説明

新規な縮合多環芳香族化合物

【課題】比較的大きい溶解度を有する縮合多環芳香族化合物の前駆体に用い得る化合物と合成法の提供。
【解決手段】下記式(II)で表される縮合多環芳香族化合物:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な縮合多環芳香族化合物に関する。また、本発明はこのような新規な縮合多環芳香族化合物の合成及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体化合物は、有機薄膜トランジスタ(TFT)、有機キャリア輸送層、有機発光デバイス等のための有機半導体層への利用に関して、様々な研究がなされている。特に、有機半導体化合物からなる有機半導体層を有する薄膜トランジスタは、低コスト且つ軽量のデバイスとして、現在のシリコンベーストランジスタを代替することが期待されている。また、有機半導体層は、軽量で且つフレキシブルであること等、有機材料に特有の利点を活用することで、スマートタグ、軽量ディスプレイ等への応用も期待されている。
【0003】
したがって、有機半導体層を形成するための有機半導体化合物に関しては多くの研究がなされている(特許文献1〜5、並びに非特許文献1〜3)。
【0004】
これらの有機半導体化合物のなかでも、縮合多環芳香族化合物、特に下記の式で表されるジナフトチエノチオフェン(DNTT)、又はその置換体若しくは類似の構造を有する縮合多環芳香族化合物が、材料の安定性、キャリアの移動度の半導体特性等に関して好ましいことが分かってきている。
【0005】
【化1】

【0006】
しかしながら、縮合多環芳香族化合物は、芳香族性が強く、結晶性が高いことから、有機溶媒等への溶解性がきわめて低く、塗布法で用いることが困難であった。したがって、縮合多環芳香族化合物を用いて有機半導体膜を得る場合には、蒸着法によって、縮合多環芳香族化合物からなる有機半導体薄膜を得ることが一般的であった。
【0007】
また、上記のDNTTは、縮合環の数が少ないことによって有機溶媒に対するわずかな溶解性を有しているものの、それでもなお、産業的に溶液法で用いるのには充分な溶解性を達成していなかった(特許文献4)。
【0008】
なお、DNTTのような縮合多環芳香族化合物を塗布法で用いて有機半導体薄膜を得るために、溶解度が大きく且つ分解してこのような縮合多環芳香族化合物を生成する前駆体を用いることも提案されている(特許文献5、非特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−89413号公報
【特許文献2】特開2008−290963号公報
【特許文献3】国際公開WO2006/077888号公報
【特許文献4】国際公開WO2008/050726号公報
【特許文献5】国際公開WO2011/024804号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Facile Synthesis of Highly π−Extended Heteroarenes, Dinaphtho[2,3−b:2‘,3‘−f]chalcogenopheno[3,2−b]chalcogenophenes, and Their Application to Field−Effect Transistors”, Tatsuya Yamamoto, and Kazuo Takimiya, J. Am. Chem. Soc., 2007, 129 (8), pp 2224−2225
【非特許文献2】H. Uno et a1., Photoprecursor for pentacene, Tetrahedron Letters, 2005, Vol.46, No.12, PP.1981−1983
【非特許文献3】WANG, Y. eta1, Synthesis, characterization, and reactionsof 6,13−disubstituted 2, 3, 9, 10−tetrakis(trimethylsily1)pentacene derivatives, Tetrahedron, 2007, Vo1. 63, No. 35, pp. 8586−8597
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記記載のように、DNTTは、縮合環の数が少ないことによって有機溶媒に対するわずかな溶解性を有しているものの、それでもなお、産業的に溶液法で用いるのには充分な溶解性を達成していなかった(特許文献4)。
【0012】
したがって本発明では、比較的大きい溶解度を有する縮合多環芳香族化合物、並びにこのような新規な縮合多環芳香族化合物の合成及び使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1の本発明)
本発明の発明者等は、DNTT類似の構造を有する縮合多環芳香族化合物において、中心のヘテロ環部分に隣接する芳香族環に置換基を導入することによって、縮合多環芳香族化合物の溶解度が改良されることを見出して、第1の本発明に想到した。
【0014】
第1の本発明の縮合多環芳香族化合物は、下記式(I)で表される:
【0015】
【化2】

【0016】
(Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつQ及びQうちの少なくとも1つが水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する置換又は非置換の縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつ隣接する2つが互いに結合して芳香族基を形成していてもよい)。
【0017】
この式(I)で表される縮合多環芳香族化合物は、有機半導体化合物として使用することができる。
【0018】
また、この式(I)で表される縮合多環芳香族化合物は、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環が置換基(Q)を有することによって、比較的大きい溶解度を有することができる。これは、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環、すなわち縮合多環芳香族化合物の中心に近い位置に置換基が存在することによって、この化合物の結晶性が低下すること、この置換基の極性によって化合物全体の極性が大きくなること等によると考えられる。
【0019】
なお、特許文献4の一般式は、縮合ベンゼン環の水素が置換されたDNTTについても包含しているものの、具体的には、中心部の縮合ヘテロ環から最も離れた位置が置換されたDNTTを開示しているのみであり、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環が置換された態様については具体的に開示していない。また、特許文献4では、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環が置換されたDNTTを合成する具体的な方法は開示していない。
【0020】
また、第1の本発明は、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を用いる溶液、有機半導体膜、有機半導体デバイス等に関する。
【0021】
(第2の本発明)
本発明の発明者等は、特定の縮合多環芳香族化合物を用いることによって、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を容易に合成できることを見出して、第2の本発明に想到した。
【0022】
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物は、下記式(II)で表される:
【0023】
【化3】

【0024】
(X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつ隣接する2つが互いに結合して芳香族基を形成していてもよい)。
【0025】
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物は、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物の合成のための前駆体として用いることができる。具体的には、例えば、第2の本発明の縮合多環芳香族化合物によれば、芳香族ハロゲン化物を用いる様々なカップリング方法、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、薗頭カップリング、鈴木・宮浦カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、熊田・玉尾・コリューカップリングによって、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を合成することが可能になる。
【0026】
また、この式(II)で表される縮合多環芳香族化合物は、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環がハロゲン原子(X)を有することによって、比較的大きい溶解度を有することができる。これは、中心部の縮合ヘテロ環に隣接するベンゼン環、すなわち縮合多環芳香族化合物の中心に近い位置にハロゲン基が存在することによって、この化合物の結晶性が低下しており、それによって溶解度が大きくなること、このハロゲン基の極性によって化合物全体の極性が大きくなること等によると考えられる。
【0027】
また、第2の本発明は、第2の本発明の縮合多環芳香族化合物の合成方法及び使用方法等に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例2で得られたTIPS2置換体DNTTについての単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP図である。
【図2】実施例2で得られたTIPS2置換DNTTについての結晶パッキング(ステレオ)図である。
【図3】実施例3で得られた有機半導体素子についてのFET特性の伝達特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(定義)
本明細書の記載においては、記載を簡潔にするために、「炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基」との記載を、「アルキル基等」として表すものとする。
【0030】
ここで、「炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基」における「芳香族基」は、ベンゼン系芳香族基、複素環基、又は非ベンゼン系芳香族基であってよい。具体的なベンゼン系芳香族基としては、ベンゼン基、及びナフタレン基を挙げることできる。また、具体的な複素環基としては、フラン基、チオフェン基、ピロール基、及びイミダゾール基を挙げることができる。また、具体的な非ベンゼン系芳香族基としては、アヌレン、及びアズレンを挙げることができる。これらの芳香族基が置換されている場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族基、ケトン基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基を挙げることができる。
【0031】
例えば、「炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基」が、置換又は非置換のチオフェン基である場合、このチオフェン基は下記に示すように、更に置換又は非置換のチオフェン基によって置換されていてもよい:
【0032】
【化4】

(uは0〜4の整数)
【0033】
なお、チオフェン基等の芳香族基が置換されている場合の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換又は非置換の芳香族基、ケトン基、アミノ基、アミド基、イミド基、スルフィド基、及びアルキルシリルアルキニル基等であってよい。
【0034】
また、「炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基」は、炭素原子数1〜40のトリアルキルシリルアルキニル基、特に下記の式を有するトリアルキルシリルアルキニル基であってよい:
【0035】
【化5】

【0036】
(R〜Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基からなる群より選択される基)。
【0037】
本明細書の記載において、「カルコゲン」は、酸素、硫黄、セレン、テルル、及びポロニウム、特に硫黄、及びセレン、より特に硫黄を意味している。
【0038】
本明細書の記載において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、及びアスタチン、特に塩素、臭素、及びヨウ素、より特に臭素を意味している。
【0039】
本明細書の記載において、隣接する2つの基が互いに結合して形成されている「炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基」は、例えば下記の構造を有する置換又は非置換の芳香族基であってよい:
【0040】
【化6】

【0041】
本明細書の記載において、「求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基(D)」に関して、求ジエン型アルケンとしては、特許文献5を参照することができる。このような求ジエン型アルケンを縮合多環芳香族化合物のベンゼン環に付加させる方法については、特許文献5を参照することができる。
【0042】
なお、特許文献5に記載のように、縮合多環芳香族化合物のベンゼン環に付加したこのような求ジエン型アルケンは、縮合多環芳香族化合物の結晶性を低下させることによって縮合多環芳香族化合物の溶解度を大きくすることができる。また、このような求ジエン型アルケンが付加した縮合多環芳香族化合物を溶液法で用いて半導体膜を製造する場合、この化合物を含有する溶液の塗膜を加熱することによって、溶液からの溶媒の除去と併せて、求ジエン型アルケンを脱離させて除去することができる。
【0043】
具体的には、「求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基(D)」は、例えば下記式(B−1a)及び(B−2a)、特に下記式(B−1b)及び(B−2b)、より特に下記式(B−1c)及び(B−2c)の化合物を挙げることができる:
【0044】
【化7】

【0045】
(R、R、R及びRはそれぞれ独立に、結合、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択され、
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよく、
及びRは、互いに結合して環を形成していてもよく、
nは、1〜5の整数であり、且つ
Zは、結合(−)、酸素(−O−)、メチレン性炭素(−C(R−)、エチレン性炭素(−C(R)=)、カルボニル基(−C(=O)−)、窒素(−N(R)−)、及び硫黄(−S−)からなる群より選択され、且つnが2又はそれよりも大きいときにはそれぞれ異なっていてもよい(Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される))。
【0046】
より具体的には、求ジエン型アルケンとしては、下記の式(B−1−1)〜(B−2−3)の化合物を挙げることができる:
【0047】
【化8】

【0048】
(R及びRはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される)。
【0049】
(第1の本発明)
(第1の本発明−縮合多環芳香族化合物)
第1の本発明の縮合多環芳香族化合物は、下記式(I)で表される:
【0050】
【化9】

【0051】
(Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつQ及びQうちの少なくとも1つが水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する置換又は非置換の縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0052】
第1の本発明の縮合多環芳香族化合物は、例えば下記式(I−1)で表される:
【0053】
【化10】

【0054】
(Q〜Qは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつQ〜Qうちの少なくとも1つが水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0055】
ここで、式(I−1)の化合物では、例えば、Q及びQが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつQ及びQうちの少なくとも1つが、水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、かつQ及びQが、水素原子である。
【0056】
この式(I−1)の化合物は、特に、下記式(I−1−1)で表される化合物であってよい:
【0057】
【化11】

【0058】
(R〜Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基)。
【0059】
第1の本発明の縮合多環芳香族化合物は、例えば下記式(I−2)で表される:
【0060】
【化12】

【0061】
(Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつQ及びQうちの少なくとも1つが水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0062】
ここで、式(I−2)の化合物では、例えば、Q及びQが、それぞれ独立に、アルキル基等からなる群より選択される。
【0063】
この式(I−2)の化合物は、特に、下記式(I−2−1)で表される化合物であってよい:
【0064】
【化13】

【0065】
(R〜Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基であり、かつ
については上記記載のとおりである)。
【0066】
式(I)、特に式(I−1)又は(I−2)の化合物では、A、A、A及びAが、特にA〜Aが水素原子であってよい。また、式(I)、特に式(I−1)又は(I−2)の化合物では、Yが、硫黄原子であってよい。
【0067】
(第1の本発明−縮合多環芳香族化合物含有溶液)
第1の本発明の縮合多環芳香族化合物含有溶液は、有機溶媒、及びこの有機溶媒に少なくとも部分的に溶解している第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を含有している。
【0068】
この縮合多環芳香族化合物含有溶液は、任意の濃度で第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を含有することができ、例えば第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を、0.01〜10質量%、0.05〜5質量%、0.1〜3質量%の濃度で含有することができる。
【0069】
ここで用いることができる有機溶媒としては、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を劣化させずかつ溶解することができる任意の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、この有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、酢酸エチル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(すなわち1,3,5‐トリメチルベンゼン)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;及びジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の含ハロゲン溶媒を考慮することができる。
【0070】
(第1の本発明−有機半導体膜の製造方法)
有機半導体膜を製造する第1の本発明の方法は、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物含有溶液を基材に塗布するステップ、及び基材に塗布された上記溶液から有機溶媒を除去するステップを含む。
【0071】
溶液の基材への塗布は、任意の様式で行うことができ、例えばキャスト法、スピンコート法、プリント法等によって行うこと等ができる。また、溶液の基材への塗布は、単に溶液を基材に滴下して行うこともできる。
【0072】
溶液から有機溶媒の除去は、塗布ステップと同時に行われるようにしてもよい。
【0073】
溶液から有機溶媒の除去は、加熱によって促進することもできる。この場合、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を実質的に分解させない任意の温度、例えば80℃以上、100℃以上、120℃以上、又は140℃以上であって、200℃以下、220℃以下、240℃以下、260℃以下の温度で加熱を行うことができる。このような加熱は例えば、溶液を塗布された基材を、加熱された電気ヒーター等の加熱された物体に直接に接触させること、加熱された炉等の加熱された領域に導入すること、赤外線、マイクロ波等の電磁波で照射すること等によって達成できる。
【0074】
なお、付加化合物を脱離させて有機半導体膜を構成することを意図している第1の本発明の化合物、例えば例えば式(I−2)の化合物では、有機溶媒を除去するのと併せて、Dで表される置換基を脱離させて除去することができる。この脱離反応は加熱によって促進することができる。
【0075】
(第1の本発明−有機半導体デバイスの製造方法)
有機半導体デバイスを製造する第1の本発明の方法は、有機半導体膜を製造する第1の本発明の方法によって有機半導体膜を製造するステップを含む。
【0076】
またこの方法は随意に、有機半導体膜の上側又は下側に、電極層及び/又は誘電体層を形成するステップを更に含むことができる。
【0077】
(第1の本発明−有機半導体デバイス)
第1の本発明の有機半導体デバイスは、第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を含有する有機半導体膜を有する。
【0078】
ここで、有機半導体膜が第1の本発明の化合物を含有していることは、有機半導体膜が少なくとも検知可能な量で、第1の本発明の化合物を含有していることを意味する。
【0079】
したがって例えば、そのままの形で有機半導体膜を構成することを意図している第1の本発明の化合物、例えば式(I−1)の化合物では、この化合物が有機半導体の実質的な部分を構成しており、すなわち有機半導体膜が実質的に第1の本発明の化合物から構成されている。
【0080】
また、付加化合物を脱離させて有機半導体膜を構成することを意図している第1の本発明の化合物、例えば例えば式(I−2)の化合物では、付加化合物が付加したままの化合物が、有機半導体の微量成分として含有されていることがある。この場合、付加化合物が付加したままの化合物のモル比は、1ppm超、10ppm超、100ppm超、1,000ppm超、又は10,000ppm(1%)超であってよい。また、この付加化合物が付加したままの化合物の割合は、10mol%以下、5mol%以下、3mol%以下、1mol%以下、0.1mol%以下、又は0.01mol%以下であってよい。
【0081】
特に本発明の有機半導体デバイスは、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、ゲート絶縁膜、及び有機半導体膜を有する薄膜トランジスタであって、ゲート絶縁膜によってソース電極及びドレイン電極とゲート電極とを絶縁し、且つゲート電極に印加される電圧によってソース電極からドレイン電極へと有機半導体を通って流れる電流を制御する薄膜トランジスタである。また特に本発明の有機半導体デバイスは、有機半導体膜を活性層として有する太陽電池である。なお、本発明に関して、「有機半導体デバイス」は、有機半導体膜を有するデバイスを意味しており、電極層、誘電体層等の他の層は、無機材料で作られていても、有機材料で作られていてもよい。
【0082】
(第2の本発明)
(第2の本発明−縮合多環芳香族化合物)
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物は、下記式(II)で表される:
【0083】
【化14】

【0084】
(X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0085】
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物は、例えば下記式(II−1)で表される:
【0086】
【化15】

【0087】
(X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつX〜Xうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0088】
ここで、式(II−1)の化合物では、例えば、X及びXが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつX及びXのうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子であり、かつX及びXが、水素原子である。
【0089】
この式(II−1)の化合物は、特に、下記式(II−1−1)で表される化合物であってよい:
【0090】
【化16】

【0091】
この式(II−1)の化合物は、特に、下記式(II−1−2)で表される化合物であってよい:
【0092】
【化17】

【0093】
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物は、例えば下記式(II−2)で表される:
【0094】
【化18】

【0095】
(X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0096】
ここで、式(II−2)の化合物では、例えば、X及びXがいずれもハロゲン原子である。
【0097】
この式(II−2−1)の化合物は、特に、下記式(I−2−1)で表される化合物であってよい:
【0098】
【化19】

【0099】
(Rについては上記記載のとおりである)。
【0100】
式(I)、特に式(I−1)又は(I−2)の化合物では、A、A、A及びAが、特にA〜Aが水素原子であってよい。また、式(I)、特に式(I−1)又は(I−2)の化合物では、Yが、硫黄原子であってよい。
【0101】
(第2の本発明−第2の本発明の縮合多環芳香族化合物の合成方法)
第2の本発明の縮合多環芳香族化合物を合成する方法は、下記の工程を含む:
(a)有機溶媒及び下記式(III)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する組成物を提供するステップ:
【0102】
【化20】

【0103】
(E及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつE及びEうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)、
(b)上記組成物にハロゲンを添加するステップ。
【0104】
ここで用いることができる有機溶媒としては、下記式(III)で表される縮合多環芳香族化合物を溶解及び/又は分散させることができる任意の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、この有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、酢酸エチル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(すなわち1,3,5‐トリメチルベンゼン)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;及びジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の含ハロゲン溶媒を考慮することができる。
【0105】
式(III)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する組成物へのハロゲンの添加は、任意の方法で行うことができ、例えばフッ素又は塩素はバブリングによって添加することができ、臭素、ヨウ素及びアスタチンは液体又は固体として添加することができる。また、式(III)で表される化合物とハロゲンとの反応を促進するために、加熱を行ってもよい。
【0106】
上記式(III)の化合物は、例えば下記式(III−1)で表される:
【0107】
【化21】

【0108】
(E〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつE〜Eうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0109】
ここで、式(III−1)の化合物では、例えば、E〜Eがいずれも水素原子である。
【0110】
上記式(III)の化合物は、例えば下記式(III−2)で表される:
【0111】
【化22】

【0112】
(E及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつE及びEうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基等からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【0113】
ここで、式(III−2)の化合物では、例えば、E及びEがいずれも水素である。
【0114】
この式(III−2)の化合物は、特に、下記式(III−2−1)で表される化合物であってよい:
【0115】
【化23】

【0116】
(Rについては上記記載のとおりである)
【0117】
(第2の本発明−第2の本発明の化合物の使用方法(第1の本発明の縮合多環芳香族化合物の合成方法))
第2の本発明の使用方法、すなわち第2の本発明から第1の本発明の縮合多環芳香族化合物を合成する方法は、下記の工程を含む:
(a)有機溶媒及び第2の本発明の縮合多環芳香族化合物を含有する組成物を提供するステップ、
(b)X〜Xうちの少なくとも1つのハロゲン原子を、アルキル基等からなる群より選択される置換基によって置換するステップ。
【0118】
ここで用いることができる有機溶媒としては、第2の本発明の化合物、すなわち式(II)の化合物を溶解及び/又は分散させることができる任意の有機溶媒を挙げることができる。具体的には、この有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、酢酸エチル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1、4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(すなわち1,3,5‐トリメチルベンゼン)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;及びジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等の含ハロゲン溶媒を考慮することができる。
【0119】
式(II)で表される化合物のX〜Xうちの少なくとも1つのハロゲン原子を、アルキル基等からなる群より選択される置換基によって置換する反応は、芳香族ハロゲン化物を用いる様々なカップリング方法、溝呂木・ヘック反応、根岸カップリング、右田・小杉・スティルカップリング、薗頭カップリング、鈴木・宮浦カップリング、ブッフバルト・ハートウィッグ反応、熊田・玉尾・コリューカップリングによって行うことができる。このカップリング反応を促進するために、加熱を行ってもよい。
【0120】
なお、それぞれのカップリング反応の概略は下記のとおりである(Arは芳香族部分、Xはハロゲン、Rは水素、アルキル基等):
(1)溝呂木・ヘック反応
Ar−X + HC=CHR (+ Pd触媒) → Ar−HC=CHR
(2)根岸カップリング
Ar−X + R−Zn−X (+ Pd触媒) → Ar−R
(3)右田・小杉・スティルカップリング
Ar−X + R−Sn−R’ (+ Pd触媒) → Ar−R
(4)薗頭カップリング
Ar−X + R−C≡C−H (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−C≡C−R
(5)鈴木・宮浦カップリング
Ar−X + R−B(OH) (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−R
(6)ブッフバルト・ハートウィッグ反応
Ar−X + R−NH (+ Pd触媒) + 塩基 → Ar−NHR
(7)熊田・玉尾・コリューカップリング
Ar−X + R−Mg−X (+ Ni触媒) → Ar−R
【実施例】
【0121】
以下の実施例において、目的化合物の構造は、必要に応じて、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMRスペクトル)、質量分析スペクトル(MS)、単結晶構造解析、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。
【0122】
使用した機器は以下のとおりである。
H−NMR: JEOL ECA−500 (500MHz)
MS: Bruker AutoflexIII (MALDI)
単結晶構造解析: Rigaku RAXIS RAPIDS
GPC: 日本分析工業株式会社 LC−9101(カラム:JAIGEL−2H、JAIGEL−1H)
【0123】
〈実施例1〉
特許文献2(特開2008−290963号公報(日本化薬株式会社、広島大学))に示される手法により、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(下記構造式、MW=340.46)を合成した。
【0124】
【化24】

【0125】
上記のDNTT1000mg(2.93mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)100mLに、臭素(Br、MW=159.8)2341mg(14.65mmol)を加え、反応温度を40℃に4時間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン(Br2置換DNTT)(下記構造式、Mw=498.25、1431mg、2.87mmol、収率98.1%)を得た。尚、反応物は、クロロホルムにより精製した。
【0126】
【化25】

【0127】
なお、Br2置換DNTTにおける臭素の置換位置は、実施例2におけるTIPS2置換DNTTの単結晶構造解析によるトリイソプロピルシリル(TIPS)基の位置により判定した。
【0128】
得られたBr2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0129】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.47(d,J=8.3Hz,2H),8.44(s,2H),7.97(d,J=8.3Hz,2H),7.66(t,J=8.3Hz,2H),7.59(t,J=8.3Hz,2H)
【0130】
MS(m/z): 497.513(ポジティブイオン観測)(ExactMass:495.86)
【0131】
〈実施例1A〉
実施例1Aでのように合成したDNTT100.7mg(0.296mmol)と塩化アルミニウム17.7mg(0.133mmol)をフラスコに添加し、3回窒素置換を行った。次にクロロホルム5.0mlを添加し、0℃に冷却した。N−クロロスクシンイミド78.7mg(0.589mmol)を添加し、1.5時間撹拌した。
【0132】
質量分析スペクトル(MS)にて原料であるN−クロロスクシンイミドが消失したのを確認した後、水を5.0ml添加して反応を終了した。反応生成物をろ過して、塩素2置換ジナフトチエノチオフェン(Cl2置換DNTT)(下記構造式、Mw=409.35、116.0mg、0.28mmol、収率95.8%)を得た。尚、反応物はクロロホルムにより精製した。
【0133】
【化26】

【0134】
得られたCl2置換DNTTについてMS結果を下記に示す。
【0135】
MS(m/z): 407.822(ポジティブイオン観測)(ExactMass:407.96)
【0136】
〈実施例2〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0137】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.0mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)191.3mg、CuI(Mw=190.45)134.1mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.706mL、CsCO(Mw=325.82)791.6mg、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)1.698mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)35mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0138】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン(TIPS2置換DNTT、下記構造式)(Mw=701.19)479.1mg(68.3mmol、収率68.0%)を得た。得られたTIPS2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.2wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0139】
【化27】

【0140】
得られたTIPS2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0141】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.61(d,J=8.0Hz,2H),8.41(s,2H),7.97(d,J=8.0Hz,2H),7.63(dd,J=8.0Hz,8.0Hz2H),7.57(dd,J=8.0Hz,8.0Hz,2H),1.40〜1.47(m,6H),1.34(d,J=6.9Hz,36H)
【0142】
MS(m/z): 700.3(ExactMass:700.30)
【0143】
得られたTIPS2置換DNTTについての単結晶構造解析結果を下記に示す。
【0144】
a=8.2044(5)Å
b=8.4591(6)Å
c=14.488(1)Å
α=88.475(4)°
β=89.336(3)°
γ=89.555(4)°
V=1005.1(1)Å
【0145】
また、このTIPS2置換DNTT体についての単結晶構造解析に基づく分子構造ORTEP(Oak Ridge Thermal Ellipsoid Plot)図及び結晶パッキング(ステレオ)図を、それぞれ図1及び2に示す。
【0146】
〈実施例2A〉
実施例2により合成したトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(TIPS2置換DNTT)を、水素還元して、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTを合成した。
【0147】
具体的には、200mlフラスコにトリイソプロピルシリルアセチレン2置換DNTT(Mw=701.18)304.6mg(0.43mmol)、トルエン60ml、10%Pd/C79.2mgを添加して、水素置換を3回行った。水素雰囲気下で、60℃で15時間攪拌して反応を行わせた。
【0148】
これにより、トリイソプロピルシリルエタン2置換DNTT(下記構造式、Mw=709.37、296.1mg、0.42mmol、収率96.1%)を得た。得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.51wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0149】
【化28】

【0150】
得られたトリイソプロピルシリルエタン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0151】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),7.26(d,J=8.6Hz,2H),7.97(d,J=8.6Hz,2H),7.57(dd,J=8.6Hz,8.6Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.76−3.72(m,8H),1.39−1.32(m,6H),1.30−1.19(m,36H)
【0152】
MS(m/z): 708.322(ポジティブイオン観測)(ExactMass:708.367)
【0153】
〈実施例3〉
実施例2で得られたTIPS2置換DNTT(Mw=701.19)を、0.2wt%の濃度でクロロホルムに溶解させ、半導体素子作製用溶液を調整した。
【0154】
次に、300nmのSiO酸化膜付nドープシリコンウェハー(面抵抗1−10Ω・cm)に対して、UV−オゾン処理20分(アイUV−オゾン洗浄装置OC−250615−D+A、アイグラフィックス株式会社)を行った。また、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン((HMDS)1,1,1,3,3,3−hexamethyldisilazane)10mmol/トルエン溶液を調整して、この溶液中に、UVオゾン処理を行ったシリコン基板を24時間にわたって浸漬させて、シリコン基板の疎水化処理を行った。その後、真空蒸着法(サンユー電子、抵抗加熱方式蒸着装置:SVC−700TM/700−2)によって、チャネル幅50μm及びチャネル長1.5mmのソース/ドレイン金電極を作製した。
【0155】
シリコン基板を40℃に加熱しながら、チャネル部分に、半導体素子作成用溶液を滴下して溶媒を揮発させ、TIPS2置換DNTTからなる薄層を形成した。このようにして作製した素子を、真空下において70℃で1時間にわたって加熱処理することにより、クロロホルム溶媒を乾燥除去して、有機半導体素子を作製した。
【0156】
得られた有機半導体素子の有機半導体特性の測定を行ったところ、p型半導体を示した。また、この有機半導体素子は、キャリア移動度が1×10−3cm/Vsであり、オン/オフ比が10であり、かつ閾値電圧が−26Vであった。この有機半導体素子についてのFET特性の伝達特性を、図3に示す。ここで、図3では、ドレイン電圧(V)が−80Vのときの、ドレイン電流(I(A)又はI1/2(A1/2))(縦軸)とゲート電圧(V(V))(横軸)との関係を示している。
【0157】
〈実施例4〉
実施例1と同様にして、ジナフトチエノチオフェン(DNTT(Dinaphthothienothiophene))(MW=340.46)を合成した。
【0158】
上記のDNTT5000mg(14.65mmol)を含有するメシチレン(すなわち1,3,5トリメチルベンゼン)500mLに、N−フェニルマレイミド(MW=173.17)12.68g(73.25mmol)を加え、反応温度を160℃に4時間保ち、その後、放冷し、分取精製して、DNTTにN−フェニルマレイミドが1つ付加したジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(DNTT−PMI1付加体、立体異性体であるEndo体及びExo体の混合物)(下記構造式、Mw=513.63)、376mg(0.73mmol、収率4.9%)を得た。尚、反応物は、HPLCにより立体異性体を分取し、Endo体132mg、及びExo体151mgを得た。
【0159】
【化29】

【0160】
【化30】

【0161】
上記のDNTT−PMI1付加体(Exo体)151mg(0.29mmol)を含有するメシチレン50mLに、臭素(Br、MW=159.8)235mg(1.47mmol)を加え、反応温度を40℃に1間保ち、その後、放冷して、臭素2置換ジナフトチエノチオフェン−N−フェニルマレイミド1付加体(Br2置換DNTT−PMI1付加体)(下記構造式、Mw=673.44)186mg(0.276mmol、収率95.2%)を得た。
【0162】
【化31】

【0163】
得られたBr2置換DNTT−1PMI付加体についてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0164】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.39(d,J=7.7Hz,1H),8.29(d,J=7.7Hz,1H),7.67(dd,J=7.7Hz,1H),7.64(dd,J=7.7Hz,1H),7.41〜7.44(m,2H),7.31〜7.32(m,3H),7.27〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.25(d,J=3.2Hz,1H),5.23(d,J=3.2Hz,1H),3.59(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H),3.55(dd,J=3.2Hz,8.3Hz,1H)
【0165】
MS(m/z): 497.513(ExactMass:670.92)
【0166】
なお、MSでは、Br2置換DNTT−PMI1付加体からN−フェニルマレイミドが脱離したBr2置換DNTT(ExactMass:497.86)が観測されたことが推定される。
【0167】
〈実施例5〉
実施例4により合成したBr2置換DNTT−PMI1付加体に対して、薗頭カップリング法により、トリイソプロピルシリル(TIPS)基の導入を行った。
【0168】
具体的には、Br2置換DNTT−PMI1付加体(Mw=673.44)100mg(0.148mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)28.1mg、CuI(Mw=190.45)20.0mg、ジイソプロピルアミン(Mw=101.20)0.11mL、トリイソプロピルシリルアセチレン(Mw=182.38)0.1mLを加え、減圧脱気と窒素置換を3回行った後、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−DMF)7mLを導入し、減圧脱気と窒素置換を再度3回行い、120℃で20時間にわったって攪拌して反応を行わせた。
【0169】
これにより、トリイソプロピルシリルアセチレン2置換ジナフトチエノチオフェン−フェニルマレイミド1付加体(exo体)(TIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体))(下記構造式、Mw=876.37)74.9mg(85.4mmol、収率57.7%)を得た。
【0170】
【化32】

【0171】
得られたTIPS2置換DNTT−PMI1付加体(exo体)についてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0172】
H−NMR(500MHz,CDCl): δ8.52〜8.54(m,1H),8.43〜8.45(m,1H),7.60〜7.64(m,2H),7.43〜7.46(m,2H),7.31〜7.33(m,3H),7.25〜7.29(m,2H),6.52〜6.54(m,2H),5.29(d,J=3.4Hz,1H),5.21(d,J=3.4Hz,1H),3.62(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),3.56(dd,J=3.4Hz,8.3Hz,1H),1.36〜1.43(m,6H),1.31(d,J=2.9Hz,12H),1.30(d,J=4.0Hz,24H)
【0173】
MS(m/z): 873.078(Exact Mass:875.37)
【0174】
〈実施例6〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−デシンを反応させ、1−デシン2置換DNTTを合成した。
【0175】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)761.1mg(1.08mmol)、CuI(Mw=190.45)577mg(3.03mmol)、CsCO(Mw=325.8)3.20g(9.82mmol)を添加して減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0176】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−デシン(Mw=138.25,d=0.77g/cm)2.78ml(15.4mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で15.5時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0177】
これにより、1−デシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、20.5mg、0.033mmol、収率1.6%)を得た。得られた1−デシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、2.3wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0178】
【化33】

【0179】
得られた1−デシン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0180】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.45(d,J=8.3Hz,2H),8.25(s,2H),7.86(d,J=8.3Hz,2H),7.54(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.9Hz,2H),2.81(t,J=7.2Hz,4H),1.90(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.65(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.31−1.48(m,16H),0.89(t,J=7.2Hz,6H)
【0181】
MS(m/z): 612.284(ポジティブイオン観測)(ExactMass:612.288)
【0182】
〈実施例7〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0183】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1000mg(2.01mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)830.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、CsCO(Mw=325.8)1.62g(4.98mmol)を加え、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0184】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm)4.19ml(17.0mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0185】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=612.93、156.04mg、0.207mmol、収率10.3%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、6.5wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0186】
【化34】

【0187】
得られた1−テトラデシン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0188】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.38(d,J=8.3Hz,2H),8.14(s,2H),7.78(d,J=8.3Hz,2H),7.48(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.42(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.76(t,J=7.2Hz,4H),1.86(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.62(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,4H),1.24−1.46(m,32H),0.86(t,J=7.2Hz,6H)
【0189】
MS(m/z): 724.411(ポジティブイオン観測)(ExactMass:724.414)
【0190】
〈実施例7A〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、実施例7で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−テトラデシンを反応させ、1−テトラデシン2置換DNTTを合成した。
【0191】
具体的には、10mlフラスコに、1−テトラデシン(Mw=194.36,d=0.79g/cm)0.21ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0192】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)215.3mg(0.853mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)50mg(0.10mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)35.2mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0193】
これにより、1−テトラデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=612.93、8.9mg、0.012mmol、収率12.2%)を得た。
【0194】
〈実施例8〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、薗頭カップリング法により、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0195】
具体的には、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1010mg(2.02mmol)に対して、Pd(PPhCl(Mw=701.90)820.0mg(1.17mmol)、CuI(Mw=190.45)590.0mg(3.12mmol)、CsCO(Mw=325.8)1.58g(4.85mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を5回行った。
【0196】
その後、ジメチルホルムアミド70ml、ジイソプロピルアミン(Mw=101.2,d=0.72g/cm)1.41ml(10.0mmol)、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.79g/cm)5.34ml(16.8mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を再度5回行い、120℃で14時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0197】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(下記構造式、Mw=836.54、54.2mg、0.064mmol、収率3.2%)を得た。
【0198】
【化35】

【0199】
〈実施例8A〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、実施例8で用いた薗頭カップリング法の代わりに根岸カップリングを用いて、1−オクタデシンを反応させ、1−オクタデシン2置換DNTTを合成した。
【0200】
具体的には、10mlフラスコに、1−オクタデシン(Mw=250.46,d=0.80g/cm)0.26ml(0.85mmol)、トルエン3.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を0.53ml(0.859mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0201】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)216.1mg(0.856mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)49.7mg(0.10mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)35.6mg(0.05mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0202】
これにより、1−オクタデシン2置換DNTT(上記構造式、Mw=836.54、3.8mg、0.004mmol、収率4.5%)を得た。得られた1−テトラデシン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、1.67wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0203】
得られた1−オクタデシン2置換DNTTについてのH−NMRおよびMS結果を下記に示す。
【0204】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.48(d,J=8.3Hz,2H),8.30(s,2H),7.89(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),7.51(dd,J=8.3Hz,6.6Hz,2H),2.83(t,J=7.2Hz,4H),1.91(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.66(tt,J=7.2Hz,7.2Hz,2H),1.24−1.46(m,48H),0.87(t,J=7.2Hz,6H)
【0205】
MS(m/z): 836.539(ポジティブイオン観測)(ExactMass:836.537)
【0206】
〈実施例9〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリメチルシリルアセチレン(TMS)を反応させ、TMS2置換DNTTを合成した。
【0207】
200mlフラスコに、トリメチルシリルアセチレン(Mw=98.22,d=0.70g/cm)1.68g(17.10mmol)、トルエン70ml添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液10.3ml(16.68mmol)を添加した後、室温まで昇温した。
【0208】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)702.5mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0209】
これにより、トリメチルシリルアセチレン2置換DNTT(TMS2置換DNTT)(下記構造式、Mw=532.87、536.30mg、1.00mmol、収率50.1%)を得た。得られたトリメチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0210】
【化36】

【0211】
得られたTMS2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0212】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.53(d,J=8.3Hz,2H),8.43(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),0.52(s,18H)
【0213】
MS(m/z): 532.008(ポジティブイオン観測)(ExactMass:532.111)
【0214】
〈実施例10〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、トリエチルシリルアセチレン(TES)を反応させ、TES2置換DNTTを合成した。
【0215】
200mlフラスコにトリエチルシリルアセチレン(Mw=140.30,d=0.78g/cm)2.25g(16.03mmol)、トルエン70mlを添加して減圧脱気と窒素置換を3回行った。0℃まで冷却し、n−BuLiのヘキサン溶液を10.3ml(16.68mmol)添加した後、室温まで昇温した。
【0216】
ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)4.31g(17.06mmol)、Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.0g(2.00mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)704.8mg(1.00mmol)を添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0217】
これにより、トリエチルシリルアセチレン2置換DNTT(TES2置換DNTT)(下記構造式、Mw=617.03、321.40mg、0.52mmol、収率26.0%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.10wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0218】
【化37】

【0219】
得られたTES2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0220】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.56(d,J=8.3Hz,2H),8.42(s,2H),7.96(d,J=8.3Hz,2H),7.63(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.57(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),1.25(t,J=8.0Hz,18H),0.94−0.98(m,12H)
【0221】
MS(m/z): 616.057(ポジティブイオン観測)(ExactMass:616.211)
【0222】
〈実施例11〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、スティルカップリング法により、チオフェンを反応させ、チオフェン2置換DNTTを合成した。
【0223】
100mlのフラスコに、Br2置換DNTT(Mw=498.25)500mg(1.00mmol)、PdCl(PPh(Mw=701.90)351.6mg(0.501mmol)、トリブチル(2−チエニル)スズ(Mw=373.18)3.23g(8.64mmol)、乾燥トルエン35mlを、添加した。窒素置換を3回行い、100℃で終夜攪拌した。
【0224】
MALDIからBr2置換DNTTのピークが消失したことを確認した後で、室温まで冷却した。クロロホルム及び水を添加し、沈殿物をろ過した。ろ液から溶媒を留去し、ろ液からのみMSにて目的物ピークが確認された。黒色オイル状物質にエーテルを10ml加え2回洗浄した。固体をろ過し、暗緑色固体を得た。その後、この暗緑色固体をカラムで精製して、黄色固体として生成物を得た。
【0225】
チオフェン2置換DNTT(下記構造式、Mw=504.71、158.80mg、0.31mmol、収率31.4%)を得た。得られたトリエチルシリルアセチレン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.13wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0226】
【化38】

【0227】
得られたチオフェン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0228】
1H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.31(s,2H),7.92(d,J=6.5,2H),7.87(d,J=7.0Hz,2H),7.76(dd,J=1.0Hz,1.0Hz,2H),7.52−7.49(m,2H),7.47−7.46(m,2H),7.43−7.41(m,2H),7.28−7.26(m,2H)
【0229】
MS(m/z): 503.838(ポジティブイオン観測)(ExactMass:504.013)
【0230】
〈実施例12〉
実施例1により合成したBr2置換DNTTに対して、根岸カップリング法により、1−ブロモデカンを反応させ、デカン2置換DNTTを合成した。
【0231】
具体的には、10mlフラスコに、マグネシウム548.2mg(22.5mmol)を添加し、減圧脱気と窒素置換を3回行った。THF2.5ml、1−ブロモデカン(Mw=221.18,d=1.07g/cm)4.39ml(21.3mmol)を添加し、攪拌しながら60℃で1時間還流した。
【0232】
室温まで冷却後、トルエン100ml、ZnCl(TMEDA)(Mw=252.50)5.32g(21.31mmol)を添加し、10分攪拌した。Br2置換DNTT(Mw=498.25)1.25g(2.50mmol)、Pd(PPhCl(Mw=701.90)881.5mg(1.25mmol)、トルエン77.5mlを添加して、減圧脱気と窒素置換を3回行った。100℃で12時間にわたり攪拌して反応を行わせた。
【0233】
これにより、デカン2置換DNTT(下記構造式、Mw=620.99、44.3mg、0.089mmol、収率2.8%)を得た。得られたデカン2置換DNTTのクロロホルムへの溶解度は、0.05wt%であった。なお、原料として用いられたDNTTは、クロロホルムに対しては実質的に溶解しなかった。
【0234】
【化39】

【0235】
得られたデカン2置換DNTTについてのH−NMR及びMS結果を下記に示す。
【0236】
H−NMR(500MHz,CDCl3,50℃): δ8.33(s,2H),8.26(d,J=8.30Hz,2H),7.95(d,J=8.3Hz,2H),7.56(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),7.53(dd,J=8.3Hz,8.3Hz,2H),3.67−3.64(m,4H),1.93−1.86(m,4H),1.76−1.71(m,4H),1.49−1.45(m,4H),1.41−1.29(m,20H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)
【0237】
MS(m/z): 620.083(ポジティブイオン観測)(ExactMass:620.288)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(II)で表される縮合多環芳香族化合物:
【化1】

(X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【請求項2】
下記式(II−1)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化2】

(X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつX〜Xうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【請求項3】
及びXが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子であり、かつ
及びXが、水素原子である、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記式(II−1−1)で表される、請求項2に記載の化合物:
【化3】

【請求項5】
下記式(II−1−2)で表される、請求項2に記載の化合物:
【化4】

【請求項6】
下記式(II−2)で表される、請求項1に記載の化合物:
【化5】

(X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつX及びXうちの少なくとも1つがハロゲン原子であり、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【請求項7】
及びXがいずれもハロゲン原子である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下記式(II−2−1)で表される、請求項6に記載の化合物:
【化6】

(Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される)。
【請求項9】
(a)有機溶媒及び下記式(III)で表される縮合多環芳香族化合物を含有する組成物を提供するステップ:
【化7】

(E及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつE及びEうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)、
(b)前記組成物にハロゲンを添加するステップ、
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の縮合多環芳香族化合物の合成方法。
【請求項10】
前記式(III)の化合物が、下記式(III−1)で表される、請求項9に記載の方法:
【化8】

(E〜Eは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつE〜Eうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【請求項11】
〜Eがいずれも水素原子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記式(III−1)の化合物が、下記式(III−1−1)で表される、請求項10に記載の方法:
【化9】

【請求項13】
前記式(III)の化合物が、下記式(III−2)で表される、請求項9に記載の方法:
【化10】

(E及びEは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつE及びEうちの少なくとも1つが水素原子であり、
Dは、求ジエン型アルケンがベンゼン環に付加した炭素原子数2〜20の置換基であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。
【請求項14】
及びEがいずれも水素である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式(III−2)の化合物が、下記式(III−2−1)で表される、請求項13に記載の方法:
【化11】

(Rはそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、アミド基、メルカプト基、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数4〜10の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数1〜10のエステル基、炭素原子数1〜10のエーテル基、炭素原子数1〜10のケトン基、炭素原子数1〜10のアミノ基、炭素原子数1〜10のアミド基、炭素原子数1〜10のイミド基、及び炭素原子数1〜10のスルフィド基からなる群より選択される)。
【請求項16】
(a)有機溶媒及び請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物を含有する組成物を提供するステップ、
(b)X〜Xうちの少なくとも1つのハロゲン原子を、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、及び炭素原子数1〜20のスルフィド基からなる群より選択される置換基によって置換するステップ、
を含む、下記式(I)で表される縮合多環芳香族化合物の合成方法:
【化12】

(Q及びQは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつQ及びQうちの少なくとも1つが水素原子及びハロゲン原子以外の基であり、
Bは、少なくとも1つのベンゼン環部分を有する置換又は非置換の縮合環であり、
Yはそれぞれ独立に、カルコゲンから選択され、かつ
〜Aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数2〜20のアルケニル基、炭素原子数2〜20のアルキニル基、炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基、炭素原子数2〜10のケトン基、炭素原子数1〜20のアミノ基、炭素原子数1〜20のアミド基、炭素原子数1〜20のイミド基、炭素原子数1〜20のスルフィド基、及び炭素原子数1〜40のアルキルシリルアルキニル基からなる群より選択され、かつA〜Aのうちの隣接する2つが、互いに結合して炭素原子数4〜20の置換又は非置換の芳香族基を形成していてもよい)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53138(P2013−53138A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171873(P2012−171873)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】