説明

新規な縮合インドリン環含有高分子化合物とその製造方法

【課題】それ自身が電子写真感光体材料、センサー材料、静電記録素子、EL素子、光スイッチング素子、電子ペーパー等の各種表示デバイス用材料として有用である新規な高分子有機導電性化合物とその製造方法を提供すること。
【解決手段】新規な縮合インドリン環含有(メタ)アクリレートと、(メタ)アルリロイルオキシ基と水酸基を含有する(メタ)アクリレートの共重合体である高分子化合物とその製造方法であり、縮合インドリン環含有(メタ)アクリレートと、エポキシ基含有する(メタ)アクリレートの共重合体を(メタ)アルリル酸で変性して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の感光体や有機EL素子等に用いられる有機導電性材料として有用な、縮合インドリン環含有高分子化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電荷輸送機能または光導電性機能を有する有機材料は、低コスト、多様な加工性、無公害等の多くの利点があるため、種々の化合物、例えば、オキサジアゾール化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、アリールアミン化合物、ベンジジン化合物、スチルベン化合物、ブタジエン化合物などが提案されている。
【0003】
この様な有機材料の特性を利用した技術として電子写真感光体や有機EL素子がある。
【0004】
電子写真は、光導電性の感光体を暗所でコロナ放電或いは接触帯電等で帯電させ、次いで画像露光により露光部の電荷を選択的に散逸させて静電潜像を形成し、この潜像部分をトナー(着色粒子)で現像して紙等に転写する画像形成方法である。
【0005】
このような電子写真で使用される感光体(電子写真感光体)は、一般に基本的な性質として次のような事が要求される。即ち、(1)暗所におけるコロナ放電に対して帯電性が高いこと、(2)得られた帯電電荷の暗所での漏洩(暗減衰)が少ないこと、(3)光の照射によって帯電電荷の散逸(光減衰)が速やかであること、(4)光照射後の残留電荷が少ないことなどである。
【0006】
これまで電子写真感光体に用いられる光導電性材料としては、無機系の化合物、例えばセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、シリコン等が知られており、かつ実用化されている。しかし、これら無機系の化合物は、多くの長所を持っているのと同時に種々の欠点をも有している。例えばセレンには製造条件が難しく、熱や機械的衝撃で結晶化しやすいという欠点があり、硫化カドミウムや酸化亜鉛は耐湿性、耐久性に難がある。シリコンについては帯電性の不足や製造上の困難さが指摘されている。更に、セレンや硫化カドミウムには毒性の問題もある。
【0007】
これに対し、有機系の低分子導電性物質は成膜性がよく、可撓性も優れていて軽量であり、透明性もよく、適当な増感方法により広範囲の波長域に対する感光体の設計が容易であるなどの利点を有していることから、近年においては、無機系の化合物に取って代わって、電子写真方式の光導電性材料として主流を成すに至っている。
【0008】
更に最近になって、感光体の物理的ないし化学的耐久性の向上と、電気特性の更なる改良を目的とした有機高分子導電性材料及びその製造中間体としての有機低分子導電性材料が提案されている。しかしながら、これまでに開発されたこれら低分子ないし高分子の導電性材料であっても、昨今における電子写真方式での感光体の更なる高感度、高耐久性の要求を満足させるまでには至っていない(例えば、特許文献1〜10参照)。
【0009】
また、有機導電材料の電荷輸送機能を利用した技術のもうひとつの例として、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を挙げることができる。有機化合物を使用した有機EL素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの研究が行われている。
【0010】
一般に有機EL素子は発光層および該発光層をはさんだ一対の対向電極から構成されている。この電極間に電界が印加されると、陰極から電子が注入され、陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する。この光を外部に取り出して、ディスプレー等に利用する技術である。
【0011】
従来の有機EL素子は無機EL素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また特性劣化も著しく、実用化には至らなかった。しかし、近年これらの問題点の克服のため様々な改良が成され、大きな進歩が遂げられている。特に、発光効率を高めるため、電極からのキャリアー注入の効率向上を目的として電極の種類の最適化を行い、芳香族ジアミンから成る正孔輸送層と8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体から成る発光層とを設けた有機電界発光素子の開発により、従来のアントラセン等の単結晶を用いたEL素子と比較して発光効率の大幅な改善がなされた(非特許文献1参照)。
【0012】
しかしながら、現在までの有機EL素子は、構成の改善により発光強度は改良されてきてはいるが、未だ充分な発光輝度は有していない。また、繰り返し使用時の安定性に劣るという大きな問題点を持っている。従って、より大きな発光輝度を持ち、繰り返し使用時での安定性に優れた有機EL素子の開発のために、優れた電荷輸送能を有し、耐久性のある電荷輸送材料の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平3−221522号公報
【特許文献2】特開平4−11627号公報
【特許文献3】特開平6−295077号公報
【特許文献4】特開平7−228557号公報
【特許文献5】特開平7−258399号公報
【特許文献6】特開平8−62864号公報
【特許文献7】特開平8−176293号公報
【特許文献8】特開平9−194442号公報
【特許文献9】特開2000−136169号公報
【特許文献10】特開2002−249472号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,51巻,913頁,1987年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、電子写真感光体材料、センサー材料、静電記録素子、EL素子、光スイッチング素子、電子ペーパー等の各種表示デバイス用材料として有用である新規な高分子有機導電性材料とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記目的を達成すべく有機導電性化合物の研究を行なった結果、特定の構造を有する縮合インドリン環含有高分子化合物が極めて有効であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の(I)〜(IV)である。
【0015】
(I)下記一般式(1)で示される繰り返し単位と下記一般式(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(1)において、Rはアルキル基、アリール基もしくは複素環基を示し、Rは水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Rは水素原子もしくはアルキル基を示す。Arは二価の連結基を示し、Zはインドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(2)において、R、Rは水素原子もしくはアルキル基を示し、Aは二価の連結基を示す。
【0020】
(II)下記一般式(3)で示される繰り返し単位と上記一般式(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(3)において、R、R、Rは水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Rは水素原子もしくはアルキル基を示す。Zは、インドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。
【0023】
(III)上記(I)記載の縮合インドリン環含有高分子化合物の製造方法であって、上記一般式(1)で示される構造単位と下記一般式(4)で示される構造単位を共に有する高分子化合物をアクリル酸もしくはメタクリル酸と反応させることを特徴とする製造方法。
【0024】
【化4】

【0025】
一般式(4)において、R10は水素原子またはアルキル基を示し、Aは二価の連結基を示す。
【0026】
(IV)上記(II)記載の縮合インドリン環含有高分子化合物の製造方法であって、上記一般式(3)で示される構造単位と上記一般式(4)で示される構造単位を共に有する高分子化合物をアクリル酸もしくはメタクリル酸と反応させることを特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、電子写真方式の感光体や有機EL素子等に用いられる有機導電性材料として有用な、縮合インドリン環含有高分子化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
一般式(1)において、Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基、ピリジル基、フリル基、チエニル基等の複素環基を挙げることができ、Rの具体例としては水素原子、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、前述のアルキル基を挙げることができ、Rの具体例としては水素原子、前述のアルキル基を挙げることができる。また、Arの具体例としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環から誘導される二価基及びピリジン環、フラン環、チオフェン環等の複素環から誘導される二価基を挙げることができる。
【0029】
また、R、R、R、Ar、Zは置換基を有していてもよく、その具体例としては例えばシアノ基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、エステル化されていてもよいカルボキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基、ビニル基、アリル基、メタリル基等のアルケニル基、前述のアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基等を挙げることができる。
【0030】
一般式(3)において、R、R、Rの具体例としては、水素原子、前述のアミノ基、アルキル基、アルコキシ基を挙げることができ、Rの具体例としては水素原子、前述のアルキル基を挙げることができる。
【0031】
また、R、R、R、Rは置換基を有していてもよく、その具体例としては例えば前述のシアノ基、ハロゲン原子、アミノ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、複素環基等を挙げることができる。
【0032】
本発明に係わる一般式(1)及び(3)で示される繰り返し単位の具体例として、例えば次の構造式を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
一般式(2)において、R及びRの具体例としては、水素原子及び前述のアルキル基を挙げることができ、Aの具体例としては、メタン、エタン、プロパン等の飽和炭化水素から誘導される二価基、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、アニソールなどのエーテル化合物から誘導される二価基等を挙げることができる。
【0040】
また、R、R、Aは置換基を有していてもよく、その具体例としては例えば前述のハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基等を挙げることができる。
【0041】
本発明に係わる一般式(2)で示される繰り返し単位の具体例として、例えば次の構造式を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
一般式(4)において、R10の具体例としては、水素原子、前述のアルキル基を挙げることができ、Aの具体例としては、前述の飽和炭化水素から誘導される二価基、エーテル化合物から誘導される二価基等を挙げることができる。
【0047】
また、R10、Aは置換基を有していてもよく、その具体例としては例えば前述のハロゲン原子、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキル基、アリール基等を挙げることができる。
【0048】
本発明に係わる一般式(4)で示される繰り返し単位の具体例として、例えば次の構造式を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
本発明に係わる一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と(4)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、下記一般式(48)、(49)で示される縮合インドリン環含有モノマー化合物とオキシラン環を有するモノマー化合物を用いた共重合反応により、容易に製造することができる。
【0052】
【化17】

【0053】
一般式(48)において、R11はアルキル基、アリール基もしくは複素環基を示し、R12は水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R13は水素原子もしくはアルキル基を示す。Arは二価の連結基を示し、Zはインドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。
【0054】
一般式(49)において、R14、R15、R16は水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R17は水素原子もしくはアルキル基を示す。Zは、インドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。
【0055】
これら一般式(48)、(49)で示されるモノマー化合物の具体例としては、特開2005−119970号公報等に記載の化合物を挙げることができ、同特許文献に記載の方法等により容易に製造することができる。
【0056】
本発明に係わる一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と(4)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、一般式(48)、(49)で示されるモノマー化合物とメタクリル酸グリシジルエステル等のオキシラン環を含有するモノマー化合物を任意の割合で混合した混合物を重合することにより容易に合成することができる。重合反応は、その際に用いる溶媒、重合開始剤等の試薬、試薬の濃度、反応温度などの組合せにより様々な反応条件があるが、その何れの条件でも合成することができる。具体的な例としては、高分子の合成と反応(1)(高分子学会編、高分子機能材料シリーズ第1巻、共立出版)、合成高分子III(村橋俊介他編、朝倉書店)、改訂高分子合成の化学(大津隆行著、化学同人)などに記載されている条件を挙げることができる。尚、本発明の縮合インドリン環含有高分子化合物の重量平均分子量に特に制限はないが、通常1,000から1,000,000程度である。
【0057】
本発明の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、上述の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と(4)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物とアクリル酸もしくはメタクリル酸とを反応させることにより容易に合成することができる。
【0058】
本発明の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、他の重合性モノマー由来の繰り返し単位を有していてもよい。
【0059】
本発明の縮合インドリン環含有高分子化合物を、電子写真感光体あるいは有機EL素子として活用する場合、該高分子の溶液を塗布し、薄膜を形成して利用することができる。本発明の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と一般式(2)で示される繰り返し単位を同時に有する縮合インドリン環含有高分子化合物により得られた薄膜は、ラジカル重合開始剤を含有せしめ、加熱、紫外線照射等の方法で活性化することにより、構造中のビニル基を重合させて硬化させることができる。これにより、薄膜の耐溶剤性は著しく向上し、更に別の薄膜を塗布により積層する際、塗布溶剤の下層薄膜への浸潤の影響を最小限に抑制することができる。つまり、層間の成分の混合が最小限に抑制することができ、その結果、素子の性能を著しく向上させることができる。また、電子写真感光体として最上層に薄膜を形成した場合、同様に硬化させることによって耐溶剤性が飛躍的に向上し、湿式現像方式にも耐えうる感光体を得ることができる。
【0060】
本発明の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と一般式(2)で示される繰り返し単位を同時に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、電子写真用の有機導電性材料として優れた性能を発揮する。該高分子化合物を含有する感光層を含む電子写真感光体の形態は、いずれのものでも用いることができる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質及びフィルム形成性結着剤樹脂からなる感光層を設けた単層型の感光体や、導電性支持体上に、電荷発生物質と結着剤樹脂からなる電荷発生層と、電荷輸送物質と結着剤樹脂からなる電荷輸送層をこの順に設けた機能分離型と呼ばれる積層型の感光体が知られているが、本発明の化合物はいずれの構成においても用いることができる。
【0061】
電子写真感光体は、本発明の縮合インドリン環含有高分子化合物の他に支持体、バインダー、電荷発生材料、電荷輸送材料、添加剤などの材料を用いて作製する。その具体的な例としては特開昭63−89866号公報、特開平1−200267号公報、特開平1−202757号公報、特開平2−51162号公報、特開平2−184857号公報、特開平3−73958号公報、特開2001−296675号公報、特開2002−14483号公報、特開2002−23396号公報、特開2002−23397号公報、特開2002−23398号公報、特開2002−40690号公報、特開2002−40691号公報、特開2002−49168号公報、特開2002−55469号公報、特開2002−82458号公報、特開2003−131409号公報、特開2003−195542号公報、特開2003−267971号公報、特開2003−270829号公報、特開2003−270863号公報、特開2003−280222号公報などに記載されている材料、作製方法が挙げられる。
【0062】
本発明の一般式(1)もしくは(3)で示される繰り返し単位と一般式(2)で示される繰り返し単位を同時に有する縮合インドリン環含有高分子化合物は、有機EL素子用の有機導電性材料として優れた性能を発揮する。該高分子化合物を含有する正孔注入層を含む有機EL素子の形態は、いずれのものでも用いることができる。例えば、表面に金属薄膜等の電極を形成したガラス基板上に正孔注入層を設け、更に発光層、電極を積層した形態などが挙げられる。また、必要に応じて電子輸送層を挿入したり、発光層に添加剤を加えた形態で用いても良い。
【0063】
有機EL素子は、本発明の縮合インドリン環含有高分子化合物の他に支持体、電極材料、バインダー、発光層材料、添加剤、封止材料、電荷輸送材料などを用いて作製する。その具体的な例としては特開2000−340363号公報、特開平3−165829号公報、特開平2−220349号公報、特開平2−212150号公報、特開2000−150169号公報、特開2002−105445号公報、特表2000−514590号公報、有機EL材料とディスプレイ(城戸 淳二編、シーエムシー出版)、有機ELディスプレイ構成材料の市場(シーエムシー出版)、有機EL素子とその工業化最前線(宮田 清蔵監修、エヌ・ティー・エス)などに記載されている材料、作製方法が挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
a)例示構造(9)、(46)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物の合成
【0066】
【化18】

【0067】
特開2005−119970号公報に基づいて合成した上記構造式(50)のモノマー化合物1.30g、上記構造式(51)で示されるオキシラン環含有のモノマー化合物(東京化成製)1.30g、トルエン10ml、AIBN26mgを30mlのフラスコ内で混合した。フラスコ内を窒素置換し、75℃で7時間加熱攪拌して重合反応をおこなった。放冷後、反応液を0.5ml取り出し、メタノール5mlへ滴下して沈殿物を濾取して、例示構造(9)、(46)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物を得た。この高分子化合物の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0068】
a)例示構造(9)、(39)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物の合成
上記の残りの反応液にトルエン3ml、アクリル酸0.63g、4−メトキシフェノール5.2mg、トリフェニルホスフィン13mgを添加し、75℃で7時間加熱攪拌してオキシラン環とアクリル酸の反応を行った。放冷後、反応液をメタノール150mlへ滴下して沈殿物を濾取した。濾取物をクロロホルム30mlに溶解し、再度メタノール150mlへ滴下して再沈殿を行った。同様な再沈殿処理を更に二回行った後、常温減圧下に乾燥して、例示構造(9)、(39)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物を1.75g得た。この高分子化合物の赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【0069】
[応用例1]ビスアゾ顔料を用いた電子写真感光体材料としての応用例
電荷発生物質として、下記構造式のビスアゾ顔料(52)1重量部及びポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン200)1重量部をテトラヒドロフラン100重量部と混合し、ペイントコンディショナー装置でガラスビーズと共に2時間分散した。こうして得た分散液を、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、ジクロロエタンを溶媒として実施例で合成した本発明の高分子化合物の10重量%の溶液を作り、上記の電荷発生層の上にアプリケーターで塗布して膜厚約20μmの電荷輸送層を形成した。
【0070】
【化19】

【0071】
この様にして作製した積層型感光体について、静電記録試験装置(川口電機製EPA−8200)を用いて電子写真特性の評価を行なった。
測定条件:印加電圧−6kV、スタティックNo. 3(ターンテーブルの回転スピードモード:10m/min )。その結果、帯電電位(Vo)が−700V、半減露光量(E1/2)が1.0ルックス・秒と高感度の値を示した。
【0072】
更に同装置を用いて、帯電−除電(除電光:白色光で400ルックス×1秒照射)を1サイクルとする繰返し使用に対する特性評価を行った。5000回での繰返しによる帯電電位の変化を求めたところ、1回目の帯電電位(Vo)−700Vに対し、5000回目の帯電電位(Vo)は−700Vであり、繰返しによる電位の低下がなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)1.0ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.90ルックス・秒と変化が少なく優れた特性を示した。
【0073】
[応用例2]フタロシアニン顔料を用いた電子写真感光体材料としての応用例
電荷発生物質として、アゾ顔料(48)の代わりに、特開2000−129156号公報に記載の方法で製造したCuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、9.5°、13.5°、14.2°、18.0°、24.0°、27.2°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルオキシフタロシアニンを用いた他は、応用例1と同様にして感光体を作製し、その特性を応用例1と同様に評価した。結果は、帯電電位(Vo)が−670V、半減露光量(E1/2)が0.60ルックス・秒と高感度の値を示した。また、繰返し使用に対する特性評価でも、1回目の帯電電位(Vo)−670Vに対し、5000回目の帯電電位(Vo)は−660Vであり、繰返しによる電位の低下がほとんどなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.60ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.60ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の縮合インドリン環含有高分子化合物の活用例として、従来用途に加え、静電記録素子、有機EL素子、光スイッチング素子、電子ペーパー等の各種表示デバイス及びセンサー素子材料としての活用が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】例示構造(9)、(46)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物の赤外吸収スペクトル
【図2】例示構造(9)、(39)の繰り返し単位を有する縮合インドリン環含有高分子化合物の赤外吸収スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される繰り返し単位と下記一般式(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物。
【化1】

(一般式(1)において、Rはアルキル基、アリール基もしくは複素環基を示し、Rは水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Rは水素原子もしくはアルキル基を示す。Arは二価の連結基を示し、Zはインドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。)
【化2】

(一般式(2)において、R、Rは水素原子もしくはアルキル基を示し、Aは二価の連結基を示す。)
【請求項2】
下記一般式(3)で示される繰り返し単位と上記一般式(2)で示される繰り返し単位を共に有する縮合インドリン環含有高分子化合物。
【化3】

(一般式(3)において、R、R、Rは水素原子、アミノ基、アルキル基もしくはアルコキシ基を示し、Rは水素原子もしくはアルキル基を示す。Zは、インドリン環の二つの炭素原子と共に飽和の5〜8員環を形成するのに必要な原子群を示す。)
【請求項3】
請求項1記載の縮合インドリン環含有高分子化合物の製造方法であって、上記一般式(1)で示される構造単位と下記一般式(4)で示される構造単位を共に有する高分子化合物をアクリル酸もしくはメタクリル酸と反応させることを特徴とする製造方法。
【化4】

(一般式(4)において、R10は水素原子またはアルキル基を示し、Aは二価の連結基を示す。)
【請求項4】
請求項2記載の縮合インドリン環含有高分子化合物の製造方法であって、上記一般式(3)で示される構造単位と上記一般式(4)で示される構造単位を共に有する高分子化合物をアクリル酸もしくはメタクリル酸と反応させることを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−84672(P2007−84672A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274596(P2005−274596)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】