説明

新規な方法

使用時に屈曲を受ける品目を、その水の浸透に対する受け易さを使用の間の長期間に亘って低減するために処理する方法であって、該方法は、イオン化もしくは活性化技術によって品目の表面上に撥水性被覆または表面改質を形成する方法を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に屈曲を受ける品目を、その水の浸透に対する受け易さを使用の間の長期間に亘って低減するために処理する方法、およびそのように処理された品目に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ堆積法は種々の表面上、そして特には布帛表面上へのポリマー被覆の堆積のために非常に広範に用いられている。この方法は、慣用の湿式の化学的方法と比較して、清潔で、乾燥した方法であり、少量の廃棄物しか発生しないと認識されている。この方法を用いて、電界に曝された有機分子からプラズマが発生される。このことが基材の存在下で行なわれた場合には、このプラズマ中のこの化合物の遊離基が基材上に重合する。
【0003】
慣用のポリマー合成は、モノマー種と高度な類似性を有する繰り返し単位を含む構造を生成する傾向にあるが、一方でプラズマを用いて生成されるポリマー網状構造は極めて複雑である可能性がある。結果として生じる被覆の性質は、基材の性質ならびに用いられるモノマーの性質およびそれが堆積される条件に依存する可能性がある。
【0004】
特には繊細な布帛を油や水の損傷から保護するための、そして靴などの品目を本質的に防水性とするための、靴を含む種々の服装用付属品の処理におけるプラズマ重合法の使用が、国際公開第2007/083124号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、プラズマ支援技術を用いることによって、高度な防水保護を達成することができるばかりでなく、品目の水の浸透に対する耐性の使用における耐久性が著しく高められもすることを新たに見出した。
【0006】
従って、本発明は、使用時に屈曲を受ける品目を、その水の浸透に対する受け易さを使用の間の長期間に亘って低減するために処理する方法を提供するものであり、この方法は撥水性の被覆または表面改質を品目の表面上に形成することを含んでいる。
【0007】
撥水性の被覆は、プラズマ処理などのイオン化または活性化技術によって形成することができる。
【0008】
撥水性被覆は他の方法、例えば浸漬または張り付けられたパッドによっても適用することができる。この撥水性被覆はフッ素重合体、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができる。あるいは、この撥水性被覆は炭化水素またはケイ素を主成分とする仕上げ材を含むことができる。例としては、デュポン(Dupont)によって製造されているテフロン(Teflon)(登録商標)およびチバ(Ciba)によって製造されているOleophobol(登録商標)が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、品目の水の浸透に対する耐性の使用時の屈曲における耐久性を高めるための方法が提供される。このことは例えば品目が履物、例えば靴、そして特には毎日の使用の間にかなりの屈曲の変形を受ける、スポーツ靴、例えばランニングシューズもしくは運動靴の場合には特に有益である。
【0010】
靴などの履物の品目の甲(upper)には、甲の異なる構成部品を連結するか、または装飾的な特徴としてのいずれかのために、通常は縫い目が含まれている。この縫い目は、しばしば審美的な理由から靴の前方に与えられ、そしてこの縫い目の大部分は、履物の品目の屈曲する箇所に位置する傾向にある。使用の間に、履物の品目の屈曲は、縫うことで作られた針の孔をゆがめ、そしてその大きさを増大させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法は、屈曲に起因するゆがみやこの甲の針の孔の大きさの増大に対して耐久性のある、撥水性被覆を提供する。
【0012】
本発明の方法は、履物の品目または組み立てられた甲に撥水性の被覆を提供し、一方で履物の品目または組み立てられた甲の通気性を維持することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1から、水の浸透が起こるまでの屈曲の数は、未処理の靴に比べて処理された靴では著しく大きいことがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
履物の品目の全体または履物の品目の組み立てられた甲を処理することによって、向上した撥水性がもたらされる。更に、履物の品目の全体または履物の品目の組み立てられた甲の処理は、孔、例えば針の孔および縫い目を与えられた甲の領域が、処理されることを確実にする。これらは、屈曲の間に負荷にさらされる領域である。
【0015】
しかしながら、この方法は、使用時に屈曲を受け、そして水の浸透に対する耐性の使用おける耐久性と組み合わされた高度な防水保護が望まれる、他の品目にも適切に適用することができる。適切な品目としては、例えばテント、天幕(awnings)、傘および寝袋が挙げられる。
【0016】
本発明の方法によって品目の水の浸透に対する耐性の耐久性を高めることは、得られる防水保護の程度と耐久性を損なうことなしに、より高価でない品目の使用を可能にするという利点を有している。例えば、スポーツ靴の場合には、本方法によって靴を処理することは、安価な靴に用いることができる膜および手段のような物理的な障壁を導入するための複雑な製造技術の必要性を回避する。
【0017】
1つの態様では、品目は履物の品目または履物の品目用の組み立てられた甲を含んでいる。従って、履物の品目全体、例えば靴の全体を処理することができる。あるいは、組み立てられた甲、例えば靴の組み立てられた甲を処理することができ、そして次いで靴底に結合させて履物の品目を形成させることができる。履物の品目または組み立てられた甲は、更にひもを含むことができる。
【0018】
1つの態様では、イオン化法または活性化技術は、プラズマ処理、特にはプラズマ堆積である。
【0019】
従って、1つの態様では、本発明の方法は、品目をガス状態のプラズマに、十分な時間暴露して、品目の表面上に保護層が形成されるのを可能にすることを含む。
【0020】
「保護層」との表現は、液体による損傷に対してある種の保護を与え、そして特には液体をはじく、例えば撥油性および撥水性である、層、特にはポリマー層を意味している。これらの品目が保護されるべき液体の発生源としては、環境液体、例えば水、および特には雨、ならびに偶然にこぼされる可能性がある、いずれかの他の油もしくは液体が挙げられる。
【0021】
プラズマ重合を起こし、品目の表面上に撥水性のポリマー被覆層を形成するいずれかのモノマー化合物またはガスを適切に用いることができる。用いることができる適切なモノマーとしては、プラズマ重合によって基材上に撥水性のポリマー被覆を生成することができる、当技術分野で知られたモノマーを挙げることができ、例えば、反応性官能基、特には実質的に−CFが優位なペルフルオロ化合物を有する炭素質化合物(国際公開第97/38801号を参照)、過フッ素化アルケン(Wangら、Chem Mater、1996年、p.2212〜2214)、水素含有の不飽和化合物であって場合によってはハロゲン原子を含んでいる不飽和化合物もしくは少なくとも10個の炭素原子の過ハロゲン化有機化合物(国際公開第98/58117号を参照)、2つの二重結合を含む有機化合物(国際公開第99/64662号)、飽和有機化合物であって、場合によっては置換された少なくとも5個の炭素原子のアルキル鎖(場合によってはヘテロ原子が間にはいっている)を有する飽和有機化合物(国際公開第00/05000号)、場合によっては置換されたアルキン(国際公開00/20130号)、ポリエーテルで置換されたアルケン(米国特許第6482531号明細書)、および少なくとも1つのヘテロ原子を含む大員環(米国特許第6329024B号明細書)が挙げられ、これらの全ての内容をここに参照によって組み込む。
【0022】
好ましくは、品目、例えば靴は、下記の式(I)の化合物を含むプラズマへ、この品目を、この品目の表面上に保護ポリマー層を形成することを可能にする十分な時間、暴露することによって形成されるポリマー被覆を与えられる。
【0023】
【化1】

【0024】
ここで、R、RおよびRは独立して、水素、アルキル、ハロアルキルもしくは場合によってはハロによって置換されているアリール、そしてRはX−R基であり、Rはアルキルもしくはハロアルキル基、そしてXは結合;式−C(O)O−、−C(O)O(CHY−の基(nは1〜10の整数、そしてYは結合もしくはスルフォンアミド基);または−(O)(O)(CH−基(Rは場合によってはハロによって置換されているアリール、pは0もしくは1、qは0もしくは1、そしてtは0もしくは1〜10の整数、但しqが1の場合はtは0以外である)である。
【0025】
、R、RおよびRとして適切なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。このアルキル鎖は直鎖でも分岐していてもよく、そして環状部分を含んでいてもよい。
【0026】
では、アルキル鎖は好ましくは2個またはそれ以上の炭素原子、適切には2〜20個の炭素原子、そして好ましくは6〜12個の炭素原子を含んでいる。
【0027】
、RおよびRでは、アルキル鎖は通常は1〜6個の炭素原子を有することが好ましい。
【0028】
好ましくは、Rはハロアルキル、そしてより好ましくはペルハロアルキル基、特には式C2m+1のペルフルオロアルキル基(mは1以上の整数、適切には1〜20、そして好ましくは4〜12、例えば4、6もしくは8である)である。
【0029】
、RおよびRとして適切なアルキル基は1〜6個の炭素原子を有している。
【0030】
1つの態様では、R、RおよびRの少なくとも1つは水素である。好ましい態様では、R、RおよびRは全てが水素である。しかしながら、更なる態様では、Rはアルキル基、例えばメチルまたはプロピルである。
【0031】
Xが−C(O)O−、−C(O)O(CHY−の基である場合には、nは適切なスペーサー基を提供する整数である。特に、nは1〜5、好ましくは約2である。
【0032】
Yとして適切なスルフォンアミド基は、式−N(R)SO−(Rは水素またはアルキル、例えばC1−4アルキル、特にはメチルもしくはエチル)のスルフォンアミド基を含んでいる。
【0033】
1つの態様では、式(I)の化合物は式(II)の化合物である。
CH=CH−R (II)
ここで、Rは式(I)について上記で規定した通りである。
式(II)の化合物においては、式(I)中のXは結合である。
【0034】
しかしながら、好ましい態様では、式(I)の化合物は式(III)のアクリル酸エステルである。
CH=CRC(O)O(CH (III)
ここで、nおよびRは式(I)について上記で規定した通りであり、そしてRは水素、C1−10アルキル、またはC1−10ハロアルキルである。特には、R7は水素またはC1−6アルキル、例えばメチルである。式(III)の化合物の好ましい例としては式(IV)の化合物がある。
【0035】
【化2】

【0036】
ここで、Rは上記の通りであり、そして特には水素であり、そしてxは1〜9の整数、例えば4〜9、そして好ましくは7である。この場合は、式(IV)のこの化合物は、1H,1H,2H,2H−アクリル酸ペプタデカフルオロデシルである。
【0037】
あるいは、ポリマー被覆は品目を、表面上にポリマー層が形成されることを可能にするのに十分な時間、1種またはそれ以上の有機モノマー化合物を含むプラズマに暴露することによって形成することができ、この有機モノマー化合物の少なくとも1種は2つの炭素−炭素二重結合を含んでいる。
【0038】
好ましくは、1よりも大きい数の二重結合を備えた化合物は式(V)の化合物を含んでいる。
【0039】
【化3】

【0040】
ここで、R、R、R10、R11、R12およびR13は全て独立して、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキルまたは場合によってはハロによって置換されているアリールであり、そしてZは橋かけ基である。
【0041】
式(V)の化合物に用いられる適切な橋かけ基Zは、ポリマーの技術分野において既知のものである。特には、橋かけ基としては、場合によっては置換されたアルキル基であり、それらは酸素原子が間にはいっていてもよい。橋かけ基Zの適切な任意の置換基としては、ペルハロアルキル基、特にはペルフルオロアルキル基が挙げられる。
【0042】
特に好ましい態様では、橋かけ基Zとしては、1つまたはそれ以上のアシルオキシまたはエステル基が挙げられる。特には、式Zの橋かけ基は部分的な式(VI)の基である。
【0043】
【化4】

【0044】
ここでnは1〜10、好ましくは1〜3の整数、R14およびR15のそれぞれは独立して水素、アルキルもしくはハロアルキルから選ばれる。
適切なR、R、R10、R11、R12およびR13は、ハロアルキル、例えばフルオロアルキルまたは水素である。好ましくは、これらは全てが水素である。
適切には、式(V)の化合物は少なくとも1種のハロアルキル基、好ましくはペルハロアルキル基を含んでいる。
【0045】
式(V)の化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
ここで、R14およびR15は上記で規定した通りであり、但しR14またはR15の少なくとも1つは水素以外である。このような化合物の好ましい例は式Bの化合物である。
【0048】
【化6】

【0049】
更なる態様では、ポリマー被覆は、表面上にポリマー層を形成することを可能にするのに十分な時間、モノマーの飽和有機化合物を含むプラズマに品目を暴露することによって形成され、該化合物は場合によっては置換されている少なくとも5個の炭素原子のアルキル鎖を含んでおり、これは場合によってはヘテロ原子が間にはいっていてもよい。
【0050】
ここで用いられる用語「飽和」は、このモノマーが、芳香環の一部ではない2つの炭素原子の間に、多重結合(すなわち、二重もしくは三重結合)を含んでいないことを意味している。用語の「ヘテロ原子」としては、酸素、硫黄、ケイ素または窒素原子が挙げられる。窒素原子がアルキル鎖の間にはいっている場合には、この窒素原子は第二級または第三級アミンを形成するように置換されているであろう。同様に、ケイ素は、例えば2つのアルコキシ基で、適切に置換されているであろう。
【0051】
特に適切なモノマー有機化合物は式(VII)の化合物である。
【0052】
【化7】

【0053】
ここで、R16、R17、R18、R19およびR20は独立して水素、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、または場合によってはハロで置換されたアリールから選ばれ、そしてR21はX−R22基であり、R22はアルキルもしくはハロアルキル基であり、そしてXは結合;式−C(O)O(CHY−の基(xは1〜10の整数、そしてYは結合もしくはスルフォンアミド基):または−(O)23(O)(CH−の基(R23は場合によってはハロで置換されたアリール、pは0もしくは1、sは0もしくは1、そしてtは0もしくは1〜10の整数、但し、sが1の場合にはtは0以外である)である。
【0054】
16、R17、R18、R19およびR20の適切なハロアルキル基はフルオロアルキル基である。このアルキル鎖は直鎖であってももしくは分岐していてもよく、そして環状の部分を含んでいてもよく、そして例えば1〜6個の炭素原子を有している。
【0055】
22では、アルキル鎖は適切には1個またはそれ以上の炭素原子、適切には1〜20個の炭素原子、そして好ましくは6〜12個の炭素原子を含んでいる。
【0056】
好ましくはR22はハロアルキル、そしてより好ましくはペルハロアルキル基、特には式C2z+1(zは1以上、適切には1〜20、そして好ましくは6〜12の整数、例えば8もしくは10)のペルフルオロアルキル基である。
【0057】
Xが−C(O)O(CHY−の基である場合には、yは整数であり、適切なスペーサー基を与えるものである。特にはyは1〜5、好ましくは約2である。
【0058】
Yの適切なスルフォンアミド基としては、式−N(R23)SO−の基(R23は水素、アルキルまたはハロアルキル、例えばC1−4アルキル、特にはメチルもしくはエチルである)が挙げられる。
【0059】
本発明の方法に用いられるモノマー化合物は、好ましくは場合によってはハロゲンで置換されているC6−25アルカン、特にはペルハロアルカン、そして特にはペルフルオロアルカンを含んでいる。
【0060】
更なる選択肢としては、品目は表面上にポリマー層を形成するのに十分な時間、場合によっては置換されたアルキンを含むプラズマに暴露される。
【0061】
本発明の方法に用いられる適切なアルキン化合物は、1つまたはそれ以上の炭素−炭素三重結合を含む炭素原子の連鎖を含んでいる。この連鎖は場合によってはヘテロ原子を間に挟んでいてもよく、そして環および他の官能基を含む置換基を備えていてもよい。適切な連鎖は、直鎖でももしくは分岐していてもよく、2〜50個の炭素原子、より好ましくは6〜18個の炭素原子を有している。これらは出発物質として用いられるモノマー中に存在していてもよく、またはプラズマの適用に際して、例えば開環によって、モノマー中で生成されてもいずれでもよい。
【0062】
特に適切なモノマー有機化合物は式(VIII)の化合物である。
【0063】
【化8】

【0064】
ここでR24は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキルまたは場合によってはハロで置換されているアリールであり、Xは結合または橋かけ基であり、そして、R25はアルキル、シクロアルキルまたは場合によってはハロゲンで置換されているアリール基である。
【0065】
適切な橋かけ基Xとしては式−(CH)S−、−CO(CH−、−(CHO(CH−、−(CHN(R26)CH−、−(CHN(R26)SO−(sは0または1〜20の整数、pおよびqは独立して1〜20の整数から選ばれ、そしてR26は水素、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールである)が挙げられる。R26の好ましいアルキル基としてはC1−6アルキル、特にはメチルもしくはエチルが挙げられる。
【0066】
24がアルキルもしくはハロアルキルである場合には、通常は1〜6個の炭素原子を有していることが好ましい。
【0067】
24の適切なハロアルキル基としては、フルオロアルキル基が挙げられる。アルキル連鎖は直鎖でももしくは分岐していてもよく、そして環状の部分を含んでいてもよい。しかしながら、好ましくはR24は水素である。
【0068】
好ましくはR25はハロアルキル、そしてより好ましくはペルハロアルキル基、特には式C2r+1のペルフルオロアルキル基(rは1以上の整数、適切には1〜20、そして好ましくは6〜12、例えば8もしくは10である。)である。
【0069】
好ましい態様では、式(VIII)の化合物は式(IX)の化合物である。
【0070】
【化9】

【0071】
ここで、sは上記で規定した通りであり、そしてR27はハロアルキル、特にはペルハロアルキル、例えばC6−12のペルフルオロ基、例えばC13である。
【0072】
他の好ましい態様では、式(VIII)の化合物は式(X)の化合物である。
【0073】
【化10】

【0074】
ここで、pは1〜20の整数、そしてR27は式(IX)について上記で規定した通りであり、特にはC17基である。この場合には、好ましくはpは1〜6の整数、最も好ましくは約2である。
【0075】
式(I)の化合物の他の例としては式(XI)の化合物、または式(XII)の化合物、または式(XIII)の化合物である。
【0076】
【化11】

【0077】
(pは上記で規定した通りであるが、しかしながら特には1であり、qは上記で規定した通りであるが、しかしながら特には1であり、そしてR27は式(IX)について上記で規定した通りであり、特にはC13基)
【0078】
【化12】

【0079】
(pは上記で規定した通りであるが、しかしながら特には1であり、qは上記で規定した通りであるが、しかしながら特には1であり、R26は上記で規定した通りであるが、特には水素であり、そしてR27は式(IX)について規定した通りであるが、特にはC15基)
【0080】
【化13】

【0081】
(pは上記で規定した通りであるが、しかしながら特には1であり、R26は上記で規定した通りであり、特にはエチルであり、そしてR27は式(IX)について規定した通りであり、特にはC17基である)
【0082】
他の態様では、本方法において用いられるアルキルモノマーは式(XIV)の化合物である。
【0083】
【化14】

【0084】
ここで、R28は水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキルまたは場合によってはハロで置換されたアリールである場合には、R29、R30およびR31は独立してアルキルもしくはアルコキシ、特にはC1−6のアルキルもしくはアルコキシから選ばれる。
好ましいR28基は水素またはアルキル、特にはC1−6のアルキルである。
好ましいR29、R30およびR31基はC1−6アルコキシ、特にはエトキシである。
【0085】
プラズマ重合が効果的な方法で起こる正確な条件は、ポリマーの性質、処理される品目などの因子によって変わり、そして当技術分野で知られた常法を用いて決定される。
【0086】
本発明の方法で用いられる適切なプラズマとしては非平衡プラズマ、例えば無線周波数(RF)、マイクロ波または直流(DC)によって発生されるプラズマが挙げられる。それらは、当技術分野で知られているように、大気圧または減圧下で操作することができる。しかしながら、特にはそれらは無線周波数(Rf)によって発生される。
【0087】
気体プラズマを発生させるために種々の形態の装置を用いることができる。通常は、それらは容器もしくはプラズマチャンバーを含んでおり、その中でプラズマを発生させることができる。このような装置の特定の例が、例えば国際公開第2005/089961号および国際公開第02/28548号に記載されているが、しかしながら多くの他の慣用のプラズマ発生装置を用いることができる。
【0088】
この方法においては、通常は、基材はプラズマチャンバー中に、1種またはそれ以上のモノマーとともに配置され、このモノマーは目的のポリマー物質を発生させることができるものであって、基本的にガス状態であり、チャンバー内でグロー放電を発生させ、そして適切な電圧(好ましくはパルスであってよい)が加えられる。
【0089】
ここで用いられる表現「基本的にガス状態である」とは、単独もしくは混合物のいずれかの、気体または蒸気、あるいはエーロゾルを意味している。
【0090】
プラズマチャンバー内に存在するガスは、モノマー化合物単独の蒸気を含んでいてもよいが、しかしながらこれはキャリアガス、特には不活性ガス、例えばヘリウムもしくはアルゴンと混合されていてもよい。もしもキャリアガスが必要な場合には、特にヘリウムが好ましいキャリアガスであり、何故ならば、これはモノマーの断片化を最小限にするためである。
【0091】
混合物として用いられた場合には、キャリアガスに対するモノマー蒸気の適切な相対量は、当技術分野で通常の方法に応じて適切に決定される。加えられるモノマーの量は、ある程度は用いられる個々のモノマーの性質、基材の性質、プラズマチャンバーの大きさなどによる。通常は、慣用のチャンバーの場合には、モノマーは50〜1000mg/分の量、例えば10〜150mg/分の速度で供給される。しかしながら、この速度は選ばれる反応器の大きさ、および一度に加工することが求められる基材の数に非常に依存し、これは次には求められる年間の処理能力、および資本支出などの考慮事項によることが理解されるであろう。
【0092】
キャリアガス、例えばヘリウムは適切には一定の速度、例えば5〜90標準立法センチメートル/分(sccm)の速度、例えば15〜30sccmで供給される。幾つかの例では、モノマーのキャリアガスに対する比率は100:0〜1:100の範囲、例えば10:0〜1:100の範囲、そして特には約1:0〜1:10である。選ばれる正確な比率は、この方法によって求められる流速が達成されることを確実にするようなものである。
【0093】
幾つかの場合には、予備連続出力プラズマが、チャンバー内で、例えば15秒間〜10分間当てられ得る。これは表面の前処理または活性化工程として作用し、モノマー自身が表面に容易に結合することを確実にし、このため重合が起こるにつれて、堆積が表面上に「成長する」。この前処理工程は、モノマーがチャンバー内に導入される前に、不活性ガスのみの存在下で行なうことができる。
【0094】
このプラズマは、次いでパルスプラズマに適切に切り替えられて、少なくともモノマーが存在している場合には、重合が進行することを可能にする。
【0095】
全ての場合に置いて、グロー放電は例えば13.56MHzの高周波電圧を加えることによって適切に発生される。これは電極を用いて加えられ、電極はチャンバーの内部でも外部でもよく、通常は大型および小型チャンバーでそれぞれが用いられる。
【0096】
適切には、ガス、蒸気または気体混合物は、1標準立方センチメートル/分(sccm)以上で、そして好ましくは1〜100sccmの範囲で供給される。
【0097】
モノマー蒸気の場合には、モノマー蒸気は80〜1000mg/分の速度で適切に供給され、一方で連続の、またはパルスの電圧が加えられる。しかしながら、工業的な規模の使用では、定められた工程所要時間によって変わり、そしてモノマーの性質および求められる技術的効果にもよる、一定の総モノマー供給量を有することがより適切である可能性がある。
【0098】
ガスまたは蒸気は、いずれかの慣用の方法を用いてプラズマチャンバー中に供給することができる。例えば、それらはプラズマ領域中に、吸引し、注入し、またはポンプで送り込むことができる。特には、プラズマチャンバーが用いられる場合には、排出ポンプの使用によって引き起こされるチャンバー内の圧力の低下の結果として、ガスまたは蒸気をチャンバー内に吸引することができる。あるいは、それらは、容器に液体もしくは蒸気を供給するためのいずれかの他の既知の方法によって、チャンバー内にポンプで送り込み、噴霧し、滴下させ、静電気的にイオン化し、または注入することができる。
【0099】
重合は、式(I)の化合物の、0.1〜400ミリトールの圧力に維持された蒸気を用いて適切に実施される。
【0100】
加えられる場は、好ましくは5〜500Wの出力、適切には約10〜200Wのピーク出力であり、連続もしくはパルス場として加えられる。もしもパルスが求められるならば、それらは非常に低い平均出力をもたらすようなシーケンス、例えば入時間:切時間の比率が1:500〜1:1500の範囲であるシーケンスで加えることができる。このようなシーケンスの好ましい例は、20〜50μsの間、例えば約30μsの間出力が入りであり、そして1000μs〜30000μsの間、特には約20000μsの間、切である。この方法で得られる通常の平均出力は0.01Wである。
【0101】
靴の1バッチ分を加工するのに必要な総RF出力は、式(I)の化合物の性質およびこのバッチの中で強化される品目の数と種類によって、適切には30秒間〜90分間、好ましくは1分間〜10分間加えられる。
【0102】
適切には、用いられるプラズマチャンバーは、テントや寝袋などの品目を収容するに十分な容積のものである。
【0103】
本発明によって品目を処理するのに特に適切な設備および方法は、国際公開第2005/089961号に記載されており、その内容をここに参照によって組み込む。
【0104】
特に、この種の大きな体積のチャンバーを用いる場合には、プラズマは、0.001〜500W/m、例えば0.001〜100W/m、そして適切には0.005〜0.5W/mの平均出力で、パルス場としての電圧を備えて発生される。
【0105】
これらの条件は、大きなチャンバー、例えばプラズマ区域が500cm超、例えば0.1m以上、例えば0.5m〜10mの範囲、そして適切には約1mであるチャンバー中で、良好な品質の均一な被覆を堆積させるために特に適切である。この方法の中で形成される膜は良好な機械的強度を有している。
【0106】
チャンバーの寸法は、処理される特定の品目を収容するように選択される。例えば、通常は円筒形のチャンバーが広い範囲の適用に適切である可能性があるが、しかしながら、必要であれば、細長い、または矩形のチャンバーを作成することが可能であり、更には直方体、またはいずれかの他の適切な形状も可能である。
【0107】
このチャンバーは、バッチプロセスを可能とするように密封可能な容器であることができ、または半連続プロセスで用いることが可能なように、品目の入口と出口を含むことができる。特に後者の場合には、チャンバー内でプラズマ放電を発生させるために必要な圧力条件は、例えば「ホイッスリングリーク(whistling leak)」を備えた装置において慣用であるように、高容量ポンプを用いて維持される。しかしながら、「ホイッスリングリーク」の必要を否定する大気圧または大気圧に近い圧力において、履物の品目を加工することもまた可能であろう。
【0108】
加えられる場は、好ましくは20〜500Wの出力、適切には約100Wのピーク出力であり、パルス場として加えられる。パルスは非常に低い平均出力をもたらすようなシーケンス、例えば、用いられるモノマーガスの性質によって、入時間:切時間の比率が1:3〜1:1500の範囲であるシーケンスで加えることができる。重合が困難である可能性があるモノマーでは、入時間:切時間はこの範囲のより低い側、例えば1:3〜1:5であるけれども、多くの重合は1:500〜1:1500の範囲の入時間:切時間で起こる可能性がある。このようなシーケンスの好ましい例は、20〜50μsの間、例えば約30μsの間出力が入りであり、そして1000μs〜30000μsの間、特には約20000μs切であるシーケンスである。この方法で得られる通常の平均出力は、0.01Wである。
【0109】
場は、モノマーおよび基材の性質、ならびに求められる目的の被覆の性質によって、30秒間〜90分間の範囲、好ましくは5〜60分間適切に加えられる。
【0110】
上記に記載された方法に従って処理され、そして新規である品目は、本発明の更なる態様を形成する。
【0111】
従って、特には、本発明は上記の方法に従って処理させた靴を提供する。好ましい処理は上記に概要を述べている。
【実施例】
【0112】
本発明は、ここに例によって詳細に記載される。
例1
4足のゴルフ靴を、約300リットルの処理容積を備えたプラズマチャンバー中に置いた。このチャンバーを、必要に応じて質量流量コントローラおよび/または液体質量流量計および混合注入器またはモノマー貯蔵器を経由して、必要なガスおよび蒸気の供給源と接続した。
【0113】
このチャンバーを、3〜10mtorrの基底圧(base pressure)の範囲まで排気し、その後ヘリウムを20sccmで、80mtorrの圧力に到達するまでチャンバー中に入れた。次いで連続出力プラズマを、13.56MHzのRFを用いて300Wで4分間加えた。
【0114】
この時間の後に、下式の1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアシレート(CAS#27905−45−9)を、チャンバー中に120ミリグラム/分の速度で導き入れ、そしてプラズマを、入時間が30マイクロ秒間、そして切時間が20ミリ秒間で、100Wのピーク出力のパルスプラズマに、40分間切り替えた。40分間が完了したら、プラズマ出力を処理ガスおよび蒸気とともに停止し、そしてチャンバーを基底圧力に戻るまで排気した。次いでチャンバーを大気圧に通気させ、そして靴を取り出した。
【0115】
【化15】

【0116】
これらについて、標準的な試験方法に従って、引き伸ばし曲げ(20mmの浸漬深さで50000屈曲)後の水の浸透に対する耐性の耐久性を試験した。結果を同じ靴ではあるが処理していないものと比べた。
【0117】
大抵の場合に、図1に示された結果から判るように、未処理の靴に比べて、処理した靴は、水の浸透が起こるまでの屈曲の回数が著しく多い。この図では、Aの棒は、上記の方法に従って処理した膜の(membrane)、縫い目を封止した、防水性の革靴(影なし)の結果を、処理していない靴(影あり)と比較して示している。棒B、CおよびDは、膜なしの、縫い目を封止した、防水性の革靴(B)、防水性の革靴のみ(すなわち、膜または縫い目の封止なし)(C)、および非防水性の革靴(D)と、対応する非処理の等価物とについて得られた結果を示している。全ての場合において、処理された靴の水の浸透に対する耐久性は、工業的に標準的な要求を超えているのに対して、全ての非処理の靴は、膜を含むものも含めて、水の浸透に対する耐性の許容できない耐久性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に屈曲を受ける履物の品目または履物の品目用の組み立てられた甲を、その水の浸透に対する受け易さを使用の間の長期間に亘って低減するために処理する方法であって、当該方法は、該履物の品目または組み立てられた甲の表面上に撥水性被覆または表面改質を形成することを含んでなる。
【請求項2】
前記の撥水性被覆または表面改質が、イオン化もしくは活性化技術によって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の履物の品目または組み立てられた甲が、更にひもを含んでいる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記の履物の品目または組み立てられた甲が、スポーツ靴またはスポーツ靴用の組み立てられた甲である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記のイオン化もしくは活性化技術が、プラズマ処理である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記のプラズマ処理が、撥水性ポリマーを形成するために、プラズマ重合を受けるモノマー化合物を含むプラズマを用い、そして該履物の品目または組み立てられた甲が、それらの表面上にポリマー層が形成することを可能にするのに十分な時間暴露される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記の履物の品目または組み立てられた甲が、プラズマ堆積チャンバー内のパルスプラズマに暴露される、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記のモノマー化合物が式(I)の化合物
【化1】

(R、RおよびRは独立して、水素、アルキル、ハロアルキルもしくは場合によってはハロによって置換されているアリール、そしてRはX−R基であり、Rはアルキルもしくはハロアルキル基、そしてXは結合;式−C(O)O−、−C(O)O(CHY−の基(nは1〜10の整数、そしてYは結合もしくはスルフォンアミド基);または−(O)(O)(CH−基(Rは場合によってはハロによって置換されているアリール、pは0もしくは1、qは0もしくは1、そしてtは0もしくは1〜10の整数、但しqが1の場合はtは0以外である))であり、この品目の表面上に保護ポリマー層を形成することを可能にする十分な時間、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記の式(I)の化合物が式(II)の化合物
CH=CH−R (II)
(Rは請求項8で規定した通りである)、または式(III)の化合物
CH=CRC(O)O(CH (III)
(nおよびRは請求項8で規定した通りであり、そしてRは水素、C1−10アルキル、またはC1−10ハロアルキルである)である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記の式(III)の化合物が式(IV)の化合物
【化2】

(Rは請求項8で規定された通りであり、そしてxは1〜9の整数である)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記の式(IV)の化合物が、1H,1H,2H,2H−アクリル酸ペプタデカフルオロデシルである、請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記の処理される履物の品目または組み立てられた甲が、プラズマチャンバー内に1種またはそれ以上のモノマーとともに配置され、該モノマーは目的のポリマー物質を生成することができるものであって、基本的にガス状態であり、グロー放電がチャンバー内で発生され、そして適切なパルス電圧が加えられる、請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
パルスが、入時間:切時間の比率が1:500〜1:1500の範囲であるシーケンスで適用される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
履物の品目または履物の品目用の組み立てられた甲の水の浸透に対する受け易さを、使用の間に長期間に亘って低減するためのプラズマ重合堆積法の使用。
【請求項15】
プラズマ重合を起こして、履物の品目または履物の品目用の組み立てられた甲の水の浸透に対する受け易さを、使用の間に長期間に亘って低減するための撥水性ポリマーを形成するモノマー化合物の使用。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項記載の方法によって処理された靴または組み立てられた甲。

【図1】
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【公表番号】特表2011−501993(P2011−501993A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530552(P2010−530552)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003640
【国際公開番号】WO2009/056809
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508216699)ピーツーアイ リミティド (12)
【Fターム(参考)】