説明

新規なチオウレタン樹脂及びそれよりなる透明光学樹脂部材

【課題】 高屈折率と高アッベ数を両立した新規なチオウレタン樹脂及びそれからなる透明光学樹脂部材を提供する。
【解決手段】 少なくとも下記一般式(1)で表される環状脂肪族ジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物、とを重合してなるチオウレタン樹脂。
【化1】


(式中、n1は0または1を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物、とからなる新規なチオウレタン樹脂に関するものであり、特に高屈折率と高アッベ数を両立することから光学レンズ、光学フィルター、透明基板、表示素子、光学記録媒体などの光学部材の材料として適した新規なチオウレタン樹脂及びそれからなる透明光学樹脂部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックによる光学素材は、ガラスに代表される無機素材に比べて軽く、壊れ難く、染色が可能なため、光学レンズ、光学フィルター、透明基板などの素材として注目を浴びてきた。そして、特にレンズ等に使用した際に、レンズの厚みを薄くできるともに色収差が小さいことから、高屈折率及び高アッベ数を有するプラスチック素材の開発が期待されている。
【0003】
透明光学樹脂の中でも、ポリカーボネートは、1.58と高い屈折率を有する反面、アッベ数は30と低いことから、色収差、すなわち屈折率の波長依存性が大きくなるという課題を有するのみならず、光学的均一性に欠けやすく、耐溶剤性、耐摩擦性に劣るものであった。
【0004】
また、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)をラジカル重合した樹脂は、58という高いアッベ数を有し色収差が小さく、耐衝撃性、染色性、加工性が良好であるものの、屈折率が1.50と小さいものであった。
【0005】
このように、屈折率を高めると色収差が大きくなり、色収差を小さくすると屈折率が低くなるという課題があり、高屈折率と高アッベ数を両立する材料の開発が望まれており、高屈折率と高アッベ数を両立した樹脂として、イソシアネート化合物とポリチオール化合物との重付加反応により得られるポリチオウレタン系樹脂(例えば特許文献1,2参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−046213号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開平09−071625号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2において提案されたポリチオウレタン樹脂についても、屈折率については1.55以上と高屈折率を有するものであったが、アッベ数に関しては不十分であり、高屈折率と高アッベ数の両立という点ではまだ課題を有するものであった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高屈折率と高アッベ数を両立した新規なチオウレタン樹脂、および、それからなる透明光学樹脂部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のジイソシアネート化合物を用いてなるチオウレタン樹脂が高屈折率及び高アッベ数を有し、さらに透明性、硬度、及び耐熱性などの諸物性に優れた透明光学樹脂部材となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくとも下記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物、とを重合してなることを特徴とするチオウレタン樹脂及びそれからなる透明光学樹脂部材に関するものである。
【0011】
【化1】

(式中n1は、0ないし1を表す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のチオウレタン樹脂は、少なくとも上記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物とを重合反応に供することにより得られるチオウレタン樹脂である。
【0013】
ここで、上記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物としては、上記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、trans−2,3−ビス(イソシアノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカン等を挙げることができる。そして、上記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物以外のイソシアネート化合物である場合、得られるチオウレタン樹脂は、高屈折率と高アッベ数の両立を達成することが困難となる。
【0014】
また、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物はチオール基を有することから、該イソシアネート化合物のイソシアネート基と付加反応しチオウレタン結合を形成しチオウレタン樹脂となるものである。ここで、チオール基を持たない化合物である場合、得られる樹脂は高屈折率と高アッベ数の両立を達成することが困難となる。
【0015】
そして、該ポリチオール化合物としては、分子内にチオール基を2個以上有する化合物であれば如何なる制限を受けるものではなく、例えばメタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ(2,2,1)ペプタ−exo−cis−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート) 、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等、の脂肪族ポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物;ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等のチオール基以外にも分子内に硫黄原子を含む脂肪族ポリチオール;1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、 1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等の芳香族ポリチオール;2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(p−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換芳香族ポリチオール;2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール等、の複素環を含有したポリチオール及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換化合物;等が挙げられ、これらは、それぞれ単独又は二種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
ヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物としては、分子内に少なくともチオール基とヒドロキシル基をそれぞれ1個以上有する化合物であれば如何なるものであってもよく、例えば2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,4−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、等の化合物、これらの塩素置換体、臭素置換体のハロゲン置換体等を挙げることができ、これらは、単独又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
そして、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基を有する化合物は、特に複屈折の低いチオウレタン樹脂となることから、脂肪族系化合物であることが好ましく、さらに1.55以上の高屈折率と50以上の高アッベ数を両立したチオウレタン樹脂となることから、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)であることが好ましい。
【0018】
該ジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基を有する化合物、とを接触することにより容易に付加反応が進行し、重合を行うことが可能となり、容易に本発明のチオウレタン樹脂とすることが可能である。そして、該チオウレタン樹脂とする際の該ジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基を有する化合物、との割合は任意であり、その中でもより効率的にチオウレタン樹脂が得られることから、該ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基/ポリチオール化合物、ヒドロキシル基とチオール基を有する化合物中のチオール基とヒドロキシ基の合計量で表される官能基モル比(NCO/(SH+OH))が0.5〜3.0であることが好ましく、特に0.5〜1.5であることが好ましい。
【0019】
本発明のチオウレタン樹脂を製造する際には、少なくとも該ジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基を有する化合物、とを混合する際に優れた流動性を有することから効率的な製造が可能となることから、必要に応じて溶媒を加えることも可能である。このような溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド等があげられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量に制限はなく、その中でも溶媒を除去してチオウレタン樹脂を成型する際に溶媒の除去がより容易であることから、溶媒を含めた反応混合物全体の0〜60重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明のチオウレタン樹脂を製造する際の該ジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はチオール基とヒドロキシル基を有する化合物、との重合を行う際の温度としては任意であり、その中でもより効率的な製造が可能となることから、50〜200℃であることが好ましい。また、重合時間も任意であり、例えば1分〜20時間で行うことが可能である。重合を行う際の雰囲気についても任意であり、その中でも雰囲気中の水分による副反応を抑制し、チオウレタン樹脂の効率的な製造が可能となることから、乾燥空気;窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス;これらの混合気体の下で重合を行うことが好ましい。
【0021】
本発明のチオウレタン樹脂を製造する際には、本発明のチオウレタン樹脂の範疇を逸脱しない限りにおいて、該ジイソシアネート化合物、ポリチオール化合物、チオール基とヒドロキシル基を有する化合物以外の化合物を用いることができ、そのような化合物としては、他のイソシアネート化合物;1,4−ジチアン−2,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,ジエチレングリコ−ル,2−メチル−1,3−プロパンジオール,3−メチル−1,5−ペンタンジオール,シクロヘキサンジオール,シクロヘキサンジメタノール等のポリオール化合物、らの活性水素化合物等を挙げることができる。また、ウレタン樹脂等において、鎖延長剤、架橋剤等として知られる化合物であってもよい。また、目的に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤などの種々の物質を添加してもよいし、所望の反応速度に調整するために、ポリウレタンの製造において用いられる公知の反応触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン触媒:酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの錫系触媒、らを適宜に添加することもできる。
【0022】
そして、本発明のチオウレタン樹脂を製造する際には、例えば該ジイソシアネート化合物と、該ポリチオール化合物及び/又はチオール基とヒドロキシル基を有する化合物、との混合物を金型等に注入し、そのまま重合を行うことにより成型体とすることが可能であり、該成型体は透明光学樹脂部材とすることも可能である。
【0023】
本発明のチオウレタン樹脂は、高屈折率と高アッベ数とを両立することから、光学レンズ、光学フィルター、透明基板、表示素子、光学記録媒体、LED封止材、太陽電池封止材などの透明光学樹脂部材として使用できる。
【発明の効果】
【0024】
高屈折率と高アッベ数を両立する上に、透明性、硬度、耐熱性などの諸物性にも優れる透明光学樹脂である新規なチオウレタン樹脂を提供する。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
得られたチオウレタン樹脂の評価は以下の方法により行った。
【0027】
(屈折率の測定)
フィルムの屈折率は、多波長アッベ屈折計(アタゴ(ATAGO)社製、(商品名)DR−M2)を用い、25℃で測定した。また、中間液には「Refractive Index Liquids nD25℃=1.7000」(Cargille)を使用した。
【0028】
(アッベ数の測定)
アッベ数は下記の式に従って算出した。
アッベ数=(nD−1)/(nF−nC)
(式中、nD、nF、nCはそれぞれ、波長598nm、486nm、656nmにおける屈折率を表す。)
(透明性の測定)
視認により透明性を評価した。
【0029】
(表面硬度の測定)
鉛筆引掻き試験機を用いて鉛筆硬度を測定した。
【0030】
(耐熱性の測定)
熱重量分析計(Thermo Gravimetry Analysis)及び示差熱分析計(Differential Thermal Analysis)を用いて測定した。
【0031】
trans−2,3−ビス(アミノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン及びtrans−2,3−ビス(アミノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンの調製は、特開2009−209114号公報に準拠した。
【0032】
調製例1(trans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタンの調製)
(環状脂肪族ジハライド製造工程)
ジシクロペンタジエン(和光純薬)212g(1.6mol)とtrans−1,4−ジクロロ−2−ブテン(東京化成)800g(6.4mol)を2リットルのオートクレーブに仕込んだ。内部を窒素置換した後、攪拌しながら170℃まで昇温し、そのまま5時間加熱攪拌した。反応終了後、25℃まで温度を下げ、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液は褐色溶液であった。得られた褐色の溶液を0.4kPaの減圧下で蒸留し、80〜93℃の範囲の留出分を集めることにより、純度94重量%のtrans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エンを364.7g(ジシクロペンタジエン基準の収率:60%)の無色溶液として得た。
【0033】
(水素化工程)
300mlのオートクレーブに上記で得られたtrans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エン150gおよびエタノール50gと5wt%Pd/C(エヌ・イー ケムキャット社製)2.0gを入れて、窒素置換した。その後、攪拌しながらオートクレーブ内の温度を50℃に上げ、水素を供給し1.0MPaに保ち2時間後、反応液を取り出した。得られた反応液をろ過後、0.4kPaの減圧下で蒸留し88〜90℃の範囲の留出分を集めガスクロマトグラフで分析した結果、trans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エンは完全に転化し、trans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタンの選択率は91%であった。
【0034】
(ガブリエル反応工程)
3lのガラス製セパラブルフラスコにジメチルホルムアミド(和光純薬)900gとフタルイミドカリウム(和光純薬)300g(1.6mol)を入れ、さらに上記で得られたtrans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタンを100g(0.47mol)加えて、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の温度を140℃に上げて8時間加熱攪拌した。反応終了後室温まで冷却し、水1000gを添加し30分間攪拌した。攪拌後メンブレンフィルターを用いて、吸引ろ過し固形分をろ別した。ろ別した固形分をセパラブルフラスコに移し、エタノール1500gを添加後80℃で加熱攪拌し、エタノール還流状態でヒドラジン(和光純薬)160g(3.2mol)を添加した。80℃で2時間加熱攪拌した後、室温まで冷却しメンブレンフィルターで吸引ろ過した。このろ液をガスクロマトグラフで分析した結果、trans−2,3−ビス(アミノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタンの収率は49%であった。
【0035】
(イソシアネート化工程)
2lのガラス製セパラブルフラスコに、上記で得られたtrans−2,3−ビス(アミノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン80g(0.52mol)とo−ジクロロベンゼン(和光純薬)500mlを入れて溶解させた。ここに塩化水素ガスを、白色スラリーが析出して変化がなくなるまで、4時間かけて導入した。なお、この際、適宜水浴を用いて除熱し、反応液を30℃以下に保った。次に、155℃に加熱しながら、この反応液にトリホスゲン(東京化成)256g(0.86mol)のo−ジクロロベンゼン(和光純薬)(750ml)溶液を8時間かけて滴下し、滴下後さらに1時間の加熱の後、室温まで冷却した。その後、60℃に加熱しながら窒素ガスを5時間バブリングし、塩化水素ガスを除いた。この反応液を0.2kPaの減圧下で蒸留し44〜46℃の範囲の留出分を集め、ガスクロマトグラフによって分析した結果、収率74%でtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン(79g)を得た。
【0036】
調製例2(trans−2,3−ビス(イソシアノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンの調製)
(環状脂肪族ジハライド製造工程)
ジシクロペンタジエン212g(1.6mol)とtrans−1,4−ジクロロ−2−ブテン800g(6.4mol)を2リットルのオートクレーブに仕込んだ。内部を窒素置換した後、攪拌しながら170℃まで昇温し、そのまま5時間加熱攪拌した。反応終了後、25℃まで温度を下げ、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液は褐色溶液であった。得られた褐色の溶液を0.4kPaの減圧下で蒸留し、80〜93℃の範囲の留出分を集めることにより、純度94重量%のtrans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エンを364.7g(ジシクロペンタジエン基準の収率:60%)の無色溶液として得た。
【0037】
さらにジシクロペンタジエン53g(0.4mol)と上記trans−2,3−ビス(クロロメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エンを308g(1.6mol)を1リットルのオートクレーブを用いて上記と同様の条件で反応を行った。反応終了後、25℃まで温度を下げ、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液は褐色溶液であった。得られた褐色の溶液を0.04kPaの減圧下で蒸留し、90〜105℃の範囲の留出分を集めることにより、純度90重量%のtrans−2,3−ビス(クロロメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカ−7−エンを105g(ジシクロペンタジエン基準の収率:51%)の無色溶液として得た。
【0038】
(水素化工程)
300mlのオートクレーブに上記で得られたtrans−2,3−ビス(クロロメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカ−7−エン50gおよびエタノール50gと5wt%Pd/C(エヌ・イー ケムキャット社製)2.0gを入れて、窒素置換した。その後、攪拌しながらオートクレーブ内の温度を50℃に上げ、水素を供給し1.0MPaに保ち2時間後、反応液を取り出した。得られた反応液をろ過後、0.04kPaの減圧下で蒸留し88〜105℃の範囲の留出分を集めガスクロマトグラフで分析した結果、trans−2,3−ビス(クロロメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカ−7−エンは完全に転化し、trans−2,3−ビス(クロロメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンの選択率は90%であった。
【0039】
(ガブリエル反応工程)
300mlのガラス製セパラブルフラスコにジメチルホルムアミド90gとフタルイミドカリウム30g(0.16mol)を入れ、さらに上記で得られたtrans−2,3−ビス(クロロメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンを13g(0.050mol)加えて、攪拌しながらセパラブルフラスコ内の温度を140℃に上げて8時間加熱攪拌した。反応終了後室温まで冷却し、水100gを添加し30分間攪拌した。攪拌後メンブレンフィルターを用いて、吸引ろ過し固形分をろ別した。ろ別した固形分をセパラブルフラスコに移し、エタノール150gを添加後80℃で加熱攪拌し、エタノール還流状態でヒドラジン16g(0.32mol)を添加した。80℃で2時間加熱攪拌した後、室温まで冷却しメンブレンフィルターで吸引ろ過した。このろ液をガスクロマトグラフで分析した結果、trans−2,3−ビス(アミノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンの収率は45%であった。
【0040】
(イソシアネート化工程)
50mlのガラス製フラスコに、上記で得られたtrans−2,3−ビス(アミノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカン4.4g(0.020mol)とo−ジクロロベンゼン20mlを入れて溶解させた。ここに塩化水素ガスを、白色スラリーが析出して変化がなくなるまで、1時間かけて導入した。なお、この際、適宜水浴を用いて除熱し、反応液を30℃以下に保った。次に、155℃に加熱しながら、この反応液にトリホスゲン10.2g(0.034mol)のo−ジクロロベンゼン(30ml)溶液を2時間かけて滴下し、滴下後さらに1時間の加熱の後、室温まで冷却した。その後、60℃に加熱しながら窒素ガスを5時間バブリングし、塩化水素ガスを除いた。この反応液を0.02kPaの減圧下で蒸留し53〜57℃の範囲の留出分を集め、ガスクロマトグラフによって分析した結果、収率62%でtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカン(3.4g)を得た。
【0041】
実施例1
窒素雰囲気下で調製例1で得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0g(9.7mmol)に脱水1,2−ジメトキシエタン(和光純薬)1mlを加え、塩氷浴中で−10℃に冷却しながら、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(和光純薬:以下、PEMPと略す。)2.4g(4.8mmol)の脱水1,2−ジメトキシエタン(1ml)溶液を加え、そのまま塩氷浴中で1時間攪拌し、混合液の調製を行った。
【0042】
該混合液をPET基板上にスピンコート(800rpm、5秒)し、窒素下50℃で3時間、80℃で3時間、120度で5時間熱重合させて、PET基板から剥離することで、無色透明なチオウレタン樹脂フィルムを得た。
【0043】
また、混合液をモールドに注入し、50℃で5時間、80℃で3時間、120度で10時間熱重合させてチオウレタン樹脂成型体を成型した。
【0044】
フィルムから屈折率とアッベ数を、成型品から鉛筆硬度、比重、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
窒素雰囲気下で調製例1により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0g(9.7mmol)に、ジブチル錫ジラウレート(東京化成)4.0mg(0.006mmol)、脱水1,2−ジクロロエタン(和光純薬)1mlを加え、塩氷浴中で−10℃に冷却しながら、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール0.80g(6.4mmol)の脱水1,2−ジクロロエタン(1ml)溶液を加え、そのまま塩氷浴中で1時間攪拌し、混合液の調製を行った。
【0046】
該混合液をPET基板上にスピンコート(800rpm、5秒)し、窒素下50℃で3時間、80℃で3時間、120度で5時間熱重合させて、PET基板から剥離することで、無色透明なチオウレタン樹脂フィルムを得た。
【0047】
また、混合液をモールドに注入し、50℃で5時間、80℃で3時間、120度で10時間熱重合させてチオウレタン樹脂成型体を成型した。
【0048】
フィルムから屈折率とアッベ数を、成型品から鉛筆硬度、比重、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例3
窒素雰囲気下で調製例1により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0g(9.7mmol)に、ジブチル錫ジラウレート4.0mg(0.006mmol)、脱水1,2−ジメトキシエタン1mlを加え、塩氷浴中で−10℃に冷却しながら、PEMP1.8g(3.6mmol)と1,4−ジチアン−2,5−ジオール(和光純薬)0.38g(2.5mmol)の混合物の脱水1,2−ジメトキシエタン(1ml)溶液を加え、そのまま塩氷浴中で1時間攪拌し、混合液の調製を行った。
【0050】
該混合液をPET基板上にスピンコート(800rpm、5秒)し、窒素下50℃で3時間、80℃で3時間、120度で5時間熱重合させて、PET基板から剥離することで、無色透明なチオウレタン樹脂フィルムを得た。
【0051】
また、混合液をモールドに注入し、50℃で5時間、80℃で3時間、120度で10時間熱重合させてチオウレタン樹脂成型体を成型した。
【0052】
フィルムから屈折率とアッベ数を、成型品から鉛筆硬度、比重、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
調製例1により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0gの代わりに調製例2により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカン2.7g(9.7mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、チオウレタン樹脂、チオウレタン樹脂フィルム、成型体の製造を行った。
【0054】
得られたチオウレタン樹脂の評価結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
調製例1により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0gの代わりにm−キシリレンジイソシアネート(東京化成)1.8g(9.7mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、チオウレタン樹脂、チオウレタン樹脂フィルム、成型体の製造を行った。
【0056】
得られたチオウレタン樹脂の評価結果を表1に示す。得られたチオウレタン樹脂はアッベ数が低く、色収差に劣るものであった。
【0057】
比較例2
調製例1により得られたtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン2.0gの代わりにヘキサメチレンジイソシアネート(和光純薬)1.6g(9.7mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、チオウレタン樹脂、チオウレタン樹脂フィルム、成型体の製造を行った。
【0058】
得られたチオウレタン樹脂の評価結果を表1に示す。得られたチオウレタン樹脂はアッベ数が低く、色収差に劣ると共に、硬度も低いものであった。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の新規なチオウレタン樹脂は、高屈折率と高アッベ数を両立する上に、透明性、硬度、耐熱性などの諸物性にも優れる透明光学樹脂であり、光学レンズ、光学フィルター、透明基板、表示素子、光学記録媒体などの光学樹脂部材の材料として期待されれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)で表されるジイソシアネート化合物と、ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物、とを重合してなることを特徴とするチオウレタン樹脂。
【化1】

(式中、n1は0または1を示す。)
【請求項2】
ジイソシアネート化合物が、trans−2,3−ビス(イソシアノメチル)ビシクロ(2,2,1)ヘプタン及び/又はtrans−2,3−ビス(イソシアノメチル)テトラシクロ(6,2,1,13.6,02.7)ドデカンであることを特徴とする請求項1に記載のチオウレタン樹脂。
【請求項3】
ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物が、脂肪族系化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のチオウレタン樹脂。
【請求項4】
ポリチオール化合物及び/又はヒドロキシル基とチオール基とを共に有する化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)及び/又は2,3−ジメルカプト−1−プロパノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチオウレタン樹脂。
【請求項5】
イソシアネート基モル数/(チオール基とヒドロキシ基の合計モル数)=0.5〜3の範囲内で重合してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチオウレタン樹脂。
【請求項6】
さらにポリオール化合物をも重合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチオウレタン樹脂。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のチオウレタン樹脂からなることを特徴とする透明光学樹脂部材。

【公開番号】特開2012−214568(P2012−214568A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79548(P2011−79548)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】