説明

新規な構造制御剤を使用してSSZ−26/33ゼオライトを調製する方法

本発明は、新規な窒素系構造制御剤を使用して、ゼオライトのSSZ−26/33ファミリーに属するゼオライトを調製する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な窒素系構造制御剤「SDA」を使用して、ゼオライトのSSZ−26/33ファミリーに属するゼオライトを調製する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ボロシリケートSSZ−33及びそれを製造する方法は、1990年10月16日にZonesらに発行された米国特許第4,963,337号明細書に開示されている。この特許は、SSZ−33を合成するためのトリシクロデカン第四級アンモニウムイオンSDAの使用を開示している。
【0003】
ボロシリケートSSZ−33及びそれを製造する方法はまた、1999年10月26日にCormaらに発行された米国特許第5,972,204号明細書に開示されている。この特許は、1−N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物及び2−N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物をSDAとして使用する、ベータゼオライトからのSSZ−33の合成を開示している。
【0004】
アルミノシリケートSSZ−26及びそれを製造する方法は、1990年3月20日にZonesらに発行された米国の特許第4,910,006号明細書に開示されている。SSZ−26は、その結晶骨組み中にホウ素の存在を必要とせず、アルミノシリケートであってもよい。この特許は、SSZ−26を合成するためのヘキサメチル[4.3.3.0]プロペラン−8,11−ジアンモニウムカチオンSDAの使用を開示している。2008年4月17日に公開された、米国出願公開第2008/0089835号明細書に記載されているように、SSZ−26はまた、SDAとしてシス−N,N−ジエチルデカヒドロキノリニウムを使用して合成された。
【0005】
アルミノシリケートITQ−23は、SDAとして1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオンを使用し、フッ化物が介在する合成経路を使用して合成された。(Studies in Surface Science and Catalysis、154巻、265〜274頁に発表された、the 14th International Zeolite Conference(Cape Town、南アフリカ、2004年4月25〜30日)の予稿集から、Cormaら「ゼオライトの合成のための構造制御剤としてのシクロヘキシルピロリジン由来の第四級有機カチオンの研究(A Study of Cyclohexylpyrrolidine−Derived Quaternary Organic Cations as Structure Directing Agents for Synthesis of Zeolites)」を参照のこと)。
【0006】
SSZ−26及びSSZ−33は、交差する10員から12員環の孔を有する三次元の孔システムを含むゼオライトである。(Loboら「SSZ−26及びSSZ−33:交差する10員から12員環の孔を有する2種のモレキュラーシーブ(SSZ−26 and SSZ−33: Two Molecular Sieves with Intersecting 10− and 12−Ring Pores)」Science(262巻)5139号、1543〜1546頁、1993年12月3日を参照のこと)。これらの2種のゼオライトは、2つの末端部が、ABABの順序又はABCABCの順序の積層により形成される物質のファミリーの構成員であると特徴づけることができる。ABABの積層順序(「多形体A」)により形成された骨組みは斜方晶対称のものである。また、ABCABCの積層順序(「多形体B」)により形成された枠組みは単斜晶対称のものである。これらの末端部多形体の中間に、0%<p<100%の欠陥発生確率「p」により特徴づけることができる物質の全ファミリーがある(本明細書において「SSZ−26/33ファミリー」と呼ぶ)。欠陥発生確率がp=0%である場合、末端部多形体Bが得られる。また、p=100%の場合、末端部多形体Aが得られる。アルミノシリケートSSZ−26及びボロシリケートSSZ−33は物質のこの無秩序ファミリーの構成員である。また、CIT−1は純粋な又はほぼ純粋な多形体Bに対応する。(BaerlocherらCON骨組みデータシート、Atlas of Zeolite Framework Types,第6版(2007)を参照のこと)(また、Treacyら「CON粉末パターン及びSSZ33/SSZ26ファミリー、無秩序連晶の多形体A−多形体B粉末パターンシミュレーション(CON powder pattern and SSZ33/SSZ26 family,polymorph A − polymorph B powder pattern simulations of disordered intergrowths)」、Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites,第4版(2001)も参照のこと)。
【0007】
SSZ−26及びSSZ−33は、炭化水素を捕捉する用途を含む、多くの実用的応用分野で使用されている。これらの2種のゼオライトは、炭化水素を閉じ込める自動車の用途に最もよいゼオライトであることが、その強力な水熱安定性及びその比較的高い炭化水素吸着能により見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、SSZ−26及びSSZ−33を製造するための公知のSDAは、その構造が新種であるために高価である。SDAの費用効果は、商業的なゼオライト製造にとって重要なパラメーターである。さらに、SSZ−26及びSSZ−33の現在の工業的規模での合成には時間がかかる。したがって、満足すべき純度のSSZ−26/33ゼオライトをより短い時間で合成するのに適切な、新しい低コストSDAについて目下のところ必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、
(a)(1)シリコンの酸化物、ゲルマニウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の少なくとも1種の活性供給源;(2)アルミニウムの酸化物、ホウ素の酸化物、鉄の酸化物、ガリウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の1種又は複数の供給源;(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の活性供給源;(4)水酸化物イオン;(5)次のSDAジカチオンからなる群から選択されるSDAジカチオン:
【化1】


1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオン、
【化2】


1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオン、
【化3】


1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、
【化4】


1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオン、
【化5】


1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオン
及び(6)水を含有する反応混合物を調製すること;及び
(b)ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によりゼオライトのSSZ−26/33ファミリーに属するゼオライトを調製する方法が提供される。
【0010】
形成されたゼオライトが中間体ゼオライトである場合、本発明の方法は、ヘテロ原子格子置換技術及び酸浸出などのポスト合成技術により目標ゼオライトを合成するさらなるステップを含む。
【0011】
本発明は、また、合成したままの無水物の状態において、モル比で以下の組成を有する、本発明の方法により製造されるSSZ−26/33ゼオライトを提供する。
【表1】


ここで、
(1)Yは、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの混合物からなる群から選択され;
(2)Wは、アルミニウム(Al)の酸化物、ホウ素(B)の酸化物、鉄(Fe)の酸化物、ガリウム(Ga)の酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択され;
(3)cは1又は2であり;cが1(すなわち、Wは四価である)である場合、dは2であり、又はcが2である(すなわち、Wが三価の場合にdは3、又はWが5価の場合にdは5である)場合、dは3又は5であり;
(4)Mは、周期表の1族及び2族からの元素からなる群から選択され;
(5)Qは1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオン、1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオン、1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオン、1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンからなる群から選択されるSDAである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例の例7において調製したゼオライトの粉末X線回折(XRD)分析の結果を示す図である。
【図2】本実施例の例13において調製したゼオライトの粉末XRD分析の結果を示す図である。
【図3】本実施例の例13において調製したゼオライトの走査型電子顕微鏡(SEM)分析の結果を示す図である。
【図4】本実施例の例13において調製したゼオライトのSEM分析の結果を示す図である。
【図5】本実施例の例14において調製したゼオライトの粉末XRD分析の結果を示す図である。
【図6】本実施例の例14において調製したゼオライトのSEM分析の結果を示す図である。
【図7】本実施例の例17において調製したゼオライトのSEM分析の結果を示す図である。
【図8】本実施例の例22において調製したゼオライトの粉末XRD分析の結果を示す図である。
【図9】本実施例の例22において調製したゼオライトのSEM分析の結果を示す図である。
【図10】本実施例の例24において調製したゼオライトの粉末XRD分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
序論
用語「活性供給源」は、反応することができ、ゼオライト構造に組み込むことができる形態の元素を供給することができる試薬又は前駆体物質を意味する。本明細書において、「供給源」及び「活性供給源」という用語は同じ意味で使用される。
【0014】
用語「周期表」は、IUPACの2007年6月22日付けの版の元素周期表を指す。また、周期表の族についての番号付け体系は、Chemical and Engineering News、63(5)27(1985)に記載されている通りである。
【0015】
用語「ゼオライト」は(a)中間体ゼオライト、及び(1)直接合成又は(2)ポスト結晶化処理(二次的合成)により製造される(b)最終又は目標ゼオライトを含む。二次的合成技術は、ヘテロ原子格子置換技術及び酸浸出などの技術を使用して、中間体ゼオライトから目標ゼオライトへの合成を可能にする。例えば、アルミノシリケートは、BをAlにポスト結晶化ヘテロ原子格子置換することにより中間体ボロシリケートから合成することができる。そのような技術は知られており、例えば、2004年9月14日に発行された、C.Y.Chen及びStacey Zonesの米国特許第6,790,433号明細書に記載されている。
【0016】
状況が許せば、本出願において引用されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、そのような開示が本発明と矛盾しない限り、それらの全体が本明細書に引用により本明細書に包含される。
【0017】
別段の定めがない限り、個別の成分又は成分の混合物を選択することができる元素、物質又は他の成分の属性の記載は、リストされた成分及びそれらの混合物のあらゆる可能な亜種の組合せを含有するように意図される。また、「包む」及びその変形は、リスト中の項目の記載が、本発明の物質、組成及び方法にまた有用であり得る他の類似の項目を排除しないように、非限定的とすることと意図される。
【0018】
反応混合物
本発明によると、
(a)(1)シリコンの酸化物、ゲルマニウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の少なくとも1種の活性供給源;(2)アルミニウムの酸化物、ホウ素の酸化物、鉄の酸化物、ガリウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の1種又は複数の供給源;(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の活性供給源;(4)水酸化物イオン;(5)次の構造式(1)から(5)により表されるSDAジカチオンからなる群から選択されるSDA:
【化6】


1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオン、
【化7】


1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオン、
【化8】


1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、
【化9】


1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオン、
【化10】


1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオン
及び(6)水を
含有する反応混合物を調製すること;及び
(b)ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下で反応混合物を維持すること
によりゼオライトのSSZ−26/33ファミリーに属するゼオライトを調製する方法が提供される。
【0019】
形成されたゼオライトが中間体のゼオライトである場合、本発明の方法は、ヘテロ原子格子置換技術及び酸浸出などのポスト合成技術により目標ゼオライトを合成するさらなるステップを含む。
【0020】
ゼオライトが形成される反応混合物の組成は、モル比で、下記表1に識別される。ここで、組成変数Y、W、QとMは、本明細書において上記の通りである。
【表2】

【0021】
ゼオライトがSSZ−26ファミリーに属するゼオライトである、一副実施形態において、ゼオライトが形成される反応混合物の組成は、モル比で、下記表2に識別される。ここで、QとMは、本明細書において上記の通りである。
【表3】

【0022】
ゼオライトがSSZ−33ファミリーに属するゼオライトである、別の副実施形態において、ゼオライトが形成される反応混合物の組成は、モル比で、下記表3に識別される。ここで、QとMは、本明細書において上記の通りである。
【表4】

【0023】
本明細書において有用なSiの供給源は、ヒュームドシリカ、沈降シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイダルシリカ、オルトケイ酸テトラアルキル(例えばオルトケイ酸テトラエチル)及びシリカ水酸化物を含む。本明細書において有用なGeの供給源は、酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムエトキシドを含む。
【0024】
任意の組成変数Wに対して選択される元素の供給源は、Wに対して選択される元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、アセテート、オキサレート、アンモニウム塩及びサルフェートを含む。反応混合物に使用される場合、酸化アルミニウム(Al)の典型的な供給源は、アルミネート、アルミナ、並びにAlCl、Al(SO、水酸化アルミニウム(Al(OH))、カオリン粘土及び他のゼオライトなどのAl化合物を含む。酸化アルミニウムの供給源の例はLZ−210ゼオライト(一種のYゼオライト)である。ゲルマニウム、ホウ素、ガリウム、チタン及び鉄は、それらのアルミニウムとシリコンの相当物に対応する形態で加えることができる。
【0025】
本明細書において上に記載されたように、本明細書に記載された各実施形態に対して、反応混合物(本明細書においてMと称する)は、周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の活性供給源を使用して形成される。一副実施形態において、反応混合物は、周期表の1族からの元素の活性供給源を使用して形成される。別の副実施形態において、反応混合物はナトリウム(Na)の活性供給源を使用して形成される。晶析工程を損なわないM含有化合物はいずれも適切である。そのような1族と2族の元素の供給源は、その酸化物、水酸化物、ニトレート、サルフェート、ハロゲン化物、オキサレート、シトレート及びアセテートを含む。
【0026】
SDAジカチオンは、ゼオライトの形成を損なわない任意のアニオンであってもよいアニオン(X)と、通常、組み合わせる。代表的なアニオンは、周期表の18族から元素(例えばフッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物)、水酸化物、アセテート、サルフェート、テトラフルオロボレート、カルボキシレートなどを含む。
【0027】
本明細書において構造式(1)及び(2)によって表される本発明の1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタン及び1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオンSDAは、1,4−ジブロモブタンや1,5−ジブロモペンタンなどのジハロアルカンをN−シクロヘキシルピロリジンと反応させることにより合成することができる。一実施形態において、N−シクロヘキシルピロリジンは1−ピロリジノ−1−シクロヘキセンの水素化により合成される。1−ピロリジノ−1−シクロヘキセンの水素化の方法は、2003年4月8日に発行されたSaleh Elomariの米国特許第6,544,495号明細書の例7から教示される。
【0028】
本明細書において式(3)により表される本発明の1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオンSDAは、1,5−ジブロモペンタンなどのジハロアルカンをジメチルシクロヘキシルアミンと反応させることにより合成することができる。
【0029】
本明細書において構造式4により表される本発明の1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンSDAは、1,4−ジブロモブタンなどのジハロアルカンをN−シクロヘキシルピペリジンと反応させることにより合成することができる。
【0030】
本明細書において構造式5により表される本発明の1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンSDAは、1,4−ジブロモブタンなどのジハロアルカンをN−シクロペンチルピペリジンと反応させることにより合成することができる。一実施形態において、N−シクロペンチルピペリジンは1−ピペリジノ−1−シクロペンテンの水素化により合成される。
【0031】
本明細書に記載された各実施形態について、ゼオライト反応混合物は2種以上の供給源により供給することができる。また、2種以上の反応成分は1種の供給源により提供することもできる。例えば、ボロシリケートゼオライトは、1999年10月26日にCormaらに発行された、米国特許第5,972,204号明細書から教示されるホウ素含有ベータゼオライトを使用して、本発明の方法により合成することができる。
【0032】
反応混合物は、バッチ式又は連続式のいずれかで調製することができる。本明細書において記載された結晶質ゼオライトの結晶のサイズ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件に応じて変えることができる。
【0033】
結晶化及びポスト合成処理
実際上、ゼオライトは
(a)本明細書において上に記載された反応混合物を調製すること;
及び
(b)ゼオライトの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下で反応混合物を維持すること
により調製される。
【0034】
ゼオライトの結晶が形成されるまで、反応混合物は高温で維持される。水熱結晶化は、反応混合物が自原性の圧力を受けるように、圧力下で、通常オートクレーブ内で、125℃から200℃の間の温度で、通常、行われる。
【0035】
反応混合物は、結晶化ステップの間、穏やかな撹拌又は揺動にさらしてもよい。本明細書において記載されたゼオライトが、非晶質物質、ゼオライトと一致しない骨組みトポロジーを有する単位格子などの不純物及び/又は他の不純物(例えば有機炭化水素)を含んでいてもよいことは、当業者により理解されるだろう。
【0036】
水熱結晶化ステップの間、ゼオライト結晶を、反応混合物から自然に核形成させることができる。種材料としてゼオライト結晶を使用すると、完全結晶化が起こるのに必要な時間を縮小する点で有利となり得る。さらに、種を施すことにより、何らかの望まれない相に対して、核形成及び/又はゼオライトの形成を促進することによって、得られる生成物の純度を上げることができる。種として使用される場合、種結晶は、反応混合物に使用される組成変数Yの供給源の重量の1%から10%の間の量が加えられる。
【0037】
一旦ゼオライト結晶が形成すると、固体生成物は濾過などの標準的な機械的分離技術により反応混合物から分離される。結晶は水洗浄され、次いで、乾燥され合成したままのゼオライト結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧で又は真空下で実施することができる。
【0038】
ゼオライトは合成したまま使用することができるが、通常熱処理される(か焼される)。用語「合成したまま」は、結晶化後でSDAカチオン及び/又はMを除去する前の形態の、ゼオライトを指す。SDAは、熱処理(例えばか焼)により、好ましくは、酸化雰囲気(例えば空気、0kPaを超える酸素分圧のガス)中で当業者にとって容易に決定できる、ゼオライトからSDAを除去するのに十分な温度で除去することができる。SDAはまた、2005年11月1日に発行された、NavrotskyとParikhの米国特許第6,960,327号明細書に記載されている光分解技術(例えば、ゼオライトから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下で可視光線より短い波長の光又は電磁波にSDA含有ゼオライト生成物をさらして)により除去することができる。
【0039】
ゼオライトは、続いて、水蒸気、空気又は不活性ガス中で、約200℃から約800℃の範囲の温度で、1から48時間、又はそれ以上の範囲の時間、か焼することができる。通常、アルカリ金属カチオン(もしあれば)をイオン交換により除去し、それを水素、アンモニウム又は任意の所望の金属イオンに代えることが望ましい。
【0040】
形成されたゼオライトが中間体ゼオライトである場合、目標ゼオライトは、ヘテロ原子格子置換技術及び酸浸出技術などのポスト合成技術を使用して達成することができる。
【0041】
本発明の方法から製造されるゼオライトは、種々様々の物理的形状に形成することができる。概して言えば、モレキュラーシーブは、2メッシュ(Tyler)ふるいを通過し、且つ400メッシュ(Tyler)ふるい上に保持されるのに十分な粒子サイズを有する、粉末、顆粒又は押出物などの成形物の形態であってよい。有機結合剤を用いる押出加工などによって触媒を成型する場合、ゼオライトは乾燥の前に押出し加工し、又は乾燥し又は部分的に乾燥し、次いで、押出し加工することができる。
【0042】
ゼオライトは、有機変換工程において使用される温度及び他の条件に耐性のある他の物質と複合することができる。そのようなマトリクス物質は、活性及び不活性物質並びに合成又は天然ゼオライト、加えて、粘土、シリカ及び金属酸化物などの無機物質を含む。そのような物質及び使用することができる手法の例は、1990年5月20日にZonesらに発行された、米国特許第4,910,006号明細書、及び1994年5月31日にNakagawaに発行された米国特許第5,316,753号明細書に開示されている。
【0043】
ゼオライトの特性評価
本発明の方法により製造されるゼオライトは、表4(モル比で)に記載されているような、合成したままの無水物の状態の組成を有する。ここで、Y、W、Q及びMは本明細書において上に記載された通りである。
【表5】

【0044】
本発明の方法により製造されるゼオライトは、二次的合成処理を受けた後、表4に記載されている組成を有する。ここで、YO/Wモル比は20〜∞である。
【0045】
一副実施形態において、本発明の方法により製造されるゼオライトは、ゼオライトのSS2−26ファミリーに属し、表5(モル比で)に記載されている、合成したままの無水物の状態の組成を有する。ここで、QとMは本明細書において上に記載された通りである。
【表6】

【0046】
別の副実施形態において、本発明の方法により製造されるゼオライトは、ゼオライトのSSZ−33ファミリーに属し、合成したままの無水物の状態において、表6(モル比で)に記載されている組成を有している。ここで、QとMは本明細書において上に記載された通りである。
【表7】

【0047】
本発明の方法により合成されるゼオライトは、それらのX線回折パターンによって特徴づけられる。表7及び8のX線回折パターン線はそれぞれ、本発明によって製造される、合成したままのSSZ−26及びSSZ−33−型ゼオライトにとって代表的である。回折パターンにおける軽微な変異は、格子定数の変化による特定の試料の骨組み種のモル比における変化に起因することがある。さらに、十分に小さい結晶はピークの形状及び強度に影響し、かなりのピークブロードニングをもたらす。回折パターンにおける軽微な変異は、また調製に使用される有機化合物における変異、及び試料ごとのY/Wモル比における変異に起因する場合がある。か焼はまた、X線回折パターンの軽微なずれを引き起こす場合がある。これらの軽微な摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変わらない。
【表8】


【表9】

【0048】
表9及び10のX線回折パターン線それぞれは、本発明によって製造された、か焼したSSZ−26及びSSZ−33−型ゼオライトにとって代表的である。
【表10】


【表11】

【0049】
本明細書において示した粉末X線回折パターンは、標準的技術により集められた。照射はCuK−α照射であった。θをブラッグ角とした2θの関数としてのピークの高さと位置は、ピークの(バックグラウンドに対して調整した)絶対強度相対値から読み取り、記録線に対応する面間隔dをオングストロームで、計算することができる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は本発明を説明するが、それに限定するものではない。
【0051】
SDAの合成
(例1)
1−ピロリジノ−1−シクロヘキセンからのN−シクロヘキシルピロリジンの合成
2003年4月8日に発行されたSaleh Elomariの米国特許第6,544,495号明細書の例7からの教示によって、N−シクロヘキシルピロリジンを1−ピロリジノ−1−シクロヘキセン(Sigma−Aldrich)の水素化により合成した。
【0052】
(例2)
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオンの合成
250mL丸底フラスコ内で、例1で合成したN−シクロヘキシルピロリジン18.84gを、アセトン75mLに溶解した。次いで、1,4−ジブロモブタン11.96gをこの溶液に加えた。結果として得られた溶液を室温で3週間静置した。次いで、アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、結果として得られた残渣は、イソプロパノールに溶解し、次に、この溶液を1週間にわたり2〜3時間の間、断続的に還流した。それぞれの還流時間後に、イソプロパノールを除去し、残渣はアセトンで洗浄した。次いで、生成物の第四級ジアンモニウム塩は黄褐色固体として沈澱した。次いで、黄褐色固体を真空濾過により単離した。次いで、結果として得られた固体は、イソプロパノールで完全にすすぎ、反応体又はモノ第四級生成物を除去した。続いて生成物を、アセトンで、次いで、エチルエーテルですすいだ。
【0053】
乾燥の後、生成物塩の純度を1H及び13C NMRにより確認した。次いで、濾液を合わせ、イソプロパノール溶液の還流を繰り返して、追加の生成物を得た。次いで、精製した収穫物を合わせ、この塩を水に溶解し、2倍過剰のAg−1−X8Biorad水酸化物アニオン交換樹脂を加えて、一晩で交換を起こすことによりイオン交換して水酸化物の形態にした。次いで、樹脂を濾過により除去し、結果として得られたSDA溶液は滴定して水酸化物濃度を求めた。
【0054】
(例3)
1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオンの合成
250mL丸底フラスコ内で、例1で合成したN−シクロヘキシルピロリジン18.84gを、アセトン75mLに溶解した。次いで、1,5−ジブロモブタン11.96gをこの溶液に加えた。結果として得られた溶液を室温で3週間静置した。次いで、アセトンを回転蒸発により除去した。次いで、結果として得られた残渣は、イソプロパノールに溶解し、次に、この溶液を1週間にわたり2〜3時間の間、断続的に還流した。それぞれの還流時間後に、イソプロパノールを除去し、残渣はアセトンで洗浄した。次いで、生成物の第四級ジアンモニウム塩が黄褐色固体として沈澱した。次いで、黄褐色固体は真空濾過により単離した。次いで、結果として得られた固体は、イソプロパノールで完全にすすぎ、反応体又はモノ第四級生成物を除去した。続いて生成物を、アセトンで、次いでエチルエーテルですすいだ。
【0055】
乾燥の後、生成物塩の純度を1H及び13C NMRにより確認した。次いで、濾液を合わせ、イソプロパノール溶液の還流を繰り返して、追加の生成物を得た。次いで、精製した収穫物を合わせ、この塩を水に溶解し、2倍過剰のAg−1−X8Biorad水酸化物アニオン交換樹脂を加えて、一晩で交換を起こすことによりイオン交換して水酸化物の形態にした。次いで、樹脂を濾過により除去し、結果として得られたSDA溶液は0.1NのHClで滴定して水酸化物濃度を求めた。
【0056】
(例4)
1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオンの合成
26.5のジメチルシクロヘキシルアミン(Aldrich Chemical Company)をメタノール100mLに加えた。次いで、1,5−ジブロモペンタン20.0gを溶液に加え、5分間撹拌した。次いで、その溶液を室温で72時間保持した。その後、その溶液を、次に60℃で4時間加熱した。次いで、メタノールは回転蒸発により除去し、次いでアセトン約100mLを残渣に加え、固体生成物の沈殿が起こるまで混合した。次いで、固体は濾過により回収し、エーテルで洗浄した。この固体を風乾した。1H及び13C NMRは、生成物が、検出限界内で純粋な1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンであることを示した。
【0057】
次いで、このジブロミド塩を水に溶解し、2倍過剰のAG−1−X8水酸化物アニオン交換樹脂(Bio−Rad Laboratories,Inc.)を加えて、一晩で交換を起こすことによりイオン交換して水酸化物の形態にした。次いで、樹脂を濾過により除去し、結果として得られたSDA溶液は0.100NのHClで滴定して水酸化物濃度を求めた。
【0058】
(例5)
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンの合成
125mLの鋼製Parrオートクレーブのテフロン(登録商標)ライナー中で、N−シクロヘキシルピペリジン(Lancaster)10.6gをアセトニトリル50mLに加えた。次いで、この混合物に1,4−ジブロモブタン6.19gを加えた。次いで、ライナーをオートクレーブの内部で蓋し密閉した。次いで、密封したオートクレーブを、オーブン内に置き、静置した状態で75℃で5日間加熱した。次いで、オートクレーブをオーブンから取り出し、室温に放冷した。次いで、反応物から固体生成物を濾過により取り出し、アセトニトリルで洗浄しN−シクロヘキシルピペリジンの溶解しないHBr塩を除去した。次いで、固体をアセトンとエチルエーテルで洗浄し、次いで、乾燥しジ第四級生成物約8.75gを得た。乾燥の後、生成物塩の純度は1H及び13C NMRにより確認した。次いで、精製した収穫物を、この塩を水に溶解し、2倍過剰のAg−1−X8水酸化物アニオン交換樹脂(Bio−Rad Laboratories,Inc.)を加えて、一晩で交換を起こすことによりイオン交換して水酸化物の形態にした。次いで、樹脂を濾過により除去し、結果として得られたSDA溶液は滴定して水酸化物濃度を求めた。
【0059】
(例6)
1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンの合成
1−ピペリジノ−1−シクロペンテンを以下のように合成した。オーバーヘッド撹拌機を装備した1Lの三つ首丸底フラスコ内で、シクロペンタノン20.0gをヘキサン120mLに加えた。次いで、ピペリジン18.43gをこの溶液に加えた。次いで、無水硫酸マグネシウム38.0gを加えて反応中に生成した水を捕捉し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.25gを加えた。次いで、この混合物を4日間にわたりオーバーヘッド撹拌しながら還流した。この懸濁液を放冷し、マグネシウム塩を濾過により除去した。次いで、ヘキサン溶媒及び未反応のピペリジンを取り除くために、ヘキサン溶液を約77℃、60トールで回転蒸留した。
【0060】
2003年4月8日に発行されたSaleh Elomariの米国特許第6,544,495号明細書の例7からの教示により、エナミン、1−ピペリジノ−1−シクロペンテンからN−シクロペンチルピペリジンへの水素化を行った。
【0061】
1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンは以下のように合成した。125mLの鋼製Parrオートクレーブのテフロン(登録商標)ライナー中で、N−シクロペンチルピペリジン20.96gをアセトニトリル60mLに加えた。次いで、1,4−ジブロモブタン11.33gを混合物に加えた。次いで、ライナーをオートクレーブの内部で蓋し密閉した。次いで、密封したオートクレーブを、オーブン内に置き、静置した状態で75℃で5日間加熱した。次いで、オートクレーブをオーブンから取り出し、室温に放冷した。次いで、この反応からの固体生成物を濾過により取り出し、アセトンで洗浄し溶媒、未反応物質、又はモノ第四級生成物を除去した。次いで、固体はエチルエーテルで洗浄し乾燥した。
【0062】
乾燥の後、生成物塩の純度を1H及び13C NMRによりチェックした。初期の生成物は、ジブロモアルカンの脱ハロゲン化水素の結果として形成されたN−シクロペンチルピペリジンのHBr塩が微量であることを示した。この生成物を、水酸化アンモニウムの最小量の濃厚水溶液中で固形分をスラリー化することによりさらに精製した。次いで、その懸濁液をエチルエーテルで抽出してN−シクロペンチルピペリジンを除去し、次いで、懸濁液はクロロホルムで抽出し、クロロホルム溶媒の回転蒸発の後に18.83gの所望生成物を単離した。続いて、生成物をアセトンで、次いでエチルエーテルですすいだ。
【0063】
乾燥の後、生成物塩の純度を1H及び13C NMRにより確認した。次いで、精製した収穫物を、この塩を水に溶解し、2倍過剰のAg−1−X8水酸化物アニオン交換樹脂(Bio−Rad Laboratories,Inc.)を加えて、一晩で交換を起こすことによりイオン交換して水酸化物の形態にした。次いで、樹脂を濾過により除去し、結果として得られたSDA溶液は滴定して水酸化物濃度を求めた。
【0064】
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオンを使用するボロシリケートSSZ−33の合成
(例7)
例2で合成した1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンの水酸化物溶液3.62g([OH]=0.50mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.72g及び脱イオン水4.43gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次いで、ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gをこの溶液に溶解した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で7日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。
【0065】
結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRDにより分析した。結果として得られた粉末XRDパターンを図1に示す。この物質がSSZ−26/33ファミリーの構成員であることを示す。下記の表11は、結果として得られたゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表12】

【0066】
結果として得られたゼオライト生成物を、マッフル炉内でか焼し、2%酸素/98%窒素の流れの下で、1℃/分の速度で595℃に加熱し、595℃で5時間保持し、次いで、粉末XRDにより分析した。下の表12は、か焼したゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表13】

【0067】
(例8)
ホウ酸ナトリウム十水和物0.052gを(ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gの代わりに)使用したこと、また、SSZ−33の種0.03gを加えたこと以外、例7の手順を繰り返した。生成物を7日後に回収した。XRDは、この物質が例7で調製したものと類似であることを示した。
【0068】
(例9)
例7からの種0.02gを加えたこと、また、合成を160℃の代わりに170℃で行ったこと以外、例7の手順を繰り返した。オートクレーブを、48時間(7日ではなく)の後にオーブンから取り出した。粉末XRDは、生成物が、例7で生成した生成物と類似であることを示した。
【0069】
(例10)
ホウ酸ナトリウム十水和物0.144gを(ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gの代わりに)使用したという点を除いて、例9の手順に従った。粉末XRDは、生成物が、例7で生成した生成物と類似であることを示した。下の表13は、結果として得られたゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表14】

【0070】
結果として得られたゼオライト生成物を、マッフル炉内でか焼し、2%酸素/98%窒素の流れの下で、1℃/分の速度で595℃に加熱し、595℃で5時間保持し、次いで、粉末XRDにより分析した。下の表14は、か焼したゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表15】

【0071】
(例11)
ホウ酸ナトリウム十水和物0.072gを(ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gの代わりに)使用したという点を除いて、例9の手順に従った。160℃で3日間その反応を進ませた。粉末XRDは、生成物が、例7で生成した生成物と類似であることを示した。
【0072】
(例12)
例2の1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジブロミド塩中間体0.47g、1N水酸化ナトリウム2.02g及び脱イオン水6.04gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次いで、ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gをこの溶液に溶解した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次に例8からのゼオライトの種0.02gをゲルに混合した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で2日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。粉末X線回折は、この物質がSSZ−26/33ファミリーの構成員であることを示した。
【0073】
(例13)
ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gの代わりにホウ酸ナトリウム十水和物0.144gを使用し、160℃で4日間実施したという点を除いて、例12の手順に従った。
【0074】
結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRD及びSEMにより分析した。結果として得られたXRDパターンを図2に示す。粉末XRDは、試料がSSZ−33であることを示した。そのSEM像を図3及び4に示す。
【0075】
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオンを使用するアルミノシリケートSSZ−26の合成
(例14)
例2で合成した1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンの水酸化物溶液6.87g([OH]=0.50mmol/g)、1N水酸化ナトリウム3.00g及び脱イオン水1.09gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54g及びLZY−62ゼオライトY0.25gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、下記の例19からの0.05gの種をゲルに加えた。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で7日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。
【0076】
結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRD及びSEMにより分析した。結果として得られたXRDパターンを図5に示す。粉末XRDは、試料がSSZ−26/33ファミリーの構成員であることを示した。図6は、生成物のSEM像を示す。
【0077】
(例15)
例14からの種0.03gがゲルに含有され、また、合成は170℃で4日間実施されたという点を除いて、例14の手順を繰り返した。粉末XRDパターンは、生成物がわずかなゼオライトY不純物を含むSSZ−26型生成物であることを示した。
【0078】
(例16)
反応が165℃で5日間実施されたという点を除いて、例15の手順を繰り返した。粉末XRDパターンは、生成物が純粋なSSZ−26−型生成物であることを示した。製造したままの生成物のSi/Al(ICP法による)は、14.0であった。CHN燃焼分析による、炭素、水素及び窒素含有率は、それぞれ13.4%、2.1%及び1.34%であった。
【0079】
(例17)
例2で合成した1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンの水酸化物溶液220.7g([OH]=0.62mmol/g)、1N水酸化ナトリウム120.0g及び脱イオン水97.7gを、オーバーヘッド撹拌機を装備した1LのParrスチール製オートクレーブ反応器のテフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)32.0g及びLZY−62ゼオライトY10.0gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。例16の手順に従って調製したゼオライトの種2.0gをゲルに加えた。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。オーバーヘッド撹拌機は200rpmの速度で回転させた。オートクレーブを8時間にわたって165℃に加熱し、次いで、165℃で108時間保持した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。次いで、オーブン内で95℃で12時間にわたって固体を乾燥した。製造したままの固体生成物の全収量は41.93gであった。
【0080】
結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRD及びSEMにより分析した。粉末X線回折は、生成物が純粋なSSZ−26型ゼオライトであることを示した。図7は、生成物のSEM顕微鏡写真を示す。下記の表15は、結果として得られたゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表16】

【0081】
結果として得られたゼオライト生成物を、マッフル炉内でか焼し、2%酸素/98%窒素の流れの下で、1℃/分の速度で595℃に加熱し、595℃で5時間保持し、次いで、粉末XRDにより分析した。下の表16は、か焼したゼオライト生成物の粉末X線回折線を示す。
【表17】

【0082】
1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオンを使用するアルミノシリケートSSZ−26の合成
(例18)
例3で合成した1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンの水酸化物溶液2.28g([OH]=0.56mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.86g及び脱イオン水1.18gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.48g及びLZY−52ゼオライトY0.15gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で26日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。粉末XRDは、この物質がゼオライトY、層状物質、少量のクリストバライト及び少量のSSZ−26型ゼオライトであることを示した。
【0083】
(例19)
例18からの0.03gの生成物を種として使用して例18を繰り返した。その反応を26日ではなく18日間進ませた。粉末XRDは、生成物が主にSSZ−26型生成物、ゼオライトY及び少量の層状物質であることを示した。
【0084】
(例20)
例3で合成した1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンの水酸化物溶液6.07g([OH]=0.56mmol/g)、1N水酸化ナトリウム3.00g及び脱イオン水1.89gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.80g及びLZY−62ゼオライトY0.25gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、次に例19からの種0.05gをゲルに加えた。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で18日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。粉末XRDは、生成物が、層状不純物及びゼオライトYを含み、主にSSZ−26生成物であるものに類似であることを示した。
【0085】
(例21)
例3で合成した1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンの水酸化物溶液3.05g([OH]=0.56mmol/g)、1N水酸化ナトリウム1.50g及び脱イオン水1.21gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.40g及びLZY−62ゼオライトY0.125gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で21日間加熱した。粉末XRDは、生成物がモルデナイトと石英の不純物を含み、主にはSSZ−26型生成物であることを示した。
【0086】
1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオンを使用するボロシリケートSSZ−33の合成
(例22)
例4で合成した1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンの水酸化物溶液3.35g([OH]=0.54mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.72g及び脱イオン水4.29gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次いで、ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gをこの溶液に溶解した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で14日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。
【0087】
結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRD及びSEMにより分析した。結果として得られたXRDパターンを図8に示す。粉末XRDは、試料が純粋なSSZ−33であることを示した。図9は、生成物のSEM像を示す。
【0088】
(例23)
例4で合成した1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンの水酸化物溶液2.36g([OH]=0.54mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.86g及び脱イオン水2.54gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.48g及びLZY−52ゼオライトY0.15gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で14日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。粉末X線回折パターンは、物質が純粋なNu−87であることを示した。
【0089】
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンを使用するボロシリケートSSZ−33の合成
(例24)
例4で合成した1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンの水酸化物溶液3.52g([OH]=0.51mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.72g及び脱イオン水4.12gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次いで、ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gをこの溶液に溶解した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で5日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRDにより分析した。結果として得られたXRDパターンを図10に示す。粉末X線回折は、この物質がSSZ−26/33ファミリーの構成員であることを示した。
【0090】
1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンを使用するボロシリケートSSZ−33の合成
(例25)
例6で合成した1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンの水酸化物溶液3.30g([OH]=0.54mmol/g)、1N水酸化ナトリウム0.72g及び脱イオン水4.34gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次いで、ホウ酸ナトリウム十水和物0.036gをこの溶液に溶解した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.54gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で7日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRDにより分析した。粉末X線回折パターンは、この物質がSSZ−26/33ファミリーの構成員であることを示した。
【0091】
1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンを使用するアルミノシリケートSSZ−26の合成
(例26)
例5で合成した1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンの水酸化物溶液2.48g([OH]=0.51mmol/g)、1N水酸化ナトリウム1.50g及び脱イオン水2.06gを、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。次に、CAB−O−SIL M−5ヒュームドシリカ(Cabot Corporation)0.40g及びLZY−52ゼオライトY0.125gを溶液に加えて混合し、均一なゲルを生成した。次いで、ライナーに蓋をし、Parrスチール製オートクレーブ反応器内に置いた。次いで、オートクレーブをオーブン内で回転棒(43rpm)に固定し160℃で14日間加熱した。冷却した反応器から真空濾過により固体生成物を回収し、多量の水で洗浄した。結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRDにより分析した。粉末X線回折パターンは、回収した生成物がSSZ−26、ゼオライトY及び層状物質の混合物であることを示した。
【0092】
(例27)
SSZ−26種0.03gをゲル混合物に加え、合成は160℃で7日間のみ加熱したこと以外、例26を繰り返した。結果として得られたゼオライト生成物を粉末XRDにより分析した。粉末XRDパターンは、生成物が少量の方沸石不純物を含むSSZ−26であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)シリコンの酸化物、ゲルマニウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の少なくとも1種の活性供給源;(2)アルミニウムの酸化物、ホウ素の酸化物、鉄の酸化物、ガリウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化物の1種又は複数の供給源;(3)周期表の1族及び2族から選択される元素の少なくとも1種の活性供給源;(4)水酸化物イオン;(5)1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオン、1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオン、1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオン、1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオン及び1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンからなる群から選択される構造制御剤;及び(6)水を含有する反応混合物を調製すること;及び
(b)ゼオライトの結晶を形成するのに十分な条件下で該反応混合物を維持すること
を含む、ゼオライトを調製する方法。
【請求項2】
反応混合物が次のモル比:
【表1】


(ここで、
(1)Yは、シリコン、ゲルマニウム及びこれらの混合物からなる群から選択され;
(2)Wは、アルミニウムの酸化物、ホウ素の酸化物、鉄の酸化物、ガリウムの酸化物及びこれらの混合物からなる群から選択され;
(3)cは1又は2であって、cが1である場合にはdは2であり、cが2である場合にはdは3又は5であり;
(4)Mは、周期表の1族及び2族から選択される元素であり;
(5)Qは構造制御剤である)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合物が次のモル比:
【表2】


を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Yがシリコンであり、Wがアルミニウムであり、反応混合物が次のモル比:
【表3】


を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
反応混合物が次のモル比:
【表4】


を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Yがシリコンであり、Wがホウ素であり、反応混合物が次のモル比:
【表5】


を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物が次のモル比:
【表6】


を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
構造制御剤が1,4−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ブタンジカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
構造制御剤が1,5−ビス(N−シクロヘキシルピロリジニウム)ペンタンジカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
構造制御剤が1,5−ビス(N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム)ペンタンジカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
構造制御剤が1,4−ビス(N−シクロヘキシルピペリジニウム)ブタンジカチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
構造制御剤が1,4−ビス(N−シクロペンチルピペリジニウム)ブタンジカチオンである、請求項1に記載の方法。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−505146(P2012−505146A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531070(P2011−531070)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059242
【国際公開番号】WO2010/042387
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】