説明

新規な化合物III

本発明は、式(I)の新規な化合物、これらの化合物を含んでなる医薬組成物、その調製のための方法、並びに体重増加、2型糖尿病及び脂質異状症に伴う症状に対する医薬の調製におけるレプチン受容体修飾物質模倣剤としてのこれらの化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の新規な化合物、これらの化合物を含んでなる医薬組成物、その調製のための方法、並びに体重増加、2型糖尿病及び脂質異状症に伴う症状に対する医薬の調製におけるレプチン受容体修飾物質模倣剤としてのこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先進工業国における肥満症の蔓延は増加している。典型的には、治療の第一線は、彼等の食事の脂肪含有率を減少すること及び彼等の身体活動性を増加させることのような、患者に食事及び生活態度を助言することである。然しながら、ある患者は、更に上述の食事及び生活態度の変化を適応することから得られる有益な結果を維持するために、薬物治療を受ける必要があり得る。
【0003】
レプチンは、脂肪細胞中で合成されるホルモンであり、食物摂取及び体重を減少するために視床下部において作用すると信じられている(例えば、Bryson,J.M.(2000)Diabetes,Obesity and Metabolism 2:83−89を参照されたい)。
【0004】
肥満のヒトにおいて、脳脊髄液中のレプチンと循環レプチンのそれの比が、減少していることが示されている(Koistinen et al.,(1998)Eur.J.Clin.Invest.28:894−897)。これは、脳へのレプチンの運搬のための能力が、肥満状態において欠損していることを示唆している。実際に、肥満症の動物モデル(NZOマウス及びKoletskyラット)において、レプチン運搬における欠損は、減少した脳のレプチン含有率をもたらすことを示している(Kastin,A.J.(1999)Peptides 20:1449−1453;Banks,W.A.et al.,(2002)Brain Res.950:130−136)。食事誘導性肥満のネズミに関連する研究(ヒトの肥満症によりよく似ていると信じられるネズミモデル、例えば、Van Heek et al.(1997)J.Clin.Invest.99:385−390を参照されたい)において、末梢的に投与された過剰のレプチンは、食物摂取及び体重を減少することにおいて無効であり、一方脳に直接注射されたレプチンは、食物摂取及び体重を減少することにおいて有効であることが示されている。過剰の循環レプチンを持つ肥満のヒトにおいて、シグナル伝達系が、レプチン受容体の連続的な刺激に対して脱感作されることも更に示されている(Mantzoros,C.S.(1999)Ann.Intern.Med.130:671−680)。
【0005】
Amgenは、組換えメチオニルヒトレプチンで臨床治験を行っている。これらの治験からの結果は、体重損失は、高血漿濃度のレプチンの存在においてさえ変化し、そして試験された患者の同齢集団中の平均体重の減少は、比較的小さいように雑多である(Obesity Strategic Perspective,Datamonitor,2001)。
【0006】
レプチンの遺伝子コード配列の発見以来、活性な断片を見出すためのいくつかの試みが文献中に報告されている。一つの例は、Samson et al.(1996)Endocrinol.137:5182−5185によるものであり、これは、N−末端における活性な断片(22から56まで)を記載している。この配列は、ICVで注射された場合に食物摂取を減少することを示し、一方C−末端において採取された配列は、いずれもの効果を有しないことを示した。レプチン断片は、更に国際特許出願WO97/46585中にも開示されている。
【0007】
配列のC−末端部分を調査した他の報告は、116−130断片による黄体化ホルモン産生の可能性のある刺激(Gonzalez et al.,(1999)Neuroendocrinology 70:213−220)、及びGHRH投与後のGH産生(断片126−140)(Hanew(2003)Eur.J.Endocrin.149:407−412)に対する効果を報告している。
【0008】
最近、レプチンは炎症に伴われている。循環レプチンのレベルが、細菌性感染及び炎症において上昇することが報告されている(Otero,M et al.(2005)FEBS Lett.579:295−301及びその中の参考文献を参照されたい)。レプチンは、更に炎症細胞から炎症促進性サイトカインのTNF及びIL−6の放出を亢進することによって炎症を増加するように作用することもできる(Zarkesh−Esfahani,H.et al.(2001)J.Immunol.167:4593−4599)。これらの薬剤は、今度は肥満の患者に普通に見られるインスリン抵抗性に、インスリン受容体のシグナル伝達の効力を減少することによって寄与することができる(Lyon,C.J.et al.(2003)Endocrinol.44:2195−2200)。連続した軽度の炎症は、肥満症に伴われると信じられる(インスリン抵抗性、及びII型糖尿病の存在並びに非存在において)(Browning et al.(2004)Metabolism 53:899−903,Inflammatory markers elevated in blood of obese women;Mangge et al.(2004)Exp.Clin.Endocrinol.Diabetes 112:378−382,Juvenile obesity correlates with serum inflammatory marker C−reactive protein;Maachi et al.(2004)Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.28:993−997,Systemic low grade inflammation in obese people)。レプチンは、更にアテローム発生の過程にも、マクロファージへの脂質の取込み及び内皮障害を促進し、従ってアテローム硬化性プラークの形成を促進することによって関係している(Lyon,C.J.et al.(2003)Endocrinol.144:2195−2200を参照されたい)。
【0009】
レプチンは、更に脂肪組織の成長に関係する過程の新しい血管の形成(血管新生)を促進することも示している(Bouloumie A,et al.(1998)Circ.Res.83:1059−1066)。血管新生は、更に糖尿病性網膜症にも関係している(Suganami,E.et al.(2004)Diabetes.53:2443−2448)。
【0010】
血管新生は、更に異常な腫瘍細胞を養う新しい血管の成長にも関係すると信じられている。上昇したレプチンのレベルは、多くの癌、特にヒトの乳房、前立腺及び胃腸管癌に伴われる(Somasundar P.et al.(2004)J.Surg.Res.116:337−349)。
【0011】
レプチン受容体アゴニストは、更に創傷治癒を促進するための医薬の製造において使用することができる(Gorden,P.and Gavrilova,O.(2003)Current Opinion in Pharmacology 3:655−659)。
【0012】
更に、脳の上昇したレプチンのシグナル伝達が、鬱病性障害の治療のための方法であることができることが示されている(Lu,Xin−Yun et al.(2006)PNAS 103:1593−1598)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際特許出願WO97/46585。
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bryson,J.M.(2000)Diabetes,Obesity and Metabolism 2:83−89.
【非特許文献2】Koistinen et al.,(1998)Eur.J.Clin.Invest.28:894−897.
【非特許文献3】Kastin,A.J.(1999)Peptides 20:1449−1453.
【非特許文献4】Banks,W.A.et al.,(2002)Brain Res.950:130−136.
【非特許文献5】Van Heek et al.(1997)J.Clin.Invest.99:385−390.
【非特許文献6】Mantzoros,C.S.(1999)Ann.Intern.Med.130:671−680.
【非特許文献7】Obesity Strategic Perspective,Datamonitor,2001.
【非特許文献8】Samson et al.(1996)Endocrinol.137:5182−5185.
【非特許文献9】Gonzalez et al.,(1999)Neuroendocrinology 70:213−220.
【非特許文献10】Hanew(2003)Eur.J.Endocrin.149:407−412.
【非特許文献12】Otero,M et al.(2005)FEBS Lett.579:295−301.
【非特許文献13】Zarkesh−Esfahani,H.et al.(2001)J.Immunol.167:4593−4599.
【非特許文献14】Lyon,C.J.et al.(2003)Endocrinol.44:2195−2200.
【非特許文献15】Browning et al.(2004)Metabolism 53:899−903,Inflammatory markers elevated in blood of obese women.
【非特許文献16】Mangge et al.(2004)Exp.Clin.Endocrinol.Diabetes 112:378−382,Juvenile obesity correlates with serum inflammatory marker C−reactive protein.
【非特許文献17】Maachi et al.(2004)Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.28:993−997,Systemic low grade inflammation in obese people.
【非特許文献18】Lyon,C.J.et al.(2003)Endocrinol.144:2195−2200.
【非特許文献19】Bouloumie A,et al.(1998)Circ.Res.83:1059−1066.
【非特許文献20】Suganami,E.et al.(2004)Diabetes.53:2443−2448.
【非特許文献21】Somasundar P.et al.(2004)J.Surg.Res.116:337−349.
【非特許文献22】Gorden,P.and Gavrilova,O.(2003)Current Opinion in Pharmacology 3:655−659.
【非特許文献23】Lu,Xin−Yun et al.(2006)PNAS 103:1593−1598。
【発明の概要】
【0015】
式(I)の化合物が、ネズミにおいて体重及び食物摂取を減少することにおいて有効であることが驚くべきことに見出されている。理論によって束縛されることを望むものではないが、式Iの化合物が、レプチン受容体シグナル伝達経路を調節していることが提案される。
【0016】
いくつかの態様において、レプチン受容体アゴニスト様特性を持つ化合物は、レプチンのシグナル伝達に関係する疾患、並びに肥満症のような体重増加に伴う症状の治療のために有用であることができる。本発明人等は、低分子のCNS浸透性レプチン模倣物質が、脳への制約された取込み系をバイパスすることが可能であるものであることを仮定している。更に、この状況がヒトの肥満の症状を反映していると仮定して、本発明人等は、比較的長期の作用の時間を持つCNSで活性なレプチノイド(leptinoid)が、肥満状態及びその付随する合併症、特に(制約されるものではないが)糖尿病のための有効な治療を行うものであると信じている。
【0017】
他の態様において、レプチン受容体の拮抗性様特性を持つ化合物は、炎症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性網膜症及び腎症の治療のために有用であることができる。
第一の側面において、本発明は、以下の式(I):
【0018】
【化1】

【0019】
の化合物、又は医薬的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体又はこれらのN−オキシドに関し、式中:
Aは、Xが、N又はCHである以下の式:
【0020】
【化2】

【0021】
及び
が、N(R)、CH(R)又はOである以下の式:
【0022】
【化3】

【0023】
から選択され;
は、水素、C1−6−アルキル(非置換の、又はハロゲン、ヒドロキシ、シアノ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)、及びC1−6−アシル(非置換の、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)から選択され;
及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6−アルキル(非置換の、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)及びC1−6−アルコキシ(非置換の、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)から独立に選択され;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、C1−6−アルキル及びC1−6−アルコキシから独立に選択され;
Yは、O、N(R)又はCHであり;
は、水素又はC1−4−アルキルであり;
a、b及びcは、それぞれ独立に1、2又は3であり;
dは、0、1又は2であり;
eは、1、2又は3であり;そして
f及びgは、それぞれ独立に0、1又は2であり、但し、1≦f+g≦3であることを条件とし;
そして化合物が:
・ 2,3−ジヒドロ−1−[1−オキソ−3−(1−ピペラジニル)プロピル]−1H−インドール;
・ 2,3−ジヒドロ−3−メチル−1H−インドール−1−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジニル)メチル;
・ 3,4−ジヒドロ−N−[3−(1−ピペラジニル)プロピル]−2(1H)−イソキノリンカルボキシアミド;
・ N−[3−(ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−イル)プロピル]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−イソキノリン−カルボキシアミド;
・ 2,3−ジヒドロ−2−メチル−1−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−オキソプロピル]−1H−インドール;
・ 2,3−ジヒドロ−N−(2−ピペリジニルメチル)−1H−インドール−1−カルボキシアミド;又は
・ 1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシ−2−[1−オキソ−3−(3−ピペリジニル)プロピル]−イソキノリン;
ではないことを更なる条件とする。
【0024】
本発明の好ましい態様において、Yは、Oである。
もう一つの好ましい態様において、Aは、以下の式:
【0025】
【化4】

【0026】
である。
は、好ましくは水素、C1−4−アルキル及びC1−4−アシルから選択される。
最も好ましい態様において、Rは、水素、メチル、エチル又はアセチルである。
【0027】
及びRは、好ましくは独立に水素及びC1−4−アルキルから選択される。
最も好ましい態様において、R及びRは、水素である。
は、好ましくは水素、ハロゲン及びC1−4−アルキルから独立に選択される。
【0028】
更に好ましい態様において、Rは、水素、フルオロ、クロロ又はメチル、そして好ましくは水素から独立に選択される。
特に好ましい式(I)の化合物は、以下の式(I’):
【0029】
【化5】

【0030】
の化合物であり、
式中、X、R、e、f及びgは、式(I)において定義したとおりである。
具体的な好ましい式(I)の化合物は:
・ 3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル;
・ 3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
・ 3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
・ インドリン−1−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;及び
・ 1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
からなる群から選択される化合物である。
【0031】
本発明のもう一つの側面は、治療において使用するための式(I)の化合物である。
更なる側面において、本発明は、本明細書中に記載される疾患又は症状のいずれもの治療或いは予防において使用するための式(I)の化合物に関する。
【0032】
なお更なる側面において、本発明は、本明細書中に記載される疾患又は症状のいずれもの治療或いは予防のための医薬の製造における式(I)の化合物の使用に関する。
いくつかの態様において、前記の化合物は、レプチン受容体に対する選択的作用によって予防、治療、又は寛解される症状の治療或いは予防のための医薬の製造において使用することができる。
【0033】
いくつかの態様において、前記の化合物は、体重増加に伴う症状(特に、代謝性症状)の治療又は予防のための医薬の製造において使用することができる。体重増加に伴う症状は、肥満又は体重過多の患者において増加した発生頻度を有する疾病、疾患、或いは他の症状を含む。例は:脂肪萎縮症、HIV脂肪萎縮症、糖尿病(2型)、インスリン抵抗性、代謝性症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異状症、脂肪肝、過食症、高血圧症、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患、黄斑変性症を含む。いくつかの態様において、化合物は、更に患者の体重減少を維持するための医薬の製造において使用することもできる。
【0034】
いくつかの態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、更に創傷治癒を促進するための医薬の製造において使用することもできる。
いくつかの態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、更に循環レプチン濃度の減少を、そしてその後の免疫系及び生殖系の機能障害を起こす症状の治療又は予防のための医薬の製造において使用することもできる。このような症状及び機能障害の例は、重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性の不妊症、免疫不全症及び低テストステロンレベルに伴う症状を含む。
【0035】
いくつかの態様において、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、更にレプチン欠損、又はレプチン若しくはレプチン受容体の変異の結果として起こる症状の治療或いは予防のための医薬の製造において使用することもできる。
【0036】
いくつかの他の態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、炎症性症状又は疾病、肥満症及び過剰の血漿レプチンに伴う低いレベルの炎症の治療或いは予防、並びにアテローム性動脈硬化症を含む肥満症に伴う合併症の減少、並びに代謝性症候群及び糖尿病において見られるインスリン抵抗性の矯正のために使用することができる。
【0037】
いくつかの他の態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、癌(白血病、リンパ腫、細胞腫、大腸癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、肝細胞細胞腫、腎臓癌、黒色腫、肝臓、肺、乳房、及び前立腺転移等のような);自己免疫性疾病(器官移植拒絶、紅斑性狼瘡、宿主対移植片拒絶、同種移植片拒絶、多発性硬化症、関節リウマチ、糖尿病に導く膵島の破壊を含む1型糖尿病及び糖尿病の炎症性の結果のような);自己免疫性障害(多発性硬化症、ギランバレー症候群、重症筋無力症を含む);不良な組織潅流及び炎症に伴う心血管性症状(アテローム、アテローマ性動脈硬化症、脳卒中、虚血−再潅流傷害、跛行、脊髄傷害、鬱血性心不全、血管炎、出血性ショック、クモ膜下出血後の血管攣縮、脳血管障害後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、糖尿病の心血管性合併症のような);虚血−再潅流傷害、虚血及び付随する炎症、血管形成術及び炎症性動脈瘤後の再狭窄;癲癇、神経変性(アルツハイマー病を含む)、関節炎(関節リウマチ、骨関節炎、リウマチ性脊髄炎、痛風性関節炎のような)、線維症(例えば肺、皮膚及び肝臓の)、多発性硬化症、敗血症、敗血性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュヘルクスハイマー反応、帯状疱疹、毒性ショック、脳性マラリア、ライム病、内毒素ショック、グラム陰性ショック、出血性ショック、肝炎(組織損傷又はウイルス性感染の両方から起こる)、深部静脈血栓症、痛風;呼吸困難に伴う症状(例えば、慢性閉塞性肺炎、妨害及び閉塞性気道、気管支収縮、肺血管収縮、呼吸妨害、慢性肺炎症性疾患、珪肺症、肺筋肉瘤腫、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、肺気腫、気管支アレルギー及び/又は炎症、喘息、枯草熱、鼻炎、春季カタル及び成人呼吸促迫症候群);皮膚の炎症に伴う症状(乾癬、湿疹、潰瘍、接触性皮膚炎を含む);腸の炎症に伴う症状(クローン病、潰瘍性大腸炎及び発熱(pyresis)、過敏性腸症候群、炎症性腸炎を含む);HIV(特にHIV感染)、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、骨粗鬆症及び他の骨再吸収性疾病、骨関節炎、子宮内膜症からの不妊症、感染による発熱及び筋肉痛、及び過剰な抗炎症性細胞(好中球、好酸球、マクロファージ及びT細胞を含む)活性によって仲介される他の症状によって起こされる又はそれに伴う炎症の治療或いは予防のために使用することができる。
【0038】
いくつかの態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、1又は2型糖尿病の大若しくは微小血管合併症、網膜炎、腎症、自律神経障害、又は虚血若しくはアテローマ性動脈硬化症によって起こされる血管損傷の治療或いは予防のために使用することができる。
【0039】
いくつかの態様において、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤である式(I)の化合物は、血管新生を阻害するために使用することができる。血管新生を阻害する化合物は、肥満症又は肥満症に伴う合併症の治療或いは予防のために使用することができる。血管新生を阻害する化合物は、炎症 糖尿病性網膜症、又は腫瘍の成長、特に乳房、前立腺若しくは胃腸管の癌に伴う合併症の治療或いは予防のために使用することができる。
【0040】
更なる側面において、本発明は、本明細書中に記載される疾患又は症状のいずれもの治療或いは予防のための方法に関し、これは、式Iの化合物の有効な量を患者(例えば、それを必要とする患者、例えば哺乳動物)に投与することを含む。
【0041】
本明細書中で描写される方法は、患者が特別の前述の治療を必要とすると確認することを含む。そのような治療を必要とする患者を確認することは、患者又は医療専門家の判断であることができ、そして主観的(例えば所見)又は客観的(例えば試験又は診断法によって測定可能)であることができる。
【0042】
他の側面において、本明細書中の方法は、治療管理に対する患者の反応をモニターすることを更に含んでなることを含む。このようなモニタリングは、治療管理のマーカー又は指標としての患者の組織、体液、検体、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝子物質、等の定期的試料採取を含むことができる。他の方法において、患者は、このような治療に対する適合性に関連するマーカー又は指標に対する評価によって、このような治療を必要とするか予備検査或いは確認される。
【0043】
一つの態様において、本発明は、治療の進行をモニターする方法を提供する。この方法は、本明細書中に描写される疾患又はその徴候に罹るか若しくは感受性である患者の診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書中の化合物によって調節される本明細書中で描写されるいずれもの標的又は細胞腫)或いは診断測定値(例えば検査、アッセイ)のレベルを決定する段階を含み、ここにおいて、患者は、疾病又はその兆候を治療するために十分な本明細書中の化合物の治療的量を投与されている。この方法で決定されるマーカーのレベルは、健康な正常な対照又は他の罹病した患者のいずれかの既知のマーカーのレベルと比較して、患者の疾病状態を確証することができる。好ましい態様において、患者のマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの決定より後の時点で決定され、そして二つのレベルを比較して、疾病の進行又は治療の有効性をモニターする。ある種の好ましい態様において、患者のマーカーの予備治療のレベルは、本発明による治療の開始に先だって決定され;次いでこのマーカーの予備治療のレベルを、治療の開始後の患者のマーカーのレベルと比較して、治療の有効性を決定することができる。
【0044】
ある種の方法の態様において、患者のマーカーのレベル又はマーカーの活性は、少なくとも一回は決定される。マーカーレベル、例えば同一の患者、もう一人の患者、又は正常な対象からの事前又は事後に得られたマーカーレベルのもう一つの測定値との比較は、本発明による治療が、所望の効果を有するか否かを決定し、そしてこれによって投与量レベルが適当であると判断することを可能にすることにおいて有用であることができる。マーカーレベルの決定は、当技術において既知の又は本明細書中に記載されるいずれもの適した試料採取/発現アッセイ法を使用して行うことができる。好ましくは、組織又は体液試料を先ず患者から取りだす。適した試料の例は、血液、尿、組織、口腔又は頬細胞、及び毛根を含む毛髪を含む。他の適した試料は、当業者にとって既知であるものである。試料中のタンパク質レベル及び/又はmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)の決定は、制約されるものではないが、酵素免疫アッセイ、ELISA、放射線標識/アッセイ技術、染色/化学発光法、リアルタイムPCR、等を含む当技術において既知のいずれもの適した技術を使用して行うことができる。
【0045】
いくつかの態様において、式(I)の化合物が、中枢神経系に浸透することが可能である場合好都合であることができる。他の態様において、式(I)の化合物が、CNSに浸透することが可能でない場合好都合であることができる。一般的に、レプチン受容体アゴニスト模倣剤である式(I)の化合物が、これらの化合物がCNSに浸透することができる場合、肥満症、インスリン抵抗性、又は糖尿病(特に耐糖能障害)の治療又は予防のために特に有用であることが期待される。当業者は、化合物がCNSに浸透することができるか否かを容易に決定することができる。使用することができる適した方法は、生物学的方法の項に記載されている。
【0046】
レプチン受容体の反応は、いずれもの適した方法で測定することができる。In vitroで、これは、レプチン受容体のシグナル伝達を測定して行うことができる。例えば、レプチンの又は本発明の化合物のレプチン受容体への結合に反応するAkt、STAT3、STAT5、MAPK、shp2或いはレプチン受容体のリン酸化を測定することができる。Akt、STAT3、STAT5、MAPK、shp2或いはレプチン受容体のリン酸化の程度は、例えばウェスタンブロット法又はELISAによって決定することができる。別の方法として、STATレポーターアッセイ、例えばSTAT促進のルシフェラーゼ発現を使用することができる。レプチン受容体を発現している細胞系をこのようなアッセイのために使用することができる。In vivoにおいて、レプチン受容体の反応は、レプチン又は本発明の化合物の投与後の、食物摂取及び体重増加の減少を決定することによって測定することができる。
【0047】
以下の生物学的方法は、本発明の化合物が、レプチン受容体アゴニスト模倣剤であるか、又はレプチン受容体アンタゴニスト模倣剤であるかを決定するために使用することができるアッセイ及び方法を記載する。
【0048】
式(I)の化合物は、他の治療剤を伴って、又はそれらを伴わずに投与することができる。例えば、炎症を軽減することが所望される場合、化合物は、抗炎症剤(例えば、疾病を調節するメトトレキセート、スルファサラジン及びサイトカイン不活性化剤のような抗リウマチ剤、ステロイド、NSAID、カンナビノイド、タキキニン修飾物質、又はブラジキニン修飾物質)と共に投与することができる。抗腫瘍効果を提供することが所望される場合、式(I)の化合物は、細胞毒性薬剤(例えば、メトトレキセート、シクロホスファミド)又は他の抗腫瘍性薬物と共に投与することができる。
【0049】
式(I)の化合物は、受容体置換の研究又は受容体の画像処理のようなin vitro又はin vivo適用のために放射線標識する(例えばトリチウム又は放射性ヨウ素で)ことができる。
【0050】
本発明の更なる側面は、上記で定義したとおりの式(I)の化合物の製造のための方法に関する。この方法は:
(a)以下の式(II):
【0051】
【化6】

【0052】
[式中、X、R、R、a、d及びeは、式(I)において定義したとおりである]
の化合物を、クロロギ酸4−ニトロフェニル又は炭酸ビス−(4−ニトロフェニル)と、適した塩基(DIPEA又はNMMのような)の存在中で、適した溶媒(DCMのような)中で、−10ないし40℃で反応させて、以下の式(III):
【0053】
【化7】

【0054】
の化合物を形成し;
(b)式(III)の化合物を、以下の式(IV):
【0055】
【化8】

【0056】
[式中、R、R、b、c、f及びgは、式(I)において定義したとおりである]
の化合物と、適した塩基、(DIPEAのような)の存在中で、適した溶媒(DMFのような)中で、−10ないし40℃で反応させて、式(I)の化合物を得て;そして
(c)所望により、一つ又はいくつかの工程で、式(I)の化合物をもう一つの式(I)の化合物に転換すること;
を含んでなる。
【0057】
定義
以下の定義は、本明細書及び付属する特許請求の範囲をとおして適用されるべきものである。
【0058】
他に記述又は指示されない限り、用語“C1−6−アルキル”は、1から6個までの炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。前記のC1−6−アルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、並びに直鎖及び分枝鎖のペンチル及びヘキシルを含む。“C1−6−アルキル”の範囲の一部として、C1−5−アルキル、C1−4−アルキル、C1−3−アルキル、C1−2−アルキル、C2−6−アルキル、C2−5−アルキル、C2−4−アルキル、C2−3−アルキル、C3−6−アルキル、C4−5−アルキル等のようなその全ての下位群が意図されている。
【0059】
他に記述又は指示されない限り、用語“C1−6−アシル”は、水素原子に(即ち、ホルミル基)、或いはアルキルが上記のとおりに定義される直鎖又は分枝鎖のC1−5−アルキルに、その炭素原子により接続されたカルボニル基を意味する。前記のC1−6−アシルの例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、n−ブチリル、2−メチルプロピオニル及びn−ペントイルを含む。“C1−6−アシル”の範囲の一部として、C1−5−アシル、C1−4−アシル、C1−3−アシル、C1−2−アシル、C2−6−アシル、C2−5−アシル、C2−4−アシル、C2−3−アシル、C3−6−アシル、C4−5−アシル、等のようなその全ての下位群は意図されている。C1−6−アシル基がハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されている場合、前記の置換基は、カルボニルの炭素原子に接続できない。
【0060】
他に記述又は指示されない限り、用語“C1−6−アルコキシ”は、1から6個までの炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコキシ基を意味する。前記のC1−6−アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ、並びに直鎖及び分枝鎖のペントキシ及びヘキソキシを含む。“C1−6−アルコキシ”の範囲の一部として、C1−5−アルコキシ、C1−4−アルコキシ、C1−3−アルコキシ、C1−2−アルコキシ、C2−6−アルコキシ、C2−5−アルコキシ、C2−4−アルコキシ、C2−3−アルコキシ、C3−6−アルコキシ、C4−5−アルコキシ、等のようなその全ての下位群が意図されている。
【0061】
“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
“ヒドロキシ”は、−OHラジカルを指す。
“ニトロ”は、−NOラジカルを指す。
【0062】
“シアノ”は、−CNラジカルを指す。
“所望による”又は“所望により”は、その後に記載される出来事又は状況が、起こることができるが、しかし起こる必要はなく、そしてその記載が、出来事又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0063】
用語“哺乳動物”は、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、ヤギ、及びウマ、サル、イヌ、ネコ、並びに好ましくはヒトを含む生命体を含む。患者は、ヒトの患者、又は非ヒトの動物、特にイヌのような買い慣らされた動物であることができる。
【0064】
“医薬的に受容可能な”は、一般的に安全で、非毒性であり、そして生物学的に又は他の意味で好ましくないのいずれでもない医薬組成物を調製することにおいて有用であり、そして獣医学的使用、並びにヒトの医薬的使用のために有用であることを含むことを意味する。
【0065】
“治療”は、本明細書中で使用される場合、指名された疾患又は症状の予防、或いはそれが確認された後の疾患の寛解又は排除を含む。
“有効な量”は、治療される患者に対して治療的効果(例えば、疾病、疾患、又は症状或いは兆候を、治療、制御、寛解、予防、発症を遅延し、又はそれを発症する危険度を減少する)を与える化合物の量を指す。治療的効果は、客観的(即ち、いくつかの試験又はマーカーによって測定可能)又は主観的(即ち、患者が効果の表示を与えるか、又はそれを感じる)であることができる。
【0066】
“プロドラッグ”は、生理学的条件下で又は加溶媒分解によって生物学的に活性な式(I)の化合物に転換することができる化合物を指す。プロドラッグは、それを必要とする患者に投与する時点で不活性であることができるが、しかしin vivoで活性な式(I)の化合物に転換される。プロドラッグは、典型的には、in vivoで急速に転換されて、例えば血液中の加水分解によって母体化合物を得る。プロドラッグ化合物は、通常、溶解度、組織適合性又は哺乳動物の器官中の遅延放出の利益を提供する(Silverman,R.B.,The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action,2nd Ed.,Elsevier Academic Press(2004),pp.498−549を参照されたい)。プロドラッグは、式(I)の化合物中に存在するヒドロキシ、アミノ又はメルカプト基のような官能基を、修飾が、日常的処置又はin vivoのいずれかにおいて母体化合物に開裂するような方法で修飾することによって調製することができる。プロドラッグの例は、制約されるものではないが、ヒドロキシ官能基の酢酸、ギ酸及びコハク酸誘導体又はアミノ官能基のカルバミン酸誘導体を含む。
【0067】
本明細書及び付属する特許請求の範囲をとおして、与えられた化学式及び名称は、更に全ての塩、水和物、溶媒和物、N−オキシド及びこれらのプロドラッグの形態も包含するものである。更に、与えられた化学式又は名称は、その全ての互変異性及び立体異性の形態を包含するものである。立体異性体は、鏡像異性体及びジアステレオ異性体を含む。鏡像異性体は、その純粋な形態で、或いは二つの鏡像異性体のラセミ(均等)又は不均等な混合物として存在することができる。ジアステレオ異性体は、その純粋な形態で、又はジアステレオ異性体の混合物として存在することができる。ジアステレオ異性体は、更に幾何異性体をも含み、これはその純粋なcis又はtransの形態で又はこれらの混合物として存在することができる。
【0068】
式(I)の化合物は、そのままで、又は適当な場合、薬理学的に受容可能なその塩(酸又は塩基付加塩)として使用することができる。以下に記述する薬理学的に受容可能な付加塩は、化合物が形成することが可能である、治療的に活性な非毒性の酸及び塩基付加塩の形態を含んでなることを意味する。塩基性の特性を有する化合物は、塩基の形態を適当な酸で処理することによって、その医薬的に受容可能な酸付加塩に転換することができる。例示的な酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸のような無機酸;及びギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸、安息香酸、アスコルビン酸等のような有機酸を含む。例示的な塩基付加塩の形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウム塩、並びに例えば、アンモニア、アルキルアミン、ベンザチンのような医薬的に受容可能なアミン、並びに例えばアルギニン及びリシンのようなアミノ酸との塩である。用語、付加塩は、本明細書中で使用する場合、更に化合物及びその塩が形成することが可能な、例えば、水和物、アルコラート等のような溶媒和物を含んでなる。
【0069】
組成物
臨床使用のために、本発明の化合物は、各種の投与の様式のための医薬製剤に処方される。化合物が生理学的に受容可能な担体、賦形剤、又は希釈剤と一緒に投与することができることは認識されるものである。医薬組成物は、いずれもの適した経路によって、好ましくは経口、直腸、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、舌下、経皮、クモ膜下腔内、経粘膜又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与によって投与することができる。
【0070】
他の製剤は、都合よくは単位剤形、例えば錠剤及び持続放出カプセル、並びにリポソームで投与することができ、そして薬学の技術において公知のいずれもの方法によって調製することができる。医薬製剤は、通常、活性物質、又は医薬的に受容可能なその塩を、慣用的な医薬的に受容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と混合することによって調製される。賦形剤の例は、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶セルロース、デンプン、グリコール酸デンプンナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、等である。このような製剤は、更に他の薬理学的に活性な薬剤、及び安定剤、湿潤剤、乳化剤、芳香剤、緩衝液、等のような慣用的な添加剤を含有することもできる。通常、活性化合物の量は、製剤の0.1−95重量%間、好ましくは非経口使用のための製剤の0.2−20重量%間であり、そして更に好ましくは経口投与のための製剤の1−50重量%間である。
【0071】
製剤は、更に顆粒化、圧縮、マイクロカプセル化、噴霧被覆、等のような既知の方法によって調製することができる。製剤は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、シロップ、懸濁液、座薬又は注射の剤形で慣用的な方法によって調製することができる。液体製剤は、活性物質を水又は他の適したベヒクル中に溶解又は懸濁することによって調製することができる。錠剤及び顆粒は、慣用的な方法で被覆することができる。治療的に有効な血漿濃度を延長された時間維持するために、本発明の化合物は、徐放製剤中に組込むことができる。
【0072】
具体的な化合物の投与量レベル及び投与の頻度は、使用する具体的な化合物の効力、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄の速度、薬物の組合せ、治療される症状の重篤度、並びに患者の受けている治療を含む各種の因子によって変化するものである。日量は、例えば、体重のkg当り約0.001mgから約100mgまでの範囲であり、一回で、又は例えばそれぞれ約0.01mgから約25mgの投与量で多数回投与することができる。通常、このような投与は、経口的に与えられるが、しかし非経口的投与も更に選択することができる。
【0073】
本発明の化合物の調製
上記の式(I)の化合物は、慣用的な方法によって、又はそれとの類似性によって調製することができる。中央部のウレタン又は尿素リンカーの形成が、式(I)の化合物を調製することにおける鍵となる合成工程である。多くの活性化試薬を、例えばアルコールのクロロギ酸エステルを形成するためにホスゲンを、又はカルボン酸イミダゾールを形成するためにカルボニルイミダゾール(CDI)を、ウレタン又は尿素リンカーの形成のために使用することができる。典型的には、式(I)の化合物に組込まれるウレタンリンカーは、活性化剤としてクロロギ酸4−ニトロフェニル又は炭酸ビス−(4−ニトロフェニル)を使用して合成されている。本発明の実施例による中間体及び実施例の調製は、特に以下のスキーム1によって例示することができる。本明細書中のスキームにおける構造中の可変基の定義は、本明細書中に描写した式中の対応する位置のものに相応する。
【0074】
スキーム1. 式(I)の化合物の合成の一般的概要
【0075】
【化9】

【0076】
式中、X、R−R、及びa−gは、式1において定義したとおりである。
典型的には、式(I)の化合物の合成は、アルコール分子の活性化によって行われる。アルコール(II)のクロロギ酸4−ニトロフェニル又は炭酸ビス−(4−ニトロフェニル)による、塩基(DIPEA又はNMMのような)の存在中の処理により、対応する炭酸4−ニトロフェニル誘導体(III)を得る。その後の工程において、活性化された炭酸エステル(III)を、適当な縮合二環式アミン(IV)で、塩基(DIPEAのような)の存在中で処理して、式(I)の所望の化合物の形成をもたらす。
【0077】
別の方法として、縮合二環式アミン(IV)を、クロロギ酸4−ニトロフェニル又は炭酸ビス−(4−ニトロフェニル)による、塩基の存在中の処理によって活性化して、対応するカルバミン酸誘導体を形成することができる。次いでカルバミン酸中間体を、適当なアルコール分子(II)で、塩基の存在中で処理して、式(I)の化合物を得る。
【0078】
ウレタンの形成は、典型的には二工程の方法であるが、しかしこれは、更にin situの活性化された中間体の形成により、ワンポット反応で行うこともできる。
式(I)の化合物を調製するために必要な出発物質は、商業的に入手可能であるか、又は当技術において既知の方法によって調製することができるかのいずれかである。
【0079】
実験の項目中で以下に記載される方法は、遊離塩基又は酸付加塩の形態で化合物を得るために行うことができる。医薬的に受容可能な酸付加塩は、遊離塩基を適した有機溶媒中に溶解し、そして塩基化合物から酸付加塩を調製するための慣用的な方法によって、溶液を酸で処理することよって得ることができる。付加塩形成酸の例は、上述してある。
【0080】
式(I)の化合物は、一つ又はそれより多いキラル炭素原子を保有することができ、そして従ってこれらは、光学異性体の形態で、例えば純粋な鏡像異性体として、又は鏡像異性体の混合物(ラセミ体)として、或いは含有するジアステレオ異性体を含有する混合物として得ることができる。純粋な鏡像異性体を得るための光学異性体の混合物の分離は、当技術において公知であり、そして例えば、光学的に活性な(キラル)酸による塩の分別再結晶、又はキラルカラム上のクロマトグラフ的分離によって達成することができる。
【0081】
本明細書中に描写される合成経路中で使用する化学薬品は、例えば、溶媒、試薬、触媒、並びに保護基及び脱保護試薬を含むことができる。
保護基の例は、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジル及びトリチル(トリフェニルメチル)である。先に記載した方法は、更に付加的に、最終的に本発明の化合物の合成を可能にするために、本明細書中で具体的に記載される工程の前又は後のいずれかの、適した保護基を加える又は除去するための工程を含む。更に、各種の合成工程は、所望の化合物を得るために、別の配列又は順序で行うことができる。適用可能な化合物を合成することにおいて有用な合成化学的転換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当技術において既知であり、そして例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994); 及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)及びこれらのその後の版中に記載されているものを含む。
【0082】
以下の略語が使用されている:
Boc tert−ブトキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
ES エレクトロスプレー
EtOAc 酢酸エチル
HIV ヒト免疫不全ウイルス
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
ICV 側脳室内
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分光計
M モル
[MH] プロトン化分子イオン
NMM N−メチルモルホリン
RP 逆相
tert 第三
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン。
【0083】
本発明の態様は、付属する図面を参照して以下の実施例中に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、暗期及び明期中のそれぞれのマウスの体重増加及び体重減少を例示する略図である。グラフは、24時間中の比較的小さい体重変化に対する夜間の大きい体重増加を例示する。
【図2】図2は、暗期の開始及び明期の開始間のマウスの体重に対する実施例2の効果を示す(午後−午前)。
【図3】図3は、暗期の開始及び明期の開始間のマウスの体重に対する実施例4の効果を示す(午後−午前)。
【図4】図4は、暗期の開始及び明期の開始間のマウスの体重に対する実施例5の効果を示す(午後−午前)。
【図5】図5は、レプチンに対するJEG−3細胞による[H]−チミジン組込みの濃度依存性の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
本明細書中の可変基のいずれもの定義中の化学基の列挙の記述は、いずれもの単一の基の、又は列挙された基の組合せとしてのその可変基の定義を含む。本明細書中の態様の記述は、いずれもの単一の態様を、或いはいずれもの他の態様、又はその一部との組合せとしてのその態様を含む。
【0086】
本発明は、ここに以下の非制約的実施例によって更に例示される。以下の具体的な実施例は、単に例示として、そして如何なる意味ででも開示の残りの部分の制約ではないものと解釈されるべきである。更なる詳述無しに、当業者は、本明細書中の記載に基づいて、本発明を、その全ての範囲で利用することができると信じられる。本明細書中に引用された全ての参考文献及び刊行物は、本明細書中にその全てが参考文献として援用される。
【0087】
実施例及び中間体化合物
実験方法
全ての試薬は商用級であり、そして他に規定しない限り、受領したまま更なる精製無しに使用した。商業的に入手可能な無水の溶媒を不活性雰囲気下で行われる反応のために使用した。全ての他の場合、他に規定しない限り、試薬級の溶媒を使用した。分析用LCMSは、Agilent 1100 HPLC装置に接続されたWaters QZ質量分光計で行った。分析用HPLCは、Agilent 1100装置で行った。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、Agilent 1100 HPLC装置に接続されたAgilent MSD−TOFで得た。分析中、較正は、二つの質量分析計によって検査され、そして必要な場合自働的に補正された。スペクトルは、正のエレクトロスプレーモードで取得する。取得した質量の範囲は、100−1000のm/zであった。質量ピークの輪郭検出を使用した。フラッシュクロマトグラフィーは、Strata SI−1シリカギガチューブ(gigatubes)を備えたFlash Master Personal装置で行った。逆相クロマトグラフィーは、Merck LiChoprep(登録商標)RP−18(40−63μm)460×26mmカラムを備えたGilson装置で、30mL/分の水中のメタノールの勾配で行った。化合物は、ACD 6.0又は8.0を使用して自働的に命名した。
【0088】
分析用HPLCのデータは:
装置A:Phenomenex Synergi Hydro RP、(150×4.6mm、4μm)、HO(+0.1%TFA)中の5−100%のCHCN(+0.085%TFA)の勾配、1.5 mL/分、7分の勾配時間、200−300nm、30℃;
で得た。
【0089】
分析用LCMSにデータは:
装置B:Phenomenex Synergi Hydro RP(30×4.6mm、4μm)、HO(+0.1%HCOH)中の5−100%のCHCNの勾配、1.5mL/分、1.75分の勾配時間、30℃;又は
装置C:Phenomenex Synergi Hydro RP(150×4.6mm、4μm)HO(+0.1%HCOH)中の0−20%のCHCNの勾配、1mL/分、8分の勾配時間、25℃;
で得た。
【0090】
中間体1
炭酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル・4−ニトロフェニル
【0091】
【化10】

【0092】
4−ピペリジンメタノール(10.0g、86.8mmol)を、DCM(200mL)中に溶解した。DIPEA(15.0mL、86.6mmol)を加え、そして二炭酸ジ−tert−ブチル(18.95g、86.8mmol)を分割して加えた。反応混合物を室温で19時間撹拌した。反応混合物を2MのHCl水溶液(150mL)、1MのNaCO水溶液(150mL)で洗浄し、そして乾燥(MgSO)した。得られた有機相を真空中で濃縮して、4−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(16.1g、87%)を、白色の固体として得た。
分析用LCMS:(装置B、R=1.80分)、ES:216.3[MH]
【0093】
4−(ヒドロキシメチル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.94g、9.0mmol)のTHF(15.0mL)中の溶液を、LiAlHのTHF中の1Mの溶液(13.5mL、13.5mmol)に、アルゴン下で滴下により加えた。反応混合物を室温で17時間撹拌し、そして次いで0℃に冷却した。THF及び水(1:1の比、1.5mL)を滴下により加えた。ゼラチン質の白色の固体が形成した。4MのNaOH水溶液(0.6mL)を滴下により加えた。水(2mL)を加え、そして得られた混合物を室温で2時間攪拌した。白色の固体を濾過によって除去した。濾液をIsoluteのHM−N液−液抽出カラムに付加し、そしてEtOAc(200mL)で溶出した。得られた有機相を真空中で濃縮して、(1−メチルピペリジン−4−イル)メタノールを、黄色の油状物(1.02g、88%)として得た。
分析用LCMS:純度約90%(装置C、R=1.88分)、ES:129.8[MH]
【0094】
DCM(50mL)中の(1−メチルピペリジン−4−イル)メタノール(2.50g、19.3mmol)を、続いてNMM(1.70mL、15.5mmol)を炭酸ビス−4−ニトロフェニル(7.06g、23.21mmol)のDCM(100mL)中の溶液に加えた。反応混合物を90時間撹拌し、そして次いで1MのNaCO水溶液のアリコートで、水層が無色になるまで連続して洗浄した。有機層を乾燥(MgSO)し、そして真空中で濃縮して、炭酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル・4−ニトロフェニル(4.18g、73%)を、黄色の固体として得た。
分析用LCMS:(装置B、R=1.59分)、ES:295.1(100%)[MH]
【0095】
中間体2
炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル
【0096】
【化11】

【0097】
1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(26.0g、0.2mol)のDMF(200mL)中の撹拌された溶液に、ギ酸(752mL、0.2mol)及びホルムアルデヒド(16.2g、0.2mol、水中の37%溶液)を加えた。反応混合物を100℃で2時間注意深く加熱し、そして次いで一晩室温で攪拌した。溶媒を真空中で除去した。この方法を更に三回繰返して、約100gの生成物を得た。粗製の生成物を混合し、そして真空下で蒸留して、約74℃で2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノール(51g、44%)を、無色の液体として得た。
分析用LCMS:(装置B、R=0.70分)、ES:145.1(100%)[MH]
【0098】
クロロギ酸4−ニトロフェニル(9.85g、49mmol)を、DCM(200mL)中に溶解し、そして0℃に冷却した。2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エタノール(7.2g、50mmol)及びNMM(6mL)を加え、そして反応混合物を室温まで16時間かけて徐々に温まらせた。反応混合物を1MのNaCO水溶液で洗浄した。有機相を乾燥(MgSO)し、濾過し、そして真空中で濃縮して、炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル(10.7g、71%)を、黄色の油状物として得て、これは、静置により固化した。
分析用LCMS:純度約80%(装置B、R=1.70分)、ES:310.4[MH]
【0099】
実施例1
3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル
【0100】
【化12】

【0101】
炭酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル・4−ニトロフェニル(中間体1;4.10g、13.9mmol)を、DMF(60mL)中に溶解した。DIPEA(3.64mL、20.9mmol)及び1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(1.74g、3.93mmol)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌し、そして次いで真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(300mL)中に溶解し、そして次いで飽和NaHCO水溶液(8×200mL)及びブライン(50mL)で連続して洗浄した。溶液を乾燥(MgSO)し、そして真空中で濃縮した。残渣を逆相クロマトグラフィー(それぞれの溶媒中に1%のギ酸を伴う、水中のMeOHの0−30%の勾配溶出)によって精製した。得られた残渣をDCM(70mL)中に溶解し、そして固体のKCOと共に20分間撹拌し、濾過し、そして真空中で濃縮して、3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル(0.374g、9.3%)を、淡黄色の油状物として得た。
分析用HPLC:純度99.2%(装置A、R=4.36分);分析用LCMS:純度100%(装置A、R=5.26分)、ES:289.4[MH].HRMS:C1724に対する計算値288.1838、実測値288.1852。
【0102】
実施例2
3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル
【0103】
【化13】

【0104】
炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル(中間体2;2.76g、8.91mmol)を、DMF(30mL)中に溶解した。DIPEA(1.55mL、9.32mmol)及び1,2,3,4−テトラヒドロキノリン(1.17mL、9.32mmol)を加え、そして反応混合物を室温で48時間撹拌し、そして次いで反応混合物を真空中で濃縮した。残渣を正常相カラムクロマトグラフィー(DCMで、続いてDCM:MeOHの90:10の混合物で、続いてDCM:MeOHの80:20の混合物で溶出)によって、続いて逆相クロマトグラフィー(それぞれの溶媒中に1%のギ酸を伴う、水中のMeOHの0−20%の勾配溶出)によって精製した。得られた残渣をDCM(50mL)中に溶解し、そして固体のKCOと共に20分間撹拌し、濾過し、そして真空中で濃縮して、3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(236mg、9.0%)を、黄色の油状物として得た。
分析用HPLC:純度99.8%(装置A、R=3.72分);分析用LCMS:純度100%(装置A、R=7.19分)、ES:304.5[MH].HRMS:C1725に対する計算値303.1947、実測値303.1957。
【0105】
実施例3
3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル
【0106】
【化14】

【0107】
炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル(中間体2;2.00g、6.47mmol)を、DMF(30mL)中に溶解した。DIPEA(1.69mL、9.71mmol)及び1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン(0.81mL、6.47mmol)を加え、そして反応混合物を室温で18時間撹拌し、そして次いで反応混合物を真空中で濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(300mL)中に溶解し、そして1MのNaCO水溶液(5×200mL)及びブライン(50mL)で洗浄した。溶液を乾燥(MgSO)し、そして真空中で濃縮した。残渣を逆相クロマトグラフィー(それぞれの溶媒中に1%のギ酸を伴う、水中のMeOHの0−30%の勾配溶出)によって精製した。得られた残渣をDCM(60mL)中に溶解し、そして固体のKCOと共に20分間撹拌し、濾過し、そして真空中で濃縮して、3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(834mg、42.9%)を、淡黄色の油状物として得た。
分析用HPLC:純度99.7%(装置A、R=3.67分);分析用LCMS:純度100%(装置A、R=4.45分)、ES:304.4[MH].HRMS:C1725に対する計算値303.1947、実測値303.1956。
【0108】
実施例4
インドリン−1−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル
【0109】
【化15】

【0110】
炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル(中間体2;2.77g、8.96mmol)を、DMF(30mL)中に溶解した。DIPEA(1.56mL、9.42mmol)及びインドリン(1.05mL、9.37mmol)を加え、そして反応混合物を室温で48時間撹拌し、次いで反応混合物を真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(300mL)中に溶解し、そして1MのNaCO水溶液(5×200mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、そして真空中で濃縮した。残渣を逆相クロマトグラフィー(それぞれの溶媒中に1%のギ酸を伴う、水中のMeOHの0−30%の勾配溶出)によって精製した。得られた残渣をDCM(50mL)中に溶解し、そして固体のKCOと共に20分間撹拌し、濾過し、そして真空中で濃縮して、インドリン−1−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(1.88g、73.0%)を、黄色の油状物として得た。
分析用HPLC:純度99.4%(装置A、R=3.67分);分析用LCMS:純度100%(装置A、R=4.80分)ES:290.4[MH].HRMS:C1623に対する計算値289.1790、実測値289.1804。
【0111】
実施例5
1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル
【0112】
【化16】

【0113】
炭酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル・4−ニトロフェニル(中間体2;2.76g、8.94mmol)を、DMF(30mL)中に溶解した。DIPEA(1.55mL、9.35mmol)及びイソインドリン(1.06mL、9.34mmol)を加え、そして反応混合物を室温で15時間撹拌し、そして次いで反応混合物を真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(300mL)中に溶解し、そして1MのNaCO水溶液(5×200mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)し、そして真空中で濃縮した。残渣を逆相クロマトグラフィー(それぞれの溶媒中に1%のギ酸を伴う、水中のMeOHの0−30%の勾配溶出)によって精製した。得られた残渣をDCM(50mL)中に溶解し、そして固体のKCOと共に20分間撹拌し、濾過し、そして真空中で濃縮して、黄色の油状物を得て、これは静置により固化した。固体をヘプタンから再結晶して、1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル(990mg、38.3%)を、白色の固体として得た。
分析用HPLC:純度100%(装置A、R=3.52分);分析用LCMS:純度100%(装置A、R=4.76分)、ES:290.4[MH].HRMS:C1623に対する計算値289.1790、実測値289.1800。
【0114】
生物学的方法
オスのC57bl/6マウスにおける一晩の体重変化の測定
このモデルは、有効ウィンドウを最大にするために、午後−午前の時間中の体重増加に対する化合物の効果を研究する。典型的には、図1に表されるように、マウスは、暗期中に体重を約1g増加し、そして次いでこの体重増加の殆んどを明期中に喪失する。いずれもの24時間の時間中の重量差は非常に小さいが、一方暗期の初め及び明期の初め間(午後−午前)の重量差は最大である。
【0115】
暗期中の体重の変化を測定することは重要である。マウスが2日連続して活性化合物を投与され、そして最初の投与の48時間後の体重の変化が記録された場合、有意な効果は観察されない。然しながら、暗期中の体重の変化のみが考慮された場合、有意な、そして強い効果が見られる。これは、マウスが、暗期中の体重増加の欠如を相殺するために、明期中にリバウンドするためである。非常に活性な長続きする化合物は、更にこのリバウンドを減少し、そして48時間中の体重を減少することができる。
【0116】
C57bl\6のオスのマウスにおける翌日中の重量変化:
暗期の初め及び明期の初め間(午後−午前)の重量差は、午後及び連続した2日目の午後間に測定された重量差より大きい。従って、有効ウィンドウを最大にするために、午後−午前の差に対する化合物の効果を研究した。
【0117】
C57bl/6マウスをグループ化(ケージ当り5匹)し、そして順化のために5日間放置した。一回の腹腔内的に(ip)投与される投与量(60mg/kg)を、暗期の直前に投与した。化合物は、水可溶性であるか、又は3%までのクレモフォア(cremophor)中に溶解されるか(この場合、ベヒクルも更にクレモフォアを含有していた)のいずれかであった。pHを、化合物の性質によって、最低5.5から最大8までに調節した。
【0118】
図2−4に示すように、式(I)の化合物は、マウスの体重を減少することのために有用である。
非組換え系におけるレプチンアッセイ
レプチンがSTAT3リン酸化において非常に顕著な増加を誘発する組換え系(例えば、ObRbで形質移入されたHEK293細胞)においてはよく特徴づけされているが、これらの系は、しばしばレプチン受容体に対する試験化合物の活性の正確な測定値を与えることに失敗している。受容体の過剰発現(並びに異なった薬物が、その受容体とのレプチンの会合によって誘発されるシグナル伝達経路の異なった部分に作用する可能性)が、殆んどの場合試験された薬物の活性の非存在においてもたらされるように見受けられる。
【0119】
非組換え系におけるレプチン受容体の発現は、しばしば変動し、そしてシグナルの安定性が実験値内にある系を確認するために注意をはらわなければならない。このような系を使用して、レプチン受容体アンタゴニスト模倣剤を、そのレプチンに対する作用を評価することによって確認することができる(以下を参照されたい)。
【0120】
レプチンは、主として脂肪細胞中で産生されるが、しかしヒトでは、mRNAでコードされるレプチンは、更に胎盤中にも存在する。ここで、レプチンは、微小血管中で重要な増殖性の役割を演じることができる。この仮定を天然の細胞系において使用する可能性を評価した。
【0121】
JEG−3プロトコル
JEG−3細胞(絨毛癌細胞系)において、レプチンは、増殖を3倍まで刺激することができる(Biol.Reprod.(2007)76:203−10)。レプチンは、更にJEG−3細胞における[H]−チミジン組込みの濃度依存性増加を起こす(図5、100nMにおいて最大効果(EC50=2.1nM))。細胞によって組込まれた放射能は、その増殖性の活性の指標であり、そして液体シンチレーションベータカウンターで毎分当りのカウント(CPM)で測定される。
【0122】
この発見は、化合物が、細胞増殖に対するレプチンの効果を再現するか(レプチン受容体アゴニスト模倣剤)(即ち、所定の化合物が細胞により組込まれた[H]−チミジンの増加を起こすものである)、又は[H]−チミジン組込みにおけるレプチンで仲介された増加を防止することによってレプチンの効果を阻害するか(アンタゴニスト効果)のいずれかが可能であるかに関わらず試験に適用することができる。
【0123】
この方法は、非組換え系を使用する利益を有し、そして妥当な再現性及び癌強制を有する。
脳浸透の測定
試験種(ネズミ)に、通常静脈内(IV)又は経口(PO)経路で、実験中の物質のボーラス投与を与える。適当な時点で、血液試料を採取し、そして物質濃度、及び適宜に代謝物濃度のために得られた血漿を抽出並びに分析する。同じ時点で、他のグループのネズミを犠牲にし、脳を分離し、そして脳の表面を清浄にする。次いで脳の試料をホモジナイズし、物質濃度、及び適宜に代謝物濃度のために抽出並びに分析する。別の方法として、微小透析プローブを試験種の一つ又はそれより多い脳の領域に移植し、そして適当な時点で、その後の分析のために試料を収集する。この方法は、細胞外物質の濃度のみを測定する利益を有する。次いで血漿及び脳内濃度を比較し、そして個々の時点の平均した濃度の比較によるか、又は濃度−時間プロットの曲線下面積(AUC)の計算によるかのいずれかによって、比を計算する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中:
Aは、以下の式:
【化2】

{上記式中、Xは、N又はCHである}、及び
以下の式:
【化3】

{上記式中、Xは、N(R)、CH(R)又はOである}から選択され;
は、水素、C1−6−アルキル(非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、シアノ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)及びC1−6−アシル(非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)から選択され;
及びRは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−6−アルキル(非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)及びC1−6−アルコキシ(非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ及びC1−6−アルコキシから独立に選択される一つ又はそれより多い置換基で所望により置換されていてもよい)から独立に選択され;
は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、CF、C1−6−アルキル及びC1−6−アルコキシから独立に選択され;
Yは、O、N(R)又はCHであり;
は、水素又はC1−4−アルキルであり;
a、b及びcは、それぞれ独立に1、2又は3であり;
dは、0、1又は2であり;
eは、1、2又は3であり;そして
f及びgは、それぞれ独立に0、1又は2であり、但し、1≦f+g≦3であることを条件とし;
そして化合物が:
・ 2,3−ジヒドロ−1−[1−オキソ−3−(1−ピペラジニル)プロピル]−1H−インドール;
・ 2,3−ジヒドロ−3−メチル−1H−インドール−1−カルボン酸(1−ブチル−4−ピペリジニル)メチル;
・ 3,4−ジヒドロ−N−[3−(1−ピペラジニル)プロピル]−2(1H)−イソキノリンカルボキシアミド;
・ N−[3−(ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−イル)プロピル]−3,4−ジヒドロ−2(1H)−イソキノリン−カルボキシアミド;
・ 2,3−ジヒドロ−2−メチル−1−[3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−オキソプロピル]−1H−インドール;
・ 2,3−ジヒドロ−N−(2−ピペリジニルメチル)−1H−インドール−1−カルボキシアミド;又は
・ 1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシ−2−[1−オキソ−3−(3−ピペリジニル)プロピル]−イソキノリン;
ではないことを更なる条件とする;]
の化合物、又は医薬的に受容可能な塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体又はこれらのN−オキシド。
【請求項2】
Yが、Oである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、以下の式:
【化4】

である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
が、メチルである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが、水素、メチル及びエチルから独立に選択される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が、水素、フルオロ、クロロ及びメチルから独立に選択される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、以下の式(I’):
【化5】

[式中、X、R1、e、f及びgは、請求項1において定義したとおりである]
のものである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸(1−メチルピペリジン−4−イル)メチル;
3,4−ジヒドロキノリン−1(2H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
インドリン−1−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;及び
1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−カルボン酸2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エチル;
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
活性成分として請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物を、医薬的に受容可能な希釈剤又は担体との組合せで含んでなる医薬製剤。
【請求項10】
治療において使用するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
体重増加に伴う症状又は疾病の治療或いは予防において使用するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
前記症状又は疾病が、肥満症、2型糖尿病、脂肪萎縮症、インスリン抵抗性、代謝性症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異状症、脂肪肝、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患又は黄斑変性症である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性の不妊症若しくは免疫不全症の治療又は予防において、或いは創傷治癒の治療において使用するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
炎症性症状又は疾病、肥満症及び過剰の血漿レプチンに伴う低いレベルの炎症、アテローム性動脈硬化症、1又は2型糖尿病の大若しくは微小血管の合併症、網膜炎、腎症、自律神経障害、又は虚血若しくはアテローマ性動脈硬化症によって起こされる血管損傷の治療或いは予防において使用するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
血管新生の阻害において使用するための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
体重増加に伴う症状又は疾病の治療或いは予防のための医薬の製造のための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項17】
前記症状又は疾病が、肥満症、2型糖尿病、脂肪萎縮症、インスリン抵抗性、代謝性症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異状症、脂肪肝、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患又は黄斑変性症である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性の不妊症若しくは免疫不全症の治療又は予防、或いは創傷治癒の治療のための医薬の製造のための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項19】
炎症性症状又は疾病、肥満症及び過剰の血漿レプチンに伴う低いレベルの炎症、アテローム性動脈硬化症、1又は2型糖尿病の大若しくは微小血管の合併症、網膜炎、腎症、自律神経障害、又は虚血若しくはアテローマ性動脈硬化症によって起こされる血管損傷の治療或いは予防のための医薬の製造のための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
血管新生の阻害において使用するのための医薬の製造のための、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項21】
体重増加に伴う症状又は疾病の治療或いは予防のための方法であって、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の有効な量を、このような治療を必要とする、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項22】
前記症状又は疾病が、肥満症、2型糖尿病、脂肪萎縮症、インスリン抵抗性、代謝性症候群、高血糖症、高インスリン血症、脂質異状症、脂肪肝、過食症、高血圧、高トリグリセリド血症、不妊症、体重増加に伴う皮膚疾患又は黄斑変性症である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
重度の体重減少、月経困難症、無月経症、女性の不妊症若しくは免疫不全症の治療又は予防、或いは創傷治癒の治療のための方法であって、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の有効な量を、このような治療を必要とする、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項24】
炎症性症状又は疾病、肥満症及び過剰の血漿レプチンに伴う低いレベルの炎症、アテローム性動脈硬化症、1又は2型糖尿病の大若しくは微小血管の合併症、網膜炎、腎症、自律神経障害、又は虚血若しくはアテローマ性動脈硬化症によって起こされる血管損傷の治療或いは予防のための方法であって、このような治療を必要とする、ヒトを含む哺乳動物に、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の有効な量を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項25】
血管新生の阻害のための方法であって、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の化合物の有効な量を、このような治療を必要とする、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項26】
請求項1に記載の化合物の調製のための方法であって:
(a)以下の式(II):
【化6】

[式中、X、R、R、a、d及びeは、請求項1において定義したとおりである]
の化合物を、クロロギ酸4−ニトロフェニル又は炭酸ビス−(4−ニトロフェニル)と、適した塩基(DIPEA又はNMMのような)の存在中で、適した溶媒(DCMのような)中で、−10ないし40℃で反応させて、以下の式(III):
【化7】

の化合物を形成し;
(b)式(III)の化合物を、以下の式(IV):
【化8】

[式中、R、R、b、c、f及びgは、請求項1において定義したとおりである]
の化合物と、適した塩基、(DIPEAのような)の存在中で、適した溶媒(DMFのような)中で、−10ないし40℃で反応させて、式(I)の化合物を得て;そして
(c)所望により、一つ又はいくつかの工程で、式(I)の化合物をもう一つの式(I)の化合物に転換すること;
を含んでなる、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506297(P2011−506297A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536477(P2010−536477)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066913
【国際公開番号】WO2009/071677
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】