説明

新規なポリ尿素系繊維

改善された弾性率、強さ、靭性および環境抵抗性を持つ芳香族ポリ尿素系繊維および合成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な芳香族ポリ尿素系繊維材料および合成方法を提供する。
【0002】
本願は、新規なポリ尿素系繊維を発明の名称とする、2009年6月25日付けで出願した米国仮特許出願第61/220,354号および2009年7月1日付けで出願した米国仮特許出願第61/222,292号に対する優先権を主張し、その各々の全内容をここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けてなされた発明に対する権利の記載)
本発明は、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)により資金提供され、米国陸軍航空隊ミサイル軍の監督下(受託番号W31P4Q−09−C−0120)で管理されたSBIRフェーズIプロジェクトの形態において、部分的にDARPAからの助成金により支援された研究でなされた。米国政府は本発明においてある種の権利を有し得る。本文書は、米国連邦規制基準第22編第120〜130部の国際武器取引規制(ITAR)に規定される米国軍需品リスト(USML)の範囲下にある情報を含み、輸出管理されている。知識豊富なTRI輸出管理者の具体的な承認なくして、または輸出許可/許可免除が米国国務省から得られるか/入手可能でない限りは、それは米国における外国籍者または外国に移動されるべきではない。情報の公表または流通は輸出管理法下で制限されている。
【背景技術】
【0004】
I ポリ尿素
ジアミンおよびジイソシアネートからのポリ尿素の形成は記載されてきた。Billmeyer (1984)は脂肪族反応物からの脂肪族ポリ尿素系ポリマーを引用した。ポリマー繊維がウレタン、アミド、アクリル、エステルおよび他の多くのものの範囲にある合成材料から長く調製されてきたが、ポリ尿素から、特に、芳香族ポリ尿素から作り上げられた繊維はない。ポリ尿素形成化学およびそのポリマー生成物の物理的に硬いか強靱な性質は、これらの材料が1980年代前に入手可能な従来の製造技術に関して扱い難いという広く保持された結論に導いた。
【0005】
歴史上、ウレタンと比較して、ポリ尿素は高分子材料を製造するのに扱いにくい物質と長く考えられてきた。イソシアネートとのアミンの高い化学反応性は、通常の処理において制御するのが難しいが;より重要なことには、得られたポリ尿素生成物の高い結晶化度は、厳密に有用な生成物および材料へのさらなる処理を限定した。実行可能なポリ尿素材料を得る方法が利用可能になったことは、他のポリマークラスの処理への解決策として最初に向けられた一連の開発を介してのみであった。
【0006】
様々な同族ポリマーの融点について報告すれば、Hillは、1948年に尿素結合ポリマーについての最も早期のかかるデータのいくらかを提供した[Billmeyer (1984), 図3に複製]。これらのデータは、反復単位中の鎖原子数の関数としてプロットし;外挿は、ある種のポリ尿素同族体が前記の対応するポリアミドおよびウレタンのかなり上の温度で溶解するであろうことを示唆した。これらの予測はより最近の調査により確認され、今日、本発明者らは、これらのデータがΔEvap/Vとして定義されるこれらのポリマーの凝集エネルギー密度(CED)における傾向と一致していることを知っており、ここに、ΔEvapは揮発のエネルギーであって、Vはモル体積である。図3に複製されたHillの図において、CEDは結合単位密度が増加するにつれて増加し、これらは、反復単位中の鎖原子数が減少するにつれて増加する。示された他のポリマーと比較して、ポリ尿素、ポリアミドおよびウレタンポリマーは、それらのかなりの程度の水素結合の結果として高いCEDを有する。したがって、本発明者は、ある種の尿素結合ポリマーのCEDが例外的に高く、結合のユニークな対称と一緒に、これは、他の商用エンジニアリング高分子材料により要求されたものを十分に超えた引張強度および他の機械的性質を有する材料を与えるであろうことを仮定した。
【0007】
Christian Weber of Bayer GmbHは、最適な反応性を持ち、かつ反応射出成型された(RIM)エラストマーを生成するのに有用であるジアミン鎖延長剤の特許を取得した。鎖延長剤は、ジエチルトルエンジアミンまたはDETDA(1980年8月19日付けで発行された米国特許第4,218,542号)と呼ばれ、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)またはMOCAに代わる代替物を見出すためにバイエル内の大きな研究努力の一部として発見された。MOCAは、その芳香族性および低減された反応性のためにキャストウレタンポリマー材料用の好ましい鎖延長剤であったが、1973年に発癌物質として分類され、したがって、置換が求められた。
【0008】
RiceおよびDominguezは、そのWeber特許で構築された特許を出願した。1984年2月21日に発行されたこの特許(米国特許第4,433,067号)は、RIMポリ尿素材料を特許請求する米国で最初に与えられたものであった。しかしながら、これらの初期の研究者の主要な焦点は、自動車産業のための大きな弾性成形部品の開発にあった。Weber特許におけるポリエーテルポリオール触媒パッケージはポリエーテル・ポリアミンと置換され、したがって、触媒は必要ではなかった。このポリ尿素系は、それがすべての垂直ボディパネルならびに正面およびリアのバンパーに用いた場合のRIM産業での標準となり、Pontiac Fieroで最高潮に達した。1980年代のTexaco Chemical Companyによる後期の開発は、ポリ尿素コーティング剤のスプレー適用に導いた。
【0009】
2004年には、Wilkesが、一連の同族ポリウレタンおよびポリ尿素材料からの熱機械的測定について報告し、硬ブロック中の1分子(それぞれメタ−またはパラ−フェニレンジイソシアネート)だけを図4に複製した。Wilkesの研究は、ウレタンおよびポリ尿素材料間の特性区別に関して尿素結合の役割を定量的に解明した最初の体系的研究であった。驚くべきことには、ポリ尿素同族体、特にパラ材料は、1984年にRiceおよびDomingueにより示唆された特性である顕著な熱寸法安定性を示した。硬ブロックが1分子結合だけよりなったために、高レベルの熱寸法安定性はWilkesパラ尿素同族体において驚くべきであるものであった。これは、かかる小さな硬ブロックドメインの最初の発生を表し、かかる顕著な機械的安定性は広範囲の高温にわたった。
【0010】
ウレタンとは対照的に、ポリ尿素は、改善した耐熱性を有し、熱サイクル座屈または反りは有さず、また、より高い引張強度および弾性率を有した。ポリ尿素が爆風(blast)および弾道学的な力、耐摩耗性および燃料抵抗性に対するそれらの反応に望ましいことが示されるという、最近の証拠が出現した。ポリ尿素材料についての高CEDは、この挙動の多くを説明する。
【0011】
本発明は、一座配位(monodentate)水素結合から二座配位(bi-dentate)水素結合までの進行を表わす(図5)。ポリ尿素中の分子鎖間のより大きな水素結合密度は、類似したポリアミドを超える、これらの材料により大きなCEDを与える。
【0012】
II パラ−アラミド合成繊維
パラ−アラミド合成繊維(例えば、Kevlar(登録商標))の特性は、大部分は図1に示されるごとき一連の分子間の一座配位水素結合による。これらの水素結合の結合エネルギーは、約18.4kJ/モルであると見積もられている。パラ−アラミド合成繊維(例えば、Kevlar(登録商標))は、硫酸中の溶液から繊維に回転成型される。これは部分的にそれらの高コストを説明する。
【0013】
ポリアラミドは、2つの実際的な合成プロトコールによって商業上調製できる。第1は芳香族ジアミンと芳香族二酸とを反応させることにより達成される。実際には、この反応は遅すぎるので、商業的に実行可能ではない。商業的実践に用いられるものである第2の方法は、芳香族ジアミンと芳香族二酸塩化物とを反応させることにより達成される。この反応は非常に激しいので、保護手段が配置されている必要があり、これらはかなりの量まで製造コストを増加させる。これらの反応の双方は、副生成物の、第1では水および第2ではHClを生成する。これらの副生成物、特に設備および作業者の双方に対して腐食性であるHClは、対処するにはその2つのうちで最も困難で費用のかかるものである。他方、本発明の研究において、芳香族ポリ尿素、芳香族ジアミンおよび芳香族ジイソシアネートの合成に用いた試薬は、注意して取扱いことを必要とするが、酸塩化物と同じ脅威レベルを引き起こさない。また、尿素反応は副生成物がない重付加反応である。かくして、ガス状塩酸に関連した偶発的な災害から保護するために高価なシステムは必要とされない。アミン−ジイソシアネート反応のこれらのすべての特徴は、繊維の大規模生成の過程における非常に著しいコスト低減および利益増加に翻訳されるであろう。
【0014】
本発明は、一連の分子間の二座配位水素結合を含む新規な代替的ポリマー材料を提供する。図2は、本発明によって提供される代替的ポリマー材料の具体例を示す。これらの二座配位水素結合は、21.8kJ/モルであると見積もられる。さらに、この反応は、重付加により両生成物なくしてその2つの試薬の添加に際して非常に迅速に進む。したがって、この材料の繊維は、Kevlar(登録商標)のごときパラ−アラミド合成繊維の生成の妨害の場合のように、侵攻性溶媒の使用なくして、反応押出しできる。かかる材料は、パラ−アラミド合成繊維が現在適当である多数の有用な適用を見出すことができたが、後者のごとき高バルクを必要としないであろう。さらに、二座配位構造は、パラ−アラミド合成繊維よりはるかに高い剛性を持った繊維を生成するであろう。剛性は炭素繊維中で得られたものほど高くないかもしれないが、この特性におけるいずれの改良も、弾道学的保護および軽量構造複合物のごときパラ−アラミド合成繊維、例えば、Kevlar(登録商標)の多数の適用に関して望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、新規な芳香族ポリ尿素系繊維材料および合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの具体例において、本発明は、ポリマーを形成するために尿素結合を介して結合したパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)およびパラフェニレンジアミン(PPDA)を含む芳香族ポリ尿素系繊維を含み得る。芳香族ポリ尿素ポリマーの数平均分子量は、約10,000g/モル〜50,000g/モルであり得る。
【0017】
本発明のもう一つの実施例は、芳香族ポリ尿素系繊維材料の合成方法を提供する。この具体例において、方法は、無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)を、無水NMPに対するパラフェニレンジアミン(PPDA)および脱水した塩化カルシウムに添加する工程を含む。次いで、粘度の変化が生じるまで、この溶液は激しく混合し、大過剰のエタノール中で撹拌(vortex)し、濾過して芳香族ポリ尿素系繊維を集める。
【0018】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、さらに本発明のある態様を示すために含まれている。本発明は、本明細書に示した特定の具体例の詳細な記載と組み合わせて、1以上のこれらの図面を参照することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、Kevlar(登録商標)の化学構造を示す;
【図2】図2は、Kevlar(登録商標)に対する合成方法および尿素代替物を示す;
【図3】図3は、Billmeyer (1984)から複製された、機能的な鎖結合間の反復単位中の鎖原子数の関数として選択された同族ポリマークラスの融点を示す;
【図4】図4は、類似したウレタンおよびポリ尿素材料の耐熱性の比較を示す;
【図5】図5は、ウレタンおよびポリ尿素中の鎖間水素結合特徴の比較を示す;
【図6】図6は、本発明の具体例におけるポリ尿素系繊維材料の合成方法を示す。本発明と一致する可能な化学反応図式を右側に示す;
【図7】図7は、生成物ピークの出現および成長に付随した特徴的な反応物吸収ピークにおける漸減を示すために、積み重ねた3つのフーリエ変換赤外分光(FTIR)スペクトルを示す。これらの反応はパラ−ジオキサン中で行った;
【図8】図8は、パラフェニレンジイソシアネートおよびパラフェニレンジアミンの乾燥した等モルの混合物の示差走査熱量測定を示す。温度を140.5℃(イソシアナートの融点の直上)まで上げ、この時点にて30分間保持し、次いで200℃に上げた;
【図9】図9は、本発明による水素結合ブロッキング剤(CaCl)を含む、反応図式案を示す;
【図10】図10は、水中での冷却に先立つ反応生成物溶液の例を示す。過剰な塩化カルシウムは、ボトルの内壁に付着する粒子状物質として右写真に明らかである。実験実施番号35(左)および31(右)を示す;
【図11】図11は、脱イオン水中でゆっくり(左)および速い(中央および右)冷却後の初期の反応生成物を示す。中央画像中の矢印は、約200×倍率で得られた右画像中の顕微鏡写真のおおよその領域を示す;
【図12】図12は、冷却沈殿(頂部)および濾過後の関連した冷却溶液(底部)の例を示す;
【図13】図13は、3つの異なる温度での水の撹拌における冷却後の反応媒体の視覚的外観を示す。示された実験番号:45、47および49;
【図14】図14は、同族アルコール冷却からの繊維沈殿収率を示す。示された実験番号:69a、69bおよび69c;
【図15】図15は、エタノール層を介して実験ポリマー溶液番号77からの延伸プロセスにおける繊維を示す。矢印は、冷却媒体から張力において延伸されるポリマー鎖を示す;
【図16】図16は、本発明による延伸繊維の構造を示す。左画像は30×倍率で得た;中央は200×;左画像は700×であった。実験番号77を示す;
【図17】図17は、実験試行89、91および93に用いた構成装備を示す;
【図18】図18は、空気および窒素中の本発明による2つの化合物の最初の熱重量分析を示す。また、比較については、Kevlar 49(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)の試料を熱HSO中での溶解に続いて水中の析出後に実行した;
【図19】図19は、窒素中の実験番号69(左)および73(右)からの完全に乾燥した試料の熱重量分析を示す;
【図20】図20は、実験番号79からの部分的に乾燥したフィルムキャストの熱重量分析スキャンを示す;
【図21】図21は、実験試料番号79からのフィルムキャストの張力における動的機械分析を示す。引張貯蔵弾性率は約600MPa(約87kpsi)である。タンデルタ曲線中のピークは、約255℃のこの材料についてのTgを示唆する。
【図22】図22は、本発明によるNMP中で芳香族ポリ尿素の微分分子量分布の比較を示す。実験番号77P、79P、87および89を示す(テーブル4参照);
【図23】図23は、合成中のポリマーに対するカルシウムイオン付着およびN−メチル−ピロリドン(NMP)の水素結合の研究からの、本発明によるポリマー部分の短いセグメントモデルを示す。頂部モデル(A)はポリマーだけを示す。中央モデル(B)は、非結合電子対を介してカルボニル酸素に付着したCa++を示す。底部画像(C)は、尿素プロトンに水素結合したCa++およびNMPを含む。また、Ca++は、NMPカルボニル基に付着している;
【図24】図24は、対称要素がアミド結合に存在しないことを示すKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)のモデルを示す。本発明の具体例(左)およびKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド、右)の計算された近距離構造は、双方の材料が線形でないかまたは同一平面上にないことを示す。分子のトポロジーだけに基づいて、これらの2つの材料の結晶化度はおおよそ同様である;
【図25】図25は、可能な中距離らせん構造および分子間水素結合を示す、本発明によるポリ尿素材料の4つの分子鎖の計算された構造を示す。軸方向図はA;側面図はB;傾斜側面図はC;また、複数の重なる水素結合を示す尿素結合中心の拡大図はDに示す;
【図26】図26は、可能な中距離らせん構造および分子間水素結合を示す、Kevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)の4つの分子鎖の計算された構造を示す。軸方向図はA;側面図はB;傾斜した側面図はC;また、複数の重なる水素結合を示す尿素結合中心の拡大図はDに示す;
【図27】図27は、同じ慣性基準座標系において平行な長軸で配向させた、Kevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)(頂部)および本発明によるポリ尿素材料(底部)の重複範囲表現を示す。双方のモデルは同数の繰り返し単位および分子鎖で構築された;
【図28】図28は、単一芳香族オリゴマーのHyperchemモデル(左上)に続いて、これらの分子(右上、左下および右下)の集合体の3つの図を示す。左上:らせん状構造が媒体距離にわたり残ることを示唆する単一の32単位の芳香族ポリ尿素分子のモデル、しかしながら、全体構造は、全分子の範囲を横切りランダムである。このモデルは、翻訳移動度が利用可能である液体または溶液状態の「ポリマー」を表す。左下:3つの異なる観点から示された各々16単位を含む8つの芳香族ポリ尿素分子の集合体のモデル。集合体構造は「固体」材料の大きな範囲にわたり秩序付けられたままである。
【図29】図29は、本発明による「ポリマー溶液77c」のプロトンNMRスペクトルと一致する構造を示す;
【図30】図30は、本発明による生成物のFT−IRスペクトルを示し、試料「ポリマー固体57a」は本明細書のテーブル3により調製した;
【図31】図31は、本発明による生成物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示し、試料「ポリマー溶液77c」は、本明細書テーブル3により調製した;
【図32】図32は、図31の1〜3.8ppmの拡大部分を示す;
【図33】図33は、図31の4.5〜10.5ppmの拡大部分を示す;
【図34】図34は、試料「ポリ溶液77c」(Chemir#590592)中のポリマーのMWD曲線:相対的な面積%および累積的面積%−対−対数MWを示す;
【図35】図35は、ポリマー試料「ポリ溶液79c」(Chemir#590593)のMWD曲線:相対的な面積%および累積的面積%−対−対数MWを示す;および
【図36】図36は、2つのポリマー試料のMWD曲線のオーバーレイを示す:相対的ピークは対数MWに対する%である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は新規な芳香族ポリ尿素系繊維材料および合成方法を提供する。
【0021】
芳香族ポリ尿素系繊維組成物
1つの具体例において、本発明は、ポリマーを形成するために尿素結合を介して結合したパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)およびパラフェニレンジアミン(PPDA)を含む芳香族ポリ尿素系繊維を含み得る。芳香族ポリ尿素系繊維の数平均分子量は、10,000g/モルを超えてもよく、好ましくは25,000g/モルを超え、最も好ましくは50,000g/モルを超えてもよい。
【0022】
もう一つの具体例において、芳香族ポリ尿素系繊維は、以下の構造:
【0023】
【化1】

【0024】
[式中、nは約50以上、好ましくは約100以上、最も好ましくは約200以上である]
を含み得る。
【0025】
本発明の具体例において、芳香族ポリ尿素系繊維材料は、一連の分子間水素結合を含む。この具体例において、水素結合は、20kJ/モルを超える、好ましくは約21.8kJ/モルを超えるエネルギーを有し得る。この具体例において、材料の繊維は押出反応でき、パラ−アラミド合成繊維より高い剛性を持った繊維を生成できる。
【0026】
芳香族ポリ尿素系繊維の製造方法
本発明のもう一つの具体例は、芳香族ポリ尿素系繊維材料の合成方法を提供する。この具体例において、この方法は、a)パラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)を無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加し、溶液Aの形成し;b)パラフェニレンジアミン(PPDA)および脱水塩化カルシウムを無水NMPに添加して、溶液Bを形成し;c)溶液Aおよび溶液Bを組み合わせて溶液Cを形成し、粘度の変化が溶液Cで生じるまで激しく混合し;d)溶液Cを無水エタノールに添加して、溶液Dを形成し;次いで、e)溶液Dを濾過して芳香族ポリ尿素系繊維を集める工程を含む。
【0027】
本発明の1つの実施例において、パラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)は、NMPに基づいて10重量%〜50重量%、好ましくは約20%〜40%、最も好ましくは20%〜25%の範囲の濃度にて、溶液A中に存在し得る。
【0028】
本発明のもう一つの具体例において、パラフェニレンジアミン(PPDA)は、NMPに基づいて約5重量%〜15重量%、好ましくは約5重量%〜10重量%、最も好ましくは5重量%〜8重量%の範囲の濃度にて溶液B中に存在し得る。溶液B中の塩化カルシウムの濃度は、NMPに基づいて約10重量%から40重量%、好ましくはNMPに基づいて約20重量%〜30重量%、最も好ましくはNMPに基づいて20重量%〜25重量%であり得る。
【0029】
合成方法は、芳香族ポリ尿素系繊維をケトン、好ましくはアセトンで濯ぐ工程をさらに含むこともでき、また、好ましくは30℃を超え、最も好ましくは約110℃のオーブン中で芳香族ポリ尿素系繊維を乾燥させる工程を含むこともできる。
【0030】
本発明の具体例において、芳香族ポリ尿素系繊維材料の合成は、図6に示した反応図式により進行し得る。理論に拘束されることは望まないが、反応図式は、図6の下部に示したごとく生じ得ると考える。
【0031】
実施例1
試薬の精製および調製
所望の芳香族ポリ尿素ポリマーを生成するために用いる試薬は、芳香族ジアミンおよび芳香族ジイソシアネートを含む。本開示の発明に用いる試薬をテーブル1にリストする。これらの試薬は激しく反応する結果、発熱反応を生じる。物理的性質の最大化は十分に高分子量のポリマーのみで達成されることがポリマー技術においてよく知られている。これを達成するのに3つの合成必要条件が必要である。第1に、試薬の純度が非常に高くなければならない。ジイソシアネートは容易に昇華し、この特性を用いてそれを精製する。ジアミンは99%を超える純度にて購入した。第2に、試薬および引き続いてのポリマーに適当な溶媒が、合成を行なうために存在しなければならない。生成物が高分子量に重合するために溶液中に残らなければならないので、ポリマー溶解度は重要である。第3に、1:1のモル比の達成を目的として、化学量論を制御することが必要である。
【0032】
【表1】

【0033】
イソシアネートは昇華により精製し、望ましくない二量化反応生成物からの本質的なジイソシアネートの分離を可能にした。
【0034】
引き続いての予備的試みは、種々の有機非プロトン性溶媒中での主要な反応物のp−フェニレンジアミンおよびp−フェニレンジイソシアネートの溶解度の測定を含み、反応およびポリマー生成物用の担体媒体としてそれらの適合性を評価した。これらの溶媒は、トルエン、パラクロロトルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、パラ−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、n−メチルピロリドンおよびヘキサメチル−ホスホルアミドを含んでいた(テーブル2参照)。ジイソシアネートは、調べた溶媒のすべてにおいて可溶性であった。ジアミンは、トルエンおよびパラクロロトルエン以外のすべてにおいて可溶性であった。ジイソシアネートについての溶解度は、たとえすべての溶液がすべて0.1M濃度に制限されたとしても、すべての成功した溶媒においてジアミンより大きいようであった。変色は大部分の場合にジアミンの溶解に際して観察されたが、ジイソシアネートでは観察されなかった。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例2
反応物溶液のFTIR分光分析
初期の混合反応を小規模にて行い、標準(フーリエ変換赤外分光)FTIR分光法を用いて結果を観察できることを確認した。この場合、混合物は、3つの異なるモル比の反応物:過剰なイソシアネート、過剰なアミンおよび等モル量の2つの反応物でパラ−ジオキサン中で作成した。反応物溶液のこれらの3つの組合せからの赤外線スペクトルを図7において「積み重ね」様式で示す。
【0037】
ポリ尿素生成物の明白な形成以外に、これらのスペクトルの比較からの最も顕著な発見は、「等モル」混合物が実際には過剰のイソシアネートを有したことである。これは、3つの組合せの反応物について2268cm−1のピーク強度の比較によって明らかである。スペクトル中のこのピークは、イソシアネート基(−N=C=O)の伸張に割り当てられる。このピークは過剰なアミンにつき生成されたスペクトルに存在せず、また万一、双方の反応物のすべてが消費されて生成物を形成する混合物により生成されたスペクトルに存在したとても、それは2つの反応物の等モルの混合物からのものである。反応物純度が初期に高々約98%であって、これらの初期の試験に用いた小さな体積の材料であったとすると、2つの反応物についてのモル量の正確な一致は当然達成されなかった。
【0038】
ポリ尿素の形成は、アミドI(1634cm−1)およびアミドII(1554cm−1および1510cm−1)カップリング振動による強力なカルボニルストレッチにより示された3つのすべてのケースにおいて明らかであった。これに加えて、3294cm−1の強く広いピークは、水素結合関連のN−Hストレッチングによるものであった。N−Hの自由なストレッチングによるであろう3450cm−1のシャープなピークの欠如は、事実上、これらのいずれもポリマー中に存在せず、水素結合により一緒に強力に結合するので、予測可能である。二座配位水素結合構造が、それらが試験管中で溶液混合され、激しく撹拌および振盪されるので、これらの混合物中で効率的に形成されたとは期待されない。かかる構造の傾向は、繊維を化学反応に伴って延伸または引き延ばす場合、張力において延伸されたポリマー鎖の適切な整列によって増加するであろう。
【0039】
尿素結合を介する潜在的な共振振動の分子モデリングは、多数の長距離スピンカップリングシナリオがパラ−パラポリ尿素材料内に実現可能であることを示した。これらの多数は、ベンゼン環中の種々の振動と結び付けられた窒素−カルボニル−窒素系のねじれまたは振り(wagging)運動の異なる組合せを含む複雑な振動である。すべては低頻度であり、1300cm−1〜900cm−1のスペクトルにおけるピークの縮小カスケードに割当て可能である。
【0040】
実施例3
反応物溶液の示差走査熱量測定分析
初期の研究は、反応物の細かく粉砕した粉末の混合物における示差走査熱量測定法を含んでいた。これらの活動から得られた一つのスキャンは、図8に示し、議論に値する。この場合、反応物は、乳棒を用いて乳鉢中で細かく粉砕し、等モルの割合で混合し、混合物の少量を気密示差走査熱量測定(DSC)パン中に密閉した。温度は、10C/分間にて140℃に上げ、このレベルに30分間保持し、次いで200℃に上げた。
【0041】
図8において、2つの大きくシャープな、ネガティブな方向のピークは、パラフェニレンジイソシアネートおよびパラフェニレンジアミンを各々、約6分および41分にて融解する吸熱トレースを示す。11〜40分間の時点について、温度をジイソシアネートの融点を超えて一定に保持した。この温度プラトーの初めにて、小さな発熱が生じた(約13分)。これはジアミンとのジイソシアネート反応によるものであると思われた。次いで、しかしながら、これがそうであるならば、ジアミンの引き続いての融合は生じず、また、41分での吸熱は存在しなかったであろう。約150℃でのジアミンの融解の結果、気密パン中の2つの反応物の融解した塊が生じ、また、これは2つの成分の化学反応に導くことができた。しかしながら、再度、小さな発熱ピークだけが、(180℃付近の温度に対応する)約47分に明らかである。さらなる質問なくして、その2つの液体反応物が相互に単に部分的に混和し、これが反応の進行を抑制することは疑問に思われた。他方、2つの化学成分の界面反応は、それらの間の不透過性の障壁を形成でき、これは、この特定の実験に用いた温度範囲において熱に抵抗した。
【0042】
実施例4
合成反応に対する溶媒選択
他の初期の小規模実験は、生成物が直ちに、ジクロロメタンおよびp−ジオキサン中で直ちに沈殿することを示し、これらは直ちにこれらの反応に対する選択の初期の溶媒になった。文献調査は、ポリマー生成物の溶解度が、反応物を組み合わる前に溶媒媒体に溶解するCaClのごとき水素結合ブロッキング剤で増加できることを示唆した。この概念は図9に要約される。
【0043】
n−メチルピロリドンにおける初期の試みは、このアプローチが暗褐色〜琥珀色の透明な粘性溶液またはゲルの生成を可能することを示した。実施例を図10に示す。
【0044】
水をこれらのゲルに添加し、添加速度に依存して細粒またはゼラチン状の塊のいずれかを形成した。反応生成物混合物が、余り急速に水中で急冷される場合、図11に示すゼラチン状の塊を形成した。この図中の左側の画像は、脱イオン水中でより遅い冷却に起因した細かく湿った沈殿である。細かく分割された生成物沈殿物の他の例および得られた冷却媒体の他の例を図12に示し、これらの初期の「手で混合した」実験において達成された色および粒子の範囲を示す。
【0045】
図14の中央の画像に示したゼラチン状の塊の目視検査は、細かな繊維構造が生成物のこの部分に存在することを示唆した。これは、水を加えて反応を冷却させる場合に混合容器の内部壁にフィルムとして形成した。繊維構造はデジタル顕微鏡で200×倍にてより綿密な検査にて確認した。図11の右側上の画像は、この構造を示すことを示す。中央画像における矢印は、より高倍率の画像が得られたおおよその位置を示す。これらの観察は、沈殿の繊維特徴が水撹拌中の反応溶液をよりゆっくり冷却することにより増加し得ることを示唆した。これは、次のシリーズの反応(45、47および49番)について行い、結果を図13および図14に視覚的に示す。冷却水の温度が沈殿粒子のサイズまたは外観比に影響し得ることが仮定された。反応45番は室温にて冷却し;反応47番は氷水中で冷却し;反応49番はほぼ熱湯中で冷却した。
【0046】
理論に拘束されることは望まないが、それは冷却プロセス間の水の曝露に際して、カルシウムイオンが溶媒和され、カルボニル基にてポリマー鎖に沿ってそれらのキレート化位置から取り除かれるということであり得る。これは、隣接した鎖上のアミン水素がポリマーを凝縮させるカルボニル酸素と結合するのを可能にし得る。かくして、冷却はカルシウムイオンのブロッキング効果を除去し、得られた水素結合したポリマーは得られた溶媒混合物に可溶ではない。
【0047】
図13における沈殿の視覚的出現は、温度が生成物の繊維収率に影響できるが、結果における高度の変動は、それをいずれの傾向も見ることを困難にしたことを示すようであった。これに留意し、一連の研究を冷却反応を遅くするために行なった。第1に、エタノールを水の代わりに用いた。これは、n−プロパノール、n−ブタノールおよびn−ペンタノールを含めた同族アルコール中の他の冷却に連続的に続いた。一般的に、沈殿の繊維画分のかなりの増加を水中およびアルコール中で冷却の間に見出した。しかしながら、種々のアルコール中の冷却は、それらの間の著しく少ない変化を示した。これらの結果を図14に示す。
【0048】
試料55は、以下の例外を除いてR.J. Gaymanのプロトコール(18番、後記参照)に従い合成した。反応物を振動撹拌機で撹拌し、第2の成分をNMPに溶解し、次いで、融解した液体の形態で添加するのに代えて添加し、反応を室温にて開始し、温度は自然に上昇させて、ポリマーをHOの代わりにEtOHで沈殿させた。 Gaymanは、彼が「砕けた塊」と記載したポリアラミドを生成した。他方、本開示のプロセスにより生成した生成物は粘性流体であった。本開示の生成物の芳香族ポリ尿素生成物が理論上結晶であるべきであり、より高度の水素結合を有するべきであるので、粘性溶液間の物理的な差は本明細書に教示され、Gaymanの教示は生成物の分子量の差に関する。Gaymanのプロトコール18番における反応は本開示の反応よりも速度論的により激しいかもしれない。試料69は、混合が回転台を用いて行うこと以外は、試料55と同様の方法で調製した。
【0049】
Gaymanのプロトコール18番に従う合成:小さなガラスバイアルに、5.8959gのN−メチルピロリドン中に懸濁させた1.4177gの細かく粉砕し乾燥させた塩化カルシウム(24重量パーセントの塩化カルシウム)を添加する。塩化カルシウムは固体状態で部分的に存在する。この懸濁液に、0.4307gの粉末のp−フェニレンジアミンを撹拌しつつ添加する。引き続いて、5.8984gのN−メチルピロリドンに溶解した0.6373gのp−フェニレンジイソシアネートを急速に添加する。温度を上昇させつつ、撹拌を30分間継続する。1.068gのポリ(p−フェニレン尿素(9重量パーセント)を含む粘性溶液を形成する。そのポリマーの懸濁を激しい撹拌下でエタノールでの析出によって得る。濾過、洗浄および乾燥後に、ポリ−p−フェニレン尿素を得る。
【0050】
試料79は、混合に先立つ反応物の希釈に基づいて、試料55とは異なって調製した。CaCl−対−ポリ尿素のモル比は、試料55と比較して試料79においてより低い。また、試料79におけるジアミンは、ジイソシアネートと比較して、そのより低い溶解度により合計NMPのより大きな部分に溶解する。また、この試料は回転台上で混合した。
【0051】
図13および図14における画像の比較は、沈殿の繊維画分の著しい増加を示す。注目すべきことには、3つのアルコールのうちエタノール冷却が、プロパノールおよびペンタノール中よりも高画分のより微細な繊維を生じたようである。水およびアルコール冷却で得た沈殿組成物の明確な差が、これらの異なる媒体中のカルシウムイオンの溶解度の差によるようであった。しかしながら、この溶解度差はより高い同族アルコール(プロパノールおよびペンタノール)間でより小さく、したがって、同様のパルプ状外観の沈殿をプロパノールおよびペンタノール冷却から得た。
【0052】
実施例5
芳香族ポリ尿素の繊維延伸
水のものより低い双極子モーメントを有する撹拌媒体での冷却の結果、最も繊維性の沈殿をプロジェクトでのこの点にて観察した。理論に拘束されることは望まないが、その鎖を整列させるポリマー上の撹拌によって与えられた剪断力が、鎖に沿ったカルボニル基からのカルシウム除去とほとんど平衡したようである。これらの結果を考慮して、繊維を延伸する試みを行なった。この試験において、ポリマー溶液のほんの一部がエタノールの厚い層により覆われた。かぎ形のプローブを用いると、溶液およびエタノール間の界面のほんの一部を容器からゆっくり取り出した。これの結果、繊維塊は、図15に示したように容器から取り出された。
【0053】
この繊維を室内条件で一晩乾燥させた後、顕微鏡写真をいくつかのセグメントから得て、その構造を見た。図16において、これらを3つの倍率で示す。明らかに、この繊維は、商用繊維において見出された寸法の均一性から遠いが、それは、その現在の状態のポリマーから繊維を取り出すのに必要な条件が容易に達成可能であることを示す。また、それは、十分なポリマー分子量を繊維を延伸するための現在の合成法によって得たことを示す。
【0054】
実施例6
芳香族ポリ尿素系繊維の合成
芳香族ポリ尿素系繊維を以下のように調製した:
I.反応物溶液の調製:
1a.きれいなバイアルに、無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の精製したパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)の23.4重量%を添加する。
2a.イソシアネートが溶解する(無色透明な低粘性液体)まで、得られた混合物を激しく浸透させる。
1b.きれいな反応容器に、粉砕した7.5重量%の無水NMP中のパラ−フェニレンジアミン(PPDA)を添加する。
2b.容器を箔で覆って、UV曝露を低減する。溶解されるまで激しく浸透させる(4〜5分) 得られた溶液は紅梅色の透明な流体であろう。
3b.NMPに基づき17.6重量%の完全に脱水したCaClを前記の2bからの容器に添加する。懸濁液が形成される(5分)まで浸透する。薄茶色になり、低粘性を保持するであろう。
【0055】
II.ポリマー生成物を形成するための反応物溶液の組合せ:
1.溶液Aを反応容器Bに添加し、粘度における顕著な変化が観察されるまで激しく混合するのに続けて、回転台上でゆるやかに回転混合し(図18を参照)、CaClの懸濁を維持する。
2.NMPで生成物溶液を所望の粘度の濃度まで希釈する。この方法による理論的濃度は、NMP中の12.6重量%の生成物であると予期される。
【0056】
III.ポリマー生成物の単離:
1.室温の大過剰(40×)の無水エタノールにおいて、渦巻撹拌を創製する。
2.エタノール浴に生成物溶液を徐々に流し、完全に洗浄する。
3.ブフナー漏斗(先に図7に示す)において乾燥まで沈殿を濾過するのに続いて、アセトンで短く濯ぎ、さらに乾燥させる。
4.生成物を集め、乾燥まで110℃のオーブンに入れる。
【0057】
テーブル3は、鍵となるポリマー組成物、実験条件、および合成反応用の担体媒体としてのn−メチルピロリドンおよび安定化剤としての塩化カルシウムを用いる決定後に得た一般的な結果の要約を提供する。テーブル3は左手カラムにおける実験連続番号によって編成する。第2および第3カラムは、合計n−メチルピロリドン中のジイソシアネートおよびジアミンの濃度を与える。同様に、第4カラムは、最終混合物におけるポリマー生成物の予期された濃度を与え、第5カラムはパーセント過剰の塩化カルシウムを与える。第6カラムは、2つの成分溶液を混合して生成物を形成する場合に用いた反応温度を示す。生成物溶液に対する目視観察を第7カラムに与える;冷却条件は第8カラムに与える。
【0058】
理論によって拘束されることを望むことなく、生成物の分子量における増加は、可能な限り長く溶液中に生成物を保持し、生成物および未反応ジアミンの溶液へのジイソシアネートの添加速度を遅らせ、反応媒体の穏やかだが連続的な撹拌混合を行うことにより、本明細書に報告した実験において観察した。99%を超える純度の反応物およびn−メチルピロリドンを確実にし、無水条件を維持することをこの溶媒および塩化カルシウムに関して確実にすることが、重要のようである。
【0059】
【表3】

【0060】
実施例7
芳香族ポリ尿素系繊維の第1の代替合成方法
得られた生成物溶液に対する一定で完全な混合の影響を試験するために、実施例4に提供した方法に対する代替方法を実行した。
【0061】
第1の代替方法の実験番号87において、「Drink Master」電気混合機を用いて、いずれの早期実験の手順よりも高エネルギー撹拌を引き起こした。すべての反応物を実施例4に記載した量で滴下し、15分後に、高度に凝集した生成物を生じた。この時点にて、50%を超えるn−メチルピロリドンを添加して生成物溶液を希釈し、材料を注ぐかまたは移すことができた。この溶液でさえ、その希釈後に全く粘性であると考えられた。混合の最終の瞬間において、ミキサーモーターは非常に粘性の溶液により機能しなくなった。より高パワーの携帯型混合ドリルを用いてその手順を繰り返した。試料93を図17に示す。
【0062】
実施例8
芳香族ポリ尿素系繊維の第2の代替合成方法
実施例4に提供した方法に対する第2の代替方法を実行した。
【0063】
第2の代替方法の実験番号89は、不必要な重合の終わりに引き続いての希釈を行うための試みにおいてパラ−フェニレンジアミンの初期の希釈を含んでいた。添加溶媒のために、反応は、より長時間より高エネルギーにて容易に混合可能であった。しかしながら、この溶液は実験87番においてほど粘性にならなかった。この実験手順を繰り返して、有効性を確実にした(試料91)。
【0064】
実施例5および実施例6(各々、実験番号91および93)に記載した2つの代替方法を繰り返す際に、単に希釈プロトコールにおいて異なった2つの溶液を得た。これらの実験の結果、約8000センチポイズの2つの生成物溶液間の粘度差を生じ、これは、第1の反応につきより高分子量が得られたことを示す(n−メチル−ピロリドンに比較して、反応物がより大きな質量濃度で存在した場合)。かくして、反応の初期段階中に存在する溶媒量は、最終生成物の粘度およびしたがって見掛けの分子量に対する直接効果を有する。
【0065】
実施例9
芳香族ポリ尿素系繊維の特性
実験試行番号55(テーブル3を参照)から得られた重合体生成物を熱重量分析(TGA)に付した。TGAは、試料の温度が上昇するにつれて、減量を測定および追跡する。これらの分析のプロットにおける減量スケールは、より高温度が達成されるまで材料が分解せず、減量を開始しないので、100%にて出発する。かくして、温度が増加するにつれて、材料の残存パーセントは減少する。これはトレース標識「試料」から見ることができ、図18のプロットの減少曲線によって示される。
【0066】
これらの曲線の勾配における突然の変化は、より低温で蒸発した材料より熱安定性である新しい熱状態(regime)の開始を表す。空気中で試行された試料番号55(図18(頂部))は、減量曲線の勾配における6未満の変化を示し、その誘導体のプロットにより示され、トレース標識「誘導体」によりマークした。第1のこれらの「工程」 は、付着した残留水の蒸発を表し;第2には、この特定のポリマーの合成における溶媒として用いたn−メチルピロリドンの損失を表した。一緒に、水およびNMPは、20%を超える試料重量を表した。試料重量における最大の液滴は、300℃を超えて生じ、加熱および蒸発を介して約15%、20%および次いで30%の試料を連続的に損失させた。これらは、明らかにポリマー自体の分解を表し、ポリマーの3つの異なる画分が生成物試料中に存在したことを示唆する。500℃を超えると、水平になるまで温度が上昇するにつれて、試料は減量をし続け、600℃にて約5%の炭残渣であった。
【0067】
その分析は、実験番号55の第2の試料で窒素雰囲気中で繰り返し、この熱分解でなされた範囲の空気酸化を測定した。一般的なパターンの減量および誘導体トレースは、約25%の炭残渣が600℃を超えて得られた以外は、空気中で得られたものと同じであった(図18の中央プロットを参照)。明らかに、本明細書に開示された芳香族ポリ尿素系繊維組成物は、600℃まで酸化に安定し、それを超える温度では、ほとんどの残渣が酸化し蒸発する。
【0068】
同じ分析は、Kevlar 49(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)で繰り返した。予期されるごとく、400℃を超える温度に達するまで、熱分解減量の証拠はほとんどなく、次いで、減量は突然かつ即座であった。600℃を超える温度にて、分析が窒素中で行なわれた場合、約20%の炭残渣が残った。明らかに、Kevlar 49(登録商標)中の多くのこの高耐熱性は、試料を調製するために用いた延伸繊維の高結晶化度によるものであった。これに留意して、分析を少ない結晶のKevlar(登録商標)で繰り返し、結果は、本明細書に開示された芳香族ポリ尿素系繊維(試料55)により経験したプロセス歴をより反映したであろう。すなわち、本明細書に開示された繊維は、回転延伸(spun-drawn)および熱伸張せずに、Kevlar(登録商標)が有するように、結晶化度および熱−物理的性質を最適化する。Kevlar 49(登録商標)の試料を、高純度99%の熱硫酸中で溶解するのに続けて、撹拌において、室温水中でゆっくり冷却した。得られた繊維塊を一晩空気乾燥させ、次いで、100℃にて24時間オーブン乾燥させた。次いで、この後処理したパラ結晶のKevlar 49の試料を前記のごとき同じ熱比重計手順を用いて分析した。窒素中の分析のプロットした結果を図18の底部に示す。再び、200℃未満にて、トレースは、残余の硫酸からの残留水および恐らくガス状SOの損失を表す。本開示の芳香族ポリ尿素系繊維の試料番号55でのように、ほとんどのポリマー分解が300℃を超えて生じ;2つの材料中の一般的なパターンの熱分解減量は、300℃〜450℃でおおよそ類似した。2つの区別は、実験合成番号55からパラ結晶Kevlar 49および本開示の芳香族ポリ尿素系繊維からのプロット間で明らかであった。これらは、450℃を超える誘導体スペクトル中の異なるピークに見られる。パラ結晶Kevlar 49(登録商標)は、約520℃にてピークに達する、およそひずんだ減量を示した。各分析の初めの2つの試料の出発物質中のアミドおよび尿素結合のために、化学的に異なる2つの材料からのほぼ炭残渣を表すことが可能である。
【0069】
継続的な研究は、前記の番号55の合成後に、ポリ尿素生成物の分子量を増加させることに集中した。2つのこれらの実験番号69および73の熱分析を図19にプロットする。図19の2つのプロットと、本発明の具体例の図18中のプロットとの最も顕著な区別は、早期の連続的な段階的分解がほとんど350℃を超える単一分解工程に崩壊したことである。分析は実験番号69の試料から2回行い、それを赤色で示したそれらの対応する誘導体と一緒に、プロット中の2つのほとんど重複する青色減量トレースにより示した。これらの双方の分析は、番号69の約320℃での熱分解の開始を示し、これは380℃にて強度においてピークに達した。芳香族ポリ尿素系繊維材料の分子量を増加させる引き続いての試みの結果、実験番号73につき熱安定性における付随的な増加を生じた。この後者のポリマーについては、熱分解は約350℃にて始まり、ほとんど430℃にてピークに達した。
【0070】
前記の繊維沈殿に対する熱分析的評価に続いて、本発明者らは、次にポリマー生成物の延伸フィルムを検討した。これらの場合において、試料フィルムは、それをきれいなガラス板上に注いだ後、生成物溶液(NMP中)の計測端を延伸することにより調製した。計測端は、均一の厚さの溶液がガラス上で得られることを確実にした。その後、ガラスおよびポリマー溶液フィルムをアルコール(例えば、エタノール、n−プロパノール)に緩やかに沈め、カルシウムイオンおよびNMPを溶解および除去した。これの結果、ポリマーはゲル化した。この組合せの緩やかな回旋(swirling)をゲル化フィルムがガラス板から離れているまで続けた。これに続いて、フィルムを室温にて12〜24時間、次いで、100℃にて一晩連続的に空気乾燥させた。得られたフィルムは壊れやすく、収縮により様々に反った。
【0071】
これらのフィルムのいくつかの試料を構造分析のために送り、1つの試料(実験番号79)は熱重量分析により熱安定性につき評価した。再び、残存溶媒損失を230℃未満で観察した。しかしながら、この温度を超えて、4つのかなり大きいポリマー画分は、330℃、390℃、530℃および600℃にて試料塊中のかなりの液滴から明らかであった。625℃を超える温度にてほとんどまたは全く炭は残らなかった。ガラス板上の均一な溶液フィルムを得るための計測端の延伸は、溶液中のポリマー分子を整列させる傾向があるであろう。一旦計測端が特定のポリマー分子を通過するならば、それはそれ自体に巻きつくためのその内部傾向に依存して、様々な範囲まで縮め得るが;これは、隣接鎖の間の分散的引力の結果として、ますます高分子量ポリマーで減少する傾向があるであろう。しかしながら、図20中の試料番号79に観察したパターンは、図18および図19について初期に記載した沈殿したサンプル結果とは顕著に異なり、これは、それらの調製の異なる方法、またはそれらの分子量分布における差であり得る。
【0072】
次に、動的機械分析は実験番号79から得た試料フィルムに対して行った。試料が約285℃にて機能しなくなった場合に、直線破損が生じた。この分析は張力中に試料を保持し、1Hzの頻度を用いた。試料の機能しない温度までの貯蔵弾性率およびタンデルタ(タンデルタ)の測定のプロットした結果を図21に示す。「張力貯蔵弾性率」プロットは、試料が170℃を超える温度に達するまで、約600MPaの付近の相対的一定値の貯蔵弾性率を示す。連続的なより高温度の結果、約450MPaまで下がった貯蔵弾性率を生じた。「タンデルタ」トレース中のピークは、ガラス転移温度(Tg)が試料番号79につき約255℃であったことを示唆する。
【0073】
NMP溶液中の選択された実験のポリ尿素の分子量をPolymer Solutions, Incに送った。そこで、分子量をポリスチレン標準に対するゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定した。数値結果をテーブル4に要約する。データのプロットはほぼ正規分布を示し、より低重量への少しの歪みを有した(図22を参照)。
【0074】
【表4】

【0075】
テーブル4において、Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量であり、Mw/Mnはその多分散性として知られている分布における広がりの尺度である。Billmeyer (1984)によれば、商業用ポリマーの数平均分子量は、10,000〜100,000の範囲にあり、ほとんどの場合に、Mnが約10,000未満であるならば、典型的な高重合体に関連した物理的性質をうまく発生しない。
【0076】
注目すべきことには、テーブル4に示す多分散性の値は、フリーラジカルメカニズムのごとき自己促進経路によって合成されたポリマーの範囲にある。これらは、通常、ゲル効果として知られている分子量での反応速度の増加が特徴であり、これは速度の制限が粘性媒体中のポリマーの拡散に起因する場合に生じる。本発明者らは現在のポリ尿素成形反応のメカニズムがフリーラジカル重合によって進行すると考えないが、生成物溶液はますます、経時的に粘性になる。理論によって拘束されることを望むことなく、溶媒(NMP)の第三級アミンおよびポリマー骨格上の窒素プロトン間の高度の水素結合が、粘度における発明者らの観察した増加を担い、これが自己促進の特性に導き、それは化学的メカニズムの点から誤解を招きやすいかもしれないことが非常にあり得る。
【0077】
試料を分子量測定のためにPolymer Solutions, Inc.に送付した場合、それらを溶液に懸濁させたままとし、塩化カルシウムで安定させた。試料は、単に生成物の約4重量%までさらなるNMPで希釈した。分子量を前記のテーブル4で報告し、図22は、カルボニル酸素を介してポリマー骨格にキレートした多数のカルシウムイオンを含む。かくして、これらの分子量は、ポリマー骨格に結合したカルシウム量に代表的な因子により、下方への調節を必要とする。カルシウムのキレート密度が何かはまだ正確に知られていないので、すべてのカルボニル基がそれに結合したカルシウムを有することが仮定されなければならない。この上限は、繰り返し単位分子量−対−カルシウムにキレートした繰り返し単位のもの比から見積もることができ、それは0.84である。テーブル4に報告した最小の数平均分子量は、実験番号89から測定され、13,333であった。カルシウムキレート化についてのこの値の補正は11,200を与える。最も高いものは実験番号77Pから得た47,617であり、カルシウムについて補正される場合39,998に調節する。これらの見積りから、本発明による芳香族ポリ尿素系繊維はこの範囲の分子量を達成したと考えられる。Yang (1991)によれば、PPD−Tの典型的な数平均分子量(Mn)は約20,000のオーダーにあり、これは84の重合度および108nmの鎖繰り返しの長さに対応する。これは、発明者らの単純な実験室の手法によって、本発明者らが、商業上重要なポリマー材料の分子量を達成したかまたは上回ったことを示唆する。その分子量がKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)と同じ高さかまたはそれより高くない限りは、ポリ尿素の物理的性質がKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)のものと同じかそれを上回らないので、これは非常に重要である。
【0078】
また、Kevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)につき報告したものに対して、本発明の芳香族ポリ尿素系繊維につき前記にリストした多分散性の発明者らの測定値を比較することが注目される。再び、Yang (1991)によれば、Mw/Mnは2〜3の範囲である。これは発明者らのポリ尿素につき測定した値の約半分であり、これは分子量におけるその分布がKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)につき達成したものよりはるかに広いことを示している。
【0079】
実施例10
芳香族ポリ尿素系繊維の分子モデリング
反応物、潜在的な中間体およびオリゴマー生成物の分子モデリングをHypercubeからのHyperChem(登録商標)バージョン 5.0を用いて行った。これらの試みの目的は、実験観察および分析結果から始まった推定を支援し、かつパラフェニレンジイソシアネートおよびパラフェニレンジアミンに由来した予期されるポリ尿素ポリマーの首尾一貫した写真を構築するために反応化学および生成物特性に対する洞察を獲得することであった。かくして、重合反応がn−メチルピロリドンにおいて進行する場合にオリゴマートポロジーを理解するために、初期モデルを構築した。後のモデルは、最終生成物構造の潜在的な構成を含み;これらは、Kevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)分子構造の同時の構成により支援または確認した。
【0080】
本開示の芳香族ポリ尿素ポリマーにおいて最適の物理的性質を達成するためには、分子量が最大化されなければならないと考えられている。このようなかかる反応系において、高分子量の達成は必ずしも容易に達成可能な目標ではない。成長している分子は、急速に混乱し結ばれるようになることができ、これは、さらなる反応物によって反応末端基へのアクセスを限定する。かくして、n−メチルピロリドンは、溶媒としての論理的な選択となり、安定化キレート剤としての塩化カルシウムの添加となった。
【0081】
図23は、2つの尿素結合を含む潜在的なオリゴマーモデルを示す。この画像は、再現された「スティックおよびドット」図とし、これがすべての原子中心、結合および周囲の「電子雲」を与えるために、最も明瞭な図を与えるからである。これおよび引き続いてのモデル画像において、赤色は、それらの2組の非結合電子を持ったカルボニル酸素を示し;紺色は窒素中心を示し(各々に対する単一非結合電子対はこれらの画像において見るのが難しいが、それらは存在している);水色はカルボニルおよびベンゼン環の炭素を示し;また、白線はプロトンを示す。これらの特別な表現は二重結合をよく示さないが、それらはカルボニルおよびベンゼン環群上に存在する。
【0082】
図23−Bは、カルシウムイオン(Ca++、黄色)がカルボニル酸素の非結合対に結合した後の同一のモデルを示し;このカルシウムイオン結合は、ポリマー骨格に沿ったカルボニル基、およびNMPで生じる。これらは、一時的な付着であり、これはカルボニル基の二重結合構造に対して効果をほとんど有しないようである。図23Cは、後者のプロトンからの水素結合を介して尿素水素にNMPの第三アミン窒素の結合後のBからのモデルを示す。かくして、BおよびCは、成長しているポリマーがNMP中でどのように安定し得たかを示唆し;水素結合のすべての潜在的な部位は、Ca++およびNMPによって一時的にブロックされる。これらの各ブロッキング剤は、他の近くのポリマーとの潜在的な相互作用の低減によりポリマーを懸濁液中に保つ。Ca++および水素結合したNMPがそれらのより強い引力によって水またはアルコールの上の水酸基へ移される場合、ポリマー間水素結合を容易に形成し、ポリマーは場合に応じて、繊維またはフィルムとして溶液から容易に滴下する。
【0083】
関連する態様の研究は、尿素結合に分子的幾何学の緊密な評価を含んでいた。類似したKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)部分の同時の評価は、それらの構造の差に基づいて、これらの2つの材料の熱および機械的性質における潜在的な差を理解するように教示していた。かくして、図24は、各々2つの結合単位にわたる2つのポリマーのオリゴマーを示す。本発明による尿素は、頂部画像にて示され、そのアラミドは、底部画像に示される。
【0084】
ポリ尿素は、隣接したポリマー鎖のカルボニル酸素に二座配位水素結合ができる。アラミドは単に一座配位水素結合ができる。図24に捕捉したモデリングからの観察について著しいものは、Kevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)における結合と比較して、尿素結合中のさらなる窒素中心が、全体的な構造の形態論に対してほとんど効果を有しないようである。双方のオリゴマーは、断面積のおよそ同一サイズのままであり、双方は、同じ程度にねじられるかまたは「回旋状」のようである。尿素結合において、π/2回転対称は明らかであるが、アラミドのアミド結合中においては明らかではない。
【0085】
次の2つの図において、本発明に従うポリ尿素(図25)およびKevlar(登録商標)(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)(図26)の潜在的な長距離(long-range)のポリマー構造を示す。これらのモデルは、4つのポリマー鎖の各々だけから構築され、各鎖は各々わずか16の結合単位しか含んでいない。双方のポリマーモデルは、長距離の構造がコルクスクリューのらせん状トポロジーによって表し得ることを示す。2つの図の各々において、Aは、鎖成長軸に沿ったポリマー構造体を示し;Bは、軸から約90°の角度からの側面図を示し;Cは、明白な栓抜きスパイラルを持った側面の斜図を示し;およびDは、尿素およびアラミド中の結合中心のクラスターの接近図を示す。後者の図(各ケースでのD)において、二座配位水素結合構造は、ポリアラミド中の一座配位水素結合であるので、ポリ尿素に明らかである。
【0086】
理論によって拘束されることを望むことなく、他の形態の水素結合が双方のポリマー構造体;すなわち、隣接した鎖上の窒素間の水素結合において可能のようである。今まで、分子間水素結合の可能性だけが考慮され、これは様相であり、それにより、鎖は繊維またはポリマー鎖中で一緒に結合できた。また、これらのモデルは、分子間水素結合が形成された場合に鎖が結ばれ絡むようになり得ることを示唆した。これらは、それらのより大きな数により、窒素中心間でより多く存在するようであるが、窒素中心およびカルボニル間にもより多く存在するようであり、後者の形成もさらに幾何学的な制約によって可能性において制限されている。しかしながら、カルボニルへの水素結合は、これらのモデルに基づいて窒素中心間でよりも熱力学的により好ましいようである。
【0087】
図27において、ポリ尿素およびポリアラミドを重複する球体表現を用いて側面図に示す。ここで、ここまで示されたモデルが四鎖構造に基づくが、長距離構造における他の潜在的な差は明らかであり得る。実際に有望なシナリオである一緒に結合したより多くの鎖は、これらの鎖をかなり変更できた。しかしながら、図27に示すモデルは、2つのポリマー材料の物理的特性における差を生じることができる、長距離の分子構造における潜在的で微妙な差を暗示する。これらの差は、主としてさらに後記のそれらのらせん状トポロジーにおけるわずかな変化の結果になるであろう。尿素結合中の第2の窒素中心の結果、二座配位水素結合の潜在的な利益を生じさせることが注目される。また、しかしながら、第2の中心は、約4のさらなるアラミド繰り返し単位が「巻き返し(catch up)」することを必要とするポリマー骨格において、第2のターンを誘導する。それは尿素骨格のさらなるねじれであり、これは、2つのらせんの差が観察されたトポロジーおよびおそらく長距離のポリマー構造についての理由であり得る。
【0088】
図27に示すモデルは、同数の尿素およびアラミドの繰り返し単位から構築した。それらの間のただ一つの差は、尿素の各繰り返し単位における第2の窒素中心である。アラミドの区域はより短く、これはすべての第2の窒素中心の不存在により説明できたが、それは相応して短くない。アラミドらせん状(corkscrew)らせんの約1.5の期間にわたる距離において、ほとんど2つの期間のポリ尿素渦巻をカバーする。これに加えて、ポリ尿素期間はアラミドのものより「短く」、その振幅はわずかに大きい。換言すれば、ポリ尿素らせんは、サイクルを完了するために長い軸距離を必要とし、そのサイクルの直径はアラミドで見られたものより大きい。これらの幾何学的な差だけが、張力に対するこれらの2つの「スプリング」の機械的な応答の差に寄与する。
【0089】
C2対称要素は尿素結合に明らかでありが、対称要素はアミド結合中に存在しない。この区別は、ポリアラミドのものと比較して、本開示の芳香族ポリ尿素系繊維の有益な物理的性質を支持する構造的意味を有する。
【0090】
集合構造内の小さな対称の存在さえ、集合内の長距離秩序の可能性を増加させると一般的に考えられている。これは、対称要素が反復である場合では、なおさらそのケースである。ポリマーの繰り返し単位における対称要素の反復は、分子鎖の長距離の空間的構造に対する秩序効果を有する。これは、今度は分子間の散発的接触および水素結合の改善により、ポリマーの集合内のより高い秩序を与える。したがって、尿素結合におけるC2対称要素、および同族アミド中の対称の不存在は、芳香族ポリアミドと比較して、芳香族ポリ尿素に長距離秩序の有益な差異を供給できた。
【0091】
ポリマー内の長距離の構造化秩序に形を変える対称要素のこの概念は、液体−対−固体水に対するアナロジーによって例示し得る。また、この場合、水はC2対称要素を有する。その液体形態において、分子が熱エネルギーを有し、自由に移動するため、いずれの構造化秩序も短い範囲にあり一時的である。固相において、対称は、「ロックされる」ようになり、また、長距離秩序は拡散的であり、しばしば明らかである。また、ポリ尿素のコンピューターモデルのうちのいくつかの結果を考慮すると、図28に示すごとく、この傾向は実現可能のようである。このケースにおいて、単一のオリゴマーのモデリングは、分子内の短い範囲のらせん状構造だが、その全長にわたるより多くのランダム構造を示唆する。これらの分子の集合を収集して、その固体形態におけるポリマーを表わす場合、長距離の構造は明らかになる。
【0092】
実施例11
ポリ尿素試料の特徴付け
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、プロトン核磁気共鳴分光法(NMR)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および元素分析を行い、本発明による実験77c、79cおよび57aからのポリマー試料を特徴付けた。
【0093】
試料77cのプロトンNMRスペクトルは、大量のN−メチルピロリドン(NMP)溶媒中の少量のp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)およびp−フェニレンジアミン(PPDA)ベースの芳香族ポリ尿素と一致する。ポリマー部分の化学シフトのプロフィールは、10ppm[尿素群、−NHC(O)NH−]および7.5ppm(芳香族位置)の近くの2つの広い単一化学シフトを示す。プロトンNMRスペクトル中で示された末端基からの非常に弱い化学シフトは、p−フェニレンアミンと一致する。ポリマー中の近くの末端Ar−アミン基は、約12.3±1.2%である。
【0094】
試料57aについての元素(C、H、N、O)分析結果(テーブル3)および計算された元素結果との比較(末端基なし)をテーブル4に示す。
【0095】
【表5】

【0096】
2つの液体試料用の相対的分子量(ポリスチレンに対する)をGPCで比較し、N−メチルピロリドン(NMP)を溶離剤として用いた。GPC分析結果の要約をテーブル5に提供する。
【0097】
【表6】

【0098】
FT−IR分析
フーリエ変換赤外分光(FT−IR)分光法は、材料同定の選択ツールである。FT−IRにおいて、赤外線吸収バンドは特徴的な官能基に割り当てる。多数のかかるバンドの存在に基づいて、考慮中の材料を同定できる。公知化合物のスペクトルの有効性はポジティブな同定を行う可能性を増加させる。水平減衰全反射(HATR)−FT−IRは、ポリマーフィルムにおける深さでの分子構造を精査する。
【0099】
「受け取られた」試料「ポリマー固体57a」の(HATR)−FT−IRスペクトルを図30に提供する。
【0100】
1H NMR分析
NMR分析は有機材料特徴付けの重要な方法である。分子中の原子核の化学シフト(NMRシグナル)は、NMRの活性核の磁気環境、およびそれらが経験する局所場に依存する。活性核の化学シフトが局所磁界によって決定されるので、NMR法は原子スケールでの価値ある情報を提供する。
【0101】
「受け取られた」試料「ポリマー固体77a」のプロトンNMRスペクトルを図31に提供する。重水素ジメチルホルムアミド(DMF−d7)を溶媒として用いた。1.9、2.2、2.75および3.35ppm付近に位置した優勢な化学シフトは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒と一致している。3.61ppmのシャープな一重項はNMP中の水による。図32および図33は、弱い化学シフトの詳細について1〜3.8ppmおよび4〜11ppmのY軸領域において図31に拡大する。図32に示す弱いシャープな多数のピークは、おそらくNMP溶媒の異性体または不純物によるようである。図33は、この試料中のポリマー部分を示し、これはp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)およびp−フェニレンジアミン(PPDA)ベースの芳香族ポリ尿素と一致している。7.5付近に中心がある比較的強く広い単一ピークを芳香族プロトンに合理的に割り当て、一方、10ppm付近のピークは尿素構造中のプロトンと一致している。4.8(−NH)、6.6および7.25(Arプロトン)、9.7および9.95ppm(尿素プロトン)付近の非常に弱い化学シフトは、末端芳香族アミンに割り当てる。割り当ては、文献において利用可能な同様の化学種の化学シフトに基づき、それを図33に印す。この試料中の末端基のおよその比率は、特徴的な化学シフトでのピーク面積の統合に基づいて見積もるであろう。その計算を以下に示す:
【0102】
末端Ar−アミン基上の繰り返したポリ尿素の比率:800/8:56/4〜100:4
【0103】
末端Ar−アミン%:約14/114×100%=12.3%
【0104】
1.2%の偏差は、特に末端基についてのかかる弱い化学シフトのために、統合の偏差を考慮して結論として報告した。
【0105】
元素分析
元素分析は、化合物中の元素量(典型的には重量パーセントとして)を決定する測定法である。多数の異なる元素が存在すると同時に、元素組成を決定するための多数の異なる方法が存在する。最も一般的なタイプの元素分析は、炭素、水素および窒素(CHN分析)のためのものである。このタイプの分析は、有機化合物(炭素−炭素結合を含む化合物)に特に有用である。
【0106】
元素分析は、試料「ポリマー固体57a」につき行った。燃焼法を用いて、合計の炭素、水素および窒素を決定した。熱分解は、この試料中の酸素含量を決定するために用いた方法であった。分析は二連で行い、結果をテーブル6に要約する。
【0107】
【表7】

【0108】
GPC分析
ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、ポリマー分布の分子量を決定する。GPC分析において、ポリマーの溶液は多孔質ゲルを詰めたカラムを通過させる。試料は、分子サイズに基づいて分離し、より大きな分子は、より小さな分子よりも速く溶出する。各成分の保持時間を検出し、較正曲線と比較し、次いで得られたデータを用いて、試料用の分子量分布を計算する。
【0109】
ユニークな分子量よりむしろ分子量の分布が、すべてのタイプの合成ポリマーに特徴的である。この分布を特徴づけるために、統計的平均を用いる。最も一般的なこれらの平均は、「数平均分子量」(Mn)および「重量平均分子量」(Mw)である。これらの2つの値の比率(Mw/Mn)は多分散性指数(PI)という。PIが大きくなればなる程、分子量分布はより分散する。PIが有することができる最小値は1であり、これは、分布におけるすべての分子が同一分子量である単分散した試料を表す。また時々、ピーク分子量Mpが含まれる。ピーク分子量値は、分子量分布の様式として定義される。それは、分布中における最も豊富な分子量を示す。また、この値は、分子量分布に対する洞察を与える。
【0110】
大部分のGPC測定は公知のポリマー標準(通常ポリスチレン)に対してなされる。結果の正確さは、その分析されるポリマーの特性が、用いた標準のものとどのように一致するか依存する。別々に較正した異なるシリーズの測定間の再現性における期待誤差は、約5〜10であり、限られた精度のGPC測定に特徴的である。したがって、異なる試料の分子量分布間の比較が同一シリーズの測定中になされた場合、GPC結果は最も有用である。
【0111】
GPC分析パラメーターおよび条件の要約を以下に提供する:
ポンプ: Waters 590 流速: 0.75 mL/min
注入器: Waters 717+ WISP 注入体積: 100uL
検出器1: Waters 481 UV @265nm 検出器2: Waters 410dRI @ 16x
データ: NECコンピュターでのMillenium2.10 サンプリング速度: 1秒当たり1.0ポイント
溶離剤: N−メチルピロリジノン
カラム: Jordi Mixed Bed Linear 250x10mm 製品#15025 #11060802
試薬: NMP Aldrich [872-50-4] 270458 ロット#02047BH
塩化リチウム Aldrich [7447-41-8] 213233 ロット#MKAA0678
標準: 10 Polystyrene Standards (1220 Mp - 1090000 Mp)
曲線適合: Linear Correl = -0.9990
試料: NMP中のポリ尿素
温度: 85℃ 試料濃度 ≦ : 0.15%
試料調製: 溶離剤で1:100に希釈
結果およびプロット: 三連注入 参照: なし
【0112】
結果をテーブル7に提供する。2つの試料の検量線およびMWD曲線を図34、図35および図36に提供する。
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
参考文献
以下の参考文献を、それらが本明細書に記載したものに補足的な典型的手順および他の詳細を提供する範囲まで、特にここに出典明示して本明細書の一部とみなす。
米国特許文献
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Yosizatoらが発明者として挙げられた、1995年5月9日付けで発行された米国特許第5,414,118号。
Kurtzらが発明者として挙げられた、1995年3月23日付けで発行された米国特許第5,401,825号。
Drysdaleらが発明者として挙げられた、1996年7月30日付けで発行された米国特許第5,541,346号。
【0116】
外国特許文献
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Hirtらが発明者として挙げられた、1972年3月31日付けで公開されたCH520657。
Nakanishiらが発明者として挙げられた、1997年1月14日付けで公開されたJP09013068。
Fukuokaらが発明者として挙げられた、1998年2月17日付けで公開されたJP10044618。
Seidenfadenらが発明者として挙げられた、1954年3月11日付けで公開されたDE906213。
発明者が挙げられていない、1982年3月10日付けで公開されたJP57042717。
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非特許文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素結合を介して結合して、ポリマーを形成するパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)およびパラフェニレンジアミン(PPDA)の単位を含む芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項2】
パラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)およびパラフェニレンジアミン(PPDA)の単位が交互である請求項1記載の芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項3】
ポリマーが約10,000g/モルを超える数平均分子量を有する請求項1記載の芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項4】
ポリマーが約25,000g/モルを超える数平均分子量を有する請求項1記載の芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項5】
ポリマーが約45,000g/モルを超える数平均分子量を有する請求項1記載の芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項6】
以下の構造:
【化1】

[式中、nは約50以上である]
を含む芳香族ポリ尿素系繊維。
【請求項7】
a)パラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)を無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に添加して、溶液Aを形成し;
b)パラフェニレンジアミン(PPDA)および脱水塩化カルシウムを無水NMPに添加して、溶液Bを形成し;
c)溶液Aおよび溶液Bを組み合わせて溶液Cを形成し、粘度の変化が溶液C中で生じるまで激しく混合し;
d)溶液Cを無水エタノールの撹拌に添加して、溶液Dを形成し;次いで
e)溶液Dを濾過して、芳香族ポリ尿素系繊維を集める
工程を含むことを特徴とする芳香族ポリ尿素系繊維の製造方法。
【請求項8】
溶液Aにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)の濃度が、NMPに基づいて10重量%〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
溶液Aにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)の濃度が、NMPに基づいて20重量%〜40重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
溶液Aにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレン−ジイソシアネート(PPDI)の濃度が、NMPに基づいて20重量%〜25重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項11】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレンジアミン(PPDA)の濃度が、NMPに基づいて5重量%〜15重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項12】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレンジアミン(PPDA)の濃度が、NMPに基づいて5重量%〜10重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項13】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のパラフェニレンジアミン(PPDA)の濃度が、NMPに基づいて5重量%〜8重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項14】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の塩化カルシウムの濃度が、NMPに基づいて10重量%〜40重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項15】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の塩化カルシウムの濃度が、NMPに基づいて20重量%〜30重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項16】
溶液Bにおける無水N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の塩化カルシウムの濃度が、NMPに基づいて20重量%〜25重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項17】
溶液Dにおけるエタノールの濃度が、溶液Cの40倍を超えることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項18】
さらに、ケトンで芳香族ポリ尿素系繊維を濯ぐ工程を含むことを特徴とする請求項7記載の製造方法。
【請求項19】
さらに、オーブン中で芳香族ポリ尿素系繊維を乾燥させる工程を含むことを特徴とする 請求項7記載の製造方法。
【請求項20】
オーブンの温度がほぼ約30℃を超えることを特徴とする請求項19記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図26D】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2012−531534(P2012−531534A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517720(P2012−517720)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039790
【国際公開番号】WO2010/151645
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506400292)テキサス リサーチ インターナショナル,インク. (3)
【Fターム(参考)】