説明

新規なメチレンジオキシフェノール系化合物および疾患処置のためのそれらの使用

本発明は、新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体、それらの製造方法、ならびにそれらを使用して心血管疾患、血管疾患、および/または炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者を治療または予防する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連の優先権出願
[0001] 本出願は米国仮特許出願No.61/086,425、2008年8月5日出願に基づく優先権を主張し、それの全体を本明細書に援用する。
【0002】
電子媒体により提出した配列表の説明
[0002] 配列表の公式コピーを電子媒体でEFS−Webにより、2009年8月5日にファイル名“604_29993_Sequence_Listing_OSURF-08051.txt”で作成された3キロバイトのサイズをもつASCIIフォーマット処理した配列表として提出し、本明細書と共に出願する。このASCIIフォーマット処理したドキュメントに含まれる配列表は本明細書の一部であり、それの全体を本明細書に援用する。
【0003】
発明の分野
[0003] 新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体を、それらの製造方法、ならびにそれらを使用して血管疾患、心血管疾患、炎症性疾患、糖尿病性血管疾患、および関連状態を治療または予防する方法と共に提供する。
【背景技術】
【0004】
[0004] 心血管疾患または心疾患は世界中で第1位の致死的疾患であり、関連リスク因子は大幅に増加しつつある。たとえば、心血管疾患および代謝疾患、たとえば糖尿病(2025年までに世界中で罹患率が40%を超えると予想される)、メタボリックシンドローム、高血圧症および異脂肪血症は、罹患および死亡の主因である。さらに、最近の研究は、従来は防御されていた亜集団、たとえば若い女性ですら、心疾患に対する罹患性が増大しつつあることを指摘している。したがって、新規な心血管薬に対する広範な要望が高まり続けている。
【0005】
[0005] アテローム硬化症の二次疾患である心血管疾患は単一疾患ではない。この疾患に関連する多数のリスク因子がある。これらには、糖尿病、高血圧症、異脂肪血症、喫煙、血栓形成傾向(凝血傾向または血栓症の亢進)、および陽性の家族歴が含まれる。しばしば、患者は多数のリスク因子をもち、多数の薬物で処置される。併用療法が有効であることは立証されているが、診断されていないリスク因子のほか、しばしば薬物−薬物相互作用、一日多数回の投与の不便さなどのため、多方面の研究を行なう必要がある。
【0006】
[0006] これらのリスク因子間には多数の共通性があるけれども、現在までそれらの多くは別個の疾患として処置されてきた。たとえば、高血圧症に対する薬物は糖尿病に対してはほとんど効果がなく、逆も同じである。最近の研究は、これらの疾患(リスク因子)の多くは、炎症性ストレスおよび酸化的ストレスの増大など、共通の特徴をもつことを示唆している。さらに内皮機能の変化は、これらのリスク因子のほぼすべてと関連する、臨床的に重要な共通の所見である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] 本発明は、心血管疾患、血管疾患および/または炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者の発症および進行を治療、予防または遅延するために有用な医薬の調製における、これらの新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体の使用を提供する。
【0008】
[0008] 心血管疾患、炎症性疾患、糖尿病性血管疾患または関連障害の1以上の面または症状を治療または予防することができる1種類以上の薬物を得ることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 本発明は、新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体、それらの製造方法、ならびにそれらを使用して心血管疾患、血管疾患および/または炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者の発症および進行を治療、予防または遅延する方法を提供することにより、これらの問題を実質的に緩和する。
【0010】
[0010] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、アテローム硬化症の進行を阻止する能力をもつ。したがってこれらの化合物は、アテローム硬化症のリスクを伴う個体などにおいてプラークの蓄積を阻止しかつアテローム硬化症を遅延または予防するのに有用である。これらの化合物はプラークの蓄積を阻止しかつアテローム硬化症を遅延または予防するのに有用であるので、心臓発作、卒中、死亡、末梢動脈疾患の予防または軽減、および血管再生事象(冠動脈バイパス移植術または下肢バイパス術)のために、それらを投与することができる。
【0011】
[0011] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、転写因子である核因子−カッパB(NFκB)の活性化の阻止に及ぼす作用によって少なくとも立証されるように、抗炎症特性をもつ。したがってこれらの化合物は種々の炎症性障害において有用であり、これにはアテローム硬化症、糖尿病、炎症性関節炎(リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎)、高血圧症および老化が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、これらの化合物を許容できるキャリヤーと組み合わせて、心臓発作または卒中が最近確認された患者、または冠動脈もしくは末梢動脈への経皮介入を最近受けた患者に投与することができる。これらの組成物は、冠動脈もしくは末梢動脈にステントを施される患者に投与するのにも有用である。
【0012】
[0012] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、血管のインスリン感受性の改善におけるそれらの効果からみて、糖尿病において、また糖尿病性心疾患、糖尿病性腎疾患および糖尿病性脳血管疾患を含めた糖尿病性血管疾患の予防において、保護効果をもつであろう。
【0013】
[0013] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、転写因子であるステロール調節・結合タンパク質−2(sterol regulator and binding protein−2)(SREBP−2)にも作用する。これらの化合物は、SREBP−2の転写後活性化剤として作用し、新規クラスの選択的SREBP−2活性化剤である。SREBP−2の増加は低密度リポタンパク質受容体(LDLR)を増加させ、LDLコレステロールレベルを低下させる。したがって、これらの化合物を用いて、LDLレベルの上昇に関連する高脂血症、たとえばヘテロ接合体性家族性高コレステロール血症およびホモ接合体性家族性高コレステロール血症、複合高脂血症、超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロールの増加、ならびに糖尿病性異脂肪血症を処置することができる。
【0014】
[0014] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体によりアテローム硬化症および炎症において得られる実質的な有益性からみて、それらはアテローム硬化症および炎症に有効なことが当業者に既知である他の療法薬と組み合わせて投与することもできる;これにはHMG−CoAレダクターゼ阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、脂肪取込み阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、ペルオキシソーム増殖応答性受容体アルファ(PPARα)アゴニストおよびPPARガンマアゴニスト、アセチルサリチル酸、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害薬、およびベータ遮断薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
[0015] 本発明のメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体を、医薬的に許容できるキャリヤーと組み合わせて、動物またはヒトに投与するための組成物を調製することができる。これらの組成物を用いて、血管疾患、心血管疾患、炎症性疾患、糖尿病性血管疾患または関連障害、およびそれらの原因である多数のリスク因子を治療または予防することができる。これらの組成物は、単独で、または他の療法用化合物と一緒に投与することができる。そのような本発明組成物および1種類以上の追加の療法用化合物の投与は、個別に行なうことができる。あるいは、本発明組成物と1種類以上の追加の療法用化合物を1つの投与または送達方法において組み合わせることができる;たとえば、1つのカプセル剤、1つのカプレット、または1回の静脈内投与において。
【0016】
[0016] 本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、開示した態様の下記の詳細な説明および特許請求の範囲をみた後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】[0017] 図1Aは、INV−7065のプロトンNMRを示す。
【図1B】[0018] 図1Bは、INV−7465のプロトンNMRを示す。
【図2】[0019] 図2は、INV−75に関する細胞ベースの毒性アッセイを示すグラフである。ヒト臍帯静脈内皮細胞をこの実験に用いた。
【図3】[0020] 図3は、INV−75およびTNF−αに応答したICAM−1およびVCAM−1の放出を表わす。
【図4】[0021] 図4は、INV−75が核カッパ因子であるカッパ−B(NFκB)に及ぼす作用を評価する多数回の実験のまとめを示すグラフである。これは、対照、TNF−α、およびINV−75+TNF−α処理細胞に関する、p65(NFκBのサブユニット)の核/細胞質比として表わされる。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。
【図5A】[0022] 図5Aは、INV−75を用いたステロール調節・結合タンパク質−2(SREBP2)活性測定のコースのインビトロタイムコースを示すグラフである。HepG2細胞をINV−75(0.1mM)で4時間刺激し、核タンパク質へのSREBP2の結合活性を電気泳動移動シフトアッセイ(electrophoretic migration shift assay)(EMSA)により測定した。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。
【図5B】[0023] 図5Bは、INV−75がSREBP2活性に及ぼす用量依存性作用を示すグラフである。HepG2細胞を種々の濃度のINV−75で1時間刺激し、核タンパク質におけるSREBP2の結合活性を電気泳動移動シフトアッセイ(EMSA)により測定した。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。
【図5C】[0024] 図5Cは、SREBP2活性化のインビトロタイムコースを、処理した細胞の細胞質におけるINV−75による成熟形の評価により測定したものを示すグラフである。HepG2細胞をINV−75(0.1mM)で4時間刺激し、成熟形および前駆形のSREBP2をウェスタンブロット分析により測定した。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。対応するウェスタンブロットを右に示す。右の時間は時(hour)である。
【図5D】[0025] 図5Dは、INV−75がSREBP2活性に及ぼす用量依存性作用を、INV−75による成熟形により評価したものを示すグラフである。HepG2細胞を種々の濃度のINV−75で1時間刺激し、成熟形および前駆形のSREBP2をウェスタンブロット分析により測定した。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。INV−75の用量は対数モル濃度である。
【図5E】[0026] 図5Eは、INV−75による低密度リポタンパク質受容体(LDLR)メッセンジャーRNA(mRNA)のインビトロタイムコースを、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により評価したものを示すグラフである。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。
【図5F】[0027] 図5Fは、INV−75による低密度リポタンパク質受容体(LDLR)メッセンジャーRNA(mRNA)測定の用量依存性実験を示すグラフである。HepG2細胞を種々の濃度のINV−75で1時間刺激し、LDL mRNAの発現を定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により測定した。合計3回の実験を行なった。、ANOVAによりビヒクルと比較してp<0.01。INV−75の用量は対数モル濃度である。
【図6】[0028] 図6Aは、INV−75によるペルオキシソーム増殖応答性受容体アルファ(PPARα)のインビトロ評価を、代替としてアセチル−CoAオキシダーゼ(ACO)を用いて示す。ACOはPPARα調節型遺伝子である。HepG2細胞をINV−75(100μM)で指示した時間刺激し、ACOのmRNA発現レベルをリアルタイムRT−PCRにより分析した。n=3。、p<0.05対0。[0029] 図6Bは、INV−75によるACOのインビトロ活性化を、ルシフェラーゼレポーターに連結させた全長ヒトPPARαによりトランスフェクションしたHepG2細胞を用いて示す。細胞をINV−75で4時間刺激し、アセチル補酵素Aオキシダーゼ(ACO)のmRNA発現レベルをリアルタイムRT−PCRにより分析した。n=3。、p<0.05対−8.5。[0030] 図6Cは、INV−75によるPPARα遺伝子活性化のタイムコース実験を、高力価PPARα活性化剤WY 14643による活性化との関係で表わしたものを示す。HepG2細胞を全長PPARαプロモーターレポーター構築体でトランスフェクションし、INV−75(100uM)で刺激した。Cの結果をWY 14643と比較した増加率%として表わす。
【図7】[0031] 図7は、INV−75を用いたインビボWHHLウサギ実験プロトコルの模式図である。は、プラークのイメージングのためのMRI評価のタイミングを表わす。
【図8】[0032] 図8Aは、3つの異なる時点で(ベースライン、6週目および12週目)MRIにより測定したアテローム硬化プラーク負荷の評価を示す。[0033] 図8Bは、代表的なMRIイメージを集めたものであり、対照WHHLウサギと比較したINV−75処理WHHLウサギの腹部大動脈におけるアテローム硬化負荷の軽減を示す。
【図9】[0034] 図9は、対照グループおよびINV−75グループのWHHLウサギの腹部大動脈におけるアテローム硬化負荷を表わす棒グラフである。n=5/グループ。、非対合t検定によるp<0.05−対−対照動物。対照介入を受けたWHHLグループと比較してWHHLウサギのアテローム硬化負荷が約60%軽減。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図10】[0035] 図10は、INV−75処理動物におけるワタナベ遺伝性高脂血症ウサギ(Watanabe Heritable Hyperlipidemic Rabbit)(WHHL)の胸部大動脈のマクロファージ浸潤の形態計測分析である。、非対合t検定によるp<0.05−対−対照。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図11】[0036] 図11は、対照およびINV−75処理WHHL動物に関して、抗−α−アクチン染色による大動脈壁の平滑筋細胞(SMC)増殖の形態計測分析である。、非対合t検定によるp<0.05−対−対照。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図12】[0037] 図12は、対照およびINV−75処理WHHL動物に関するRed oil O染色による大動脈壁の脂質沈着の形態計測分析である。、p<0.05、一元ANOVA。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図13】[0038] 図13は、対照およびINV−75処理WHHL動物に関するMassonトリクロム染色(Masson trichrome stain)染色による大動脈壁のコラーゲン沈着の形態計測分析である。、p<0.05、一元ANOVA。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図14A】[0039] 図14Aは、WHHLウサギにおいて対照と対比してINV−75が総コレステロールに及ぼす作用を表わすグラフである。高脂肪固形飼料(HFC)を与える前にベースライン値を求めた。HFC後=高脂肪固形飼料の開始後であって、ただし薬物処理の前に求めた数値。INV−75/対照後は、対照またはINV−75で処理した後の数値を表わす。N=4〜5/グループ。総コレステロール値はグループ間で差がなかった。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。このモデルにおける高レベルの総コレステロールが、総コレステロールに対する有意の作用の観察を妨げたと思われる。
【図14B】[0040] 図14Bは、WHHLウサギにおいて対照介入と対比してINV−75がLDLコレステロール制御に及ぼす作用を表わすグラフである。高脂肪固形飼料を与える前にベースライン値を求めた。HFC後=高脂肪固形飼料の開始後であって、ただし薬物処理の前に求めた数値。INV−75/対照後は、対照またはINV−75で処理した後の数値を表わす。N=4〜5/グループ。LDLコレステロール値はグループ間で差がなかった。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。このモデルにおける高レベルのLDLコレステロールが、総コレステロールに対する有意の作用の観察を妨げたと思われる。
【図15】[0041] 図15は、対照およびINV−75処理WHHL動物に関して、血管収縮剤アンギオテンシンII(AngII)による収縮(塩化カリウムKCl,120mMに対する%)を示すグラフである。、p<0.05、一元ANOVA、N=4〜5/グループ。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図16】[0042] 図16は、対照およびINV−75処理WHHL動物に関して、フェニレフリンに対する胸部大動脈の収縮率%を、塩化カリウム(KCl,120mM)へのピーク収縮に対するパーセントとして表わしたものを示すグラフである。N=4〜5/グループ。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図17】[0043] 図17は、対照動物−対−INV−75処理動物の胸部大動脈リングセグメントにおけるアセチルコリン(Ach)による弛緩(1μMフェニレフリンPEによる前収縮に対する%)を示すグラフである。対照と対比したINV−75によるピーク弛緩に関する一元ANOVA(n=5/グループ)。***、アセチルコリンによるピーク弛緩に関して対照と対比してp<0.001。INV−75による処理または対照介入の終了時に屠殺した時点で、胸部大動脈をWHHLウサギから採取した。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図18】[0044] 図18は、対照動物およびINV−75処理動物に関して、胸部大動脈リングセグメントにおける緊張のインスリンによる弛緩(1μMフェニレフリンPEによる前収縮に対する%)を示すグラフである。
【図19】[0045] 図19は、対照およびINV−75処理WHHLウサギにおいて、処理終了時における酸化的ストレスの基礎レベルの尺度としての、ウサギ血漿の血漿8−epiプロスタグランジンF2α(8−イソプロスタン(8−Isoprostane))酵素結合イムノアッセイにおける酸化的ストレスを示すグラフである。N=4〜5匹のウサギ/グループ。****、Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定によりp<0.001−対−対照。
【図20】[0046] 図20は、対照−対−INV−75処理WHHLウサギの胸部大動脈における酸化的ストレスを示すグラフである。対照およびINV−75処理WHHLウサギにおける処理終了時の酸化的ストレスの尺度としての、大動脈ホモジェネートの8−epiプロスタグランジンF2α(8−イソプロスタン)酵素結合イムノアッセイ。N=4〜5匹のウサギ/グループ。****、Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定によりp<0.001−対−対照。
【図21】[0047] 図21は、INV−75または対照がワタナベ遺伝性高脂血症ウサギ(WHHL)大動脈切片における基礎インサイチュースーパーオキシド産生に及ぼす作用を、ジヒドロエチジウム(DHE)染色により定量したものを示すグラフである。、Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定により、対照と対比してINV−75についてp<0.01。
【図22】[0048] 図22は、INV−75または対照介入を施したワタナベ遺伝性高脂血症ウサギ(WHHL)からの大動脈組織溶解物における基礎スーパーオキシド産生およびアゴニストNADPHに応答した刺激スーパーオキシド産生に及ぼす作用を、ルシゲニン(Lucigenin)化学発光アッセイにより分析したものを示すグラフである。矢印はNADPH(100mM)の添加を示す;n=5/グループ。、Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定によりp<0.05−対−対照動物。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図23】[0049] 図23は、炎症マーカーとしてのVCAM−1、ICAM−1、P−セレクチン、MCP−1およびL−セレクチンを調べるための遺伝子発現レベルを示すグラフである。INV−75または対照処理したWHHLウサギの胸部大動脈から全RNAを調製した。炎症促進性遺伝子のmRNA発現レベルをリアルタイムPCRにより分析した。、p<0.05;Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図24】[0050] 図24は、INV−75および対照介入がWHHLウサギにおいてVCAM−1およびICAM−1発現に及ぼす作用を示すグラフである。VCAM−1およびICAM−1のタンパク質発現レベルをウェスタン分析により分析した。、p<0.05;Bonferroni補正により調整したスチューデントのt検定。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図25】[0051] 図25は、炎症の細胞性相関としてのVCAM−1タンパク質発現レベルを示すグラフである。INV−75は、HUVECにおいてTNFα誘導型VCAM−1発現を阻害する。HUVECをビヒクル、INV75、またはWY−14643で2時間、前処理し、次いでTNFαで4時間処理した。VCAM−1発現をウェスタンブロットにより分析した。3つの独立した実験の代表例およびまとめを示す。、p<0.05−対−対照;、p<0.05−対−TNFα。
【図26】[0052] 図26は、普通の固形飼料で飼育し、INV−75または対照により2週間処理したC57BL/6マウスにおいて、INV−75が肝LDLR mRNA発現に及ぼす作用を、RT−PCRにより測定したものを示すグラフである。対照グループとINV 75処理グループの結果の比較。
【図27】[0053] 図27は、INV−75または対照で2週間処理したC57BL/6マウスにおいて、INV−75がLDLレベルを低下させる作用を示すグラフである。、p<0.01、一元ANOVA。
【図28】[0054] 図28は、普通の固形試料で飼育し、INV−75または対照で2週間処理したC57BL/6マウスにおいて、INV−75が肝SREBP2に及ぼす作用を、EMSAにより測定したものを示すグラフである。
【図29】[0055] 図29は、ニュージーランド白(New Zealand White)(NZW)ウサギモデルのアテローム硬化症におけるINV−7065の作用を試験するために用いたインビボ実験プロトコルの模式図である。
【図30】[0056] 図30Aは、高脂肪固形試料を与え、INV−7065、リポ酸処理および対照介入したニュージーランド白(NZW)ウサギにおいて、アテローム硬化負荷の軽減を示すMRI試験のまとめを表わす棒グラフである。、p<0.05、一元ANOVA、対照終末点値と対比(n=4〜5/グループ)。[0057] 図30Bは、2つの異なる時点、ベースライン(A)および終末点(B)でガドリニウム造影剤を投与した後に得られたインビボMRIイメージを示す(それぞれ、バルーン表皮剥脱術後1週目および12週目)。各グループからの代表的なイメージを提示する。造影前の腹部大動脈イメージングは、バルーン表皮剥脱動物において12週後に、対照グループまたはリポ酸処理と比較してINV−7065が造影剤によるニュージーランド白(NZW)ウサギの大動脈の不透明化を低下させることを示す。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図31A】[0058] 図31Aは、対照動物ならびにINV−7065およびリポ酸処理動物に関して、塩化カリウム(KCl,120mM)に対比した収縮の%を示すグラフである。フェニレフリン(PE)用量応答。INV−7065で14週間処理した後、リポ酸または対照(n=4〜5/グループ)ウサギを屠殺し、胸部大動脈セグメントをミオグラフチャンバーに固定した。ベースライン緊張30mNで2時間平衡化した後、大動脈セグメントを種々の濃度のPEで収縮させた。収縮を塩化カリウムによる最大収縮との関係で表わす。、p<0.01、一元ANOVAによりリポ酸または対照NZWウサギと対比。すべての動物に高脂肪固形飼料を与えた。
【図31B】[0059] 図31Bは、INV−7065処理、リポ酸処理または対照ニュージーランド白ウサギの胸部大動脈セグメントの、インスリンに対する血管弛緩応答を示すグラフである。大動脈セグメントをPE(0.3μM)により前収縮させ、そしてインスリンに対する弛緩応答を試験した。、p<0.01、一元ANOVAによりリポ酸または対照NZWウサギと対比(n=4〜5/グループ)。
【図31C】[0060] 図31Cは、図31bに記載したように、対照、INV−7065処理およびリポ酸処理動物において、アセチルコリンに対する血管弛緩応答を示すグラフである(フェニレフリン PE(0.3μM)による前収縮に対する%)。、p<0.01、対照NZWウサギと対比したリポ酸およびINV−7065に関して、一元ANOVAによる。リポ酸とINV−7065の間に応答の差はなかった(n=4〜5/グループ)。
【図31D】[0061] 図31Dは、図31Bに記載したように、高脂肪食を与えた対照、INV−7065処理およびリポ酸処理ニュージーランド白ウサギにおいて、ニトロプルシッドナトリウム(SNP)による弛緩を示すグラフである(フェニレフリン PE(0.3μM)による前収縮に対する%)(n=4〜5/グループ)。
【図32A】[0062] 図32Aは、INV−7065、リポ酸または対照を補充した高脂肪食を与えたニュージーランド白(NZW)ウサギにおいて、INV−7065およびリポ酸が総コレステロール(TC)に及ぼす作用を示すグラフである(n=4〜5/グループ)。[0063] 正常対照との比較 [0064] 図32A、ならびに図32B、32C、32Dおよび32Eにおいて、一元分散分析(ANOVA)統計学的検定法を用いた;により示すp値は<0.05。
【図32B】[0065] 図32Bは、INV−7065、リポ酸または対照を補充した高脂肪食を与えたニュージーランド白(NZW)ウサギにおいて、INV−7065およびリポ酸がトリグリセリド(TG)に及ぼす作用を示すグラフである。対照処理NZWウサギと比較して、INV−7065およびリポ酸はトリグリセリドレベルを低下させた。INV−7065の方がさらにトリグリセリドを減少させる傾向はあったが、これらの結果は有意ではなかった。[0064] 図32A、ならびに図32B、32C、32Dおよび32Eにおいて、一元分散分析(ANOVA)統計学的検定法を用いた;により示すp値は<0.05。
【図32C】[0066] 図32Cは、INV−7065、リポ酸または対照を補充した高脂肪食を与えたニュージーランド白(NZW)ウサギにおいて、INV−7065およびリポ酸がHDLに及ぼす作用を示すグラフである。リポ酸およびINV−7065の両方について、ベースラインと終末点の間に差はなかった。高脂肪食を与えた対照NZWウサギにおいて、高脂肪固形試料を与えた後にHDLレベルが低下したが、これは統計的に有意ではなかった。[0064] 図32A、ならびに図32B、32C、32Dおよび32Eにおいて、一元分散分析(ANOVA)統計学的検定法を用いた;により示すp値は<0.05。
【図32D】[0067] 図32Dは、INV−7065、リポ酸または対照を補充した高脂肪食を与えたニュージーランド白(NZW)ウサギにおいて、INV−7065およびリポ酸がLDLに及ぼす作用を示すグラフである。対照NZWウサギと比較して、リポ酸グループおよびINV−7065グループのLDLレベルは低かった。[0064] 図32A、ならびに図32B、32C、32Dおよび32Eにおいて、一元分散分析(ANOVA)統計学的検定法を用いた;により示すp値は<0.05。
【図32E】[0068] 図32Eは、INV−7065、リポ酸または対照を補充した高脂肪食を与えたニュージーランド白(NZW)ウサギ(n=4〜5/グループ)において、INV−7065およびリポ酸がVLDLに及ぼす作用を示すグラフである。対照およびリポ酸処理ウサギと比較して、INV−7065グループのVLDLレベルは低下したことが示された。[0064] 図32A、ならびに図32B、32C、32Dおよび32Eにおいて、一元分散分析(ANOVA)統計学的検定法を用いた;により示すp値は<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0069] 本発明は、新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体、それらの製造方法、ならびにそれらを使用して心血管疾患、血管疾患および/または炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者の発症および進行を治療、予防または遅延する方法を提供することにより、これらの問題を実質的に緩和する。患者という用語は、本明細書において動物およびヒトを表わす。
【0019】
[0070] 本発明は、心血管疾患、血管疾患および/または炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者の発症および進行を治療、予防または遅延するのに有用な医薬の調製における、これらの新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体の使用をも提供する。
【0020】
[0071] 化学組成
[0072] ある態様において、本発明の化学物質は下記の式Iにより記載される化合物を含む。
【0021】
【化1】

【0022】
[0073] R1に関する置換基には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
水素、
【0023】
【化2】

【0024】
アセチル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、HCOC、
【0025】
【化3】

【0026】
リポイル(lipoyl)、
【0027】
【化4】

【0028】
ジヒドロリポイル、
【0029】
【化5】

【0030】
フェルリル(ferulyl)、および
【0031】
【化6】

【0032】
異性体形フェルリル。
【0033】
[0074] R2に関する置換基は存在しないか、あるいは存在することができ、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0034】
【化7】

【0035】
−メトキシ、−エトキシ、炭素原子1〜8個の分枝鎖アルキル、アセチル、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、ならびに複素環、たとえばイミダゾール、キナリン、イソキナリン、チアゾリジンジオン、ピロリジン、ピペリジン、
【0036】
【化8】

【0037】
カルボキシル、メチルエステル、エチルエステル、脂肪族アミド(炭素原子1〜3個)、脂環式アミド、たとえばピロリジン、ピペリジン、ならびに芳香族アミド、たとえばアニリン、置換アニリン、
【0038】
【化9】

【0039】
アミン、アルキル化(炭素原子1〜3個)アミン、リポ酸もしくはジヒドロリポ酸を介したアミド官能基、芳香族酸、たとえばフェルラ酸(ferulic acid)、ケイ皮酸、複素環式アミドであってプロリン、置換プロリンもしくはピペコリン酸から誘導されるもの、および
【0040】
【化10】

【0041】
ハロゲン置換基、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素。
【0042】
[0075] R3に関する置換基は存在しないか、あるいは存在することができ、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
アルキル基;直鎖(炭素原子1〜3個)および分枝鎖(炭素原子3〜5個の鎖)の両方、
下記の官能基を有するアルキル基:遊離カルボン酸、エステルおよびアミド、ならびに遊離ヒドロキシル誘導体およびアルキル化エーテル誘導体、
下記から選択される官能基を有するアルキル基(炭素原子1〜3個の鎖):アミン、アルキル化アミン、脂肪族、芳香族両方のアミド、および複素環式アミドであってイミダゾール、キノリン、イソキノリン、チオゾリン、チアゾリジンジオン、ピペラジン、CHCH−チアゾリジンジオン、CHCHCH−CO−リポイルを含むもの、CHCH−F、または
ハロゲン化された基、たとえばフッ化アルキル(炭素原子1〜3個の鎖)。
【0043】
[0076] 本発明の具体的な態様には下記の化合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
[0077]
【0045】
【化11】

【0046】
INV−73=3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート
[0078]
【0047】
【化12】

【0048】
INV−75=3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート
[0079]
【0049】
【化13】

【0050】
INV−74=3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール
[0080]
【0051】
【化14】

【0052】
INV−7065=3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート
[0081]
【0053】
【化15】

【0054】
INV−7465=3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート
【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
[0097] 医薬組成物
[0098] 動物またはヒトに投与するために、本発明の療法用化合物または分子を許容できるキャリヤーと組み合わせて医薬組成物を調製し、動物またはヒトに投与する。本発明の療法用化合物は、使用または投与の前に医薬的に許容できるいずれかのキャリヤー中に再構成することができる。
【0059】
[0099] 医薬的に許容できるキャリヤー
[00100] 医薬的に許容できるキャリヤー:本明細書において有用な医薬的に許容できるキャリヤー(ビヒクル)は一般的なものである。Remington's Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)に、本明細書に記載する1種類以上の療法用化合物または分子を医薬として送達するのに適切な組成物および配合物が記載されている。
【0060】
[00101] 一般に、キャリヤーの性質は、採用する個々の投与様式に依存するであろう。たとえば、非経口配合物は通常、注射用流体を含み、これには医薬的および生理的に許容できる流体、たとえば水、生理食塩水、平衡生理食塩水、水性のデキストロース、グリセロールなどのビヒクルが含まれる。固形組成物(たとえば散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤)について、一般的な無毒性固体キャリヤーは、たとえば医薬グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。投与される医薬組成物は、生物学的中性キャリヤーのほか、少量の無毒性補助物質、たとえば湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、たとえば酢酸ナトリウムまたはモノステアリン酸ソルビタンを含有することができる。
【0061】
[00102] 代表的な投与方法、配合物および用量
[00103] 本発明により提供する療法用化合物を、ヒトまたは動物対象に投与するために、医薬的に許容できるキャリヤーまたはビヒクルと組み合わせることができる。ある態様において、療法用化合物以外のものを組み合わせて単一製剤を形成することができる。療法用化合物は、好都合には単位剤形で提供し、一般的な製薬技術を用いて調製することができる。そのような技術には、有効成分と医薬用キャリヤー(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)を混和する工程が含まれる。一般に配合物は、有効成分と液体キャリヤーを均質かつ密に混和することにより調製される。非経口投与に適切な配合物には、下記のものが含まれる:水性および非水性の無菌注射液:これらは抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および配合物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる;ならびに水性および非水性の無菌懸濁液剤:これらは懸濁化剤および増粘剤を含有することができる。配合物を単回量または多数回量の容器、たとえばシールしたアンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、凍結乾燥(freeze−dried、lyophilized)状態で保存することができ、これは使用直前に無菌液体キャリヤー、たとえば注射用水の添加を必要とするにすぎない。即時調合型の注射液剤または懸濁液剤を、当業者が一般に使用する無菌の散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0062】
[00104] 特定の態様において、単位剤形の配合物は、1回量もしくは単位量、またはその適宜な画分の投与成分を含有するものである。本発明に包含される配合物は、特に前記に述べた成分のほか、当業者が一般に使用する他の作用剤を含有することができると解釈すべきである。
【0063】
[00105] 本発明において提供する医薬組成物は、障害、たとえば心血管障害の処置に使用するためのものを含めて、種々の経路で投与することができる:たとえば経口(頬内および舌下を含む)、直腸、非経口、エアゾール、鼻腔、筋肉内、腹腔内、脈管内、静脈、動脈内、関節内、皮下、皮内、および局所。それらは種々の形態で投与することができ、これには液剤、乳剤および懸濁液剤、マイクロスフェア、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、およびリポソームが含まれるが、これらに限定されない。1態様においては、療法用化合物を許容できるキャリヤーと組み合わせて、丸剤、カプセル剤中においてまたは食物と共に経口投与するための医薬組成物を形成する。
【0064】
[00106] 他の態様において、医薬組成物を処置の必要な領域に局所投与することが望ましい場合がある。これは、限定ではないが、たとえば外科処置中の局所(localまたはregional)注入もしくは潅流、アテローム硬化症血管などの血管への直接潅流、局所適用(たとえば創傷包帯、薬物含有ステント)、注射、カテーテル、坐剤、または埋込み剤(たとえば多孔質、非孔質、またはゼラチン性の材料から形成される埋込み剤;膜、たとえばシリコーン膜、または繊維を含む)などにより達成できる。1態様において投与は、組織、たとえば心臓または末梢血管の処置すべき部位(または前方部位)における直接注射によることができる。他の態様において、医薬組成物を特にリポソームなどのビヒクル中において送達することができる(たとえば、Langer, Science 249: 1527-1533, 1990; Treat et al., Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, N.Y., pp. 353- 365, 1989を参照)。投与方法の組合わせ、たとえば、本発明の療法用化合物でコートしたステントを配置する前、後または途中での、本発明の療法用化合物の全身または局所注入も採用することができる。
【0065】
[00107] さらに他の態様において、医薬組成物を制御放出システム中において送達することができる。1態様においては、ポンプを使用できる(たとえば、Langer Science 249: 1527-1533, 1990; Sefton Crit. Rev. Biomed. Eng. 14: 201-240, 1987; Buchwald et al., Surgery 88: 507-516, 1980; Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321: 574-579, 1989を参照)。他の態様においては、ポリマー材料を使用できる(たとえば、Ranger et al., Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23: 61-64, 1983; Levy et al., Science 228: 190-192, 1985; During et al., Ann. Neurol. 25: 351-356, 1989; およびHoward et al., J. Neurosurg. 71: 105-112, 1989を参照)。他の制御放出システム、たとえばLanger (Science 249: 1527-1533, 1990)に述べられたものも使用できる。
【0066】
[00108] 医薬組成物の有効量は、処置すべき障害または状態の性質、および障害または状態の段階に依存するであろう。有効量は、標準的な臨床技術により決定できる。配合物中に使用すべき厳密な用量は投与経路にも依存し、ヘルスケア専門家の判断および各対象の状況に従って決定すべきである。そのような用量範囲の一例は、1回量または分割量で0.1〜200mg/kg(体重)である。他の用量範囲には、1回量または分割量で1.0〜150mg/kg、1.0〜100mg/kg、5.0〜100mg/kg、10〜75mg/kg(体重)が含まれる。これらの範囲内のいかなる用量も使用できることを理解すべきである。
【0067】
[00109] いずれか特定の対象についての具体的な用量レベルおよび頻度は異なり、多様な要因に依存するであろう;これには個々の化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物組合わせ、ならびに療法処置を受ける対象の状態の重症度が含まれる。
【0068】
[00110] 本発明の医薬組成物は、処置期間を通してほぼ同じ用量で、漸増量(escalating dose)計画で、または負荷量(loading−dose)計画で(たとえば、この場合、負荷量は維持用量の約2〜5倍である)投与することができる。ある態様においては、処置される対象の状態、疾患もしくは状態の重症度、療法に対する見掛け上の応答、および/または当業者が判断する他の要因に基づいて、処置経過中に用量を変動させる。投与体積は投与経路に応じて異なるであろう。たとえば、筋肉内注射は約0.1mlから約1.0mlまでの範囲であってもよい。当業者には種々の投与経路に適切な体積が分かるであろう。
【0069】
[00111] 処置すべき疾患または状態
[00112] 本発明は、新規なメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体、それらの製造方法、ならびにそれらを用いて血管疾患(心血管疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、および糖尿病性血管疾患を含むが、これらに限定されない)、炎症性疾患、または関連障害、およびそれらの原因である多数のリスク因子を治療または予防する方法を提供する。
【0070】
[00113] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、アテローム硬化症の進行を阻止する能力をもつ。したがってこれらの化合物は、アテローム硬化症のリスクを伴う個体などにおいてプラークの蓄積を阻止しかつアテローム硬化症を遅延または予防するのに有用である。これらの化合物はプラークの蓄積を阻止しかつアテローム硬化症を遅延または予防するのに有用であるので、心臓発作、卒中、末梢動脈疾患の予防または軽減、および血管再生事象(冠動脈バイパス移植術または下肢バイパス術)のために、それらを投与することができる。
【0071】
[00114] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、転写因子である核因子−カッパB(NFκB)の活性化に対する作用によって少なくとも立証されるように、抗炎症特性をもつ。したがってこれらの化合物は種々の炎症性障害において有用であり、これにはアテローム硬化症、糖尿病、炎症性関節炎(リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎)、高血圧症および老化が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、これらの化合物を許容できるキャリヤーと組み合わせて、心臓発作または卒中が最近確認された患者、または冠動脈もしくは末梢動脈への経皮介入を最近受けた患者に投与することができる。これらの組成物は、冠動脈もしくは末梢動脈にステントを施される患者に投与するのにも有用である。
【0072】
[00115] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、血管のインスリン感受性の改善におけるそれらの効果からみて、糖尿病において、また糖尿病性心疾患、糖尿病性腎疾患および糖尿病性脳血管疾患を含めた糖尿病性血管疾患の予防において、保護効果をもつであろう。
【0073】
[00116] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、転写因子であるステロール調節・結合タンパク質−2(SREBP−2)にも作用する。これらの化合物は、SREBP−2の転写後活性化剤として作用し、新規クラスの選択的SREBP−2活性化剤である。SREBP−2の増加はLDLRを増加させ、LDLコレステロールレベルを低下させる。したがって、これらの化合物を用いて、LDLレベルの上昇に関連する高脂血症、たとえばヘテロ接合体性家族性高コレステロール血症およびホモ接合体性家族性高コレステロール血症、複合高脂血症、VLDLコレステロールの増加、ならびに糖尿病性異脂肪血症を処置することができる。
【0074】
[00117] 併用療法
[00118] これらのメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体によりアテローム硬化症および炎症において提供される実質的な有益性からみて、それらはアテローム硬化症および炎症に有効なことが当業者に既知である他の療法薬と組み合わせて投与することもできる;これにはHMG−CoAレダクターゼ阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、脂肪取込み阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、PPARアルファアゴニスト(たとえばロシグリタゾン(Rosiglitazone)、ピオグリタゾン(Pioglitazone))およびPPARガンマアゴニスト(ゲムフィブロジル(Gemfibrozil)、フェノフィブレート(Fenofibrate)、ベザフィブレート(Bezafibrate))、アセチルサリチル酸、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害薬(アナセトラピブ(Anacetrapib))、リポ酸、およびベータ遮断薬ならびにその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
[00119] 本発明のメチレンジオキシフェノール系化合物およびそれらの誘導体は、単独で、または他の療法用化合物と一緒に投与することができる。そのような本発明組成物および1種類以上の追加の療法用化合物の投与は、個別に行なうことができる。あるいは、本発明組成物と1種類以上の追加の療法用化合物を1つの投与または送達方法において組み合わせることができる;たとえば、1つのカプセル剤、1つのカプレット、または1回の静脈内投与において。
【0076】
[00120] ACE阻害薬
[00121] ACE阻害薬は、酵素であるアンギオテンシン変換酵素(ACE)がアンギオテンシンIをアンギオテンシンIIに変換するのを阻害する化合物である。アンギオテンシンIIは血管が弛緩および拡張するのを阻止することにより血圧を上昇させる。ACE阻害薬は、高血圧症を処置するために用いられ、抗高血圧症クラスの医薬に属し、心血管疾患による死亡のリスクを20%〜40%低下させることができる。ACEの阻害により、血管を弛緩させて血圧を降下させることができる。ACE阻害薬は動脈抵抗を低下させ、静脈容量を増大させ、心拍出量および心指数、1回心仕事量および1回心拍出量を増大させ、腎血管抵抗を低下させ、かつナトリウム利尿(尿中におけるナトリウム排出)の増大をもたらす。疫学的試験および臨床試験により、ACE阻害薬はそれらの血圧降下作用とは独立して糖尿病性腎障害の進行を低下させることが示された。ACE阻害薬のこの作用は糖尿病性腎障害の予防に利用されている。
【0077】
[00122] ACE阻害薬は、正常血圧の患者においてすら、高血圧症以外の適応症に有効なことが示された。ACE阻害薬はその血圧降下作用とは独立して臨床転帰を改善するので、そのような患者における最大用量のACE阻害薬の使用(糖尿病性腎障害、うっ血性心不全の阻止、心血管事象の予防のためのものを含む)が妥当である。
【0078】
[00123] 低血圧の患者は意外にも十分にしばしばACE阻害薬にかなり良好に耐容するが、一般にACE阻害薬は腎問題をもつ患者または低血圧の患者には処方されない。ACE阻害薬は妊婦に使用すべきではない。あるACE阻害薬はうっ血性心不全を処置するために用いられ、あるいは医師が判断する他の状態に使用できる。
【0079】
[00124] ACE阻害薬は、化合物上の官能基の存在に基づいて分類できる。たとえばスルフヒドリル含有化合物には、カプトプリル(captopril)(CAPOTEN(登録商標),Bristol−Myers Squibb)が含まれる。ジカルボキシレート含有化合物には、エナラプリル(enalapril)(VASOTEC(登録商標),Merckによる)、キナプリル(quinapril)(ACCUPRIL(登録商標),Pfizerによる)、リシノプリル(lisinopril)(PRHNIVIL(登録商標),Merckによる、またはZestril,Astra−Zenecaによる)、ペリンドプリル(perindopril)(ACEON(登録商標),Rhone−Polenc Rorerによる)、およびラミプリル(ramipril)(ALTACE(登録商標),Hoechst Marion Roussel,King Pharmaceuticalsによる)が含まれる。ホスフェート含有化合物には、ペリンドプリル(ACEON(登録商標),Rhone−Polenc Rorerによる)が含まれる。
【0080】
[00125] 他のACE阻害薬には、ベナゼプリル(benazepril)(LOTENSIN(登録商標),Novartisによる)、ホシノプリル(fosinopril)(MONOPRIL(登録商標),Bristol−Myers Squibbによる)、モエキシプリル(moexipril)(UNIVASC(登録商標),Schwarz Pharmaによる)、トランドラプリル(trandolapril)(MAVIK(登録商標),Knoll Pharmaceutical(BASF)による)などが含まれる。ACE阻害薬は、スルフヒドリル、ホスフェートおよびジカルボキシレート化合物に分類できる。
【0081】
[00126] これらの化合物のうち、幾つかのACE阻害薬は抗高血圧症薬として一般に用いられている。これらには、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル(cilazapril)、エナラプリル、エナラプリレート(enalaprilat)、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、およびトランドラプリルが含まれる。
【0082】
[00127] 幾つかのACE阻害薬は、血管拡張薬として、またはうっ血性心不全の処置のために、一般に用いられている。これらには、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、およびランドラプリルが含まれる。
【0083】
[00128] リシノプリル、カプトプリル、ラミプリル、およびトランドラプリルは、ある患者において心臓発作後に用いられる。心臓発作の後、心筋の一部が損傷を受け、脆弱化している。その心筋は時間の経過と共に脆弱化し続ける可能性がある。これは心臓が血液を拍出するのをより困難にする。リシノプリルの使用を心臓発作後24時間以内に開始して、生存率を高めることができる。カプトプリル、ラミプリル、およびランドラプリルは、心臓のそれ以上の脆弱化を遅らせるのを補助する。
【0084】
[00129] カプトプリルは、糖尿病の管理のためにインスリンを用いているある糖尿病患者において、腎問題の処置にも使用できる。経時的に、これらの腎問題は増悪する可能性がある。カプトプリルは腎問題のそれ以上の増悪を遅らせるのを補助することができる。
【0085】
[00130] ラミプリルをACE阻害薬と一緒に用いて血管疾患および関連障害を処置する;これには冠動脈疾患、うっ血性心不全、高血圧症を伴う患者、および高血圧症を伴う糖尿病患者が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
[00131] 本明細書に挙げていないけれどもアンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの触媒作用の低下または阻害について効果をもつ他の化合物も、本発明に使用するものとして考慮される。
【0087】
[00132] 1態様において、ACE阻害薬の量は約0.1mg/日〜約100mg/日である。他の態様においては、ACE阻害薬を約1mg/日〜約80mg/日の用量で投与する。さらに他の態様においては、ACE阻害薬を約5mg/日〜約50mg/日の用量で投与する。ACE阻害薬の用量は、一日5、10または20mgの出発用量で投与することができる。
【0088】
[00133] アルファリポ酸
[00134] アルファ−リポ酸はチオクト酸としても知られ、体内での生命エネルギー産生反応における補因子であるジスルフィド化合物である。それは有効な生体内抗酸化剤でもある。アルファ−リポ酸はかって動物およびヒトのビタミンであると考えられていた。しかし、アルファ−リポ酸が条件的に必須であると思われる特定の状況、たとえば糖尿病性多発神経障害がある。アルファ−リポ酸は植物源および動物源に広く見いだされる。
【0089】
[00135] アルファ−リポ酸が関与する代謝反応の大部分は、ミトコンドリアにおいて起きる。これらには、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体によるピルビン酸(ピルベートとして)の酸化、およびアルファ−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体によるアルファ−ケトグルタル酸の酸化が含まれる。それは、分枝鎖アルファ−ケト酸デヒドロゲナーゼ酵素複合体による分枝鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)の酸化についての補因子でもある。
【0090】
[00136] アルファ−リポ酸は、ドイツでは多発神経障害、たとえば糖尿病性およびアルコール性多発神経障害、ならびに肝疾患の処置のための薬物として承認されている。アルファ−リポ酸は、キラル中心をもち、2種類の鏡像異性体、天然R−またはD−鏡像異性体およびS−またはL−鏡像異性体からなる。アルファ−リポ酸の市販製品は、ラセミ混合物、すなわちR−およびS−鏡像異性体の50/50混合物からなる。
【0091】
[00137] アルファ−リポ酸とその還元型代謝産物ジヒドロリポ酸(DHLA)は酸化還元対を形成し、広範な反応性酸素種を捕捉することができる。アルファ−リポ酸およびDHLAは両方とも、ヒドロキシルラジカル、酸化窒素ラジカル、ペルオキシ亜硝酸、過酸化水素および次亜塩素酸を捕捉することができる。単一酸素をアルファ−リポ酸は捕捉できるがDHLAは捕捉できず、スーパーオキシドおよびペルオキシ反応性酸素種をDHLAは捕捉できるがアルファ−リポ酸は捕捉できない。
【0092】
[00138] 外因性アルファ−リポ酸は、活動心臓モデルにおいて低酸素状態後の再酸素導入に際してATP産生および大動脈血流を増大させることが示された。これは、ミトコンドリアにおいてピルビン酸およびアルファ−ケトグルタル酸が酸化される際のアルファ−リポ酸の役割によるものであって、最終的にエネルギー産生が増大すると考えられる。この活性、およびおそらくそれの抗酸化剤活性により、糖尿病性多発神経障害においてアルファ−リポ酸が有益である可能性を説明できる。
【0093】
[00139] 大部分の薬物動態試験が動物において実施されている。アルファ−リポ酸は小腸から吸収され、門脈循環により肝臓へ、また全身循環により身体の種々の組織へ分配される。天然R−鏡像異性体はS−鏡像異性体より速やかに吸収され、かつより活性な形態である。アルファ−リポ酸は血液−脳関門を容易に通過する。種々の身体組織へ分配された後、それは細胞内、ミトコンドリア内および細胞外に見いだされる。
【0094】
[00140] ジヒドロリポ酸
[00141] アルファ−リポ酸はミトコンドリアのリポアミドデヒドロゲナーゼにより代謝されて、それの還元形、ジヒドロリポ酸(DHLA)になる。DHLAは、リポ酸と一緒に酸化還元対を形成する。それも代謝されてリポアミドになり、これはピルビン酸およびアルファ−ケトグルタル酸の酸化的脱カルボキシルを触媒する多酵素複合体においてリポ酸補因子として機能する。アルファ−リポ酸は代謝されてジチオールオクタン酸になる場合があり、これが異化作用を受ける可能性がある。
【0095】
[00142] 現在、一日600ミリグラムまでの用量のアルファ−リポ酸が十分に耐容されている。糖尿病性神経障害など、ある状態では、一日300ミリグラムのアルファ−リポ酸を分割量で投与する。
【0096】
[00143] ジヒドロリポ酸(DHLA)をアルファ−リポ酸の代わりに前記のACE阻害薬と共に使用することもできる。
【0097】
[00144] 本発明の1態様において、リポ酸またはリポ酸誘導体の投与量は約1mg/日〜約1000mg/日である。他の態様においては、リポ酸またはリポ酸誘導体を約10mg/日〜約600mg/日の用量で投与する。さらに他の態様においては、リポ酸またはリポ酸誘導体を約100mg/日〜約400mg/日の用量で投与する。リポ酸またはリポ酸誘導体の用量は、300mg、400mg、500mgまたは600mgの出発一日量で投与される。
【0098】
[00145] スタチン類
[00146] 本発明組成物またはその組合わせと組み合わせることができる他の療法にはスタチン類が含まれる。
【0099】
[00147] スタチン類(またはHMG−CoAレダクターゼ阻害薬)は、心血管疾患またはそのリスクを伴う者のコレステロールレベルを低下させる医薬として用いられる脂質低下薬のクラスを形成する。それらは酵素HMG−CoAレダクターゼ、すなわちコレステロール合成速度に関係する酵素を阻害することによりコレステロールを低下させる。肝臓においてこの酵素が阻害されるとLDL−受容体が刺激され、その結果、血流からのLDLのクリアランスが増大し、血中コレステロールレベルが低下する。この初期結果は使用の1週間後に見ることができ、4〜6週間後に効果は最大になる。
【0100】
[00148] スタチン類には、アトルバスタチン(Atorvastatin)(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標));フルバスタチン(Fluvastatin)(LESCOL(登録商標))、ロバスタチン(Lovastatin)(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標))、メバスタチン(Mevastatin)、ピタバスタチン(Pitavastatin)(LIVALO(登録商標)、PITAVA(登録商標))、プラバスタチン(Pravastatin)(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(Rosuvastatin)(CRESTOR(登録商標))、およびシンバスタチン(Simvastatin)(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が含まれる。
【0101】
[00149] 1態様において、スタチンの量は約1mg/日〜約100mg/日である。他の態様においては、スタチンを約10mg/日〜約80mg/日の用量で投与する。さらに他の態様においては、スタチンを約20mg/日〜約60mg/日の用量で投与する。
【0102】
[00150] 他の有用な療法薬
[00151] 本発明の医薬組成物をこの節に示す1種類以上の療法用物質と一緒に投与することもできる。抗炎症薬、たとえばアスピリンを投与できる。脂肪酸取込み阻害薬エゼチミベ(ezetimibe)(Zetia(登録商標),MSP Singapore Company,LLC,ニュージャージー州ホワイトハウスステーション)も本発明組成物中に使用できる。エゼチミベをスタチン類と組み合わせて配合剤、たとえばVytorin(登録商標)(MSP Singapore Company,LLC,ニュージャージー州ホワイトハウス・ステーション)を調製することもできる。血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル(clopidogrel bisulfate)、または血液凝固傾向を低下させる薬物、たとえばヘパリンを投与することもできる。心血管系に対する直接作用または間接作用をもつ薬剤がこのカテゴリーに含まれ、これにはナイアシン、フィブレート類、たとえばフェノフィブレート(fenofibrate)、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)およびチアゾリジンジオン類が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0103】
[00152] 以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものである;ただし、同時に本発明の何らかの限定となることはない。むしろ、本明細書の記載を読んだ後に当業者に自明となる、本発明の精神から逸脱しない多様な態様、改変および均等物が本発明に含まれることを明確に理解すべきである。
【0104】
[00153] 実施例1
[00154] 3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート、3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテートおよび3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノールの合成
[00155] 3,4 メチレンジオキシフェノール(セサモール(Sesamol)とも呼ばれる)[#1]からの3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(O−アセチルメチレンジオキシフェノールとも呼ばれる)[#2]の合成
[00156] 工程Iにおいて、中間化合物(3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート;本明細書中でO−アセチルメチレンジオキシフェノールおよびINV−73とも呼ばれる)を、3,4 メチレンジオキシフェノール[#1]のアセチル化により製造する。
【0105】
[00157] この実施例では、無水酢酸を用いてアセチル化を行なった。このアセチル化生成物は、他の多数の誘導体組成物、たとえばニトロ、アミノおよびカルボキシル誘導体の出発点として用いられる。理論により拘束されたくはないが、このアセチル官能基がアスピリン(アセチルサリチル酸)中のアセチル基と類似の能力で作用することができ、血小板の凝集を阻害する作用をもつことができると本発明者らは考える。
【0106】
【化19】

【0107】
[00159] 工程IIにおいて、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート[#2,INV−73]からの3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(本明細書中でO−アセチルニトロメチレンジオキシフェノールまたはINV−75とも呼ばれる)の合成が下記により達成される。
【0108】
【化20】

【0109】
[00161] 工程IIIにおいて、3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート[#3,INV−75]からの3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(本明細書中でニトロメチレンジオキシフェノールおよびINV−74とも呼ばれる)[#4]の合成が下記により達成される。
【0110】
【化21】

【0111】
[00164] 実施例2
[00165] 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(本明細書中でO−アセチルニトロメチレンジオキシフェノールまたはINV−75とも呼ばれる)の生物学的検定:インビトロ試験
[00166] 細胞培養:すべての実験を培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC−−Gibco,Invitrogen)について実施し、細胞を37℃、5%CO加湿インキュベーター内で、予め1%ゼラチンでコートした組織培養フラスコにより、補充した培養培地(M199;10%の熱不活性化ウシ胎仔血清,100U/mlのペニシリン,100μg/mlのストレプトマイシン,2mMのグルタミン,10mMのHEPES,pH7.4,ヘパリン12I.U./ml,1%のレチナール誘導型増殖因子を含む,Sigma)中において、集密状態にまで増殖させた。トリプシン処理後、細胞をフラスコから剥離し、予めゼラチンコートした培養プレートにHUVECを接種し、次いで24〜48時間インキュベートして確実に集密状態にすることにより、最終単層を調製した。第4継代までの細胞をすべての実験に用いた。組換えヒトTNF−αをR&D Systems(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。
【0112】
[00167] 細胞毒性アッセイ:細胞毒性を、細胞生存性の評価のための市販アッセイであるMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]アッセイにより評価した。INV−75をHUVECに24時間添加し、この期間が終了した時点で毒性アッセイを実施した。MTTアッセイは、細胞がミトコンドリアのデヒドロゲナーゼによって、正に荷電したテトラゾリウム塩類をそれらの濃色ホルマザン生成物に還元することによる。ホルマザンの生成は、ミトコンドリアの酸化還元機能が損傷した状態およびフリーラジカル生成が増大した状態では低下するので、実験介入に対する細胞生存応答の指標として採用できる。
【0113】
[00168] 要約すると、マイクロタイタープレートをインキュベーターから取り出した後、一定体積の再構成MTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;最終濃度:0.5mg/ml]を含有する新鮮な培地をウェルに添加し;プレートを37℃の5%CO環境に2時間保持し、次いで製造業者が提供するMTT可溶化溶液を添加した。正に荷電したテトラゾリウム塩類が還元状態に変換されることにより形成されるホルマザン生成物は、水溶性が低く、紫色結晶として存在する。ホルマザンを可溶化緩衝液(キット中に備えられている)で溶解すると、それの形成を簡便に定量することができる。次いでOD 570nmにおける光学濃度を各ウェルについて吸光プレートリーダーで測定する。アッセイ内およびアッセイ間変動性は、それぞれ3および5%であった。種々の濃度のINV−75を、前記のMTTアッセイによる細胞ベースのアッセイで試験した。試験した濃度は1mMから10nMの範囲であり、細胞を24時間の期間にわたって曝露した(図2)。
【0114】
[00169] これらの結果は、100mMまでの濃度では、1mMにおける74%(他のすべての用量と比較して、1mMにつきp=0.001)と比較して10nM、100nM、1μM、10μMおよび100μMで2%、4%、8%および7%の細胞が毒性を示すことを立証した。これらの結果は、他の化合物INV−73、INV−74およびINV−7065について得られたものと同じであった。これらの結果により、INV−73、INV−74、INV−7065の安全性が10nM〜100μMの用量範囲にわたって確認された。
【0115】
[00170] 酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA):細胞表面接着分子の発現を測定するために、ELISA技術を用いた(R and D Systems,ミネソタ州ミネアポリス)。96ウェルプレート内の集密ヒト臍帯HUVECを種々の濃度のINV−75(1mM、10μM、1μM、100nMおよび1nM)で24時間、前処理した後、2ng/mLのTNF−αで6時間刺激した。
【0116】
[00171] 図3に示すINV−75前処理を用いた1実験後の培養培地のELISA分析の結果は、ICAM−1およびVCAM−1の放出の顕著な低下を示した(統計値は示していない)。その後の実験で、同様にINV−75がVCAM−1発現に及ぼす作用をウェスタンブロット法により試験した。これらの結果はINV−75の前処理によるVCAM−1タンパク質レベルの低下を示したが、対照(ビヒクル)のみによる処理では示されなかった(セクションおよび図24を参照)。
【0117】
[00172] NF−κBトランスロケーションアッセイ:サイトカイン、たとえばTNF−αおよびインターロイキン−1(IL−I)は、内皮細胞における炎症促進応答を活性化する。この応答の初期事象は、NF−κB転写因子の核トランスロケーションである。このトランスロケーションにより、炎症促進遺伝子、たとえば接着分子VCAM−1、ICAM−1およびE−セレクチンの転写が誘導される。
【0118】
[00173] NF−κBは、p65およびp50サブユニットからなるヘテロ二量体である。核トランスロケーションを、固定細胞におけるNF−κBのp65サブユニットの免疫局在化によりモニターし、核と細胞質のNF−κB信号比を測定することにより定量する。したがって、刺激された細胞、たとえば初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるNF−κBの核トランスロケーションは、生物活性化合物が炎症促進刺激に対する内皮の応答性に及ぼす作用を調べるために利用できる読出しを提供する。HUVECを種々の濃度(10nM〜1μM)のINV−75または対照(INV−75を含まない)で24時間、前処理した。次いで培地を、10ng/mlのTNFαまたは1μg/mlのウシ血清アルブミン(ビヒクル)を含有する培地に交換して6時間おいた。p65の分布を、関心領域の細胞質および核における強度として計算した。高力価領域につき少なくとも5個の細胞を用い、使用薬物の濃度につき少なくとも5つの高力価領域を用いた。次いで、高力価領域につき少なくとも5個の細胞の核−対−細胞質の染色比として強度を表わした。次いでこのデータを、TNF−αを含まない核−対−細胞質の比として表わした。
【0119】
[00174] NF−κB活性化を評価する別の実験において、種々の濃度のINV−75で予め6〜24時間処理した後、2ng/mLのTNF−αで6時間刺激したHUVEC細胞から、抽出試薬を用いて核および細胞質画分を抽出した。TNF−α刺激による6時間の刺激の後、ウェスタンブロット分析によりVCAM−1およびICAM−1の発現を評価した。次いで、核および細胞質抽出物中のp65レベルを前記に従ってウェスタンブロット法により分析した。INV−75がNF−κBトランスロケーションアッセイに及ぼす作用は、INV−75が10nMの濃度から核へのp65のトランスロケーションを阻害し始めることを示した。
【0120】
[00175] INV−75を用いた多数の実験のまとめを図4に示す。核−対−細胞質比を、ビヒクルのみで処理した対照細胞と、TNF−αに応答したもの、およびTNF−αに応答したものであるが薬物と共に24時間インキュベートした後のものとの間で比較した。INV−75で前処理すると、核p65発現に顕著な阻害が生じた(n=3,p<0.01,一元ANOVAによる)。
【0121】
[00176] ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP−2)試験および結果
[00177] SREBP(sterol regulatory element binding protein)と表記される転写因子ファミリーは、コレステロールおよび脂肪酸の合成を調節する。これらのうち、SREBP−2は、コレステロール合成酵素およびLDL受容体発現を変化させることにより、主にコレステロールの生合成を調節する(SREBP−1cは主に脂肪酸合成を調節する)。SREBP−2は、主として転写後機序により調節され、小胞体から転送された後、ゴルジ装置においてプロセシングされて成熟形になる。INV−75がSREBPに及ぼす作用を調べるために、下記のインビトロ実験を実施した:HepG2(ヒト肝癌細胞系)細胞をINV−75(0.1mM)で4時間刺激し、対応するSREBP2の核結合を電気泳動移動シフトアッセイ(EMSA)によりアッセイした。この用量によるタイムコース、および用量依存性を分析した。次いで、細胞質における前駆体および成熟形両方のSREBP−2の発現をウェスタンブロットにより評価した。成熟形SREBP−2のタイムコースおよび用量依存性の両方を分析した。
【0122】
[00178] 図5Aおよび5Bは、INV−75がSREBP−2の核結合に及ぼす作用を示す。INV−75は、SREBP−2の核結合を処理後<1時間で増大させた(図5A)。100nMという低い用量が、核へのSREBP−2のトランスロケーションを誘導するのに有効であった。図5Bは、これら2実験のまとめを提示する。
【0123】
[00179] 図5Cおよび図5Dは、細胞質におけるSREBP−2のプロセシングに対するINV−75のタイムコースを提示する。これらのデータは、INV−75が前駆体(未熟形)から成熟形へのSREBP−2のプロセシングを用量依存性様式で速やかに増大させ、10nMという低い用量が成熟形SREBP−2を増加させる作用をもつことを示唆する。
【0124】
[00180] 次いで、同細胞において同様なプロトコルを用いてLDL受容体発現の調節におけるINV−75の作用を調べて、用量依存性および時間依存性を評価した。図5Eおよび5Fは、INV−75に応答したLDL受容体発現のタイムコースおよび用量依存性を示す。これらの結果は、INV−75がLDL受容体発現を時間依存性および用量依存性様式で増大させることを明瞭に示す。これらの結果を合わせると、INV−75がSREBP−2依存経路でLDL受容体発現を増大させることができると示唆される。INV−75はSREBP−I調節に対しては作用をもたない(データを示してはいない)。同時に、コレステロールの合成および調節に関係する多数の遺伝子、アポリポタンパク質遺伝子の発現、ならびにPCSK9(Proprotein convertase subtilisin/kexin type 9、プロタンパク質変換酵素ズブチリシン/ケキシン9型)の発現を調べた。後者の遺伝子は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の上皮増殖因子様反復配列A(EGF−A)ドメインに結合してLDLR分解を誘導することによりLDL受容体発現を調節することが知られている。PSCK9機能の阻害は、コレステロールレベルを低下させる手段として現在探求されている。これらの結果により、PCSK9発現に対してINV−75の作用はないことが明らかになった。
【0125】
[00181] PPAR活性化アッセイおよび結果
[00182] HepG2細胞においてレポーター遺伝子アッセイを用いて、ペルオキシソーム増殖応答性受容体のアゴニストをスクリーニングした。ペルオキシソーム増殖応答性受容体(PPAR)および核ホルモン受容体ファミリーの他のメンバーは、代謝疾患の処置のための重要な薬物標的である。PPAR類は、脂質およびグルコースの代謝においてそれぞれ重要な役割を果たす。したがって、これらの受容体の活性化薬を迅速に同定するのに役立つスクリーニング方法はきわめて有用なはずである。INV−75は古典的なPPARα遺伝子、アセチル−CoAオキシダーゼ(ACO)を用量依存性および時間依存性様式で活性化する(図6A)。INV−75の存在下で最高15時間、タイムコース実験を実施した。次いで、細胞にヒト全長PPARαプロモーター−レポーター構築体をトランスフェクションし、INV−75がルシフェラーゼ活性化を増強することを立証した(図6B)。次の実験で、PPARα活性化のタイムコースを調べ、<1時間の時間での活性化、および最高15時間の持続的なPPARα活性化作用を立証した(図6C)。次いで、酵母GAL4−PPARα−LBDプラスミド+UAS−ルシフェラーゼ;GAL4−PPARδ−LBDプラスミド+UAS−ルシフェラーゼ、およびGAL4−PPARα−LBDプラスミド+UAS−ルシフェラーゼをトランスフェクションしたHepG2において実験を実施することにより、PPARαに対するINV−75の特異性を調べた。PPARα、PPARδおよびPPARγ結合アッセイを、多数の濃度のINV−75(1μM、10μM、100μMおよび1000μM)を用いて実施した。ルシフェラーゼ活性のレベルは、PPAR活性化度に対応していた。結果を、古典的なPPARアゴニスト、たとえばWY−14643(PPARαアゴニスト)、ベンザフィブレート(Bezafibrate)(PPARδアゴニスト)およびロシグリタゾン(Rosiglitazone)(PPARαアゴニスト)と比較した。これらの結果は、INV−75がPPARαのリガンド結合活性を選択的様式で増大させ、PPARαまたはPPARγに対しては作用しないことを示した。したがって、INV−75はPPARα活性化に対して選択的ではあるが部分的なアゴニスト特性をもつ。
【0126】
[00183] 実施例3
[00184] 3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(本明細書中でO−アセチルニトロメチレンジオキシフェノールまたはINV−75とも呼ばれる)の生物学的検定:インビボ試験
[00185] 高コレステロール血症のウサギ(ワタナベ遺伝性高脂血症ウサギ(Watanabe Heritable Hyperlipidemic Rabbits),WHHL)におけるインビボ実験を、6匹のウサギにおいてINV−75を用いて実施した。4匹のウサギを対照として用いた。
【0127】
[00186] 動物モデル:体重約2kgの2か月齢WHHLウサギをBrown Family(アラバマ州)から購入し、the institutional Laboratory Animal Centerに収容した。6か月齢のウサギをすべての実験に用いた。ウサギに水を自由に摂取させ、Harlan Tekad TD7251からの高コレステロール固形飼料(2%のコレステロール)を与えた。動物の飼育および実験プロトコルは国が承認した指針に従った。ウサギに施したプロトコルを図7に概説する。INV−75を90%エタノールに溶解し、高脂肪固形飼料に噴霧した。この食餌−薬物混合物を次いで一夜真空乾燥してエタノールを除去し、次いでウサギに与えるために用いた。
【0128】
[00187] インビボプロトコル(ウサギ)
[00188] 各動物に3回のMRI検査を行なった:1回目は高脂肪を与える前(薬物投与前のベースライン);2回目は薬物療法の中間点;3回目は12週間の薬物療法後の最終検査(図7)。WHHLウサギを到着後、新しい環境に慣れさせ、続いてベースラインMRI測定値および血液検査値を求めた後、高コレステロール固形飼料を与えた。高脂肪給餌後4〜6週目に、INV−75による薬物療法を開始した。中間点測定値は薬物療法の途中で求めた。試験が終了した時点で、すべての動物につきプラーク体積定量のためにMRI検査を行なった。最終MRIの直後、ウサギを安楽死させ、大動脈を採取し、以後の分析用に処理した(組織病理、遺伝子およびタンパク質発現)。この試験プロトコルはinstitutional animal research committeeにより承認された。介入(MRI試験)のための麻酔を、ケタミン(ketamine)(30mg/kg)およびキシラジン(xylazine)(2.2mg/kg)の筋肉内注射により誘導した。腹腔動脈上方の腹部大動脈を約5cm、無菌器具で切除し、高圧蒸気滅菌したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で洗浄し、直ちに液体窒素中で凍結し、遺伝子およびタンパク質発現のために処理するまで−80℃で保存した。すべての動物が“Guide for the Care and Use of Laboratory Animals”に準拠した思いやりのある世話を受けた。
【0129】
[00189] 非侵襲MRIプロトコルおよび結果
[00190] 高分解能非侵襲MRIを用いて、対応する処理の前と後にアテローム硬化症の程度を評価した。WHHLウサギの腹部大動脈のアテローム硬化性プラークを、指示した時点でインビボMRIスキャンにより分析した(図7)。この実験計画により、各動物をそれ自身の対照として使用でき、プラークの進行/退縮に関して真の連続データを得ることができ、かつ処理グループ間の比較が可能になる。MRI試験は、1.5−Tの磁石(Magnetom Sonata,Siemens Medical Solutions,ドイツ、エルランゲン)を用い、動物に巻きつけた位相配列心臓コイルを用いて実施された。勾配エコー冠状面および矢状面イメージを用いて腹部大動脈の位置を判定し、TURBO Flashシーケンスを用いて腹腔動脈上方から腸骨分岐部までの腹部大動脈の連続横断イメージ(ギャップなしの3−mm厚さのセグメント)を得た。ほぼ腸骨分岐部から腎最上極までにわたる48の4mm厚さの軸スライスを、T1−weighted gradient echo turbo FLASHプロトコルにより得た(TR/TE 230/5.0、3平均、スライス厚さ4.0mm、スライス間ギャップ5.2mm、および取得時間約11分)。腹部大動脈は運動アーチファクトが比較的少ないので、呼吸または心臓ゲーティングは必要なかった。外弾性膜(external elastic lamina(EEM))および管腔縁(luminal border(L))を手動でトレースし、それぞれの境界内の面積をSiemens Viewerソフトウェアにより測定することによって、プラーク負荷を測定した。スライス体積(V)をV=(EEM−L)*4.0として計算し、動物当たりの全壁体積(total wall volume)を方程式TWV=Σ[(EEM−L)*4]により計算し、mmで表わした。各時点の各動物についてのTWVを多様な数の可読スライスについて方程式NWV=(TWV/n)*mにより正規化した;n=各動物における可読スライス数、およびm=全時点にわたる全動物における可読スライス数の平均。すべての正規化した壁体積をmmで報告した。アテローム硬化プラークの指標であるウサギ腹部大動脈の壁体積を連続インビボMRIスキャンにより分析した。高コレステロール固形飼料を4〜6週間与えた後、WHHLウサギは同齢の普通固形飼料を与えたニュージーランドウサギより大きな腹部大動脈壁をもち、これはアテローム硬化症が樹立したことを支持する。
【0130】
[00191] 図8Aは、INV−75による処理がプラークの進行に及ぼす作用をMRIにより評価したものを示す。MRI測定を、ベースライン(HFC開始後であって、ただしINV−75開始前)、薬物処理中の中間点、および屠殺直前に実施した。MRI試験を、分析のためにPCへ移し、プラーク体積をImage Jソフトウェアにより分析した。アテローム硬化症変化に関する真の連続データを得ることができるように、腎動脈および腸骨分岐部からの距離を用いてイメージを解剖学的位置に一致させた。腹腔動脈に対してすぐ末端側にある大動脈を血管壁測定のために選択した。すべてのMRIイメージを試験アームまたは組織病理データに対してブラインドで取得および分析した。ベースラインの対照グループおよびINV−75グループ(すなわちINV−75補充前)の平均(SEM)正規化壁体積(NWV)は、それぞれ0.27cm(0.021cm)および0.24cm(0.0099cm)であった。これらには有意差がなかった(p=0.2775、一元ANOVAによる)。
【0131】
[00192] INV−75を6週間、食事に補充した後、腹部大動脈の壁体積は対照アームと比較して有意に減少した。INV−75処理後、試験の中間点で、対照グループおよびINV−75グループの平均(SEM)プラーク体積(NWV)は、それぞれ0.60cm(0.037cm)および0.35cm(0.019cm)であった。これらには有意差があった(p=0.0004、一元ANOVAによる)。12週後、INV−75処理を受けたグループではより顕著なプラーク進行速度低下がみられ、対照グループおよびINV−75グループの壁体積(SEM)は、12週目にそれぞれ0.66cm(0.029cm)および0.37cm(0.025cm)であった。これらには有意差があった(p=0.0001、一元ANOVAによる)。より早い6週目の時点も、対照処理と比較して統計的に有意であった。図8Bは、対照またはINV−75を施した腹部大動脈プラークの種々の時点の代表的なMRIイメージを示す。
【0132】
[00193] INV−75の抗アテローム硬化症作用を評価するための形態分析
[00194] 下行胸部大動脈のセグメントをOptimal Cutting Temperatureコンパウンド(Tissue−Tek,Sakura Finetek USA Inc,カリフォルニア州トランス)に埋包し、ドライアイスで凍結させた。次いで正面切片を調製した。アテローム硬化症負荷を分析するために、8つの切片(4μmの厚さ)を20μm間隔で採取した。H&E染色後、顕微鏡(Zeiss Axioskop、Spot Iディジタルカメラ付き、ドイツ、イエナ)を米国国立保健研究所(National Institutes of Health)(NIH)Imageソフトウェア、バージョン1.61と共に用いて、各切片をディジタルカメラでディジタル化し、分析した。結果をmmで表わした。12週目の終了時における胸部大動脈のプラーク負荷の形態計測評価は、腹部大動脈についてのMRIによるINV−75の抗アテローム硬化症作用を裏付けた。対照グループおよびINV−75グループのWHHLウサギの腹部大動脈におけるアテローム硬化症負荷のまとめを提示する。n=5/グループ。,対照動物と対比してp<0.05、n=4、非対合t検定を採用。WHHLウサギにおいて対照グループと比較して約60%のアテローム硬化症負荷低下がみられた(図9)。
【0133】
[00195] 免疫組織化学的方法および結果
[00196] 炎症性含有物を評価するために、一次抗体(1:200の濃度)および検出システム(イムノペルオキシダーゼ二次検出システム(Immunoperoxidase Secondary Detection System));Chemicon International、カリフォルニア州テメキュラ)を用いて免疫組織化学的染色を実施し、イメージをカメラシステム(Zeiss Axioskop、Spot Iディジタルカメラ付き)でディジタル化した後、ソフトウェア(NIH Image)で定量した。CD68に対する抗体をSanta Cruz Biotechnology Incorporated(カリフォルニア州サンタクルーズ)から購入した。ポリクローナル抗−α−アクチン抗体をUpstate Cell Signaling Solutions(ニューヨーク州レイクプラシッド)から購入した。T細胞受容体β抗体をBiolegend(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手した。染色を定量するために、4つの陰性対照(一次抗体を含まない)切片の平均濃度を閾値と設定し、陽性面積をソフトウェアにより取得した。最終的に、膜境界までの外弾性膜で囲まれる面積または内膜−内側体積により結果を正規化した。対照グループと比較してINV−75がマクロファージおよび平滑筋細胞に及ぼす作用を、それぞれCD68およびα−アクチン免疫組織化学的分析により評価した。INV−75は対照と対比してマクロファージ数を減少させ、全グループのまとめを図10の棒グラフにより表わす(n=4〜5匹の動物/グループ)。p<0.05、対照動物と対比、非対合t検定を採用)。INV−75処理グループは、図10に示すように有意のマクロファージ浸潤阻害を示した。INV−75は対照と対比して平滑筋含量(全面積に対する%)を増大させ、合わせた結果を棒グラフとして表わした;n=5/グループ(n=グループ当たり使用した動物数)。p<0.05、対照動物と対比。
【0134】
[00197] p<0.05は、3以上のマッチした数値がガウス分布であり、数値が統計的限界内にあることを表わす。胸部大動脈切片の免疫組織化学的分析は、アテローム硬化プラーク中のCD68細胞は減少したけれども平滑筋の増殖は増大したことを明らかにした(図10および図11)。
【0135】
[00198] 薬物で合計14週間処理し、ウサギを屠殺し、腹部大動脈を4%パラホルムアルデヒド中で固定した後、大動脈における脂質沈着を確認した。その際、大動脈壁の脂質沈着をオイルレッド染色により視覚化した。腹部大動脈のオイルレッドO(Oil Red O)染色は、対照グループと比較したINV−75処理動物の腹部大動脈切片の閾値面積パーセントとして計算したプラーク領域の脂質含量の低下を示した。INV−75は、対照と対比して脂質成分を有意に低下させた(図12)。腹部大動脈のMassonトリクロム染色は、対照グループと比較したINV−75処理動物の腹部大動脈切片の閾値面積パーセントとして計算したプラーク領域のコラーゲン含量の低下を示した(図13)。
【0136】
[00199] 脂質プロフィール:TC、TG、HDL、LDLおよびVLDL
[00200] 高コレステロール血症および酸化的ストレスは、アテローム硬化症の進行に際して重要な機能を占める。血中の脂質(コレステロールおよびLDL)を、ベースラインと終末点測定の両方において血液試料の分析により評価した。高コレステロール食の開始時と再び屠殺時点で、耳朶静脈からの1mlの血液をK EDTA試験管に入れた。すべての数値を平均±SDとして表わした。高脂肪固形飼料開始前のベースライン、高脂肪固形飼料開始後であってただし介入前、ならびにINV−75および対照による介入の終了時の総コレステロールおよびLDLコレステロールについて、各グループの棒グラフを提示する(図14 Aおよび図14B)。INV−75処理の終了時に、総コレステロールまたはLDLコレステロールに差がなかった。作用がなかったのは、極度に高い脂質値およびLDL受容体の変異をもつ遺伝的モデル(WHHL)に関係する可能性がある。INV−75はLDL受容体発現の増大によりLDLクリアランスを増大させることによって機能すると考えられるので、LDLコレステロールおよび総コレステロール(このモデルにおいてベースラインおよび高脂肪固形飼料の給餌に対する応答における主要なリポタンパク質画分)に対する作用がないのは、理解できる。
【0137】
[00201] 内皮機能:血管の生理的作用を調べるための臓器チャンバー実験
[00202] ウサギを致死量のペントバルビタール注射により安楽死させた。上行大動脈を摘出し、2mmの胸部大動脈リングを、生理食塩水緩衝液(塩化ナトリウム,130mEq/L;塩化カリウム,4.7mEq/L;二塩化カルシウム,1.6mEq/L;硫酸マグネシウム,1.17mEq/L;二リン酸カリウム,1.18mEq/L;炭酸水素ナトリウム,14.9mEq/L;EDTA,0.026mEq/L;およびグルコース,99.1mg/dL[5.5mmol/L];pH,7.4)を充填した個別の臓器チャンバー内に吊るし、酸素中5%二酸化炭素を37℃で連続通気した。血管を少なくとも1時間、30mNの静止張力で平衡化させた後、前記のように段階的用量のアゴニストで処理した。血管収縮アゴニストには、フェニレフリン(PE)、エンドセリン−1(ET−I)、またはアンギオテンシンIIが含まれていた。応答を120mEq/Lの塩化カリウムへのピーク応答に対するパーセントとして表わした。PEで処理した血管を十分に洗浄し、1時間平衡化させた後、アセチルコリン、ニトロプルシッドナトリウム(SNP)またはインスリンによる実験を開始した。PE(0.1μM)で安定収縮プラトーに達した後、リングを段階的用量の内皮依存性アゴニストであるアセチルコリン、インスリン、または内皮非依存性アゴニストであるSNPに曝露した。結果をPE(0.1μM)による前収縮に対するパーセントとして表わした。アセチルコリンに曝露したリングを十分に洗浄し、1時間平衡化させた。PE(0.1μM)で安定収縮プラトーに達した後、次いでインスリンを累積式で添加し、続いて洗浄し、SNPに対する用量応答を調べた。結果をPE(0.1μM)による前収縮に対するパーセントとして表わした。INV−75は、アンギオテンシンIIによる大動脈収縮を低下させたが、フェニレフリンに対しては作用しなかった(図15および図16)。
【0138】
[00203] INV−75は、アンギオテンシンIIに対する応答に有意に作用したのと対照的に、PE、エンドセリン−1に対する応答には作用しなかった。INV 75はアセチルコリン依存性血管弛緩には有意の作用をもち、インスリンに対しては境界領域(有意ではない)の作用をもっていた(図17および図18)。INV−75はSNP、すなわち内皮非依存性血管収縮物質に対しては作用をもたなかった(結果は示していない)。INV−75ウサギにおけるアンギオテンシンIIに対する応答の低下は、アンギオテンシンII 1型受容体のmRNA発現低下と平行していた(データは示していない)。表1は、WHHLウサギの胸部大動脈における種々のアゴニストに対する応答のまとめを示す。
【0139】
【表1】

【0140】
[00204] 酸化的ストレス計測:8−epiプロスタグランジンF2α(8−イソプロスタン)酵素結合イムノアッセイ
[00205] 血漿および肝臓試料をWHHLウサギから屠殺時に得た。肝臓溶解物をPBS中でのホモジナイゼーションにより調製した。両試料をアフィニティー精製し(Cayman Chemical,ミシガン州アンハーバー)、次いで8−イソプロスタンをStat−8−イソプロスタンELISAキット(Cayman Chemical,ミシガン州アンハーバー)で測定した。肝臓中のレベルをタンパク質に対して調整した。肝臓溶解物中のタンパク質レベルをBCA Protein Assay(Pierce, イリノイ州ロックフォード)により測定した。
【0141】
[00206] 血漿および大動脈ホモジェネート中の8−epiプロスタグランジンF2α (8−イソプロスタン)産生は、対照グループと比較してINV−75グループでは有意に低かった(図19,図20)。
【0142】
[00207] ジヒドロエチジウム染色によるスーパーオキシド(O●−)の検出
[00208] スーパーオキシド(O●−)のインサイチュー検出は、OCTコンパウンド(Tissue−Tek(登録商標),Sakura Finetek USA Inc,カリフォルニア州トランス)に埋包した大動脈組織を瞬間凍結したものにおいて実施された。組織試料を20μmの厚さに凍結薄切し、Superfrost Plusスライド(Fisher Scientific,ペンシルベニア州ピッツバーグ)上に採集し、必要になるまで−80℃に保存した。各ラット(組織塊)からランダムに選択した4つのスライドをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)上に室温で30分間乗せ、次いでPBS中のジヒドロエチジウム(dihydroethidium)(DHE,10μM,Molecular Probes,Inc.,オレゴン州ユージーン)により湿潤チャンバー内で暗所において20分間染色した。スライドをPBSで徹底的にすすぎ、カバーガラスを乗せ、顕微鏡(Zeiss Axioskop、Spot Iディジタルカメラ付き、ドイツ、イエナ)でディジタルイメージにした。DHEは細胞に自由に透過でき、O●−の存在下で2電子酸化を受けてDNA結合性蛍光体である臭化エチジウムを形成することができ、これがDNA内へのインターカレーションにより細胞内にトラップされる。この反応はO●−に相対的に特異性であり、細胞性ペルオキシダーゼおよび過酸化水素により誘発される酸化は最小限であった。阻害薬試験のためにスライドを300μMのアポサイニン(apocynin)(Sigma)、10μMのジフェニルヨージニウム(DPI,Fisher Scientific)、またはPEG−SOD(250U/ml)と共に30分間インキュベートした後、DHEで染色した。棒グラフで表わした全グループの結果のまとめ、p<0.01、は、3以上のマッチした数値がガウス分布であり、数値が統計的限界内にあることを表わす。
【0143】
[00209] これらの結果は、大動脈における基礎スーパーオキシド産生がINV−75処理グループで低下したことを明らかにした(図21)。
【0144】
[00210] NADPH誘導スーパーオキシド(O●−)の検出のためのルシゲニン化学発光:INV−75の作用
[00211] アテローム硬化症における酸化的ストレスの関与が示唆されている。NADPHから誘導されるスーパーオキシド(O●−)はフリーラジカル連鎖反応を誘発する可能性があり、これがアテローム硬化プラーク形成を触媒する可能性をもつ。ウサギ大動脈をPBS中でホモジナイズし、タンパク質濃度を5μg/μlに調整した。20ul/ウェルの細胞溶解物を96ウェルマイクロプレート内でKreps−Hepes緩衝液(pH=7.4;最初に95% Oおよび5% COを通気)に播種した。ベースラインO●−産生を5μMルシゲニンで測定した。NADPH誘導によるO●−産生を、NADPH(100μM)の添加により測定した。測定はBerthold Luminometer LB 960により実施された。ルミノメーター設定は0.1秒の測定および30秒の反応動態であった。
【0145】
[00212] 大動脈溶解物における基礎および刺激スーパーオキシド産生は、対照と比較して低いことが認められ、n=5/グループに基づいて統計分析を行なった。スーパーオキシド産生について対照動物と対比してp<0.05(図22)。
【0146】
[00213] INV−75および対照に応答した炎症遺伝子およびタンパク質の発現
[00214] アテローム硬化症においては血管炎症がきわめて重要な役割を果たすので、炎症促進性の遺伝子発現およびタンパク質発現の評価は、INV−75の抗炎症作用に関する追加情報を提供する。
【0147】
[00215] 定量RT−PCR分析
[00216] 全RNAをTRIzol試薬(Invitrogen)で分離した。4マイクログラムの全RNAをランダムヘキサマーおよびThermoScript RT−PCRシステム(Invitrogen)により逆転写した。定量リアルタイムPCRをStratagene Mx3005でSYBER Green PCR Master Mix(Applied Biosystems,カリフォルニア州フォスターシティー)を用いて実施した。GAPDHと比較した相対発現レベルを求めた。この実験に用いたプライマーは下記の表に示され、Invitrogenから購入された。
【0148】
【表2】

【0149】
[00217] ウェスタンブロット分析
[00218] 試料をホモジナイズし、放射免疫沈降アッセイ緩衝液(50mM Tris−HCl,pH7.4,150mM NaCl,1mM EDTA,1mM NaF,1mM NaVO)および1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド:0.25%のデオキシコール酸ナトリウムおよび1.0%のNonidet P−40を含む)に可溶化し、10,000gおよび4℃で30分間、遠心した。上清を採集し、ウェスタンブロット分析を行なった。要約すると、40μgのタンパク質をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、続いてニトロセルロース膜へ移した。次いで膜を下記のものと共にインキュベートした:モノクローナル抗−β−アクチン(Sigma,ミズーリ州セントルイス)、モノクローナル抗−VCAM(R&D Systems,ミネソタ州ミネアポリス)、モノクローナル抗−ICAM(R&D Systems,ミネソタ州ミネアポリス)、モノクローナル抗−ホスホ−eNOS(pS1177)(BD Biosciences,マサチュセッツ州ビレリカ)、ウサギ抗−eNOS(Santa Cruz Biotechnology,カリフォルニア州サンタクルーズ)、ウサギ抗−ホスホ−Akt(Thr308)(Cell Signaling Technology,マサチュセッツ州ダンバース)、ヤギ抗−Akt(Santa Cruz Biotechnology,カリフォルニア州サンタクルーズ)、およびウサギ抗−p65(Cell Signaling Technology,マサチュセッツ州ダンバース)。最後に、膜を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合した二次抗体と共にインキュベートし、増強化学発光キット(Amersham Biosciences Inc.,ニュージャージー州ピスカッタウェイ)で視覚化した。バンド濃度を、ImageJを用いるデンシトメトリー分析により定量した。
【0150】
[00219] INV−75は、胸部大動脈におけるVCAM−1、ICAM−1、MCP−I、およびL−セレクチンのmRNA発現を低下させた(図23)。これらの接着分子の発現をタンパク質レベルで測定することにより、INV−75が大動脈におけるVCAM−1およびICAM遺伝子発現に及ぼす作用を裏付けた。図24は、VCAM−1およびICAM−1の発現に関するウェスタンブロット分析のまとめを示す。INV−75はVCAM−1およびICAM−1のタンパク質発現を顕著に低下させた。
【0151】
[00220] INV−75が接着分子VCAM−1の調節に及ぼす作用を理解するために、細胞培養におけるINV−75の作用も調べた。本発明者らは先に、iNV−75がNF−kB活性化ならびにVCAM−1およびICAM−1の発現を低下させることをHUVEC細胞において示した(参照:図3および図4)。本発明者らはこれらの所見を再確認したが、さらにこれらの結果が先に図6において立証したPPARαの活性化と関係があるかどうかという疑問が生じた;図6では、INV−75がPPARα受容体およびPPARα調節型遺伝子、たとえばACOを活性化することを示した。HUVECをビヒクル、INV−75、またはWY−14643で2時間、前処理し、次いでTNFαで4時間処理した。この期間の終了時にVCAM−1発現を分析した。3つの独立した実験の代表例およびまとめを示す。、p<0.05−対−対照;、p<0.05−対−TNFα(図25)。これらの実験は、INV−75によりみられたVCAM−1減少はおそらくPPARα活性化に対するINV−75の作用に関係するという可能性を示唆する。
【0152】
[00221] ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP−2)活性:インビボ実験
[00222] 本発明者らは先に、SREBP−2およびLDL受容体の調節におけるINV−75の作用を細胞培養において示したので、次ぎにこれらの結果をインビボでマウスモデル(C57Bl/6マウス)において確認した。INV−75がSREBP活性に及ぼす作用を調べるために、下記のインビボ実験を実施した:C57bl/6マウス(6/グループ)にINV−75(20mg/kg/日、2週間)を腹腔内注射した。肝ホモジェネートの核タンパク質中のSREBP2の結合活性を電気泳動移動シフトアッセイ(EMSA)により測定した。同時に、肝臓において、コレステロールの合成および調節に関係する多数の遺伝子、アポリポタンパク質遺伝子の発現、ならびにPCSK9(プロタンパク質変換酵素ズブチリシン/ケキシン9型)の発現も調べた。PCSK9は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の上皮増殖因子様反復配列A(EGF−A)ドメインに結合してLDLR分解を誘導することによりLDL受容体発現を調節することが知られている。
【0153】
[00223] 結果は、INV−75が他のリポタンパク質を低下させないけれどもLDLを有意に低下させたことを立証した(図27)。これに平行して、リアルタイムRT−PCR(図26)およびウェスタンブロット(データは示していない)により測定した肝臓におけるLDL受容体発現が増大した。INV−75は、電気泳動移動シフトアッセイ(EMSA)により測定したSREBP2、すなわちLDLRを調節する重要な転写因子も、劇的に活性化した(図28)。
【0154】
[00224] これらの結果から、INV−75はSREBP2の活性化によりLDLRをアップレギュレートすることができ、これによりLDLコレステロールレベルを低下させることが確認される。これらの結果は、INV−75がLDL低下に対して卓越した有益な作用をもつという本発明者らの所見をさらに強化する。
【0155】
[00225] 実施例4
[00226] メチレンジオキシフェノールおよびdl−リポ酸からの3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(O−リポイルメチレンジオキシフェノール)(INV−7065)の合成
[00227] 化合物3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(C1518)(本明細書中でO−リポイルメチレンジオキシフェノールおよびINV−7065とも呼ばれる)は326.43の分子量(MW)をもち、C1518の式をもつ。INV 70−65は、ハロゲン化溶媒を用いて窒素雰囲気下でリポ酸とメチレンジオキシフェノールを処理することにより製造された。
【0156】
[00228] 250mL丸底フラスコ内で、4.5g(0.033mole)の3,4−メチレンジオキシフェノール(Aldrich,カタログ# S3003−25G−A)および5g(0.4mole)のジメチルアミノピリジン(Aldrich,カタログ# 522821)および120mLのジクロロメタンを、室温で15分間、十分に撹拌した。7.4g(0.036mole)のアルファリポ酸(Geronova Research Inc)を少量ずつ10分間かけて添加した。N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI Aldrich,カタログ#:E7750)8.6g(0.8mole)を45分間かけて添加し、一夜撹拌し続けた。すべての溶媒が商業用グレードのものであり、Fisher Scientifiから購入された。他のハロゲン化溶媒を使用できることを理解すべきであり、これにはクロロホルムおよび四塩化炭素が含まれるが、これらに限定されない。他の結合剤を使用できることを理解すべきであり、これにはジシクロカルボジイミド(DCC)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
[00229] 約24時間の反応時間後、粗生成物を出発物質について薄層クロマトグラフィー(3:1 ヘキサン:酢酸エチル溶媒系)検査して、生成物の形成および出発物質3,4−メチレンジオキシフェノールの消失を検査した。反応の完了後、ジクロロメタンを減圧下で蒸発させた。粘稠な黄色素材が得られ、これをフラッシュカラムクロマトグラフィーにより3:1 ヘキサン:酢酸エチル溶媒系で直接精製した。より高純度の生成物を得るためには、カラムクロマトグラフから低速での溶媒溶離が必要である。得られた黄色の羽毛状固体を結晶化法で再精製した。結晶化は90%エタノールを用いて実施され、その操作は化合物INV−7065(約2g)を10分間かけて温エタノール(約35mL)に連続撹拌しながら添加することを伴う。化合物が完全に溶解した後、淡黄色溶液を速やかに濾過し、徐々に結晶化させるために一夜放置した。光沢のある羽毛状固体を濾過し、真空乾燥器を用いて乾燥させた。全収率は65%〜73%であった。結晶化した生成物を高分解能プロトンNMRにより特性分析した。下記はこの反応の模式図である。
【0158】
【化22】

【0159】
[00230] NMR特性分析:結晶化した化合物を高分解能プロトンNMRにより特性分析し、生成物の代表的なプロトン化学シフト値は下記のとおりである:(CDCl3) : 6.77-6.75 (1H, doublet), 6.59 - 6.58 (1H, doublet), 6.52 - 6.49 (1H, doublet of doublet), 5.97 (2H, singlet), 3.61-3.57 (1H, multiplet), 3.19-3.10 (2H, multiplet), 2.56 - 2.52 (2H, triplet), 2.51 - 2.45 (2H, multiplet), 1.95 - 1.86 (2H, multiplet), 1.79-1.73 (4H, multiplet), 1.58 - 1.53 (2H, multiplet). 図1B;
singlet:一重線,doublet:二重線,doublet of doublet:二重の二重線,multiplet:多重線。
【0160】
[00231] 実施例5
[00232] 3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV 70−65)の生物活性
[00233] INV 70−65をリポ酸とメチレンジオキシフェノールの処理により製造したので、それの作用を特にリポ酸単独の作用と比較して理解することを試み、リポ酸の作用とメチレンジオキシフェノールの作用を区別する補助とした。したがって、インビボ試験を伴う本発明者らの実験において、比較グループのひとつはリポ酸であった。
【0161】
[00234] 動物モデル:15匹の雄ニュージーランド白ウサギ(Charles River,マサチュセッツ州)に高脂肪食(HFD)(Harlan Tekladウサギ飼料,0.5%のコレステロールを含有,TD 87251)を与えた。4週間の高脂肪食の後、ウサギをランダムに3つの異なる処理グループに分けた:正常な対照(n=5)、リポ酸(100mg/kg/日)(n=5)、INV 70−65(100mg/kg/日)(n=5)。これらの薬物は動物にそれらの固形飼料を介して、薬物を高脂肪食と混合することにより投与された。各ウサギの飼料摂取量を慎重に計算した後、一定量の固形飼料と固形飼料中に混合した薬物をすべての動物に毎日与えた。薬物を100%エタノールに溶解し、飼料に噴霧し、エタノールを蒸発させるために一夜真空下に保持した。薬物または対照を混合したHFDを2週間与えた後、すべてのウサギに大動脈バルーン表皮剥脱術を施し、続いて、混合したHFDと薬物または対照を連続12週間投与した。図29にこの実験計画の概要を提示する。
【0162】
[00235] アテローム硬化症の評価のための磁気共鳴イメージングプロトコル
[00236] MRI実験を2時点で実施した:バルーン表皮剥脱術後、1週目および12週目(図29)。MRI取得に先立って、ウサギをキシラジン(2mg/kg)およびケタミン(40 mg/kg)の筋肉内注射により麻酔し、後に造影剤を投与するために静脈内カテーテル(Surflo 24Gx3/4”,TERUMO(登録商標) Medical Corp.,メリーランド州エルクトン)を耳縁静脈に挿入した。アテローム硬化症を評価するためのdouble inversion T1−weighted gradient echo turbo FLASHシーケンスを用いた前および後MRIイメージを、1.5T 32−チャンネル全身MRシステム(MAGNETOM Avanto,Siemens,ドイツ)により得た。イメージングのために、ウサギを腹臥位に置き、柔軟な6エレメント位相アレイボディーコイルを巻きつけた。ほぼ腸骨分岐部から腎最上極までにわたる下行大動脈に対して垂直な30の4mm厚さの横断スライス(スライス間ギャップ4.6mm)を取得した:TR/TE=260/5ms、312x312μmの平面内解像、バンド幅120 kHz、3信号の平均、および全スキャン時間12分29秒。造影前取得の後、7〜10mlの0.1mmol/Kg Magnevist溶液(Bayer HealthCare Pharmaceuticals Inc.,ニュージャージー州ウェイン)をカテーテルにより注入し、2mlの生理食塩水でフラッシュした。造影剤投与後、約6分30秒で造影前暗血液スキャン(pre−contrast dark blood scan)の反復を開始した。造影後スキャンの後、ウサギを回復させた。MRイメージをSiemens Leonardo Workstation(Siemens Healthcare Inc.,ドイツ)により分析した。
【0163】
[00237] 各ウサギグループについてアテローム硬化プラーク進行速度の差を評価するために、大動脈壁を両MRI時点の造影前イメージで確認した。各動物について10〜22のイメージにおいて、関心領域(regions of interest)(ROI)を血管壁の内縁および外縁の周りにフリーハンドで描いた。各スライスにおいて、血管壁の外縁で囲まれた面積から管腔面積を差し引くことにより、血管壁面積を求めた。スライス厚さ(4.6mm)を全血管面積(mm)に掛けることにより、各動物について全血管壁体積を求めた。スライス数の変動を考慮するために、各ウサギについて正規化した大動脈壁体積を計算した。
【0164】
[00238] 異なる処理グループにおけるプラーク血管新生の進行を評価するために、バルーン表皮剥脱術後12週目のMRIイメージのみを用いた。大動脈壁を含む同じROIを、7〜11の造影前および造影後MRIイメージ中に手で描いた。各スライスについての信号−対−ノイズ比(SNR)を、血管壁から得られた平均信号を身体の外側領域からのノイズの標準偏差で割ったものとして計算した。各ウサギについてのSNR比増強を、造影後および造影前SNR計算値で割ることにより求めた。
【0165】
[00239] 図30Aは、種々のグループにおけるプラーク負荷のMRI評価を示す。INV 70−65は、12週間の処理後に対照動物と比較してプラーク負荷を顕著に減弱させた。この実験ではリポ酸処理とINV 70−65処理の間に差がなかった。HFDを与えた対照動物はアテローム硬化プラーク負荷が増大し続けた。
【0166】
[00240] 図30Bは、種々の処理グループにおけるガドリニウム投与後の大動脈のコントラスト増強を示す。図30Bは、対照およびリポ酸処理と比較してINV 70−65処理後にガドリニウム増強が低下したことを示す。
【0167】
[00241] 血管機能:対照およびリポ酸処理と比較したINV 70−65の血管に対する生理的作用を調べるためのミオグラフ実験
[00242] ウサギを致死量のペントバルビタール注射により安楽死させた。胸部大動脈をミオグラフ試験のために採取した。2mmの胸部大動脈リングを、生理食塩水緩衝液(塩化ナトリウム,130mEq/L;塩化カリウム,4.7mEq/L;二塩化カルシウム,1.6mEq/L;硫酸マグネシウム,1.17mEq/L;二リン酸カリウム,1.18mEq/L;炭酸水素ナトリウム,14.9mEq/L;EDTA,0.026mEq/L;およびグルコース,99.1mg/dL[5.5mmol/L];pH,7.4)を充填した個別の臓器チャンバー内に吊るし、酸素中5%二酸化炭素を37℃で連続通気した。血管を少なくとも1時間、30mNの静止張力で平衡化させた後、段階的用量のアゴニストで処理した。血管収縮アゴニスト、フェニレフリン(PE)を用い、応答を120mEq/Lの塩化カリウムへのピーク応答に対するパーセントとして表わした。PEで処理した血管を十分に洗浄し、1時間平衡化させた後、アセチルコリンまたはニトロプルシッドナトリウム(SNP)による実験を開始した。PE(0.1μM)で安定収縮プラトーに達した後、リングを段階的用量の血管弛緩物質に曝露した;これには、内皮依存性アゴニストであるアセチルコリンおよびインスリン、または内皮非依存性アゴニストであるSNPが含まれていた。これらの血管収縮物質についての結果をPE(0.1μM)による前収縮に対するパーセントとして表わした。表3に血管応答をまとめ、図31A〜31Dに結果を示す。
【0168】
[00243] 表3.INV 70−65の12週目の終了時における胸部大動脈の血管応答のまとめ
【0169】
【表3】

【0170】
[00244] 図31Aおよび図31Bは、フェニレフリンおよびインスリンに対する応答へのINV 70−65の作用の相異を示す。INV 70−65は、リポ酸と比較してピーク用量のインスリンに対する弛緩を改善したが、EC50用量には作用しなかった。
【0171】
[00245] これに対し、INV 70−65はアセチルコリンに対する応答の改善において、対照と比較した場合、リポ酸と差がなかった(図31C)。これに対し、内皮非依存性アゴニストであるニトロプルシッドナトリウム(SNP)に対する応答には、いずれのグループにも差がなかった。これらの結果は、INV 70−65がアルファ受容体アゴニストに対する血管収縮性を低下させ、血管のインスリン感受性を増大させることを示唆する。
【0172】
[00246] 免疫組織化学的方法および結果
[00247] 高コレステロール血症および酸化的ストレスは、アテローム硬化症の発症に重要な役割を果たす。ウサギを屠殺し、腹部大動脈を4% PFA(パラホルムアルデヒド)中で固定した。次いで大動脈壁の脂質沈着をオイルレッド染色により視覚化した。腹部大動脈のオイルレッドO(Oil Red O)染色は、プラーク領域の脂質含量の低下を示した;対照グループと比較した3,4−メチレンジオキシフェニルリポエートおよびリポ酸処理動物の腹部大動脈切片の閾値面積パーセントとして計算。,p<0.05,一元ANOVA。
【0173】
[00248] INV−7065処理動物の大動脈壁における脂質沈着に、対照と比較して約80%の低下、リポ酸と比較した場合には約40%の低下がみられた。
【0174】
[00249] 血漿脂質プロフィール試験
[00250] 脂質プロフィール(コレステロール、トリグリセリド、直接HDL、LDLおよびVLDL)を、合計12週間の薬物処理後に調べた。高コレステロール食の開始時および再び屠殺時点で、K EDTAを入れた試験管に耳朶静脈からの1mlの血液を入れた。すべての数値を平均±SDとして表わした。ベースラインおよび終末点測定の両方の各グループの棒グラフを提示する。一元ANOVAにより統計分析を行なった。正常対照と比較してINV−75およびリポ酸で処理したグループの終末点で、TCおよびLDLのレベルが中等度に低下した。図32Aおよび図32D。
【0175】
[00251] これに対し、対照と比較してINV−7065およびリポ酸のグループでトリグリセリド(TG)レベルは有意に低下した;図32B。HDLレベルはリポ酸グループで中等度に増大し、一方、INV−7065は有意ではない変化を示した;図32C。対照と比較して、INV−7065処理動物はわずかなVLDL低下を示し、これに対しリポ酸処理動物はVLDLレベルの変化を示さなかった;図32E。これらの結果は、INV−7065が対照およびリポ酸と比較して脂質プロフィールの制御に中等度に有効であることを示唆する。
【0176】
[00252] 実施例6
[00253] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(O−リポイルニトロメチレンジオキシフェノール(INV−7465)の合成および精製
[00254] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートは、371.43の分子量およびC1517NOの式をもつ。3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートは、本明細書中でO−リポイルニトロメチレンジオキシフェノールおよびINV−7465とも呼ばれる。
【0177】
[00255] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートの合成法および精製法,方法−I
[00256] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートの合成は、ニトロメチレンジオキシフェノール(3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェノール)とアルファリポ酸の反応により達成され、下記に模式的に示される。ニトロメチレンジオキシフェノール(INV−74)の合成は、本明細書中で先に記載した。
【0178】
【化23】

【0179】
[00257] 100mL丸底フラスコ内で、0.17g(0.00lmole)の3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェノールおよび0.1g(140μL)(0.2mole)のトリエチルアミン(Aldrich,カタログ#:471283)および50mLのジクロロメタンを、室温で10分間、十分に撹拌した。溶液は赤橙色になった。アルファリポ酸0.25g(0.0015mole,Geronova Research Inc)を5分間かけて添加した。それにN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI Aldrich,カタログ#:E7750)0.4g(0.002mole)を15分間かけて添加し、一夜撹拌し続けた。すべての溶媒が商業用グレードのものであり、Fisher Scientificから購入された。他のハロゲン化溶媒を使用できることを理解すべきであり、これにはクロロホルムおよび四塩化炭素が含まれるが、これらに限定されない。他の結合剤を使用できることを理解すべきであり、これにはジシクロカルボジイミド(DCC)およびジイソプロピルカルボジイミド(DIC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0180】
[00258] 約36時間の反応時間後、粗生成物を出発物質について薄層クロマトグラフィー(20%ヘキサン:酢酸エチル溶媒系)検査して、生成物の形成および出発物質3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェノールの消失を検査した。反応の完了後、ジクロロメタンを減圧下で蒸発させた。粘稠な黄色素材が得られ、これを調製用薄層クロマトグラフィーにより20%ヘキサン:酢酸エチル溶媒系で直接精製した。適宜なバンドをプレートから掻き取り、酢酸エチルで慎重に溶離した。淡黄色固体が得られ、これを結晶化法で再精製した。結晶化は95%エタノールを用いて実施され、その操作は化合物(INV−7465)(約50g)を5分間かけて温エタノール(60〜65C)(約10mL)に連続撹拌しながら添加することを伴う。化合物が完全に溶解した後、得られた溶液を速やかに濾過し、徐々に結晶化させるために一夜放置した。黄色固体を濾過し、真空乾燥器を用いて乾燥させた。全収率は42%であった。結晶化した生成物を高分解能プロトンNMRにより特性分析した。
【0181】
[00259] NMR特性分析:結晶化した化合物を高分解能プロトンNMRにより特性分析し、生成物の代表的なプロトン化学シフト値は下記のとおりである:(CDCl3) : 7.59 (1H, singlet), 6.45 (1H, singlet), 6.15 (2H, singlet), 3.68-3.60 (1H, multiplet), 3.21-3.13 (2H, multiplet), 2.66-2.64 (2H, triplet), 2.52 - 2.47 (2H, multiplet), 1.97 - 1.92 (2H, multiplet), 1.84 - 1.75 (4H, multiplet), 1.74-1.58 (2H, multiplet). 図1B;
singlet:一重線,multiplet:多重線,triplet:三重線。
【0182】
[00260] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートの合成,方法−II
[00261] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートを合成する別法は、3,4−メチレンジオキシリポエートにニトロ基を導入することを伴い、合成スキームを下記に示す。3,4−メチレンジオキシフェニルリポエートの合成は、本明細書中でINV−7065に関して先に示した。
【0183】
【化24】

【0184】
100mLのコニカルフラスコ内で、0.3g(0.001mole)の3,4−メチレンジオキシフェニルリポエートを20mLの氷酢酸に入れ、室温で30分間、連続撹拌し、氷冷浴で冷却した。撹拌しながら、氷酢酸10mL中の濃硝酸(4mL)を45分間かけて徐々に化合物混合物に添加した。反応混合物は明かるい黄色に変化し、3時間撹拌を続けた。得られた溶液を連続撹拌しながら砕き氷に直接注いだ。フラスコの底に沈降した淡黄色の半固体をジクロロメタン(2X50mL)で抽出した。有機抽出液を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。得られた黄色素材を調製用薄層クロマトグラフィーで精製した。最終生成物を、95%エタノールを用いる再結晶により再精製した。この反応の全収率は36%である。それを基準試料と比較して薄層クロマトグラフィーにより特性分析した。
【0185】
[00262] 実施例7
[00263] 3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(本明細書内でO−リポイルニトロメチレンジオキシフェノールおよびINV 7465とも呼ばれる)の生物活性
[00264] INV 74−65によるp65の核トランスロケーションの阻害:インビトロ細胞培養実験
[00265] 細胞培養:すべての実験を培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC−Gibco,Invitrogen)について実施し、細胞を37℃、5%CO加湿インキュベーター内において、予め1%ゼラチンでコートした組織培養フラスコで、補充した培養培地(M199;10%の熱不活性化ウシ胎仔血清,100U/mlのペニシリン,100μg/mlのストレプトマイシン,2mMのグルタミン,10mMのHEPES,pH7.4,ヘパリン12I.U./ml,1%のレチナール誘導型増殖因子を含む,Sigma)中において、集密状態にまで増殖させた。トリプシン処理後、細胞をフラスコから剥離し、予めゼラチンコートした培養プレートにHUVECを接種し、次いで24〜48時間インキュベートして確実に集密状態にすることにより、最終単層を調製した。第4継代までの細胞をすべての実験に用いた。組換えヒトTNF−αをR&D Systemsから購入した。
【0186】
[00266] ヒト腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)は、3つの17kDaサブユニットからなり、約51kDaの分子量をもつホモ三量体として存在する。それは、好中球、好酸球、ならびにTおよびBリンパ球の活性を調節し、かつ血管内皮の特性を改変する、炎症促進性、アポトーシス促進性サイトカインである。炎症性サイトカイン(TNF−α)に対する3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエートの生物学的役割を調べるために、インビトロ細胞培養実験を実施した。
【0187】
[00267] 細胞培養:すべての実験を培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC−Gibco,Invitrogen)について実施した;37℃、5%CO加湿インキュベーター内において、予め1%ゼラチンでコートした組織培養フラスコで、補充した培養培地(M199;10%の熱不活性化ウシ胎仔血清,100U/mlのペニシリン,100ng/mlのストレプトマイシン,2mMのグルタミン,10mMのHEPES,pH7.4,ヘパリン12I.U./ml,1%のレチナール誘導型増殖因子を含む,Sigma)中において、集密状態にまで増殖させたもの。トリプシン処理後、細胞をフラスコから剥離し、予めゼラチンコートした培養プレートにHUVECを接種し、次いで24〜48時間インキュベートして確実に集密状態にすることにより、最終単層を調製した。第4継代までの細胞をすべての実験に用いた。組換えヒトTNF−αをR&D Systemsから購入した。
【0188】
[00268] 酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)および結果:細胞表面接着分子の発現を測定するために、ELISA技術を用いた。96ウェルプレート内の集密HUVECを種々の濃度のINV−7465(1nM、10nM、100nM、1μMおよび10μM)で24時間、前処理した後、2ng/mLのTNF−αで6時間刺激した。6時間のTNF−α刺激後、VCAM−1およびICAM−1の発現を評価した。INV−7465でヒトHUVEC細胞を12〜24時間、前処理し、続いて2ng/mLのTNF−αで6時間刺激した後の培養培地のELISA分析結果は、VCAMおよびICAM−1の放出の顕著な低下を示した。
【0189】
[00269] 試験したすべての濃度で、INV−7465は炎症促進性サイトカインTNF−αの作用を阻害し、これは核−対−細胞質p65染色比の低下として観察された。3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)は、有効な抗炎症作用をもち、炎症性分子TNF−αの作用に拮抗した。
【0190】
[00270] 実施例8
[00271] 心血管患者の処置
[00272] 胸部中央ならびに肩、腕、首、顎および背に不快な圧迫感、締付け感および痛みを伴って、55歳の男性が来院している。彼は、息切れおよび血圧上昇など他の症状を示す。血管造影法で評価した後、彼は冠動脈のプラーク形成を伴うアテローム硬化症に罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を投与する。別療法には、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)が含まれる。この組成物を場合によりアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル(clopidogrel bisulfate)、スタチン類、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)などの療法と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れの改善を報告している。彼を再び血管造影法で評価して、動脈のプラーク減少が測定されている。
【0191】
[00273] 実施例9
[00274] 胸痛を伴う心血管患者(狭心症)の処置
[00275] 胸部中央に不快な圧迫感、締付け感および痛みを30分未満伴う、55歳の男性が来院している。不安定狭心症の疑いのため、彼を心臓血管造影特別室に収容した。彼は、息切れおよび不規則な心拍など他の症状を示す。血管造影法で評価した後、彼は冠動脈のプラーク形成を伴うアテローム硬化症に罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を投与する。この組成物を場合によりアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、エゼチミベ(ezetimibe)、リポ酸、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)などの療法と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れの改善を報告している。彼を再び血管造影法で評価して、動脈のプラーク減少が測定されている。
【0192】
[00276] 実施例10
[00277] 胸痛を伴う心血管患者(狭心症)の処置
[00278] 胸部中央に不快な圧迫感、締付け感および痛みを30分未満伴う、55歳の男性が来院している。不安定狭心症の疑いのため、彼を心臓血管造影特別室に収容した。彼は、息切れおよび不規則な心拍など他の症状を示す。血管造影法で評価した後、彼は冠動脈のプラーク形成を伴うアテローム硬化症に罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7465)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を投与する。この組成物を場合によりアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、エゼチミベ、リポ酸、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)などの療法と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れの改善を報告している。彼を再び血管造影法で評価して、動脈のプラーク減少が測定されている。
【0193】
[00279] 実施例11
[00280] 急性非ST上昇型心筋梗塞を伴う心血管患者の処置
[00281] 胸部中央ならびに肩、腕、首、顎および背に不快な圧迫感、締付け感および痛みを4時間以上伴う、55歳の男性が来院している。彼は息切れも訴えている。彼を救急室で評価して、トロポニンIが上昇していることが分かり、彼のEKGは心筋虚血と一致した変化を立証する。彼にアスピリン、クロピドグレル、ナイトレート類および静脈内ヘパリンを投与し、カテーテル導入検査室へ収容した。血管造影法で評価した後、彼は左冠動脈前下行枝の<90%閉塞を生じていると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物をカテーテル導入検査室で投与する。患者は胸痛、息切れの改善を報告している。彼を再び血管造影法で評価して、動脈のプラーク減少が測定されている。
【0194】
[00282] 実施例12
[00283] 急性−非ST上昇型心筋梗塞を伴う心血管患者の処置
[00284] 胸部中央ならびに肩、腕、首、顎および背に不快な圧迫感、締付け感および痛みを4時間以上伴う、55歳の男性が来院している。彼は息切れも訴えている。彼を救急室で評価して、トロポニンIが上昇していることが分かり、彼のEKGは心筋虚血と一致した変化を立証する。彼にアスピリン、クロピドグレル、ナイトレート類および静脈内ヘパリンを投与し、カテーテル導入検査室へ収容した。血管造影法で評価した後、彼は左冠動脈前下行枝の<90%閉塞を生じていると診断された。この患者に、有効量のINV−75(1.0〜100mg/kg)を含む組成物をカテーテル導入検査室で投与する。患者は胸痛、息切れの改善を報告している。彼を再び血管造影法で評価して、動脈のプラーク減少が測定されている。
【0195】
[00285] 実施例13
[00286] 急性ST上昇型心筋梗塞を伴う患者の処置
[00287] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴う動悸を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は急性ST上昇型心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を静脈内投与する。この組成物を場合により、血栓溶解薬、たとえば組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)またはストレプトキナーゼなどの療法、ならびにアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れおよび動悸の改善を報告している。
【0196】
[00288] 実施例14
[00289] 急性ST上昇型心筋梗塞を伴う患者の処置
[00290] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴う動悸を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は急性ST上昇型心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 7465)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を静脈内投与する。この組成物を場合により、血栓溶解薬、たとえば組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)またはストレプトキナーゼなどの療法、ならびにアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れおよび動悸の改善を報告している。
【0197】
[00291] 実施例15
[00292] 急性ST上昇型心筋梗塞を伴う患者の処置
[00293] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴う動悸を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は急性ST上昇型心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 7065)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を静脈内投与する。この組成物を場合により、血栓溶解薬、たとえば組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)またはストレプトキナーゼなどの療法、ならびにアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、および/またはヘパリン、あるいはその組合わせの投与(当業者に既知の投与量を使用)と併わせて投与する。患者は胸痛、息切れおよび動悸の改善を報告している。
【0198】
[00294] 実施例16
[00295] 最近の心筋梗塞を伴う患者の処置(二次予防)
[00296] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴う動悸を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、アスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、静脈内ヘパリンなどの療法を施し、カテーテル導入検査室へ収容して、そこで冠動脈のステント挿入を受けさせた。彼を12〜24時間回復させた。3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75)(1.0〜100mg/kg)による経口療法を開始し、少なくとも1年間続ける。経過観察来院中、1カ月後に、患者は症状の改善を報告している。
【0199】
[00297] 実施例17
[00298] 最近の心筋梗塞を伴う患者の処置(二次予防)
[00299] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴う動悸を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、アスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、静脈内ヘパリンなどの療法を施し、カテーテル導入検査室へ収容して、そこで冠動脈のステント挿入を受けさせた。彼を12〜24時間回復させた。3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 7065)(1.0〜100mg/kg)による経口療法を開始し、少なくとも1年間続ける。経過観察来院中、1カ月後に、患者は症状の改善を報告している。
【0200】
[00300] 実施例18
[00301] 最近の心筋梗塞を伴う患者の処置(二次予防)
[00302] 典型的に左腕または首の左側へ放散する突然の胸痛、息切れ、吐き気、および嘔吐と発汗を伴って、50歳の男性が来院している。心電図(EKG、ECG)、胸部X線、および心臓マーカーの上昇を検出するための血液検査(心筋損傷を検出するための血液検査)で評価した後、彼は心筋梗塞を罹患していると診断された。この患者に、アスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル、スタチン類、静脈内ヘパリンなどの療法を施し、カテーテル導入検査室へ収容して、そこで冠動脈のステント挿入を受けさせた。彼を12〜24時間回復させた。3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 7465)(1.0〜100mg/kg)による経口療法を開始し、少なくとも1年間続ける。経過観察来院中、1カ月後に、患者は症状の改善を報告している。
【0201】
[00303] 実施例19
[00304] 慢性心筋梗塞を伴う患者の処置(二次予防)
[00305] 1年前の心臓発作(心筋梗塞)の前歴をもつ50歳の男性が、評価のために来院している。彼は無症状である。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を投与する。別療法には、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)が含まれる。この組成物を場合によりアスピリン、血小板凝集傾向を低下させる薬物、たとえば二硫酸クロピドグレル(clopidogrel bisulfate)、スタチン類、エゼチミベ、アンギオテンシン変換酵素阻害薬またはアンギオテンシン受容体遮断薬、および他の抗高血圧症薬、たとえばベータ遮断薬(当業者に既知の投与量を使用)などの療法と併わせて投与する。患者には、総コレステロールおよびLDLコレステロールにおける追加の有益性、ならびに炎症マーカー、たとえばC反応性タンパク質の減少が認められる。
【0202】
[00306] 実施例20
[00307] 慢性安定狭心症を伴う慢性心筋梗塞患者の処置
[00308] 10年前の心臓発作(心筋梗塞)の前歴をもつ50歳の男性が、評価のために来院している。彼は、舌下ニトログリセリン1錠で軽減する狭心症性胸痛を訴えており、これらの痛みを慢性的に伴う。この患者に、有効量の3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)(1.0〜100mg/kg)を含む組成物を投与する。別療法には、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)が含まれる。患者には、投薬を2週間受けた後、この計画により胸痛における追加の有益性が認められる。
【0203】
[00309] 実施例21
[00310] ヒトにおける定着したアテローム硬化症を治療するための本発明化合物の投与
[00311] 冠動脈、頚動脈または末梢動脈にプラークの証拠がある定着したアテローム硬化症を伴う個体は、将来の心血管事象、たとえば心臓発作および卒中のリスクがあることが知られている。これらの個体を、スタチン類、および抗高血圧症薬、たとえばACE阻害薬、利尿薬またはカルシウムチャンネル遮断薬で治療する。彼らには、許容できるキャリヤー中の許容量の本発明化合物を含む組成物をも、12カ月を超える長期間、経口投与する。ある試験では、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)をこれらの個体に投与する。治療期間の終了時に再びIVUS測定を行なって、標的血管における冠動脈アテローム硬化症に対する本発明組成物の注入効果を評価する。治療後にアテローム硬化症の冠動脈においてプラークが減少し、アテローム硬化症に対するこれらの本発明化合物の有効性が立証されている。
【0204】
[00312] 実施例22
[00313] ヒトにおけるアテローム硬化症を処置するための本発明化合物の投与(一次予防)
[00314] アテローム硬化症のリスク因子、たとえば家族歴、高血圧症および高コレステロール血症を伴う個体は、将来の心血管事象、たとえば心臓発作および卒中のリスクがあることが知られている。これらの個体に、一次予防処置、たとえば脂質低下薬療法、たとえばスタチン類、アスピリン、および抗高血圧症薬、たとえばACE阻害薬、利尿薬またはカルシウムチャンネル遮断薬を施す。彼らには、許容できるキャリヤー中の許容量の本発明化合物を含む組成物をも、12カ月を超える長期間、経口投与する。ある試験では、3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)をこれらの個体に投与する。治療期間の終了時に再びIVUS測定を行なって、標的血管における冠動脈アテローム硬化症に対する本発明組成物の注入効果を評価する。治療後にアテローム硬化症の冠動脈においてプラークが減少し、アテローム硬化症に対するこれらの本発明化合物の有効性が立証される。
【0205】
[00315] 実施例23
[00316] ヒトにおけるアテローム硬化症の発症を予防または遅延するための本発明化合物の投与
[00317] アテローム硬化症のリスク因子が立証され、高い血漿コレステロールレベルをもつ個体の冠動脈の超音波分析(IVUS)、頸動脈の超音波分析(IMT)または膝窩動脈の超音波分析を行なって、ベースライン測定値を確立する。これらの個体の一部に、許容できるキャリヤー中の本発明化合物を含む組成物を1日1回、2mg/kg〜50mg/kgの用量で静脈内(iv)または筋肉内(im)に週1〜3回、約1〜6カ月の期間にわたって投与する。下記の化合物をこれらの個体に投与する:3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)。他の個体にはキャリヤーのみを投与する。処置期間の終了時に行なった新たな超音波分析は、キャリヤーを投与された個体の血管においてプラークのレベルがより高いことを示す。この例は、本発明の個々の化合物が、アテローム硬化症を発症するリスクのある個体においてアテローム硬化症を予防または軽減し、かつ冠動脈、頸動脈または膝窩動脈におけるプラーク蓄積を低下させるのに有効であることを示す。
【0206】
[00318] 実施例24
[00319] I型およびII型糖尿病を伴う患者を処置するための本発明化合物の投与
[00320] I型およびII型糖尿病を伴う個体は、将来の心血管事象、たとえば心臓発作、卒中および腎疾患のリスクがある。これらの個体に予防処置、たとえば脂質低下薬療法、たとえばスタチン類、および抗高血圧症薬、たとえばACE阻害薬を施す。彼らは既に血糖低下療法、たとえばインスリン、PPARγ薬、メトホルミン(Metformin)またはスルホニル尿素療法を受けている。彼らには、許容できるキャリヤー中の許容量の本発明化合物を含む組成物をも、12カ月を超える長期間、経口投与する。ある試験では、3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)をこれらの個体に投与する。患者は下記の測定を受ける:血糖管理を評価するためのHbA1C、尿ミクロアルブミン尿、血圧および脂質の測定。12カ月の処置の終了時に、HbA1Cおよび尿ミクログロブリン尿が低下している。これらのいずれの処置によってもVLDLコレステロールが改善し、トリグリセリドが減少する[(3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75);3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)または3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)]。
【0207】
[00321] 実施例25
[00322] I型およびII型糖尿病を伴う患者において異脂肪血症を処置するための本発明化合物の投与
[00323] I型およびII型糖尿病を伴う個体は、将来の心血管事象、たとえば心臓発作、卒中および腎疾患のリスクがある。これらの個体はしばしば脂質異常、たとえばトリグリセリドおよびVLDLコレステロールの増加がある。彼らを、血糖低下療法、たとえばインスリン、PPARγ薬、メトホルミンまたはスルホニル尿素療法と併せて、コレステロールレベル低下のための脂質低下薬療法、たとえばスタチン類およびフィブレート類(ゲムフィブロジル(Gemfibrozil)またはフェノフィブレート(Fenofibrate))などで処置する。これらの処置のほかに、彼らには、許容できるキャリヤー中の許容量の本発明化合物を含む組成物をも、12カ月を超える長期間、経口投与する。ある試験では、(3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV 73);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV 74);3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75)をこれらの個体に投与する。患者は、ベースラインおよび12カ月の処置の終了時に脂質測定を受ける。12カ月の処置の終了時には、VLDLコレステロールが低下し、トリグリセリドが減少する。
【0208】
[00324] 実施例26
[00325] 炎症性関節炎を処置するための本発明化合物の投与
[00326] リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎および全身性エリテマトーデスを伴う個体は、炎症性関節炎の再発がある。彼らは、通常は非ステロイド系薬剤、たとえばシクロオキシゲナーゼ阻害薬、抗TNFα処置および他のタイプの免疫療法で処置される。これらの処置のほかに、彼らには、許容できるキャリヤー中の許容量の本発明化合物を含む組成物をも、6カ月を超える長期間、経口投与する。ある試験では、3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV 75)をこれらの個体に投与する。患者は、関節痛、および炎症マーカー、たとえばC反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度の評価を受ける。6カ月の処置終了時には、関節痛および炎症マーカーが顕著に改善されている。
【0209】
[00327] 前記に引用したすべての特許、刊行物および抄録の全体を本明細書に援用する。以上の記載は本発明の好ましい態様にすぎず、特許請求の範囲に定めた本発明の精神および範囲から逸脱することなく多数の改変または変更をなしうることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む化合物:
【化1】

[式中:
は、アセチル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、水素、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、または異性体形フェルリルであり;
は、存在しないか、あるいは下記のものであり:NO、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、炭素原子1〜8個の分枝鎖アルキル、アセチル、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、複素環であってイミダゾール、キナリン、イソキナリン、チアゾリジンジオン、ピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、カルボキシル、メチルエステル、エチルエステル、炭素原子1〜3個の脂肪族アミド、脂環式アミドであってピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、芳香族アミドであってアニリンおよび置換アニリンからなる群から選択されるもの、アミン、炭素原子1〜3個のアルキル化アミン、リポ酸もしくはジヒドロリポ酸を介したアミド官能基、芳香族酸であってフェルラ酸およびケイ皮酸からなる群から選択されるもの、複素環式アミドであってプロリン、置換プロリンもしくはピペコリン酸から誘導されるもの、またはハロゲン;
は、存在しないか、あるいは下記のものである:炭素原子1〜3個の直鎖アルキル基、炭素原子3〜5個の分枝鎖アルキル基、アルキル基であって下記の官能基を有するもの:遊離カルボン酸、エステルもしくはアミド、遊離ヒドロキシル誘導体もしくはアルキル化エーテル誘導体、炭素原子1〜3個のアルキル基であって下記から選択される官能基を有するもの:アミンおよびアルキル化アミン、脂肪族アミド、芳香族アミド、もしくは複素環式アミドであってイミダゾール、キノリン、イソキノリン、チオゾリンおよびピペラジンからなる群から選択されるもの、またはハロゲン化された基]
ただし、化合物は3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV−73)、3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV−74)、または3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV−75)ではない。
【請求項2】
3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065):
【化2】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465):
【化3】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
【化4】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
【化5】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化6】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
【化7】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
【化8】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化9】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
【化10】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
【化11】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
【化12】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
【化13】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
【化14】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
【化15】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
【化16】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
【化17】

を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物を含み、さらに、リポ酸、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、脂肪取込み阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、PPARαアゴニスト、PPARγアゴニスト、アセチルサリチル酸、血小板凝集の阻害薬、コレステリルエステル輸送タンパク質阻害薬、チアゾリジンジオン、ナイアシン、フィブレート、凝血塊形成の阻害薬もしくはベータ遮断薬、またはその組合わせから選択される1種類以上の療法用化合物を含有する組成物。
【請求項20】
患者において、心血管疾患、血管疾患、炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者を治療または予防する方法であって、下記を含む化合物:
【化18】

[式中:
は、アセチル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、水素、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、または異性体形フェルリルであり;
は、存在しないか、あるいは下記のものであり:NO、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、炭素原子1〜8個の分枝鎖アルキル、アセチル、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、複素環であってイミダゾール、キナリン、イソキナリン、チアゾリジンジオン、ピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、カルボキシル、メチルエステル、エチルエステル、炭素原子1〜3個の脂肪族アミド、脂環式アミドであってピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、芳香族アミドであってアニリンおよび置換アニリンからなる群から選択されるもの、アミン、炭素原子1〜3個のアルキル化アミン、リポ酸もしくはジヒドロリポ酸を介したアミド官能基、芳香族酸であってフェルラ酸およびケイ皮酸からなる群から選択されるもの、複素環式アミドであってプロリン、置換プロリンもしくはピペコリン酸から誘導されるもの、またはハロゲン;
は、存在しないか、あるいは下記のものである:炭素原子1〜3個の直鎖アルキル基、炭素原子3〜5個の分枝鎖アルキル基、アルキル基であって下記の官能基を有するもの:遊離カルボン酸、エステルもしくはアミド、遊離ヒドロキシル誘導体もしくはアルキル化エーテル誘導体、炭素原子1〜3個のアルキル基であって下記から選択される官能基を有するもの:アミンおよびアルキル化アミン、脂肪族アミド、芳香族アミド、もしくは複素環式アミドであってイミダゾール、キノリン、イソキノリン、チオゾリン、およびピペラジンからなる群から選択されるもの、またはハロゲン化された基]
を医薬的に許容できるキャリヤーと共に含む組成物を患者に投与し、
その際、組成物の投与により、患者において、心血管疾患、血管疾患、炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病が、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者が治療または予防される方法。
【請求項21】
が水素であり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
がアセチルであり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
がリポイルであり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
化合物が
3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV−73)、
3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV−74)、
3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV−75)、
3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)または
3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)
である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
さらに、リポ酸、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、脂肪取込み阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、PPARアルファアゴニスト、PPARガンマアゴニスト、アセチルサリチル酸、血小板凝集の阻害薬、コレステリルエステル輸送タンパク質阻害薬、チアゾリジンジオン、ナイアシン、フィブレート、凝血塊形成の阻害薬もしくはベータ遮断薬、またはその組合わせを投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)の製造方法であって、下記の逐次工程を含む方法:
ジメチルアミノピリジンおよび3,4−メチレンジオキシフェノールとハロゲン化溶媒を窒素雰囲気下で混合して混合物を調製し;
アルファリポ酸を混合物に添加し;
結合試薬を混合物に添加し;
混合物を撹拌し;そして
ハロゲン化溶媒を除去する。
【請求項27】
3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)の製造方法であって、下記の逐次工程を含む方法:
トリエチルアミンおよび3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェノールとハロゲン化溶媒を混合して混合物を調製し;
アルファリポ酸を混合物に添加し;
結合試薬を混合物に添加し;
混合物を撹拌し;そして
ハロゲン化溶媒を除去する。
【請求項28】
さらに、3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)を精製することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
さらに、3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)を精製することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
その必要がある対象を処置する方法であって、その処置を必要とする対象にNF−κBのp65サブユニットの発現を調節する薬剤を心血管状態の処置に有効な量で投与し、その際、薬剤が式1の化合物を含む方法。
【請求項31】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてLDL受容体発現を増大させるための組成物。
【請求項32】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象において、PPARαまたはPPARγに対しては作用しない選択的様式でPPARアルファのリガンド結合活性を増大させるための組成物。
【請求項33】
その必要がある対象において心臓、血管、炎症、I型およびII型糖尿病、ならびに/あるいは異脂肪血症の症状を改善するのに十分な有効量のINV−75を含む食事サプリメント。
【請求項34】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてプラークの進行速度を低下させるための組成物。
【請求項35】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてマクロファージの浸潤を阻害するための組成物。
【請求項36】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象において平滑筋含量を増大させるための組成物。
【請求項37】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてLDL受容体発現の増大によりLDLクリアランスを増大させるための組成物。
【請求項38】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてアンギオテンシンIIによる大動脈収縮を低下させるための組成物。
【請求項39】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてアセチルコリン依存性血管拡張を調節するための組成物。
【請求項40】
有効量のINV−75またはその薬理活性類似体を含む、抗炎症組成物。
【請求項41】
有効量の請求項3に記載の化合物(INV−7065)またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてプラーク負荷を減弱させるための組成物。
【請求項42】
有効量の請求項3に記載の化合物(INV−7065)またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてアルファ受容体アゴニストに対する血管収縮性を低下させ、および/または血管のインスリン感受性を増大させるための組成物。
【請求項43】
有効量の請求項3に記載の化合物(INV−7065)またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象において大動脈壁の脂質沈着を低下させるための組成物。
【請求項44】
有効量の請求項3に記載の化合物(INV−7065)またはその薬理活性類似体を含む、その必要がある対象においてトリグリセリド(TG)レベルを低下させるための組成物。
【請求項45】
有効量の少なくとも1種類の請求項1に記載の化合物またはその薬理活性類似体を含む、抗炎症組成物。
【請求項46】
少なくとも1種類の請求項1に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、その必要がある対象においてヒトの大動脈プラーク形成を処置するための医薬組成物。
【請求項47】
その必要がある対象においてプラーク形成を低下させるための方法であって、有効量の少なくとも1種類の請求項1に記載の化合物および医薬的に許容できるキャリヤーを投与する段階を含む方法。
【請求項48】
患者において、心血管疾患、血管疾患、炎症性疾患、ならびにI型およびII型糖尿病を、ならびに高血圧症、卒中、心血管疾患および腎疾患のリスクを伴う異脂肪血症患者を治療または予防するために有用な医薬の調製における、下記を含む化合物の使用:
【化19】

[式中:
は、アセチル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、水素、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、または異性体形フェルリルであり;
は、存在しないか、あるいは下記のものであり:NO、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、炭素原子1〜8個の分枝鎖アルキル、アセチル、リポイル、ジヒドロリポイル、フェルリル、複素環であってイミダゾール、キナリン、イソキナリン、チアゾリジンジオン、ピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、カルボキシル、メチルエステル、エチルエステル、炭素原子1〜3個の脂肪族アミド、脂環式アミドであってピロリドンおよびピペリジンからなる群から選択されるもの、芳香族アミドであってアニリンおよび置換アニリンからなる群から選択されるもの、アミン、炭素原子1〜3個のアルキル化アミン、リポ酸もしくはジヒドロリポ酸を介したアミド官能基、芳香族酸であってフェルラ酸およびケイ皮酸からなる群から選択されるもの、複素環式アミドであってプロリン、置換プロリンもしくはピペコリン酸から誘導されるもの、またはハロゲン;
は、存在しないか、あるいは下記のものである:炭素原子1〜3個の直鎖アルキル基、炭素原子3〜5個の分枝鎖アルキル基、アルキル基であって下記の官能基を有するもの:遊離カルボン酸、エステルもしくはアミド、遊離ヒドロキシル誘導体もしくはアルキル化エーテル誘導体、炭素原子1〜3個のアルキル基であって下記から選択される官能基を有するもの:アミンおよびアルキル化アミン、脂肪族アミド、芳香族アミド、もしくは複素環式アミドであってイミダゾール、キノリン、イソキノリン、チオゾリン、およびピペラジンからなる群から選択されるもの、またはハロゲン化された基]。
【請求項49】
が水素であり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
がアセチルであり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
がリポイルであり、RがNOであるかまたは存在しない、請求項34に記載の使用。
【請求項52】
化合物が
3,4−メチレンジオキシフェニルアセテート(INV−73)、
3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェノール(INV−74)、
3,4−メチレンジオキシ−6−ニトロフェニルアセテート(INV−75)、
3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(INV−7065)または
3,4−メチレンジオキシ 6−ニトロフェニルリポエート(INV−7465)
である、請求項48に記載の使用。
【請求項53】
さらに、1種類以上の療法用化合物を医薬に添加することを含む、請求項48に記載の使用。
【請求項54】
1種類以上の療法用化合物が、リポ酸、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、脂肪取込み阻害薬、アンギオテンシン受容体遮断薬、PPARαアゴニスト、PPARαアゴニスト、アセチルサリチル酸、血小板凝集の阻害薬、コレステリルエステル輸送タンパク質阻害薬、チアゾリジンジオン、ナイアシン、フィブレート、凝血塊形成の阻害薬もしくはベータ遮断薬、またはその組合わせを含む、請求項53に記載の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図31D】
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【図1A】
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【図1B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図8】
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【図30】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図32E】
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【公表番号】特表2011−530525(P2011−530525A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522226(P2011−522226)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052893
【国際公開番号】WO2010/017323
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(510149460)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (10)
【出願人】(511033036)インバスク・セラピューティック・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】