説明

新規なマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤

【課題】本発明は、新規なマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤、並びにCD36結合剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤、及び(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノを有効成分とするCD36結合剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤、及びCD36の結合剤に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、世界保健機関(WHO)の熱帯病特別研究訓練計画は人類の中で制圧しなければならない8大熱帯病の一つであり、熱帯・亜熱帯地域に広く分布する重要な感染症である。マラリアは、熱帯地方にいる夜間吸血性の雌ハマダラカに媒介されるマラリア原虫により感染する。人へ感染するマラリア原虫としては、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫の4種類が存在する。特に、マラリア感染者の8割を占める熱帯熱マラリア原虫に感染すると、重症の場合には脳性マラリアになって死に至る場合もある。マラリアは、マラリア蚊により体内に入り込んだ原虫がヒトの赤血球に侵入して増殖し、この赤血球における増殖期に発熱等の症状を引き起こす。マラリアの発生地域は、熱帯や亜熱帯において広く発生しているが、地球温暖化に伴って、これまで希にしか確認されていなかった温帯地域にも拡大しつつあり、近い将来には、日本での発生も可能性が指摘されてきている。
【0003】
これらのマラリア原虫類に対する既存の抗マラリア剤としては、(1)南米起源のキナ樹皮由来のキニーネをシーズ化合物として開発されたクロロキンに代表される一連のアミノキノリン系化合物、(2)中国起源の漢薬”青蒿”から開発されたアルテミニシン(artemisinin)などのパーオキサイド化合物、及び(3)ジヒドロ葉酸還元酵素を標的とする葉酸代謝拮抗薬(例えば、特許文献1参照)、の3種類が知られている。しかしながら、マラリア原虫は複雑な免疫回避システムを持っており、各種薬剤に対し耐性を獲得し、既存の抗マラリア剤のみでは十分な治療が困難な状態となっている。現在、これらの薬剤耐性マラリア原虫に対する薬剤の開発が急務とされてきており、例えば、ツヅラフジ科ステファニア属の植物由来のアルカロイドを有効成分とするクロロキン耐性マラリア原虫の耐性克服剤(特許文献2参照)、ポリエーテル系抗生物質であるK−41を有効成分とする抗マラリア剤(特許文献3参照)、血管新生阻害作用を有するボレリジン(Borrelidin)を有効成分とするマラリア原虫類の増殖抑制剤(特許文献4参照)などが報告されてきている。
【0004】
また、CD36(血小板GP)は、糖タンパク質IIIb(GPIIIb)または糖タンパク質IV(GPIV)とも呼ばれており、血小板、内皮細胞、単核白血球、赤芽細胞、上皮細胞およびいくつかの腫瘍細胞系、例えば、黒色腫細胞および骨肉腫細胞の主要な糖タンパク質である(非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3参照)。また、CD36は、赤血球の分化のごく初期のマーカーとなるだけでなく、血小板のトロンボスポンジンやコラーゲンとの接着を媒介している。さらに、CD36は、熱帯熱マラリア原虫が感染した際、赤血球の表面に形成される原虫由来の蛋白質の一つであるPfEMP1と結合し、脳血管などで壊死巣分離(sequestration)を生じ、脳症などを引き起こすことが報告されている(非特許文献4参照)。このため、PfEMP1と結合する細胞間接着分子の一つであるCD36は、マラリア原虫の赤血球への感染や赤血球での増殖と深く関与していると考えられ、当該CD36の機能を阻害することは、マラリアの治療剤や予防剤の開発へ寄与するものと期待されている。
【0005】
一方、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンは、PDE3阻害剤として知られており、血栓性疾患や動脈硬化性疾患の治療、予防に有用であることが知られている(特許文献5参照)。しかしながら、PDE3阻害剤がマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤としての適用やCD36への結合能を有することは全く知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−171773号公報
【特許文献2】特開2000−143523号公報
【特許文献3】特開2003−335667号公報
【特許文献4】特開2004−269440号公報
【特許文献5】特許2964029号公報
【非特許文献1】Asch et al:J. Clin. Invest. 79:1054-1061 (1987)
【非特許文献2】Knowles et al.: J. Immunol. 132, 2170-2173 (1984)
【非特許文献3】Kieffer et al.:Biochem. J. 262:835-842 (1989)
【非特許文献4】Miller, L.H et al.: The pathogenic basis of malaria. Nature415:673-679, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規なマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤、及びCD36の結合剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、斯かる実状に鑑み鋭意研究した結果、PDE3阻害剤として知られている次式、
【0009】
【化1】

【0010】
で表される(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンがCD36に対し結合能を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤に関する。
また、本発明は、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするCD36に対する結合剤に関する。
本発明の態様をさらに具体的に説明すれば、以下の(1)〜(5)のとおりとなる。
(1)(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤。
(2)マラリア原虫類が熱帯熱マラリア原虫であることを特徴とする前記(1)に記載の予防/治療剤。
(3)(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするCD36結合剤。
(4)(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを含有してなるCD36活性阻害剤。
(5)(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを含有してなるCD36の他のタンパク質に対する結合阻害剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤は、人に感染するマラリア原虫である、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫及び卵形マラリア原虫による感染症、特に熱帯熱マラリア原虫による感染症の予防及び/又は治療に有用である。
また本発明のCD36結合剤は、CD36に対する結合能を有し、CD36の生理学的意義を解明するためのツールとして有用であるだけでなく、CD36が関与している各種の疾患、特にマラリア原虫による感染症の治療剤や予防剤として、またこれらの疾患の治療剤や予防剤などの開発に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノン(特許文献5の実施例9記載化合物)は、PDE3阻害剤として公知の化合物であり、その製造は公知の技術、例えば特許文献5に記載の製造方法等により行うことができる。
本発明において、マラリア原虫類とは、熱帯地方にいる夜間吸血性の雌ハマダラカに媒介される原虫であり、具体的には熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫及び卵形マラリア原虫が挙げられる。また、本発明におけるマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤は、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫及び卵形マラリア原虫の感染症、特に熱帯熱マラリア原虫による感染症の予防及び/又は治療に有用である。
【0013】
本発明のマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤は通常、一般的な医薬製剤の形態で用いられる。製剤は通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、潤沢剤等の稀釈剤或いは賦形剤を用いて調製される。この医薬製剤としては各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等が挙げられる。錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が例示できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠或いは二重錠、多層錠とすることができる。丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナランカンテン等の崩壊剤等が例示できる。坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げられる。注射剤として調製される場合には液剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これら液剤、丸剤及び懸濁剤の形態に成形するのに際しては、稀釈剤としてこの分野において慣用されているものを使用でき、例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げられる。尚、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖或いはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を該製剤中に含有せしめてもよい。
【0014】
本発明のマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤に含有される(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンの量は特に限定されず広範囲に選択されるが、通常全組成物中1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
本発明のマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤の投与方法には特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また注射剤の場合には単独で或いはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更には必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。
本発明のマラリア原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常有効成分である(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンの量は1日当り体重1kg当り約0.1〜10mgとするのがよい。また、投与単位形態中に有効成分を1〜200mg含有するのがよい。
【0015】
本発明のCD36結合剤は、CD36に対する結合能を有し、CD36の生理学的意義を解明するためのツールとして使用することができる。例えば本発明のCD36結合剤をプローブとして使用する場合には、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノン(以下、単に「薬物」という。)を適当なリンカー基を介して標識可能な物質と結合させた標識体を用いて、細胞・組織表面等への結合を確認することにより、生体局所でのCD36の発現確認を行うことが出来る。標識可能な物質としては、ビオチン、蛍光錯体などが挙げられる。リンカー基としては、本発明の薬物と標識可能な物質を結合させることができ、かつ両者の距離を適度に離せることができることができ、生理的に不活性であるものであれば特に制限はないが、例えば標識可能な物質としてビオチンを使用する場合には、薬物のシクロヘキシル基に結合している水酸基を3−アミノプロピル基でアルコキシ化できる基が挙げられる。このようなリンカー基が導入された化合物としては、例えば、(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−(3’−アミノプロポキシ)−シクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノン等が挙げられる。そして、当該3’−アミノ基においてビオチンのカルボキシル基とアミド結合させることにより、ビオチン化薬物とすることができる。
本発明のCD36結合剤は、CD36に対する結合能を有し、赤血球の分化の初期のマーカーとして使用することができるだけでなく、CD36の機能解析におけるリサーチツールとして有用である。
また、本発明の薬物は、マラリア原虫由来のタンパク質であるPfEMP1に結合するヒトCD36に対する結合能を有するものであり、CD36結合剤やCD36活性阻害剤として有用なだけでなく、マラリア原虫類の感染症における感染時のPfEMP1タンパク質とCD36との結合を阻害し、その結果生体内におけるマラリア原虫の増殖を抑制することが可能となり、マラリア原虫類による感染症の予防剤又は治療剤として有用となる。
【0016】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において使用した試薬類はつぎのとおりである。
CD36:組み替えヒトCD36/Fcキメラ(R&D社製、カタログ番号1955−CD)。
HRP標識抗Fcタグ抗体: ICN Pharmaceuticals社製,カタログ番号55246。
HRP標識アビジン抗体: PIERCE社製,カタログ番号31001。
o−フェニレンジアミン: Sigma Aldrich社製, カタログ番号P23938。
薬物の調製法:薬物はDMSOに溶かして10mmol/Lに調製し、−30℃で保存した。
【実施例1】
【0017】
ビオチン化薬物プローブとCD36の結合
以下の実験ではビオチン化薬物プローブとして、次式、
【0018】
【化2】

【0019】
で表されるビオチン化薬物プローブを使用した。
CD36を10mmol/LのDTT入りの炭酸緩衝液(0.1mol/L,pH 9.6)に溶解し、37℃で、1時間インキュベーションした。96穴マイクロプレートに1ウェルあたり150μLのCD36/DTT溶液を加え、4℃で終夜コーティングした。PBS 200μLで3回ウェルを洗った後、1%スキムミルク/PBS溶液を加えて1時間、37℃で静置することによりブロッキングした。ウェルをPBSで洗った後、PBST(0.1% Tween−20)で希釈したビオチン化薬物プローブを種々の薬物濃度(0μmol/L、0.03μmol/L、0.1μmol/L、3μmol/L、又は10μmol/L)で加えて37℃で、4時間インキュベーションした。ウェルをPBSTで3回洗った後、HRP標識アビジン抗体を加え、37℃で3時間インキュベーションした。ウェルをPBSTで4回洗った後、28.4mmol/Lのo−フェニレンジアミン/0.025%H溶液を100μL加え、室温で45分間反応させた。HSO(1mol/L)を25μL加えることで反応を停止させ、450nmでの吸光度(対照波長は620nm)をプレートリーダーで測定した。
結果を図1に示す。図1の横軸はビオチン化薬物の薬物濃度(μM)を示す。縦軸は吸光度を示す。各々の濃度で3回の実験を行い、その平均値をグラフにして図1に示している。グラフ中の線は3回の実験における標準偏差を示している。
この結果、CD36をコーティングしたマイクロプレートにビオチン化薬物プローブを加えることにより、薬物の濃度依存的に吸光度の増加が認められ、ビオチン化薬物プローブはCD36と濃度依存的に結合することが示された。
【実施例2】
【0020】
ビオチン化薬物プローブ(3μmol/L)の薬物濃度を一定にし、さらに種々の濃度(0μmol/L、3μmol/L、10μmol/L、30μmol/L、100μmol/L、又は300μmol/L)の非標識の薬物を加えた以外は、実施例1と同様にして450nmでの吸光度 をプレートリーダーで測定した。
結果を図2に示す。図2の横軸は非標識の薬物の濃度(μM)を示す。縦軸は非標識の薬物の非存在下での吸光度を100%とした時の非標識の薬物の存在下における吸光度の割合(%)を示す。各々の濃度で3回の実験を行い、その平均値をグラフにして図2に示している。グラフ中の線は、3回の実験における標準偏差を示している。
この競合アッセイの結果、非標識の薬物の濃度依存的に吸光度の減少が認められ、このことはビオチン化薬物プローブのCD36に対する結合量が、非標識の薬物の濃度依存的に減少したことを示し、この結果から、ビオチン化薬物プローブとCD36との結合がビオチンではなく、薬物を介した結合であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、マラリア原虫由来のタンパク質であるPfEMP1に結合するCD36に対する結合能を有し、CD36の生理活性を解明するためのツールとして有用なだけでなく、マラリア原虫類による感染症の予防剤及び/又は治療剤として有用であり、リサーチツール産業や医薬品産業において利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ビオチン化薬物プローブとCD36との結合を450nmでの吸光度をプレートリーダーで測定した結果をグラフにして示したものである。グラフの横軸はビオチン化薬物プローブの薬物濃度(μM)を示し、縦軸は吸光度を示す。
【図2】図2は、3μmol/Lのビオチン化薬物プローブの存在下における、各濃度の非標識化薬物との競合アッセイを、450nmでの吸光度をプレートリーダーで測定した結果を示すグラフである。横軸は薬物の濃度(μM)を示し、縦軸は薬物非存在下での吸光度を100%とした時の薬物存在下における割合(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−6−[3−[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするマラリア 原虫類による感染症の予防及び/又は治療剤。
【請求項2】
マラリア原虫類が熱帯熱マラリア原虫であることを特徴とする請求項1記載の予防/治療剤。
【請求項3】
(−)−6−[3[3−シクロプロピル−3−[(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]プロポキシ]−2−(1H)−キノリノンを有効成分とするCD36結合剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−230883(P2007−230883A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51624(P2006−51624)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(599118539)株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 (8)
【Fターム(参考)】