説明

新規なブロック共重合体又はその水素添加物

【課題】ブロック共重合体において、共役ジエンブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布が狭く高強度であるブロック共重合体またはその水素添加物を提供する。
【解決手段】共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるブロック共重合体であって、共役ジエン系単量体に由来するビニル結合量が50%以上であり、ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体含有量が30重量%以上、且つそのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.4以下であるブロック共重合体またはその水素添加物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル芳香族化合物単量体と共役ジエン単量体とからなり、共役ジエンを主体とするブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布の狭いブロック共重合体またはその水素添加物に関する。なお、本発明において、ビニル結合量とは、1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体の中で、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合である。
【背景技術】
【0002】
共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるスチレン系ブロック共重合体は、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて有し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有することから、履物、プラスチック改質、アスファルト改質、粘接着材等の分野、家庭用製品、家電・工業部品等の包装材料、玩具などで広く利用されている。更に、これらブロック共重合体の水添物は、耐候性、耐熱性に優れることから、上記の用途分野以外に、自動車部品や医療器具等にも幅広く実用化されている。
近年、軟質塩化ビニル樹脂の代替検討が進められている。柔軟性を有する代替材料として、ビニル芳香族炭化水素からなるブロックとジエン部のビニル結合量が62%以上であるブロックを有する共重合体を水素添加した水添ブロック共重合体とポリプロピレン樹脂との組成物が例えば、特許文献1に開示されている。ここに用いられているブロック共重合体は、ポリプロピレンとの相容性を増加させるために、共役ジエン部のビニル結合量が高くなければならない。しかしながら、アニオン重合の場合、ジエン部のビニル量は重合温度に関係しており、高ビニル量にするためには低温で重合する必要がある。従って、モノマー重合転化率も低く、高ビニル量のブロック共重合体は、著しく生産性の劣るものであった。
【0003】
上記のようなビニル量の高いスチレン系ブロック共重合体を得る方法として、アニオン重合中にテトラヒドロフランのような極性物質を添加する方法が一般的に採用されている。しかしながらこのような方法を用いても、ジエン部のビニル結合量には限界があった。また、ビニル芳香族炭化水素からなるブロックの分子量分布が広く、強度の低いブロック共重合体しか得られず、特にビニル芳香族モノマーの重合転化率が低く、比較的ビニル芳香族化合物含有量が高いブロック共重合体においては、その影響が顕著であった。
また、タイヤ用途に適したビニル含有率の高いポリブタジエンゴムの製造方法として、1,3ブタジエンをナトリウムアルコキシド及び極性物質の存在下で重合する方法が例えば、特許文献2,3に開示されている。しかしながらこの方法によって得られる重合体は、重合中に二量化反応が生じ、分子量分布が広くなってしまい強度等に問題があった。
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/15681号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,654,384号明細書
【特許文献3】米国特許第5,906,956号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブロック共重合体において、共役ジエンブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布が狭く高強度であるブロック共重合体またはその水素添加物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、リチウム開始剤を用いてブロック共重合する際、第3級アミン化合物に対し、極少量のナトリウムアルコキシドを共存させることによって、上記課題を効果的に解決するブロック共重合体が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
1)共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるブロック共重合体であって、共役ジエン系単量体に由来するビニル結合量が50%以上であり、ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体含有量が30重量%以上、且つそのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.4以下であることを特徴とするブロック共重合体またはその水素添加物、
2)共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるブロック共重合体であって、共役ジエン系単量体に由来するビニル結合量が50%以上であり、ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体含有量が30重量%未満、且つそのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.2以下、及び/又はビニル芳香族系単量体からなる重合体ブロックの分子量分布が1.2以下であることを特徴とするであるブロック共重合体またはその水素添加物、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、共役ジエンブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布が狭く高強度であるブロック共重合体またはその水素添加物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる共役ジエン系単量体は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。特に好ましいものとしては1,3−ブタジエン等が挙げられるが、これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、本発明で用いるビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。特に好ましいものとしてはスチレンが挙げられるが、これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0009】
本発明において、ブロック共重合体は、炭化水素溶媒中でリチウム開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンの如き脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンの如き脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素等が挙げられる。
また、リチウム開始剤としては、炭素数1〜20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。この中でも、重合活性の点でn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。
リチウム開始剤の使用量は、目的とするブロック共重合体の分子量によって変化させるが、一般的には0.01〜0.5phm(単量体100重量部当たりに対する部)を用いる。好ましくは、0.01〜0.2phm、より好ましくは、0.02〜0.15phmである。
【0010】
本発明において、リチウム開始剤を重合開始剤として共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体をブロック共重合する際に、第3級アミン化合物を添加する。第3級アミン化合物としては、一般式R1 2 3 N(但し、R1 、R2 、R3 は、炭素数1〜20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)の化合物である。例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。この中でもN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。
第3級アミン化合物は、共役ジエンブロック部分のビニル結合量を高くするために使用し、その使用量は、目的とする共役ジエン部のビニル結合量によって調節することができる。本願で目的とする共役ジエンブロック部分のビニル結合量は、50%以上であり、第3級アミン化合物の使用量は、リチウム開始剤に対し0.1〜4(モル/Li)、より好ましくは0.2〜3(モル/Li)である。
【0011】
本発明において、共重合の際、ナトリウムアルコキシドを共存させる。用いるナトリウムアルコキシドは、一般式NaOR(式中、Rは炭素原子数2〜12のアルキル基である。)で示される化合物である。この中でも、炭素原子数3〜6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドが好ましく、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ペントキシドが特に好ましい。
本発明に用いるナトリウムアルコキシドの量は、第3級アミン化合物に対し、0.01以上0.1未満(モル比)である。より好ましくは0.03以上0.08未満(モル比)、さらに好ましくは0.04以上0.055未満(モル比)である。ナトリウムアルコキシドの量がこの範囲にあると、共役ジエンブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布が狭いブロック共重合体を高生産性で得ることができる。
【0012】
本発明においてリチウム開始剤を重合開始剤として共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体をブロック共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。特に分子量分布が狭く、高強度の共重合体を得るにはバッチ重合方法が推奨される。重合温度は、一般に0℃〜150℃、好ましくは30℃〜120℃、好ましくは50℃〜100℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には0.1〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
【0013】
本発明において、前記重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行うことができる。2官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類、ビスフェノールA等のエポキシ化合物等が挙げられる。また、3官能以上の多官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4-n SiXn (ただし、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す。)で示されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素およびこれらの臭素化物等、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン、一般式R4-nSnXn(ただし、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す。)で示されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用できる。
【0014】
本発明では、上述のような方法で得たブロック共重合体のリビング末端に、官能基含有原子団を生成する変性剤を付加反応させることもできる。官能基含有原子団としては、例えば、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
【0015】
官能基を有する変性剤の例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、4−メトキシベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。本発明においては、反応温度は好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜120℃である。変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、特に好適には0.1〜10時間である。
【0016】
上記で得られたブロック共重合体を水素添加することにより、水添ブロック共重合体が得られる。ビニル芳香族化合物含有量が低く、高ビニル量の水添ブロック共重合体は、ポリプロピレン組成物等として軟質塩化ビニル樹脂の代替材料として有効である。一方、ビニル芳香族化合物含有量が高く、高ビニル量の水添ブロック共重合体は、例えば、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル系樹脂の改質、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリプロピレン系樹脂との相溶化剤として極めて有効である。
特に好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、特開平08−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。
【0017】
また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。本発明において、水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
上記のようにして得られたブロック共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、共重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば、反応液にアセトン又はアルコール等の共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。
【0018】
本発明で製造されたブロック共重合体の構造は特に制限はなく、いかなる構造のものにも適用でき、例えば、下記一般式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
(A−B)n 、A−(B−A)n 、B−(A−B)n 、[(A−B)n ]m −X、
[(B−A)n −B]m −X、[(A−B)n −A]m −X
(上式において、Aはビニル芳香族重合体ブロックであり、Bは共役ジエン重合体あるいは共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体とのランダム共重合体のブロックである。各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。又、nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。)
【0019】
本発明で得られたブロック共重合体の重量平均分子量は、5万〜50万、好ましくは7万〜30万であることが推奨される。そして、分子量分布が狭いという特徴を有し、バッチ重合法によれば、ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物含有量が30重量%以上の場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの分子量分布が1.4以下、好ましくは1.3以下である。また、ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物含有量が30重量%未満の場合、その単一ピークの分子量分布が1.2以下、好ましくは1.15以下、より好ましくは1.1以下、特に好ましくは1.08以下の共重合体が得られる。ブロック共重合体がカップリング反応によって得られる場合、単一ピークとは、カップリング反応していない残存ポリマーのピークを指す。
【0020】
また、ビニル芳香族化合物単量体からなる重合体の分子量分布は1.2以下であり、好ましくは1.17以下である。尚、共重合体およびビニル芳香族化合物単量体からなる重合体ブロックの分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。ブロック共重合体およびビニル芳香族化合物単量体からなる重合体ブロックの分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができ、重量平均分子量と数平均分子量の比率である。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例などにより本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などによって何ら限定されるものではない。
また以下の実施例において、分析や共重合体の解析は次のようにして行った。
I−1)ブロック共重合体中のスチレン含有量
紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
I−2)ブロック共重合体中のビニル結合量<ジエン部>
赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。そして、ビニル結合量はハンプトン法により算出した。
I−3)ブロック共重合体の分子量及び分子量分布
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度40℃で行った。重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、重量平均分子量を求めた。また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
【0022】
I−4)ブロック共重合体のスチレンブロックの分子量及び分子量分布
共重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法により分解した。尚、共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。そして、得られたスチレンブロックを含む溶液に関して、上記4)と同様にGPCを用いて測定した。
I−5)水添ブロック共重合体の共役ジエン単量単位の二重結合の水素添加率(水添率)
水添後の水添共重合体を用い、核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
I−6)水添ブロック共重合体の引張強度の測定
JIS−K−6251に準拠して引張強度を測定した。引張速度は500mm/min、測定温度は23℃で行った。
【0023】
〔実施例1〕
内容積が10lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに1lのシクロヘキサンを張り込み、その後n−ブチルリチウム(以下Bu−Liとする)を全モノマー100重量部に対して0.06重量部とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとする)をn−ブチルリチウム1モルに対して1.8モルとナトリウムt−ペントキシド(以下、NaOAmとする)をTMEDAに対して0.055モル添加した。
第1ステップとして、スチレン7重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を10分間かけて投入し、その後さらに10分間重合した(重合中、温度は70℃にコントロールした)。この時点でポリマー溶液をサンプリングし、スチレンの重合率を測定したところ、100%であった。
【0024】
次に第2ステップとして、ブタジエン86重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を100分間かけて投入し、その後さらに10分間重合した(重合中、温度は70℃にコントロールした)。この時点でポリマー溶液をサンプリングし、ブタジエンの重合率を測定したところ、100%であった。
次に第3ステップとして、スチレン7重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を10分間かけて投入し、その後さらに10分間重合した(重合中、温度は70℃にコントロールした)。この時点でポリマー溶液をサンプリングし、スチレンの重合率を測定したところ、100%であった。
得られたブロック共重合体は、スチレン含有量14.0重量%、ブタジエンブロック部のビニル結合量76.8%、重量平均分子量18.8万、分子量分布1.06であった。得られた共重合体の解析結果を表−1に示す。また、共重合体のスチレンブロックの分子量と分子量分布を測定したところ、重量平均分子量1.29万、分子量分布1.10であった。
【0025】
次に、得られたポリマーに、下記の水添触媒をポリマー100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度70℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添共重合体の水素添加率は98%、引張強度は124kg/cm2 であった。
(水添触媒の調整:窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。)
【0026】
〔実施例2〕
実施例1と同様にブロック共重合体を作成した。但し、n−ブチルリチウムの添加量を0.09重量部に、またNaOAmの添加量を0.05モルに変更した。
得られた共重合体の解析結果を表−1に示す。
〔実施例3〕
第1ステップとしてスチレン22.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)、第2ステップとしてブタジエン55重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)、第3ステップとしてスチレン22.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)とし、n−ブチルリチウムの添加量0.088重量部とした以外は実施例1と同様の方法で水添ブロック共重合体を得た。
得られた共重合体の解析結果を表−1に示す。
【0027】
〔比較例1〕
実施例1と同様にブロック共重合体を作成した。
但し、NaOAmを添加しなかった。
同様にサンプリングしたポリマー溶液中には、未反応の単量体が存在した。
得られた共重合体の解析結果を表−1に示す。また、共重合体のスチレンブロックの分子量と分子量分布を測定したところ、重量平均分子量0.96万、分子量分布1.26であった。
次に、得られた共重合体を実施例1と同様の方法で水添反応を行い、水添共重合体を得た。得られた水添共重合体の水素添加率は98%、引張強度は38kg/cm2 であった。
〔比較例2〕
実施例3と同様にブロック共重合体を作成した。
但し、NaOAmを添加しなかった。
同様にサンプリングしたポリマー溶液中には、未反応の単量体が存在した。
得られた共重合体の解析結果を表−1に示す。実施例3に比較し、分子量分布が広く、強度に劣るものであった。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のブロック共重合体またはその水素添加物はは、共役ジエンブロック部分のビニル結合量が高く、且つビニル芳香族ブロック部分を含め、分子量分布が狭くて高強度のブロック共重合体であり、軟質塩化ビニル樹脂の代替をはじめ、包装材料、自動車部品や電化製品のハウジング、医療器具等、多様な用途に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるブロック共重合体であって、共役ジエン系単量体に由来するビニル結合量が50%以上であり、ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体含有量が30重量%以上、且つそのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.4以下であることを特徴とするブロック共重合体またはその水素添加物。
【請求項2】
共役ジエン系単量体とビニル芳香族系単量体からなるブロック共重合体であって、共役ジエン系単量体に由来するビニル結合量が50%以上であり、ブロック共重合体中のビニル芳香族系単量体含有量が30重量%未満、且つそのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.2以下、及び/又ははビニル芳香族系単量体からなる重合体ブロックの分子量分布が1.2以下であることを特徴とするブロック共重合体またはその水素添加物。
【請求項3】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される単一ピークの重量平均分子量と数平均分子量の比率である分子量分布が1.15以下である請求項2記載のブロック共重合体またはその水素添加物。

【公開番号】特開2008−45034(P2008−45034A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221967(P2006−221967)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】