説明

新規なマイクロ波アシスト磁気記録素子による隣接トラック干渉抑制を行える磁気記録ヘッド

【課題】 新規なマイクロ波アシスト磁気記録素子による隣接トラック干渉抑制を伴う磁気記録ヘッドを提供する。
【解決手段】 書き込みを改善するために磁気媒体に磁気発振を設定する新規な磁気発振発生構造を組み込んだ、かつまた所望のデータトラックの外側の領域における書き込みを抑制することによって、書き込み幅を狭くし隣接トラック干渉を低減する、磁気データ記録用の磁気書き込みヘッドである。磁気発振発生構造には、磁気媒体への書き込みにおいて書き込み磁極をアシストする方向に発振する発振磁界を発生する、中央に配置された磁気アシスト素子が含まれる。磁気発振発生構造にはまた、アシスト素子の両側における第1および第2の磁気非アシスト素子が含まれる。非アシスト素子は、第1の方向と反対の第2の方向に発振する磁界を発生し、この磁界は、中央に配置された磁気アシスト素子からの磁気書き込みアシストを打ち消し、これらの側部領域における書き込みを抑制するように働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データ記録に関し、特に、書き込みアシストおよびまた隣接トラック干渉抑制の両方のために新規な磁気マイクロ波素子を用いる磁気記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの長期記憶の中心は、磁気ディスクドライブと呼ばれるアセンブリである。磁気ディスクドライブには、回転する磁気ディスクと、回転する磁気ディスクの表面に隣接するサスペンションアームによって吊り下げられる書き込みおよび読み取りヘッドと、サスペンションアームを揺動して、回転するディスクの選択された円形トラック上に読み取りおよび書き込みヘッドを配置するアクチュエータと、が含まれる。読み取りおよび書き込みヘッドは、空気ベアリング面(ABS)を有するスライダ上に直接位置付けられる。サスペンションアームは、ディスクの表面に向けてスライダを付勢し、かつディスクが回転すると、ディスクに隣接する空気が、ディスクの表面と共に移動する。スライダは、この移動する空気のクッションに乗って、ディスクの表面上に浮上する。スライダが空気ベアリングに乗っている場合に、書き込みおよび読み取りヘッドは、回転するディスクに磁気転移(magnetic transition)を書き込み、かつそこから磁気転移を読み取るために用いられる。読み取りおよび書き込みヘッドは、コンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続され、書き込みおよび読み取り機能を実行する。
【0003】
書き込みヘッドは、書き込み磁極(magnetic write pole)および戻り磁極(magnetic return pole)を含むことができ、書き込み磁極は、ABSにおいて戻り磁極よりはるかに小さい断面を有する。書き込み磁極および戻り磁極は、ABSから除外された領域において互いに磁気的に接続される。導電書き込みコイルは、書き込みコイルを通して磁束を誘導する。これにより、書き込み磁界が、隣接する磁気媒体へ向けて放出されることになるが、書き込み磁界は、媒体の表面にほぼ垂直である(しかしこれは、書き込み磁極の近くに位置するトレーリングシールドなどによって、いくらか傾斜させることができる)。書き込み磁界は、媒体を局所的に磁化し、次に媒体を通って移動し、かつそれが、以前に記録されたデータビットを消去できないほど十分に拡散され弱くなる戻り磁極の位置で書き込みヘッドに戻る。
【0004】
回転する磁気ディスクからの磁界を検出するために、GMRまたはTMRセンサなどの磁気抵抗センサを用いることができる。このセンサには、ピン止め層(pinned layer)および自由層と呼ばれる第1および第2の強磁性層間に挟まれた非磁性導電層またはバリア層が含まれる。第1および第2のリード線が、センサに接続され、リード線を通してセンス電流を伝導する。ピン止め層の磁化は、空気ベアリング面(ABS)に対して垂直にピン止めされ、自由層の磁気モーメントは、ABSと平行に位置するが、しかし外部磁界に応じて自由に回転できる。ピン止め層の磁化は、典型的には、反強磁性層との交換結合によってピン止めされる。
【0005】
ピン止め層および自由層の磁化が互いに平行である場合に、散乱(scattering)は最小であり、ピン止め層および自由層の磁化が互いに逆平行である場合に、散乱は最大である。散乱における変化は、cosθに比例してスピンバルブセンサの抵抗を変化させる。ここで、θは、ピン止め層および自由層の磁化間の角度である。読み取りモードにおいて、スピンバルブセンサの抵抗は、回転するディスクからの磁界の大きさに比例して変化する。センス電流が、スピンバルブセンサを通して伝導されると、抵抗変化により、再生信号として検出および処理される電位変化が引き起こされる。
【0006】
非常に小さなビットサイズおよび高いデータ密度において、安定した磁気ビットを磁気媒体上に書き込み、一方でまた隣接トラック干渉を回避することは、これまで以上に困難になる。記録された磁気ビットが、非常に小さなビットサイズで安定したままであるためには、媒体の磁気保磁力を向上させなければならない。しかしながら、磁気媒体におけるこの磁気保磁力の向上はまた、媒体に記録するための磁界強度における対応する向上を必要とする。しかしながら、(必ず小さな記録ビットを生成するために)書き込み磁極のサイズが縮小するとともに、媒体に記録するための十分に強い磁界を生成することがさらに困難になる。この障害を克服するために提案された一方法は、書き込み磁極の近くで媒体を局所的に加熱し、それによって、媒体の保磁力を一時的に低下させることである。この方法は、熱アシスト記録と呼ばれている。しかしながら、ビットの記録を可能にするほど十分に媒体を局所的に加熱すると、他の隣接トラックが、意図せずに同様に加熱され、それは、隣接データトラックの消去またはそれに対する干渉につながる可能性があり、データ密度を増加させるためにデータトラック間の間隔が低減された場合に特に問題となる課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高データ密度での書き込み能力を改善し、一方でまた隣接トラック干渉を抑制する技術の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、磁気データ記録用の磁気書き込みヘッドであって、第1および第2の側部を有し、かつ第1および第2の側部間の距離によって画定された幅を有する書き込み磁極と、書き込み磁極に隣接する磁気発振発生器と、を含む磁気書き込みヘッドを提供する。磁気発振発生器には、さらに、磁気データ書き込みをアシストする発振磁界を発生するように構成された、中央に配置された磁気アシスト素子と、磁気データ書き込みをアシストしない発振磁界を発生するようにそれぞれ構成された第1および第2の磁気非アシスト素子とが含まれ、中央に配置された磁気アシスト素子が、第1および第2の磁気非アシスト素子間に位置している。
【0009】
磁気発振発生器からの磁気発振は、磁気媒体の磁気共鳴を一時的に低減する磁気共鳴を磁気媒体に設定し、書き込み磁極からの磁界が媒体を磁気的に切り替えるのを容易にすることによって、磁気媒体への書き込みをアシストすることができる。しかしながら、媒体への書き込み能力を向上させることが、磁気データ記録システムにおける唯一の関心事ではない。隣接トラックが、書き込みヘッドによって意図せずに影響されないことがまた重要である。
【0010】
有利なことに、本発明は、所望の狭い書き込み領域における書き込みを改善し、一方でまた、この狭い領域の外側の領域における書き込みを抑制する。中央に配置されたアシスト素子は、書き込みをアシストするように設計された第1の方向に磁化を設定する。アシスト素子の両側における非アシスト素子は、側部領域において発振アシストを抑制するために、アシスト素子からの発振を打ち消す反対方向の発振を側部領域において発生し、それによって、隣接トラック干渉を防ぎ、トラック幅を効果的に狭くし、増加データ密度を増加させる。
【0011】
本発明のこれらや他の特徴および利点は、図と関連して書かれた好ましい実施形態における以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。これらの図では、同様の参照数字は、全体を通して同様の要素を示す。
【0012】
本発明の性質および利点と同様に好ましい使用モードのより完全な理解のために、添付の図面(正確な縮尺ではない)に関連して読める以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を具体化可能なディスクドライブシステムの概略図である。
【図2】図1のライン2−2に沿ったスライダのABS図であり、そこにおける磁気ヘッドの位置を示す。
【図3】図2のライン3−3に沿った磁気ヘッドにおける側面図であって、本発明の実施形態による、90度左回りに回転させた磁気ヘッドの側面図である。
【図4】90度左回りに回転して示された、図3の書き込みヘッドの一部における拡大側面図である。
【図5】図4に示す書き込みヘッドの一部におけるABS図である。
【図6a】本発明の代替実施形態による磁気書き込みヘッドの概略ABS図である。
【図6b】本発明の代替実施形態による磁気書き込みヘッドの概略ABS図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、本発明を実施するために現在考えられる最良の実施形態である。この説明は、本発明の一般原理を示す目的で行われ、本明細書で請求する発明概念を限定することを意図するものではない。
【0015】
ここで図1を参照すると、本発明を具体化するディスクドライブ100が示されている。図1に示すように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上に支持され、ディスクドライブモータ118によって回転される。各ディスク上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンの形態をしている。
【0016】
少なくとも1つのスライダ113が、磁気ディスク112の近くに配置され、各スライダ113は、1つまたは複数の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスクが回転すると共に、スライダ113は、ディスク面122上で内側および外側に放射状に移動し、磁気ヘッドアセンブリ121が、所望のデータが記録される磁気ディスクの様々なトラックにアクセスできるようにする。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に装着される。サスペンション115は、ディスク面122に対してスライダ113を付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に装着される。図1に示すようなアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモータ(VCM)であってもよい。VCMには、固定磁界内を移動可能なコイルが含まれ、コイルの移動方向および速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0017】
ディスク記憶システムの動作中に、磁気ディスク112の回転によって、押し上げ力または浮力をスライダに及ぼす空気ベアリングが、スライダ113とディスク面122との間に生成される。したがって、空気ベアリングは、通常の動作中に、サスペンション115のわずかなばね力を相殺し、小さくてほぼ一定の間隔で、ディスク面上にわずかに離れるようにスライダ113を支持する。
【0018】
ディスク記憶システムの様々な構成要素は、アクセス制御信号および内部クロック信号などの、制御ユニット129によって生成される制御信号によって動作を制御される。典型的には、制御ユニット129には、論理制御回路、記憶手段、およびマイクロプロセッサが含まれる。制御ユニット129は、ライン123上のドライブモータ制御信号、ならびにライン128上のヘッド位置およびシーク制御信号(head position and seek control signal)などの、様々なシステム動作を制御する制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、ディスク112上の所望のデータトラックへとスライダ113を最適に移動および配置するための所望の電流プロファイルを提供する。読み取りおよび書き込み信号は、記録チャンネル125を介して書き込み/読み取りヘッド121へ、および書き込み/読み取りヘッド121から伝達される。
【0019】
図2を参照すると、スライダ113における磁気ヘッド121の向きを、より詳細に見ることができる。図2は、スライダ113のABS図であり、見て分かるように、誘導書き込みヘッドおよび読み取りセンサを含む磁気ヘッドは、スライダの後縁(trailing edge)に位置する。典型的な磁気ディスク記憶システムの上記の説明および図1の添付図は、表現だけを目的としている。ディスク記憶システムが多数のディスクおよびアクチュエータを含んでもよく、各アクチュエータがいくつかのスライダを支持してもよいことは、明らかである。
【0020】
図3は、本発明の方法によって構成できる磁気書き込みヘッド300の側部断面図である。書き込みヘッド300は、書き込み磁極(magnetic write pole)302と戻り磁極(magnetic return pole)304とを含む。書き込み磁極302は、書き込み磁極302の先端への磁束の伝導を助ける磁気形成層306と接続することができる。書き込み磁極302および形成層306は、磁気バックギャップ構造308によって戻り磁極304と接続することができる。非磁性導電書き込みコイル310が、戻り磁極304と書き込み磁極および形成層302、306との間を通過し、かつ書き込み磁極および形成層302、306の上を通過してもよい。書き込みコイル310は、非磁性電気絶縁材料312に入れてもよく、非磁性電気絶縁材料312は、アルミナおよび/または熱硬化フォトレジストなどの材料とすることができる。電流が書き込みコイル310を通過すると、コイル310のまわりに磁界が誘導され、それは、磁束が戻り磁極304、バックギャップ層308、形成層306、および書き込み磁極302を通過することになる。これにより、書き込み磁界が、書き込み磁極302の先端から放出されることになる。この強くて非常に集中された書き込み磁界は、磁気媒体112の磁気最上層314を局所的に磁化する。次に、磁界は、磁気媒体の軟質な磁気下層316を通って移動し、その後、戻り磁極304に戻るが、そこでは磁界は、以前に記録されたビットを消去できないほど十分に拡散され、かつ弱くなる。書き込みヘッド300はまた、磁気台座305をABSにおいて含むことができ、この磁気台座305は、書き込みコイル310からの漂遊磁界などの漂遊磁界が磁気媒体112に達するのを防ぐためのシールドとして働くものである。
【0021】
本明細書において以下でより詳細に説明するように、書き込みヘッド300はまた、トレーリング磁気シールド318を含み、トレーリング磁気シールド318は、空気ベアリング面(ABS)に位置し、かつ書き込みの改善のために磁気発振を供給する磁気発振発生器320によって書き込み磁極302から分離されている。また、トレーリング磁気シールド318が書き込み磁極302から磁気的に分離されることを保証するために、非磁性ギャップ層321が設けられる。非磁性トレーリングギャップ層321は、アルミナなどの材料で構成することができる。トレーリング磁気シールド318は、トレーリング磁極322によって、書き込みヘッド300の後部における他の磁気構造と接続することができる。トレーリングシールド318は、書き込みの改善のために書き込み磁界の勾配を増加させる。
【0022】
データ密度を増加させる一方法は、トラックピッチとも呼ばれるインチ当たりのデータトラック(TPI)数を増加させることであり、これには、磁気記録幅を狭くすることが必要である。磁気記録幅を狭くするために、書き込み磁極302の幅を低減しなければならないが、しかしこれはまた、書き込み磁界を低減させることになり、幅におけるかかる低減(またはTPIの増加)を困難にする。さらに、主磁極(main pole)が複雑な構造を有するので、書き込み磁極幅の低減は、製造誤差の増加につながり、所望の小さな幅を有しない廃棄ヘッド数を増加させる。
【0023】
書き込み能力を改善する一方法は、磁気共鳴を励起することができ、かつ磁気記録媒体の磁化反転を誘導できる、書き込みヘッド内の発振磁界発生器を用いることである。かかる発振磁界は、磁気媒体の磁気異方性を一時的に低減し、より小さな書き込み磁極を用いた場合でさえ、より容易な書き込みを可能にし、かつ書き込み磁界を低減する。かかるシステムは、マイクロ波アシスト書き込みと呼ぶことができる。なぜなら、アシストする発振磁界の発振周波数が、マイクロ波領域にあるのが好ましいからである。しかしながら、かかるシステムの使用と共に生じる問題として、書き込み磁極からの磁界の幅が、アシスト幅と比較して大きく、隣接データトラックが、消去される可能性がある。
【0024】
しかしながら、本発明は、これを克服して、マイクロ波アシスト記録システム、すなわち、有益なことにトラック幅を低減する一方で書き込み能力を改善し、かつまた隣接トラック干渉を低減するマイクロ波アシスト記録システムを提供する。図4は、図3の構造における磁極先端部の拡大図を示すが、この図は、図3の図から左回りに90度回転されている。図3は、書き込み磁極302およびトレーリングシールド318、ならびにそれらの間に挟まれた磁気発振発生器320の一部を示す。磁気発振発生器は、スピントルク発振効果を用いて、図示のように歳差運動方式で発振する磁界402を生成する。この発振磁界402を生成するために、発振発生器320には、磁気スピン整流層404、磁界発生層406、および磁気ゾーン制御層408が含まれる。スピン整流層404および磁気ゾーン制御層408は、それぞれ、図4に示すように所望の方向にピン止めされた磁化410、412を有する。このピニング(pinning)は、電流によって誘導されたピニングとすることができ、または反強磁性材料層(図示せず)との交換結合によって生成することが可能である。磁気中間層414が、スピン整流層404と磁界発生層406との間に挟まれている。
【0025】
導電リード線416、418がまた、発振発生器320の両端に設けられ、発生器320を通過する電流を供給して磁気発振402を誘導する。さらに、電気絶縁層420、422が、書き込み磁極302およびシールド318から、磁気発振発生器320の残りの部分を分離する。電流が発振発生器320を通過し、電子が、磁気的にピン止めされたスピン整流層404および磁気中間層414を通過すると、これらの層は分極される。これらの分極された電子は、磁界発生層406の磁性材料と相互作用して、書き込み磁極302からなどの外部磁界が存在する場合に磁気発振402を発生する。
【0026】
図5は、ABSから見たヘッド300の一部における図を示す。このABS図において、磁気発振発生器には、複数の素子が含まれることが分かる。中央に、アシスト素子502がある。アシスト素子の右側および左側に、第1および第2の非アシスト素子504、506があり、これらの素子は、絶縁層501、503によって中央のアシスト素子502から分離されている。中央のアシスト素子502は、磁気媒体112(図4)への書き込みをアシストする発振磁界を発生するように構成される。それに対して、第1および第2の非アシスト素子504、506は、アシスト素子502の方向と反対の方向に発振する発振磁界を発生するように構成される。これは、外側の素子506、504を通過する電流が、内側の素子502の方向と反対方向に流れるように、素子502、504、506を構成することによって達成される。例として、図5に概略的に示すように、電源508が、素子506のリード線416a、418aと接続される。リード線514a、514b、514c、514dは、中央素子502を通る電流フロー512bと反対の、素子506、504を通る電流フロー512a、512cを生じるような方法で、素子506、502、504を接続する。
【0027】
図5で見られるように、外側の素子504、506は、書き込み磁極302のエッジを横にわずかに越えて延びるのが好ましいのに対して、中央の素子502は、書き込み磁極302の幅より著しく小さい幅を有する。素子502の極性に対して、素子506、504をわたる電流(または電圧)の極性を反転することによって、磁気発振の回転(例えば、右回り対左回り)もまた反転される。このように、外側の素子504、506は、中央の素子502からの書き込みアシストを打ち消し、それによって、書き込み幅を大幅に低減し、隣接トラック干渉を防ぐ。これによって、磁気発振の書き込みアシストを用い、一方でまた隣接トラック干渉を防ぐことが可能になる。
【0028】
ここで図6aおよび6bを参照すると、本発明の別の実施形態によって、書き込み磁極の書き込み中心を、書き込み磁極中心に対してシフトすることが可能になる。これは、書き込みヘッドが形成されて乗っているスライダが、書き込みヘッドの極端な内側または外側の位置にある場合に、スキュー(skew)を補償するのに有用になり得る。例えば、図6aは、複数の磁気発振発生素子604a−604f(3を超える素子)を有するヘッド部を示す。明瞭性のために、素子604a−604fの詳細な構造は、図6aおよび6bには示されていないが、しかし素子604a−604fには、図5の素子502、504、506と類似か、または図4の発振発生器320と類似の様々な層を含み得ることを理解されたい。実例の目的で、6つの素子604が示されている。しかしながら、これは例であり、3を超える他のある数の素子を用いることができる。
【0029】
前述の実施形態と同様に、磁気発振発生器は、書き込み磁極302の後縁(trailing edge)に隣接して位置するのが好ましい。素子604は、次のような方法で、素子604a−604fに電圧または電流を送出するように構成された回路606と接続される。すなわち、各素子を通る電流フローの方向を他の素子に対して切り替えることができるような方法で、電圧または電流を送出するように構成された回路606と接続される。例えば、図6aの構造において、回路は、次のように電圧または電流を素子に印加する。すなわち、素子604c、604dが磁気書き込みアシスト発振を発生することになる第1の方向に、素子604c、604dが電流フロー608を有するように、電圧または電流を素子に印加する。他方において、回路606は、素子604a、604b、604e、604fが、書き込みをアシストしない反対方向に流れる電流フロー610を有するように、これらの素子に電流または電力を供給する。図6aに示す実施形態において、アシスト素子604c、604dは、書き込み磁極302上の中央に位置する。したがって、磁気書き込みは、書き込み磁極302の中央に集中される。これは、図6aにグラフで表されており、そこにおいて曲線612は、ディスクの半径方向に沿って測定される磁界強度を表し、破線614は、書き込み磁極302の中心を表す。
【0030】
しかしながら、当業者が理解するように、スライダが、ディスクの極端な内側または外側部分に移動すると共に、スライダ(および書き込みヘッド)では、スキュー(傾斜)が生じる。このスキュー角度は、書き込みに影響する可能性があり、このスキューを補償するために、書き込み磁極302に対して書き込みの焦点中心を調整することが望ましいであろう。図6bで分かるように、本発明は、かかる補償を考慮している。図6bにおいて、素子604dおよび604eは、書き込みをアシストする方向の発振磁界を自身に発生させる向きである方向に、自身の電流608を流れさせる。素子604a、604b、604cおよび604fは、これらの素子からの発生された発振磁界が記録をアシストしないように、反対方向(矢印610によって示された)に自身の電流を流れさせる。次に、見て分かるように、アシストは、中心からオフセットされる。これは、図6bの右におけるグラフで見ることができるが、このグラフで、曲線616は、破線614によって表された書き込み磁極302の中心からオフセットされている。
【0031】
様々な実施形態を説明したが、それらが、限定ではなく例としてのみ提示されたことを理解されたい。本発明の範囲内に入る他の実施形態もまた、当業者には明らかになろう。したがって、本発明の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても制限されず、添付の特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0032】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンション
118 ディスクドライブモータ
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッドアセンブリ
122 ディスク面
123 ライン
125 記録チャネル
127 アクチュエータ手段
128 ライン
129 制御ユニット(コントローラ)
300 磁気書き込みヘッド
302 書き込み磁極
304 戻り磁極
305 磁気台座
306 磁気形成層
308 磁気バックギャップ構造
310 書き込みコイル
312 電気絶縁材料
314 磁気最上層
316 磁気下層
318 トレーリング磁気シールド
320 磁気発振発生器
321 非磁性ギャップ層
322 トレーリング磁極
402 発振磁界
404 磁気スピン整流層
406 磁界発生層
408 磁気ゾーン制御層
410 磁化
412 磁化
414 磁気中間層
416 リード線
416a リード線
418 リード線
418a リード線
420 電気絶縁層
422 電気絶縁層
501 絶縁層
502 中央アシスト素子(内側素子)
503 絶縁層
504 第1の非アシスト素子(外側素子)
506 第2の非アシスト素子(外側素子)
508 電源
512a−512c 電流フロー
514a−514d リード線
604 素子
604a−f 磁気発振発生素子
608 電流フロー
610 電流フロー
612 曲線
614 破線
616 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気データ記録用の磁気書き込みヘッドであって、
第1の側部および第2の側部を有し、かつ前記第1の側部と前記第2の側部との間の距離によって画定された幅を有する書き込み磁極と、
前記書き込み磁極に隣接する磁気発振発生器と、
を備え、
前記磁気発振発生器が、
磁気データ書き込みをアシストする発振磁界を発生するように構成された、中央に配置されたアシスト素子と、
磁気データ書き込みをアシストしない発振磁界を発生するようにそれぞれ構成された第1および第2の非アシスト素子と、
をさらに含み、
前記中央に配置されたアシスト素子が、前記第1の非アシスト素子と前記第2の非アシスト素子との間に位置する、磁気書き込みヘッド。
【請求項2】
前記アシスト素子は、電流が第1の方向に前記アシスト素子を通過するように構成されており、
前記第1および第2の非アシスト素子は、電流が前記第1の方向と反対の第2の方向に前記第1および第2の非アシスト素子のそれぞれを通過するように構成されている、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項3】
前記アシスト素子および前記非アシスト素子と接続された回路をさらに含み、
前記回路は、電流を第1の方向で前記アシスト素子に供給するように、かつ電流を前記第1の方向と反対の第2の方向で前記第1および第2の非アシスト素子に供給するように機能する、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項4】
前記アシスト素子ならびに前記第1および第2の非アシスト素子が、それぞれ、スピントルク発振効果に基づいて磁気発振を発生する、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項5】
前記アシスト素子および前記非アシスト素子のそれぞれが、
磁気ゾーン制御層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁界発生層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁気中間層と、
前記磁気中間層と接触する電子スピン整流層と、
をさらに含む、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項6】
前記アシスト素子が、前記書き込み磁極の幅より小さい幅を有し、前記第1および第2の非アシスト素子のそれぞれが、前記書き込み磁極の側部を越えて延びる、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項7】
前記アシスト素子が、非磁性電気絶縁分離層によって前記第1および第2の非アシスト素子から分離される、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項8】
前記アシスト素子が、第1の方向で発振する磁界を発生し、前記第1および第2の非アシスト素子のそれぞれが、前記第1の方向と反対の第2の方向で発振する磁界を発生する、請求項1に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項9】
磁気データ記録用の磁気書き込みヘッドであって、
横方向に対向する第1および第2の側部を有する書き込み磁極であって、前記第1および第2の側部が、それらの間において幅を画定する、書き込み磁極と、
複数の磁気発振発生素子を含む磁気発振発生構造と、
前記複数の磁気発振発生素子と接続された回路であって、前記磁気発振発生素子のそれぞれを通る電流フローの方向を制御するように機能する回路と、
を含む磁気書き込みヘッド。
【請求項10】
前記複数の磁気発振発生素子のそれぞれを通る電流フローの方向の前記制御によって、対応して前記磁気発振発生素子のそれぞれによって発生される磁界の発振方向が制御される、請求項9に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項11】
前記複数の磁気発振発生素子のそれぞれを通る電流フローの前記方向の前記制御によって、前記書き込み磁極の中心に対する磁気アシストの位置が制御される、請求項9に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項12】
前記磁気発振構造が、3を超える磁気発振発生素子を含む、請求項9に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項13】
前記複数の磁気発振発生素子のそれぞれが、スピントルク発振を用いて発振磁界を発生する、請求項9に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項14】
前記複数の磁気発振発生素子が、非磁性電気絶縁層によって互いに分離される、請求項9に記載の磁気書き込みヘッド。
【請求項15】
磁気媒体と、
アクチュエータと、
前記磁気媒体の表面付近の移動のために前記アクチュエータと接続されたスライダと、
前記スライダ上に形成された書き込みヘッドと、
を備え、
前記書き込みヘッドが、前記磁気媒体に向けて書き込み磁界を放出するように機能する書き込み磁極と、磁気発振発生器と、を含み、
前記磁気発振発生器が、
前記磁気媒体の磁化を切り替える際に前記書き込み磁界をアシストするために、前記磁気媒体における磁気発振に対して、第1の方向に発振する磁界を発生する、中央に配置されたアシスト素子と、
前記第1の方向と反対の第2の方向に発振する磁界をそれぞれ発生する第1および第2の非アシスト素子と、
をさらに含み、
前記中央に配置されたアシスト素子が、前記第1の非アシスト素子と前記第2の非アシスト素子との間に位置する、磁気データ記録システム。
【請求項16】
前記中央に配置されたアシスト素子ならびに前記第1および第2の非アシスト素子が、スピントルク発振を用いて磁界を発生する、請求項15に記載の磁気データ記録システム。
【請求項17】
前記中央に配置されたアシスト素子ならびに前記第1および第2の非アシスト素子が、それぞれ、
磁気ゾーン制御層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁界発生層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁気中間層と、
前記磁気中間層と接触する電子スピン整流層と、
を含む、請求項15に記載の磁気データ記録システム。
【請求項18】
磁気媒体と、
アクチュエータと、
前記磁気媒体の表面付近の移動のために前記アクチュエータと接続されたスライダと、
複数の磁気発振発生素子を含む磁気発振発生構造と、
前記複数の磁気発振発生素子と接続された回路であって、前記複数の磁気発振発生素子のそれぞれを通る電流フローの方向を制御するように機能する回路と、
を含む磁気データ記録システム。
【請求項19】
前記磁気発振発生素子が、スピントルク発振を用いて磁気発振を発生する、請求項18に記載の磁気データ記録システム。
【請求項20】
前記複数の磁気発振発生素子のそれぞれが、
磁気ゾーン制御層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁界発生層と、
前記磁気ゾーン制御層と接触する磁気中間層と、
前記磁気中間層と接触する電子スピン整流層と、
を含む、請求項18に記載の磁気データ記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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