説明

新規なトリアジン誘導体、紫外線吸収剤

【課題】優れた耐光性、耐熱性及び紫外線遮蔽効果を有する、紫外線吸収剤として有用な新規なトリアジン系化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。



[一般式(1)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。Xは、水素原子又は置換基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なトリアジン誘導体、及び紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線吸収剤を種々の樹脂などと共用して紫外線吸収性を付与することが行われている。紫外線吸収剤として無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤を用いる場合がある。無機系紫外線吸収剤では、耐候性や耐熱性などの耐久性に優れている反面、吸収波長が化合物のバンドギャップによって決定されるため選択の自由度が少ない。そのため、400nm付近の長波紫外線(UV−A)領域まで吸収できるものはなく、長波紫外線を吸収するものは可視域まで吸収を有するため着色を伴ってしまう。
これに対して、有機系紫外線吸収剤は、吸収剤の構造設計の自由度が高いために、吸収剤の構造を工夫することによって様々な吸収波長のものを得ることができる。
【0003】
近年開発の進む太陽電池等に適用される材料は、屋外で長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での紫外線の暴露により、その性質が劣化することは避けられなかった。このため、耐熱性などの耐久性の他、UV−A領域まで遮蔽効果を示し、耐光性に優れた有機系紫外線吸収剤化合物が求められている。
これまでに、様々な有機系紫外線吸収剤を用いた系が検討されており、トリアゾール系やトリアジン系の紫外線吸収剤が開示されている。特許文献1には特定の位置にアルコキシ基及びヒドロキシ基を有するトリスアリール−s−トリアジンが記載されている。特許文献2にはヒドロキシ基を有するトリスアリール−s−トリアジンが連結基を介して多量化した化合物が記載されている。
さらに、公知のトリアジン系化合物として、特許文献3、4及び5には、有機電界発光素子用の有機材料などとして期待される、ジフェニル−トリアジンが連結基を介して二量化された化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3965631号公報
【特許文献2】特開平8−53427号公報
【特許文献3】特開2006−225322号公報
【特許文献4】特開2006−225320号公報
【特許文献5】特開平8−20579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討の結果、特許文献1記載の化合物は耐熱性が不十分である上、極大吸収波長が長波紫外線領域にあるものは耐光性が悪く、紫外線遮蔽効果が時間とともに減少していってしまうことが分かった。特許文献2記載の化合物は連結基部分において化合物の共役が遮断されるために、耐光性が不十分であることが分かった。また、特許文献3、及び4に記載の化合物については紫外線吸収能に関する記載がなく、紫外線吸収剤用の有機材料として、検討の余地があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、高い紫外線遮蔽効果を示し、優れた耐光性及び耐熱性を有する紫外線吸収剤として有用な新規なトリアジン系化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、トリアジン系化合物について詳細に検討した結果、従来知られていない構造を有する化合物を見出した。また、該化合物が、これまでにない優れた耐光性、耐熱性及び紫外線遮蔽効果を有する紫外線吸収剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の課題は、以下の方法によって達成された。
【0009】
〔1〕
下記一般式(1)で表される化合物。
【0010】
【化1】


[一般式(1)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。Xは、水素原子又は置換基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
〔2〕
前記一般式(1)におけるXが、芳香族環又はヘテロ環残基で表される〔1〕に記載の化合物。
〔3〕
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。
【0011】
【化2】


[一般式(2)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。また、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
〔4〕
前記一般式(2)におけるR2e、R2f、R2g、R2h及びR2iのいずれかが電子求引性基で表される、又は、R2e、R2f、R2g、R2h、R2iが互いに結合して環を形成する際、該形成環が置換基として電子求引性基を有することを特徴とする、〔3〕に記載の化合物。
〔5〕
前記電子求引性基が、−CN又はCOORで表される〔4〕に記載の化合物。
は、水素原子又は置換基を表す。
〔6〕
前記一般式(1)におけるL又は前記一般式(2)におけるLが、2価の芳香族環又はヘテロ環残基で表される基である、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔7〕
前記一般式(1)におけるL又は前記一般式(2)におけるLが、2価の芳香族環残基であり、該芳香族環がベンゼン環又はナフタレン環である、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の化合物。
〔8〕
前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の化合物。
【0012】
【化3】


[一般式(3)中、R3a、R3b、R3c、R3d、R3e、R3f、R3g、R3h、R3i、R3j、R3k、R3m、R3p、R3q、R3r、R3s、R3t、R3u、R3v、R3w、R3x、及びR3yは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の化合物を含有する紫外線吸収剤。
〔10〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の化合物を含有する樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、これまでにない優れた耐光性、耐熱性及び紫外線遮蔽効果を有し、紫外線吸収剤として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔一般式(1)で表される化合物〕
本発明は下記一般式(1)で表される化合物に関する。一般式(1)で表される化合物は、構造中にヒドロキシル基を有するために、光励起状態でのプロトン移動により熱失活することにより、耐光性が優れる。また、連結基を介して多量化された化合物であるため高分子量となり、揮酸しにくく、耐熱性に優れる。さらに、化合物構造全域において共役系を保っているため、効率的に光エネルギーを熱エネルギーに変換することにより、耐光性に優れるという特徴を有する。
【0015】
【化4】

【0016】
[一般式(1)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。Xは、水素原子又は置換基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【0017】
一般式(1)におけるLは、2〜10価の芳香族環またはヘテロ環残基を表す。
は下記芳香族環とヘテロ環構造とを有する多環構造であってもよく、下記の環が単結合により複数連結した構造であってもよい。
【0018】
一般式(1)中、Lが表す2〜10価の芳香族環残基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ピレン環、トリフェニレン環、コランヌレン環、コロネン環、オバレン環、又はフェナントレン環より水素原子を1つ取り去った基またはこれらの環を複数連結した基を挙げることができる。また、これらの環は置換基を有していても良い。
本発明において、芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環より水素原子を1つ取り去った基であることが好ましく、ベンゼン環、又はナフタレン環より水素原子を1つ取り去った基であることが紫外線遮蔽効果と耐光性の観点から、より好ましい。
【0019】
一般式(1)中、Lが表す2〜10価のヘテロ環残基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、1,2,3−オキサジアゾール環、又は1,3,4−チアジアゾール環より水素原子を1つ取り去った基を挙げることができる。また、これらの環は置換基を有していても良い。好ましくは、ピロール環、ピリジン環、フラン環、又はチオフェン環より水素原子を1つ取り去った基である。より好ましくは、ピリジン環、又はチオフェン環より水素原子を1つ取り去った基である。更に好ましくは、チオフェン環より水素原子を1つ取り去った基である。
【0020】
が表す芳香族環又はヘテロ環が置換基を有する場合の置換基(以下置換基Rとする)としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、アミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、イミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基(例えばメトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アシルオキシ基(例えばアセトキシ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、炭素数6〜20のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。
また、置換基Rは更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。その際、置換基の例としては、上述の置換基Rを挙げることができる。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
が表す芳香族環又はヘテロ環残基が置換基を有する場合の置換基は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
【0021】
は、好ましくは2〜4価の芳香族環又はヘテロ環残基であり、2価又は3価であることがより好ましく、2価の芳香族環残基であることが更に好ましく、2価のベンゼン環、又はナフタレン環残基であることが紫外線遮蔽効果と耐光性の観点から特に好ましく、2価のベンゼン環残基であることが耐光性の観点から最も好ましい。
また、Lが2価のベンゼン環残基を表す場合、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、又は1,4−フェニレンを表し、紫外線遮蔽効果の観点から1,3−フェニレン、又は1,4−フェニレンが好ましく、紫外線遮蔽効果の観点から1,4−フェニレンがより好ましい。
【0022】
前記一般式(1)におけるnは、2〜10の整数を表す。
として好ましくは2〜5の整数であり、2又は3であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。紫外線遮蔽効果と耐光性のためである。
【0023】
前記一般式(1)におけるXは、水素原子又は置換基を表す。
が表す置換基としては、前記置換基Rを挙げることができ、アルキル基、アルコキシカルボニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数6〜20のヘテロ環基であることが好ましく、紫外線吸収効果の高い炭素数6〜20のアリール基又は炭素数6〜20のヘテロ環基であることがより好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ビフェニル環であることがより好ましい。
【0024】
が表す置換基は更に置換されていても良く、電子求引性基で置換されていることが好ましい。
本発明において、Xは、無置換又は電子求引性基で置換された炭素数6〜20のアリール基又は炭素数6〜20のヘテロ環基であることが好ましく、無置換又は電子求引性基で置換されたベンゼン環、ナフタレン環、チオフェン環、ビフェニル環であることがより好ましい。
が電子求引性基で置換されたベンゼン環を表す場合、o−位又はp−位が電子求引性基で置換されたフェニル基であることが好ましく、p−位が電子求引性基で置換されたフェニル基であることがより好ましい。耐光性のためである。
が電子求引性基で置換されたナフタレン環を表す場合、3位又は6位が電子求引性基で置換された2−ナフチル基であることが好ましく、6位が電子求引性基で置換された2−ナフチル基であることがより好ましい。紫外線遮蔽効果が優れるためである。
【0025】
前記電子求引性基としては、COOR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、水素原子、アルキル基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。)、CONR(Rは、水素原子又は1価の置換基を表し、例えば、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のヘテロ環基が挙げられ、好ましくは水素原子である。)、シアノ基、ニトロ基、SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシ基(又はその塩)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基(例えばCF)、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルコキシ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアリールオキシ基、アシルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルアミノ基、少なくとも2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキルチオ基、他の電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。
耐光性の観点から、好ましくはCOOR、又はシアノ基である。
【0026】
前記一般式(1)におけるR1a、R1b、R1c、及びR1dは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。R1aとR1b、R1bとR1c、又はR1cとR1dが互いに結合して環を形成することが好ましく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、又はホスホール環が挙げられる。また、これらの環はさらに置換基を有していても良い。
【0027】
前記R1a、R1b、R1c、及びR1dが表す置換基としては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基、置換又は無置換のカルバモイル基、置換又は無置換のアルキルカルボニル基、ニトロ基、置換又は無置換のアミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、置換又は無置換のアリールオキシ基、置換又は無置換のスルファモイル基、チオシアネート基、又は置換又は無置換のアルキルスルホニル基であり、置換基を有する場合の置換基がハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、スルファモイル基、チオシアネート基、又はアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0028】
本発明において、前記R1a、R1b、R1c、及びR1dが水素原子であることが耐光性の観点から好ましく、R1a、R1b、R1c及びR1dが水素原子を表すことが更に好ましい。
【0029】
本発明の前記一般式(1)で表される化合物は、耐光性の観点から、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化5】

【0031】
[一般式(2)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環を表す。nは、2〜10の整数を表す。R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。また、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【0032】
一般式(2)中、L、n、R2a、R2b、R2c、及びR2dは、前記一般式(1)のL、n、R1a、R1b、R1c、及びR1dと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0033】
一般式(2)中、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。
前記一般式(2)におけるR2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが表す置換基としては、前記一般式(1)のXが表す置換基が更に置換された場合の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0034】
2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが互いに結合して環を形成する場合、R2eとR2f、R2fとR2g、R2gとR2h、又はR2hとR2iが互いに結合して環を形成することが好ましく、形成される環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、又はホスホール環が挙げられる。また、これらの環はさらに置換基を有していても良い。
【0035】
2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが互いに結合して環を形成する場合、ベンゼン環を形成することが好ましい。
2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが互いに結合してベンゼン環を形成し、全体としてナフタレン環を形成した場合には、ナフタレン環特有の吸収により、紫外線遮蔽効果が高くなるためである。
【0036】
本発明においては、前記一般式(2)におけるR2e、R2f、R2g、R2h及びR2iのいずれかが電子求引性基で表される、又は、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが互いに結合して環を形成する際、該形成環が置換基として電子求引性基を有することが耐光性の観点から好ましく、前記電子求引性基が、−CN又はCOORであることが特に好ましい。
電子求引性基を有することにより、LUMOが安定化されるため、励起寿命が短くなり、優れた耐光性を示すためである。
【0037】
一般式(2)における一の態様として、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iが水素原子であることが好ましい。また、別の態様としては、R2eが電子求引性基であってR2f、R2g、R2h、及びR2iが水素原子である、R2gが電子求引性基であってR2e、R2f、R2h、及びR2iが水素原子である、又はR2iが電子求引性基であってR2e、R2f、R2g、及びR2hが水素原子であることが好ましい。
【0038】
本発明の前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物は、紫外線遮蔽効果の観点から、下記一般式(3)で表される化合物であることがより好ましい。多量体形成のための連結基をベンゼン環とすることで共役が切れることがなく、また、その連結位置をp位とすることで、伸縮振動により紫外線吸収が効果的に増大するためである。
【0039】
【化6】

【0040】
[一般式(3)中、R3a、R3b、R3c、R3d、R3e、R3f、R3g、R3h、R3i、R3j、R3k、R3m、R3p、R3q、R3r、R3s、R3t、R3u、R3v、R3w、R3x、及びR3yは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【0041】
一般式(3)中、R3a、R3b、R3c、R3d、R3j、R3k、R3m、及びR3pは、前記一般式(1)のR1a、R1b、R1c、R1dと同義であり、好ましい範囲も同様である。
また、一般式(3)中、R3e、R3f、R3g、R3h、R3i、R3q、R3r、R3s、R3t、及びR3uは、前記一般式(2)のR2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
一般式(3)中、R3v、R3w、R3x、及びR3yは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、前記一般式(1)におけるLが表す2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基が置換基を有する場合の置換基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明において、前記R3v、R3w、R3x、及びR3yが水素原子又は炭素数1〜20のアルコキシル基であること紫外線遮蔽効果の観点から好ましく、R3v、R3w、R3x、及びR3yが水素原子を表すことがより好ましい。
【0043】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
なお、下記の具体例中Meはメチル基を表す。
【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本発明においては代表的な形の一つで記述しているが、本発明の記述と異なる互変異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0047】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0048】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。
例えば、公知の特許文献や非特許文献、例えば、特開平7−188190号公報、特開平11−315072、特開2001−220385号公報、「染料と薬品」第40巻12号(1995)の325〜339ページなどを参考にして合成できる。具体的には、塩化シアヌルと芳香族環、ヘテロ環、ハロゲン化アルキルなどをFriedel−Crafts反応によって合成することができる。また、ベンゾオキサジノンとアミジンなどとの反応により合成することも可能である。
【0049】
本発明の化合物は、有機材料を光・酸素又は熱による損傷に対して安定化させるのに特に適している。中でも本発明の前記一般式(1)〜(3)で表される化合物は、光安定剤、とりわけ紫外線吸収剤として好適に用いることができる。
【0050】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物は、紫外線吸収剤として有用である。
以下、前記一般式(1)〜(3)で表される紫外線吸収剤について説明する。
【0051】
本発明の一般式(1)〜(3)で表される紫外線吸収剤の好ましいもの及び具体例は、本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物の好ましいもの及び具体例と同様のものを挙げることができる。
【0052】
本発明の紫外線吸収剤は、一般式(1)〜(3)で表される。本発明の一般式(1)〜(3)で表される紫外線吸収剤は多量化された化合物であるため高分子量となり、分子間相互作用が大きくなり、熱による揮散性が低減することにより、耐熱性に優れる。また、化合物構造全域において共役系を保っているため、光エネルギーにより励起された状態を、広がった共役系により、効率的に緩和することができることにより、耐光性に優れるという特徴を有するため、長時間使用した場合でも紫外線遮蔽効果が減少したり、分解せず黄変することがないという効果が得られる。
【0053】
前記一般式(1)〜(3)で表される紫外線吸収剤は、一種のみ用いてもよく、二種以上を併用することもできる。
本発明の紫外線吸収剤の使用形態は、いずれでも良い。例えば、液体分散物、溶液、樹脂組成物などが挙げられる。
本発明の紫外線吸収剤の極大吸収波長は、特に限定されないが、好ましくは250〜400nmであり、より好ましくは280〜380nmである。半値幅は好ましくは20〜100nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
【0054】
本発明において規定される極大吸収波長及び半値幅は、当業者が容易に測定することができる。測定方法に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座 7 分光II」(丸善,1992年)180〜186ページなどに記載されている。具体的には、適当な溶媒に試料を溶解し、石英製又はガラス製のセルを用いて、試料用と対照用の2つのセルを使用して分光光度計によって測定される。用いる溶媒は、試料の溶解性と合わせて、測定波長領域に吸収を持たないこと、溶質分子との相互作用が小さいこと、揮発性があまり著しくないこと等が要求される。上記条件を満たす溶媒であれば、任意のものを選択することができる。本発明においては、酢酸エチル(EtOAc)を溶媒に用いて測定を行うこととする。
【0055】
本発明における化合物の極大吸収波長及び半値幅は、酢酸エチルを溶媒として、濃度約5×10−5mol・dm−3の溶液を調製し、光路長10mmの石英セルを使用して測定した値を使用する。
【0056】
スペクトルの半値幅に関しては、例えば日本化学会編「第4版実験化学講座3 基本操作III」(丸善、1991年)154ページなどに記載がある。なお、上記成書では波数目盛りで横軸を取った例で半値幅の説明がなされているが、本発明における半値幅は波長目盛りで軸を取った場合の値を用いることとし、半値幅の単位はnmである。具体的には、極大吸収波長における吸光度の1/2の吸収帯の幅を表し、吸収スペクトルの形を表す値として用いられる。半値幅が小さいスペクトルはシャープなスペクトルであり、半値幅が大きいスペクトルはブロードなスペクトルである。ブロードなスペクトルを与える紫外線吸収化合物は、極大吸収波長から長波側の幅広い領域にも吸収を有するので、黄色味着色がなく長波紫外線領域を効果的に遮蔽するためには、半値幅が小さいスペクトルを有する紫外線吸収化合物の方が好ましい。
【0057】
時田澄男著「化学セミナー9 カラーケミストリー」(丸善、1982年)154〜155ページに記載されているように、光の吸収の強さすなわち振動子強度はモル吸光係数の積分に比例し、吸収スペクトルの対称性がよいときは、振動子強度は極大吸収波長における吸光度と半値幅の積に比例する(但しこの場合の半値幅は波長目盛りで軸を取った値である)。このことは遷移モーメントの値が同じとした場合、半値幅が小さいスペクトルを有する化合物は極大吸収波長における吸光度が大きくなることを意味している。このような紫外線吸収化合物は少量使用するだけで極大吸収波長周辺の領域を効果的に遮蔽できるメリットがあるが、波長が極大吸収波長から少し離れると急激に吸光度が減少するために、幅広い領域を遮蔽することができない。
【0058】
紫外線吸収剤は、極大吸収波長におけるモル吸光係数が20000以上であることが好ましく、30000以上であることがより好ましく、50000以上であることが特に好ましい。20000以上であれば、紫外線吸収剤の質量当たりの吸収効率が十分得られるため、紫外線領域を完全に吸収するための紫外線吸収剤の使用量を低減できる。これは皮膚刺激性や生体内への蓄積を防ぐ観点、及びブリードアウトが生じにくい点から好ましい。なお、モル吸光係数については、例えば日本化学会編「新版実験化学講座9 分析化学[II]」(丸善、1977年)244ページなどに記載されている定義を用いたものであり、上述した極大吸収波長及び半値幅を求める際に合わせて求めることができる。
【0059】
本発明の紫外線吸収剤(以下単に「紫外線吸収剤」と称する場合がある)は、紫外線吸収剤が分散媒体に分散された分散物の状態でも使用できる。以下、本発明の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤分散物について説明する。
本発明の紫外線吸収剤を分散する媒体はいずれのものであってもよい。例えば、水、有機溶剤、樹脂、樹脂の溶液などが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0060】
本発明に用いられる分散媒体の有機溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなどのエーテル系、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、メチルエチルケトンなどのケトン系、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン系、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸系、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系、テトラヒドロフラン、ピリジンなどのヘテロ環系、などが挙げられる。これらを任意の割合で組み合わせて使用することもできる。
【0061】
本発明に用いられる分散媒体の樹脂としては、従来公知の各種成形体、シート、フィルム等の製造に従来から使用されている熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等が挙げられ、これらは一種又は二種以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして使用される。また、これらの樹脂は、ナチュラル樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤等を含有させた熱可塑性成形材料としても使用される。また、必要に応じて従来使用されている樹脂用の添加剤、例えば、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックス、金属石鹸等を単独であるいは組み合わせて使用することもできる。
【0062】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、これらはナチュラル樹脂のほかガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズ等のフィラーや難燃剤を含有させた熱硬化性成形材料としても使用することができる。
【0063】
紫外線吸収剤を含む分散物には、分散剤、泡防止剤、保存剤、凍結防止剤、界面活性剤などを合わせて用いることもできる。その他に任意の化合物を合わせて含んでいてもよい。例えば、染料、顔料、赤外線吸収剤、香料、重合性化合物、ポリマー、無機物、金属などが挙げられる。
【0064】
本発明の紫外線吸収剤を含む分散物を得るための装置として、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機などを使用できる。具体的には、コロイドミル、ホモジナイザー、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置などがある。本発明で使用するのに好ましい高速攪拌型分散機は、ディゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケデイーミル、ジェットアジターなど、分散作用する要部が液中で高速回転(500〜15,000rpm。好ましくは2,000〜4,000rpm)するタイプの分散機である。本発明で使用する高速攪拌型分散機は、ディゾルバーないしは高速インペラー分散機とも呼ばれ、特開昭55−129136号公報にも記載されているように、高速で回転する軸に鋸歯状のプレートを交互に上下方向に折り曲げたインペラーを着装して成るものも好ましい一例である。
【0065】
疎水性化合物を含む乳化分散物を調製する際には、種々のプロセスに従うことができる。例えば、疎水性化合物を有機溶媒に溶解するときは、高沸点有機物質、水非混和性低沸点有機溶媒又は水混和性有機溶媒の中から任意に選択された一種、又は二種以上の任意の複数成分混和物に溶解し、次いで界面活性化合物の存在化で、水中あるいは親水性コロイド水溶液中に分散せしめる。疎水性化合物を含む水不溶性相と水性相との混合方法としては、攪拌下に水性相中に水不溶性相を加えるいわゆる順混合法でも、その逆の逆混合法でもよい。
【0066】
また、本発明の紫外線吸収剤は、液体状の媒体に溶解された溶液の状態でも使用できる。以下、本発明の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤溶液について説明する。
本発明の紫外線吸収剤を溶解する液体はいずれのものであってもよい。例えば、水、有機溶剤、樹脂、樹脂の溶液などが挙げられる。有機溶剤、樹脂、樹脂の溶液の例としては、上述の分散媒体として記載したものが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明の紫外線吸収剤の溶液は、その他に任意の化合物を合わせて含んでいてもよい。例えば、染料、顔料、赤外線吸収剤、香料、重合性化合物、ポリマー、無機物、金属などが挙げられる。本発明の紫外線吸収剤以外は必ずしも溶解していなくてもよい。
【0068】
本発明の紫外線吸収剤を含む溶液における前記紫外線吸収剤の含有量は、使用目的と使用形態によって異なるため一義的に定めることはできないが、使用する目的に応じて任意の濃度であってよい。好ましくは溶液の全量に対して0.001〜30質量%であり、より好ましくは0.01〜10質量%である。あらかじめ高濃度で溶液を作製しておき、所望の時に希釈して使用することもできる。希釈溶媒としては上述の溶媒から任意に選択できる。
【0069】
本発明の紫外線吸収剤によって安定化されるものは、染料、顔料、食品、飲料、身体ケア製品、ビタミン剤、医薬品、インク、油、脂肪、ロウ、表面コーティング、化粧品、写真材料、織物及びその色素、プラスチック材料、ゴム、塗料、樹脂組成物、高分子添加剤などが挙げられる。
本発明の紫外線吸収剤を用いる場合、その態様はいずれの方法であってもよい。本発明の紫外線吸収剤を単独で用いても、組成物として用いても良いが、組成物として用いることが好ましい。中でも、本発明の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物であることが好ましい。以下、本発明の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物について説明する。
【0070】
〔樹脂組成物〕
本発明の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物は樹脂を含有する。本発明の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物は、樹脂を任意の溶媒に溶解して形成されたものでもよい。
【0071】
本発明の紫外線吸収剤は、様々な方法で樹脂組成物に含有させることができる。本発明の紫外線吸収剤が樹脂組成物との相溶性を有する場合は、本発明の紫外線吸収剤を樹脂組成物に直接添加することができる。樹脂組成物との相溶性を有する補助溶媒に、本発明の紫外線吸収剤を溶解し、その溶液を樹脂組成物に添加してもよい。本発明の紫外線吸収剤を高沸点有機溶媒やポリマー中に分散し、その分散物を樹脂組成物に添加してもよい。
【0072】
(高沸点有機溶媒)
高沸点有機溶媒の沸点は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。高沸点有機溶媒の融点は、150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが更に好ましい。高沸点有機溶媒の例には、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、安息香酸エステル、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、炭酸エステル、アミド、エーテル、ハロゲン化炭化水素、アルコール及びパラフィンが含まれる。リン酸エステル、ホスホン酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸エステル及び脂肪酸エステルが好ましい。
本発明の紫外線吸収剤の添加方法については、特開昭58−209735号、同63−264748号、特開平4−191851号、同8−272058号の各公報及び英国特許第2016017A号明細書を参考にできる。
【0073】
(樹脂)
樹脂組成物に用いられる樹脂について説明する。樹脂としては、天然あるいは合成ポリマーのいずれであってもよい。例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ4−メチルペンテン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリシクロペンテン、ポリノルボルネンなど)、ビニルモノマーのコポリマー(例えば、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/メチルペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキサンコポリマー、エチレン/シクロオレフィンコポリマー(例えば、エチレン/ノルボルネンのようなシクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo−Olefin Copolymer))、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/ビニルシクロヘキセンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマーなど)、アクリル系ポリマー(例えば、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリルなど)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ポリエーテル(例えば、ポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ポリアセタール(例えば、ポリオキシメチレン)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリスルホンポリエーテルケトン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、セルロースエステル(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリシロキサン、天然ポリマー(例えば、セルロース、ゴム、ゼラチンなど)、などが挙げられる。
【0074】
本発明に用いられる樹脂は、合成ポリマーである場合が好ましく、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロースエステルがより好ましい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが特に好ましい。
本発明に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0075】
本発明において、紫外線吸収剤として、異なる構造を有する二種類以上の前記一般式(1)〜(3)で表される化合物を併用してもよい。また、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物とそれ以外の構造を有する一種類以上の紫外線吸収剤とを併用してもよい。基本骨格構造の異なる二種類(好ましくは三種類)の紫外線吸収剤を併用すると、広い波長領域の紫外線を吸収することができる。また、二種類以上の紫外線吸収剤を併用すると、紫外線吸収剤の分散状態が安定化する作用もある。前記一般式(1)〜(3)以外の構造を有する紫外線吸収剤としては、いずれのものでも使用でき、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、メロシアニン系、シアニン系、ジベンゾイルメタン系、桂皮酸系、シアノアクリレート系、安息香酸エステル系などの化合物が挙げられる。例えば、ファインケミカル、2004年5月号、28〜38ページ、東レリサーチセンター調査研究部門発行「高分子用機能性添加剤の新展開」(東レリサーチセンター、1999年)96〜140ページ、大勝靖一監修「高分子添加剤の開発と環境対策」(シーエムシー出版、2003年)54〜64ページなどに記載されている紫外線吸収剤が挙げられる。
【0076】
前記一般式(1)〜(3)以外の構造を有する紫外線吸収剤として好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸系化合物、ベンゾオキサジノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、メロシアニン系化合物、トリアジン系化合物である。より好ましくはベンゾオキサジノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物である。特に好ましくはベンゾオキサジノン系化合物である。上記一般式(1)以外の構造を有する紫外線吸収剤は、特開2008−273950号公報の段落番号〔0117〕〜〔0121〕に詳述されており、該公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0077】
前述したように、本発明においては、一般式(1)〜(3)で表される化合物とベンゾオキサジノン系化合物を組み合わせて用いることが好ましい。一般式(1)〜(3)で表される化合物は長波長領域においても優れた耐光性を有するため、より長波長領域まで遮蔽可能なベンゾオキサジノンの劣化を防ぐという効果を奏し、ベンゾオキサジノン系化合物と共に用いることで、より長波長領域まで長時間において遮蔽効果が持続できるため好ましい。
【0078】
本発明においては、本発明の紫外線吸収剤のみで実用的には十分な紫外線遮蔽効果が得られるものの、更に厳密を要求する場合には隠蔽力の強い白色顔料、例えば酸化チタンなどを併用してもよい。また、外観、色調が問題となる時、あるいは好みによって微量(0.05質量%以下)の着色剤を併用することができる。また、透明あるいは白色であることが重要である用途に対しては蛍光増白剤を併用してもよい。蛍光増白剤としては市販のものや特開2002−53824号公報記載の一般式[1]や具体的化合物例1〜35などが挙げられる。
【0079】
本発明の紫外線吸収剤は、所望の性能を付与するために必要な任意の量を含有させることができる。これらは用いる化合物や樹脂によって異なるが、適宜含有量を決定することができる。含有量としては樹脂組成物中0質量%より大きく20質量%以下であることが好ましく、0質量%より大きく10質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上5質量%以下であることが更に好ましい。含有量が上記の範囲であれば十分な紫外線遮蔽効果が得られ、ブリードアウトを抑制することができるため好ましい。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、上記の高分子物質及び紫外線安定剤に加えて、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、加工安定剤、老化防止剤、相溶化剤等の任意の添加剤を適宜含有してもよい。
【0081】
本発明の紫外線吸収剤を含む樹脂組成物は、合成樹脂が使用される全ての用途に使用可能であるが、特に日光又は紫外線を含む光に晒される可能性のある用途に特に好適に使用できる。具体例としては、例えばガラス代替品とその表面コーティング材、住居、施設、輸送機器等の窓ガラス、採光ガラス及び光源保護ガラス用のコーティング材、住居、施設、輸送機器等のウインドウフィルム、住居、施設、輸送機器等の内外装材及び内外装用塗料及び該塗料によって形成させる塗膜、アルキド樹脂ラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜、アクリルラッカー塗料及び該塗料によって形成される塗膜、蛍光灯、水銀灯等の紫外線を発する光源用部材、精密機械、電子電気機器用部材、各種ディスプレイから発生する電磁波等の遮断用材、食品、化学品、薬品等の容器又は包装材、ボトル、ボックス、ブリスター、カップ、特殊包装用、コンパクトディスクコート、農工業用シート又はフィルム材、印刷物、染色物、染顔料等の退色防止剤、ポリマー支持体用(例えば、機械及び自動車部品のようなプラスチック製部品用)の保護膜、印刷物オーバーコート、インクジェット媒体被膜、積層艶消し、オプティカルライトフィルム、安全ガラス/フロントガラス中間層、エレクトロクロミック/フォトクロミック用途、オーバーラミネートフィルム、太陽熱制御膜、日焼け止めクリーム、シャンプー、リンス、整髪料等の化粧品、スポーツウェア、ストッキング、帽子等の衣料用繊維製品及び繊維、カーテン、絨毯、壁紙等の家庭用内装品、プラスチックレンズ、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、義眼等の医療用器具、光学フィルタ、バックライトディスプレーフィルム、プリズム、鏡、写真材料等の光学用品、金型膜、転写式ステッカー、落書き防止膜、テープ、インク等の文房具、標示板、標示器等とその表面コーティング材等を挙げることができる。
【0082】
本発明の樹脂組成物より形成した高分子成型品の形状としては、平膜状、粉状、球状粒子、破砕粒子、塊状連続体、繊維状、管状、中空糸状、粒状、板状、多孔質状などのいずれの形状であってもよい。
【0083】
本発明の樹脂組成物は、本発明の紫外線吸収剤を含有しているため、優れた耐光性(紫外光堅牢性)を有しており、紫外線吸収剤の析出や長期使用によるブリードアウトが生じることがない。また、本発明の樹脂組成物は、優れた長波紫外線吸収能を有するので、紫外線吸収フィルタや容器として用いることができ、紫外線に弱い化合物などを保護することもできる。例えば、前記高分子物質を押出成形又は射出成形などの任意の方法により成形することで、本発明の樹脂組成物からなる成形品(容器等)を得ることができる。また、別途作製した成形品に前記高分子物質の溶液を塗布・乾燥することで、本発明の樹脂組成物からなる紫外線吸収膜がコーティングされた成形品を得ることもできる。
【0084】
本発明の樹脂組成物を紫外線吸収フィルタや紫外線吸収膜として用いる場合、高分子物質は透明であることが好ましい。透明樹脂の例としては、セルロースエステル(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、ポリメチルメタクリレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びポリオキシエチレンなどが挙げられる。好ましくはセルロースエステル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル樹脂であり、より好ましくはポリカーボネート、ポリエステルである。更に好ましくはポリエステルであり、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートである。本発明の樹脂組成物より得られた高分子成型品は透明支持体として用いることもでき、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。
【0085】
本発明においては特開2009−209343号公報の段落番号〔0192〕〜〔0230〕に記載されている事項を適用できる。
【0086】
本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る包装材料であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、熱収縮性ポリエステル、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、ROMPなどが挙げられる。例えば無機物の蒸着薄膜層を有する樹脂であってもよい。例えば紫外線吸収剤を含む樹脂を塗布した紙であってもよい。
【0087】
本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料は、食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品等いずれのものを包装するものであってもよい。例えば、食品包装、着色液体包装、記載の液状製剤用包装、医薬品容器包装、医療品用滅菌包装、写真感光材料包装、写真フィルム包装、紫外線硬化型インク用包装、シュリンクラベルなどが挙げられる。
【0088】
本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料は、例えば透明包装体であってもよいし、遮光性包装体であってもよい。
【0089】
本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料は、例えば紫外線遮蔽性を有するだけでなく、他の性能を合わせて持っていても良い。例えばガスバリヤー性を合わせて有するものや、酸素インジケータを内包するものや、紫外線吸収剤と蛍光増白剤を組み合わせるものなどが挙げられる。
【0090】
本発明の紫外線吸収剤を含む包装材料は、いずれの方法を用いて製造してもよい。インキ層を形成させる方法、紫外線吸収剤を含有した樹脂を溶融押出し積層する方法、基材フィルム上にコーティングする方法、接着剤に紫外線吸収剤を分散する方法などが挙げられる。
【0091】
本発明の紫外線吸収剤を含む容器について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む容器は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る容器であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂容器、ポリエステル製容器、ポリエチレンナフタレート製容器、ポリエチレン製容器、環状オレフィン系樹脂組成物製容器、プラスチック容器、透明ポリアミド容器などが挙げられる。例えば樹脂を含む紙容器であってもよい。紫外線吸収層を有するガラス容器であってもよい。
【0092】
本発明の紫外線吸収剤を含む容器の用途は食料品、飲料、薬剤、化粧品、個人ケア用品、シャンプー等いずれのものを入れるものであってもよい。液体燃料貯蔵容器、ゴルフボール容器、食品用容器、酒用容器、薬剤充填容器、飲料容器、油性食品用容器、分析試薬用溶液容器、即席麺容器、耐光性化粧料容器、医薬品容器、高純度薬品液用容器、液剤用容器、紫外線硬化型インク用容器、Wプラスチックアンプルなどが挙げられる。
【0093】
本発明の紫外線吸収剤を含む容器は、紫外線遮断性を有するだけでなく、他の性能を合わせて持っていてもよい。例えば抗菌性容器、可撓性容器、ディスペンサー容器、生分解性容器などが挙げられる。
【0094】
本発明の紫外線吸収剤を含む容器はいずれの方法を用いて製造してもよい。例えば二層延伸ブロー成形による方法、多層共押出ブロー成形方法、容器の外側に紫外線吸収層を形成させる方法、収縮性フィルムを用いた方法、超臨界流体を用いる方法などが挙げられる。
【0095】
本発明の紫外線吸収剤を含む塗料及び塗膜について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む塗料は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの成分からなる塗料であってもよい。例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アミノアルキッド樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系などが挙げられる。これらの樹脂は主剤、硬化剤、希釈剤、レベリング剤、はじき防止剤などを任意に配合することができる。
【0096】
例えば、透明樹脂成分としてアクリルウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂を選んだ場合には、硬化剤としてポリイソシアネートなどを、希釈剤としてトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル系溶剤、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系を用いることができる。また、ここでアクリルウレタン樹脂とは、メタクリル酸エステル(メチルが代表的)とヒドロキシエチルメタクリレート共重合体とポリイソシアネートと反応させて得られるアクリルウレタン樹脂をいう。なおこの場合のポリイソシアネートとはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。透明樹脂成分としては、他にも例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチルスチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。更にこれら成分に加えアクリル樹脂、シリコーン樹脂などのレベリング剤、シリコーン系、アクリル系等のはじき防止剤等を必要に応じて配合することができる。
【0097】
本発明の紫外線吸収剤を含む塗料の使用目的としてはいずれの用途であってもよい。例えば紫外線遮蔽塗料、紫外線・近赤外線遮断塗料、電磁波遮蔽用塗料、クリアー塗料、メタリック塗料組成物、カチオン電着塗料、抗菌性及び無鉛性カチオン電着塗料、粉体塗料、水性中塗り塗料、水性メタリック塗料、水性クリヤー塗料、自動車、建築物、土木系品に用いられる上塗り用塗料、硬化性塗料、自動車バンパー等プラスチック材等に使用される塗膜形成組成物、金属板用塗料、硬化傾斜塗膜、電線用塗装材、自動車補修塗料、アニオン電着塗料、自動車用塗料、塗装鋼板用塗料、ステンレス用塗料、ランプ用防虫塗料、紫外線硬化型塗料、特抗菌性塗料、眼精疲労防止用塗料、防曇塗料、超耐候性塗料、傾斜塗料、光触媒塗料、可剥塗料、コンクリート剥離用塗料、防食塗料、保護塗料、撥水性保護塗料、板ガラス飛散防止用塗料、アルカリ可溶型保護塗料、水性一時保護塗料組成物、床用塗料、エマルション塗料、2液型水性塗料、1液性塗料、UV硬化性塗料、電子線硬化型塗料組成物、熱硬化性塗料組成物、焼付ラッカー用水性塗料、粉体塗料及びスラリー塗料、補修用塗料、粉体塗料水分散物、プラスチック用塗料、電子線硬化型塗料などが挙げられる。
【0098】
本発明の紫外線吸収剤を含む塗料は一般に塗料(透明樹脂成分を主成分として含む)及び紫外線吸収剤から構成されるが、好ましくは樹脂を基準に考えて紫外線吸収剤0〜20質量%の組成である。塗布する際の厚さは、好ましくは2〜1000μmであるが、更に好ましくは5〜200μmの間である。これら塗料を塗布する方法は任意であるが、スプレー法、ディッピング法、ローラーコート法、フローコーター法、流し塗り法などがある。塗布後の乾燥は塗料成分によって異なるが概ね室温〜120℃で10〜90分程度行うことが好ましい。
【0099】
本発明の紫外線吸収剤を含む塗膜は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物からなる紫外線吸収剤を含む塗膜であり、上記の本発明の紫外線吸収剤を含む塗料を用いて形成された塗膜である。
【0100】
本発明の紫外線吸収剤を含むインクについて説明する。本発明の紫外線吸収剤を含むインクは、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの形態のインクであってもよい。例えば、染料インク、顔料インク、水性インク、油性インクなどが挙げられる。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、グラビア印刷インク、平版オフセット印刷インク、凸版印刷インク、UVインク、EBインクなどが挙げられる。また例えば、インクジェットインクフォトクロミックインク、熱転写インク、マスキングインク、セキュリティインク、DNAインクなども挙げられる。
【0101】
本発明の紫外線吸収剤を含むインクを用いることで得られるいずれの形態も本発明に含まれる。例えば印刷物、印刷物をラミネートして得られる積層体、積層体を用いた包装材料や容器、インク受理層などが挙げられる。
【0102】
本発明の紫外線吸収剤を含む繊維について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む繊維は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る繊維であってもよい。例えば、ポリエステル繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、セルロース繊維などが挙げられる。
【0103】
本発明の紫外線吸収剤を含む繊維はいずれの方法で製造してもよい。例えば前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物をあらかじめ含んだ高分子を繊維状に加工してもよいし、例えばに繊維状に加工したものに対して前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含む溶液などを用いて処理をおこなってもよい。超臨界流体を用いて処理をおこなってもよい。
【0104】
本発明の紫外線吸収剤を含む繊維は各種用途に用いることができる。例えば、衣料、裏地、肌着、毛布、靴下、人工皮革、防虫メッシュシート、工事用メッシュシート、カーペット、特透湿・防水性シート、不織布、極細繊維、繊維からなるシート状物、清涼衣料透湿防水性シート、難燃性人工スエード状構造物、樹脂ターポリン、膜剤、外壁材剤、農業用ハウス、建築資材用ネット、メッシュ、フィルター基材、防汚膜剤、メッシュ織物、陸上ネット、水中ネット、極細繊維、防織繊維、エアバッグ用基布、紫外線吸収性繊維製品などが挙げられる。
【0105】
本発明の紫外線吸収剤を含む建材について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む建材は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの種類の高分子から成る建材であってもよい。例えば、塩化ビニル系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリフェニレンエーテル系、ポリカーボネート系などが挙げられる。
【0106】
本発明の紫外線吸収剤を含む建材はいずれの方法で製造してもよい。例えば前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含む材料を用いて所望の形に形成してもよいし、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含む材料を積層して形成してもよいし前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を用いた被覆層を形成させてもよいし、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含有する塗料を塗装して形成してもよい。
【0107】
本発明の紫外線吸収剤を含む建材は各種用途に用いることができる。例えば、外装用建材、建材用木質構造体、建材用屋根材、抗菌性建築資材、建材用基材、防汚建材、難燃性材料、窯業系建材、装飾用建材、建材用塗装物品、化粧材、建築資材用ネット、建材用透湿防水シート、建築工事用メッシュシート、建材用フィルム表装用フィルム、建材用被覆材料、建材用接着剤組成物、土木建築構造物、歩行路用塗装材、シート状光硬化性樹脂、木材用保護塗装、押釦スイッチ用カバー、接合シート剤、建材用基材、壁紙、表装用ポリエステルフィルム、成形部材表装用ポリエステルフィルム、床材などが挙げられる。
【0108】
本発明の紫外線吸収剤を含む記録媒体について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む記録媒体は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、インクジェット被記録媒体、昇華転写用受像シート、画像記録媒体、感熱記録媒体、可逆性感熱記録媒体、光情報記録媒体などが挙げられる。
【0109】
本発明の紫外線吸収剤を含む画像表示装置について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含む画像表示装置は前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれのものであってもよい。例えば、記載のエレクトロクロミック素子を用いた画像表示装置、いわゆる電子ペーパーと呼ばれる画像表示装置、プラズマディスプレー、有機EL素子を用いた画像表示装置などが挙げられる。本発明の紫外線吸収剤は、例えば積層構造中に紫外線吸収層を形成させるものでもよいし、円偏光板など必要な部材中に紫外線吸収剤を含むものを用いてもよい。
【0110】
本発明の紫外線吸収剤を含む太陽電池用カバーについて説明する。本発明における適用する太陽電池は、結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、色素増感太陽電池などいずれの形式の素子からなる太陽電池であってもよい。結晶シリコン太陽電池やアモルファスシリコン太陽電池において、防汚や耐衝撃性、耐久性を付与する保護部材としてカバー材が用いられている。また色素増感太陽電池において光(特に紫外線)に励起されて活性となる金属酸化物系半導体を電極材料として用いるため、光増感剤として吸着させた色素が劣化し、光発電効率が徐々に低下する問題があり、紫外線吸収層を設けることが提案されている。
【0111】
本発明の紫外線吸収剤を含む太陽電池用カバーはいずれの種類の高分子から成るものであってもよい。例えば特開2006−310461号公報に記載のポリエステル、熱硬化性透明樹脂、α−オレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリエーテルサルホン、アクリル樹脂、透明フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0112】
本発明の紫外線吸収剤を含む太陽電池用カバーはいずれの方法で製造してもよい。例えば紫外線吸収層を形成してもよいし、それぞれ紫外線吸収剤を含む層を積層してもよいし、充填材層の樹脂に含まれていてもよいし紫外線吸収剤を含む高分子からフィルムを形成してもよい。
【0113】
本発明の紫外線吸収剤を含む太陽電池用カバーはいずれの形状であってもよい。フィルム、シート、積層フィルム、カバーガラス構造などが挙げられる。例えば、フロントシート、バックシートなどが挙げられる。封止材に紫外線吸収剤を含むものであってもよい。
【0114】
本発明の紫外線吸収剤を含むガラス及びガラス被膜について説明する。本発明の紫外線吸収剤を含むガラス及びガラス被膜は、前記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物を含むものであればいずれの形態であってもよい。また、いずれの用途に用いられてもよい。例えば、熱線遮断性ガラスウインドガラス、着色ガラス、水銀ランプやメタルハライドランプなどの高輝度光源用紫外線シャープカットガラス、フリットガラス、車両用紫外線遮断ガラス、色つき熱線吸収ガラス、含蛍光増白剤紫外線吸収断熱ガラス、自動車用紫外線熱線遮断ガラス、外装用ステンドグラス、撥水性紫外線赤外線吸収ガラス、車両用ヘッドアップディスプレイ装置向けガラス、調光遮熱複層窓、紫外線赤外線カットガラス、紫外線カットガラス、窓用紫外線赤外線吸収ガラス、窓用紫外線遮断防汚膜、栽培室用透光パネル、紫外線赤外線吸収低透過ガラス、低反射率低透過率ガラス、エッジライト装置、粗面形成板ガラス、ディスプレイ用積層ガラス、導電性膜つきガラス、防眩性ガラス、紫外線赤外線吸収中透過ガラス、プライバシー保護用車両用窓ガラス、防曇性車両用ガラス、舗装材料用ガラス、水滴付着防止性及び熱線遮断性を有するガラス板、紫外線赤外線吸収ブロンズガラス、合わせガラス、ID識別機能つきガラス、PDP用光学フィルタ、天窓などが挙げられる。本発明の紫外線吸収剤を含むガラスはいずれの方法によって作られてもよい。
【0115】
また、その他使用例としては照明装置用光源カバー、人工皮革、スポーツゴーグル、偏向レンズ、各種プラスチック製品向けハードコート、窓外側貼り付け用ハードコート、窓張りフィルム、高精細防眩性ハードコートフィルム、帯電防止性ハードコートフィルム、透過性ハードコートフィルム、特開2002−113937号公報に記載の偽造防止帳表、芝の紫斑防止剤、樹脂フィルムシート接合用シール剤、導光体、ゴム用コーティング剤、農業用被覆材、染色ろうそく、布地リンス剤組成物、プリズムシート、特保護層転写シート、光硬化性樹脂製品、床用シート、遮光性印刷ラベル、給油カップ、硬質塗膜塗工物品、中間転写記録媒体、人工毛髪、ラベル用低温熱収縮性フィルム、釣り用品、マイクロビーズ、プレコート金属板、薄肉フィルム、熱収縮性フィルム、インモールド成形用ラベル、投影スクリーン、化粧シート、ホットメルト接着剤、接着剤、電着コート、ベースコート、木材表面保護、調光材料、調光フィルム、調光ガラス、防蛾灯、タッチパネル、樹脂フィルムシート接合用シール剤、ポリカーボネートフィルム被覆、光ファイバテープ、固形ワックスなどが挙げられる。
【0116】
次に、高分子材料の耐光性を評価する方法について説明する。高分子材料の耐光性を評価する方法として、「高分子の光安定化技術」(株式会社シーエムシー,2000年)85ページ〜107ページ、「高機能塗料の基礎と物性」(株式会社シーエムシー,2003年)314ページ〜359ページ、「高分子材料と複合材製品の耐久性」(株式会社シーエムシー,2005年)、「高分子材料の長寿命化と環境対策」(株式会社シーエムシー,2000年)、H.Zweifel編「Plastics Additives Handbook 5th Edition」(Hanser Publishers)238ページ〜244ページ、葛良忠彦著「基礎講座2 プラスチック包装容器の科学」(日本包装学会,2003年)第8章などの記載を参考にできる。
また各々の用途に対する評価としては下記の既知評価法により達成できる。高分子材料の光による劣化は、JIS−K7105:1981、JIS−K7101:1981、JIS−K7102:1981、JIS−K7219:1998、JIS−K7350−1:1995、JIS−K7350−2:1995、JIS−K7350−3:1996、JIS−K7350−4:1996の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。
【0117】
包装・容器用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K7105の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としては、ボトル胴体の光線透過率、透明性評価、キセノン光源を用いた紫外線暴露後のボトル中身の官能試験評価、キセノンランプ照射後のヘーズ値評価、ハロゲンランプ光源としたヘイズ値評価、水銀灯暴露後のブルーウールスケールを用いた黄変度評価、サンシャインウェザーメーターを用いたヘーズ値評価、着色性目視評価、紫外線透過率評価、紫外線遮断率評価、光線透過率評価、インク容器内インキの粘度評価、光線透過率評価、日光暴露後の容器内サンプル目視、色差ΔE評価、白色蛍光灯照射後の紫外線透過率評価、光透過率評価、色差評価、光線透過率評価、ヘーズ値評価、色調評価、黄色度評価、遮光性評価、L表色系色差式を用いた白色度評価、キセノン光を分光した後の波長ごとの暴露後サンプルにおける色差ΔEaを用いた黄ばみ評価、紫外線暴露後、紫外線吸収率評価、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のフィルム引っ張り伸び評価、キセノンウェザーメーター暴露後の抗菌性評価、蛍光灯照射後の包装内容物褪色性評価、サラダ油充填ボトルに対する蛍光灯暴露後の油の過酸化物価評価、色調評価、ケミカルランプ照射後の吸光度差評価、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の表面光沢度保持率、外観評価、サンシャインウェザロメーターを用いた暴露後の色差、曲げ強度評価、遮光比評価、灯油中の過酸化物生成量評価などがあげられる。
【0118】
塗料・塗膜用途として用いられる場合の長期耐久性は、JIS−K5400、JIS−K5600−7−5:1999、JIS−K5600−7−6:2002、JIS−K5600−7−7:1999、JIS−K5600−7−8:1999、JIS−K8741の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。その具体例としてはキセノン耐光試験機及びUVCON装置による暴露後の色濃度及びCIE L色座標における色差ΔEa、残留光沢を用いた評価、石英スライド上フィルムに対するキセノンアーク耐光試験機を用いた暴露後の吸光度評価、ロウにおける蛍光灯、UVランプ暴露後の色濃度及びCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、メタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色相評価、メタルハイドランプを用いた暴露試験後の光沢保持率評価及び色差ΔEaを用いた評価、サンシャインカーボンアーク光源を用いた暴露後光沢感の評価、メタルウェザー耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率、外観評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、QUV耐候性試験機を用いた暴露後の色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後光沢保持率評価、塗装板に対するサンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の外観評価サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率、明度値変化評価、塗膜に対するデューサイクルWOM暴露後の塗膜劣化状態の外観評価、塗膜の紫外線透過率評価、塗膜の紫外線遮断率評価、サンシャインウェザーオーメーターを用いた塗膜の光沢保持率80%となる時間比較評価、デューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた暴露後の錆発生評価、屋外暴露後の塗装済み型枠に対するコンクリートの強度評価、屋外暴露後の色差ΔEaを用いた評価、碁盤目密着評価、表面外観評価、屋外暴露後の光沢保持率評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度(ΔYI)評価等があげられる。
【0119】
インク用途として用いられる場合の耐光性は、JIS−K5701−1:2000、JIS−K7360−2、ISO105−B02の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には事務所用蛍光灯、褪色試験機を用いた暴露後の色濃度及びCIE L色座標の測定による評価、キセノンアーク光源を用いた紫外線暴露後の電気泳動評価、キセノンフェードメーターによる印刷物の濃度評価、100Wケミカルランプを用いたインク抜け性評価、ウェザーメーターによる画像形成部位の色素残存率評価、アイスーパーUVテスターを用いた印刷物のチョーキング評価、及び変色評価、キセノンフェードメーター暴露後の印刷物についてCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の反射率評価などが挙げられる。
【0120】
太陽電池モジュールの耐光性は、JIS−C8917:1998、JIS−C8938:1995の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、キセノンランプに太陽光シミュレーション用補正フィルタを装着した光源による暴露後のI−V測定光発電効率評価、サンシャインウェザーメーター、フェードメータを用いた暴露後の変褪色グレースケール等級評価、色、外観密着性評価などがあげられる。
【0121】
繊維及び繊維製品の耐光性は、JIS−L1096:1999、JIS−A5905:2003、JIS−L0842、JIS−K6730、JIS−K7107、DIN75.202、SAEJ1885、SN−ISO−105−B02、AS/NZS4399の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。紫外線透過率評価、キセノン光源、カーボンアーク光源を用いた暴露後のブルースケール変褪色評価、記載のUVカット率評価、紫外線遮断性評価、ドライクリーニング後のカーボンアーク光源を用いた暴露後ブルースケール変褪色評価、フェードオメーターを用いた暴露後の明度指数、クロマティクネス指数に基づく色差ΔE評価、UVテスター、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後の引っ張り強度評価、全透過率評価、強力保持率評価、紫外線保護係数(UPF)評価、高温フェードメーターを用いた暴露後の変褪色グレースケール評価、屋外暴露後の外観評価、紫外線暴露後の黄色度(YI)、黄変度(ΔYI)評価、規約反射率評価等があげられる。
【0122】
建材の耐光性は、JIS−A1415:1999の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の表面色調評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の外観評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観評価、暴露後の吸光度評価、暴露後の色度、色差評価、メタルハイドランプ光源を用いた暴露後のCIE L色座標における色差ΔEaを用いた評価、光沢保持率評価、特開平10−44352号公報、特開2003−211538号公報、サンシャインウェザーメーターを用いた暴露後のヘーズ値変化評価、暴露後の引張試験機を用いた伸度保持率評価、溶媒浸漬後の紫外線透過率評価、アイスーパーUVテスターを用いた暴露後の外観目視評価、QUV試験後の光沢率変化評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の光沢保持率評価、ブラックライトブルー蛍光灯を用いた紫外線暴露後の色差ΔEaを用いた評価、コーブコン促進試験機を用いた暴露後の密着保持率評価、紫外線遮断性評価、特屋外暴露(JIS−A1410)後の外観評価、全光透過率評価、ヘイズ変化評価、引張せん断接着強さ評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露後の全光線透過率評価、ヘイズ評価、黄変度評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の黄変度(ΔYI)、紫外線吸収剤残存率評価等が挙げられる。
【0123】
記録媒体用途として用いられる場合の耐光性はJIS−K7350の方法及びこれを参考にした方法によって評価することができる。具体的には、蛍光灯照射後の印字部位における地肌色差変化評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露による画像濃度残存率評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露による光学反射濃度変化評価、サンテストCPS光褪色試験機を用いた暴露後のL評価形による黄変度評価、フェードメーターを用いた暴露後の褪色評価、キセノンフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、室内太陽光暴露後の色濃度保持率評価、キセノンウェザーメーターを用いた暴露後の色濃度保持率評価、フェードメーターを用いた暴露後のC/N評価、蛍光灯暴露後のかぶり濃度評価、蛍光灯を用いた暴露後の光学反射濃度評価、消去性評価、アトラスフェードメーターを用いた暴露後の色差ΔE評価、カーボンアークフェードメーターを用いた暴露後の褪色目視評価、有機EL素子色変換特性保持率評価、キセノン褪色試験機による暴露後の有機ELディスプレイ輝度測定評価などが挙げられる。
【0124】
その他の評価法としてはJIS−K7103、ISO/DIS9050の方法及びこれを参考とした方法によって評価できる。具体的には、ポリカーボネート被覆フィルムのUVテスターによる暴露後の外観評価、人工毛髪における紫外線暴露後のブルースケール評価、促進耐候性試験機を用いた暴露後の評価用処理布水接触角評価、特開2005−55615号公報に記載の耐候試験機を用いた暴露後の投影スクリーンに映し出された映像目視評価、サンシャインウェザーメーター、メタルウェザーメーターを用いた暴露後の試験体表面劣化、意匠性変化目視評価、金属ランプリフレクターを用いた点灯暴露後の外観目視評価ボトル用ラベルの光線透過率評価、キセノンウェザーメーターを用いた湿度条件下、暴露後のポリプロピレン劣化評価、サンシャインウェザオメーターを用いたハードコートフィルムの劣化評価、基材の劣化評価、親水性評価、耐擦傷性評価、キセノンランプ光源を用いた暴露後の人工皮革のグレースケール色差評価、水銀灯を用いた暴露後の液晶デバイス特性評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後の密着性評価、芝の紫斑度合い評価、キセノンアーク光源を用いた暴露後紫外線透過率評価、引張強度評価、コンクリート密着速度評価、サンシャインウェザオメーターを用いた暴露後外観評価、及び塗膜密着性評価、カーボンアーク光源を用いた暴露後の黄変度、密着性評価、紫外線フェードメーターを用いた接着性能評価、照明点灯時における昆虫類飛来抑制評価、アイスーパーUVテスターを用いた合わせガラスの黄変度(ΔYI)評価、QUV照射、耐湿テストを行った後の表面外観評価、光沢保持率評価、デューパネル光コントロールウェザーメーターを用いた経時色差評価、キセノンウェザロメーターを用いた暴露後の木材基材塗布状態における光沢度(DI)、黄色度指数(YI)評価、紫外線照射、暗闇を繰り返した後の紫外線吸収率評価、紫外線暴露後の染料褪色色差ΔE評価等が挙げられる。
【実施例】
【0125】
本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0126】
(例示化合物(1)の合成)
サリチルアミド20gにトルエン500mLを添加し、50℃でテレフタロイルクロリド14.8gを分割添加した。2時間攪拌後、メタンスルホン酸2mLを添加し、4時間還流した。室温まで冷却後、得られた固体をろ過、水洗浄して合成中間体Aを得た。ベンズアミジン塩酸塩1.0gにメタノール100mL、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液)1.2g、合成中間体A1.0gを添加して、室温下で7時間攪拌した。得られた固体をろ過、水とメタノールで洗浄して例示化合物(1)を得た。Mass実測値(M+H):573.20
【0127】
(例示化合物(2)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、イソフタロイルクロリド14.8gを用いること以外は同様にして、例示化合物(2)を得た。Mass実測値(M+H):573.20
【0128】
(例示化合物(3)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、フタロイルクロリド14.8gを用いること以外は同様にして、例示化合物(3)を得た。Mass実測値(M+H):573.20
【0129】
(例示化合物(4)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、2−アミジノチオフェン1.0gを用いること以外は同様にして、例示化合物(4)を得た。Mass実測値(M+H):585.12
【0130】
(例示化合物(5)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、チオフェン‐2,5‐ジカルボン酸ジクロリド15.2gを用いること以外は同様にして、例示化合物(5)を得た。Mass実測値(M+H):579.16
【0131】
(例示化合物(6)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.9gを用いること以外は同様にして、例示化合物(6)を得た。Mass実測値(M+H):820.28
【0132】
(例示化合物(7)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、2−アミジノナフタレン1.3gを用いること以外は同様にして、例示化合物(7)を得た。Mass実測値(M+H):673.24
【0133】
(例示化合物(8)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、ビフェニル‐4,4′‐ジカルボン酸ジクロリド20.3gを用いること以外は同様にして、例示化合物(8)を得た。Mass実測値(M+H):649.24
【0134】
(例示化合物(9)の合成)
例示化合物(1)の合成で、テレフタロイルクロリドの代わりに、2,6‐ナフタレンジカルボン酸ジクロリド18.4gを用いること以外は同様にして、例示化合物(9)を得た。Mass実測値(M+H):623.22
【0135】
(例示化合物(10)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、4−アミジノ安息香酸メチル1.4gを用いること以外は同様にして、例示化合物(10)を得た。Mass実測値(M+H):689.21
【0136】
(例示化合物(11)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、4−アミジノベンゾニトリル1.2gを用いること以外は同様にして、例示化合物(11)を得た。Mass実測値(M+H):623.19
【0137】
(例示化合物(12)の合成)
例示化合物(2)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、3−アミジノベンゾニトリル1.2gを用いること以外は同様にして、例示化合物(12)を得た。Mass実測値(M+H):623.19
【0138】
(例示化合物(13)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、6−アミジノー2−ナフトエ酸メチル1.7gを用いること以外は同様にして、例示化合物(13)を得た。Mass実測値(M+H):789.25
【0139】
(例示化合物(14)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、6−アミジノー2−ナフトニトリル1.5gを用いること以外は同様にして、例示化合物(14)を得た。Mass実測値(M+H):723.23
【0140】
(例示化合物(15)の合成)
例示化合物(5)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、4−アミジノベンゾニトリル1.2gを用いること以外は同様にして、例示化合物(15)を得た。Mass実測値(M+H):629.15
【0141】
(例示化合物(16)の合成)
例示化合物(1)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、4−アミジノアニソール1.2gを用いること以外は同様にして、例示化合物(16)を得た。Mass実測値(M+H):633.23
【0142】
(例示化合物(17)の合成)
例示化合物(2)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、アセトアミジン0.6gを用いること以外は同様にして、例示化合物(17)を得た。Mass実測値(M+H):449.17
【0143】
(例示化合物(18)の合成)
例示化合物(8)の合成で、ベンズアミジン塩酸塩の代わりに、アミノ(イミノ)酢酸メチル0.9gを用いること以外は同様にして、例示化合物(18)を得た。Mass実測値(M+H):613.18
【0144】
(比較化合物(1)の合成)
特開2006−225322公報14ページ記載の方法で合成した。
【0145】
(比較化合物(2)の合成)
特開平8−53427公報34ページ記載の方法で合成した。
【0146】
<評価>
上記合成によって得られた化合物を以下の項目につき評価を行った。結果を表1に示す。
【0147】
(耐光性)
塩化メチレンにPMMA樹脂(商品名:ダイヤナールBR−80、三菱レイヨン製)を22質量%溶解し、バインダー溶液を調製した。次に、当該バインダー溶液に例示化合物(1)を0.2質量%溶解させ、塗布液を調製した。ガラスを基材とし、その上に上記塗布液を200μmのブレードにより塗布し、10分間100℃で乾燥させ、膜厚50μmの被膜を形成して、フィルムを作成した。同様にして、例示化合物(2)〜(18)、比較化合物(1)、及び比較化合物(2)についてフィルムを作成した。
作成したフィルムを、島津製作所製分光光度計UV−3600(商品名)を用いて吸光度を測定した。このフィルムに対して、メタルハライドランプ(商品名:アイスーパーUVテスター、岩崎電気製)で照度90mW/cm、温度63℃、湿度50%の条件で光照射し、600時間照射後の各化合物の残存量をそれぞれ測定した。残存量は次式に従い計算した。
残存量(%)=100×(100−照射後の透過率)/(100−照射前の透過率)
なお、透過率(250〜450nmの波長範囲で測定)はそれぞれの化合物の極大吸収波長で測定した値である。
残存量が90%以上を◎、70%以上90%未満を○、50%以上70%未満を△、50%未満を×とした。
【0148】
(耐熱性)
固有粘度が0.78(dl/g)のポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットを170℃で6時間乾燥したものと上記化合物を混合し、押し出し機に投入した。溶融温度280℃で溶融混練し、紫外線吸収剤含有ペレットを得た。ペレットとポリエチレンテレフタレート樹脂を化合物が0.5g/mとなるように混合し、280℃で溶融混練を行い、厚み100μmのフィルムを得た。フィルム作成時の、揮散した化合物の付着による製膜装置の汚れを観察した。
付着物が全く見られないものを○、わずかに付着が見られるものを△、付着が目だって見られるものを×とした。
【0149】
(紫外線遮蔽効果)
上記耐熱性評価において作成したフィルムをポスター上に保護フィルムとして配置し、5000時間屋外暴露試験を行なった。ポスターの写真の褪色を目視で評価した。
全く褪色が見られないものを◎、わずかに褪色したものを○、大きく褪色したものを△、完全に褪色したものを×とした。
【0150】
【表1】

【0151】
【化9】

【0152】
表1の結果から明らかなように、本発明の化合物は、構造中にヒドロキシル基を有しない比較化合物(1)と比較して、紫外線吸収剤として高い性能を有することがわかった。さらに、連結基部分で共役が切れた構造を有する比較化合物(1)と比較した場合においても耐光性、紫外線遮蔽効果に優れることがわかった。
また、本願化合物間での比較においては、本願一般式(1)におけるXがベンゼン環である化合物や、Xが置換基として電子求引性基を有する化合物が耐光性に優れ、本願一般式(1)の構造中にナフタレン構造を有する化合物は紫外線遮蔽効果に優れている事がわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】



[一般式(1)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。Xは、水素原子又は置換基を表す。R1a、R1b、R1c、及びR1dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【請求項2】
前記一般式(1)におけるXが、芳香族環又はヘテロ環残基で表される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物。
【化2】


[一般式(2)中、Lは、2〜10価の芳香族環又は2〜10価のヘテロ環残基を表す。nは、2〜10の整数を表す。R2a、R2b、R2c、及びR2dはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。また、R2e、R2f、R2g、R2h、及びR2iは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【請求項4】
前記一般式(2)におけるR2e、R2f、R2g、R2h及びR2iのいずれかが電子求引性基で表される、又は、R2e、R2f、R2g、R2h、R2iが互いに結合して環を形成する際、該形成環が置換基として電子求引性基を有することを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記電子求引性基が、−CN又はCOORで表される請求項4に記載の化合物。
は、水素原子又は置換基を表す。
【請求項6】
前記一般式(1)におけるL又は前記一般式(2)におけるLが、2価の芳香族環又はヘテロ環残基で表される基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(1)におけるL又は前記一般式(2)におけるLが、2価の芳香族環残基であり、該芳香族環がベンゼン環又はナフタレン環である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【化3】


[一般式(3)中、R3a、R3b、R3c、R3d、R3e、R3f、R3g、R3h、R3i、R3j、R3k、R3m、R3p、R3q、R3r、R3s、R3t、R3u、R3v、R3w、R3x、及びR3yは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していても良い。]
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を含有する紫外線吸収剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を含有する樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−75841(P2013−75841A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215631(P2011−215631)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】