説明

新規なペプチドおよび活性化酸素阻害剤

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、医薬として有用性を有する下記のアミノ酸の配列のペプチド構造を有するペプチドならびにそれらペプチドを有効成分とする活性化酸素阻害剤に関する。
Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Ala(式中、アミノ酸残基を表わす各記号は、アミノ酸化学において慣用の表示法によるものである。)
【0002】
【従来の技術】活性化酸素が関与する疾病は、火傷、関節炎などの炎症、再環流障害、抗癌剤の副作用、放射線障害、消化性潰瘍、細菌性ショック、悪液質、自己免疫疾患など幅広く存在する。好中球やマクロファージなどの活性化によって、発生する大量の活性化酸素が引き起こす疾患は、すべて対象となる。一般に、酸素には動物に必須の酸素(三重項酸素分子:)と、特定の条件あるいは体の不調時に生じるラジカル(活性化酸素)とが存在する。ラジカルは直接又は間接的(過酸化反応という形で)に細胞膜、細胞内顆粒膜、あるいはDNAをはじめ種々の細胞成分を変質、損傷させたりする。このラジカルは体内で生産され、その種類はスーパーオキシドアニオン(・)、一重項酸素(・)、水酸化ラジカル(・OH)等が存在する。このうちスーパーオキシドアニオン(・)は細胞膜の不飽和脂肪酸等に作用して過酸化反応を引き起こし、脂質に対する酸化力は動物に必須な酸素の数千倍も高いといわれている。活性化酸素阻害剤としてのスーパーオキシドジムスターゼ(SOD、酵素番号EC1.15.1.1)は、1969年マクコルドら[McCord,J.M.&Fridovich,I.:J.Biol.Chem.,244,6049(1969)]によってその作用が発見された酵素であり、酸素分子が一電子還元されて生じるスーパーオキシドアニオン(・)を不均化する2・+2H→ H+Oを触媒する。人体が正常なときにはSODが働いてスーパーオキシドアニオンの発生を抑えている。このSOD活性は加齢と共に低下し、すなわち壮年期から老年期になると活性が低下し、SOD活性の増減は生体の老化、癌化のバロメーターともいわれている。このようなSOD活性が低下するとラジカルの発生は抑えにくくなりSODを摂取補強するか、又はラジカルを捕捉除去する活性化酸素阻害剤の摂取が必要となってくる。一方、水溶性の抗酸化剤としてのアミノ酸から蛋白質にいたるポリペプチドの活性化酸素阻害作用は、油脂をペプチド類が包み込むことにより酸素分子と不飽和脂肪酸の接触を阻害し、脂質ペルオキシラジカル(LOO・)の発生を抑制すると考えられており、BHA(ブチルヒドロキシルアニソール)及びBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)の抗酸化作用のように、油脂(L)の酸化の際に生じるラジカル(LOO・)に作用して、酸化の連鎖反応を停止させるラジカル捕捉作用とは区別している。
LOO・+AH →LOOH+AH・ 2AH・→2AH+A又は LOO・+AH・→LOOH+A (AH2;抗酸化剤)
このような背景のもとに、抗癌、老化防止に対する特効薬がない今日、環境中からDNA損傷因子、突然変異因子、発癌因子、老化因子等を取り除いたり不活性化し、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を示す活性化酸素阻害剤に関する研究や検討が進められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術で、活性化酸素阻害剤としてのSODはその製造が困難であり又原料の入手に制限があり、ビタミンE、ビタミンC、カテキン類等は、生体を用いた実験では活性化酸素阻害作用が十分でない等の難点があり、更に強力な作用を有する活性化酸素阻害剤が要望されている。又、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を示す活性化酸素阻害剤の多くは、その殆どが化学合成で製造されたものであり、又たとえ植物や動物からの材料を用いた天然物由来のものであっても、その製造過程で人体に害を及ぼす化学物質を用いたり、生成物の一部を化学物質と反応させて作られたものが多い。水溶性の抗酸化剤として、アミノ酸から蛋白質に至るポリペプチドのアミノ酸配列と抗酸化力に関する知見は極めて少なく、山口ら[ニューフードインダストリー、31巻、18〜22頁(1989年)]は、ジペプチドがアミノ酸や蛋白質よりも抗酸化力が強いことを示しており、又、最近、拓殖ら[日本農芸化学会誌、65巻、1635〜1641頁(1991年)]が、ヒスチジンを含む3種の抗酸化ペプチドを報告しているのみである。これら活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を有する活性化酸素剤が、未だ医薬品として開発が進んでいるとの報告はない。
【0004】
【問題を解決するための手段】本発明者は、小麦グルテンの蛋白質分解酵素の分解液から薬理作用を有する物質を検索し、新規なヘクサペプチドが強い活性化酸素阻害作用を有することを見出した。そして、このペプチドを医薬として実用化するための研究を鋭意行った。その結果、このペプチドが活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を有し、天然物由来の活性化酸素阻害剤としての有用性を見出した。本発明は係る知見に基づくものである。以下に、本発明を詳細に説明する。本発明に係る新規なペプチドは、次式Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaで示されるL体のアミノ酸配列で表わされる新規なヘクサペプチドであり、常温における性状は白色の粉末である。
【0005】前記のヘクサペプチドは、化学的に合成する方法又は小麦グルテンの蛋白質分解酵素の分解液から分離精製する方法を挙げることができる。本発明に係る新規なペプチドを化学的に合成する場合には、液相法または固相法等の通常のペプチド合成法によってポリマー性の固相支持体へペプチドのC末端(カルボキシル末端側)からそのアミノ酸残基に対応したL体のアミノ酸を順次ペプチド結合によって結合していくのがよい。そして、そのようにして得られた合成ペプチドは、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素等を用いてポリマー性の固相支持体から切断した後、アミノ酸側鎖の保護基を除去し、逆相系のカラムを用いた通常の方法で精製することができる。
【0006】上記のように、本発明に係る新規なヘクサペプチドは、小麦グルテンの蛋白質分解酵素の分解液から分離精製することができるが、その場合には、例えば、以下のようにして行うことができる。上記の新規なペプチドを含有している小麦グルテン部分を取り出し加水分解する。加水分解は常法に従って行う。例えば、ペプシン等の蛋白質分解酵素で加水分解する場合は、小麦グルテンを必要とあれば更に加水分解した後、酵素の至適値に調整し、酵素を加えてインキュベートする。次いで必要に応じ中和した後、酵素を失活させて加水分解液を得る。その加水分解液を濾紙及び/又はセライト等を用いて濾過することによって不溶性成分を除去し、得られた濾液をセロファン等の半透膜を用いて適当な溶媒(例えば、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液の中性の緩衝液等)中で充分に透析し、その濾液中の成分で半透膜を通過した成分を含む溶液を強酸性陽イオン交換樹脂(例えば、ダウケミカル社製のDowex 50W等)にかけ、その吸着画分から活性化酸素阻害活性を有する成分を含有する画分を得、得られた活性化酸素阻害活性画分を陽イオン交換ゲル濾過(例えば、ファルマシア社製のSP−Scphadex C−25等)によって分画し、得られた活性化酸素阻害活性画分を更に逆相HPLCによって分画する。
【0007】この新規なヘクサペプチドは、静脈内への繰り返し投与を行った場合、抗体産生を惹起せず、アナフィラキシーショックを起こさない。又このペプチドはL−アミノ酸のみの配列構造からなり、投与後、生体内のプロテアーゼにより徐々に分解される為、毒性は極めて低く安全性は極めて高い(LD50>5000mg/kg:ラット経口投与)。本発明に係るヘクサペプチドは、通常用いられる賦形剤等の添加物を用いて注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等に調製することができる。投与法としては、通常は、SODが欠乏している哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ラット等)に注射すること、あるいは経口投与することがあげられる。投与量は、例えば、動物体重1kg当たりヘクサペプチド0.01〜10mgの量である。投与回数は、通常、1日1回から4回程度であるが、投与経路によって、適宜、調製することができる。上記の各種製剤において用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の種類は、特に限定されず、通常の注射剤、散剤、顆粒剤、錠剤あるいはカプセル剤に用いられるものを使用することができる。
【0008】錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤に用いる添加剤としては、下記のものをあげることができる。賦形剤としては、結晶セルロース等の糖類、マンニトール等の糖アルコール類、でんぷん類、無水リン酸カルシウム等;結合剤としては、でんぷん類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等;崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース及びそのカリウム塩類;滑沢剤としては、ステアリン酸及びその塩類、タルク、ワックス類をあげることができる。又製剤の調製にあたっては、必要に応じメントール、クエン酸及びその塩類、香料等の矯臭剤を用いることができる。注射用の無菌組成物は、常法により、本発明に係る新規なヘクサペプチドを、注射用水、生理食塩液及びキシリトールやマンニトールなどの糖アルコール注射液、プロピレングリコールやポリエチレングリコール等のグリコールに溶解又は懸濁させて注射剤とすることができる。この際、緩衝液、防腐剤、酸化防止剤等を必要に応じて添加することができる。本発明の新規なヘクサペプチドを含有する製剤は凍結乾燥品又は乾燥粉末の形とし、用時、通常の溶解剤、例えば水又は生理食塩液にて溶解して用いることもできる。
【0009】活性化酸素はマクロファージ等の食細胞内に生じ、食細胞が捕食した異物を分解する役割を有しているが、活性化酸素が過剰に生産されると細胞の外に分泌され、他の組織に障害を起こす。本発明に係る新規なヘクサペプチドは、優れた活性化酸素阻害作用を有し、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を示すことから、組織障害を引き起こす過剰な活性酸素を分解して組織を守る作用を持つことから、例えば抗炎症剤として、関節炎やリュウマチなどに有効であるほか、ベーチュット病、心筋梗塞等に対しても有用である。
【0010】
【実施例】以下に実施例として、製造例及び試験例を記載し、本発明を更に詳細に説明する。
製造例1小麦グルテン330gに脱イオン水1.65ιを加えてホモジナイズした。得られた小麦グルテンホモジネイトにペプシン9.9gを加え、pH2.0に調整して37℃で20時間インキュベートした。このようにして調製した小麦グルテンホモジネイトのペプシン分解液をDiaflow膜(アミコン社製、YM−10型膜、分画分子量1万)を用いて限外濾過した。得られた濾過液をDowex50W×4(H)を充填したカラムを用いてクロマトグラフィー処理した。脱イオン水で水洗し、溶出は2N−NHOH で行い溶出液を濃縮した。この濃縮液をScphadexG−25カラムによりクロマトグラフィー処理して低分子ペプチド画分(分画番号24〜41)を分離した。そのカラムクロマトグラフを図1R>1に示した。この低分子ペプチド画分を濃縮して小麦グルテンペプチド液を得た。更にこのペプチド液をSP−Scphadex C−25(H)カラムによりクロマトグラフィー処理して各ペプチド画分としてSP−1画分(分画番号17〜37)、SP−2画分(分画番号38〜59)及びSP−3画分(分画番号60〜80)を分離した。そのカラムクロマトグラフを図2に示した。これら各ペプチド画分を凍結乾燥してペプチドパウダー(以下、小麦グルテンペプチドと称す。)として、SP−1画分18.6g、SP−2画分19.9g及びSP−3画分23.3gを得た。このようにして分画した小麦グルテンペプチドの中で、活性化酸素阻害活性の高いSP−3画分のペプチドパウダーを脱イオン水に溶解(5mg/25μι)した後HPLCを行った。条件はカラムとして野村化学社製DcvclosilODS−5(φ4.6mmID×25cmL)を使用し、移動相として0.05%トリフルオロ酢酸(以下、TFAと略記する。)から25%アセトニトリル/0.05%TFAでの濃度勾配法により、流速1.0ml/min、検出波長220nmでクロマトグラフィー処理し、溶出時間48.5分に強い活性化酸素阻害作用を有するペプチドフラグメントを得た。その結果は図3に示すとおりである。このようにして得られた活性化酸素阻害作用を有するペプチドのアミノ酸配列は、アプライドバイオシステム(ABI)社製のプロテインシークエンサー477A型を用いて決定された。その結果、次式Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaで示されるL体のアミノ酸配列で表わされるヘクサペプチドであることが確認された。本発明に係る小麦グルテンペプチドを活性化酸素阻害剤として、例えば錠剤に製剤する場合には、常法に従って、例えば次のように処理すればよい:(1)ペプチド13g、(2)乳糖87g、(3)コーンスターチ29g、(4)ステアリン酸マグネシウム1gを原料とし、先ず(1)、(2)及び17gのコーンスターチを混和し、7gのコーンスターチから作ったペーストとともに顆粒化し、この顆粒に5gのコーンスターチと(4)とを加え、得られた混合物を圧縮錠剤機で打錠し、錠剤1000個を製造する。
【0011】製造例2本例は、Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaの合成法による製造例である。アプライドバイオシステム(ABI)社製のペプチド合成装置430A型を用いた固相法によって当該ヘクサペプチドを合成した。固相担体としては、スチレンージビニルベンゼン共重合体(ポリスチレン樹脂)をクロロメチル化した樹脂を使用した。先ず、当該ヘクサペプチドのアミノ酸配列に従って、常法どおり、そのC末端側のアラニンからクロロメチル樹脂に反応させ、ペプチド結合樹脂を得た。このときのアミノ酸は、t−ブトキシカルボニル(以下、t−Bocと略記する。)基で保護されたt−Bocアミノ酸を使用した。次にこのペプチド結合樹脂をエタンジオールとチオアニソールからなる混合液に懸濁し、室温で10分間撹拌後、氷冷下でトリフルオロ酢酸を加え、更に10分間撹拌した。この混合液にトリフルオロメタンスルホン酸を滴下し、室温で30分間撹拌した後、無水エーテルを加えてその生成物を沈澱させて分離し、その沈澱物を無水エーテルで数回洗浄した後、減圧下で乾燥した。このようにして得られた未精製の合成ペプチドは蒸留水に溶解した後、逆相系のカラムC18(5μ)を用いたHPLCにより精製した。移動相として(A)0.1%TFA含有蒸留水、(B)0.1%TFA含有アセトニトリル溶液を使用し、(A)液が20分間で93%→71%の濃度勾配法により流速1.4ml/minでクロマトグラフィー処理した。紫外部波長214nmで検出し、最大の吸収を示した溶出画分を分取し、これを凍結乾燥することによって目的とする合成ヘクサペプチドを得た。
【0012】この合成ヘクサペプチドをマススペクトルにより分析した結果、次式Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaなるアミノ酸配列構造を有するヘクサペプチドであることが確認された。このマススペクトルの結果は図4に示すとおりである。合成によって得られた本発明のヘクサペプチドは、以下に示すin vitro(試験管内)試験によって、活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を確認することにより、その活性化酸素阻害効果が確認された。
【0013】試験例1(活性化酸素フリーラジカル消去作用の測定)
ウミホタルールシフェリン誘導体(CLA)は一重項酸素(・)、スーパーオキシドアニオン(・)を特異的に検出する有効な化学発光試薬であり、発明者ら[Agric.Biol.Chem.,55,157〜160(1991)]の方法によりスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)を消光剤に用いた消光実験によりCLAと・との反応速度が求められる。CLA(C1311ON、東京化成社製、最終濃度1.39×10−7〜4.64×10−8)溶液10μl、アルブミン(50mg/mlシグマ化学社製)500μl、キサンチンオキシダーゼ(1.45unit/ml、シグマ化学社製)50μlを順に円筒方石英セル(内径14mm、高さ60mm)に入れ、ルミノメーター(Aloka BLR−102B型、浜松ホトニクス社製)の試料室内に移し、3mMヒポキサンチン溶液200μlを注入して、セル底面から化学発光を単一光量子計数により測定した。消光剤が存在する場合並びに存在しない場合の・の発光強度の比率(I/I)はI/I=1+[k/(k+k〔CLA〕)]×[Q]で表される。ここで[Q]は活性化酸素阻害剤を、k・の消光速度定数、kは−O・と[CLA]との反応速度定数、kは−O・と[Q]の反応速度定数を示す。本発明に係る小麦グルテン由来のペプチド画分の、活性化酸素フリーラジカル消去作用を示す活性化酸素阻害活性(消光速度)を表1に示す。
【表1】


本発明に係る新規なヘクサペプチドの活性化酸素フリーラジカル消去作用を示す活性化酸素阻害活性値(反応速度定数k)は3.5×10−6−1sec−1である。尚、標品SODの活性化酸素フリーラジカル消去作用を示す活性化酸素阻害活性値(反応速度定数k3)は3.47×10−8−1sec−1である。
【0014】試験例2(抗酸化作用の測定)
抗酸化作用の測定として、反応液はリノール酸51.1mg、エタノール4.052ml 0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)4.0ml、脱イオン水1.948mlの混合液に、抗酸化作用を有するペプチド1〜3mg添加し、全量が10mlとなるように調製した。この溶液をネジ付き試験管で密封し50℃の恒温器中に放置し、24時間毎にリノール酸の過酸化物価をロダン鉄法で測定した。即ち反応液0.1ml.75%エタノール液9.7ml、30%ロダンアンモニウム液0.1ml、0.02M塩化第二鉄を含む3.5%塩酸溶液0.1mlを添加し、3分間反応させた後、吸光度500nmを測定した。その際、500nmの吸光値が0.35に達するまでの日数を誘導日数(日)とした。本発明に係る小麦グルテン由来のペプチド画分の、抗酸化作用を示す活性化酸素阻害活性値(誘導日数)を図5に示す。本発明に係る新規なヘクサペプチドの抗酸化作用を示す活性化酸素阻害活性値(誘導日数)は、トコフェロール2mgの6.5日に対して、ヘクサペプチド1mgの14日である。以上の試験の結果、本発明に係る新規なヘクサペプチドは活性化酸素フリーラジカル消去作用並びに抗酸化作用を有することから、in vitro(試験管内)試験において有意な活性化酸素阻害作用を示すことが確認された。従って、本発明に係るヘクサペプチドは活性化酸素阻害剤の対象となる虚血性心疾患者、慢性関節リュウマチ及び重症火傷患者の治療又は予防薬として有用である。尚、本発明に係るヘクサペプチドは、構造的にそのアミノ酸配列で表わされるペプチドにおいて、構造中に採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る小麦グルテンのペプシン分解液の、製造例1におけるSephadex G−25カラムクロマトグラフィーによる活性化酸素阻害ペプチドの分離精製の結果を示す図である。尚、図中マーカーとして分子量6千のインシュリン、分子量3,500のインシュリンB鎖、分子量2,550のインシュリンA鎖、分子量1,450のバシトラシン及び分子量75のグリシンを用いた。
【図2】本発明に係る小麦グルテンペプチドの、製造例1におけるSP−Sephadex C−25(H)カラムクロマトグラフィーによる活性化酸素阻害ペプチドの分離精製の結果を示す図である。
【図3】本発明に係る小麦グルテンペプチドの製造例1における逆相HPLCによる活性化酸素阻害ヘクサペプチドのフラグメントの分離精製の結果を示す図である。
【図4】本発明に係るヘクサペプチドの、製造例2で得られた合成ヘクサペプチドのマススペクトルを示す図である。
【図5】
【符号の説明】
本発明に係る小麦グルテンペプチドの、製造例1におけるSP画分(1,2,3mg)の誘導日数(日)を示し、抗酸化作用を表わすと同時に活性化酸素阻害作用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 次式;Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaで示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を有する新規なヘクサペプチド。
【請求項2】 次式;Gln−Gln−Pro−Ile−Gln−Alaで示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を有する新規なヘクサペプチドを有効成分として含有することを特徴とする活性化酸素阻害剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2835504号
【登録日】平成10年(1998)10月9日
【発行日】平成10年(1998)12月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−349938
【出願日】平成7年(1995)12月11日
【公開番号】特開平9−157291
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【審査請求日】平成7年(1995)12月11日
【実施許諾】特許権者において、権利譲渡の用意がある。
【出願人】(591167119)