説明

新規な制御放出活性剤担体

本発明は、表面反応天然または合成炭酸カルシウム、1種以上の活性剤を含み、前記1種以上の活性剤は、前記表面反応炭酸カルシウムと結合しており、前記表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、天然または合成炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種以上の酸との反応生成物であり、二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部源から供給される、活性剤を制御放出するための担体に関する。本発明はさらに、担持担体の調製、ならびに様々な適用例におけるこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性剤を制御放出するための担体、この調製方法、およびこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
制御放出製剤は、特に医薬製剤に関して、当分野で一般に知られている。このような調剤は、例えば緩徐に溶解し、時間をかけて薬物を放出するように製剤化される。このような持続放出錠剤またはカプセル剤の利点は、同じ薬物の即時放出製剤に比べて低い頻度で服用できること、および血流中で薬物レベルをより安定に保つことである。持続放出錠剤は、活性成分が典型的にポリアクリル酸などの不溶性物質のマトリクスに包埋されているように製剤化され、従って溶解する薬物は、マトリクスの孔を抜け出る経路を見つけ出さなければならない。
【0003】
しかしながら、制御放出はまた、例えば目的環境のpHまたは環境に応じて、ある種の条件下で即時放出を意味することもできる。
【0004】
さらに、このような製剤は多くの場合、所望の標的環境で活性剤を確実に放出するために、ポリマー物質で被覆されている。この典型的な例は、活性剤を損失することなく胃を通過し、その後アルカリ性の腸環境で作用剤が緩徐または即時放出されることを確実にするために、耐酸性であるが、アルカリ溶解性のコーティングで被覆されている経口投与用製剤である。
【0005】
医薬分野における制御放出製剤は、理想的には様々な投与方法に有用であり、例えば以下のものである。
【0006】
・作用剤を腸に送達するための経口適用(腸に送達される前、胃を輸送される間、作用剤が胃酸から保護されていることが特に重要である。)、
・作用剤を口腔粘膜に送達するための経口適用、
・作用剤を鼻腔内壁の血管(静脈)に送達するための担体の吸入、または
・皮膚上へのまたは皮膚を通しての担体の皮膚適用。
【0007】
しかしながら、制御放出製剤は、農業、生物学、化粧品、または他の任意の技術適用例など、他の分野においても興味深く、ここでは活性剤が特定の標的環境で放出され、この環境に到達しないかぎり放出されないことが重要である。
【0008】
このようないずれの適用例においても、有用な制御放出製剤は、以下の要件を満たすべきである。
【0009】
(i)標的環境での放出前、十分な量の作用剤が保持されること、
(ii)標的環境で十分な量の放出されること、および
(iii)十分な活性のままであるように、送達および標的環境での放出前、担体によって十分に保護されること。
【0010】
上述のとおり、通常、これは時間とコストのかかる製造工程を伴う複雑なマトリクスまたはコーティング製剤によって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、容易に入手可能であり、容易に処理され、従って経済的観点からだけでなく、既知の担体に比べてより好都合である、上述の特徴を有する活性剤の制御放出を可能にする新規な担体が継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題は、
・表面反応天然または合成炭酸カルシウム、
・1種以上の活性剤を含み、
前記1種以上の活性剤は、前記表面反応炭酸カルシウムと結合しており、前記表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、天然または合成炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種以上の酸との反応生成物であり、二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部源から供給される、活性剤を制御放出するための担体によって解決された。
【0013】
好ましい合成炭酸カルシウムは、アラゴナイト、バテライト、もしくはカルサイト鉱物学的結晶形態、またはこれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムである。
【0014】
好ましくは、天然炭酸カルシウムは、大理石、チョーク、カルサイト、ドロマイト、石灰石、およびこれらの混合物を含む群から選択される。
【0015】
好ましい実施形態において、天然または合成炭酸カルシウムは、1種以上の酸および二酸化炭素による処理に先立って、粉砕される。粉砕ステップは、当業者に公知の粉砕ミルなどの通常の任意の粉砕装置を用いて行うことができる。
【0016】
好ましくは、本発明に用いられる表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、20℃で測定されたpH6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらに好ましくは7.5超を有する水性懸濁液として調製される。
【0017】
水性懸濁液を調製するための好ましい方法では、粉砕などによって微粉化されているかまたは微粉化されていない天然および合成炭酸カルシウムを、水に懸濁する。好ましくは、スラリーは、スラリーの重量に対して1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらに好ましくは5重量%から40重量%の範囲内の天然または合成炭酸カルシウム含量を有する。
【0018】
次のステップでは、天然または合成炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に酸を添加する。好ましくは、酸は、25℃のpK2.5以下を有する。25℃のpKが0以下である場合、酸は、好ましくは硫酸、塩酸、またはこれらの混合物から選択される。25℃のpKが0から2.5である場合、酸は、好ましくはHSO、HSO、HPO、シュウ酸、またはこれらの混合物から選択される。1種以上の酸は、濃溶液またはより希釈された溶液として懸濁液に添加できる。好ましくは、酸と天然または合成炭酸カルシウムのモル比は、0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0019】
または、天然または合成炭酸カルシウムを懸濁する前に、酸を水に添加することも可能である。
【0020】
次のステップでは、天然または合成炭酸カルシウムを、二酸化炭素で処理する。天然または合成炭酸カルシウムを酸処理するために、硫酸または塩酸などの強酸が用いられる場合、二酸化炭素は自動的に形成される。代わりにまたは追加的に、二酸化炭素を外部源から供給することができる。
【0021】
酸処理および二酸化炭素による処理は、強酸が用いられる場合、同時に行うことができる。最初に、例えば0から2.5の範囲のpKを有する中程度強酸による処理を行い、続いて外部源から供給された二酸化炭素による処理を行うことも可能である。
【0022】
好ましくは、懸濁液の気体状二酸化炭素の濃度は、体積に関して、(懸濁液の体積):(気体状COの体積)の比が1:0.05から1:20、より好ましくは1:0.05から1:5であるような濃度である。
【0023】
好ましい実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。
【0024】
酸処理および二酸化炭素処理後、20℃で測定された水性懸濁液のpHは、6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらに好ましくは7.5超の値に自然に到達し、これによって、pH6.0超、好ましくは6.5超、より好ましくは7.0超、さらに好ましくは7.5超を有する水性懸濁液として、表面反応天然または合成炭酸カルシウムが調製される。水性懸濁液を平衡に到達させた場合、pHは7を超える。6.0を超えるpHは、十分な時間、好ましくは1時間から10時間、より好ましくは1から5時間、水性懸濁液の攪拌を続けたとき、塩基を添加することなく調節できる。
【0025】
または、pH7超で起こる平衡に達する前、水性懸濁液のpHは、二酸化炭素処理に続いて塩基を添加することによって、6を超える値に上昇させることができる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの任意の通常の塩基を用いることができる。
【0026】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO00/39222およびUS2004/0020410A1に開示されており、ここで表面反応天然炭酸カルシウムは紙製造の充填剤として記載されており、これらの参考文献の内容は本出願に組み込まれる。
【0027】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムが得られる。未公開欧州特許出願第07123077号から詳細に理解されるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを水性媒質中、Hイオン、および水性媒質に可溶化されており、水不溶性カルシウム塩を形成することのできるアニオンと接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、前記表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された前記アニオンの、不溶性であり、少なくとも部分的に結晶性のカルシウム塩を含む。
【0028】
前記可溶化カルシウムイオンは、沈降炭酸カルシウムがHイオンによって分解すると自然に生成される可溶化カルシウムイオンと比較して過剰の可溶化カルシウムイオンに相当し、前記Hイオンは、アニオンの対イオンの形態でのみ、即ち、さらなるカルシウムイオンまたはカルシウムイオン生成源の不在下で、酸または非カルシウム酸塩の形態でアニオンを添加することによって提供される。
【0029】
前記過剰可溶化カルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性もしくは酸性カルシウム塩を添加することによって、またはその場で可溶性の中性もしくは酸性カルシウム塩を生じる酸、または中性もしくは酸性非カルシウム塩を添加することによって供給される。
【0030】
前記Hイオンは、前記アニオンの酸もしくは酸塩を添加することによって、または同時に前記過剰可溶化カルシウムイオンの全部または一部を提供する役割を果たす酸もしくは酸塩を添加することによって提供することができる。
【0031】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムを調製する好ましい実施形態では、天然または合成炭酸カルシウムを、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類アルミン酸塩、例えばアルミン酸ナトリウムもしくはカリウムなど、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物の存在下、酸および/または二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも1種のケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を添加する前に、天然または合成炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0032】
または、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分は、天然または合成炭酸カルシウムと酸および二酸化炭素との反応がすでに開始しているときに、天然または合成炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも1種のケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下での表面反応天然または合成炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、WO2004/083316に開示されており、この参考文献の内容は本出願に組み込まれる。
【0033】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、場合により分散剤でさらに安定化された、懸濁状態で保持することができる。当業者に公知の通常の分散剤を使用できる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸である。
【0034】
または、上記の水性懸濁液を乾燥させ、これによって顆粒または粉末形態の固体(即ち、乾燥しているか、または水をほとんど含有せず、流体形態でない)表面反応天然または合成炭酸カルシウムを得ることができる。
【0035】
好ましい実施形態において、表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、窒素およびISO9277に準じるBET法を用いて測定された比表面積5m2/gから200m2/g、より好ましくは20m2/gから80m2/g、さらに好ましくは30m2/gから60m2/gを有する。
【0036】
さらに、表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、沈降法によって測定された重量中央粒径0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、特に0.8から20μm、最も好ましくは1から10μmを有することが好ましい。沈降法は、重量場における沈降挙動の分析である。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて行われる。この方法および機器は当業者に公知であり、充填剤および顔料の粒度を求めるために一般に用いられている。測定は、0.1重量%Naの水溶液で行われる。サンプルは、高速スターラを用いて分散し、超音波処理した。
【0037】
好ましい実施形態において、表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、5から200m2/gの範囲内の比表面積、および0.1から50μmの範囲内の重量中央粒径を有する。より好ましくは、比表面積は、20から80m2/gの範囲内であり、重量中央粒径は、0.5から25μmの範囲内である。さらに好ましくは、比表面積は、30から60m2/gの範囲内であり、重量中央粒径は、0.7から7μmの範囲内である。
【0038】
表面反応カルシウム担体は、活性剤と結合し、活性剤を輸送することができる。この結合は、好ましくは、粒子の外表面もしくは内表面である、表面反応炭酸カルシウム粒子の表面への吸着であるか、または粒子中への吸収であり、これは粒子の多孔性のために可能となる。
【0039】
この点において、表面反応炭酸カルシウムの内部および相互細孔構造のため、この材料は同様の比表面積を有する一般的な材料と比較して、事前に吸着/吸収された材料を、時間をかけて送達する優れた作用剤であると考えられる。
【0040】
従って、吸着/吸収特性は、所与の作用剤の細孔径および/または細孔体積および/または表面積によって制御できる。
【0041】
好ましくは、表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、水銀多孔度測定(mercury porosimetry measurement)から算出された、5体積%から50体積%、好ましくは20体積%から50体積%、特に30体積%から50体積%の範囲内の粒子内多孔率を有する。2頂導関数細孔径分布曲線において、ピーク間の最下点は、粒子内および粒子間細孔体積を分けることのできる直径を示す。この直径より大きい直径での細孔体積は、粒子間細孔に関連する細孔体積である。総細孔体積からこの粒子間細孔体積を引くと粒子内細孔体積となり、この値から、Transport in Porous Media(2006)63:239から259に記載のとおり、好ましくは固体材料体積の分率として、粒子内多孔率を算出できる。
【0042】
このようにして、単位粒子体積当たり細孔体積として求められた粒子内多孔率は、20体積%から99体積%、好ましくは30体積%から70体積%、より好ましくは40体積%から60体積%、例えば50体積%の範囲内である。
【0043】
すでに述べたように、活性剤の吸着/吸収および放出は、本質的に細孔径によって制御され、細孔径は、好ましくは10から100nmの範囲、より好ましくは20から80nm、特に30から70nm、例えば50nmの範囲である。
【0044】
従って、一般に、表面反応炭酸カルシウム担体の粒子内および/または粒子間細孔に適合する任意の作用剤が、本発明による表面反応炭酸カルシウム担体で輸送されるのに適している。
【0045】
これらの範囲内で、ヒトもしくは動物の体内で輸送される、もしくは体内に輸送されるため、農業適用例、または他の任意の適用例にかかわらず、任意の活性剤が本発明に有用であることができ、例えば、医薬的、生物学的、化粧品的に活性な作用剤、芳香剤もしくは香味剤、殺生物剤、殺有害生物剤もしくは除草剤、および殺菌剤を含む群から選択された作用剤である。
【0046】
例えば、トリクロサン、抗発癌物質(anticarcinogens)、リモネン、ペパーミント、消泡剤のような界面活性剤、または軟化剤、鉱油、シリコーン、湿潤剤、ロウ、パラフィン、加水分解結合剤などの加水分解剤、ダスティング防止(anti−dusting)油、およびo−フェニルフェノール、およびブロノポールを含む群から選択されたものなどの活性剤を用いることができる。
【0047】
癌細胞が酸性であり、この酸性度が癌細胞での抗発癌物質の放出を促進するため、特に興味深い活性剤群は抗発癌物質である。
【0048】
標的環境がヒトまたは動物の身体である場合、本発明による結合した活性剤を有する担体を、上述のとおり経口によって、吸入によって、および皮膚組織を介して、直接投与できる。これらの担体は、例えば静脈内または皮下による、体内への注射によっても投与することができる。十分な作用剤が標的環境に送達されるならば、本発明は、ワクチン接種によって作用剤を与える代替経路を提供する可能性もある。
【0049】
好ましい実施形態において、表面反応炭酸カルシウム担体は、例えば経口投与に関しては、チューインガムまたは練り歯磨き製剤などの、1種または幾つかのさらなる担体材料と組み合わせることができる。
【0050】
従って、好ましい実施形態において、例えばトリクロサン、または香味剤の担体として表面反応炭酸カルシウムを含む練り歯磨きを提供できる。
【0051】
活性剤が腸に輸送されるものである場合、結合した活性剤を有する担体を、ビタミンカプセル剤などの油性カプセル剤、錠剤、クリームなどの一般的なガレン製剤に製剤化することができる。
【0052】
吸入適用の場合、担体は、例えば、鼻腔用スプレー製剤、医薬的に活性な輸送剤、またはリモネンもしくはペパーミントなどの芳香油を含む香気物質と組み合わせることができる。
【0053】
皮膚適用は、例えば、皮膚または毛髪に適用することのできる化粧品製剤に製剤化することができる。一般に、パッチ、石鹸、皮膚用クリームおよびサンスクリーンなどのクリーム、ファンデーション、ヘアケア製品、香水、足用パウダーまたは顔用パウダーなどのパウダー、リップスティック、デオドラント剤、またはペパーミント油もしくはアマランス油などの天然油を包含することができる、例えば浴用ボムもしくは浴用錠剤の形態の浴用添加剤などの任意の種類の化粧品製剤が適している。
【0054】
さらに、鉱油留分もしくはホホバ油などの植物油などの油、またはエチルアルコールなどのアルコールに懸濁した表面反応炭酸カルシウムを用いることもできる。
【0055】
上記からわかるように、表面反応炭酸カルシウム担体は、担体に結合した様々な作用剤を輸送するのに有用である。
【0056】
しかしながら、幾つかの制限があり、従って、これらは本発明の主題から除外される。例えば、酸性作用剤など、表面反応炭酸カルシウムと反応する作用剤は、表面反応炭酸カルシウムで輸送されるのに適していないことがある。他方で、例えば、酸性作用剤のカルシウム塩が必要とされるかまたは有益である場合、酸性作用剤も有利に用いることができる。あるレベルの酸性度は、担体の表面への吸着を増強することもできる。
【0057】
表面反応炭酸カルシウム上および/または表面反応炭酸カルシウム中への作用剤の吸着/吸収後の送達機序は、本質的に1つまたは幾つかの以下の機序に基づく。
【0058】
1.表面反応炭酸カルシウム粒子から形成された錠剤または類似の巨視的物体から拡散することによる(緩徐な連続的放出)。
2.粉末または懸濁液の形態である、表面反応炭酸カルシウム粒子の離散粒子から拡散することによる(中程度に緩徐な連続的放出)。
3.例えば錠剤に機械力を加えることにより(咀嚼)、表面反応炭酸カルシウムから形成された錠剤または類似の巨視的物体が破壊されることによる(最初は緩徐、その後は中程度に緩徐な放出)。
4.表面反応カルシウム錠剤が油などの疎水性作用剤を担持しており、その後、錠剤が水などの極性流体に浸漬される状況によってもたらされる特別な場合。水の侵入圧による、急速な崩壊が観察される。
5.表面反応カルシウム粒子構造自体の破壊によって、破壊が起こり得る(粒子構造崩壊後直ちに、迅速な局所的放出)。
【0059】
表面反応炭酸カルシウム担体上および/または担体中への作用剤の結合、即ち吸着/吸収は、一般に、表面反応炭酸カルシウムを、好ましくは水であるが、一般に任意の媒質であることができる適切な媒質中、活性剤の溶液または懸濁液と接触させることによって達成される。しかしながら媒質が酸性である場合、媒質は反応表面の塩を形成した酸より弱く、希薄形態である必要がある。そうであれば少なくとも限定された時間、低pHに暴露することができる。
【0060】
この目的のために、表面反応炭酸カルシウムは、結合が完了した後、例えば濾過によって過剰な液体、溶液、または懸濁液から分離され、場合により乾燥される、錠剤または粉末の形態であることができる。
【0061】
得られた担持錠剤または粉末は、このまま適用するか、または当分野で周知の方法に従って、上記のクリーム、錠剤、カプセル剤、もしくは他の任意のガレン製薬形態など、上記の第2の担体と組み合わせる。
【0062】
表面反応炭酸カルシウムの乾燥に関して、穏やかな噴霧乾燥またはオーブン乾燥など、十分に制御された乾燥法を適用するのが好ましい。
【0063】
以下の図面、実施例、および試験は、本発明を例示するものであるが、どのような方法でも本発明を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に有用な表面反応炭酸カルシウムのSEM画像である。
【図2】湿潤懸濁液から表面反応炭酸カルシウム錠剤を製造するために設計された、この製造に適した装置を示す図である。
【図3】粉末を圧縮するために用いたダイの概略断面図である。
【図4】本発明および比較サンプルによる担体の放出特性を例示するグラフである。
【図5】通常の炭酸カルシウムと比較した、表面処理炭酸カルシウムの持続放出効果を例示するグラフである。
【0065】
実施例
【実施例1】
【0066】
放出特性
本発明による担体の放出特性を比較するために、表面反応炭酸カルシウムの錠剤、ならびに表面反応炭酸カルシウムと類似した高い表面積を特徴とするシリカ参照製品の錠剤を形成した。
【0067】
表面反応炭酸カルシウムの調製
表面反応炭酸カルシウムを100リットルESCO反応器で調製した。
【0068】
500.7μm(Sedigraph)(64重量%<1μm)を有する乾燥天然炭酸カルシウム8000gを容器に充填した。その後、固体含量10重量%が得られるまで、水を添加した。得られたスラリーを70℃に加熱し、次いで、アンカースターラ50rpmおよびディスクスターラ2000rpmで攪拌しながら、固体含量75重量%で90分間、リン酸(=35重量%乾燥/乾燥)3733gを添加した。添加完了から30分後、温度が低下し、スラリーをフィルタプレスで高圧縮(upconcentrate)した。
【0069】
以下の例に用いた表面反応炭酸カルシウムは、以下を有した。
・数平均粒径d50(Sedigraph)3μm
・図1からわかるとおり、バラ様表面構造
・pH7.5から9.5
・BETで測定された比表面積:60m/g
【0070】
表面反応炭酸カルシウム錠剤の調製
固体含量30重量%±5重量%を有する表面反応炭酸カルシウムの懸濁液から錠剤を製造した。0.025μmのファインフィルタ膜による濾過で水が放出され、表面反応炭酸カルシウムの圧縮錠剤が得られるように、懸濁液に数分間、典型的には1から10分間、一定圧を加えることによって錠剤を形成した。用いた装置を図2に例示する。これはさらにRidgway,C.J.、Gane,P.A.C.およびSchoelkopf,J.、「Modified Calcium Carbonate Coatings with Rapid Absorption and Extensive Liquid Uptake Capacity」、Colloids and Surfaces A、236(1−3)、2004、p.91から102に記載されている。
【0071】
錠剤を装置から取り出し、80℃で24時間、オーブンで乾燥した。
【0072】
参照錠剤の調製
参照物として用いたケイ酸塩は、INEOS Silicasから商品名GASIL(登録商標)HP39およびP101で入手可能な製品であり、以下の特性を有した。
【0073】
【表1】

【0074】
ケイ酸塩粉末を、以下のとおり乾式圧縮法によって、ブロックの形態の錠剤に形成した。
【0075】
顔料ブロックを調製するために、単動式上部ピストンを備え、基部プレートに取り付けられた円筒形硬化鋼製ダイを用いたが、これは広範な粒径、化学、および形態学に適している。このダイは、圧縮された顔料サンプルを取り外すのを助けるために、2つの部分に分離することができ、ダイの壁は、粉末が壁に付着するのを防ぎ、刃先の摩擦を低減するために、プラスチックフィルム片で保護されている(図3)。
【0076】
このような種類の錠剤ブロックの製造方法に関するさらなる詳細は、例えば、Pennanen M.、「Methods for producing and testing tablets of dry pigments and coating colors」、Research report、Abo Akademi、Turku and OMYA、Oftringen、1996;Ridgway C.J.、Ridgway K.、Matthews G.P.、「Modelling of the void space of tablets compacted over a range of pressures」、J.Pharm.Pharmacol.49、(1997)、p.377;およびGane,P.A.C.、Schoelkopf,J.、Spielmann,D.C.、Matthews,G.P.、Ridgway C.J.、「Fluid Transport into Porous Coating Structures:Some Novel Findings」、Tappi Journal、83(5)、2000、p.77から78から得ることができる。
【0077】
活性剤の結合
事前に立方体形状に粉砕した表面反応炭酸カルシウム錠剤、ならびにケイ酸塩ブロックを皿に入れた。錠剤の上面が空気と接触したままであるように(リモネンが吸収されるとき、錠剤内の空気が逃げられるようにする。)、リモネン(純粋、またはアルコール/水溶液)を皿に添加した。
【0078】
立方体とブロックの表面がリモネンで湿潤していることを目視で観察した後、さらに12時間湿潤を続けた。
【0079】
錠剤を皿から取り出し、においによってリモネンが検出されなくなるまで(350時間まで)、標準温度および圧力条件下、開放環境に放置した。この時点で、残存するリモネンの重量を分析するために、錠剤を密閉したビンに入れ、加熱した。
【0080】
すべての場合において、表面反応炭酸カルシウムは、シリカより緩徐なリモネンの放出を提供した(図4;示したパーセントはエチルアルコール中のリモネンの重量%である;W449はリモネンを担持した本発明による表面反応炭酸カルシウムを指す;D304はリモネン担持HP30ケイ酸塩を指す;D297は上記のリモネン担持P101ケイ酸塩を指す。)。
【0081】
定量化は、以下のパラメータを用い、HS TurboMatrix40 Trap Perkin Elmerでのガスクロマトグラフィによって行った。
温度モード:オーブン90℃、ニードル100℃、トランスファー110℃、トラップ低温40℃、トラップ高温280℃
タイミング:サーモ20.0分、遅延0.8分、加圧1.0分、ドライパージ5.0分、脱着0.1分、トラップ保持5.0分
カラム:101kPa、バイアル:101kPa、脱着:101kPa GC Method AutoSystem XL Perkin Elmer
カラム:Optima5MS 1.0μm、50m0.32mm、Macherey−Nagel インジェクタ130℃、スプリットオン
温度:130℃1.0分、10℃/分から220℃0.0分
圧力:70kPa
MS Turbo Mass Perkin Elmer
溶媒遅延 4.5分
フルスキャン 25から300(EI+)
キャリブレーション:0.0200gリモネン/100ml EtOH
0.0517gリモネン/50ml EtOH
0.1050gリモネン/50ml EtOH
0.2394gリモネン/50ml EtOH
0.7597gリモネン/50ml EtOH
0.5μlをHSバイアルに注入(0.100μg/0.517μg/1.050μg/2.394μg/7.597μgリモネン)
相関r:0.9994
【実施例2】
【0082】
水性環境での油性物質の輸送および放出
水性環境での油性物質の輸送および放出に関して、本発明による担体の特性を例証するために、アマランスならびにペパーミント油などの芳香剤(天然油)で飽和した表面反応炭酸カルシウムを用いて、浴用ボムおよび浴用錠剤を製造した。放出された油を抽出し、評価するために、浴用ボムおよび浴用錠剤を温度37℃で水に入れた。
【0083】
1.浴用ボム
a)材料
・表面反応炭酸カルシウム:上記実施例1に記載のとおり調製
・天然油:アマランス油
・添加剤:クエン酸、重炭酸ナトリウム、ハマメリス水ウィッチヘーゼル(witch hazel)、色素Vitasin Patentblue(Clariant)、赤色食用着色剤、黄色食用着色剤
・溶媒:n−ヘプタン
b)組成
【0084】
【表2】

【0085】
c)浴用ボムの調製
クエン酸および重炭酸ナトリウムを提供し、乳鉢において手作業で十分に混ぜ合わせた。色素溶液を添加し、十分に混合した。続いて、アマランス油で飽和し、手作業で十分に混合した表面反応炭酸カルシウムを添加するか(サンプル1および3)、またはこれらの成分を別々に添加することによって(サンプル2)、所定量の表面反応炭酸カルシウムおよびアマランス油を添加した。手で攪拌しながら、これらのバッチ上にウィッチヘーゼルを噴霧した(噴射ボトル(squirt bottle)を使用)。圧搾によって、バッチが粘着したらすぐに、バルクの一部を通常のアルミニウム型に入れる。
【0086】
得られたボムのいずれか1つを、室温で一晩乾燥した。その後、各ボムを約37℃で、水道水1000mlを充填した2000mlのビーカーに入れた。
【0087】
得られた懸濁液(アマランス)を30℃未満に冷ました後(約30から40分)、全内容物を分液漏斗においてヘプタンで抽出した。
【0088】
水相(pH6.6±0.2)を廃棄し、油/溶媒相を50mlの褐色ガラスビンに充填し、溶媒蒸発後に重量を求めることによって分析した。溶媒相の外観は混濁しており、アマランスサンプルは乳白色である。
【0089】
d)結果および考察
【0090】
【表3】

【0091】
上記の表から、サンプル1aおよびbでは回収率が非常に高く、水性環境での油性物質の放出に関して本発明の良好な性能が確認され、ただ混合する代わりに炭酸カルシウムを油で飽和させるほうが好都合であることがわかる。
【0092】
2.浴用錠剤
a)材料
・表面反応炭酸カルシウム:上記実施例1に記載のとおり調製
・天然油:アマランス油
・添加剤:クエン酸、重炭酸ナトリウム、ハマメリス水ウィッチヘーゼル
・溶媒:n−ヘプタン
b)浴用錠剤の調製
【0093】
サンプル4
55重量%のクエン酸/重炭酸ナトリウム混合物(重量比1:2)を乳鉢で、10重量%アマランス油と手作業で混ぜ合わせた。粉末状のバッチを得るために、35重量%の表面反応炭酸カルシウムを添加した。
【0094】
サンプル5
35重量%の表面反応炭酸カルシウムを乳鉢で、10重量%アマランス油と手作業で混合した。次いで、粉末状のバッチを得るために、この混合物を55重量%のクエン酸/重炭酸ナトリウム混合物(重量比1:2)に添加し、手作業で混合した。
【0095】
サンプル6
34.5重量%の表面反応炭酸カルシウムを乳鉢で、10重量%アマランス油と手作業で混合した。次いで、粉末状のバッチを得るために、この混合物を54.5重量%のクエン酸/重炭酸ナトリウム混合物(重量比1:2)に添加し、手作業で混合した。粘着性粉末を得るために、手作業で圧搾しながら、2重量%のハマメリス水ウィッチヘーゼルをバッチ上に噴霧した。
【0096】
単動式上部ピストンを備え、基部プレートに取り付けられた円筒形硬化鋼製ダイを用いて、これらの各サンプルから錠剤構造を形成した。このダイは、圧縮された粉末サンプルを取り外すのを助けるために、2つの部分に分離することができ、ダイの壁は、粉末が壁に付着するのを防ぎ、刃先の摩擦を低減するために、プラスチックフィルム片で保護されている。さらに、粉末を底部ならびに頂部でセルロース膜によって被覆し、その後、所定の力75kNで1分間、水圧プレスで圧縮した(有効圧力35バール)。高さ1.5から1.8cm、直径4.8cmの錠剤が形成された。すべての錠剤は十分に圧縮された。
【0097】
装置中の粉末の高さは、約4.5から5cmであった(円筒形鋼の最大高さは8cmである。)。
【0098】
c)結果および考察
続いて、各錠剤10gを37から38℃で、水道水に溶解した。サンプル4および5では溶解に約6分、サンプル6では6分超を要した。
【実施例3】
【0099】
油性環境での油性物質の輸送および放出
化粧品製剤で多く存在する、油性環境での油性物質の輸送および放出に関して、本発明による担体の特性を例証するために、表面反応炭酸カルシウムの製剤を、非表面反応炭酸カルシウムの製剤と比較した。
【0100】
a)材料
・表面反応炭酸カルシウム:上記実施例1に記載のとおり調製
・市販され入手可能な非表面反応炭酸カルシウム(OMYA AGのOmyacarb2)
・市販され入手可能なイソ吉草酸メチルブチル
・ヘキサデカン
・GC−MS:GC−MS分析の前に、サンプルをヘキサデカンで21.25倍に希釈した(サンプル80μlおよび溶媒1620μl)。
【0101】
・GC Method AutoSystem XL Perkin Elmer
カラム:Optima5MS 1.0μm、50m0.32mm、Macherey−Nagel
インジェクタ300℃、スプリットオン
温度:220℃ 8.0分
圧力:70kPa
・MS Turbo Mass Perkin Elmer
溶媒遅延 3.74分
SIRスキャン、Mass43、70、85
3.75から8.0分(EI+)
【0102】
b)製剤の調製
炭酸カルシウムのサンプル各2gを、皿でスパチュラを用いてイソ吉草酸メチルブチル0.06gと手作業で混合した。
【0103】
ヘキサデカン100mlを、電動攪拌台上の皿に入れた。磁石を皿に入れ、最低回転速度で回転させた。
【0104】
顔料/イソ吉草酸メチルブチル混合物をヘキサデカンと共に、皿のスターラから離れた片側に入れた。一定時間の後、流体相のサンプルを分析用に取り出した。
【0105】
時間を延長してこの工程を繰り返し、毎回、新しい炭酸カルシウム/イソ吉草酸メチルブチル混合物を用いた。
【0106】
c)結果および考察
混合物の重量および実験時間をさらに示す以下の表、ならびに図5は、通常の炭酸カルシウムと比較して、表面処理炭酸カルシウムの持続放出効果を明らかに例証している。
【0107】
【表4】

【実施例4】
【0108】
本発明の担体を含むさらなる製剤
1.練り歯磨き
a)表面反応炭酸カルシウムの調製
表面反応炭酸カルシウムを5m反応器で調製した。
【0109】
503μm(Sedigraph)を有する乾燥天然炭酸カルシウム414kgを容器に充填した。その後、固体含量15重量%が得られるまで、水を添加した。得られたスラリーを70℃に加熱し、次いで、200rpmで攪拌しながら、11分間、30重量%(乾燥/乾燥)に相当する量のリン酸(30質量%溶液の形態)を添加した。添加完了から5分後、温度が低下し、スラリーをドラムフィルタで濾過し、フラッシュドライヤを用いて乾燥した。
【0110】
以下の例に用いた表面反応炭酸カルシウムは、以下を有した。
【0111】
・数平均粒径d50(Sedigraph)4.5μm
・バラ様表面構造
・pH7.5から9.5
・BETで測定された比表面積:40m/g
【0112】
b)材料
【0113】
【表5】

【0114】
c)練り歯磨き製剤の調製
ソルビトール、モノフルオロリン酸ナトリウム、アセスルファムカリウム、および水を合わせて、十分に混合した。この混合物に、非表面反応炭酸カルシウム粉末/二酸化チタン粉末ブレンドを添加し、混合物で湿潤させた。次いで、上記の表面反応炭酸カルシウムとスペアミントアロマの混合物を、手動で攪拌しながら表面反応炭酸カルシウムに滴加し、その後、均質なペーストを得るために、攪拌しながらセルロースガムを添加した。ペーストをさらに、ゆっくりと攪拌し、室温に冷ます。次いで、必要であれば真空下、攪拌しながらラウリル硫酸ナトリウム水溶液/コカミドプロピルベタインをゆっくりと添加する。
【0115】
2.スキンケア製剤
この実施例は、スキンケア製剤において担体として作用する表面反応炭酸カルシウムへの水中油型エマルションの担持を記載する。
【0116】
油自体を表面反応炭酸カルシウムに担持させた場合、担持表面反応炭酸カルシウムを水性製剤に導入すると直ちに、油は水に駆逐される。その後、油は浮遊する巨視的小滴として可視となる。
【0117】
a)表面反応炭酸カルシウムの調製
表面反応炭酸カルシウムを10m反応器で調製した。
【0118】
501.6μm(Sedigraph)を有する乾燥天然炭酸カルシウム1700kgを容器に充填した。その後、固体含量27重量%が得られるまで、水を添加した。得られたスラリーを55℃に加熱し、次いで、100rpmで攪拌しながら、20分間、13重量%(乾燥/乾燥)に相当する量のリン酸(35質量%溶液の形態)を添加した。添加完了から10分後、温度が低下し、スラリーをSwecoフィルタで濾過し、ジェットドライヤを用いて乾燥した。
【0119】
以下の例に用いた表面反応炭酸カルシウムは、以下を有した。
・数平均粒径d50(Sedigraph)2.2μm
・バラ様表面構造
・pH7.5から9.5
・BETで測定された比表面積:>25m/g
b)スキンケア製剤の調製
【0120】
最初に、エマルションを調製した。この操作は、Kinematikaのロータ・ステータ溶解機Polytron PT300を用いて10000分−1で行った。エマルションを調製するために、脱塩水94.031gにPEG−40水素添加ヒマシ油1.028gを加え、乳化剤が十分に溶解するまで均質化した。続いて、アマランス油5.001gを滴加し、均質な乳白色エマルションが形成されるまで、十分に分散した。
【0121】
次のステップで、得られたエマルションを表面反応炭酸カルシウムに担持させた。このステップでは、表面反応炭酸カルシウム15.004gを陶製乳鉢(φ180mm)に秤量し、白色の光沢のあるクリームが形成されるまで、乳棒で混合しながらエマルション20.209gを表面反応炭酸カルシウムに滴加した。
【0122】
次いで、担持表面反応炭酸カルシウムを、以下の組成を有するゲル製剤と混ぜ合わせた。
【0123】
【表6】

【0124】
1,2−プロパンジオール、ブチレングリコール、および水を混合し、続いて、攪拌しながらアクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/VPコポリマーを散在させ、膨脹させてゲルにすることによって、ゲル製剤を調製した。次いで、攪拌しながらラウリルPEG/PPG−18/18メチコン、PEG−12ジメチコン、シアブレンドエマルション、シリコーンエラストマー懸濁液、リポソーム、非イオンエマルション、およびPhenochemを混合し、ゲルに添加した。このエマルションゲルに、25%乳酸メンチルエタノール溶液と10%水酸化ナトリウム溶液の混合物を添加し、得られたゲルを迅速に強く均質化し、さらに15分間攪拌した。
【0125】
スキンケア製剤を得るために、均質な白色の光沢のあるクリームが形成されるまで、担持表面反応炭酸カルシウム20gをゲル製剤100gと手作業で混ぜ合わせた。
【0126】
得られたクリームは、以下を有した。
・pH6.94
・ブルックフィールド粘度23480mPa・s(Brookfield DV−II(RT;RV5、30s/10rpm))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・表面反応天然または合成炭酸カルシウム、
・1種以上の活性剤
を含み、
前記1種以上の活性剤は、前記表面反応炭酸カルシウムと結合しており、ならびに前記表面反応天然または合成炭酸カルシウムは、天然または合成炭酸カルシウムと二酸化炭素および1種以上の酸との反応生成物であり、二酸化炭素は、酸処理によってその場で形成されるか、および/または外部源から供給される、活性剤を制御放出するための担体。
【請求項2】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムが固体の形態または、表面反応炭酸カルシウムを含み、20℃で測定されたpH6.0超を有する水性懸濁液の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の担体。
【請求項3】
天然炭酸カルシウムが、大理石、カルサイト、チョーク、およびドロマイト、石灰石、およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の担体。
【請求項4】
合成炭酸カルシウムが、アラゴナイト、バテライト、もしくはカルサイト鉱物学的結晶形態、またはこれらの混合物を含む沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の担体。
【請求項5】
酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、ヒドロ硫酸塩、リン酸、シュウ酸、およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の担体。
【請求項6】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムが、窒素およびISO9277に準じるBET法を用いて測定された比表面積5m2/gから200m2/g、好ましくは20m2/gから80m2/g、より好ましくは30m2/gから60m2/gを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の担体。
【請求項7】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムが、沈降法によって測定された重量中央粒径d500.1から50μm、好ましくは0.5から25μm、より好ましくは0.8から20μm、特に1から10μmを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の担体。
【請求項8】
表面反応天然または合成炭酸カルシウムが、水銀多孔度測定から算出された、20体積%から99体積%、好ましくは30体積%から70体積%、より好ましくは40体積%から60体積%、例えば50体積%の範囲内の単位粒子体積当たり細孔体積として求められた粒子内多孔率を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の担体。
【請求項9】
1種以上の活性剤が、表面反応炭酸カルシウム上に吸着および/または表面反応炭酸カルシウム中に吸収されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の担体。
【請求項10】
1種以上の活性剤が、医薬的、生物学的活性剤、芳香剤または香味剤、殺生物剤、殺有害生物剤、または除草剤、および殺菌剤を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の担体。
【請求項11】
活性剤が、トリクロサン、抗発癌物質、リモネン、ペパーミント、消泡剤のような界面活性剤、または軟化剤、鉱油、ケイ素、湿潤剤、ロウ、パラフィン、加水分解結合剤などの加水分解剤、ダスティング防止油、およびo−フェニルフェノール、およびブロノポールを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の担体。
【請求項12】
表面反応炭酸カルシウム担体を、1種または幾つかのさらなる担体材料と組み合わせることができることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の担体。
【請求項13】
1種または幾つかのさらなる担体材料が、チューインガム、練り歯磨き、カプセル剤、錠剤、クリーム、スプレー製剤、パッチ、石鹸、皮膚用クリームおよびサンスクリーンなどのクリーム、ファンデーション、ヘアケア製品、香水、足用パウダーまたは顔用パウダーなどのパウダー、リップスティック、デオドラント剤、または浴用添加剤、鉱油留分もしくはホホバ油などの植物油などの油、またはエチルアルコールなどのアルコールを含む群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の担体。
【請求項14】
表面反応炭酸カルシウムが、錠剤または粉末の形態であり得ることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の担体。
【請求項15】
医薬、生物学、化粧品、または農業適用例に使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の担体。
【請求項16】
・錠剤または粉末の形態である表面反応炭酸カルシウムを提供するステップと、
・適切な媒質中の溶液または懸濁液の形態である活性剤を提供するステップと、
・結合が完了するまで、表面反応炭酸カルシウムを活性剤と接触させるステップと、
・担持された担体を過剰の液体、溶液、または懸濁液から分離するステップとを特徴とする、担持された請求項1から15のいずれか一項に記載の担体を調製する方法。
【請求項17】
活性剤を標的環境に輸送するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の担体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−504577(P2012−504577A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529537(P2011−529537)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062633
【国際公開番号】WO2010/037753
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】