説明

新規な化合物、及びその利用

【課題】新規な化合物、及びその利用を提供する。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1)又は(2)、
【化1】


(R1〜R10は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、R1〜R4から選択される2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される2つの置換基同士は結合して環を形成してもよい。)
で表される化合物、及びこれらの利用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘミポルフィラジン系化合物は、広義のフタロシアニン類縁体に分類され、フタロシアニンにおける対向する2つのピロールユニットが、例えば、ピリジンユニット、トリアゾールユニット、ベンゼンユニット等のユニットで置換された基本骨格を有する化合物の総称である。
【0003】
フタロシアニン及びその類縁体は、色素材料又は半導体材料等として工業へ応用されている。例えば、フタロシアニンは金属と錯体を形成して、青色から緑色を呈する色素材料として知られている。また、フタロシアニンのベンゼン環をナフタレン環に置き換えたナフタロシアニンと称される類縁体は、近赤外領域に主吸収帯を持つ色素材料として知られている。
【0004】
従って、広義のフタロシアニン類縁体であるヘミポルフィラジン系化合物についても、工業的な応用の可能性を含めて様々な研究が行われている。
【0005】
例えば、ヘミポルフィラジン系化合物である、ジヒドロキシジカルバヘミポルフィラジン及びテトラヒドロキシジカルバヘミポルフィラジンが合成され、Ag原子との錯体の立体構造が調べられた(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N. Barone, et al. Eur. J. Inorg. Chem. 2010, 775-780.(2009年12月18日オンライン公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記非特許文献1も含めて、ヘミポルフィラジン系化合物は、実用的な利用方法につながりうる報告が希少であり、新規な特性を示すヘミポルフィラジン系化合物の開発が切望されている。
【0008】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、新規なヘミポルフィラジン系化合物、及びその利用を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、ピロールユニット同士、及びベンゼンユニット同士が対向する骨格を持つヘミポルフィラジン系化合物において、対向するベンゼンユニットの夫々にカルボニル構造を導入することで、化合物の光吸収特性が大きくシフトすることを見出し、本願発明に想到するに至った。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる化合物は、下記一般式(1)又は(2)、
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(1)及び(2)中における、R1〜R10は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、R1〜R4から選択される2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される2つの置換基同士は結合して環を形成してもよい。)
で表されることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる化合物は、上記構成において、一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよい、ものであることが好ましい。
【0014】
本発明にかかる化合物は、上記何れかの構成において、一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が互いに独立に、水素原子;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよい、ものであることがより好ましい。
【0015】
本発明にかかる化合物は、上記何れかの構成において、一般式(1)及び(2)中における、R1、R4、R5、R8が何れも水素原子であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明にかかる化合物は、一般式(1)及び(2)中における、R1、R4、R5、R8が何れも水素原子であることを前提として、R9及びR10が互いに独立に、水素原子又は水酸基であり、R2、R3、R6、R7が互いに独立に、水素原子、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明にかかる化合物は、一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が同一の原子又は置換基を表し、R2、R3、R6、R7が、以下の(A)又は(B)の何れかであることがさらに好ましい。
(A)R2及びR3の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であり、且つR6及びR7の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である、
(B)R2、R3、R6、R7が互いに独立に、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である。
【0018】
本発明にかかる化合物は、上記何れかの構成において、一般式(1)及び(2)中における、a1及びa2で示す炭素原子が何れも窒素原子に置換されていてもよい。
【0019】
本発明にかかる化合物はまた、上記何れかの構成において、2価以上のカチオンが配位していてもよい。
【0020】
本発明はまた、上記何れかの化合物を含む近赤外光吸収材を提供する。
【0021】
本発明はさらに、上記何れかの化合物を含む有機半導体素子を提供する。
【0022】
本発明はさらに、上記何れかの化合物を含む太陽電池素子を提供する。
【0023】
本発明はさらに、上記何れかの化合物を含む酸化還元指示薬を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、近赤外吸収等の特性を有する新規な化合物、及びその利用が提供されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係る化合物の吸収スペクトル及びMCDスペクトルの結果を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る化合物の立体構造を示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係る化合物のH−NMRスペクトルの一部及び予測される互変異性体構造を示す図である。
【図4】本発明の一実施例に係る化合物HOMO及びのLUMOを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔実施の形態1〕
(本発明に係る化合物)
本発明に係る新規化合物は、下記一般式(1)又は(2)、
【0027】
【化2】

【0028】
で表されるものである。一般式(1)及び(2)で示す両化合物は、対向するベンゼン環骨格に付くカルボニル酸素の位置のみが互いに異なる構造異性体である。なお、ベンゼンユニットとピロールユニットとを縮合して上記化合物を合成する場合、合成の容易さの観点では、R9とR10とは同一の原子又は置換基であることが好ましい。さらには、R1とR4との組合せがR5とR8との組合せと等しく(すなわち、R1=R5でかつR4=R8、又はR4=R5でかつR1=R8の何れかである)、かつR2とR3との組合せがR6とR7との組合せと等しい(すなわち、R2=R6でかつR3=R7、又はR2=R7でかつR3=R6の何れかである)ことが好ましい。
【0029】
ここで、一般式(1)及び(2)中における、R1〜R10は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、R1〜R4から選択される2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される2つの置換基同士は結合して環を形成してもよい。なお、本発明において基又は環構造の炭素数に言及する場合、当該基又は環構造の主鎖部分に結合した置換基を含めた合計の炭素数を指すものとする。
【0030】
<芳香環基>
R1〜R10が芳香環基である場合、その骨格構造は特に限定されないが、例えば、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、5又は6員環の縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環基を構成する炭素数は特に限定されないが、20以下が好ましく、15以下がより好ましい。これらのうち、合成がより容易であるとの観点では単環が好ましく、更に好ましくは6員環の単環であり、特に好ましくはベンゼン環(アリール基)である。
【0031】
R1〜R10が芳香環基である場合、該芳香環基は更に置換基を有していてもよい。置換基の個数及び位置は特に限定されない。また、該置換基は特に限定されないが、例えば、鎖状アルキル基、鎖状アルケニル基、鎖状アルキニル基、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、或いは、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
【0032】
鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。鎖状アルキル基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0033】
鎖状アルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。
【0034】
鎖状アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等の、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。
【0035】
炭化水素環基の例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、テトラデカヒドロアントラニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下のシクロアルケニル基;フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基等の、炭素数が6以上であり、かつ、炭素数が18以下、好ましくは10以下のアリール基が挙げられる。炭化水素環基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0036】
複素環基の例としては、5〜6員環の単環又は5〜6員環が2〜6個縮合してなる縮合環からなるヘテロアリール基、5〜6員環の単環又は5〜6員環が2〜6個縮合してなる縮合環からなるヘテロシクロアルキル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。具体的には、チエニル基等の5員環の単環;ピリジル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基等の6員環の単環;ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、オクタヒドロキノリニル基等の5〜6員環が2〜6個縮合してなる縮合環が挙げられる。
【0037】
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、その炭素数は、好ましくは2以上で、かつ20以下、好ましくは15以下、より好ましくは8以下である。アルコキシ基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0038】
アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等の、炭素数が18以下、好ましくは8以下のものが挙げられる。
【0039】
(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の、炭素数が6以上で20以下、好ましくは18以下、より好ましくは10以下のアリールオキシ基;2−チエニルオキシ基、2−フリルオキシ基、2−キノリルオキシ基等の、炭素数が5以上で18以下、好ましくは10以下であって、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等から選ばれるものを含むヘテロアリールオキシ基等が挙げられる。(ヘテロ)アリールオキシ基は、例えばハロゲン原子又はアルキル基等の置換基を有していてもよい。置換基としてのアルキル基は、炭素数20以下であり、好ましくは炭素数15以下であり、より好ましくは炭素数10以下であり、さらに好ましくは炭素数5以下である。当該置換基の個数及び位置は特に限定されず、例えば、アリールオキシ基がフェノキシ基の場合には、2位及び6位に置換基を有するもの、又は4位に置換基を有するものが挙げられる。
【0040】
(ヘテロ)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基等の、炭素数が7以上で18以下、好ましくは12以下のアラルキルオキシ基;2−チエニルメトキシ基、2−フリルメトキシ基、2−キノリルメトキシ基等の、炭素数が6以上で18以下、好ましくは10以下で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアラルキルオキシ基などが挙げられる。
【0041】
アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアルコキシカルボニル基は何れも、好ましくは炭素数が20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下であり、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0042】
置換基を有していてもよいアミノ基の例としては、アミノ基、アルキルアミノ基、(ヘテロ)アリールアミノ基等が挙げられる。
【0043】
アルキルアミノ基の例としては、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上で、かつ、炭素数が20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下のものが挙げられる。
【0044】
(ヘテロ)アリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の、炭素数が6以上で30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下のアリールアミノ基;ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基等の、炭素数が5以上、好ましくは6以上で、かつ炭素数が30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールアミノ基;フェニル(2−チエニル)アミノ基等の、炭素数が11以上、好ましくは12以上で、かつ炭素数が30以下、好ましくは20以下、より好ましくは16以下のアリールヘテロアリールアミノ基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよいカルバモイル基の例としては、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基などが挙げられる。
【0046】
アルキルカルバモイル基の例としては、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−エチル−N−シクロヘキシルカルバモイル基等の、炭素数が2以上で20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。
【0047】
エステル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の、炭素数が2以上で20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。
【0048】
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0049】
<非芳香環置換基>
R1〜R10が炭素数0〜20の非芳香環置換基である場合、その具体例としては、R1〜R10が芳香環基である場合に更に有していてもよい置換基として上述した具体例のうち、芳香環基以外の置換基を挙げることができる。
【0050】
<環構造>
上記一般式(1)及び(2)において、R1〜R4から選択される2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される2つの置換基同士は、互いに結合して環(環構造)を形成してもよい。当該環の例としては、炭化水素環、芳香環、及び複素環が挙げられる。その具体例としては、上述した炭化水素環基、芳香環、複素環で例示したものであって、「基」を「環」と読みかえたものが挙げられる。
【0051】
上記環構造は、化合物の平面性維持の観点では、隣接する2つの置換基同士が芳香環を形成することが好ましい。隣接する2つの置換基同士とは、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8、の何れかであり、好ましくは、R2とR3とが芳香環を形成するか、及び/又は、R6とR7とが芳香環を形成する。ここで芳香環として、具体的には、チオフェン環、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0052】
一例として、R2及びR3、R6及びR7が、それぞれ互いに結合して、ベンゼン環を形成している化合物(R1、R4、R5、R8は何れも簡便のため水素原子としている)を以下に示す。
【0053】
【化3】

【0054】
なお、上記の環構造は、更に炭素数20以下、好ましくは炭素数15以下、より好ましくは炭素数10以下、さらに好ましくは炭素数5以下の置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、R1〜R10が芳香環基である場合に更に有していてもよい置換基として上述した具体例と同様の置換基を挙げることができる。置換基として、中でも好ましくは、アリールオキシ基、鎖状アルキル基、及びアルコキシ基である。
【0055】
<R1〜R10の好ましい例示>
一般式(1)及び(2)で表される化合物の構造安定化の観点では、R1〜R10は、好ましくは電子供与性基である。電子供与性基とは、水素原子と置換された場合に、上記一般式(1)及び(2)中のヘミポルフィラジン骨格を形成する複素環の電子密度を増加させる効果を持つ置換基を指す。電子供与性基として、アリール基等の芳香環基、鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。なお、R1〜R10の少なくとも一つが電子供与性基であれば、構造安定化に寄与する。
【0056】
また、一般式(1)及び(2)で表される化合物の各種有機溶媒に対する溶解性を高める観点では、R1〜R10は、鎖状又は環状の炭化水素構造を有する基であることが好ましい。当該基としては、アリール基等の芳香環基、鎖状アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。なお、R1〜R10の少なくとも一つがこれらの基であれば、溶解性の向上に寄与する。
【0057】
また、例示した基は何れも化学導入が容易であるが、この観点では、R1〜R10は、水素原子又は水酸基を除けば、鎖状アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基が好ましく、アルコキシ基、又はアリールオキシ基がより好ましい。上記の観点も踏まえ、以下、R1〜R10の好ましい組合せについて詳細に説明する。
【0058】
<R1〜R10の好ましい組合せ>
一般式(1)及び(2)中における、(i)R9及びR10が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、(ii)R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよいものである、ことが好ましい。
【0059】
また、一般式(1)及び(2)中における、(i)R9及びR10が互いに独立に、水素原子;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、(ii)R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよいものである、ことがより好ましい。
【0060】
一般式(1)及び(2)中における、R1、R4、R5、R8が何れも水素原子であることがさらに好ましい(それぞれ、下記の一般式(3)及び(4)として示す)。
【0061】
【化4】

【0062】
また、一般式(3)及び(4)中における、(i)R9及びR10が互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であり、(ii)R2、R3、R6、R7が互いに独立に、水素原子、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であることがさらに好ましい。
【0063】
一般式(3)及び(4)中における、(i)R9及びR10が互いに独立に、水素原子又は水酸基であり、(ii)R2、R3、R6、R7が互いに独立に、水素原子、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であることがさらに好ましい。
【0064】
一般式(3)及び(4)中における、R9及びR10が同一の原子又は置換基(水素原子又は水酸基)を表し、R2、R3、R6、R7が、以下の(A)又は(B)の何れかである。
(A)R2及びR3の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であり、且つR6及びR7の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である、
(B)R2、R3、R6、R7が、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である。
【0065】
なお、上記一般式(3)及び(4)中における、R2、R3、R6、R7が、鎖状アルキル基、アルコキシ基、又は、置換基を有していてもよいアリールオキシ基である場合は、何れも炭素数が15以下であることが好ましい場合がある。また、鎖状アルキル基に関しては炭素数が10以下であることがより好ましい場合があり、炭素数5以下がさらに好ましい場合があり、アリールオキシ基に関しては炭素数が10以下であることがより好ましい場合がある。
【0066】
<一般式(1)及び(2)中のa1及びa2>
一般式(1)及び(2)中における、a1及びa2に示す炭素原子は何れも窒素原子に置換されていてもよい。a1及びa2の両方が窒素に置換されている化合物は、下記の一般式で表すことができる。なお、下記の一般式において、R1〜R10の定義は、一般式(1)〜(4)で示したものと同一のため説明は省略する。
【0067】
【化5】

【0068】
a1及びa2で示す炭素原子が何れも窒素原子に置換されている化合物においては、当該窒素原子の孤立電子対の存在により、置換されていない化合物に比べて、2価以上のカチオンと錯体を形成しやすくなる。特にカチオンとして小さい金属及び2価の金属と安定に錯体を形成しやすくなる。
【0069】
(本発明に係る化合物のより具体的な例)
本発明に係る化合物として、具体例には以下に示す化合物が挙げられる。なお、これらの化合物は、上記一般式(1)及び(3)で示される化合物の範疇に含まれるもののみを示した。しかし、当該化合物は、カルボニル酸素の結合位置が一般式(2)及び(4)で示されるような異性体であってもよい。また、上記一般式(1)及び(2)中におけるa1及びa2で示す炭素原子が何れも窒素原子に置換されている化合物に相当するものであってもよい。
【0070】
【化6】

【0071】
(カチオンとの錯体形成)
本発明に係る化合物には、カチオンが配位していてもよい。例えば、上記一般式(1)及び(2)におけるa1及びb1の何れもが窒素置換されていない化合物では、下記一般式(5)及び(6)で示されるようにカチオンM2が配位する。
【0072】
【化7】

【0073】
上記カチオンM2の種類としては、3価以上の価数をとり得かつ原子半径が比較的大きな金属が好ましく、例えば、Cu、Au、Ag、Pd、Pt等が挙げられる。
【0074】
また、上記一般式(1)及び(2)におけるa1及びb1で示す炭素原子の何れもが窒素原子で置換されている化合物では、下記一般式(7)及び(8)で示されるようにカチオンM1が配位する。
【0075】
【化8】

【0076】
カチオンM1の種類としては、大環の骨格の窒素原子に結合し得るものであれば特に制限されない。その具体例としては、Be、B、Mg、Al、Si、P、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Sb、Pd、Pt、Au等の2価以上のカチオンが挙げられる。
【0077】
なお、M1及びM2が3価以上のカチオンである場合、更に炭素数20以下のカウンターアニオン(軸配位子)を有していてもよい。該カウンターアニオンの具体例としては、水、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過ヨウ素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換又は無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸など)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換又は無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸など)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換又は無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸など)、置換又は無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸など)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の化合物をアニオン化したもの等が挙げられる。これらのうち、合成の容易さ等の観点から、水、アルコール又はフェノールをアニオン化したものを有することが好ましい。
【0078】
(本発明に係る化合物が集積した集積体)
上記一般式(5)から(8)に示す化合物において、M1及びM2が3価以上のカチオン原子であって、かつ炭素数20以下の上記カウンターアニオンを有する場合には、当該カウンターアニオンを介して一般式(5)から(8)に示す化合物がさらに1つ以上結合してもよい。すなわち、一つのカウンターアニオンを介して、上記一般式(5)から(8)に示す化合物が2個以上結合した、いわゆるサンドイッチタイプの集積体であり得る。
【0079】
(本発明に係る化合物の製造方法)
上記一般式(1)及び(2)に示す化合物は、一例として、下記一般式(9a)で表される化合物、下記一般式(9b)で表される化合物、下記一般式(10a)で表される化合物、及び下記一般式(10b)で表される化合物を縮合して、一般式(11)に示す縮合体(合成中間体)を得、次いで、当該縮合体を酸化することにより製造される。
【0080】
一例では、一般式(9a)・(9b)で示される化合物として同一の化合物を、一般式(10a)・(10b)で示される化合物として同一の化合物を用いて縮合体を得、当該縮合体を酸化する。製造に際しては、後述する実施例の記載も参照される。
【0081】
【化9】

【0082】
【化10】

【0083】
上記一般式(9a)・(9b)・(10a)・(10b)で表される化合物は、市販されているものを使用してもよい。また、1,3−ジイミノイソインドリンに置換基R1〜R8を適宜導入することで一般式(9a)・(9b)に示す化合物を調製し、2,4−ジアミノフェノール2塩酸塩に置換基R9〜R10を適宜導入することで一般式(10a)・(10b)に示す化合物を調製してもよい。
【0084】
また、一般式(10a)中のa1で示す炭素原子、及び一般式(10b)中のa2で示す炭素原子は、窒素原子に置換されていてもよく、そのような化合物として、例えば、2,6−ジアミノ‐3,5‐ピリジンジオール等が挙げられる。2,6−ジアミノ‐3,5‐ピリジンジオールは、例えば、参考文献:Bojarska-Dahlig, H. Roczniki Chemii, 1957, 31, 1041 の記載に従って、合成すればよい。
【0085】
上記の縮合は、必要に応じて溶媒中で行われる。溶媒としては、上記一般式(9a)・(9b)・(10a)・(10b)表される化合物と反応しないものを適宜利用することができる。特に限定されないが、溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン等の各種のエーテル類;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0086】
上記例示のように、一般式(10a)・(10b)に示す化合物の酸塩を用いる場合は、原料に含まれるHClを中和するために、塩基性物質を添加してもよい。塩基性物質としては、上記の縮合を行うことが出来る限りにおいて特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、尿素等が挙げられる。
【0087】
次いで、上記一般式(11)で表される化合物を酸化して、ベンゼン環上の水酸基をカルボニル化し、一般式(1)及び(2)に示す化合物を得る。なお、一般式(1)及び(2)で示す化合物は混合物として生成するが、例えば、順相又は逆相のHPLCのような手段でどちらか一方のみを精製することもできる。
【0088】
上記の酸化は、必要に応じて溶媒中で行われる。溶媒は、用いる酸化剤の種類等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、用いる酸化剤の種類は、特に限定されないが、比較的に緩和な酸化剤が好ましく、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、クロラニル等が挙げられる。
【0089】
(用途)
上記一般式(1)及び(2)に示す本発明の化合物は、近赤外光に強い吸収を示す。従って、当該化合物は、近赤外光吸収材として利用可能である。近赤外線吸収材は、例えば、色素増感型太陽電池素子又は有機薄膜太陽電池素子の光吸収色素、光線力学治療(レーザー療法等)とりわけ癌を対象とする光線力学治療に用いる光吸収色素(光線力学療法剤の一部構成をなす増感剤)、分子イメージング又は光記録に用いる光吸収色素(記録材料等)等として用いられる。
【0090】
近赤外光領域の光(主に波長が700nm〜1100nm)は細胞組織透過性が比較的すぐれていることが知られている。従って、本発明の化合物(混合物であってもよい)を、光線力学療法における増感剤として用いれば、例えば、より深部にある病巣の治療が可能になる、或いは、表層にある正常細胞に副作用を与える可能性を低減可能になるという効果を示す。
【0091】
また、一般式(1)及び(2)に示す本発明の化合物は、その化学構造から有機半導体として機能することが期待される。したがって、当該化合物を含む有機半導体素子を提供することができる。有機半導体素子の一例は、上記の有機薄膜太陽電池素子であり、本発明の化合物は比較的低いLUMO準位を示すことから有機薄膜太陽電池素子の用途に適していると考えられる。
【0092】
また、下記の実施例で示すように、本発明の化合物は、当該化合物の還元体(上記一般式(11))との間で可逆的に酸化還元される。当該化合物の還元体は、近赤外光領域の光を吸収せず、近赤外光領域で発光特性を示さず、さらに可視光下での色も酸化体とは異なるので、これらの相違を指標として酸化還元を検出することができる。したがって、本発明の化合物は酸化還元指示薬として利用することが可能である。
【0093】
また、本発明の化合物は、還元体との間で可逆的に酸化還元することができるため、近赤外吸収及び発光がある状態とない状態とをスイッチすることが可能である。したがって、近赤外吸収及び発光機能を制御できる有機材料として利用することが可能である。
【0094】
なお、本発明の化合物は、溶液状態でも固相状態(例えば成膜した状態)でも、近赤外光吸収材として利用可能である。また、当該化合物又はその異性体を溶液状態、固相状態とする方法も特に限定されず、既知の方法を採用可能である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【0096】
〔実施例1−1〕
アルゴン雰囲気下において、5,6−ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン(1a,1.56mmol,4,5−ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)フタロニトリル(参考文献:Makarov et al. Chem. Eur. J. 2006, 12, 1468)をアンモニアと反応させることで合成)、4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩(1b,1.56mmol,東京化成工業株式会社より購入)及びトリエチルアミン(0.30ml)の混合物を乾燥エタノール(18ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流(約80℃)した。反応液を室温に戻した後、エタノールに滴下し、不溶物を濾取した。不溶物をクロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物1cを茶色固体として得た。収率は79%であった。反応式は以下に示す。
【0097】
【化11】

【0098】
次いで、アルゴン雰囲気下において、化合物1c(0.32mmol)のクロロホルム溶液(60ml)に、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ,0.27mmol)を加え、室温で25分間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行い、化合物1dを緑色固体として得た。化合物1dの収率は70%であった。反応式は以下に示す。
【0099】
【化12】

【0100】
〔実施例1−2〕
化合物1d及び、比較として化合物1cについて、様々な特性を調べた。NMR、単結晶X線回折分析、吸収スペクトル、磁気円二色性(MCD)、蛍光スペクトル、MSスペクトル、フロンティア分子軌道、有機溶媒への溶解性、酸化還元等を調べた。
【0101】
H−NMR、13C−NMRは、JNM-ECA600(日本電子社製)又はJNM-AL300(日本電子社製)を用いて測定した。単結晶X線回折分析は、AFC-8(Rigaku社製)を用いて測定した。吸収スペクトルは、JASCO V-670(日本分光社製)を用いて測定した。MCDは、JASCO J-820(日本分光社製)を用いて測定した。蛍光スペクトルは、JASCO FP-6600(日本分光社製)を用いて測定した。MSスペクトルは、Ultraflex(Bruker Daltonics社製)を用いて測定した。HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)及びLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)は、Gaussian09(Gaussian社製)を用いて計算した。
【0102】
化合物1cのデータ;
300 MHz 1H-NMR (CDCl3/TMS) δ(ppm): 7.81 (2H, brs), 7.06 (12H, m), 6.83 (4H, s), 4.98(4H, brs), 2.20 (24H, s).
UV/Vis (CHCl3): λmax = 406 nm
HRMS (ESI) m/z calcd for C60H51N6O8([M+H]+): 983.3768, found 983.3751.
化合物1dのデータ;
600 MHz 1H-NMR (CDCl3/TMS) δ(ppm): 11.61 (4H, s), 7.66 (4H, s), 7.29 (8H, brd), 7.26 (4H, brt), 6.61 (2H, s), 2.37 (24H, s), −0.49 (2H, s). 150 MHz 13C-NMR (CDCl3/TMS) δ(ppm): 173.64, 156.45, 150.66, 149.84, 134.03, 131.15, 130.93, 129.75, 126.26, 108.93, 106.08, 103.61, 16.31
UV/Vis/NIR (CHCl3): λmax = 850, 653, 422 nm.
HRMS (ESI) m/z calcd for C60H49N6O8([M+H]+): 981.3612, found 981.3612.
Anal. Calcd for C60H48N6O8: C, 73.46; H, 4.93; N, 8.57. Found: C. 72.92; H, 4.98; N, 8.03.
Fluorescence(CHCl3): λmax = 871 nm.
図1の(a)に、化合物1c及び化合物1dの吸収スペクトルを示す。化合物1dは、クロロホルム中におけるλmaxが850nmであり、近赤外光を吸収することがわかった。一方、化合物1cはλmaxが406nmであり、近赤外光を吸収しなかった。
【0103】
図1の(b)に、化合物1c及び化合物1dのMCDスペクトルを示す。化合物1dは、852nm及び653nmに強いシグナルがみられ、低対称性のフタロシアニン誘導体の特徴を示した。一方、化合物1cでは、400nm付近にシグナルがみられたが、長波長領域では弱い吸収帯しかみられなかった。
【0104】
図2の(a)に、化合物1c及び化合物1dの単結晶X線回折分析による立体構造を示す。化合物1c及び化合物1dの立体構造を比較したところ、化合物1cでは、2,6−ジメチルフェノキシ基以外の大環部分が非平面サドル構造であるのに対し、化合物1dでは、2,6−ジメチルフェノキシ基以外の大環部分が平面構造であった。これは、化合物1dでは、ピロール部分のプロトンがメソの窒素原子に移動していることを示唆する。また、化合物1dでは、OH−N及びNH−Oの距離は、それぞれ2.57Å及び2.59Åであり、分子内水素結合の存在が示唆された。
【0105】
図2の(b)に、単結晶X線回折分析に基づく、化合物1c及び化合物1dの原子間の距離の一部を示す。化合物1cにおいては、レゾルシノール部分の炭素原子とメソ窒素原子との結合は単結合、ピロール部分の炭素原子とメソ窒素原子との結合は二重結合であり、非芳香族性のジカルバヘミポルフィラジンに類似する。一方、化合物1dにおいては、どちらの結合の距離も同等であり、通常のフタロシアニン類に類似する。したがって、化合物1dは、典型的なフタロシアニンのようなπ共役系を有することが示唆された。
【0106】
図3の(a)に、化合物1dのH−NMRスペクトルの一部を示す。当該スペクトルは、構造的対称性を示し、図3の(b)に示す互変異性体構造をとることが予想された。
【0107】
図4に、B3LYP/6−31G(d,p)で計算した、化合物1c及び化合物1dの最適化構造のフロンティア分子軌道及びエネルギーレベルを示す。化合物1cのHOMO及びLUMOの節のパターンは、18π電子構造モデル(C1818)における一対の縮退したLUMOの節のパターンと類似していた。また、化合物1dのLUMO及びLUMO+1軌道はそれぞれ、化合物1cのHOMO及びLUMOに由来するものであった。さらに、化合物1dのHOMOの節のパターンは、18π電子構造モデル(C1818)における一対の縮退したHOMOの一つの節のパターンと類似していた。この結果は18π電子構造を持つフタロシアニン類とよく一致し、化合物1cは20π電子構造を有し、化合物1dは18π電子構造を有することが示された。
【0108】
また、蛍光スペクトルを測定したところ、化合物1dは、クロロホルム中で871nmの蛍光のピークを示した。一方、化合物1cは、蛍光を示さなかった。
【0109】
また、化合物1dは化合物1cの酸化体であるが、化合物1dはクロロホルム中においてNaBH又はヒドラジンによって、化合物1cへ簡単に還元することができ、化合物1cと化合物1dとの間の酸化還元反応は可逆であることがわかった。
【0110】
化合物1dは、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド等の種々の有機溶媒に可溶であった。
【0111】
〔実施例2−1〕
アルゴン雰囲気下において、5−tert−ブチル−1,3−ジイミノイソインドリン(2a,1.37mmol,Aldrich社より購入)、4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩(2b,1.37mmol)及びトリエチルアミン(0.20ml)の混合物を乾燥エタノール(2.5ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液を室温に戻した後、エタノールに滴下し、不溶物を濾取した。不溶物をクロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物2cを茶色固体として得た。収率は85%であった。反応式は以下に示す。
【0112】
【化13】

【0113】
次いで、実施例1−1と同様に操作し(但し、溶媒としてクロロホルム:メタノール=7:3(v/v)の混合溶液を用いた)、化合物2cから化合物2dを緑色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0114】
【化14】

【0115】
〔実施例2−2〕
化合物2d及び、比較として化合物2cについて、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0116】
化合物2cのデータ;
UV/Vis (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v): λmax = 411 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C36H35N6O4([M+H]+): 615.2720, found 615.
化合物2dのデータ;
UV/Vis/NIR (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v): λmax = 852, 650 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C36H33N6O4([M+H]+): 612.2563, found 613.
化合物2dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=852nm)を吸収した。一方、還元体である化合物1cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0117】
〔実施例3−1〕
アルゴン雰囲気下において、5,6−ビス(ドデシルオキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン(3a,0.10mmol,参考文献:Sauer et al. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1998, 162B, 97 の方法に従い合成)、4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩(3b,0.10mmol)及びトリエチルアミン(0.05ml)の混合物を乾燥エタノール(2.5ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液を室温に戻した後、エタノールに滴下し、不溶物を濾取した。不溶物をクロロホルムで洗い、化合物3cを茶色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0118】
【化15】

【0119】
次いで、実施例1−1と同様に操作し(但し、溶媒としてテトラヒドロフランを用いた)、化合物3cから化合物3dを緑色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0120】
【化16】

【0121】
〔実施例3−2〕
化合物3d及び、比較として化合物3cについて、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0122】
化合物3cのデータ;
UV/Vis (THF): λmax = 493, 397 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C76H115N6O8([M+H]+): 1239.8776, found 1240.3.
化合物3dのデータ;
UV/Vis/NIR (THF): λmax = 846, 650, 417, 345 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C76H113N6O8([M+H]+): 1237.8620, found1238.2.
化合物3dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=846nm)を吸収した。一方、還元体である化合物3cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0123】
〔実施例4−1〕
アルゴン雰囲気下において、5−tert−ブチル−1,3−ジイミノイソインドリン(4a,0.51mmol)、2,4−ジアミノフェノール2塩酸塩(4b,0.51mmol,和光純薬工業社より購入)及びトリエチルアミン(0.10ml)の混合物を乾燥エタノール(3.0ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液をエバポレートした後、クロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物4cをオレンジ色固体として得た。収率は76%であった。反応式は以下に示す。
【0124】
【化17】

【0125】
次いで、アルゴン雰囲気下において、化合物4c(0.08mmol)のクロロホルム溶液(10ml)に2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(0.08mmol)を加え、室温で25分間撹拌した。反応終了後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行い、化合物4dを緑茶色固体として得た。化合物4dの収率は70%であった。反応式は以下に示す。
【0126】
【化18】

【0127】
〔実施例4−2〕
化合物4d及び、比較として化合物4cについて、NMR、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0128】
化合物4cのデータ;
300 MHz 1H-NMR (CDCl3/TMS) δ (ppm): 7.93-7.63 (10H, m), 6.70 (2H, brs), 1.40 (18H, s).
UV/Vis (CHCl3): λmax= 369 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C36H35N6O2([M+H]+): 583.2821, found 583.4.
化合物4dのデータ;
300 MHz 1H-NMR (CDCl3/TMS) δ (ppm): 10.77 (2H, m), 8.28-7.55 (8H, m), 6.66-6.50 (2H, m), 1.65 (18H, s), −1.62- −1.69 (2H, m).
UV/Vis/NIR (CHCl3): λmax= 911, 649, 600, 484, 421 nm.
MS (MALDI) m/z calcd for C36H33N6O2([M+H]+): 581.2665, found 581.4.
化合物4dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=911nm)を吸収した。一方、還元体である化合物4cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0129】
〔実施例5−1〕
アルゴン雰囲気下において、5,6−ビス(ヘキシルオキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン(5a,0.34mmol,参考文献:Sauer et al. Mol. Cryst. Liq. Cryst. 1998, 162B, 97 の方法に従い合成)、2,4−ジアミノフェノール2塩酸塩(5b,0.34mmol)及びトリエチルアミン(0,10ml)の混合物を乾燥エタノール(1.3ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液をエバポレートした後、エタノールで洗い、化合物5cをオレンジ色固体として得た。収率は63%であった。反応式は以下に示す。
【0130】
【化19】

【0131】
次いで、実施例2−1と同様に操作し、化合物5cから化合物5dを緑色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0132】
【化20】

【0133】
〔実施例5−2〕
化合物5d及び、比較として化合物5cについて、NMR、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0134】
化合物5cのデータ;
300 MHz 1H-NMR (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v) δ (ppm):7.87-6.65 (10H, m), 4.10 (8H, brs), 1.78 (8H, brs), 1.46 (8H, brs), 1.33 (16H, brs), 0.88 (12H, brs)
UV/Vis (CHCl3): λmax=350 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C52H67N6O6([M+H]+): 871.5122, found 871.6.
化合物5dのデータ;
UV/Vis/NIR (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v): λmax =925, 646 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C52H64N6O6([M]+): 868.4887, found 868.6.
化合物5dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=925nm)を吸収した。一方、還元体である化合物5cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0135】
〔実施例6−1〕
アルゴン雰囲気下において、5,6−ビス(2,6−ジメチルフェノキシ)−1,3−ジイミノイソインドリン(6a,0.26mmol)、2,4−ジアミノフェノール2塩酸塩(6b,0.26mmol)及びトリエチルアミン(0.10ml)の混合物を乾燥エタノール(2.5ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液をエバポレートした後、クロロホルムに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行い、化合物6cをオレンジ色固体として得た。収率は13%であった。反応式は以下に示す。
【0136】
【化21】

【0137】
次いで、実施例1−1と同様に操作し、化合物6cから化合物6dを緑色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0138】
【化22】

【0139】
〔実施例6−2〕
化合物6d及び、比較として化合物6cについて、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0140】
化合物6cのデータ;
UV/Vis (CHCl3): λmax= 381, 326 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C60H51N6O6([M+H]+): 951.3870, found 951.5.
化合物6dのデータ;
UV/Vis/NIR (CHCl3): λmax=917, 650, 491, 426, 351 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C60H49N6O6([M+H]+): 949.3714, found 949.5.
化合物6dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=917nm)を吸収した。一方、還元体である化合物6cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0141】
〔実施例7−1〕
アルゴン雰囲気下において、1,3−ジイミノイソインドリン(7a,1.38mmol,和光純薬工業社より購入)、2,4−ジアミノフェノール2塩酸塩(7b,1.38mmol)、トリエチルアミン(0.2ml)の混合物を乾燥エタノール(2.5ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液を室温に戻した後、エタノールに滴下し、不溶物を濾取し、化合物7cを茶色固体として得た。収率は77%であった。反応式は以下に示す。
【0142】
【化23】

【0143】
次いで、実施例1−1と同様に操作し(但し、溶媒としてジメチルホルムアミドを用いた)、化合物7cから化合物7dを黒色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0144】
【化24】

【0145】
〔実施例7−2〕
化合物7d及び、比較として化合物7cについて、吸収スペクトル、及びMSスペクトルを調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0146】
化合物7cのデータ;
UV/Vis (DMF): λmax =377 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C28H19N6O2([M+H]+): 471.1569, found 471.3
化合物7dのデータ;
UV/Vis/NIR (DMF): λmax =841 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C28H17N6O2([M+H]+):469.1413, found 469.2
化合物7dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=841nm)を吸収した。一方、還元体である化合物7cは、近赤外光を吸収しなかった。
【0147】
〔実施例8−1〕
アルゴン雰囲気下において、1,3−ジイミノベンゾ[f]イソインドリン(8a,0.26mmol,東京化成工業社より購入)、4,6−ジアミノレゾルシノール2塩酸塩(8b,0.26mmol)、トリエチルアミン(0.1ml)の混合物を乾燥エタノール(1.5ml)に加え、24時間撹拌しながら加熱還流した。反応液を室温に戻した後、エタノールに滴下し、不溶物を濾取し、化合物8cを茶色固体として得た。収率は90%であった。反応式は以下に示す。
【0148】
【化25】

【0149】
次いで、実施例2−1と同様に操作し、化合物8cから化合物8dを黒色固体として得た。反応式は以下に示す。
【0150】
【化26】

【0151】
〔実施例8−2〕
化合物8d及び、比較として化合物8cについて、様々な特性を調べた。吸収スペクトル、MSスペクトル等を調べた。測定に利用した装置等は、実施例1−2と同様である。
【0152】
化合物8cのデータ;
UV/Vis (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v): λmax =413 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C36H23N6O4([M+H]+): 603.1781, found 603.2
化合物8dのデータ;
UV/Vis/NIR (CHCl3/CH3OH, 7:3, v/v): λmax =874 nm
MS (MALDI) m/z calcd for C36H21N6O4([M+H]+):601.1624, found 601.3
化合物8dも実施例1と同様に、近赤外光(λmax=874nm)を吸収した。一方、還元体である化合物8cは、近赤外光を吸収しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によれば、新規なヘミポルフィラジン化合物、及びその利用が提供されるという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)、
【化1】

(一般式(1)及び(2)中における、R1〜R10は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0〜20の非芳香環置換基を表し、R1〜R4から選択される2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される2つの置換基同士は結合して環を形成してもよい。)
で表されることを特徴とする化合物。
【請求項2】
一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、
R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の芳香環基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルアミノ基又はアリールアミノ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよい
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が互いに独立に、水素原子;水酸基;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、
R1〜R8が互いに独立に、水素原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;であり、R1〜R4から選択される隣接する2つの置換基同士、及びR5〜R8から選択される隣接する2つの置換基同士は結合して、炭素数20以下の芳香環を形成してもよい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(1)及び(2)中における、R1、R4、R5、R8が何れも水素原子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が互いに独立に、水素原子又は水酸基であり、
R2、R3、R6、R7が互いに独立に、水素原子、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であることを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(1)及び(2)中における、R9及びR10が同一の原子又は置換基を表し、
R2、R3、R6、R7が、以下の(A)又は(B)の何れかである、
(A)R2及びR3の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基であり、且つR6及びR7の一方が水素原子で、他方が炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である
(B)R2、R3、R6、R7が互いに独立に、炭素数20以下の鎖状アルキル基、炭素数20以下のアルコキシ基、又は、置換基を有していてもよい炭素数20以下のアリールオキシ基である
ことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(1)及び(2)中における、a1及びa2で示す炭素原子が何れも窒素原子に置換されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
2価以上のカチオンが配位していることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする近赤外光吸収材。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする有機半導体素子。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする太陽電池素子。
【請求項12】
請求項1〜8の何れか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする酸化還元指示薬。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−56873(P2013−56873A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197711(P2011−197711)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・刊行物名 日本化学会第91春季年会 2011年 講演予稿集(DVD−ROM) 発行日 2011年3月11日 発行所 社団法人 日本化学会 ・刊行物名 “2011世界化学年”記念 JSTさきがけ研究領域合同シンポジウム 人類の危機に挑む研究開発 光と太陽エネルギー 予稿集 発行日 2011年3月24日 発行所 独立行政法人科学技術振興機構
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業における委託研究「次世代有機薄膜太陽電池創出のための近赤外色素の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】