説明

新規なポリオキシアルキレンアンモニウム塩及びそれを含有する帯電防止剤

【課題】 樹脂に対して優れた帯電防止性能を付与できる新規なポリオキシアルキレンアンモニウム塩及びそれを含有する帯電防止剤を提供すること。
【解決手段】 式(1):
【化1】


(式中、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基を表す。m及びnは1以上の整数であり、m+nは15である。)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリオキシアルキレンアンモニウム塩及びそれを含有する帯電防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレンアンモニウム塩としては、ポリオキシアルキレンアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが公知であり、該ポリオキシアルキレンアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、帯電防止剤として使用されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004−531612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂に対して優れた帯電防止性能を付与できる新規なポリオキシアルキレンアンモニウム塩及びそれを含有する帯電防止剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、式(1)で表わされるポリオキシアルキレンアンモニウム塩(以下、ポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)という。)が、樹脂に対して優れた帯電防止性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち本発明は、式(1):
【0007】
【化1】

(式中、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基を表す。m及びnは1以上の整数であり、m+nは15である。)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム塩及びそれを含有する帯電防止剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)は、樹脂に対して優れた帯電防止性を付与できるため、有用な化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0010】
式(1)中、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。Rは炭素数3〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基がより好ましい。R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。m及びnは1以上の整数であり、m+nは15である。
【0011】
本発明のポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)は、式(2):
【0012】
【化2】

(式中、R及びRは前記に同じ。Xはハロゲン原子を表す。)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(以下、ポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)という。)を、式(3):
・(FSO (3)
(式中、Mは水素イオン又はアルカリ金属イオンを表す。)で示される酸又はそのアルカリ金属塩(以下、酸類(3)という。)とアニオン交換反応させることにより製造することができる。
【0013】
酸類(3)の使用量は、ポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)1モルに対し、通常0.6モル以上、好ましくは0.8モル〜1.1モルであり、より好ましくは1.0〜1.02モルである。
【0014】
アニオン交換反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒はポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)および酸類(3)を溶解させる溶媒であれば特に限定されないが、好ましくはメタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類又は水が挙げられ、より好ましくはアセトニトリルである。溶媒の使用量は特に制限はないが、ポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)1重量部に対して通常20重量部以下、好ましくは1〜10量部である。
【0015】
ポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)、酸類(3)及び溶媒の混合順序は特に限定されず、ポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライド(2)と溶媒を混合した後に酸類(3)を添加してもよいし、酸類(3)と溶媒を混合した後にアンモニウム=ハライド(2)を添加してもよい。
【0016】
アニオン交換反応における反応温度は、通常0℃以上、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは20〜60℃である。
【0017】
反応終了後の反応液からポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)を取り出す方法としては、反応液を濃縮後、メンブランフィルター等でろ過し、ポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)を得る方法が挙げられる。また溶媒として水を用いた場合は、反応液をメチルイソブチルケトン等の水と混和しない有機溶媒で抽出後、得られた有機層を濃縮、乾燥してポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)を得る方法が挙げられる。
【0018】
本発明の帯電防止剤は、ポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)を有効成分として含有してなるものであり、単独であっても帯電防止剤として用いることができるが、必要に応じて安定化剤等の添加剤又は溶媒等を混合して用いることもできる。本発明の帯電防止剤を使用できる絶縁物としては樹脂組成物等が挙げられる。帯電防止性を付与するには、本発明の帯電防止剤を樹脂組成物等の製造時にそれらの材料に添加、混合する等の方法または樹脂組成物等に塗布する方法等が挙げられ、本発明の帯電防止剤を用いた場合、従来のポリオキシアルキレンアンモニウム塩を含有する帯電防止剤を用いた場合に比べて、樹脂組成物等の表面抵抗値をより低下させることができる。
【0019】
樹脂組成物への本発明の帯電防止剤の添加量は、本発明のポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)換算で樹脂基材に対して0.01〜40重量%であり、好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0020】
樹脂組成物には、樹脂及び帯電防止剤以外に樹脂組成物の性質を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を加えることができる。添加剤としては、染料、顔料、補強剤、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【実施例】
【0021】
つぎに、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。下記の実施例中、H−NMRは日本電子データム株式会社製核磁気共鳴装置AL−400を使用し、溶媒にCDClを用いて400MHzで測定した。表面抵抗率は三菱化学株式会社製抵抗率計ハイレスター(MCP−HT450)を用い、印加電圧500Vにて測定した。熱分解開始温度(試料の重量が当初の5%減となったときの温度)はセイコーインスツルメンツ株式会社製示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA220を用い、窒素雰囲気下で測定した。
【0022】
実施例1
反応容器に塩化ポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム(ライオン株式会社製、エソカードC/25)92.5g(0.11mol)、ビス(フルオロスルホニル)イミドカリウム23.0g(0.11mol)及びアセトニトリル138.8gをはかりとり、室温で3時間攪拌した。得られた反応液をろ過した後、ろ液を濃縮・乾燥してポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SOF)](m+n=15)106.3g(収率98.6%)を得た。
得られたポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SOF)](m+n=15)のH−NMR分析データ及び熱分析データを以下に示す。
【0023】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.06−3.59(brm,66H)、3.42(brm,4H)、3.20(m,4H)、2.78(s、3H)、1.32−1.26(m,23H)、0.88(t,3H)
熱分解開始温度:302℃
【0024】
比較例1
反応容器に塩化ポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム(ライオン株式会社製、エソカードC/25)854.9g(0.97mol)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム390.7g(1.02mol)及びイオン交換水2015.2gをはかりとり、室温で3時間攪拌した。得られた反応液にメチルイソブチルケトン2137.8gを加えて抽出、分液し、有機層をイオン交換水2137.5gを用いて3回洗浄した。得られた有機層を濃縮・乾燥してポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SO](m+n=15)707.0g(収率64.7%)を得た。
得られたポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SO](m+n=15)の11H−NMR分析データ及び熱分析データを以下に示す。
【0025】
H−NMR(CDCl) δ:ppm4.04−3.62(brm,66H)、3.41(brm,4H)、3.15(m,4H)、2.95(s、3H)、1.32−1.26(m,18H)、0.88(t,3H)
熱分解開始温度:284℃
【0026】
応用例1
SKダイン909A(総研化学株式会社製粘着剤)100重量部、実施例1で得られたポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド[C1225+(CH)[(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SOF)](m+n=15)10重量部及び希釈溶剤として酢酸エチル100重量部を加えて溶解しコート液を調整した。このコ−ト液をポリエステルフィルム上にバーコーターを用いて乾燥厚み約10μmの厚みでコートし、80℃で3分間加熱させて試験片を作成した。得られた試験片を23℃、50%RHの雰囲気中に5間保持した後、25℃、76%RHで試験片の表面抵抗率を測定した。その結果を表1に示す。
【0027】
比較応用例1
応用例1のポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SOF)](m+n=15)を用いなかった場合以外は応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の粘着剤の表面抵抗値を応用例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0028】
比較応用例2
応用例1のポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SOF)](m+n=15)の代わりに、比較例1のポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[C8〜1817〜37+(CH)(CHCHO)H(CHCHO)H][N(SO](m+n=15)を用いた場合以外は応用例1と同様にして試験片を作成し、かかる試験片の粘着剤の表面抵抗値を応用例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果から、本発明のポリオキシアルキレンアンモニウム塩(1)を帯電防止剤として使用したポリエステルフィルムは、公知のポリオキシエチレンアルキル(C8〜C18)メチルアンモニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと比較して、優れた帯電防止性能を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R及びRは炭素数1〜18のアルキル基を表す。m及びnは1以上の整数であり、m+nは15である。)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム塩。
【請求項2】
がメチル基である請求項1のポリオキシアルキレンアンモニウム塩。
【請求項3】
が炭素数8〜18のアルキル基である請求項1又は2のポリオキシアルキレンアンモニウム塩。
【請求項4】
式(2):
【化2】

(式中、R及びRは前記に同じ。Xはハロゲン原子を表す。)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライドを、式(3):
・(FSO (3)
(式中、Mは水素イオン又はアルカリ金属イオンを表す。)で示される酸又はそのアルカリ金属塩とアニオン交換反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオキシアルキレンアンモニウム塩の製造方法。
【請求項5】
式(2)で示されるポリオキシアルキレンアンモニウム=ハライドが、エソカードC/25(商標)である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の製造方法により得られることを特徴とするポリオキシアルキレンアンモニウム塩。
【請求項7】
請求項1、2、3又は6に記載のポリオキシアルキレンアンモニウム塩を有効成分として含有することを特徴とする帯電防止剤。
【請求項8】
請求項5に記載の帯電防止剤を含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−71933(P2013−71933A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214507(P2011−214507)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】