説明

新規な担持された酸化反応物、それらの製造方法、およびその使用

本発明は、式(I):R−[Met(O)k]n−X(式中、Rは水素原子またはアミン官能基-保護基を表し、−[Met(O)]は、式の酸化されたメチオニン残基を表し、kは1または2であり、有機合成に使用する固体または可溶性の担体を表し、Xは、メチオニンを固定することができる、アミンまたはヒドロキシル、またはハロゲノ型の官能基に由来する基を表すが、但し、このメチオニンを固定できる官能基は、官能化されたアームまたはスペーサーにより担体から分離することができるものとし、nが1以上の整数である)で表される、担持された酸化反応物に関する。本発明は、上記式(I)の担持された酸化反応物の、特にペプチドおよび/またはタンパク質における、分子内ジスルフィドブリッジを形成するための使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な担持された酸化反応物に、それらの製造方法に、およびそれらの、分子内ジスルフィドブリッジを形成するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
担持された反応物の使用は、有機化学で、特に有機合成の自動化以来、急速に拡大している。担持された反応物は、反応後に、反応媒体から簡単な濾過により除去できるので、非常に大量に使用されている。中には、循環させ、再使用できるものもある。この場合、これらの担持された反応物は、長期間持続する開発および環境の保護に良く適合する。
【0003】
担持された反応物は、分子内反応を促進するのに特に有利である。事実、担持された反応物は、重合を最少に抑え、遙かに少量の溶剤を使用できるようにする「疑似希釈」の現象を引き起こすことが分かっている。
【0004】
ペプチドの合成は、担持された合成による。ペプチド合成は、今日、高度に自動化されており、ペプチド鎖の延長は、一般的に固体担体上で行われる。しかし、場合により、最終的な合成および処理工程は、ペプチド鎖を固体担体から剥離した後、溶液中で行われる。これは、ジスルフィドブリッジの形成に特に当てはまる。
【0005】
ペプチド分野におけるジスルフィドブリッジの大きな生物学的利点に注意すべきである。ペプチドの生物学的活性は、その一次構造に、即ちアミノ酸の配列に、およびその三次元的構造にも関連している。後者は、同じペプチド鎖内の様々な相互作用、例えば水素結合または疎水性相互作用、の存在により、および共有結合、例えばジスルフィドブリッジに関与する共有結合、の存在によっても、調整される。これらのジスルフィドブリッジの存在により、ペプチドは、それ自体を空間的に構造化し、様々な生理学的過程に関与するのに不可欠な生物学的活性を獲得する構造を採ることができる。
【0006】
通常、ジスルフィドブリッジの分子内形成には、高希釈条件および酸化体の存在が必要である。ジメチルスルホキシド(DMSO)は、これに最も一般的に使用されている酸化性反応物の一つである。この物質には、水溶性であるという利点がある。その大きな欠点の一つは、この物質を反応媒体から除去することであり、これには強真空下での蒸発を行うか、または繰り返し凍結乾燥することが必要である。さらに、反応中に発生するジメチルスルフィドは、揮発性で、毒性である。
【0007】
続いて、担持された酸化反応物の使用が、生物活性ペプチドの従来の合成に考えられたが、ジスルフィドブリッジを有するペプチドの様々な化学種の、自動化された合成にも計画された。担持された酸化反応物は、下記の多くの利点を示す、即ち
・ジスルフィドブリッジの形成は分子内反応であるので、これらの担持された反応物により、非常に希釈された条件で作業する必要性が回避され、溶剤の量を最少に抑え、小型化し、少量であることが多いロボットウェルの使用が可能になり、
・担持された反応物により、毒性で、不快臭がある、または揮発性の酸化体を使用せずに、非常に穏やかで、簡単な条件下で、ペプチドおよびタンパク質中にブリッジを得ることができ、
・担持された酸化反応物は、簡単に除去することができ、凍結乾燥または蒸発を必要とせず、自動化が非常に容易になり、
・担持された酸化反応物は、使用後に循環させ、再酸化させることができる。
【0008】
ジスルフィドブリッジの形成に効果的な担持された酸化反応物は、今日までほとんど開示されていない。ポリエチレングリコール-ポリスチレン(PEG−PS)型の固体担体上に固定された6-(メチルスルフィニル)ヘキサン酸は、Swern酸化反応によりケトンを合成するためのDMSOの良好な代替品であるが、ジスルフィドブリッジの形成には使用されていない。最初は遊離チオールの濃度を測定するために開発されたEllman試薬(5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香)酸またはDTNB)だけがジスルフィドブリッジの形成に、担持された反応物として採用されている(J. Peptide Res 63, 2004, p.303-312)。しかし、この試薬は高価であり、従来のDMSOを使用する溶液中酸化方法と比較してあまり効果的ではない。
【0009】
従って、少なくとも溶液で使用される反応物と同じ位効果的であり、容易に使用でき、安価である、新規な担持された酸化反応物が依然として求められている。
【発明の概要】
【0010】
本出願人は、固体または可溶性の担体上にある、特にペプチドにおけるジスルフィドブリッジ形成を促進できる、新規な酸化反応物の合成および使用方法を開発した。これらの反応物は、ジスルフィドブリッジを含むペプチドの従来の合成に使用できるが、ペプチド群(libraries)の平行合成にも使用できる(例えば96ウェルまたは384ウェルにおける)。これらの反応物は、使用が簡単であり、既存の反応物よりも、遙かに優れた条件下で酸化生成物を製造する。さらに、それらのコスト、および合成および使用が容易であることにより、ペプチドにおけるジスルフィドブリッジを形成するための反応物として特に適している。これらの反応物は、固体または液体担体上にグラフト化された一連の酸化されたメチオニンからなる。
【0011】
従って、本発明は、下記式(I):
R−[Met(O)k]n−X−● (I)
(式中、
Rは水素原子またはアミン官能基-保護基を表し、
Kは、1または2であり、
Metは、下記式:
【化1】

のメチオニン残基を表し、
[Met(O)k]が、下記式:
【化2】

の酸化されたメチオニン残基を表し、
●は、有機合成に使用される固体または可溶性の担体を表し、
Xは、メチオニンを固定することができる、アミンまたはヒドロキシル、またはハロゲノ型の官能基に由来する基を表すが、但し、前記メチオニンを固定できる官能基は、官能化されたアームまたはスペーサーにより前記担体から分離することができるものであり、
nは1以上の整数であり、
kは1または2である。)で表される酸化反応物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的には、用語「アミン官能基-保護基」は、ペプチド鎖のアミン基を好ましくない反応から保護する全ての置換基を意味する。この定義に入る様々な基は、広く知られており、例えば「Protective Groups In Organic Synthesis」、John Wiley & Sons, New York, 1981に記載されている。カルバメートの、アミドの、N-アルキル化誘導体の、アミノアセタールの、N-ベンジル誘導体の、イミンの、またはエナミンの形態にあるアミン官能基の保護を挙げることができるが、これらに限定するものではない。例えば、保護基の中で、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルコキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニルオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アリールアルキル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、アリールアミノカルボニル、または直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルアミノカルボニルを挙げることができ、これらの基のそれぞれが、一個以上のハロゲン原子あるいはヒドロキシル、アミノ、もしくは直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)モノ-またはジアルキルアミノ基で置換されていてよい。例として、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、フェニルスルホニル、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、パラ-メトキシベンジルオキシカルボニル、パラ-ニトロベンジルオキシカルボニル、トリクロロエトキシカルボニル(TROC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9-フルオロメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリフルオロアセチル、およびベンジルカルバメート基を挙げることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様では、アミン官能基-保護基を表す場合、R基は、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニルオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキニルオキシカルボニル、およびアリールオキシカルボニルから選択され、これらの基のそれぞれが、一個以上のハロゲン原子あるいはヒドロキシル、アミノ、もしくは直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)モノ-またはジアルキルアミノ基で置換されていてよい。例えば、アシル、アセチル、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を挙げることができる。
【0014】
本発明の実施に好適な固体または可溶性の担体は、有機化学で、特にペプチド合成で従来から使用されている担体から選択する。本発明で使用するこれらの担体は、酸化されたメチオニンを固定することができる官能基で官能化する。この態様では、アミンまたはアルコール官能基、あるいは置換可能なハロゲン原子を挙げることができる。
【0015】
本発明の目的には、用語「アミン、またはヒドロキシル、またはハロゲノ型の官能基に由来する基」は、アミノ官能基、ヒドロキシル官能基または置換可能なハロゲノ官能基で官能化された固体担体にメチオニン残基を付加することにより得られる基を意味する。
【0016】
本発明の有利な態様では、Xは基NHを表す。
【0017】
本発明の別の態様では、Xは酸素原子を表す。
【0018】
本発明の別の有利な態様では、担体●を、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレングリコールまたは複合材料を基材とするマトリックスを有するゼラチン状またはマクロ細孔質担体から選択し、該担体は、ビーズの、被膜被覆された担体、例えばリングまたはランタンの、プラグの、もしくは架橋していない可溶性の担体の形態にあってよく、該マトリックスは、官能化されていないか、または官能化されたアームで官能化されていることができる。
【0019】
本発明の目的には、用語「官能化されたアームまたはスペーサー」は、上記の、特にペプチド合成で使用される固体担体に共通してグラフト化された全ての断片を意味する。
【0020】
本発明の実施に好適な担体としては、官能化されたアームを含まない樹脂または官能化された樹脂、例えばクロロメチルポリスチレン、ベンジルオキシベンジルアルコールポリスチレン、アミノメチルポリスチレンまたはメチルベンズヒドリルアミンポリスチレン樹脂、もしくはRinkアミド(Rinkは、4-[2',4'-ジメトキシフェニル-(9-フルオロメチルオキシカルボニル)アミノメチル]フェノキシ-を意味する)、クロロトリチル、ヒドロキシメチルベンジルアセトアミド、Sieberアミド(Sieberは、9-アミノキサンテン-3-イルオキシ-を意味する)、アミノメチル-3,5-ジメトキシフェノキシアルキル、アミノメチル-3-ジメトキシフェノキシアルキル、ヒドロキシメチル-3,5-ジメトキシフェノキシアルキル、およびヒドロキシメチル-3-ジメトキシフェノキシアルキルから選択された官能化されたアームでグラフト化された樹脂を挙げることができる。
【0021】
本発明で好ましい型の固体担体は、
(i)ポリスチレンベース、例えばアミノメチルポリスチレンまたは4-メチルベンズヒドリルアミンポリスチレン、を含むマトリックスを有する、またはポリアミド(PL)またはポリエチレングリコールベース(PEG)を含むマトリックスを有する、ゼラチン状またはマクロ細孔質樹脂のビーズ、あるいはポリエチレングリコール-ポリスチレン(PEG-PS)またはポリエチレングリコール-ジメチルアクリルアミド(PEGA)型の複合材料担体、
(ii)被膜-被覆された型の担体、例えばSynPhase Lanterns(登録商標)(Mimotopes)、
である。
【0022】
酸化されたメチオニンをグラフト化するのに使用する好ましい可溶性担体は、ポリエチレングリコール(PEG)型の担体である。
【0023】
本発明の酸化反応物は、幾つかの[Met(O)]単位または[Met(O)2]単位を含んでなる。その数nは、特に10000未満、好ましくは1000未満である。本発明の有利な態様では、nは100未満、特に50未満である。本発明の別の有利な態様では、この数nは2〜15である。
【0024】
上記のように、本発明の酸化反応物は、同じ分子の2つの箇所の間にS-S共有結合の形成を誘発することを意図している。これらの分子内ジスルフィドブリッジの形成は、特に該分子に特殊な空間的構造を与えることを目的としている。
【0025】
従って、本発明は、上に規定する式(I)の酸化反応物の、分子内ジスルフィドブリッジを形成するための使用に関する。本発明は、本発明の式(I)の酸化反応物の、ペプチドおよび/またはタンパク質中に分子内ジスルフィドブリッジを形成するための使用に関するのが、より有利である。最後に、本発明の特に有利な態様は、上に規定する式(I)の酸化反応物の、少なくとも一個の分子内ジスルフィドブリッジを含んでなる一群のペプチドを、高処理量平行合成により製造するための使用に関する。
【0026】
同時に合成される化合物の数を増大させ、自動化された、または手動の平行合成技術により、大量の化合物を迅速に形成することができる。これらの技術は、先導する化合物を構造的に調整することによる、新規な生物学的に活性な化合物の研究に非常に有益であるが、反応条件を最適化することにも使用できる。小型化およびロボット化は、平行合成の成功に貢献しているが、その有効性に対する重要な要素の一つは、仕事を簡素化し、その自動化を容易にすることにある。従って、微妙な精製工程を回避する担持された反応物または樹脂の使用により、これが可能であれば、平行合成の生産性および迅速性を増加することができる。
【0027】
本発明は、式(I)の酸化反応物の製造方法にも関する。幾つかの合成経路が開発されている。当業者は、得ようとする酸化反応物の正確な性質、出発原料の入手可能性、および使用する担体に応じて、最も好適である合成を選択することになる。
【0028】
式(I)の酸化反応物を製造するための第一の方法は、式(II)
R−[Met]n−X−● (II)
の、式中、R、nおよびXが、上に規定した通りである、および●
化合物を酸化反応にかけ、式(I)
R−[Met(O)k]n−X−● (I)
の、式中、R、n、Xおよび●が、上に規定した通りである化合物を得ることを特徴とする。
【0029】
酸化反応は、スルホキシド誘導体(k=1)を得るのに従来使用される穏やかな酸化反応物を使用して行うことができ、有利な態様では、水性過酸化水素で行う。
【0030】
酸化反応は、いずれかのより強力な酸化反応物を使用し、スルホン誘導体(k=2)を得ることができ、有利な態様では、MCPBA(メタクロロ過安息香酸)で行う。
【0031】
式(II)の化合物は、2通りの異なった様式で製造する。第一の合成経路は、基体として、式(III)
R−[Met]−OH (III)
の、式中、Rが上に規定した通りである化合物を使用し、該基体を、式HX-●の、Xおよび●が上記と同じ意味を有する担体と反応させることにより、式(IV)
R−[Met]−X−● (IV)
の、R、Xおよび●が上に規定した通りである化合物を形成し、この式(IV)の化合物を、R基の開裂により脱保護した後、式(III)
R−[Met]−OH (III)
の、式中、Rが上に規定した通りである化合物との一連の反応にかけ、この反応をn-1回繰り返し、式(II)
R−[Met]n−X−● (II)
の、式中、R、n、Xおよび●が上に規定した通りである化合物を形成するが、但し、保護基Rは、使用する反応物に応じて、合成のどの時点で除去および/または変性することもできる。
【0032】
上記の製法で、式(III)の、N-末端部分Rが保護された、例えばFmoc基で保護された形態にある化合物は、塩基性媒体中でカップリング剤(例えば1-H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP))が関与するペプチドカップリング反応を使用して固体担体上にグラフト化される。次いで、アミン官能基-保護基が除去され、脱保護された誘導体(IV)を、同じ式(III)の、Fmocの形態にあるN-末端部分で保護された化合物とのカップリング反応に再度使用できるようになる。
【0033】
上記式(II)の化合物を製造するための第二の方法では、式(V)のN−カルボン酸無水物(carboxyanhydride)
【化3】

を、式HX-●の、Xおよび●が上記と同じ意味を有する担体の存在下で、溶剤、例えばTHF、中で、12〜48時間重合させることにより、反応させ、式(II')
H−[Met]n−X−● (II')
の化合物、即ち式(II)の化合物のRが水素原子を表す類似体を形成し、この水素原子を保護基で置き換え、上記式(II)の化合物を得ることができる。
【0034】
この、式(II)の化合物を製造するための別の方法では、式(V)の化合物を官能化された、例えば第1級アミンで官能化された、樹脂と反応させ、式(II)の重合体を形成する。この重合体の長さ、即ち数nの値、は、樹脂の第1級アミン量に対する式(V)の化合物の濃度によって、および操作条件、例えば反応の持続時間および温度、または使用する溶剤によって異なる。
【0035】
式(I)の酸化反応物を製造するための第二の方法は、式(VI)
R−[Met(O)k]−OH (VI)
の、式中、Rおよびkが上に規定した通りであり、kが1または2である化合物を、式HX-●の、Xおよび●が上記と同じ意味を有する担体と縮合させ、式(VII)
R−[Met(O)k]−X−● (VII)
の、式中、R、k、Xおよび●が、上に規定した通りである化合物を形成し、該式(VII)の化合物を、R基の開裂により脱保護した後、従来のペプチドカップリング方法を使用し、カップリング剤の存在下で、式(VI)
R−[Met(O)k]−OH (VI)
の、式中、Rおよびkが上に規定した通りである化合物との一連の反応にかけ、反応をn-1回繰り返し、上記式(I)の化合物を得ることを特徴とする。
【0036】
この式(I)の化合物を製造するための第二方法は、上記の第一方法と類似しており、基体として、式(VI)のすでに酸化されたメチオニン誘導体を使用し、これを、ペプチドカップリングにより、アミン官能基で官能化された担体上に、第一製造方法に関して上に記載した条件と類似の条件下でグラフト化する。
【0037】
式(I)の酸化反応物を製造するための第三の方法は、式(IX)
【化4】

の、kが上に規定した通りである化合物を、式HX-●の、Xおよび●が上記と同じ意味を有する担体の存在下で、溶剤、例えばTHF、中で、12〜48時間重合させ、式(I')
H−[Met(O)k]n−X−● (I')
の、式中、n、k、Xおよび●が、上記と同じ意味を有する化合物を形成し、該化合物(I')のN-末端部分をR基で保護し、上に規定する式(I)の化合物を得ることを特徴とする。
【0038】
この第三製造方法の操作条件は、式(V)の化合物に関して上に記載した条件と類似しているが、式(IX)の基体が、酸化されたメチオニンに由来することだけが異なっている。
【0039】
式(I)の酸化反応物を製造するための第四方法は、式(X)
R−[Met(O)k]n−OH (X)
の、R、nおよびkが上に規定した通りである化合物を、式HX-●の、Xおよび●が上記と同じ意味を有する担体と反応させ、上に規定する式(I)の化合物を与えることを特徴とする。
【0040】
上記式(X)の化合物は、第一の合成スキームにより得ることができ、式(III')
H−[Met]−OR' (III')
の、R'が、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニル、ベンジル、カルボキサミドメチル、またはベンズヒドリルグリコールアミドエステル基を表す化合物と、式(III)
R−[Met]−OH (III)
の、式中、Rが上に規定した通りである化合物の、従来のペプチドカップリング方法による、カップリング剤の存在下での縮合からなる一連の反応により、反応をn−1回繰り返し、C末端官能基を保護した後、式(XI)
R−[Met]n−OR' (XI)
の、式中、R、R'およびnが上に規定した通りであるが、無論、Rは水素原子とは異なる化合物を形成し、この式(XI)の化合物を酸化反応にかけ、続いてR'基の開裂により脱保護反応にかけ、上に規定する式(X)の化合物を得る。
【0041】
上記の、式(X)の化合物を製造する方法は、従来の溶液中ペプチド合成技術を使用する。N-末端(R基)およびC末端(R'基)部分は、場合により、保護された、または保護されていない形態にあり、重縮合により、式(XI)のペプチド化合物を形成し、次いでそれを好適な方法により、例えば水性過酸化水素で、酸化し、化合物(X)を形成することができる。
【0042】
上記式(XI)の化合物は、式(V)
【化5】

のN−カルボン酸無水物からも製造することができ、この式(V)の化合物を空気中に、溶剤無しに2日間放置し、空気中の水分により開始される自然の重合反応により、式(XI')
H−[Met]n−OH (XI')
の、式中、nが上に規定した通りである化合物、即ち式(XI)の化合物の、RおよびR'がそれぞれ水素原子を表す類似体を形成し、この水素原子を保護基で置き換え、上記式(XI)の化合物を得ることができる。
【0043】
上記式(X)の化合物は、第二方法により、式(IX)
【化6】

の、式中、kが上に規定した通りであるN−カルボン酸無水物の重合により製造することができ、この化合物を空気中に、溶剤無しに2日間放置し、空気中の水分により自然の重合反応を開始し、式(X')
H−[Met(O)k]n−OH (X')
の、式中、nおよびkが上に規定した通りである化合物を形成し、そのN-末端をR基で保護し、上記式(X)の化合物を得ることができる。
【0044】
この式(X)の化合物をN-カルボン酸無水物(IX)から製造する方法は、上記式(XI)の化合物の製造に関して上に記載した条件と類似の条件下で行う。
【0045】
下記の例は、本発明を例示するためであり、決して本発明を制限するものではない。それらの例では、担持された酸化反応物の製造を説明する。
【0046】
本発明の式(I)の固体に担持された反応物による急速な環化を試みるために、2個のシステインを有する天然ペプチドからモデルペプチド配列を選択した。得られた結果を、DMSOまたはELLMAN担持された反応物を使用するペプチド酸化に関して開示されている方法と比較した。これらの全てのペプチドに関して、本発明の担持された反応物は、使用が遙かに簡単であり、ジスルフィド結合を平行して形成する方法を自動化する可能性があることを立証された。同様に、本発明の反応物により、通常は重合体の形成を回避するために必要な大量の希釈を行うことなく、環化されたペプチドの収率がより向上し、純度がより高くなる。
【実施例】
【0047】
例1 Rink-アミド-PS樹脂上に担持されたスルホキシド型(k=1)酸化反応物の製造
工程1:Rink-アミド-PS樹脂上でのメチオニンN-カルボン酸無水物の重合手順
メチオニンN-カルボン酸無水物(Met-NCA)を最小量の無水THF(酸無水物7 gに対して40 ml)中に、アルゴン下で可溶化し、次いで樹脂を加え(Met-NCAに対して1/100当量)、混合物全体を48時間攪拌する。次いで、樹脂を下記の溶剤、即ちテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メタノールおよびジクロロメタン、で洗浄する。使用するRink-アミド-PS樹脂は、第1級アミン官能基量が0.98 mmol/gである。こうして官能化された樹脂に対して、ある部分をトリフルオロ酢酸を使用して開裂させ、直接導入ES+質量分光法およびMALDI-Tof質量分光法により分析する。
【0048】
<得られた結果>
Micromass Platform II質量分析計へのポジティブエレクトロスプレーモードにおける直接導入は、1〜7のnに対してC末端アミド化されたメチオニン重合体に対応する単一に帯電したイオン[M+H]+=149.0、280.0、410.9、541.9、672.9、804.0、935.0の存在を示す。
2,5-ジヒドロキシ安息香酸マトリックスを使用するMALDI-Tof質量分光法分析も、5〜9のnに対してC末端アミド化されたメチオニン重合体に対するナトリウムおよびカリウム[M+Na]+および[M+K]+による陽イオン化に由来する単一に帯電したイオンの存在を示す。
【0049】
工程2:樹脂のアセチル化
工程1で得た、メチオニン重合体を含む樹脂を、回転固相反応器中で、50/50酢酸/ジクロロメタン溶液(デシケーター中で乾燥させた樹脂1.5 gに対して20 ml)で5分間アセチル化し、次いで濾過する。アセチル化を再度10分間開始する。次いで、樹脂をジクロロメタンで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。
【0050】
工程3:担持されたポリメチオニンの、担持されたポリメチオニンスルホキシド(k=1)への穏やかな酸化
工程2で得た樹脂を35重量%水性過酸化水素(デシケーター中で乾燥させた樹脂1.5 gに対して20 ml)中に入れ、1時間30分間攪拌する。次いで、樹脂をジクロロメタンで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。
【0051】
こうして得られた樹脂は、分子内ジスルフィド結合の形成に直接使用することができる。
【0052】
例2 アミノ-PEG-PS樹脂上に担持された酸化反応物の製造
アミノ-PEG-PS(ポリエチレングリコール-ポリスチレン)樹脂上に担持された酸化反応物を、例1に記載する手順と同等の手順により、Rink-アミド-PS樹脂を、第1級アミン官能基量が0.19 mmol/gであるアミノ-PEG-PS樹脂で置き換えて製造する。
【0053】
例3 NovaSyn(登録商標)型アミノ-PEG-PS樹脂上に担持された酸化反応物の製造
NovaSyn(登録商標)型アミノ-PEG-PS樹脂上に担持された酸化反応物を、例1に記載する手順と同等の手順により、Rink-アミド-PS樹脂を、第1級アミン官能基量が0.3 mmol/gであるNovaSyn(登録商標)型アミノ-PEG-PS樹脂で置き換えて製造する。この樹脂は、例2で使用した樹脂とは、事実上、ポリエチレングリコールとポリスチレンとの間の結合が、ベンジル型の代わりに、フェニルエチルである点で異なっている。
【0054】
例4 PL-PEGA樹脂上に担持された酸化反応物の製造
PL-PEGA(ポリアミド-ポリエチレングリコール共重合体)樹脂上に担持された酸化反応物を、例1に記載する手順と同等の手順により、Rink-アミド-PS樹脂を、第1級アミン官能基量が0.2 mmol/gであるPL-PEGA樹脂で置き換えて製造する。
【0055】
例5 ジスルフィドブリッジの形成によるペプチドの環化
例4で得た担持された酸化反応物を使用し、下記のモデルペプチドの2個のシステイン間に分子内結合を形成した。
【化7】

【0056】
モデルペプチドを、75/25水アセトニトリル混合物中に、濃度2.5 mMで溶解させた。この溶液2 ml(5μmol)を例4の担持された酸化反応物50 mg(例4の反応物の理論的量から計算して2当量(10μmol))と共に渦巻攪拌した(vortexed)(600 rpm)。同じ実験を担持された反応物無しに行った。試料を各フラスコからt=2時間45分およびt=50時間30分で採取した。環化された、酸化されたペプチド[M+H]+=835.35および酸化されていないペプチド[M+H]+=837.35を、ES+モードにおけるLC/MSカップリングにより検出した。酸化されたペプチドの百分率は、214 nmで得たクロマトグラフィーピークの面積を比較して推定した。結果を下記の表(I)に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
PL-PEGA樹脂上に担持されたPoly-Met(O)反応物は、ジスルフィドブリッジをモデルペプチド中に、常温で2時間45分後に収率91%で形成できることを観察できた。他の副生成物は検出されなかった。収率は、50時間を越えると、定量的である。
【0059】
例6 ジスルフィドブリッジの形成によるCCAPペプチドの環化
CCAPペプチドの式は下記の通りである。
【化8】

【0060】
2種類の緩衝液および3種類の酸化反応物を組み合わせ、6種類の実験を行った。
・緩衝液A、pH=6.07
5%酢酸溶液100 mlに、(NH)CO を、所望のへは6.3が得られるまで加える(約5 g)。
・緩衝液B、pH=7.54
溶液1 milliQ水100 ml中にNaHPOを2.4 g
溶液2 milliQ水100 ml中にNaHPOを2.84 g
溶液2 42 mlを溶液1 8 mlに加え、計量フラスコ中、水で混合物の体積を100 mlに調節する。
【0061】
3種類の酸化反応物を平行して試験した。
・選択した緩衝液中DMSO10%溶液
・担持されたEllman反応物
・NH-PEG-PS上に担持されたAc-[Met(O)]
【0062】
CCAPペプチドを緩衝液中に濃度3 mMで溶解させ、得られた溶液の2 mlアリコートを6 BOHDAN「ミニ-ブロック」反応器のそれぞれに平行して配分する。3種類の酸化反応物を、酸化させるべきペプチドの量に対して5当量で使用した。担持された反応物の量(5当量)は、樹脂の量に対して計算した。従って、0.24 mmol/gで官能化されたNH-PEG-PS上に担持されたAc-[Met(O)]5 125 mg(5当量)を、CCAPペプチド溶液2 mlに加えた。0.20 mmol/gで官能化された、担持されたEllman反応物150 mg(5当量)を、CCAPペプチド溶液2 mlに加えた。
【0063】
6個の反応器を、軌道振とう機上、常温で45時間振とうし(600 rpm)し、試料40μlをCHCN/HO(50/50)で200μlに調節し、次いで濾過したものを直ちにLC/MS分析にかけた。LC/MS実験は、Waters Alliance HPLC装置に連結したMicromass Q-Tof型の四極性/TOF質量分析計で行った。これらの分析により、環化された、酸化されたペプチドの存在と時間の関係を定量することができる。結果を示す表(II)に記載する酸化されたペプチドの百分率は、214 nmで得たクロマトグラフィーピークの面積の関数として計算した。従って、この値は、試料3および4における、DMSOの存在ではなく、可能な副生成物の存在を考慮している。
【0064】
【表2】

【0065】
試験した条件下で、本発明の、5個の酸化されたメチオニンを含む担持された反応物は、溶液中DMSOより急速であり、担持されたEllman反応物より遅いことが立証された。他方、pH=6.07の緩衝液中で反応副生成物無しに26時間で環化されたペプチドを定量的に形成できたのは、ただ1種類だけであった。
得られたクロマトグラムから、この場合、これらの副生成物が存在しないこと、特に2個のCCAPペプチド間の分子内反応に由来する共有結合二量体が存在しないことが確認された。
【0066】
例7 Rink-アミド-PS樹脂上に担持されたスルホン型(k=2)酸化反応物の製造
Ac−[Met(O)−NH−Rink−●
工程1:Rink-アミド-PS樹脂上への第一メチオニンスルホン残基のカップリング
Fmoc-Rinkアミド樹脂AM-PS 100 mg 0.6 mmol/gをジクロロメタン中で10分間膨潤させ、標準的な脱保護サイクル(DMF/ピペリジン80/20 v/v溶液1.2 mlで20分間)にかけた。次いで、樹脂をジメチルホルムアミドで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。洗浄工程の後、N-Fmoc保護されたメチオニンのスルホン誘導体を、樹脂上に、標準的なカップリングサイクルにより、N-Fmoc保護されたメチオニンスルホンのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μl、N-メチルモルホリンのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μl、およびHBTUのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μlを使用して装填した。カップリング時間は90分間であった。樹脂を通常通りに洗浄し、DMF/ピペリジン80/20 v/v溶液1.2 mlで20分間脱保護することにより、N-Fmoc保護基を除去した。
【0067】
工程2:ポリメチオニンスルホン重合体の段階的延長
工程1で得た樹脂を、4回の連続的な標準的固相ペプチド合成サイクルにかけた。各サイクルは、カップリング工程とそれに続くN-Fmoc脱保護工程から構成される。
・カップリング工程: 樹脂を、N-Fmoc保護されたメチオニンスルホンのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μl、N-メチルモルホリンのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μl、およびHBTUのジメチルホルムアミド中0.5 M溶液400μlに加えた。カップリング時間は90分間であった。次いで、樹脂をジメチルホルムアミドで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。
・脱保護工程は、DMF/ピペリジン80/20 v/v溶液1.2 mlを使用して20分間行った。次いで、樹脂を通常通りにジメチルホルムアミドで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。
【0068】
工程3:樹脂のアセチル化
工程1で得た、メチオニンスルホン重合体を含む樹脂を、回転固相反応器中で、50/50酢酸/ジクロロメタン溶液(デシケーター中で乾燥させた樹脂1.5 gに対して20 ml)で5分間アセチル化し、次いで濾過する。アセチル化を再度10分間開始する。次いで、樹脂をジクロロメタンで2回、メタノールで2回、次いでジクロロメタンで2回洗浄する。
【0069】
例8 スルホンおよびスルホキシド型の担持された試薬で、ジスルフィドブリッジの形成によるCCAPペプチドの環化
CCAPペプチドの式は下記の通りである。
【化9】

【0070】
例6の緩衝液B中、3種類の異なった酸化反応物で、3種類の実験を行った。
・選択した緩衝液中DMSO10%溶液
・NH-PL-PEGA上に担持されたAc-Met(O)
・NH-PL-PEGA上に担持されたAc-Met(O)
【0071】
CCAPペプチドを緩衝液中に濃度3 mMで溶解させ、得られた溶液の2 mlアリコートを3個のプラスチック注射器のそれぞれに平行して配分する。2種類の担持された酸化反応物を、酸化させるべきペプチドの量に対して5当量で使用した。担持された反応物の量(5当量)は、樹脂の量に対して計算した。
従って、0.4 mmol/gで官能化されたNH-PL-PEGA上に担持されたAc-Met(O)またはAc-Met(O) 75 mg(5当量)を、CCAPペプチド溶液2 mlに加えた。3個の反応器を、軌道振とう機上、常温で96時間振とうし(600 rpm)し、試料40μlをCHCN/HO(50/50)で200μlに調節し、次いで濾過したものを直ちにLC/MS分析にかけた。LC/MS実験は、Waters Alliance HPLC装置に連結したMicromass Q-Tof型の四極性/TOF質量分析計で行った。これらの分析により、環化された、酸化されたペプチドの存在と時間の関係を定量することができる。表(III)に記載する酸化されたペプチドの百分率は、214 nmで得たクロマトグラフィーピークの面積の関数として計算した。従って、この値は、実験#1における、DMSOの存在ではなく、可能な副生成物の存在を考慮している。
【0072】
【表3】

【0073】
試験した条件下で、本発明の、ただ1個のメチオニンスルホン誘導体を含む担持された反応物(実験#2)は、溶液中DMSOより急速であり、メチオニンスルホキシド反応物より僅かに急速であることが立証された。得られたクロマトグラムから、この場合、これらの副生成物が存在しないこと、特に2個のCCAPペプチド間の分子内反応に由来する共有結合二量体が存在しないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される酸化反応物:
R-[Met(O)k]n−X−● (I)
(式中、
Rは水素原子またはアミン官能基-保護基を表し、
Kは、1または2であり、
Metは、下記式:
【化1】

のメチオニン残基を表し、
[Met(O)k]が、下記式:
【化2】

の酸化されたメチオニン残基を表し、
●は、有機合成に使用される固体または可溶性の担体を表し、
Xは、メチオニンを固定することができる、アミンまたはヒドロキシル、またはハロゲノ型の官能基に由来する基を表すが、但し、前記メチオニンを固定できる官能基は、官能化されたアームまたはスペーサーにより前記担体から分離することができるものであり、
nは1以上の整数であり、
kは1または2である。)。
【請求項2】
前記R基が、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキルオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニルオキシカルボニル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキニルオキシカルボニル、およびアリールオキシカルボニルから選択され、前記基のそれぞれが、一個以上のハロゲン原子あるいはヒドロキシル、アミノ、または直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)モノ-またはジアルキルアミノ基で置換されていてよい、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項3】
Rが、水素原子およびアシル、アセチル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、および9-フルオロメチルオキシカルボニルから選択される、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項4】
前記担体●が、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレングリコールまたは複合材料を基材とするマトリックスを有するゼラチン状またはマクロ細孔質担体から選択され、前記担体が、ビーズの、被膜被覆された担体、例えばリングまたはランタンの、プラグの、もしくは架橋していない可溶性の担体の形態にあってよく、前記マトリックスは、官能化されていないか、または官能化されたアームで官能化されていることができる、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項5】
前記担体●が、官能化されたアームを含まない樹脂であるか、または官能化された樹脂、例えばクロロメチルポリスチレン、ベンジルオキシベンジルアルコールポリスチレン、アミノメチルポリスチレンまたはメチルベンズヒドリルアミンポリスチレン樹脂、もしくはRinkアミド、クロロトリチル、ヒドロキシメチルベンジルアセトアミド、Sieberアミド、アミノメチル-3,5-ジメトキシフェノキシアルキル、アミノメチル-3-ジメトキシフェノキシアルキル、ヒドロキシメチル-3,5-ジメトキシフェノキシアルキル、およびヒドロキシメチル-3-ジメトキシフェノキシアルキルから選択された官能化されたアームでグラフト化された樹脂である、請求項4に記載の酸化反応物。
【請求項6】
nが、100未満、好ましくは50未満、より好ましくは2〜15の整数である、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項7】
請求項1に記載の酸化反応物の、分子内ジスルフィドブリッジを形成するための使用。
【請求項8】
ペプチドおよび/またはタンパク質中に分子内ジスルフィドブリッジを形成するための、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
少なくとも一個の分子内ジスルフィドブリッジを含んでなる一群のペプチドを、高処理量平行合成により製造するための、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の酸化反応物の製造方法であって、
下記式(II):
R−[Met]n−X−● (II)
(式中、R、n、●およびXは、請求項1に規定した通りである)
で表される化合物に酸化反応を実施し、下記式(I):
R−[Met(O)k]n−X−● (I)
(式中、R、n、kおよびXは、請求項1に規定した通りである)
で表される化合物を得る、方法。
【請求項11】
前記式(II)の化合物が、下記式(III):
R−[Met]−OH (III)
(式中、Rは請求項1に規定した通りである)
で表される化合物を、式:HX-●(式中、Xおよび●は請求項1と同じ意味を有する)の担体と反応させて、下記式(IV):
R−[Met]−X−● (IV)
(式中、R、Xおよび●が前記に規定した通りである)で表される化合物を形成し、
前記式(IV)の化合物を、前記R基の開裂により脱保護した後、下記式(III):
R−[Met]−OH (III)
(式中、Rは前記に規定した通りである)で表される化合物との一連の反応を実施し、前記反応を(n−1)回繰り返して、下記式(II):
R−[Met]n−X−● (II)
(式中、R、n、Xおよび●は前記に規定した通りである)で表される化合物を形成することにより製造されるが、但し、保護基Rは、使用する反応物に応じて、合成のどの時点で除去および/または変性することもできる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記式(II)の化合物が、下記式(V)のN-カルボン酸無水物:
【化3】

から、式:HX-●(式中、Xおよび●は請求項1と同じ意味を有する)の担体の存在下で、溶剤、例えばTHF中で、12〜48時間重合させることにより、下記式(II'):
H−[Met]n−X−● (II')
で表される化合物、即ち前記式(II)の化合物のRが水素原子を表す類似体、を形成し、
前記水素原子を保護基で置き換え、請求項10に規定する前記式(II)の化合物を得ることにより製造される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の酸化反応物の製造方法であって、下記式(VI):
R−[Met(O)k]−OH (VI)
(式中、Rおよびkは請求項1に規定した通りである)で表される化合物を、式:HX-●(式中、Xおよび●は請求項1と同じ意味を有する)の担体と縮合させ、下記式(VII):
R-[Met(O)k]-X-● (VII)
(式中、R、X、kおよび●は、上に規定した通りである)で表される化合物を形成し、前記式(VII)の化合物を、R基の開裂により脱保護した後、従来のペプチドカップリング方法を使用して、カップリング剤の存在下で、下記式(VI):
R−[Met(O)]−OH (VI)
(式中、Rは前記に規定した通りである)で表される化合物との一連の反応を実施し、前記反応をn−1回繰り返して、請求項1に規定する前記式(I)で表される化合物を得る、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の酸化反応物の製造方法であって、下記式(IX):
【化4】

(kは請求項1に規定した通りである)で表される化合物を、式:HX-●(式中、Xおよび●は、請求項1と同じ意味を有する)の担体の存在下で、溶剤、例えばTHF中で、12〜48時間重合させて、下記式(I'):
H−[Met(O)k]n−X−● (I')
(式中、n、k、Xおよび●は、前記と同じ意味を有する)で表される化合物を形成し、前記化合物(I')のN−末端部分をR基で保護して、請求項1に規定する前記式(I)の化合物を得る、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の酸化反応物の製造方法であって、下記式(X):
R−[Met(O)k]n−OH (X)
(式中、R、kおよびnは請求項1に規定した通りである)で表される化合物を、式:HX-●(式中、Xおよび●は請求項1と同じ意味を有する)の担体と反応させて、請求項1に規定する前記式(I)の化合物を得る、方法。
【請求項16】
前記式(X)の化合物が、下記式(III'):
H−[Met]−OR’ (III')
(式中、R'は、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニル、ベンジル、カルボキサミドメチル、またはベンズヒドリルグリコールアミドエステル基を表す化合物と、下記式(III):
R−[Met]−OH (III)
(式中、Rは前記に規定した通りである)で表される化合物との、従来のペプチドカップリング方法による、カップリング剤の存在下での縮合からなる一連の反応により製造され、
前記反応をn−1回繰り返して、C末端官能基を保護した後、下記式(XI):
R−[Met]n−OR’ (XI)
(式中、R、R'およびnは前記に規定した通りであるが、無論、Rは水素原子とは異なる)で表される化合物を形成し、
前記式(XI)の化合物に酸化反応を実施し、続いて前記R'基の開裂により脱保護反応を実施して、請求項15に規定する前記式(X)の化合物を得る、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記式(XI)の化合物が、下記式(V):
【化5】

で表されるN−カルボン酸無水物から製造され、前記式(V)の化合物を空気中に、無溶剤で2日間放置し、空気中の水分により開始される自然の重合反応により、下記式(XI'):
H−[Met]n−OH (XI')
で表される、前記式(XI)の化合物の、RおよびR'がそれぞれ水素原子を表す類似体を形成し、
前記水素原子を保護基で置き換え、請求項16に規定する前記式(XI)の化合物を得る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記式(X)で現される化合物が、下記式(VI'):
H−[Met(O)k]−OR' (VI')
(式中、R'は、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルキル、直鎖状または分岐鎖状の(C〜C)アルケニル、ベンジル、カルボキサミドメチル、またはベンズヒドリルグリコールアミドエステル基を表し、kは請求項1に規定する通りである)で現される化合物と、下記式(VI):
R−[Met(O)k]−OH (VI)
(式中、Rおよびkは請求項1に規定する通りである)で現される化合物との、従来のペプチドカップリング方法を使用するカップリング剤の存在下での重縮合により製造され、
前記反応をn−1回繰り返して、前記R'基の開裂により脱保護した後、前記式(X)の化合物を得る、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記式(X)の化合物が、式(IX):
【化6】

(式中、kは前記に規定した通りである)のN−カルボン酸無水物の重合により製造され、前記N−カルボン酸無水物を空気中に、無溶剤で2日間放置し、空気中の水分により自然の重合反応を開始し、下記式(X'):
H−[Met(O)k]n−OH (X')
(式中、nおよびkは前記に規定した通りである)で現される化合物を形成し、前記化合物のN−末端をR基で保護して、請求項15に規定する前記式(X)の化合物を得る、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
下記式:
Ac−[Me(O)]n−NH−●
(式中、
Acはアセチルを表し、
nは1〜9から選択された整数であり、
●は、rinkアミド-ポリスチレン樹脂またはポリエチレングリコール-ポリスチレン樹脂またはポリアミド-ポリエチレングリコール-ジメチルアクリルアミド樹脂を表す。)で現される、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項21】
下記式:
Ac−[Me(O)]5−NH−●
(式中、
Acはアセチルを表し、
●はポリエチレングリコール-ポリスチレン樹脂を表す)で表される、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項22】
下記式:
Ac−[Me(O2)]5−NH−●
(式中、
Acはアセチルを表し、
●はrinkアミド-ポリスチレン樹脂を表す)で表される、請求項1に記載の酸化反応物。
【請求項23】
下記式:
Ac−Me(O)2−NH−●
(式中、
Acはアセチルを表し、
●はポリアミド-ポリエチレングリコール-ジメチルアクリルアミド樹脂を表す)で表される、請求項1に記載の酸化反応物。

【公表番号】特表2009−540082(P2009−540082A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514805(P2009−514805)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055917
【国際公開番号】WO2007/144411
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【出願人】(504462319)ユニヴェルシテ ドゥ モンぺリエ アン (9)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER 1
【出願人】(508368611)
【氏名又は名称原語表記】GENEPEP
【Fターム(参考)】