断片の存在を示す(レーン9参照)。
【0170】
ダイマーZおよびCドメインリガンドのそれぞれがヒス−6タグをさらに含む。苛性浸漬に曝されないリガンドは、レーン2(ダイマーZドメイン対照)、レーン5(N末端欠失を有するダイマーZドメインリガンド)、レーン8(ダイマーCドメイン対照)およびレーン9(N末端欠失を有するダイマーCドメインリガンド)中に示す。
【0171】
長時間の苛性浸漬後のN末端欠失を有するダイマーZおよびCドメインリガンドの低減した断片化は、SECによってさらに証明される。代表的なSEC実験の結果は、SECクロマトグラムの形で図4中に示す。図4中に見られるように、(配列番号85で述べるアミノ酸配列を有する)Zドメインリガンドおよび(配列番号92で述べるアミノ酸配列を有する)Cドメインリガンドの対照は、図4中のクロマトグラム上の矢印によって指定される有意な断片化を示す。対照的に、(Zドメインリガンドアミノ酸配列を配列番号78で述べ、Cドメインリガンドアミノ酸配列を配列番号35で述べる。)第二ドメイン中にN末端欠失を有するダイマーZおよびCドメインリガンドは、図4中のクロマトグラム上のボックスによって指定される低減した断片化を示す。
【0172】
さらに、前に記載したペンタマー型のZドメインリガンド(すなわち、対照を表し配列番号91のアミノ酸配列を有するペンタマーZドメインリガンド、および第一ドメイン以外の全てにおいて4つの連続したアミノ酸のN末端欠失を有するペンタマーリガンドを表し、配列番号84のアミノ酸配列を有するペンタマーZドメインリガンド)も、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後に、SDS−PAGEにより断片化に関して分析する。
【0173】
図5中に見られるSDS−PAGEゲルデータによって証明されるように、(そのアミノ酸配列を配列番号84で述べる。)第一ドメイン以外の全てにおいてN末端から4つの連続したアミノ酸の欠失を有するペンタマー型のZドメインリガンドは、そのアミノ酸配列を配列番号91で述べるペンタマーZドメインリガンド対照に対して(レーン6参照)、25時間0.5M NaOH中でのリガンド浸漬後に、はるかに低度の断片化を示す(レーン3参照)。前に論じたように、両型のペンタマーリガンドがA29K突然変異を有する。浸漬していないリガンドは完全な状態であるようである(レーン2および5)。
【0174】
レーン8−10は、精製プロセスにおいて通常使用する組換えSpAリガンド(rSPA)で観察された断片化を示す。rSPAリガンドは、SDS−PAGE上での付近のタンパク質の消失によって観察されるように、Zドメイン対照に対して、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後により一層高度な断片化を示すようである(レーン9参照)。苛性条件に曝していないrSPAリガンドはレーン8中に存在する。
【0175】
この結果は、本明細書に記載するN末端欠失を有するZドメインベースのリガンドは、例えばrSPAなどの通常使用されるSpAリガンドよりはるかに優れた候補であることを示唆するようである。
【0176】
N末端欠失を有するペンタマーZドメインリガンドで観察された、25時間0.5M NaOH中での苛性浸漬後の断片化の低減はSECを使用してさらに確認され、1つのこのような代表的な実験の結果は図6中に示す。
【0177】
図6中のクロマトグラムによって実証されるように、アミノ酸欠失を有していないペンタマー型のZドメイン対照(配列番号91)は、より低分子量の十分に分離したピークを示し、より小さな断片の存在が示される。対照的に、N末端欠失を有するペンタマー型のZドメイン(配列番号84)は、低い強度で有意に少ない異なるピークを示し、対照に対してはるかに低度の断片化が示される。
【0178】
通常使用されるSpAリガンド、rSPAは、完全な分子が全く残らない最も高度の断片化または分解を示す。特に、SECのクロマトグラムは図5中のSDS−PAGE分析の結果と一致し、苛性条件(すなわち、25時間0.5M NaOH中の浸漬)への長時間の曝露後に、rSPAリガンドは多量に分解され、したがってSECのクロマトグラムにおいて有意な断片を観察することができないことがさらに証明される。
【0179】
[実施例7]
樹脂上に固定されたリガンドの苛性浸漬
前述の実施例中に記載した様々なリガンドを、固形担体(例えば、アガロースクロマトグラフィー樹脂)とのそれらの結合後に、苛性曝露後の断片化に関して評価する。
【0180】
対象のそれぞれの樹脂に関して、5mLの使い捨てクロマトグラフィーカラム(EVERGREEN SCIENTIFIC、Los Angeles、CA)中の1mLの樹脂を、Milli−Q(登録商標)水を使用して測定する。すぐに2CV(2mL)の0.5M NaOHを含むカラムにおいて樹脂を条件付けし、再度スラリー状にし真空吸引する。NaOH条件をもう一回繰り返した後、真空吸引した樹脂のウエットケークは4mLの試験管(THERMOFISHER、Waltham、MA)に移す。2mLの0.5M NaOHを(底部を密封した)カラムに加え、相当する樹脂を含む試験管にすぐに移す。密封した試験管はローテーター上に置き、25時間試験管を回転させる。苛性浸漬の最後に、試験管の中身を使い捨てカラムに注ぎ、濾過物を回収する。1.5mL中の濾過物は50μLの氷酢酸で中和し、SECおよびSDS−PAGEによるさらなる分析用に用意する。
【0181】
長時間の苛性浸漬(例えば、25時間の0.5M NaOH浸漬)後の固定ダイマーZおよびCドメインリガンドのSDS−PAGE分析を図3中に示す。一般に、クロマトグラフィーマトリックス(例えば、アガロース樹脂)上へのその固定後にリガンドが苛性安定性である場合、それはいかなる有意な断片化も示さないことは予想される。
【0182】
図3のSDS−PAGEゲルによって観察されるように、対照固定ダイマーZとCドメインリガンドの両方(それぞれ配列番号85および92で述べるアミノ酸配列、ならびにそれぞれSDS−PAGEゲルのレーン4および10によって表す)ならびに第二ドメイン中にN末端欠失を含有するダイマーZおよびCドメイン固定リガンド(それぞれ配列番号78および35で述べるアミノ酸配列、ならびにそれぞれレーン7および13によって表す)は、25時間の0.5M NaOH浸漬後にいかなる検出可能な断片化も示さないようであり、それらがいずれも苛性安定性であることを示唆する。
【0183】
長時間の苛性浸漬(例えば、25時間の0.5M NaOH浸漬)後の固定ペンタマーZドメインリガンドのSDS−PAGE分析を図5中に示す。図5中のSDS−PAGEゲルによって観察されるように、第一ドメイン以外の全てにおいてN末端欠失を含有するペンタマーZドメインリガンド(配列番号84で述べるアミノ酸配列、SDS−PAGEゲルのレーン4によって表す)は、その野生型ペンタマーZドメイン対照と比較してはるかに低度の断片化を示す(配列番号91およびレーン7)。この結果は、N末端欠失を有する固定ペンタマーZドメインリガンドは、このような欠失を有していない固定ペンタマーZドメインと比較してより苛性安定性であることを示唆する。
【0184】
さらに、通常使用するリガンド(すなわちrSPA)の断片化も、アガロースクロマトグラフィー樹脂上へのその固定、ならびにリガンド付きの樹脂を25時間0.5M NaOH中の長時間浸漬に施した後にSDS−PAGEによって調べる。図5のSDS−PAGEゲルのレーン10において見られるように、固定rSPAは25時間の0.5M NaOH浸漬後に有意な断片化を示し、ペンタマーZドメインリガンドに比べて、それがさほど苛性安定性ではないことを示唆する(レーン4および7)。
【0185】
図5におけるSDS−PAGEゲルの結果に基づいて、N末端欠失を有する固定ペンタマーZドメインリガンドには長時間の苛性曝露後に最も低度の断片化があり、したがって、固定ペンタマーZドメイン対照リガンドおよび固定rSPAと比較して、最も苛性安定性であると結論付けることができる。
【0186】
固定ペンタマーZドメインリガンドとrSPAリガンドに関するSDS−PAGEの結果のさらなる確認は、SEC分析によって得る。代表的な実験の結果は、図7中に示すクロマトグラムにおいて示す。図7中に見られるように、配列番号84の固定Zドメインリガンドは、クロマトグラム上で分離したより低分子量のピークを示す配列番号91のその野生型対応物に比べて、ボックスによって示すように、長時間の苛性浸漬後に低減した断片化を示す。さらに、予想通り、固定rSPAは、クロマトグラム上の広域および非分離のピークにより観察されるように、長時間の苛性浸漬後に大規模な断片化を示す。
【0187】
[実施例8]
25時間0.5M NaOHへの曝露前後の免疫グロブリンに対するクロマトグラフィーマトリックスの静的結合能の測定
前に記載したアフィニティークロマトグラフィーマトリックス(すなわち、多点結合によって固定樹脂をその上に有する樹脂)を、25時間0.5M NaOHへの曝露前後の、それらの静的結合能に関してさらに試験する。
【0188】
一実験において、0.1、0.3もしくは0.5M NaOHのいずれかに曝した、またはNaOHへの曝露無しの、前に記載したダイマーまたはペンタマーZまたはCドメインリガンドと固定したクロマトグラフィーマトリックスのそれぞれ(1mL体積)を、Milli−Q(登録商標)水(MILLIPORE、Billerica、MA)中10%スラリーにする。1mLの各スラリーを10mMのリン酸生理食塩水バッファー中ポリクローナルIgG(SERACARE、1mg/mL))15mLに加え、室温で4時間回転させる。280nmにおけるUVの低下を使用して、苛性結合能前後の結合能を計算する。保持されたIgG結合能の割合は、苛性曝露後のIgG結合能を苛性曝露無しのそれで割ることによって計算する。表IIは1つのこのような実験の結果を要約する。表II中に要約されるように、配列番号78のダイマーZドメインリガンドは、25時間0.5M NaOH中での長時間苛性浸漬後に、その野生型対応物(すなわち、配列番号85のダイマーZドメインリガンド)に対して高い保持結合能を示す可能性がある。
【0189】
同様に、以下の表II中にさらに要約されるように、配列番号35のダイマーCドメインリガンドは、25時間0.5M NaOH中での長時間苛性浸漬後に、配列番号92のその野生型対応物より高い保持結合能を示す可能性がある。
【0190】
【表2】

【0191】
さらなる実験では、ペンタマーZドメインリガンドのIgG結合能を、25時間0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOH中での長時間苛性浸漬後に評価する。1つのこのような実験の結果は以下の表III中に要約する。
【0192】
表IIIは、0.1M NaOH、0.3M NaOHまたは0.5M NaOH中にマトリックスを浸漬した後の、A29K突然変異を含有し第一ドメイン以外の全てがN末端から4つの連続したアミノ酸の欠失を含むペンタマー型のZドメインリガンド(配列番号84で示すアミノ酸配列)がその上に固定されたマトリックスの、保持されたIgG結合能の割合を示す。以下に要約するように、ペンタマーZドメインN末端欠失リガンドを有するマトリックスは、25時間の0.1M NaOH浸漬後に初期結合能の最大95%、25時間の0.3M NaOH浸漬後に初期結合能の最大85%、および25時間0.5M NaOH浸漬後に初期結合能の最大65%を示す。
【0193】
【表3】

【0194】
[実施例9]
0.5M NaOHへの曝露前後のIgGのSpA捕捉
この実験では、第一ドメイン以外の全てが4つの連続したアミノ酸の欠失を有するZドメインリガンドのペンタマーが固定されたマトリックスを使用して、無CHO−Sフィードにおけるポリクローナル免疫グロブリンの精製を、組換えにより合成したSpA(rSPA)を有するそれと共に調べて、本発明によるリガンドは不純物を除去する際に組換えSpAと同程度に働くことを実証する。
【0195】
rSPA(REPLIGEN、Waltham、MA)、およびZドメインペンタマーリガンド(配列番号84で示すアミノ酸配列)を固定した樹脂試料を、1cm径および5cm充填床高を有するクロマトグラフィーカラムにそれぞれ充填する。リン酸生理食塩水バッファー(10mMのリン酸ナトリウム)による平衡化後、充填樹脂は、50cm/時間の流速の、ポリクローナルhIgG(SERACARE、5mg/mL)を含む無CHOフィードの曝露に施す。5%ブレイクスルーの90%での充填後、樹脂はPBSバッファーおよび50mM NaOAc、pH5.5で洗浄する。結合されているIgGは50mM NaOAc、pH3で後に溶出させる。分画を回収し、不純物の分析用に分析する。次いで充填樹脂は、無CHOフィード中のポリクローナルhIgGと再度接触させる前に、(流速100cm/時間)15分間0.5M NaOHに曝す。次いで樹脂はPBSバッファーおよび50mMのNaOAc、pH5.5で洗浄し、IgGはさらなるアッセイ用に溶出させる。
【0196】
この苛性曝露およびフィードランサイクルを繰り返して、後のカチオン交換ステップに十分なIgGを回収する。浸出プロテインAは、製造者からの説明書に従いn−プロテインA ELISA(REPLIGEN、Waltham、MA)を使用して定量化する。宿主細胞タンパク質は、製造者の説明書に従い3G CHO HCP ELISAキット(CYGNUS TECHNOLOGIES、Southport、NC)を使用して検出する。DNAはQuant−iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA試薬(LIFE TECHNOLOGIES、Foster City、CA)を使用して検出する。1つのこのような代表的実験の結果は表IV中に示す。
【0197】
[実施例10]
カチオン交換およびアニオン交換クロマトグラフィーを使用した、浸出SpAリガンドの排除ならびにDNAおよび宿主細胞タンパク質のさらなる除去
本発明によるSpAリガンドまたは組換えSpA、rSPAを含有するリガンド(REPLIGEN、Waltham、MA)のいずれかを取り込んだクロマトグラフィーアフィニティーマトリックスの溶出プールからの、浸出リガンドの排除ならびに宿主細胞タンパク質(HCP)およびDNAのさらなる除去を以下のように調べる。
【0198】
実施例8中に記載した実験の数回反復からの溶出プールの組合せは、カチオン交換クロマトグラフィーを使用する、浸出リガンドおよび他の不純物のさらなる排除のためのフィードを提供する。
【0199】
Fractogel SO(MILLIPORE、Billerica、MA)を、1.0cm(i.d.)×7cm(床高)の床寸法を有するカラムに充填する。カラムは50mM NaOAc pH4.5、4mS/cmで平衡状態にし、140cm/時間でプロテインA溶出物からプールしたIgGを充填する。EQバッファーでのカラム洗浄後、20カラム体積(直線勾配)の0.5N NaCl、50mM NaOAc中でIgGを溶出させる。溶出プールは10mL分画において回収し、浸出リガンド、DNAおよび宿主細胞タンパク質に関して分析する。
【0200】
Fractogel SOカラムからの分画をさらにプールし、12mS/cmでpH7.6に調節する。このフィードを、1mL/分の流速で、予め平衡状態にした(トリス、25mM、pH7.6、約1mS/cm)ChromaSorbデバイス(0.08mL、MILLIPORE、Billerica、MA)に充填する。実施例8中に記載したように、187毎のカラム体積で分画を回収し、浸出リガンドおよび宿主細胞タンパク質に関してさらに分析する。
【0201】
以下の表IV中に要約するように、浸出SpAリガンドと、第一ドメイン以外の全てが4つの連続したアミノ酸のN末端欠失を有するペンタマー型のZドメイン(配列番号84で示すアミノ酸配列)の両方を、カチオン交換およびアニオン交換クロマトグラフィー後に1PPM未満に排除することができる。さらに、以下の表中にも要約するように、宿主細胞タンパク質およびDNAの除去は業界標準に見合うものであり、いずれの場合もおおむね等しいものである。
【0202】
【表4】

【0203】
[実施例11]
長時間の苛性浸漬後のリガンドの断片化に対するN末端アミノ酸欠失数の影響
別の実験では、1、2、3または4つのアミノ酸残基を、位置1で始めダイマーZドメインリガンドの第二ドメインのN末端から欠失させ、長時間の苛性浸漬後のリガンドの断片化に対する1、2、3または4つのアミノ酸欠失の影響を、対照ダイマーZドメインリガンド(A29K)と比較して決定した。
【0204】
1つのこのような実験の結果は、図8中に示すクロマトグラムにおいて示す。図8中で実証されるように、ダイマーZドメインリガンドの第二ドメインのN末端から欠失したアミノ酸残基数の断片化に対する影響は、実施例5中に記載したように、25時間0.5M NaOH中での各リガンドの長時間の苛性浸漬後、次にSEC分析後に観察することができる。
【0205】
25時間0.5M NaOH中にリガンドを浸漬した後、対照リガンド(配列番号85)、第一アミノ酸のみが第二ドメインのN末端から欠失したリガンド(配列番号87)、最初の2つのアミノ酸が第二ドメインのN末端から欠失したリガンド(配列番号88)のそれぞれが、より低分子量において矢印により示される断片を示し、断片化が証明される。一方、最初の3つのアミノ酸が第二ドメインのN末端から欠失したリガンド(配列番号69)、および最初の4つのアミノ酸が第二ドメインのN末端から欠失したリガンド(配列番号78)は、より低分子量においてクロマトグラム中のボックスにより示される有意な低断片化を示し、低減した断片化が証明された。
【0206】
これらの結果は、プロテインAの1つ以上のドメインをベースとし1つ以上のドメインのN末端から欠失した少なくとも3つのアミノ酸を有するアフィニティーリガンドは、長時間の苛性曝露後に低減した断片化を示し、したがって、アフィニティークロマトグラフィーリガンドとして使用するのに優れた候補であることを示唆する。
【0207】
[実施例12]
いずれも非Fab突然変異(G29K)を有するN末端欠失と野生型Cドメインペンタマーの保持結合能の比較
この実験では、ポリビニルアルコールベースのクロマトグラフィーマトリックスに固定された2つのCドメインペンタマーリガンド、5ドメインそれぞれにおいて4アミノ酸の(位置1で始まる)N末端欠失、同種の翻訳後プロセシングを容易にするためのペンタマー配列の正に第一のアミノ酸としてアラニンおよびG29K突然変異を有する1つのリガンド(そのアミノ酸配列は配列番号93で示す)、およびG29K突然変異を有するその野生型対応物に相当するもう1つのリガンド(そのアミノ酸配列は配列番号95で示す)の保持結合能を調べる。
【0208】
多点結合によってポリビニルアルコールベースのアフィニティークロマトグラフィー樹脂にリガンドを固定し(例えば、Hermansonら、Immobilized Affinity Ligand Techniques、Academic Press、51−136頁(1992)参照)、反復NaOH曝露によって保持された動的結合能に関して試験する。
【0209】
一実験では、クロマトグラフィーマトリックスをカラム(0.66cm i.d.×1.0cm床高)に充填し、60cm/時間での平衡化、次に30mgポリクローナルヒトIgG(hIgG)の施用を用いた標準的なクロマトグラフィー操作を施す。平衡化バッファー(10mMのリン酸バッファー生理食塩水)を用いた非結合タンパク質の広範囲の洗浄除去後、結合IgGは60cm/時間で溶出バッファー(0.1Mクエン酸、pH3)を用いて溶出させる。これに30分間0.7M NaOHを用いた定置洗浄(CIP)を続ける。カラムを再度平衡状態にし、操作は16回より多く繰り返す(8時間0.7M NaOHへの累積曝露)。保持結合能は、経時的に溶出したIgGの合計量(UV280で測定したIgG濃度を掛けた溶出体積)を決定することにより測定する。相対的保持能力はNaOHへの0分曝露での第一操作に対してプロットし、図9中に示す。この実験は3回繰り返し、類似した結果である。図9中で実証されるように、欠失有りおよび無しの両方のCドメインペンタマーリガンドが、経時的にNaOHへの長時間曝露後、類似した保持結合能を示す。さらに、別の実験では、アラニンを含まずG29K突然変異を有するCドメインペンタマーリガンド(そのアミノ酸配列は配列番号80で示す)の保持結合能を、G29K突然変異を有するその野生型対応物(そのアミノ酸配列は配列番号95で示す)と比較し、類似した結果である(データ示さず)。
【0210】
本明細書は、参照により本明細書に組み込む本明細書内に引用した参照文献の教示に照らして、最も完全に理解される。本明細書内の実施形態は本発明における実施形態の例示となり、その範囲を限定するものとして解釈すべきではない。当業者は、多くの他の実施形態が本発明によって包含されることを容易に認識する。全ての刊行物および発明はそれらの全容を参照により本明細書に組み込む。参照により本明細書に組み込む内容が本明細書に反するかまたは一致しない範囲では、本明細書は任意のこのような内容に取って代わる。本明細書中の任意の参照文献の引用は、このような参照文献が本発明に対する従来技術であることを認めるものではない。
【0211】
特に他に示さない限り、特許請求の範囲を含めて本明細書中で使用する成分、細胞培養、処理条件などの量を表す全ての数値は、用語「約」により、全ての場合において修正されるものと理解される。したがって、特に逆の記載がない限り、数値パラメータは近似値であり、本発明により得ようとする所望の性質に応じて変わり得る。特に他に示さない限り、一連の要素の前にある用語「少なくとも」は、一連の各要素を指すと理解されたい。当業者は、単なる通常の実験を使用して、本明細書に記載する本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。
【0212】
当業者には明らかであるように、本発明の多くの変更形態および変形は、その精神および範囲から逸脱せずに作製することができる。本明細書に記載する具体的な実施形態は単なる例によって与え、決して限定的であることを意味するものではない。本明細書および実施例は単なる例示的なものとして考えられ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲により示されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のスタフィロコッカス(Staphylococcus)プロテインA(SpA)のCドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーリガンドであって、少なくとも1つのCドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの少なくとも3つの連続したアミノ酸の欠失を含む、アフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項2】
1つ以上のスタフィロコッカスプロテインA(SpA)のBドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーリガンドであって、少なくとも1つのBドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの少なくとも3つの連続したアミノ酸の欠失を含む、アフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項3】
1つ以上のスタフィロコッカスプロテインA(SpA)のZドメインを含むアフィニティークロマトグラフィーリガンドであって、少なくとも1つのZドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの少なくとも3つの連続したアミノ酸の欠失を含む、アフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項4】
少なくとも5時間の0.5M NaOHへの曝露後に、野生型対応物に比べて、低減した断片化を示す、請求項1、2または3に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項5】
固形担体と結合されている請求項1、2または3に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンドを含む、アフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項6】
固形担体と結合された時にリガンドが、5時間の0.5M NaOHへの曝露後に、野生型対応物に比べて、低減した断片化を示す、請求項5のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項7】
リガンドの1つ以上のドメインが位置29に、Fab結合を低減するアミノ酸突然変異をさらに含む、請求項1、2または3に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項8】
アミノ酸突然変異が、リジンアミノ酸残基によるグリシンアミノ酸残基またはアラニンアミノ酸残基の置換を含む、請求項7のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項9】
アフィニティークロマトグラフィーリガンドが多点結合によって固形担体と結合されている、請求項5のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項10】
2、3、4、5、6、7つまたはこれらを超える、スタフィロコッカスプロテインA(SpA)のCドメインを含み、少なくとも1つのCドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続したアミノ酸の欠失、またはN末端からの4つの連続したアミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続したアミノ酸の欠失を含む、請求項1に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項11】
2、3、4、5、6、7つまたはこれらを超える、スタフィロコッカスプロテインA(SpA)のZドメインを含み、少なくとも1つのZドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続したアミノ酸の欠失、またはN末端からの4アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続したアミノ酸の欠失を含む、請求項3に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項12】
2、3、4、5、6、7つまたはこれらを超える、スタフィロコッカスプロテインA(SpA)のBドメインを含み、少なくとも1つのBドメインが、位置1または位置2で始まる、N末端からの3つの連続したアミノ酸の欠失、またはN末端からの4アミノ酸の欠失、またはN末端からの5つの連続したアミノ酸の欠失を含む、請求項2に記載のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項13】
試料から1つ以上の標的分子をアフィニティー精製する方法であって、
(a)1つ以上の標的分子を含む試料を提供するステップ、
(b)1つ以上の標的分子がマトリックスと結合するような条件下において試料を請求項5に記載のマトリックスと接触させるステップ、および
(c)溶出によって1つ以上の結合されている標的分子を回収するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
0.5M NaOH中での5時間の温置後に、その初期結合能の少なくとも95%を保持する、請求項5のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項15】
0.1M NaOH中での25時間の温置後に、その初期結合能の少なくとも95%を保持する、請求項5のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項16】
構造式:
[(X)、(Y)n+m
を含むアフィニティーリガンドであって、
式中、XがSpAのBドメイン、ZドメインまたはCドメインを表し、
nがゼロから(m−1)の範囲のドメイン数を表し、
Yが、少なくとも3つの連続したアミノ酸をN末端から欠失している、SpAのBドメインまたはZドメインまたはCドメインを表し、
mが1から8の範囲のYドメイン数を表し、リガンドは多点結合によって固形担体と結合されている、アフィニティーリガンド。
【請求項17】
アフィニティークロマトグラフィーリガンドであって、2つ以上の、SpAのBドメイン、または2つ以上の、SpAのCドメイン、または2つ以上の、SpAのZドメイン、または任意の順序における、B、ZもしくはCドメインの任意の組合せを含み、B、CまたはZドメインの少なくとも1つが、位置1または位置2で始まる、N末端からの少なくとも3アミノ酸の欠失を含む、アフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項18】
5時間の0.5M NaOHへの曝露後に、いかなる欠失も含まないリガンドに比べて、低減した断片化を示す、請求項17のアフィニティークロマトグラフィーリガンド。
【請求項19】
固形担体が、多孔性ガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アガロース、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコールおよびポリスチレンならびにこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項5または請求項9に記載のアフィニティークロマトグラフィーマトリックス。
【請求項20】
アルカリ安定性アフィニティークロマトグラフィーリガンドであって、少なくとも5つのCドメインを含み、前記ドメインのそれぞれが、Fab結合を低減する突然変異および位置1で始まる、N末端からの4アミノ酸の欠失を含む、アルカリ安定性アフィニティークロマトグラフィーリガンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−254981(P2012−254981A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−124067(P2012−124067)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】