説明

新規な櫛型ポリマー

【課題】高感度・高解像性のレジスト材料として有用な新規櫛型ポリマーを提供する。
【解決手段】重量平均分子量500〜20,000のポリマー鎖からなるコア部と、該コア部に結合する下記一般式(1)で表されるアーム部とを有する高分子化合物。


[式中、Xは酸の作用により開裂され得る下記一般式(2)乃至式(5)で表される2価の結合基を表し、Yはポリマー鎖を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な櫛型ポリマー、詳細には、線状ポリマーをコア部とし、該コア部に酸の作用により開裂され得る基を介してアルケニルフェノール誘導体から誘導される構造を含むポリマー鎖をアーム部として付加した構造を有する櫛型ポリマーに関する。
本発明の櫛型ポリマーは、エキシマレーザー及び電子線用レジスト材料としての利用が期待される化合物である。
また本発明は、新規な櫛型ポリマーの合成に用いるアニオン重合用カップリング剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年レジスト材料においては、年々微細となるレジストパターンの形成性に優れる点が重要な特性として求められている。このような要求を満たす材料の一つとして星型ポリマーが提案されている。このうち代表的なものであるアルケニルフェノール系星型ポリマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン重合体をコア部とし、p−ヒドロキシスチレン−スチレン共重合体、又は、p−ヒドロキシスチレン−ブタジエン共重合体などをアーム部とする星型ポリマーが既に開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、ジビニルベンゼン重合体以外のコア部を有するアルケニルフェノール系星型ポリマーとして、ジ(メタ)アクリレートから誘導される繰り返し単位を含むポリマー鎖をコア部とし、アルケニルフェノールから誘導される繰り返し単位及び脂環式炭化水素基のアクリル酸エステル誘導体から誘導される繰り返し単位とを含む(さらにアルケニルフェニルから誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい)ポリマー鎖をアーム部とする(メタ)アクリル酸系星型ポリマーが提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、これまでに提案された星型ポリマーを用いたレジストパターンの形成技術では、感度及び解像度等の点で改善の余地を大いに残すものであった。例えば、特許文献2のスターポリマーは、コア部がポリ(メタ)アクリレート誘導体から形成されていることから酸分解性となり、このためレジスト材料として用いた際に感度に優れる材料が得られるとして期待されているが、解像度等の観点からは課題を残すものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、新規なポリマーの提供を目的とし、詳細には、高感度・高解像性に優れるレジスト材料として有用である新規な櫛型ポリマー及び該ポリマーの合成に用いられる新規なアニオン重合用カップリング剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、アーム部を酸分解性とする櫛型ポリマーを採用することにより、酸分解させたときに分子量分布が単分散となるようにすることによって、そのポリマーを化学増幅型レジスト材料として用いた場合、光酸発生剤(PAG)由来の酸によって分子量を著しく変化させることができ、高感度・高解像レジスト材料として有用なポリマーが提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、重量平均分子量500以上、20,000以下のポリマー鎖からなるコア部と、
該コア部に結合する下記一般式(1)で表される少なくとも1つのアーム部とを有する高分子化合物に関する。
【化1】

[式中、Xは酸の作用により開裂され得る下記一般式(2)乃至式(5)で表される2価の結合基を表し、Yは重量平均分子量100以上、5,000以下のポリマー鎖を表す。]
【化2】

[式(2)乃至式(5)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキル基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリール基;ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又は水素原子を表す。
5は炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポ
キシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキレン基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリーレン基、又は単結合を表す。]
【0008】
また前記高分子化合物は、下記一般式(A1)で表される単位構造を少なくとも2つ反復して有する高分子化合物であることが好ましい。
【化3】

[式中、R6は互いに独立して水素原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基、又は炭素原
子数1乃至5のハロゲン化アルキル基を表し、A0は2価の芳香族基を表し、Zは互いに
独立して−OH、−COOH、−OHおよび/または−COOHにおける水素原子が酸解離性基で置換された基(ただし、前記式(1)で表される基を除く)、又は前記式(1)で表される−XY(式中、X及びYは先に定義したものと同じ定義を有する。)を表す。但し少なくとも1つのZは該−XYを表す。]
【0009】
前記Yは、ポリヒドロキシスチレン又はその誘導体の単位構造を含むポリマー鎖であることが好ましく、さらに酸解離性基を含むポリマー鎖であることが好ましい。
また前記酸解離性基は、下記一般式(p0)又は下記一般式(p1−1)で表される基であることが好ましい。
【化4】

[式(p0)中、sは0又は1を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、R14は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、Rrは当該Rrが結合している炭素原子と一緒になって脂肪族環式基を形成する基である。
式(p1−1)中、R1’は水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、n
は0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。]
【0010】
さらに本発明は、重量平均分子量500以上、20,000以下のポリマー鎖からなるコア部に、該コア部に下記一般式(6)で表される少なくとも1つの基を結合してなる、アニオン重合用カップリング剤にも関する。
−X−P−Q (6)
(式中、Xは先に定義したものと同じ定義を有し、
Pは炭素原子数1乃至12のアルキレン基又はアリーレン基を表し、
Qはハロゲン原子又は式(7)
【化5】

(式中、R7、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。)で表されるエポキシ基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の櫛型ポリマーは分子量分布が狭く、アーム部において酸分解性であり且つ分解個所を制御できることから、酸分解後にも分子量分布が単分散となる。
また本発明の新規なアニオン重合用カップリング剤は、アーム部のポリマー鎖Yとの反応性が良好であり、本発明の櫛型ポリマーを容易に得ることができる。
【0012】
そして、本発明の櫛型ポリマーを化学増幅型レジスト材料(ベース樹脂)として用いた場合、露光工程後、レジスト中に配合された光酸発生剤(PAG)から発生した酸によって、本発明の櫛型ポリマーのアーム部に存在する上記式(2)乃至(5)で表される基が解裂することとなる。この解裂に伴い、ポリマー(ベース樹脂)の分子量が大きく変化することとなり、それによって現像液への溶解性も大きく変化することとなる。このため、本発明の櫛型ポリマーは、高感度、高解像度を実現する優れたレジスト材料となることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はポリマー鎖からなるコア部に、アニオン重合法によって得られるポリマー鎖と酸の作用により開裂され得る基からなるアーム部を付加した構造を有する櫛型ポリマーである。
該アーム部は、コア部の末端以外のポリマー鎖中に少なくとも1つ結合する。
また、本発明は上記櫛型ポリマーを容易に製造できるアニオン重合用カップリング剤にも関する。
以下、本発明の櫛型ポリマー及びアニオン重合用カップリング剤について夫々説明する。
【0014】
本発明の高分子化合物(櫛型ポリマー)におけるコア部は、重量平均分子量500乃至20,000のポリマー鎖からなる。
上記コア部のポリマーの種類は特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン骨格、ポリヒドロキシスチレン骨格、或いはこれらの組合せを基盤とするポリマーである。
【0015】
また、本発明の櫛型ポリマーのコア部に結合するアーム部は下記一般式(1)で表される。
【化6】

上記式中、Xは酸の作用により開裂され得る下記一般式(2)乃至(5)で表される2価の結合基を表し、Yは重量平均分子量100以上、5,000以下のポリマー鎖を表す。
【化7】

式(2)乃至式(5)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキル基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリール基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又は水素原子を表す。
5は炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエ
ポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキレン基;ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリーレン基、又は単結合を表す。
【0016】
上記R1乃至R5におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基としては、直鎖状又は分
枝鎖状のアルキル基であることが好ましく、特にエチル基又はメチル基がより好ましい。
炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状又は環状アルコキシ基としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルコキシ基であることが好ましく、特にエトキシ基又はメトキシ基がより好ましい。
また炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキレン基としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基であることが好ましく、特にエチレン基又はメチレン基がより好ましい。さらにアリール基としては、炭素原子数6乃至20のアリール基が好ましく、たとえばフェニル基又はナフチル基等が挙げられる。またアリーレン基としては炭素原子数6乃至20のアリーレン基が好ましく、たとえばフェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
なかでも、R1、R2、R3及びR4は、水素原子であることが好ましい。
【0017】
なお、本発明の櫛型ポリマーは、下記一般式(A1)で表される単位構造を少なくとも2つ反復して有する高分子化合物であることが好ましい。
【化8】

式中、R6は互いに独立して水素原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基、又は炭素原
子数1乃至5のハロゲン化アルキル基を表し、A0は2価の芳香族基を表し、Zは互いに
独立して−OH、−COOH、−OHおよび/または−COOHにおける水素原子が後述する酸解離性基で置換された基(ただし、前記式(1)で表される基を除く)、又は前記式(1)で表される−XY(式中、X及びYは先に定義したものと同じ定義を有する。)を表す。但し少なくとも1つのZは該−XYを表す。
【0018】
上記R6において、炭素原子数1乃至5のアルキル基としてはメチル基、エチル基等が
挙げられる。
また炭素原子数1乃至5ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基等が挙げられる。
【0019】
上記A0の2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン
基、フェナントリレン基、ピレニレン基等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)中、Yはポリヒドロキシスチレン又はその誘導体の単位構造を含むポリマー鎖であり、詳細には下記式(I)で表されるヒドロキシ誘導体から誘導される単位構造を含むことが好ましい。
【0021】
【化9】

(式中、Raは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Rbは水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1乃至12の炭化水素基を表し、Rcは水素原子又は保護基を
表す。mは0乃至4の整数であり、mが2以上の時は、Rbは同一又は異なっていても良
く、m+o=1乃至5の整数であり、またその置換位置は特に制限されない。)
【0022】
上記式(I)において、Rcは水素原子又は保護基を表す。
ここで保護基とは、当技術分野において、フェノール性ヒドロキシ基の保護基として使用されることが周知である基であれば特に限定されない。
例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、t−ブチル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、2−メチル−2−t−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられ、さらに、下記に示す置換基を挙げることができる。
【0023】
【化10】

(式中、kは0又は1を表す。)。さらに、次式
【0024】
【化11】

(式中、Rkは炭素原子数1乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、炭素原
子数5乃至10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアリール基を表し、Rlは、水素又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Rmは水素、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基をあらわす。)で表される基を例示することができる。
【0025】
このような置換基として、具体的には1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基等を例示することができる。
【0026】
上記式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体の具体例としては、下記に示すヒドロキシスチレン誘導体を挙げることができる。
【0027】
【化12】

【0028】
なお、上記式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構造は、以下の式(I−1)で表される構造を意味する。
【0029】
【化13】

(式中、Ra、Rb、Rc、m、o、は前述に定義したものと同義である。)。
【0030】
また、前記Yは、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構造に加え、下記式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される構造、下記式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される構造、及び/又は下記式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される構造を含んでいてもよい。
【0031】
【化14】

(式中、Rdは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Reはハロゲン原子又は水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、xは0乃至5の整数を表し、xが2以上の場合、Reは同一又は異なっていてもよく、その置換位置は特に制限されな
い。)
【0032】
【化15】

(式中、Rfは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、Rgはハロゲン原子又は炭素原子数1乃至12の炭化水素基を表し、Rhは水素原子又は保護基を表す。yは
0乃至4の整数であり、yが2以上の時は、Rgは同一又は異なっていても良く、y+z
=1乃至5の整数であり、またそれらの置換位置は特に制限されない。)
【0033】
上記式中、Rhで表される保護基とは、当技術分野において、カルボキシル基の保護基
として使用されることが周知である基であれば特に限定されない。
例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、t−ブチル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、2−メチル−2−t−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられ、さらに、下記に示す置換基を挙げることができる。
【0034】
【化16】

(式中、kは0又は1を表す。)さらに、次式
【0035】
【化17】

(式中、Rkは炭素原子数1乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、炭素原
子数5乃至10のシクロアルキル基、又は炭素原子数6乃至20の無置換又はアルコキシ置換のアリール基を表し、Rlは、水素又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Rmは水素、炭素原子数1乃至6のアルキル基、又は炭素原子数1乃至6のアルコキシ基をあらわす。)で表される基を例示することができる。
【0036】
このような置換基として、具体的には1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)
エチル基等を例示することができる。
【0037】
【化18】

(式中、Riは水素原子又は炭素原子数1乃至4のアルキル基であり、Rjは水素原子、炭素原子数1乃至12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数3以上の脂環式骨格を有する炭化水素基(但し、炭素数に置換基の炭素は含まない。)、該脂環式骨格を有する炭化水素基を有するアルキル基又はヘテロ基を表す。)。
【0038】
なお、式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される構造は、以下の式(II−1)で表される構造を意味し、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される構造は、下記式(III−1)で表される構造を意味し、式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される構造は、以下の式(IV−1)で表される構造を意味する。
【0039】
【化19】

(式中、Rd乃至Rjは及びx乃至zは前述に定義したものと同義である。)。
【0040】
上記式(II)及び(II−1)中、Rdは好ましくは水素原子又はメチル基である。
また、式中、Reで表される基は具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t
−ブチル基等を例示することができる。
xは好ましくは0である。
【0041】
上記式(III)及び(III−1)中、Rfは好ましくは水素原子又はメチル基であ
る。
また式中、Rgで表される基は具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−
ブチル基等を例示することができる。
【0042】
上記式(IV)及び(IV−1)中、Riは好ましくは水素原子又はメチル基である。
また式中、Rjで表される基は、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル機、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基などが挙げられる。
【0043】
また、上記脂環式骨格としては、下記に示す骨格を具体的に例示することができる。
【0044】
【化20】

【0045】
jとしては、特に、下記式(V)で表される2−置換アダマンチル基を最も好ましい
例として挙げることができる。
【0046】
【化21】

(式中、Rnは水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Ro乃至Rq
夫々独立してヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至8のシクロアルキル基、炭素原子数2乃至7のアルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、及びアシル基から選択される基を表す。p、q、rはそれぞれ独立して0及び1乃至3の整数から選択され、p、q又はrが2以上の場合、Ro同士、Rp同士及びRq同士は夫々同一又は異なっていてもよい。)
【0047】
本発明の櫛型ポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖Yには、上述の式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される構造以外にも、必要に応じて下記に示すその他のアクリレート類から誘導される構造を含んでいてもよい。
[アクリル酸エステル類]
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−t−オクチル、クロルエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルアクリレート、5−エトキシペンチルアクリレート、1−メトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、1−メトキシプロピルアクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルアクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなど;
[メタクリル酸エステル類]
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、アミルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロルベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、4−メトキシブチルメタクリレート、5−メトキシペンチルメタクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルメタクリレート、1−メトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−メトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−1−メトキシエチルメタクリレート、1−(イソプロポキシ)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートなど;
[クロトン酸エステル類]
クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸アミル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸エチルヘキシル、クロトン酸オクチル、クロトン酸−t−オクチル、クロルエチルクロトネート、2−エトキシエチルクロトネート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピルクロトネート、5−エトキシペンチルクロトネート、1−メトキシエチルクロトネート、1−エトキシエチルクロトネート、1−メトキシプロピルクロトネート、1−メチル−1−メトキシエチルクロトネート、1−(イソプロポキシ)エチルクロトネート、ベンジルクロトネート、メトキシベンジルクロトネート、フルフリルクロトネート、テトラヒドロフルフリルクロトネートなど;及び
[イタコン酸エステル類]
イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、イタコン酸ジアミル、イタコン酸ジシクロヘキシル、イタコン酸ビス(エチルヘキシル)、イタコン酸ジオクチル、イタコン酸−ジ−t−オクチル、ビス(クロルエチル)イタコネート、ビス(2−エトキシエチル)イタコネート、ビス(2,2−ジメチル−3−エトキシプロピル)イタコネート、ビス(5−エトキシペンチル)イタコネート、ビス(1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−エトキシエチル)イタコネート、ビス(1−メトキシプロピル)イタコネート、ビス(1−メチル−1−メトキシエチル)イタコネート、ビス(1−(イソプロポキシ)エチル)イタコネート、ジベンジルイタコネート、ビス(メトキシベンジル)イタコネート、ジフルフリルイタコネート、ジテトラヒドロフルフリルイタコネートなど。
【0048】
上記その他のアクリレート類の中でも、特にt−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、1,1−ジメチルプロピルアクリレート、1,1−ジメチルメタクリレート等のエステル酸素α位に3級炭素を有するアルキル基であるアクリレート、又はメタクリレートを好ましいものとして例示することができる。
【0049】
本発明の櫛型ポリマーのアーム部は、前記式(2)乃至(5)で表される2価の結合基を介して、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構造を含むポリ
マー鎖Yが結合した構造を有し、該ポリマー鎖Yにはさらに式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される構造、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される構造、式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される構造及び/又はその他のアクリレート類から誘導される構造が含まれていてもよい。
そして本発明の櫛型ポリマーのアーム部におけるポリマー鎖Yにおいて、好ましくは上述のこれら構造が酸解離性基を含むことが望ましい。なお前述したように、前記式(A1)のZは、−OHおよび/または−COOHにおける水素原子が該酸解離性基で置換された基(ただし、前記式(1)で表される基を除く)であってもよい。
【0050】
ここで「酸解離性」とは、酸の作用によって本発明の櫛型ポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖Y(あるいは、前記式(A1)で表される単位構造中、ポリマー骨格に結合する−A0−O−基または−A0−COO−基)から解離可能であることを意味する。そして酸解離性基は、解離前にはポリマー全体をアルカリ不溶性としてその溶解を抑制するという性質も有する基である。すなわち、酸が作用する前にはポリマー全体はアルカリ不溶性となっているが、酸の作用によって酸解離性基がポリマー鎖から解離することにより、ポリマー全体はアルカリ可溶性となる。
このような「酸解離性基」としては、一般に、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状又は鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基(以下、第3級アルキルエステル型酸解離性基と称する);アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性基などが広く知られている。
【0051】
[第3級アルキルエステル型酸解離性基]
ここで「第3級アルキルエステル(基)」とは、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基の水素原子が、鎖状又は環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成している構造、すなわち、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状又は環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を意味する。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
第3級アルキルエステル型酸解離性基としては、脂肪族分枝状酸解離性基、脂肪族環式基を含有する酸解離性基が挙げられる。
脂肪族分枝状酸解離性基としては、好ましくは、(メタ)アクリル酸等のカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に結合した、炭素原子数4乃至8の第3級アルキル基が挙げられ、例えばtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
脂肪族環式基を含有する酸解離性基としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に結合した、環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができる。
ここで環状のアルキル基としては例えば、低級アルキル基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、テトラシクロアルキル基などのポリシクロアルキル基等が挙げられ、より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられる。
従って、脂肪族環式基を含有する酸解離性基の具体例としては、2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分枝状アルキレン基とを有する基等が挙げられる。
【0052】
第3級アルキルエステル型酸解離性基として好ましいものとしては、下記式(p0)で表されるものであり、より好ましくは、下記式(p0−1)で表されるものである。
【化22】

式(p0)中、sは0又は1を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、R14はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基)を表し、Rrは当該Rrが結合している炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。
rとしては、上記<環状のアルキル基>として挙げた基と同様のものが挙げられ、好
ましくは多環式の脂肪族環式基である。
【0053】
【化23】

式(p0−1)中、sは0又は1であり、R13は水素原子又はメチル基であり、R14はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素原子数1乃至5のアルキル基)である。
14としては、炭素原子数1乃至3のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましい。
【0054】
[アセタール型酸解離性基]
「アセタール型酸解離性基」は、一般に、カルボキシ基、ヒドロキシ基等のアルカリ可溶性基の末端の水素原子を置換し、酸素原子と結合している基である。そして、酸が作用すると、アセタール型酸解離性基と、当該アセタール型酸解離性基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基であり、より好ましくは、下記式(p1−1)で表されるものである。
【0055】
【化24】

式(p1)中、R1',R2'はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、nは0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。
上記式中のR1',R2'及びWにおける炭素原子数1乃至5のアルキル基として、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
またWの脂肪族環式基としては、先に<環状のアルキル基>として挙げた基を例示する
ことができる。
【0056】
【化25】

式(p1−1)中、R1'水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、nは0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。
上記式中のR1'及びWにおける炭素原子数1乃至5のアルキル基として、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
またWの脂肪族環式基としては、先に<環状のアルキル基>として挙げた基を例示することができる。
【0057】
上記式(p1)又は(p1−1)で表されるアセタール型酸解離性基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0058】
【化26】

【0059】
また、アセタール型酸解離性基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0060】
【化27】

【0061】
式(p2)中、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子、直鎖状又は分枝状のアルキル基を表し、R12は直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基を表す。あるいは、R10とR12が結合して環を形成していてもよい。
【0062】
上記R10及びR11における直鎖状又は分枝状のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1乃至15の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特に、R10又はR11のいずれか一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
上記R12における直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1乃至15の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分枝状アルキル基の場合には、炭素原子数1乃至5の直鎖状又は分枝状アルキル基であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。また、環状アルキル基の場合には、炭素原子数4乃至15の、好ましくは炭素原子数4乃至12の、より好ましくは炭素原子数5乃至10の環状アルキル基が望ましい。具体的にはフッ素原子又はフッ素化アルキル基で置換されていてもよいモノシクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基、テトラシクロアルキル基などのポリシクロアルキル基等が挙げられ、より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基等が挙げられ、中でもアダマンチル基が最も望ましい。
また、上記式においてはR10とR12が結合して環を形成している場合、4乃至7員環、好ましくは4乃至6員環であることが望ましく、具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等を形成していることが好ましい。
【0063】
本発明の櫛型ポリマーのアーム部のポリマー鎖Yにおいて、各繰り返し単位の比率は、反応に用いる各単量体の使用割合によって任意に選択することができる。
例えば、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量は、アーム部のポリマー鎖Yの全繰り返し単位中1乃至100モル%であり、好ましくは10乃至100モル、さらに好ましくは30乃至100モル%である。
また、式(II)で表されるスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量、式(III)で表されるビニル安息香酸誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量、又は式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位の含有量は、アーム部のポリマー鎖Yの全繰り返し単位中0乃至99モル%であり、好ましくは0乃至90モル%、更に好ましくは0乃至70モル%である。
【0064】
本発明の櫛型ポリマーのアーム部のポリマー鎖Yを構成するポリマー鎖の数平均分子量Mnは、GPC法(ポリスチレン換算)により、好ましくは500乃至300,000、より好ましくは500乃至100,000、更に好ましくは1,000乃至20,000の範囲である。
またこのとき、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.01乃至3.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.01乃至2.00、更に好ましくは1.01乃至1.50の範囲にあることが望ましい。
【0065】
本発明の櫛型ポリマーの製造方法としては特に限定はされないが、例えば、アニオン重合開始剤の存在下、式(I)で表されるヒドロキシスチレン誘導体化合物をアニオン重合し、所望によりさらにアニオン重合可能なモノマー(例えば式(IV)で表されるアクリレート誘導体など)を反応させてアーム部のポリマー鎖Yを形成し、次に、該アーム部のポリマー鎖Yと、コア部にアーム部Xが結合したポリマー(アニオン重合用カップリング剤)と反応させて櫛型ポリマーを形成し、得られた共重合体からフェノール性ヒドロキシ基等の保護基を全部又は一部脱離させる方法が、反応の制御が容易であり、構造を制御した櫛型ポリマーを製造することができるため望ましい。
【0066】
上記アニオン重合法に用いられるアニオン重合開始剤としては、アルカリ金属又は有機アルカリ金属を例示することができ、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カ
リウム、セシウム等を例示することができる。
有機アルカリ金属としては、上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等を例示することができ、具体的には、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
【0067】
上述の方法において、アーム部のポリマー鎖Yを合成する重合反応としては、モノマー(混合)溶液中にアニオン重合開始剤を滴下する方法や、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法のいずれの方法でも行うことができるが、分子量及び分子量分布を制御することができることから、アニオン重合開始剤を含む溶液にモノマー(混合)液を滴下する方法が好ましい。
上記アーム部のポリマー鎖Yの重合反応は、通常、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中において、−100乃至50℃、好ましくは−100乃至40℃の範囲の温度下で行われる。
【0068】
上記アーム部のポリマー鎖Yの合成反応に用いられる有機溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類の他、アニソール、ヘキサメチルホスホルアミド等のアニオン重合において通常使用される有機溶媒を挙げることができ、これらは一種単独溶媒又は二種以上の混合溶媒として使用することができる。これらのうち、トルエン、n−ヘキサン、THFを好ましい溶媒として例示することができる。
【0069】
アーム部のポリマー鎖Yが共重合体である場合、ランダム共重合体、部分ブロック共重合体、完全ブロック共重合体のいずれの重合形態も可能である。これらは、重合に用いるモノマーの添加方法を選択することにより、適宜合成することができる。
【0070】
前記コア部にアーム部Xが結合したポリマー、すなわちアニオン重合用カップリング剤は、詳細には、重量平均分子量500以上、20,000以下のポリマー鎖からなるコア部に、該コア部に下記一般式(6)で表される少なくとも1つの基を結合してなる構造を有する。
−X−P−Q (6)
式中、Xは先に定義したものと同じ定義を有し、Pは炭素原子数1乃至12のアルキレン基又はアリーレン基を表し、Qはハロゲン原子又は式(7)
【化28】

(式中、R7、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。)で表されるエポキシ基を表す。
【0071】
より好ましくは、上記アニオン重合用カップリング剤は、下記一般式(A2)で表される単位構造を少なくとも2つ反復して有する。
【化29】

式中、R6及びA0は先に定義したものと同じ定義を有し、
1は互いに独立して−OH、−COOH、−OHおよび/または−COOHにおける
水素原子が酸解離性基で置換された基(ただし、前記式(1)で表される基を除く)、又は前記式(6)で表される−X−P−Q(式中、X、P及びQは先に定義したものと同じ定義を有する。)を表す。但し少なくとも1つのZ1は該−X−P−Qを表す。
【0072】
上記(6)中、Qで表されるハロゲン原子とは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子をさす。
なお、Qが塩素原子を表す場合には、それに結合するPはメチレン基を表すことが望ましく、Qが臭素原子を表す場合には、それに結合するPは炭素原子数1乃至4のアルキレン基を表すことが望ましい。
【0073】
式(A2)で表される構成単位を有するものの中で、好ましくは(A2−1)〜(A2−3)で表される構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【化30】

【0074】
上記アニオン重合用カップリング剤を製造する方法は特に限定されない。
例えば、p−ヒドロキシスチレンポリマーとクロロメチルハロゲン置換アルキルエーテルとの反応によって上記式(2)の結合を有するアニオン重合用カップリング剤を製造することができる。
【0075】
このようにして得られたアーム部のポリマー鎖Yを、コア部にアーム部Xの結合したポリマー(アニオン重合用カップリング剤)に連結させることにより櫛型ポリマーを生成させる反応は、アーム部のポリマー鎖Yの重合反応終了後、反応液中ヘさらにコア部にアーム部Xの結合したポリマーを添加することにより行うことができる。
この反応は通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、有機溶媒中において−100℃乃至50℃、好ましくは−80℃乃至40℃の温度で反応を行うことにより構造が制御され、且つ分子量分布の狭い重合体を得ることができる。
また、かかるポリマーの生成反応は、アーム部のポリマー鎖Yを形成させるのに用いた溶媒中で連続して行うこともできる他、溶媒を添加して組成を変更して、又は溶媒を別の
溶媒に置換して行うこともできる。ここで使用され得る溶媒としては、アーム部のポリマー鎖Yの合成反応に用いられる溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0076】
上述の方法にて生成する櫛型ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.01乃至3.00の範囲にあることが好ましく、1.01乃至2.00、さらには1.01乃至1.50の範囲が好ましい。生成するポリマーの数平均分子量は1,000乃至1,000,000であるのが好ましく、より好ましくは1,500乃至500,000、更に好ましくは1,500乃至50,000、特に好ましくは2,000乃至20,000の範囲である。
【0077】
このようにして得られた共重合体からフェノール性ヒドロキシル基等の保護基を除去する反応は、前記重合反応で例示した溶媒の他、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどの多価アルコール誘導体類、又は水などの一種単独又は二種以上の混合溶媒の存在下、塩酸、硫酸、シュウ酸、塩化水素ガス、臭化水素酸、p−トルエンスルホン酸、1,1,1−トリフルオロ酢酸、LiHSO4、NaHSO4又はKHSO4で示される重硫酸
塩などの酸性試剤を触媒として、室温乃至150℃の温度で行われる。この反応において、溶媒の種類と濃度、触媒の種類と添加量、及び反応温度と反応時間を適当に組み合わせることにより、フェノール性ヒドロキシ基の保護基を全部又は一部除去することができる。
【0078】
また、本発明の櫛型ポリマーのアーム部のポリマー鎖Yに式(IV)で表されるアクリレート誘導体から誘導される繰り返し単位が含まれる場合、当該繰り返し単位のエステル基を加水分解することによりカルボキシル基に誘導することができる。加水分解は、当該技術分野において知られた方法で行うことができ、例えば、上述の保護基を除去するための条件と同様の条件による酸加水分解により行うことができる。好ましくは、当該エステル基の加水分解は、フェノール性ヒドロキシ基の除去と同時に行われる。このようにして得られるアクリル酸系の繰り返し単位を分子内に有する櫛型ポリマーは、高いアルカリ溶解性を有するためレジスト材料として特に好ましい。
【0079】
以上の製造方法により得られる本発明の櫛型ポリマーは、特に精製することなく利用することもできるが、必要であれば精製してもよい。当該精製は、当該技術分野において通常用いられる方法により行うことができるが、例えば、分別再沈法により行うことができる。分別再沈法においては、ポリマー溶解性の高い溶媒と低い溶媒の混合溶媒を用いて再沈を行うのが好ましく、例えば、混合溶媒中で本発明の櫛型ポリマーを加熱溶解し冷却する方法や、ポリマー溶解性の高い溶媒に本発明の櫛型ポリマーを溶解した後にポリマー溶解性の低い溶媒を添加して該櫛型ポリマーを析出させることにより、生成物の精製を行うことができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例によりなんら制限を受けるものではない。
【0081】
<(A)成分の合成例>
後述する実施例1〜3、および比較例1〜2において、それぞれ(A)成分として用いたポリマー(A)−1〜(A)−3は、下記合成方法により製造した。
【0082】
<製造例1:アニオン重合用カップリング剤(ポリマー(BP)−1)の製造>
[製造例1−1:クロロエチルアセタール基の導入]
窒素雰囲気にて、Mn=2,700、Mw/Mn=1.06の単分散のp−ヒドロキシ
スチレンポリマー(以下PHSと略す)30.0gにテトラヒドロフラン(以下THFと略す)270.0gと水素化ナトリウム9.0gを加えた。攪拌下、氷冷しながら2−クロロエチルクロロメチルエーテル35.4gを20分かけて滴下し、さらに攪拌下30℃にて4時間保持した。その後、反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層をシュウ酸水溶液とイオン交換水で5回洗浄を行った。得られた有機層を減圧下、濃縮操作により50wt%のメチルイソブチルケトン(以下MIBKと略す)溶液として下記化学式で表されるポリマーを得た。
【0083】
【化31】

【0084】
[製造例1−2:臭素への変換]
窒素雰囲気下にて製造例1−1で得られたポリマー溶液48.0gにヘキサメチルリン酸トリアミド(以下HMPAと略す)552.0gとブロモエタン123.0gと臭化ナトリウム2.3gを加え、攪拌下80℃にて4時間保持した。その後、反応混合物を減圧下にて濃縮した。得られた濃縮混合物に新たにブロモエタン123.0gを加え、攪拌下80℃にて4時間保持した。その後、反応混合物を減圧下にて濃縮し、得られた濃縮混合物にトルエンを加え、有機層をイオン交換水で4回洗浄した。その後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。ろ過を行った後、減圧下にて濃縮を行い、下記化学式で表され、櫛型ポリマーの幹部となるポリマー(BP)−1(アニオン重合用カップリング剤)を40wt%トルエン溶液として得た。
【0085】
【化32】

【0086】
<製造例2:櫛型ポリマー(ポリマー(A)−1の製造>
[製造例2−1:枝ポリマーの合成及び酸分解性ポリマーの合成]
窒素雰囲気下にてTHF384.2gを−60℃に冷却した。攪拌下、−60℃を保持
しながらs−ブチルリチウムを74ミリモル加えた。さらに攪拌下、−60℃を保持しながらp−(1−エトキシエトキシ)スチレン(以下PEESと略す)73.3gを50分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。この段階で反応液を少量採取し、メタノールにより反応を停止させた後、ゲルパーミェイションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)により分析したところ、得られたPEESポリマーはポリスチレン換算でMn=990、Mw/Mn=1.24の単分散ポリマーであった。
次いで、反応系を−60℃に保ちながら、製造例1−2より得られたアニオン重合用カップリング剤であるポリマー(BP)−1の溶液56.9gを40分かけて滴下した。
【0087】
さらに反応を1時間継続し、ついで反応系にメタノールを加え、反応を停止させた後GPCにより分析したところ、得られた酸分解性ポリマーはポリスチレン換算でMn=14,500、Mw/Mn=1.03の単分散ポリマーであった。
ポリマー(BP)−1との反応前後において、ポリマーが単分散を保持したまま分子量の増加が観測されたことから設計どおりに櫛型形状を持つポリマーが得られたことを確認した。
【0088】
[製造例2−2:PEESの加水分解(保護基の除去)]
製造例2−1により得られた重合液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で2回洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮操作によりポリマー分40質量%のMIBK溶液にし、さらにイソプロピルアルコール(以下、IPAと略す)によりポリマー分20質量%の溶液にした。
この溶液の100質量部に対して、0.1質量部のシュウ酸2水和物と9質量部のイオン交換水を加え50℃に加熱した。攪拌下、50℃を保ちながら、さらに反応を7時間継続した。この反応において、反応前後のポリマーの13C−NMRを比較した。117ppmおよび100ppm付近に観測されるPEESポリマー由来の吸収が反応後においては消失し、新たに115ppm付近にPHS由来の吸収が観測された。さらに94ppm付近に観測されるO−CH2−Oに由来するピークが加水分解前後にて保持されていること
を確認した。また反応後のポリマーについてGPCを測定したところポリスチレン換算でMn=10,900であり、反応前後においてピーク形状に大きな変化が見られなかった。以上のことから、加水分解反応は設定どおりに行われ、PHSセグメントを主骨格とするアルケニルフェノール形ポリマーが得られた。また主鎖骨格中に導入された O−CH2−O 結合は保持されており、櫛型形状を保持していることを確認した。
【0089】
[製造例2−3:酢酸メチルアダマンチル基の導入]
製造例2−2により得られたポリマー溶液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄した。しかる後、有機層を減圧下で濃縮しポリマー分40質量%の溶液にした後、アセトンによりポリマー分10質量%の溶液にした。
得られたポリマー溶液160.0gに炭酸カリウム5.1gを加え、撹拌下、50℃で30分保持した。その後、ヨード酢酸メチルアダマンチル7.97gを加え、さらに50℃で反応を5時間継続した。
反応系にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液で1回洗浄した後、さらにイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
【0090】
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHSに酢酸メチルアダマンチル基が導入されたユニット(以下、PHS−OAdEと称する)に由来する吸収が新たに89ppm付近、114ppm付近、並びに169ppm付近に観測された。
またPHSユニットとPHS−OAdEの割合が75/25であった。さらに主鎖骨格中に導入されたO−CH2−Oに由来する94ppm付近のピークは保持されていること
を確認した。また反応後のポリマーについてGPCを測定したところ、ポリスチレン換算
でMn=12,800、Mw/Mn=1.03の単分散ポリマーであり、反応前後においてピーク形状に変化が見られなかった。以上のことから、酢酸メチルアダマンチル基の導入は設定どおりに行われ、PHS/PHS−OAdEセグメントを主骨格とするアルケニルフェノール形ポリマーが得られ、主鎖骨格中に導入されたO−CH2−O結合は保持さ
れており、櫛型形状を保持していることを確認した。
【0091】
上記製造例2−3で得られたポリマー(以降ポリマー(A)−1と略す)の構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は当該ポリマーの枝部であるポリマー鎖を構成する全構成単位の合計に対する各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRにより算出した。
下記式(A)−1は、アニオン重合用カップリング剤(ポリマー(BP)−1)のエチレン基の炭素原子と、枝ポリマーの(a1)、(a2)単位における主鎖の末端とが結合していることを示している。
【0092】
【化33】

【0093】
<製造例3:アニオン重合用カップリング剤(ポリマー(BP)−2〜(BP)−3の製造>
[製造例3−1〜3−2:クロロエチルアセタール基の導入]
窒素雰囲気にて、Mn=2,700、Mw/Mn=1.06の単分散のPHS40.0gにTHF360.0gと以下の表1に示した添加量で水素化ナトリウムを加えた。攪拌下、氷冷しながら以下の表1に示した添加量で2−クロロエチルクロロメチルエーテルを20分かけて滴下し、さらに攪拌下30℃にて4時間保持した。
【0094】
【表1】

【0095】
その後、反応混合物にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液とイオン交換水で5回洗浄を行った。得られた有機層を減圧下、濃縮操作により50wt%のMIBK溶液として下記化学式で表され、表2に示される分子量、モノマーユニット比を有するポリマーを得た。
【0096】
【化34】

【表2】

【0097】
[製造例3−3〜3−4:臭素への変換]
窒素雰囲気下にて製造例3−1又は製造例3−2で得られたポリマー溶液50.0gに以下の表3に示した添加量でHMPA、ブロモエタン及び臭化ナトリウムを夫々加え、攪拌下80℃にて6時間保持した。
【表3】

【0098】
その後、反応混合物を減圧下にて濃縮した。得られた濃縮混合物に新たに以下の表4の添加量でブロモエタン123.0gを加え、攪拌下80℃にて6時間保持した。
【表4】

【0099】
その後、反応混合物を減圧下にて濃縮し、得られた濃縮混合物にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で4回洗浄した。その後、減圧下にて濃縮を行い、得られたポリマー溶液をn−ヘキサンで再沈殿した。得られたポリマー粉体を減圧乾燥することで、下記化学式で表され、表5に示される分子量、モノマーユニット比を有するポリマーを得た。
【0100】
【化35】

【表5】

【0101】
[製造例3−5〜3−6:エトキシエチル基の導入]
窒素雰囲気下にて製造例3−3又は製造例3−4で得られた各ポリマー20.0gに以下の表6に示す添加量でTHF、トリフルオロ酢酸及びエチルビニルエーテルを加え、攪拌下30℃にて5時間保持した。
【表6】

【0102】
その後、反応液にトリエチルアミンを加えて反応を停止させた後、トルエンを加え、有機層をイオン交換水で4回洗浄した。その後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え乾燥した。ろ過を行った後、減圧下にて濃縮を行い、以下の化学式で表され、表7に示す分子量及びモノマーユニット比を有する櫛型ポリマーの幹部となるポリマー(BP)−2〜(BP)−3(アニオン重合用カップリング剤)を40wt%トルエン溶液として得た。
【0103】
【化36】

【表7】

【0104】
<製造例4:櫛型ポリマー(ポリマー(A)−2〜(A)−3の製造>
[製造例4−1〜4−2:枝ポリマーの合成及び酸分解性ポリマーの合成]
窒素雰囲気下にてTHF179.8gを−60℃に冷却した。攪拌下、−60℃を保持しながらs−ブチルリチウムを42ミリモル加えた。さらに攪拌下、−60℃を保持しながらPEES40.5gを30分かけて滴下し、さらに反応を1時間継続した。この段階で反応液を少量採取し、メタノールにより反応を停止させた後、GPCにより分析したところ、得られたPEESポリマーはポリスチレン換算でMn=970、Mw/Mn=1.
22の単分散ポリマーであった。
【0105】
次いで、反応系を−60℃に保ちながら、製造例3−5または製造例3−6で得られたポリマー(BP)−2又は(BP)−3の溶液を40分かけて以下の表8に示す添加量を滴下した。
【表8】

【0106】
さらに反応を1時間継続し、ついで反応系にメタノールを加え、反応を停止させた後GPCにより分析したところ、以下の表9に示す分子量を有する単分散の酸分解性ポリマーを得た。
アニオン重合用カップリング剤であるポリマー(BP)−2又は(BP)−3との反応前後において、ポリマーが単分散を保持したまま分子量の増加が観測されたことから、設計どおりに櫛型形状を持つポリマーが得られたことを確認した。
【表9】

【0107】
[製造例4−3〜4−4:PEESの加水分解(保護基の除去)]
実施例4−1または製造例4−2により得られた重合液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で2回洗浄した後、有機層を減圧下で濃縮操作によりポリマー分40質量%のMIBK溶液にし、さらにIPAによりポリマー分20質量%の溶液にした。
これら溶液100.0に0.5gのシュウ酸2水和物と10.0gのイオン交換水を加え50℃に加熱した。攪拌下、50℃を保ちながら、さらに反応を1時間継続した。反応後のポリマーをGPC分析したところ、以下の表10に示す分子量を有するポリマーが得られたことを確認した。
【表10】

【0108】
またこれらの反応において、反応前後のポリマーの13C−NMRを比較した。117ppmおよび100ppm付近に観測されるPEESポリマー由来の吸収が反応後においては消失し、新たに115ppm付近にp−ヒドロキシスチレンポリマー由来の吸収が観測
された。さらに94ppm付近に観測されるO−CH2−Oに由来するピークが加水分解
前後にて保持されていることを確認した。また反応後のポリマーについてGPCピーク形状に大きな変化が見られなかった。以上のことから、加水分解反応は設定どおりに行われ、PHSセグメントを主骨格とするアルケニルフェノール形ポリマーが得られた。また主鎖骨格中に導入されたO−CH2−O結合は保持されており、櫛型形状を保持しているこ
とを確認した。
【0109】
[製造例4−5〜4−6:酢酸メチルアダマンチル基の導入]
実施例4−3または製造例4−4により得られたポリマー溶液にMIBKを加え、有機層をイオン交換水で3回洗浄した。その後、有機層を減圧下で濃縮しポリマー分40wt%の溶液にした後、アセトンによりポリマー分10wt%の溶液にした。
【0110】
得られたポリマー溶液200.0gに以下の表11に示した添加量で炭酸カリウムを加え、攪拌下55℃で30分保持した。その後、表11に示した点過量でヨード酢酸メチルアダマンチルを加え、さらに55℃で反応を5時間継続した。
【表11】

【0111】
反応系にMIBKを加え、有機層をシュウ酸水溶液で1回洗浄した後、さらにイオン交換水で3回洗浄を行なった。その後、有機層を減圧下、濃縮操作によりPGMEA溶液で置換した。
【0112】
得られたポリマーを13C−NMRによる測定を行ったところ、PHS−OAdEユニットに由来する吸収が新たに89ppm付近、114ppm付近、並びに169ppm付近に観測された。
さらに主鎖骨格中に導入されたO−CH2−Oに由来する94ppm付近のピークは保
持されていることを確認した。またPHSユニットとPHS−OAdEの割合は以下の表12に示すとおりであった。また反応後のポリマーについてGPCを測定したところ、表12に示すとおりの単分散ポリマーであり、反応前後においてピーク形状に変化が見られなかった。
【表12】

【0113】
以上のことから、酢酸メチルアダマンチル基の導入は設定どおりに行われ、PHS/PHS−OAdEセグメントを主骨格とするアルケニルフェノール形ポリマーが得られ、主鎖骨格中に導入されたO−CH2−O結合は保持されており、櫛型形状を保持しているこ
とを確認した。
【0114】
得られた櫛型ポリマーの構造を以下に示す。下記化学式中、( )の右下に付した符号は当該ポリマーの各構成単位の割合(モル%;組成比)を示し、13C−NMRにより算出した。
下記式(A)−2、(A)−3は、アニオン重合用カップリング剤(ポリマー(BP)−2、(BP)−3)のエチレン基の炭素原子と、枝ポリマーの(a1)、(a2)単位における主鎖の末端とが結合していることを示している。
【0115】
【化37】

【表13】

【0116】
<ポジ型レジスト組成物の調製−1:化学増幅型レジスト材料としての評価>
次の表14に示す組成に従い、(A)成分(ポリマー(A)−1乃至(A)−5)、さらに(B)成分(酸発生剤)、(D)成分(含窒素有機化合物)、(E)成分(有機カルボン酸)並びに(S)成分(有機溶剤)を所定の割合で混合、溶解し、実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例2のポジ型レジスト組成物を調製した。
【0117】
【表14】

【0118】
また、表14中の記号はそれぞれ以下のものを示す。
(A)−1:製造例2で調製した前記ポリマー(A)−1。
(A)−2:製造例4で調製した前記ポリマー(A)−2。
(A)−3:製造例4で調製した前記ポリマー(A)−3。
(A)−4:下記式(A)−4で表されるポリマー(Mw;13,600、分散度;1.12、m/n=75/25(モル比))。
【化38】

(A)−5:特開2008−250157号公報の記載に準じて合成した、下記式(A)−5で表されるポリマー(Mw;13,000、分散度;1.13、m/n=75/25(モル比))。なお、酢酸メチルアダマンチル基の導入に用いたモノマーは、ヨード酢酸メチルアダマンチルである。
【化39】

(A)−5
【0119】
(B)−1:下記化学式(B)−1で表される化合物。
【化40】

なお、(B)−1で表される化合物は、特開2009−209128号公報を参照して合成した。
(D)−1:トリ−n−オクチルアミン。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)の混合溶剤。
【0120】
<レジストパターンの形成>
[感度・解像性]
各例のポジ型レジスト組成物を、90℃にて36秒間のヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した8インチシリコン基板上に、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、90℃、60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。
次に、該レジスト膜に対し、電子線描画機HL−800D(VSB)(Hitachi社製)を用い、加速電圧70keVにて描画(露光)を行い、80℃、60秒間のPEB処理を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて60秒間の現像を行った後、純水にて15秒間リンスして、ラインアンドスペース(L/S)パターンを形成した。
このとき、100nmのL/Sパターンが1:1に形成される露光量(Eop;μC/cm2)を求めた。結果を表2に示す。
また、上記Eopにおける限界解像度(nm)を、走査型電子顕微鏡S−9220(Hitachi社製)を用いて求めた。その結果を「解像性(nm)」として表2に示す。
【0121】
[LWR(ラインワイズラフネス)評価]
前記Eopで形成された100nmの1:1L/Sパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)により、ライン幅を、ラインの長手方向に5箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を、LWRを示す尺度として算出した。この3sの値が小さいほど線幅のラフネスが小さく、より均一幅のL/Sパターンが得られたことを意味する。結果を表2に示す。
【0122】
[形状評価]
前記Eopで形成された100nmの1:1L/Sパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡(商品名:S−4700、日立製作所製)を用いて観察し、その形状について、矩形性が高いものを○、やや低いものを△として結果を表15に記載した。
【0123】
【表15】

【0124】
表15の結果より、本発明に係る実施例1乃至実施例3のポジ型レジスト組成物は、比較例1乃至実施例2のポジ型レジスト組成物に比べて、感度、解像性、LWR等のリソグラフィー特性に優れ、且つ、形成されたレジストパターンは、良好な形状を示すことが確認できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0125】
【特許文献1】特開2002−226513号公報
【特許文献2】特開2006−225605号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量500以上、20,000以下のポリマー鎖からなるコア部と、
該コア部に結合する下記一般式(1)で表される少なくとも1つのアーム部とを有する高分子化合物。
【化1】

[式中、Xは酸の作用により開裂され得る下記一般式(2)乃至式(5)で表される2価の結合基を表し、Yは重量平均分子量100以上、5,000以下のポリマー鎖を表す。]
【化2】

[式(2)乃至式(5)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキル基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリール基;ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又は水素原子を表す。
5は炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポ
キシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状のアルキレン基;炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子若しくはエポキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアリーレン基、又は単結合を表す。]
【請求項2】
下記一般式(A1)で表される単位構造を少なくとも2つ反復して有する、請求項1に記載の高分子化合物。
【化3】

[式中、R6は互いに独立して水素原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基、又は炭素原
子数1乃至5のハロゲン化アルキル基を表し、A0は2価の芳香族基を表し、Zは互いに
独立して−OH、−COOH、−OHおよび/または−COOHにおける水素原子が酸解離性基で置換された基(ただし、前記式(1)で表される基を除く)、又は前記式(1)
で表される−XY(式中、X及びYは請求項1におけるものと同じ定義を有する。)を表す。但し少なくとも1つのZは該−XYを表す。]
【請求項3】
前記Yは、ポリヒドロキシスチレン又はその誘導体の単位構造を含むポリマー鎖である、請求項1又は請求項2記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記Yは、酸解離性基を含むポリマー鎖である、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記酸解離性基は、下記一般式(p0)又は下記一般式(p1−1)で表される基である、請求項2又は請求項4記載の高分子化合物。
【化4】

[式(p0)中、sは0又は1を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、R14は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Rrは当該Rrが結合している炭素原子と一緒になって脂肪族環式基を形成する基である。
式(p1−1)中、R1’は水素原子又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表し、n
は0乃至3の整数を表し、Wは脂肪族環式基又は炭素原子数1乃至5のアルキル基を表す。]
【請求項6】
重量平均分子量500以上、20,000以下のポリマー鎖からなるコア部に、該コア部に下記一般式(6)で表される少なくとも1つの基を結合してなる、アニオン重合用カップリング剤。
−X−P−Q (6)
(式中、Xは請求項1におけるものと同じ定義を有し、
Pは炭素原子数1乃至12のアルキレン基又はアリーレン基を表し、
Qはハロゲン原子又は式(7)
【化5】

(式中、R7、R8、R9はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1乃至12のアルキ
ル基を表す。)で表されるエポキシ基を表す。)

【公開番号】特開2011−137099(P2011−137099A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298262(P2009−298262)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】