新規な型の4−[4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル]−1−ヒドロキシブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸及びその塩酸塩
【課題】フェキソフェナジンの新規な結晶型及びその製造方法を提供すること;フェキソフェナジン塩酸塩 (式1)の新規な無水結晶型及びその製造方法であって、フェキソフェナジン塩酸塩の水和型を生じることなくフェキソフェナジンから直接に得ることができる方法を提供することなど。
【解決手段】新規な多形相のフェキソフェナジン及び式1のフェキソフェナジン塩酸塩、並びにそれらの製造方法などであって、また、費用有効性があり、商業的に実施可能で、かつ環境に優しい単純な方法など。
【解決手段】新規な多形相のフェキソフェナジン及び式1のフェキソフェナジン塩酸塩、並びにそれらの製造方法などであって、また、費用有効性があり、商業的に実施可能で、かつ環境に優しい単純な方法など。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェキソフェナジン(fexofenadine)塩酸塩の新規な結晶型、及びその製造方
法に関する。より詳細には、本発明は、フェキソフェナジン塩酸塩の新規な無水結晶型X
に関する。本発明は、また、フェキソフェナジンの新規な結晶型、特に型Aのフェキソフ
ェナジン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェキソフェナジン塩酸塩は、化学的には、4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル
)-1ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩である。そ
れは、ターフェナジンカルボン酸(terfenadine carboxylic acid)代謝物としても知られ
ている。それは、式1により表される。
【化1】
【0003】
フェキソフェナジン塩酸塩は、抗ヒスタミン剤として有用であり、肝臓疾患を有する何
人かの患者、又は抗菌剤ケトコナゾール(ketoconazole)若しくは抗生物質エリスロマイ
シンも摂取する患者における異常な心臓リズムを含むターフェナジンの投与に関連する副
作用を引き起こさない。
【0004】
ピペリジン誘導体との名称の特許文献1(米国特許第4,254,129号 (「'129特許」)が19
81年3月3日に発行された。'129特許は、置換ピペリジン誘導体並びにそれらを製造及び
使用する方法に関する。開示される化合物には、フェキソフェナジン及びその薬学的に許
容し得る塩及び個々の光学異性体が含まれるところ、これらは、抗ヒスタミン剤、抗アレ
ルギー剤及び気管支拡張剤として有用であることが意図されている。
【0005】
'129特許は、195〜197℃の融点を有するフェキソフェナジンの製造方法を開示している
。第13欄の実施例3に例示される再結晶方法には、フェキソフェナジンの製造のための溶
媒混合物の使用が含まれている。
【0006】
特許文献2(WO95/31437)には、水和物及び無水物形態にあるピペリジン誘導体、そ
れらの多型及び仮像であって、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤及び気管支拡張剤として
有用なものの製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献2(WO95/31437)には、フェキソフェナジン塩酸塩水和物を再結晶を最小限
にする水又は共沸蒸留に供することにより無水物形態にあるフェキソフェナジン塩酸塩の
製造方法が記載されている。本出願に記載される発明では、特許文献2(W095/31437)に
記載される方法とは異なり、水和フェキソフェナジン塩酸塩は、無水フェキソフェナジン
塩酸塩に転換されず、その代わりに、フェキソフェナジンがフェキソフェナジンの型Aに
転換され、次いで、フェキソフェナジン塩酸塩の無水物型Xに転換される。新規な無水結
晶型のフェキソフェナジン塩酸塩は、本発明に従い、新規な前駆体、すなわち、フェキソ
フェナジンから水和物形態を生成することなく直接に得られる。使用される出発物質フェ
キソフェナジン(ベース(Base))は、特許文献2(WO95/31437)に記載されるものとは
異なる。
【0008】
特許文献3(WO00/71124A1)には、アモルファスフェキソフェナジン塩酸塩プロセス
、その調製及びそれを含有する組成物が開示される。
【0009】
従来技術において得られたフェキソフェナジンは、パラ異性体33%及びメタ異性体67%
を含むフェキソフェナジンの位置異性体(regioisomers)の混合物である。これらの成分
は、分離不可能として言及され、実質的に純粋な形態で位置異性体のいずれかを得ること
は不可能であるともいわれている。他方、本発明の方法に従い調製されたフェキソフェナ
ジンは、>99.5%の純度を有する。本発明の新規な結晶フェキソフェナジンは、フェキソ
フェナジンのメタ異性体は、0.1%よりも低いレベルである。フェキソフェナジンの純度
は、その塩酸塩への転換に使用されるとき重要である。なぜならば、最後の遅い処理段階
において、所望の化合物から位置異性体を含む、いずれの所望しない不純物をも除去する
ことは非常に困難だからである。不純物を除去することは、製造費用を高める。したがっ
て、フェキソフェナジンのHPLC純度は、99.5%よりも大きいことが一般的に好ましい。
【0010】
本発明の他の有利な側面は、フェキソフェナジン塩酸塩が、前駆体、すなわちフェキソ
フェナジンからほとんど定量的収量で得られることである。ほとんど定量的収量とは、純
粋なフェキソフェナジンが、定量的に(理論値の>92%収量)フェキソフェナジン塩酸塩
に転換され、ほとんど収量損失を伴わないことを意味する。なぜならば、従来技術の方法
により調製されるフェキソフェナジンと比較して、フェキソフェナジンベース自体が、>
99.5%純度だからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、フェキソフェナジンの新規な結晶型及びその製造方法を
提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、フェキソフェナジン塩酸塩 (式1)の新規な無水結晶型及びその製
造方法であって、フェキソフェナジン塩酸塩の水和型を生じることなくフェキソフェナジ
ンから直接に得ることができる方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、フェキソフェナジンの純粋な新規アモルファス及びその塩酸塩
を、費用有効性があり、商業的に実施可能であり、かつ環境にやさしい方法により提供す
ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によって以下が提供される:
(1) 次のX線粉体回折パターン(A0でのd値):23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6
.02, 5.75,5.43, 5.33, 5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55及び3.44に
より特徴付けられる、結晶型Aの4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジ
ニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸(型Aのフェキソフェナジン)。
(2) 次の赤外吸収ピーク(cm-1)FT-IR(KBr中): 3421, 3058, 2936, 2366, 2343, 1571, 15
09, 1490, 1447,1390, 1334, 1167, 1097, 1073, 1018, 960, 916, 849, 745, 706, 666
, 637, 617,541.2により特徴付けられる項目1に記載の結晶型Aのフェキソフェナジン
。
(3) 約227〜231℃のピーク温度を有する融解吸熱により特徴付けられる項目1又は2に記
載の結晶型Aのフェキソフェナジン。
(4) 型Aの4-[4- [4-ヒドロキシジフェニルメチル]-1-ピペリジニル]-α,α-ジメチルベン
ゼン酢酸 (型Aのフェキソフェナジン)の製造方法であって:
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中で15分ないし6時間フェキソフェ
ナジンを共沸的に還流し;
c. 周囲の温度で30分ないし2時間反応混合物を攪拌し;及び
d. 結晶型Aのフェキソフェナジンを単離する
ことを含む製造方法。
(5) 型Aの純度が99.5%よりも大きい、項目1ないし3のいずれか1項に記載の純粋な型A
の4- [4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸。
(6) 次のX線粉体回折パターン(A0でのd値):16.05,12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.
54, 5.41, 4.89,4.70, 4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42により
特徴付けられる、式(1)の結晶型Xの4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリ
ジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(型Xのフェキソフェナ
ジン)。
(7) 次の赤外吸収ピーク(cm-1)FT-IR(KBr中):3370, 2965, 2652, 1717, 1472, 1448, 12
50, 1158, 1100,1068, 995, 962, 840, 747, 703, 638, 560により特徴付けられる請求
項6に記載の結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸塩。
(8) DSCサーモグラムが、約184〜189℃のピーク温度を有する融解吸熱を示すことにより特
徴付けられる項目6又は7に記載の結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸塩。
(9) 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の型X(型Xのフェキソフェナジン塩酸塩)を製造する方法
であって、
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒又は有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的
に15分ないし6時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. 塩酸を含有する溶媒で反応集団のpHを1ないし3に調整し;
e. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間撹拌し;
f. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥し;
g. 前記工程(f)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、反応混合物を加熱し、30
分ないし6時間還流し;
h.反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
i. 4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α
,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水物結晶型Xを単離する
ことを含む方法。
(10) 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の型X(型Xのフェキソフェナジン塩酸塩)を製造する方法
であって、
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的に1
5分ないし6時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. フェキソフェナジン型Aを単離し;
e. フェキソフェナジン型Aを非極性有機溶媒中に懸濁し;
f. 塩酸を含有する溶媒で反応集団のpHを1ないし3に調整し;
g. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間攪拌し、
h. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥するか、又は減圧下に110〜16
で乾燥し;
i. 前記工程(h)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、反応混合物を加熱し、30
分ないし6時間還流し;
j. 反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
k. 4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α
,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水物結晶型Xを定法により単離する
ことを含む方法。
(11) 型Xのフェキソフェナジン塩酸塩の製造方法であって;
a)(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b) 非極性有期溶媒中でフェキソフェナジンを共沸的に3〜4時間還流し;
c) 場合に応じて、定法により工程b)で得られたフェキソフェナジン型Aを単離するとと
もに100℃よりも低い温度で乾燥し;
d) 工程c)で得られたフェキソフェナジン型Aを懸濁するか、又は工程b)の反応混合物で
ある、非極性有機溶媒若しくは有機溶媒とイソプロパノールとの混合物に添加し;
e) 塩酸を含有する溶媒で工程e)の溶液のpHを1ないし3に調整し;
f) 工程e)で得られた溶液をろ過し、顆粒状物質を除去し;
g) 結晶型Xの4-[[4-l-ピペリジニル] l-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン
酢酸塩酸塩のいくつかの結晶を用いて工程f)の溶液に種晶添加し、かつ反応集団を周囲の
温度で攪拌し、固形物を単離し;
i) 工程h)で得られた固形物を濾過し、次いで、非極性有機溶媒、有機溶媒又は炭化水
素溶媒により洗浄し;及び
j) 結晶型Xの4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-l-ヒドロキ
シブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩を乾燥する
ことを含む方法。
(12) 前記非極性有機溶媒が、トルエン又はキシレンから選択される項目4又は9ないし1
1のいずれか1項に記載する方法。
(13) 前記(Cl-C3)アルカノールが、メタノール、エタノール又はプロパノールである項目
4又は9ないし12のいずれか1項に記載する方法。
(14) 前記非極性有機溶媒が、(C6-C9)アルキルである項目4又は9ないし13のいずれか
1項に記載する方法。
(15) 前記非極性有機溶媒が、n-ヘキサン、ヘキサン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサン
である項目4又は9ないし14のいずれか1項に記載する方法。
(16) 前記有機溶媒が、(Cl-C4)アルキルアセテートから選択される項目4又は9ないし1
5のいずれか1項に記載する方法。
(17) 前記有機溶媒が、酢酸エチルである項目4又は9ないし16のいずれか1項に記載す
る方法。
(18) 前記塩酸を含有する溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はt-ブタノ
ールから選択される項目9の工程(d)、項目10の工程(f)又は項目11の工程(e)
に記載する方法。
(19) 前記炭化水素溶媒が、ヘキサン又はシクロヘキサンから選択される項目11に記載の
方法。
本発明は、フェキソフェナジンの新規な結晶型を提供する。この新規な結晶型は、簡便
に、型Aという。新規な結晶型Aの製造方法には、アルコール中の粗フェキソフェナジンを
再結晶化することと、それに続き、非極性溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキ
ソフェナジンを共沸的に還流することと、引き続く所望の型Aの単離とが含まれる。
【0015】
型Aは、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し、次いで;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中で15分ないし6時間、好ましくは
1〜3時間フェキソフェナジンを共沸的に還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間攪拌し;及び
d. 定法によりフェキソフェナジンの型Aを単離する
ことを含む方法により製造される。
【0016】
粗フェキソフェナジンは、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、好ましくは
メタノール中で再結晶され得る。(Cl-C3)アルカノールに対する粗フェキソフェナジンの
比は、1:10〜20である。工程b)での非極性有機溶媒及び/又は有機溶媒に対するフェキ
ソフェナジンの比は、1:10〜15である。
【0017】
本明細書において、非極性有機溶媒とは、キシレン又はトルエン又は(C6-C9)アルキル
、例えば、n-ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサンから
選択される。トルエンが好ましい非極性有機溶媒である。有機溶媒は、(ClないしC4)酢酸
アルキルであり、酢酸メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され、好ましくは酢
酸エチルである。
【0018】
フェキソフェナジンの型Aは、次の特徴により同定することができる:
・約218〜228℃の範囲の目視による融点(毛細管);
・示差走査熱量測定法により測定される約227〜231℃の融解吸熱(melting endother
m);及び
・本質的には表1に示すようなX線粉体回折パターン(X-ray powder diffraction pa
ttern)。
【表1】
【0019】
別の側面によれば、本発明は、フェキソフェナジン塩酸塩の新規な結晶型の製造方法を
提供する。この新規な結晶型を型Xという。
【0020】
フェキソフェナジン塩酸塩の新規な結晶型Xの製造方法には、
非極性溶媒中のフェキソフェナジン型Aを好適な塩酸を含有する溶媒と反応し、かつ、
所望のフェキソフェナジン塩酸塩の型Xを単離することが含まれ、これは、フェキソフェ
ナジン塩酸塩の水和形態を発生することなく、フェキソフェナジンから直接得ることがで
きる。
【0021】
型X 多形相(polymorph)は、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;次いで、
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的に1
5分〜6時間、好ましくは1〜3時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. 場合に応じて、定法によりフェキソフェナジン型Aを単離し;
e. もし、単離したならば、フェキソフェナジン型Aを非極性有機溶媒中に懸濁し;
f. 好適な塩酸を含有する溶媒で反応集団(reactionmass)のpHを1ないし3に、好まし
くは2に調整し;
g. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間、好ましくは1〜10時間、より好ましく
は3〜6時間攪拌し;
h. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥し;
i. 工程(h)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、かつ、反応混合物を加熱し、
0.5〜6時間、好ましくは1〜3時間還流し;
j. 反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
k. 定法により4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-1-ヒドロキシ
ブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水結晶型Xを単離する
ことを含む方法により製造される。
【0022】
型Xは、型Aを単離することなく製造することができる。
【0023】
型Xは、工程(d)及び(e)を除いて、工程(c)から工程(f)へ直接に製造することができる
。
【0024】
上記方法の変形において、新規な型X多形相は、工程(h)で得られた固形物を減圧下に11
0〜160℃で30分ないし10時間、好ましくは2〜5時間乾燥することによって製造すること
ができる。
【0025】
工程(i)の酢酸アルキルに対する固形物の比は、1:10〜15である。
【0026】
本発明のさらに別の側面は、新規な結晶型のフェキソフェナジン塩酸塩(型Xと命名す
る)を種晶添加技術(seeding technique)により製造するための方法を提供する。
【0027】
この方法には、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶させ、次いで;
b. 非極性有機溶媒中でフェキソフェナジンを共沸的に3〜4時間還流し;
c. 場合に応じて、定法により工程b)で得られたフェキソフェナジン型Aを単離するとと
もに、100℃よりも低い温度で乾燥し;
d. 工程c)で得られたフェキソフェナジン型Aを懸濁するか、又は工程b)の混合物に、ト
ルエン又はキシレン又は(C6-C9)アルキルから選択される非極性有機溶媒;又は酢酸(Cl
-C4)アルキル、好ましくは酢酸エチルから選択される有機溶媒と、イソプロパノールとの
混合物を添加する工程でって、溶媒対イソプロパノールの比が7〜9:3〜1、好ましく
は9:1であるもの;
e. 塩酸を含有する好適な溶媒で、工程d)の溶液のpHを1ないし3、好ましくは2に調
節し;
f. 工程e)で得られた溶液をろ過し、粒子状物質を除去し;
g. 工程f)の溶液に新規な結晶型Xの結晶を種晶添加し、反応集団を周囲の温度で攪拌し
、固形物を分離し;
h. 工程g)で得られた固形物をろ過し、次いで、非極性有機溶媒、有機溶媒又は炭化水
素溶媒により洗浄し;及び
i. 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)1-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-
α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水結晶型Xを70〜100℃で乾燥すること
が含まれる。
【0028】
粗フェキソフェナジンは、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、好ましくは
メタノールのようなCl-C3アルカノール中で再結晶することができる。
【0029】
本明細書において言及される非極性有機溶媒は、キシレン又はトルエン又は(C6-C9)ア
ルキル、例えば、n-ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサ
ンである。溶媒の混合物を使用することができる。トルエンが好ましい溶媒である。有機
溶媒は、(Cl-C4)アルキルアセテートであり、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及
び酢酸ブチルから選択され、好ましくは、酢酸エチルである。
【0030】
本明細書において言及される好適な塩酸を含有する溶媒は、メタノール、エタノール、
イソプロパノール又はt-ブタノールから選択され、好ましくは、イソプロパノールである
。
【0031】
粗フェキソフェナジン対Cl-C3アルカノールの比は、1:10〜20である。工程bのフェ
キソフェナジン対溶媒の比は、1:10〜15である。
【0032】
炭化水素溶媒は、ヘキサン又はシクロヘキサンから選択され、好ましくは、シクロヘキ
サンである。
【0033】
上述した方法により得られるの型Xは、
・約180〜188℃の範囲の目視による融点により(毛細管);
・示差走査熱量測定法により測定した約180〜189℃の融解吸熱により;
・及び表2に本質的に示すX線粉体回折パターンにより同定することができる。
【表2】
【0034】
本発明は、単一の溶媒のみを必要とする結晶化方法により、純粋なフェキソフェナジン
型Aを製造するための改良された方法を提供する。この溶媒は、回収及び再利用すること
ができ、もって、この方法を費用有効性があり、かつ環境に易しくする。
【0035】
本発明のフェキソフェナジンの新規な多形相型は、所望の場合には、その薬学的に許容
し得る塩のいずれかに転換することができる。
【0036】
本発明により得られるフェキソフェナジン及びその塩酸塩の両者は、純粋であり、処方
によく適合していることは言及に値する。ほとんどの薬学物質処方方法は、自由に流動す
る高い融点固形物である活性物質の使用により容易になる。本発明のフェキソフェナジン
塩酸塩X型及び無水結晶型Aは、高融点固形物であり、処方に非常に好適である。
(例)
【0037】
本発明を以下の例により説明するが、特許請求の範囲の有効な範囲を限定するものでは
ない。
【0038】
参照例−粗フェキソフェナジンの調製
メタノール(600 ml)中のメチル4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル) l-ピペリ
ジニル]-l-オキソブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセテート塩酸塩及びメチル3-[4- [
4 (ヒドロキシジフェニルメチル)1-ピペリジニル]-1-オキソブチル]-ジメチルベンゼンア
セテート塩酸塩(100 g)の混合物の溶液に、水性水酸化ナトリウム (132 mlの水中の水産
化ナトリウム36.4g)を添加する。混合物を加熱し、約2〜4時間還流する。反応の完了
は、TLC法によりモニターし、完了したら、反応混合物を周囲の温度まで冷却し、ホウ水
素化ナトリウム(6.8g)を添加して完了する。反応混合物を50〜60℃に加熱し、約14時間
同じ温度に維持し(反応の完了は、TLC法によりモニターする)、続いて、周囲の温度ま
でに冷却し、炭素処理により完了する。炭素処理の後に得られた透明なろ液からメタノー
ルを除去し、次いで、水(300 ml)及びアセトン(200ml)を添加する。次いで、反応混合物
のpHを酢酸で〜6に調節し、5時間攪拌し、次いで、ろ過し、その後、水洗(200ml)し
、粗フェキソフェナジンを得する。
【0039】
収量:72g
【0040】
例1
純粋なフェキソフェナジンの調製
メタノール (4000ml)中の粗フェキソフェナジン溶液(500 g; 参照例により調製)を1時
間還流し、次いで、反応混合物を室温に冷却する。得られた沈殿した純粋なフェキソフェ
ナジンをろ過し、メタノール (250 ml)で洗浄する。メタノール中の繰り返される再結晶
化により、所望の純度の純粋なフェキソフェナジンが得られた。
【0041】
HPLCによる純度99.85% ; メタ異性体 < 0.1%
【0042】
例2
工程1
純粋なフェキソフェナジンからの型Aの調製
トルエン(1800ml) 中の純粋なフェキソフェナジン(180 g)を共沸的に2時間半還流す
る。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、約40分間攪拌する。この工程の完了後、反応
混合物をろ過し、トルエン(180ml)で洗浄し、得られたフェキソフェナジン型Aを、周囲の
圧力下に一定重量になるまで80〜85℃で乾燥する。
【0043】
収量179.2g: M. R (融解範囲)220-224 ℃。
【0044】
工程2
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
フェキソフェナジン型A (170 g ; 工程1により調製)に、トルエン(1700 ml)を添加し
、その後、イソプロパノール 塩酸 (イソプロピルアルコールに塩酸をパージすることに
より調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次いで、反応集合体を10時間15分間攪拌
する。得られた固形物をろ過し、トルエン(170 ml)で洗浄し、真空下に75〜80℃で乾燥す
る。このようにして得られた固形物(140g)を酢酸エチル (2800ml)中で約1時間還流する。
次いで、反応混合物を室温にまで冷却し、1時間30分間攪拌する。反応集合体をろ過し、
酢酸エチル(140ml)で洗浄する。周囲の圧力下に一定重量になるまで78〜85℃で乾燥する
と、所望の型Xのフェキソフェナジン塩酸塩が得られる。
【0045】
収量 129.6g: M. R 183〜187℃
【0046】
例3
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
フェキソフェナジン型A(95 g; 例2の工程1により調製)に、トルエン(950ml)を添加し
、その後、イソプロパノール 塩酸 (イソプロピルアルコールに塩酸をパージすることに
より調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次いで、反応集合体を2時間45分間攪拌す
る。次いで、反応集合体をろ過し、トルエン(95 ml)で洗浄し、固形物を単離し、これを
周囲の圧力下に一定重量になるまで80〜85℃で乾燥する。
【0047】
上で得られた固形物の一部分を乾燥機内に維持し、100-mbar圧力で141〜149℃で3時間
半残存有機溶媒を除去することにより、所望の型Xのフェキソフェナジン塩酸塩(M. R183
〜188℃)が得られた。
【0048】
例4
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
純粋なフェキソフェナジン(50 g)に、トルエン(500 ml)を添加し、混合物を約3時間共
沸的に還流する。次いで、反応集合体を室温にまで冷却し、イソプロパノール塩酸 (イソ
プロピルアルコールに塩酸をパージすることにより調製)をゆっくりと添加し、pHを2に
する。次いで、反応集合体を約15時間半攪拌する。分離した固形物をろ過し、トルエン(5
0 ml)で洗浄し、乾燥する(収量43.3 g)。この固形物の一部分(42g)を酢酸エチル(420ml)
に懸濁し、約1時間還流する(この操作は、残留有機溶媒の除去のために行った。)。次い
で、懸濁液を室温にまで冷却し、20分間攪拌する。反応集合体をろ過し、酢酸エチル (42
ml)で洗浄する。所望のフェキソフェナジン塩酸塩型Xを90〜96℃で一定重量にまで乾燥す
る。
【0049】
収量39 g:M. R 183〜188 ℃
【0050】
例5
トルエン(1000ml)中の純粋なフェキソフェナジン(例1により調製; 100 g)を、3〜4時
間共沸的に還流する。次いで、反応混合物を室温にまで冷却し、約15〜30分間攪拌する。
引き続き、反応混合物をろ過しトルエン(100ml)で洗浄し、得られたフェキソフェナジン
型Aを、100℃よりも低い温度で一定重量にまで乾燥する。
【0051】
収量 95 g
【0052】
酢酸エチル及びイソプロパノール (900:100 ml)の混合物に、フェキソフェナジン型A(1
00 g; 上記手順により調製)を添加し、その後、イソプロパノール塩酸 (イソプロピルア
ルコールに塩酸をパージすることにより調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次い
で、反応集合体をろ過し、型Xの4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジ
ニル]-1ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の数個の結晶をろ液に添
加する。次いで、反応混合物を2〜4時間攪拌する。得られた固形物をろ過し、シクロヘキ
サン (200ml)で洗浄し、一定重量にまで100℃よりも下の温度で乾燥し、所望の型Xのフ
ェキソフェナジン塩酸塩が得られる。
【0053】
収量100 g
【0054】
例2〜4での型Aのフェキソフェナジン及び上述した結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸
塩について、それらの構造及び分析データ、すなわち、粉体X-線回折、示差走査熱量測定
及び赤外吸収スペクトルを調べた。
【0055】
得られた結果は、上で考察し、それぞれの図面は本明細書に添付する(図1〜6)。
【0056】
本出願に示されるX-線回折パターンは、波長λ=1.54A0のCuK-放射源を有するRigakuD
/Max-2200 X-線粉体回折メータを用いて得られた。試料は、3〜45℃2θの間で走査され
た。
【0057】
赤外吸収スペクトルは、Perkin Elmer 1650 FT-IR スペクトロフォトメータ上で、KBr
懸濁物として固形状態で記録された。
【0058】
示差走査熱量測定分析は、Shimadzu DSC-50上で行われた。試料は、30ml/分の窒素パー
ジとともに、5℃/分の加熱速度で250℃まで加熱した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】図1Aは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。縦軸は、強度(CPS)、横軸は、2シータ(度)である。得られた有意なd値(A0)は、23.11,11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33, 5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20,4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図1B】図1Bは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33,5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図1C】図1Cは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33,5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図2】図2は、上述したフェキソフェナジンの型Aの臭化カリウム中の特徴的赤外吸収スペクトルである。[縦軸は、透過(%); 横軸は、波長 (cm-1)である。]。型Aの特徴的ピークは、3421,3058, 2936, 2366, 2343, 1571, 1509, 1490, 1447, 1390, 1334, 1167, 1097, 1073,1018, 960, 916, 849, 745, 706, 666, 637, 617, 541に示されている。
【図3】図3は、先に述べたフェキソフェナジンの型Aの示差走査熱量測定グラフの特徴である。縦軸は、mWであり、横軸は、温度(℃)である。DSC熱グラフには、約230.38℃に融解吸熱が示されている。
【図4A】図4Aは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。縦軸は、強度(CPS)を表し、横軸は、2シータ(度)を表す。得られた有意なd値(A0)は、16.05,12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70, 4.55, 4.37, 4.32,4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図4B】図4Bは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、16.05, 12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70,4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図4C】図4Cは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、16.05, 12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70,4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図5】図5は、先に述べたフェキソフェナジン塩酸塩の臭化カリウム中の特徴的赤外吸収スペクトルである。[縦軸は、透過(%); 横軸は、波長 (cm-1)である。]。型Xの特徴的ピークは、3370,2965, 2652, 1717, 1472, 1448, 1250, 1158, 1100, 1068, 995, 962, 840, 747,703, 638, 560に示されている。
【図6】図6は、先に述べたフェキソフェナジン塩酸塩の型Xの示差走査熱量測定グラフの特徴である。縦軸は、mWであり、横軸は、温度(℃)である。DSC熱グラフには、約186.56℃に融解吸熱が示されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェキソフェナジン(fexofenadine)塩酸塩の新規な結晶型、及びその製造方
法に関する。より詳細には、本発明は、フェキソフェナジン塩酸塩の新規な無水結晶型X
に関する。本発明は、また、フェキソフェナジンの新規な結晶型、特に型Aのフェキソフ
ェナジン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェキソフェナジン塩酸塩は、化学的には、4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル
)-1ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩である。そ
れは、ターフェナジンカルボン酸(terfenadine carboxylic acid)代謝物としても知られ
ている。それは、式1により表される。
【化1】
【0003】
フェキソフェナジン塩酸塩は、抗ヒスタミン剤として有用であり、肝臓疾患を有する何
人かの患者、又は抗菌剤ケトコナゾール(ketoconazole)若しくは抗生物質エリスロマイ
シンも摂取する患者における異常な心臓リズムを含むターフェナジンの投与に関連する副
作用を引き起こさない。
【0004】
ピペリジン誘導体との名称の特許文献1(米国特許第4,254,129号 (「'129特許」)が19
81年3月3日に発行された。'129特許は、置換ピペリジン誘導体並びにそれらを製造及び
使用する方法に関する。開示される化合物には、フェキソフェナジン及びその薬学的に許
容し得る塩及び個々の光学異性体が含まれるところ、これらは、抗ヒスタミン剤、抗アレ
ルギー剤及び気管支拡張剤として有用であることが意図されている。
【0005】
'129特許は、195〜197℃の融点を有するフェキソフェナジンの製造方法を開示している
。第13欄の実施例3に例示される再結晶方法には、フェキソフェナジンの製造のための溶
媒混合物の使用が含まれている。
【0006】
特許文献2(WO95/31437)には、水和物及び無水物形態にあるピペリジン誘導体、そ
れらの多型及び仮像であって、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤及び気管支拡張剤として
有用なものの製造方法が開示されている。
【0007】
特許文献2(WO95/31437)には、フェキソフェナジン塩酸塩水和物を再結晶を最小限
にする水又は共沸蒸留に供することにより無水物形態にあるフェキソフェナジン塩酸塩の
製造方法が記載されている。本出願に記載される発明では、特許文献2(W095/31437)に
記載される方法とは異なり、水和フェキソフェナジン塩酸塩は、無水フェキソフェナジン
塩酸塩に転換されず、その代わりに、フェキソフェナジンがフェキソフェナジンの型Aに
転換され、次いで、フェキソフェナジン塩酸塩の無水物型Xに転換される。新規な無水結
晶型のフェキソフェナジン塩酸塩は、本発明に従い、新規な前駆体、すなわち、フェキソ
フェナジンから水和物形態を生成することなく直接に得られる。使用される出発物質フェ
キソフェナジン(ベース(Base))は、特許文献2(WO95/31437)に記載されるものとは
異なる。
【0008】
特許文献3(WO00/71124A1)には、アモルファスフェキソフェナジン塩酸塩プロセス
、その調製及びそれを含有する組成物が開示される。
【0009】
従来技術において得られたフェキソフェナジンは、パラ異性体33%及びメタ異性体67%
を含むフェキソフェナジンの位置異性体(regioisomers)の混合物である。これらの成分
は、分離不可能として言及され、実質的に純粋な形態で位置異性体のいずれかを得ること
は不可能であるともいわれている。他方、本発明の方法に従い調製されたフェキソフェナ
ジンは、>99.5%の純度を有する。本発明の新規な結晶フェキソフェナジンは、フェキソ
フェナジンのメタ異性体は、0.1%よりも低いレベルである。フェキソフェナジンの純度
は、その塩酸塩への転換に使用されるとき重要である。なぜならば、最後の遅い処理段階
において、所望の化合物から位置異性体を含む、いずれの所望しない不純物をも除去する
ことは非常に困難だからである。不純物を除去することは、製造費用を高める。したがっ
て、フェキソフェナジンのHPLC純度は、99.5%よりも大きいことが一般的に好ましい。
【0010】
本発明の他の有利な側面は、フェキソフェナジン塩酸塩が、前駆体、すなわちフェキソ
フェナジンからほとんど定量的収量で得られることである。ほとんど定量的収量とは、純
粋なフェキソフェナジンが、定量的に(理論値の>92%収量)フェキソフェナジン塩酸塩
に転換され、ほとんど収量損失を伴わないことを意味する。なぜならば、従来技術の方法
により調製されるフェキソフェナジンと比較して、フェキソフェナジンベース自体が、>
99.5%純度だからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、フェキソフェナジンの新規な結晶型及びその製造方法を
提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、フェキソフェナジン塩酸塩 (式1)の新規な無水結晶型及びその製
造方法であって、フェキソフェナジン塩酸塩の水和型を生じることなくフェキソフェナジ
ンから直接に得ることができる方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、フェキソフェナジンの純粋な新規アモルファス及びその塩酸塩
を、費用有効性があり、商業的に実施可能であり、かつ環境にやさしい方法により提供す
ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によって以下が提供される:
(1) 次のX線粉体回折パターン(A0でのd値):23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6
.02, 5.75,5.43, 5.33, 5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55及び3.44に
より特徴付けられる、結晶型Aの4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジ
ニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸(型Aのフェキソフェナジン)。
(2) 次の赤外吸収ピーク(cm-1)FT-IR(KBr中): 3421, 3058, 2936, 2366, 2343, 1571, 15
09, 1490, 1447,1390, 1334, 1167, 1097, 1073, 1018, 960, 916, 849, 745, 706, 666
, 637, 617,541.2により特徴付けられる項目1に記載の結晶型Aのフェキソフェナジン
。
(3) 約227〜231℃のピーク温度を有する融解吸熱により特徴付けられる項目1又は2に記
載の結晶型Aのフェキソフェナジン。
(4) 型Aの4-[4- [4-ヒドロキシジフェニルメチル]-1-ピペリジニル]-α,α-ジメチルベン
ゼン酢酸 (型Aのフェキソフェナジン)の製造方法であって:
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中で15分ないし6時間フェキソフェ
ナジンを共沸的に還流し;
c. 周囲の温度で30分ないし2時間反応混合物を攪拌し;及び
d. 結晶型Aのフェキソフェナジンを単離する
ことを含む製造方法。
(5) 型Aの純度が99.5%よりも大きい、項目1ないし3のいずれか1項に記載の純粋な型A
の4- [4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸。
(6) 次のX線粉体回折パターン(A0でのd値):16.05,12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.
54, 5.41, 4.89,4.70, 4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42により
特徴付けられる、式(1)の結晶型Xの4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリ
ジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩(型Xのフェキソフェナ
ジン)。
(7) 次の赤外吸収ピーク(cm-1)FT-IR(KBr中):3370, 2965, 2652, 1717, 1472, 1448, 12
50, 1158, 1100,1068, 995, 962, 840, 747, 703, 638, 560により特徴付けられる請求
項6に記載の結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸塩。
(8) DSCサーモグラムが、約184〜189℃のピーク温度を有する融解吸熱を示すことにより特
徴付けられる項目6又は7に記載の結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸塩。
(9) 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の型X(型Xのフェキソフェナジン塩酸塩)を製造する方法
であって、
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒又は有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的
に15分ないし6時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. 塩酸を含有する溶媒で反応集団のpHを1ないし3に調整し;
e. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間撹拌し;
f. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥し;
g. 前記工程(f)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、反応混合物を加熱し、30
分ないし6時間還流し;
h.反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
i. 4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α
,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水物結晶型Xを単離する
ことを含む方法。
(10) 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α,
α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の型X(型Xのフェキソフェナジン塩酸塩)を製造する方法
であって、
a.(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的に1
5分ないし6時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. フェキソフェナジン型Aを単離し;
e. フェキソフェナジン型Aを非極性有機溶媒中に懸濁し;
f. 塩酸を含有する溶媒で反応集団のpHを1ないし3に調整し;
g. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間攪拌し、
h. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥するか、又は減圧下に110〜16
で乾燥し;
i. 前記工程(h)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、反応混合物を加熱し、30
分ないし6時間還流し;
j. 反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
k. 4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-α
,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水物結晶型Xを定法により単離する
ことを含む方法。
(11) 型Xのフェキソフェナジン塩酸塩の製造方法であって;
a)(Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;
b) 非極性有期溶媒中でフェキソフェナジンを共沸的に3〜4時間還流し;
c) 場合に応じて、定法により工程b)で得られたフェキソフェナジン型Aを単離するとと
もに100℃よりも低い温度で乾燥し;
d) 工程c)で得られたフェキソフェナジン型Aを懸濁するか、又は工程b)の反応混合物で
ある、非極性有機溶媒若しくは有機溶媒とイソプロパノールとの混合物に添加し;
e) 塩酸を含有する溶媒で工程e)の溶液のpHを1ないし3に調整し;
f) 工程e)で得られた溶液をろ過し、顆粒状物質を除去し;
g) 結晶型Xの4-[[4-l-ピペリジニル] l-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン
酢酸塩酸塩のいくつかの結晶を用いて工程f)の溶液に種晶添加し、かつ反応集団を周囲の
温度で攪拌し、固形物を単離し;
i) 工程h)で得られた固形物を濾過し、次いで、非極性有機溶媒、有機溶媒又は炭化水
素溶媒により洗浄し;及び
j) 結晶型Xの4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-l-ヒドロキ
シブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩を乾燥する
ことを含む方法。
(12) 前記非極性有機溶媒が、トルエン又はキシレンから選択される項目4又は9ないし1
1のいずれか1項に記載する方法。
(13) 前記(Cl-C3)アルカノールが、メタノール、エタノール又はプロパノールである項目
4又は9ないし12のいずれか1項に記載する方法。
(14) 前記非極性有機溶媒が、(C6-C9)アルキルである項目4又は9ないし13のいずれか
1項に記載する方法。
(15) 前記非極性有機溶媒が、n-ヘキサン、ヘキサン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサン
である項目4又は9ないし14のいずれか1項に記載する方法。
(16) 前記有機溶媒が、(Cl-C4)アルキルアセテートから選択される項目4又は9ないし1
5のいずれか1項に記載する方法。
(17) 前記有機溶媒が、酢酸エチルである項目4又は9ないし16のいずれか1項に記載す
る方法。
(18) 前記塩酸を含有する溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はt-ブタノ
ールから選択される項目9の工程(d)、項目10の工程(f)又は項目11の工程(e)
に記載する方法。
(19) 前記炭化水素溶媒が、ヘキサン又はシクロヘキサンから選択される項目11に記載の
方法。
本発明は、フェキソフェナジンの新規な結晶型を提供する。この新規な結晶型は、簡便
に、型Aという。新規な結晶型Aの製造方法には、アルコール中の粗フェキソフェナジンを
再結晶化することと、それに続き、非極性溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキ
ソフェナジンを共沸的に還流することと、引き続く所望の型Aの単離とが含まれる。
【0015】
型Aは、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し、次いで;
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中で15分ないし6時間、好ましくは
1〜3時間フェキソフェナジンを共沸的に還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間攪拌し;及び
d. 定法によりフェキソフェナジンの型Aを単離する
ことを含む方法により製造される。
【0016】
粗フェキソフェナジンは、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、好ましくは
メタノール中で再結晶され得る。(Cl-C3)アルカノールに対する粗フェキソフェナジンの
比は、1:10〜20である。工程b)での非極性有機溶媒及び/又は有機溶媒に対するフェキ
ソフェナジンの比は、1:10〜15である。
【0017】
本明細書において、非極性有機溶媒とは、キシレン又はトルエン又は(C6-C9)アルキル
、例えば、n-ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサンから
選択される。トルエンが好ましい非極性有機溶媒である。有機溶媒は、(ClないしC4)酢酸
アルキルであり、酢酸メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択され、好ましくは酢
酸エチルである。
【0018】
フェキソフェナジンの型Aは、次の特徴により同定することができる:
・約218〜228℃の範囲の目視による融点(毛細管);
・示差走査熱量測定法により測定される約227〜231℃の融解吸熱(melting endother
m);及び
・本質的には表1に示すようなX線粉体回折パターン(X-ray powder diffraction pa
ttern)。
【表1】
【0019】
別の側面によれば、本発明は、フェキソフェナジン塩酸塩の新規な結晶型の製造方法を
提供する。この新規な結晶型を型Xという。
【0020】
フェキソフェナジン塩酸塩の新規な結晶型Xの製造方法には、
非極性溶媒中のフェキソフェナジン型Aを好適な塩酸を含有する溶媒と反応し、かつ、
所望のフェキソフェナジン塩酸塩の型Xを単離することが含まれ、これは、フェキソフェ
ナジン塩酸塩の水和形態を発生することなく、フェキソフェナジンから直接得ることがで
きる。
【0021】
型X 多形相(polymorph)は、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶化し;次いで、
b. 非極性有機溶媒、有機溶媒又はそれらの混合物中でフェキソフェナジンを共沸的に1
5分〜6時間、好ましくは1〜3時間還流し;
c. 反応混合物を周囲の温度で30分ないし2時間撹拌し;
d. 場合に応じて、定法によりフェキソフェナジン型Aを単離し;
e. もし、単離したならば、フェキソフェナジン型Aを非極性有機溶媒中に懸濁し;
f. 好適な塩酸を含有する溶媒で反応集団(reactionmass)のpHを1ないし3に、好まし
くは2に調整し;
g. 反応集団を周囲の温度で30分ないし18時間、好ましくは1〜10時間、より好ましく
は3〜6時間攪拌し;
h. 得られた固形物を濾過し、次いで、60〜100℃で乾燥し;
i. 工程(h)で得られた固形物を酢酸アルキル中に懸濁し、かつ、反応混合物を加熱し、
0.5〜6時間、好ましくは1〜3時間還流し;
j. 反応混合物を周囲の温度で20分ないし2時間攪拌し;及び
k. 定法により4-[4- [(ヒドロキシジフェニルメチル)-l-ピペリジニル]-1-ヒドロキシ
ブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水結晶型Xを単離する
ことを含む方法により製造される。
【0022】
型Xは、型Aを単離することなく製造することができる。
【0023】
型Xは、工程(d)及び(e)を除いて、工程(c)から工程(f)へ直接に製造することができる
。
【0024】
上記方法の変形において、新規な型X多形相は、工程(h)で得られた固形物を減圧下に11
0〜160℃で30分ないし10時間、好ましくは2〜5時間乾燥することによって製造すること
ができる。
【0025】
工程(i)の酢酸アルキルに対する固形物の比は、1:10〜15である。
【0026】
本発明のさらに別の側面は、新規な結晶型のフェキソフェナジン塩酸塩(型Xと命名す
る)を種晶添加技術(seeding technique)により製造するための方法を提供する。
【0027】
この方法には、
a. (Cl-C3)アルカノール中の粗フェキソフェナジンを再結晶させ、次いで;
b. 非極性有機溶媒中でフェキソフェナジンを共沸的に3〜4時間還流し;
c. 場合に応じて、定法により工程b)で得られたフェキソフェナジン型Aを単離するとと
もに、100℃よりも低い温度で乾燥し;
d. 工程c)で得られたフェキソフェナジン型Aを懸濁するか、又は工程b)の混合物に、ト
ルエン又はキシレン又は(C6-C9)アルキルから選択される非極性有機溶媒;又は酢酸(Cl
-C4)アルキル、好ましくは酢酸エチルから選択される有機溶媒と、イソプロパノールとの
混合物を添加する工程でって、溶媒対イソプロパノールの比が7〜9:3〜1、好ましく
は9:1であるもの;
e. 塩酸を含有する好適な溶媒で、工程d)の溶液のpHを1ないし3、好ましくは2に調
節し;
f. 工程e)で得られた溶液をろ過し、粒子状物質を除去し;
g. 工程f)の溶液に新規な結晶型Xの結晶を種晶添加し、反応集団を周囲の温度で攪拌し
、固形物を分離し;
h. 工程g)で得られた固形物をろ過し、次いで、非極性有機溶媒、有機溶媒又は炭化水
素溶媒により洗浄し;及び
i. 4-[4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)1-ピペリジニル]-l-ヒドロキシブチル]-
α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の無水結晶型Xを70〜100℃で乾燥すること
が含まれる。
【0028】
粗フェキソフェナジンは、メタノール、エタノール又はイソプロパノール、好ましくは
メタノールのようなCl-C3アルカノール中で再結晶することができる。
【0029】
本明細書において言及される非極性有機溶媒は、キシレン又はトルエン又は(C6-C9)ア
ルキル、例えば、n-ヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン又はシクロヘキサ
ンである。溶媒の混合物を使用することができる。トルエンが好ましい溶媒である。有機
溶媒は、(Cl-C4)アルキルアセテートであり、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及
び酢酸ブチルから選択され、好ましくは、酢酸エチルである。
【0030】
本明細書において言及される好適な塩酸を含有する溶媒は、メタノール、エタノール、
イソプロパノール又はt-ブタノールから選択され、好ましくは、イソプロパノールである
。
【0031】
粗フェキソフェナジン対Cl-C3アルカノールの比は、1:10〜20である。工程bのフェ
キソフェナジン対溶媒の比は、1:10〜15である。
【0032】
炭化水素溶媒は、ヘキサン又はシクロヘキサンから選択され、好ましくは、シクロヘキ
サンである。
【0033】
上述した方法により得られるの型Xは、
・約180〜188℃の範囲の目視による融点により(毛細管);
・示差走査熱量測定法により測定した約180〜189℃の融解吸熱により;
・及び表2に本質的に示すX線粉体回折パターンにより同定することができる。
【表2】
【0034】
本発明は、単一の溶媒のみを必要とする結晶化方法により、純粋なフェキソフェナジン
型Aを製造するための改良された方法を提供する。この溶媒は、回収及び再利用すること
ができ、もって、この方法を費用有効性があり、かつ環境に易しくする。
【0035】
本発明のフェキソフェナジンの新規な多形相型は、所望の場合には、その薬学的に許容
し得る塩のいずれかに転換することができる。
【0036】
本発明により得られるフェキソフェナジン及びその塩酸塩の両者は、純粋であり、処方
によく適合していることは言及に値する。ほとんどの薬学物質処方方法は、自由に流動す
る高い融点固形物である活性物質の使用により容易になる。本発明のフェキソフェナジン
塩酸塩X型及び無水結晶型Aは、高融点固形物であり、処方に非常に好適である。
(例)
【0037】
本発明を以下の例により説明するが、特許請求の範囲の有効な範囲を限定するものでは
ない。
【0038】
参照例−粗フェキソフェナジンの調製
メタノール(600 ml)中のメチル4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル) l-ピペリ
ジニル]-l-オキソブチル]-α,α-ジメチルベンゼンアセテート塩酸塩及びメチル3-[4- [
4 (ヒドロキシジフェニルメチル)1-ピペリジニル]-1-オキソブチル]-ジメチルベンゼンア
セテート塩酸塩(100 g)の混合物の溶液に、水性水酸化ナトリウム (132 mlの水中の水産
化ナトリウム36.4g)を添加する。混合物を加熱し、約2〜4時間還流する。反応の完了
は、TLC法によりモニターし、完了したら、反応混合物を周囲の温度まで冷却し、ホウ水
素化ナトリウム(6.8g)を添加して完了する。反応混合物を50〜60℃に加熱し、約14時間
同じ温度に維持し(反応の完了は、TLC法によりモニターする)、続いて、周囲の温度ま
でに冷却し、炭素処理により完了する。炭素処理の後に得られた透明なろ液からメタノー
ルを除去し、次いで、水(300 ml)及びアセトン(200ml)を添加する。次いで、反応混合物
のpHを酢酸で〜6に調節し、5時間攪拌し、次いで、ろ過し、その後、水洗(200ml)し
、粗フェキソフェナジンを得する。
【0039】
収量:72g
【0040】
例1
純粋なフェキソフェナジンの調製
メタノール (4000ml)中の粗フェキソフェナジン溶液(500 g; 参照例により調製)を1時
間還流し、次いで、反応混合物を室温に冷却する。得られた沈殿した純粋なフェキソフェ
ナジンをろ過し、メタノール (250 ml)で洗浄する。メタノール中の繰り返される再結晶
化により、所望の純度の純粋なフェキソフェナジンが得られた。
【0041】
HPLCによる純度99.85% ; メタ異性体 < 0.1%
【0042】
例2
工程1
純粋なフェキソフェナジンからの型Aの調製
トルエン(1800ml) 中の純粋なフェキソフェナジン(180 g)を共沸的に2時間半還流す
る。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、約40分間攪拌する。この工程の完了後、反応
混合物をろ過し、トルエン(180ml)で洗浄し、得られたフェキソフェナジン型Aを、周囲の
圧力下に一定重量になるまで80〜85℃で乾燥する。
【0043】
収量179.2g: M. R (融解範囲)220-224 ℃。
【0044】
工程2
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
フェキソフェナジン型A (170 g ; 工程1により調製)に、トルエン(1700 ml)を添加し
、その後、イソプロパノール 塩酸 (イソプロピルアルコールに塩酸をパージすることに
より調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次いで、反応集合体を10時間15分間攪拌
する。得られた固形物をろ過し、トルエン(170 ml)で洗浄し、真空下に75〜80℃で乾燥す
る。このようにして得られた固形物(140g)を酢酸エチル (2800ml)中で約1時間還流する。
次いで、反応混合物を室温にまで冷却し、1時間30分間攪拌する。反応集合体をろ過し、
酢酸エチル(140ml)で洗浄する。周囲の圧力下に一定重量になるまで78〜85℃で乾燥する
と、所望の型Xのフェキソフェナジン塩酸塩が得られる。
【0045】
収量 129.6g: M. R 183〜187℃
【0046】
例3
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
フェキソフェナジン型A(95 g; 例2の工程1により調製)に、トルエン(950ml)を添加し
、その後、イソプロパノール 塩酸 (イソプロピルアルコールに塩酸をパージすることに
より調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次いで、反応集合体を2時間45分間攪拌す
る。次いで、反応集合体をろ過し、トルエン(95 ml)で洗浄し、固形物を単離し、これを
周囲の圧力下に一定重量になるまで80〜85℃で乾燥する。
【0047】
上で得られた固形物の一部分を乾燥機内に維持し、100-mbar圧力で141〜149℃で3時間
半残存有機溶媒を除去することにより、所望の型Xのフェキソフェナジン塩酸塩(M. R183
〜188℃)が得られた。
【0048】
例4
フェキソフェナジン塩酸塩型Xの調製
純粋なフェキソフェナジン(50 g)に、トルエン(500 ml)を添加し、混合物を約3時間共
沸的に還流する。次いで、反応集合体を室温にまで冷却し、イソプロパノール塩酸 (イソ
プロピルアルコールに塩酸をパージすることにより調製)をゆっくりと添加し、pHを2に
する。次いで、反応集合体を約15時間半攪拌する。分離した固形物をろ過し、トルエン(5
0 ml)で洗浄し、乾燥する(収量43.3 g)。この固形物の一部分(42g)を酢酸エチル(420ml)
に懸濁し、約1時間還流する(この操作は、残留有機溶媒の除去のために行った。)。次い
で、懸濁液を室温にまで冷却し、20分間攪拌する。反応集合体をろ過し、酢酸エチル (42
ml)で洗浄する。所望のフェキソフェナジン塩酸塩型Xを90〜96℃で一定重量にまで乾燥す
る。
【0049】
収量39 g:M. R 183〜188 ℃
【0050】
例5
トルエン(1000ml)中の純粋なフェキソフェナジン(例1により調製; 100 g)を、3〜4時
間共沸的に還流する。次いで、反応混合物を室温にまで冷却し、約15〜30分間攪拌する。
引き続き、反応混合物をろ過しトルエン(100ml)で洗浄し、得られたフェキソフェナジン
型Aを、100℃よりも低い温度で一定重量にまで乾燥する。
【0051】
収量 95 g
【0052】
酢酸エチル及びイソプロパノール (900:100 ml)の混合物に、フェキソフェナジン型A(1
00 g; 上記手順により調製)を添加し、その後、イソプロパノール塩酸 (イソプロピルア
ルコールに塩酸をパージすることにより調製)をゆっくりと添加し、pHを2にする。次い
で、反応集合体をろ過し、型Xの4- [4- [4- (ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジ
ニル]-1ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸塩酸塩の数個の結晶をろ液に添
加する。次いで、反応混合物を2〜4時間攪拌する。得られた固形物をろ過し、シクロヘキ
サン (200ml)で洗浄し、一定重量にまで100℃よりも下の温度で乾燥し、所望の型Xのフ
ェキソフェナジン塩酸塩が得られる。
【0053】
収量100 g
【0054】
例2〜4での型Aのフェキソフェナジン及び上述した結晶型Xのフェキソフェナジン塩酸
塩について、それらの構造及び分析データ、すなわち、粉体X-線回折、示差走査熱量測定
及び赤外吸収スペクトルを調べた。
【0055】
得られた結果は、上で考察し、それぞれの図面は本明細書に添付する(図1〜6)。
【0056】
本出願に示されるX-線回折パターンは、波長λ=1.54A0のCuK-放射源を有するRigakuD
/Max-2200 X-線粉体回折メータを用いて得られた。試料は、3〜45℃2θの間で走査され
た。
【0057】
赤外吸収スペクトルは、Perkin Elmer 1650 FT-IR スペクトロフォトメータ上で、KBr
懸濁物として固形状態で記録された。
【0058】
示差走査熱量測定分析は、Shimadzu DSC-50上で行われた。試料は、30ml/分の窒素パー
ジとともに、5℃/分の加熱速度で250℃まで加熱した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1A】図1Aは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。縦軸は、強度(CPS)、横軸は、2シータ(度)である。得られた有意なd値(A0)は、23.11,11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33, 5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20,4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図1B】図1Bは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33,5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図1C】図1Cは、フェキソフェナジンの型Aの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、23.11, 11.50, 8.29, 7.03, 6.67, 6.16, 6.02, 5.75, 5.43, 5.33,5.07, 4.69, 4.63, 4.44, 4.20, 4.15, 4.07, 3.55, 及び3.44である。
【図2】図2は、上述したフェキソフェナジンの型Aの臭化カリウム中の特徴的赤外吸収スペクトルである。[縦軸は、透過(%); 横軸は、波長 (cm-1)である。]。型Aの特徴的ピークは、3421,3058, 2936, 2366, 2343, 1571, 1509, 1490, 1447, 1390, 1334, 1167, 1097, 1073,1018, 960, 916, 849, 745, 706, 666, 637, 617, 541に示されている。
【図3】図3は、先に述べたフェキソフェナジンの型Aの示差走査熱量測定グラフの特徴である。縦軸は、mWであり、横軸は、温度(℃)である。DSC熱グラフには、約230.38℃に融解吸熱が示されている。
【図4A】図4Aは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。縦軸は、強度(CPS)を表し、横軸は、2シータ(度)を表す。得られた有意なd値(A0)は、16.05,12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70, 4.55, 4.37, 4.32,4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図4B】図4Bは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、16.05, 12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70,4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図4C】図4Cは、フェキソフェナジン塩酸塩の型Xの特徴的X線粉体回折パターンである。得られた有意なd値(A0)は、16.05, 12.98, 8.29, 8.06, 6.25, 5.97, 5.54, 5.41, 4.89, 4.70,4.55, 4.37, 4.32, 4.15, 4.03, 3.80, 3.67, 3.57, 3.42である。
【図5】図5は、先に述べたフェキソフェナジン塩酸塩の臭化カリウム中の特徴的赤外吸収スペクトルである。[縦軸は、透過(%); 横軸は、波長 (cm-1)である。]。型Xの特徴的ピークは、3370,2965, 2652, 1717, 1472, 1448, 1250, 1158, 1100, 1068, 995, 962, 840, 747,703, 638, 560に示されている。
【図6】図6は、先に述べたフェキソフェナジン塩酸塩の型Xの示差走査熱量測定グラフの特徴である。縦軸は、mWであり、横軸は、温度(℃)である。DSC熱グラフには、約186.56℃に融解吸熱が示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書等に記載されるような、新規な結晶型。
【請求項1】
本明細書等に記載されるような、新規な結晶型。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2008−94848(P2008−94848A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289084(P2007−289084)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【分割の表示】特願2003−505320(P2003−505320)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【分割の表示】特願2003−505320(P2003−505320)の分割
【原出願日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【Fターム(参考)】
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