説明

新規なビスシクロヘキセニルアルカン類

【課題】合成樹脂原料として有用な、溶媒溶解性の優れた新規ビスシクロヘキセニルアルカン類の提供。
【解決手段】下記式(式中、R、Rは各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、a、bは各々独立して0又は1〜3の整数を示し、R、R、a及びbはそれぞれ同一でも異なっていても良く、Xは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。)で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビスシクロヘキセニルアルカン類に関し、詳しくはビスシクロヘキセニルアルカンを中心骨格とし、両末端に各々フェノール基が結合したビスシクロヘキセニルアルカン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビスシクロヘキセニル類としては、4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類が知られている(特許文献1)。これらのビシクロヘキセン化合物は高融点、耐熱性、耐侯性等の性能に優れ、また、メソゲン骨格を有していることから、液晶ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジストの原料として、また、ヒドロキシル基を別の官能基に変換してオキセタン、ウレタン、エポキシ、トリメリット酸エステル、ヒドロキシアルコキシ化合物などのモノマー原料として有用である。
しかしながら、これらの用途の利用においては、通常、ビシクロヘキセン化合物を各種の溶剤へ溶解する必要があるが、このようなビシクロヘキセン化合物は溶剤への溶解性が低く、改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/035513号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、このような4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類の改良、特に溶剤への溶解性改良を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類の改良を鋭意検討した結果、(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン基を有し、中心骨格にアルキレン基を含む化学構造のビス(4-ヒドロキシフェニル−シクロヘキセニル)アルカン類を見出し、このようなビスシクロヘキセニル類は、4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類の化合物性能の特徴を有しながら、溶剤への溶解性が向上し、取り扱いに優れることを見出した。
即ち、本発明によれば、一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、a、bは各々独立して0又は1〜3の整数を示し、R、R、a及びbはそれぞれ同一でも異なっていても良く、Xは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。)
で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類が提供される。
また、一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは互いに結合して環を形成してもよく、R、R、a、bは一般式(1)のそれと同じである。)
で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類は本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のビスシクロヘキセニルアルカン類は、2つの(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン基を持つ類似構造のヒドロキシフェニルビシクロヘキセン類と比較して溶媒に対する溶解性に優れており、有機溶媒からの再結晶により得られる化合物を効率よく容易に高純度化できる等、工業的製造が容易である。
また、本発明のビスシクロヘキセニルアルカン類は、中心骨格にアルキレン基を介して両端に剛直な(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセニル骨格が結合した4つの環構造を有する構造で、ビスフェノール類としてはガラス転移温度が高いものがあり、このようなビスフェノール類から得られたポリカーボネート樹脂は、耐熱性が優れていることが期待できる。その他、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジストの原料として、また、ヒドロキシル基を別の官能基に変換してオキセタン、ウレタン、エポキシ、トリメリット酸エステル、ヒドロキシアルコキシ化合物などのモノマー原料として、耐熱性、耐候性、耐水性、可撓性、透明性または機械的強度などの改良に用いることができる。また、これらをモノマー原料として樹脂を製造する際にも、溶媒への溶解性が優れているため、工業的製造及び加工が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のビスシクロヘキセニルアルカン類は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、a、bは各々独立して0又は1〜3の整数を示し、R、R、a及びbはそれぞれ同一でも異なっていても良く、Xは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。)
で表され、一般式(1)において、R、Rは各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表す。炭素原子数1〜8のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、また、炭素原子数3以上のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状また環状であってもよく、例えばn−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数5〜8の環状のアルキル基である。これらのアルキル基には芳香族炭化水素基が置換していてもよく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基などが挙げられる。
【0008】
炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基また、炭素原子数3以上のアルコキシ基は直鎖状、分岐鎖状また環状であってもよく、例えばn−プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基などが挙げられる。好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐鎖状のアルコキシ基である。アルコキシ基には芳香族炭化水素基が置換していてもよい。
【0009】
フェニル基としては、フェニル基または4−メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基などのアルキル基、アルコキシル基置換フェニル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
また、a、bは各々独立して0又は1〜3の整数を示し、Rが同一又は異なるフェニレン基上で2つ以上ある場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Rが同一又は異なるシクロヘキセン基上で2つ以上ある場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一のシクロヘキセン基上にRが2つ以上ある場合は、Rはそれぞれシクロヘキセン環上の異なる炭素原子に置換しているのが好ましい。
また、bは同一であることが好ましく、より好ましくは、共に0又は1である。
bが共に1である場合、Rの置換位置はX基との結合位置に対して3位であることが好ましい。また、Rは共にアルキル基であることが好ましく、なかでもメチル基が好ましい。
また、aは同一であることが好ましく、より好ましくは共に0、1又は2である。aが1又は2である場合、Rの置換位置は水酸基に対してオルソ位であることが好ましい。
【0010】
上記一般式(1)において、Xは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。炭素原子数1〜20のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキレン基が挙げられ、好ましい炭素原子数は1〜8であり、より好ましい炭素原子数は1〜4である。
また、好ましい構造のアルキレン基としては具体的には、下記一般式(3)で表される。
【化3】

(式中、R、Rは一般式(2)のそれと同じである。)
一般式(3)で表されるアルキレン基において、R、Rは、各々独立して水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは互いに結合して環を形成してもよいが、環を形成しない場合には、R、Rの少なくとも一方または両方が水素原子、1級アルキル基または2級アルキル基であることが好ましい。炭素原子数1〜8のアルキル基としては直鎖状または分岐鎖状が好ましく、1級アルキル基または2級アルキル基であることが好ましい。より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐鎖状の、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の1級アルキル基または2級アルキル基である。従って、一般式(3)で表されるアルキレン基としては具体的には、メチレン基、1−メチルメチリデン基、1−エチルメチリデン基、1−イソプロピルメチリデン基、2,2−プロピリデン基などを挙げることができる。R、Rは互いに結合して環を形成する場合には、R+Rの合計炭素原子数は16以下であり、4〜10が好ましい。従って、R、Rは互いに結合して環を形成する場合の一般式(3)で表されるアルキレン基としては具体的には、1,1−シクロペンチリデン基、1,1−シクロヘキシリデン基、4−メチル−1,1−シクロヘキシリデン基、3,3,5−トリメチル−1,1−シクロヘキシリデン基などを挙げることができ、1,1−シクロヘキシリデン基が好ましい。
【0011】
従って、上記一般式(1)において、Xが一般式(3)で表されるアルキレン基である場合、一般式(1)は、一般式(2)で表される。
一般式(2)
【化2】

【0012】
従って、本発明のビスシクロヘキセニルアルカン類の好ましい具体例としては、例えば、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、

2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、

2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、

2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]メタン、
ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]メタン、
1,1−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]エタン、
1,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]エタン、
3−メチル−2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]ペンタン、
1,1−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]シクロヘキサン、
1,1−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]シクロヘキサン、
1,1−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
2−[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]−2−[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン、
等を挙げることができる。
【0013】
このような、本発明の一般式(1)で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類はその製造方法については、特に制限はなく、例えば特開2005−247809記載の方法に準じた公知の方法を用いて容易に得ることができる。
【0014】
具体的には、例えば、反応式(1)に示すように、本発明の一般式(1)対応する下記一般式(4)で表されるビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンを直接原料とし、これを溶媒中、好ましくはアルカリの存在下に熱分解することにより得ることができる。
反応式(1)

一般式(4)において、式中、R、R、a、b、Xは一般式(1)のそれと同じである。
直接原料であるビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンとしては、一般式(4)で示されるように4,4−位の2つの末端ヒドロキシフェニルが同一であるものが好ましいが、これに限らず相互に異なっていてもよい。
【0015】
より好ましい原料ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンとしては4つの末端ヒドロキシフェニルが全て同一で、Xが一般式(3)のアルキレン基である場合であり、例えば、a、bがすべて0で、Xが2,2−プロピリデン基であるビス(4,4−ジヒドロキシフェニルシクロヘキシル)アルカンの熱分解反応は下記反応式(2)で表される。
反応式(2)

【0016】
一般式(4)で表されるビス(4,4−ジヒドロキシフェニルシクロヘキシル)アルカンとしては、具体的には、例えば、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−メチルシクロヘキシル]プロパン、
2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキシル]メタン、
1,1−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]シクロヘキサン、
2−[4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−2−[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキシル]プロパン、
等を挙げることができる。
【0017】
このような原料ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンは、特開2001−199920号公報等に記載の公知の方法に準じて、例えばビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンが4つの末端ヒドロキシフェニルが全て同一で、Xが一般式(3)のアルキレン基である場合、反応式(3)で示すように、対応するビスシクロヘキサノンとフェノール類を有機溶媒中、酸触媒の存在下に脱水縮合することで得ることができる。
反応式(3)

a及び/又はRが非対称な原料ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルアルカンを得る場合には、2種類のフェノール類を併用すればよい。
【0018】
このような一般式(4)で表される原料ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンの熱分解は、触媒の不存在下に行ってもよいが、好ましくは、アルカリ触媒の存在下に行われる。アルカリ触媒としては、特に、限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド、水酸化マグネシウム又は水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中では、特に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0019】
アルカリ触媒を用いる場合は、アルカリ触媒は、ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン100重量部に対して、通常、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜15重量部の範囲で用いられる。触媒の使用形態は、特に制限はないが、仕込み操作が容易である点から、好ましくは、10〜50重量%の水溶液として用いられる。
上記ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカンの熱分解は、反応に際し、操作性に問題がなければ、溶媒は使用してもしなくてもよいが、出発原料であるビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン類及び、目的物であるビスシクロヘキセニルアルカン類の融点が高いので、熱分解温度において、その液状性の改善を図るため、更には生成した目的物の熱重合を防止するために、使用するほうが好ましい。
溶媒を使用する場合には、使用する溶媒としては熱分解温度で反応に不活性であれば特に制限はなく1種類でも、2種類以上を混合して用いても良い。
【0020】
このような溶媒としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール類、グリセリン等の多価アルコール類が用いられる。
また、市販の有機熱媒体である「サームエス」(新日鉄化学株式会社製)又は「SK−OIL」(綜研化学株式会社製)等も用いることができる。
【0021】
このような溶媒は、ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン類100重量部に対して、通常、20〜2000重量部、好ましくは、100〜800重量部の範囲で用いられる。
ビス(4,4−ジヒドロキシフェニルシクロヘキシル)アルカン類の熱分解は、熱分解温度が低すぎると反応速度が遅くなり、熱分解温度が高すぎる時は望ましくない副反応が多くなるので、通常、150〜300℃の範囲、好ましくは、180〜250℃の範囲の温度で行われる。
また、熱分解の反応圧力は、特に限定されるものではないが、熱分解反応を行いながら、生成するフェノール類を留出させることができる圧力が好ましく、通常、常圧ないし減圧下の範囲であり、例えば、1〜101kPa(ゲージ圧)の範囲、好ましくは10〜70kPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0022】
このような反応条件において、ビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン類の熱分解は、通常、1〜6時間程度で終了する。熱分解反応は、例えば、分解反応によって生成するフェノール類の溜出がなくなった時点をその終点とすることができる。
好ましい態様によれば、例えば、反応容器にビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン類、テトラエチレングリコール等の溶媒及び水酸化ナトリウムを仕込み、温度190〜220℃、圧力10〜40kPa(ゲージ圧)で3〜6時間程度、分解反応によって生成したフェノール類を溜去しながら、撹拌することによって行われる。反応終了後、得られた反応終了液から、目的物を取り出す方法は、公知の方法で行うことがでる。例えば、反応終了液を必要に応じて中和し、蒸留水および必要に応じて溶媒を加え、水洗した後、必要ならば濃縮し、析出してくる結晶または非結晶状態の固体をろ別して回収する。得られた結晶や固体の純度が低い場合、必要に応じて、このような晶析または沈殿濾過をさらに1回〜複数回行っても良い。
【0023】
このようにして、対応する構造のビス{4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル}アルカン類を熱分解することによって、一般式(1)で表される本発明のビスシクロヘキセニルアルカン類を、収率よく、高純度で得ることができる。
また、本発明の一般式(1)で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類の製造方法として、もうひとつの具体例としては、Journal of American Chemical Society, vol.74, p.5631-5632(1952年)に記載の方法に準じて、ビス(4−オキソシクロヘキシル)アルカン類と4−アルコキシベンゼンマグネシウムブロミド類とを反応させて、ビス{4−(4−アルコキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル}アルカン類を合成し、その後得られたビス{4−(4−アルコキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル}アルカン類のアルコキシル基のアルキル基を公知の方法により、例えば、三臭化ホウ素で脱離させて水素原子に置換することによっても、本発明の一般式(1)で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類を得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0025】
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパンの合成

温度計、撹拌器、蒸留装置を備えた200mL容量の四つ口フラスコに、2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン20gとエチレングリコール50gと水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガス置換した後、撹拌下に内温189℃、30kPaを保ち、フェノールを留出させながら5時間反応を行った。反応終了後、得られた反応液を90℃まで冷却した後、酢酸0.9gを加えて中和し、メチルイソブチルケトン80g、蒸留水40gを順に加えて撹拌した後、静置して水層を分離、除去した。得られた油層に水を加えて撹拌した後、静置して水層を除去した。
さらに、同様の操作を行い、油層を水洗した。得られた油層を減圧下に濃縮し、残った液にトルエン40gを加え、晶析を行った。析出した結晶をろ別して回収し、得られた結晶を減圧下、150℃で乾燥させ、目的物の2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン8.6gを純度97%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の薄茶色結晶として得た。
原料の2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパンに対する収率は64モル%であった。
【0026】
融点;243.5℃(示差走査熱量測定(DSC))
ガラス転移温度;88℃(示差走査熱量測定(DSC)、
測定方法:各化合物の結晶の融点より20℃高い温度まで昇温して融解させた後、これを急冷し、さらにその後加熱して測定。測定開始温度40℃、測定終了温度:融点+20℃、加熱速度:10.0℃/分。
分子量;387(M−H)
H−NMR(400MHz、溶媒:DMSO−d6)測定
【表1】

【実施例2】
【0027】
2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパンの合成

温度計、撹拌器、蒸留装置を備えた200mL容量の四つ口フラスコに、2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキシル]プロパン20gとテトラエチレングリコール35gと水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、系内を窒素ガス置換した後、撹拌下に、内温200℃、10kPaでo−クレゾールを留出させながら4時間反応を行った。反応終了後、得られた反応液を45℃まで冷却した後、酢酸0.9gを加えて中和し、メチルイソブチルケトン80g、蒸留水40gを順に加えて撹拌した後、静置して水層を分離、除去した。得られた油層に水を加えて撹拌した後、静置して水層を除去した。
さらに、同様の操作を2回行い、油層を水洗した。得られた油層を減圧下に濃縮し、残った液にトルエン40gを加え、晶析を行った。析出した結晶をろ別して回収し、得られた結晶を減圧下、150℃で乾燥させ、目的物の2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン7.4gを純度98%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の薄茶色結晶として得た。
原料の2,2−ビス[4,4−ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキシル]プロパンに対する収率は56モル%であった。
【0028】
融点;185.9℃(示差走査熱量測定(DSC))
分子量;415(M−H)
H−NMR(400MHz、溶媒:DMSO−d6)測定
【表2】

【0029】
〔比較例〕
実施例2で得られた2,2−ビス[4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3−シクロヘキセン−1−イル]プロパン(化合物(1))と4,4−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,1’−ビシクロヘキサン−3,3’−ジエン(化合物(2))との溶媒への溶解性を測定した。
【表3】

溶解度測定方法:溶液温度22℃で各化合物の飽和溶液を作成し、この飽和溶液の濃度を液体クロマトグラフィーによる検量線で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは各々独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、a、bは各々独立して0又は1〜3の整数を示し、R、R、a及びbはそれぞれ同一でも異なっていても良く、Xは炭素原子数1〜20のアルキレン基を表す。)
で表されるビスシクロヘキセニルアルカン類。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R、Rは互いに結合して環を形成してもよく、R、R、a、bは一般式(1)のそれと同じである。)
で表される請求項1記載のビスシクロヘキセニルアルカン類。