説明

新規な反応性化合物、電荷輸送性膜及び光電変換装置

【課題】繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる新規な化合物を提供することである。
【解決手段】下記一般式(I)で示される反応性化合物。一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Dは下記一般式(III)で示される基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。一般式(III)中、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な反応性化合物、電荷輸送性膜及び光電変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電荷輸送性を有する硬化膜は、種々の分野、例えば、電子写真感光体、有機電界発光(エレクトロルミネッセンス)素子、メモリー素子、波長変換素子等の光電変換装置で利用されている。
【0003】
例えば、電子写真方式の画像形成装置は、電子写真感光体の表面を帯電装置で定められた極性及び電位に帯電させ、帯電後の電子写真感光体表面を、像露光により選択的に除電することにより静電潜像を形成させる。次いで、現像装置で該静電潜像にトナーを付着させることにより、潜像をトナー像として現像し、トナー像を転写手段で記録媒体に転写させることにより、画像形成物として排出する。
【0004】
電子写真感光体としては、強度を向上させる観点から、表面に保護層を設けることが提案されている。保護層を形成する材料系としては、例えば、導電粉をフェノール樹脂に分散したもの(例えば特許文献1参照)、有機−無機ハイブリッド材料によるもの(例えば特許文献2参照)、アルコール可溶性電荷輸送材料とフェノール樹脂によるもの(例えば特許文献3参照)等が開示されている。また、アルキルエーテル化ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂と、電子受容性カルボン酸又は電子受容性ポリカルボン酸無水物との硬化膜(例えば特許文献4参照)、ベンゾグアナミン樹脂にヨウ素、有機スルホン酸化合物又は塩化第二鉄などをドーピングした硬化膜(例えば特許文献5参照)、特定の添加剤と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シロキサン樹脂又はウレタン樹脂との硬化膜(例えば特許文献6参照)等が開示されている。
【0005】
また、近年ではアクリル系材料による保護層が注目されている。例えば、光硬化型アクリル系モノマーを含有する液を塗布し硬化した膜(例えば特許文献7参照)、炭素−炭素二重結合を有するモノマー、炭素−炭素二重結合を有する電荷移動材及び結着樹脂の混合物を熱又は光のエネルギーによって前記モノマーの炭素−炭素二重結合と前記電荷移動材の炭素−炭素二重結合とを反応させることにより形成された膜(例えば特許文献8参照)が開示されている。
【0006】
さらに、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を重合した化合物からなる膜が開示されている(例えば特許文献9参照)。また、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質の重合物を保護層に使用する技術が開示されている(例えば特許文献10参照)。
これらアクリル系材料は、硬化条件、硬化雰囲気等の影響を強く受け、例えば真空中又は不活性ガス中で放射線照射後に加熱されることによって形成された膜(例えば特許文献11参照)や、不活性ガス中で加熱硬化された膜(例えば特許文献12参照)が開示されている。
また、連鎖重合性基としてスチレン骨格がエーテル基で連結されている電荷輸送性化合物の架橋体が開示されている(特許文献13、特許文献14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3287678号公報
【特許文献2】特開2000−019749号公報
【特許文献3】特開2002−82469号公報
【特許文献4】特開昭62−251757号公報
【特許文献5】特開平7−146564号公報
【特許文献6】特開2006−84711号公報
【特許文献7】特開平5−40360号公報
【特許文献8】特開平5−216249号公報
【特許文献9】特開2000−206715号公報
【特許文献10】特開2001−175016号公報
【特許文献11】特開2004−12986号公報
【特許文献12】特開平7−72640号公報
【特許文献13】特許第2546739号公報
【特許文献14】特許第2852464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の手段により達成される。
【0010】
請求項1の発明は、下記一般式(I)で示される反応性化合物。
【化1】


(一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Dは下記一般式(III)で示される基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。)
【化2】


(一般式(III)中、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。)
【0011】
請求項2の発明は、前記一般式(I)で示される化合物が、下記一般式(II)で示される化合物である請求項1に記載の反応性化合物。
【化3】


(一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dは前記一般式(I)中のDと同義である。c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、c1乃至c5の合計は1以上8以下の整数である。kは0又は1である。)
【0012】
請求項3の発明は、前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−と−(CH−を組み合わせて形成される2価の連結基(ただし、nは1以上10以下の整数)である請求項1又は請求項2に記載の反応性化合物。
【0013】
請求項4の発明は、前記一般式(III)で示される基が、下記一般式(IV)で示される基である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反応性化合物。
【化4】


(一般式(IV)中、pは0以上4以下の整数を示す。)
【0014】
請求項5の発明は、前記一般式(IV)で示される基が、下記一般式(V)で示される基である請求項4に記載の反応性化合物。
【化5】


(一般式(V)中、pは0以上4以下の整数を示す。)
【0015】
請求項6の発明は、前記一般式(I)中のmが、2以上6以下の整数である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の反応性化合物。
【0016】
請求項7の発明は、前記一般式(I)中のmが、3以上6以下の整数である請求項6に記載の反応性化合物。
【0017】
請求項8の発明は、前記一般式(I)中のmが、4以上6以下の整数である請求項7に記載の反応性化合物。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応性化合物又は該反応性化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応性化合物を含有する組成物の重合あるいは硬化膜からなる電荷輸送性膜。
【0020】
請求項11の発明は、請求項9又は請求項10に記載の電荷輸送性膜を有する光電変換装置。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−基を含まない場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる反応性化合物が提供される。
請求項2の発明によれば、前記一般式(I)で示される化合物が、前記一般式(II)で示される化合物でない場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる反応性化合物が提供される。
請求項3の発明によれば、前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−と−(CH−を組み合わせて形成される2価の連結基(ただし、nは1以上10以下の整数)でない場合に比べ、
請求項4の発明によれば、前記一般式(III)で示される基が、前記一般式(IV)で示される基でない場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる反応性化合物が提供される。
請求項5の発明によれば、前記一般式(IV)で示される基が、前記一般式(V)で示される基でない場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる反応性化合物が提供される。
請求項6、7、8の発明によれば、前記一般式(I)中のmが上記範囲内でない場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が得られる反応性化合物が提供される。
請求項9、10の発明によれば、前記一般式(I)中のDを示す前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−基を含まない反応性化合物を適用して形成した場合に比べ、繰り返して使用しても移動度の変動が抑制される電荷輸送性膜が提供される。
請求項11の発明によれば、前記一般式(I)中のDを示す前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−基を含まない反応性化合物を適用して形成した電荷輸送膜を有する場合に比べ、繰り返し使用しても輝度の低下及び駆動電圧の上昇が抑制される光電変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】化合物I−7のIRスペクトルである。
【図5】化合物I−15のIRスペクトルである。
【図6】化合物I−17のIRスペクトルである。
【図7】化合物I−23のIRスペクトルである。
【図8】化合物I−25のIRスペクトルである。
【図9】化合物I−27のIRスペクトルである。
【図10】化合物I−30のIRスペクトルである。
【図11】化合物I−43のIRスペクトルである。
【図12】化合物I−46のIRスペクトルである。
【図13】化合物I−53のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を適宜参照しながら、本発明について説明する。
【0024】
〔反応性化合物〕
本実施形態に係る新規な反応性化合物は、下記一般式(I)で示される反応性化合物である。
【0025】
【化6】

【0026】
一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Dは下記一般式(III)で示される基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。
【0027】
【化7】

【0028】
一般式(III)中、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。
【0029】
本実施形態に係る反応性化合物は、連鎖重合性基としてベンゼン環にビニル基(−CH=CH)が直結した構造を有するスチレン骨格を有し、電荷輸送剤の主骨格であるアリール基と相溶性が良く、これを用いた硬化膜は、膜収縮や硬化による電荷輸送構造、連鎖重合性基周辺構造の凝集が抑制されることで、繰り返し使用によっても移動度の変動が抑制されると考えられる。さらに本実施形態の反応性化合物においては、前記電荷輸送性骨格と前記スチレン骨格を、−C(=O)−O−基を含む連結基を介して連結することにより、該エステル基と前記電荷輸送性骨格中の窒素原子との間や、前記エステル基同士の相互作用などにより、硬化膜の強度がさらに向上すると考えられる。
【0030】
本実施形態の反応性化合物は、電荷輸送性に優れる観点から、下記一般式(II)で示される化合物であることが望ましい。
【化8】

【0031】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dは前記一般式(I)中のDと同義である。c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、c1乃至c5の合計は1以上8以下の整数である。kは0又は1である。
【0032】
また、前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−と−(CH−を組み合わせて形成される2価の連結基(ただし、nは1以上10以下の整数)であることが望ましい。
前記一般式(III)で示される基は、具体的には、下記一般式(IV)で示される基であることが望ましく、下記一般式(V)で示される基であることがより望ましい。
【化9】

【0033】
一般式(IV)中、pは0以上4以下の整数を示す。
【0034】
【化10】

【0035】
一般式(V)中、pは0以上4以下の整数を示す。
【0036】
また、前記一般式(I)中のm、または前記一般式(II)中のc1乃至c5の合計が、2以上6以下の整数であることが望ましく、3以上6以下の整数であることがより望ましく、4以上6以下の整数であることが特に望ましい。
【0037】
[電子写真感光体]
以下、本実施形態に係る反応性化合物が適用される具体例として、電子写真感光体について説明する。
【0038】
電子写真感光体の表面を硬化膜とすることで、繰り返し使用による感光体の機械強度は向上するものの、画質そのものや繰り返し使用による画質の安定性に関しては十分ではない。その要因は明らかになっていないが、硬化することにより、電荷輸送性を担う化学構造の分子間距離やコンホメーションが、硬化前の状態から変化することや、硬化することで連鎖重合性基周辺の化学構造と電荷輸送性を担う化学構造がそれぞれ凝集し、硬化前の膜状態が変化することなどが要因として考えられる。また、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送物質に加え、さらに結着樹脂を含む膜を硬化させる場合は、硬化することで電荷輸送物質の構造と結着樹脂の相溶性が低下することなども要因として考えられる。
このように、電子写真感光体の長寿命化を目指した、機械的強度と画質の両立は重要でる。
【0039】
本実施形態に係る電子写真感光体(以下単に「感光体」と称すことがある)は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、最表面層として、前記一般式(I)で示される化合物、すなわち、同一分子内に1つ以上の電荷輸送性骨格と、電荷輸送性骨格と共役していない1つ以上のスチレン骨格とが連結された構造を有し、かつ、該電荷輸送性骨格と該スチレン骨格を連結する連結基中に、−C(=O)−O−基(即ち、エステル基)を含む電荷輸送性を有する化合物(適宜「電荷輸送材料(A)」と記す)を含有する組成物の重合あるいは硬化膜からなる層(Oc)を備えている。
上記実施形態により、繰り返し使用してもキズが発生しにくく、かつ画質劣化が少なく、さらにディレッション発生の少ない電子写真感光体が提供される。
【0040】
本実施形態の感光体が効果を発現する要因は明らかになっていないが、繰り返し使用による画質劣化が少ない要因としては、以下のように推定される。最表面を重合あるいは硬化膜とした感光体は、重合あるいは硬化に伴う膜収縮や、電荷輸送構造と連鎖重合性基周辺の構造の凝集が起きると考えられる。よって、繰り返し使用で感光体表面が機械的ストレスを受けると、膜自体が摩耗したり、分子中の化学構造が切断されたりして、上記の膜収縮や凝集状態が大きく変化し、感光体としての電気特性が変化し、画質劣化を引き起こしてしまう。
一方、本実施形態においては、連鎖重合性基としてスチレン骨格を用いており、電荷輸送剤の主骨格であるアリール基と相溶性が良く、膜収縮や硬化による電荷輸送構造、連鎖重合性基周辺構造の凝集が抑制されて、繰り返し使用による画質劣化が抑制されると考えられる。
【0041】
さらに本実施形態においては、前記電荷輸送性骨格と前記スチレン骨格を、−C(=O)−O−基を含む連結基を介して連結することにより、該エステル基と前記電荷輸送性骨格中の窒素原子との間や、前記エステル基同士の相互作用などにより、重合あるいは硬化膜中の強度がさらに向上すると考えられる。
なお、前記連結基に含まれるエステル基は、その極性や親水性に起因し、電荷輸送性や高湿条件下における画質劣化を引き起こす要因となり得るが、本実施形態においては、連鎖重合性基として(メタ)アクリルなどよりも疎水性の高いスチレン骨格を用いているため、上述のような電荷輸送性悪化やディレッションなどの画質劣化が抑制される。
【0042】
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、該導電性基体上に設けられた感光層と、を少なくとも有し、最表面層として、前記一般式(I)で示される反応性化合物である電荷輸送材料(A)を含有する組成物の重合あるいは硬化膜からなる層(Oc)を備えていれば、その層構成等に特に限定はない。
本実施形態に係る感光層は電荷輸送能と電荷発生能とを併せ持つ機能一体型の感光層であってもよいし、電荷輸送層と電荷発生層とを含む機能分離型の感光層であってもよい。さらには、下引層等のその他の層を設けてもよい。
【0043】
以下、本実施形態に係る感光体の構成について、図1乃至図3を参照して説明するが、本実施形態は図1乃至図3によって限定されることはない。
図1は、本実施形態に係る感光体の層構成の一例を示す概略図である。図1に示す感光体は、基体1上に、下引き層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2B−1、電荷輸送層2B−2がこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2A、電荷輸送層2B−1,2B−2の3層から構成される(第1の態様)。図1に示す感光体においては、電荷輸送層2B−2が、前記一般式(I)で示される反応性化合物を含む本実施形態の層(Oc)に相当する。以下、この第1の態様における本実施形態の層を、本実施形態の層(Oc1)と称する。なお、最表面層となる電荷輸送層2B−2は電荷輸送層2B−1を保護する保護層としても機能する。
【0044】
図2は、本実施形態に係る感光体における層構成の他の例を示す概略図である。図2に示す感光体は、基体1上に、下引層4、電荷発生層2A、電荷輸送層2Bがこの順に積層された層構成を有し、感光層2は電荷発生層2A及び電荷輸送層2Bの2層から構成される(第2の態様)。図2に示す感光体においては電荷輸送層2Bが前記一般式(I)で示される反応性化合物を含む本実施形態の層(Oc)に相当する。以下、この第2の態様における本実施形態の層を、本実施形態の層(Oc2)と称する。
【0045】
図3は、本実施形態に係る感光体における層構成の他の例を示す概略図である。図3に示す感光体は、基体1上に、下引層4、感光層6がこの順に積層された層構成を有し、感光層6は、図2に示す電荷発生層2A及び電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である(第3の態様)。図3に示す感光体においては機能一体型の感光層6が前記一般式(I)で示される反応性化合物を含む本実施形態の層(Oc)に相当し、以下、この第3の態様における本実施形態の層を、本実施形態の層(Oc3)と称する。
【0046】
以下、本実施形態に係る感光体の例として、上記第1乃至第3の態様のそれぞれについて説明する。
【0047】
−導電性基体−
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
なお、導電性基体粒子は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0048】
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め、鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0049】
−下引き層−
下引き層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
【0050】
下引き層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引き層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0051】
下引き層には、シリコン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
【0052】
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、所望する電子写真感光体特性を得られる範囲で設定される。
【0053】
下引き層には、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引き層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0054】
ここで、下引き層の構成として、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0055】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
下引き層における導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが望ましく、より望ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0056】
下引き層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引き層形成用塗布液が使用される。
また、下引き層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0057】
下引き層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0058】
下引き層の膜厚は、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0059】
ここで、図示は省略するが、下引き層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。 中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウム若しくはケイ素を含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
【0060】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0061】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引き層として使用してもよい。
【0062】
−電荷発生層−
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±02゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0064】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液が使用される。
【0065】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0066】
電荷発生層形成用塗布液を下引き層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0067】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0068】
−電荷輸送層2B−1(第1の態様の場合)−
電荷輸送層2B−1は第1の態様の場合であり、電荷輸送材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
電荷輸送層2B−1を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂との配合比は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
【0070】
電荷輸送層2B−1は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層2B−1形成用塗布液を用いて形成される。
【0071】
電荷輸送層2B−1形成用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
電荷輸送層2B−1の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0072】
−電荷輸送層2B−2(第1の態様における本実施形態の層(Oc1)に相当)−
本実施形態の層(Oc1)は、同一分子内に1つ以上の電荷輸送性骨格と1つ以上のスチレン骨格とが連結された構造を有し、かつ、該電荷輸送性骨格と該スチレン骨格を連結する連結基中に、−C(=O)−O−基を1つ以上含む電荷輸送材料(A)、を含有する組成物の重合あるいは硬化膜からなる層である。
【0073】
なお、本実施形態の電荷輸送材料(A)に含まれるスチレン骨格とは、ベンゼン環にビニル基(−CH=CH)が直結した構造であるが、前記ベンゼン環の水素原子の代わりに置換基を有してもよい。置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられるが、置換基は無い方が望ましい。
【0074】
以下、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物について説明する。
本実施形態の電荷輸送材料(A)における電荷輸送性骨格としては、前記電荷輸送層2B−1に記載したものが挙げられる。電荷輸送性骨格としては、アリールアミン骨格を含むものが望ましく、中でもトリアリールアミン骨格を含むものがより望ましい。
【0075】
以下に、本実施形態の電荷輸送性材料(A)のより望ましい構造を一般式(II)で示す。
【0076】
【化11】

【0077】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示し、Dは、前記一般式(III)で示される基である。一般式(III)において、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。
一般式(II)におけるc1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、互いに異なっていてもよい。ただし、式(II)中のc1乃至c5の合計は1以上8以下の整数である。kは0又は1である。
【0078】
一般式(I)におけるスチレン骨格の総数は、mに相当する。一般式(II)におけるスチレン骨格の総数は、c1+c2+k×(c3+c4)+c5の値に相当する。
一般式(I)及び(II)におけるスチレン骨格の総数の下限としては、より強度の高い架橋膜(硬化膜)を得る観点から、望ましくは2以上であり、より望ましくは3以上、更に望ましくは4以上である。また、一分子中の連鎖重合性基の数が多すぎると、重合(架橋)反応が進むにつれ、分子が動きにくくなり連鎖重合反応性が低下し、未反応の連鎖重合性基の割合が増えてしまうことから、一般式(II)におけるスチレン骨格の総数の上限としては、望ましくは7以下、更に望ましくは6以下である。
【0079】
一般式(II)中のDは、前記一般式(III)で示される基であり、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。
一般式(II)中にDとして示される一般式(III)中のLとしては、前記エステル基を含む2価の連結基であれば特に限定されないが、例えば、前記エステル基と、飽和炭化水素(直鎖状、分岐状、環状いずれも含む)または芳香族炭化水素の残基と、酸素原子を任意に組み合わせて形成される2価の基が具体的に挙げられる。Lとしては、前記エステル基と、直鎖状の飽和炭化水素の残基を任意に組み合わせて形成されることが望ましい。
一般式(II)中のLに含まれる炭素原子の総数としては、分子中のスチレン骨格の密度と連鎖重合反応性の観点から、1以上20以下が望ましく、2以上10以下がより望ましい。
【0080】
一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ar乃至Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。ここで、置換アリール基における置換基としては、D以外のものとして、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0081】
Ar乃至Arとしては、下記構造式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが望ましい。なお、下記構造式(1)乃至(7)は、各Ar乃至Arに連結され得る「−(D)c」と共に示す。ここで、「−(D)c」は前記一般式(II)における「−(D)c1乃至(D)c4」と同義であり、望ましい例も同様である。
【0082】
【化12】



【0083】
上記構造式(1)中、R01は、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基からなる群より選ばれる1種を表す。
上記構造式(2)及び(3)中、R02乃至R04は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、及び炭素数7以上10以下のアラルキル基、ハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表す。また、mは1以上3以下の整数を表す
上記構造式(7)中、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表す。
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で示されるものが望ましい。
【0084】
【化13】

【0085】
上記構造式(8)及び(9)中、R05及びR06は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、qはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
【0086】
また、前記構造式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記構造下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで示されるものが望ましい。また、pは0又は1を表す。
【0087】
【化14】

【0088】
上記構造式(10)乃至(17)中、R07及びR08は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、r及びsはそれぞれ独立に1以上10以下の整数を表し、tはそれぞれ1以上3以下の整数を表す。
【0089】
前記構造式(16)乃至(17)中のWとしては、下記(18)乃至(26)で示される2価の基のうちのいずれかであることが望ましい。但し、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0090】
【化15】



【0091】
また、一般式(II)中、Arは、kが0のときは置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1のときは置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から目的とする位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0092】
以下に、一般式(I)で示される化合物の具体例を示す。なお、一般式(I)で示される化合物は、これらにより何ら限定されるものではない。
【0093】
まず、一般式(I)におけるDの総数が1の場合の電荷輸送性骨格Fの具体例として、「(1)−1」から「(1)−25」を示すが、これらに限られるものではない。なお、各構造中の*の部分が、一般式(I)中のDと連結することを示す。
【0094】
【化16】

【0095】
【化17】



【0096】
【化18】

【0097】
【化19】

【0098】
【化20】



【0099】
次に、一般式(I)におけるDの総数が2の場合の電荷輸送性骨格Fの具体例として、「(2)−1」から「(2)−29」を示すが、これらに限られるものではない。
なお、各構造中の*の部分が、一般式(I)中のDと連結することを示す。
【0100】
【化21】

【0101】
【化22】

【0102】
【化23】

【0103】
【化24】



【0104】
【化25】

【0105】
【化26】



【0106】
次に、一般式(I)におけるDの総数が3の場合の電荷輸送性骨格Fの具体例として、「(3)−1」から「(3)−29」を示すが、これらに限られるものではない。
なお、各構造中の*の部分が、一般式(I)中のDと連結することを示す。
【0107】
【化27】

【0108】
【化28】



【0109】
【化29】

【0110】
【化30】

【0111】
【化31】

【0112】
【化32】



【0113】
次に、一般式(I)におけるDの総数が4以上の場合の電荷輸送性骨格Fの具体例として、「(4)−1」から「(4)−31」を示すが、これらに限られるものではない。なお、各構造中の*の部分が、一般式(I)中のDと連結することを示す。
【0114】
【化33】

【0115】
【化34】

【0116】
【化35】

【0117】
【化36】

【0118】
【化37】

【0119】
【化38】

【0120】
次に、一般式(I)または一般式(II)中のD、すなわち式(III)で示される基の具体例として「(III)−1」から「(III)−11」を示す。なお、各構造中の*の部分が、一般式(I)中の電荷輸送性骨格Fまたは一般式(II)中のAr乃至Arと連結することを示す。
【0121】
【化39】

【0122】
【化40】



【0123】
次に、一般式(I)で示される反応性化合物の具体例として以下に「(I)−1」から「(I)−60」を示すが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、下表中のCTM骨格構造とは、一般式(I)中の電荷輸送性骨格Fに相当する。
【0124】
【表1】



【0125】
【表2】



【0126】
次に、本実施形態の反応性化合物の合成経路を一例として以下に示す。
【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
電荷輸送層2B−2を形成するための組成物に、本実施形態の電荷輸送性材料(A)を2種以上用いてもよい。例えば、本実施形態の電荷輸送性材料(A)のうち、一分子中のスチレン骨格の総数が4以上である化合物と、一分子中のスチレン骨格の総数が1以上3以下である化合物とを併用すると、電荷輸送性能を低下させることなく、重合あるいは硬化膜の強度を調整しうる。その場合、本実施形態の電荷輸送性材料(A)の総含有量に対して、本実施形態の電荷輸送性材料(A)のうち、一分子中のスチレン骨格の総数が4以上である化合物が5質量%以上とすることが望ましく、20質量%以上とすることがより望ましい。
【0130】
本実施形態の電荷輸送性材料(A)の含有量は、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物の固形分全量に対して40質量%以上が望ましく、50質量%以上が望ましく、60質量%以上が更に望ましい。
【0131】
次に、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物を構成する成分のうち、本実施形態の電荷輸送性材料(A)以外のものについて説明する。
【0132】
電荷輸送層2B−2を形成するための組成物には、本実施形態の電荷輸送性材料(A)以外の連鎖重合性官能基を持つ電荷輸送剤(B)を含んでもよい。電荷輸送剤(B)の例としては、特開2000−206715号公報の段落[0060]乃至[0099]に記載の化合物、特開2011−70023号公報の段落[0066]及至[0080]に記載の化合物などが挙げられる。電荷輸送剤(B)の含有量は、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物の固形分全量に対して通常0質量%以上40質量%以下であり、0質量%以上30質量%以下が望ましく、0質量%以上20質量%以下が更に望ましい。
【0133】
電荷輸送層2B−2を形成するための組成物には、前記電荷輸送層2B−1の説明で挙げた電荷輸送材料や結着樹脂を含んでもよい。その含有量はいずれも、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物の固形分全量に対して通常0質量%以上40質量%以下であり、0質量%以上30質量%以下が望ましく、0質量%以上20質量%以下が更に望ましい。
【0134】
電荷輸送層2B−2を形成するための組成物には、製膜性を確保する観点から、下記界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、例えば、(A)フッ素原子を有するアクリルモノマーを重合してなる構造、(B)炭素−炭素二重結合及びフッ素原子を有する構造、(C)アルキレンオキサイド構造、(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造のうち1種以上の構造を分子内に含む界面活性剤である。
この界面活性剤は、分子内に、(A)乃至(D)の構造を1種以上含有していればよく、2種以上を含有していてもよい。
【0135】
以下、上記の(A)乃至(D)の構造と該構造を有する界面活性剤について説明する。
【0136】
・(A)フッ素原子を有するアクリルモノマーを重合してなる構造
(A)フッ素原子を有するアクリルモノマーを重合してなる構造としては、特に制限されないが、フルオロアルキル基を有するアクリルモノマーを重合してなる構造であることが望ましく、パーフルオロアルキル基を有するアクリルモノマーを重合してなる構造であることがより望ましい。
【0137】
上記(A)の構造を有する界面活性剤としては、具体的には、ポリフローKL−600(共栄社化学社製)、エフトップEF−351、EF−352、EF−801、EF−802、EF−601(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。
【0138】
・(B)炭素−炭素二重結合及びフッ素原子を有する構造
(B)炭素−炭素二重結合及びフッ素原子を有する構造としては、特に制限されないが、下記構造式(B1)及び(B2)の少なくとも一方で示される基であることが望ましい。
【0139】
【化43】



【0140】
(B)の構造を有する界面活性剤としては、アクリル重合体の側鎖に上記構造式(B1)及び(B2)の少なくとも一方で示される基を有する化合物、若しくは、下記構造式(B3)乃至(B5)のいずれかで示される化合物であることが望ましい。
(B)の構造を有する界面活性剤がアクリル重合体の側鎖に構造式(B1)及び(B2)の少なくとも一方を有する化合物である場合には、アクリル構造が組成物中の他の成分となじみやすい性質を有しているため、均一に近い最表面層を形成しうる。
また、(B)の構造を有する界面活性剤が、構造式(B3)乃至(B5)のいずれかで示される化合物である場合には、塗布の際のはじきを防止する傾向にあり、塗膜欠陥を抑制しうる。
【0141】
【化44】



【0142】
上記構造式(B3)乃至(B5)中、v及びwはそれぞれ独立に1以上の整数を示し、R’は水素原子又は1価の有機基を示し、Rfはそれぞれ独立に構造式(B1)又は(B2)で示される基を表す。
構造式(B3)乃至(B5)中、R’が表す1価の有機基としては、例えば、炭素数1以上30以下のアルキル基、炭素数1以上30以下のヒドロキシアルキル基が挙げられる

【0143】
(B)の構造を有する界面活性剤の市販品としては以下のものが挙げられる。
例えば、構造式(B3)乃至(B5)のいずれかで示される化合物として、フタージェント100、100C、110、140A、150、150CH、A−K、501、250、251、222F、FTX−218、300、310、400SW、212M、245M、290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S、FTX−209F、FTX−213F、FTX−222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTX−240G、FTX−204D、FTX−280D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D(ネオス株式会社製)等が挙げられる。
また、アクリル重合体の側鎖に構造式(B1)及び(B2)の少なくとも一方を有する化合物としては、KB−L82、KB−L85、KB−L97、KB−L109、KB−L110、KB−F2L、KB−F2M、KB−F2S、KB−F3M、KB−FaM(ネオス株式会社製)等が挙げられる。
【0144】
・(C)アルキレンオキサイド構造
(C)アルキレンオキサイド構造としては、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイドを含む。具体的には、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどがあり、これらのアルキレンオキサイドの繰り返し数が2以上10000以下であるポリアルキレンオキサイドであってもよい。
(C)アルキレンオキサイド構造を有する界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエーテル消泡剤、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
ポリエチレングリコールとしては、平均分子量が2000以下のものが望ましく、平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール2000(平均分子量2000)、ポリエチレングリコール600(平均分子量600)、ポリエチレングリコール400(平均分子量400)、ポリエチレングリコール200(平均分子量200)等が挙げられる。
また、PE−M、PE−L(以上、和光純薬工業社製)、消泡剤No.1、消泡剤No.5(以上、花王社製)等のポリエーテル消泡剤も好適な例として挙げられる。
【0145】
(C)アルキレンオキサイド構造の他に分子内にフッ素原子を含む界面活性剤としては、アルキレンオキサイド若しくはポリアルキレンオキサイドをフッ素原子を有する重合体の側鎖に有するものや、アルキレンオキサイド若しくはポリアルキレンオキサイドの末端がフッ素原子を含む置換基で置換されたものなどが挙げられる。
(C)アルキレンオキサイド構造の他に分子内にフッ素原子を含む界面活性剤として具体的には、例えば、メガファックF−443、F−444、F−445、F−446(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、フタージェント250、251、222F(以上、ネオス社製)、POLY FOX PF636、PF6320、PF6520、PF656(以上、北村化学社製)などが挙げられる。
【0146】
(C)アルキレンオキサイド構造の他に分子内にシリコーン構造を含む界面活性剤としては、具体的には、KF351(A)、KF352(A)、KF353(A)、KF354(A)、KF355(A)、KF615(A)、KF618、KF945(A)、KF6004(以上、信越化学工業社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460(以上、GE東芝シリコン社製)、BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、341、344、345、346、347、348、370、375、377,378、UV3500、UV3510、UV3570等(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社社製)が挙げられる。
【0147】
・(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造
(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造としては特に制限はなく、この構造を有する界面活性剤としては、以下に示す化合物が挙げられる。
(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造を有する界面活性剤としては、分子中に三重結合及び水酸基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、2−プロピン−1−オール、1−ブチン−3−オール、2−ブチン−1−オール、3−ブチン−1−オール、1−ペンチン−3−オール、2−ペンチン−1−オール、3−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−1−オール、4−ペンチン−2−オール、1−ヘキシン−3−オール、2−ヘキシン−1−オール、3−ヘキシン−1−オール、5−ヘキシン−1−オール、5−ヘキシン−3−オール、1−ヘプチン−3−オール、2−ヘプチン−1−オール、3−ヘプチン−1−オール、4−ヘプチン−2−オール、5−ヘプチン−3−オール、1−オクチン−3−オール、1−オクチン−3−オール、3−オクチン−1−オール、3−ノニン−1−オール、2−デシン−1−オール、3−デシン−1−オール、10−ウンデシン−1−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−4−イン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、5−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、3−エチル−1−ヘプチン−3−オール、4−エチル−1−オクチン−3−オール、3,4−ジメチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3,6−ジメチル−1−ヘプチン−3−オール、2,2,8,8−テトラメチル−3,6−ノナジイン−5−オール、4,6−ノナデカジイン−1−オール、10,12−ペンタコサジイン−1−オール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、(+)−1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、(−)−1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール ビス(2−ヒロドキシエチル)、1,4−ジアセトキシ−2−ブチン、4−ジエチルアミノ−2−ブチン−1−オール、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、9−エチニル−9−フルオレノール、2,4−ヘキサジインジイル−1,6−ビス(4−フェニルアゾベンゼンスルフォネート)、2−ヒドロキシ−3−ブチン酸、2−ヒドロキシ−3−ブチン酸 エチルエステル、2−メチル−4−フェニル−3−ブチン−2−オール、メチル プロパラギル エーテル、5−フェニル−4−ペンチン−1−オール、1−フェニル−1−プロピン−3−オール、1−フェニル−2−プロピン−1−オール、4−トリメチルシリル−3−ブチン−2−オール、3−トリメチルシリル−2−プロピン−1−ol等が挙げられる。
また、上記の化合物の水酸基の一部又は全部にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した化合物(例えば、サーフィノール400シリーズ(信越化学社製))等が挙げられる。
【0148】
(D)炭素−炭素三重結合及び水酸基を有する構造を有する界面活性剤としては、下記一般式(D1)及び(D2)のいずれかで示される化合物が望ましい。
【0149】
【化45】



【0150】
上記一般式(D1)及び(D2)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、1価の有機基を示し、x、y、及びzは、それぞれ独立に、1以上の整数を示す。
上記一般式(D1)又は(D2)で示される化合物の中でも、R、R、R、Rが、アルキル基であるものが望ましい。また、R及びRの少なくとも一方、R及びRの少なくとも一方が分岐アルキル基であるものがより望ましい。更に、zは1以上10以下であることが望ましい。x及びyは、それぞれ1以上500以下であることが望ましい。
【0151】
一般式(D1)又は(D2)で示される化合物の市販品としては、サーフィノール400シリーズ(信越化学社製)が挙げられる。
【0152】
上述した(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいが、複数種を混合して用いてもよい。また、複数種を混合して用いる場合、効果を損なわない範囲において、(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤とは異なる構造の界面活性剤を併用してもよい。
併用しうる界面活性剤としては、以下に挙げるフッ素原子を有する界面活性剤やシリコーン構造を有する界面活性剤が挙げられる。
即ち、(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤と併用しうるフッ素原子を有する界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸類(例えば、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸など)、パーフルオロアルキルカルボン酸類(例えば、パーフルオロブタンカルボン酸、パーフルオロオクタンカルボン酸など)、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステルが好適に挙げられる。パーフルオロアルキルスルホン酸類、及びパーフルオロアルキルカルボン酸類は、その塩及びそのアミド変性体であってもよい。
パーフルオロアルキルスルホン酸類の市販品としては、例えば、メガファックF−114(大日本インキ化学工業株式会社製)、エフトップEF−101、EF102、EF−103、EF−104、EF−105、EF−112、EF−121、EF−122A、EF−122B、EF−122C、EF−123A(以上、JEMCO社製)、フタージェント 100、100C、110、140A、150、150CH、A−K、501(以上、ネオス社製)などが挙げられる。
パーフルオロアルキルカルボン酸類の市販品としては、例えば、メガファックF−410(大日本インキ化学工業株式会社製)、エフトップ EF−201、EF−204(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。
パーフルオロアルキル基含有リン酸エステルの市販品としては、メガファックF−493、F−494(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)エフトップ EF−123A、EF−123B、EF−125M、EF−132、(以上、JEMCO社製)などが挙げられる。
【0153】
なお、(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤と併用しうるフッ素原子を有する界面活性剤としては、上記に限られず、例えば、フッ素原子含有ベタイン構造化合物(例えば、フタージェント 400SW、ネオス社製)、両性イオン基を持つ界面活性剤(例えば、フタージェント SW(ネオス社製))も好適に用いられる。
【0154】
(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤と併用しうるシリコーン構造を有する界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーンや、それらの誘導体の如く一般的なシリコーンオイルが挙げられる。
【0155】
界面活性剤の含有量は、電荷輸送層2B−2を形成するための組成物の固形分全量に対して望ましくは0.01質量%以上1質量%以下、より望ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下である。界面活性剤の含有量が0.01質量%未満の場合は塗膜欠陥防止効果が不十分となる傾向にある。また、界面活性剤の含有量が1質量%を超えると、界面活性剤と硬化成分(一般式(I)で示される化合物やその他のモノマー、オリゴマーなど)の分離により、得られる重合あるいは硬化膜の強度が低下する傾向にある。
また、全界面活性剤中、(A)乃至(D)の構造を有する界面活性剤は、1質量%以上含まれることが望ましく、10質量%以上含まれることがより望ましい。
【0156】
また、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、該組成物の粘度、膜の強度、かとう性、平滑性、クリーニング性などの制御を目的とし、電荷輸送能を持たないラジカル重合性のモノマー、オリゴマー等が添加されていてもよい。
1官能のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ヒドロキシエチルo−フェニルフェノールアクリレート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0157】
2官能のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3‐プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリシクロデカンメタノールジアクリレート、トリシクロデカンメタノールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、等が挙げられる。
【0158】
3官能以上のラジカル重合性のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリスアクロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化イソシアヌルトリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、トリビニルシクロヘキサン、トリビニルベンゼン、等が挙げられる。
【0159】
また、ラジカル重合性のオリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0160】
電荷輸送能を持たないラジカル重合性のモノマー、オリゴマーは、組成物の全固形分に対して0質量以上50質量%以下含有することが望ましく、0質量以上40質量%以下含有することがより望ましく、0質量以上30質量%以下含有することが更に望ましい。
【0161】
ここで、電荷輸送層2B−2を構成する硬化膜(架橋膜)は、上記各成分を含む組成物を、熱、光、電子線など様々な方法にて硬化することで得られる。必要により、組成物中に熱重合開始剤、光重合開始剤を添加して使用してもよい。
なお、機械的強度等の特性のバランスを取るためには熱硬化が望ましい。通常、一般的なアクリル塗料などを硬化する際には無触媒で硬化する電子線、短時間で硬化する光重合が好適に用いられる。しかしながら、電子写真感光体は最表面層の被形成面となる感光層が感光材料を含むため、この感光材料にダメージを与え難くするため、また、得られる硬化膜の表面性状を高めるため、穏やかに反応を進められる熱硬化が望ましい。熱硬化は無触媒で行ってもよいが、熱ラジカル開始剤を触媒として用いることが望ましい。
【0162】
熱ラジカル開始剤は特に限定されないが、電荷輸送層2B−2の形成時における感光層中の感光材料のダメージを抑制するために、10時間半減期温度が40℃以上110℃以下のものが望ましい。
【0163】
熱ラジカル開始剤の市販品としては、V−30(10時間半減期温度:104℃)、V−40(同:88℃)、V−59(同:67℃)、V−601(同:66℃)、V−65(同:51℃)、V−70(同:30℃)、VF−096(同:96℃)、Vam−110(同:111℃)、Vam−111(同:111℃)、VE−073(同:73℃)(以上、和光純薬工業製)、OTAZO−15(同:61℃)、OTAZO−30(同:57℃)、AIBN(同:65℃)、AMBN(同:67℃)、ADVN(同:52℃)、ACVA(同:68℃)(以上、大塚化学社製)等のアゾ系開始剤;
パーテトラA、パーヘキサHC、パーヘキサC、パーヘキサV、パーヘキサ22、パーヘキサMC、パーブチルH,パークミルH、パークミルP、パーメンタH、パーオクタH、パーブチルC、パーブチルD、パーヘキシルD、パーロイルIB、パーロイル355、パーロイルL、パーロイルSA、ナイパーBW、ナイパーBMT−K40/M、パーロイルIPP、パーロイルNPP、パーロイルTCP、パーロイルOPP、パーロイルSBP、パークミルND、パーオクタND、パーヘキシルND、パーブチルND、パーブチルNHP、パーヘキシルPV、パーブチルPV、パーヘキサ250、パーオクタO、パーヘキシルO、パーブチルO、パーブチルL、パーブチル355、パーヘキシルI、パーブチルI、パーブチルE、パーヘキサ25Z、パーブチルA、パーへヘキシルZ、パーブチルZT、パーブチルZ(以上、日油化学社製)、カヤケタールAM−C55、トリゴノックス36−C75、ラウロックス、パーカドックスL−W75、パーカドックスCH−50L、トリゴノックスTMBH、カヤクメンH、カヤブチルH−70、ペルカドックスBC−FF、カヤヘキサAD、パーカドックス14、カヤブチルC、カヤブチルD、カヤヘキサYD−E85、パーカドックス12−XL25、パーカドックス12−EB20、トリゴノックス22−N70、トリゴノックス22−70E、トリゴノックスD−T50、トリゴノックス423−C70、カヤエステルCND−C70、カヤエステルCND−W50、トリゴノックス23−C70、トリゴノックス23−W50N、トリゴノックス257−C70、カヤエステルP−70、カヤエステルTMPO−70、トリゴノックス121、カヤエステルO、カヤエステルHTP−65W、カヤエステルAN、トリゴノックス42、トリゴノックスF−C50、カヤブチルB、カヤカルボンEH−C70、カヤカルボンEH−W60、カヤカルボンI−20、カヤカルボンBIC−75、トリゴノックス117、カヤレン6−70(以上、化薬アクゾ社製)、ルペロックス LP(同:64℃)、ルペロックス 610(同:37℃)、ルペロックス 188(同:38℃)、ルペロックス 844(同:44℃)、ルペロックス 259(同:46℃)、ルペロックス 10(同:48℃)、ルペロックス 701(同:53℃)、ルペロックス 11(同:58℃)、ルペロックス 26(同:77℃)、ルペロックス 80(同:82℃)、ルペロックス 7(同:102℃)、ルペロックス 270(同:102℃)、ルペロックス P(同:104℃)、ルペロックス 546(同:46℃)、ルペロックス 554(同:55℃)、ルペロックス 575(同:75℃)、ルペロックス TANPO(同:96℃)、ルペロックス 555(同:100℃)、ルペロックス 570(同:96℃)、ルペロックス TAP(同:100℃)、ルペロックス TBIC(同:99℃)、ルペロックス TBEC(同:100℃)、ルペロックス JW(同:100℃)、ルペロックス TAIC(同:96℃)、ルペロックス TAEC(同:99℃)、ルペロックス DC(同:117℃)、ルペロックス 101(同:120℃)、ルペロックス F(同:116℃)、ルペロックス DI(同:129℃)、ルペロックス 130(同:131℃)、ルペロックス 220(同:107℃)、ルペロックス 230(同:109℃)、ルペロックス 233(同:114℃)、ルペロックス 531(同:93℃)(以上、アルケマ吉富社製)などが挙げられる。
【0164】
熱ラジカル開始剤は、組成物中の反応性化合物に対して0.001質量%以上10質量%以下含有することが望ましく、0.01質量%以上5質量%以下含有することがより望ましく、0.1質量以上3質量%以下含有することが更に望ましい。
【0165】
また、電荷輸送層2B−2を光硬化により形成する場合は、光重合開始剤として公知のものが用いられる。光ラジカル開始剤としては、分子内開列型、水素引抜型などが挙げられる。
分子内開列型としては、ベンジルケタール系、アルキルフェノン系、アミノアルキルフェノン系、ホスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシム系が挙げられる。
具体的には、ベンジルケタール系としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンが挙げられる。アルキルフェノン系としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、アセトフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンが挙げられる。アミノアルキルフェノン系としては、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。ホスフィンオキサイド系としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系としては、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシム系としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)などが挙げられる。
【0166】
水素引抜型としては、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンジル系、ミヒラーケトン系などが挙げられる。
具体的には、ベンゾフェノン系としては、2−ベンゾイル安息香酸、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル 4’−メチルジフェニル スルフィド、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。チオキサントン系としては、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。ベンジル系としては、ベンジル、(±)−カンファーキノン、p−アニシルなどが挙げられる。
【0167】
光ラジカル開始剤は、組成物中の反応性化合物に対して0.001質量%以上10質量%以下含有することが望ましく、0.01質量%以上5質量%以下含有することがより望ましく、0.1質量以上3質量%以下含有することが更に望ましい。
【0168】
また、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、放電生成ガスを吸着しすぎないように添加することで放電生成ガスによる酸化を効果的に抑制する目的から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの他の熱硬化性樹脂を添加してもよい。
【0169】
また、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、更に、膜の成膜性、可とう性、潤滑性、接着性を調整するなどの目的から、カップリング剤、ハードコート剤、含フッ素化合物を添加してもよい。これらの添加剤として具体的には、各種シランカップリング剤、及び市販のシリコーン系ハードコート剤が用いられる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等が用いられる。
【0170】
また、市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−8239(以上、信越シリコーン社製)、AY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等が用いられる。
更に、撥水性等の付与のために、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の含フッ素化合物を加えてもよい。
シランカップリング剤は任意の量で使用されるが、含フッ素化合物の量は、架橋膜の成膜性の観点から、フッ素を含まない化合物に対して質量比で0.25倍以下とすることが望ましい。
【0171】
また、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、電荷輸送層2B−2の放電ガス耐性、機械強度、耐傷性、トルク低減、磨耗量コントロール、ポットライフの延長などや、粒子分散性、粘度コントロールの目的で、熱可塑性樹脂を加えてもよい。
ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールやアセトアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルアセタール樹脂などのポリビニルアセタール樹脂(たとえば積水化学社製エスレックB、K等)、ポリアミド樹脂、セルロ−ス樹脂、ポリビニルフェノール樹脂などがあげられる。特に、電気特性の点でポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が望ましい。当該樹脂の重量平均分子量は2,000以上100,000以下が望ましく、5,000以上50,000以下がより望ましい。樹脂の分子量が2,000未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、100,000を超えると溶解度が低下して添加量が制限され、更には塗布時に製膜不良を招く傾向にある。また、当該樹脂の添加量は1質量%以上40質量%以下が望ましく、1質量%以上30質量%以下がより望ましく、5質量%以上20質量%以下が更に望ましい。当該樹脂の添加量が1質量%未満であると樹脂の添加による効果が不十分となる傾向にあり、また、40質量%を超えると高温高湿下(例えば28℃、85%RH)での画像ボケが発生しやすくなる。
【0172】
電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、電荷輸送層2B−2の帯電装置で発生するオゾン等の酸化性ガスによる劣化を防止する目的で、酸化防止剤を添加することが望ましい。感光体表面の機械的強度を高め、感光体が長寿命になると、感光体が酸化性ガスに長い時間接触することになるため、従来より強い酸化耐性が要求される。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が望ましく、有機イオウ系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、チオウレア系酸化防止剤、ベンズイミダゾール系酸化防止剤、などの公知の酸化防止剤を用いてもよい。酸化防止剤の添加量としては20質量%以下が望ましく、10質量%以下がより望ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0173】
更に、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、電荷輸送層2B−2の残留電位を下げる目的、又は強度を向上させる目的で、各種粒子を添加してもよい。
粒子の一例として、ケイ素含有粒子が挙げられる。ケイ素含有粒子とは、構成元素にケイ素を含む粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン粒子等が挙げられる。ケイ素含有粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径1nm以上100nm以下、望ましくは10nm以上30nm以下のシリカを、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、アルコール、ケトン、又はエステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用してもよい。電荷輸送層2B−2中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、製膜性、電気特性、強度の面から、電荷輸送層2B−2の全固形分全量を基準として、0.1質量%以上50質量%以下、望ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。
ケイ素含有粒子として用いられるシリコーン粒子は、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、シリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものが使用される。これらのシリコーン粒子は球状で、その平均粒径は望ましくは1nm以上500nm以下、より望ましくは10nm以上100nm以下である。シリコーン粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、更に十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、電子写真感光体の表面性状が改善される。すなわち、強固な架橋構造中にバラツキが生じることなくに取り込まれた状態で、電子写真感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期にわたって良好な耐磨耗性、耐汚染物付着性が維持される。
電荷輸送層2B−2中のシリコーン粒子の含有量は、電荷輸送層2B−2の全固形分全量を基準として望ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より望ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0174】
また、その他の粒子としては、四フッ化エチレン、三フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系粒子、“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される如く、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる粒子、ZnO−Al、SnO−Sb、In−SnO、ZnO−TiO、ZnO−TiO、MgO−Al、FeO−TiO、TiO、SnO、In、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物が挙げられる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等 の反応性シリコーンオイル;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類;1,3,5−トリメチル−1.3.5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類;ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類;(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素含有シクロシロキサン類;メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類;ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等が挙げられる。
【0175】
また、電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物には、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等を添加してもよい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は電荷輸送層2B−2の透明性の点で0.3μm以下、特に0.1μm以下が望ましい。
【0176】
電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物は、電荷輸送層2B−2形成用塗布液として調製されることが望ましく、この塗布液は、無溶媒であってもよいし、必要に応じて、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸nプロピル、酢酸nブチル、乳酸エチル等のエステル類等の溶剤を含有していてもよい。
かかる溶剤は1種を単独で又は2種以上を混合して使用されるが、望ましくは沸点が100度以下のものである。
また、電荷輸送層2B−2形成用塗布液の保存安定性を高める目的で、重合禁止剤を含有させてもよい。重合禁止剤としては公知のものが使用される。前記の酸化防止剤の具体例として挙げたヒンダードフェノール系又はヒンダードアミン系が重合禁止剤としても機能するため好都合である。
【0177】
電荷輸送層2B−2を形成するために用いる組成物を含む電荷輸送層2B−2形成用塗布液は、電荷輸送層2B−1の 上に、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法により塗布され、必要に応じて、例えば、温度100度以上170度以下で加熱して硬化させることで、重合あるいは硬化膜が得られる。その結果、この重合あるいは硬化膜からなる電荷輸送層2B−2(第1の態様における本実施形態の層(Oc1)に相当)が得られる。
なお、電荷輸送層2B−2形成用塗布液の硬化中の酸素濃度は1%以下が望ましく、1000ppm以下がより望ましく、500ppm以下が更に望ましい。
【0178】
この電荷輸送層2B−2形成用塗布液は、感光体用途以外にも、例えば、蛍光発色性塗料、ガラス表面、プラスチック表面などの帯電防止膜等に利用される。この塗布液を用いると、下層に対する密着性に優れた皮膜が形成され、長期にわたる繰り返し使用による性能劣化が抑制される。
【0179】
−電荷輸送層2B(第2の態様における本実施形態の層(Oc2)に相当−
電荷輸送層2Bは、第1の態様における前記電荷輸送層2B−2と同じ構成としてよく、電荷輸送層2Bを形成するための組成物、およびその形成方法としては、前記電荷輸送層2B−2の場合と同じである。
【0180】
−単層型感光層6(第3の態様における本実施形態の層(Oc3)に相当−
以上、電子写真感光体として機能分離型の例を説明したが、図3に示される単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)中の電荷発生材料の含有量は、10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。
単層型感光層6(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層2Aや電荷輸送層2B−2の形成方法と同様である。単層型感光層(電荷発生/電荷輸送層)6の膜厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0181】
また、上記実施形態では、前記電荷輸送性材料(A)を含む組成物の重合あるいは硬化膜からなる最表面層(電荷輸送性膜)が電荷輸送性層又は感光層である形態を説明したが、電荷輸送性層又は感光層上の最表面層として保護層を有する場合は、保護層を、前記電荷輸送性材料(A)を含む組成物の重合あるいは硬化膜によって構成してもよい。
【0182】
なお、以上説明した本実施形態では、電子写真感光体の最表面層として、本実施形態の電荷輸送性材料(A)を含有する組成物の重合あるいは硬化膜(電荷輸送性膜)を適用した形態を説明したが、本実施形態の電荷輸送性材料(A)を含む重合あるいは硬化膜はこれに限定されない。本実施形態の電荷輸送性材料(A)を含む硬化膜は、例えば、有機電界発光(エレクトロルミネッセンス、EL)素子、メモリー素子、波長変換素子等に適用される。そして、本実施形態に係る硬化膜は、電荷輸送性を損なうことなく形成されると考えられるため、従来の電荷輸送性の膜で見られるようなジュール熱によるモルホルジー変化がない、積層する際の製膜性に優れた膜となる。その結果、上記用途に有用となる。
【0183】
〔光電変換デバイス〕
本実施形態に係る光電変換デバイスは、前述した本実施形態に係る電荷輸送性膜を備えることを特徴とする。
前述したように、本実施形態に係る電荷輸送性膜は、機械的強度及び電荷輸送性能の両方に優れるため、光電変換デバイスにおいて機械的強度が求められる層に好適に適用しうる。
【0184】
本実施形態に係る光電変換デバイスとしては、例えば、電子写真感光体、有機ELデバイス、有機トランジスタ、有機太陽電池等が挙げられる。
具体的には、例えば、有機ELデバイスは、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極と、それら電極間に挾持された一つまたは複数の有機化合物層より構成される。該有機化合物層の少なくとも一層に本発明の電荷輸送膜を用いることができ、その層構成は特に限定されない。具体的には発光層、正孔輸送層、正孔注入層として、前述した本実施形態に係る電荷輸送性膜を適用する。
また、例えば、有機薄膜トランジスタは、対向して設けられたソース電極及びドレイン電極の双方に接する有機半導体層と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の双方から離間したゲート電極および前記有機半導体層とゲート電極間に配置される絶縁層を有するものである。前記有機半導体層に少なくとも一層に本発明の電荷輸送膜を用いることができ、その層構成は特に限定されない。
【実施例】
【0185】
以下実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0186】
<合成例1>
−本発明の電荷輸送剤I−7の合成−
500ml三口フラスコに3,4−ジメチルアセトアニリド32.6g、4−ヨードビフェニル56.0g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後、温度を120℃まで下げてからエチレングリコール50ml、水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム15.7g/水20ml)を添加し、さらに6時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム20g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−7aを42.1g得た(収率77%)。
【0187】
500ml三口フラスコにI−15aを41.0g、3−(4−ヨードフェニル)プロピオン酸メチル43.5g、炭酸カリウム22.8g、硫酸銅5水和物1.1g、n−トリデカン40mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム20g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−7bを47.0g得た(収率72%)。
【0188】
3L三口フラスコにI−7bを43.6g、テトラヒドロフラン450mlを添加しそこに水酸化ナトリウム4.4gを水450mlに溶解した水溶液を添加し、60℃で3時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸20ml水溶液に滴下し、析出した固体をを吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−7cを31.2g得た(収率74%)。
【0189】
500ml三口フラスコにI−7cを29.5g、4−クロロメチルスチレン11.8g、炭酸カリウム10.6g、ニトロベンゼン0.17g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら3時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−7を29.7g得た(収率79%)。
得られた化合物(I)−7のIRスペクトルを図4に示す。
【0190】
【化46】

【0191】
<合成例2>
−本発明の電荷輸送剤I−15の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、4−ヨードキシレン46.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム20g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−15aを65.1g得た(収率73%)。
【0192】
3L三口フラスコにI−15aを59.4g、テトラヒドロフラン450mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム11.7gを水450mlに溶解した水溶液を添加し、60℃で3時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸60ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。さらにこの固体にアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−15bを46.2g得た(収率83%)。
【0193】
500ml三口フラスコにI−15bを29.2g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.17g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら3時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−15を36.4g得た(収率80%)。
得られた化合物(I)−15のIRスペクトルを図5に示す。
【0194】
【化47】

【0195】
<合成例3>
−本発明の電荷輸送剤I−17の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、4−ヨードビフェニル56.0g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム20g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−17aを74.0g得た(収率75%)。
【0196】
3L三口フラスコにI−17aを65.8g、テトラヒドロフラン450mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム11.7gを水450mlに溶解した水溶液を添加し、60℃で3時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸60ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。さらにこの固体にアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−17bを53.4g得た(収率86%)。
【0197】
500ml三口フラスコにI−17bを32.6g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.17g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら3時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−17を36.8g得た(収率81%)。
得られた化合物(I)−17のIRスペクトルを図6に示す。
【0198】
【化48】

【0199】
<合成例4>
−本発明の電荷輸送剤I−23の合成−
500ml三口フラスコに3−[4−(3,4−ジメチルフェニルアミノ)フェニル)]プロピオン酸メチル56.7g、4,4’−ジヨードー3,3’−ジメチルー1,1’−ビフェニル43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−23aを48.4g得た(収率65%)。
【0200】
3L三口フラスコにI−23aを37.3g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム4.4gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸20ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−23bを32.6g得た(収率91%)。
【0201】
500ml三口フラスコにI−23bを25.1g、4−クロロメチルスチレン11.8g、炭酸カリウム10.6g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−23を28.2g得た(収率85%)。
得られた化合物(I)−23のIRスペクトルを図7に示す。
【0202】
【化49】

【0203】
<合成例5>
−本発明の電荷輸送剤I−25の合成−
500ml三口フラスコに3−[4−(フェニルアミノ)フェニル]プロピオン酸メチル51.1g、1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エタン43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−25aを51.7g得た(収率75%)。
【0204】
3L三口フラスコにI−25aを34.4g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム4.4gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸20ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−25bを28.4g得た(収率86%)。
【0205】
500ml三口フラスコにI−25bを23.1g、4−クロロメチルスチレン11.8g、炭酸カリウム10.6g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−25を25.6g得た(収率82%)。
得られた化合物(I)−25のIRスペクトルを図8に示す。
【0206】
【化50】

【0207】
<合成例6>
−本発明の電荷輸送剤I−27の合成−
500ml三口フラスコに3−[4−(3,4−ジメチルフェニルアミノ)フェニル]プロピオン酸メチル56.7g、1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エタン43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−27aを54.4g得た(収率73%)。
【0208】
3L三口フラスコにI−27aを 37.3g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム4.4gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸20ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−27bを29.4g得た(収率82%)。
【0209】
500ml三口フラスコにI−27bを25.1g、4−クロロメチルスチレン11.8g、炭酸カリウム10.6g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−27を26.2g得た(収率79%)。
得られた化合物(I)−27のIRスペクトルを図9に示す。
【0210】
【化51】

【0211】
<合成例7>
−本発明の電荷輸送剤I−30の合成−
500ml三口フラスコに3−[4−(4−フェニル)フェニルアミノ)フェニル]プロピオン酸メチル66.3g、1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エタン43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−30aを62.2g得た(収率74%)。
【0212】
3L三口フラスコにI−30aを42.1g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム4.4gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸20ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−30bを34.1g得た(収率84%)。
【0213】
500ml三口フラスコにI−30bを28.5g、4−クロロメチルスチレン11.8g、炭酸カリウム10.6g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−30を26.7g得た(収率73%)。
得られた化合物(I)−30のIRスペクトルを図10に示す。
【0214】
【化52】

【0215】
<合成例8>
−本発明の電荷輸送剤I−43の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、4,4’−ジヨードー3,3’−ジメチルー1,1’−ビフェニル43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−43aを56.0g得た(収率65%)。
3L三口フラスコにI−43aを43.1g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム8.8gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸40ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−43bを36.6g得た(収率91%)。
500ml三口フラスコにI−43bを28.2g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−43を37.8g得た(収率85%)。
得られた化合物(I)−43のIRスペクトルを図11に示す。
【0216】
【化53】

【0217】
<合成例9>
−本発明の電荷輸送剤I−46の合成−
3L三口フラスコにI−43aを43.1g、テトラヒドロフラン300mlを添加し、撹拌して系中を窒素置換してから水素化ホウ素ナトリウム16.3gを添加した。その後、加熱還流しながらメタノール50mlを2時間かけて滴下した。さらに2時間加熱還流した後、いったん0℃まで冷却し、2N塩酸300mlを1時間かけて滴下し、徐々に室温に戻した。その後、酢酸エチル400mlを加えて分液操作を行い、酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10gを加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−46aを28.5g得た(収率76%)。
【0218】
500ml三口フラスコにI−46aを26.2g、コハク酸無水物14.9g、テトラヒドロフラン70mlを添加し、系中を窒素フローて撹拌しながらトリエチルアミン14.9g、N,N−ジメチルアミノピリジン0.2gを添加し、さらに2時間撹拌した。その後、1N塩酸200mlを添加し、さらに酢酸エチル300mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10gを加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−46bを35.0g得た(収率87%)。
【0219】
500ml三口フラスコにI−46bを23.0g、4−クロロメチルスチレン13.4g、炭酸カリウム12.2g、ニトロベンゼン0.05g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)100mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−46を26.1g得た(収率81%)。
得られた化合物(I)−46のIRスペクトルを図12に示す。
【0220】
【化54】

【0221】
<合成例10>
−本発明の電荷輸送剤I−53の合成−
500ml三口フラスコに4,4’−ビス(2−メトキシカルボニルエチル)ジフェニルアミン68.3g、1,2−ビス(4−ヨードフェニル)エタン43.4g、炭酸カリウム30.4g、硫酸銅5水和物1.5g、n−トリデカン50mlを添加し、系中を窒素フローしながら220℃で加熱しながら20時間撹拌した。その後温度を室温まで下げ、トルエン200ml、水150mlを加えて分液操作を行った。トルエン層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。トルエンを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、I−53aを59.4g得た(収率69%)。
【0222】
3L三口フラスコにI−53aを43.1g、テトラヒドロフラン350mlを添加し、そこに水酸化ナトリウム8.8gを水350mlに溶解した水溶液を添加し、60℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、反応液を水1L/濃塩酸40ml水溶液に滴下し、析出した固体を吸引ろ過により採取した。この固体をさらにアセトン/水混合溶剤(体積比40/60)50mlを加えて懸濁状態で撹拌した後、吸引ろ過により採取し、10時間真空乾燥した後、I−53bを34.2g得た(収率85%)。
【0223】
500ml三口フラスコにI−53bを28.2g、4−クロロメチルスチレン23.5g、炭酸カリウム21.3g、ニトロベンゼン0.09g、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)175mlを添加し、系中を窒素フローして75℃に加熱しながら5時間撹拌した。その後、温度を室温まで下げ、反応溶液に酢酸エチル200ml/水200mlを加えて分液操作を行った。酢酸エチル層を採取し、硫酸ナトリウム10g加えて10分撹拌した後、硫酸ナトリウムをろ過した。酢酸エチルを減圧留去した粗生成物を、トルエン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、本発明の電荷輸送剤I−53を35.1g得た(収率79%)。
得られた化合物(I)−53のIRスペクトルを図13に示す。
【0224】
【化55】



【0225】
<実施例1>
−電荷輸送性膜の作製−
下記組成の電荷輸送膜形成用塗布液を調製した。
(電荷輸送剤)
前記合成例1で合成した電荷輸送材料((I)−15):100質量部
(開始剤)
V−601(和光純薬社製):2質量部
(溶剤)
テトラヒドロフラン(THF)/トルエン混合溶剤(質量比40/60):150質量部
【0226】
【化56】

【0227】
ガラス基板上にITO膜を備えるITOガラス基板を用意し、そのITO膜を2mm幅の短冊状にエッチングしてITO電極(陽極)を形成した。このITOガラス基板を、イソプロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
上記ITOガラス基板のITO電極が形成されている面上に、上記電荷輸送性膜形成用塗布液を塗布し、酸素濃度約100ppmの雰囲気下で150℃、40分加熱し、5μmの電荷輸送性膜1を形成した。
【0228】
(移動度の安定性の測定)
上記電荷輸送性膜に対し、TOF−401(住友重機械工業製)を用いて30V/μmの電界をかけて移動度を100回繰り返し測定し、下記式から移動度の安定性を評価した。
なお、「||」は、絶対値を指す。A++が最も良好な特性であることを示す。
【0229】
移動度の安定性 =
|(1回目測定の移動度)−(100回目測定の移動度)|/(1回目測定の移動度)
A++:0.05未満
A+:0.05以上 0.08未満
A :0.08以上 0.1未満
B :0.1以上 0.2未満
C :0.2以上
【0230】
‐有機電界発光素子の作製‐
ガラス基板上にITO膜を備えるITOガラス基板を用意し、そのITO膜を2mm幅の短冊状にエッチングしてITO電極(陽極)を形成した。このITOガラス基板を、イソプロパノール(電子工業用、関東化学社製)で超音波洗浄した後、スピンコーターで乾燥させた。
次に、ITOガラス基板のITO電極が形成されている面上に、昇華精製した銅フタロシアニンを真空蒸着することにより厚さ0.015μmの薄膜を形成した。
上記の電荷輸送性膜形成用塗布液を上記銅フタロシアニン膜上に塗布し、酸素濃度約100ppmの雰囲気下で145℃、40分加熱し、0.05μmの薄膜を形成した。これにより、ITO電極上に2層構造の正孔輸送層を形成した。
次に、上記正孔輸送層上に、発光材料としてトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)を蒸着することにより厚さ0.060μmの発光層を形成した。
更に、上記発光層上に、Mg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、0.13μm厚の短冊状のMg−Ag電極(陰極)を形成し、有機電界発光素子1を得た。なお、ITO電極とMg−Ag電極とは、それぞれの延在方向が直交するように形成した。得られた有機電界発光素子1の有効面積は0.04cmであった。
【0231】
<比較例1>
電荷輸送材料(I−15)を下記の構造を有する比較用化合物(AC−1)に変更する以外は実施例1と同様にして、比較電荷輸送性膜1及び比較有機電界発光素子1を得た。これを比較有機電界発光素子1とする。
【0232】
【化57】

【0233】
<比較例2>
電荷輸送材料(I−15)を下記の構造を有する比較用化合物(AC−2)に変更する以外は実施例1と同様にして、比較電荷輸送性膜2及び比較有機電界発光素子2を得た。これを比較有機電界発光素子2とする。
【0234】
【化58】

【0235】
<実施例2乃至16>
実施例1において、電荷輸送材料、開始剤、溶剤を表3に記載したものに変更する以外は実施例1と同様にして、電荷輸送性膜2〜16及び有機電界発光素子2〜16を得た。
【0236】
(素子特性の評価)
実施例、比較例で得られた有機電界発光素子について、以下のようにして素子特性を評価した。
【0237】
<最高輝度>
真空中(0.125Pa)で、ITO電極をプラス(陽極)、Mg−Ag電極をマイナス(陰極)とし、これらの間に直流電圧を印加して発光させ、そのときの最高輝度を評価した。それらの結果を表3に示す。
なお、最高輝度の評価基準は以下の通りである。(数値の単位はcd/m
A++が最も良好な特性であることを示す。
A++:800以上
A+:750以上 800未満
A :700以上 750未満
B :650以上 700未満
C :650未満
【0238】
<素子寿命>
また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命の測定を以下のようにして行った。室温において直流駆動方式(DC駆動)で初期輝度を500cd/mとし、比較例1の素子の輝度(初期輝度L0:500cd/m)が(輝度L/初期輝度L0)=0.5となった時点の駆動時間を1.0とした場合の相対時間、及び、素子の輝度が(輝度L/初期輝度L0)=0.5となった時点での電圧上昇分(=電圧/初期駆動電圧)により評価した。
なお、相対時間(L/L0=0.5)及び電圧上昇(L/L0=0.5となるとき)の評価基準は以下の通りである。
【0239】
‐相対時間(L/L0=0.5)
A++が最も良好な特性であることを示す。
A++:1.6以上
A+:1.4以上 1.6未満
A :1.2以上 1.4未満
B :1.0以上 1.2未満
C :1.0未満
【0240】
‐電圧上昇(L/L0=0.5となるとき)
A++が最も良好な特性であることを示す。
A++:1.0以上1.1未満
A+:1.1以上 1.2未満
A :1.2以上 1.3未満
B :1.3以上 1.4未満
C :1.4以上
【0241】
【表3】



【0242】
VE−073:重合開始剤(和光純薬製)
OTazo−15:重合開始剤(大塚化学製)
【符号の説明】
【0243】
1…基体、2…感光層、2A…電荷発生層、2B,2B−1,2B−2…電荷輸送層、4…下引層、6…機能一体型の感光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される反応性化合物。
【化1】


(一般式(I)中、Fは電荷輸送性骨格を示し、Dは下記一般式(III)で示される基を示す。mは1以上8以下の整数を示す。)
【化2】


(一般式(III)中、Lは、−C(=O)−O−基を1つ以上含む2価の連結基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で示される化合物が、下記一般式(II)で示される化合物である請求項1に記載の反応性化合物。
【化3】


(一般式(II)中、Ar乃至Arは、それぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は置換若しくは未置換のアリーレン基を示す。Dは前記一般式(I)中のDと同義である。c1乃至c5はそれぞれ0以上2以下の整数を示し、c1乃至c5の合計は1以上8以下の整数である。kは0又は1である。)
【請求項3】
前記一般式(III)中のLが、−C(=O)−O−と−(CH−を組み合わせて形成される2価の連結基(ただし、nは1以上10以下の整数)である請求項1又は請求項2に記載の反応性化合物。
【請求項4】
前記一般式(III)で示される基が、下記一般式(IV)で示される基である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の反応性化合物。
【化4】


(一般式(IV)中、pは0以上4以下の整数を示す。)
【請求項5】
前記一般式(IV)で示される基が、下記一般式(V)で示される基である請求項4に記載の反応性化合物。
【化5】


(一般式(V)中、pは0以上4以下の整数を示す。)
【請求項6】
前記一般式(I)中のmが、2以上6以下の整数である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の反応性化合物。
【請求項7】
前記一般式(I)中のmが、3以上6以下の整数である請求項6に記載の反応性化合物。
【請求項8】
前記一般式(I)中のmが、4以上6以下の整数である請求項7に記載の反応性化合物。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応性化合物又は該反応性化合物に由来する構造を含む電荷輸送性膜。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の反応性化合物を含有する組成物の重合あるいは硬化膜からなる電荷輸送性膜。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の電荷輸送性膜を有する光電変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−43841(P2013−43841A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181009(P2011−181009)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】