説明

新規な化合物、光酸発生剤および感光性樹脂組成物

【課題】有機媒体との相溶性が高く、熱および求核試薬に対して安定な、光酸発生剤としての性能を有する化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されることを特徴とする化合物;


(式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基等を表し;R2は水素原子、または置換もしくは非置換のアルキル基等を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基等を表し;pは1〜4を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光酸発生剤としての性能を有する新規な化合物、光酸発生剤および感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の集積度はますます高まる趨勢にある。高集積度を達成するためには、半導体基板の微細加工が必要である。
このような微細加工はフォトリソグラフィーによって行われている。加工時の解像度は露光光の波長に比例するので、加工の微細化を進めるためには必然的に露光光として用いる光の短波長化が必要となり、高圧水銀灯のg線(438nm)、i線(365nm)からKrFエキシマレーザー(248nm)、さらにArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化が進められてきた。
【0003】
フォトリソグラフィーによるパターン形成には、光照射によりプロトン酸を発生する光酸発生剤を含む感光性樹脂組成物が用いられている。このような感光性樹脂組成物は化学増幅型レジストと呼ばれるものであり、光照射によって光酸発生剤から発生したプロトン酸と、構成樹脂とが、その後の加熱処理によって連鎖的に反応して現像液に対して可溶性となるものである。
【0004】
上記光酸発生剤としては、スルホニウム塩誘導体が汎用されており、たとえば、KrFエキシマレーザーに対応したもの(非特許文献1)およびArFエキシマレーザーに対応したもの(特許文献1および2)がある。しかしながら、これらの光酸発生剤の性能も十分ではなく、新たな光酸発生剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−265436号公報
【特許文献2】特開平7−28237号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「J.Org.Chem.」、1978年、第43巻、p.3055
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機媒体との相溶性が高く、熱および求核試薬に対して安定な、光酸発生剤としての性能を有する化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光酸発生剤の分子構造および反応メカニズムの観点から鋭意研究を行った結果、スルホン酸エステルをエノールエステルの構造で有する化合物が光酸発生剤に要求される性能を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明には以下の事項が含まれる。
〔1〕下記式(1)で表されることを特徴とする化合物;
【0010】
【化1】

(式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、フッ素原子、ニトロ基、またはシアノ基を表し;R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基、またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜4を表す。)
【0011】
〔2〕前記式(1)中、pが2〜4であることを特徴とする〔1〕に記載の化合物。
〔3〕前記式(1)中、R1がアルキルジフルオロメチル基、アリールジフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアリール基であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の化合物。
【0012】
〔4〕前記式(1)中、R2が置換もしくは非置換の炭素環または置換もしくは非置換の複素環であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の化合物。
〔5〕前記式(1)中、R2がシクロアルキル基またはアリール基であることを特徴とする〔4〕に記載の化合物。
【0013】
〔6〕前記式(1)中、X1が炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数3〜12のアリール基であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕前記式(1)中、X1がメチル基、エチル基またはプロピル基であることを特徴とする〔6〕に記載の化合物。
【0014】
〔8〕前記式(1)中、X2が水素原子、アルキル基またはハロゲン原子であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の化合物。
〔9〕光酸発生剤であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の化合物。
【0015】
〔10〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の化合物を含む感光性樹脂組成物。
〔11〕塩基としてリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドを用いて、下記式(2)で表される化合物にスルホン酸無水物を反応させることを特徴とする下記式(1)で表される化合物の製造方法。
【0016】
【化2】

(式(2)中、R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基、またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜3を表す。)
【0017】
【化3】

(式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、フッ素原子、ニトロ基、またはシアノ基を表し;R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜3を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機媒体との相溶性が高く、熱および求核試薬に対して安定な光酸発生剤として用いられる新規化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はトリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの紫外・可視吸収スペクトルを示す。
【図2】図2はトリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルに中和剤としてピリジンを添加した後、光照射11時間後の19F−NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の化合物について詳細に説明する。
本発明の化合物は、式(1)で表されることを特徴とする。
【0021】
【化4】

式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、フッ素原子、ニトロ基、またはシアノ基を表す。式(1)で表される化合物は、後述するように光照射によってスルホン酸(HOSO21)を発生する。このため、R1は発生するスルホン酸の特性(酸性度など)を決める要因となるものであり、光酸発生剤の用途に応じて適宜選択する。
【0022】
1が置換もしくは非置換のアルキル基である場合、R1としては直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキル基、または炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基などが挙げられる。ここで、置換のアルキル基とは、炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基などをいい、非置換のアルキル基とは、直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキル基などをいう。具体的には、炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基またはヘプタフルオロプロピル基などのパーフルオロアルキル基;1,1−ジフルオロエチル(−CF2CH3)基または1,1−ジフルオロプロピル(−CF2CH2CH3)基などのアルキルジフルオロメチル基;1,1−ジフルオロ−1−フェニルメチル(−CF265)基、1,1−ジフルオロ−1−トリルメチル(−CF264CH3)基、1,1−ジフルオロ−2−フェニルエチル(−CF2CH265)基または1,1−ジフルオロ−1−ナフチルメチル(−CF2107)基などのアリールジフルオロメチル基;フルオロメチル基またはジフルオロメチル基などが挙げられ、直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基またはn−エイコシル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基またはt−ブチル基などの分岐状アルキル基;その他、ベンジル基などが挙げられる。
【0023】
1が置換もしくは非置換の炭素環である場合、R1としては環状アルキル基、炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数6〜10のフッ素置換アリール基またはフルオロアルキル基で置換された炭素原子数7〜11のアリール基などが挙げられる。ここで、置換の炭素環とは、炭素原子数6〜10のフッ素置換アリール基やフルオロアルキル基で置換された炭素原子数7〜11のアリール基などの、炭素原子以外の原子を含む原子団からなる官能基で置換された炭素環をいい、非置換の炭素環とは、環状アルキル基や炭素原子数6〜14のアリール基などであって、該官能基が置換されていないものをいう。置換の炭素環および非置換の炭素環のいずれも、連結基を介さず、スルホン基の硫黄原子に直接結合する。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、3−メトキシシクロペンチル基、3−カルボキシシクロペンチル基、3−メチルカルボニルシクロペンチル基、3−メトキシカルボニルシクロペンチル基、3−ジメチルアミノシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、3−トリフルオロメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、4−カルボキシシクロヘキシル基、4−ジメチルアミノシクロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などの環状アルキル基;フェニル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、4−メチルカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノカルボニルフェニル基、1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−カルボキシル−1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または9−アントラセニル基などのアリール基;ペンタフルオロフェニル基またはヘプタフルオロナフチル基などのパーフルオロアリール基;2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基または4−フルオロフェニル基など;2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基またはペンタフルオロエチルフェニル基などのフルオロアルキル基で置換されたアリール基などが挙げられる。
【0024】
1が置換もしくは非置換の複素環である場合、R1としては炭素原子数2〜9のN、OおよびSのうち少なくとも1つ以上のヘテロ原子を含む複素環基または置換複素環基などが挙げられる。ここで、置換の複素環とは上記置換複素環をいい、非置換の複素環とは官能基を有しないものをいう。また、これらの複素環はいずれも連結基なしにスルホン基の硫黄原子に直接結合する。具体的には、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリジミニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフリル基、ピロリル基、チアゾリル基、ピリミジル基、キノリル基またはインドリル基などの複素環基;2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基またはペンタフルオロエチルフェニル基などの置換複素環基などが挙げられる。
【0025】
上記した中でもR1としては、炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基などが好ましく、アルキルジフルオロメチル基、アリールジフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアリール基などがより好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基またはヘプタフルオロプロピル基などが特に好ましい。
【0026】
2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基またはハロゲン原子を表す。なお「置換もしくは非置換」は、炭素原子以外の原子を含む原子団からなる官能基で置換されているか否かで区別される。
【0027】
2が置換もしくは非置換のアルキル基である場合、R2としては直鎖状もしくは分岐状の炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数1〜12のフッ素置換アルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基またはn−エイコシル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基またはt−ブチル基などの分岐状アルキル基;トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、3−フルオロシクロペンチル基、3−トリフルオロメチルシクロペンチル基または4−フルオロシクロヘキシル基などのフッ素置換アルキル基などを表す。
【0028】
2が置換もしくは非置換のアルケニル基である場合、R2としては直鎖状または分岐状の炭素原子数1〜20のアルケニル基などが挙げられる。具体的には、エテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−ヘプテニル基、n−オクテニル基、n−ノネニル基、n−デセニル基、n−ウンデセニル基、n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基、n−ノナデセニル基またはn−エイコセニル基などの直鎖状アルケニル基;イソプロペニル基、イソブテニル基またはs−ブテニル基などの分岐状アルケニル基などが挙げられる。
【0029】
2が置換もしくは非置換のアルキニル基である場合、R2としては直鎖状の炭素原子数1〜20のアルキニル基などが挙げられる。具体的には、エチニル基、n−プロピニル基、n−ブチニル基、n−ペンチニル基、n−ヘキシニル基、n−ヘプチニル基、n−オクチニル基、n−ノニニル基、n−デシニル基、n−ウンデシニル基、n−ドデシニル基、n−トリデシニル基、n−テトラデシニル基、n−ペンタデシニル基、n−ヘキサデシニル基、n−ヘプタデシニル基、n−オクタデシニル基、n−ノナデシニル基またはn−エイコシニル基などの直鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0030】
2が置換もしくは非置換の炭素環である場合、R2としては炭素原子数6〜14のアリール基、炭素原子数1〜20の環状アルキル基、環状アルケニル基または環状アルキニル基などが挙げられる。具体的には、フェニル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、4−メチルカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノカルボニルフェニル基、1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−カルボキシル−1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基または9−アントラセニル基などのアリール基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、3−メトキシシクロペンチル基、3−カルボキシシクロペンチル基、3−メチルカルボニルシクロペンチル基、3−メトキシカルボニルシクロペンチル基、3−ジメチルアミノシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、4−カルボキシシクロヘキシル基、4−ジメチルアミノシクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などの環状アルキル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、3−メチルシクロペンテニル基、3−メトキシシクロペンテニル基、3−カルボキシシクロペンテニル基、3−メチルカルボニルシクロペンテニル基、3−メトキシカルボニルシクロペンテニル基、3−ジメチルアミノシクロペテニル基、シクロヘキセニル基、4−メチルシクロヘキセニル基、4−メトキシシクロヘキセニル基、4−カルボキシシクロヘキセニル基、4−ジメチルアミノシクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基またはシクロオクテニル基などの環状アルケニル基;シクロプロピニル基、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、2−メチル−3−シクロペンテニル基、2−メトキシ−3−シクロペンテニル基、2−カルボキシ−3−シクロペンテニル基、2−メチルカルボニル−3−シクロペンテニル基、シクロヘキシニル基、2−メチル−3−シクロヘキシニル基、2−メトキシ−3−シクロヘキシニル基、2−カルボキシ−3−シクロヘキシニル基、2−ジメチルアミノ−3−シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基またはシクロオクチニル基などの環状アルキニル基などが挙げられる。
【0031】
2が置換もしくは非置換の複素環である場合、R2としては炭素原子数2〜9のN、OおよびSのうち少なくとも1つ以上のヘテロ原子を含む複素環基または置換複素環基が挙げられる。具体的には、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリジミニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロフリル基、ピロリル基、チアゾリル基、ピリミジル基、キノリル基またはインドリル基などが挙げられる。
【0032】
なお、R2についてもR1と同様に「置換もしくは非置換のアルキル基」、「置換もしくは非置換のアルケニル基」および「置換もしくは非置換のアルキニル基」中、「置換もしくは非置換」とは、炭素原子以外の原子を含む原子団からなる官能基で置換されているか否かで区別され、例えば、該官能基で置換されたものは「置換のアルキル基」であり、それ以外は「非置換のアルキル基」である。また、「炭素環」および「複素環」は、連結基を介さずにスルホン基の硫黄原子に直接結合するものをさす。
【0033】
2がアセトアミド基である場合、R2としては炭素原子数2〜10のアセトアミド基などが挙げられる。具体的には、アセチルアミド基、プロピオニルアミド基、ブチリルアミド基、イソブチリルアミド基、ピバロイルアミド基またはベンゾイルアミド基などが挙げられる。
【0034】
2がアミノスルホニル基である場合、R2としては炭素原子数2〜10のアミノスルホニル基などが挙げられる。具体的には、メシルアミド基、n−プロパンスルホニルアミド基、n−ブタンスルホニルアミド基、イソブタンスルホニルアミド基、t−ブタンスルホニルアミド基またはベンゼンスルホニルアミド基などが挙げられる。
【0035】
2がハロゲン原子である場合、R2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
上記した中でもR2としては、分岐状アルキル基、置換もしくは非置換の炭素環または置換もしくは非置換の複素環が好ましく、t−ブチル基、シクロアルキル基またはアリール基がより好ましく、t-ブチル基、ナフチル基またはフェニル基が特に好ましい。
【0036】
1はアルキル基またはアリール基を表す。具体的には、炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数3〜12のアリール基を表す。上記した中でもX1としては、メチル基、エチル基またはプロピル基などが好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0037】
2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表す。
【0038】
2がアルキル基である場合、X2としては直鎖状、分岐状または環状の炭素原子数1〜20のアルキル基などが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基またはベンジル基などの直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基またはt−ブチル基などの分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、3−メトキシシクロペンチル基、3−カルボキシシクロペンチル基、3−メチルカルボニルシクロペンチル基、3−メトキシカルボニルシクロペンチル基、3−ジメチルアミノシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−メトキシシクロヘキシル基、4−カルボキシシクロヘキシル基、4−ジメチルアミノシクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などの環状アルキル基などが挙げられる。
【0039】
2がアルコキシ基である場合、X2としては炭素原子数1〜20のアルコキシ基などが挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブチロキシ基、n−ぺンチロキシ基、n−ヘキシロキシ基、n−へプチロキシ基、n−オクチロキシ基、イソプロポキシ基、イソブチロキシ基、s−ブチロキシ基またはt−ブチロキシ基などが挙げられる。
【0040】
2がアルコキシカルボニル基である場合、X2としては炭素原子数2〜13のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基、ネオペントキシカルボニル基、アミロキシカルボニル基、ヘキソキシカルボニル基、ヘプトキシカルボニル基、オクトキシカルボニル基、2−エチルヘキソキシカルボニル基、ヘプトキシカルボニル基またはオクトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0041】
2がアシル基である場合、X2としては炭素原子数2〜10のアシル基などが挙げられる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基またはベンゾイル基などが挙げられる。
【0042】
2がアルキルチオ基である場合、X2としては炭素原子数1〜20のアルキルチオ基などが挙げられる。具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−へキシルチオ基、n−へプチルチオ基、n−オクチルチオ基、n−ノニルチオ基、n−デシルチオ基、n−ウンデシルチオ基、n−ドデシルチオ基、n−トリデシルチオ基、n−テトラデシルチオ基、n−ペンタデシルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基、n−へプタデシルチオ基、n−オクタデシルチオ基、n−ノナデシルチオ基、n−エイコシルチオ基またはベンジルチオ基などの直鎖状アルキルチオ基;イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基またはt−ブチルチオ基などの分岐状アルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、3−メチルシクロペンチルチオ基、3−メトキシシクロペンチルチオ基、3−カルボキシシクロペンチルチオ基、3−メチルカルボニルシクロペンチルチオ基、3−メトキシカルボニルシクロペンチルチオ基、3−ジメチルアミノシクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、4−メチルシクロヘキシルチオ基、4−メトキシシクロヘキシルチオ基、4−カルボキシシクロヘキシルチオ基、4−ジメチルアミノシクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基またはシクロオクチルチオ基などの環状アルキルチオ基などが挙げられる。
【0043】
2がアリールチオ基である場合、X2としては炭素原子数6〜14のアリールチオ基などが挙げられる。具体的には、フェニルチオ基、2,4−キシリルチオ基、2,5−キシリルチオ基、3,4−キシリルチオ基、3,5−キシリルチオ基、o−トリルチオ基、m−トリルチオ基、p−トリルチオ基、2−メトキシフェニルチオ基、3−メトキシフェニルチオ基、4−メトキシフェニルチオ基、4−カルボキシフェニルチオ基、4−メチルカルボニルフェニルチオ基、4−メトキシカルボニルフェニルチオ基、ジメチルアミノカルボニルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、4−メチル−1−ナフチルチオ基、4−メトキシ−1一ナフチルチオ基、4−カルボキシル−1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、1−アントラセニルチオ基または9−アントラセニルチオ基などが挙げられる。
【0044】
2がハロゲン原子である場合、X2としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
上記した中でもX2としては、水素原子、アルキル基またはハロゲン原子が好ましく、水素原子、メチル基またはハロゲン原子がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0045】
pは1〜4を表す。上記した中でもpとしては2〜4が好ましく、2が特に好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、上記置換基を1種単独で、または2種以上を組み合わせて有してもよい。
【0046】
[化合物の製造方法]
本発明の化合物の製造方法は、塩基としてリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドを用いて、下記式(2)で表される化合物にスルホン酸無水物を反応させることを特徴とする。
【0047】
式(2)で表される化合物の環状部分のα水素を引き抜くためには種々の塩基を用いることが可能であるが、これらの塩基の多くは遊離するスルホン酸(HOSO2R)と副反応を起こし、副生成物を生じるため、上記式(1)で表される化合物の単離・精製が困難である。しかしながら、2,2,6,6−テトラメチルピペリジドを用いれば、4個のメチル基が立体的な障壁となるため、スルホン酸(HOSO2R)との副反応が抑制され、反応後に式(1)で表される化合物の単離・精製を容易に行うことができる。
【0048】
【化5】

式(2)中、R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基、またはハロゲン原子を表し、X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し、X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、pは1〜3を表す。ここで、R2、X1、X2およびpは、上記式(1)中のR2、X1、X2およびpについて定義したのと同じである。
上記式(1)で表される化合物の製造方法の具体例を以下に示す。
【0049】
【化6】

まず、Scheme(I)について説明すると、シクロペンタノンおよびピロリジンを反応させて得られた1−ピロリジノ−1−シクロペンテンと、1−ナフトイルクロリドとを1,4−ジオキサン中で撹拌後、加熱還流し、塩酸を加えた後さらに加熱還流して2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンを得る。
【0050】
次いで、Scheme(II)に示すように、得られた2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンをアセトン中、炭酸カリウムおよびヨウ化メチルを加えて撹拌することにより、2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンを得る。
【0051】
次いで、Scheme(III)に示すように、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンをテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた溶液にn−ブチルリチウムを加えて撹拌後、2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンを加える。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を加えて撹拌してトリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルを得る。ここで、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンは塩基として用いられ、2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンの環状部分のα水素を引き抜く。これにより生成するエノラートアニオンに対して、スルホン酸無水物を反応させることにより、トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルが得られる。
【0052】
なお、上記合成例は、本発明の化合物の製造方法の一例を示すものであり、上記製造方法に限らず、種々の公知の方法を使って合成することができる。
【0053】
[化合物の物性評価]
上記式(1)で表される化合物は、次に示す(i)〜(iii)の特徴がある。
(i) 式(1)で表される化合物は、イオン性ではなく、中性の有機分子から構成されているので、有機媒体との相溶性が高い。したがって、例えば、感光性樹脂組成物の成分として用いる場合、樹脂などの有機媒体に対して任意の割合で、きわめて均一に分散させることができる。このような感光性樹脂組成物をフォトリソグラフィーに用いれば、形成パタ−ンのエッジが粗くなることもなく、きわめて高精度の微細加工が可能である。
【0054】
(ii) 式(1)で表される化合物中のR2の原料である酸ハライドを適当に選択することにより、種々のR2を化合物に導入することができる。つまり、R2によって、光照射に対する吸収波長を柔軟に変えることができる。例えば、R2がナフタレンのように共役系の置換基であれば、より長波長の光を吸収でき、R2がメチル基またはt−ブチル基であれば、より短波長の光を吸収できるように化合物を設計することができる。
また、R2の置換基の分子量を大きくすれば、スルホン酸(R1SO3H)が脱離した後にガスが発生しない。
【0055】
(iii) 式(1)の構造においては、−OSO21のα位の炭素は二重結合を有している。つまり、この状態ではSP2軌道上に−OSO21があるので暗反応下では安定である。ここへ光照射すると、ノリッシュI型反応が起こり、カルボニル炭素とα炭素との間がホモリティック開裂する。ホモリティック開裂したカルボニル炭素側のラジカルがβ位の水素を引き抜いて、アルデヒドと環状ジエンが形成される。その後、この環状ジエンに、例えば、露光後のポストベークのような熱を加えると、環状ジエンが転位を引き起こし、−OSO21がSP3軌道上にくる構造が形成される。この構造では容易に求核置換反応が起こるため、有効に酸(R1SO3H)が発生する。
【0056】
Scheme(IV)は、式(1)で表される化合物の一例について、光照射による酸発生の反応機構を示したものである。
【0057】
【化7】

〔光酸発生剤および感光性樹脂組成物〕
本発明の式(1)で表される化合物は光酸発生剤として用いられる。
【0058】
本発明の光酸発生剤にスルホン酸を発生させるために照射する光としては、R2の構造で決定されるが、例えばR2がナフタレンのように共役系の置換基であれば、より長波長の光を吸収でき、さらにはR2の構造の選択によって、より短波長側での使用が可能となり、例えば等圧水銀灯の313nm、254nmの共鳴線、KrFエキシマレーザー光(248nm)およびArFエキシマレーザー光(193nm)を用いることができる。なかでもArFエキシマレーザー光が好適に用いられる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記光酸発生剤を含むことを特徴とする。上記光酸発生剤は単独でも用いられるが、2種以上を混合して用いてもよい。本発明の感光性樹脂組成物における上記光酸発生剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分100重量部に対して通常0.1〜40重量部、好ましくは1〜25重量部である。この含有率が0.1重量部未満では感度が著しく低下し、パタ−ンの形成が困難である。また40重量部を超えると、均−な塗布膜の形成が困難になり、さらに現像後には残さ(スカム)が発生し易くなるなどの問題が生ずる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物を構成する樹脂としては、使用する光に対して高透明性であり、かつ、酸に対して不安定な基を有する樹脂が用いられる。例えば下記式(V)で表される樹脂が用いられる。
【0061】
【化8】

式(V)中、nは5〜1000、好ましくは10〜200の正の整数、R3は表1に示すようなトリシクロデカニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニルオキシエチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基またはアダマンチル基、R4はt−ブチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、テトラヒドロピラニル基または3−オキソシクロヘキシル基、xは0.1〜1、好ましくは0.2〜0.7を表す。
【0062】
【表1】

また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて界面活性剤、色素、安定剤、塗布性改良剤、染料および架橋剤などの他の成分を添加してもよい。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布する際に用いる溶剤としては、感光性樹脂組成物を十分に溶解し、かつ、その溶液がスピンコート法で均一な塗布膜が形成可能な有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸2−メトキシブチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、N−メチル−2−ピロリジノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノール、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて微細パタ−ンの形成を行う場合の現像液としては、感光性樹脂組成物の溶解性に応じて適当な有機溶媒またはその混合溶媒、あるいは適度な濃度のアルカリ溶液またはアルカリ水溶液を選択すればよい。使用される有機溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどが挙げられる。また、使用されるアルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムおよびアンモニアなどの無機アルカリ類;エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミンおよびトリエチルアミンなどの有機アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルヒドロキシメチルアンモニウムヒドロキシドおよびトリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アンモニウム塩などを含む溶液あるいは水溶液が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィーについて説明する。まず本発明の感光性樹脂組成物を塗布してレジスト膜を形成し、ArFエキシマレ−ザ−などの照射光によって露光すると、レジスト膜の露光部に含まれる光酸発生剤がスルホン酸を発生する。
【0066】
例えば、式(V)(R4はt−ブチル基、kは正の整数を表す。)で表される樹脂を用いたとき、光照射により発生したスルホン酸はScheme(VI)に従って樹脂のt−ブトキシ基に作用し、カルボン酸および2−メチルプロペンを生成し、その結果レジスト膜の溶解性の変化を誘起する。
【0067】
【化9】

露光に引き続く加熱処理(ポストエクスポージャベイク)を所定温度で行うと、この脱保護反応が触媒反応的に進行し、感度の増幅が起こる。この反応により官能基が水酸基に変化した樹脂はアルカリ可溶性となるため、アルカリ性の現像液を使用することにより樹脂が溶け出し、結果として露光部が溶けてポジ型のパターンを形成する。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
反応生成物の同定および光酸発生機能の評価方法は以下の通りである。
【0069】
(1)融点(mp)
装置:DSC−60((株)島津製作所製)
測定方法:DSC
(2)核磁気共鳴法(1H−NMRおよび19F−NMR)
装置:BRUKER AC−300(ブルカー(株)製)
測定条件
内部基準:TMS
1H共鳴周波数:300MHz
(3)紫外・可視(UV−VIS)分光法
装置:U−3410 spectrophotomete(日立社製)
測定方法:ダブルビーム測定方式
測定条件
溶媒:ベンゼン
【0070】
[実施例1]トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの製造
(1)1−ピロリジノ−1−シクロペンテンの合成
300ml二口ナス型フラスコにp−トルエンスルホン酸一水和物1.2g(6.2×10-3mol)および撹拌子を入れ、クライゼン型連結管、リービッヒ冷却管、蒸留連結管、および蒸留物を受けるナス型フラスコ(うち1つは二口で、適量の水酸化カリウムを入れておいた)で蒸留装置を組んだ。Ar置換をした後、ベンゼン200ml、シクロペンタノン27ml(0.30mol)およびピロリジン50ml(0.60mol)を系内に加え、湯浴で加熱し、70℃で2時間撹拌した。
【0071】
90℃まで昇温させ、共沸を開始した。4時間撹拌を続けたが、途中で二度蒸留したベンゼン層をシリンジで抜き取って300ml二口ナス型フラスコに戻した。
さらに温度を上げてベンゼンを飛ばした。そしてこの反応装置の隣にもう一つ蒸留装置を組んでおき、ベンゼンを除去した反応溶液をキャニュレーションでもう一方の蒸留装置へ移した。そして減圧蒸留により1−ピロリジノ−1−シクロペンテンを得た。
結果を以下に示す。
収量:35ml(0.24mol)
収率:80%
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.82−1.88(m,cyclopentene&pyrrolidino,−CH2CH2CH2−,6H),2.35(m,cyclopentene,>C=CHCH2CH2−,2H),2.41−2.44(m,cyclopentene,>CCH2CH2−,2H),3.07(m,pyrrolidino,−NCH2CH2−,4H),4.05(s,cyclopentene,>C=CHCH2−,1H)
【0072】
【化10】

(2)1−ナフトイルクロリドの合成
50ml二口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、三方コックを付けた還流管を、もう一方にセプタムラバーを付け、真空乾燥した。
【0073】
Ar置換した後、セプラムラバーを外してArガスを流しながら1−ナフトエ酸5.0g(2.9×10-2mol)を系内に入れ、セプタムラバーを戻して塩化チオニル6.6ml(9.0×10-2mol)およびジメチルホルムアミド(DMF)10μl(1.3×10-4mol)を注入し、セプタムラバーを玉栓に換えて撹拌した。
【0074】
2時間後に加熱を始め、1.5時間の加熱還流を行った。放冷した後、真空ポンプで2時間減圧して塩化チオニルを飛ばした。
得られた1−ナフトイルクロリドは不安定なため、次の反応に全量をそのまま用いた。
【0075】
【化11】

(3)2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノン
300ml二口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、三方コックの付いた還流管を、もう一方にはセプタムラバーを付け、真空乾燥した後、Ar置換した。乾燥ジオキサン30mlおよび実施例1の(1)で合成した1−ピロリジノ−1−シクロペンタン8.8ml(6.0×10-2mol)を系内に入れ、常に系内が10℃弱になるような氷浴に浸け、撹拌した。
【0076】
乾燥ジオキサン30mlに溶かしておいた1−ナフトイルクロリドを2時間かけて滴下し、氷浴を除いて室温で68時間撹拌した。
1時間加熱還流し、1N塩酸30mlを加えて後、さらに1時間加熱還流した。
【0077】
ジエチルエーテルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)により単離・精製し、2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンを得た。
結果を以下に示す。
収量:1.7g(7.1×10-3mol)
収率:24%
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.86−1.96(m,−CH2CH2CH2−,2H),2.44−2.49(t,>CHCH2CH2−,2H),2.53−2.58(t,−COCH2CH2−,2H),7.45−7.64(m,naphthyl,4H),7.88−7.95(m,naphthyl,2H),8.06−8.17(m,naphthyl,1H),14.05−14.25(s,enol,1H)
【0078】
【化12】

(4)2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンの合成
100mlナス型フラスコに2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノン1.7g(7.1×10-3mol)および撹拌子を入れ、三方コックおよびセプタムラバーを付け、真空乾燥した後Ar置換した。モレキュラーシーブスで乾燥させたアセトン20mlを系内に加え、撹拌して完全に溶解させた。氷浴にした後、炭酸カリウム4.0g(2.9×10-2mol)を系内に入れ、さらにヨウ化メチル1.5ml(2.4×10-2mol)を加えた。10分後に氷浴を除き、9時間撹拌した。
【0079】
反応溶液をろ過し、酢酸エチルを加え、ロータリーエバポレーターによりアセトンを除去した。蒸留水に空け、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン)により単離・精製し、2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノンを得た。
結果を以下に示す。
収量:1.5g(5.9×10-3mol)
収率:84%
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.41(s,−CH3,3H),1.90−2.07(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,−COCH2CH2−,3H),2.37−2.45(m,−CH2CH2CH2−,2H),2.61−2.72(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,1H),7.42−7.49(m,naphthyl,2H),7.50−7.55(m,naphthyl,2H),7.74−7.78(m,naphthyl,1H),7.84−7.93(m,naphthyl,2H)
【0080】
【化13】

(5)トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの合成
50ml二口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、三方コックおよびセプタムラバーを付け、真空乾燥した後Ar置換した。乾燥THF8mlおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン0.7ml(4.1×10-3mol)を入れ、撹拌し、メタノールバスで−70℃付近まで冷やした。
【0081】
30分後にn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)2.6ml(4.2×10-3mol)を滴下した。その25分後に前以て乾燥THF5mlに溶かしておいた2−メチル−2−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペンタノン0.87g(3.5×10-3mol)を加えた。さらにその20分後にトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.7ml(4.3×10-3mol)を加えた。
【0082】
40分撹拌後にジエチルエーテルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジエチルエーテル:ヘキサン=1:8)により単離・精製し、トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルを得た。
結果を以下に示す。
収量:380mg(9.9×10-4mol)
収率:29%
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.54(s,−CH3,3H),2.01−2.11(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,1H),2.33−2.50(m,=CHCH2CH2−,2H),2.58−2.65(m,>CCH3CH(H)CH2−,1H),5.82−5.84(t,>CCHCH2−,1H),7.45−7.48(m,naphthyl,2H),7.51−7.55(m,naphthyl,2H),7.74−7.77(m,naphthyl,1H),7.86−7.94(m,naphthyl,2H)
19F−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):2.10(s,−CF3,3F)
【0083】
【化14】

[実施例2]トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの製造
(1)2−ナフトイルクロリドの合成
50ml二口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、三方コックを付けた還流管を、もう一方にセプタムラバーを付け、真空乾燥した。
【0084】
Ar置換した後、セプラムラバーを外してArガスを流しながら2−ナフトエ酸4.6g(2.7×10-2mol)を系内に入れ、セプタムラバーを戻して塩化チオニル6.0ml(8.2×10-2mol)およびDMF10μl(1.3×10-4mol)を注入し、セプタムラバーを玉栓に換えて撹拌した。
【0085】
少し加熱して反応を促し、1時間は室温で撹拌し、その後1.5時間の加熱還流を行った。放冷した後、真空ポンプで2時間減圧して塩化チオニルを飛ばした。得られた1−ナフトイルクロリドは不安定なため、次の反応に全量をそのまま用いた。
【0086】
【化15】

(2)2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノンの合成
300ml二口ナス型フラスコに撹伴子を入れ、三方コックの付いた還流管を、もう一方にはセプタムラバーを付け、真空乾燥した後、Ar置換した。乾燥ジオキサン30mlおよび1−ピロリジノ−1−シクロペンテン7.9ml(5.4×10-2mol)を系内に入れ、常に系内が10℃弱になるような氷浴に浸け、撹拌した。
【0087】
乾燥ジオキサン30mlに溶かしておいた2−ナフトイルクロリドを3.5時間かけて滴下し、氷浴を除いて室温で22時間撹拌した。
1時間加熱還流をし、1N塩酸27mlを加えた後、さらに1時間加熱還流をした。
【0088】
ジエチルエーテルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。ジイソプロピルエーテルで再結晶し、2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノンを得た。
結果を以下に示す。
【0089】
【化16】

収量:5.8g(2.4×10-2mol)
収率:90%
融点:71〜82℃
1H−NMR(300MHz、CDCl3
keto体
δ(ppm):1.95−2.05(m,>CHCH(H)CH2−,1H),2.22−2.37(m,−CH2CH2CH2−,2H),2.38−2.43(t,−COCH2CH2−,2H),2.61−2.68(m,>CHCH(H)CH2−,1H),4.40−4.45(t,>CHCH2−,1H),7.50−7.61(m,naphthyl,2H),7.83−7.93(m,naphthyl,2H),7.98−8.00(d,naphthyl,1H),8.04−8.07(dd,naphthyl,1H),8.54(s,naphthyl,1H)
enol体
δ(ppm):1.95−2.05(m,−CH2CH2CH2−,2H),2.50−2.55(t,>CHCH2CH2−,2H),2.95−3.00(t,−COCH2CH2−,2H),7.50−7.61(m,naphthyl,2H),7.83−7.93(m,naphthyl,4H),8.27(s,naphthyl,1H),14.63(s,−OH,1H)
【0090】
(3)2−メチル−2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノンの合成
200ml二口ナス型フラスコに2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノン4.0g(1.7×10-2mol)および撹伴子を入れ、三方コックおよびセプタムラバーを付け、真空乾燥した後Ar置換した。モレキュラーシーブスで乾燥させたアセトン50mlを系内に加え、撹拌して完全に溶解させた。氷浴にした後、炭酸カリウム9.3g(6.7×10-2mol)を系内に入れ、さらにヨウ化メチル3.7ml(5.9×10-2mol)を加えた。10分後に氷浴を除き、24時間撹拌した。
【0091】
反応溶液をろ過し、酢酸エチルを加え、ロータリーエバポレーターによりアセトンを除去した。蒸留水に空け、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;塩化メチレン:酢酸エチル=40:1)により単離・精製し、2−メチル−2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノンを得た。
収量:2.6g(1.0×10-2mol)
収率:61%
融点:57〜59℃
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.56(s,−CH3,3H),1.92−2.02(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,1H),2.03−2.11(m,−CH2CH(H)CH2−,−COCH(H)CH2−,2H),2.40−2.50(m,−CH2CH(H)CH2−,1H),2.53−2.63(m,−COCH(H)CH2−,1H),2.85−2.93(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,1H),7.52−7.62(m,naphthyl,2H),7.84−7.91(m,naphthyl,3H),7.93−7.96(dd,naphthyl,1H),8.41(s,naphthyl,1H)
【0092】
【化17】

(4)トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの合成
50ml二口ナス型フラスコに撹拌子を入れ、三方コックおよびセプタムラバーを付け、真空乾燥した後Ar置換した。乾燥THF10mlおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリジン0.8ml(4.8×10-3mol)を入れ、撹拌し、メタノールバスで−70℃付近まで冷やした。
【0093】
20分後にn−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)3.0ml(4.8×10-3mol)を滴下した。その1時間後に前以て乾燥THF5mlに溶かしておいた2−メチル−2−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペンタノン1.0g(4.0×10-3mol)を加えた。さらにその25分後にトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.8ml(4.8×10-3mol)を加えた。
【0094】
1時間撹拌後にジエチルエーテルで抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジエチルエーテル:ヘキサン=1:5)により単離・精製し、トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−2−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルを得た。
結果を以下に示す。
収量:680mg(1.8×10-3mol)
収率:45%
1H−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):1.66(s,−CH3,3H),2.22−2.31(m,>C(CH3)CH(H)CH2−,1H),2.57−2.64(m,=CHCH2CH2−,2H),2.74−2.81(m,>CCH3CH(H)CH2−,1H),5.87−5.89(t,>CCHCH2−,1H),7.53−7.63(m,naphthyl,2H),7.87−7.96(m,naphthyl,4H),8.44(s,naphthyl,1H)
19F−NMR(300MHz、CDCl3
δ(ppm):2.02(s,−CF3,3F)
【0095】
【化18】

[実施例3]トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの光酸発生機能の評価
実施例1で製造したトリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルの紫外・可視(UV−VIS)吸収スペクトルを測定したところ、波長313nmにおけるモル吸光係数は2300であった。UV−VIS吸収スペクトルを図1に示す。
【0096】
続いて、トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステル4.2mg(1.1×10-5mol)をスペクトル測定用ベンゼン4.0mlに溶解させた溶液に、中和剤としてピリジン0.1μlを添加し、凍結脱気後、光照射を行った。光照射には、キセノンランプ光から回折格子で選び出した中心波長313nmの光(バンド幅15nm)を使用した。19F−NMR測定から、トリフルオロメタンスルホン酸のアミン塩の発生効率を求めた。光照射11時間後の19F−NMRスペクトルを図2に示す。
【0097】
反応後の19F−NMRスペクトルでは、トリフルオロメタンスルホン酸5−メチル−5−(ナフタレン−1−カルボニル)シクロペント−1−エニルエステルのトリフルオロメチル基のシグナルが1.64ppmに観測され、ピリジントリフラートのシグナルが−1.99ppmに観測された。これらの積分値より、酸発生の量子収率は、転化率7.4%の段階で0.013であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする化合物;
【化1】

(式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、フッ素原子、ニトロ基、またはシアノ基を表し;R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアリール基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜4を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中、pが2〜4であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1)中、R1がアルキルジフルオロメチル基、アリールジフルオロメチル基、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアリール基であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記式(1)中、R2が置換もしくは非置換の炭素環または置換もしくは非置換の複素環であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
前記式(1)中、R2がシクロアルキル基またはアリール基であることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記式(1)中、X1が炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数3〜12のアリール基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
前記式(1)中、X1がメチル基、エチル基またはプロピル基であることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記式(1)中、X2が水素原子、アルキル基またはハロゲン原子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
光酸発生剤であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の化合物を含む感光性樹脂組成物。
【請求項11】
塩基としてリチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジドを用いて、下記式(2)で表される化合物にスルホン酸無水物を反応させることを特徴とする下記式(1)で表される化合物の製造方法。
【化2】

(式(2)中、R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜3を表す。)
【化3】

(式(1)中、R1は置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、フッ素原子、ニトロ基、またはシアノ基を表し;R2は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素環、置換もしくは非置換の複素環、アセトアミド基、アミノスルホニル基またはハロゲン原子を表し;X1はアルキル基またはアルコキシ基を表し;X2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し;pは1〜3を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−46435(P2012−46435A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188089(P2010−188089)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(390033927)アイバイツ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】