説明

新規な樹脂およびその製造方法

【課題】高分子量で高耐衝撃性を有するブロックコポリマーおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示される構造単位を有するブロックコポリマー。-R1−A−B−A−R2−(1)〔式中のR1はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基であり、R2はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基、若しくはポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基である。Aは、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートから誘導される-(C=O)-[O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-(C=O)-]nである。Bは、ヒドロキシ末端ポリマー、メルカプタン末端ポリマー、又はアミノ末端ポリマーの基である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なブロックコポリマーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシメチレン共重合体は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、および成形性等において優れた特性を持っており、構造材料や機構部品等として電気機器、自動車部品、および精密機械部品等に広く使用されている。
一般的にオキシメチレン共重合体は、ホルムアルデヒドまたはその環状オリゴマーであるトリオキサンやテトラオキサンとこれらと共重合可能なモノマーとを共重合させて得られる。しかし、このプロセスで高分子量のオキシメチレン共重合体を得ようとした場合には、メルトインデックスが非常に小さいことから、重合工程において所要動力が大きく変動したり、更には押出工程でも所要動力や樹脂温度の制御のために生産性が著しく低下するなどの問題がある。また、重合時に分子量調節剤を用いることで、メルトインデックスを調節することができるが、高分子量のオキシメチレン共重合体を得ようとした場合には、分子量調節剤の添加量には限界がある。さらに、このプロセスにおいて、ターモノマーを加えた架橋、分岐などの重合変性によるオキシメチレン共重合体の物性改良等が行われるが、得られた樹脂のメルトインデックスが非常に小さい場合には、前記と同様の問題点を有することとなる。
【0003】
近年、重合工程よりも後工程において、鎖連結剤を用いてオキシメチレン共重合体を高分子量化する方法が報告されている。例えば特許文献1では、オキシメチレン共重合体および共成分を鎖連結したマルチブロックポリマーについて開示されている。しかしマルチブロックポリマー化による耐衝撃性の付与について報告されているが、オキシメチレン共重合体の末端基の構造の得られた樹脂への効果については具体的に述べられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−504332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本発明は、高分子量で高耐衝撃性を有するブロックコポリマーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エステル交換触媒の存在下で、オキシメチレン共重合体と、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートおよび選定されたポリマーを溶融混練することで、高分子量で高耐衝撃性のブロックコポリマーが得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記式(1)で示される構造単位を有するブロックコポリマー及びその製造方法に関するものである。
【0007】
(化1)
- R1−A−B−A−R2− (1)
〔式中のR1はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基であり、R2はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基、若しくはポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基である。Aは、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートから誘導される-(C=O)-[O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-(C=O)-]nである。Bは、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニル芳香族化合物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリアルカジエン、ポリウレタン、又はポリシロキサンから誘導されるヒドロキシ末端ポリマー、メルカプタン末端ポリマー、又はアミノ末端ポリマーの基である。〕
【発明を実施するための形態】
【0008】
オキシメチレン共重合体は、下記式(2)で表される構造を有する重合体である。
【0009】
【化2】

(式中、R0,R0'は同一または異なっても良く、水素原子、アルキル基またはフェニル基を示す。mは2〜6の整数を示す。)
式(2)のオキシアルキレン単位としては、好ましくはオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位が挙げられる。
本発明におけるオキシメチレン共重合体としては、例えば、ホルムアルデヒドまたはその3量体(トリオキサン)、並びに、その4量体(テトラオキサン)と、エチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリキソカン、グリコールのホルマール、ジグリコールのホルマール等の炭素数2〜8の環状エーテルから製造されるオキシアルキレン単位構造を含有するオキシメチレンコポリマーが挙げられる。また、本発明で謂うコポリマーとは、2元共重合体のみならず、多元共重合体も含み、例えば、上記アセタールコポリマーに、更にオキシメチレン単位、オキシアルキレン単位以外のブロック構造を有するオキシメチレンブロックコポリマー、またはオキシメチレングラフトポリマー等を広く用いることができる。
【0010】
本発明で用いるオキシメチレン共重合体は、重合時に分子量調節剤を用いることで、分子量調節すると同時に末端基を変化させることができる。例えば、2,6−キシレノールを連鎖移動剤として用いた場合には、2,6−キシレノールに由来する末端構造を含むオキシメチレン共重合体が得られる。分子量調節剤としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、エステル、アミド、イミド、フェノ−ル類、アセタール化合物などが挙げられ、得られたオキシメチレン共重合体が、フェノール性水酸基末端を有するように、単独あるいは2種以上を混合して使用しても良い。特にフェノール、2,6-キシレノール、2,4,6-トリメチルフェノール、P-クロルフェノール、メチラール、ポリオキシメチレンジメトキシドは好適に用いられる。分子量調節剤の添加量は、トリオキサン100molに対して0.1〜5.0mol添加することが好ましく、重合条件や水分量、蟻酸のような連鎖移動能力のある不純物量に合わせて調節されるべきである。
【0011】
尚、本発明の樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で公知の添加剤および/または充填剤を添加することが可能であり、また、オキシメチレン共重合体の製造時にこれらを添加しても良い。添加剤としては、例えば結晶核剤、発泡核剤、酸化防止剤、可塑剤、艶消し剤、潤滑剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、カルボキシル基との反応性化合物、消臭剤、難燃剤、摺動剤、香料、抗菌剤等が挙げられる。特に、溶融混練後の樹脂の着色を防止するためにホウ酸化合物を添加することが好ましい。ホウ酸化合物の添加量は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して0.001〜1重量部添加することが好ましい。より好ましくは、0.005〜0.3重量部である。添加量が過少の場合は、所望の効果が充分得られず、また過大であると、酸性度が増してオキシメチレン共重合体の主鎖分解による分子量低下を引き起こしたり、熱安定性に問題が出る可能性がある。ホウ酸化合物の添加方法としては、特に限定されないが、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートの添加時に添加することが好ましい。オキシメチレン共重合体に直接添加した場合には、オキシメチレン共重合体の酸性度が増すため、オキシメチレン共重合体および得られた樹脂の分子量低下を招く可能性がある。ホウ酸化合物としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、三酸化ニホウ素、ピロホウ酸、無水ホウ酸、アルカリ金属ホウ酸塩、アルカリ土類金属ホウ酸塩が挙げられる。また、充填剤としてはガラス繊維、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。さらに、顔料、染料を加えて所望の色目に仕上げることも可能である。また、各種モノマー、末端処理剤、その他の樹脂、木粉、でんぷん等を加えて変性することも可能である。
【0012】
オキシメチレン共重合体との共重合成分としては、ジアリールエステルが好ましく用いることができ、例として炭酸ジフェニル、シュウ酸ジフェニルが挙げられる。中でも炭酸ジフェニルがより好ましく用いることができる。ポリカーボネートは、1以上のジヒドロキシ芳香族化合物のエステル交換で製造されたポリカーボネート、またはジアリールカーボネートとジヒドロキシ芳香族化合物のエステル交換で製造されたポリカーボネートを用いることができる。中でも、ジアリールカーボネートとジヒドロキシ芳香族化合物のエステル交換で製造された数平均分子量1 0 0 0 〜 5 0 0 0のポリカーボネートオリゴマーを好適に用いることができる。中でも、ターシャリーブチルフェノール末端基またはメチルサリチル末端基またはプロピルサリチル末端基またはベンジルサリチル末端基を有するポリカーボネートオリゴマーを好適に用いることができる。特に好ましくは、ターシャリーブチルフェノール末端基またはメチルサリチル末端基を有するポリカーボネートオリゴマーである。ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートの添加量は、オキシメチレン共重合体の−OH末端基mol数に対して0.001倍mol〜5倍mol添加することが好ましく、より好ましくは0.01倍mol〜2倍molである。
【0013】
前記(1)式中のBに誘導されるオキシメチレン共重合体との共重合成分としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、脂肪族ポリエステル、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニル芳香族化合物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリアルカジエン、ポリウレタン、ポリシロキサンが好ましく用いることができ、中でもポリアルキレングリコール、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネートがより好ましく用いることができる。
【0014】
Bに誘導される成分の添加量は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して、0.5〜1000重量部、好ましくは、1〜300重量部である。
【0015】
エステル交換触媒としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、四級アンモニウム化合物、第四ホスホニウムイオン、及びこれらの混合物を用いることができるが、好ましくはアルカリ金属アルコキシドを用いることができる。エステル交換触媒の添加量は、オキシメチレン共重合体100重量部に対して0.001〜1重量部添加することが好ましい。より好ましくは、0.005〜0.1重量部である。添加量が過少の場合は、エステル交換反応が充分進まず、また反応が遅延する。また過大であると、得られた樹脂が着色したり、熱安定性に問題が出る可能性がある。また、溶融混練後の樹脂の着色を防止するためにホウ酸化合物を用いる場合には、エステル交換触媒との拮抗作用が考えられるため、上述よりも多量のエステル交換触媒を随時使用することができる。
【0016】
本発明の樹脂を製造するに際しては、予めオキシメチレン共重合体を溶融混練し、オキシメチレン共重合体が溶融状態で共成分を添加することが好ましく、エステル交換触媒はオキシメチレン共重合体の溶融混練時に添加しても、共重合成分添加時に添加しても良い。
混合装置については特に限定されるものではないが、押出機を用いて混合する方法が短時間で連続的に処理できる点で工業的には推奨される。混合時の温度は100℃以下では樹脂の溶融粘度が高いか、または溶融しないため、具体的には100℃から300℃の範囲が好適である。300℃以上では樹脂の熱分解が起こるため好ましくない。300℃以下であっても高温下での着色や劣化、熱分解等を防止するために窒素雰囲気下で短時間に混合することが好ましい。具体的な混合時間としては20分以内が推奨される。また、樹脂中のオリゴマー、残存モノマー、発生ガス等の除去のためにベント口を設置して減圧下に混合することが好ましい。特に、発生ガスを効率的に除去することで、より短時間の混合で所望の樹脂が得られる。
本発明の樹脂は、オキシメチレン共重合体の単独品と比較して、高分子量化しており、さらに強度が改善される。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明はこれらに限定されるものでない。なお、実施例、比較例中の用語および測定方法を以下に示す。
【0018】
メルトインデックス(MI)の測定:ASTM−D1238に準じて、温度190℃、荷重2.16kgにて測定した。
試験片の成形:90℃で2時間予備乾燥したペレットを、ISO 294−1の方法に従い試験片を成形し、成形後のテストピースは、温度23±2℃、相対湿度50±5%の室内で48時間以上静置した後、引張試験、ノッチ付きシャルピー衝撃試験に供した。
引張特性試験:ISO 527−1、ISO 527−2の方法に従って、測定温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minの条件で引張破断伸び(標線間)、引張り強度(降伏点)を測定した。
シャルピー衝撃試験:ISO 179−2に準拠して測定した。
【0019】
〈実施例1〜2、比較例1〜4〉
材料(1):オキシメチレン共重合体。
POM1:連鎖移動剤として2,6−キシレノール(略語:2,6X)を用いたアセタールコポリマー[コモノマー量は樹脂に対して4重量部、メルトインデックス(29.0g/10分)]
POM2:連鎖移動剤としてメチラールを用いたアセタールコポリマー [コモノマー量は、樹脂に対して4重量部、メルトインデックス(27.0g/10分)]
材料(2):ターシャリーブチルフェノール末端のポリカーボネート7量体オリゴマー(三菱瓦斯化学製ユーピロンAL)
材料(3):ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製PEG6000S)
材料(4):ポリエチレングリコール(ADEKA社製PEG20000P)
材料(5):エステル交換触媒、ナトリウムメトキシド(東京化成工業社製、添加量0.02phr)
小型ミキサ(株式会社東洋精機製作所社製、商品名ラボプラストミル)を用い、上記
の各材料を表1に示す組成に従い、220℃で溶融混練した。こうして得られた樹脂を用いてメルトインデックスを測定し、得られた樹脂を射出成形機で成形し、機械物性を測定した。結果を表1に示した。
【0020】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(化1)
下記式(1)で示される構造単位を有するブロックコポリマー。
- R1−A−B−A−R2− (1)
〔式中のR1はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基であり、R2はフェノール性水酸基末端を有するポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基、若しくはポリオキシメチレンホモポリマー又はポリオキシメチレンコポリマーから誘導される基である。Aは、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートから誘導される-(C=O)-[O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-(C=O)-]nである。Bは、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニル芳香族化合物、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、ポリアルカジエン、ポリウレタン、又はポリシロキサンから誘導されるヒドロキシ末端ポリマー、メルカプタン末端ポリマー、又はアミノ末端ポリマーの基である。〕
【請求項2】
エステル交換触媒の存在下、フェノール性水酸基末端を有するオキシメチレン共重合体および共重合成分を溶融混練することを特徴とする請求項1記載のブロックコポリマーの製造方法。
【請求項3】
n=0〜20である請求項1記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
溶融混練したフェノール性水酸基末端を有するオキシメチレン共重合体、請求項1記載の式(1)中のBに誘導される成分、ジアリールカーボネートまたはポリカーボネートおよびエステル交換触媒を加え溶融混練することを特徴とする請求項1記載のブロックコポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2013−1786(P2013−1786A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133726(P2011−133726)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】