説明

新規な抗酸菌生育阻害剤

【課題】抗酸菌生育阻害剤を提供する。
【解決手段】


なお、Xは、−CH−P(=O)(OY)、−Z−S(=O)−OY、−Z−P(=S)(OY)、Xは、−Z−P(=O)(OY)、−Z−S(=O)−OY、−Z−P(=S)(OY)、Yは、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基り、Zは、O、S、またはCHである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗酸菌生育阻害剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗酸菌は、マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属する真正細菌の総称であり、その呼称は、細胞壁に多量の脂肪酸を含むためグラム染色法等の通常の染色法に対し難染性を示すが、強力に染色された後は、酸アルコール処理による脱色に抵抗性を示すことに因んでいる。抗酸菌の中には、ヒトや動物に対する病原性を有するものが多数存在し、その代表例としては、結核菌(Mycobaterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)、非結核性抗酸菌(病原性のものとしては、Mycobacterium avium、Mycobacterium kansasii等)が挙げられる。抗酸菌により引き起こされる疾患には、根治が困難なものや、最悪の場合には死に至るものも多いため、有効な薬剤の開発が重要な課題である。
【0003】
従来、結核の治療には、ストレプトマイシン、カナマイシン等の抗結核薬が用いられている。非結核性抗酸菌感染症の治療には、抗結核薬と、クラリスロマイシン、ニューキノロン等の一般抗菌薬とを組み合わせた多剤併用療法が用いられている。しかし、これらの薬剤療法には、薬剤耐性の発現、副作用等の問題がある。また、適用可能な薬剤の種類が限定されているため、副作用が生じた場合に代替可能な薬剤がなく、減感作を行いながら投与を続行せざるを得ないという問題が生じる場合もある。
【0004】
抗酸菌の細胞壁の構成成分であるリポアラビノマンナン(LAM)ならびにその前駆体であるホスファチジルイノシトールマンノシド(PIM)およびホスファチジルイノシトール(PI)が、抗酸菌の生育や宿主への感染の成立において重要な役割を果たしていることが近年の研究で明らかになった(例えば、非特許文献1および2参照)。そこで、抗酸菌におけるこれらの細胞壁構成リン脂質の生合成を阻害する化合物が、抗酸菌に由来する疾患の新規な治療薬として注目を集めている。
【0005】
例えば、特許文献1には、抗酸菌の細胞壁の構成成分であるリポマンナン(LM)および/またはリポアラビノマンナン(LAM)の生合成を阻害する物質のスクリーニング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−185163号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Morita, Y. S., Patterson, J. H., Billman-Jacobe, H., and McConville, M. J. Biochem J 378, 589-597 (2004)
【非特許文献2】Morita, Y. S., Velasquez, R., Taig, E., Waller, R. F., Patterson, J. H., Tull, D., Williams, S. J., Billman-Jacobe, H., and McConville, M. J. J Biol Chem 280, 21645-21652 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LMおよび/またはLAMの生合成経路は複数の反応からなるが、特許文献1記載のスクリーニング方法では、特定の反応に限定せず、そのいずれかを阻害する物質全般を広くスクリーニング対象としているため、スクリーニング効率が低いという課題が存在する。 また、LMおよびLAMの前駆体であるホスファチジルイノシトール(PI)の生合成経路には、抗酸菌と真核生物に共通する反応も存在するため、特許文献1記載のスクリーニング方法で得られる化合物の中には、治療対象である真核生物の生理機能にも悪影響を及ぼすものが含まれるおそれがある。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、抗酸菌の生育を選択的に阻害し、ヒト等の真核生物に対しては無害である抗酸菌生育阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路について鋭意検討を行った結果、真核生物におけるそれとは一部異なる反応経路を有することを新たに見いだし、その反応をターゲットとすることにより、真核生物の生理機能に悪影響を与えることなく抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤の候補化合物を高効率でスクリーニングする方法を確立し、これを用いて新規な抗酸菌生育阻害剤を発見するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の態様に係るものである。
[1] 下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、並びに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する抗酸菌生育阻害剤。
【0012】
【化1】

【0013】
なお、上記式(I)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
Yは、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基であり、
Zは、O、S、またはCH2である。
【0014】
[2] 下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[1]記載の抗酸菌生育阻害剤。
【0015】
【化2】

[3] 上記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物ならびに該化合物のエナンチオマーの炭素数1以上10以下の直鎖または分岐鎖アルキル基、あるいはシクロアルキル基を有する一級アンモニウム塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有する上記[2]記載の抗酸菌生育阻害剤。
[4] 前記一級アンモニウム塩がシクロヘキシルアンモニウム塩である上記[3]記載の抗酸菌生育阻害剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒト等の真核生物に対しては無害であり、抗酸菌の生育を選択的に阻害する抗酸菌生育阻害剤およびそれを有効成分とする医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】Mycobacterium smegmatisの増殖能に及ぼす抗酸菌生育阻害剤の効果を検討するために行ったコロニー増殖試験の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る抗酸菌生育阻害剤(以下、「抗酸菌生育阻害剤」と略称する場合がある。)について説明する。
本実施の形態に係る抗酸菌生育阻害剤は、下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有している。
【0019】
【化3】

【0020】
なお、上記式(I)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
Yは、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはH、メチル基またはエチル基であり、
Zは、O、S、またはCH2、好ましくはOまたはCH2である。
【0021】
抗酸菌生育阻害剤として、上記一般式(I)または(II)で表される化合物、またはそれらのエナンチオマーの、医薬として許容される塩であってもよい。塩の具体例としては、NH4塩、一級、二級、三級または四級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられるが、抗酸菌の細胞膜透過性を向上させるために、疎水性を有し、あまり嵩高くないシクロヘキシルアンモニウム塩等の、炭素数1以上10以下の直鎖または分岐鎖アルキル基、あるいはシクロアルキル基を有する一級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
【0022】
従来、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路は、真核生物におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路と同様、下記の(1)〜(3)の反応(化4参照)からなると考えられていた(例えば、Salman, M., Lonsdale, J. T., Besra, G. S., and Brennan, P. J., Biochim. Biophys. Acta 1436, 437-450 (1999)参照)。
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2)1L−myo−イノシトール1−リン酸 →
myo−イノシトール+リン酸
(3)myo−イノシトール+CDP−ジアシルグリセロール →
ホスファチジルイノシトール(PI)+CMP
【0023】
【化4】

【0024】
なお、式中、R1およびR2は、それぞれ飽和または不飽和炭化水素基を表す。生体内において、ジアシルグリセロールはホスファチジン酸を経由して合成されるため、通常、R1は飽和炭化水素基であり、R2は不飽和炭化水素基である。
【0025】
しかしながら、本発明者は、抗酸菌におけるホスファチジルイノシトールの生合成経路について再検討を行った結果、正しくは、下記の(1)、(2’)および(3’)の反応(化5参照)からなることを見いだした。
(1)グルコース6−リン酸 → 1L−myo−イノシトール1−リン酸
(2’)1L−myo−イノシトール1−リン酸+CDP−ジアシルグリセロール → ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)+CMP
(3’)PIP → ホスファチジルイノシトール(PI)+リン酸
【0026】
【化5】

【0027】
上記の一般式(I)または(II)で表される化合物は、上記(2’)の反応(PIPの合成)を選択的に阻害するため、抗酸菌の宿主となる真核生物のPIの生合成に悪影響を与えることなく、抗酸菌におけるPIPの生合成を選択的に阻害することで、抗酸菌の生育を阻害できる。PIPの合成の阻害機構については必ずしも明らかではないが、上記の化合物が、PIP合成酵素(抗酸菌に特有なもので、真核生物には存在しない。)の基質である1L−myo−イノシトール1−リン酸と構造が類似することから、これらの化合物がPIP合成酵素の阻害剤として作用していると考えられる。真核生物に存在し、上記の反応(3)を触媒するCDP−ジアシルグリセロール−イノシトール3−ホスファチジルトランスフェラーゼ(EC 2.7.8.11)はPIP合成酵素とは異なるものである。
【0028】
上記の一般式(I)または(II)で表される化合物のうち、抗酸菌生育阻害剤として好ましく用いることができる化合物としては、下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物が挙げられる。
【0029】
【化6】

【0030】
これらの化合物は、任意の方法を用いて合成できるが、例えば、上記の式(I)−1および(I)−2で表される化合物は、下記のスキームに従い合成することができる。なお、これらの化合物は1−D体および1−L体の混合物として得られるが、下記のスキームでは一方の異性体のみ記載している(以下同様である)。
【0031】
【化7】

【0032】
抗酸菌生育阻害剤の標的となる抗酸菌の種類について特に制限はないが、好ましくは、ヒトや動物に対し病原性を有するものであり、その具体例としては、結核菌(Mycobaterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leprae)、非結核性抗酸菌(Mycobacterium avium、Mycobacterium kansasii等)が挙げられる。
【0033】
抗酸菌生育阻害剤におけるPIP合成酵素阻害活性を評価する方法としては、抗酸菌生育阻害剤の存在下および非存在下でPIP合成酵素の活性を測定し、それぞれの場合における酵素活性の比から阻害活性を評価する方法が挙げられる。抗酸菌生育阻害剤におけるPIP合成酵素阻害活性をin vitroで評価するための評価系(アッセイ系)に用いられるPIP合成酵素は、抗酸菌の菌体から単離精製したものであってもよく、菌体をホモジナイズしたものをそのまま用いてもよく、あるいは、PIP合成酵素をコードする遺伝子を大腸菌等に導入し発現させたものを用いてもよい。
抗酸菌としては、治療対象となる疾患の原因となる抗酸菌を用いてもよいが、M. smegmatis等の病原性を有しない抗酸菌を用いてもよい。
【0034】
酵素活性(反応速度)または被検化合物の阻害活性は、一定時間後に反応液中に含まれる基質濃度または生成物(PIP)濃度により求めることができる。被検化合物の存在下および非存在下にLineweaver-Burkプロットの比較より、被検化合物の阻害機構を判定することもできる。
基質濃度または生成物濃度は、基質にラジオアイソトープを用いた生成物の放射能測定、高速液体クロマトグラフィー等の任意の公知の手段を用いて行うことができる。
【実施例】
【0035】
本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
【0036】
[1]1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトールおよび1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール
上記のスキーム(化7参照)にしたがって標記化合物を合成した。
【0037】
1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0038】
【化8】

【0039】
窒素雰囲気下、室温でmyo−イノシトール(25g、138.8mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)溶液に2,2−ジメトキシプロパン(75mL、612.1mmol)とp−トルエンスルホン酸一水和物(0.5g、2.6mmol)を加え、100℃で2時間攪拌した。溶液を氷浴で冷やし、トリエチルアミン(5mL)を加えた。濾過した後、トルエン(12.5mL)を加え、40℃で減圧濃縮し低沸点溶媒を取り除いた。そのN,N−ジメチルホルムアミド(100mL)溶液にピリジン(75mL、929.2mmol)を加えた後、氷浴で冷やしながら塩化ベンゾイル(100mL、860.8mmol)を15分かけて一滴ずつ滴下し2時間攪拌した。析出した固体を吸引濾過し、ピリジン、水、アセトン、ジエチルエーテルの順で洗浄することで1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール1を白色固体16.2g(収率25%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 1.30 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 1.64 (s, 3H), 3.73 (dd, J = 11.0, 9.4Hz, 1H), 4.36-4.41 (m, 2H), 4.79 (dd, J = 4.6, 4.6Hz, 1H), 5.43 (dd, J = 10.6, 4.4Hz, 1H), 5.61(dd, J = 11.1, 6.7Hz, 1H), 7.43-7.49(m, 4H), 7.55-7.62 (m, 2H), 8.09-8.16 (m, 4H)
【0040】
2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0041】
【化9】

【0042】
窒素雰囲気下、室温で水酸化ナトリウム(0.41g、10.17mmol)のメタノール(21.7mL)溶液に1,4−ジ−O−ベンゾイル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール1(1.02g、2.17mmol)を加え、5時間過熱還流した。溶液を氷浴で冷やし、緩衝溶液を加えて反応を止めた。ジクロロメタンで10回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンと酢酸エチルを用いて再結晶することで2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール2を結晶434.4mg(収率77%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.38 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.48 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 2.34 (d, J = 8.9Hz, 1H), 2.40(d, J = 3.0Hz, 1H), 3.33 (dd, J = 10.6, 9.4Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 3.88-3.93 (m, 1H), 4.01-4.09 (m, 2H), 4.49 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
【0043】
1−O−ベンジル-2,3:5,6-ジ−O−イソプロピリデン−myo-イノシトール
【0044】
【化10】

【0045】
窒素雰囲気下、室温で2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール2(3.13g、12.0mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(120mL)溶液に水素化ナトリウム(0.58g、24.0mmol)を加え、1時間攪拌した。その溶液にベンジルブロミド(1.44mL、12.0mmol)を加え室温で2時間攪拌し、緩衝溶液を加えて反応を止めた。酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで1−O−ベンジル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール3を白色固体2.21g(収率53%)で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 2.38 (d, J = 2.8Hz, 1H), 3.27 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, J = 10.2, 4.2Hz, 1H), 3.87-3.90 (m, 1H), 3.91-3.95 (m, 1H), 4.05 (dd, J = 9.8, 9.6Hz, 1H), 4.32 (dd, J = 4.4, 4.4Hz, 1H), 4.81 (d, J = 12.6Hz, 1H), 4.89 (d, J = 12.6Hz, 1H), 7.26-7.43 (m, 5H)
【0046】
1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0047】
【化11】

【0048】
アルゴン雰囲気下、室温で1−O−ベンジル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール3(1.39g、3.96mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(8mL)溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU、1.19mL、7.92mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.048g、0.396mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(0.896g、5.94mmol)を加え、60℃で3時間攪拌した。緩衝溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製することで1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール4を1.80g(収率98%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.09 (s, 3H), 0.89 (s, 9H) 1.33 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 3.19 (dd, J = 9.5, 9.4Hz, 1H), 3.72-3.81 (m, 2H), 3.88 (dd, J = 5.0, 4.9Hz, 1H), 3.98 (dd, J = 9.9, 9.6Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 4.6, 4.5Hz, 1H), 4.80 (d, J = 12.5Hz, 1H), 4.87 (d, J = 12.5Hz, 1H), 7.26-7.42 (m, 5H)
【0049】
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0050】
【化12】

【0051】
水素雰囲気下、室温で1−O−ベンジル−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール4(1.80g、3.88mmol)のエタノール(4.4mL)溶液に水酸化パラジウム(0.180g,10wt%),トリエチルアミン(0.674、0.4.84mmol)を加え、3日間攪拌した。溶液をセライトろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール5を1.43g(収率99%),白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 3H), 0.11 (s, 3H), 0.91 (s, 9H) 1.36 (s, 3H), 1.41 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 2.30 (d, J = 8.9Hz, 1H), 3.25 (dd, J = 10.3, 9.5Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 9.9, 9.7Hz, 1H), 3.79 (dd, 10.5, 6.1Hz, 1H), 3.95-4.00 (m, 1H), 4.02 (dd, J = 5.8, 5.3Hz, 1H), 4.43 (dd, J = 4.8, 4.8Hz, 1H)
【0052】
(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン
【0053】
【化13】

【0054】
アルゴン雰囲気下、0℃でN−クロロスクシンイミド(1.01g、7.56mmol)のトルエン(8mL)溶液にジメチルスルフィド(0.56mL、7.56mmol)を加え、−25℃まで温度を下げた。−25℃で混合溶液に4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール5(0.470g、1.26mmol)のトルエン(4mL)溶液を一滴ずつ加え、−25〜−35℃で3時間攪拌した。その溶液にトリエチルアミン(1.57mL、11.30mmol)を加えた後、冷却浴を外し、室温にもどした。0℃で飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて反応を止め、エーテルで抽出し、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン6を384.6mg(収率<82%)、ブラウンオイルで得られた。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.14 (s, 3H), 0.16 (s, 3H), 0.93 (s, 9H) 1.34 (s, 3H), 1.44 (s, 3H), 1.47 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.64 (dd, J = 11.2, 9.9Hz, 1H), 4.14 (dd, J = 9.8, 4.3Hz, 1H), 4.24-4.30 (m, 2H), 4.57 (d, J = 11.2Hz, 1H)
【0055】
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール
【0056】
【化14】

【0057】
アルゴン雰囲気下、0℃でメチレンジリン酸ジエチル(2.6mL、4.12mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液にn−ブチルリチウム(1.58Mヘキサン溶液、2.6mL、4.12mmol)を加え、0.5時間攪拌した。その混合溶液に(2,3,5/4,6)−4−O−tert−ブチルジメチルシリル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキサノン6(384.6mg、1.03mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を一滴ずつ加え、0℃で2時間攪拌した。緩衝溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、水と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール7を389.0g(収率74%),黄色のオイルで得た。
(major isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.11 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.91(s, 9H), 1.30 (dt, J = 7.1,1.0Hz, 6H), 1.36 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 1.49 (s, 6H), 3.44 (dd, J = 10.1, 10.0Hz, 1H), 3.88 (dd, J = 10.0, 5.9Hz, 1H), 4.04-4.18 (m, 5H), 4.38-4.42 (m, 1H), 4.46 (d, J = 5.5Hz, 1H), 5.90 (dd, J = 13.9, 1.7 Hz, 1H),
(minor isomer) 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.09 (s, 6H), 0.88(s, 9H), 1.32 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.38 (s, 3H), 1.53 (s, 3H), 1.55 (s, 3H), 3.75 (dd, J = 7.0, 5.5Hz, 1H), 4.04-4.26 (m, 5H), 4.54-4.57 (m, 1H), 4.77 (d, J = 7.8Hz, 1H), 5.22-5.25 (m, 1H), 6.01 (dd, J = 15.2, 1.6Hz, 1H)
【0058】
4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0059】
【化15】

【0060】
水素雰囲気下、室温で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−ジエトキシホスホスホリルメチリデン−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−2,3,4,5,6−シクロヘキサンペントール7(35.9mg、0.071)の酢酸エチル(1.0mL)溶液に酸化白金(7.18mg、20wt%)を加え、21時間攪拌した。溶液をセライトろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することで4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ-1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8を29.5g(収率81%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 0.10 (s, 6H), 0.90 (s, 9H), 1.32 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.34 (s, 3H), 1.37 (s, 3H), 1.39 (s, 3H), 1.46 (s, 3H), 2.12-2.19 (m, 2H), 2.26-2.36 (m, 1H), 3.26 (dd, J =10.2, 9.2Hz, 1H), 3.50 (dd, J = 10.7, 9.2Hz, 1H), 3.73 (dd, J = 10.3, 6.4Hz, 1H), 4.07-4.13 (m, 4H), 4.50 (dd, J = 4.7, 4.6Hz, 1H)
【0061】
1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール
【0062】
【化16】

【0063】
アルゴン雰囲気下、0℃で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8(14.9mg、0.029mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1mL)にテトラブチルアンモンミウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液、0.087mL、0.087mmol)を加え、0℃で0.5時間攪拌した後、室温で5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を止め、酢酸エチルで2回抽出し、水と飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムをろ過し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルのみ、Rf=0.08)で精製することで1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール9を10.5g(収率92%),黄色のオイルで得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ : 1.34 (t, J = 7.1Hz, 6H), 1.35 (s, 3H), 1.42 (s, 3H), 1.44 (s, 6H), 1.49 (s, 3H), 2.14-2.20 (m, 2H), 2.33-2.42 (m, 1H), 3.35 (dd, J = 10.5, 9.1Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 10.8, 9.3Hz, 1H), 3.83 (dd, J = 10.6, 6.7Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 6.6, 5.2Hz, 1H), 4.07-4.16 (m, 4H), 4.56 (dd, J = 4.6, 4.3Hz, 1H)
【0064】
1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール
【0065】
【化17】

【0066】
窒素雰囲気下、室温で1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール9(172.8mg、0.44mmol)のアセトニトリル(4.4mL)溶液に乾燥させたヨウ化ナトリウム(426.7mg、2.85mmol)とトリメチルシリルクロリド(0.36mL、2.85mmol)を加え、遮光して67時間攪拌した。水を加えて反応を止め、水層をヘキサンとエーテルで洗浄し減圧濃縮し、陽イオン交換カラムを行った。水を凍結乾燥することで1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトール10を45.0mg(<34%),白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.80-1.95 (m, 2H), 2.02-2.15 (m, 1H), 3.26-3.37 (m, 2H), 3.51 (dd, J = 9.9, 2.9Hz, 1H), 3.57 (dd, J = 9.8, 9.0Hz, 2H), 4.17 (dd, J = 2.5, 2.0, 1H)
【0067】
1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール
【0068】
【化18】

【0069】
窒素雰囲気下、室温で4−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−2,3:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−myo−イノシトール8(135.5mg、0.266mmol)の溶液(溶媒 トリフルオロ酢酸:水=2:1)を3時間攪拌し、減圧濃縮し凍結乾燥することで1−デオキシ−1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトール11を83.6mg(収率quant)、白色固体で得た。
1H-NMR (400MHz, D2O) δ : 1.33 (t, J = 7.0Hz, 6H), 1.81-1.90 (m, 1H), 2.06-2.14 (m, 1H), 2.17-2.31 (m, 1H), 3.27-3.38 (m, 2H), 3.56 (dd, J = 9.6, 2.4Hz, 1H), 3.61 (dd, J = 9.3, 9.2Hz, 1H), 4.06-4.22 (m, 5H)
【0070】
上記の[1]で合成した1−デオキシ−1−ジヒドロキシホスホリルメチル−myo−イノシトールおよび1−ジエトキシホスホリルメチル−myo−イノシトールを含む下記の化合物を用いて、PIP合成酵素の阻害活性および抗酸菌生育阻害活性を検討した。
【0071】
【化19】

【0072】
[2]PIP合成酵素の阻害活性の測定
(1)遺伝子組換え操作によるPIP合成酵素の発現
結核菌(M.tuberculosis)のAIP合成酵素と同一のアミノ酸配列を有するBCG(M.bovis)のPIP合成酵素の遺伝子を組み込んだプラスミド(pET21a-BCG-PIPS)を構築し、これを大腸菌(E.coli)に導入し、PIP合成酵素を発現させた。
【0073】
(2)酵素活性測定
CDP−ジアシルグリセロールと[14C]イノシトール1−リン酸に緩衝液を加え、酵素として(1)にしたがいPIP合成酵素を発現させたE.coliのホモジネートを加えて反応させた後、有機溶媒可溶性生成物の放射能を測定した。
【0074】
(3)PIP合成酵素活性測定
0.2mM CDP−ジアシルグリセロール、0.04mM [14C]イノシトール1−リン酸(8Ci/mol)(8nmol、2381Bq/アッセイ)、50mM Bicine緩衝液(pH8.5)、5mM 2−メルカプトエタノール、10mM MgCl2、1.0%CHAPS、酵素溶液(タンパク量20μg)(全容量0.2mL)を37℃で10分間反応させた。(脂質基質は[14C]イノシトール1−リン酸と1.0%CHAPSと酵素溶液以外の反応溶液中で室温、20分間超音波処理して懸濁した。)反応後、0.1M HCl/メタノールと1M MgCl2(pH2)を加え、Bligh−Dyer法の比率で水層とクロロホルム層に分画し、クロロホルム可溶性生成物の放射能を測定した。
【0075】
[3]抗酸菌生育阻害活性の検討
1ウェルに×2普通ブイヨン培地Nutrient broth+100μg/mLアンピシリンを100μL、2ウェルから12ウェルまではNutrient broth+50μg/mLアンピシリンを100μL加える。1ウェルに阻害剤を100μL加え、10ウェルまで2倍段階希釈した(各ウェルの阻害剤濃度は次のとおりである。1ウェル:10mM、2ウェル:5mM、3ウェル:2.5mM、4ウェル:1.25mM。以下同様。)。Mycobacterium smegmatis mc2155(1%小川培地3日培養菌)をPBSにケン濁後5μmフィルターを通し単個菌(3.9×107CFU/mL)にしたものを菌液とし、10μLずつ1〜11ウェルに加える。これをプレートミキサーに掛け、37℃で3日間培養後、判定を行った(表1)。
抗酸菌は菌同士が接着しプレートの底に沈むため、96ウェルマイクロプレートの結果を濁度OD600で示すことは困難である。そこで、各ウェルの菌液を採取し、寒天培地でのコロニー形成能をみた。具体的には、96ウェルマイクロプレートでの結果判定後、滅菌つまようじを用い、各ウェルの液を混和後、普通寒天培地へ接種し37℃で4日間培養した(図1)。
【0076】
[4]結果
結果を表1および図1に示す。表1は各種化合物のPIP合成酵素相対活性およびM.smegmatisの増殖阻害試験の結果である。「+」の数は、増殖の程度を、「−」は菌の増殖が認められなかったことを示す。また、図1は、増殖阻害試験に使用したマイクロプレートより、普通寒天培地に菌を接種し、コロニー形成能を検討した結果を示す写真である。図1において明らかなように、マイクロプレート法の増殖阻害試験結果(表1)と同様の結果が得られた。
いずれの化合物についても、in vitroでPIP合成酵素活性の阻害を示したが、Ino−C−COOHおよびDL−Ino−C−P(OH)2は、M.smegmatisの増殖を阻害することができなかった。後者については、シクロヘキシルアンモニウム塩とすることで、高い増殖阻害活性を示すことが認められた。シクロヘキシルアンモニウム塩酸塩のみを20mM加えてもM.smegmatisの増殖が認められた。従って、疎水性カチオンとの塩にすることにより、DL−Ino−C−P(OH)2の細胞膜透過性が増大し、菌体内への取り込みが促進されたためと考えられる。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)および(II)で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸菌生育阻害剤。
【化1】

なお、上記式(I)においてX1は、−CH2−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
上記式(II)においてX2は、−Z−P(=O)(OY)2、−Z−S(=O)2−OY、−Z−P(=S)(OY)2からなる群より選択される基であり、
Yは、Hまたは炭素数1〜5のアルキル基であり、
Zは、O、S、またはCH2である。
【請求項2】
下記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物、該化合物のエナンチオマー、ならびに医薬として許容されるそれらの化合物の塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項1記載の抗酸菌生育阻害剤。
【化2】

【請求項3】
上記の式(I)−1、(I)−2、および(II)−1で表される化合物ならびに該化合物のエナンチオマーの炭素数1以上10以下の直鎖または分岐鎖アルキル基、あるいはシクロアルキル基を有する一級アンモニウム塩からなる群より選択される1または複数の化合物を有効成分として含有することを特徴とする請求項2記載の抗酸菌生育阻害剤。
【請求項4】
前記一級アンモニウム塩がシクロヘキシルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項3記載の抗酸菌生育阻害剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−246253(P2012−246253A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119506(P2011−119506)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(506087705)学校法人産業医科大学 (24)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】