説明

新規な光学樹脂材料

【課題】光通信領域の光に対して吸収が小さく電気光学効果による屈折率の変化の大きい、光制御デバイス材料として有用な新規な光学樹脂材料を提供する。
【解決手段】主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体に電気光学効果を有する化合物が分散または結合されてなる光学樹脂材料。たとえば、下記モノマー単位(A11)と下記モノマー単位(M11)を含む含フッ素重合体を含む被膜からなる電気光学効果を有する光学樹脂材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用の光学材料(光ファイバー、光導波路等)の分野において、光の波長、光の位相等を制御する光制御デバイスの材料として、外界から電場を印加したときに屈折率が変化する効果(以下、電気光学効果またはEO効果ともいう。)を有する化合物と有機高分子を複合化させてなる光非線形性を有する光学樹脂材料が提案されている(特許文献1など参照)。また、該光学樹脂材料における有機高分子として、含フッ素ポリ(メタ)アクリレートを用いる提案もされている(特許文献2参照)。
【0003】
しかし、これらの文献に記載の光学樹脂材料は、光通信領域の光に対して吸収が大きい有機高分子を用いるため光伝送損失が大きい問題がある。また、該有機高分子の屈折率が大きいため電気光学効果による屈折率の変化が小さい問題がある。
【0004】
光通信領域の光に対して吸収が小さくかつ屈折率が低い有機高分子として主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体が知られているが、該重合体は他の化合物と相溶性に乏しい。そのため、該重合体を他の化合物と複合化させた材料としては、該重合体と特定の色素からなる光吸収性フィルムが知られるにとどまる(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平02−183234号公報
【特許文献2】米国特許第6610219号明細書
【特許文献3】特開平06−340790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光通信領域の光に対して吸収が小さくかつ電気光学効果による屈折率の変化の大きい光学樹脂材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体(I)に電気光学効果を有する化合物(II)が分散または結合されてなることを特徴とする光学樹脂材料を提供する。
上記含フッ素重合体(I)は、環化重合しうる含フッ素脂肪族ジエンに由来する環状モノマー単位、または、脂肪族環を構成する2つの炭素原子間もしくは脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環を構成しない炭素原子との間に重合性不飽和基を有する含フッ素環状モノマーに由来する環状モノマー単位、を含む含フッ素重合体であることが好ましい。また、上記光学樹脂材料は、反応性基を有する前記含フッ素重合体(I)の該反応性基に前記化合物(II)を化学結合させてなるものであることが好ましい。
【0008】
さらに、上記化合物(II)は、10−30esu以上の超分子分極率を有する化合物であることが好ましい。また、上記化合物(II)は、下式(eo)で表される化合物の少なくとも1つであることが好ましい。
A−[(Z−(Y−(Z−(Y−D (eo)
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
d、e、fおよびg:それぞれ独立に、0〜4の整数であり、少なくとも1つは1である。
h:1以上の整数。
A:電子吸引性基。
D:電子供与性基。
およびZ:それぞれ独立に、環状共役系の2価連結基。
およびY:それぞれ独立に、鎖状共役系の2価連結基。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学樹脂材料は、化学的に安定であり、光通信領域の光に対して吸収が小さくかつ低屈折率な含フッ素重合体(I)に任意の量の電気光学効果を有する化合物(II)が分散または結合されてなる。そのため本発明の光学樹脂材料は、光伝送損失が小さくかつ任意の屈折率を有する、光非線形性を有する光学樹脂材料となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と、式(a)で表されるモノマー単位をモノマー単位(a)と、記す。他の式で表される化合物やモノマー単位も同様に示す。
【0011】
本発明の光学樹脂材料は、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体(I)に電気光学効果を有する化合物(II)が分散または結合されてなる。
「分散されてなる」とは、含フッ素重合体(I)中に化合物(II)が化学結合を介することなく分散している状態をいう。「結合されてなる」とは、含フッ素重合体(I)と化合物(II)とが化学結合(水素結合および/または共有結合)を介して結合されている状態をいう。「分散または結合されてなる」とは、化合物(II)が含フッ素重合体(I)に、分散している状態と化学結合している状態が並存した状態をも含む。化合物(II)の量や種類を任意に設定できる観点から、本発明の光学樹脂材料は、含フッ素重合体(I)に化合物(II)が、実質的に全て化学結合してなるか、または一部化学結合し他の一部が分散してなるものが好ましい。
【0012】
主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体(I)は、炭素原子に結合した水素原子を実質的に含まない含フッ素重合体であることが好ましい。特に、炭素原子に結合した水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたペルフルオロ重合体、および、該ペルフルオロ重合体のフッ素原子の少数が塩素原子に置換されたペルフルオロクロロ重合体が好ましい。
【0013】
含フッ素重合体(I)の主鎖は炭素原子からなる。この主鎖の炭素原子は、付加重合性の炭素原子/炭素原子不飽和二重結合を有するモノマーにおける該不飽和二重結合を構成した2個の炭素原子に由来する。モノマーが重合性モノエンの場合はその不飽和二重結合の2個の炭素原子から重合体の主鎖が形成され、モノマーが後述環化重合しうるジエンの場合はその2つ不飽和二重結合の4個の炭素原子から重合体の主鎖が形成される。
【0014】
「主鎖に脂肪族環を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子の少なくとも1つが重合体の主鎖の炭素原子であることを意味し、「主鎖に含フッ素脂肪族環を有する」とは、該脂肪族環を構成する炭素原子(主鎖の炭素原子以外であってもよい)にはフッ素原子が結合していることを意味する。含フッ素脂肪族環の環は4〜7個の原子で構成される環であることが好ましく、その環を構成する原子は炭素原子のみからなるか、炭素原子と酸素原子または窒素原子とで構成されることが好ましい。特に、1または2個の酸素原子と炭素原子で構成される合計原子数5または6の環が好ましい。
【0015】
環化重合しうる脂肪族ジエンに由来するモノマー単位(脂肪族環を有する主鎖を構成するモノマー単位)を、以下モノマー単位(A)という。脂肪族環を構成する2つの炭素原子間に重合性不飽和基を有する環状モノマーに由来するモノマー単位を、以下モノマー単位(B)という。脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環を構成しない炭素原子との間に重合性不飽和基を有する環状モノマーに由来するモノマー単位を、以下モノマー単位(C)という。これらモノマー単位(A)〜モノマー単位(C)を総称して「環状モノマー単位」という。
【0016】
含フッ素重合体(I)は、含フッ素脂肪族環を有する、モノマー単位(A)、モノマー単位(B)またはモノマー単位(C)を有する。含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(A)は、環化重合しうる含フッ素脂肪族ジエンに由来するモノマー単位である。含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(B)は、脂肪族環を構成する2つの炭素原子間に重合性不飽和基を有する含フッ素環状モノマーに由来するモノマー単位であり、含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(C)は、脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環を構成しない炭素原子との間に重合性不飽和基を有する含フッ素環状モノマーに由来するモノマー単位である。
【0017】
これら環状モノマー単位は、環を構成しない主鎖の炭素原子を含んでいてもよい。すなわち、モノマー単位(A)の場合、主鎖を構成する4個の炭素原子の内1〜2個の炭素原子は脂肪族環の環を構成する炭素原子ではないことがありうる。同様に、モノマー単位(C)では、主鎖を構成する2個の炭素原子の内1個の炭素原子は脂肪族環の環を構成する炭素原子ではない。
【0018】
これら環状モノマー単位中の炭素原子に結合した水素原子の数と炭素原子に結合したフッ素原子の数の合計に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合は、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。また環状モノマー単位中のフッ素原子の1〜4個(ただし全フッ素原子の数の1/2以下である。)は、塩素原子により置換されていてもよい。
【0019】
含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(A)としては、下記モノマー単位(A1)、下記モノマー単位(A2)または下記モノマー単位(A3)が好ましい。含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(B)としては下記モノマー単位(B1)が好ましく、含フッ素脂肪族環を有するモノマー単位(C)としては下記モノマー単位(C1)が好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
Q:−CF−、−CF(CF)−、−CFCF−、−CFCCl−、−CF(CF)CF−、−CFCF(CF)−または−O−C(CF−(ただし、この酸素原子は炭素原子に結合する。)。
:フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基。
およびR:それぞれ独立に、フッ素原子またはトリフルオロメチル基。
およびR:それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜7のペルフルオロアルキル基。
【0022】
本発明における含フッ素重合体(I)は、上記モノマー単位(A1)、上記モノマー単位(A2)、上記モノマー単位(A3)、上記モノマー単位(B1)および上記モノマー単位(C1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含フッ素環状モノマー単位を有する重合体が好ましい。また、これら含フッ素環状モノマー単位以外に他の環状モノマー単位を含んでいてもよい。さらに、これら環状モノマー単位以外に他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、非環状モノマー単位であってもよい。非環状モノマー単位としては脂肪族環を含まないモノエンに由来するモノマー単位が好ましい。他の環状モノマー単位や非環状モノマー単位はフッ素原子を有するモノマー単位であることが好ましい。
【0023】
本発明における含フッ素重合体(I)中の全モノマー単位に対する環状モノマー単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。特に含フッ素重合体(I)の透明性の観点から好ましい環状モノマー単位の割合は、50〜100モル%であり、最も好ましくは80〜100モル%である。
【0024】
さらに好ましい含フッ素重合体(I)は、上記モノマー単位(A1)、上記モノマー単位(A2)、上記モノマー単位(A3)、上記モノマー単位(B1)および上記モノマー単位(C1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の含フッ素環状モノマー単位を、全モノマー単位に対して50モル%以上、特に80モル%以上、有する含フッ素重合体である。
【0025】
含フッ素重合体(I)の数平均分子量(M)は、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜200,000が特に好ましい。
【0026】
本発明における含フッ素重合体(I)中の炭素原子に結合した水素原子の数と炭素原子に結合したフッ素原子の数の合計に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合は、80%以上が好ましく、100%が特に好ましい。含フッ素重合体(I)が塩素原子を含む場合は、炭素原子に結合した水素原子の数と炭素原子に結合した塩素原子の数と炭素原子に結合したフッ素原子の数の合計に対する炭素原子に結合した塩素原子の数の割合は、20モル%以下が好ましい。
【0027】
本発明の光学樹脂材料においては、電気光学効果を有する化合物(II)が含フッ素重合体(I)に結合されていることが好ましい。このため、化合物(II)と反応しうる反応性基を有する含フッ素重合体(I)をあらかじめ製造し、この含フッ素重合体(I)の該反応性基に化合物(II)を化学的結合させて光学樹脂材料とすることが好ましい。この場合、前記のように、化合物(II)の一部は反応性基に反応せずに含フッ素重合体(I)中に分散していてもよい。
【0028】
含フッ素重合体(I)中の反応性基とは、化合物(II)と反応して水素結合および/または共有結合を形成しうる基、または、化合物(II)と反応して塩を形成しうる基をいう。反応性基としては、スルホン酸基、フルオロスルホニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基が好ましく、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基または水酸基がより好ましい。含フッ素重合体(I)中の反応性基の量としては、1gの含フッ素重合体(I)に対して0.1〜3.3mmolであることが好ましく、特に0.2〜1.5mmolであることが好ましい。
【0029】
化合物(II)と反応しうる反応性基を有する含フッ素重合体(I)としては、反応性基を有するモノマー単位を有する含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体(I−1)という。)や重合体鎖の末端に反応性基を有する含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体(I−2)という。)が好ましい。含フッ素重合体中の反応性基の量を任意に制御できる観点から、含フッ素重合体(I−1)が特に好ましい。
【0030】
含フッ素重合体(I−1)中の全モノマー単位に対する反応性基を有するモノマー単位の割合は、0.1〜50モル%が好ましく、0.5〜20モル%が特に好ましい。含フッ素重合体(I−1)中の全モノマー単位に対する環状モノマー単位の割合は、50〜99.9モル%が好ましく、80〜99.5モル%が特に好ましい。なお、含フッ素重合体(I−1)中の反応性基を有するモノマー単位の割合はNMRにより定量できる。
【0031】
反応性基を有するモノマー単位は、環状モノマー単位であっても非環状モノマー単位であってもよい。また、反応性基を有するモノマー単位は、反応性基となりうる基を有するモノマーを重合した後、反応性基となりうる基を反応性基に化学変換して形成することができる。たとえば、アルコキシカルボニル基を有するモノマーを共重合した後、重合体中のアルコキシカルボニル基をカルボキシル基に変換して、カルボキシル基含有モノマー単位を有する含フッ素重合体(I−1)を製造できる。
【0032】
含フッ素重合体(I−2)は、たとえば、含フッ素重合体を酸素ガス存在下に高温処理して重合体鎖の末端をフルオロカルボニル基に変換し、つぎに該フルオロカルボニル基を反応性基に化学変換して得られる。また、反応性基や反応性基となりうる基を有する重合開始剤や連鎖移動剤の存在下に重合し、反応性基となりうる基である場合はその後反応性基に化学返還して、得られる。
【0033】
含フッ素重合体(I)は、環状モノマー単位を形成しうるモノマー(以下、「環形成モノマー」という)の少なくとも1種を重合して得られる。環形成モノマーとともに非環状モノマー単位を形成するモノマーの少なくとも1種を少量共重合することによっても得られる。上記含フッ素重合体(I−1)としては、反応性基や反応性基となりうる基を有する、環形成モノマー以外のモノマーを環形成モノマーと共重合して得ることが好ましい。
【0034】
環形成モノマーとしては、下記モノマー(a)、下記モノマー(b)および下記モノマー(c)が好ましい。下記モノマー(a)からは前記モノマー単位(A1)、モノマー単位(A2)およびモノマー単位(A3)から選ばれる少なくとも1つの環状モノマー単位が形成される。また、下記モノマー(b)から前記モノマー単位(B1)が形成され、下記モノマー(c)から前記モノマー単位(C1)が形成される(ただし、Q、R、R、R、RおよびRは前記と同じ意味を示す。)。なお、下記モノマー(a)は、前記環化重合しうる含フッ素脂肪族ジエンの1種である。
CF=CF−Q−O−CF=CF (a)
【0035】
【化2】

【0036】
モノマー(a)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
CF=CFCFOCF=CF
CF=CFCFCFOCF=CF
CF=CFCFCClOCF=CF
CF=CFCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFCFCF(CF)OCF=CF
【0037】
モノマー(b)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0038】
【化3】

【0039】
モノマー(c)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0040】
【化4】

【0041】
化合物(II)と反応しうる反応性基を有するモノマー単位を形成するための含フッ素モノマーとしては、スルホン酸基、フルオロスルホニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する含フッ素モノマーが好ましく、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基または水酸基を有する含フッ素モノマーがより好ましい。
【0042】
化合物(II)と反応しうる反応性基を有する含フッ素モノマー、または化学変換により該反応性基となりうる基を有する含フッ素モノマー、の具体例としては、下記の含フッ素モノマーが挙げられる。
CF=CFCOOH、
CF=CFCOOCH
CF=CFCHOH、
CF=CFOCFCFCFCOOH、
CF=CFOCFCFCFCOOCH
CF=CFOCFCFCFCHOH、
CF=CFOCFCFSOF、
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOF、
CF=CFOCFCFSOH、
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOH。
【0043】
含フッ素重合体(I)は、上記環形成モノマーの2種以上を重合して製造することもでき、また上記環形成モノマーの2種以上と上記反応性基等を有するモノマーとを共重合することによっても製造することができる。さらに、環形成モノマー以外のモノマーとして、上記反応性基等を有するモノマー以外に、上記のような反応性基等を有しないモノマーを使用し、環形成モノマーと共重合させ含フッ素重合体(I)を製造することもできる。この他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)などの水素原子を有しないポリフルオロモノエン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、(ペルフルオロアルキル)ビニルエーテルなどの水素原子を有するフルオロモノエンなどがある。特に、モノマー(b)やモノマー(c)はテトラフルオロエチレンなどの水素原子を有しないポリフルオロモノエンと共重合させることが好ましい。
【0044】
また、共重合性のモノマーとして化合物(II)の残基を有するモノマーを使用することもできる。この化合物(II)の残基を有するモノマーを環形成モノマーと共重合させることにより、含フッ素重合体(I)と化合物(II)とが結合されている光学樹脂材料が得られる。
【0045】
本発明における電気光学効果を有する化合物(II)としては、外部から電場を印加したときに屈折率が変化する現象を有する化合物であれば、特に限定されない。化合物(II)は含フッ素重合体(I)に結合されてなることが好ましい観点から、含フッ素重合体(I)の反応性基と反応しうる基を有する化合物(II)が好ましい。含フッ素重合体(I)の反応性基と反応しうる基とは、含フッ素重合体(I)の反応性基と反応して水素結合および/または共有結合を形成しうる基、または、含フッ素重合体(I)の反応性基と塩を形成しうる基をいう。
【0046】
化合物(II)中の上記反応しうる基としては、スルホン酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、ポリフルオロアシロキシ基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基が好ましく、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、ポリフルオロアシロキシ基または水酸基がより好ましい。また化合物(II)は、含フッ素重合体(I)との相溶性の観点から、フッ素原子を有するのが好ましい。
【0047】
本発明における化合物(II)としては、10−30esu以上の超分子分極率(以下、βとも記す。)を有する化合物が好ましい。超分子分極率(β)とは、1分子あたりの光非線形性を表す指標であり、以下の式により推算できる。
【0048】
【数1】

【0049】
ただし、式中の記号は、以下の意味を示す。
ω:基底状態gと励起状態nの間のエネルギー差。
r(gn):基底状態と励起状態間の波動関数の重なり。
Δr(n):励起状態の永久双極子モーメントr(nn)と基底状態の永久双極子モーメントr(gg)との差。
【0050】
超分子分極率は、J.Org.Chem.,54,3774(1989)に記載のソルバトクロミック法(SC法)、J.Chem.Phys.,66,2264(1977)に記載のEFISH法、ハイパーレイリー散乱法(HRS法)を用いて実測できる。
【0051】
本発明における化合物(II)としては、下記の化合物(eo)が好ましい。
A−[(Z−(Y−(Z−(Y−D (eo)
ただし、d、e、f、g、h、A、D、Y、Y、ZおよびZは、前記と同じ意味を示す。
【0052】
d、e、fおよびgは、d、eおよびfが1でかつgが0である、または、dが1でかつe、fおよびgが0である、ことが好ましい。
hは、1〜4の整数が好ましく、1が特に好ましい。
【0053】
Aは、−NO、−CN、−CF、−C(CN)=C(CN)、−CH=C(CN)、または−N=CXが好ましい(ただし、Xは−CFまたは−CFCFを、Xは水素原子、−CH、−CFまたは−CFCFを、示す。)。
【0054】
Dは、−NH、−NX、−OH、−OCH、または−N=CXが好ましい(ただし、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、または、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のポリフルオロアルキルカルボニルオキシ基を有する炭素数8以下のアルキル基を示す。)。
【0055】
上記エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基としては、炭素数4以下のアルキル基が好ましく、特にメチル基とエチル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のポリフルオロアルキル基としては、水素原子の数にして50%以上がフッ素原子に置換された炭素数1〜16のポリフルオロアルキル基や、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜12以下のペルフルオロアルキル基で置換された炭素数4以下のアルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基としては、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基が好ましい。エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜20のポリフルオロアルキルカルボニルオキシ基を有する炭素数8以下のアルキル基としては、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3〜12のペルフルオロアルキルカルボニルオキシ基を有する炭素数2〜6のアルキル基が好ましい。
【0056】
およびYは、それぞれ独立に、−CH=CH−、−C(CH)=CH−、−CH=C(CH)−、−N=CH−、−CH=N−、−N=N−、−NH−N=CH−、−CH=N−NH−、−CH=C(CN)−または−C(CN)=CH−が好ましく、−CH=CH−、−N=CH−、−CH=N−または−N=N−が特に好ましい。
【0057】
およびZは、それぞれ独立に、ベンゼン環、ピリミジン環、オキサゾール環、フラン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ナフタレン環およびアントラキノン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの環構造に基づく環状共役系の2価連結基が好ましく、ベンゼン環に基づく環状共役系の2価連結基が特に好ましく、1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、または1,3−フェニレン基が最も好ましい。また前記環構造に基づく共役系の2価連結基中の炭素原子に結合する水素原子は、フッ素原子または電子吸引性基で置換されていることが好ましく、フッ素原子、−CF、または−CNで置換されていることが特に好ましい。
【0058】
化合物(eo)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
d、e、f、およびhが1でgが0であるYが−N=N−基である下式で表される化合物(eo)の例。
ただし、式中のRはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3〜20のポリフルオロアルキル基、またはエーテル性酸素原子を有してもよい炭素数3〜20のポリフルオロアルキルカルボニルオキシ基を示す。Rとしては、式F(CFOCF(CF)CFOCF(CF)C(O)O−で表される基、F(CFOCF(CF)C(O)O−で表される基、または式C2p+1C(O)O−で表される基(ただし、pは3〜12の整数を示す。)などの、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数3〜12のペルフルオロアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
【0059】
【化5】

【0060】
d、e、fおよびhが1でgが0であるYが−CH=CH−基である下式で表される化合物(eo)の例。
【0061】
【化6】

【0062】
dおよびhが1でd、eおよびfが0である下式で表される化合物(eo)の例。
【0063】
【化7】

【0064】
その他の化合物(eo)の例(ただし、式中のRは前記と同じ意味を示す。)。
【0065】
【化8】

【0066】
本発明の光学樹脂材料は、反応性基を有する含フッ素重合体(I)の反応性基と反応しうる基を有する化合物(II)を、反応性基を有する含フッ素重合体(I)と反応させて、化合物(II)の残基を有するモノマー単位を含む含フッ素重合体(I)を得る方法(以下、方法1という。)を用いて製造できる。
【0067】
方法1において、1gあたりkmmol(ただし、kは0.1〜3.3が好ましく、0.2〜1.5が特に好ましい。)の該化合物(II)と反応しうる反応性基を有する含フッ素重合体(I)を用いる場合、該化合物(II)の量は、該含フッ素重合体(I)の1gに対してk〜5k倍mmolモルが好ましく、k〜2k倍mmolが特に好ましい。kが前記の範囲である場合、該化合物(II)が効率的に該含フッ素重合体(I)に結合または分散される。
【0068】
該含フッ素重合体(I)における反応性基はカルボキシル基またはアルコキシカルボニル基が好ましく、該化合物(II)における反応しうる基は水酸基またはポリフルオロアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。また該含フッ素重合体(I)は、含フッ素重合体(I−1)が好ましい。
【0069】
方法1は、反応性基を有する含フッ素重合体(I)と、該反応しうる基を有する化合物(II)とを有機溶媒に分散または溶解させた溶液を調整し、つぎに加熱により有機溶媒を除去する方法によるのが好ましい。溶液の調整方法としては、含フッ素重合体(I)を有機溶媒に分散または溶解させた溶液(以下、溶液1という。)と該化合物(II)を有機溶媒に分散または溶解させた溶液(以下、溶液2という。)を混合する方法が好ましい。
【0070】
溶液1の有機溶媒は、含フッ素溶媒が好ましい。好ましい含フッ素溶媒としては、ポリフルオロ芳香族化合物(ペルフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等。)、ポリフルオロ(トリアルキルアミン)化合物(ペルフルオロ(トリブチルアミン)、ペルフルオロ(トリプロピルアミン)等。)、ポリフルオロシクロアルカン化合物(ペルフルオロデカリン、ペルフルオロシクロヘキサン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン等。)、ポリフルオロ環状エーテル化合物(ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等。)、ポリフルオロアルカン類(ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、2H,3H−ペルフルオロペンタン、1H−ペルフルオロヘキサン、1H,1H,1H,2H,2H,3H,3H−ペルフルオロデカン等。)、ポリフルオロエーテル類(メチルペルフルオロイソプロピルエーテル、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチル(ペルフルオロヘキシルメチル)エーテル、メチルペルフルオロオクチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル等。)が挙げられる。
【0071】
溶液2の有機溶媒は、前記含フッ素溶媒と、前記含フッ素溶媒と1質量%(好ましくは3質量%、より好ましくは5質量%)以上の割合で相溶する溶媒とが好ましい。溶液2における該相溶する溶媒としては、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、含塩素溶媒、含フッ素アルコールが好ましい。
【0072】
また本発明の光学樹脂材料は、前記環形成モノマーと共重合する重合性不飽和基を有する化合物(II)(以下、化合物(IIa)ともいう。)を、前記環形成モノマーと共重合させて化合物(II)の残基を有するモノマー単位を含む含フッ素重合体(I)を得る方法(以下、方法2という。)を用いても製造できる。
【0073】
方法2における化合物(IIa)としては、たとえば、ビニル基、アリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、などの重合性の基を有する化合物(II)がある。たとえば、化合物(IIa)は、化合物(II)の水酸基またはポリフルオロアルキルカルボニルオキシ基を、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、などの重合性の基に置換して得られる。化合物(IIa)としては、化合物(II)と反応しうる反応性基を有する含フッ素モノマーと、含フッ素重合体(I)の反応性基と反応しうる基を有する化合物(II)とを反応させて得られるモノマーがより好ましい。
【0074】
方法1または方法2により得られる光学樹脂材料は、そのまま光学樹脂材料として用いてもよいし、再沈殿法または溶媒留去法を用いて精製してから用いてもよい。
【0075】
本発明の光学樹脂材料は、電場の印加により含フッ素重合体(I)中の化合物(II)を配向処理させて用いるのが好ましい。配向処理の方法としては、特に限定されず、公知の電場の印加方法を採用できる。たとえば、本発明の光学樹脂材料を、含フッ素重合体(I)のガラス転移点以上の温度の電場中で一定時間処理する方法が挙げられる。
【0076】
本発明の光学樹脂材料は被膜として用いるのが好ましい。被膜の形成方法としては、プレス成形法、押し出し成形法または溶液キャスト法が好ましい。膜厚の均一性と光部品への加工性の観点から溶液キャスト法がより好ましい。
【0077】
溶液キャスト法は、本発明の光学樹脂材料が前記含フッ素溶媒に分散または溶解された溶液組成物を任意の基材に塗布し、つぎに乾燥により含フッ素溶媒を揮発させて本発明の光学樹脂材料を有効成分とする被膜が形成させる方法によるのが好ましい。該溶液組成物中の光学樹脂材料の割合は、1〜50質量%が好ましく、1〜20質量%が好ましい。
【0078】
本発明の光学樹脂材料は、光通信領域の光に対して吸収が小さくかつ電気光学効果による屈折率の変化が大きいため、位相制御型デバイス(位相変調器、温度保証型位相変調器、単一側帯波発生用セロダイン位相変調器、分岐干渉型変調器、バランスブリッジ型変調器)、方向性結合器型デバイス(方向性結合器変調器/スイッチ、反転Δβ型方向性結合器、進行波型方向性結合器、光波長フィルタ)、屈折率分布型制御デバイス(内部全反射型スイッチ、分岐スイッチ、TE−TMモードスプリッタ、交差型バイポーラスイッチ、カットオフ型スイッチ)、電気光学グレーティング制御型デバイス(光偏向器、ブラッグ回折型スイッチ、TE−TMモード変換器、光波長フィルタ、偶・奇モード変換型光波長可変フィルタ、導波−放射モード変換器)などの光制御デバイス材料として有用である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225と、ペルフルオロ(トリブチルアミン)をPFTBAと、CF=CFOCFCFCF=CFをモノマー(a1)と、(CCOO)をPFBPOと、略記する。
【0080】
[例1]含フッ素重合体(I)−1の合成例
モノマー(a1)の6.01g、CF=CFO(CFCOOCHの1.68g、およびPFBPOの38.5mgを、ガラスチューブにいれ、液体窒素にて固化脱気を3回行って封管し、70℃で保持した。20時間後、ガラス管を開放し、オーブンで残モノマーを留去することにより、重合体(以下、含フッ素重合体(I)−1という。)を収率90%で得た。
【0081】
含フッ素重合体(I)−1は、固有粘度が30℃のペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中で0.12dl/gであり、下記モノマー単位(A11)と下記モノマー単位(M1)を含むことを確認した。
【0082】
【化9】

【0083】
[例2]含フッ素重合体(I)−2の合成例
例1で得た含フッ素重合体(I)−1を加圧下、110℃の水中で処理してから真空乾燥した。得られた重合体(以下、含フッ素重合体(I)−2という。)は、モノマー単位(A11)と下記モノマー単位(M2)を含み、1g当たりカルボキシル基を0.7mmol含むことを確認した。
【0084】
【化10】

【0085】
[例3]含フッ素重合体(I)−3の合成例
含フッ素重合体(I)−1の10部をPFTBAの75部に溶解させ、これを下記化合物(eo1)の1部とC13CHCHOHの25部に溶解させた溶液に添加する。フラスコの内温を70℃に加熱し、発生するメタノールを除外しながらメタノールの発生が停止するまで反応を行う。つぎにフラスコ内容液の溶媒を加熱により留去して固形物を得る。固形物にR−225を加えて得られる凝集物を真空乾燥して重合体(以下、含フッ素重合体(I)−3という。)を得る。含フッ素重合体(I)−3は、モノマー単位(A11)と下記モノマー単位(M11)を含むことが確認される。
【0086】
【化11】

【0087】
[例4]含フッ素重合体(I)−4の合成例
CFClCFClO(CFCOOCHの1部、化合物(eo1)の1.2部、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの100部をフラスコに入れる。フラスコの内温を70℃に加熱し、発生するメタノールを除外しながらメタノールの発生が停止するまで反応を行う。つぎにフラスコ内容液の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンを留去して下記化合物(eo2)を含む生成物を得る。生成物の1部、Znの0.4部、BrCHCHBrの0.15部、およびジメチルホルムアミドの30部をフラスコに入れる。フラスコを加圧下し、内温を80℃に加熱する。液体の留出が始まるまでフラスコの内圧を下げ、液体の留出が停止するまで加熱を継続する。留出する液体を分析すると、下記化合物(eo3)の生成が確認される。
【0088】
モノマー(a)の65部、化合物(eo3)の35部、およびPFBPOの0.5部を、ガラスチューブにいれ、液体窒素にて固化脱気を3回行って封管し、70℃で保持した。20時間後、ガラス管を開放し、反応液を得る。
【0089】
反応液にR−225を加えて凝集する重合体(以下、含フッ素重合体(I)−4という。)をろ過してから乾燥する。含フッ素重合体(I)−4は、固有粘度が30℃のペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中で0.1dl/gであり、モノマー単位(A11)とモノマー単位(M11)を含むことが確認される。
【0090】
【化12】

【0091】
[例5]含フッ素重合体(I)−3の評価例
含フッ素重合体(I)−3を10質量%含むPFTBA溶液の10部を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布してから、180℃で60分間乾燥すると電極間に含フッ素重合体(I)−3からなる被膜が形成される。つぎに110℃にて1時間、0.2MV/cmの電場を被膜に印加する。つづいて1064nmのYAGレーザーを入射すると各偏向成分の反射光強度の変化が観測されることからEO効果が確認される。
【0092】
[例6]含フッ素重合体(I)−4の評価例
含フッ素重合体(I)−4を10質量%含むPFTBA溶液の10部を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布してから、180℃で60分間乾燥すると電極間に含フッ素重合体(I)−4からなる被膜が形成される。つぎに110℃にて1時間、0.2MV/cmの電場を被膜に印加する。つづいて1064nmのYAGレーザーを入射すると各偏向成分の反射光強度の変化が観測されることからEO効果が確認される。
【0093】
[例7]含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)を含む材料の評価例(その1)
含フッ素重合体(I)−2の10部をPFTBAの75部に溶解させた溶液と、化合物(eo1)の1部をCF(CFCHCHOHの25部に溶解させた溶液を混合し、25℃で24時間、撹拌することにより含フッ素重合体(I)−2とeo1の混合溶液を得る。この溶液を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布し、180℃で60分間乾燥して含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)より成る光学樹脂材料被膜が得られる。例1と同様の方法にてEO効果が確認される。
【0094】
[例8]含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)を含む材料の評価例(その2)
含フッ素重合体(I)−2の10部をPFTBAの75部に溶解させた溶液と、化合物(eo1)の1部をCFCFCHOHの5部に溶解させた溶液を混合し、25℃で24時間、撹拌することにより含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)の混合溶液を得る。この溶液を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布し、180℃で60分間乾燥して含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)より成る光学樹脂材料被膜が得られる。例1と同様の方法にてEO効果が確認される。
【0095】
[例9]含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)を含む材料の評価例(その3)
含フッ素重合体(I)−2の10部をPFTBAの75部に溶解させた溶液と、化合物(eo1)1部をR−225の20部に溶解させた溶液を混合し、25℃で24時間、撹拌することにより含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)の混合溶液を得る。この溶液を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布し、180℃で60分間乾燥して含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)より成る光学樹脂材料被膜が得られる。例1と同様の方法にてEO効果が確認される。
【0096】
[例10]含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)を含む材料の評価例(その4)
含フッ素重合体(I)−2の10部をPFTBAの75部に溶解させた溶液と、化合物(eo1)の1部をCF(CFCHCHOHの25部に溶解させた溶液を混合し、25℃で24時間、撹拌することにより含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)の混合溶液を得る。この溶液を櫛型電極の電極間(幅1mm)に塗布し、180℃で60分間乾燥して含フッ素重合体(I)−2と化合物(eo1)より成る光学樹脂材料被膜が得られる。例1と同様の方法にてEO効果が確認される。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の光学樹脂材料は、光通信領域の光に対して吸収が小さくかつ電気光学効果による屈折率の変化が大きく、位相制御型デバイス、方向性結合器型デバイス、屈折率分布型制御デバイス、電気光学グレーティング制御型デバイスなどの光制御デバイス材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体(I)に電気光学効果を有する化合物(II)が分散または結合されてなることを特徴とする光学樹脂材料。
【請求項2】
前記含フッ素重合体(I)が、環化重合しうる含フッ素脂肪族ジエンに由来する環状モノマー単位、または、脂肪族環を構成する2つの炭素原子間もしくは脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環を構成しない炭素原子との間に重合性不飽和基を有する含フッ素環状モノマーに由来する環状モノマー単位、を含む含フッ素重合体である、請求項1に記載の光学樹脂材料。
【請求項3】
反応性基を有する前記含フッ素重合体(I)の該反応性基に前記化合物(II)を化学結合させてなる、請求項1または2に記載の光学樹脂材料。
【請求項4】
前記化合物(II)が、10−30esu以上の超分子分極率を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の光学樹脂材料。
【請求項5】
前記化合物(II)が、下式(eo)で表される化合物の少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれかに記載の光学樹脂材料。
A−[(Z−(Y−(Z−(Y−D (eo)
ただし、式中の記号は下記の意味を示す。
d、e、fおよびg:それぞれ独立に、0〜4の整数であり、少なくとも1つは1である。
h:1以上の整数。
A:電子吸引性基。
D:電子供与性基。
およびZ:それぞれ独立に、環状共役系の2価連結基。
およびY:それぞれ独立に、鎖状共役系の2価連結基。

【公開番号】特開2006−77105(P2006−77105A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261733(P2004−261733)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】