説明

新規な化合物

【課題】高解像性のレジスト組成物を構成できる高分子化合物を製造するのに好適な化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物。[式(1)中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;Yは、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。式(2)中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは酸素原子であり;mは1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザー(248nm)が量産の中心となり、さらにArFエキシマレーザー(193nm)が量産で導入され始めている。また、Fエキシマレーザー(157nm)やEUV(極端紫外光)、EB(電子線)等を光源(放射線源)として用いるリソグラフィー技術についても研究が行われている。
このような短波長の光源用のレジストには、微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性と、このような短波長の光源に対する感度の高さが求められている。このような条件を満たすレジストの1つとして、ベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジストが知られており、化学増幅型レジストには、露光部のアルカリ可溶性が増大するポジ型と、露光部のアルカリ可溶性が低下するネガ型とがある。
【0003】
現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸から誘導される構成単位等を有する樹脂(アクリル系樹脂)が主流となっており、数々の提案がなされている。例えば特許文献1には、エステル部に酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、エステル部にγ−ブチロラクトン骨格等のラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、エステル部に、水酸基等の極性基を含有する多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等を有する重合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−167347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかるベース樹脂を用いた従来のレジストにおいては、半導体素子の更なる微細化にともない、解像性が不十分という問題が生じてきた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高解像性のレジスト組成物を構成できる高分子化合物、該高分子化合物を製造するのに好適な化合物、該高分子化合物を含有するレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0007】
【化1】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;Yは、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【0008】
本発明の第2の態様は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0009】
【化2】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは酸素原子であり;mは1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【0010】
なお、本発明において、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を意味する。また、「露光」は放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高解像性のレジスト組成物を構成できる高分子化合物、該高分子化合物を製造するのに好適な化合物、該高分子化合物を含有するレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例11および比較例1のマスクリニアリティ評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
≪化合物≫
本発明の化合物(以下、化合物(a)ということがある。)は、上記式(1)に示す構造を有する。
式(1)中、Rは水素原子または低級アルキル基である。低級アルキル基は、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましくはメチル基である。
Xは硫黄原子または酸素原子である。
【0014】
Yは、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。
「ヘテロ原子」としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
「炭素数1〜20の鎖状、分岐状または環状のアルキル基」としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜6の環状のアルキル基、これらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、「アルキル基」は、特に記載のない限り、1価の飽和炭化水素基を意味する。
【0015】
これらのアルキル基は、その水素原子の一部がヘテロ原子を含む基(ヘテロ原子そのものの場合も含む)で置換されていてもよい。
「ヘテロ原子を含む基」としては、ヘテロ原子自体であってもよく、また、ヘテロ原子と炭素原子および/または水素原子とからなる基、たとえばアルコキシ基等であってもよい。尚、ヘテロ原子を含む基において、水酸基などの親水性基は除くものとする。
水素原子の一部がヘテロ原子で置換されたアルキル基の例としては、たとえば、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの酸素原子で置換された基(すなわちカルボニル基(C=O)を有する基)、同一の炭素原子に結合した2つの水素原子が1つの硫黄原子で置換された基(すなわちチオケトン(C=S)を有する基)等が挙げられる。
【0016】
「アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基」としては、たとえば、炭素原子が窒素原子で置換されている例(たとえば、炭素数2以上のアルキル基において、−CH−が−NH−で置換された基)や、炭素原子が酸素原子で置換されている例(たとえば、炭素数2以上のアルキル基において、−CH−が−O−で置換された基)等が挙げられる。
【0017】
化合物(a)として、より具体的には、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化3】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;mは0または1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【0019】
式(2)におけるR、Xはそれぞれ、式(1)におけるR、Xと同様である。
式(2)中、mは0または1であり、より好ましくは1である。
また、式(2)におけるY’は、アルキル基の炭素数が1〜(20−m)である以外は、式(1)におけるYと同様である。
【0020】
一般式(2)において、mが0である場合の具体例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
式(3)中、R、Xは、式(1)におけるR、Xと同様である。
また、R11の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、式(1)におけるYにおいて挙げたアルキル基(ヘテロ原子を有さない)と同様のものが例示できる。
【0021】
【化4】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;R11は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【0022】
また、一般式(2)において、mが1である場合の具体例としては、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
式(4)中、R、Xは、式(1)におけるR、Xと同様である。
また、nは1〜3の整数であり、合成が容易な点で、1であることが好ましい。
また、R12は、炭素数が1〜(21−2n)である以外は式(3)におけるR11と同様である。
【0023】
【化5】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;nは1〜3の整数であり;R12は炭素数1〜(21−2n)の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【0024】
本発明にかかる化合物(a)は、たとえば、(α−低級アルキル)アクリルアミドと、「−C(=X)−Y」で表される基を誘導する化合物とを反応させて、(α−低級アルキル)アクリルアミドのアミノ基の水素原子を「−C(=X)−Y」で表される基で置換することにより製造することができる。
「−C(=X)−Y」で表される基を誘導する化合物としては、たとえば上記式(3)の化合物の場合、Cl−C(=X)−R11で表される化合物、たとえばアルキルカルボニルクロリド等が挙げられる。また、たとえば上記式(4)の化合物の場合、R12−N=C=Xで表されるアルキルイソシアネートまたはアルキルイソチオシアネート等が挙げられる。
【0025】
≪高分子化合物≫
・構成単位(a1)
本発明の高分子化合物(以下、高分子化合物(A1)ということがある)は、上記一般式(a1−1)で表される構成単位(a1)を必須の構成単位として有する。
構成単位(a1)は、上記一般式(1)で表される化合物のエチレン二重結合が開裂して形成される構成単位である。一般式(a1−1)におけるR、X、Yは前記一般式(1)におけるR、X、Yと同じである。
【0026】
構成単位(a1)は、下記一般式(a1−2)で表される構成単位(a12)を含むことが好ましい。構成単位(a12)は、上記一般式(2)で表される化合物のエチレン二重結合が開裂して形成される構成単位である。一般式(a1−2)におけるR、X、m、Y’は前記一般式(2)におけるR、X、m、Y’と同じである。
【0027】
【化6】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;mは0または1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【0028】
また、構成単位(a12)は、下記一般式(a1−3)で表される構成単位(a13)、および/または下記一般式(a1−4)で表される構成単位(a14)を含むことが好ましい。一般式(a1−3)、(a1−4)におけるR、X、R11、n、R12は前記一般式(3)、(4)におけるR、X、R11、n、R12と同じである。
【0029】
【化7】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;R11は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【0030】
【化8】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子または酸素原子であり;nは1〜3の整数であり;R12は炭素数1〜(21−2n)の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【0031】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中の構成単位(a1)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、5モル%以上が好ましく、10〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%がさらに好ましく、10〜50モル%が特に好ましく、10〜35モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによって、本発明の効果が充分なものとなる。
【0032】
高分子化合物(A1)は、上記構成単位(a1)を有していればよく、たとえばアルカリ可溶性であっても、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するものであってもよい。高分子化合物(A1)を配合したレジスト組成物は、高分子化合物(A1)がアルカリ可溶性の場合はネガ型となり、高分子化合物(A1)が酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するものである場合はポジ型となる。本発明において、高分子化合物(A1)は、酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するもの(ポジ型)であることが好ましい。
【0033】
・構成単位(a2)
高分子化合物(A1)が酸の作用によりアルカリ溶解性が増大するものである場合、高分子化合物(A1)は、さらに、酸解離性溶解抑制基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
なお、本発明において、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステル等のα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」のα−位の置換基としての低級アルキル基は、炭素原子数1〜5のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して形成される構成単位を意味する。
【0034】
構成単位(a2)における酸解離性溶解抑制基は、高分子化合物(A1)をレジスト組成物とした際に、露光前は高分子化合物(A1)全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、露光後は(B)成分から発生した酸の作用により解離し、この高分子化合物(A1)全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば特に限定せずに用いることができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、第3級アルコキシカルボニル基、または鎖状アルコキシアルキル基などが広く知られている。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0035】
構成単位(a2)における酸解離性抑制基としては、例えば、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基を好適に用いることができる。
本発明における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基(脂環式基)であることを意味し、このとき「脂肪族環式基」は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基(脂環式基)である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テロラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な単環または多環式基は、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でも、工業上、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
【0036】
構成単位(a2)として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−9)で表される構成単位が挙げられる。
【0037】
【化9】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0038】
【化10】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、RおよびRはそれぞれ独立して低級アルキル基である。)
【0039】
【化11】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは第3級アルキル基である。)
【0040】
【化12】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0041】
【化13】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rはメチル基である。)
【0042】
【化14】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0043】
【化15】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0044】
【化16】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基である。)
【0045】
【化17】

(式中、Rは水素原子またはα−低級アルキル基、Rは低級アルキル基である。)
【0046】
上記式中、Rの低級アルキル基としては、前記構成単位(a1)におけるRの低級アルキル基と同じである。
上記R〜RおよびR〜Rはそれぞれ、炭素数1〜5の低級の直鎖または分岐状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基またはエチル基が好ましい。
また、Rは、tert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基であり、tert−ブチル基である場合が工業的に好ましい。
【0047】
構成単位(a2)としては、上記に挙げた中でも、特に一般式(a2−1)、(a2−2)、(a2−3)、(a2−6)で表される構成単位が、解像性に優れるパターンが形成できるため好ましい。
【0048】
構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中の構成単位(a2)の割合は、高分子化合物(A1)の全構成単位の合計に対して、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%が特に好ましく、20〜50モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0049】
・構成単位(a3)
高分子化合物(A1)は、前記構成単位(a1)に加えて、または前記構成単位(a1)および(a2)に加えて、ラクトン含有単環または多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することが好ましい。
構成単位(a3)のラクトン含有単環または多環式基は、高分子化合物(A1)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
なお、ここでのラクトンとは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0050】
構成単位(a3)としては、このようなラクトンの構造(−O−C(O)−)と環基とを共に持てば、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられ、また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。特に、以下のような構造式(IV)、または構造式(V)を有するラクトン含有トリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が、工業上入手し易いなどの点で有利である。
【0051】
【化18】

【0052】
構成単位(a3)の例としては、ラクトン含有モノシクロアルキル基またはトリシクロアルキル基を含む(α−低級アルキル基)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等が挙げられる。
構成単位(a3)の例として、より具体的には、下記一般式(a3−1)〜(a3−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0053】
【化19】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である。)
【0054】
【化20】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である。)
この構成単位は、結合位置が5位又は6位の異性体の混合物として存在する。
【0055】
【化21】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または低級アルキル基である。)
【0056】
【化22】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基であり、oは0または1である。)
【0057】
【化23】

(式中、R’は水素原子または低級アルキル基である)
【0058】
一般式(a3−1)〜(a3−5)におけるR’の低級アルキル基としては、前記構成単位(a2)におけるRの低級アルキル基と同じである。
一般式(a3−3)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基であり、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
【0059】
また、このような一般式(a3−1)〜(a3−5)で表される構成単位の中では、レジスト組成物に用いた場合に近接効果の抑制・低減についての効果が優れる等の点で、ラクトン骨格上のα炭素にエステル結合を有する一般式(a3−3)で表される(α−低級アルキル)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル、すなわちγ−ブチロラクトンの(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、一般式(a3−1)、(a3−2)で表される(α−低級アルキル)アクリル酸のノルボルナンラクトンエステル、すなわちノルボルナンラクトンの(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位は、レジスト組成物に用いた場合に得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性がさらに良好であるため、好ましい。特に、一般式(a3−2)で表される構成単位はその効果が極めて高く、好ましい。これらのなかでも一般式(a3−3)で表される構成単位が最も好ましい。
【0060】
高分子化合物(A1)において、構成単位(a3)は、1種だけを用いてもよいし、相互に異なる2種以上を組み合わせて用いることも可能である。高分子化合物(A1)の骨格中に、相互に異なる2種以上のラクトン骨格を導入することにより、レジスト膜の基板への密着性やアルカリ現像液親和性およびエッチング耐性が更に向上するため好ましい。
【0061】
構成単位(a3)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%が特に好ましく、20〜55モル%が最も好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0062】
・構成単位(a4)
高分子化合物(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記構成単位(a1)に加えて、または前記構成単位(a1)および(a2)に加えて、または前記構成単位(a1)〜(a3)に加えて、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)を有していてもよい。
極性基としては、水酸基、シアノ基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基(アルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
その中でも、水酸基、シアノ基またはカルボキシル基含有脂肪族多環式基を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な多環式基は、ArFエキシマレーザー用レジスト組成物用のポリマー(樹脂成分)において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの多環式基の中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
【0063】
構成単位(a4)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基のときは、(α−低級アルキル)アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a4−1)、(a4−2)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0064】
【化24】

(式中、R’は前記に同じであり、nは1〜3の整数である。)
【0065】
これらの中でも、nが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0066】
【化25】

(式中、R’は前記に同じであり、kは1〜3の整数である。)
【0067】
これらの中でも、kが1であるものが好ましい。これらは異性体の混合物として存在する(シアノ基がノルボルナニル基の4位または5位に結合している化合物の混合物)。
【0068】
構成単位(a4)は高分子化合物(A1)の必須成分ではないが、これを高分子化合物(A1)に含有させる際には、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、構成単位(a4)を含まないことが最も好ましい。上限値をこえると、本発明の効果が損なわれるおそれがある。また、他の構成単位のバランスの点等からレジストパターン形状が劣化するおそれがある。
【0069】
・構成単位(a5)
高分子化合物(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の構成単位(a1)ないし(a4)に分類されない他の構成単位(a5)を有していてもよい。
構成単位(a5)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。この様な構成単位を用いると、レジスト組成物用として用いたときに、孤立パターンからセミデンスパターン(ライン幅1に対してスペース幅が1.2〜2のラインアンドスペースパターン)の解像性に優れ、好ましい。
【0070】
該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a4)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFポジレジスト材料として従来から知られている多数のものから適宜選択して使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。
特に下記一般式(a5−1)〜(a5−3)であることが好ましい。
【0071】
【化26】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0072】
【化27】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0073】
【化28】

(式中、R’は前記と同じである。)
【0074】
かかる構成単位(a5)は、高分子化合物(A1)の必須成分ではないが、これを高分子化合物(A1)に含有させる際には、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a5)を1〜30モル%、好ましくは10〜20モル%含有させると、孤立パターンからセミデンスパターンの解像性において良好な向上効果が得られるので好ましい。
【0075】
高分子化合物(A1)は、各構成単位にそれぞれ相当するモノマーを、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって共重合させることにより、容易に製造することかできる。
【0076】
また、高分子化合物(A1)の質量平均分子量(ポリスチレン換算、以下同様)は、特に限定するものではないが、3000〜50000が好ましく、5000〜20000がより好ましく、5000〜15000がさらに好ましい。この範囲にすると、レジスト溶剤への溶解性、耐ドライエッチング性、レジストパターン断面形状が良好となる。
また、高分子化合物(A1)分散度は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.5がさらに好ましい。
【0077】
≪レジスト組成物≫
本発明のレジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)(以下、(A)成分ということがある)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分ということがある)とを含むレジスト組成物であって、前記(A)成分が、上記本発明の高分子化合物であることを特徴とする。
本発明のレジスト組成物は、上記特徴を備えるものであれば、ポジ型であってもネガ型であってもよい。好ましくはポジ型である。
【0078】
ネガ型の場合、レジスト組成物には、アルカリ可溶性樹脂および(B)成分とともに架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が作用し、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤との間で架橋が起こり、アルカリ不溶性へ変化する。
架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基、特にはブトキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、又はエチレン尿素系架橋剤等を用いると、良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。前記架橋剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部の範囲が好ましい。
【0079】
ポジ型の場合は、(A)成分は、いわゆる酸解離性溶解抑制基を有するアルカリ不溶性のものであり、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が前記酸解離性溶解抑制基を解離させることにより、(A)成分がアルカリ可溶性となる。
そのため、レジストパターンの形成において、基板上に塗布されたレジスト組成物に対して選択的に露光すると、露光部のアルカリ可溶性が増大し、アルカリ現像することができる。
【0080】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、上記本発明の高分子化合物(A1)である。
なお、本発明においては、高分子化合物(A1)の他に、公知のポリヒドロキシスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等の、レジスト組成物に用い得る他の樹脂成分を適宜配合することもできるが、本発明の効果のためには、レジスト組成物に含まれる樹脂成分中、高分子化合物(A1)の割合が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、最も好ましくは100質量%である。
レジスト組成物中の(A)成分の割合は、目的とするレジスト膜厚によって適宜調製することができる。
【0081】
<(B)成分>
(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート類系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0082】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0083】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0084】
【化29】

【0085】
本発明においては、中でも、(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
【0086】
(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0087】
<(C)成分>
本発明のレジスト組成物は、(A)成分、(B)成分および後述する任意の成分を有機溶剤(以下、(C)成分ということがある)に溶解させて製造することができる。
(C)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは9:1〜1:9、より好ましくは8:2〜2:8の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは8:2〜2:8、より好ましくは7:3〜3:7であると好ましい。
また、(C)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
また、(C)成分としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)も好ましい。
(C)成分の使用量は、特に限定されず、基板等の支持体に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0088】
<(D)成分>
本発明のレジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良く、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げらる。これらの中でも、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましく、トリエタノールアミンが最も好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0089】
<(E)成分>
また、前記(D)成分の配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸またはリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0090】
<その他の任意成分>
本発明のレジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0091】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明のレジストパターン形成方法は、上記本発明のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0092】
より具体的には、例えば以下の様にして行うことができる。すなわち、まずシリコンウェーハ等の基板上に、本発明のレジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベークを行う。次いで、露光装置などを用い、レジスト組成物の塗膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行った後、PEB(露光後加熱)を行う。続いて、アルカリ現像液を用いて現像処理した後、リンス処理を行って、基板上の現像液および該現像液によって溶解したレジスト組成物を洗い流し、乾燥させる。
これらの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するレジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
露光工程で用いる光源としては、限定されるものではないが、波長300nm以下の遠紫外光、具体的にはKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外光)など、電子線、軟X線、X線などを使用することができる。本発明にかかるレジスト組成物は、特に、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
なお、場合によっては、上記アルカリ現像後ポストベーク工程を含んでもよいし、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けてもよい。
【0093】
プレベークにおける加熱温度および露光後加熱(PEB)における加熱温度は、一般に90℃以上でよいが、矩形性の良好なレジストパターンを形成するためには、特にそれぞれ90〜140℃、好ましくは90〜130℃が好ましい。また、この温度範囲とすることにより、マイクロブリッジの発生を効果的に抑制することができる
【0094】
上述したように、本発明によれば、高解像性のレジスト組成物を構成できる高分子化合物、該高分子化合物を製造するのに好適な化合物、該高分子化合物を含有するレジスト組成物、および該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法が得られる。
また、本発明の高分子化合物を含有するレジスト組成物を用いることで、水に対する接触角を高めることができる。そのため、レジストパターン形成工程において行う純水リンス工程において、水等のリンス液に対するレジスト膜の接触角が高い(水に対してなじみにくい)ことで、近年、微細パターン形成時の問題となっていたパターン倒れの問題を改善することができる。その理由としては、定かではないが、本発明の化合物(a)が、少なくとも1つのイミノ基(−NH−)を有し、かつその両隣に、カルボニル基(C=O)またはチオケトン(C=S)を有する構成を有することによると推測される。このように、水に対してなじみにくいレジスト膜を形成可能であることから、レジストパターンを形成した際のパターン倒れの防止効果も期待される。
さらに、本発明においては、化合物(a)が窒素原子を有しているため、その影響により、レジスト膜中で(B)成分から発生する酸の拡散が抑制されることが期待され、それに伴って、解像性の向上や、パターン側壁のラフネスの改善も期待される。
本発明の化合物(a)は、窒素原子を有しているため、本願明細書で定義した(D)成分としても用いることができる。
また、本化合物を他の構成単位と共重合させた樹脂をレジスト組成物に用いることで、樹脂骨格中に(D)成分の機能を備えたレジスト組成物が提供することができる。該レジスト組成物は、通常のレジスト組成物とは異なり、(D)成分を樹脂骨格中に有することから、水への溶出が抑制されることが予想され、液浸(immersion)リソグラフィー用のレジスト組成物としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例1及び6〜11は参考例である。
[実施例1]シクロヘキサンカルボン酸メタクリルアミドの合成
10gのメタクリルアミドを300gのテトラヒドロフランに溶解し、0℃にて4.7gの60%水素化ナトリウムを加え10分攪拌し、18.1gのシクロヘキサンカルボニルクロリドを加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、水/酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘプタン:酢酸エチル=2:1)により不純物を除去し、シクロヘキサンカルボン酸メタクリルアミド(化合物1)を6.0g得た。得られた化合物1についてプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した結果を下記に示す。
H−NMR(CDCl、内部標準:テトラメチルシラン):δ=8.39ppm(brs、1H)、5.82ppm(s、1H)、5.59ppm(s、1H)、3.25ppm(m、1H)、2.00ppm(s、3H)、1.98〜1.86ppm(m、2H)、1.85〜1.73(m、2H)、1.75〜1.65(m、1H)、1.50〜1.16(m、5H)
IR(cm−1):3270、2933、2853、1720、1498、1451
【0096】
【化30】

【0097】
[実施例2]N−シクロヘキシル−N’−メタクリル尿素の合成
10gのメタクリルアミドを300gのテトラヒドロフランに溶解し、0℃にて4.7gの60%水素化ナトリウムを加え10分攪拌し、14.7gのシクロヘキシルイソシアネートを加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、水/酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘプタン:酢酸エチル=2:1)により不純物を除去し、N−シクロヘキシル−N’−メタクリル尿素(化合物2)を9.2g得た。得られた化合物2についてプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した結果を下記に示す。
H−NMR(CDCl、内部標準:テトラメチルシラン):δ=9.33ppm(s、1H)、8.60ppm(s、1H)、6.00ppm(s、1H)、5.59ppm(s、1H)、3.73ppm(m、1H)、2.00ppm(s、3H)、2.01〜1.85ppm(m、2H)、1.80〜1.65(m、2H)、1.69〜1.52(m、1H)、1.50〜1.15(m、5H)
IR(cm−1):3272、3141、2932、2856、1691、1545
【0098】
【化31】

【0099】
[実施例3]N−シクロヘキシル−N’−アクリル尿素の合成
10gのアクリルアミドを300gのテトラヒドロフランに溶解し、0℃にて7.0gの60%水素化ナトリウムを加え10分攪拌し、17.8gのシクロヘキシルイソシアネートを加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、水/酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘプタン:酢酸エチル=2:1)により不純物を除去し、N−シクロヘキシル−N’−アクリル尿素(化合物3)を10.2g得た。得られた化合物3についてプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した結果を下記に示す。
H−NMR(CDCl、内部標準:テトラメチルシラン):δ=8.68ppm(s、1H)、6.49ppm(d、1H)、6.33ppm(dd、1H)、5.83ppm(d、1H)、3.78ppm(m、1H)、2.00〜1.81ppm(m、2H)、1.80〜1.65(m、2H)、1.68〜1.51(m、2H)、1.48〜1.15(m、5H)
IR(cm−1):3282、3117、2939、2855、1693、1554
【0100】
【化32】

【0101】
[実施例4]N−エチル−N’−メタクリル尿素の合成
10gのメタクリルアミドを300gのテトラヒドロフランに溶解し、0℃にて4.5gの60%水素化ナトリウムを加え10分攪拌し、8.4gのエチルイソシアネートを加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、水/酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(SiO、ヘプタン:酢酸エチル=2:1)により不純物を除去し、N−エチル−N’−メタクリル尿素(化合物4)を9.0g得た。得られた化合物4についてプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した結果を下記に示す。
H−NMR(CDCl、内部標準:テトラメチルシラン):δ=9.67ppm(brs、1H)、8.62ppm(brs、1H)、6.02ppm(s、1H)、5.58ppm(s、1H)、3.31ppm(qd、2H)、1.99ppm(s、3H)、1.19(t、3H)
IR(cm−1):3326、3224、3145、2989、2976、2953、1678、1631、1545、1492
【0102】
【化33】

【0103】
[実施例5]N−エチル−N’−メタクリルチオ尿素の合成
10gのメタクリルアミドを300gのテトラヒドロフランに溶解し、0℃にて4.5gの60%水素化ナトリウムを加え10分攪拌し、10.2gのエチルイソチオシアネートを加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、減圧濃縮し、水/酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル溶液を硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮し、N−エチル−N’−メタクリルチオ尿素(化合物5)を9.2g得た。得られた化合物5についてプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した結果を下記に示す。
H−NMR(CDCl、内部標準:テトラメチルシラン):δ=10.54ppm(brs、1H)、8.70ppm(brs、1H)、5.87ppm(s、1H)、5.60ppm(s、1H)、3.69ppm(qd、2H)、1.99ppm(s、3H)、1.28ppm(t、3H)
IR(cm−1):3248、2976、2934、1677、1631、1553、1524
【0104】
【化34】

【0105】
[実施例6]樹脂1の合成
6gの化合物1と、γ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル(GBLMA)10.5gと、メタクリル酸−2−メチルアダマンタン(MAdMA)14.4gとを、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.3gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂1とし、下記化学式で表す。樹脂1の分子量(Mw)は12,700であった。分散度(Mw/Mn)は2.92であった。カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=27.8:53:19.2(モル比)であった。
【0106】
【化35】

【0107】
【化36】

【0108】
[実施例6−1]樹脂1−1の合成
1.0gの化合物1と、GBLMA0.44gと、MAdMA1.2gとを、17.6gのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN0.11gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂1−1とする。樹脂1−1の分子量(Mw)は11900であった。分散度(Mw/Mn)は2.51であった。樹脂1−1は樹脂1と同じ化学式で表され、カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=37:30:33(モル比)であった。
【0109】
[実施例7]樹脂2の合成
4gの化合物2と、GBLMA6.8gと、MAdMA8.9gとを、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN0.78gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂2とし、下記化学式で表す。樹脂2の分子量(Mw)は12,800であり、分散度(Mw/Mn)は3.4であった。カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=38.7:49.6:11.7(モル比)であった。
【0110】
【化37】

【0111】
[実施例7−1]樹脂2−1の合成
0.8gの化合物2と、GBLMA0.32gと、MAdMA0.89gとを、13.4gのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN0.078gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂2−1とする。樹脂2−1の分子量(Mw)は10800であり、分散度(Mw/Mn)は1.90であった。樹脂2−1は樹脂2と同じ化学式で表され、カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=42:31:27(モル比)であった。
【0112】
[実施例8]樹脂3の合成
3.7gの化合物3と、GBLMA6.8gと、MAdMA8.9gとを、130mLのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN0.78gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂3とし、下記化学式で表す。樹脂3の分子量(Mw)は10,800であった。分散度(Mw/Mn)は1.90であった。カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=33.9:53.2:12.9(モル比)であった。
【0113】
【化38】

【0114】
[実施例9]樹脂4の合成
5gの化合物4と、GBLMA10.9gと、MAdMA15gとを、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN1.3gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂4とし、下記化学式で表す。樹脂4の分子量(Mw)は10,200であった。分散度(Mw/Mn)は3.24であった。カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=29.5:55.6:14.9(モル比)であった。
【0115】
【化39】

【0116】
[実施例9−1]樹脂4−1の合成
1gの化合物4と、GBLMA0.54gと、MAdMA1.5gとを、20.3gのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN0.13gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂4−1とする。樹脂4−1の分子量(Mw)は7620であった。分散度(Mw/Mn)は1.98であった。樹脂4−1は樹脂4と同じ化学式で表され、カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=40:31:29(モル比)であった。
【0117】
[実施例10]樹脂5の合成
5gの化合物5と、GBLMA9.9gと、MAdMA13.6gとを、200mLのテトラヒドロフランに溶解し、AIBN1.2gを加えた。5時間加熱還流したあと、反応溶液をn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂5とし、下記化学式で表す。樹脂5の分子量(Mw)は12600であった。分散度(Mw/Mn)は2.94であった。カーボン13(13C)核磁気共鳴スペクトルの測定結果、組成比はl:m:n=25.1:47.2:27.7(モル比)であった。
【0118】
【化40】

【0119】
下記表1に、樹脂1〜5の合成に用いたモノマーの種類と、該モノマーから誘導される各構成単位の組成比(モル比)、樹脂1〜5の分子量と分散度を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
[実施例11]
下記の各成分に混合溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:乳酸エチル=6:4(質量比))1200質量部を添加してポジ型のレジスト組成物を調製した。
(A)成分:樹脂2 100質量部
(B)成分:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート 5質量部
(D)成分:トリエタノールアミン 0.15質量部
【0122】
得られたポジ型レジスト組成物の物性を以下のようにして評価した。
<解像性>
8インチシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC−29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚77nmの有機系反射防止膜を形成した。
そして、上記で得られたレジスト組成物を、スピンナーを用いて反射防止膜上に塗布し、ホットプレート上で100℃、90秒間プレベーク(PAB)し、乾燥することにより、膜厚200nmのレジスト膜を形成した。
ついで、ArF露光装置NSR−S302(ニコン社製;NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(バイナリ−マスク)を介して選択的に照射した。
そして、100℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間パドル現像し、その後20秒間水洗して乾燥した。
その結果、130nmのラインアンドスペース(L/S)パターンが1:1に形成された。その際の感度(露光量(Eop))は49mJ/cmであった。また、限界解像度は110nmラインアンドスペース(L/S)パターンであった。
【0123】
<接触角>
接触角の測定はFACE接触角計CA−X150型(製品名、協和界面科学株式会社製)を用いて測定を行った。測定方法は、上記(A)成分(樹脂2)100質量部を、上記混合溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:乳酸エチル=6:4)1200質量部に溶解させた樹脂溶液を調製し、該樹脂溶液を、8インチのシリコンウェーハ上に、スピンナーを用いて塗布したのち、95℃で90秒間加熱することで膜厚200nmの樹脂膜を形成した。次に、装置に備え付けられている注射器に前記樹脂膜を接触させ(注射器と樹脂膜とが接触した際に、2μLの純水が滴下される)、その際の接触角(対水接触角)を測定した。その結果を表2に示す。
また、樹脂2に代えて、樹脂1,3,4,5を用いて同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0124】
<マスクリニアリティ>
上記で求めた露光量(Eop)において、マスク(L&S、1:1)のサイズを100nmから200nmまで変化させて、上記と同様にしてレジストパターンを形成し、形成されるレジストパターンのサイズを測定した。
図1に、実施例11および比較例1の結果を示す。この結果から明らかなように、実施例11では、比較例1に比べて、よりマスクに忠実なレジストパターンが形成された。
なお、図1のグラフにおいて、横軸はマスクサイズ(スペース幅、nm)、縦軸はレジストパターンサイズ(CD)(ライン幅、nm)、直線Aはレジストパターンサイズ=マスクサイズとなる線、2本の破線はレジストパターンサイズ=マスクサイズ±5%となる線である。直線Aに近いほど、マスク再現性が良好であることを意味する。
【0125】
比較例1
(A)成分として下記化学式で表される樹脂(比較樹脂1)(分子量(Mw):10000、l:m:n=40:40:20(モル比))100質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてポジ型のレジスト組成物を調製し、PAB及びPEBをそれぞれ130℃で90秒間に変更したこと以外は実施例1と同様の評価を行った。
その結果、130nmのラインアンドスペース(L/S)パターンが1:1に形成された。その際の感度は19mJ/cmであった。限界解像度は120nmラインアンドスペース(L/S)パターンであった。
また、接触角の結果を表2に示す。
【0126】
【化41】

【0127】
【表2】

【0128】
上記の結果から、実施例11のレジスト組成物においては、比較例1のレジスト組成物に比べ、対水接触角は増加していた。また、該レジスト組成物を用いて得られたレジストパターンは優れた解像性を有していた。また、実施例11のレジスト組成物は比較例1のレジスト組成物に比べ、良好なマスクリニアリティを有していた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;Yは、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜20の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表される請求項1記載の化合物。
【化2】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;mは0または1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]
【請求項3】
下記一般式(3)または(4)で表される請求項2記載の化合物。
【化3】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;R11は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【化4】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは硫黄原子であり;nは1〜3の整数であり;R12は炭素数1〜(21−2n)の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。]
【請求項4】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化5】

[式中、Rは水素原子または低級アルキル基であり;Xは酸素原子であり;mは1であり;Y’は、水素原子の一部がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい炭素数1〜(20−m)の鎖状、分岐状または環状のアルキル基、もしくは該アルキル基の炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されている基である。]

【図1】
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【公開番号】特開2012−102337(P2012−102337A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4070(P2012−4070)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2005−184673(P2005−184673)の分割
【原出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】