説明

新規な熱硬化性樹脂組成物及びその利用

【課題】 本発明の課題は、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、硬化膜からの難燃剤成分のブリードアウトが発生しない熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を用いることで上記課題を解決しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、硬化膜からの難燃剤成分のブリードアウトが発生しない熱硬化性樹脂組成物それから得られる樹脂フィルム、絶縁膜、及び絶縁膜付きプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁信頼性や耐薬品性、機械特性に優れることから電気・電子用途に広く使用されている。例えば、半導体デバイス上への絶縁フィルムや保護コーティング剤、フレキシブル回路基板や集積回路等の基材材料や表面保護材料、更には、微細な回路の層間絶縁膜や保護膜を形成させる場合に用いられる。
【0003】
特に、フレキシブル回路基板用の表面保護材料として用いる場合には、ポリイミドフィルム等の成形体に接着剤を塗布して得られるカバーレイフィルムが用いられてきた。このカバーレイフィルムをフレキシブル回路基板上に接着する場合、回路の端子部や部品との接合部に予めパンチングなどの方法により開口部を設け、位置合わせをした後に熱プレス等で熱圧着する方法が一般的である。
【0004】
しかし、薄いカバーレイフィルムに高精度な開口部を設けることは困難であり、また、張り合わせ時の位置合わせは手作業で行われる場合が多いため、位置精度が悪く、張り合わせの作業性も悪く、コスト高となっていた。
【0005】
一方、回路基板用の表面保護材料としては、ソルダーレジストなどが用いられる場合もあり、耐熱性、電気絶縁信頼性、耐薬品性、機械特性に優れる有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂が用いられるが、樹脂骨格が剛直であるため、フレキシブル回路基板などの薄膜フィルム状の基材に用いた場合、硬化後の基材の反りが大きく問題となる場合がある。また有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドやN−メチル−2−ピロリドン等の含窒素極性有機溶媒が用いられるため、硬化温度を200℃以上の高温にする必要があり、回路基板材料や銅配線の熱劣化が発生し問題となる場合がある。
【0006】
近年では、この回路基板用の表面保護材料として、低反り性や非含窒素極性有機溶媒への可溶性を発現することができる種々の提案がされている。
【0007】
例えば、低反り性、柔軟性、電子部品の封止材との密着性、耐溶剤性及び耐薬品性に優れ、しかも非含窒素極性有機溶媒に可溶で低温硬化性を有し、耐熱性、電気特性、耐湿性、作業性及び経済性に優れるポリイミド樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
また、耐熱性、柔軟性、電気絶縁性及び保管安定性に優れた、均一で接着性に優れた保護被膜を形成できる熱硬化性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
一方、密着性、耐熱性、及び可とう性に優れた樹脂組成物、半導体装置等のコーティング材、接着剤、応力緩和材料などに広く利用でき、弾性率が任意に制御可能であり、かつ弾性率の温度依存性が小さい耐熱性樹脂が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−145981号公報
【特許文献2】国際公開第2006/118105号
【特許文献3】国際公開第01/066645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献では、回路基板用の表面保護材料の課題を解決する種々の方法が提案されている。しかし、特許文献1に記載されているポリイミド樹脂組成物は、ポリカーボネートジオール含むウレタンユニットを長鎖柔軟性骨格として含有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有するため低温硬化性、低反り、耐溶剤性、封止材密着性、耐湿性に優れるものの、イミド基含有量が低く難燃性に乏しいという問題がある。特許文献2に記載されている熱硬化性樹脂組成物は、特定構造の柔軟性骨格を含有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂と難燃剤を含有するため低温硬化性、低反り、耐めっき性、耐電蝕性、屈曲性、難燃性には優れるものの、難燃性を付与する目的で添加型難燃剤を添加しており、この難燃剤の硬化皮膜からブリードアウト及び有機溶剤や金メッキ浴への溶出等の問題があった。特許文献3に記載されている樹脂組成物は、特定構造の極性溶媒に室温で可溶なポリイミド樹脂、特定構造の極性溶媒に室温で不溶、加熱で可溶なポリイミド樹脂、及び低弾性フィラーを含有するため、低弾性率で且つ高いガラス転移温度と熱分解温度を有するものの、低弾性フィラーを多量に配合し弾性率を調整しているため、フレキシブル回路基板などの薄膜フィルム状の基材の表面保護材料としてに用いた場合、硬化後の基材の反りが大きく、難燃性に乏しいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物から、低温(200℃以下)で硬化可能であり、得られる硬化膜が柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、硬化膜からの難燃剤成分のブリードアウトが発生しない熱硬化性樹脂組成物が得られる知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に達したものである。本発明は以下の新規な熱硬化性樹脂組成物により上記課題を解決しうる。
【0013】
すなわち、本願発明は、少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0014】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記熱硬化性樹脂組成物は、25μmの厚みのポリイミドフィルムの両面に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化膜を25μmの厚みで積層することにより得られる積層体の燃焼性が、UL94VTM法に準拠した燃焼性試験によりVTM−0相当であることが好ましい。
【0015】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が10,000〜200,000、酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0016】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(C)イミド樹脂が、熱硬化性樹脂組成物全体を100重量部とした場合に、5重量部以上、20重量部以下含有されていることが好ましい。
【0017】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(C)イミド樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られる芳香族系ポリイミドであることが好ましい。
【0018】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(C)イミド樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジイソシアネートと、末端封止剤とを反応させて得られる芳香族系ポリイミドであり、前記末端封止剤が、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0019】
また、本願発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂が、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させることにより得られることが好ましい。
【0020】
また、本願発明にかかる樹脂フィルムは、上記熱硬化性樹脂組成物を基材表面に塗布した後、乾燥して得られるものである。
【0021】
また、本願発明にかかる絶縁膜は、上記樹脂フィルムを硬化させて得られるものである。
【0022】
また、本願発明にかかる絶縁膜付きプリント配線板は、上記絶縁膜をプリント配線板に被覆してなるものである。
【発明の効果】
【0023】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物は、以上のように、少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有する構成を備えているので、本願発明の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜は、柔軟性に富み、電気絶縁信頼性、ハンダ耐熱性、耐有機溶剤性、難燃性に優れ、良好な物性を有するとともに、硬化後の反りが小さく、硬化膜からの難燃剤成分のブリードアウトが発生しない。従って、本願発明の熱硬化性樹脂組成物は、種々の回路基板の保護膜等に使用でき、優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】フィルムの反り量を測定している模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本願発明について、(I)熱硬化性樹脂組成物、(II)熱硬化性樹脂組成物の使用方法の順に詳細に説明する。
【0026】
(I)熱硬化性樹脂組成物
本願発明の熱硬化性樹脂組成物とは、少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有しておればよい。
【0027】
本願発明で用いられる(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の熱硬化性樹脂組成物中において存在している粒子径は、好ましくは1μm以上、25μm以下、より好ましくは5μm以上、25μm以下、特に好ましくは5μm以上、20μm以下である。上記範囲内で存在していることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐折れ性や柔軟性を損なうことなく難燃性を向上させることができるので好ましい。
【0028】
上記熱硬化性樹脂組成物は、25μmの厚みのポリイミドフィルムの両面に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化膜を25μmの厚みで積層することにより得られる積層体の燃焼性が、UL94VTM法に準拠した燃焼性試験によりVTM−0相当であることが好ましく、上記燃焼性試験は、例えば、以下の方法で測定することができる。
基材:ポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、製品名アピカル25NPI)
基材厚み:25μm
試験片構成:25μmの厚みのポリイミドフィルムの両面に上記感光性樹脂組
成物を硬化させることにより得られる硬化膜を25μmの厚みで積層
試験方法:UL94VTM法(薄肉材料の垂直燃焼性試験)
【0029】
ここで、本願発明の熱硬化性樹脂組成物は、各種特性に優れる事を、本発明者らは見出したが、これは、以下の理由によるのではないかと推測している。つまり、(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂は、分子中にカルボキシル基を有するため、このカルボキシル基がエポキシ樹脂と反応する架橋点となるため、熱硬化した際に三次元網目構造をとるため耐熱性、耐薬品性、電気絶縁信頼性に優れる硬化膜が得られる。また、分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないため、硬化膜の架橋密度が上がりすぎないため柔軟性に優れる硬化膜が得られる。なかでも、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させたものは、容易にカルボキシル基含有量を制御することが可能となり、硬化膜の柔軟性や低反り性と耐熱性や耐有機溶剤性のバランスが取りやすい観点より好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、(C)成分であるイミド樹脂は、熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているため、該熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜をガラス転移点以上の高温・高湿条件に放置した際に熱硬化性樹脂組成物からのブリードアウトが発生し難く、ガラス転移温度の低下や硬化塗膜の表面硬度の低下が発生せず、耐熱性や耐加水分解性に優れた硬化膜が得られ、またイミド樹脂のイミド骨格や芳香環に由来する燃焼抑制効果により難燃性に優れる。更に、驚くべきことに、このイミド樹脂が末端封止されることによりオリゴマー状に分子量制御されている場合、熱硬化性樹脂組成物に混合、粉砕・分散する際の凝集を抑制し、容易に微粒子状に分散することが可能となり、熱硬化性樹脂組成物の各成分とイミド樹脂との親和性が高くなるため、界面の接着力が向上し、硬化膜の脆化が見られず、屈曲性に富んだ硬化膜が得られる。
【0031】
以下(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)イミド樹脂、及びその他の成分ついて説明する。
【0032】
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂>
本願発明で用いられる(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂とは、分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しておらず、少なくとも1つのカルボキシル基を有している樹脂である。
【0033】
本願発明で用いられる(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、ポリエチレングリコール換算で、10,000以上200,000以下である。
【0034】
ここで、分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないとは、分子内に(メタ)アクリロイル基やビニル基等のラジカル重合性基を全く含有しなくてもよいし、本願発明の効果の発現を損なわない範囲であれば含有していてもよい。本願発明の効果の発現を損なわない範囲とは、(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の分子内のラジカル重合性基をヨウ素価として測定することにより定量した値が5未満である。ヨウ素価とは試料100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のg数に換算した値であり、JIS K0070で規定された方法で測定することができる。
【0035】
本願発明で用いられる(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基含有量は酸価として測定することができる。ここで、酸価とは試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K5601−2−1で規定された方法で測定することができる。
【0036】
本願発明の(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソーTSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソーTSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
【0037】
上記範囲内に重量平均分子量を制御することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性、耐薬品性、柔軟性が優れるため好ましい。重量平均分子量が10,000以下の場合は、柔軟性や耐薬品性が低下する場合があり、重量平均分子量が200,000以上の場合は熱硬化性樹脂組成物溶液の粘度が高くなる場合がある。
【0038】
本願発明で用いられる(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基含有量は酸価として測定することができる。ここで、酸価とは試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K5601−2−1で規定された方法で測定することができる。
【0039】
本願発明で用いられる(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の酸価は20〜200mgKOH/gとすることが好ましく、50〜150mgKOH/gとすることがより好ましい。酸価が20mgKOH/gより小さい場合では熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性、耐薬品性が低下する場合があり、200mgKOH/gより大きい場合では硬化膜の吸湿性が高くなり電気絶縁信頼性が低下する場合がある。
【0040】
より具体的には、本願発明において(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合体、カルボキシル基含有ビニル系共重合体、酸変性ポリウレタン、酸変性ポリエステル、酸変性ポリカーボネート、酸変性ポリアミド、酸変性ポリイミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
本願発明において(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂は、上記構造を有しているものであれば特に限定はされるものではないが、より好ましくは、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させたものが用いられる。このような構造とすることにより、熱硬化性、柔軟性、耐薬品性に優れる熱硬化性樹脂組成物の硬化膜が得られるため好ましい。
【0042】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸エステルのエステル鎖に炭素数1〜20のアルキル基を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、特に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルを用いることが、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性と耐薬品性の観点から好ましい。
【0043】
上記、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させる反応は、例えば、ラジカル重合開始剤によりラジカルを発生させることにより進行させることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸価水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
上記、ラジカル重合開始剤の使用量は、使用するモノマー100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましく、0.01〜1重量部とすることがより好ましい。0.001重量部より少ない場合では反応が進行しにくく、5重量部より多い場合では分子量が低下する場合がある。
【0045】
上記反応は、無溶媒で反応させることもできるが、反応を制御する為には、有機溶媒系で反応させることが望ましく、例えば有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0046】
更に、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤を用いることもできる。中でも、副反応が生じにくいことから、対称グリコールジエーテル類を用いることが好ましい。
【0047】
反応の際に用いられる溶剤量は、反応溶液中の溶質重量濃度すなわち溶液濃度が5重量%以上90重量%以下となるような量とすることが好ましく、20重量%以上70重量%以下とすることがより好ましい。溶液濃度が5%より少ない場合では重合反応が起こりにくく反応速度が低下すると共に、所望の構造物質が得られない場合があり、また、溶液濃度が90重量%より多い場合では反応溶液が高粘度となり反応が不均一となる場合がある。
【0048】
上記反応温度は、20〜120℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。20℃より低い温度の場合では反応時間が長くなり過ぎ、120℃を超えると急激な反応の進行や副反応に伴う三次元架橋によるゲル化を招く恐れがある。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0049】
<(B)エポキシ樹脂>
本願発明で用いられるエポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を含む化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER828、jER1001、jER1002、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4100E、アデカレジンEP−4300E、日本化薬株式会社製の商品名RE−310S、RE−410S、DIC株式会社製の商品名エピクロン840S、エピクロン850S、エピクロン1050、エピクロン7050、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−115、エポトートYD−127、エポトートYD−128、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER806、jER807、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4901E、アデカレジンEP−4930、アデカレジンEP−4950、日本化薬株式会社製の商品名RE−303S、RE−304S、RE−403S,RE−404S、DIC株式会社製の商品名エピクロン830、エピクロン835、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−1514、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX8000、jERYX8034,jERYL7170、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4080E、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−7015、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−3000、エポトートYD−4000D、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX4000、jERYL6121H、jERYL6640、jERYL6677、日本化薬株式会社製の商品名NC−3000、NC−3000H、フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER1256、jER4250、jER4275、ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4200、日本化薬株式会社製の商品名NC−7000L、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER152、jER154、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−201−L、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−740、エピクロンN−770、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDPN−638、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−660、エピクロンN−670、エピクロンN−680、エピクロンN−695、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−501H、EPPN−501HY、EPPN−502H、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名XD−1000、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−7200、アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER604、jER630、東都化成株式会社の商品名エポトートYH−434、エポトートYH−434L、三菱ガス化学株式会社製の商品名TETRAD−X、TERRAD−C、可とう性エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER871、jER872、jERYL7175、jERYL7217、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−4850、ウレタン変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPU−6、アデカレジンEPU−73、アデカレジンEPU−78−11、ゴム変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPR−4023、アデカレジンEPR−4026、アデカレジンEPR−1309、キレート変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−49−10、アデカレジンEP−49−20、複素環含有エポキシ樹脂としては、日産化学株式会社製の商品名TEPIC等が挙げられる。
【0050】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記エポキシ樹脂に加えて、エポキシ樹脂の硬化剤も加えることが出来る。硬化剤を加えることにより、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化膜の耐熱性、耐薬品性を向上させることができる。
上記エポキシ樹脂の硬化剤として、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0051】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物には、上記エポキシ樹脂、硬化剤に加えて、硬化促進剤も加えることが出来る。硬化促進剤を加えることにより、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させる時の硬化速度を向上させることができる。
【0052】
上記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物における(B)エポキシ樹脂は、(A)成分100重量部に対して、0.5〜100重量部となるように配合されていることが、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐熱性、耐薬品性、電気絶縁信頼性を向上することができるので好ましい。
【0054】
熱硬化性樹脂が上記範囲よりも少ない場合には、添加することによる効果が得られにくく、また、多すぎる場合には、熱硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、溶媒を乾燥させることにより得られる塗膜のべたつきが大きくなるため生産性が低下し、また架橋密度が高くなりすぎることにより硬化膜が脆く割れやすくなる場合がある。
【0055】
<(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂>
本願発明の(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂とは、室温(25℃)で固体であり、熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在している、少なくとも1つのイミド骨格を含有する樹脂である。(C)イミド樹脂が熱硬化性樹脂組成物中において上記範囲内で存在していることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の耐折れ性や柔軟性を損なうことなく難燃性を向上させることができるので好ましい。(C)イミド樹脂が熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μmより小さい場合では、熱硬化性樹脂組成物の粘度やチクソ性が大幅に向上し、例えば、フレキシブルプリント配線板の保護膜として用いる場合、フレキシブルプリント配線板上に均一な硬化膜を形成することが困難である場合がある。また、(C)イミド樹脂が熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が25μmより大きい場合、硬化膜中に存在するイミド樹脂の分布が不十分であるため難燃性が劣る場合があり、また、硬化膜中の欠陥となる場合があり、耐折れ性が低下する場合がある。
【0056】
本願発明の(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の粒子径は、熱硬化性樹脂組成物が液状の場合、例えば、JIS K 5600−2−5で規定されたゲージを用いる方法で測定することができる。具体的には、(C)イミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物をゲージの溝の深い方の先端に十分な量流し込み、スクレーバーでゲージの溝の浅い方向に向って引いた際に、ゲージの溝に沿って3mm幅の帯に5〜10個の顕著な斑点、粒子、スジを含む点を観察し、この点を粒子径として測定する。尚、顕著な斑点、粒子、スジが現れ始める点の前に、まばらに現れる斑点、粒子、スジは無視する。
【0057】
本願発明の(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の粒子径は、熱硬化性樹脂組成物がフィルム状の場合、例えば、熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化膜をミクロトームによる切削、又は熱硬化性樹脂にて抱埋後サンドペーパーで研磨することにより断面出しを行い、断面を光学顕微鏡、又は走査電子顕微鏡にて観察することにより測定することができる。
【0058】
本願発明で用いられる(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂は、少なくとも1つのイミド骨格を含有するものであれば特に限定はされないが、好ましくは、少なくとも、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる。特に芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られる芳香族系ポリイミドが、燃焼する樹脂と点火源との間に炭化層を形成しやすく、難燃効果が高い点で好ましい。更に、イミド骨格中にリンやハロゲンを含有しない芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを反応させて得られるイミド樹脂が、安価で且つ入手性がよく、燃焼時に有害なガスが発生しない点で好ましい。更に、上記イミド樹脂の末端封止剤として芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いた場合、イミド樹脂の分子量制御が可能であり、熱硬化性樹脂組成物と混合、粉砕・分散を容易にし、副反応を抑制し、凝集を抑制し、均一に分散させることが可能な点で、好ましい。
【0059】
本願発明の(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の方法により製造することができる。
(1)有機溶媒中、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、場合によっては末端封止剤として芳香族ジカルボン酸無水物及び/又は芳香族モノアミンを反応させてイミド前駆体であるアミド酸を重合する工程
(2)アミド酸溶液を加温、又は、イミド化剤を添加してイミド化する工程
(3)反応液より析出したイミド樹脂、又は、貧溶剤を添加して析出したイミド樹脂を濾過、洗浄して単離する工程
(4)得られたイミド樹脂を乾燥する工程
(5)熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させる工程
これらの工程を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0060】
<(1)アミド酸を重合する工程>
本願発明で用いられるテトラカルボン酸二無水物は特に制限されないが、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、その他テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0061】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物の例としては、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1−メチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1−エチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラフェニルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジアリール−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ジアリール−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1] −ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−コハク酸二無水物及びそれらの誘導体を含み、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0062】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジフェニル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、パラ−ターフェニル−3,4,3”,4”−テトラカルボン酸二無水物、3,3’−メタ−ターフェニル−3,3”,4,4”−テトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−メチルフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−イソプロピルフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(t−ブチル)フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,5−ジメチルフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,3−ジメチルフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,6−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物及びそれらの誘導体を含み、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0063】
その他ハロゲンを含有するテトラカルボン酸二無水物の例としては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(4−トリメリット酸モノエステル酸フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、p−クロロフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フルオロフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,5−ジクロロフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,5−ジフルオロフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,3,5−トリクロロフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−(2,3,5−トリフルオロフェニレン)ビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,5−ジフルオロピロメリット酸二無水物、2−フルオロピロメリット酸二無水物、2,5−ビストリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2−トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2,2´−ビストリフルオロメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジブロモ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0064】
前述のテトラカルボン酸二無水物に加えてジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエ−ト−3.3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などのテトラカルボン酸二無水物も用いてもよい。
【0065】
本願発明で用いられる(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂は上記テトラカルボン酸二無水物を単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。ハロゲンを含有せず、難燃効果の高い点で、芳香族酸二無水物が好ましく、安価且つ入手性がよい点で、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、特にピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0066】
本願発明で用いられるジアミンは特に制限されないが、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、その他ジアミンが挙げられる。
【0067】
脂肪族ジアミンの例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)スルホン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,2−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0068】
芳香族ジアミンの例としては、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,2−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0069】
その他、ハロゲン含有ジアミンとしては、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(トリクロロメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ビス(トリブロモメチル)−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2’−ジブロモ−4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノシクロへキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,3−ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリクロロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリブロモメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジブロモ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノ−2−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0070】
その他、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン、シロキサンジアミン(信越化学社製商品名KF8010)などがある。リン含有ジアミンとして、ビス(3−アミノフェニル)フェニルホスフェート、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフェート、ビス(3−アミノフェニル)−2,6−ジメチルフェニルホスフェート、ビス(4−アミノフェニル)−2,6−ジメチルフェニルホスフェートなどがある。
【0071】
本願発明で用いられる(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂は上記ジアミンを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。ハロゲンを含有せず、難燃効果の高い点で、芳香族ジアミンが好ましく、安価且つ入手性がよい点で、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノベンゼンが好ましく、更に4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノベンゼンが好ましい。
【0072】
これら芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を適宜組み合わせて分子設計をし、所望とする特性を有したアミン末端イミド又はジカルボン酸末端イミドとすることができる。
【0073】
本願発明で用いられるアミン末端封止剤としては、特に制限されないが、芳香族酸無水物として、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0074】
本願発明で用いられるジカルボン酸末端封止剤としては、特に制限されないが、芳香族モノアミンとして、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネジン、m−フェネジン、p−フェネジン、o−アミノベンツアルデヒド、m−アミノベンツアルデヒド、p−アミノベンツアルデヒド、o−アミノベンゾニトリル、m−アミノベンゾニトリル、p−アミノベンゾニトリル、2−アミノビフェニル、3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル、4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセン及びそれらの誘導体などが挙げられ、芳香族モノイソシアネートとして、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェネチルイソシアネート、4,4’−ジフェニルメチレンイソシアネート、ナフタレンイソシアネート、ヘキシルフェニルイソシアネート、ヘプチルフェニルイソシアネート、オクチルフェニルイソシアネート、ノニルフェニルイソシアネート、デシルフェニルイソシアネート、ウンデシルフェニルイソシアネート、ドデシルフェニルイソシアネート及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を用いることができる。
【0075】
本願発明で用いられるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物のモル比は、ジカルボン酸無水物で封止される場合、ジアミン1モル当たり、テトラカルボン酸二無水物0.3〜1.0モル比、芳香族モノアミン及び/又は芳香族モノイソシアネートで封止される場合、テトラカルボン酸二無水物1モル当たり、ジアミン0.3〜1.0モル比である。両者とも難燃性向上の点、加工性の点で、0.5〜1.0モル比が好ましい。更に難燃性向上、耐熱性向上の点で、0.8〜1.0モル比が好ましい。更に0.9〜1.0モル比が好ましい。
【0076】
また、芳香族ジカルボン酸無水物で封止される場合において、用いられる芳香族ジカルボン酸無水物の量は、ジアミン化合物1モル当たり、前記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル数の差をmとしたとき、2mの0.5〜3.0倍量である。
【0077】
また、芳香族モノアミン及び/又は芳香族モノイソシアネートで封止される場合において、用いられる芳香族モノアミン及び/又は芳香族モノイソシアネートの量は、テトラカルボン酸二無水物1モル当たり、前記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル数の差をnとしたとき、2nの0.5〜3.0倍量である。両者とも、2m、2nが加工性の点で、0.5〜1.5倍量が好ましい。
【0078】
本願発明においてイミド前駆体であるアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。汎用な点で、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒が好ましく、更に安価な点で、N,N−ジメチルホルムアミドが好ましい。これらは単独または2種以上混合して用いてもよい。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0079】
更に、イミド樹脂を単離することなく、反応液をスラリーとしてそのまま使用できる点で、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類の溶媒を用いることもできる。フィルム作製等の操作性がよい点で、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)が好ましい。
【0080】
本願発明の(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の前駆体であるアミド酸を重合する工程において、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を添加し反応させる方法としては、例えば、イ)テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させた後に、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を添加して反応を続ける方法、ロ)ジアミンに芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を加えて反応させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加して、更に反応を続ける方法、ハ)テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種とを同時に添加し反応させる方法、などが挙げられ、何れの添加方法をとっても差し支えない。
【0081】
アミド酸溶液中のアミド酸の重量%は、反応溶媒中にアミド酸が5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%溶解されているのが取扱い面から好ましい。次の工程であるイミド化の際は、適宜反応溶媒を追加して濃度を希釈しても構わない。
【0082】
反応温度は、通常250℃以下、好ましくは50℃以下である。反応圧力は特に限定されず、常圧で十分実施できる。反応時間は、ジアミン化合物の種類及び反応温度により異なり、通常1〜24時間で十分である。
【0083】
また、イミド前駆体であるアミド酸の分子量を以下の方法で測定することができる。
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソーTSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソーTSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
【0084】
以上の様な測定条件で、アミド酸の分子量分布の最大ピークの数平均分子量は、500以上15,000以下であることが好ましい。また重量平均分子量は、5000以上45,000以下であることが好ましい。数平均分子量が500未満、重量平均分子量が500未満であれば、耐久性や難燃性に問題が生じる場合がある。また、数平均分子量が15,000以上、重量平均分子量が45,000以上であれば、粉砕・分散することが困難となり、均一に分散することが困難になる場合がある。また、剛直性が増すことで、屈曲性の点で、絶縁膜用途で用いることが困難である場合がある。またピークトップは500以上35,000以下であることが好ましい。
【0085】
<(2)イミド化する工程>
上記(1)の工程に次いで、得られたアミド酸を加熱して熱イミド化するか、また、イミド化剤を用いて化学イミド化することにより、イミド樹脂が得られる。感光性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させる工程でイミド樹脂を粉砕・分散する場合、化学イミド化は高分子量体が得られ、ゲル状になる傾向があり、粉砕・分散が困難な場合があるため、熱イミド化が好ましい。
【0086】
熱イミド化は、例えば、イミド化する際の温度は40℃〜イミド化で使用する反応溶媒の沸点以下、更に好ましくは50℃〜イミド化で使用する反応溶媒の沸点以下で、加熱時間は0.5〜20時間であることが好ましい。温度が40℃を下回るとイミド化率が低くなる傾向にある。
【0087】
化学イミド化法は、少なくとも化学脱水剤が含有されており、より好ましくは、化学脱水剤および触媒が含有されている。化学脱水剤とは、アミド酸に対する脱水閉環剤であれば特に限定されるものではないが、その主成分としては、具体的には、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。これら化合物の中でも、特に、脂肪族酸無水物および芳香族酸無水物を特に好ましく用いることができる。無水酢酸を用いることがイミド樹脂の析出工程に適しているという点から好ましい。
【0088】
また、上記触媒とは、アミド酸に対する化学脱水剤の脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。これら化合物の中でも、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物を特に好ましく用いることができる。特に低沸点でイミド樹脂に含有しにくい点で、ピリジンがより好ましい。
【0089】
上記化学脱水剤および触媒の使用量は、所望の程度でイミド化ができる量であれば特に限定されるものではないが、化学脱水剤については、化学脱水剤を添加するアミド酸溶液に含有されるアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.1〜5モルの範囲内であることが好ましく、0.1〜4モルの範囲内であることがより好ましい。さらに好ましくは0.1〜2であるように用いることが好ましい。また、触媒については、化学脱水剤および触媒を添加するアミド酸溶液に含有されるアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜3モルの範囲内であることが好ましく、0.2〜2.5モルの範囲内であることがより好ましい。化学脱水剤および触媒の使用量が上記範囲を下回ると化学イミド化が不十分となり、イミド樹脂の析出が生じないため、貧溶媒で析出するため、粉砕・分散に適した粒径の制御が困難になる場合がある。また、化学脱水剤および触媒の使用量が上記範囲を上回ると、単離したイミド樹脂に含有する量が増えて、除去することが困難になる場合がある。
【0090】
<(3)イミド樹脂の析出、濾過単離>
上記(1)、(2)のようにして得られたイミド樹脂を含む溶液から、イミド樹脂を析出する方法としては、公知の各種方法が選択できるが、例えば、イミド、化学脱水剤、触媒などを含有するイミド樹脂の溶液をイミド樹脂の貧溶媒中に投入すること、もしくはイミド樹脂の溶液に貧溶媒を投入することでイミド樹脂を固形状態で得ることができる。但し、全芳香族イミド樹脂の場合は、イミド化反応が進行するに連れて、析出することが多く、その場合は、そのまま濾過するか、貧溶媒によって流動性及びろ過性を向上させて濾過することができる。イミド樹脂が沈殿するのであれば、特に制限するものではない。析出時の形状は、糸状、粉末状、フレーク状等、種々の形態で析出させることができる。また、これらを必要により粉砕・分散して使用することができる。
【0091】
本発明で用いられるイミド樹脂の貧溶媒は、特に限定されるものではないが、アミド酸を溶解する溶媒として使用した反応溶媒と混和するものが好ましく例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。上記アルコールの中でもイソプロピルアルコール、2−ブチルアルコール、2−ペンチルアルコール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等の2級又は3級アルコールが、得られるイミド樹脂のイミド化率を高位に安定化させるという観点から好ましく、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。次に安価という観点で考えた場合、水、酸性水、塩基性水が好ましい。貧溶媒量はイミド樹脂溶液の2倍以上、より好ましくは3倍以上である。
【0092】
イミド樹脂溶液からイミド樹脂を析出させ分離するだけでは、乾燥後に所望の形状(粉砕・分散しやすい形状)のイミド樹脂を得ることが難しいことがある。これはイミド樹脂に反応溶媒が多く含有されていることによるものであり、イミド樹脂を前記貧溶媒で洗浄することで反応溶媒をできるだけ含有しないイミド樹脂を得ることができる。
【0093】
<(4)イミド樹脂乾燥工程>
上記工程により得られたイミド樹脂の乾燥方法は、真空乾燥を行ってもよいし熱風乾燥を行ってもよい。ただし、後工程で容易に粉砕・分散するためには、乾燥時の溶融を避け、低温〜200℃以下で徐々に乾燥温度を上げることが好ましい。
【0094】
尚、本願発明の熱硬化性樹脂組成物中に溶剤が含まれる場合、(3)濾過・単離、(4)乾燥工程を省略し、溶媒中にイミド樹脂が存在している状態のまま下記(5)の工程に進むことも出来る。
【0095】
<(5)熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させる工程>
上記工程により得られたイミド樹脂を、固形、又は溶媒中に存在している状態で、本願発明の熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているように粉砕・分散させて混合することにより、熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させることができる。粉砕・分散方法としては、特に限定されないが、例えばビーズミル、ボールミル、3本ロール等の一般的な混練装置を用いて行われる。この中でも、特にビーズミルを用いて粉砕・分散させて混同した場合、熱硬化性樹脂組成物中に存在するイミド樹脂の粒度分布が均一になるため好ましい。
【0096】
ビーズミルで粉砕・分散する例を挙げると、熱硬化性樹脂組成物の各成分と、上記工程により得られた固形又は溶媒中に存在している状態のイミド樹脂、必要に応じて溶媒を混合し、ビーズと混合して、所定の装置で攪拌することで、煎断をかけ、イミド樹脂を粉砕・分散させて混合することができる。ビーズの種類はジルコニア、ジルコン、ガラス、チタニアなどを使用し、目標とする粒径や用途に適したビーズを使用すればよい。また、ビーズの粒径は、目標とする粒子径に適したものを使用すればよく、特に限定されるものではない。攪拌速度(周速)は、装置によって異なるが、100〜3000rpmの範囲で攪拌すればよく、高速になれば、温度が上昇するので、適宜、冷却水又は冷媒を流すことで、温度上昇を抑えればよい。ここで、熱硬化性樹脂組成物中に存在しているイミド樹脂の粒子径は、JIS K 5600−2−5で規定されたゲージを用いる方法で測定することができる。また粒度分布測定装置を使用すれば、平均粒子径、粒子径、粒度分布を測定することができる。上記操作により熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在していることを確認した後、ビーズを濾別し、本願発明の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0097】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物における(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂は、熱硬化性樹脂組成物全体を100重量部とした場合に、5重量部以上、20重量部以下で含有されていることが好ましい。
【0098】
上記配合割合にすることで熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性、耐折れ性を損なうことなく、難燃性が向上するので好ましい。
【0099】
(C)成分が上記範囲よりも少ない場合には、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の難燃性が不十分となる場合がある。また、(C)成分が上記範囲よりも多い場合には、熱硬化性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性や耐折れ性が低下する場合がある。
【0100】
上記のように一例として(D)感光性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂の製造方法を挙げたが、イミド樹脂を製造する際、ジアミンの代わりとして、又はジアミンと併用してジイソシアネートを使用しても良い。
【0101】
また、上述の説明では、熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させる方法として、イミド樹脂を、固形、又は溶媒中に存在している状態で、本願発明の熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているように粉砕・分散させて混合する方法を記載したが、これに限られず、イミド樹脂単体を粉砕して、それを樹脂組成物に添加することにより、熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させてもよく、さらには、イミド樹脂を粉砕せずに合成段階で粒子径を制御することにより、イミド樹脂単体を添加するだけで熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させる方法等があり、結果として、熱硬化性樹脂組成物中に粒子径が1μm以上、25μm以下でイミド樹脂を存在させさえすれば、方法は問わない。
【0102】
<その他の成分>
本願発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて充填剤、接着助剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、重合禁止剤等の各種添加剤を加えることができる。上記充填剤としては、シリカ、マイカ、タルク、硫酸バリウム、ワラストナイト、炭酸カルシウムなどの微細な無機充填剤、微細な有機ポリマ−充填剤を含有させてもよい。また、上記消泡剤としては、例えば、シリコン系化合物、アクリル系化合物等を含有させることができる。また、上記レベリング剤としては、例えば、シリコン系化合物、アクリル系化合物等を含有させることができる。また、上記着色剤としては、例えば、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、カーボンブラック、酸化チタン等を含有させることができる。また、上記接着助剤(密着性付与剤ともいう。)としては、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、トリアジン系化合物等を含有させることができる。また、上記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等を含有させることができる。また、本願発明の熱硬化性樹脂組成物は、イミド樹脂を含むため難燃性に優れているが、より高い難燃効果を得るために他の難燃剤を加えてもよい。難燃剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物、含ハロゲン系化合物、金属水酸化物、有機リン系化合物等を添加することができる。上記各種添加剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。また、それぞれの含有量は適宜選定することが望ましい。
【0103】
(II)熱硬化性樹脂組成物の使用方法
本願発明の熱硬化性樹脂組成物を直接に用いて、又は、熱硬化性樹脂組成物溶液を調製した後に、以下のようにして硬化膜を形成することができる。先ず、上記熱硬化性樹脂組成物、又は、熱硬化性樹脂組成物溶液を基板に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ−ン印刷、カ−テンロ−ル、リバ−スロ−ル、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5〜100μm、特に10〜100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40〜100℃で行う。
【0104】
次いで、上記得られた塗布膜の加熱処理を行う。加熱処理を行って、分子構造中に残存する反応性基を反応させることにより、耐熱性に富む硬化膜を得ることができる。硬化膜の厚みは、配線厚み等を考慮して決定されるが、2〜50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化できることが望まれている。
【0105】
この時の硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、更に好ましくは100℃以上200℃以下であり、特に好ましくは100℃以上160℃以下である。最終加熱温度が高くなると配線の酸化劣化が進むので望ましくない。
【0106】
本願発明の熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜は、難燃性、耐熱性、耐薬品性、電気的及び機械的性質に優れており、また、柔軟性にも優れている。
【0107】
また、例えば、熱硬化性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、好適には厚さ2〜50μm程度の膜厚で、高密度フレキシブル基板の絶縁材料として特に適しているのである。また更には、熱硬化性の各種配線被覆保護剤、耐熱性接着剤、電線・ケーブル絶縁被膜、等に用いられる。
【0108】
尚、本願発明は上記熱硬化性樹脂組成物、又は、熱硬化性樹脂組成物溶液を基材表面に塗布し乾燥して得られた樹脂フィルムを用いても同様の絶縁材料を提供することができる。
【実施例】
【0109】
以下本願発明を実施例により具体的に説明するが本願発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0110】
(合成例1)
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の合成1>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g(0.14モル)、メタクリル酸ベンジル28.0g(0.16モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は48,000、固形分の酸価は78mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は下記の方法で測定した。
【0111】
<固形分濃度>
JIS K 5601−1−2に従って測定を行った。尚、乾燥条件は150℃×1時間の条件を選択した。
【0112】
<重量平均分子量>
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW-H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)
【0113】
<酸価>
JIS K 5601−2−1に従って測定を行った。
【0114】
(合成例2)
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の合成2>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g(0.14モル)、メタクリル酸ベンジル28.0g(0.16モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は186,000、固形分の酸価は76mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は上記合成例1と同様の方法で測定した。
【0115】
(合成例3)
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の合成3>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸12.0g(0.14モル)、メタクリル酸ベンジル28.0g(0.16モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1.0gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は14,000、固形分の酸価は80mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は上記合成例1と同様の方法で測定した。
【0116】
(合成例4)
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の合成4>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸27.6g(0.32モル)、メタクリル酸ベンジル12.4g(0.07モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は46,000、固形分の酸価は200mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は上記合成例1と同様の方法で測定した。
【0117】
(合成例5)
<(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の合成5>
攪拌機、温度計、滴下漏斗、および窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン)100.0gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃まで昇温した。これに、室温で予め混合しておいた、メタクリル酸3.8g(0.04モル)、メタクリル酸ベンジル36.2g(0.21モル)、メタクリル酸ブチル60.0g(0.42モル)、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを80℃に保温した状態で3時間かけて滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、反応溶液を攪拌しながら90℃まで昇温し、反応溶液の温度を90℃に保ちながら更に2時間攪拌し、本願発明のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂溶液の固形分濃度は50%、重量平均分子量は52,000、固形分の酸価は20mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は上記合成例1と同様の方法で測定した。
【0118】
(合成例6)
<(C)イミド樹脂の合成1>
攪拌機、還流冷却器、および窒素導入管を備えた容器に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル76.5g(0.38モル)、ピロメリット酸二無水物 80.0g(0.37モル)、無水フタル酸4.5g(0.03モル)、N,N−ジメチルホルムアミド709.4gを混合し、窒素雰囲気下において室温下で攪拌しアミド酸溶液を得た。得られたアミド酸の分子量を合成例1記載と同様の条件のGPCにより測定した。最大ピークの数平均分子量が12,000、重量平均分子量が40,000、ピークトップが31,000であった。
【0119】
N,N−ジメチルホルムアミド670.18gを追加し、オイルバスを175〜180℃まで昇温し、還流条件でイミド化反応を行なった。イミド化反応が進行するに連れ、イミド樹脂が析出し、4時間加熱反応した。冷却後、2−プロパノールを644.07g添加して流動性をよくした後、ヌッチェと濾過鐘、アスピレーターを使用して、イミド樹脂を濾別し、2−プロパノール644.07gで十分洗浄を行なった。得られたイミド樹脂を真空乾燥100〜200℃で溶剤を除去した。取得したイミド樹脂は130.6g(収率81%対仕込原料)であった。
【0120】
(合成例7)
<(C)イミド樹脂の合成2>
攪拌機、還流冷却器、および窒素導入管を備えた容器に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル70.4g(0.35モル)、ピロメリット酸二無水物 23.0g(0.11モル)、無水フタル酸72.8g(0.49モル)、N,N−ジメチルホルムアミド732.2gを混合し、窒素雰囲気下において室温下で攪拌しアミド酸溶液を得た。得られたアミド酸の分子量を合成例1記載と同様の条件のGPCにより測定した。最大ピークの数平均分子量が540、重量平均分子量が600、ピークトップが620であった。
【0121】
N,N−ジメチルホルムアミド494.4gを追加し、ピリジン111.2g(1.40モル)、無水酢酸86.1g(0.84モル)を添加し、室温下でイミド化反応を行なった。イミド化反応が進行するに連れ、イミド樹脂が析出し、4.5時間反応した。2−プロパノールを666.7g添加して流動性をよくした後、ヌッチェと濾過鐘、アスピレーターを使用して、イミド樹脂を濾別し、2−プロパノール688.0gで十分洗浄を行なった。得られたイミド樹脂を真空乾燥100〜200℃で溶剤を除去した。取得したイミド樹脂は137.4g(収率83%対仕込原料)であった。
【0122】
(合成例8)
<(C)イミド樹脂の合成3>
攪拌機、還流冷却器、および窒素導入管を備えた容器にp−フェニレンジアミン51.7g(0.48モル)、ピロメリット酸二無水物 100.0g(0.46モル)、無水フタル酸5.7g(0.04モル)、N,N−ジメチルホルムアミド693.0gを混合し、窒素雰囲気下において室温下で攪拌しアミド酸溶液を得た。得られたアミド酸の分子量を合成例1記載と同様の条件のGPCにより測定した。最大ピークの数平均分子量が12,000、重量平均分子量が39,000、ピークトップが30,000であった。
【0123】
N,N−ジメチルホルムアミド654.7gを追加し、オイルバスを175〜180℃まで昇温し、還流条件でイミド化反応を行なった。イミド化反応が進行するに連れ、イミド樹脂が析出し、4時間加熱反応した。冷却後、2−プロパノールを629.2g添加して流動性をよくした後、ヌッチェと濾過鐘、アスピレーターを使用して、イミド樹脂を濾別し、2−プロパノール629.2gで十分洗浄を行なった。得られたイミド樹脂を真空乾燥100〜200℃で溶剤を除去した。取得したイミド樹脂は129.0g(収率82%対仕込原料)であった。
【0124】
(実施例1〜9)
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
合成例1〜5で得られた(A)成分である分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)成分であるエポキシ樹脂、合成例6〜8で得られた(C)成分であるイミド樹脂、その他の成分、及び有機溶媒をAIMEX社製ビーズミルに入れ、760rpmで混合攪拌した。次いで、粒径1mmのジルコニアビーズを充填率70%になるよう添加し、1000rpmで攪拌してイミド樹脂を粉砕・分散した後にジルコニアビーズを濾別し、本願発明の熱硬化性樹脂組成物溶液を取得した。熱硬化性樹脂組成物中のイミド樹脂の粒子径はJIS K 5600−2−5に従って測定した。それぞれの構成原料の種類及び樹脂固形分での配合量を表1及び2に記載する。なお、表中の有機溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンは上記合成例1で用いた量及び調合時に用いた量等も含めた全量である。混合溶液を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して下記評価を実施した。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
<1>DIC株式会社製 クレゾールノボラック型の多官能エポキシ樹脂の製品名
<2>大塚化学株式会社製 ホスファゼン化合物(リン系難燃剤)の製品名
<3>日本アエロジル株式会社製 シリカ粒子の製品名
【0128】
<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>
上記熱硬化性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名25NPI)に最終乾燥厚みが20μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、150℃のオーブン中で60分加熱硬化させて熱硬化性樹脂組成物の硬化膜を作製した。
【0129】
<硬化膜の評価>
得られた硬化膜について、以下の項目につき評価を行った。評価結果を表3及び4に記載する。
【0130】
(i)硬化膜の密着性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の接着強度をJIS K 5600−5−6に従ってクロスカット法で評価した。
○:分類0(カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
△:分類1(カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。)
×:分類2(塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。)
【0131】
(ii)耐溶剤性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた硬化膜の耐溶剤性の評価を行った。評価方法は25℃のメチルエチルケトン中に15分間浸漬した後風乾し、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
【0132】
(iii)耐折れ性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に20μm厚みの熱硬化性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。硬化膜積層フィルムの耐折れ性の評価方法は、硬化膜積層フィルムを50mm×10mmの短冊に切り出して、硬化膜を外側にして25mmのところで180°に折り曲げ、折り曲げ部に5kgの荷重を3秒間乗せた後、荷重を取り除き、折り曲げ部の頂点を顕微鏡で観察した。顕微鏡観察後、折り曲げ部を開いて、再度5kgの荷重を3秒間乗せた後、荷重を取り除き完全に硬化膜積層フィルムを開いた。上記操作を繰り返し、折り曲げ部にクラックが発生する回数を折り曲げ回数とした。
○:折り曲げ回数5回で硬化膜にクラックが無いもの。
△:折り曲げ回数3回で硬化膜にクラックが無いもの。
×:折り曲げ1回目に硬化膜にクラックが発生するもの。
【0133】
(iv)電気絶縁信頼性
フレキシブル銅貼り積層版(電解銅箔の厚み12μm、ポリイミドフィルムは株式会社カネカ製アピカル25NPI、ポリイミド系接着剤で銅箔を接着している)上にライン幅/スペース幅=100μm/100μmの櫛形パターンを作製し、10容量%の硫酸水溶液中に1分間浸漬した後、純水で洗浄し銅箔の表面処理を行った。その後、上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>方法と同様の方法で櫛形パターン上に20μm厚みの熱硬化性樹脂組成物の硬化膜を作製し試験片の調整を行った。85℃、85%RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に100Vの直流電流を印加し、絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの。
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの。
【0134】
(v)半田耐熱性
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、75μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル75NPI)表面に20μm厚みの熱硬化性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。
【0135】
上記塗工膜を260℃で完全に溶解してある半田浴に熱硬化性樹脂組成物の硬化膜が塗工してある面が接する様に浮かべて10秒後に引き上げた。その操作を3回行い、フィルム表面の状態を観察した。
○:塗膜に異常がない。
×:塗膜に膨れや剥がれなどの異常が発生する。
【0136】
(vi)反り
上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製アピカル25NPI)表面に20μm厚みの熱硬化性樹脂組成物の硬化膜積層フィルムを作製した。
この硬化膜を50mm×50mmの面積のフィルムに切り出して平滑な台の上に塗布膜が上面になるように置き、フィルム端部の反り高さを測定した。測定部位の模式図を図1に示す。ポリイミドフィルム表面での反り量が少ない程、プリント配線板表面での応力が小さくなり、プリント配線板の反り量も低下することになる。反り量は5mm以下であることが好ましい。尚、筒状に丸まる場合は×とした。
【0137】
(vii)難燃性
プラスチック材料の難燃性試験規格UL94に従い、以下のように難燃性試験を行った。上記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名アピカル25NPI)両面に25μm厚みの熱硬化性樹脂組成物硬化膜積層フィルムを作製した。 上記作製したサンプルを寸法:50mm幅×200mm長さ×75μm 厚み(ポリイミドフィルムの厚みを含む)に切り出し、125mmの部分に標線を入れ、直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、難燃性試験用の筒を20本用意した。 そのうち10本は(1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は(2)70℃で168時間処理後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を3秒間近づけて着火する。3秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。
○:各条件((1)、(2))につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で10秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火し、かつ、評線まで燃焼が達していないもの。
×:1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎が評線以上のところまで上昇して燃焼するもの。
【0138】
(viii)ブリードアウト
上記電気絶縁信頼性試験後の試験片を観察し、試験片表面の微小な膨れ、銅配線上の膨れ、油状物質の染み出しなどを観察した。
○:試験開始後、1000時間で試験片表面及び銅配線上に膨れ、染み出しなどの異常が見られないもの
×:試験開始後、1000時間で試験片表面及び銅配線上に膨れ、染み出しなどの異常が見られるもの
【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
(比較例1)
合成例1で得られた(A)成分である分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)成分であるエポキシ樹脂、リン系難燃剤、その他の成分、及び有機溶媒を添加して熱硬化性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表2に記載する。混合溶液を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して、この組成物を実施例1〜9と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表4に記載する。
【0142】
(比較例2)
合成例1で得られた(A)成分である分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)成分であるエポキシ樹脂、合成例7で得られたイミド樹脂、その他の成分、及び有機溶媒を添加して、ビーズミルを用いてイミド樹脂を粉砕・分散することなく混合し、熱硬化性樹脂組成物を作製した。得られた熱硬化性樹脂組成物中のイミド樹脂の粒子径は30μm以上であった。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表2に記載する。混合溶液を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して、この組成物を実施例1〜9と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表4に記載する。
【0143】
(比較例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管、油水分離器付き冷却管を取り付けた1リットルの4ツ口フラスコに、窒素気流下、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)98.4g(240ミリモル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)700gを加えて溶解した。次に20℃を超えないように冷却しながら無水トリメリット酸クロライド(TAC)51.2g(244ミリモル)を加えた。室温で1時間攪拌した後、20℃を超えないように冷却しながらトリエチルアミン30.3g(300ミリモル)を加えて、室温で3時間反応させてポリアミック酸ワニスを製造した。得られたポリアミック酸ワニスを更に190℃で脱水反応を6時間行い、ポリエーテルアミドイミドのワニスを製造した。このポリエーテルアミドイミドのワニスを水に注いで得られる沈殿物を分離、粉砕、乾燥して極性溶媒に室温で可溶なポリエーテルアミドイミド粉末を得た。
【0144】
温度計、攪拌機、窒素導入管、油水分離器付き冷却管を取り付けた1リットルの4ツ口フラスコに、窒素気流下、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)98.4g(240ミリモル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)700gを加えて溶解した。次に20℃を超えないように冷却しながらイソフタル酸ジクロライド(IPC)24.8g(122ミリモル)と3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)39.4g(122ミリモル)の酸化合物を加えた。室温で1時間攪拌した後、20℃を超えないように冷却しながらトリエチルアミン30.3g(300ミリモル)を加えて、室温で3時間反応させてポリアミック酸ワニスを製造した。得られたポリアミック酸ワニスを更に190℃で脱水反応を6時間行い、ポリエーテルアミドイミドのワニスを製造した。このポリエーテルアミドイミドのワニスを水に注いで得られる沈殿物を分離、粉砕、乾燥して極性溶媒に室温では不溶であるが、加熱することにより可溶なポリエーテルアミドイミド粉末を得た。
【0145】
温度計、攪拌機、窒素導入管、油水分離器付き冷却管を取り付けた300ミリリットルの4ツ口フラスコに、窒素気流下、上記で得た極性溶媒に室温で可溶なポリエーテルアミドイミド粉末15g、上記で得た極性溶媒に室温では不溶であるが、加熱することにより可溶なポリエーテルアミド粉末15g、γ−ブチロラクトン70gを加えて攪拌した。次に、これを150℃で1時間加熱した。このとき、室温では不均一であったワニスが、加熱後均一になった。加熱停止後、攪拌しながら室温まで放冷し、2種類の樹脂を含んだ黄褐色ペーストを得た。 次いで、2種類の樹脂を含む黄褐色ペースト100g(不揮発分30g)に、平均粒径2μmでエポキシ基で表面修飾されたシリコーンゴムフィラE−601(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を30gを加えて、3本ロールで混練・分散し、黄褐色ペーストを得た。この組成物を実施例1〜9と同様の方法で物性値の評価を行った。その結果を表4に記載する。
【符号の説明】
【0146】
1 熱硬化性樹脂組成物を積層したポリイミドフィルム
2 反り量
3 平滑な台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)熱硬化性樹脂組成物中において粒子径が1μm以上、25μm以下で存在しているイミド樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱硬化性樹脂組成物は、25μmの厚みのポリイミドフィルムの両面に、上記熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化膜を25μmの厚みで積層することにより得られる積層体の燃焼性が、UL94VTM法に準拠した燃焼性試験によりVTM−0相当であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量が10,000〜200,000、酸価が20〜200mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(C)イミド樹脂が、熱硬化性樹脂組成物全体を100重量部とした場合に、5重量部以上、20重量部以下含有されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記(C)イミド樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られる芳香族系ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
上記(C)イミド樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミン及び/又は芳香族ジイソシアネートと、末端封止剤とを反応させて得られる芳香族系ポリイミドであり、前記末端封止剤が、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族モノアミン、及び芳香族モノイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
上記(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しないカルボキシル基含有樹脂が、少なくとも(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させることにより得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
少なくとも請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材表面に塗布した後、乾燥して得られた樹脂フィルム。
【請求項9】
請求項8記載の樹脂フィルムを硬化させて得られる絶縁膜。
【請求項10】
請求項9記載の絶縁膜をプリント配線板に被覆した絶縁膜付きプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236315(P2011−236315A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108322(P2010−108322)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】